(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177932
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】荷役車両
(51)【国際特許分類】
B66F 9/075 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
B66F9/075 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096348
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 慈郎
(72)【発明者】
【氏名】三宅 敬仁
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AE02
3F333DA04
3F333FA10
3F333FD03
3F333FD06
(57)【要約】
【課題】走行時において車体を拡大することなく、荷役作業時における車体の姿勢安定化を図ることができる荷役車両の提供にある。
【解決手段】左右一対の前輪12を備える車体11と、車体11に収容可能であって、車体11の姿勢を安定させる車体安定化装置40と、を備える荷役車両10において、車体安定化装置40は、車体11と接続され、車体11の姿勢を安定化させる安定化姿勢および車体11に収容される収容姿勢に変形可能な左右一対のアーム機構41と、アーム機構41の先端部に備えられ、安定化姿勢のときに路面と接地可能な接地部と、を有し、アーム機構41が安定化姿勢のとき、接地部が左右一対の前輪12の側方および前方の少なくとも一方へ接地し、アーム機構41が収容姿勢のとき、車体安定化装置40が車体11から側方へはみ出ないように車体11に収容される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の前輪を備える車体と、
前記車体に収容可能であって、前記車体の姿勢を安定させる車体安定化装置と、を備える荷役車両において、
前記車体安定化装置は、
前記車体と接続され、前記車体の姿勢を安定化させる安定化姿勢および前記車体に収容される収容姿勢に変形可能な左右一対のアーム機構と、
前記アーム機構の先端部に備えられ、前記安定化姿勢のときに路面と接地可能な接地部と、を有し、
前記アーム機構が前記安定化姿勢のとき、前記接地部が前記左右一対の前輪の側方および前方の少なくとも一方へ接地し、
前記アーム機構が前記収容姿勢のとき、前記車体の正面視および平面視の少なくとも一方において前記車体からはみ出ることなく収容されていることを特徴とする荷役車両。
【請求項2】
前記車体は、前記左右一対の前輪を覆う前部フェンダーを有し、
前記前部フェンダーの上部に前記車体安定化装置の収容を可能とする収容部が備えられていることを特徴とする請求項1記載の荷役車両。
【請求項3】
前記アーム機構は、
前記車体と接続される第1アームと、
前記第1アームと連結され、前記第1アームに対して伸縮可能又は回動可能であって、かつ、前記接地部を備える第2アームと、を有することを特徴とする請求項1又は2記載の荷役車両。
【請求項4】
左右一対の前記接地部の離間距離は、荷の高さに応じて変更可能とすることを特徴とする請求項1又は2記載の荷役車両。
【請求項5】
左右一対の前記接地部の離間距離は、荷の重量に応じて変更可能とすることを特徴とする請求項1又は2記載の荷役車両。
【請求項6】
荷の高さを検知する揚高センサと、
前記アーム機構を前記安定化姿勢および前記収容姿勢に変形するアクチュエータと、
前記アクチュエータを制御するコントローラと、を有し、
前記揚高センサが閾値以上の揚高を検知したとき、前記コントローラは、前記接地部が接地されるとともに前記アーム機構を前記安定化姿勢とするように前記アクチュエータを制御することを特徴とする請求項1又は2記載の荷役車両。
【請求項7】
前記コントローラは、荷の重さに応じて前記閾値を変動させることを特徴とする請求項6記載の荷役車両。
【請求項8】
前記車体は、前記車体の側部を覆う左右一対のサイドカバーを有し、
前記サイドカバーに前記車体安定化装置の収容部が備えられていることを特徴とする請求項1記載の荷役車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、荷役車両に関する。
【背景技術】
【0002】
