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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177905
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】セラミック屑除去装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 11/00 20060101AFI20241217BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20241217BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B08B11/00 A
H01G13/00 391Z
B28B1/30 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096302
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】堀谷 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】眞田 幸雄
【テーマコード(参考)】
3B116
4G052
5E082
【Fターム(参考)】
3B116AA08
3B116AB13
3B116BA06
3B116BC05
4G052DA02
4G052DB10
5E082LL03
(57)【要約】
【課題】 支持フィルムの表面から、セラミックグリーンシートの残渣であるセラミック屑を容易に除去することのできる、セラミック屑除去装置を提供する。
【解決手段】 支持フィルム(3)と、上記支持フィルム(3)の表面に付着したセラミックグリーンシートの残渣であるセラミック屑(7)と、からなるフィルム(1)を搬送する搬送機構(20)と、上記セラミック屑(7)を上記支持フィルム(3)から剥離する剥離機構(40)と、を備え、上記剥離機構(40)は、メディア(43)が貯留されたメディア槽(41)と、上記メディア(43)に超音波を加えて上記メディア(43)を振動させる超音波素子(45)と、を有し、上記フィルム(1)が、上記メディア槽(41)内を通過するよう構成されている、ことを特徴とするセラミック屑除去装置(100)。
【選択図】 図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持フィルムと、前記支持フィルムの表面に付着したセラミックグリーンシートの残渣であるセラミック屑と、からなるフィルムを搬送する搬送機構と、
前記セラミック屑を前記支持フィルムから剥離する剥離機構と、を備え、
前記剥離機構は、メディアが貯留されたメディア槽と、前記メディアに超音波を加えて前記メディアを振動させる超音波素子と、を有し、
前記フィルムが、前記メディア槽内を通過するよう構成されている、ことを特徴とするセラミック屑除去装置。
【請求項2】
前記メディア槽の表層付近に、前記メディア槽内の前記セラミック屑を吸引する吸引ノズルが設けられている、請求項1に記載のセラミック屑除去装置。
【請求項3】
前記超音波素子が発生する超音波の周波数は、20kHz以上、40kHz以下である、請求項1又は2に記載のセラミック屑除去装置。
【請求項4】
前記剥離機構は、複数の前記超音波素子を有し、
複数の前記超音波素子がそれぞれ発生する超音波の重ね合わせにより、前記メディア槽内の所定の位置の前記メディアだけを振動させるよう構成されている、請求項1又は2に記載のセラミック屑除去装置。
【請求項5】
前記メディアは、樹脂からなる樹脂メディアである、請求項1又は2に記載のセラミック屑除去装置。
【請求項6】
前記メディアは、金属からなる金属メディアである、請求項1又は2に記載のセラミック屑除去装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック屑除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサ等の電子部品を製造する方法として、焼成前のセラミック材料をシート状に成形したセラミックグリーンシートを積層し、加圧成形した後に、焼成・個片化することで小型の電子部品を一度に大量に生産する方法が知られている。
【0003】
