(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177945
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】沸騰冷却装置
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20241217BHJP
H01L 23/427 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
F28D15/02 M
H01L23/46 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096369
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内部 銀二
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136CC31
5F136CC35
5F136DA21
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で、冷却に寄与しない乾き領域への対策を図ることができ、かつ、圧力損失の増大を抑制することができる伝熱管を備えた沸騰冷却装置を提供する。
【解決手段】沸騰冷却装置は、冷媒が流通する長尺状の流路を有する伝熱管を備え、伝熱管は、流路を構成し、発熱体からの熱を受ける伝熱面を含む管本体と、流路に設けられた隔壁と、を有し、隔壁は、流路の長手方向に延在し、流路を2以上の空間に分割する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が流通する長尺状の流路を有する伝熱管を備え、
前記伝熱管は、
前記流路を構成し、発熱体からの熱を受ける伝熱面を含む管本体と、
前記流路に設けられた隔壁と、を有し、
前記隔壁は、前記流路の長手方向に延在し、前記流路を2以上の空間に分割する、
ことを特徴とする沸騰冷却装置。
【請求項2】
前記隔壁は、前記長手方向に延在する平板状である、
請求項1に記載の沸騰冷却装置。
【請求項3】
前記長手方向は、鉛直方向に交差し、
前記隔壁は、前記鉛直方向に交差する方向に沿って配置される、
請求項2に記載の沸騰冷却装置。
【請求項4】
前記隔壁は、前記長手方向に沿って屈曲した屈曲部を有し、
前記屈曲部は、前記流路の前記長手方向に沿った中心線よりも前記伝熱面に近い、
請求項3に記載の沸騰冷却装置。
【請求項5】
前記隔壁は、前記流路を互いに等しい体積を有する2以上の空間に分割する、
請求項1に記載の沸騰冷却装置。
【請求項6】
前記隔壁は、複数の壁部を有し、
前記複数の壁部のそれぞれは、前記長手方向に見て前記伝熱面から前記流路の内側に向って延在し、互いに接続される、
請求項1に記載の沸騰冷却装置。
【請求項7】
前記壁部の数は、3以下である、
請求項6に記載の沸騰冷却装置。
【請求項8】
前記長手方向は、鉛直方向に交差し、
前記複数の壁部のうちの1つの壁部は、前記鉛直方向に沿って配置され、
前記1つの壁部は、前記複数の壁部の接続部よりも鉛直上方に配置される、
請求項6に記載の沸騰冷却装置。
【請求項9】
前記複数の壁部のうちの残りの壁部は、前記複数の壁部の接続部よりも鉛直下方に配置される、
請求項8に記載の沸騰冷却装置。
【請求項10】
前記長手方向は、鉛直方向に交差し、
前記複数の壁部は、前記複数の壁部の接続部よりも鉛直下方に配置される、
請求項6に記載の沸騰冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、沸騰冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒の沸騰に伴う潜熱を利用して発熱体を冷却する沸騰冷却装置が知られている。当該沸騰冷却装置の例として、円筒状の伝熱管を有する冷却装置が知られている。
【0003】
