(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177903
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】タイヤ空気圧監視システム
(51)【国際特許分類】
B60C 23/04 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
B60C23/04 150H
B60C23/04 150G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096299
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 正博
(57)【要約】
【課題】各センサユニットからのフレームの混信およびセンサユニットでの無駄な電力消費を抑制可能なタイヤ空気圧監視システムを提供する。
【解決手段】タイヤ空気圧監視システムは、センサユニット2a~2dおよび車載機3を備える。車載機3の車載制御部33は、フレームに双方向コマンドが示されている場合にレスポンス信号を車載送受信部32から送信させる。センサユニット2a~2dのセンサ制御部22は、車両1の走行中にタイヤ空気圧の異常を検出すると、タイヤ空気圧が正常な場合に比べて単位時間あたりのフレームの送信回数を多くする高頻度送信モードに移行して、双方向コマンドを示すフレームを送信する。そして、センサ制御部22は、双方向コマンドを示すフレームの送信後にレスポンス信号をセンサ送受信部23で受信すると、高頻度送信モードに比べて単位時間あたりのフレームの送信回数が少ない通常送信モードに移行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)のタイヤ空気圧を監視するタイヤ空気圧監視システムであって、
タイヤを含む複数の車輪(5a~5d)それぞれに対応して設けられた複数のセンサユニット(2a~2d)と、
車体(6)に設けられた車載機(3)と、を備え、
複数の前記センサユニットそれぞれは、前記タイヤ空気圧を示す検出信号を出力する圧力センサ(21a)と、前記タイヤ空気圧を示す検出信号を信号処理して前記タイヤ空気圧に関する検知データを含むとともに、単方向コマンドと双方向コマンドの一方を示すフレームを作成して所定の送信間隔で送信を行わせる第1制御部(22)と、前記フレームの送信および前記車載機から送信されるレスポンス信号の受信を行う第1送受信部(23)と、を有し、
前記車載機は、前記フレームの受信および前記レスポンス信号の送信を行う第2送受信部(32)と、前記第2送受信部で受信した前記フレームに格納された前記検知データに基づいて前記タイヤ空気圧を検出する第2制御部(33)と、を有し、
前記第2制御部は、前記フレームに前記双方向コマンドが示されている場合に前記レスポンス信号を前記第2送受信部から送信させるようになっており、
前記第1制御部は、
前記車両の走行中に前記タイヤ空気圧を示す検出信号に基づいて前記タイヤ空気圧の異常を検出すると、前記タイヤ空気圧が正常な場合に比べて単位時間あたりの前記フレームの送信回数を多くする高頻度送信モードに移行して、前記双方向コマンドを示す前記フレームを前記第1送受信部から送信させ、
前記双方向コマンドを示す前記フレームの送信後に前記レスポンス信号を前記第1送受信部で受信すると、前記高頻度送信モードに比べて前記送信回数が少ない通常送信モードに移行する、タイヤ空気圧監視システム。
【請求項2】
前記第2制御部は、前記双方向コマンドを示す前記フレームを受信すると、前記フレームを送信した前記センサユニットが取り付けられた前記タイヤの車輪角度を基準角度としてメモリ(M)に記憶し、前記フレームを送信した前記センサユニットが取り付けられた前記車輪角度が前記基準角度になるタイミングで前記レスポンス信号を前記第2送受信部から送信させる、請求項1に記載のタイヤ空気圧監視システム。
【請求項3】
前記第2制御部は、前記双方向コマンドを示す前記フレームを受信すると、前記第2送受信部から前記レスポンス信号を複数回送信させる、請求項1または2に記載のタイヤ空気圧監視システム。
【請求項4】
前記第1制御部は、前記通常送信モードに移行すると、所定の周期で前記単方向コマンドを示す前記フレームを前記第1送受信部から送信させ、
前記第2制御部は、同じ前記センサユニットから前記双方向コマンドを示す前記フレームを2回以上受信すると、前記第2送受信部から前記レスポンス信号を複数回送信させる、請求項1または2に記載のタイヤ空気圧監視システム。
【請求項5】
前記センサユニットは、前記タイヤ空気圧の変化量が所定の規定変化量以内である場合に前記タイヤ空気圧が正常と判定し、前記タイヤ空気圧の変化量が前記規定変化量を超えている場合に前記タイヤ空気圧が異常と判定する、請求項1または2に記載のタイヤ空気圧監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤ空気圧監視システム(以下、TPMSとも呼ぶ)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ空気圧の異常が検出されると、タイヤに取り付けられたセンサユニットから車載機へのタイヤ空気圧を含むフレームの送信頻度を高くすることで、タイヤ空気圧の異常をドライバに伝える技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のTPMSは、タイヤ空気圧に異常が検出されてから予め定められた一定時間経過するまで、センサユニットでのフレームの送信頻度を高くするようになっている。このようになっていると、車載機にタイヤ空気圧の異常が通知された後も、センサユニットでのフレームの送信頻度が高くなった状態が継続されることとなる。このことは、各センサユニットからのフレームの混信を助長したり、センサユニットでの無駄な電力消費となったりすることから好ましくない。
【0005】
本開示は、各センサユニットからのフレームの混信およびセンサユニットでの無駄な電力消費を抑制可能なTPMSを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、
