(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177908
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】外観検査装置、ロボットシステムおよび外観検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/84 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
G01N21/84 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096306
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】安藤 富雄
(72)【発明者】
【氏名】川合 崇大
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AB01
2G051AB03
2G051AB04
2G051AB05
2G051AC19
2G051BA02
2G051BA10
2G051BB02
2G051BB05
2G051BC05
2G051CA04
2G051CB01
2G051CB05
(57)【要約】
【課題】撮像部と照明部を一体として移動可能な外観検査装置において、照明条件の変化を抑制する。
【解決手段】外観検査装置20は、被検査対象物102を撮像する撮像部21と、被検査対象物102を照明する第1照明部22および第2照明部23と、を備える。撮像部21と第1照明部22および第2照明部23とは一体となって移動可能に構成される。第1照明部22および第2照明部23は、撮像部21の受光面21aに対して、光軸角度を変化可能に構成される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査対象物を撮像する撮像部と、
前記被検査対象物を照明する照明部と、
を備える外観検査装置であって、
前記撮像部と前記照明部は一体となって移動可能に構成され、
前記照明部は、前記撮像部の受光面に対して、光軸角度を変化可能に構成されることを特徴する外観検査装置。
【請求項2】
前記照明部の光軸角度は、前記撮像部に入力される前記被検査対象物からの反射光の角度の変化が最小となる方向に制御されることを特徴とする請求項1に記載の外観検査装置。
【請求項3】
前記照明部は、光軸角度の変化に応じて、照明光量を変化可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載の外観検査装置。
【請求項4】
請求項1に記載の外観検査装置を搭載したロボットアームと、
前記照明部の光軸の角度および前記ロボットアームの動作を制御する制御部と、
を備えるロボットシステム。
【請求項5】
撮像部と照明部を一体として移動するステップと、
前記移動に応じて、前記撮像部の受光面に対して前記照明部の光軸角度を変化させるステップと、
前記照明部で被検査対象物を照明するステップと、
前記撮像部で前記被検査対象物を撮像するステップと、
を備えることを特徴とする外観検査方法。
【請求項6】
前記照明部と前記被検査対象物との間の距離を調整するステップをさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の外観検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査対象物の外観検査を行うための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットアームの先端に撮像部を搭載し、様々な角度から撮像した被検査対象物の画像に基づいて、被検査対象物の外観検査を行う装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外観検査装置には、撮像部に加えて被検査対象物を照明する照明部を備え、撮像部と照明部を一体として移動可能に構成したものがある。例えば被検査対象物の平面に傷が入っていたり汚れが付着する等では、傷の微細な3次元的な見え方で撮像される画像が異なったり、汚れであれば光反射や光の吸収等、撮像位置で、同じく見え方が変わることが多く、撮像角度を変更して複数の画像取得を行う事が検査精度向上に寄与する。しかしながらこのような外観検査装置で、異なる撮像角度で被検査対象物を撮像しようとした場合、被検査対象物に対する照明光の入射角度も変化する。その結果、例えば明視野照明が暗視野照明に変化する、ブルースター角が変化してしまう、照明角度依存性を有する疑似メタリック部の色味や反射輝度等が変化するなど照明条件が変化することで検査精度が低下するおそれがある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、撮像部と照明部を一体として移動可能な外観検査装置において、照明条件の変化を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の外観検査装置は、被検査対象物を撮像する撮像部と、被検査対象物を照明する照明部と、を備える。撮像部と照明部は一体となって移動可能に構成される。照明部は、撮像部の受光面に対して、光軸角度を変化可能に構成される。