伝熱管を有する冷却装置は、一般的な水冷式冷却装置と比較して循環流量が非常に小さく、レイノルズ数が100以上3000以下程度と小さい。このため、伝熱管の内部は、層流になる。それゆえ、伝熱管の内部で冷媒が沸騰する際、気液二相冷媒の蒸気が伝熱管の上部に溜まり易く、液相冷媒が伝熱管の下部に溜まり易い。
【0004】
特許文献1に記載の伝熱管は、下部に溜まった液相冷媒を拡散させるよう、内部にねじった隔壁を有している。当該隔壁は、例えば、伝熱管の終端まで少なくとも1回転ねじられた形状を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のねじられた形状の隔壁では、ねじれ角によっては伝熱管の内部に、蒸気が溜まってしまう領域が発生し続けてしまうおそれがある。この結果、伝熱管の内壁面である伝熱面において冷却に寄与しない大型な乾き領域が形成されるおそれがある。このため、従来の伝熱管では、隔壁を有さない単純な管と冷却効率が変わらないおそれがある。また、ねじられた形状の隔壁を製造することは非常に難しい。さらには、ねじられた形状の隔壁では、圧力損失が増大するおそれがある。
【0007】
以上のことから、簡単な構成で、冷却に寄与しない乾き領域への対策を図ることができ、かつ、圧力損失の増大を抑制することができる伝熱管を備えた沸騰冷却装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために、本開示の好適な態様に係る沸騰冷却装置は、冷媒が流通する長尺状の流路を有する伝熱管を備え、前記伝熱管は、前記流路を構成し、発熱体からの熱を受ける伝熱面を含む管本体と、前記流路に設けられた隔壁と、を有し、前記隔壁は、前記流路の長手方向に延在し、前記流路を2以上の空間に分割する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る沸騰冷却装置を備える冷却システムの概略図である。
【
図2】
図1の沸騰冷却装置が搭載されるモーターの断面の簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本開示に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。なお、「等しい」とは、実質的に等しければよく、製造誤差等を含む意味である。
【0011】
1.第1実施形態
1-1.沸騰冷却装置1を備える冷却システム100
図1は、第1実施形態に係る沸騰冷却装置1を備える冷却システム100の概略図である。
図2は、
図1の沸騰冷却装置1が搭載されるモーター9の断面の簡略図である。
【0012】
以下の説明は、便宜上、Z軸を適宜に用いて行う。Z軸に沿う一方向がZ1方向であり、Z1方向とは反対の方向がZ2方向である。典型的には、Z軸が鉛直線であり、Z1方向が鉛直上方に相当し、Z2方向が鉛直下方に相当する。なお、実空間でのZ軸の向きは、沸騰冷却装置1の設置姿勢に応じて決められる。Z軸は、鉛直線に対して45°以下の範囲内で傾斜してもよい。また、以下では、単に「上方」とは、鉛直線に沿う方向での位置を示しており、鉛直上方および鉛直斜め上方の双方を概念として含む。同様に、単に「下方」とは、鉛直線に沿う方向での位置を示しており、鉛直下方および鉛直斜め下方の双方を概念として含む。
【0013】
図1に示す冷却システム100は、沸騰冷却装置1と熱交換器7と送液ポンプ8とを有する。また、沸騰冷却装置1は、例えば、モーター9に搭載される。なお、沸騰冷却装置1は、モーター9以外に搭載されてもよく、冷却を必要とするのであれば、駆動または通電等により発熱する他の機器または電子部品に搭載される。
【0014】
図2に示すように、モーター9は、固定子91と回転子92とシャフト93とを有する。
固定子91は、円筒状のステーターである。固定子91は、回転子92を回転させるための力を発生させる。固定子91には、巻線911が設けられている。例えば、固定子91は鉄心で構成され、巻線911は銅線で構成される。巻線911は、「発熱体」の例示である。固定子91に、沸騰冷却装置1が配置される。
【0015】