セラミックグリーンシートは、通常、取り扱い性を向上させるために、支持体となる樹脂フィルム(支持フィルムともいう)の表面に形成されており、使用する際に支持フィルムの表面から剥離される。
支持フィルムからセラミックグリーンシートを剥離する際には、支持フィルムの表面にセラミックグリーンシートの一部が残存することがある。このような支持フィルムを再資源化するためには、セラミックグリーンシートの残渣であるセラミック屑を清掃(除去)する工程が必要となる。
【0004】
例えば、特許文献1には、樹脂フィルムに第1粘着ロールを接触させて、樹脂フィルムに付着した付着物を第1粘着ロールに付着させるフィルム清掃工程を備える剥離フィルムのリサイクル方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-005597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年では、電子部品の小型化に伴いセラミックグリーンシートの薄膜化が進行している。セラミックグリーンシートが薄膜化するとハンドリング性が低下するため、これを抑制するために、セラミックグリーンシートと支持フィルムとの間の保持力が高められる場合がある。
【0007】
そのため、特許文献1に記載の方法では、セラミックグリーンシートと支持フィルムの間の保持力が強く、セラミックグリーンシートの残渣であるセラミック屑を完全に除去できない場合があった。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、支持フィルムの表面から、セラミックグリーンシートの残渣であるセラミック屑を容易に除去することのできる、セラミック屑除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のセラミック屑除去装置は、支持フィルムと、上記支持フィルムの表面に付着したセラミックグリーンシートの残渣であるセラミック屑と、からなるフィルムを搬送する搬送機構と、上記セラミック屑を上記支持フィルムから剥離する剥離機構と、を備え、上記剥離機構は、メディアが貯留されたメディア槽と、上記メディアに超音波を加えて上記メディアを振動させる超音波素子と、を有し、上記フィルムが、上記メディア槽内を通過するよう構成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、支持フィルムの表面からセラミックグリーンシートの残渣であるセラミック屑を容易に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明のセラミック屑除去装置によりセラミック屑を除去されるフィルムの一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、本発明のセラミック屑除去装置の一例を模式的に示す断面図である。
図3図3は、図2における剥離機構周辺の部分拡大図である。
図4図4は、剥離機構の別の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のセラミック屑除去装置について説明する。しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0013】
本明細書において、要素間の関係性を示す用語(例えば、「対向」、「直交」等)及び要素の形状(例えば、「直方体」等)を示す用語は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に平等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0014】
以下に示す図面は模式図であり、その寸法、縦横比等の縮尺等は、実際の製品と異なる場合がある。
【0015】
[セラミック屑除去装置]
本発明のセラミック屑除去装置は、支持フィルムと、上記支持フィルムの表面に付着したセラミックグリーンシートの残渣であるセラミック屑と、からなるフィルムを搬送する搬送機構と、上記セラミック屑を上記支持フィルムから剥離する剥離機構と、を備え、上記剥離機構は、メディアが貯留されたメディア槽と、上記メディアに超音波を加えて上記メディアを振動させる超音波素子と、を有し、上記フィルムが、上記メディア槽内を通過するよう構成されている、ことを特徴とする。
【0016】
図1は、本発明のセラミック屑除去装置によりセラミック屑を除去されるフィルムの一例を模式的に示す斜視図である。
