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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177902
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】半導体モジュール、および、放熱板
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20241217BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
H05K7/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096298
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 真行
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA02
5E322EA11
5E322FA04
5F136BC03
5F136DA27
5F136FA23
5F136FA88
(57)【要約】
【課題】放熱性を向上することの可能な半導体モジュールを提供する。
【解決手段】半導体モジュール1は放熱板20と半導体素子10を備える。放熱板20は、熱伝導率に異方性のある材料を含んで形成される第1放熱部21および第2放熱部22を有する。第1放熱部21は、放熱板20の厚み方向において半導体素子10と対向する位置を含んで設けられ、放熱板20の厚み方向に平行な任意の第1仮想面の面内方向に高熱伝導性を有する。第2放熱部22は、第1放熱部21に対し第1仮想面の面内方向に平行且つ放熱板20の厚み方向に垂直な方向に接続され、放熱板20の厚み方向に垂直な第2仮想面の面内方向に高熱伝導性を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の放熱板(20)と、前記放熱板の厚み方向に設けられて通電により発熱する半導体素子(10)とを備える半導体モジュールにおいて、
前記放熱板は、熱伝導率に異方性のある材料を含んで形成される第1放熱部(21)および第2放熱部(22)を有し、
前記第1放熱部は、前記厚み方向において前記半導体素子と対向する位置を含んで設けられ、前記厚み方向に平行な任意の第1仮想面の面内方向に高熱伝導性を有し、
前記第2放熱部は、前記第1放熱部に対し前記第1仮想面の面内方向に平行且つ前記厚み方向に垂直な方向に接続され、前記厚み方向に垂直な第2仮想面の面内方向に高熱伝導性を有する、半導体モジュール。
【請求項2】
前記第2放熱部は、前記第1放熱部のうち前記半導体素子と対向する位置に対し前記第1仮想面の面内方向に平行且つ前記放熱板の厚み方向に垂直な方向の部位に接続されると共に、前記第1放熱部のうち前記半導体素子と対向する位置に対し前記第1仮想面の面内方向に垂直な方向に延びる部位に対しても接続されている、請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記放熱板は、第3放熱部(23)をさらに有し、
前記第3放熱部は、前記第2放熱部に対し前記第2仮想面の面内方向に平行な任意の方向に接続され、前記第2放熱部に対し前記第3放熱部が接続された方向に垂直でなく且つ前記厚み方向に平行な第3仮想面の面内方向に高熱伝導性を有する、請求項1または2に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記第3仮想面は、前記第2放熱部に対し前記第3放熱部が接続された方向に平行、且つ、前記厚み方向に平行である、請求項3に記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記第1仮想面と前記第3仮想面とは、前記第1放熱部と前記第2放熱部と前記第3放熱部とが並ぶ方向に平行である、請求項3に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記放熱板は、前記厚み方向を向く面または前記放熱板のうち前記厚み方向の中間位置に設けられる金属板(50)をさらに有する、請求項1または2に記載の半導体モジュール。
【請求項7】
前記放熱板は、前記厚み方向を向く面または前記放熱板のうち前記厚み方向の中間位置に設けられる板状の絶縁体(51、52)をさらに有する、請求項1または2に記載の半導体モジュール。
【請求項8】
前記放熱板は、前記厚み方向を向く面および前記厚み方向に垂直な方向を向く面を覆う金属板をさらに有する、請求項1または2に記載の半導体モジュール。
【請求項9】
前記放熱板は、前記厚み方向を向く面に設けられた金属めっき層(53)をさらに有する、請求項1または2に記載の半導体モジュール。
【請求項10】
半導体モジュールに用いられる半導体素子(10)が発する熱を放熱させる板状の放熱板において、
前記半導体素子は、前記放熱板の厚み方向に設けられ、
前記放熱板は、熱伝導率に異方性のある材料を含んで形成される第1放熱部(21)および第2放熱部(22)を有し、
前記第1放熱部は、前記厚み方向において前記半導体素子と対向する位置を含んで設けられ、前記厚み方向に平行な任意の第1仮想面の面内方向に高熱伝導性を有し、
前記第2放熱部は、前記第1放熱部に対し前記第1仮想面の面内方向に平行且つ前記厚み方向に垂直な方向に接続され、前記厚み方向に垂直な第2仮想面の面内方向に高熱伝導性を有する、放熱板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体モジュール、および、それに用いられる放熱板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の半導体モジュールは、半導体素子と、その半導体素子の発する熱を放熱させる放熱板を備えている。なお、特許文献1では、放熱板はヒートスプレッダと呼ばれている。特許文献1の放熱板は、熱伝導率に異方性のある材料であるグラファイトにより形成された第1ヒートスプレッダと第2ヒートスプレッダを有し、厚み方向から視て四角形状に形成されている。第1ヒートスプレッダは、放熱板の板厚方向に平行な任意の仮想面の面内方向に高熱伝導性を有している。第2ヒートスプレッダは、第1ヒートスプレッダに対し前記任意の仮想面に垂直な方向に接続され、前記任意の仮想面に垂直な別の仮想面の面内方向に高熱伝導性を有している。半導体素子は、第1ヒートスプレッダと第2ヒートスプレッダの両方に重なるように配置されている。これにより、半導体素子から発する熱は、第1ヒートスプレッダと第2ヒートスプレッダを経由して放熱板内に広がり、放熱板のうち半導体素子とは反対側の面から放熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-100401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の半導体モジュールは、第1ヒートスプレッダと第2ヒートスプレッダの熱伝導率の異方性と、それらの配置により、半導体素子から発する熱が、四角形状の放熱板のうち四隅の部位に伝達されにくい構成となっている。そのため、この半導体モジュールは、放熱板の全領域を有効に活用できていないことから、改善の余地がある。
【0005】
本開示は上記点に鑑みて、放熱性を向上することの可能な半導体モジュール、および、放熱板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの観点によると、半導体モジュールは、板状の放熱板(20)と、放熱板の厚み方向に設けられて通電により発熱する半導体素子(10)とを備える。放熱板は、熱伝導率に異方性のある材料を含んで形成される第1放熱部(21)および第2放熱部(22)を有する。第1放熱部は、放熱板の厚み方向において半導体素子と対向する位置を含んで設けられ、放熱板の厚み方向に平行な任意の第1仮想面の面内方向に高熱伝導性を有する。第2放熱部は、第1放熱部に対し第1仮想面の面内方向に平行且つ放熱板の厚み方向に垂直な方向に接続され、放熱板の厚み方向に垂直な第2仮想面の面内方向に高熱伝導性を有する。
【0007】