回転子92は、回転中心軸O9周りに回転可能に構成されるモーターである。回転子92は、例えば珪素鋼板等で構成さる。回転子92には、例えば、永久磁石921が設けられる。また、シャフト93は、紙面手前方向および奥行方向に延在する長尺な出力軸である。シャフト93は、回転子92の中心に貫通しており、例えば鉄等で形成される。
【0016】
かかるモーター9では、固定子91の巻線911によって作られる回転磁界によってエネルギーを与えられ、回転子92が回転中心軸O9周りに矢印A0に示すように回転する。
【0017】
なお、モーター9の構成は一例であり、他の構成のモーターに沸騰冷却装置1が設けられてもよい。
【0018】
沸騰冷却装置1は、冷媒の沸騰に伴う潜熱による熱輸送を利用して、「発熱体」としての巻線911を冷却する。沸騰冷却装置1は、冷媒が流れる2つの熱輸送管部10を有する。2つの熱輸送管部10は、
図2において左右対称に設けられる。一方の熱輸送管部10は、
図2中の右側に位置し、他方の熱輸送管部10は、
図2中の左側に位置する。2つの熱輸送管部10は、例えば、固定子91に埋設されるが、固定子91に埋設されていなくてもよい。
【0019】
図1に示すように、熱輸送管部10は、冷媒が流入する入口101と、冷媒が流出する出口102を有する。熱輸送管部10は、複数の伝熱管3と、複数の接続管2とを含む。各伝熱管3は、長尺な直線状の円管である。各接続管2は、隣り合う2つの伝熱管3を接続する。複数の伝熱管3と複数の接続管2によって、熱輸送管部10は、長尺な管を構成する。
【0020】
図2に示すように、複数の伝熱管3は、互いに離間し、固定子91の周方向に沿って並ぶ。
図2の例では、2つの熱輸送管部10のそれぞれは、9個の伝熱管3を有する。
図2の例では、熱輸送管部10の入口101は、熱輸送管部10の最も下方に位置し、出口102は、熱輸送管部10の最も上方に位置する。
【0021】
複数の伝熱管3および複数の接続管2のそれぞれは、熱伝導性に優れる材料で構成されることが好ましく、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金等の金属材料で構成される。
【0022】
かかる沸騰冷却装置1では、
図1の矢印A1に示すように、冷媒は、入口101から流入する。その後、冷媒は、
図2の矢印A2に示すように熱輸送管部10内を流通する。この流通している間に、液状の冷媒である液相冷媒が「発熱体」である巻線911の熱を受けて気化することにより気相冷媒が生成される。そして、
図1の矢印A3に示すように、出口102から気相冷媒が流出する。
【0023】
冷媒は、常温で液状となる媒体であり、例えば、純水等の水、または、水とアルコールとの混合液を含む。当該アルコールは、例えば、エタノールまたはメタノールである。なお、冷媒の種類は、上記の種類以外の種類であってもよい。また、冷媒には、界面活性剤が添加されることが好ましい。界面活性剤は、非イオン性界面活性剤でもよいし、陰イオン界面活性剤または陽イオン界面活性剤等のイオン性界面活性剤でもよい。界面活性剤の具体例としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、および炭化水素系界面活性剤等が挙げられる。冷媒が水である場合、溶解性に優れる炭化水素系界面活性剤を用いることが好ましい。
【0024】
図1に示す熱交換器7は、沸騰冷却装置1に蒸気管61を介して接続される。熱交換器7は、沸騰冷却装置1から蒸気管61を介して供給される気相冷媒を外部の流体との熱交換により冷却する。当該外部の流体は、特に限定されず、液体でも気体でもよい。熱交換器7により、気相冷媒は液相冷媒になる。
【0025】
送液ポンプ8は、液管62を介して沸騰冷却装置1に供給される液相冷媒の流量を調整する。送液ポンプ8の構造は、特に限定されず、例えば、プランジャーポンプ、またはダイヤフラプポンプでもよい。また、送液ポンプ8は、液管63を介して沸騰冷却装置1に接続される。
【0026】
1-2.比較例の伝熱管3x
図3は、比較例の伝熱管3xの縦断面図である。
図4は、比較例の伝熱管3xの横断面図である。
図3および