図1に示すフィルム1は、支持フィルム3と、支持フィルム3の表面に付着したセラミックグリーンシートの残渣であるセラミック屑7と、からなる。
【0017】
支持フィルム3は、上面となる表面3aと下面となる表面3bとが対向するシート形状を有しており、セラミック屑7は、支持フィルム3の上面となる表面3aに付着している。
【0018】
フィルム1は、支持フィルム3とセラミックグリーンシートとが積層されてなる積層シートから、所定形状のセラミックグリーンシートを切り出して剥離した後の状態である。
支持フィルム3の表面に積層されたセラミックグリーンシートは、その一部が切り出されて使用されるため、切り出されなかった部分は、支持フィルムの表面に残される。
これが、図1に示す、剥がされなかったセラミックグリーンシート5である。
【0019】
また、支持フィルム3の表面に積層されたセラミックグリーンシートが剥離された場合であっても、セラミックグリーンシートが完全に剥離されない場合がある。そのような場合には、セラミックグリーンシートを剥離した後の支持フィルムの表面にセラミックグリーンシートの細かい破片(剥離しなかった破片)が残存する。
これが、図1に示す、セラミックグリーンシートの剥離残渣6である。
【0020】
以上より、フィルム1の表面3aには、剥がされなかったセラミックグリーンシート5及びセラミックグリーンシートの剥離残渣6が、セラミック屑7として付着している。
【0021】
本発明のセラミック屑除去装置は、上述したフィルムから、セラミック屑を除去する装置である。
【0022】
図2は、本発明のセラミック屑除去装置の一例を模式的に示す断面図である。
図2に示すセラミック屑除去装置100は、搬送機構20と、剥離機構40と、を備える。
【0023】
搬送機構20は、フィルム1を搬送する機構である。
搬送機構20は、フィルム1を搬送する搬送ロール21と、搬送されるフィルム1のテンションを調整するダンサロール23と、テンションの伝搬を防止するサクションロール25と、後述するメディア槽41内でフィルム1を移動させる搬送ロール27と、を備えている。
図2中の細い片矢印は、フィルム1が搬送される方向を示している。また、細い両矢印は、ダンサロール23が上下方向に稼働可能であることを示している。
【0024】
フィルム1は、搬送機構20に対して巻出機構50から巻き出される。
【0025】
剥離機構40は、セラミック屑を支持フィルムから剥離する機構である。
図2に示す剥離機構40は、メディア槽41と、メディア槽41に貯留されるメディア43と、超音波素子45と、を備えている。
【0026】
超音波素子45が発生する超音波によってメディア43を振動させ、搬送ロール27を用いて、メディア槽41内に、フィルム1を通過させる。このことにより、フィルム1を構成する支持フィルム3の表面からセラミック屑7を剥離し、除去することができる。
【0027】
支持フィルム3の表面から剥離したセラミック屑7は集塵機構70により回収される。
【0028】
集塵機構70は、剥離されたセラミック屑7を吸引する吸引ノズル71と、セラミック屑7を貯留する屑溜まり75と、吸引ノズル71と屑溜まり75とを接続する吸引ホース73からなる。
【0029】
剥離機構40によりセラミック屑7が剥離されたフィルム1(支持フィルム3)は、巻取機構60により巻き取られる。
【0030】
なお、図示していないが、セラミック屑除去装置100が筐体を備え、筐体内に、搬送機構20、剥離機構40、巻出機構50、巻取機構60及び集塵機構70が配置されていてもよい。
【0031】
以下に、本発明のセラミック屑除去装置を構成する各機構を説明する。
【0032】
(搬送機構)
搬送機構は、フィルムを搬送する機構である。
搬送機構としては、例えば、回転によりフィルムを送り出す搬送ロールが挙げられる。
【0033】
搬送機構は、上記搬送ロールとは別に、搬送中のフィルムのテンション(張力)を調整するためのダンサロールや、テンションが上流側に伝わることを防止するためのサクションロール、メディア槽内でフィルムを移動させる搬送ロール等を備えていてもよい。
【0034】
搬送機構によりフィルムを搬送する速度(搬送速度)は特に限定されないが、100m/min以上が好ましい。
【0035】
本発明のセラミック屑除去装置は、巻出機構や巻取機構を備えていてもよい。
巻出機構は、搬送機構に対してフィルムを巻き出す機構である。
巻取機構は、セラミック屑が除去された後のフィルム(支持フィルム)を巻き取る機構である。
