(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177894
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】素子チップの製造方法および接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20241217BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20241217BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20241217BHJP
B23K 26/364 20140101ALI20241217BHJP
【FI】
H01L21/78 Q
H01L21/78 B
H01L21/78 L
H01L21/78 S
H01L21/302 101C
H01L21/60 311S
B23K26/364
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096289
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】置田 尚吾
【テーマコード(参考)】
4E168
5F004
5F044
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AD01
4E168DA45
4E168DA46
4E168DA47
4E168JA12
4E168JA13
5F004AA11
5F004BB13
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5F004DA18
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5F063BA45
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5F063CB06
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5F063CB18
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5F063DD25
5F063DD42
5F063DD44
5F063DD48
5F063DD59
5F063DF04
5F063DF06
5F063DF19
5F063DF20
5F063DF24
5F063FF05
(57)【要約】
【課題】表面が平坦な素子チップを得る。
【解決手段】素子チップの製造方法は、第1層2および第2層3を備えかつ分割領域を備える基板1を準備する工程と、第2層3の上面を平坦化する工程と、平坦化された上面に保護層4を形成することで、第2層3と保護層4との間の境界6を形成する工程と、レーザ光の照射により分割領域における保護層4および第2層3を除去することで、分割領域に、第1層2に達する溝5を形成すると共に、溝5の側壁に、少なくとも境界6を被覆するように、保護層4および第2層3の組成物を含む堆積物Dを堆積させる工程と、堆積物Dを除去することで、側壁に境界6を露出させる工程と、その後、溝5をプラズマに晒して第1層2をエッチングすることで、基板1を、複数の素子チップに分割する工程と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面および第2主面を備え、半導体層である第1層と、前記第1層の前記第1主面側に形成されかつ絶縁体を含む第2層と、を備える基板であって、複数の素子領域と、前記素子領域を画定する分割領域と、を備える基板を準備する準備工程と、
前記基板の前記第1主面側を研摩することで、前記第2層の上面を平坦化する平坦化工程と、
平坦化された前記上面に保護層を形成することで、前記第2層と前記保護層との間の境界を形成する保護層形成工程と、
前記分割領域に前記第1主面側からレーザ光を照射して、前記分割領域における前記保護層および前記第2層を除去することで、前記分割領域に、前記保護層および前記第2層を貫通しかつ前記第1層に達する溝を形成すると共に、前記溝の側壁に、少なくとも前記境界を被覆するように、前記レーザ光の照射により除去された前記保護層および前記第2層の組成物を含む堆積物を堆積させるレーザグルービング工程と、
前記堆積物を除去することで、前記側壁に前記境界を露出させる堆積物除去工程と、
前記堆積物除去工程の後、前記第2主面を支持部材で支持した状態で、前記溝をプラズマに晒して前記第1層をエッチングすることで、前記基板を、前記素子領域を備える複数の素子チップに分割するプラズマダイシング工程と、
を備える、素子チップの製造方法。
【請求項2】
前記堆積物除去工程は、高周波電力を印加可能なステージを備えるプラズマ処理装置の前記ステージに載置された前記基板をプラズマに晒すことによりそれぞれ行われ、前記ステージに第1高周波電力が印加された状態で行われる第1除去ステップと、前記第1除去ステップの後、前記ステージに第2高周波電力が印加された状態で行われる第2除去ステップと、を含み、
前記第2高周波電力は、前記第1高周波電力よりも大きい、請求項1に記載の素子チップの製造方法。
【請求項3】
前記第1除去ステップは、フッ化炭素と酸素を含む第1原料ガスを供給しながら発生させた第1プラズマにより行われ、
前記第2除去ステップは、フッ化炭素と酸素と希ガスを含む第2原料ガスを供給しながら発生させた第2プラズマにより行われ、
前記第2原料ガスに含まれる前記希ガスの割合は、前記第1原料ガスに含まれる前記希ガスの割合よりも大きい、請求項2に記載の素子チップの製造方法。
【請求項4】
前記堆積物除去工程は、前記保護層および前記第2層をエッチング可能なプラズマにより行われ、
前記堆積物除去工程により、前記境界における前記溝の幅が拡張される、請求項1に記載の素子チップの製造方法。