図4に示す比較例の伝熱管3xは、単純な円筒状である。伝熱管3xの内壁面は、発熱体の熱を受ける伝熱面30xである。伝熱管3xには、矢印A2方向に冷媒が流れる。
【0027】
伝熱面30xの近傍の冷媒が沸点以上の温度に過熱されることにより、伝熱面30xに複数の気泡Bが発生する。発生した気泡Bは、浮力により伝熱面30xから離脱して鉛直上方に移動する。このため、気泡Bは、伝熱管3x内のうち鉛直上方に溜まり易く、気泡B同士が鉛直上方で合体し易い。この結果、大型な合体気泡B0が伝熱面30xのうちの鉛直上方の部分に形成されてしまう。大型な合体気泡B0で伝熱面30xが覆われることで、伝熱面30xに大型な乾き領域Sxが形成されてしまう。
【0028】
乾き領域Sxは、伝熱面30xのうち冷媒が接触せずに伝熱に寄与しない領域である。乾き領域Sxは伝熱に寄与しないため、乾き領域Sxが大型化するほど沸騰熱伝達性能が低下してしまう。この乾き領域Sxの拡大を抑制して、冷却性能の低下を抑制するよう、本実施形態の伝熱管3は構成されている。
【0029】
1-3.本実施形態の伝熱管3
図5は、第1実施形態の伝熱管3の縦断図である。
図6は、第1実施形態の伝熱管3の横断面図である。
図5および
図6に示すように、本実施形態の伝熱管3は、管本体31と隔壁32とを有する。管本体31は、円筒状である。伝熱管3の内壁面は、伝熱面30である。伝熱面30は、円筒状である。伝熱面30は、発熱体である巻線911の熱を受ける。伝熱面30は、冷媒が流通する長尺状の流路S1を構成する。流路S1は、長尺な円柱状である。本実施形態では、流路S1の長手方向は、鉛直方向に交差しており、水平方向に平行である。流路S1において、冷媒は、矢印A2の方向に流れる。
【0030】
図5および
図6に示すように、隔壁32は、伝熱管3の内部、すなわち流路S1内に設けられる。隔壁32は、流路S1の長手方向に延在し、流路S1を2以上の空間に分割する。本実施形態では、流路S1は、隔壁32によって、3つの空間S11、S12およびS13に分割される。空間S11、S12およびS13のそれぞれは、流路S1の長手方向に延在する空間である。
【0031】
隔壁32は、3つの壁部321、322および323を有する。3つの壁部321、322および323のそれぞれは、流路S1の長手方向に延在する平板状である。3つの壁部321、322および323のそれぞれは、伝熱面30から内側に向かって延び、互いに接続される。3つの壁部321、322および323の接続部は、流路S1の長手方向に沿った中心線O1に重なる。壁部321および壁部322は、中心線O1よりも鉛直下方に位置する。壁部321と壁部322との接続部分が、壁部321および壁部322のうち最も鉛直上方に位置する。壁部321と壁部323とのなす角度は、180°以下である。壁部321および壁部322は、鉛直方向および水平方向に対して交差する。また、壁部323は、3つの壁部321、322および323の接続部よりも鉛直上方に位置する。壁部323は、鉛直方向に沿って配置される。
【0032】
壁部321と各壁部322と伝熱面30との一部によって、空間S11が構成される。壁部321と各壁部323と伝熱面30との一部によって、空間S12が構成される。壁部322と各壁部323と伝熱面30との一部によって、空間S13が構成される。空間S11、S12およびS13の各体積は、互いに等しい。
【0033】
なお、壁部321、322および323は、一体で形成されてもよいし、別体で形成されて接合材等で接続されてもよい。壁部321、322および323のそれぞれは、管本体31と一体で形成されてもよいし、別体で形成されて接合材等で接続されてもよい。
【0034】
前述のように、隔壁32は、流路S1の長手方向に延在し、流路S1を「2以上の空間」である3つの空間S11、S12およびS13に分割する。このため、隔壁32が設けられていることで、設けられていない場合に比べ、伝熱面30に接触する気泡Bの量を減少させることができる。それゆえ、伝熱面30における乾き領域Sxを小さくすることができる。よって、冷却性能を向上させることが可能である。