車両(1)のタイヤ空気圧を監視するタイヤ空気圧監視システムであって、
タイヤを含む複数の車輪(5a~5d)それぞれに対応して設けられた複数のセンサユニット(2a~2d)と、
車体(6)に設けられた車載機(3)と、を備え、
複数のセンサユニットそれぞれは、タイヤ空気圧を示す検出信号を出力する圧力センサ(21a)と、タイヤ空気圧を示す検出信号を信号処理してタイヤ空気圧に関する検知データを含むとともに、単方向コマンドと双方向コマンドの一方を示すフレームを作成して所定の送信間隔で送信を行わせる第1制御部(22)と、フレームの送信および車載機から送信されるレスポンス信号の受信を行う第1送受信部(23)と、を有し、
車載機は、フレームの受信およびレスポンス信号の送信を行う第2送受信部(32)と、第2送受信部で受信したフレームに格納された検知データに基づいてタイヤ空気圧を検出する第2制御部(33)と、を有し、
第2制御部は、フレームに双方向コマンドが示されている場合にレスポンス信号を第2送受信部から送信させるようになっており、
第1制御部は、
車両の走行中にタイヤ空気圧を示す検出信号に基づいてタイヤ空気圧の異常を検出すると、タイヤ空気圧が正常な場合に比べて単位時間あたりのフレームの送信回数を多くする高頻度送信モードに移行して、双方向コマンドを示すフレームを第1送受信部から送信させ、
双方向コマンドを示すフレームの送信後にレスポンス信号を第1送受信部で受信すると、高頻度送信モードに比べて単位時間あたりのフレームの送信回数が少ない通常送信モードに移行する。
【0007】
このように、センサユニットでタイヤ空気圧の異常が検出されると、センサユニットから車載機へのフレームの送信頻度が高くなる構成になっていれば、タイヤ空気圧の異常を車載機へ適切に伝えることができる。特に、本開示のTPMSは、車載機からのレスポンス信号をセンサユニットが受信したことを契機に、センサユニットから車載機へのフレームの送信頻度が低くなる構成になっている。これによれば、車載機にタイヤ空気圧の異常が通知された後はセンサユニットでのフレームの送信頻度が低くなることで、各センサユニットからのフレームの混信を抑制したり、センサユニットでの無駄な電力消費を抑制したりすることができる。
【0008】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るTPMSの概略構成図である。
【
図2】センサユニットの構成を示すブロック図である。
【
図4】センサ制御部が実行する制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】タイヤ空気圧が異常となる場合のセンサユニットにおけるフレームの送信頻度を説明するための説明図である。
【
図6】車載制御部が実行する制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】車輪が一回転した際の車載機で受信する信号の電波レベルの変化と車載機での信号を受信可能な感度レベルとの関係を説明するための説明図である。
【
図8】双方向コマンドを示すフレームを受信した際に車載機から送信するレスポンス信号を説明するための説明図である。
【
図9】タイヤ空気圧が異常となる場合のセンサユニットにおけるフレームの送信態様の変形例を説明するための説明図である。
【
図10】双方向コマンドを示すフレームを受信した際に車載機から送信するレスポンス信号の送信態様の変形例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の一実施形態について
図1~
図8に基づいて説明する。本実施形態では、本開示のTPMSを、4つの車輪5a~5dを有する車両1に適用した例について説明する。なお、
図1の紙面上方向が車両1の前方、紙面下方が車両1の後方、紙面左右方向が車両1の左右方向となっている。また、4つの車輪5a~5dを区別して説明する場合等に、4つの車輪5a~5dを左前輪FL、右前輪FR、左後輪RL、右後輪RRと表記することがある。
【0011】
図1に示すTPMSは、センサユニット2a~2d、車載機3、表示機器4を備えて構成されている。なお、表示機器4は、TPMSの専用の機器として構成されていてもよいが、メータ、ナビゲーションシステム等と共用される機器として構成されていてもよい。
【0012】
図1に示すように、センサユニット2a~2dは、車両1における各車輪5a~5dに取り付けられるもので、車輪5a~5dに取り付けられたタイヤの空気圧や温度を検出するとともに、その検出結果を示す検出信号のデータをフレーム内に格納して送信する。また、車載機3は、車両1における車体6側に取り付けられるもので、センサユニット2a~2dから送信されるフレームを受信するとともに、その中に格納された検出信号に基づいてタイヤ空気圧を検出する。また、本実施形態にかかるセンサユニット2a~2dと車載機3は、センサユニット2a~2dから車載機3への通信だけでなく、その逆も可能な双方向通信を行えるものとされている。このため、センサユニット2a~2dから車載機3に対してレスポンス信号の送信の要求も可能となっている。双方向通信の形態については様々なものを適用することができる。以下、
図2および
図3を参照して、センサユニット2a~2dおよび車載機3の詳細構成について説明する。
【0013】
図2に示すように、センサユニット2a~2dは、センシング部21、センサ制御部22、センサ送受信部23、電池24、およびアンテナ25を備えた構成となっており、電池24からの電力供給に基づいて各部が駆動されるようになっている。本実施形態では、センサ制御部22が“第1制御部”に相当し、センサ送受信部23が“第1送受信部”に相当する。
【0014】
センシング部21は、例えば、圧力センサ21a、温度センサ21b、および加速度センサ21cを備えた構成とされている。圧力センサ21aは、タイヤ空気圧に応じた検出信号を出力する。温度センサ21bは、タイヤ内温度に応じた検出信号を出力する。加速度センサ21cは、タイヤ回転に伴って発生する加速度、例えば、各車輪5a~5dの径方向の加速度に応じた検出信号を出力する。そして、センシング部21は、これら圧力センサ21a、温度センサ21b、加速度センサ21cの出力する検出信号をセンサ制御部22に伝えている。なお、これらのうちタイヤ空気圧に応じた検出信号やタイヤ内温度に応じた検出信号はタイヤ空気圧検出に用いられ、加速度に応じた検出信号は車両1が走行中であることの検出に用いられる。