【0007】
本発明の別の態様は、ロボットシステムである。このシステムは、上記の外観検査装置を搭載したロボットアームと、照明部の光軸の角度およびロボットアームの動作を制御する制御部と、を備える。
【0008】
本発明の別の態様は、外観検査方法である。この方法は、撮像部と照明部を一体として移動するステップと、移動に応じて、撮像部の受光面に対して照明部の光軸角度を変化させるステップと、照明部で被検査対象物を照明するステップと、撮像部で被検査対象物を撮像するステップと、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、撮像部と照明部を一体として移動可能な外観検査装置において、照明条件の変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係るロボットシステムを示す概略図である。
【
図2】
図2(a)および
図2(b)は、比較例に係る外観検査装置の構成および動作を説明するための図である。
【
図3】
図3(a)および
図3(b)は、照明条件の差が撮像画像に影響を及ぼすことを説明するための図である。
【
図4】
図4(a)および
図4(b)は、照明条件の差が撮像画像に影響を及ぼすことを説明するための図である。
【
図5】
図5(a)および
図5(b)は、実施の形態に係る外観検査装置の構成および動作を説明するための図である。
【
図6】
図6(a)および
図6(b)は、被検査対象物の表面上に小突起が存在する場合に、実施の形態に係る外観検査装置で撮像される画像を説明するための図である。
【
図7】実施の形態に係るロボットシステムにおける一連の処理を示すフローチャートである。
【
図8】
図8(a)および
図8(b)は、照明部と被検査対象物との間の距離の調整を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。以下の構成は本開示を理解するための例示を目的とするものであり、本開示の範囲は、添付の請求の範囲によってのみ定まる。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
図1は、実施の形態に係るロボットシステム100を示す概略図である。このロボットシステム100は、被検査対象物102の表面のクラックを含む傷、異物、汚れ・色差、歪みなどの外観上の欠陥を検査するためのシステムである。
図1に示すように、ロボットシステム100は、ロボットアーム10と、ロボットアーム10の先端に搭載された外観検査装置20と、ロボットアーム10および外観検査装置20を制御する制御部30と、外観検査装置20で取得した画像を処理し、欠陥の有無を判定する画像処理部40と、を備える。
【0014】
ロボットアーム10は、多関節ロボットである。ロボットアーム10は、図示していない床面上に設けた架台上に固定された支持台11と、第1リンク12と、第2リンク14と、第3リンク16と、第4リンク18と、を備える。支持台11は、垂直方向の回転軸周りに回転可能に構成される。第1リンク12は、第1関節9を介して支持台11と接続されており、支持台11に対して移動可能に構成される。第2リンク14は、第2関節13を介して第1リンク12と接続されており、第1リンク12に対して移動可能に構成される。第3リンク16は、第3関節15を介して第2リンク14と接続されており、第2リンク14に対して移動可能に構成される。第4リンク18は、第4関節17を介して第3リンク16と接続されており、第3リンク16に対して移動可能に構成される。リンクの数および関節の数は、これらに限定されない。
【0015】
外観検査装置20は、ロボットアーム10の第4リンク18の先端に設けられている。外観検査装置20は、被検査対象物102を撮像する撮像部21と、被検査対象物31を照明する第1照明部22および第2照明部23と、撮像部21、第1照明部22および第2照明部23を一体的に保持する保持部24と、を備える。撮像部21、第1照明部22および第2照明部23は、ロボットアーム10の駆動により、一体となって移動可能である。ロボットアーム10を駆動して外観検査装置20を移動させ、第1照明部22および第2照明部23で被検査対象物102を照明しながら、様々な角度から被検査対象物102を撮像する。外観検査装置20で撮像された複数の画像は、画像処理部40に送られる。画像処理部40は、欠陥の有無を判定あるいは不良性(良品性)をスコア化する。ロボットシステム100は、画像処理部40によって被検査対象物102を認識してその代表座標を取得し、制御部30によってロボットアーム10の位置座標を指定するように構成されてもよい。
