(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177970
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】調湿装置
(51)【国際特許分類】
F24F 3/14 20060101AFI20241217BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
F24F3/14
B01D53/26 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096418
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100227732
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 祥二
(72)【発明者】
【氏名】秋田 智行
【テーマコード(参考)】
3L053
4D052
【Fターム(参考)】
3L053BC03
3L053BC05
3L053BC10
4D052AA08
4D052CF00
4D052DA03
4D052DA08
4D052DA09
4D052DB01
4D052FA01
4D052FA05
4D052GA01
4D052GB00
4D052GB11
4D052HA14
4D052HB01
(57)【要約】
【課題】 調湿装置において、除湿に必要なエネルギを低減させる技術を提供する。
【解決手段】 調湿装置は、空気中の水蒸気を吸湿する液体調湿剤と、液体調湿剤と空気とを接触させて空気の除湿をおこなう処理機と、処理機において除湿に使用された液体調湿剤を、前記処理機において除湿に使用されているときよりも高温の状態とし、空気と接触させることで、空気を加湿し、かつ、液体調湿剤の濃縮をおこなう再生機と、を備え、処理機は、第1の液体調湿剤と空気とを接触させる第1の気液接触器と、第1の気液接触器において除湿された空気と、第1の液体調湿剤よりも温度が低い第2の液体調湿剤と、を接触させる第2の気液接触器と、を含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調湿装置であって、
空気中の水蒸気を吸湿する液体調湿剤と、
前記液体調湿剤と空気とを接触させて空気の除湿をおこなう処理機と、
前記処理機において除湿に使用された前記液体調湿剤を、前記処理機において除湿に使用されているときよりも高温の状態とし、空気と接触させることで、空気を加湿し、かつ、前記液体調湿剤の濃縮をおこなう再生機と、を備え、
前記処理機は、
第1の前記液体調湿剤と空気とを接触させる第1の気液接触器と、
前記第1の気液接触器において除湿された空気と、第1の前記液体調湿剤よりも温度が低い第2の前記液体調湿剤と、を接触させる第2の気液接触器と、を含んでいる、
調湿装置。
【請求項2】
請求項1に記載の調湿装置は、さらに、
第1の前記液体調湿剤の温度を、前記第1の気液接触器において除湿される空気の温度を含む所定の範囲内の温度にする熱媒体を、前記第1の気液接触器に供給する熱媒体供給部を備える、
調湿装置。
【請求項3】
請求項2に記載の調湿装置であって、
前記熱媒体供給部は、
前記熱媒体の熱を空気に放出する放熱部を有し、
第1の前記液体調湿剤の温度を、前記第1の気液接触器において除湿される空気の温度と同じ温度にする熱媒体を前記第1の気液接触器に供給する、
調湿装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の調湿装置は、さらに、
前記第2の気液接触器において空気の除湿に使用された第2の液体調湿剤と、前記再生機において空気の加湿に使用された液体調湿剤とで熱交換をおこなう熱交換器を備える、
調湿装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の調湿装置は、さらに、
前記処理機において空気の除湿に使用された前記液体調湿剤を加熱する加熱部を備え、
