(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177909
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】蒸気抜き包装容器及び食品包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096308
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 美香
(72)【発明者】
【氏名】松永 直也
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013BA15
3E013BA24
3E013BB13
3E013BC04
3E013BD11
3E013BE01
3E013BF01
3E013BF22
(57)【要約】
【課題】通蒸部から蒸気が抜けるときの収容体の設定内部圧力が大きくても、嵌合力がさほど大きくないファスナーを使用することができ、低廉化が可能な蒸気抜き包装容器を提供する。
【解決手段】通蒸部2を所定の圧力で確実に開口させるために通蒸部2の近傍では収容体1の変形量(変位)が大きく設定されており、その影響で通蒸部2の近くではファスナー4に大きな開封力が作用するが、通蒸部2が設けられている側のファスナー4の端部を、反対側の端部に対して、収容体1の底から遠くなるようにしたことにより、通蒸部2の近くで作用するファスナー4の開封力を低減することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部及び底部及び側部となる少なくとも三方が周縁部の一部を残してシール加工された袋状をなす樹脂シート製の収容体からなり、袋状の前記収容体の周縁部でシール加工されていない部分はシール加工の可能なシール可能部とされ、前記収容体の上部のシール加工部及び/又はシール可能部よりも前記底部側に前記収容体の上部となる一辺を開封及び再封可能なファスナーが設けられ、
前記収容体には、前記ファスナーよりも前記底部側で且つ何れか一方の前記側部又はその近傍に収容体の内部の圧力が所定の圧力以上で収容体の内部の蒸気を抜く通蒸部が設けられ、
前記ファスナーは、前記通蒸部が設けられている側部側の端部が反対側の端部に対して、前記収容体の底から遠くなるように設けられた蒸気抜き包装容器。
【請求項2】
前記ファスナーの伸長方向が前記収容体の底に対して所定の角度で傾斜されている請求項1に蒸気抜き包装容器。
【請求項3】
上端部と前記ファスナーとの間で前記シール加工部及び/又はシール可能部の切り取りをガイドする切り取りガイドが設けられ、前記切り取りガイドの伸長方向が前記ファスナーの伸長方向と平行である請求項2に記載の蒸気抜き包装容器。
【請求項4】
前記ファスナーと前記通蒸部とは40mm以上離反している請求項1に記載の蒸気抜き包装容器。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の蒸気抜き包装容器の収容体に食品が収容された状態で前記シール可能部にシール加工が施されて容器が密封された食品包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気抜き包装容器及び食品包装体、特に上部及び底部及び側部の少なくとも三方がシール加工された袋状の収容体で、その上部に収容体を開封及び再封可能なファスナーが設けられた蒸気抜き包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
このような蒸気抜き包装容器としては、例えば下記特許文献1に記載されるものがある。この蒸気抜き包装容器は、樹脂シート製の袋状の収容体からなり、ファスナーの伸長方向は収容体の底と平行に設定されており、収容体の内部の蒸気を抜くための通蒸部は、ファスナーよりも収容体の底部側に設けられ且つ収容体の一方の側部における側方シール部によって閉塞されている。また、ファスナーよりも上方における収容体の上端周縁部がシール加工の可能なシール可能部とされており、このシール可能部の切り取りをガイドする切り取りガイドは、収容体の一方の側部から通蒸部の空洞部を通過して上向きに伸長し、ファスナーを横断してからシール可能部とファスナーの間を収容体の他方の側部まで延伸されている。