【0016】
実施の形態に係る外観検査装置20を説明する前に、比較例について説明する。
図2(a)および
図2(b)は、比較例に係る外観検査装置220の構成および動作を説明するための図である。ここでは、被検査対象物102の表面102aに欠陥部104が存在している場合を想定する。欠陥部は、例えば傷、異物、汚れ、歪みなどであってよい。または、被検査対象物102が透明あるいは半透明であり、欠陥部104の表面境界の光学特性(屈折率や表面粗さ等)が異なっている場合であってもよい。または、被検査対象物102が鏡面あるいは反射特性を有しており、欠陥部104の表面境界の光学特性(鏡面反射や拡散反射等に影響及ぼす表面粗さを含む)が異なっている場合であってもよい。
【0017】
外観検査装置220は、撮像部221と、撮像部221の両脇に設けられた第1照明部222および第2照明部223と、撮像部221、第1照明部222および第2照明部223を保持する保持部224とを備える。撮像部221は、C-MOSセンサやCCD等のイメージセンサに結像する光学系を接続したものであってよい。第1照明部222および第2照明部223はそれぞれ、LED光源に導光光学部材(例:セルフォック(登録商標)レンズアレイやシリンダーレンズ、拡散板等)を取り付けたものであってよい。
【0018】
比較例においては、撮像部221、第1照明部222および第2照明部223の相対位置関係は固定である。言い換えると、比較例においては、撮像部221の受光面221aに対する第1照明部222の光軸Ax1の角度、および、撮像部221の受光面221aに対する第1照明部222の光軸Ax1の角度は、固定である。撮像部221の光軸Acは、撮像部221の受光面221aに対して垂直である。第1照明部222の光軸Ax1は、第1照明部222の照射面222aに対して垂直である。第2照明部223の光軸Ax2は、第2照明部223の照射面223aに対して垂直である。
【0019】
図2(a)では、撮像部221の光軸Acが被検査対象物102の表面102aに対して垂直となるように、外観検査装置220が配置されている。第1照明部222および第2照明部223は、欠陥部104に対して斜めから照明している。すなわち、第1照明部222の光軸Ax1および第2照明部223の光軸Ax2は、被検査対象物102の表面102aに対して傾斜している。
【0020】
図2(a)には、第1照明部222および第2照明部223からの照明光が実線矢印で図示されており、該照明光を受けた被検査対象物102の表面102aからの反射光が破線矢印で図示されている。第1照明部222および第2照明部223からの照明光の多くは、被検査対象物102の表面102aで正反射している。一方、欠陥部104に入射した照明光は、欠陥部104で拡散反射(物体内に入り込んで散乱する場合を含む)し、拡散反射光の一部が撮像部221の受光面221aに入射する。
図2(a)では、撮像部221の受光面221aに入射する拡散反射光が太線矢印で図示されている。
【0021】
このような照明条件は、表面102aで正反射した光は撮像部221に届かず真っ暗、あるいは輝度(明度)が低下することから暗視野照明系である。しかしながら、欠陥部104が鏡面反射せずに拡散光を発する場合、その光を撮像部221が取り込めるので、欠陥部104の画像を認識することができる。欠陥部104に対しては第1照明部222および第2照明部223の両方から等しく照射されている。従って、落射暗視野照明系としては、理想に近い照明バランスといえる。ところで、欠陥部104に微細な突起などの凹凸が存在する場合、撮像部221を図面に対し、左右に振ることでその稜線や変色部、反射特性の差異を把握できるので、より検査精度を向上させることができる。
【0022】
図2(b)は、ロボットアーム10(
図1参照)を駆動して、撮像部221の光軸Acが被検査対象物102の表面102aに対して傾斜するように外観検査装置220を移動した状態を示す。第1照明部222および第2照明部223も撮像部221と一体となって移動しているので、被検査対象物102の表面102aに対する照明光の入射角度も、
図2(a)の状態とは異なっている。
図2(b)に示す条件では、左右のバランスが悪く、被検査対象物102への入射角度も大きく異なっており、被検査対象物102に対する照明コントラストや図面に対する左右バランスが異なるだけでなく、欠陥部104に対する照明条件も異なってしまうので、撮像される画像に著しい変化を与えてしまいかねない。例えば、小さな突起の稜線が、撮像部の傾きで顕像化できるはずが、暗くなったり、変色したり、見えにくくなったりするなど、様々な照明条件の差が撮像画像に影響を及ぼしかねない。