これによれば、半導体素子から第1放熱部に伝わる熱は、第1放熱部のうち半導体素子と対向する位置において第1仮想面の面内方向に広がる。そのため、半導体素子から第1放熱部に伝わる熱の一部が第1放熱部のうち半導体素子とは反対側の面から放熱され、残りの一部が第2放熱部に伝わる。第2放熱部に伝わった熱は、第2放熱部にて放熱板の厚み方向に垂直な第2仮想面の面内方向に広がる。したがって、その熱は、第2放熱部内に広がりつつ、第2放熱部から第1放熱部のうち半導体素子に対向する位置とは別の位置に伝わる。第2放熱部から第1放熱部に伝わった熱は、第1放熱部にて第1仮想面の面内方向に広がりつつ、第1放熱部のうち半導体素子とは反対側の面から放熱される。このように、第1放熱部の外側に熱の方向転換部として機能する第2放熱部を設けることで、半導体素子が発する熱を放熱板の略全領域に広げ、放熱板の厚み方向へ放熱することが可能となる。したがって、この半導体モジュールは、放熱板が放熱面として機能する面積を拡大し、放熱板の放熱性を向上できる。
【0008】
なお、本開示において「垂直」とは、例えば製造公差など、実質的に垂直な状態を含むものであり、「平行」とは、例えば製造公差など、実質的に平行な状態を含むものである。また、本開示において「放熱部が所定の仮想面の面内方向に高熱伝導性を有する」とは、放熱部において、所定の仮想面の面内方向の熱伝導率が、その所定の仮想面に垂直な方向の熱伝導率よりも大きいことを意味するものである。なお、放熱板は、第1放熱部および第2放熱部を少なくとも有していればよく、それ以外の放熱部を有していてもよい。
【0009】
本開示の別の観点は、半導体モジュールに用いられる半導体素子(10)が発する熱を放熱させる板状の放熱板に関する。半導体素子は、放熱板の厚み方向に設けられる。放熱板は、熱伝導率に異方性のある材料を含んで形成される第1放熱部(21)および第2放熱部(22)を有する。第1放熱部は、厚み方向において半導体素子と対向する位置を含んで設けられ、厚み方向に平行な任意の第1仮想面の面内方向に高熱伝導性を有する。第2放熱部は、第1放熱部に対し第1仮想面の面内方向に平行且つ厚み方向に垂直な方向に接続され、厚み方向に垂直な第2仮想面の面内方向に高熱伝導性を有する。
【0010】
これによれば、別の観点による放熱板も、上記1つの観点で説明したように、半導体素子が発する熱を放熱板の略全領域に広げ、放熱板の厚み方向へ放熱することが可能となる。したがって、この放熱板を用いた半導体モジュールは、放熱性を向上できる。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る半導体モジュールおよび冷却器の斜視図である。
図2図1のII方向矢視における半導体モジュールの平面図である。
図3】グラファイトの分子構造を示す模式図である。
図4】第1比較例の半導体モジュールの平面図である。
図5】第1比較例の半導体モジュールにおいて半導体素子の発熱時の熱の伝わり方を説明した説明図である。
図6】第2比較例の半導体モジュールにおいて半導体素子の発熱時の熱の伝わり方を説明した説明図である。
図7】第2実施形態に係る半導体モジュールの斜視図である。
図8図7のVIII方向矢視における半導体モジュールの平面図である。
図9】第3実施形態に係る半導体モジュールの斜視図である。
図10図9のX方向矢視における半導体モジュールの平面図である。
図11】第4実施形態に係る半導体モジュールの平面図である。
図12】第5実施形態に係る半導体モジュールの平面図である。
図13】第6実施形態に係る半導体モジュールの平面図である。
図14】第7実施形態に係る半導体モジュールの平面図である。
図15】第8実施形態に係る半導体モジュールの平面図である。
図16】第9実施形態に係る半導体モジュールの斜視図である。
図17】第10実施形態に係る半導体モジュールの斜視図である。
図18】第11実施形態に係る半導体モジュールの斜視図である。
図19】第12実施形態に係る半導体モジュールの斜視図である。
図20】第13実施形態に係る半導体モジュールの平面図である。
図21】第14実施形態に係る半導体モジュールの平面図である。
図22】第15実施形態に係る半導体モジュールの斜視図である。
図23】第15実施形態に係る半導体モジュールの平面視において半導体素子の発熱時の温度分布を解析した図である。
図24図23のXXIV―XXIV線に沿った断面視において半導体素子の発熱時の温度分布を解析した図である。
図25】第3比較例の半導体モジュールの斜視図である。
図26】第3比較例の半導体モジュールの平面視において半導体素子の発熱時の温度分布を解析した図である。
図27図26のXXVII―XXVII線に沿った断面視において半導体素子の発熱時の温度分布を解析した図である。
図28】第16実施形態に係る半導体モジュールの斜視図である。
図29】第17実施形態に係る半導体モジュールにおいて放熱板の厚み方向に平行な断面図である。
図30】第18実施形態に係る半導体モジュールの斜視図である。
図31】第18実施形態に係る半導体モジュールにおいて放熱板の厚み方向に平行な断面図である。
図32】第19実施形態に係る半導体モジュールにおいて放熱板の厚み方向に平行な断面図である。
図33】第20実施形態に係る半導体モジュールおよび冷却器の斜視図である。
図34図33のXXXIV方向矢視における半導体モジュールの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1および図2に示すように、第1実施形態の半導体モジュール1は、半導体素子10および放熱板20などを備えている。
【0015】
半導体素子10は、通電により発熱する発熱素子であり、例えば、ダイオード、MOSFET、IGBTなどのパワー半導体素子である。なお、MOSFETは、Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor の略であり、IGBTは、Insulated Gate Bipolar Transistor の略である。パワー半導体素子は、例えば、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)、ガリウムナイトライド(GaN)、酸化ガリウム(Ga)等から形成される。半導体素子10は、放熱板20の厚み方向を向く一方側の面(以下「素子実装側面」という)に設けられる。
【0016】
放熱板20は、板状に形成されている。放熱板20のうち素子実装側面とは反対側の面(以下「冷却面」という)には、例えば冷却器30が配置される。なお、冷却器30に代えてまたはそれと共に、放熱器または熱交換器などを配置してもよい。半導体素子10が発する熱は、放熱板20に広がり、冷却面から放熱される。
【0017】
放熱板20は、第1放熱部21、第2放熱部22および第3放熱部23を有している。なお、第1実施形態の説明およびその説明で参照する図では、第2放熱部22および第3放熱部23を示す数字記号22、23に加えて、その末尾に各放熱部の位置を示すアルファベット記号R、Lを付している。このことは、後述する第4~第12、第15~第20実施形態の説明およびその説明で参照する図でも同じである。
【0018】
第1実施形態では、第1放熱部21を挟んで図の紙面右側と左側に2つの第2放熱部22R、22Lと2つの第3放熱部23R、23Lが配置されている。第1放熱部21、第2放熱部22および第3放熱部23はいずれも、熱伝導率に異方性のある材料を含んで形成されたものである。熱伝導率に異方性のある材料は、例えば、グラファイトである。
【0019】
図3に示すように、グラファイト2の分子構造は、炭素原子が結合した六角形格子構造が二次元状に広がった複数のグラフェン3が層状に積層された構造となっている。グラファイト2は、グラフェン3の面内方向の熱伝導率が、複数のグラフェン3の積層方向の熱伝導率より高いものとなっている。具体的には、グラファイト2は、図3に示したa軸、b軸、c軸による三次元座標において、ab面の面内方向に高熱伝導率を有し、c軸の延びる方向(以下「c方向」という)に低熱伝導率を有している。一般に、グラファイト2は、ab面の面内方向の熱伝導率が約1700W/m・Kであり、c方向の熱伝導率が約7W/m・Kである。なお、一般的に放熱材として用いられる銅の熱伝導率は約400W/m・Kである。よって、グラファイト2の熱伝導率の異方性を活かすことで、銅板よりも放熱性能の高い放熱板20を構成することが可能である。
【0020】