【0035】
隔壁32が設けられることで、隔壁32よりも鉛直下方で発生した気泡Bが隔壁32で保持される。具体的には、壁部321および322よりも鉛直下方、すなわち空間S11で発生した気泡Bは、伝熱面30から離脱して浮力により鉛直上方に上昇すると、壁部321および322に接触して留まる。このため、壁部321および322で留まった気泡Bは、壁部321および322よりも鉛直上方には移動しない。したがって、壁部321および322で留まった気泡Bは、伝熱面30に接触しない。すなわち、空間S11における複数の気泡Bは、合体気泡B0を形成するものの、伝熱面30における乾き領域Sxの形成に寄与しない。このように、壁部321および322が設けられることで、伝熱面30のうち鉛直上方の部分に接触する気泡Bの量を減らすことができる。このため、乾き領域Sxの形成に寄与する気泡Bの量を減らすことができる。よって、合体気泡B0の大型化を抑制することができるので、乾き領域Sxの拡大を抑制することができる。
【0036】
また、空間S12およびS13における気泡Bは、浮力により上昇して伝熱面30に接触する。このため、当該気泡Bは、乾き領域Sxの形成に寄与する。しかし、空間S12およびS13では、流路S1から空間S13の体積分、乾き領域Sxの形成に寄与する気泡Bの量が減る。空間S11の体積は、流路S1の体積の1/3であるため、この体積の減少分、乾き領域Sxの形成に寄与する気泡Bの量が減る。したがって、このため、伝熱面30に触れる気泡Bの量を減らすことができる。
【0037】
さらに、隔壁32は、流路S1の長手方向に延在している。隔壁32は、従来の、ねじれた形状を有する必要がない。よって、隔壁32の構成は、簡単な構成である。それゆえ、本実施形態によれば、簡単な構成で、冷却に寄与しない乾き領域Sxの対策を図ることができる。さらに、隔壁32が流路S1の長手方向に延在しているため、流路S1における冷媒の流れが隔壁32によって遮られることが抑制される。このため、隔壁32が設けられることによる流路S1での圧力損失の増大を抑制することができる。
【0038】
また、前述のように、隔壁32は、流路S1を互いに等しい体積を有する3つの空間S11、S12およびS13に分割する。3つの空間S11、S12およびS13の各体積が互いに等しいことで、異なっている場合に比べ、流路S1の圧力損失の増大を抑制することができる。なお、3つの空間S11、S12およびS13の各体積は、互いに異なっていてもよい。
【0039】
隔壁32は、長手方向に延在する平板状である。具体的には、隔壁32の複数の壁部321、322および323のそれぞれは、長手方向に延在する平板状である。平板状であることで、湾曲状である場合に比べ、隔壁32の形成が簡単であり、かつ圧力損失の増大を抑制することができる。
【0040】
前述のように、複数の壁部321、322および323のそれぞれは、長手方向に見て伝熱面30から流路S1の内側に向って延在し、互いに接続される。複数の壁部321、322および323の接続部は、中心線O1に位置する。隔壁32がかかる構成であることで、簡単な構成で、流路S1を複数の空間S11、S12およびS13に分割することができる。さらには、3つの空間S11、S12およびS13の各体積を等しくすることが容易である。よって、流路S1の圧力損失の増大を抑制し易い。
【0041】
複数の壁部321、322および323のうちの1つの壁部323は、鉛直方向に沿って配置される。さらに、壁部323は、壁部321、322および323の接続部よりも鉛直上方に配置される。かかる壁部323が設けられることで、壁部323が設けられていない場合に比べ、伝熱面30と壁部323との接続部分には、表面張力によってメニスカスMが形成される。このため、乾き領域Sxの拡大が抑制される。それゆえ、冷却性能の低下を抑制することができる。
【0042】