【0015】
センサ制御部22は、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えたマイクロコンピュータによって構成され、ROM等に記憶されたプログラムに従って、所定の処理を実行する。センサ制御部22には、各センサユニット2a~2dを特定するためのセンサユニット固有の識別情報と自車両を特定するための車両固有の識別情報とを含むID情報が格納されている。
【0016】
センサ制御部22は、センシング部21から出力された検出信号を受け取り、それを信号処理するとともに必要に応じて加工する。そして、センサ制御部22は、タイヤ空気圧検出に用いるタイヤ空気圧やタイヤ内温度の検出結果を示すデータについて、各センサユニット2a~2dのID情報と共にフレーム内に格納し、当該フレームを所定の定期送信間隔でセンサ送受信部23に送る。また、センサ制御部22は、自身でタイヤ空気圧低下の判定を行うようになっている。センサ制御部22は、タイヤ空気圧低下が生じているか否かを示すデータもフレーム内に格納してセンサ送受信部23に送られるようにする。例えば、センサ制御部22は、タイヤ空気圧の変化量を所定の規定変化量と比較し、タイヤ空気圧の変化量が規定変化量を超えた場合にタイヤ空気圧が異常と判定し、タイヤ空気圧が異常であることを示すデータをフレームに格納する。
【0017】
なお、以下の説明では、タイヤ空気圧やタイヤ内温度の検出結果を示すデータ、および、タイヤ空気圧の異常の有無を示すデータのことをタイヤ空気圧に関する検知データという。ただし、タイヤ空気圧に関する検知データにこれらすべてのデータが必ず含まれている必要はなく、タイヤ空気圧やタイヤ内温度の検出結果を示すデータと、タイヤ空気圧の異常の有無を示すデータの一方だけであっても良い。
【0018】
また、センサ制御部22は、加速度の検出結果については、車両1が通常走行状態であるか否かの判定に用いている。例えば、加速度センサ21cが各車輪5a~5dの径方向の加速度に応じた検出信号を出力するものである場合、センサ制御部22は、検出信号から重力加速度成分を取り除き、遠心加速度成分を抽出する。この遠心加速度成分の変化は、タイヤの回転状態を示している。このため、センサ制御部22は、遠心加速度成分が発生していることに基づいて車両1が通常走行状態であることを検出している。本実施形態の場合、センサ制御部22は、遠心加速度が一定値以上であれば車両1が通常走行状態、一定値未満であれば車両1が徐行・停車状態と判定するようになっている。例えば、20km/h程度の低速走行中(徐行状態)に発生する遠心加速度を一定値としている。この程度の低速走行中であれば、タイヤ空気圧の検出頻度が低下したとしても、危険性が少ないため、低速走行中を含めて徐行・停車状態と見做している。
【0019】
さらに、センサ制御部22は、遠心加速度が一定値以上で車両1が通常走行状態と判定したときには、基本的には、センサユニット2a~2dからのフレーム送信だけを定期的に行う単方向通信を行う。この場合には、センサ制御部22は、フレーム内に単方向コマンドを格納してフレーム送信を行っている。
【0020】
但し、センサ制御部22は、通常走行状態であっても、タイヤ空気圧に異常があると判定したときには、センサユニット2a~2dからのフレーム送信に加えて車載機3からの応答を求める双方向通信を行う。この場合には、センサ制御部22は、フレーム内に双方向コマンドを格納してフレーム送信を行う。
【0021】
センサ送受信部23は、アンテナ25を通じて、センサ制御部22から送られてきたフレームをRF電波として車載機3に向けて送信する出力部としての機能を果たす。また、センサ送受信部23は、車載機3からのレスポンス信号を復調してセンサ制御部22に送る入力部としての機能も果たす。センサ送受信部23は、ここでは1つの構成として記載されているが、送信部と受信部それぞれが別々に構成されたものであっても良い。ここでは、センサ送受信部23は、例えば、300MHzもしくは400MHzのUHF帯域の無線電波を用いて送受信を行っているが、どの周波数帯の電波を用いるかについては任意に選択できる。センサ制御部22からセンサ送受信部23へ信号を送る処理は上記プログラムに従って行われる。
【0022】
電池24は、センシング部21やセンサ制御部22などに対して電力供給を行っており、この電池24からの電力供給を受けて、センシング部21でのタイヤ空気圧に関するデータの収集やセンサ制御部22での各種演算などが実行される。また、ここでは電源部を電池24で構成しているが、電池24の他にも、発電装置および蓄電池等によって電源部を構成することもできる。電源部が発電装置を有した構成とされる場合、電池24とされる場合と比較すると電池寿命の問題は少なくなるが、大きな電力の発電は難しいため、消費電力の低減を図るという課題は電池24とされる場合と同様である。
【0023】
このように構成されるセンサユニット2a~2dは、例えば、各車輪5a~5dのホイールにおけるエア注入バルブに取り付けられ、センシング部21がタイヤの内側に露出するように配置される。これにより、センサユニット2a~2dは、該当車輪のタイヤ空気圧を検出し、各センサユニット2a~2dに備えられたアンテナ25を通じて、所定のタイミングでフレームを送信するようになっている。
【0024】
一方、
図3に示すように、車載機3は、アンテナ31、車載送受信部32、および車載制御部33を備えた構成となっている。本実施形態では、車載送受信部32が“第2送受信部”に相当し、車載制御部33が“第2制御部”に相当する。
【0025】
アンテナ31は、車体6に備えられ、各センサユニット2a~2dから送られてくるフレームを受信したり、受信したフレームに双方向コマンドが含まれている際に、各センサユニット2a~2dに対してレスポンス信号を送信したりするためのものである。ここでは、アンテナ31は、各センサユニット2a~2dとの送受信を総括的に行う1本の共通アンテナで構成されているが、センサユニット2a~2dごとに備えられたものであっても良いし、送信用と受信用とで別々のもので構成されていても良い。
