IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社新川の特許一覧

<>
  • 特開-半導体装置の製造装置 図1
  • 特開-半導体装置の製造装置 図2
  • 特開-半導体装置の製造装置 図3
  • 特開-半導体装置の製造装置 図4
  • 特開-半導体装置の製造装置 図5
  • 特開-半導体装置の製造装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177924
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】半導体装置の製造装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/03 20060101AFI20241217BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20241217BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20241217BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
F16F15/03 G
H01L21/68 N
H01L21/60 301Z
H01L21/60 311Z
H01L21/52 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096335
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 徹
【テーマコード(参考)】
3J048
5F044
5F047
5F131
【Fターム(参考)】
3J048AA06
3J048BE08
3J048BE09
3J048CB12
3J048CB21
3J048EA07
5F044BB00
5F044PP00
5F047FA90
5F131AA02
5F131BA54
5F131CA19
5F131EA05
5F131EA22
5F131EB78
5F131EB79
(57)【要約】
【課題】テーブルの意図しない振動をより効果的に抑制できる半導体装置の製造装置を提供する。
【解決手段】製造装置10は、ベース12と、半導体装置またはその素材が載置されるテーブル14と、前記テーブル14を前記ベース12に対して移動させる移動機構16と、を備え、前記移動機構16は、前記テーブル12とともに所定のスライド方向に移動する可動ユニット30と、前記可動ユニット30から受ける反力を解消する方向に移動可能に前記ベース12に連結された制振ユニット20と、前記ベース12に取り付けられ、非磁性かつ導電性を有する導体プレート52と、前記制振ユニット20に取り付けられ、前記導体プレート52を貫通する磁束を形成する磁束形成機構70と、を有しており、前記導体プレート52は、前記ストロークの端部に近づくにつれて、前記導体プレート52の材料を貫通可能な磁束量が増加する形状である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
半導体装置またはその素材が載置されるテーブルと、
前記テーブルを前記ベースに対して移動させる移動機構と、
を備え、前記移動機構は、
前記テーブルに連結され、前記テーブルとともに所定のスライド方向に移動する可動ユニットと、
前記可動ユニットから受ける反力を解消する方向に移動可能に前記ベースに連結された制振ユニットと、
前記制振ユニットまたは前記ベースの一方に取り付けられ、非磁性かつ導電性を有する導体プレートと、
前記制振ユニットまたは前記ベースの他方に取り付けられ、前記制振ユニットの移動に伴い所定のストローク内で前記導体プレートに対して相対移動するとともに、前記導体プレートを貫通する磁束を発生するダンパ用磁石と、
を有しており、前記導体プレートは、発生する磁束密度が一様である場合、前記導体プレートの材料を貫通する磁束が、その中央部よりもその端部のほうが多くなる、ような形状である、
ことを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造装置であって、