複数の壁部321、322および323のうちの残りの壁部321および323は、前述のように、壁部321、322および323の接続部よりも鉛直下方に配置される。このため、空間S11における気泡Bは、壁部321および322で留まり易く、伝熱面30に接触し難い。そして、壁部321および322で留まった気泡Bは、壁部321および322よりも鉛直上方には移動せず、乾き領域Sxの形成に寄与しない。よって、伝熱面30における乾き領域Sxの拡大を抑制することができる。
【0043】
また、隔壁32の材料は、特に限定されないが、管本体31に比べ、熱伝導率の低い材料であることが好ましい。
【0044】
また、「壁部」の数は、3以下であることが好ましい。本実施形態では、隔壁32は、3つの壁部321、322および323を有する。「壁部」の数が3以下であることで、4以上である場合に比べ、圧力損失の増大を抑制され易い。
【0045】
以上の沸騰冷却装置1が有する伝熱管3によれば、簡単な構成で、冷却に寄与しない乾いた領域の対策を図ることができ、かつ、圧力損失の増大を抑制することができる。
【0046】
2.第2実施形態
第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0047】
図7は、第2実施形態の伝熱管3Aの縦断図である。
図8は、第2実施形態の伝熱管3Aの横断面図である。
図7および
図8に示す伝熱管3Aは、隔壁33を有する。流路S1は、隔壁33によって、2つの空間S14およびS15に分割される。空間S14およびS15のそれぞれは、流路S1の長手方向に延在する空間である。
【0048】
隔壁33は、平板状であって、鉛直方向と交差する水平方向に沿って配置される。別の見方をすると、隔壁33は、冷媒の流れる方向である矢印A2に沿って配置される。隔壁33は、伝熱面30に接続される。
図8に示すように、流路S1の長手方向に見て、隔壁33の左側および右側のそれぞれは、伝熱面30に接続される。隔壁33は、流路S1の中心線O1に重なる。
【0049】
隔壁33と伝熱面30との下部によって、空間S14が構成される。隔壁33と各伝熱面30との上部によって、空間S15が構成される。空間S14およびS15の各体積は、互いに等しい。
【0050】
本実施形態の隔壁33は、流路S1の長手方向に延在し、流路S1を「2以上の空間」である2つの空間S14およびS15に分割する。このため、隔壁33が設けられていることで、設けられていない場合に比べ、伝熱面30に接触する気泡Bの量を減少させることができる。それゆえ、伝熱面30における乾き領域Sxを小さくすることができる。よって、冷却性能を向上させることが可能である。
【0051】
また、隔壁33は、鉛直方向に交差する水平方向に沿って配置される。このため、隔壁33より下方で発生した気泡Bは隔壁33で保持される。それゆえ、隔壁33で留まった気泡Bは、隔壁33よりも鉛直上方には移動しない。したがって、隔壁33で留まった複数の気泡Bは、合体気泡B0を形成するものの、大型な乾き領域Sxの形成に寄与し難い。空間S14の体積は流路S1の体積の1/2であるため、この体積の減少分、乾き領域Sxの形成に寄与する気泡Bの量が減る。このため、隔壁33が設けられていることで、隔壁33が設けられていない場合に比べ、乾き領域Sxの形成に寄与する気泡Bの量を減らすことができる。よって、合体気泡B0の大型化を抑制することができるので、乾き領域Sxの拡大を抑制することができる。
【0052】
また、隔壁33の構成は、第1実施形態の隔壁32の構成よりも、さらに簡単である。そして、本実施形態によれば、第1実施形態に比べて、流路S1での圧力損失の増大を抑制することができる。
【0053】
図9は、変形例の伝熱管3Aaの縦断図である。
図9の伝熱管3Aaが有する隔壁33aは、水平方向に沿った平板部331と、2つの屈曲部332および333と、を有する。平板部331は、中心線O1に重なる。2つの屈曲部332および333は、長手方向に見て、平板部331の両側に位置し、平板部331よりも鉛直上方に位置する。2つの屈曲部332および333は、隔壁33aを長手方向に沿って屈曲させることにより形成される。2つの屈曲部332および333は、流路S1の中心線O1よりも伝熱面30に近い。
【0054】
隔壁33aが屈曲部332および333を有することで、