荷役車両の従来の技術として、例えば、特許文献1に開示された産業車両が知られている。特許文献1に開示された産業車両は、カウンターバランス式のフォークリフトである。この種のフォークリフトは、車体の前部に荷役装置を備えている。また、車体の前部には前輪としての駆動輪がフロントアクスル(図示せず)を介して設けられている。フロントアクスルは車体に固定されている。車体には、走行駆動力を生じる走行モータが設けられている。走行モータは電動モータであり、バッテリの電力により駆動される。一方、車体の後部には後輪としての操舵輪がリヤアクスルを介して設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたフォークリフトでは、フォークで荷を高く持ち上げると、荷を含めた重心の位置が高くなり、車体の姿勢が不安定になるおそれがある。そこで、車体の姿勢の安定化のためには、ホイールベースの拡大およびトレッド幅を可及的に拡大すればよいが、ホイールベースの拡大は車体の前後長を増大させ、トレッド幅の拡大は、車体の幅を増大させることになる。このため、前後左右に拡大された車体によって作業可能な場所が制約を受けることになる。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、走行時において車体を拡大することなく、荷役作業時における車体の姿勢安定化を図ることができる荷役車両の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、左右一対の前輪を備える車体と、前記車体に収容可能であって、前記車体の姿勢を安定させる車体安定化装置と、を備える荷役車両において、前記車体安定化装置は、前記車体と接続され、前記車体の姿勢を安定化させる安定化姿勢および前記車体に収容される収容姿勢に変形可能な左右一対のアーム機構と、前記アーム機構の先端部に備えられ、前記安定化姿勢のときに路面と接地可能な接地部と、を有し、前記アーム機構が前記安定化姿勢のとき、前記接地部が前記左右一対の前輪の側方および前方の少なくとも一方へ接地し、前記アーム機構が前記収容姿勢のとき、前記車体の正面視および平面視の少なくとも一方において前記車体からはみ出ることなく収容されていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、アーム機構の安定化姿勢により、接地部が左右一対の前輪の側方および前方の少なくとも一方へ接地すれば、トレッド幅およびホイールベースの少なくとも一方が疑似的に拡大されたことになるので、左右方向および前後方向の少なくとも一方における車体の姿勢の安定化が向上する。また、アーム機構が収容姿勢のとき、車体の正面視および平面視の少なくとも一方において車体からはみ出ることなく収容されているので、車体安定化装置が車幅を拡大することはなく、荷役車両の走行を妨げることはない。したがって、走行時において車体を拡大することなく荷役作業時における車体の姿勢安定化を図ることができる。なお、「はみ出ない」とは、アーム機構の全てが完全に車体の正面視および上面視の少なくとも一方において車体からはみ出ていないことのみを意味せず、走行や荷役作業に支障が無い程度にその一部が車体からはみ出ている場合を含んでいる。
【0008】
また、上記の荷役車両において、前記車体は、前記左右一対の前輪を覆う前部フェンダーを有し、前記前部フェンダーの上部に前記車体安定化装置の収容を可能とする収容部が備えられている構成としてもよい。
この場合、車体安定化装置の収容部が前輪の近傍である前部フェンダーの上部に備えられているので、アーム機構の小型化および軽量化が期待できるほか、収容姿勢のアーム機構がオペレータの視界を妨げることはない。
【0009】
また、上記の荷役車両において、前記アーム機構は、前記車体と接続される第1アームと、前記第1アームと連結され、前記第1アームに対して伸縮可能又は回動可能であって、かつ、前記接地部を備える第2アームと、を有する構成としてもよい。
この場合、接地部を備える第2アームが第1アームに対して伸縮可能又は回動可能であるので、アーム機構の進出又は回動による安定化姿勢により、車体の安定化のために適切な位置に接地部を接地させることができる。また、アーム機構の後退又は回動により収容姿勢により、アーム機構を車体から確実に側方へはみ出ないように車体に収容することができる。
【0010】
また、上記の荷役車両において、左右一対の前記接地部の離間距離は、荷の高さに応じて変更可能とする構成としてもよい。
この場合、左右一対の接地部の離間距離が荷の高さに応じて変更可能であるので、荷の高さが変わっても、荷役作業時における車体の姿勢安定化を確実に図ることができる。
【0011】
また、上記の荷役車両において、左右一対の前記接地部の離間距離は、荷の重量に応じて変更可能とする構成としてもよい。
この場合、左右一対の接地部の離間距離が荷の重量に応じて変更可能であるので、荷の高さが変わっても、荷役作業時における車体の姿勢安定化を確実に図ることができる。
