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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177897
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】消火用ポンプ
(51)【国際特許分類】
   A62C 25/00 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
A62C25/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096293
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000109945
【氏名又は名称】トーハツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099612
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100064469
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100073450
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】横田 理人
(72)【発明者】
【氏名】小泉 徳生
(57)【要約】
【課題】 操作手順を削減して、簡略化した手順での容易な操作を可能とし、操作に不慣れな方でも適切に操作することができる。
【解決手段】 消火用ポンプ10は、電動モーターにより駆動して消火用水を放水する。この消火用ポンプ10は、ハンドル12Aの操作により開閉するディスチャージバルブ12の開放により消火用水を放水する。消火用ポンプ10は、ハンドル12Aの位置を検出するハンドル位置検出手段42と、このハンドル位置検出手段42により検出されたハンドル12Aの位置に応じて電動モーターの回転を制御する流量調整手段とを備えている。流量調整手段は、ハンドル12Aの操作に連動して電動モーターの回転速度を制御することにより消火用水の水圧を調整して渦巻きポンプから放水される消火用水の流量を制御する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モーターにより駆動して消火用水を放水する消火用ポンプであって、
前記消火用ポンプは、ハンドルの操作により開閉するディスチャージバルブの開放により前記消火用水を放水する渦巻きポンプと、水源から前記消火用水を吸水して前記渦巻きポンプに前記消火用水を供給する真空ポンプとを備え、
前記消火用ポンプは、前記ハンドルの位置を検出するハンドル位置検出手段と、前記ハンドル位置検出手段により検出された前記ハンドルの位置に応じて前記電動モーターの回転を制御する流量調整手段とを更に備え、
前記流量調整手段は、前記ハンドルの操作に連動して前記電動モーターの回転速度を制御することにより前記消火用水の水圧を調整して前記渦巻きポンプから放水される前記消火用水の流量を制御することを特徴とする消火用ポンプ。
【請求項2】
電動モーターにより駆動して消火用水を放水する消火用ポンプであって、
前記消火用ポンプは、ハンドルの操作により開閉するディスチャージバルブの開放により前記消火用水を放水する渦巻きポンプと、真空レバーの操作により水源から前記消火用水の吸水を開始して前記渦巻きポンプに前記消火用水を供給する真空ポンプとを備え、
前記消火用ポンプは、前記真空レバーの位置を検出する真空レバー位置検出手段と、前記真空レバー位置検出手段により検出された前記真空レバーの位置に応じて前記電動モーターの回転速度を制御する回転制御手段とを更に備え、
前記回転制御手段は、前記真空レバーの操作に連動して前記電動モーターの回転速度を前記真空ポンプの動作が最適となる速度に制御することを特徴とする消火用ポンプ。
【請求項3】
電動モーターにより駆動して消火用水を放水する消火用ポンプであって、
前記消火用ポンプは、ハンドルの操作により開閉するディスチャージバルブの開放により前記消火用水を放水する渦巻きポンプと、真空レバーの操作により水源から前記消火用水の吸水を開始して前記渦巻きポンプに前記消火用水を供給する真空ポンプとを備え、
前記消火用ポンプは、前記ハンドルの位置を検出するハンドル位置検出手段と、前記ハンドル位置検出手段により検出された前記ハンドルの位置に応じて前記電動モーターの回転を制御する流量調整手段とを備え、
前記流量調整手段は、前記ハンドルの操作に連動して前記電動モーターの回転速度を制御することにより前記消火用水の水圧を調整して前記渦巻きポンプから放水される前記消火用水の流量を制御し、
前記消火用ポンプは、前記真空レバーの位置を検出する真空レバー位置検出手段と、前記真空レバー位置検出手段により検出された前記真空レバーの位置に応じて前記電動モーターの回転速度を制御する回転制御手段とを更に備え、