【0026】
車載送受信部32は、各センサユニット2a~2dから送信されたフレームがアンテナ31で受信されると、それを復調して車載制御部33に送る入力部としての機能を果たす。また、車載送受信部32は、車載制御部33からの指示に従って、各センサユニット2a~2dに対してレスポンス信号の送信を行う出力部としての機能も果たす。車載送受信部32は、ここでは送信および受信の両方を行える構成とされているが、送信部と受信部がそれぞれ別々の構成とされたものであっても良い。
【0027】
車載制御部33は、CPU、ROMやRAMを含むメモリM、I/Oなどを備えたマイクロコンピュータによって構成され、メモリMに記憶されたプログラムに従って各種処理を実行する。具体的には、車載制御部33は、図示しないバッテリからの電力供給に基づいて作動し、車載送受信部32でのフレーム受信やレスポンス送信の制御を行ったり、タイヤ空気圧検出に関わる各種処理を行ったりする。
【0028】
例えば、車載制御部33は、タイヤ空気圧検出に関わる各種処理として、警報判定処理などを、TPMSの規定処理として行っている。
【0029】
警報判定処理では、車載送受信部32から受け取ったフレームに格納されたタイヤ空気圧に関する検知データに基づいて各種信号処理および演算等を行って、タイヤ空気圧に応じた電気信号を表示機器4に出力する。警報判定処理では、タイヤ空気圧を所定の警報閾値と比較し、タイヤ空気圧が所定の警報閾値以下に低下したことを検知した場合には、その旨の信号を表示機器4に出力する。また、センサユニット2a~2dでタイヤ空気圧検出を行っている場合には、受信したフレーム中に含まれるタイヤ空気圧低下が発生したことを示すデータに基づいて、表示機器4にタイヤ空気圧低下が発生したことを伝えることもできる。
【0030】
さらに、車載制御部33は、4つの車輪5a~5dそれぞれのタイヤ空気圧を求めたら、そのタイヤ空気圧を各車輪5a~5dと対応させて表示機器4に出力することもできる。車載制御部33のメモリMには、各車輪5a~5dに配置されているセンサユニット2a~2dのID情報が各車輪5a~5dの位置と関連づけられて記憶されている。このため、車載制御部33は、フレームに格納されたID情報と照合することで、受信したフレームが車輪5a~5dのどれに取り付けられたセンサユニット2a~2dであるかを認識し、タイヤ空気圧が低下した車輪5a~5dを特定できる。これに基づき、タイヤ空気圧低下が発生した場合に、低下した車輪5a~5dを特定して表示機器4に出力する。また、タイヤ空気圧低下が発生していない場合でも、求めたタイヤ空気圧を各車輪5a~5dと対応させて、表示機器4に出力するようにしても良い。
【0031】
このようにして、4つの車輪5a~5dのいずれかのタイヤ空気圧が低下したこと、もしくは、4つの車輪5a~5dそれぞれのタイヤ空気圧が表示機器4に伝えられる。
【0032】
表示機器4は、
図1に示されるように、ドライバが視認可能な場所に配置され、例えば車両1におけるインストルメントパネル内に設置される警報ランプやディスプレイによって構成される。この表示機器4は、例えば車載機3における車載制御部33からタイヤ空気圧が低下した旨を示す信号が送られてくると、その旨の表示を行うことでドライバにタイヤ空気圧の低下を報知する。または、車載機3から4つの車輪5a~5dそれぞれのタイヤ空気圧が伝えられると、各車輪5a~5dと対応させて各タイヤ空気圧を表示する。
【0033】
なお、本実施形態では、表示機器4をドライバへの警告を行う警告部として用いているが、表示機器4のように視覚的に警告を行うものの他、スピーカなどの聴覚的に警告を行うものを警告部として用いても良い。
【0034】
このように構成される車載機3は、例えば、CAN等の車両1に構築された通信ネットワークを介して、上位ECU7、DCM8を含む他の車載機器に接続されている。上位ECU7は、例えば、車両1の操舵、加減速等を制御する制御機器である。DCM8は、車両通信モジュールであって、無線通信により通信センタとの間で情報通信可能になっている。なお、CANは、Controller Area Networkの略称である。また、DCMは、Data Communication Moduleの略称である。
【0035】
車載機3は、例えば、上位ECU7から各車輪5a~5dの車輪角度に対応する車輪速パルス等の他のセンサ情報を取得したり、センサユニット2a~2d以外の他の装置へタイヤ空気圧に関する検知データを発信したりすることが可能になっている。また、車載機3は、例えば、DCM8を用いて、通信センタ等を経由して、タブレット、スマートフォン等の情報端末からの要求を受信したり、当該情報端末へタイヤ空気圧に関する検知データを発信したりすることが可能になっている。
【0036】
以上の如く構成されるTPMSは、車両1の走行中に各車輪5a~5dのタイヤ空気圧の異常な減少が生ずると、タイヤ空気圧の異常がセンサユニット2a~2dから車載機3への高頻度のフレーム送信によって素早く通知されるようになっている。
【0037】
このような技術は、タイヤ空気圧に異常が検出されてから一定時間経過するまでセンサユニット2a~2dから車載機3へのフレームの送信頻度を高くすることで実現可能である。
【0038】
しかし、この場合、タイヤ空気圧の異常が車載機3へ通知された後も高頻度のフレーム送信が継続されるので、各センサユニット2a~2dから送信されるフレームの混信を助長してしまうとともに、各センサユニット2a~2dの電池24を無駄に消耗してしまう。
【0039】
また、車載機3で受信する信号の電波レベルは、車載機3とタイヤの位置関係やセンサユニット2a~2d間での出力差等によって、センサユニット2a~2d毎に優劣が発生する。このため、例えば、センサユニット2a~2dのうち、高頻度のフレーム送信を行うユニットが車載機3に対して最も電波レベルの高い信号を送信可能であった場合、当該ユニットからの信号と混信した他のユニットの信号が車載機3に伝わらない可能性が高い。また、最悪の場合、車載機3では、高頻度のフレーム送信が終わるまでの期間、他のユニットからの信号を受信できなくなることも考えられる。この場合、複数のセンサユニット2a~2dでタイヤ空気圧の異常が立て続けに発生すると、当該ユニットの信号がなかなか車載機3に伝わらなくなってしまう。