【請求項5】
前記レーザグルービング工程で形成される前記溝は、底面に向かうにつれて幅狭になるように傾斜した形状を有し、
前記堆積物除去工程により、前記境界における前記溝の側面の傾斜角度が小さくなる、請求項1に記載の素子チップの製造方法。
【請求項6】
前記保護層は、水溶性樹脂を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の素子チップの製造方法。
【請求項7】
前記プラズマダイシング工程の後、前記保護層を水を含む洗浄液に接触させることで前記保護層を除去する保護層除去工程をさらに備える、請求項6に記載の素子チップの製造方法。
【請求項8】
素子チップを準備する素子チップ準備工程と、
第2基板を準備する第2基板準備工程と、
前記素子チップを前記第2基板に接合する接合工程と、
を備え、
前記素子チップ準備工程は、
第1主面および第2主面を備え、半導体層である第1層と、前記第1層の前記第1主面側に形成されかつ絶縁体を含む第2層と、を備える第1基板であって、複数の素子領域と、前記素子領域を画定する分割領域と、を備える第1基板を準備する準備工程と、
前記第1基板の前記第1主面側を研摩することで、前記第2層の上面を平坦化する平坦化工程と、
平坦化された前記上面に保護層を形成することで、前記第2層と前記保護層との間の境界を形成する保護層形成工程と、
前記分割領域に前記第1主面側からレーザ光を照射して、前記分割領域における前記保護層および前記第2層を除去することで、前記分割領域に、前記保護層および前記第2層を貫通しかつ前記第1層に達する溝を形成すると共に、前記溝の側壁に、少なくとも前記境界を被覆するように、前記レーザ光の照射により除去された前記保護層および前記第2層の組成物を含む堆積物を堆積させるレーザグルービング工程と、
前記堆積物を除去することで、前記側壁に前記境界を露出させる堆積物除去工程と、
前記堆積物除去工程の後、前記第2主面を支持部材で支持した状態で、前記溝をプラズマに晒して前記第1層をエッチングすることで、前記第1基板を、前記素子領域を備える複数の前記素子チップに分割するプラズマダイシング工程と、
前記プラズマダイシング工程の後、前記保護層を除去する保護層除去工程と、
を有し、
前記接合工程では、前記素子チップの前記第1主面側を前記第2基板に密着させて接合する、接合体の製造方法。
【請求項9】
前記堆積物除去工程は、高周波電力を印加可能なステージを備えるプラズマ処理装置の前記ステージに載置された前記第1基板をプラズマに晒すことによりそれぞれ行われ、前記ステージに第1高周波電力が印加された状態で行われる第1除去ステップと、前記第1除去ステップの後、前記ステージに第2高周波電力が印加された状態で行われる第2除去ステップと、を含み、
前記第2高周波電力は、前記第1高周波電力よりも大きい、請求項8に記載の接合体の製造方法。
【請求項10】
前記第1除去ステップは、フッ化炭素と酸素を含む第1原料ガスを供給しながら発生させた第1プラズマにより行われ、
前記第2除去ステップは、フッ化炭素と酸素と希ガスを含む第2原料ガスを供給しながら発生させた第2プラズマにより行われ、
前記第2原料ガスに含まれる前記希ガスの割合は、前記第1原料ガスに含まれる前記希ガスの割合よりも大きい、請求項9に記載の接合体の製造方法。
【請求項11】
前記堆積物除去工程は、前記保護層および前記第2層をエッチング可能なプラズマにより行われ、
前記堆積物除去工程により、前記境界における前記溝の幅が拡張される、請求項8に記載の接合体の製造方法。
【請求項12】
前記レーザグルービング工程で形成される前記溝は、底面に向かうにつれて幅狭になるように傾斜した形状を有し、
前記堆積物除去工程により、前記境界における前記溝の側面の傾斜角度が小さくなる、請求項8に記載の接合体の製造方法。
【請求項13】
前記保護層は、水溶性樹脂を含む、請求項8~12のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
【請求項14】
前記保護層除去工程では、前記保護層を水を含む洗浄液に接触させることで前記保護層を除去する、請求項13に記載の接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、素子チップの製造方法および接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板をプラズマダイシングすることで複数の素子チップを製造する技術が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の素子チップの製造方法は、複数の素子領域および当該素子領域を画定する分割領域を備える基板を準備する工程と、基板の上面にマスク層を形成する工程と、レーザ光の照射によって分割領域に対応するマスク層を除去する工程と、基板の分割領域をプラズマに晒すことで、素子領域に対応する複数の素子チップを得る工程とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、素子チップと素子チップの各々の表面同士、または素子チップと基板の各々の表面同士を直接的に接合する、いわゆるハイブリッド接合技術の開発が進められている。ハイブリッド接合技術は、接合距離を短縮できる点で有利である一方、素子チップなどの表面が高度に平坦であることが求められる。このような状況において、本開示は、表面が平坦な素子チップを得ることを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る一局面は、素子チップの製造方法に関する。