前記加熱部は、太陽熱によって加熱された熱媒体を前記再生機に供給する、
調湿装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の調湿装置は、さらに、
前記処理機において空気の除湿に使用された液体調湿剤と、前記再生機において空気の加湿に使用された液体調湿剤とで熱交換をおこなう熱交換器を備える、
調湿装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調湿装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体調湿剤を用いて調湿を行う調湿装置が知られている。例えば、特許文献1,2に記載の調湿装置では、液体調湿剤と空気とを接触させることで、液体調湿剤が空気に含まれる水蒸気を吸湿し、空気は除湿される。空気の除湿に使用された液体調湿剤は、加熱され、空気と接触することで、再生される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-36093号公報
【特許文献2】特開2020-6299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2のような先行技術によっても、調湿装置において、除湿に必要なエネルギを低減させる技術については、なお、改善の余地があった。例えば、特許文献1,2に記載の調湿装置では、空気を除湿するとき、ヒートポンプを用いて液体調湿剤を冷却する。しかしながら、空気が高温であったり、絶対湿度が高かったりする場合には、除湿時に発生する水蒸気の吸収熱が大きくなるため、液体調湿剤の温調のためのヒートポンプの消費電力が大きくなる。したがって、液体調湿剤を用いて調湿を行う調湿装置において、除湿に必要なエネルギを低減させる技術が求められていた。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、調湿装置において、除湿に必要なエネルギを低減させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、調湿装置が提供される。この調湿装置では、空気中の水蒸気を吸湿する液体調湿剤と、前記液体調湿剤と空気とを接触させて空気の除湿をおこなう処理機と、前記処理機において除湿に使用された前記液体調湿剤を、前記処理機において除湿に使用されているときよりも高温の状態とし、空気と接触させることで、空気を加湿し、かつ、前記液体調湿剤の濃縮をおこなう再生機と、を備え、前記処理機は、第1の前記液体調湿剤と空気とを接触させる第1の気液接触器と、前記第1の気液接触器において除湿された空気と、第1の前記液体調湿剤よりも温度が低い第2の前記液体調湿剤と、を接触させる第2の気液接触器と、を含んでいる。
【0008】
この構成によれば、空気の除湿をおこなう処理機は、空気の流れに対して直列に並べられる、第1の気液接触器と第2の気液接触器とを備えている。これにより、処理機では、温度が異なる液体調湿剤が空気に含まれる水蒸気を段階的に吸収することから、除湿における気液接触器の負荷を分割することができるため、液体調湿剤の温調に必要なエネルギを低減することができる。したがって、除湿に必要なエネルギを低減させることができる。
【0009】
(2)上記形態の調湿装置は、さらに、第1の前記液体調湿剤の温度を前記第1の気液接触器において除湿される空気の温度を含む所定の範囲内の温度にする熱媒体を、前記第1の気液接触器に供給する熱媒体供給部を備えてもよい。この構成によれば、熱媒体供給部が第1の気液接触器に供給する熱媒体は、第1の液体調湿剤の温度を第1の気液接触器において除湿される空気の温度を含む所定の範囲内の温度にする。ここで、「空気の温度を含む所定の範囲内の温度」とは、空気の温度に比べて過度に冷却も加熱もされていない温度であり、例えば、空気の温度に対して±5℃の範囲内の温度を指す。処理機では、第1の気液接触器において、空気をある程度除湿したのち、第2の気液接触器において、第1の気液接触器においてある程度除湿された空気をさらに除湿し、空気の温度と湿度を目的の値とする。これにより、処理機によって除湿される空気の冷却を第1の気液接触器と第2の気液接触器とに分割することができる。したがって、液体調湿剤の温調に必要なエネルギをさらに低減することができるため、除湿に必要なエネルギをさらに低減させることができる。