【0012】
また、上記の荷役車両において、荷の高さを検知する揚高センサと、前記アーム機構を前記安定化姿勢および前記収容姿勢に変形するアクチュエータと、前記アクチュエータを制御するコントローラと、を有し、前記揚高センサが閾値以上の揚高を検知したとき、前記コントローラは、前記接地部が接地されるとともに前記アーム機構を前記安定化姿勢とするように前記アクチュエータを制御する構成としてもよい。
この場合、揚高センサが閾値以上の揚高を検知したとき、コントローラは、接地部を接地させるとともにアーム機構を安定化姿勢とするようにアクチュエータを制御するので、自動的にアーム機構を安定化姿勢にすることができる。
【0013】
また、上記の荷役車両において、前記コントローラは、荷の重さに応じて前記閾値を変動させる構成としてもよい。
この場合、コントローラは、荷の重さに応じて閾値を変動させるので、荷の重さに応じた適切な揚高でアーム機構を安定化姿勢にすることができる。
【0014】
また、上記の荷役車両において、前記車体は、前記車体の側部を覆う左右一対のサイドカバーを有し、前記サイドカバーに前記車体安定化装置の収容部が備えられている構成としてもよい。
この場合、サイドカバーに収容部が備えられるので、車体の空間の有効活用が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、走行時において車体を拡大することなく、荷役作業時における車体の姿勢安定化を図ることができる荷役車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1の実施形態に係るフォークリフトの側面図である。
【
図2】第1の実施形態に係るフォークリフトの平面図である。
【
図3】第1の実施形態に係るフォークリフトの斜視図である。
【
図4】第1の実施形態に係るフォークリフトの概略構成図である。
【
図5】(a)は収容ケースにアーム機構が収容された状態を示す要部平面図であり、(b)は収容ケースからアーム機構が突出された状態を示す要部平面図であり、(c)はアーム機構が安定化姿勢に変形された状態を示す要部平面図である。
【
図6】(a)は収容ケースにアーム機構が収容された状態を示す要部側面図であり、(b)は収容ケースから突出されたアーム機構が回動中の状態を示す要部側面図であり、(c)はアーム機構が安定化姿勢に変形された状態を示す要部側面図である。
【
図7】フォークリフトにおけるトレッド幅とホイールベースを示す説明図である。
【
図8】第2の実施形態に係るフォークリフトの平面図である。
【
図9】第2の実施形態に係るフォークリフトの側面図である。
【
図10】別例に係るフォークリフトにおけるトレッド幅を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る荷役車両としてのフォークリフトについて図面を参照して説明する。本実施形態のフォークリフトは、バッテリを搭載するバッテリ式フォークリフトである。なお、方向を特定する「前後」、「左右」および「上下」については、フォークリフトのオペレータが運転席の運転シートに着座して、フォークリフトの前進側を向いた状態を基準として示す。
【0018】
図1に示すように、フォークリフト10の車体11の前部には前輪12が設けられ、車体11の後部には後輪13が設けられている。前輪12は駆動輪であり、後輪13は操舵輪である。車体11には、前輪12を駆動する走行用モータ14およびバッテリ15が搭載されている。車体11の後部にはカウンタウエイト16が備えられている。カウンタウエイト16は車両重量の調整と車体11における重量バランスを図るためのものである。車体11の前部には、荷役装置17が備えられている。
【0019】
荷役装置17は、アウタマスト19およびインナマスト20を有するマスト18を備えている。
図2に示すように、左右一対のアウタマスト19には、アウタマスト19の内側にて昇降可能な左右一対のインナマスト20が備えられている。荷役装置17は、インナマスト20に沿って昇降可能なリフトブラケット21を備えている。リフトブラケット21には、左右一対のフォーク22が係止されている。
図1に示すように、荷役装置17には、フォーク22の揚高を検出する揚高センサ23が備えられている。揚高センサ23は、フォーク22の揚高位置(高さ位置)を検出し、検出したフォーク22の揚高位置に応じた電圧を揚高検出信号として連続的に出力可能に構成されている。揚高センサ23は、例えば、リール式の揚高センサである。
【0020】
車体11と荷役装置17との間には、作動油により作動するティルトシリンダ24が設置されている。荷役装置17はティルトシリンダ24の作動により荷役装置17の下端部を支点(前輪12の車軸の中心)として前後方向に傾動する。アウタマスト19には作動油の給排により作動するリフトシリンダ25が設けられている(