当該製造方法は、第1主面および第2主面を備え、半導体層である第1層と、前記第1層の前記第1主面側に形成されかつ絶縁体を含む第2層と、を備える基板であって、複数の素子領域と、前記素子領域を画定する分割領域と、を備える基板を準備する準備工程と、前記基板の前記第1主面側を研摩することで、前記第2層の上面を平坦化する平坦化工程と、平坦化された前記上面に保護層を形成することで、前記第2層と前記保護層との間の境界を形成する保護層形成工程と、前記分割領域に前記第1主面側からレーザ光を照射して、前記分割領域における前記保護層および前記第2層を除去することで、前記分割領域に、前記保護層および前記第2層を貫通しかつ前記第1層に達する溝を形成すると共に、前記溝の側壁に、少なくとも前記境界を被覆するように、前記レーザ光の照射により除去された前記保護層および前記第2層の組成物を含む堆積物を堆積させるレーザグルービング工程と、前記堆積物を除去することで、前記側壁に前記境界を露出させる堆積物除去工程と、前記堆積物除去工程の後、前記第2主面を支持部材で支持した状態で、前記溝をプラズマに晒して前記第1層をエッチングすることで、前記基板を、前記素子領域を備える複数の素子チップに分割するプラズマダイシング工程と、を備える。
【0006】
本開示に係る別の一局面は、接合体の製造方法に関する。当該製造方法は、素子チップを準備する素子チップ準備工程と、第2基板を準備する第2基板準備工程と、前記素子チップを前記第2基板に接合する接合工程と、を備え、前記素子チップ準備工程は、第1主面および第2主面を備え、半導体層である第1層と、前記第1層の前記第1主面側に形成されかつ絶縁体を含む第2層と、を備える第1基板であって、複数の素子領域と、前記素子領域を画定する分割領域と、を備える第1基板を準備する準備工程と、前記第1基板の前記第1主面側を研摩することで、前記第2層の上面を平坦化する平坦化工程と、平坦化された前記上面に保護層を形成することで、前記第2層と前記保護層との間の境界を形成する保護層形成工程と、前記分割領域に前記第1主面側からレーザ光を照射して、前記分割領域における前記保護層および前記第2層を除去することで、前記分割領域に、前記保護層および前記第2層を貫通しかつ前記第1層に達する溝を形成すると共に、前記溝の側壁に、少なくとも前記境界を被覆するように、前記レーザ光の照射により除去された前記保護層および前記第2層の組成物を含む堆積物を堆積させるレーザグルービング工程と、前記堆積物を除去することで、前記側壁に前記境界を露出させる堆積物除去工程と、前記堆積物除去工程の後、前記第2主面を支持部材で支持した状態で、前記溝をプラズマに晒して前記第1層をエッチングすることで、前記第1基板を、前記素子領域を備える複数の前記素子チップに分割するプラズマダイシング工程と、前記プラズマダイシング工程の後、前記保護層を除去する保護層除去工程と、を有し、前記接合工程では、前記素子チップの前記第1主面側を前記第2基板に密着させて接合する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、表面が平坦な素子チップを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】準備工程を説明するための断面図であって、第1基板の一例が示されている。
【
図2】平坦化工程を説明するための断面図であって、第1基板の第1主面が平坦化されている。
【
図3】保護層形成工程を説明するための断面図であって、第2層の上面に保護層が形成されている。
【
図4】レーザグルービング工程を説明するための断面図であって、溝が形成されると共に当該溝の側面に堆積物が堆積している。
【
図5】堆積物除去工程の第1除去ステップを説明するための断面図であって、主に溝の底面の堆積物が除去されている。
【
図6】堆積物除去工程の第2除去ステップを説明するための断面図であって、主に境界周辺の堆積物が除去されている。
【
図7】プラズマダイシング工程を説明するための断面図であって、複数の素子チップが示されている。
【
図8】保護層除去工程を説明するための断面図であって、保護層が除去されている。
【
図9】第2基板準備工程および接合工程を説明するための断面図であって、素子チップが第2基板に接合される様子が示されている。
【
図10】プラズマ処理装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示に係る素子チップの製造方法および接合体の製造方法の実施形態について例を挙げて以下に説明する。しかしながら、本開示は以下に説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。
【0010】
(素子チップの製造方法)
本開示に係る素子チップの製造方法は、プラズマエッチングにより基板を個片化することで複数の素子チップを得る方法である。本開示に係る素子チップの製造方法は、準備工程と、平坦化工程と、保護層形成工程と、レーザグルービング工程と、堆積物除去工程と、プラズマダイシング工程とを備える。
【0011】
準備工程では、第1主面および第2主面を備える基板であって、半導体層である第1層と、第1層の第1主面側に形成されかつ絶縁体を含む第2層と、を備える基板を準備する。基板は、複数の素子領域と、素子領域を画定する分割領域と、を備える。第1層と第2層とは、互いに隣接していてもよい。第1層が含む半導体材料は、特に限定されず、例えば、Si、SiC、GaN、またはGaAsであってもよい。第2層には、例えば、SiO2、SiN、SiCNなどの絶縁膜およびCu、Alなどの金属が含まれてもよい。各素子領域の形状は、特に限定されず、例えば、矩形、多角形、または円形であってもよい。分割領域の幅も特に限定されず、目的に応じて適宜設定され得る。
【0012】
平坦化工程では、基板の第1主面側を研摩することで、第2層の上面を平坦化する。平坦化工程では、例えば、化学機械研摩(CMP)によって第2層の上面を平坦化してもよい。第2層の上面(あるいは、最表面)は、SiO2またはSiONを含んでもよい。
【0013】