図8の隔壁33に比べて、乾き領域Sxの拡大を抑制することができる。屈曲部332および333のそれぞれと伝熱面30との接続部分には、表面張力によってメニスカスMが形成される。このため、乾き領域Sxの拡大が抑制される。それゆえ、冷却性能の低下を抑制することができる。
【0055】
3.第3実施形態
第3実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0056】
図10は、第3実施形態の伝熱管3Bの縦断図である。
図11は、第3実施形態の伝熱管3Bの横断面図である。
図10および
図11に示す伝熱管3Bは、隔壁34を有する。流路S1は、隔壁34によって、3つの空間S16、S17およびS18に分割される。空間S16、S17、およびS18のそれぞれは、流路S1の長手方向に延在する空間である。
【0057】
隔壁34は、3つの壁部341、342および343を有する。3つの壁部341、342および343のそれぞれは、流路S1の長手方向に延在する平板状である。3つの壁部341、342および343のそれぞれは、伝熱面30から内側に向かって延び、互いに接続される。
【0058】
3つの壁部341、342および343の接続部は、流路S1の中心線O1と重なっていない。当該接続部は、中心線O1よりも鉛直上方に位置する。壁部342および343は、水平方向に沿って配置される。壁部341は、鉛直方向に沿って配置される。壁部341と壁部342とのなす角度は、90°である。壁部341と壁部343とのなす角度は、90°である。
【0059】
壁部341と各壁部342と伝熱面30との一部によって、空間S16が構成される。壁部341と各壁部343と伝熱面30との一部によって、空間S17が構成される。壁部342と各壁部343と伝熱面30との一部によって、空間S18が構成される。空間S16,S17およびS18の各体積は等しい。
【0060】
本実施形態の隔壁34は、流路S1の長手方向に延在し、流路S1を「2以上の空間」である3つの空間S16、S17およびS18に分割する。このため、隔壁34が設けられていることで、設けられていない場合に比べ、伝熱面30に接触する気泡Bの量を減少させることができる。それゆえ、伝熱面30における乾き領域Sxを小さくすることができる。よって、冷却性能を向上させることが可能である。
【0061】
また、本実施形態では、空間S16および空間S17における気泡Bは、乾き領域Sxの形成に寄与し難い。空間S16および空間S17の体積は、流路S1の体積の2/3であるため、この体積の減少分、乾き領域Sxの形成に寄与する気泡Bの量が減る。よって、第1実施形態に比べて乾き領域Sxの拡大を抑制することができる。
【0062】
なお、空間S18の体積は、空間S16およびS17の各体積よりも小さくてもよい。この場合、空間S18における気泡Bの量をさらに減らすことができる。
【0063】
図12は、変形例の伝熱管3Baの横断面図である。
図12に示すように、伝熱管3Baが有する隔壁34aは、壁部342および壁部343の代わりに、壁部342aおよび壁部343aを有する。壁部342aおよび壁部343aのそれぞれは、水平方向および鉛直方向に交差している。壁部341、壁部342aおよび壁部343aの全ては、壁部341、壁部342aおよび壁部343aの接続部よりも鉛直下方に位置する。なお、当該接続部は、中心線O1よりも鉛直上方に位置する。
【0064】
壁部341、壁部342aおよび壁部343aの全ては、壁部341、壁部342aおよび壁部343aの接続部よりも鉛直下方に位置する。このため、伝熱管3Baでは、
図11の伝熱管3Bに比べ、空間S16およびS17において、合体気泡B0が伝熱面30に接触し難い。また、伝熱管3Baでは、
図11の伝熱管3Bと同様に、空間S16および空間S17の体積は、流路S1の体積の2/3であるため、この体積の減少分、乾き領域Sxの形成に寄与する気泡Bの量が減る。このようなことから、
図12の伝熱管3aによれば、圧力損失を低減しつつ、伝熱面30における乾き領域Sxを特に小さくすることができる。よって、冷却性能を向上させることが可能である。