図1を参照)。リフトシリンダ25の作動により、インナマスト20がアウタマスト19の内側にて昇降するほか、リフトブラケット21が昇降する。荷役装置17には、荷の荷重を検出する荷重検出センサ26が備えられている(
図4を参照)。荷重検出センサ26は、リフトシリンダ25の内部の油圧を検出し、荷の重量に応じた電気信号を出力する。荷重検出センサ26は、例えば、圧力センサである。
【0021】
車体11の中央付近には運転席27が設けられている。車体11には、運転席27の上部を覆うヘッドガード28が設けられている。運転席27には運転シート29が備えられている。
図3に示すように、運転席27の前方には、インストルメントパネル30が備えられている。インストルメントパネル30には、ステアリングホイール32を支持するステリングコラム31が設けられている。インストルメントパネル30には、キーが挿入されるキーシリンダ(図示せず)のほか、荷役レバーとしてのリフトレバー(図示せず)およびティルトレバー(図示せず)が備えられている。リフトレバーは、リフトブラケット21およびフォーク22を昇降させるための操作レバーである。ティルトレバーは、マスト18を前後に傾動させるための操作レバーである。
【0022】
図1に示すように、車体11にはフォークリフト10の各部を制御するコントローラ33が備えられている。
図4に示すように、コントローラ33は、CPU34、RAMおよびROM等からなる記憶部35と、を備えている。コントローラ33は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)を備えていてもよい。コントローラ33は、コンピュータプログラムにしたがって動作する1つ以上のプロセッサ、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、あるいは、それらの組み合わせを含む回路として構成し得る。記憶部35は、処理をCPU34に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部35には、フォークリフト10の各部を制御するための種々のプログラムが記憶されている。コントローラ33は、揚高センサ23および荷重検出センサ26と接続されており、揚高センサ23および荷重検出センサ26の信号を受信する。
【0023】
ところで、本実施形態のフォークリフト10は、荷役作業時に車体11の姿勢の安定性を向上させる車体安定化装置40を有している。車体11は、左右一対の前輪12をカバーする前部フェンダー36をそれぞれ備えており、車体安定化装置40は、前部フェンダー36上に備えられている。車体安定化装置40は、アーム機構41と、アーム機構41を収容する収容ケース42と、第1駆動モータ43と、第2駆動モータ44と、アーム機構41に先端部に備えられる先端部としての転動ローラ45と、を有している。アーム機構41、収容ケース42、第1駆動モータ43、第2駆動モータ44および転動ローラ45は、左右に一対それぞれ備えられている。第1駆動モータ43および第2駆動モータ44はアクチュエータに相当する。
【0024】
アーム機構41は、車体11の姿勢を安定化させる安定化姿勢および車体11に収容される収容姿勢に変形可能である。アーム機構41は、収容ケース42に対してスライド可能なスライド部材46と、スライド部材46に対して回動可能な第1アーム47と、第1アーム47に対して第2アーム48と、を有している。スライド部材46は、アーム機構41が収容姿勢であるとき、収容ケース42の内部に収容され、アーム機構41が安定化姿勢であるとき、収容ケース42から側方へ向けて突出する。スライド部材46は、第1駆動モータ43の駆動により移動される。第1駆動モータ43は、電動モータであり、収容ケース42内に収容されている。第1駆動モータ43の回転力をスライド部材46の直線運動に変換する変換部(図示せず)が収容ケース42内に備えられている。変換部は、例えば、ウォームおよびギヤを備える。
【0025】
スライド部材46には、第2駆動モータ44が備えられている。第2駆動モータ44は、第1アーム47および第2アーム48を作動する電動モータである。スライド部材46には、軸体49が回転可能に支持されており、第1アーム47の一端は軸体49と連結されている。軸体49の軸心は、左右方向に延在する。軸体49の軸心の位置は、前後方向において前部フェンダー36の前部付近であって、前輪12の回転中心よりも前方に位置する。軸体49は第2駆動モータ44の回転力の伝達を受ける。第2駆動モータ44の回転軸にはベベルギヤ51が備えられ、軸体49にはベベルギヤ51と噛合するベベルギヤ52が備えられている。第2駆動モータ44の回転はベベルギヤ51、52を介して軸体49を回転させる。