保護層形成工程では、平坦化された第2層の上面に保護層を形成することで、第2層と保護層との間に境界を形成する。保護層は、水溶性または非水溶性の樹脂材料を含んでもよい。保護層の厚さは、特に限定されず、プラズマダイシング工程において完全には除去されない程度であればよい。非水溶性の樹脂材料としては、例えば、フォトレジスト材料を例示することができる。
【0014】
レーザグルービング工程では、分割領域に第1主面側からレーザ光を照射して、分割領域における保護層および第2層を除去する。それにより、分割領域に、保護層および第2層を貫通しかつ第1層に達する溝を形成すると共に、当該溝の側壁に、少なくとも上記境界を被覆するように、レーザ光の照射により除去された保護層および第2層の組成物を含む堆積物(あるいは、デブリ)を堆積させる。レーザ光は、ピコ秒オーダやフェムト秒オーダの超短パルスレーザ光であってもよいが、製造コストの観点から、ナノ妙オーダの短パルスレーザ光であることが好ましい。レーザ光は、保護層および第2層に吸収される一方、第1層には吸収されなくてもよい。
【0015】
ここで、鋭意研究の結果として、第2層と保護層との間の境界やその近傍を覆う堆積物が、後に得られる素子チップの表面における微小な突起(あるいは、バリ)の形成に寄与するという知見が得られた。そのような微小な突起は、数十~数百nmのサイズを有することが多く、ハイブリッド接合における界面接合を妨げる要因になり得る。
【0016】
これに対し、堆積物除去工程では、堆積物を除去することで、溝の側壁に上記境界を露出させる。堆積物の除去は、プラズマ処理により行われてもよい。このように、第2層と保護層との間の境界やその近傍の堆積物を除去することにより、後に得られる素子チップの表面における微小な突起の形成を抑制することができる。
【0017】
プラズマダイシング工程では、堆積物除去工程の後、第2主面を支持部材で支持した状態で、溝をプラズマに晒して第1層をエッチングすることで、基板を、素子領域を備える複数の素子チップに分割する。当該プラズマエッチングは、保護層をマスクとして行われ得る。第1層のエッチングには、ボッシュプロセスが用いられてもよい。支持部材は、環状のフレームと、フレームに取り付けられかつ基板が貼着される保持シートとを有してもよい。後に得られる素子チップは、上述のとおり、その表面に微小な突起がほとんど形成されない。あるいは、素子チップの表面に微小な突起が形成されたとしても、そのサイズは数nm以下であり、ハイブリッド接合における界面接合の妨げになりにくい。
【0018】
堆積物除去工程は、高周波電力を印加可能なステージを備えるプラズマ処理装置のステージに載置された基板をプラズマに晒すことによりそれぞれ行われ、ステージに第1高周波電力が印加された状態で行われる第1除去ステップと、第1除去ステップの後、ステージに第2高周波電力が印加された状態で行われる第2除去ステップと、を含んでもよい。第2高周波電力は、第1高周波電力よりも大きくてもよい。例えば、第1高周波電力は、20W以上、100W以下であってもよく、第2高周波電力は、150W以上、600W以下であってもよい。
【0019】
第1除去ステップは、フッ化炭素と酸素を含む第1原料ガスを供給しながら発生させた第1プラズマにより行われてもよい。第2除去ステップは、フッ化炭素と酸素と希ガスを含む第2原料ガスを供給しながら発生させた第2プラズマにより行われてもよい。第2原料ガスに含まれる希ガスの割合は、第1原料ガスに含まれる希ガスの割合よりも大きくてもよい。第1原料ガスは、希ガスを含まなくてもよい。第2除去ステップは、相対的に大きな第2高周波電力がステージに印加された状態で、相対的に多くの希ガスを含む第2原料ガスを供給しながら発生させた第2プラズマにより行われる。そのため、溝の側壁における堆積物がスパッタ作用によって効果的に除去され、第2層と保護層との間の境界が露出しやすい。
【0020】
堆積物除去工程は、保護層および第2層をエッチング可能なプラズマにより行われてもよい。保護層および第2層をエッチング可能なプラズマとしては、例えば、フッ化炭素と酸素と希ガスを含む原料ガスを供給しながら発生させたプラズマを用いることができる。原料ガスはさらに、SF6を含んでもよい。堆積物除去工程により、第2層と保護層との間の境界における溝の幅が拡張されてもよい。境界における溝の幅とは、溝の深さ方向における境界の位置における溝の幅のことをいう。溝の幅は、堆積物除去工程の前後で、50nm以上、2000nm以下拡張されてもよい。
【0021】
レーザグルービング工程で形成される溝は、底面に向かうにつれて幅狭になるように傾斜した形状を有してもよい。堆積物除去工程により、第2層と保護層との間の境界における溝の側面の傾斜角度が小さくなってもよい。境界における溝の側面の傾斜角度とは、境界における溝の側面の接線と、境界が存在する平面とがなす鋭角のことをいう。当該傾斜角度は、堆積物除去工程の前には、65°以上、90°以下であってもよく、堆積物除去工程の後には、60°以上、88°以下であってもよい。
【0022】
保護層は、水溶性樹脂を含んでもよい。この場合、素子チップの製造における環境負荷を低減することが可能となる。水溶性樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニルまたはそのケン化物(ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物、ポリビニルアルコールなど)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレンオキサイド、水溶性ポリエステル、オキサゾール系水溶性ポリマー(オキサゾール-2-エチル-4,5-ジヒドロホモポリマーなど)、またはこれらの塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩など)などが挙げられる。
【0023】