前記回転制御手段は、前記真空レバーの操作に連動して前記電動モーターの回転速度を前記真空ポンプの動作が最適となる速度に制御することを特徴とする消火用ポンプ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された消火用ポンプにおいて、前記消火用ポンプ内に残留した前記消火用水の排水を制御する排水バルブが、電源スイッチの操作に連動して電気的に開閉が制御される電磁弁式のチェックバルブであり、前記排水バルブは、電源スイッチがオフ状態の時には開いて排水状態とし、電源スイッチがオン状態の時には閉じて前記消火用水の放水を可能とするように制御されていることを特徴とする消火用ポンプ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された消火用ポンプにおいて、前記電動モーターの回転速度を一時的に上昇させるブースト手段を更に備え、前記ブースト手段は、通常では前記電動モーターの最大回転速度を電気的に規制するリミッターと、前記リミッターによる規制を解除するブーストスイッチとから成っていることを特徴とする消火用ポンプ。
【請求項6】
請求項4に記載された消火用ポンプにおいて、前記電動モーターの回転速度を一時的に上昇させるブースト手段を更に備え、前記ブースト手段は、通常では前記電動モーターの最大回転速度を電気的に規制するリミッターと、前記リミッターによる規制を解除するブーストスイッチとから成っていることを特徴とする消火用ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば消火場所に搬送されて消火用水を放水する可搬式の消火用式ポンプその他の消火用ポンプの改良に関し、特に、始動から放水作業の終了までの工程における操作手順を削減して、簡略化した手順での容易な操作を可能とすることに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の消火用ポンプにおいては、放水用の渦巻きポンプ内に消火用水を吸水させて放水可能な状態とした上で、放水に際しては、ディスチャージバルブをハンドルの手動操作により開いて放水が可能な状態とした後、スロットルダイヤルを回してスロットル開度を開くことによりエンジンの回転速度を上昇させ、適切な放水圧に調整して渦巻きポンプから放水を行わせていた(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
また、その放水の前提となる真空ポンプによる渦巻きポンプへの吸水工程においても、従来は、スロットルダイヤルを吸水位置に操作して真空ポンプの回転速度を上げてから、真空ポンプレバーを操作して渦巻きポンプへの吸水を開始し、吸水完了後は、再度、スロットルダイヤルを最小開度位置(スロットル開度を最も絞った状態にする位置)に戻して、次の放水工程に備えることが必要であった。
【0004】
しかし、このように、従来の吸水工程及び放水工程では、ダイヤルやレバーの操作が多いため、消火用ポンプの操作に不慣れな方にとっては扱いにくいという問題があった。また、その結果、バルブの開閉を失念する等、適切な操作を手順通りに行うことができず、消火用ポンプを正常に作動させることができないために、緊急を要する災害現場において適切な消火活動を行うことができなくなる問題があった。特に、災害現場では混乱が生じ、パニック状態となっているため、少しでも簡略化した工程で、不慣れな方でも簡易に操作できるようにすることが望ましい。
【0005】
また、消火用ポンプでは、このような操作中のみならず、放水作業の終了に伴う運転終了後においても、冬場における凍結の防止や長期保管時の消火用ポンプ内の腐食を防止するため、消火用ポンプ内に残留した消火用水を排水する作業を行う必要がある。この場合、従来は、操作者が、作業終了後に、排水レバーを操作して排水バルブを開けて排水する必要があった。しかし、この作業を失念し消火用ポンプ内に水が残存したままになると、消火用ポンプが破損する等の問題が生じるおそれがあり、特に、消火用ポンプの扱いに不慣れな方の場合には、消火することで手一杯で、作業終了後において排水にまで気が回らなくても致し方ない面もあるため、これを回避することは重要な問題といえる。
【0006】
また、消火用ポンプの中でも、特に消火場所に搬送して使用する可搬式の消火用ポンプは、これまで一般的に、エンジンを駆動源とするエンジン式のものが殆どであった(例えば、特許文献2、3等参照)。これは、エンジン式であれば、ガソリン等の燃料さえあれば、現場において電源等を確保しなくても駆動することができ、また、消火用ポンプの重量を可搬に適した重量に抑えることができることが主な理由であった。
【0007】
しかし、エンジン式の消火用ポンプは、排気を伴う関係で、特に建屋等の屋内や地下鉄構内等の地下構造物のように、換気性を充分に確保することができない場所で使用することには適さず、これらの場所での災害に対応できない場合があった。また、その結果、特に、近年多発している豪雨による地下鉄駅構内の浸水災害に際して、消火用ポンプを利用しての排水作業に対応することもできなかった。更には、エンジン式の消火用ポンプの場合、エンジンのサイクルに伴いホースに脈動が生じ、放水者の手元でホースが揺れることにより、狙った箇所への放水が困難になるとともに、特に長時間にわたる放水作業となる場合には放水者の疲労負担が大きくなる問題があった。
【0008】
これらの問題に対応するためには、可搬式の消火用ポンプにおいて、駆動源として、エンジンではなく、電動モーターを使用することが考えられる。一方で、電動式とした場合には、電源がない箇所での使用に対応するために駆動源としてバッテリーが必要となる。この場合、可搬式の消火用ポンプにおいては、省令により連続運転可能時間と放水流量の規格が定められており、この規格を満たすバッテリーを使用することが前提となる一方で、消火現場への搬送も前提としているため、バッテリーをあまりに重量化させることもできないため、搬送可能な重量に抑えつつ規格を満たす必要最小限の充電容量のバッテリーとすることが必要となる。