前記導体プレートの前記端部は、前記ストロークの終点に近づくにつれて、幅寸法が連続的に増加する、ことを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置の製造装置であって、
前記導体プレートは、複数の調整孔が形成されており、
前記導体プレートの前記端部は、前記中央部よりも前記調整孔の面積が減少する、
ことを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置の製造装置であって、
前記導体プレートは、前記ベースに固定され、
前記ダンパ用磁石は、前記制振ユニットに固定される、
ことを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置の製造装置であって、
前記導体プレートおよび前記ダンパ用磁石を含む磁気ダンパが、前記制振ユニットの重心を挟んで両側に配置されている、ことを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体装置の製造装置であって、
一対の前記ダンパ用磁石が、前記導体プレートを挟んで対向配置されており、
さらに、前記一対のダンパ用磁石の対向面積を変更するべく、前記一対のダンパ用磁石の相対位置を変更する調整機構を備える、
ことを特徴とする半導体装置の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ベースと、テーブルと、テーブルをベースに対して移動させる移動機構と、を備えた半導体装置の製造装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワイヤボンディング装置やダイボンディング装置等の半導体装置製造装置(以下「製造装置」と呼ぶ)。かかる製造装置は、通常、半導体装置または基板が載置されるテーブルと、当該テーブルを、ベースに対して移動させる移動機構と、を有する。
【0003】
移動機構は、例えば、可動ユニットと、電磁気的作用により可動ユニットを移動させる制振ユニットと、を有する。そして、可動ユニットは、テーブルに連結され、制振ユニットは、ベースに連結される。ここで、制振ユニットをベースに対して完全に固定した場合、可動ユニットの移動時に発生する反力が、制振ユニットを介してベースに伝達される。そして、これにより、ベースひいてはテーブルに意図しない振動が発生するおそれがあった。
【0004】
特許文献1には、半導体製造装置におけるXYテーブルが開示されている。このXYテーブルは、テーブルとともに移動する駆動体(可動ユニットに対応)と、電磁気的作用により可動ユニットを移動させるモータ本体(制振ユニットに対応)と、を有する。そして、特許文献1では、駆動体を駆動したときに、モータ本体が駆動体と反対方向に動けるようにしている。かかる構成とすることで、駆動体の移動に伴い生じる反力を、モータ本体の移動で打ち消すことができる。結果として、ベース、ひいては、テーブルの意図しない振動を抑制でき、製造される半導体装置の品質をより向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4021158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、テーブルの振動を抑制するためには、制振ユニットの運動の減衰率は、小さいほうがいい。しかし、制振ユニットのストロークの端部における減衰率が小さいと、制振ユニットが、他部材に衝突し、大きな衝撃が発生することがある。結果として、テーブルの意図しない振動を十分に抑制できないおそれがある。
【0007】
そこで、本明細書では、テーブルの意図しない振動をより効果的に抑制できる製造装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示する製造装置は、ベースと、半導体装置またはその素材が載置されるテーブルと、前記テーブルを前記ベースに対して移動させる移動機構と、を備え、前記移動機構は、前記テーブルに連結され、前記テーブルとともに所定のスライド方向に移動する可動ユニットと、前記可動ユニットから受ける反力を解消する方向に移動可能に前記ベースに連結された制振ユニットと、前記制振ユニットまたは前記ベースの一方に取り付けられ、非磁性かつ導電性を有する導体プレートと、前記制振ユニットまたは前記ベースの他方に取り付けられ、前記制振ユニットの移動に伴い所定のストローク内で前記導体プレートに対して相対移動するとともに、前記導体プレートを貫通する磁束を発生するダンパ用磁石と、を有しており、前記導体プレートは、発生する磁束密度が一様である場合、前記導体プレートの材料を貫通する磁束が、その中央部よりもその端部のほうが多くなる、ような形状であることを特徴とする。