素子チップの製造方法は、プラズマダイシング工程の後、保護層を水を含む洗浄液(例えば、水)に接触させることで保護層を除去する保護層除去工程をさらに備えてもよい。保護層を除去する際、第2層と保護層との間の境界に堆積物が残存していると、上述の数十~数百nmの微小な突起が素子チップの表面に形成され得る。しかし、本開示に係る素子チップの製造方法は、上述の堆積物除去工程を備えるため、そのような微小な突起がほとんど形成されないか、形成されたとしても数nmの大きさに留めることができる。
【0024】
(接合体の製造方法)
本開示に係る接合体の製造方法は、プラズマエッチングによって基板を個片化することで得られる素子チップを、第2基板に接合することで接合体を製造する方法である。本開示に係る接合体の製造方法は、素子チップ準備工程と、第2基板準備工程と、接合工程とを備える。
【0025】
素子チップ準備工程は、本開示に係る素子チップの製造方法と同様、準備工程と、平坦化工程と、保護層形成工程と、レーザグルービング工程と、堆積物除去工程と、プラズマダイシング工程とを有し、かつ保護層除去工程をさらに有する。保護層除去工程以外の各工程は、本開示に係る素子チップの製造方法における「基板」を「第1基板」に置き換えて、当該製造方法における各工程と同様に行われてもよい。保護層除去工程では、プラズマダイシング工程の後、保護層を除去する。その際、堆積物除去工程によって、数十~数百nmの微小な突起が素子チップの表面に形成されることが抑制され得る。素子チップの表面は、プラズマを用いた親水化処理が施されてもよい。
【0026】
第2基板準備工程では、第2基板を準備する。第2基板の表面には、SiO2またはSIONで構成された領域と、Cu、Alなどの金属で構成された領域とが含まれてもよい。第2基板の表面は、プラズマを用いた親水化処理が施されてもよい。
【0027】
接合工程では、素子チップを第2基板に接合する。接合工程では、素子チップの第1主面側を第2基板に密着させて接合する。接合工程は、ハイブリッド接合によって行われてもよい。素子チップの表面に数十~数百nmの微小な突起が存在しないため、当該接合を良好に行うことができる。
【0028】
堆積物除去工程は、高周波電力を印加可能なステージを備えるプラズマ処理装置のステージに載置された基板をプラズマに晒すことによりそれぞれ行われ、ステージに第1高周波電力が印加された状態で行われる第1除去ステップと、第1除去ステップの後、ステージに第2高周波電力が印加された状態で行われる第2除去ステップと、を含んでもよい。
【0029】
第1除去ステップは、フッ化炭素と酸素を含む第1原料ガスを供給しながら発生させた第1プラズマにより行われてもよい。第2除去ステップは、フッ化炭素と酸素と希ガスを含む第2原料ガスを供給しながら発生させた第2プラズマにより行われてもよい。第2原料ガスに含まれる希ガスの割合は、第1原料ガスに含まれる希ガスの割合よりも大きくてもよい。
【0030】
堆積物除去工程は、保護層および第2層をエッチング可能なプラズマにより行われてもよい。保護層および第2層をエッチング可能なプラズマとしては、例えば、フッ化炭素と酸素と希ガスを含む原料ガスを供給しながら発生させたプラズマを用いることができる。原料ガスはさらに、SF6を含んでもよい。堆積物除去工程により、第2層と保護層との間の境界における溝の幅が拡張されてもよい。
【0031】
レーザグルービング工程で形成される溝は、底面に向かうにつれて幅狭になるように傾斜した形状を有してもよい。堆積物除去工程により、第2層と保護層との間の境界における溝の側面の傾斜角度が小さくなってもよい。
【0032】
保護層は、水溶性樹脂を含んでもよい。水溶性樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニルまたはそのケン化物(ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物、ポリビニルアルコールなど)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレンオキサイド、水溶性ポリエステル、オキサゾール系水溶性ポリマー(オキサゾール-2-エチル-4,5-ジヒドロホモポリマーなど)、またはこれらの塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩など)などが挙げられる。
【0033】
保護層除去工程では、保護層を水を含む洗浄液に接触させることで保護層を除去してもよい。
【0034】
以上のように、本開示によれば、所定領域の堆積物を除去することで、ハイブリッド接合に適した表面が平坦な素子チップを得ることができる。さらに、本開示によれば、そのような素子チップを備える接合体をハイブリッド接合によって製造することが可能である。
【0035】
以下では、本開示に係る素子チップの製造方法および接合体の製造方法の一例について、図面を参照して具体的に説明する。以下で説明する一例の素子チップの製造方法および接合体の製造方法の工程には、上述した工程を適用できる。以下で説明する一例の素子チップの製造方法および接合体の製造方法の工程は、上述した記載に基づいて変更できる。また、以下で説明する事項を、上記の実施形態に適用してもよい。以下で説明する一例の素子チップの製造方法および接合体の製造方法の工程のうち、本開示に係る素子チップの製造方法および接合体の製造方法に必須ではない工程は省略してもよい。なお、以下で示す図は模式的なものであり、実際の部材の形状や数を正確に反映するものではない。
【0036】
本実施形態の接合体の製造方法は、プラズマエッチングによって基板を個片化することで得られる素子チップを、第2基板に接合することで接合体を製造する方法である。接合体の製造方法は、
図1~
図9に示すように、素子チップ10を準備する素子チップ準備工程と、第2基板50を準備する第2基板準備工程と、素子チップ10を第2基板50に接合する接合工程とを備える。
【0037】