図1および図2では、第1放熱部21、第2放熱部22および第3放熱部23においてグラファイト2を構成する複数のグラフェン3の層を破線により模式的に示している。図1および図2では、第1放熱部21、第2放熱部22および第3放熱部23の境界線を実線で示しているが、実際には、第1放熱部21、第2放熱部22および第3放熱部23は一体に形成されるものである。また、図1および図2に示したX軸、Y軸、Z軸による三次元座標は、Z軸の延びる方向と、放熱板20の厚み方向を一致させている。また、第1放熱部21、第2放熱部22、第3放熱部23が並ぶ方向と、X軸の延びる方向を一致させている。以下の説明では、X軸の延びる方向を「X方向」といい、Y軸の延びる方向を「Y方向」といい、Z軸の延びる方向を「Z方向」という。これらのことは、後述する第2~第20実施形態と第1~第3比較例の説明、および、その説明で参照する各図面でも同じである。
【0021】
図1および図2に示すように、第1放熱部21は、放熱板20の厚み方向において半導体素子10と対向する位置を含んで設けられる部位である。以下の説明では、第1放熱部21のうち、放熱板20の厚み方向において半導体素子10と対向する位置を「第1放熱部21のうち半導体素子10直下の位置」という。
【0022】
第1放熱部21は、放熱板20の厚み方向に平行な任意の面である第1仮想面の面内方向に高熱伝導性を有する。第1実施形態では、第1仮想面はXZ面である。したがって、第1放熱部21は、XZ面の面内方向に高熱伝導性を有する。なお、第1放熱部21は、半導体素子10直下の位置に加えて、半導体素子10直下の位置から第1仮想面の面内方向に垂直な方向に延びる部位も有している。
【0023】
第2放熱部22は、第1放熱部21に対し第1仮想面の面内方向に平行且つ厚み方向に垂直な方向に接続される部位である。具体的には、第2放熱部22は、第1放熱部21に対しX方向に接続される部位である。より詳細には、第2放熱部22は、第1放熱部21のうち半導体素子10直下の位置に対し第1仮想面の面内方向に平行且つ放熱板の厚み方向に垂直な方向の部位に接続されている。それと共に、第2放熱部22は、第1放熱部21のうち半導体素子10直下の位置に対し第1仮想面の面内方向に垂直な方向に延びる部位に対しても接続されている。即ち、第2放熱部22は、第1放熱部21のうち半導体素子10直下の位置に対しX方向の部位に接続されると共に、第1放熱部21のうち半導体素子10直下の位置からY方向に延びる部位に対してもX方向に接続されている。
【0024】
第1実施形態では、放熱板20は2つの第2放熱部22を有している。その2つの第2放熱部22のうち第1放熱部21に対しX方向の一方側に配置されたものを一方側第2放熱部22Rと呼び、第1放熱部21に対しX方向の他方側に配置されたものを他方側第2放熱部22Lと呼ぶ。
【0025】
第2放熱部22は、放熱板20の厚み方向に垂直な第2仮想面の面内方向に高熱伝導性を有する。第1実施形態では、第2仮想面はXY面である。したがって、第2放熱部22は、XY面の面内方向に高熱伝導性を有する。
【0026】
第3放熱部23は、第2放熱部22に対し第2仮想面の面内方向に平行な任意の方向に接続される部位である。第1実施形態では、第1放熱部21と第2放熱部22と第3放熱部23は、X方向に並ぶように設けられている。したがって、第3放熱部23は、第2放熱部22に対しX方向に接続される部位である。第1実施形態では、放熱板20は2つの第3放熱部23を有している。その2つの第3放熱部23のうち一方側第2放熱部22Rに対しX方向の一方側に配置されたものを一方側第3放熱部23Rと呼び、他方側第2放熱部22Lに対しX方向の他方側に配置されたものを他方側第3放熱部23Lと呼ぶ。
【0027】
ここで、第2放熱部22に対し第3放熱部23が接続される方向に垂直でなく、且つ、放熱板20の厚み方向に平行な面を第3仮想面という。第3放熱部23は、第3仮想面の面内方向に高熱伝導性を有する。第1実施形態では、第3仮想面は、第2放熱部22に対し第3放熱部23が接続された方向に平行、且つ、放熱板20の厚み方向に平行な面である。そのため、第3仮想面は、第1仮想面と同じく、XZ面である。したがって、第3放熱部23は、XZ面の面内方向に高熱伝導性を有する。
【0028】
図2では、半導体素子10から生じた熱が放熱板20を伝わる経路の一部を、矢印にて模式的に示している。
【0029】
半導体素子10から生じた熱は、第1放熱部21のうち半導体素子10直下の位置に伝わった後、図2の矢印T1に示すように、その位置からX方向にある第2放熱部22に伝わる。そして、その熱は、第2放熱部22にてXY平面に沿って広がる。なお、矢印は省略するが、半導体素子10から第1放熱部21のうち半導体素子10直下の位置に伝わった熱の一部は、第1放熱部21のうち半導体素子10直下の位置でXZ平面に沿って広がり、第1放熱部21の冷却面から放熱される。
【0030】
矢印T2に示すように、第2放熱部22にてXY平面に沿って広がった熱の一部は、第3放熱部23に伝わる。そして、その熱は、第3放熱部23をXZ平面に沿って広がり、第3放熱部23の冷却面から放熱される。
【0031】
また、矢印T3に示すように、第2放熱部22にてXY平面に沿って広がった熱の他の一部は、第1放熱部21のうち半導体素子10直下の位置に対しY方向に延びる部位に伝わる。そして、第1放熱部21のうち半導体素子10直下の位置に対しY方向に延びる部位でXZ平面に沿って広がり、第1放熱部21の冷却面から放熱される。
【0032】
このように、第1実施形態では、第2放熱部22を熱の方向転換部として用いることで、半導体素子10が発する熱を放熱板20の略全領域に広げ、放熱板20の冷却面から放熱することが可能である。したがって、この半導体モジュール1は、放熱板20が放熱面として機能する面積を拡大し、放熱板20の放熱性を向上できる。
【0033】
次に、第1実施形態で説明した半導体モジュール1と比較するため、第1比較例および第2比較例の半導体モジュールについて説明する。
【0034】
(第1比較例)
図4に示すように、第1比較例の半導体モジュール101が備える放熱板20は、半導体素子10を中心として放射状に配置された4個の放熱部を有している。説明の便宜上、4個の放熱部のうち半導体素子10に対し図4紙面右側に配置された放熱部を右放熱部41と呼び、導体モジュールに対し図4紙面左側に配置された放熱部を左放熱部42と呼ぶ。また、半導体素子10に対し図4紙面上側に配置された放熱部を上放熱部43と呼び、導体モジュールに対し図4紙面下側に配置された放熱部を下放熱部44と呼ぶ。なお、図4および図5では、4個の放熱部41~44の境界線のうち半導体素子10の下にある箇所を一点鎖線で示している。
【0035】
右放熱部41と左放熱部42は、XZ面の面内方向に高熱伝導性を有する。上放熱部43と下放熱部44は、YZ面の面内方向に高熱伝導性を有する。
【0036】
図5では、半導体素子10から生じた熱が放熱板20を伝わる熱の経路の一部を、矢印にて模式的に示している。
【0037】
図5の矢印T4に示すように、半導体素子10から生じた熱は、右放熱部41および左放熱部42において半導体素子10の幅の範囲でX方向に伝わる。また、図5の矢印T5に示すように、半導体素子10から生じた熱は、上放熱部43および左放熱部42において半導体素子10の幅の範囲でY方向に伝わる。そのため、図5にハッチングLTで示したように、半導体素子10の幅の範囲でX方向とY方向に熱が伝わる領域の外側には、熱が殆ど伝わらない領域が形成される。したがって、第1比較例の半導体モジュール101は、放熱板20の全領域を有効に活用できていない。
【0038】
(第2比較例)
図6に示すように、第2比較例の半導体モジュール102は、上記特許文献1と同様の構成である。第2比較例の半導体モジュール102が備える放熱板20は、3個の放熱部を有している。説明の便宜上、3個の放熱部のうち半導体素子10直下の位置を含みY方向に延びる放熱部を縦放熱部45と呼ぶ。また、縦放熱部45に対し図6紙面右側に配置された放熱部を右横放熱部46と呼び、縦放熱部45に対し図6紙面左側に配置された放熱部を左横放熱部47と呼ぶ。なお、図6では、3個の放熱部45~47の境界線のうち半導体素子10の下にある箇所を一点鎖線で示している。
【0039】
縦放熱部45は、YZ面の面内方向に高熱伝導性を有する。右横放熱部46と左横放熱部47は、XZ面の面内方向に高熱伝導性を有する。なお、半導体素子10は、縦放熱部45と右横放熱部46と左横放熱部47に対し、半導体素子10の少なくとも一部が放熱板20の厚み方向に重なるように配置されている。