【0003】
この蒸気抜き包装容器では、例えば、加工・調理済みの食材や調味料を収容体の内部に充填した状態でファスナーが閉じられ且つ上部のシール可能部がシール加工されて収容体の上端が閉塞されている。この状態から、切り取りガイドに沿ってシール加工済みのシール部(=シール可能部)を切り取ると、通蒸部の閉塞部も一緒に切り取られて通蒸部が外部に開口する。そして、一旦、ファスナーを開けて新たな或いは追加する食材を収容体内に入れてからファスナーを再封する。その後、蒸気抜き包装容器を電子レンジ内に自立状態で収容し、電子レンジを作動して内部の食材を加熱する。収容体内で生じた蒸気は通蒸部を通じて収容体の外部に排出され、例えば、収容体内では食材が加熱処理(調理)される。なお、この蒸気抜き包装容器では、切り取りガイドで一部が切り取られた状態では通蒸部の外側端部が易剥離部で閉塞されており、収容体の内部の圧力が高くなったら易剥離部が剥離して通蒸部が外部に連通し、収容体の内部の蒸気が排出される構造も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、同様の形状の収容体の側部(又はその近傍)に、収容体の内部の圧力が所定の圧力以上で開口して収容体の内部の蒸気を抜く通蒸部が設けられた蒸気抜き包装容器が開発されている。この蒸気抜き包装容器では、通蒸部が開口する収容体の設定内部圧力が大きいので、嵌合力の大きいファスナーを用いる必要がある。しかしながら、嵌合力が大きいファスナーは、価格も高く、蒸気抜き包装容器の価格に反映してしまう。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、通蒸部から蒸気が抜けるときの収容体の設定内部圧力が大きくても、嵌合力がさほど大きくないファスナーを使用することができ、低廉化が可能な蒸気抜き包装容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る蒸気抜き包装容器は、上部及び底部及び側部となる少なくとも三方が周縁部の一部を残してシール加工された袋状をなす樹脂シート製の収容体からなり、袋状の前記収容体の周縁部でシール加工されていない部分はシール加工の可能なシール可能部とされ、前記収容体の上部のシール加工部及び/又はシール可能部よりも前記底部側に前記収容体の上部となる一辺を開封及び再封可能なファスナーが設けられ、前記収容体には、前記ファスナーよりも前記底部側で且つ何れか一方の前記側部又はその近傍に収容体の内部の圧力が所定の圧力以上で収容体の内部の蒸気を抜く通蒸部が設けられ、前記ファスナーは、前記通蒸部が設けられている側部側の端部が反対側の端部に対して、前記収容体の底から遠くなるように設けられたことを要旨とする。
【0008】
また、本発明の一態様に係る食品包装体は、蒸気抜き包装容器の収容体に食品が収容された状態で前記シール可能部にシール加工が施されて容器が密封されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の蒸気抜き包装容器によれば、通蒸部の近くで作用するファスナーの開封力を低減することができ、これにより通蒸部から蒸気が抜けるときの収容体の設定内部圧力が大きくても、嵌合力がさほど大きくないファスナーを使用することができ、低廉化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の蒸気抜き包装容器の一実施形態を示す未使用状態の正面図である。
【
図3】
図1の蒸気抜き包装容器の使用状態を示す斜視図である。
【
図4】
図1の蒸気抜き包装容器における収容体の内圧の経時変化を示すタイムチャートである。
【
図5】蒸気抜き包装容器の第1比較例における収容体の内圧の経時変化を示すタイムチャートである。
【
図6】蒸気抜き包装容器の第2比較例における収容体の内圧の経時変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の蒸気抜き包装容器の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0012】
図1は、蒸気抜き包装容器の一実施形態を示す正面図であり、