素子チップ準備工程は、本開示に係る素子チップの製造方法に対応し得る工程であって、準備工程と、平坦化工程と、保護層形成工程と、レーザグルービング工程と、堆積物除去工程と、プラズマダイシング工程と、保護層除去工程とを有する。
【0038】
準備工程では、
図1に示すように、第1主面1aおよび第2主面1bを備える第1基板1であって、半導体層である第1層2と、第1層2の第1主面1a側に形成されかつ絶縁体を含む第2層3と、を備える第1基板1を準備する。第1基板1は、複数の素子領域EAと、素子領域EAを画定する分割領域DAと、を備える。本実施形態では、第2層3の上面(最表面)は、SiO
2を含むが、これに限られるものではない。素子領域EAに対応する第2層3には、少なくとも1つの金属電極3aが配置される。分割領域DAに対応する第2層3には、少なくとも1つの金属電極3bが配置される。第2層3の上面からは、例えば、素子領域EAに対応する金属電極3aの一部が突出している。
【0039】
平坦化工程では、
図2に示すように、第1基板1の第1主面1a側を研摩することで、第2層3の上面を平坦化する。本実施形態では、CMPによって第2層3の上面を平坦化するが、これに限られるものではない。
【0040】
保護層形成工程では、
図3に示すように、平坦化された第2層3の上面に保護層4を形成することで、第2層3と保護層4との間に境界6を形成する。本実施形態の保護層4は、水溶性樹脂を含むが、これに限られるものではない。保護層形成工程からは、第1基板1の第2主面1bが支持部材20(例えば、樹脂製の保持シート)に支持された状態で行われてもよい。
【0041】
レーザグルービング工程では、
図4に示すように、分割領域DAに第1主面1a側からレーザ光(図示せず)を照射して、分割領域DAにおける保護層4および第2層3を除去する。それにより、分割領域DAに、保護層4および第2層3を貫通しかつ第1層2に達する溝5を形成すると共に、当該溝5の側壁に、少なくとも境界6を被覆するように、レーザ光の照射により除去された保護層4および第2層3の組成物を含む堆積物Dを堆積させる。本実施形態では、溝5の側壁の略全体にわたって堆積物Dを堆積させる。レーザグルービング工程で形成される溝5は、底面に向かうにつれて(
図4で下方に向かうにつれて)幅狭になるように傾斜した形状を有する。
【0042】
なお、
図4において、境界6の近傍に微小な突起を図示してあるが、これは本開示の技術内容の理解を促すための便宜的なものである。すなわち、そのような微小な突起は、従来の製造方法において保護層4を除去した後に素子チップの表面に結果的に形成されるのであり、境界6の周辺に堆積した堆積物Dの一部が残存して形成されるものと推察される。つまり、微小な突起は、
図4の状態では、堆積物Dの一部をなしており、このように明確に存在するものではないと推察される。
【0043】
堆積物除去工程では、
図5および
図6に示すように、堆積物Dを除去することで、溝5の側壁に境界6を露出させる。堆積物除去工程は、高周波電力を印加可能なステージを備えるプラズマ処理装置30(後述)のステージ35に載置された第1基板1をプラズマに晒すことによりそれぞれ行われ、ステージ35に第1高周波電力が印加された状態で行われる第1除去ステップ(従来のデブリクリーニング工程に対応し得る。)と、第1除去ステップの後、ステージ35に第1高周波電力よりも大きい第2高周波電力が印加された状態で行われる第2除去ステップと、を含む。第1除去ステップは、フッ化炭素と酸素を含む第1原料ガスを供給しながら発生させた第1プラズマにより行われ、第2除去ステップは、フッ化炭素と酸素と希ガス(例えば、Ar)を含む第2原料ガスを供給しながら発生させた第2プラズマにより行われる。第2原料ガスに含まれる希ガスの割合は、第1原料ガスに含まれる希ガスの割合よりも大きい。第2プラズマは、保護層4および第2層3をエッチング可能なプラズマの一例である。
図5および
図6に示すように、堆積物除去工程により、境界6における溝5の幅が拡張される(W1<W2)と共に、境界6における溝5の側面の傾斜角度が小さくなる(θ1>θ2)。
【0044】
プラズマダイシング工程では、
図7に示すように、堆積物除去工程の後、第2主面1bを支持部材20で支持した状態で、溝5をプラズマに晒して第1層2をエッチングすることで、第1基板1を、素子領域EAを備える複数の素子チップ10に分割する。
【0045】
保護層除去工程では、
図8に示すように、プラズマダイシング工程の後、保護層4を除去する。本実施形態の保護層除去工程では、保護層4を水を含む洗浄液(例えば、水)に接触させることで保護層4を除去するが、これに限られるものではない。保護層除去工程では、保護層4の表面に残存する堆積物Dが保護層4と共に除去され得る。
【0046】
第2基板準備工程で準備される第2基板50は、半導体層51と、半導体層51の上面に設けられかつ絶縁体を含む配線層52とを備えてもよい。配線層52の最表面には、絶縁体(例えば、SiO2)および金属電極52aが露出している。
【0047】
接合工程では、
図9に示すように、素子チップ準備工程で準備した素子チップ10の第1主面1a側を、第2基板準備工程で準備した第2基板50に密着させて接合する。このとき、素子チップ10の第1主面1aには数十~数百nmの突起が存在しないため、当該接合が良好に行われ得る。なお、接合工程に先立って、素子チップ10の第1主面1aと、第2基板50の表面とを、それぞれプラズマなどを用いて親水化処理しておくことが好ましい。
【0048】
堆積物除去工程およびプラズマダイシング工程では、
図10に示すプラズマ処理装置30(プラズマエッチング装置30)を用いてもよい。プラズマ処理装置30は、頂部に誘電体窓が設けられ、処理室34を画定するチャンバ31と、チャンバ31の上側に設けられた上部電極としてのアンテナ32と、アンテナ32に電気的に接続された第1高周波電源33と、処理室34の底部側に設けられ、第1基板1が載置される下部電極としてのステージ35と、ステージ35に電気的に接続された第2高周波電源36とを備える。チャンバ31に設けられたガス導入口37は、原料ガス源38に流体的に接続される。チャンバ31に設けられた排気口39は、真空ポンプを含む真空排気部40に流体的に接続される。