【0009】
しかし、実際の消火現場では、現実的には規格に定められた以上の流量で放水して消火に当たるべき場合もあり、このような場合に対応することも必要となる。とりわけ、操作に不慣れな方の場合には、手順通りに放水をしても鎮火しない場合には、焦り等が生じ、適切な対応が困難となるおそれがあるため、消火に不慣れな方でも適切に対応できるようにすることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2014-4293号公報
【特許文献2】特開2020-081719号公報
【特許文献3】実用新案登録第3234575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、上記の問題点に鑑み、始動から放水終了後までの吸水工程や放水工程等の工程における操作手順を削減して、簡略化した手順での容易な操作を可能とすると共に、必要な場合には出力を向上させて、操作に不慣れな方でも適切に操作して的確に消火を行うことができる消火用ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1.ハンドル操作による放水圧の調整)
本発明は、上記の課題を解決するための第1の手段として、電動モーターにより駆動して消火用水を放水する消火用ポンプであって、この消火用ポンプは、ハンドルの操作により開閉するディスチャージバルブの開放により消火用水を放水する渦巻きポンプと、水源から消火用水を吸水して渦巻きポンプに消火用水を供給する真空ポンプとを備え、消火用ポンプは、ハンドルの位置を検出するハンドル位置検出手段と、このハンドル位置検出手段により検出されたハンドルの位置に応じて電動モーターの回転を制御する流量調整手段とを更に備え、この流量調整手段は、ハンドルの操作に連動して電動モーターの回転速度を制御することにより消火用水の水圧を調整して渦巻きポンプから放水される消火用水の流量を制御することを特徴とする消火用ポンプを提供するものである。
【0013】
(2.真空レバーによる電動モーターの回転速度の調整)
本発明は、上記の課題を解決するための第2の手段として、電動モーターにより駆動して消火用水を放水する消火用ポンプであって、この消火用ポンプは、ハンドルの操作により開閉するディスチャージバルブの開放により消火用水を放水する渦巻きポンプと、真空レバーの操作により水源から消火用水の吸水を開始して渦巻きポンプに消火用水を供給する真空ポンプとを備え、消火用ポンプは、真空レバーの位置を検出する真空レバー位置検出手段と、この真空レバー位置検出手段により検出された真空レバーの位置に応じて電動モーターの回転速度を制御する回転制御手段とを更に備え、この回転制御手段は、真空レバーの操作に連動して電動モーターの回転速度を真空ポンプの動作が最適となる速度に制御することを特徴とする消火用ポンプを提供するものである。
【0014】
(3.ハンドル操作による放水圧の調整と真空レバーによる電動モーターの回転速度の調整)
本発明は、上記の課題を解決するための第3の手段として、電動モーターにより駆動して消火用水を放水する消火用ポンプであって、この消火用ポンプは、ハンドルの操作により開閉するディスチャージバルブの開放により消火用水を放水する渦巻きポンプと、真空レバーの操作により水源から消火用水の吸水を開始して渦巻きポンプに消火用水を供給する真空ポンプとを備え、消火用ポンプは、ハンドルの位置を検出するハンドル位置検出手段と、ハンドル位置検出手段により検出されたハンドルの位置に応じて電動モーターの回転を制御する流量調整手段とを備え、この流量調整手段は、ハンドルの操作に連動して電動モーターの回転速度を制御することにより消火用水の水圧を調整して渦巻きポンプから放水される消火用水の流量を制御し、消火用ポンプは、真空レバーの位置を検出する真空レバー位置検出手段と、真空レバー位置検出手段により検出された真空レバーの位置に応じて電動モーターの回転速度を制御する回転制御手段とを更に備え、この回転制御手段は、真空レバーの操作に連動して電動モーターの回転速度を真空ポンプの動作が最適となる速度に制御することを特徴とする消火用ポンプを提供するものである。
【0015】
(4.自動排水)
本発明は、上記の課題を解決するための第4の手段として、上記第1乃至第3のいずれかの解決手段において、消火用ポンプ内に残留した消火用水の排水を制御する排水バルブが、電源スイッチの操作に連動して電気的に開閉が制御される電磁弁式のチェックバルブであり、排水バルブは、電源スイッチがオフ状態の時には開いて排水状態とし、電源スイッチがオン状態の時には閉じて消火用水の放水を可能とするように制御されていることを特徴とする消火用ポンプを提供するものである。
【0016】
(5.ブーストモード)
本発明は、上記の課題を解決するための第5の手段として、上記第1乃至第3のいずれかの解決手段において、電動モーターの回転速度を一時的に上昇させるブースト手段を更に備え、ブースト手段は、通常では電動モーターの最大回転速度を電気的に規制するリミッターと、このリミッターによる規制を解除するブーストスイッチとから成っていることを特徴とする消火用ポンプを提供するものである。