【0023】
以下、
図3(a)および(b)並びに
図4(a)および(b)を参照して、照明条件の差が撮像画像に影響を及ぼすことを説明する。ここでは、被検査対象物102の表面102a上に小突起105が存在している場合を想定する。
【0024】
図3(a)は、撮像部221の光軸Acが被検査対象物102の表面102aに対して垂直となるように外観検査装置220を配置した状態を示す。なお、
図3(a)においては図示を簡略化するために、第1照明部222、保持部224などの図示を省略している。
図3(a)に実線矢印で示すように、小突起105を含む被検査対象物102の表面102aに対して斜めに照明光が照射されている。照射された照明光は、表面102aや小突起105で反射している。また、
図3(a)には、小突起105で拡散反射し、撮像部221に入射する拡散反射光が太線矢印で図示されている。
【0025】
図3(b)は、
図3(a)に示す状態において、撮像部221によって撮像される画像の概略図である。
図3(a)に示す照明系は暗視野照明系であるので、視野230が暗く小突起105の像232が明るく撮像される。
図3(a)に示す状態では、撮像部221の光軸Acが被検査対象物102の表面102aに対して垂直となっており、撮像部221の左右両脇から均等に小突起105が照明されるので、
図3(b)に示すように小突起105の像232は平面的に撮像されてしまい、小突起105の稜線を観察することは難しい。すなわち、
図3(a)に示す光学系では、立体的な異物を観察することが困難である。
【0026】
立体的な物体を顕像化したい場合、撮像部221を傾けることが通常行われる。
図4(a)は、撮像部221の光軸Acが被検査対象物102の表面102aに対して傾斜するように外観検査装置220を移動した状態を示す。
図4(b)は、
図4(a)に示す状態において、撮像部221によって撮像される画像の概略図である。照明部も撮像部221と一体となって移動しているので、小突起105に対する照明光の入射角度も、
図3(a)の状態とは異なっている。例えば
図4(a)に示すように、小突起105の斜面で照明光が反射して第1照明部22にそのまま戻っているような場合、
図4(b)の像234に示すように、小突起105の片側の斜面の像が真っ暗となり、小突起105の約半分しか顕像化できない事態が生じ得る。
【0027】
次に、本実施形態に係る外観検査装置20について説明する。
図5(a)および
図5(b)は、本実施形態に係る外観検査装置20の構成および動作を説明するための図である。本実施形態に係る外観検査装置20は、被検査対象物102を撮像する角度に応じて、撮像部21の受光面21aに対して第1照明部22および第2照明部23の光軸角度を変化可能である点が、比較例に係る外観検査装置220と異なる。
【0028】
図5(a)および
図5(b)に示すように、ここでも、被検査対象物102の表面102aに欠陥部104が存在している場合を想定する。欠陥部は、例えば傷、異物、汚れ、歪みなどであってよい。
【0029】
外観検査装置20は、撮像部21と、撮像部21の両脇に設けられた第1照明部22および第2照明部23と、撮像部21、第1照明部22および第2照明部23を保持する保持部24とを備える。撮像部21は、C-MOSセンサやCCD等のイメージセンサに結像する光学系を接続したものであってよい。第1照明部22および第2照明部23はそれぞれ、LED光源に導光光学部材(例:セルフォック(登録商標)レンズアレイやシリンダーレンズ、拡散板等)を取り付けたものであってよい。本実施形態では、撮像部21の両脇の二面に照明部を配置しているが、撮像部21の周囲の四面に照明部を配置してもよい。
【0030】
本実施形態に係る外観検査装置20は、第1照明部22を移動可能に構成された第1移動機構25と、第2照明部23を移動可能に構成された第2移動機構26と、をさらに備える。第1移動機構25は、撮像部21の受光面21aに対して第1照明部22の光軸Ax1を変化可能に構成される。第2移動機構26は、撮像部21の受光面21aに対して第2照明部23の光軸Ax2を変化可能に構成される。第1移動機構25および第2移動機構26は、モータなどの動力源と円弧型のラックアンドピニオンなどの機械要素を組み合わせて構成することができる。第1移動機構25および第2移動機構26の動作は、制御部30(
図1参照)によって制御される。
【0031】
図5(a)では、撮像部21の光軸Acが被検査対象物102の表面102aに対して垂直となるように、外観検査装置20が配置されている。第1照明部22および第2照明部23は、欠陥部104に対して斜めから照明するように配置されている。