【0040】
図6では、半導体素子10から生じた熱が放熱板20を伝わる熱の経路の一部を、矢印にて模式的に示している。
【0041】
図6の矢印T6に示すように、半導体素子10から生じた熱は、縦放熱部45において半導体素子10の幅の範囲でY方向に伝わる。また、図6の矢印T7に示すように、半導体素子10から生じた熱は、右横放熱部46と左横放熱部47において半導体素子10の幅の範囲でX方向に伝わる。そのため、図6にハッチングLTで示したように、半導体素子10の幅の範囲でX方向とY方向に熱が伝わる領域の外側には、熱が殆ど伝わらない領域が形成される。したがって、第2比較例の半導体モジュール102も、放熱板20の全領域を有効に活用できていない。
【0042】
上述した第1比較例および第2比較例に対し、第1実施形態の半導体モジュール1は、次の作用効果を奏するものである。
(1)第1実施形態では、半導体モジュール1が備える放熱板20は、熱伝導率に異方性のある材料を含んで形成される第1放熱部21および第2放熱部22を有する。第1放熱部21は、放熱板20の厚み方向において半導体素子10と対向する位置を含んで設けられ、放熱板20の厚み方向に平行な任意の第1仮想面の面内方向に高熱伝導性を有する。第2放熱部22は、第1放熱部21に対し第1仮想面の面内方向に平行且つ放熱板20の厚み方向に垂直な方向に接続され、放熱板20の厚み方向に垂直な第2仮想面の面内方向に高熱伝導性を有する。
【0043】
これによれば、半導体素子10から第1放熱部21に伝わる熱は、第1放熱部21のうち半導体素子10直下の位置において第1仮想面の面内方向に広がる。そのため、半導体素子10から第1放熱部21に伝わる熱の一部が第1放熱部21の冷却面から放熱され、残りの一部が第2放熱部22に伝わる。図2の矢印T1に示したように、第2放熱部22に伝わった熱は、第2放熱部22にて放熱板20の厚み方向に垂直な第2仮想面の面内方向に広がる。図2の矢印T3に示したように、その熱は、第2放熱部22から、第1放熱部21のうち半導体素子10直下の位置に対しY方向に延びる部位に伝わる。第2放熱部22から第1放熱部21に伝わった熱は、第1放熱部21にて第1仮想面の面内方向に広がり、第1放熱部21の冷却面から放熱される。このように、第1実施形態では、第1放熱部21の外側に熱の方向転換部として機能する第2放熱部22を設けることで、半導体素子10が発する熱を放熱板20の広範囲に広げ、放熱板20の冷却面から放熱することが可能である。したがって、この半導体モジュール1は、放熱板20が放熱面として機能する面積を拡大し、放熱板20の放熱性を向上できる。
【0044】
(2)第1実施形態では、第2放熱部22は、第1放熱部21のうち半導体素子10直下の位置に対し第1仮想面の面内方向に平行且つ放熱板20の厚み方向に垂直な方向の部位に接続されている。それと共に、第2放熱部22は、第1放熱部21のうち半導体素子10直下の位置に対し第1仮想面の面内方向に垂直な方向に延びる部位に対しても接続されている。
これによれば、図2の矢印T1に示したように、半導体素子10から第1放熱部21に伝わった熱を第2放熱部22に伝え、その第2放熱部22内に広げることが可能である。そして、図2の矢印T3に示したように、第2放熱部22内に広がった熱を、その第2放熱部22から、第1放熱部21のうち半導体素子10直下の位置に対しY方向に延びる部位に伝えることが可能である。
【0045】
(3)第1実施形態では、放熱板20は、第3放熱部23をさらに有する。第3放熱部23は、第2放熱部22に対し第2仮想面の面内方向に平行な任意の方向に接続されている。そして、第3放熱部23は、第2放熱部22に対し第3放熱部23が接続された方向に垂直でなく且つ放熱板20の厚み方向に平行な第3仮想面の面内方向に高熱伝導性を有する。
これによれば、図2の矢印T2に示したように、半導体素子10から第1放熱部21を経由して第2放熱部22内に広がった熱は、第3放熱部23に伝わる。その熱は、第3放熱部23にて放熱板20の厚み方向に平行な第3仮想面の面内方向に広がりつつ、第3放熱部23の冷却面から放熱される。このように、第1実施形態では、第2放熱部22に対し第1放熱部21とは反対側に第3放熱部23を設けることで、放熱板20から冷却器30へ伝わる熱量を増加することが可能である。したがって、この半導体モジュール1は、放熱板20が放熱面として機能する面積を拡大し、放熱板20の放熱性を向上できる。
【0046】
(4)第1実施形態では、第3放熱部23が高熱伝導性を有する方向を規定する第3仮想面は、第2放熱部22に対し第3放熱部23が接続された方向に平行、且つ、厚み方向に平行である。
これによれば、放熱板20が例えば矩形である場合、第3放熱部23内に熱が伝わりにくい箇所が形成されることを抑制し、半導体素子10から第1放熱部21に伝わる熱を第2放熱部22を経由して、第3放熱部23の全体に伝えることができる。したがって、放熱板20の放熱性を向上できる。
【0047】
(5)第1実施形態では、第1放熱部21が高熱伝導性を有する方向を規定する第1仮想面と、当該第3放熱部23が高熱伝導性を有する方向を規定する第3仮想面とは、第1放熱部21と第2放熱部22と第3放熱部23が並ぶ方向に平行である。
これによれば、第1放熱部21と第3放熱部23において高熱伝導性を有する方向を規定する仮想面の向き、具体的にはグラファイト2を構成する複数のグラフェン3の層の向きを同一にすることで、放熱板20の構成を簡素にし、製造工程を簡素にできる。
また、放熱板20が例えば矩形である場合、第3放熱部23内に熱が伝わりにくい箇所が形成されることを抑制し、半導体素子10から第1放熱部21に伝わる熱を第2放熱部22を経由して、第3放熱部23の全体に伝えることができる。したがって、放熱板20の放熱性を向上できる。
【0048】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対して放熱板20の構成の一部を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。なお、第2実施形態以降の説明で参照する図では、冷却器30等の図示を省略している。
【0049】
図7および図8に示すように、第2実施形態では、放熱板20は、第1放熱部21~第5放熱部25を有している。なお、第2実施形態の説明およびその説明で参照する図では、第2放熱部21~第5放熱部25を示す数字記号22~25に加えて、その末尾に各放熱部の位置を示すアルファベット記号R、Lを付している。このことは、後述する第3実施形態の説明およびその説明で参照する図でも同じである。
【0050】
第1放熱部21、第2放熱部22、第3放熱部23は、第1実施形態で説明したものと同じである。
第4放熱部24は、第3放熱部23に対し第3仮想面の面内方向に平行且つ放熱板20の厚み方向に垂直な方向に接続される部位である。具体的には、第4放熱部24は、第3放熱部23に対しX方向に接続される部位である。第2実施形態では、放熱板20は2つの第4放熱部24を有している。その2つの第4放熱部24のうち一方側第3放熱部23Rに対しX方向の一方側に配置されたものを一方側第4放熱部24Rと呼び、他方側第3放熱部23Lに対しX方向の他方側に配置されたものを他方側第4放熱部24Lと呼ぶ。
【0051】
第4放熱部24は、第2放熱部22と同様に、放熱板20の厚み方向に垂直な第4仮想面、即ちXY面の面内方向に高熱伝導性を有する。したがって、第4放熱部24は、第2放熱部22と同様に、熱の方向転換部として機能する。
【0052】
第5放熱部25は、第4放熱部24に対し第4仮想面、即ちXY面の面内方向に平行な任意の方向に接続される部位である。第2実施形態では、第1放熱部21~第5放熱部25がいずれもX方向に並ぶように設けられている。第5放熱部25は、第4放熱部24に対しX方向に接続される部位である。第2実施形態では、放熱板20は2つの第5放熱部25を有している。その2つの第5放熱部25のうち一方側第4放熱部24Rに対しX方向の一方側に配置されたものを一方側第5放熱部25Rと呼び、他方側第4放熱部24Lに対しX方向の他方側に配置されたものを他方側第5放熱部25Lと呼ぶ。
【0053】