【0017】
本発明は、上記の課題を解決するための第6の手段として、上記第4の解決手段において、電動モーターの回転速度を一時的に上昇させるブースト手段を更に備え、ブースト手段は、通常では電動モーターの最大回転速度を電気的に規制するリミッターと、このリミッターによる規制を解除するブーストスイッチとから成っていることを特徴とする消火用ポンプを提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記のように、消火用ポンプの駆動源として電動モーターを採用しているため、この電動モーターを電気的に制御することが可能となり、ハンドルの位置を検出するハンドル位置検出手段により検出されたハンドルの位置に応じて電動モーターの回転を制御する流量調整手段によって、ハンドルの操作に連動して電動モーターの回転速度を制御することができるため、ハンドル操作のみで放水圧を調整することができるので、放水に必要な操作工程数を削減して、操作に不慣れな方でも、ディスチャージバルブの開閉の失念等を回避して、簡易にかつ適切に放水作業を行うことができると共にディスチャージバルブが全閉状態でありながら高水圧で放水すること等を回避して消火用ポンプの損傷を防止することができる実益がある。
【0019】
また、本発明によれば、上記のように、真空レバーの位置を検出する真空レバー位置検出手段により検出された真空レバーの位置に応じて電動モーターの回転速度を制御する回転制御手段によって、真空レバーの操作に連動して電動モーターの回転速度を真空ポンプの動作が最適となる速度に制御しているため、真空レバーの操作のみで適切に渦巻きポンプへの吸水及び吸水停止を行うことができるので、吸水に必要な操作工程数を削減して、操作に不慣れな方でも、スロットル開度の再調整の失念等を回避して、簡易にかつ適切に吸水作業を行うことができる実益がある。
【0020】
加えて、 本発明によれば、上記のように、消火用ポンプの駆動源として電動モーターを採用しているため、排気が発生せず、屋内や地下等の充分な換気通の確保が困難である箇所でも使用することができ、特に、地下鉄駅構内の浸水災害の際に排水ポンプとして使用することも可能となると同時に、放水時にホースに脈動が生じることもなく狙った箇所に的確に放水することができると共に放水者の疲労が少ないので長時間使用することができる実益がある。
【0021】
同時に、本発明によれば、上記のように、ハンドル操作や真空レバーの操作のみで放水流量や電動モーターの回転速度を調整できるため、別途、スロットルダイヤルを設ける必要がなく、部品点数の削減による消火用ポンプの軽量化を図ることができ、特に搬送式の消火用ポンプの軽量化にも資することができる実益がある。
【0022】
また、本発明によれば、上記のように、消火用ポンプ内に残留した消火用水の排水を制御する排水バルブを電源スイッチの操作に連動して電気的に開閉が制御される電磁弁式のチェックバルブとして、排水バルブは、電源スイッチがオフ状態の時には開いて排水状態とし、電源スイッチがオン状態の時には閉じて消火用水の放水を可能とするように制御されているため、排水作業の失念により消火用ポンプ内に水が残留することを確実に防止して消火用ポンプの故障等を回避することができ、消火用ポンプの扱いに不慣れな方が扱っても問題が生じることがない実益がある。
【0023】
更に、本発明によれば、上記のように、電動モーターの回転速度を一時的に上昇させるブースト手段を備え、このブースト手段は、通常では電動モーターの最大回転速度をリミッターにより電気的に規制しつつ、必要な場合には、ブーストスイッチによりリミッターによる規制を解除して、出力を向上させることができるため、実際の消火現場において、バッテリーの消費を抑制しつつ、なかなか鎮火しない場合等、必要な場合には出力を向上させて適切に消火を行うことができ、消火に不慣れな方でも的確に消火活動を行うことができる実益がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の消火用ポンプの斜視図である。
図2】本発明に用いられる消火用ポンプの内部構造の斜視図である。
図3】本発明に用いられるハンドル位置検出手段を備えたディスチャージバルブのハンドルの拡大側面図である。
図4】本発明に用いられるディスチャージバルブのハンドル位置に応じたハンドル位置検出手段の作動状態を示すディスチャージバルブのハンドルの側面図である。
図5】本発明に用いられる真空ポンプへの動力伝達機構の概略側面図である。
図6】本発明に用いられる真空レバー位置検出手段の作動状態を示す図である。
図7】本発明の消火用ポンプに適用することができるバッテリーユニットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(1.消火用ポンプ)
本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明すると、図1は本発明の消火用ポンプ10を示し、図示の実施の形態では、この消火用ポンプ10は、消火用水を放水する搬送可能な可搬式の消火用式ポンプ10であることが示されている。この実施の形態における消火用ポンプ10は、ワンボックスカーや消防車等の車両に積載されて災害現場に運送された後、車両から降ろして作業者の人力によって消火場所に搬送されて、消火活動に使用される。また、消防士が扱うものとしてだけではなく、例えば、消防団や集会所等の公共の場所に事前に設置しておいて、災害発生の際に消防士以外の人の消火活動の用に使用することもできる。但し、本発明の消火用ポンプ10は、必ずしも搬送可能な形式に限られるものではなく、後述する電動モーター16により駆動するものであれば、車両に搭載されたポンプや固定的に設置されたポンプとすることもできる。