【0026】
図5(a)、
図6(a)に示すように、第1アーム47は、アーム機構41が収容姿勢であるとき、収容ケース42に収容されるように第1アーム47の長手方向が前後方向となるように位置する。
図6(c)に示すように、第1アーム47は、アーム機構41が安定化姿勢であるとき、第1アーム47の先端が下方を向くように、軸体49を中心に回動される。第1アーム47は、断面略U字状の部材であり、第1アーム47の他端付近には、軸体53が回転可能に支持されている。軸体53の軸心は軸体49の軸心と平行である。軸体53には第2アーム48の端部が連結されている。軸体53は、回転力伝達機構(図示せず)を介して第2駆動モータ44の回転力の伝達を受ける。
【0027】
図5(a)、
図6(a)に示すように、第2アーム48は、アーム機構41が収容姿勢であるとき、第2アーム48の長手方向が第1アーム47の長手方向と略平行となるように、第1アーム47内に収容される。第2アーム48が第1アーム47に収容される状態では、第2アーム48の先端は、軸体49と対向する。
図6(c)に示すように、第2アーム48は、アーム機構41が安定化姿勢であるとき、第2アーム48の先端が下方を向くように、軸体49を中心に回動される。第2アーム48が安定化姿勢の状態で最大に回動されると、第2アーム48は第1アーム47と直線状になる。
【0028】
第2アーム48の先端には、路面と接地可能な接地部としての転動ローラ45が備えられている。転動ローラ45の軸心は、軸体49、53の軸心と平行である。転動ローラ45は前後に転動可能なローラ部材である。転動ローラ45は、アーム機構41が収容姿勢であるとき、第2アーム48とともに第1アーム47内に収容される。アーム機構41が安定化姿勢であるとき、転動ローラ45は、安定化姿勢のときに路面と接地する。
【0029】
アーム機構41は、第1駆動モータ43および第2駆動モータ44の正回転により安定化姿勢となる。安定化姿勢では、アーム機構41は、収容ケース42から側方へ突出しており、第1アーム47および第2アーム48が一直線状になるように伸長し、転動ローラ45が路面に接地する。安定化姿勢では、アーム機構41の安定化姿勢により、転動ローラ45が左右一対の前輪12の側方であって前方へ接地する。したがって、例えば、
図7に示すように、トレッド幅およびホイールベースが疑似的に拡大されたことになる。このため、左右方向および前後方向における車体11の姿勢の安定化が向上する。
【0030】
アーム機構41は、第1駆動モータ43および第2駆動モータ44の逆回転により収容姿勢となる。収容姿勢では、アーム機構41は第1アーム47および第2アーム48が折り畳まれて収縮した状態で、収容ケース42に収容される。アーム機構41が収容姿勢のとき、車体安定化装置40は車体11から側方へはみ出ないように車体11に収容されるので、車体安定化装置40が車幅を拡大することはない。
【0031】
車体安定化装置40の作動させるための操作スイッチ54が運転席27に設けられている。具体的には、操作スイッチ54は、インストルメントパネル30に備えられている。操作スイッチ54はコントローラ33と接続されている。アーム機構41が収容姿勢の状態で、操作スイッチ54をONにすると、第1駆動モータ43および第2駆動モータ44が正回転され、アーム機構41が収容姿勢から安定化姿勢に変形される。アーム機構41が安定化姿勢の状態で、操作スイッチ54をOFFにすると、第1駆動モータ43および第2駆動モータ44が逆回転され、アーム機構41が安定化姿勢から収容姿勢に変形され、収容する。
【0032】
次に、本実施形態のフォークリフト10の作用について説明する。オペレータはフォークリフト10を走行させるほか荷役作業を行う。フォーク22が荷を支持しない通常の走行時には、車体安定化装置40は、
図5(a)、
図6(a)に示すように、車体11の収容ケース42に収容された状態である。このため、車体安定化装置40は、車体11から側方へはみ出ることはなく走行を妨げない。つまり、アーム機構41を含む車体安定化装置40の全てが完全に車体11の正面視および上面視の少なくとも一方において車体11からはみ出ていない。したがって、フォークリフト10は、車体11の幅より広い通路を走行することが可能である。左右のアーム機構41は、車体11に収容される収容姿勢に変形されている。なお、
図5(a)~
図5(c)では、説明の便宜上、収容ケース42の上面板を省略して図示している。
【0033】