【0009】
この場合、前記導体プレートの前記端部は、前記ストロークの終点に近づくにつれて、幅寸法が連続的に増加してもよい。
【0010】
また、前記導体プレートは、複数の調整孔が形成されており、前記導体プレートの前記端部は、前記中央部よりも前記調整孔の面積が減少してもよい。
【0011】
また、前記導体プレートは、前記ベースに固定され、前記ダンパ用磁石は、前記制振ユニットに固定されてもよい。
【0012】
また、前記導体プレートおよび前記ダンパ用磁石を含む磁気ダンパが、前記制振ユニットの重心を挟んで両側に配置されてもよい。
【0013】
また、一対の前記ダンパ用磁石が、前記導体プレートを挟んで対向配置されており、さらに、前記一対のダンパ用磁石の対向面積を変更するべく、前記一対のダンパ用磁石の相対位置を変更する調整機構を備えてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本明細書で開示する半導体装置の製造装置によれば、ストロークの中央部よりも端部のほうにおいて、制振ユニットの運動の減衰力を大きくできる。その結果、ストローク中央付近での制振ユニットの減衰を抑えつつ、制振ユニットがストロークエンドに衝突することを効果的に防止できる。そして、これにより、テーブルの意図しない振動をより効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】製造装置の概略的な平面図である。
図2】移動機構の模式的な側面図である。
図3図2のA-A断面図である。
図4】磁気ダンパの作用を説明する模式図である。
図5】調整機構の一例を示す図である。
図6】導体プレート52の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して製造装置10の構成について説明する。図1は、製造装置10の概略的な平面図である。この製造装置10は、半導体装置またはその素材(以下、両者をまとめて「載置物」と呼ぶ)が載置されるテーブル14と、載置物に対して所定の処理を施すツールヘッドと、を有する。図1では、ツールヘッドの図示を省略している。なお、半導体装置の素材は、例えば、基板またはウエハを含む。また、ツールヘッドは、例えば、載置物に対して、移送処理や、ワイヤボンディング処理、ダイボンディング処理等を施す。
【0017】
テーブル14は、第一軸方向Afと、当該第一軸方向Afに直交する第二軸方向Asと、に移動可能である。このテーブル14を移動させるために、製造装置10は、さらに、第一移動機構16fおよび第二移動機構16sを有する。
【0018】
第二移動機構16sは、テーブル14を第二軸方向Asに移動させる。第一移動機構16fは、第二移動機構16sの可動ユニット30sごと、テーブル14を、第一軸方向Afに移動させる。
【0019】
第一移動機構16fは、可動ユニット30fと、制振ユニット20fと、に大別される。可動ユニット30fは、さらに、サブテーブル31fと、可動子32fと、に大別される。サブテーブル31fは、テーブル14の下側に配置されており、移動用ガイド40sを介してテーブル14を保持する。テーブル14は、サブテーブル31fとともに第一軸方向Afに移動するとともに、移動用ガイド40sに沿って第二軸方向Asに移動可能である。
【0020】
可動子32fは、サブテーブル31fに固着されている。可動子32fには、コイル34fが巻回されている。このコイル34fに、電圧が供給されると、その電圧による電流の方向に応じて、可動ユニット30fが、第一軸方向Afに移動する。
【0021】