図2は、
図1の蒸気抜き包装容器の断面図である。この蒸気抜き包装容器は、樹脂フィルムの積層体からなる複数のシートをシール(熱溶着)させて袋状の収容体1として構成されている。それぞれのシートは、例えば収容体1としての強度や柔軟性、耐衝撃性などの諸特性を得るための基材層21と、シート同士をシールするためのシーラント層22を備え、必要に応じて、両者の間に中間層23などを設けてもよい。
【0013】
基材層21の素材には、種々のものが適用可能であるが、一例として、ポリエチレンテレフタレート、二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸ナイロンなどのフィルムが好適である。シーラント層22には、ヒートシール性を備えた低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、無延伸ポリプロピレンなどのフィルムを使用することができるが、シール性や柔軟性の観点からは直鎖状低密度ポリエチレンフィルムが好ましい。これら以外のフィルムをシーラント層22に用いることも可能である。
【0014】
中間層23には、基材層21にない機能を備えたフィルムを用いることができ、バリア機能としてはアルミ蒸着プラスチックフィルムや透明蒸着プラスチックフィルム、アルミ箔などを用いることができる。プラスチックフィルムの材料としてはポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン等のポリアミドを挙げることができ、耐衝撃性や耐ピンホール性などの強度を得るためには二軸延伸ナイロンフィルムが望ましい。バリア機能と耐ピンホール性、耐衝撃性を同時に得るためにはアルミ蒸着二軸延伸ナイロンフィルムを用いることができる。これら以外のフィルムを中間層23に用いることも可能である。
【0015】
基材層21と中間層23の間に印刷層を設けることも可能である。印刷層は、商品としての販売促進効果を向上させる目的で絵柄や商品の説明などを記載するほか、収容体1に遮光性を付与することもできる。収容体1に遮光性が付与されれば、例えば、外箱などに収容せずに、そのまま流通させることも可能となる。そして、各層は、所定の接着強度を有する適切な接着剤で互いに接着されて積層される。
【0016】
この袋状の収容体1は、それぞれが基材層21やシーラント層22、中間層23などを有する2枚の外面シート(表裏面シート)11と底シート12から構成されている。この収容体1では、シーラント層22が外側になるように180°折り返された底シート12を、折れ線24を上向きにして2枚の外面シート11のシーラント層22の下(端)部で挟み、それらのシートの袋体幅方向両側の両サイドシール部25と袋体底部のボトムシール部26をシール加工して収容体1の側部の下(端)部及び底部が形成されている。また、重ね合わせ状態となっている外面シート11の上端部のトップシール部27をシール加工して収容体1の上縁部が閉塞されている。
【0017】
また、重ね合わせ状態となっている外面シート11の
図1の右方側部は、上下方向中央部を除いて、上(端)部が幅広、それより下部が幅狭なサイドシール部25がシール加工されて閉塞されると共に、その上下方向中央部には、収容体1の内部の圧力が所定の圧力以上で内部の蒸気を抜く通蒸部2が設けられている。この通蒸部2は、収容体1の幅方向内側に向けて突出する(正)三角形の上辺部と下辺部を幅狭にシール加工して形成されている。このような通蒸部2の他の例としては、例えば特開2018-188201号公報に記載されるものがある。また、この外面シート11は、
図1の左方側部の上下方向中央部が方形に突出しており、この突出部分の上端部及び下端部とそれより上方及び下方のサイドシール部25がシール加工されて閉塞され、この突出部分は、例えば図の二点鎖線より左方部分がシール加工可能なシール可能部28とされている。
【0018】
図1、
図2は、この実施形態の蒸気抜き包装容器の未使用状態を示しており、食品を包装する以前の容器、いわば製品としての容器の状態である。従って、袋状の収容体1は、シール可能部28が開放されている。この実施形態では、このシール可能部28から収容体1の内部に、例えば、調味料(液)や加工・調理済みの食材などの収容物を入れた後、シール可能部28をシール加工して内部を密閉・封止する。この状態が、食品包装体としての商品の状態である。食品包装体の使用に関しては、後段に説明する。