次に、フォークリフト10による荷役作業を行う場合、オペレータは操作スイッチ54をONの状態に操作する。操作スイッチ54がONの状態になると、コントローラ33は、第1駆動モータ43を正回転させ、
図5(b)に示すように、スライド部材46を収容ケース42から側方へ突出させる。スライド部材46の収容ケース42からの突出後に、コントローラ33は、第2駆動モータ44を正回転させる。第2駆動モータ44の正回転により、
図6(b)に示すように、第1アーム47が軸体49を回動中心として回動されるとともに、第2アーム48が軸体53を回動中心として回動される。
【0034】
第1アーム47の先端は、第1アーム47の回動により軸体49の後方から下方へ移動し、軸体49より前方に位置する。第2アーム48は、第1アーム47の長手方向と直線状になる位置まで第1アーム47に対して回動される。第1アーム47および第2アーム48が直線状になったとき、転動ローラ45は路面と接地する。
図5(c)、
図6(c)に示すように、右の転動ローラ45が接地する位置は、右の前輪12の側方であって前輪12の回転中心よりも前方である。同様に、左の転動ローラ45が接地する位置は、左の前輪12の側方であって前輪12の回転中心よりも前方である(
図2を参照)。左右の転動ローラ45が接地することで、左右のアーム機構41は、車体11の姿勢を安定化させる安定化姿勢に変形されている。
【0035】
転動ローラ45が接地することで、接地部が左右一対の前輪12の側方および前方へ接地すれば、トレッド幅およびホイールベースが疑似的に拡大されたことになる。
図6では、前輪12のトレッド幅T1とし、転動ローラ45の接地による疑似的なトレッド幅T2としている。また、前輪12と後輪13との間の距離であるホイールベースH1とし、転動ローラ45の接地による疑似的なホイールベースH2とする。
【0036】
車体安定化装置40が安定化姿勢に変形されている状態では、荷を支持するフォーク22が高揚高であっても、車体安定化装置40が車体11の前後および左右への揺動を抑制する。具体的には、直線状に伸長したアーム機構41と接地する転動ローラ45は、車体11が前後又は左右に傾いても車体11を支えることで車体11の姿勢を安定化させる。転動ローラ45が備えられていることで、車体安定化装置40がフォークリフト10は荷役作業中における移動を妨げることはない。オペレータは、荷役作業が終了すれば、操作スイッチ54をOFFの状態に操作する。
【0037】
操作スイッチ54がOFFの状態により、第2駆動モータ44が逆回転され、第2アーム48が、第1アーム47の長手方向と直線状になる状態から第1アーム47に重なるように第1アーム47に対して回動される。これにより、第2アーム48および転動ローラ45が第1アーム47内に収容される。また、第1アーム47の先端が、第1アーム47の回動により、軸体49より前方の位置から軸体49の下方から後方へ移動し、第1アーム47の長手方向が略水平となる。第1アーム47の長手方向が略水平になると、第1駆動モータ43が逆回転され、スライド部材46が収容ケース42へ引き込まれる。
【0038】
なお、オペレータは、車体安定化装置40を作動させることなく、フォークリフト10により荷役作業を行うことは可能である。この場合、荷役作業時において操作スイッチ54を操作せず、操作スイッチ54をOFFの状態にすればよい。
【0039】
本実施形態のフォークリフト10は以下の効果を奏する。
(1)アーム機構41の安定化姿勢により、接地部としての転動ローラ45が左右一対の前輪12の側方であって前方へ接地すれば、トレッド幅およびホイールベースの少なくとも一方が疑似的に拡大されたことになるので、左右方向および前後方向における車体11の姿勢の安定化が向上する。また、アーム機構41が収容姿勢のとき、車体安定化装置40は車体11から側方へはみ出ないように車体11に収容されるので、車体安定化装置40が車幅を拡大することはなく、フォークリフト10の走行を妨げることはない。したがって、走行時において車体11を拡大することなく荷役作業時における車体11の姿勢安定化を図ることができる。
【0040】
(2)車体11は、左右一対の前輪12を覆う前部フェンダー36を有し、前部フェンダー36の上部に車体安定化装置40の収容を可能とする収容部としての収容ケース42が備えられている。このため、アーム機構41の小型化および軽量化が期待できるほか、収容姿勢のアーム機構41が荷役作業時にオペレータの視界を妨げることはない。
【0041】
(3)アーム機構41は、車体11を接続される第1アーム47と、第1アーム47と連結され、第1アーム47に対して回動可能であって、かつ、接地部を備える第2アーム48と、を有する。このため、アーム機構41の回動による安定化姿勢により、車体11の安定化のために適切な位置に接地部を接地させることができる。また、アーム機構41の回動による収容姿勢により、アーム機構41を車体11から確実に側方へはみ出ないように車体11に収容することができる。