ここで、第4放熱部24に対し第5放熱部25が接続される方向に垂直でなく、且つ、放熱板20の厚み方向に平行な面を第5仮想面という。第5放熱部25は、第5仮想面の面内方向に高熱伝導性を有する。第2実施形態では、第5仮想面は、第4放熱部24に対し第5放熱部25が接続された方向に平行、且つ、放熱板20の厚み方向に平行な面である。そのため、第5仮想面は、第1仮想面および第3仮想面と同じく、XZ面である。したがって、第5放熱部25は、XZ面の面内方向に高熱伝導性を有する。
【0054】
図8では、半導体素子10から生じた熱が放熱板20を伝わる経路の一部を、矢印にて模式的に示している。
【0055】
図8の矢印T1~T3に示した熱の伝達経路は、第1実施形態で説明したものと同様である。
【0056】
矢印T8に示すように、第3放熱部23から第4放熱部24に伝わった熱は、第4放熱部24にてXY平面に沿って広がる。矢印T9に示すように、第4放熱部24にてXY平面に沿って広がった熱の一部は、X方向にある第5放熱部25に伝わった後、第5放熱部25をXZ平面に沿って広がり、第5放熱部25の冷却面から放熱される。また、矢印T10に示すように、第4放熱部24にてXY平面に沿って広がった熱の他の一部は、X方向にある第3放熱部23に伝わり、第3放熱部23の冷却面から放熱される。
【0057】
このように、第2実施形態では、第2放熱部22と第4放熱部24を熱の方向転換部として用いることで、半導体素子10が発する熱を放熱板20の略全領域に広げ、放熱板20の冷却面から放熱できる。したがって、この半導体モジュール1は、放熱板20が放熱面として機能する面積を拡大し、放熱板20の放熱性を向上できる。
【0058】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。第3実施形態も、第1実施形態に対して放熱板20の構成の一部を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0059】
図9および図10に示すように、第3実施形態では、放熱板20は、第1放熱部21~第4放熱部24を有している。第1放熱部21~第4放熱部24は、第2実施形態で説明したものと同じである。
【0060】
図10では、半導体素子10から生じた熱が放熱板20を伝わる経路の一部を、矢印にて模式的に示している。
【0061】
図8の矢印T1~T3に示した熱の伝達経路は、第1実施形態で説明したものと同様である。
矢印T11に示すように、第3放熱部23から第4放熱部24に伝わった熱は、第4放熱部24にてXY平面に沿って広がる。矢印T12に示すように、第4放熱部24にてXY平面に沿って広がった熱は、X方向にある第3放熱部23に伝わる。そして、第3放熱部23をXZ平面に沿って広がり、第3放熱部23の冷却面から放熱される。
【0062】
このように、第3実施形態でも、第2放熱部22と第4放熱部24を熱の方向転換部として用いることで、半導体素子10が発する熱を放熱板20の略全領域に広げ、放熱板20の冷却面から放熱することが可能である。したがって、この半導体モジュール1は、放熱板20が放熱面として機能する面積を拡大し、放熱板20の放熱性を向上できる。
【0063】
(第4~第8実施形態)
第4~第8実施形態は、第1実施形態に対して放熱板20の形状を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0064】
(第4実施形態)
図11に示すように、第4実施形態では、放熱板20は、その厚み方向から視た平面視を円形としている。第1放熱部21、第2放熱部22、第3放熱部23の外縁はいずれも円弧状である。
なお、第1放熱部21に対し図11紙面右側に配置される第2放熱部22Rの面積と、第1放熱部21に対し図11紙面左側に配置される第2放熱部22Lの面積とは同じである。また、第1放熱部21に対し図11紙面右側に配置される第3放熱部23Rの面積と、第1放熱部21に対し図11紙面左側に配置される第3放熱部23Lの面積とは同じである。
【0065】
(第5実施形態)
図12に示すように、第5実施形態では、放熱板20は、その厚み方向から視た平面視を三角形としている。三角形の3つの頂点のうち2つの頂点が図12紙面右側に配置される第3放熱部23Rに形成され、別の1つの頂点が図12紙面左側に配置される第3放熱部23Lに形成されている。
【0066】
なお、第1放熱部21に対し図12紙面右側に配置される第2放熱部22Rの面積は、第1放熱部21に対し図12紙面左側に配置される第2放熱部22Lの面積より大きい。また、第1放熱部21に対し図12紙面右側に配置される第3放熱部23Rの面積は、第1放熱部21に対し図12紙面左側に配置される第3放熱部23Lの面積より大きい。
【0067】
(第6実施形態)
図13に示すように、第6実施形態でも、放熱板20は、その厚み方向から視た平面視を三角形としている。三角形の3つの頂点は、第1放熱部21のうち図13紙面上側の部位と、図13紙面右側に配置される第3放熱部23Rと、図13紙面左側に配置される第3放熱部23Lにそれぞれ1つずつ形成されている。
【0068】
なお、第1放熱部21に対し図13紙面右側に配置される第2放熱部22Rの面積と、第1放熱部21に対し図13紙面左側に配置される第2放熱部22Lの面積とは同じである。また、第1放熱部21に対し図13紙面右側に配置される第3放熱部23Rの面積と、第1放熱部21に対し図13紙面左側に配置される第3放熱部23Lの面積とは同じである。
【0069】
(第7実施形態)
図14に示すように、第7実施形態では、放熱板20は、その厚み方向から視た平面視を長方形としている。具体的には、放熱板20は、X方向の辺の長さが、Y方向の辺の長さよりも長い長方形である。なお、図示は省略するが、放熱板20は、X方向の辺の長さが、Y方向の辺の長さよりも短い長方形としてもよい。
【0070】
(第8実施形態)
図15に示すように、第8実施形態では、放熱板20は、その厚み方向から視た平面視を六角形としている。具体的に、第1放熱部21に対し図15紙面右側に配置される第3放熱部23Rは、Y方向の中央部がX方向右側に突出している。また、第1放熱部21に対し図15紙面左側に配置される第3放熱部23Lは、Y方向の中央部がX方向左側に突出している。六角形の6つの頂点のうち3つの頂点が図15紙面右側に配置される第3放熱部23Rに形成され、別の3つの頂点が図15紙面左側に配置される第3放熱部23Lに形成されている。
【0071】
なお、放熱板20の形状は、上記第1~第8実施形態で例示した形状に限るものでなく、例えば、楕円状または多角形など、種々の形状を採用できる。
【0072】
(第9~第12実施形態)
第9~第12実施形態は、第1実施形態に対して半導体素子10の形状または搭載位置を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0073】
(第9実施形態)
図16に示すように、第9実施形態では、半導体素子10の少なくとも一部が第1放熱部21と第2放熱部22の両方に対し放熱板20の厚み方向に重なるように設けられている。即ち、半導体素子10は、第1放熱部21だけでなく、その一部が第2放熱部22に重なるように設けてもよい。
【0074】
(第10実施形態)
図17に示すように、第10実施形態では、放熱板20に対し複数の半導体素子10が設けられている。具体的には、2個の半導体素子10がいずれも第1放熱部21に設けられている。このように、半導体素子10は、放熱板20に複数個搭載されていてもよい。なお、半導体素子10の数は、2個に限らず任意に設定でき、その搭載位置についても任意に設定できる。
【0075】
(第11実施形態)
図18に示すように、第11実施形態では、長方形の半導体素子10が搭載されている。このように、半導体素子10の形状は、任意の形状を採用することが可能である。また、半導体素子10の形状のアスペクト比も任意に設定できる。
【0076】
(第12実施形態)
図19に示すように、第12実施形態では、半導体素子10は、放熱板20のうち図19の紙面左側の位置に設けられている。半導体素子10は、放熱板20を構成する複数の放熱部のうち、放熱板20の厚み方向に平行な任意の仮想面の面内方向に高熱伝導性を有するものに設けられていればよい。
【0077】
なお、本開示では、第1実施形態で説明したように、放熱板20を構成する複数の放熱部のうち、放熱板20の厚み方向において半導体素子10と対向する位置を含んで設けられ、放熱板20の厚み方向に平行な任意の第1仮想面の面内方向に高熱伝導性を有するものを第1放熱部21と呼ぶ。したがって、第12実施形態では、放熱板20のうち図19の紙面左側に配置された放熱部を第1放熱部21と呼び、その第1放熱部21から図19の紙面右側に向かって配置される各放熱部を第2放熱部22~第5放熱部25と呼ぶ。第2放熱部22と第4放熱部24は、熱の方向転換部として機能する。