制振ユニット20fは、フレーム23fと、永久磁石24fと、を有する。フレーム23fは、後述する吸収用ガイド42(図1では見えず)を介して、ベース12に取り付けられている。フレーム23fには、磁極を形成する複数の永久磁石24fが取り付けられている。この永久磁石24fとコイル34fとの電磁気的作用により、可動ユニット30fが、第一軸方向Afに移動する。ここで、制振ユニット20fの重量は、可動ユニット30fの重量より十分に大きい。かかる構成とする理由については後述する。なお、本例では、可動子32fにコイル34fを設け、固定子22fに永久磁石24fを設けている。しかしながら、可動ユニット30fを、直線移動させることができるのであれば、可動子32fおよび固定子22fの構成は適宜変更されてもよい。例えば、可動子32fに永久磁石24fを設け、固定子22fに、コイル34fを設けてもよい。また、永久磁石24fに換えて、コイルに電流を流すことで磁束を発生させる電磁石を用いてもよい。
【0022】
第二移動機構16sは、第一移動機構16fと類似した構成を有する。すなわち、第二移動機構16sも、制振ユニット20sと、可動ユニット30sと、に大別される。可動ユニット30sの可動子32sは、テーブル14に連結されており、テーブル14を第二軸方向Asに移動させる。また、上述した通り、テーブル14は、移動用ガイド40sを介して、第一移動機構16fの可動ユニット30fに連結されているため、テーブル14および可動ユニット30sは、ともに、第一軸方向Afに移動する。
【0023】
制振ユニット20sは、制振ユニット20fと同様に、フレーム23sと、固定子22sと、を有する。フレーム23fは、吸収用ガイド42(図1では見えず)を介して、ベース12に取り付けられている。また、固定子22sは、コイル34sとの間で電磁気的作用を生じさせる永久磁石24sを有している。コイル34sに電圧が供給されると、その電圧による電流の方向に応じて、可動ユニット30sが、第二軸方向Asに移動する。ここで、第二移動機構16sにおいても、制振ユニット20sの重量は、可動ユニット30sの重量より十分に大きい。また、可動子32sおよび固定子22sの構成も適宜変更されてもよい。
【0024】
ここで、制振ユニット20f,20sの重量を、可動ユニット30f,30sの重量よりも大きくする理由について説明する。なお、基本的な原理は、第一移動機構16fおよび第二移動機構16sで同様であるため、以下では、添え字f,sを省略し、「移動機構16」として説明する。他部材についても同様である。
【0025】
図2は、移動機構16の模式的な側面図であり、図3は、図2のA-A断面図である。上述した通り、制振ユニット20のフレーム23は、吸収用ガイド42を介して、ベース12に取り付けられている。吸収用ガイド42は、例えば、スライドレールであり、制振ユニット20を、所定のガイド方向にスライド可能に保持している。このガイド方向(ひいては制振ユニット20のスライド方向)は、可動ユニット30の移動方向と平行である。
【0026】
このように、本例では、制振ユニット20を、可動ユニット30の移動方向と平行な方向に移動可能としている。かかる構成とするのは、可動ユニット30の移動時に生じる反力を、制振ユニット20のスライド移動により吸収するためである。すなわち、可動ユニット30が、テーブル14を移動させるべく、所定のスライド方向に移動すると、制振ユニット20は、その運動の反作用として、大きさの等しい逆向きの力を受ける。このとき、制振ユニット20がベース12に固定されていると、当該逆向きの力がベース12に伝達される。そして、この力を受けてベース12が振動すると、当該ベース12に間接的に接続されたテーブル14にも振動が伝達し、半導体装置の品質の低下などを招く。
【0027】
本例では、こうしたベース12、ひいてはテーブル14の振動を抑制するために、制振ユニット20をベース12に対してスライド可能としている。かかる構成とすることで、可動ユニット30がスライド移動すると、制振ユニット20が、可動ユニット30と逆方向にスライド移動する。例えば、図2において、可動ユニット30が紙面右側に移動するとき、制振ユニット20は、紙面左側に移動する。そして、これにより、ベース12への力の伝達が抑制され、テーブル14の振動が抑制される。
【0028】