【0042】
(変形例)
本実施形態では、運転席27に操作スイッチ54が設けられ、オペレータが操作スイッチ54を操作することで、車体安定化装置40を作動させたが、次のように変更してもよい。コントローラ33に予め揚高の閾値を設定しておき、揚高センサ23が閾値以上の揚高を検知したとき、コントローラ33は、転動ローラ45を接地させるとともにアーム機構41を安定化姿勢とするように第1駆動モータ43および第2駆動モータ44を制御する。その後、揚高センサ23が閾値未満になれば、車体安定化装置40を車体11に収容できるように、アーム機構41を収容姿勢に変形させる。
【0043】
本変形例によれば、揚高センサ23が閾値以上の揚高を検知したとき、コントローラ33は、転動ローラ45が接地されるとともにアーム機構41を安定化姿勢とするように第1駆動モータ43および第2駆動モータ44を制御する。したがって、自動的にアーム機構41を収容姿勢から安定化姿勢に変形するほか、安定化姿勢から収容姿勢に変形することができる。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る荷役車両としてのフォークリフトについて説明する。本実施形態では、車体安定化装置の構成が第1の実施形態と相違する。本実施形態では、第1の実施形態と同じ構成については第1の実施形態の説明を援用し、共通の符号を用いる。
【0045】
図8、
図9に示すように、フォークリフト60は、荷役作業時に車体11の安定性を向上させる車体安定化装置61を有している。車体安定化装置61は、車体11における前輪12と後輪13との間に備えられている。車体安定化装置61は、アーム機構62と、アーム機構62を収容する収容ケース63と、第1駆動モータ64と、第2駆動モータ65と、アーム機構62に先端部に備えられる先端部としての転動ローラ66と、を有している。アーム機構62、収容ケース63、第1駆動モータ64、第2駆動モータ65および転動ローラ66は、左右に一対それぞれ備えられている。
【0046】
アーム機構62は、車体11の姿勢を安定化させる安定化姿勢および車体11に収容される収容姿勢に変形可能である。アーム機構62は、収容ケース63に対して回動可能な第1アーム67と、第1アーム67に対して伸縮可能な第2アーム68と、を有している。収容ケース63は、車体11が有するサイドカバー69に備えられている。具体的には、収容ケース63は、車体11の側部における前輪12と後輪13との間に設けられている。収容ケース63は、収容姿勢のアーム機構62、第1駆動モータ64、第2駆動モータ65および転動ローラ66の収容を可能とする空間を有する。
【0047】
第1駆動モータ64は、アーム機構62を回動させるための電動モータである。第1駆動モータ64が正回転することでアーム機構62が収容ケース63から側方へ突出するように車体11に対して回動される。第1駆動モータ64が逆回転することで側方へ突出するアーム機構62が収容ケース63へ収容されるように車体11に対して回動される。第1アーム67の先端部には、第2駆動モータ65が備えられている。第2駆動モータ65は、第1アーム67に対して第2アーム68を伸縮させる電動モータである。第2駆動モータ65が正回転することで、第2アーム68が第1アーム67に対して伸長する。第2駆動モータ65が逆回転することで第2アーム68が第1アーム67に対して収縮する。第2アーム68の先端には、路面と接地可能な接地部としての転動ローラ66が備えられている。
【0048】
第1アーム67が車体11から側方へ突出され、第2アーム68が第1アーム67に対して伸長したとき、アーム機構62は安定化姿勢に変形されている。アーム機構62が安定化姿勢のとき、第1アーム67と第2アーム68は直線状であり、後方から前方へ向けて路面へ向けて傾斜し、転動ローラ66が接地する。第2アーム68が第1アーム67に対して収縮し、かつ、第1アーム67が車体11から収容ケース63に収容されたとき、アーム機構62は収容姿勢に変形されている。アーム機構62が収容姿勢のとき、第1アーム67は第2アーム68に収容され、転動ローラ66は路面から離間する。アーム機構62の伸縮方向は路面に対して傾斜する。
【0049】