【0078】
(第13および第14実施形態)
第13および第14実施形態は、第1実施形態に対して放熱板20を構成する複数の放熱部を、半導体素子10を中心として放射状に配置したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0079】
(第13実施形態)
図20に示すように、第13実施形態では、半導体モジュール1が備える放熱板20は、半導体素子10を中心として第1放熱部21と第2放熱部22と第3放熱部23が放射状に設けられている。言い換えれば、第1放熱部21の外側に第2放熱部22が環状に設けられ、第2放熱部22の外側に第3放熱部23が環状に設けられている。この放熱板20は四角形とされている。その四角形の対角線により、第1放熱部21と第2放熱部22と第3放熱部23はいずれも4つのセクションに分かれている。
【0080】
なお、第13実施形態の説明およびその説明で参照する図20では、第1放熱部21~第3放熱部23を示す数字記号22~23に加えて、その末尾に各放熱部のセクションを示すアルファベット記号a~dを付している。また、図20では、第1放熱部21、第2放熱部22および第3放熱部23の境界線と各セクションの境界線をいずれも実線で示しているが、実際には、それらは一体に形成されるものである。また、図20では、第1放熱部21の各セクションの境界線のうち半導体素子10の下にある箇所を一点鎖線で示している。これらのことは、後述する第14実施形態の説明と、その説明で参照する図21でも同じである。
【0081】
第1放熱部21の各セクションは、放熱板20の厚み方向に平行な任意の面である第1仮想面の面内方向に高熱伝導性を有する。具体的には、第1放熱部21の4つのセクションのうち図20紙面上側に配置されたセクション21aと、図20紙面下側に配置されたセクション21bは、第1仮想面としてYZ面の面内方向に高熱伝導性を有する。また、第1放熱部21の4つのセクションのうち図20紙面右側に配置されたセクション21cと、図20紙面左側に配置されたセクション21dは、第1仮想面としてXZ面の面内方向に高熱伝導性を有する。
【0082】
第2放熱部22の各セクションは、第1放熱部21の各セクションに対し第1仮想面の面内方向に平行且つ厚み方向に垂直な方向に接続される部位である。第2放熱部22の各セクションは、放熱板20の厚み方向に垂直な第2仮想面の面内方向に高熱伝導性を有する。具体的には、第2放熱部22の4つのセクション22a、22b、22c、22dはいずれも第2仮想面としてのXY面の面内方向に高熱伝導性を有する。
【0083】
第3放熱部23の各セクションは、第2放熱部22の各セクションに対し第2仮想面の面内方向に平行な任意の方向に接続される部位である。第3放熱部23の各セクションは、第2放熱部22に対し第3放熱部23が接続される方向に垂直でなく、且つ、放熱板20の厚み方向に平行な第3仮想面の面内方向に高熱伝導性を有する。具体的には、第3放熱部23の4つのセクションのうち図20紙面上側に配置されたセクション23aと、図20紙面下側に配置されたセクション23bは、第3仮想面としてYZ面の面内方向に高熱伝導性を有する。第3放熱部23の4つのセクションのうち図20紙面右側に配置されたセクション23cと、図20紙面左側に配置されたセクション24dは、第3仮想面としてXZ面の面内方向に高熱伝導性を有する。
【0084】
以上説明した第13実施形態においても、第1放熱部21と第3放熱部23との間に熱の方向転換部として機能する第2放熱部22を設けることで、半導体素子10が発する熱を放熱板20の略全領域に広げることが可能である。したがって、この半導体モジュール1は、放熱板20が放熱面として機能する面積を拡大し、放熱板20の放熱性を向上できる。
【0085】
(第14実施形態)
図21に示すように、第14実施形態でも、半導体モジュール1が備える放熱板20は、半導体素子10を中心として第1放熱部21と第2放熱部22と第3放熱部23が放射状に設けられている。言い換えれば、第1放熱部21の外側に第2放熱部22が環状に設けられ、第2放熱部22の外側に第3放熱部23が環状に設けられている。この放熱板20は六角形とされている。その六角形の対角線により、第1放熱部21と第2放熱部22と第3放熱部23はいずれも6つのセクションに分かれている。なお、図21では、第1放熱部21~第3放熱部23を示す数字記号22~23に加えて、その末尾に各放熱部のセクションを示すアルファベット記号e~jを付している。
【0086】
なお、図21では、X軸、Y軸、Z軸による三次元座標に、P軸およびQ軸を加えている。P軸は、XY面内において、X軸に対し反時計回りに30°回転させた軸であり、Q軸は、XY面内において、X軸に対し時計回りに30°回転させた軸である。
【0087】
第1放熱部21の各セクションは、放熱板20の厚み方向に平行な任意の面である第1仮想面の面内方向に高熱伝導性を有する。具体的には、第1放熱部21の6つのセクションのうち図21紙面上側に配置されたセクション21eと、図21紙面下側に配置されたセクション21fは、第1仮想面としてYZ面の面内方向に高熱伝導性を有する。また、第1放熱部21の6つのセクションのうち図21紙面右上側に配置されたセクション21gと、図21紙面左下側に配置されたセクション21hは、第1仮想面としてPZ面の面内方向に高熱伝導性を有する。また、第1放熱部21の6つのセクションのうち図21紙面右下側に配置されたセクション21iと、図21紙面左上側に配置されたセクション21jは、第1仮想面としてQZ面の面内方向に高熱伝導性を有する。
【0088】
第2放熱部22の各セクションは、第1放熱部21の各セクションに対し第1仮想面の面内方向に平行且つ厚み方向に垂直な方向に接続される部位である。第2放熱部22の各セクションは、放熱板20の厚み方向に垂直な第2仮想面の面内方向に高熱伝導性を有する。具体的には、第2放熱部22の6つのセクション22e、21f、21g、21h、21i、21jはいずれも第2仮想面としてのXY面の面内方向に高熱伝導性を有する。
【0089】
第3放熱部23は、第2放熱部22に対し第2仮想面の面内方向に平行な任意の方向に接続される部位である。第3放熱部23は、第2放熱部22に対し第3放熱部23が接続される方向に垂直でなく、且つ、放熱板20の厚み方向に平行な第3仮想面の面内方向に高熱伝導性を有する。具体的には、第3放熱部23の6つのセクションのうち図21紙面上側に配置されたセクション23eと、図21紙面下側に配置されたセクション23fは、第3仮想面としてYZ面の面内方向に高熱伝導性を有する。また、第3放熱部23の6つのセクションのうち図21紙面右上側に配置されたセクション23gと、図21紙面左下側に配置されたセクション23hは、第3仮想面としてPZ面の面内方向に高熱伝導性を有する。また、第3放熱部23の6つのセクションのうち図21紙面右下側に配置されたセクション23iと、図21紙面左上側に配置されたセクション23jは、第3仮想面としてQZ面の面内方向に高熱伝導性を有する。
【0090】
以上説明した第14実施形態においても、第1放熱部21と第3放熱部23との間に熱の方向転換部として機能する第2放熱部22を設けることで、半導体素子10が発する熱を放熱板20の略全領域に広げることが可能である。したがって、この半導体モジュール1は、放熱板20が放熱面として機能する面積を拡大し、放熱板20の放熱性を向上できる。
【0091】
(第15実施形態)
第15実施形態について説明する。第15実施形態は、第1実施形態に対して放熱板20の構成の一部を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0092】
図22に示すように、第15実施形態では、放熱板20は、第1放熱部21、第2放熱部22、第3放熱部23に対し、厚み方向を向く一方側の面と他方側の面にそれぞれ金属板50を有している。言い換えれば、放熱板20は、素子実装側面と冷却面にそれぞれ金属板50を有している。なお、金属板50は、例えば銅などの電気抵抗率の低い材料で形成される。
【0093】
半導体素子10は、放熱板20の素子実装側面に設けられた金属板50に対し、接合材11により接合されている。接合材11は、例えば、はんだである。