ここで、制振ユニット20がスライド移動するときの加速度は、可動ユニット30の重量と、制振ユニット20の重量との逆比になる。そのため、制振ユニット20の重量が、可動ユニット30の重量に比べて大きいほど、制振ユニット20の加速度、ひいては、移動距離が小さくなる。本例では、反動を抑制するために必要な制振ユニット20の移動距離を小さく抑えるために、制振ユニット20の重量を、可動ユニット30の重量よりも十分に大きくしている。
【0029】
ただし、制振ユニット20の大重量化には限界がある。そのため、反動を抑制するために必要な制振ユニット20移動距離を十分に小さくできない場合が多い。一方で、制振ユニット20のストロークを過度に大きくすると、装置全体の大型化という別の問題を招く。そのため、多くの場合、制振ユニット20のストロークを一定の範囲で制限している。しかしながら、この場合、制振ユニット20が、ストロークの端部、すなわちストロークエンドに衝突し、余計な衝撃が発生するおそれがある。
【0030】
そこで、一部では、ストロークエンドにメカニカルダンパを配置し、制振ユニット20の衝突の衝撃を緩和することが提案されている。しかし、メカニカルダンパのみで衝撃を吸収することは難しい。また、多くの場合、大型のメカニカルダンパが必要となるため、装置の大型化、高額化といった問題を招く。また、吸収用ガイド42に摺動抵抗を付与し、これにより、制振ユニット20の運動を減衰させることも提案されている。しかし、この場合、一度設置した摺動抵抗の特性を変更することは難しいため、制振ユニット20の位置や速度、吸収用ガイド42の経年劣化等に応じて減衰力を調整することが難しい。
【0031】
本例では、制振ユニット20のストロークエンドへの衝突を効果的に防止し、テーブル14の意図しない振動を効果的に抑制するために、制振ユニット20に磁気ダンパ50を設けている。磁気ダンパ50は、ローレンツ力を減衰力として利用するダンパである。この磁気ダンパ50は、図3に示すように、制振ユニット20を挟んで両側に一つずつ設けられている。また、磁気ダンパ50は、制振ユニット20の重心とほぼ同じ高さに位置している。換言すれば、磁気ダンパ50は、制振ユニット20の重心を挟んで対称に一つずつ設けられている。
【0032】
磁気ダンパ50は、導体プレート52と、磁束形成機構70と、を有している。導体プレート52は、非磁性体であるとともに導電性を有する金属、例えば、銅やアルミニウム等からなる平板である。この導体プレート52は、その長手方向がスライド方向と平行になる姿勢で、ベース12に対して固定される。本例では、ベース12上面から複数の取付支柱44が立脚している。導体プレート52の長尺方向両端が、この取付支柱44に固着されている。
【0033】
本例の導体プレート52は、ストロークエンドに近づくにつれて、スライド方向単位距離辺りの面積が増加する形状となっている。具体的には、導体プレート52は、その中央に位置する中央部56と、中央部56から端部に近づくにつれて徐々に幅広になる遷移部58と、遷移部58から端部に向かって延びるエンド部54と、を有する。したがって、エンド部54の幅は、中央部56の幅に比べて十分に大きい。かかる形状とする理由については後述する。なお、導体プレート52の幅とは、一対のダンパ用磁石74が形成する磁束の方向、および、制振ユニット20の移動方向の双方に直交する方向の寸法を意味する。
【0034】
磁束形成機構70は、導体プレート52を貫通する磁束を形成する。かかる磁束形成機構70は、図2図3に示すとおり、制振ユニット20のフレーム23に固着されている。ここで、制振ユニット20は、ベース12に対してスライド可能であるため、制振ユニット20に固定された磁束形成機構70は、ベース12に固定された導体プレート52に対して相対移動可能である。
【0035】
磁束形成機構70は、ブラケット72と、一対のダンパ用磁石74と、を有する。ブラケット72は、樹脂等の非磁性かつ絶縁性の材料からなり、フレーム23に固着されている。ブラケット72は、略U字状であり、上向きに開口した溝部分を有する。この溝部分に、導体プレート52の一部が挿し込まれている。また、ブラケット72は、一対のダンパ用磁石74を保持している。ダンパ用磁石74は、溝部分、ひいては、導体プレート52を挟んで両側に配置されている。二つのダンパ用磁石74は、導体プレート52を挟んで正対している。また、二つのダンパ用磁石74は、互いに同じ方向に磁化されている。また、ダンパ用磁石74の上下方向範囲は、導体プレート52の上下方向範囲を完全に含んでいる。そのため、二つのダンパ用磁石74の間には、導体プレート52を貫通する磁束が発生する。なお、本例において、ダンパ用磁石74は、永久磁石であるが、ダンパ用磁石74は、コイルに電流を流すことで磁束を発生させる電磁石でもよい。