【0026】
この消火用ポンプ10は、図2に示すように、本発明においては、エンジンではなく、電動モーター16によって駆動する。具体的には、消火用ポンプ10は、図2に示すように、基台18と、この基台18に搭載される電動モーターー16と、この電動モーター16に接続されて電動モーター16により駆動して消火用水を放水する渦巻きポンプ20と、この渦巻きポンプ20内の空気を排出して消火用水の水源から消火用水を吸い上げて渦巻きポンプ20に消火用水を供給する真空ポンプ22と、基台18のコントローラーベース18B上に設置され電動モータ16の駆動を制御するコントローラー24とを備えている。なお、基台18は、図1に示すように、フレーム26に積載されて、周囲をカバー28で覆われる。
【0027】
この場合、図示の実施の形態における可搬式の消火用ポンプ10にあっては、電動モーター16の動力源として、図7に示すように、消火用ポンプ10とは別体に形成された搬送可能なバッテリーユニット14を使用することができる。これらの消火用ポンプ10とバッテリーユニット14は、それぞれ消火場所に搬送されて、現場において、図示しない接続ケーブルにより相互に電気的に接続されて使用される。すなわち、図示の実施の形態では、本発明の消火用ポンプ10と、バッテリーユニット14と、これらの消火用ポンプ10とバッテリーユニット14とに着脱自在に接続される図示しない接続ケーブルの3つに分割されて消火場所まで搬送される。
【0028】
この接続ケーブルは、その両端がそれぞれ、図示しない防水性を有するカプラによって漏電を防止しながら、消火用ポンプ10とバッテリーユニット14とに着脱自在に接続される。この接続ケーブルにより、消火用ポンプ10とバッテリーユニット14との間で電力の供給を行うことができると同時に、制御のための信号の送受信をすることができ、電動モーター16のコントローラー24と図示しないバッテリーのコントローラーとの間で制御信号を送受信して精度の高い電気的制御を行い的確な放水を実現することができる。
【0029】
このように、可搬式の消防用ポンプ10において、駆動源としてエンジンではなく、電動モーター16の搭載を実現した結果、排気が発生しないため、屋内や地下等の充分な換気通の確保が困難である箇所でも使用することができ、特に、地下鉄駅構内の浸水災害の際に排水ポンプとして使用することも可能となると同時に、放水時にホースに脈動が生じることもなく狙った箇所に的確に放水することができると共に放水者の疲労が少ないので長時間使用することができる。
【0030】
なお、図示の実施の形態では、可搬式の消火用ポンプ10における電動モーター16の動力源(電源)として、図6に示すバッテリーユニット14を使用したが、電動モーター16の動力源は、必ずしも、このバッテリーユニット14に限定されるものではなく、消防車等に搭載された車載バッテリーやコンセント等を使用することもできる。
【0031】
(2.渦巻きポンプ)
渦巻きポンプ20としては、吐出圧力が高く、小型化に適している案内羽根付きのタービンポンプを使用することが望ましい。この渦巻きポンプ20であるタービンポンプは、図2に示すように、電動モーター16の回転軸に接続され、電動モーター16の駆動によって内部の案内羽根が回転して、ディスチャージバルブ12の開放により、図示しない放水ホースに接続される吐出口12Bから消火用水を放水することができる。
【0032】
このディスチャージバルブ12は、特に図3及び図4に示すように、ハンドル12Aの操作により開閉する。具体的には、ハンドル12Aは、図4(A)に示すように、ディスチャージバルブ12内の流路における放水方向(水の進行方向である図4の右斜め上方向)と直交する位置に配置されることによりディスチャージバルブ12の内部の弁体を流路を塞ぐ方向に向けて吐出口12Bを全閉とする。また、ハンドル12を、この図4(A)に示す全閉位置から図4(B)に示すようにディスチャージバルブ12内の流路における放水方向と平行とする方向に変位させることにより、内部の弁体が徐々に流路を開放し、図4(C)に示すように放水方向と平行に位置させることにより吐出口12Bが全開となる。すなわち、ハンドル12Aの位置(向き)と、内部の弁体の開度が対応しており、このハンドル12Aの位置は弁体の開度を示すことになる。
【0033】
(3.真空ポンプ)
真空ポンプ22は、図2及び図5に示すように、電動モーター16の回転軸に接続され電動モーター16により駆動するドライブプーリー30の回転により、ドライブベルト32を介して、真空ポンプ22のシャフトに接続されたドリブンプーリー34に動力が伝達されて駆動する。この場合、渦巻きポンプ20内に呼び水として消火用水を供給するための真空ポンプ22は、図5に示すように、この電動モーター16の駆動による動力を真空ポンプ22に伝達し又は遮断するクラッチ機構36を備えていえる。
【0034】