【0094】
以上説明した第15実施形態の半導体モジュール1は、放熱板20の素子実装側面に金属板50を設けることで、その金属板50を半導体素子10に通電するための配線として用いることが可能となり、半導体モジュール1としての機能性を向上できる。
【0095】
また、放熱板20の素子実装側面と冷却面にそれぞれ金属板50を設けることで、第1放熱部21および第3放熱部23において、金属板50を介して、放熱板20の厚み方向に垂直な方向、即ちXY面の面内方向に熱をより広げることができる。したがって、放熱板20の略全領域に熱を広げ、放熱板20の放熱性を向上できる。
【0096】
ここで、第15実施形態で説明した半導体モジュール1と、第3比較例の半導体モジュールにおいて、半導体素子10の発熱時の温度分布を解析した結果について説明する。
【0097】
まず、比較対象とした第3比較例の半導体モジュールの構成について説明する。
図25に示すように、第3比較例の半導体モジュール103も、半導体素子10および放熱板20などを備えている。半導体素子10は、第15実施形態のものと同一である。放熱板20は、グラファイト2で形成された1つの放熱部48と、その放熱部48に対し素子実装側面と冷却面にそれぞれ設けられた金属板50を有している。放熱板20の有する1つの放熱部48は、XZ面の面内方向に高熱伝導性を有する。金属板50は、第15実施形態のものと同じく、銅により形成されている。
【0098】
第15実施形態で説明した半導体モジュール1と、第3比較例の半導体モジュール103について定常熱解析を行った。この定常熱解析は、半導体素子10の発熱量を一定として、放熱板20の冷却面側に設けた冷却器30に水温30℃の冷却水を流す条件にて行ったものである。放熱板20の大きさはX方向40mm、Y方向20mmとした。半導体素子10の大きさはX方向、Y方向共に6.5mmとした。第15実施形態の半導体モジュール1において、第1放熱部21のX方向の大きさを6.5mm、第2放熱部22R、22LそれぞれのX方向の大きさを5mmとした。
【0099】
第15実施形態の半導体モジュール1について解析した結果を図23図24に示し、第3比較例の半導体モジュール103について解析した結果を図26図27に示す。
【0100】
解析の結果、第15実施形態の半導体モジュール1が備える放熱板20の温度は、第3比較例の半導体モジュール103が備える放熱板20の温度に比べて、放熱板20の全領域で温度が略均一になっている。このことから、第15実施形態の半導体モジュール1が備える放熱板20は、第3比較例の半導体モジュール103が備える放熱板20に比べて、放熱板20の全領域を使って放熱できていると言える。
【0101】
それに対し、第3比較例の半導体モジュール103が備える放熱板20は、第15実施形態の半導体モジュール1が備える放熱板20に比べて、Y方向の一方側の部位と他方側の部位の温度が低い。このことから、第3比較例の半導体モジュール103が備える放熱板20は、第15実施形態の半導体モジュール1が備える放熱板20に比べて、放熱板20に熱が伝わりにくい部分、即ち、無駄な部分が生じている。
【0102】
半導体素子10の温度に関しては、第3比較例の半導体モジュール103が備える半導体素子10の最高温度が150℃であったのに対し、第15実施形態の半導体モジュール1が備える半導体素子10の最高温度は127℃であった。したがって、第15実施形態の半導体モジュール1は、第3比較例の半導体モジュール103に比べて、放熱板20の全領域を使って放熱したことで、半導体素子10の温度を下げられることがわかった。
【0103】
(第16実施形態)
第16実施形態について説明する。第16実施形態は、第15実施形態の変形例である。上記第15実施形態では、放熱板20の素子実装側面と冷却面にそれぞれ金属板50を設ける構成とした。それに対し、第16実施形態では、放熱板20の素子実装側面と冷却面にそれぞれ絶縁体51を設ける構成である。絶縁体51は、例えば、セラミックである。なお、セラミックは、熱伝導率の高いものが好ましい。
【0104】
これにより、半導体モジュール1と外部とを電気的に絶縁することが可能となる。また、第1放熱部21および第3放熱部23において、絶縁体51を介して、放熱板20の厚み方向に垂直な方向、即ちXY面の面内方向に熱をより広げることで、放熱板20の放熱性を向上できる。
【0105】
なお、第15および第16実施形態の別の変形例として、図示は省略するが、放熱板20の素子実装側面に金属板50を設け、冷却面に絶縁体51を設ける構成としてもよい。これにより、放熱板20の素子実装側面に設けた金属板50を配線として用いると共に、放熱板20の冷却面側に設けた絶縁体51により半導体モジュール1と外部とを電気的に絶縁できる。
【0106】
また、金属板50および絶縁体51は、放熱板20の厚み方向を向く全面に限らず、その一部に設けてもよい。
【0107】
(第17実施形態)
第17実施形態について説明する。第17実施形態は、第15および第16実施形態に対して放熱板20の構成の一部を変更したものである。
【0108】
図29に示すように、第17実施形態では、放熱板20は、厚み方向の中間位置に板状の絶縁体52を有している。絶縁体52は、例えば、セラミックである。なお、セラミックは、熱伝導率の高いものが好ましい。また、放熱板20は、第15実施形態と同様に、素子実装側面と冷却面にそれぞれ金属板50を有している。金属板50は、例えば銅などの電気抵抗率の低い材料で形成されている。
【0109】
以上説明した第17実施形態の半導体モジュール1は、放熱板20の厚み方向の中間位置に板状の絶縁体52を有することで、半導体モジュール1と外部とを電気的に絶縁できる。また、放熱板20の素子実装側面に設けた金属板50を配線として用いることができる。さらに、第1放熱部21および第3放熱部23において、金属板50と絶縁体52を介して、放熱板20の厚み方向に垂直な方向、即ちXY面の面内方向に熱をより広げることで、放熱板20の放熱性を向上できる。
【0110】
なお、第17実施形態の変形例として、放熱板20の厚み方向の中間位置に、絶縁体52に代えてまたはそれと共に金属板50を有してもよい。
【0111】
また、第17実施形態の別の変形例として、放熱板20の素子実装側面および冷却面の少なくとも一方に、金属板50に代えて絶縁体51を設ける構成としてもよい。
【0112】
(第18実施形態)
第18実施形態について説明する。第18実施形態は、第1実施形態に対して放熱板20の構成の一部を変更したものである。
【0113】
図30および図31に示すように、第18実施形態では、放熱板20は、厚み方向を向く面、および厚み方向に垂直な方向を向く面を覆う金属板50を有している。言い換えれば、放熱板20を構成する複数の放熱部は、金属板50によりカプセル状に覆われている。なお、金属板50は、例えば銅などの電気抵抗率の低い材料で形成されている。
【0114】
半導体素子10は、放熱板20の素子実装側面に設けられた金属板50に対し、接合材11により接合されている。接合材11は、例えば、はんだである。
【0115】
以上説明した第18実施形態の半導体モジュール1は、第15実施形態の半導体モジュール1と同様の作用効果を奏することが可能である。さらに、第18実施形態の半導体モジュール1は、複数の放熱部をカプセル状に覆う金属板50により、放熱板20の剛性を高めることができる。
【0116】
なお、第18実施形態の変形例として、放熱板20を覆う金属板50は、放熱板20の一部を部分的に覆うものであってもよい。
【0117】
(第19実施形態)
第19実施形態について説明する。第19実施形態は、第1実施形態に対して放熱板20の構成の一部を変更したものである。
【0118】
図32に示すように、第19実施形態では、放熱板20は、厚み方向を向く面、および厚み方向に垂直な方向を向く面を覆うめっき層53を有している。言い換えれば、放熱板20を構成する複数の放熱部は、めっき層53により覆われている。
【0119】
半導体素子10は、放熱板20の素子実装側面に設けられためっき層53に対し、接合材11により接合されている。接合材11は、例えば、はんだである。
【0120】
以上説明した第19実施形態の半導体モジュール1は、第18実施形態の半導体モジュール1と同様の作用効果を奏することが可能である。
【0121】