【0019】
また、ボトムシール部26の領域内には、外面シート11と底シート12を意図的にシール加工しない非シール部29が設けられている。この非シール部29は、シール加工時の熱収縮によって外面シート11に凹凸が形成されることを防止すると共に、収容体1の見栄えや落下時の強度を向上させる機能を有する。また、このボトムシール部26の領域における両サイドシール部25には、外面シート11同士がシール加工された本体シール部30が設けられている。この本体シール部30は、底シート12の該当箇所をパンチ加工して穴或いは切り欠きを設けておき、サイドシール部25のシール加工時に外面シート11のシーラント層22同士がシール加工されるようにしたものである。この本体シール部30により、底部の左右両端部が開かないようにすることができ、また容器が自立状態にあるときの安定性や見栄えを向上することができる。
【0020】
また、この実施形態の蒸気抜き包装容器では、シール可能部28より少し上方の位置で外面シート11の内側面(=シーラント層22)同士が易剥離部3で弱シール加工されている。この易剥離部3は、調味液などの内容物が後述するファスナー4を超えないように軽く接合されて構成されており、後述するように、切り取りガイド5で収容体1の上端部のシール加工部、すなわちトップシール部27を切り取った後、外面シート11同士を離反するように開くと、比較的容易に剥離して外面シート11同士が開放されるようにしている。なお、この実施形態では、易剥離部3の伸長方向を、後述するファスナー4の伸長方向と平行に設定している。
【0021】
この易剥離部3とトップシール部27の間には、収容体1の上部となる一辺を開封及び再封可能なファスナー4が設けられている。このファスナー4の構造そのものは、例えば上記特許文献1に記載されるように、一方の外面シート11の内側面(=シーラント層22)に一体的に設けられる鏃状断面部材4aと他方の外面シート11の内側面(=シーラント層22)に一体的に設けられる椀状断面部材4bが互いに噛合することで嵌合されるものが用いられる。この実施形態では、ファスナー4の伸長方向は直線状であるものが用いられ、ファスナー4は、通蒸部2が設けられている側部側の端部が反対側の端部よりも収容体1の底から遠くなるように、すなわち図の右端が左端より高くなるように設けられている。なお、ファスナー4の伸長方向は、直線状であることが望ましいが、例えば円弧状や階段状であってもよい。
【0022】
このファスナー4は、後述するように、通蒸部2から40mm以上離反して設けられている。伸長方向が直線状のファスナー4は、その伸長方向が収容体1の底に対して所定の角度になるように傾斜されている。この実施形態では、トップシール部27は、後述する切り取りガイド5(
図1の二点鎖線)で切り取られる。従って、トップシール部27が切り取られた後の収容体1で最も高くなるのは
図1の右端部である。電子レンジで加熱されることが前提の蒸気抜き包装容器の高さは、電子レンジの内部の高さで規定される。すなわち、電子レンジの内部に自立状態で収容されなければならない。一方、この実施形態のように、ファスナー4が斜めに設けられた収容体1では、反対側の端部、すなわち左端部を低くすることも可能であるが、ファスナー4の図示左端部は、易剥離部3よりも高い位置である必要がある。このことから、収容体1の底(=電子レンジのテーブル)に対するファスナー4の伸長方向の許容傾斜角度は0°~5°の範囲である。
【0023】
また、この実施形態では、トップシール部27を切り取る際のガイドとなる切り取りガイド5の伸長方向をファスナー4の伸長方向と平行に設定している。切り取りガイド5は、
図1の右側のサイドシール部25から左側のサイドシール部25まで延伸されており、切り取りガイド5の両端部に相当するサイドシール部25には三角形の切り欠きからなるノッチ31が形成されている。この切り取り線は、例えば、外面シート11に直線状の脆弱部を形成して構成されている。従って、左右何れか一方のノッチ31よりも上部のトップシール部27を手指で摘んで上方に引き上げると、切り取りガイド5で一方の側部から他方の側部に向けて外面シート11が切断され、トップシール部27を切り取ることができる。切り取り後の収容体1の上縁部は、