このクラッチ機構36は、具体的には、図5に示すように、テンションプーリー38と、このテンションプーリー38を変位させる真空レバー40とから成り、消火用水の水源からの吸水時にはこの真空レバー40を引いて内部の図示しないワイヤーを引っ張ることによりテンションプーリー38をドライブベルト32に押しつけてドライブベルト32にテンションを与えて、電動モーター16によるドライブプーリー30からの動力がドライブベルト32を介してドリブンプーリー34に伝達され、これにより真空ポンプ22は回転を開始する。一方、吸水完了後は、真空レバー40を押して内部の図示しないワイヤーを押し込むことにより、テンションプーリー38がドライブベルト32から離反しドライブベルト32に加わったテンションは解除され、電動モーター16によるドライブプーリー30の駆動はドリブンプーリー34には伝達されず、真空ポンプ22は作動を停止する。
【0035】
(4.ハンドル位置検出手段及び流量調整手段)
上記の構成を有する本発明の消火用ポンプ10は、特に図3及び図4に示すように、ハンドル12Aの位置を検出するハンドル位置検出手段42と、このハンドル位置検出手段42により検出されたハンドル12Aの位置に応じて電動モーター16の回転を制御する流量調整手段44とを更に備えている。
【0036】
このハンドル位置検出手段42は、図示の実施の形態では、図3及び図4に示すように、ハンドル12Aの回転軸付近においてハンドル12Aに一体に設けられハンドル12Aと共に変位する略二等辺三角形状を有する接点部46と、この接点部46と接触した場合に接点部46と接触していることを示す信号をコントローラー24に送信するスイッチ48とから成っている。これらのスイッチ48は、より具体的には、図4(A)に示すようにディスチャージバルブ12のハンドル12Aの全閉位置に対応して設けられた第1のスイッチ48aと、図4(B)に示すようにディスチャージバルブ12のハンドル12Aの半開位置に対応して設けられた第2のスイッチ48bと、図4(C)に示すようにディスチャージバルブ12のハンドル12Aの全開位置に対応して設けられた第3のスイッチ48aの3つのスイッチ48から成っている。
【0037】
一方、流量調整手段44は、このハンドル12Aの操作に連動して電動モーター16の回転速度を制御することにより消火用水の水圧を調整して渦巻きポンプ20から放水される消火用水の流量を制御する。具体的には、流量調整手段44は、電動モーター16と電気的に接続されたコントローラー24内の制御回路として設けられ、ハンドル12Aが図4(A)に示す全閉位置にあるときは、コントローラー24が第1のスイッチ48aから信号を受けてディスチャージバルブ12が全閉位置にあると判断してハンドル12Aの全閉位置に連動して電動モーター16の回転を停止するように制御し、ハンドル12Aが図4(B)に示す半開位置にあるときは、コントローラー24が第2のスイッチ48bから信号を受けてディスチャージバルブ12が半開位置にあると判断して電動モーター16を半開状態に適した低速度で回転するように制御し、ハンドル12Aが図4(C)に示す全開位置にあるときは、コントローラー24が第3のスイッチ48cから信号を受けてディスチャージバルブ12が全開位置にあると判断して電動モーター16を全開状態に適した高速度(最高速)で回転するように制御して高い水圧で放水することができる。
【0038】
これにより、従来の消火用ポンプでは、放水するためには、ディスチャージバルブ12をハンドル12Aの操作によって全開状態とした後、スロットルダイヤルを回転させて渦巻きポンプ20の回転速度を調整して放水する、という2段階の作業が必要であり、一方、放水を停止するためにも、スロットルダイヤルを逆回転させて渦巻きポンプ20の回転を停止させた後、ディスチャージバルブ12をハンドル12Aの操作によって全閉状態とする、という2段階の作業が必要であったところ、本発明においては、ハンドル12Aの操作と連動して電動モーター16の回転速度を制御しているため、ハンドル12Aの操作という一つの作業のみで、ディスチャージバルブの開閉と渦巻きポンプの回転速度の調整という2つの工程を自動的に行うことができ、放水及び放水停止のいずれの作業をも簡単に行うことができる。
【0039】
このように、本発明では、ハンドル12Aの操作のみで放水圧を調整することができるので、放水に必要な操作工程数を削減して、操作に不慣れな方でも、ディスチャージバルブ12の開閉の失念等を回避して、簡易にかつ適切に放水作業を行うことができると共にディスチャージバルブ12が全閉状態でありながら高水圧で放水すること等を回避して消火用ポンプ10の損傷を防止することができる。
【0040】
なお、図示の実施の形態では、ハンドル位置検出手段42として、スイッチ48を使用したが、必ずしもスイッチ48に限定されるものではなく、スイッチ48以外の機械的センサーや、赤外線センサー等の電気的センサーを使用することもできる。また、これにより、図示の実施の形態では、全閉、半開、全開の3段階の段階的な調整としたが、ハンドル12Aの位置に連続的に対応して電動モーター16の回転速度を制御することもできる。
【0041】
また、本発明では、ハンドル12Aの操作のみで放水流量や放水圧、電動モーター16の回転速度を調整できるため、別途、スロットルダイヤルを設ける必要がなく、部品点数の削減による消火用ポンプ10の軽量化を図ることができ、特に搬送式の消火用ポンプ10の軽量化にも資することができる。