なお、第19実施形態の変形例として、放熱板20を覆うめっき層53は、放熱板20の一部を部分的に覆うものであってもよい。
【0122】
(第20実施形態)
第20実施形態について説明する。第20実施形態は、第1実施形態に対して放熱板20の構成の一部を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0123】
図33および図34に示すように、第20実施形態では、放熱板20は、第1放熱部21と第2放熱部22を有している。第1放熱部21と第2放熱部22は、第1実施形態で説明したものと同じである。なお、図34では、第1放熱部21のうち半導体素子10直下の位置に対しX方向の部位と、第1放熱部21のうち半導体素子10直下の位置に対し第1仮想面の面内方向に垂直な方向に延びる部位との境界を、説明のため、二点鎖線D1~D4で示している。第2放熱部22は、第1放熱部21のうち半導体素子10直下の位置に対しX方向の部位に接続されると共に、第1放熱部のうち半導体素子10直下の位置に対し第1仮想面の面内方向に垂直な方向に延びる部位に対してもX方向に接続されている。
【0124】
図34では、半導体素子10から生じた熱が放熱板20を伝わる経路の一部を、矢印にて模式的に示している。
【0125】
半導体素子10から生じた熱は、第1放熱部21のうち半導体素子10直下の位置に伝わった後、図34の矢印T13に示すように、その位置からX方向にある第2放熱部22に伝わる。そして、その熱は、第2放熱部22にてXY平面に沿って広がる。なお、矢印は省略するが、半導体素子10から第1放熱部21のうち半導体素子10直下の位置に伝わった熱の一部は、第1放熱部21のうち半導体素子10直下の位置でXZ平面に沿って広がり、第1放熱部21の冷却面から放熱される。
【0126】
矢印T14に示すように、第2放熱部22にてXY平面に沿って広がった熱は、第1放熱部21のうち半導体素子10直下の位置に対しY方向に延びる部位に伝わる。そして、第1放熱部21のうち半導体素子10直下の位置に対しY方向に延びる部位でXZ平面に沿って広がり、第1放熱部21の冷却面から放熱される。
【0127】
このように、第20実施形態の半導体モジュール1においても、第2放熱部22を熱の方向転換部として用いることで、半導体素子10が発する熱を放熱板20の略全領域に広げ、放熱板20の冷却面から放熱することが可能である。したがって、この半導体モジュール1は、放熱板20が放熱面として機能する面積を拡大し、放熱板20の放熱性を向上できる。
【0128】
なお、上記第20実施形態では、第1放熱部21に対しX方向の一方側と他方側にそれぞれ第2放熱部22R、22Lを配置した。それに対し、第20実施形態の変形例として、第1放熱部21に対しX方向の一方側または他方側のみに第2放熱部22を配置してもよい。
【0129】
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、半導体モジュール1が備える放熱板20は複数の放熱部が直線状に並ぶように配置したが、これに限らない。例えば、複数の放熱部は、例えばL字状、U字状など、折れ曲がって並ぶように配置してもよい。
【0130】
(2)上記各実施形態では、第3放熱部23が高熱伝導性を有する方向を規定する第3仮想面は、第2放熱部22に対し第3放熱部23が接続された方向に平行、且つ、厚み方向に平行としたが、これに限らない。例えば、第3仮想面は、第2放熱部22に対し第3放熱部23が接続された方向に対し垂直を除く任意の角度としてもよい。
【0131】
(3)上記各実施形態では、第1放熱部21が高熱伝導性を有する方向を規定する第1仮想面と、第3放熱部23が高熱伝導性を有する方向を規定する第3仮想面とを平行としたが、これに限らない。例えば、第1仮想面と第3仮想面とは、任意の角度をなすものとしてもよい。
【0132】
本開示は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態およびその一部は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0133】
(本開示の観点)
上記した本開示については、例えば以下に示す観点として把握することができる。
[第1の観点]
板状の放熱板(20)と、前記放熱板の厚み方向に設けられて通電により発熱する半導体素子(10)とを備える半導体モジュールにおいて、
前記放熱板は、熱伝導率に異方性のある材料を含んで形成される第1放熱部(21)、第2放熱部(22)および第3放熱部(23)を有し、
前記第1放熱部は、前記厚み方向において前記半導体素子と対向する位置を含んで設けられ、前記厚み方向に平行な任意の第1仮想面の面内方向に高熱伝導性を有し、
前記第2放熱部は、前記第1放熱部に対し前記第1仮想面の面内方向に平行且つ前記厚み方向に垂直な方向に接続され、前記厚み方向に垂直な第2仮想面の面内方向に高熱伝導性を有する、半導体モジュール。
[第2の観点]
前記第2放熱部は、前記第1放熱部のうち前記半導体素子と対向する位置に対し前記第1仮想面の面内方向に平行且つ前記放熱板の厚み方向に垂直な方向の部位に接続されると共に、前記第1放熱部のうち前記半導体素子と対向する位置に対し前記第1仮想面の面内方向に垂直な方向に延びる部位に対しても接続されている、第1の観点に記載の半導体モジュール。
[第3の観点]
前記放熱板は、第3放熱部(23)をさらに有し、
前記第3放熱部は、前記第2放熱部に対し前記第2仮想面の面内方向に平行な任意の方向に接続され、前記第2放熱部に対し前記第3放熱部が接続された方向に垂直でなく且つ前記厚み方向に平行な第3仮想面の面内方向に高熱伝導性を有する、第1または2の観点に記載の半導体モジュール。
[第4の観点]
前記第3仮想面は、前記第2放熱部に対し前記第3放熱部が接続された方向に平行、且つ、前記厚み方向に平行である、第3の観点に記載の半導体モジュール。
[第5の観点]
前記第1仮想面と前記第3仮想面とは、前記第1放熱部と前記第2放熱部と前記第3放熱部とが並ぶ方向に平行である、第3または4の観点に記載の半導体モジュール。
[第6の観点]
前記放熱板のうち前記厚み方向を向く面または前記放熱板のうち前記厚み方向の中間位置に設けられる金属板(50)をさらに有する、第1ないし第5の観点のいずれか1つに記載の半導体モジュール。
[第7の観点]
前記放熱板のうち前記厚み方向を向く面または前記放熱板のうち前記厚み方向の中間位置に設けられる板状の絶縁体(51、52)をさらに有する、第1ないし第6の観点のいずれか1つに記載の半導体モジュール。
[第8の観点]
前記放熱板のうち前記厚み方向を向く面および前記厚み方向に垂直な方向を向く面を覆う金属板をさらに有する、第1ないし第7の観点のいずれか1つに記載の半導体モジュール。
[第9の観点]
前記放熱板のうち前記厚み方向を向く面に設けられた金属めっき層(53)をさらに有する、第1ないし第8の観点のいずれか1つに記載の半導体モジュール。
[第10の観点]
半導体モジュールに用いられる半導体素子(10)が発する熱を放熱させる板状の放熱板において、
前記半導体素子は、前記放熱板の厚み方向に設けられ、
前記放熱板は、熱伝導率に異方性のある材料を含んで形成される第1放熱部(21)および第2放熱部(22)を有し、
前記第1放熱部は、前記厚み方向において前記半導体素子と対向する位置を含んで設けられ、前記厚み方向に平行な任意の第1仮想面の面内方向に高熱伝導性を有し、
前記第2放熱部は、前記第1放熱部に対し前記第1仮想面の面内方向に平行且つ前記厚み方向に垂直な方向に接続され、前記厚み方向に垂直な第2仮想面の面内方向に高熱伝導性を有する、放熱板。
なお、第10の観点に対し、第2~第9の観点を任意に組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0134】
1 半導体モジュール
10 半導体素子
20 放熱板
21 第1放熱部
22 第2放熱部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
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図19
図20
図21
図22
図23
図24
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図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34