【0032】
図5(a)には、第1照明部22および第2照明部23からの照明光が実線矢印で図示されており、該照明光を受けた被検査対象物102の表面102aからの反射光が破線矢印で図示されている。
図5(a)に示すように、第1照明部22および第2照明部23からの照明光の多くは、被検査対象物102の表面102aで正反射している。一方、欠陥部104に入射した照明光は、欠陥部104で拡散反射(物体内に入り込んで散乱する場合を含む)し、拡散反射光の一部が撮像部21の受光面21aに入射する。
図5(a)では、撮像部221の受光面21aに入射する拡散反射光が太線矢印で図示されている。
【0033】
図5(b)は、ロボットアーム10(
図1参照)を駆動して、撮像部21の光軸Acが被検査対象物102の表面102aに対して傾斜するように外観検査装置20を移動した状態を示す。本実施形態に係る外観検査装置20においても、第1照明部22および第2照明部23は撮像部21と一体として移動するので、第1照明部22および第2照明部23の位置は
図5(a)に示す状態から変位している。
【0034】
本実施形態に係る外観検査装置20においては、外観検査装置20を移動した際に、第1移動機構25および第2移動機構26を用いて、被検査対象物102からの拡散反射光が適切に撮像部21の受光面21aに入射するように、第1照明部22と第2照明部23の光軸角度を個別に調整することができる。
図5(b)には、第1移動機構25によって移動される前の第1照明部22’および第2移動機構26によって移動される前の第2照明部23’が破線で図示されている。本実施形態に係る外観検査装置20によれば、外観検査装置20の移動の前後において被検査対象物102への入射角度の変化が所定の範囲内となるように第1照明部22および第2照明部23の光軸角度を調整することにより、照明条件が大きく変わらないようにすることができる。前記所定の範囲は、例えば±10°、または例えば±15°、または例えば±20°であってよい。
【0035】
図5(b)に示す照明は、
図5(a)に示す照明と比較して、被検査対象物102の被検査対象物102への入射角度に関してそれほど大きく変動していない。また、欠陥部104に対する照明のバランスも
図5(a)に近い状態を実現できており、
図2(b)の照明と比較して大きく改善されている。このように、本実施形態に係る外観検査装置20によれば、第1照明部22および第2照明部23の光軸角度を個別に調整可能としたことにより、第1照明部22および第2照明部23と、撮像部21とを一体として移動した場合であっても、照明条件の変化を抑制することができる。略同様の照明条件で被検査対象物102を照明しつつ、異なる撮像角度で被検査対象物102を撮像することが可能となるので、欠陥部104の検査精度を向上することができる。
【0036】
尚、レーザを除く非コヒーレント光は平行光にならず、発散してしまう。より厳密に高い検査精度を実現する為に、第1照明部22および第2照明部23と欠陥部104とのワーキングディスタンスを調整する機構を更に設けてもよい。この場合、第1照明部22および第2照明部23にそれぞれ1軸の微動アクチュエータを設けることでこのような機構を簡易に実現できる。
【0037】
図6(a)および
図6(b)は、被検査対象物102の表面102a上に小突起105が存在する場合に、本実施形態に係る外観検査装置20で撮像される画像を説明するための図である。なお、
図6(a)においても、
図3(a)および
図4(a)と同様に、第1照明部22、保持部24などの図示を省略している。
【0038】
図6(a)は、撮像部21の光軸Acが被検査対象物102の表面102aに対して傾斜するように外観検査装置20を移動した状態を示す(外観検査装置20を移動前の状態は
図3(a)を参照)。
図6(a)に示す状態では、第2照明部23の照明角度が調整されており、
図3(a)に示す状態と比較して、被検査対象物102への入射角度の変化が所定の範囲内(ここでは約10°)とされている。
【0039】
図6(b)は、
図6(a)に示す状態において、撮像部21によって撮像される画像の概略図である。
図6(a)に示す状態における照明条件は、第2照明部23の光軸角度を調整したことにより、
図3(a)に示す照明条件から大きく変化していない。したがって、照明条件を大きく変化すること無く、撮像部21の撮像角度を傾けることができる。撮像角度を傾けることにより、
図6(b)に示すような、撮像角度が被検査対象物102に対して垂直であった場合には難しかった小突起105の稜線の顕像化が可能となる。
【0040】