【0010】
(3)上記形態の調湿装置において、前記熱媒体供給部は、前記熱媒体の熱を空気に放出する放熱部を有し、第1の前記液体調湿剤の温度を前記第1の気液接触器において除湿される空気の温度と同じ温度にする熱媒体を前記第1の気液接触器に供給してもよい。この構成によれば、第1の気液接触器では、第1の気液接触器において除湿される空気の温度と同じ温度の第1の液体調湿剤によって空気が除湿される。ここで、「空気の温度と同じ温度」とは、例えば、空気の温度に対して+5℃の範囲内の温度を指す。除湿に使用された第1の液体調湿剤は、水蒸気の吸収熱を放熱部によって放出する。これにより、熱媒体供給部は、第1の液体調湿剤の温度を第1の気液接触器において除湿される空気の温度と同じにする熱媒体を、継続的に第1の気液接触器に供給することができる。したがって、熱媒体供給部では、ヒートポンプなどによる第1の液体調湿剤の冷却が不要となるため、除湿に必要なエネルギをさらに低減させることができる。
【0011】
(4)上記形態の調湿装置は、さらに、前記第2の気液接触器において空気の除湿に使用された第2の液体調湿剤と、前記再生機において空気の加湿に使用された液体調湿剤とで熱交換をおこなう熱交換器を備えてもよい。この構成によれば、再生機において加熱された液体調湿剤の熱を空気の除湿に使用された比較的低温の第2の液体調湿剤の予熱に使用することができるため、再生機における液体調湿剤の加熱に必要なエネルギを少なくすることができる。したがって、除湿に必要なエネルギをさらに低減させることができる。
【0012】
(5)上記形態の調湿装置は、さらに、前記処理機において空気の除湿に使用された前記液体調湿剤を加熱する加熱部を備え、前記加熱部は、太陽熱によって加熱された熱媒体を前記再生機に供給してもよい。この構成によれば、温熱供給部は、再生可能エネルギである太陽熱によって加熱された熱媒体を再生機に供給する。これにより、除湿に必要な化石エネルギを低減させることできる。
【0013】
(6)上記形態の調湿装置は、さらに、前記処理機において空気の除湿に使用された液体調湿剤と、前記再生機において空気の加湿に使用された液体調湿剤とで熱交換をおこなう熱交換器を備えてもよい。この構成によれば、処理機から排出される液体調湿剤と再生機から排出される液体調湿剤との間で熱交換させることで、再生機から排出される液体調湿剤がもっている熱を有効に利用することができる。これにより、除湿に必要なエネルギをさらに低減させることができる。
【0014】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、調湿装置の製造方法、調湿装置を含むシステム、これら装置およびシステムの制御方法、これら装置およびシステムにおいて除湿を実行させるコンピュータプログラム等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態の調湿装置の概略構成を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態の調湿装置の動作例を説明する第1の図である。
【
図3】第1実施形態の調湿装置の動作例を説明する第2の図である。
【
図4】比較例のヒートポンプにおける除湿に必要な仕事量を説明する図である。
【
図6】比較例の調湿装置における除湿に必要な仕事量を説明する図である。
【
図7】第1実施形態の調湿装置における除湿に必要な仕事量を説明する図である。
【
図8】第2実施形態の調湿装置の概略構成を示す模式図である。
【