【0040】
これらを踏まえ、本実施形態のTPMSは、タイヤ空気圧の異常が車載機3へ通知された後は、各センサユニット2a~2dからフレーム送信の頻度を低下させるようになっている。
【0041】
具体的には、センサ制御部22は、車両1の走行中に、タイヤ空気圧を示す検出信号に基づいてタイヤ空気圧の異常を検出すると、タイヤ空気圧が正常な場合に比べて単位時間あたりのフレームの送信回数を多くする高頻度送信モードに移行する。センサ制御部22は、高頻度送信モード時には、単方向コマンドではなく、双方向コマンドを示すフレームをセンサ送受信部23から送信させる。そして、センサ制御部22は、双方向コマンドを示すフレームの送信後に車載機3からレスポンス信号をセンサ送受信部23で受信すると、高頻度送信モードに比べて単位時間あたりのフレームの送信回数が少ない通常送信モードに移行する。
【0042】
以下、本実施形態のセンサ制御部22が実行する具体的なタイヤ側処理フローについて、
図4を参照しつつ説明する。なお、
図4に示す処理は、車両1の通常走行状態となる度に、センサ制御部22によって実行される。
【0043】
図4に示すように、まず、ステップS100では、タイヤ空気圧の変化量が規定変化量以内であるか否かを判定する。ここでいうタイヤ空気圧の変化量は、センサユニット2a~2dで今回検出された値と前回までに検出された値との差分である。また、規定変化量は、例えば、パンク等の異常が生じた際に想定されるタイヤ空気圧の変化量に設定される。
【0044】
ステップS100で肯定判定された場合には、ステップS105に進み、車載機3からレスポンス信号の受信の履歴を示す受信フラグの状態を“0”に設定する。本例のセンサ制御部22は、受信フラグの初期状態を“0”とし、車載機3からのレスポンス信号の受信が有った場合に受信フラグの状態を“1”に設定するようになっている。
【0045】
その後、ステップS110に進み、圧力センサ21aや温度センサ21bの検出結果に応じたタイヤ空気圧に関する検知データを格納したフレームがタイヤ情報として送信される。このときには、車両1が走行中にタイヤ空気圧が正常であると判定された場合のフレーム送信となるため、フレーム内に単方向コマンドを格納している。そして、ステップS115に進み、走行中に設定される定期送信周期毎にフレーム送信が行われるように、例えば60秒毎という通常用インターバルにタイマー設定を行う。
【0046】
続いて、ステップS120に進み、加速度が一定値以上であるか否かが判定される。この処理は、ステップS115において通常用インターバルに設定されたタイマーがタイムアップする迄の期間中に繰り返し行われ、車両1が走行を継続していることが確認される。そして、ステップS125でタイムアップしたら再びステップS100に戻る。
【0047】
これにより、車両1の走行中にタイヤ空気圧が正常と判定された場合は、
図5の上段に示すように、通常用インターバルとして設定される所定周期毎に、単方向コマンドが格納されたフレーム送信が行われることになる。なお、ステップS120で否定判定された場合、ステップS130で受信フラグの状態を初期状態である“0”に設定して本処理を抜ける。
【0048】
一方、ステップS100で否定判定された場合には、タイヤ空気圧の異常として、ステップS135に進む。このステップS135では、受信フラグの状態が“1”であるか否かを判定する。
【0049】
受信フラグの状態が“1”の場合は、既に車載機3からレスポンス信号を受信していることになるので、ステップS110に進み、タイヤ空気圧に関する検知データおよび単方向コマンドを格納したフレームがタイヤ情報として送信される。
【0050】
また、受信フラグの状態が“0”の場合は、ステップS140に進み、タイヤ空気圧に関する検知データおよび双方コマンドを格納したフレームがタイヤ情報として送信される。このフレームには、タイヤ空気の異常を示す情報が含まれていてもよいし、当該情報が含まれていなくてもよい。
【0051】
ここで、センサユニット2a~2dは、双方向コマンドを示すフレームを送信した後、予め定められた受信待ち時間が経過するまで、車載機3からのレスポンス信号を受信するための受信待ち状態となる。なお、受信待ち時間は、センサユニット2a~2dから双方向コマンドを示すフレームを送信してから車載機3からのレスポンス信号を受信までに要する時間を考慮して設定される。
【0052】
双方向コマンドを示すフレームの送信後、ステップS145に進み、車載機3からのレスポンス信号を受信したか否かを判定する。この判定では、車載機3からのレスポンス信号を受信していれば肯定判定、レスポンス信号を受信していなければ否定判定となる。
【0053】
レスポンス信号を受信している場合、ステップS150に進み、受信フラグの状態を“1”に設定する。その後、ステップS115に戻り、走行中に設定される定期送信周期毎にフレーム送信が行われるように、例えば60秒毎という通常用インターバルにタイマー設定を行う。つまり、センサ制御部22は、双方向コマンドを示すフレームの送信後にレスポンス信号をセンサ送受信部23で受信すると、高頻度送信モードに比べて単位時間あたりのフレームの送信回数が少ない通常送信モードに移行する。
【0054】
一方、レスポンス信号を受信していない場合、ステップS155に進む。このステップS155では、タイヤ空気圧が正常な場合に比べて、単位時間当たりのフレーム送信の回数が多くなるように、例えば10秒毎という通常用インターバルより短い異常用インターバルにタイマー設定を行う。
【0055】
続いて、ステップS120に進み、加速度が一定値以上であるか否かが判定される。この処理は、ステップS155において異常用インターバルに設定されたタイマーがタイムアップする迄の期間中に繰り返し行われ、車両1が走行を継続していることが確認される。そして、ステップS125でタイムアップしたら再びステップS100戻る。
【0056】