【0036】
巻出機構は、自由回転に可能に構成されていてもよい。この場合、搬送機構によりフィルムが搬送されることで、巻出機構が自由回転し、フィルムを巻き出すことができる。
【0037】
(剥離機構)
剥離機構は、フィルムを構成するセラミック屑を支持フィルムから剥離する機構である。
剥離機構は、メディアと、メディアが貯留されたメディア槽と、メディアに超音波を加えてメディアを振動させる超音波素子と、を有する。
フィルムがメディア槽内を通過する際に、超音波が加えられたことで振動するメディアにセラミック屑が衝突することで、セラミック屑が支持フィルムの表面から剥離する。
【0038】
剥離機構の一例について、図3を参照しながら説明する。
図3は、図2における剥離機構周辺の部分拡大図である。
図3に示す剥離機構40は、メディア槽41と、メディア槽41に貯留されるメディア43と、超音波素子45と、を備えており、フィルム1が、メディア槽41内を通過している。
【0039】
メディア槽41内にはメディア43が貯留されているため、フィルム1がメディア槽41内を通過する際には、フィルム1を構成するセラミック屑7がメディア43と接触する。
【0040】
メディア43には、超音波素子45により超音波が加えられている。
メディア槽41内に貯留されたメディア43は、超音波素子45により超音波が加えられて振動する。
【0041】
図3では、超音波素子45により超音波が加えられたメディア43が振動する様子を模式的に示している。実際にどの位置のメディアがどのように振動するかは、超音波素子の数、配置される位置、及び超音波の重ね合わせの状態により変化する。
【0042】
振動しているメディア43にセラミック屑7が衝突すると、振動がセラミック屑7に伝わり、支持フィルム3の表面からセラミック屑7を剥離することができる。
【0043】
振動しているメディア43がセラミック屑7に接触している時間が長いほど、セラミック屑7を剥離する作用は強まる。そのため、メディア槽41内を移動する距離(時間)が長いほど、フィルム1が、振動しているメディア43と接する時間が長くなり、セラミック屑7の剥離が進行する。
そして、メディア槽41内を通過し終わる前には、支持フィルム3の表面からセラミック屑7が完全に除去される。
【0044】
図3に示すように、フィルム1は、フィルム1を構成する支持フィルム3が上側、セラミック屑7が下側となるように、メディア槽41内に侵入することが好ましい。
フィルム1の向きが、上記の向きであると、搬送ロール27と支持フィルム3が接することとなり、搬送ロール27とフィルム1とが接している間も、セラミック屑7は振動しているメディア43と接触するため、セラミック屑7の剥離が進行しやすい。
すなわち、搬送ロール27に接しない支持フィルム3の表面が、セラミック屑7が付着した面であることが好ましい。
【0045】
支持フィルム3の表面から剥離したセラミック屑7は、メディア43よりも軽いため、振動によって、支持フィルム3の幅方向外側から回り込んで、メディア槽41の表層部分に移動する。そして、メディア槽41の表層部分に移動したセラミック屑7は、集塵機構70により回収される。
【0046】
なお、メディア槽41の内側の幅(メディア43を貯留する部分の幅)は、フィルム1の幅よりも大きいことが好ましい。
メディア槽41の内側の幅が、フィルム1の幅よりも大きいと、フィルム1の幅方向の端部とメディア槽41との間に、隙間ができる。この隙間を通じて、フィルム1の下面で剥離したセラミック屑7が、メディア槽41の表層まで容易に移動することができるため、集塵機構70による、剥離したセラミック屑7の回収が容易となる。
【0047】
フィルムが、メディア槽内を通過する際の速度は、100m/min以上であることが好ましい。
【0048】
(メディア)
メディアは、メディア槽内に貯留される。
【0049】
メディアを構成する材料は特に限定されないが、例えば、金属、セラミック、樹脂等が挙げられる。
【0050】
メディアを構成する材料が金属である場合のメディアを、金属メディアともいう。
【0051】
メディアは、金属からなる金属メディアであることが好ましい。
【0052】
メディアを構成する金属としては、例えば、タングステンが挙げられる。
メディアが金属で構成されている場合、メディアの密度が大きくなるため、同じ大きさのメディアでも、セラミック屑を剥離するために必要なエネルギーをセラミック屑に付与しやすい。
【0053】