図1の右方が高く、左方が低く傾斜している(
図3参照)。
【0024】
図3は、
図1の蒸気抜き包装容器の使用状態を示しており、具体的には、商品としての食品包装体のトップシール部27を切り取りガイド5に沿って切り取り、更にファスナー4を開封した状態を示している(易剥離部3は既に剥離している)。前述のように、商品としての食品包装体では、収容体1の内部に加工・調理済みの食材や調味料(液)などの収容物が封止されているので、収容体1を開封すると、
図2に破線で示すように、内部にそれらが入っている。なお、シール可能部28はシール加工されてサイドシール部25と一体化している。この収容体1の内部に新たな或いは追加する食材を入れてからファスナー4を再封する。その後、蒸気抜き包装容器を電子レンジ内に自立状態で収容し、電子レンジを作動(レンジアップ)して内部の食材を加熱する。その際、食材や調味液などから水分が蒸発すると容積が著しく増大し、収容体1が膨らんで内部の圧力が増大する。収容体1の内部の圧力が所定の圧力以上になると、通蒸部2のシール部が剥がれることにより通蒸部2が開口して内部の蒸気が抜ける。この状態を所定時間維持することで、収容体1の内部の食材が加熱処理・調理される。
【0025】
従って、この間、ファスナー4は開封しない必要がある。前述のように、トップシール部27が切り取られた後の収容体1の高さは、電子レンジの内部の高さで規定されるので、ファスナー4の高さも規定される。通蒸部2は、前述のように、シール部が剥離して通蒸部2が開口した後、内容物が開口部からこぼれない高さである必要はあるが、一般的には、通蒸部2のシール部が確実に設定内部圧力で剥がれるように、蒸気発生に伴う収容体1の膨張時、最も変位が大きくなる収容体1の高さ方向中央部に設定されている。また、実際に、通蒸部2の近傍では、他の領域と比較して変形量、すなわち変位が大きい。収容体1の膨張方向への変位が大きいほど、ファスナー4を開封する開封力が大きい。従って、ファスナー4が通蒸部2に近い、すなわちファスナー4の配設高さが低いほど、収容体1の膨張時に作用するファスナー4の開封力が大きくなる。
【0026】
この大きな開封力に対してファスナー4が開封しないためには、大きな嵌合力のファスナー4を用いるのが最も簡易である。しかし、そうした大きな嵌合力のファスナー4は高価であり、それが容器の価格に反映する。嵌合力のさほど大きくないファスナー4を用いるために、この実施形態では、通蒸部2が設けられている側部側の端部が反対側の端部に対して高くなるように、すなわち収容体1の底から遠くなるようにファスナー4を配設している。具体的に、この実施形態では、通蒸部2がファスナー4から40mm以上離反していれば、ファスナー4が開封されることはない。このとき、通蒸部2が設けられている側部と反対側のファスナー4(及び易剥離部3)の伸長方向が斜めに設定されているので、収容体1の内部に食材などの収容物が収容されて封止されている食品包装体の膨らみを小さくすることができる。このように食品包装体としての膨らみを小さくすることができれば、それを収容して搬送するための外箱などの搬送箱の大きさを小さくすることができ、搬送費用を低廉化することも可能となる。この実施形態では、この目的のために易剥離部3の伸長方向をファスナー4の伸長方向と平行に設定している。また、この実施形態では、トップシール部27が切り取られた後の収容体1からの内容物の注出性を向上させるために、切り取りガイド5の伸長方向もファスナー4の伸長方向と平行に設定している。このように使用時の収容体1の上縁を斜めにすることで、電子レンジによる加熱処理(調理)後は、高い方の上縁部を手指で持つことにより熱さが緩和され、内容物を上縁部の低い方から注出することで、注出がしやすくなり、特に液状の内容物の場合には、注出した最後の液滴の切れが良くなる。
【0027】
図4~
図6は、嵌合力の異なるファスナー4を用いた蒸気抜き包装容器の電子レンジによる加熱処理(調理)時の内部の圧力の経時変化を示す。
図4は、
図1の蒸気抜き包装容器の加熱調理時の内部圧力である。全ての蒸気抜き包装容器のサイズは同じであり、
図4と