図9】第2実施形態の調湿装置の動作例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の調湿装置1の概略構成を示す模式図である。本実施形態の調湿装置1は、液体調湿剤を用いて気体の調湿を行う。本実施形態では、調湿装置1は、室外の空気である外気を除湿するとともに、室内の空気である内気を用いて除湿に用いた液体調湿剤を再生する。調湿装置1は、外気を除湿する処理機10と、液体調湿剤を再生する再生機20と、処理機10と再生機20とに接続する流路30と、処理機10の液体調湿剤を冷却する第1の冷却部41および第2の冷却部42と、再生機20の液体調湿剤を加熱する加熱部43と、流路30に設けられる複数の熱交換器51,52,54,55と、制御部60と、を備える。
【0017】
ここで、調湿装置1に用いられる液体調湿剤について説明する。本実施形態の調湿装置1において外気の除湿に用いられる液体調湿剤は、溶質として塩化リチウム(LiCl)を含む水溶液である。本実施形態の液体調湿剤は、気液平衡において、同じ温度で塩化リチウム濃度が高くなるほど、単位質量あたりの液体調湿剤に含まれる水の量は少なくなる。すなわち、同じ温度で塩化リチウム濃度が低くなるほど、その液体調湿剤による水蒸気を吸湿する能力、すなわち、除湿能力は大きくなる。本実施形態では、塩化リチウム濃度が35%の水溶液を液体調湿剤として用いる。なお、液体調湿剤の塩化リチウム濃度は、これに限定されない。
【0018】
処理機10は、液体調湿剤と外気とを接触させることで、外気を除湿する。処理機10は、第1の気液接触器11と、第2の気液接触器12と、を備える。本実施形態では、
図1に示すように、第1の気液接触器11と第2の気液接触器12とは、外気の流れに対して直列に接続されており、外気を除湿する。ここで、便宜的に、第1の気液接触器11に導入される前の外気を外気g10とし、第1の気液接触器11において液体調湿剤と接触した外気g11とし、第2の気液接触器12において液体調湿剤と接触した外気を外気g12とする。
【0019】
第1の気液接触器11は、中空状の容器11aと、気液接触材11bと、噴射部11cと、を有する。気液接触材11bは、親水性や吸水性に優れた多孔質体、例えば、セルロースである。容器11aには、外気g10が容器11a内に流入可能な開口11dと、外気g11が容器11a内から流出可能な開口とが形成されている。本実施形態では、開口11dは、例えば、室外に設置されている。気液接触材11bは、図示しない送風機の駆動によって開口11dを通る外気g10が内部を通るように容器11a内に配置されている。噴射部11cは、気液接触材11bに液体調湿剤を噴射可能に形成されている。これにより、気液接触材11bの内部を通る外気は、噴射部11cによって噴射され気液接触材11bに保持されている液体調湿剤と接触することで除湿される。噴射部11cが噴射した液体調湿剤は、気液接触材11bにおいて外気と接触し外気に含まれる水蒸気を吸湿したのち、容器11aの底部に溜まる。
【0020】
第2の気液接触器12は、中空状の容器12aと、気液接触材12bと、噴射部12cと、を有する。気液接触材12bは、親水性や吸水性に優れた多孔質体、例えば、セルロースである。容器12aには、外気g11が容器12a内に流入可能な開口12dと、外気g13が容器12a内から流出可能な開口とが形成されている。気液接触材12bは、外気が内部を通るように容器12a内に配置されている。噴射部12cは、気液接触材12bに液体調湿剤を噴射可能に形成されている。これにより、気液接触材12bの内部を通る外気は、噴射部12cによって噴射され気液接触材12bに保持されている液体調湿剤と接触することで除湿される。噴射部12cが噴射した液体調湿剤は、気液接触材12bにおいて外気と接触し外気に含まれる水蒸気を吸湿したのち、容器12aの底部に溜まる。
【0021】
再生機20は、処理機10において外気の除湿に使用された液体調湿剤を加熱し、内気と接触させることで、内気を加湿し、かつ、液体調湿剤の濃縮をおこなう。再生機20は、再生用気液接触器21を備える。ここで、便宜的に、再生用気液接触器21に導入される前の内気を内気g20とし、再生用気液接触器21において液体調湿剤と接触した内気g21とする。
【0022】