これにより、車両1の走行中にタイヤ空気圧が異常と判定された場合は、
図5の下段に示すように、異常用インターバルとして設定される所定周期毎に、双方向コマンドが格納されたフレーム送信が行われることになる。つまり、センサ制御部22は、車両1の走行中にタイヤ空気圧の異常を検出すると、タイヤ空気圧が正常な場合に比べて単位時間あたりのフレームの送信回数を多くする高頻度送信モードに移行して、双方向コマンドを示すフレームを送信する。なお、ステップS120で否定判定された場合、ステップS130で受信フラグの状態を初期状態である“0”に設定して本処理を抜ける。
【0057】
次に、車載制御部33が実行する車両側処理フローを参照して、車載機3の動作について、
図6を参照しつつ説明する。なお、
図6に示す処理は、車両1の起動スイッチがオンされると車載制御部33によって実行される。起動スイッチは、例えば、エンジン搭載車におけるイグニッションスイッチに対応し、電気自動車におけるパワースイッチに対応するスイッチである。
【0058】
図6に示すように、まず、ステップS200では、各種信号を受信する受信処理を開始する。これにより、各センサユニット2a~2dから送信されてきたフレームが受信される。
【0059】
続いて、各センサユニット2a~2dからのフレームを受信すると、ステップS205に進み、コマンドを受信したか否か、つまりセンサユニット2a~2dから送信されたフレームに含まれる単方向コマンドや双方向コマンドを受信したか否かを判定する。
【0060】
単方向コマンドおよび双方向コマンドのいずれかを受信していればステップS210に進み、受信したコマンドが双方向コマンドであるか否かを判定する。通常用インターバルで設定される定期送信周期毎にセンサユニット2a~2dから送信されたフレームを受信した場合には、単方向コマンドが含まれていることから、ステップS210で否定判定とされ、ステップS215に進む。ステップS215では、単方向コマンドを含むフレームを送信したセンサユニット2a~2dのID情報が、タイヤ空気圧の異常を示す異常発生センサIDとしてメモリMに登録されているか否かを判定する。
【0061】
単方向コマンドを含むフレームを送信したセンサユニット2a~2dのID情報が異常発生センサIDとしてメモリMに登録されている場合は、ステップS220に進み、メモリMに登録された異常発生センサIDをクリアする。ここでクリアするのは、単方向コマンドを含むフレームを送信したセンサユニット2a~2dのID情報である。
【0062】
また、単方向コマンドを含むフレームを送信したセンサユニット2a~2dのID情報が異常発生センサIDとしてメモリMに登録されていない場合は、ステップS220をスキップして、ステップS225に進む。なお、ステップS205の判定処理にて否定判定された場合もステップS225に進む。
【0063】
ステップS225では、TPMSの規定処理として、前述した警報判定や表示機器4への表示が行われ、その後、ステップS230に進む。ステップS230では、車両1の起動スイッチがオンされているか否かを判定し、起動スイッチがオンされている場合はステップS205に戻り、起動スイッチがオフされている場合はステップS235に進み、信号の受信処理を停止して、本処理を抜ける。
【0064】
一方、異常用インターバルで設定される送信周期毎にセンサユニット2a~2dから送信されたフレームを受信した場合には、双方向コマンドが含まれていることから、ステップS210で肯定判定とされ、ステップS240に進む。
【0065】
ステップS240では、フレームを送信したセンサユニット2a~2dの現在の車輪角度を基準角度としてメモリMに記憶する。車輪角度は、各車輪5a~5dにおける車軸を中心とする回転角度であり、上位ECU7から取得する各車輪5a~5dの車輪速パルスに基づいて求められる。
【0066】
その後、ステップS245に進み、フレームを送信したセンサユニット2a~2dの現在の車輪角度がメモリMに記憶された基準角度となるまで待機する。フレームを送信したセンサユニット2a~2dの現在の車輪角度が基準角度となると、ステップS250に進み、フレームの受信処理を一時的に停止して、レスポンス信号を送信する。つまり、車載制御部33は、双方向コマンドを示すフレームを送信したセンサユニット2a~2dが取り付けられたタイヤの車輪角度がメモリMに記憶された基準角度になるタイミングでレスポンス信号を車載送受信部32から送信させる。なお、レスポンス信号は、双方向コマンドを示すフレームに対する応答信号である。
【0067】
その後、ステップS255に進み、双方向コマンドを含むフレームを送信したセンサユニット2a~2dのID情報が異常発生センサIDとしてメモリMに登録されているか否かを判定する。
【0068】
双方向コマンドを含むフレームを送信したセンサユニット2a~2dのID情報が異常発生センサIDとしてメモリMに登録されていない場合は、ステップS260に進む。ステップS260では、双方向コマンドを含むフレームを送信したセンサユニット2a~2dのID情報を異常発生センサIDとしてメモリMに登録し、ステップS270に進む。
【0069】
一方、双方向コマンドを含むフレームを送信したセンサユニット2a~2dのID情報が異常発生センサIDとして既にメモリMに登録されている場合、ステップS265に進み、レスポンス信号を車載送受信部32から送信させる。つまり、車載制御部33は、同じセンサユニット2a~2dから双方向コマンドを示すフレームを2回以上受信した場合、1回目のレスポンス信号がセンサユニット2a~2dに届いていない可能性が高いので、レスポンス信号を複数回送信する。
【0070】
ステップS260またはステップS265の処理が実施された後、ステップS270に進み、各種信号の受信処理を再開する。その後、ステップS225に進み、前述のTPMSの規定処理が行われる。
【0071】