図6の蒸気抜き包装容器に用いられているファスナー4は、嵌合力がさほど大きくない同じものを用いており、
図5の蒸気抜き包装容器は、嵌合力が大きいファスナー4を用いている。そして、
図5及び
図6の蒸気抜き包装容器は、
図1のファスナー4の左端の高さ一定で収容体1の底と平行にファスナー4を配設している。電子レンジによる加熱条件は、水200mLと圧力ロガー(記録装置)を開封済みの蒸気抜き自立容器の内部に入れてファスナー4を再封し、電子レンジで500W10分レンジアップした。圧力ロガーは、TMI-ORION製のPicoVACQ PTである。
【0028】
図5の蒸気抜き包装容器では、収容体1の内部の圧力上昇が早く、しかも高い圧力を長時間(所定時間)維持することができている。これに対し、
図6の蒸気抜き包装容器では、収容体1の内部の圧力上昇は早いものの、その後、すぐに圧力が低下している。これは、蒸気発生による収容体1の膨張に伴ってファスナー4の一部が開封されてしまい、内部の蒸気が漏れて(抜けて)しまったためである。これに対し、
図4、すなわち
図1の蒸気抜き包装容器では、
図5のものと比して、内容積が若干増大しているために収容体1の内部圧力の上昇が少し遅れているが、上昇後は、
図5と同等の圧力が維持されている。また、内部圧力の高い状態の時間も
図4の増圧時間と同等であり、同等の時間(所定時間)経過後に通蒸部2が開口して内部の蒸気が抜けている(圧力が減少している)。従って、
図4(
図1)の蒸気抜き包装容器は
図5の大きい嵌合力のファスナー4を用いた蒸気抜き包装容器と同等の加熱処理(調理)時間を達成することができている。その結果、
図5の蒸気抜き包装容器と同等の加熱処理(調理)能力を有する蒸気抜き包装容器を低廉化することができた。
【0029】
このように、この実施形態では、通蒸部2を所定の圧力で確実に開口させるために通蒸部2の近傍では収容体1の変形量(変位)が大きく設定されており、その影響で通蒸部2の近くではファスナー4に大きな開封力が作用するが、通蒸部2が設けられている側のファスナー4の端部を、反対側の端部に対して、収容体1の底から遠くなるようにしたことにより、通蒸部2の近くで作用するファスナー4の開封力を低減することができる。従って、通蒸部2が開口するときの収容体1の設定内部圧力が大きくても、ファスナー4が開封されにくくなることから、嵌合力がさほど大きくないファスナー4を使用することができ、低廉化が可能となる。
【0030】
また、ファスナー4の伸長方向を収容体1の底に対して所定の角度で傾斜させたことにより、ファスナー4の開封及び再封、特に再封に困難性が生じない。
また、上端部のトップシール部27の切り取りをガイドする切り取りガイド5の伸長方向がファスナー4の伸長方向と平行であることから、トップシール部27が切り取られた後の収容体1の上縁部が斜めになり、通蒸部2側の上端部を手指で持つことで電子レンジによる加熱後の収容体1の熱さが緩和される。また、斜めに切断されている収容体1の上縁部の最も低い箇所から内容物を注出することにより、内容物を注出しやすくなり、特に最後の液滴の切れがよくなる。
【0031】
また、ファスナー4を通蒸部2から40mm以上離反することにより、電子レンジによる加熱処理(調理)時にファスナー4の開封を確実に防止することができる。
また、収容体1に食品が収容された状態でシール可能部28にシール加工が施されて容器が密封された食品包装体では、流通過程に必要とされる高い気密性を維持することができるため、食品の鮮度を長期間に亘って維持することが可能になると共に、その流通過程で容器内に異物が混入することなども回避することができる。
【0032】
以上、実施形態に係る蒸気抜き包装容器について説明したが、本件発明は、上記実施の形態で述べた構成に限定されるものではなく、本件発明の要旨の範囲内で種々変更が可能である。例えば、上記実施形態では、電子レンジの内部で自立する自立型包装容器についてのみ説明したが、通蒸部2から蒸気が抜けるまでファスナー4の開封を防止したい包装容器であれば、これに限定されない。
【符号の説明】
【0033】
1 収容体
2 通蒸部
3 易剥離部
4 ファスナー
5 切り取りガイド
25 サイドシール部(シール加工部)
26 ボトムシール部(シール加工部)
27 トップシール部(シール加工部)
28 シール可能部