【0036】
次に、こうした磁気ダンパ50の作用について図4を参照して説明する。図4は、磁気ダンパ50の作用を説明する模式図である。繰り返し述べる通り、また、図4に示すとおり、二つのダンパ用磁石74の間には、導体プレート52を貫通する磁束Fmが発生する。図4では、磁石の磁束Fmを破線の矢印で示している。
【0037】
制振ユニット20のスライド移動に伴い、導体プレート52が、図4の矢印Bの方向に移動する場合を考える。この場合、導体プレート52は、磁石磁束Fmの中を移動することになる。その結果、導体プレート52には、制振ユニット20の移動速度、および、導体プレート52を貫通する磁石磁束Fmの量に応じた大きさの渦電流が発生する。そして、この渦電流に起因して、導体プレート52のうちダンパ用磁石74に近づく部分には、磁石磁束Fmと反対方向の磁束Fp1が発生し、ダンパ用磁石74から離れる部分には、磁石磁束Fmと同じ方向の磁束Fp2が発生する。こうした磁束Fp1,Fp2により、導体プレート52のうちダンパ用磁石74に近づく部分とダンパ用磁石74との間に斥力が発生し、導体プレート52のうちダンパ用磁石74から離れる部分とダンパ用磁石74との間に吸引力が発生する。そして、この斥力および吸引力が、磁束形成機構70、ひいては、制振ユニット20のスライド移動を減衰させる減衰力となる。
【0038】
ここで、磁気ダンパ50で発生する減衰力は、磁束形成機構70に対する導体プレート52の相対速度が大きいほど大きく、また、導体プレート52を貫通する磁束量が大きいほど大きくなる。本例では、導体プレート52のエンド部54を、中央部56よりも、幅広としている。そのため、制振ユニット20が、ストローク中央に位置する時よりも、ストロークエンドに近づいたときのほうが、導体プレート52を貫通する磁石磁束Fmの量が増加する。結果として、本例によれば、制振ユニット20が、ストローク中央に位置する場合には、減衰力を小さくでき、ストロークエンドに近づいた場合にのみ減衰力を大きくできる。また、本例によれば、制振ユニット20の移動速度が大きいときほど、大きな減衰力を発生させることができる。その結果、本例によれば、可動ユニット30の移動に伴う反動がベース12に伝達することを効果的に抑制しつつ、制振ユニット20がストロークエンドに衝突することを効果的に防止できる。結果として、本例によれば、テーブル14に意図しない振動が発生することを効果的に防止でき、半導体装置の製造品質を向上できる。
【0039】
また、この磁気ダンパ50は、導体プレート52と、当該導体プレート52を挟む一対のダンパ用磁石74と、を主要部品としている。この場合、磁気ダンパ50は、メカニカルダンパに比べて大幅に小型化できる。結果として装置全体の小型化が可能となる。また、磁気ダンパ50の主要部品である導体プレート52およびダンパ用磁石74は互いに非接触である。そのため、メカニカルダンパや、摺動抵抗を有する吸収用ガイド42と比べて、摩耗等に起因する劣化が生じにくい。結果として本例の構成によれば、テーブル14の制振性能を長期的に安定して維持できる。
【0040】
また、本例では、磁気ダンパ50を、制振ユニット20の重心を挟んで両側に配置している。かかる構成とすることで、減衰力に起因する制振ユニット20の旋回を効果的に防止できる。すなわち、磁気ダンパ50を片側にのみ配置した場合、換言すれば、制動力を一点にのみ採用させた場合、制振ユニット20が、当該一点を支点として旋回し、傾くおそれがある。一方、本例のように、制振ユニット20の両側に磁気ダンパ50を配置することで、制振ユニット20の旋回を効果的に防止できる。
【0041】
なお、導体プレート52やダンパ用磁石74が劣化した場合に備えて、導体プレート52およびダンパ用磁石74の少なくとも一方を交換可能としてもよい。例えば、導体プレート52は、ネジやクリップ等の脱着可能な締結部材を用いてベース12に固定されてもよい。また、ダンパ用磁石74をブラケット72から着脱可能としてもよいし、磁束形成機構70そのものを制振ユニット20から着脱可能としてもよい。