【0042】
(5.真空レバー位置検出手段及び回転制御手段)
また、本発明の消火用ポンプ10は、図5及び図6に示すように、真空レバー40の位置を検出する真空レバー位置検出手段50と、この真空レバー位置検出手段50により検出された真空レバー40の位置に応じて電動モーター16の回転速度を制御する回転制御手段52とを更に備えている。
【0043】
真空レバー位置検出手段50は、具体的には、図5及び図6に示すように、ブラケット53により固定して設置されたスイッチ54と、真空レバー40のレバー杆56の下方に設けられ真空レバー40と共に変位してスイッチ54に対して進退する移動子58とから成っている。この移動子58は、図6(A)に示す真空レバー40が押し込まれた状態から、図6(B)に示すように、真空レバー40を引き上げると、真空レバー40と共に同じ方向に引き上げられ、上方に位置するスイッチ54に向かって進出し、スイッチ54と接触することができる。そして、スイッチ54は、図6(B)に示すように、この移動子58と接触した場合に移動子58と接触していることを示す信号をコントローラー24に送信する。
【0044】
一方、回転制御手段52は、この真空レバー40の操作に連動して電動モーター16の回転速度を真空ポンプ22の動作が最適となる速度に制御する。具体的には、回転制御手段52は、電動モーター16と電気的に接続されたコントローラー24内の制御回路として設けられ、真空レバー40が図6(A)に示す押し込まれた状態(すなわち、テンションプーリー38がテンションベルト32から離反している状態)では、スイッチ54は移動子58と接触せず、何らの電気信号も受信することなく、電動モーター16の回転を停止させる。一方、真空レバー40が図6(B)に示す引き上げられた状態(すなわち、テンションプーリー38がテンションベルト32に押しつけられている状態)では、スイッチ54に向かって変位した移動子58と接触することによりスイッチ54から信号を受信して、テンションプーリー38がテンションベルト32に押しつけられている状態であると判断して電動モーター16を吸水に必要な速度で回転するように制御して、電動モーター16からの動力を真空ポンプ22に伝達し、吸水を開始することができる。そして、吸水作業が完了した後は、再び、図6(A)に示すように真空レバー40を押し下げ、移動子58がスイッチ54から離反し、回転制御手段52が信号を受信しなくなると、回転制御手段52により、この真空レバー40の変位に連動して駆動力の伝達が遮断され、電動モーター16は回転を停止する。
【0045】
これにより、従来の消火用ポンプでは、吸水するためには、スロットルダイヤルを回転させて電動モーター16の回転速度を上げてから真空レバー40を引いて動力を伝達させる、という2段階の作業が必要であり、一方、吸水を停止するためにも、真空レバー40を押して動力の伝達を遮断した後、スロットルダイヤルを逆回転させて電動モーター16の回転を停止させる、という2段階の作業が必要であったところ、本発明においては、真空レバー40の操作と連動して電動モーター16の回転速度を制御しているため、真空レバー40の操作という一つの作業のみで、電動モーター16の回転速度の調整と動力の伝達という2つの工程を自動的に行うことができ、吸水及び吸水停止のいずれの作業をも簡単に行うことができる。
【0046】
このように、本発明では、真空レバー40の操作のみで適切に渦巻きポンプへの吸水及び吸水停止を行うことができるので、吸水に必要な操作工程数を削減して、操作に不慣れな方でも、スロットル開度の再調整の失念等を回避して、簡易にかつ適切に吸水作業を行うことができる。
【0047】
なお、図示の実施の形態では、真空レバー位置検出手段50として、スイッチ54を使用したが、必ずしもスイッチ54に限定されるものではなく、スイッチ54以外の機械的センサーや赤外線センサー等の電気的センサーを使用することもできる。例えば、図示の実施の形態では、移動子58を接点部として使用してスイッチ54に接触させるマイクロスイッチの形態であるのが示されているが、必ずしも接触させる必要はなく、スイッチ54の代わりに、移動子58が接近したことを検知する近接センサーを使用することもでき、移動子58が近接センサーに所定の距離以下で近づくとコントローラー24の回転制御手段52に信号を送信し、所定の距離以上に離れると信号を発しないことで、電動モーター16の回転を制御することができる。この近接センサーを使用した場合には、非接触で真空レバー40の位置を検出することができるため、各部の摩耗や損傷を低減することができる。
【0048】
また、本発明では、真空レバー40の操作のみで電動モーター16の回転を制御することができるため、この意味においても、別途、スロットルダイヤルを設ける必要がなく、部品点数の削減による消火用ポンプ10の軽量化を図ることができ、特に搬送式の消火用ポンプ10の軽量化にも資することができる。
【0049】
(6.自動排水)
加えて、本発明の消火用ポンプ10では、消火用ポンプ10内に残留した消火用水の排水を制御する図示しない排水バルブとして、電磁弁式のチェックバルブを使用する。この電磁弁式のチェックバルブである排水バルブは、図1に示すコントロールパネル60に設けられた電源スイッチ62の操作に連動して電気的に開閉が制御される。
【0050】