【0049】
図10に示すプラズマ処理装置30では、第1基板1をステージ35に載置した後、処理室34を真空排気部40によって減圧すると共に、原料ガス源38から処理室34に原料ガスを供給する。その後、アンテナ32に対して第1高周波電源33から高周波電力を供給し、処理室34にプラズマを発生させて第1基板1に照射する。プラズマ中のラジカルやイオンの物理化学的作用により、溝5の底部に露出している第1層2が除去され得る。なお、ステージ35に対して第2高周波電源36から高周波電力を供給することで、第1基板1に対するラジカルやイオンの衝突速度を制御することが可能である。
【0050】
堆積物除去工程における処理条件は、例えば、以下のとおりである。プロセスガスとして、SF6を5sccm以上、50sccm以下で、C4F8を5sccm以上、50sccm以下で、Arを40sccm以上、500sccm以下で、O2を5sccm以上、50sccm以下で、チャンバ31に供給する。チャンバ31内の圧力は1Pa以上、5Pa以下であり、アンテナ32に印加される高周波電力は1500W以上、5000W以下であり、ステージ35に印加される高周波電力は100W以上、1000W以下である。処理時間は、20秒以上、180秒以下である。なお、この例の処理条件では、フッ素含有ガスとしてSF6とC4F8を用いるが、CF4を用いてもよい。
【0051】
また、堆積物除去工程は、第1除去ステップと第2除去ステップを含んでもよい。第1除去ステップの処理条件は、例えば、以下のとおりである。プロセスガスとして、CF4を50sccm以上、200sccm以下で、O2を50sccm以上、200sccm以下で、チャンバ31に供給する。チャンバ31内の圧力は3Pa以上、8Pa以下であり、アンテナ32に印加される高周波電力は1500W以上、5000W以下であり、ステージ35に印加される高周波電力は20W以上、100W以下である。処理時間は、30秒以上、120秒以下である。第2除去ステップの処理条件は、例えば、以下のとおりである。プロセスガスとして、Arを200sccm以上、400sccm以下で、CF4を30sccm以上、120sccm以下で、O2を15sccm以上、60sccm以下で、チャンバ31に供給する。チャンバ31内の圧力は1Pa以上、5Pa以下であり、アンテナ32に印加される高周波電力は1500W以上、4000W以下であり、ステージ35に印加される高周波電力は150W以上、600W以下である。処理時間は、15秒以上、60秒以下である。
【0052】
プラズマダイシング工程は、保護膜堆積ステップと保護膜除去ステップと基板エッチングステップとを複数回繰り返すことにより行われてもよい。保護膜堆積ステップにおける処理条件は、例えば、以下のとおりである。プロセスガスとして、C4F8を150sccm以上、600sccm以下で、チャンバ31に供給する。チャンバ31内の圧力は8Pa以上、16Pa以下であり、アンテナ32に印加される高周波電力は2000W以上、8000W以下であり、ステージ35に印加される高周波電力は15W以上、80W以下である。処理時間は、1秒以上、5秒以下である。保護膜除去ステップにおける処理条件は、例えば、以下のとおりである。プロセスガスとして、SF6を200sccm以上、800sccm以下で、チャンバ31に供給する。チャンバ31内の圧力は4Pa以上、12Pa以下であり、アンテナ32に印加される高周波電力は2000W以上、8000W以下であり、ステージ35に印加される高周波電力は150W以上、600W以下である。処理時間は、1秒以上、5秒以下である。基板エッチングステップにおける処理条件は、例えば、以下のとおりである。プロセスガスとして、SF6を200sccm以上、800sccm以下で、チャンバ31に供給する。チャンバ31内の圧力は20Pa以上、40Pa以下であり、アンテナ32に印加される高周波電力は2500W以上、10000W以下であり、ステージ35に印加される高周波電力は20W以上、100W以下である。処理時間は、2秒以上、10秒以下である。保護膜堆積ステップ、保護膜除去ステップ、および基板エッチングステップの繰り返し回数は、例えば、20回以上、50回以下である。
【0053】
《付記》
以上の実施形態の記載により、下記の技術が開示される。
(技術1)
第1主面および第2主面を備え、半導体層である第1層と、前記第1層の前記第1主面側に形成されかつ絶縁体を含む第2層と、を備える基板であって、複数の素子領域と、前記素子領域を画定する分割領域と、を備える基板を準備する準備工程と、
前記基板の前記第1主面側を研摩することで、前記第2層の上面を平坦化する平坦化工程と、
平坦化された前記上面に保護層を形成することで、前記第2層と前記保護層との間の境界を形成する保護層形成工程と、
前記分割領域に前記第1主面側からレーザ光を照射して、前記分割領域における前記保護層および前記第2層を除去することで、前記分割領域に、前記保護層および前記第2層を貫通しかつ前記第1層に達する溝を形成すると共に、前記溝の側壁に、少なくとも前記境界を被覆するように、前記レーザ光の照射により除去された前記保護層および前記第2層の組成物を含む堆積物を堆積させるレーザグルービング工程と、
前記堆積物を除去することで、前記側壁に前記境界を露出させる堆積物除去工程と、
前記堆積物除去工程の後、前記第2主面を支持部材で支持した状態で、前記溝をプラズマに晒して前記第1層をエッチングすることで、前記基板を、前記素子領域を備える複数の素子チップに分割するプラズマダイシング工程と、
を備える、素子チップの製造方法。
(技術2)