以上説明した本実施形態のTPMSは、車輪5a~5d側に備えられたセンサユニット2a~2dと車体6側に備えられた車載機3との双方向通信を可能としている。そして、車載機3の車載制御部33は、各センサユニット2a~2dから送信されるフレームに双方向コマンドが示されている場合にレスポンス信号を車載送受信部32から送信させるようになっている。各センサユニット2a~2dのセンサ制御部22は、車両1の走行中にタイヤ空気圧の異常を検出すると、高頻度送信モードに移行して、双方向コマンドを示すフレームをセンサ送受信部23から送信させる。また、センサ制御部22は、双方向コマンドを示すフレームの送信後にレスポンス信号をセンサ送受信部23で受信すると、通常送信モードに移行して、単方向コマンドを示すフレームをセンサ送受信部23から送信させる。
【0072】
このように、センサユニット2a~2dでタイヤ空気圧の異常が検出されると、センサユニット2a~2dから車載機3へのフレームの送信頻度が高くなる構成になっていれば、タイヤ空気圧の異常を車載機3へ適切に伝えることができる。
【0073】
特に、本実施形態のTPMSは、車載機3からのレスポンス信号をセンサユニット2a~2dが受信したことを契機に、センサユニット2a~2dから車載機3へのフレームの送信頻度が低くなる構成になっている。これによれば、各センサユニット2a~2dからのフレームの混信を抑制したり、センサユニット2a~2dでの無駄な電力消費を抑制したりすることができる。
【0074】
また、本実施形態のTPMSは、以下の特徴を備える。
【0075】
(1)センサユニット2a~2dはタイヤに取り付けられているので、センサユニット2a~2dから車載機3に送信される信号の電波レベルが車輪角度によって大きく変動する。車載機3からセンサユニット2a~2dに送信される信号の電波レベルも可逆性によって同様に変動する。例えば、センサユニット2aから車載機3に送信される信号の電波レベルは、
図7の実線で示すように変化する。
図7中の角度は、センサユニット2aが存在する角度を示している。
図7では、センサユニット2aが最も上方位置に位置しているときを0度とし、そこから反時計回りに存在角度が徐々に増加していくものとして図示している。図中の破線は、車載機3での受信が可能なレベルとなる受信感度レベルを示している。
【0076】
図7に示すように、センサユニット2aが回転すると、その角度に応じて車載機3で受信する信号の電波レベルが変化している。そして、受信電力レベルが破線で示した受信感度レベルよりも低くなる、すなわち通信が成立しない存在角度が複数存在している。例えば、150度の位置にセンサユニット2aが存在するときに双方向コマンドのフレームを車載機3で受信したとする。このケースにおいて、車載機3がレスポンス信号を送信するタイミングで、センサユニット2aが、165度や210度付近に存在していると、センサユニット2aでレスポンス信号を受信し損ねる可能性がある。
【0077】
これに対して、センサユニット2aからのフレームを車載機3で受信可能な車輪角度であれば、車載機3からの信号をセンサユニット2aで受信し易いと考えられる。このことを加味して、本実施形態の車載制御部33は、双方向コマンドを示すフレームを受信すると、フレームを送信したセンサユニット2a~2dが取り付けられたタイヤの車輪角度を基準角度としてメモリMに記憶する。具体的には、車載制御部33は、フレームに含まれるID情報からフレームを送信したセンサユニット2a~2dを特定し、センサユニット2a~2dのIDと基準角度とを対応付けた状態でメモリMに記憶する。そして、フレームを送信したセンサユニット2a~2dが取り付けられたタイヤの車輪角度が再び基準角度になるタイミングでレスポンス信号を車載送受信部32から送信させるようになっている。これによると、車載機3にタイヤ空気圧の異常が通知された後に車載機3から送信されるレスポンス信号をセンサユニット2a~2dで受信し易くなり、センサユニット2a~2dでのフレームの送信頻度を適切に低くすることができる。
【0078】
(2)車載制御部33は、双方向コマンドを示すフレームを受信すると、車載送受信部32からレスポンス信号を複数回送信させる。このように、車載機3からのレスポンス信号をセンサユニット2a~2dへ複数回送信するようになっていれば、センサユニット2a~2dでのレスポンス信号を受信する確率を高めることができる。
【0079】
(3)ただし、単純に車載機3における信号の送信頻度を高めると、車載機3での各センサユニット2a~2dからのフレームの受信が制限されることになってしまう。なお、車載機3における信号の送信頻度が低いと、各センサユニット2a~2dで車載機3からの信号を受信し難くなってしまう。
【0080】
これらを考慮して、本実施形態の車載制御部33は、
図8に示すように、センサユニット2a~2dから双方向コマンドを示すフレームを受信するのが1回目である場合、車載送受信部32からレスポンス信号を1回送信させる。そして、同じセンサユニット2a~2dから双方向コマンドを示すフレームを2回以上受信すると、車載送受信部32からレスポンス信号を複数回送信させるようになっている。
【0081】
このように、1回目のフレーム受信時には、他のユニットからの信号も受信し易いように、レスポンス信号を1回だけ送信して、素早く受信状態に戻すことが望ましい。また、同じセンサユニット2a~2dから2回目以上のフレームを受信する場合は、センサユニット2a~2dの高頻度送信を早目に止めることを優先させるべく、レスポンス信号を複数回送信するようになっていることが望ましい。これによれば、センサユニット2a~2dでのレスポンス信号を受信する確率を高めることができる。
【0082】
(4)タイヤ空気圧の適切値は、車種やタイヤサイズ等によって異なる。このため、タイヤ空気圧の絶対値によってタイヤ空気圧が正常か異常かを判定しようとすると、各センサユニット2a~2dに対して車種やタイヤサイズ等に応じた固有の閾値等を記憶させておく必要がある。このことは、TPMSの量産運用を妨げる要因となる。
【0083】
このため、センサユニット2a~2dは、タイヤ空気圧の変化量が所定の規定変化量以内である場合にタイヤ空気圧が正常と判定し、タイヤ空気圧の変化量が規定変化量を超えている場合にタイヤ空気圧が異常と判定するようになっていることが望ましい。このようになっていれば、各センサユニット2a~2dに対して車種やタイヤサイズ等に応じた固有の閾値等を記憶させておく必要がないので、TPMSの量産運用を図り易くなる。