メディアがタングステンを含む場合、メディアは、金属タングステンで構成されていてもよく、タングステンを含む化合物で構成されていてもよい。タングステンを含む化合物としては、例えば、炭化タングステンが挙げられる。
【0054】
メディアを構成する材料が樹脂である場合のメディアを、樹脂メディアともいう。
【0055】
メディアは、樹脂からなる樹脂メディアであることが好ましい。
【0056】
メディアを構成する樹脂としては、支持フィルムを構成する樹脂と同じ種類の樹脂であることが好ましい。
この場合、メディアの一部が支持フィルムに付着したとしても、不純物の混入にならない。
【0057】
メディアを構成する材料がセラミックである場合のメディアを、セラミックメディアともいう。
【0058】
メディアはセラミックメディアであってもいい。
メディアがセラミックで構成されていると、メディアの摩耗が起こりにくいため、不純物の混入を回避することができる。
【0059】
メディアの形状は特に限定されないが、断面が、円相当径で0.2mm以上~5mm以下であることが好ましい。
メディアの断面の円相当径が0.2mm未満の場合、超音波によって獲得できる運動エネルギーが小さく、セラミック屑を充分に剥離できない場合がある。メディアの断面の円相当径が5mmを超える場合、メディア間の隙間が大きくなり、メディアをセラミック屑に衝突させることが難しくなる場合がある。
【0060】
メディアは、表面に不規則な突起を有する形状であることが好ましい。
メディアが、表面に不規則な突起を有していると、セラミック屑と衝突した際に、セラミック屑を剥離させやすくなる。
【0061】
(メディア槽)
メディア槽は、メディアを貯留する容器である。
メディア槽は、フィルムが、メディア槽内を通過できるよう構成されていればよい。
【0062】
メディア槽の形状としては例えば、上面が開口し、側面及び底面が閉じられた形状が挙げられる。この場合、メディア槽に貯留されたメディアは、メディア槽の上面に露出する。
メディアが露出する部分を、メディア槽の表層ともいう。
【0063】
上記形状のメディア槽の場合、フィルムは、メディア槽の上面からメディア槽内に侵入し、メディア槽内で移動方向を変えて、再度、メディア槽の上面からメディア槽外に移動する。
メディア槽内をフィルムが移動する際に、振動したメディアにセラミック屑が衝突することによって、セラミック屑が支持フィルムの表面から剥離される。
【0064】
メディア槽内には、必要に応じて、搬送ロール等の搬送機構が配置されていてもよい。
搬送ロール等の搬送機構がメディア槽内に配置されていることで、フィルムの進行方向をメディア槽内で変更することができる。
メディア槽内に配置された搬送ロールにより、図3に示したように、メディア槽41の上面からフィルム1をメディア槽41内に移動させ、メディア槽41内で移動方向を変えて、再度、メディア槽41の上面からフィルム1をメディア槽41外に移動させる、という搬送経路をとることができる。
【0065】
メディア槽の上面付近には、メディア槽内のセラミック屑を吸引する吸引ノズルが設けられていることが好ましい。
【0066】
メディア槽内でフィルムから剥離したセラミック屑は、振動によってメディア槽の上面付近に移動する。
従って、メディア槽の上層付近に吸引ノズルを設けることで、メディア槽内で発生したセラミック屑を回収することができる。
【0067】
フィルムから剥離したセラミック屑がメディア槽内に過剰に存在すると、一度剥離したセラミック屑が支持フィルムの表面に再付着してしまう場合がある。
吸引ノズルを用いてメディア槽内のセラミック屑を回収することで、上記問題の発生を抑制できる。
【0068】
メディア槽には、超音波素子を配置可能な溝や穴等が設けられていてもよい。
【0069】
(超音波素子)
超音波素子は、超音波を発生する素子である。
発生した超音波により、メディアを振動させる。
【0070】
超音波の振動数(周波数)は、20kHz以上、40kHz以下であることが好ましく、25kHz以上、30kHz以下であることがより好ましく、28kHzであることがさらに好ましい。
【0071】
超音波素子としては、例えば、ボルト締めランジュバン型振動子(BL振動子)等が挙げられる。
【0072】
超音波素子は、メディア槽の外側に配置されていてもよいし、内側に配置されていてもよい。
超音波素子は、メディア槽を介してメディアに超音波を加えてもよいし、直接メディアに超音波を加えてもよい。
【0073】