再生用気液接触器21は、中空状の容器21aと、気液接触材21bと、噴射部21cと、を有する。気液接触材21bは、親水性や吸水性に優れた多孔質体、例えば、セルロースである。容器21aには、内気g20が容器21a内に流入可能な開口21dと、内気g21が容器21a内から流出可能な開口とが形成されている。本実施形態では、開口21dは、例えば、室内に設置されている。気液接触材21bは、図示しない送風機の駆動によって開口21dを通る内気g20が内部を通るように容器21a内に配置されている。噴射部21cは、気液接触材21bに液体調湿剤を噴射可能に形成されている。これにより、気液接触材21bの内部を通る内気は、噴射部21cによって噴射され気液接触材21bに保持されている液体調湿剤と接触することで加湿される。噴射部21cが噴射した液体調湿剤は、気液接触材21bにおいて内気と接触し自身の水分を内気に放出したのち、容器21aの底部に溜まる。
【0023】
流路30は、液体調湿剤が流れる流路であって、複数の流路30a,30b,30c,30d,30e,30f,30g,30h,30i,30j,30kを有する。流路30aは、第1の気液接触器11の容器11aの底部と、熱交換器51とに接続している。流路30aには、液体調湿剤の流量を調整する送液ポンプ31が設けられている。流路30bは、熱交換器51と熱交換器52とに接続している。流路30cは、熱交換器52と再生用気液接触器21の噴射部21cとに接続している。流路30dは、再生用気液接触器21の容器21aの底部と、熱交換器51とに接続している。流路30dには、液体調湿剤の流量を調整する送液ポンプ33が設けられている。流路30eは、熱交換器51と熱交換器54とに接続している。流路30fは、熱交換器54と第1の気液接触器11の噴射部11cとに接続している。
【0024】
流路30gは、第2の気液接触器12の容器12aの底部と、熱交換器53とに接続している。流路30gには、液体調湿剤の流量を調整する送液ポンプ32が設けられている。流路30hは、熱交換器51と、流路30aとに接続している。流路30iは、流路30eと、熱交換器53とに接続している。流路30jは、熱交換器53と、熱交換器55とに接続している。流路30kは、熱交換器55と、第2の気液接触器12の噴射部12cとに接続している。
【0025】
第1の冷却部41は、第1の気液接触器11の液体調湿剤の温度を調整する。第1の冷却部41は、熱源41aと、熱交換部41bと、含む。熱源41aは、中温の熱媒体を生成する。ここで、「中温」とは、第2の冷却部42の設定温度よりも高く、加熱部43の設定温度よりも低い温度である。本実施形態では、熱源41aは、第1の気液接触器11において空気と接触する液体調湿剤の温度を、調湿装置1が設置されている環境における温度、すなわち、外気温(外部の空気の温度)と同じ温度とする熱媒体を生成する。ここで、「同じ温度」とは、外気温と全く同じ温度だけでなく、外気温に対して+5℃の範囲に含まれる温度を指す。熱源41aは、例えば、室外機、冷却塔、ラジエーターなどであり、熱媒体を外気に接触させることで熱媒体の熱を外気に放出する空冷式の放熱部41cを有している。熱交換部41bは、第1の気液接触器11の気液接触材11bに内蔵されている。熱源41aと熱交換部41bとは、熱源41aで生成される中温の熱媒体が流通可能な流路によって接続されている。熱源41aは、特許請求の範囲の「熱媒体供給部」に相当する。
【0026】
第2の冷却部42は、第2の気液接触器12の液体調湿剤の温度を調整する。第2の冷却部42は、熱源42aと、熱交換部42bと、含む。熱源42aは、低温の熱媒体を生成する。ここで、「低温」とは、第1の冷却部41の設定温度よりも低い温度である。本実施形態では、熱源42aは、第2の気液接触器12において空気と接触する液体調湿剤の温度が、調湿装置1が設置されている外気温よりも低い温度にする熱媒体を生成する。熱源42aは、例えば、ヒートポンプである。熱交換部42bは、第2の気液接触器12の気液接触材12bに内蔵されている。熱源42aと熱交換部42bとは、熱源42aで生成される低温の熱媒体が流通可能な流路によって接続されている。
【0027】