【0065】
4.第4実施形態
第4実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0066】
図13は、第4実施形態の伝熱管3Cの横断面図である。
図13に示す伝熱管3Cは、隔壁35を有する。流路S1は、隔壁35によって、4つの空間S01、S02、S03およびS04に分割される。空間S01、S02、S03およびS04のそれぞれは、流路S1の長手方向に延在する空間である。
【0067】
隔壁35は、4つの壁部351、352、353および354を有する。4つの壁部351、352、353および354のそれぞれは、流路S1の長手方向に延在する平板状である。4つの壁部351、352、353および354のそれぞれは、伝熱面30から内側に向かって延び、互いに接続される。4つの壁部351、352、353および354のそれぞれは、鉛直方向および水平方向と交差する。
【0068】
壁部351と各壁部352と伝熱面30との一部によって、空間S01が構成される。壁部351と各壁部353と伝熱面30との一部によって、空間S02が構成される。壁部352と各壁部354と伝熱面30との一部によって、空間S03が構成される。壁部353と各壁部354と伝熱面30との一部によって、空間S04が構成される。空間S01、S02、S03、およびS04各体積は、互いに等しい。
【0069】
隔壁35は簡単な構成である。また、空間S01における気泡Bは、乾き領域Sxの形成に寄与し難い。空間S01の体積は、流路S1の体積の1/4であるため、この体積の減少分、乾き領域Sxの形成に寄与する気泡Bの量が減る。よって、乾き領域Sxの拡大を抑制することができる。
【0070】
さらに、壁部353および354のそれぞれと伝熱面30との接続部分には、表面張力によってメニスカスMが形成される。このため、空間S02およびS03では、空間S04に比べて、伝熱面30における乾き領域Sxの拡大が抑制される。それゆえ、冷却性能の低下を抑制することができる。
【0071】
5.変形例
前述の各実施形態は、例えば、以下に述べる各種の変形が可能である。また、各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0072】
「隔壁」は、例えば、鉛直方向に沿って延びる平板部材のみで形成されてもよい。この場合であっても、メニスカスが形成されることにより、「隔壁」が設けられていない場合に比べ、乾き領域Sxの拡大を抑制することができる。
【0073】
「伝熱管」は、円筒以外の形状でもよく、楕円または多角形等でもよい。
【0074】
以上、本開示について図示の実施形態に基づいて説明したが、本開示は、これらに限定されるものではない。また、本開示の各部の構成は、前述した実施形態の同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
【符号の説明】
【0075】
1…沸騰冷却装置、2…接続管、3…伝熱管、3A…伝熱管、3Aa…伝熱管、3B…伝熱管、3Ba…伝熱管、3C…伝熱管、3x…伝熱管、7…熱交換器、8…送液ポンプ、9…モーター、10…熱輸送管部、30…伝熱面、30x…伝熱面、31…管本体、32…隔壁、33…隔壁、33a…隔壁、34…隔壁、34a…隔壁、35…隔壁、61…蒸気管、62…液管、63…液管、91…固定子、92…回転子、93…シャフト、100…冷却システム、101…入口、102…出口、321…壁部、322…壁部、323…壁部、332…屈曲部、331…平板部、341…壁部、342…壁部、342a:壁部、343…壁部、343a:壁部、351…壁部、352…壁部、353…壁部、354…壁部、911…巻線、921…永久磁石、B…気泡、B0…合体気泡、M…メニスカス、O1…中心線、O9…回転中心軸、S01…空間、S02…空間、S03…空間、S04…空間、S1…流路、S11…空間、S12…空間、S13…空間、S14…空間、S15…空間、S16…空間、S17…空間、S18…空間、Sx…乾き領域。