図1に示すロボットシステム100において、第1照明部22の光軸Ax1および第2照明部23の光軸Ax2の受光面21aに対する角度制御は、制御部30によって為される。ロボットアーム10を制御して被検査対象物102に対する撮像角度を変えたときに、どのように第1照明部22の光軸Ax1および第2照明部23の光軸Ax2の角度を変化させれば照明条件の変化を抑制できるかは、シミュレーションや実験によって適宜求めることができる。
【0041】
ある実施形態では、第1照明部22の光軸Ax1および第2照明部23の光軸Ax2の角度は、撮像部21の受光面21aに入力される被検査対象物102からの反射光の角度の変化が最小となる方向に制御される。このように制御することにより、照明条件の変化を抑制することができる。
【0042】
上記実施形態では、第1照明部22の光軸Ax1および第2照明部23の光軸Ax2の角度を変化させているが、これに加えて、光軸Ax1および光軸Ax2の変化に応じて、照明光量を変化可能としてもよい。照明光量は、例えば積算光量であってもよいし、最大照度であってもよい。光軸の変化に応じて照明光量を変化させることにより、照明条件の変化をさらに抑制することができる。
【0043】
ある実施形態では、第1照明部22の光軸Ax1および第2照明部23の光軸Ax2の角度は、撮像部21の受光面21aに入射する反射光量が略一定となるように制御されてもよい。このように制御することにより、照明条件の変化をさらに抑制することができる。
【0044】
図1に示すようなロボットシステムにおいては、被検査対象物102の検査レシピを作成し、該検査レシピに従って制御部30はロボットアーム10を制御する。制御部30は、検査レシピを作成すると、外観検査装置20を移動させるロボットアーム10の制御タスクと、第1照明部22の光軸Ax1および第2照明部23の光軸Ax2を微動させる第1移動機構25および第2移動機構26の駆動プログラムを自動的に生成してもよい。制御部30は、第1照明部22の光軸Ax1および第2照明部23の光軸Ax2の変化を少なくするように、第1移動機構25および第2移動機構26とロボットアーム10とを同時制御することができる。
【0045】
図7は、実施の形態に係るロボットシステム100における一連の処理を示すフローチャートである。
図7に示すフローチャートに従って、ロボットシステム100の一連の処理を説明する。
【0046】
ここでは、被検査対象物102の表面に対して撮像部21の光軸Acが垂直となるように、ロボットシステム100の先端の外観検査装置20が配置されているものとする。まず、制御部30は、ロボットアーム10を駆動して、被検査対象物102の表面に対して撮像部21の光軸Acが傾斜するように、撮像部21と第1照明部22および第2照明部23とを一体として移動する(S10)。
【0047】
次に、制御部30は、第1移動機構25および第2移動機構26を駆動して、S10における移動に応じて撮像部21の受光面21aに対して第1照明部22および第2照明部23の光軸角度をそれぞれ変化させる(S12)。例えば、S10における移動の前後において被検査対象物102への入射角度の変化が所定の範囲内となるように、第1照明部22および第2照明部23の光軸角度を調整する。
【0048】
次に、制御部30は、ロボットアーム10を駆動して、第1照明部22、第2照明部23と、被検査対象物102との間の距離を調整する(S14)。
図8(a)および
図8(b)は、照明部と被検査対象物との間の距離の調整を説明するための図である。
図8(a)は、第1照明部22、第2照明部23と、被検査対象物102との間の距離を遠くした状態を示す。このような場合、照明の発散が大きくなる。一方、
図8(b)は、第1照明部22、第2照明部23と、被検査対象物102との間の距離を近くした状態を示す。このような場合、照明の発散が少なくなる。
【0049】
図7のフローチャートに戻る。次に、第1照明部22および第2照明部23で被検査対象物102を照明する(S16)。第1照明部22および第2照明部23の光軸角度を調整しているので、外観検査装置20の移動前と大きく変わらない照明条件で被検査対象物102を照明することができる。
【0050】
次に、撮像部21で被検査対象物102を撮像する(S18)。撮像された画像は画像処理部40に送られ、被検査対象物102における欠陥の有無が判定される。
【0051】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せに様々な変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0052】
10 ロボットアーム、 20 外観検査装置、 21 撮像部、 22 第1照明部、 23 第2照明部、 24 保持部、 25 第1移動機構、 26 第2移動機構、 30 制御部、 40 画像処理部、 100 ロボットシステム、 102 被検査対象物、 104 欠陥部。