加熱部43は、再生用気液接触器21の液体調湿剤の温度を調整する。加熱部43は、熱源43aと、熱交換部43bと、を含む。熱源43aは、高温の熱媒体を生成する。ここで、「高温」とは、第1の冷却部41の設定温度よりも高い温度である。熱源43aは、例えば、ヒートポンプや太陽光受光装置である、本実施形態の加熱部43は、太陽光の受光によって発生する太陽熱を利用して、再生機20に供給する熱媒体を加熱する。熱交換部43bは、再生用気液接触器21の気液接触材21bに内蔵されている。熱源43aと熱交換部43bとは、熱源43aで生成される高温の熱媒体が流通可能な流路によって接続されている。
【0028】
熱交換器51は、処理機10から再生機20に向かって流れる液体調湿剤と、再生機20から処理機10に向かって流れる液体調湿剤との熱交換を行う。熱交換器52は、液体調湿剤と熱媒体との間で熱のやり取りを行う。熱交換器52は、熱交換器52を通過した液体調湿剤と、熱交換部43bに供給される前の加熱部43が生成する高温の熱媒体との熱交換を行う。熱交換器53は、第2の気液接触器12の噴射部12cに供給される前の液体調湿剤と、第2の気液接触器12の容器12aの底部から排出される液体調湿剤との熱交換を行う。熱交換器54は、熱交換器51を通過した液体調湿剤と、熱交換部41bに供給される前の熱源41aが生成する中温の熱媒体との熱交換を行う。熱交換器55は、液体調湿剤と熱媒体と間での熱のやり取りを行う。熱交換器55は、熱交換器53を通過した液体調湿剤と、熱交換部42bに供給される前の熱源42aが生成する低温の熱媒体との熱交換を行う。
【0029】
制御部60は、ROM、RAM、および、CPUを含んで構成されるコンピュータである。制御部60は、送液ポンプ31,32,33、第1の冷却部41、第2の冷却部42,加熱部43、および、図示しない送風機に電気的に接続している。制御部60は、事前に入力されているプログラムに応じて、第1の冷却部41と第2の冷却部42と加熱部43とによる液体調湿剤の温度を制御するとともに、送液ポンプ31,32,33による液体調湿剤の流量を制御する。また、制御部60は、送風機を制御し、処理機10に導入する外気g10の流量や、再生機20に導入する内気g20の流量を調整する。
【0030】
次に、本実施形態の調湿装置1による除湿方法の詳細を説明する。本実施形態の調湿装置1による除湿方法は、例えば、室内にいる人(操作者)が室内の湿度を下げるときに、調湿装置1を操作することで実行可能である。
【0031】
制御部60に操作者による除湿命令が入力されると、制御部60は、送液ポンプ31,32,33、第1の冷却部41、第2の冷却部42,加熱部43、および、送風機のそれぞれを駆動させる。送液ポンプ31,32,33の駆動により、流路30において液体調湿剤が流れ始める。これにより、噴射部11c,12c,21cのそれぞれにおいて液体調湿剤の噴射が開始され、気液接触材11b,12b,21bが液体調湿剤によって濡れた状態となる。
【0032】
第1の冷却部41は、熱源41aにおいて中温の熱媒体を生成し、第1の気液接触器11に供給する。これにより、気液接触材11bは、調湿装置1が設置されている環境の温度と同じ程度の温度、すなわち、外気温と同じ温度になるため、気液接触材11bを濡らす液体調湿剤の温度も外気温と同じ温度となる。説明の便宜上、本実施形態では、気液接触材11bを濡らしている液体調湿剤を「第1の液体調湿剤」という。
【0033】
第2の冷却部42は、熱源42aにおいて低温の熱媒体を生成し、第2の気液接触器12に供給する。これにより、気液接触材12bは、調湿装置1が設置されている環境の温度よりも低い温度、すなわち、外気温よりも低い温度になるため、気液接触材12bを濡らす液体調湿剤の温度も外気温よりも低い温度となる。説明の便宜上、本実施形態では気液接触材12bを濡らしている液体調湿剤を「第2の液体調湿剤」という。
【0034】
加熱部43は、熱源43aにおいて高温の熱媒体を生成し、再生用気液接触器21に供給する。これにより、気液接触材21bは、気液接触材11b,12bのいずれよりも高い温度となるため、気液接触材21bを濡らす液体調湿剤の温度も外気温よりも高い温度となる。