【0084】
(本開示の変形例)
本開示は、上記した実施形態に準拠して記述されたが、当該実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0085】
[センサユニット2a~2dについて]
上述の実施形態の各センサユニット2a~2dは、高頻度送信モード時に、異常用インターバルとして設定される所定周期毎に、1つのフレームを送信するようになっているが、これに限定されない。各センサユニット2a~2dは、例えば、
図9に示すように、高頻度送信モード時に、異常用インターバルとして設定される所定周期毎に、複数のフレームを送信するようになっていてもよい。なお、通常送信モード時に、通常用インターバルとして設定される所定周期毎に、複数のフレームを送信するようになっていてもよい。
【0086】
上述の実施形態の各センサユニット2a~2dは、高頻度送信モード時に、通常用インターバルよりも時間が短い異常用インターバルでフレーム送信するようになっているが、これに限定されない。各センサユニット2a~2dは、例えば、高頻度送信モード時に、通常用インターバルとして設定される所定周期毎に、通常送信モード時よりも多い数のフレームを送信するようになっていてもよい。
【0087】
上述の実施形態の各センサユニット2a~2dは、双方向コマンドを示すフレームを送信した後、予め定められた受信待ち時間が経過するまで、車載機3からのレスポンス信号を受信するための受信待ち状態としているが、これに限定されない。各センサユニット2a~2dは、加速度センサ21cの出力に基づいて、自身の回転位置を把握することが可能である。このため、各センサユニット2a~2dは、双方向コマンドを示すフレームを送信した後、自身の回転回数に基づいてレスポンス信号を受信するための受信待ち状態を解除するようになっていてもよい。例えば、各センサユニット2a~2dは、双方向コマンドを示すフレームを送信した後、少なくとも1回転は受信待ち状態を継続し、2回転を超えてもレスポンス信号を受信できない場合に受信待ち状態を解除するようになっていてもよい。
【0088】
上述の実施形態の如く、センサユニット2a~2dは、タイヤ空気圧の変化量が規定変化量以内である場合にタイヤ空気圧が正常と判定し、規定変化量を超えている場合にタイヤ空気圧が異常と判定するようになっていることが望ましいが、これに限定されない。センサユニット2a~2dは、タイヤ空気圧が規定圧以下となった場合にタイヤ空気圧が異常と判定するようになっていてもよい。
【0089】
上述の実施形態では、センサユニット2a~2dについて、エア注入バルブに取り付けられるものを例に挙げて説明したが、他の場所に備えられるものであってもよい。一例を示すと、バルブキャップの代わりに装着する形態や、タイヤ内側のトレッド上に装着する形態であってもよい。
【0090】
上述の実施形態では、センサユニット2a~2dを車輪5a~5dのすべてに備えている例を示したが、少なくとも1つに備えられたTPMSに本開示を適用することができる。
【0091】
[車載機3について]
上述の実施形態の如く、車載制御部33は、フレームを送信したセンサユニット2a~2dが取り付けられたタイヤの車輪角度が基準角度になるタイミングでレスポンス信号を送信させるようになっていることが望ましいが、これに限定されない。車載制御部33は、例えば、フレームを受信してから所定時間経過したタイミングでレスポンス信号を送信させたり、フレームを受信後の任意のタイミングでレスポンス信号を送信させたりするようになっていてもよい。
【0092】
上述の実施形態の車載機3の如く、車載制御部33は、双方向コマンドを示すフレームを受信するのが1回目である場合にレスポンス信号を1回送信し、当該フレームを2回以上受信するとレスポンス信号を複数回送信させることが望ましいが、これ限定されない。車載機3は、例えば、
図10に示すように、双方向コマンドを示すフレームを受信するのが1回目である場合もレスポンス信号を複数回送信させるようになっていてもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、TPMSのうち車体6側に備えられた部分を車載機3として総括的に記載しているが、車載機3は必ずしも1つの構成でなくても良い。例えば、送受信機能を果たすアンテナ31や車載送受信部32とタイヤ空気圧検出機能を果たす車載制御部33とが別々の場所に備えられていてもよい。
【0094】
[その他]
例えば、上述の実施形態では、タイヤ空気圧が正常である場合に単方向コマンドをフレームに含め、タイヤ空気圧が異常である場合に双方向コマンドをフレームに含めるようにした。しかしながら、これらのコマンドは、必ずしもデータとして表されるコマンドである必要はなく、データが含まれていないことで実質的に各コマンドが示される形態であってもよい。例えば、単方向コマンドと双方向コマンドのいずれか一方のみをデータで示し、フレーム中にそのコマンドが含まれていない場合に他方のコマンドを示していると車載機3で判定されるようにしてもよい。具体的には、双方向コマンドのみをフレームに格納し、フレームに双方向コマンドが含まれていなければ車載機3で単方向コマンドを示していると判定されるようにしてもよい。
【0095】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0096】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0097】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【0098】
本開示の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせで構成された一つ以上の専用コンピュータで、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1 車両
2a~2d センサユニット
21a 圧力センサ
22 センサ制御部(第1制御部)
23 センサ送受信部(第1送受信部)
3 車載機
32 車載送受信部(第2送受信部)
33 車載制御部(第2制御部)
5a~5d 車輪
6 車体