超音波素子の先端には、ホーン(超音波ホーン)が設けられていてもよい。
超音波素子の先端にホーンが設けられていると、超音波の振幅を拡大することや、ホーンによってメディアに直接超音波を加えることができる。
【0074】
超音波素子は、複数設けられていてもよい。
複数の超音波素子をメディア槽内に配置することで、複数の超音波素子がそれぞれ発生させる超音波の重ね合わせにより、メディア槽内の所定の位置のメディアだけを振動させることができる。
【0075】
すなわち、本発明のセラミック屑除去装置では、メディア槽内には複数の超音波素子が配置されており、複数の超音波素子がそれぞれ発生させる超音波の重ね合わせにより、メディア槽内の所定の位置のメディアだけを振動させるよう構成されていることが好ましい。
【0076】
複数の超音波素子を用いた剥離機構の例について、図4を参照しながら説明する。
図4は、剥離機構の別の一例を模式的に示す断面図である。
【0077】
図4に示すメディア槽41は、第1側面41a、第2側面41b、第3側面41c、第4側面41d及び底面41eからなる。
メディア槽41の第1側面41aには、3行×5列の合計15個の超音波素子45が配置されている。同様に、メディア槽41の第2側面41bには、3行×3列の合計9個の超音波素子45が配置されている。
【0078】
例えば、第1側面41aのCの位置に配置された超音波素子45と、第2側面41bのF及びHの位置に配置された超音波素子45から、同時に超音波を発すると、Cの位置に配置された超音波素子45から発せられる超音波と、F及びHの位置に配置された超音波素子45から発せられる超音波が重なりあう領域において、メディア43に通常よりも強い超音波が加えられる。
【0079】
ここで、各超音波素子45へ入力する電力を調整して、単一の超音波素子45から発せられる超音波ではメディア43が振動しないが、超音波が重なり合う部分(共振する部分)においてメディア43が振動するよう構成することができる。
このような構成を採用すると、超音波の重ね合わせにより所定の領域のメディアだけを振動させることができるため、フィルムの特定の領域だけに振動するメディアを衝突させることができ、効率的にセラミック屑を除去することができる。
【0080】
また、例えば、第1側面41aに配置された複数の超音波素子のうち、A、B、C、D、Eの位置に配置された超音波素子45を、この順番に、時間をずらして超音波を発生させることで、メディア槽41内を移動するフィルム1の「同じ場所」に対して、振動するメディア43を継続的に衝突させることができる。そのため、効率的にセラミック屑を除去することができる。
【0081】
(支持フィルム)
本発明のセラミック屑除去装置で用いるのに適したフィルムを構成する支持フィルムについて説明する。
【0082】
フィルムを構成する支持フィルムとしては、従来公知のものを好適に用いることができる。
支持フィルムは、例えば、基材層となる基材フィルムの一方の表面に離型層を形成し、他方の表面に背面樹脂層を形成した多層フィルムであってもよい。
【0083】
基材層を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、アクリル樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、加工のしやすさ、耐久性、耐熱性、コスト等の観点から、ポリエステルが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0084】
基材層には、上記樹脂に加えて、さらに、フィラーが添加されていてもよい。
【0085】
基材層を構成する基材フィルムは、無延伸フィルムであってもよいが、一軸又は二軸延伸フィルムであることが好ましい。
【0086】
離型層は、例えば、基材フィルムの一方の表面に、離型層形成用組成物を塗工し、加熱及び硬化させることによって形成することができる。
【0087】
背面樹脂層は、例えば、基材フィルムの他方の主面に、背面樹脂層形成用組成物を塗布し、加熱及び硬化させることによって形成することができる。
【0088】
支持フィルムの幅は特に限定されないが、例えば100mm以上、200mm以下であることが好ましい。
【0089】
(セラミック屑)
本発明のセラミック屑除去装置で用いるのに適したフィルムを構成するセラミック屑について説明する。
【0090】
セラミック屑は、支持フィルムの表面に配置されていたセラミックグリーンシートの残渣である。