【0035】
処理機10では、図示しない送風機の駆動によって外気g10が導入される。導入される外気g10は、第1の気液接触器11の気液接触材11bの内部、第2の気液接触器12の気液接触材12bの内部の順に流れ、それぞれにおいて液体調湿剤と接触する。気液接触材11bの内部では、外気g10は、外気と同じ温度の第1の液体調湿剤と接触することで、外気g10に含まれる水蒸気の一部が第1の液体調湿剤に吸収され、外気g11となる。さらに、気液接触材12bの内部では、外気g11は、第2の液体調湿剤と接触することで、外気g11に含まれる水蒸気の一部が第2の液体調湿剤に吸収される。これにより、外気g11よりもさらに除湿された外気g12となる。外気g12は、給気として室内に供給される。これにより、室内の湿度を低下させることができる。
【0036】
第1の気液接触器11において外気g10と接触した第1の液体調湿剤は、外気g10に含まれる水蒸気の一部を吸湿しているため、塩化リチウム濃度が低下している。外気g10と接触した第1の液体調湿剤は、流路30a,30b,30cを通って、再生用気液接触器21に送られる。第2の気液接触器12において外気g11と接触した第2の液体調湿剤は、外気g11に含まれる水蒸気の一部を吸湿しているため、塩化リチウム濃度が低下している。外気g11と接触した第2の液体調湿剤は、流路30g,30h,30a,30b,30cを通って、再生用気液接触器21に送られる。
【0037】
再生機20では、図示しない送風機の駆動によって内気g20が導入される。導入される内気g20は、再生用気液接触器21の気液接触材21bの内部を流れ、処理機10から送られた液体調湿剤と接触する。高温の熱媒体によって比較的高温となっている気液接触材21bの内部では、液体調湿剤と内気g20とが接触することで、液体調湿剤に含まれる水の一部が内気に水蒸気として放出されるため、内気g20は加湿され、内気g21となる。一方、自身の水の一部を放出した液体調湿剤は濃縮され、塩化リチウム濃度が大きくなるため、液体調湿剤の除湿能力が回復し、再生される。内気g21は、排気として室外に排気される。
【0038】
再生した液体調湿剤の一部は、流路30d,30e,30fを通り、第1の気液接触器11の噴射部11cから噴射される。これにより、気液接触材11bにおける外気g10の除湿を継続して行うことができる。また、再生した液体調湿剤の残りは、流路30d,30e,30i,30j,30kを通り、第2の気液接触器12の噴射部12cから噴射される。これにより、気液接触材12bにおける外気g11の除湿を継続して行うことができる。
【0039】
熱交換器51では、処理機10から再生機20に向かって流れる液体調湿剤と、再生機20から処理機10に向かって流れる液体調湿剤との間で熱交換が行われる。処理機10から再生機20に向かって流れる液体調湿剤は比較的低温であり、再生機20から処理機10に向かって流れる液体調湿剤は比較的高温である。熱交換器51での熱交換によって、処理機10から再生機20に向かって流れる液体調湿剤の温度は上昇し、再生機20から処理機10に流れる液体調湿剤の温度は低下する。これにより、処理機10での液体調湿剤の冷却に必要なエネルギを低減し、かつ、再生機20での液体調湿剤の加熱に必要なエネルギを低減することができる。
【0040】
熱交換器53では、第2の気液接触器12の噴射部12cに供給される前の液体調湿剤と、第2の気液接触器12の容器12aの底部から排出される液体調湿剤との間で熱交換が行われる。噴射部12cに供給される前の液体調湿剤は、再生機20での再生によって比較的高温であり、容器12aの底部から排出される液体調湿剤は、外気g11の除湿に使用された後であるため、比較的低温である。熱交換器53での熱交換によって、噴射部12cに供給される前の液体調湿剤の温度は低下し、容器12aの底部から排出される液体調湿剤の温度は上昇する。これにより、処理機10での液体調湿剤の冷却に必要なエネルギを低減し、かつ、再生機20での液体調湿剤の加熱に必要なエネルギを低減することができる。