【0042】
また、二つのダンパ用磁石74の対向面積を変更するべく、二つのダンパ用磁石74の少なくとも一方の位置を変更する調整機構を設けてもよい。すなわち、ダンパ用磁石74は、永久磁石であるが、こうした永久磁石は、経年劣化等により、磁力が低下することがある。この場合、所望の減衰力が得られないおそれがある。また、必要な減衰力は、状況に応じて変化することがある。そのため、二つのダンパ用磁石74の間の磁束量を、適宜、変更したい場合がある。かかる場合において、ダンパ用磁石74そのものを交換することも考えられるが、その場合、ランニングコストが増加するだけでなく、そもそも、所望の減衰力が得られる適度な磁力の磁石を用意することが難しいという問題もある。
【0043】
そこで、二つのダンパ用磁石74の対向面積を変更するように、ダンパ用磁石74の位置を変更する調整機構を設けてもよい。調整機構は、二つのダンパ用磁石74の相対位置関係を変更できるのであれば特に限定されない。図5は、調整機構の一例を示す図である。図5に示すように、二つのダンパ用磁石74のうち一方は、ガイド孔78に収容されている。ガイド孔78は、ブラケット72に形成された孔であり、ダンパ用磁石74を所定の調整方向(図示例では紙面左右方向)に移動可能に保持する。調整機構は、このダンパ用磁石74を、調整方向片側に付勢する位置決めバネ82と、調整方向反対側に押圧する位置決めネジ80とを有している。そして、この位置決めネジ80の締め付け量を調整することで、ダンパ用磁石74の調整方向位置を変更できる。
【0044】
ここで、図4の上段に示すように、二つのダンパ用磁石74の中心位置がズレている場合、その分、両者の間に発生する磁石磁束Fmの量が少なくなり、制振ユニット20の減衰力も小さくなる。一方、図4の下段に示すように、調整機構により、二つのダンパ用磁石74の相対位置を変更し、対向面積を増やした場合を考える。この場合、対向面積が増えた分だけ、両者の間に発生する磁石磁束Fmの量が多くなり、制振ユニット20の減衰力も大きくなる。つまり、二つのダンパ用磁石74の相対位置を変更する調整機構を設けることで、減衰力の微調整が可能となる。結果として、テーブル14の意図しない振動を、より効果的に防止できる。なお、当然ながら、調整機構の構成は、上記に限らず、他の構成でもよい。
【0045】
また、これまで説明した構成は、いずれも、一例であり、請求項1に記載の構成を具備するのであれば、その他の構成は、適宜、変更されてもよい。例えば、導体プレート52は、発生する磁束密度が一様である場合、導体プレート52の材料を貫通する磁束が、その中央部よりもその端部のほうが多くなる、ような形状であれば、他の形状でもよい。したがって、図6に示すように、導体プレート52に複数の調整孔60を形成するとともに、当該調整孔60の密度が、ストロークの端部に近づくにつれて、小さくなるようにしてもよい。また、導体プレート52の中央部56に、磁石磁束Fmの貫通を妨げるバリア部材(例えば非磁性体からなる板材等)を取り付けてもよい。
【0046】
また、磁気ダンパ50の配置や個数も、適宜、変更されてもよい。例えば、磁気ダンパ50は、一つだけでもよいし、三つ以上設けられてもよい。また、磁気ダンパ50は、フレーム23の側面に限らず、上面や底面に取り付けられてもよい。また、上述の説明では、導体プレート52をベース12に固定しているが、導体プレート52を制振ユニット20に固定し、磁束形成機構70をベース12に固定してもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 製造装置、12 ベース、14 テーブル、16 移動機構、16f 第一移動機構、16s 第二移動機構、20 制振ユニット、23 フレーム、30 可動ユニット、31f サブテーブル、32 可動子、34 コイル、40 移動用ガイド、42 吸収用ガイド、44 取付支柱、50 磁気ダンパ、52 導体プレート、54 エンド部、56 中央部、58 遷移部、60 調整孔、70 磁束形成機構、72 ブラケット、74 ダンパ用磁石、78 ガイド孔、80 位置決めネジ、82 位置決めバネ、Fm 磁石磁束。
図1
図2
図3
図4
図5
図6