前記堆積物除去工程は、高周波電力を印加可能なステージを備えるプラズマ処理装置の前記ステージに載置された前記基板をプラズマに晒すことによりそれぞれ行われ、前記ステージに第1高周波電力が印加された状態で行われる第1除去ステップと、前記第1除去ステップの後、前記ステージに第2高周波電力が印加された状態で行われる第2除去ステップと、を含み、
前記第2高周波電力は、前記第1高周波電力よりも大きい、技術1に記載の素子チップの製造方法。
(技術3)
前記第1除去ステップは、フッ化炭素と酸素を含む第1原料ガスを供給しながら発生させた第1プラズマにより行われ、
前記第2除去ステップは、フッ化炭素と酸素と希ガスを含む第2原料ガスを供給しながら発生させた第2プラズマにより行われ、
前記第2原料ガスに含まれる前記希ガスの割合は、前記第1原料ガスに含まれる前記希ガスの割合よりも大きい、技術2に記載の素子チップの製造方法。
(技術4)
前記堆積物除去工程は、前記保護層および前記第2層をエッチング可能なプラズマにより行われ、
前記堆積物除去工程により、前記境界における前記溝の幅が拡張される、技術1~3のいずれか1つに記載の素子チップの製造方法。
(技術5)
前記レーザグルービング工程で形成される前記溝は、底面に向かうにつれて幅狭になるように傾斜した形状を有し、
前記堆積物除去工程により、前記境界における前記溝の側面の傾斜角度が小さくなる、技術1~4のいずれか1つに記載の素子チップの製造方法。
(技術6)
前記保護層は、水溶性樹脂を含む、技術1~5のいずれか1つに記載の素子チップの製造方法。
(技術7)
前記プラズマダイシング工程の後、前記保護層を水を含む洗浄液に接触させることで前記保護層を除去する保護層除去工程をさらに備える、技術6に記載の素子チップの製造方法。
(技術8)
素子チップを準備する素子チップ準備工程と、
第2基板を準備する第2基板準備工程と、
前記素子チップを前記第2基板に接合する接合工程と、
を備え、
前記素子チップ準備工程は、
第1主面および第2主面を備え、半導体層である第1層と、前記第1層の前記第1主面側に形成されかつ絶縁体を含む第2層と、を備える第1基板であって、複数の素子領域と、前記素子領域を画定する分割領域と、を備える第1基板を準備する準備工程と、
前記第1基板の前記第1主面側を研摩することで、前記第2層の上面を平坦化する平坦化工程と、
平坦化された前記上面に保護層を形成することで、前記第2層と前記保護層との間の境界を形成する保護層形成工程と、
前記分割領域に前記第1主面側からレーザ光を照射して、前記分割領域における前記保護層および前記第2層を除去することで、前記分割領域に、前記保護層および前記第2層を貫通しかつ前記第1層に達する溝を形成すると共に、前記溝の側壁に、少なくとも前記境界を被覆するように、前記レーザ光の照射により除去された前記保護層および前記第2層の組成物を含む堆積物を堆積させるレーザグルービング工程と、
前記堆積物を除去することで、前記側壁に前記境界を露出させる堆積物除去工程と、
前記堆積物除去工程の後、前記第2主面を支持部材で支持した状態で、前記溝をプラズマに晒して前記第1層をエッチングすることで、前記第1基板を、前記素子領域を備える複数の前記素子チップに分割するプラズマダイシング工程と、
前記プラズマダイシング工程の後、前記保護層を除去する保護層除去工程と、
を有し、
前記接合工程では、前記素子チップの前記第1主面側を前記第2基板に密着させて接合する、接合体の製造方法。
(技術9)
前記堆積物除去工程は、高周波電力を印加可能なステージを備えるプラズマ処理装置の前記ステージに載置された前記第1基板をプラズマに晒すことによりそれぞれ行われ、前記ステージに第1高周波電力が印加された状態で行われる第1除去ステップと、前記第1除去ステップの後、前記ステージに第2高周波電力が印加された状態で行われる第2除去ステップと、を含み、
前記第2高周波電力は、前記第1高周波電力よりも大きい、技術8に記載の接合体の製造方法。
(技術10)
前記第1除去ステップは、フッ化炭素と酸素を含む第1原料ガスを供給しながら発生させた第1プラズマにより行われ、
前記第2除去ステップは、フッ化炭素と酸素と希ガスを含む第2原料ガスを供給しながら発生させた第2プラズマにより行われ、
前記第2原料ガスに含まれる前記希ガスの割合は、前記第1原料ガスに含まれる前記希ガスの割合よりも大きい、技術9に記載の接合体の製造方法。
(技術11)
前記堆積物除去工程は、前記保護層および前記第2層をエッチング可能なプラズマにより行われ、
前記堆積物除去工程により、前記境界における前記溝の幅が拡張される、技術8~10のいずれか1つに記載の接合体の製造方法。
(技術12)
前記レーザグルービング工程で形成される前記溝は、底面に向かうにつれて幅狭になるように傾斜した形状を有し、
前記堆積物除去工程により、前記境界における前記溝の側面の傾斜角度が小さくなる、技術8~11のいずれか1つに記載の接合体の製造方法。
(技術13)
前記保護層は、水溶性樹脂を含む、技術8~12のいずれか1つに記載の接合体の製造方法。
(技術14)
前記保護層除去工程では、前記保護層を水を含む洗浄液に接触させることで前記保護層を除去する、技術13に記載の接合体の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本開示は、素子チップの製造方法および接合体の製造方法に利用できる。
【符号の説明】
【0055】
1:第1基板
1a:第1主面
1b:第2主面
2:第1層
3:第2層
3a:金属電極
3b:金属電極
4:保護層
5:溝
6:境界
10:素子チップ
20:支持部材
30:プラズマ処理装置
31:チャンバ
32:アンテナ
33:第1高周波電源
34:処理室
35:ステージ
36:第2高周波電源
37:ガス導入口
38:原料ガス源
39:排気口
40:真空排気部
50:第2基板
51:半導体層
52:配線層
52a:金属電極
D:堆積物
DA:分割領域
EA:素子領域
W1,W2:溝の幅
θ1,θ2:溝側面の傾斜角度