アーム機構62は、第1駆動モータ64および第2駆動モータ65の正回転により安定化姿勢となる。安定化姿勢では、アーム機構62は、収容ケース63から側方へ突出しており、第1アーム67および第2アーム68が一直線状になるように伸長し、転動ローラ66が路面に接地する。安定化姿勢では、アーム機構62の安定化姿勢により、転動ローラ66が左右一対の前輪12の側方および前方へ接地し、トレッド幅およびホイールベースが疑似的に拡大されたことになる。このため、左右方向および前後方向の少なくとも一方における車体11の姿勢の安定化が向上する。転動ローラ66が接地する位置は、第1の実施形態の転動ローラ45が接地する位置と同じである。
【0050】
本実施形態のフォークリフト60によれば、第1の実施形態の効果(1)と同等の効果を奏する。また、バッテリ式フォークリフトでは活用されていなかった車体11の側部における前輪12と後輪13との間の空間を利用して収容ケース63が設けられているので、車体11の空間の有効活用が可能となる。アーム機構62の伸縮による安定化姿勢により、車体11の安定化のために適切な位置に接地部を接地させることができる。また、アーム機構41の伸縮による収容姿勢により、アーム機構62を車体11から確実に側方へはみ出ないように車体11に収容することができる。
【0051】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0052】
○ 上記の実施形態では、左右一対の接地部の接地時における離間距離は定まっていたが、これに限定されない。例えば、左右一対の接地時における離間距離を荷の重さに応じて変更してもよい。この場合、接地部の離間距離を可変とするアーム機構とし、予め離間距離の変更のための閾値をコントローラに設定しておき、荷重検出センサより検出される荷重が離間距離の変更のための閾値以上のとき、接地部の離間距離を大きくすればよい。具体的には、
図10に示すように、荷重検出センサより検出される荷重が閾値以上のとき、転動ローラ45のトレッド幅T2がトレッド幅T3になるように、アーム機構を作動させる。また、荷の重さに応じて予め離間距離の変更のための閾値をコントローラにより変更してもよい。あるいは、左右一対の接地部の接地時における離間距離を荷の高さに応じて変更するようにしてもよい。この場合、接地部の離間距離を可変とするアーム機構とし、予め離間距離の変更のための閾値をコントローラに設定しておき、揚高センサが離間距離の変更のための閾値以上のとき、接地部の離間距離を大きくすればよい。
○ 上記の実施形態では、アーム機構が安定化姿勢のとき、接地部が左右一対の前輪の側方であって前方に接地したが、これに限らない。つまり、接地部は、例えば、アーム機構が安定化姿勢のとき、左右一対の前輪の側方に接地してもよい。あるいは、アーム機構が安定化姿勢のとき、左右一対の前輪の前方に接地してもよい。つまり、アーム機構が安定化姿勢のとき、接地部は左右一対の前輪の側方および前方の少なくとも一方へ接地すればよい。
○ 上記の実施形態では、アーム機構の全てが完全に車体の正面視および上面視の少なくとも一方において車体からはみ出ていないとしたが、これに限定されない。例えば、車体の正面視および上面視の少なくとも一方において、荷役車両の走行や荷役作業に支障が無い程度にアーム機構の一部が車体からはみ出てもよい。
○ 上記の実施形態では、接地部としての転動ローラを例示して説明したが、接地部は転動ローラに限定されない。接地部は、路面に接地可能な部材であればよく、アーム機構が安定化姿勢の荷役車両の移動を妨げない部材を用いることが好ましい。
○ 上記の実施形態では、アクチュエータとして複数の駆動モータを用いたがこれに限定されない。アクチュエータは、例えば、流体圧シリンダを用いてよく、特に種類や形式に制限はない。
○ 上記の実施形態では、オペレータが運転する荷役車両としてのフォークリフトを例示したが、これに限らない。例えば、荷役車両は無人運転のフォークリフトでもよい。この場合、車体姿勢安定装置の作動のための設定条件(例えば、走行エリアを除く荷役エリアにて作動)を予めコントローラに設定しておき、車体姿勢安定装置が作動する設定条件を満たすとき車体姿勢安定装置を作動させるようにすればよい。なお、荷役車両は、フォークリフト以外の荷役車両であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
10、60 フォークリフト
11 車体
12 前輪
13 後輪
14 走行用モータ
17 荷役装置
20 マスト
22 フォーク
23 揚高センサ
26 荷重検出センサ
27 運転席
32 コントローラ
35 前部フェンダー
40、61 車体安定化装置
41、62 アーム機構
42、63 収容ケース
43、64 第1駆動モータ(アクチュエータ)
44、65 第2駆動モータ(アクチュエータ)
45、66 転動ローラ(接地部)
46 スライド部材
47 第1アーム
48 第2アーム
54 操作スイッチ
69 サイドカバー
H1、H2 ホイールベース
T1、T2、T3 トレッド幅