具体的には、排水バルブは、電源スイッチ62がオフ状態(電源が投入されていない状態)の時には開いて排水状態とし、電源スイッチ62がオン状態(電源が投入されている状態)の時には閉じて消火用水の放水を可能とするように制御されている。この制御は、コントローラー24においてプログラミング設定することができる。
【0051】
これにより、放水作業の終了後に、排水作業の失念により消火用ポンプ10内に水が残留することを確実に防止して消火用ポンプ10の故障等を回避することができ、消火用ポンプ10の扱いに不慣れな方が扱っても問題が生じることがない。
【0052】
なお、この排水バルブに限らず、消火用ポンプ10内における流体の流路を開閉する各種のチェックバルブ(例えば、真空ポンプ22の吸水に使用される逆止弁)として、電気的に開閉が制御される電磁弁式のチェックバルブを使用すると、消火用ポンプ10が横倒しになった場合であっても、電磁式のチェックバルブの開閉を電気的に制御して適切に開閉させることができるため、機械式のチェックバルブと異なり、消火用ポンプ10が横倒しになった転倒状態を含め、消火用ポンプ10の全姿勢での放水に対応することができ、放水作業中に消火用ポンプ10が転倒等しても消火用ポンプ10を設置し直す必要がなくなり、至急を要する災害現場において消火用ポンプ10の姿勢への対応に配慮をすることなく、迅速にかつ適切に対応することができる。ただし、必ずしもすべてのバルブを電磁式とする必要はなく、一部、従来の消火用ポンプと同様に、機械式のチェックバルブを使用することを排除するものではない。
【0053】
(7.ブースト手段)
加えて、本発明の消火用ポンプ10では、更に、電動モーター16の回転速度を一時的に上昇させる図示しないブースト手段を備えている。このブースト手段は、コントローラー24において制御回路として設定され、具体的には、通常では電動モーター16の最大回転速度を電気的に規制するリミッターと、このリミッターによる規制を解除する図示しないブーストスイッチとから成っている。
【0054】
従って、電動モーター16は、通常時では、ディスチャージバルブ12を全開にしてフルスロットルの状態にしても、予め設定された所定の回転速度以上には回転しない。一方で、消化能力を上げる必要が生じた際等には、ブーストスイッチを押すことで、リミッターにより規制を解除して、電動モーター16本来の最大出力で渦巻きポンプ20を回転させることができる。このため、電動モーター16の性能としては、省令で定められた規格以上の出力をすることができるものを使用することが望ましい。
【0055】
これにより、実際の消火現場において、バッテリーの消費を抑制しつつ、なかなか鎮火しない場合等、必要な場合には出力を向上させて適切に消火を行うことができ、消火に不慣れな方でも的確に消火活動を行うことができる。
【0056】
(8.その他の実施の形態)
なお、消火用ポンプ10には、図1に示すように、消火用ポンプ10の移動を可能とするキャスター64が設けることが望ましい。これにより、キャスター64の回転で消火用ポンプ10を移動させることができ、搬送性を高めることができる。
【0057】
また、消火用ポンプ10には、図1に示すように、消火用ポンプ10を移動させる際に把持することができるキャリングハンドル66を取り付けることが望ましい。これにより、消火用ポンプ10は、1人での搬送がより一層容易となり、特にキャスター64と組み合わせて使用することにより、キャリングハンドル66の操作によって消火用ポンプ10を傾けてキャスター64のみを接地させてキャスター64の回転によって搬送することにより、搬送荷重を軽減して搬送性を向上させることができると共に、消火用ポンプ10の方向転換も簡易に行うことができる。
【0058】
この場合、このキャリングハンドル66は、消火用ポンプ10に着脱自在に取り付ける。これにより、キャリングハンドル66は、搬送時には消火用ポンプ10に取り付けて簡易に操作することができる一方、放水時には消火用ポンプ10から取り外すことにより、キャリングハンドル66が消火用ポンプ10の操作や放水作業の妨げとなることがなく消火活動を適切に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、災害現場に搬送されて消火に使用される可搬式の消火用ポンプを初めとして、電動モーターを搭載した各種の消火用ポンプとして広く適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
10 消火用ポンプ
12 ディスチャージバルブ
12A ディスチャージバルブのハンドル
12B ディスチャージバルブの吐出口
14 バッテリーユニット
16 電動モーター
18 基台
20 渦巻きポンプ
22 真空ポンプ
24 コントローラー
26 フレーム
28 カバー
30 ドライブプーリー
32 ドライブベルト
34 ドリブンプーリー
36 クラッチ機構
38 テンションプーリー
40 真空レバー
42 ハンドル位置検出手段
44 流量調整手段
46 接点部
48 スイッチ
48a 第1のスイッチ
48b 第2のスイッチ
48c 第3のスイッチ
50 真空レバー位置検出手段
52 回転制御手段
53 ステー
54 スイッチ
56 レバー杆
58 移動子
60 コントロールパネル
62 電源スイッチ
64 キャスター
66 キャリングハンドル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7