セラミックグリーンシートは、例えば、チタン酸バリウム等のセラミック材料と有機バインダに、可塑剤や有機溶剤を加えて混合したスラリーを、支持フィルムの表面に塗工し乾燥させることで得られる。
【0091】
セラミックグリーンシートは、支持フィルムと合わせて取り扱われる。その後、支持フィルム上から所定の形状のセラミックグリーンシートが切り出されて剥離され、電子部品の製造に用いられる。
支持フィルム上から剥がされなかったセラミックグリーンシート、及び、剥離した後の支持フィルムの表面に残存するセラミックグリーンシートの細かい破片(剥離残渣)が、セラミック屑となる。
【0092】
上述したように、セラミック屑は、支持フィルム上に残存するセラミックグリーンシートの残渣であるから、セラミック屑の組成はセラミックグリーンシートと同じである。
【0093】
セラミック材料としては、チタン酸バリウム等が挙げられる。
【0094】
セラミックグリーンシートの表面には、内部電極となる金属ペーストが印刷されている場合がある。従って、セラミック屑には、上述した金属ペーストの残渣が含まれていてもよい。
【0095】
本発明のセラミック屑除去装置は、その厚みが3μm以下であるセラミック屑が付着したフィルムに対して適用することが好ましい。
セラミックグリーンシートが電子部品の小型化に伴い薄膜化しており、厚みが3μm以下のセラミックグリーンシートが用いられることがある。セラミックグリーンシートの厚みが3μm以下であると、セラミックグリーンシートの取り扱い性を向上させるために、セラミックグリーンシートと支持フィルムとの間の保持力を大きくする必要が生じる。この場合、セラミック屑を支持フィルムから剥離することが困難になることがある。本発明のセラミック屑除去装置を用いると、セラミック屑の剥離性を向上させることができるので、その厚みが3μm以下であるセラミック屑が支持フィルムに対して強く付着したフィルムに対しても好適に適用することができる。
【0096】
本明細書には、以下の事項が記載されている。
【0097】
本開示(1)は、支持フィルムと、前記支持フィルムの表面に付着したセラミックグリーンシートの残渣であるセラミック屑と、からなるフィルムを搬送する搬送機構と、
前記セラミック屑を前記支持フィルムから剥離する剥離機構と、を備え、
前記剥離機構は、メディアが貯留されたメディア槽と、前記メディアに超音波を加えて前記メディアを振動させる超音波素子と、を有し、
前記フィルムが、前記メディア槽内を通過するよう構成されている、ことを特徴とするセラミック屑除去装置である。
【0098】
本開示(2)は、前記メディア槽の表層付近に、前記メディア槽内の前記セラミック屑を吸引する吸引ノズルが設けられている、本開示(1)に記載のセラミック屑除去装置である。
【0099】
本開示(3)は、前記超音波素子が発生する超音波の周波数は、20kHz以上、40kHz以下である、本開示(1)又は(2)に記載のセラミック屑除去装置である。
【0100】
本開示(4)は、前記剥離機構は、複数の前記超音波素子を有し、
複数の前記超音波素子がそれぞれ発生する超音波の重ね合わせにより、前記メディア槽内の所定の位置の前記メディアだけを振動させるよう構成されている、本開示(1)~(3)のいずれかとの任意の組合せのセラミック屑除去装置である。
【0101】
本開示(5)は、前記メディアは、樹脂からなる樹脂メディアである、本開示(1)~(4)のいずれかとの任意の組合せのセラミック屑除去装置である。
【0102】
本開示(6)は、前記メディアは、金属からなる金属メディアである、本開示(1)~(4)のいずれかとの任意の組合せのセラミック屑除去装置である。
【符号の説明】
【0103】
1 フィルム
3 支持フィルム
3a 支持フィルムの表面(上面)
3b 支持フィルムの表面(下面)
5 剥がされなかったセラミックグリーンシート
6 セラミックグリーンシートの剥離残渣
7 セラミック屑
20 搬送機構
21 搬送ロール
23 ダンサロール
25 サクションロール
27 搬送ロール
40 剥離機構
41 メディア槽
41a メディア槽の第1側面
41b メディア槽の第2側面
41c メディア槽の第3側面
41d メディア槽の第4側面
41e メディア槽の底面
43 メディア
45 超音波素子
50 巻出機構
60 巻取機構
70 集塵機構
71 吸引ノズル
73 吸引ホース
75 屑溜まり
100 セラミック屑除去装置

図1
図2
図3
図4