【0041】
次に、本実施形態の調湿装置1による除湿の詳細について説明する。ここでは、気液平衡を表すxy線図における具体的な数値を用いて、調湿装置1による除湿について説明する。
【0042】
図2は、本実施形態の調湿装置1の動作例を説明する第1の図である。
図2は、塩化リチウム水溶液の空気線図上の気液平衡を表すxy線図において、塩化リチウム水溶液の温度と絶対湿度との関係を示している。
図2には、相対湿度20、30、40、50、60、70、80、100%を、鎖線L20,L30,L40,L50,L60,L70,L80、および、実線L100で示す。
【0043】
図2に示す調湿装置1の動作例の運転条件は、以下のとおりである。
図2には、xy線図における、塩化リチウム濃度が35%の液体調湿剤の気液平衡線を実線C35で示す。
外気:気温35℃ 相対湿度60%(
図2に示す点P10)
給気(除湿された外気):温度25℃ 相対湿度30%(
図2に示す点P12)
液体調湿剤の塩化リチウム濃度:35%
第1の冷却部の熱源温度:35℃(外気温と同じ)
第2の冷却部の熱源温度:25℃(室内温度)
【0044】
外気は、最初に、第1の気液接触器11において除湿される。第1の気液接触器11では、気液接触材11bの温度が外気温と同じ温度になっており、気液接触材11bを濡らす液体調湿剤(第1の液体調湿剤)の温度も外気温と同じ温度になっている。これにより、第1の気液接触器11において気液平衡状態に達すると、外気の相対湿度は、約30%まで低下する(
図2に示す点P11、気温は35℃のまま)。第1の気液接触器11における除湿で生じる水蒸気の吸収熱は、第1の冷却部41の放熱部41cから外気に放出される。第1の気液接触器11における除湿による除湿量Dh1は、10.8g/kgとなり、水蒸気の吸収熱H1は、27.8kJ/kgとなる。
【0045】
第1の気液接触器11において除湿された外気は、第2の気液接触器12において、水蒸気のさらなる除湿と冷却を行う。第2の気液接触器12では、気液接触材12bの温度が外気温よりも低い温度になっており、気液接触材12bを濡らす液体調湿剤(第2の液体調湿剤)の温度も外気温よりも低い温度になっている。これにより、第2の気液接触器12において気液平衡状態に達すると、外気の気温は25℃となり、相対湿度は29%となる。第2の気液接触器12における除湿による除湿量Dh2は、4.9g/kgとなり、第2の冷却部42の熱源42aは、22.8kJ/kgの熱量H2を放出する。
【0046】
図3は、本実施形態の調湿装置1の動作例を説明する第3の図である。
図3は、
図2を用いて説明した調湿装置1による除湿において、外気と、第1の気液接触器11での「1段目除湿」の後の外気と、第2の気液接触器12での「2段目除湿」の後の外気とのそれぞれの状態(温度、相対湿度、絶対湿度、エンタルピー)を示す図である。処理機10に導入される外気は、絶対湿度で21.4g/kgの水蒸気を有しているが、「1段目除湿」によって、絶対湿度は10.6g/kgとなり、「2段目除湿」によって、絶対湿度は5.7g/kgとなっている。したがって、「1段目除湿」によって、調湿装置1によって除湿される水蒸気の量のおよそ69%が除湿されることが明らかとなった。
【0047】
次に、本実施形態の調湿装置1の効果について説明する。ここでは、比較例の調湿装置として、比較例のヒートポンプと、液体調湿剤を用いる比較例の調湿装置と、本実施形態の調湿装置1とのそれぞれについて、除湿に必要な仕事量に着目し、説明する。
【0048】
図4は、比較例のヒートポンプにおける除湿に必要な仕事量を説明する図である。比較例のヒートポンプは、熱媒体の気化熱により発生する冷熱を利用して、外気を除湿する。比較例のヒートポンプにおいて、
図2で説明した動作例と同様に、気温35℃で相対湿度60%の外気(
図4に示す点P10)を、温度25℃で相対湿度30%の給気(
図4に示す点P12)として室内に供給する場合、外気を露点である6.2℃まで冷却する必要がある。このため、空気1kgあたり69kJの冷熱Hh1が必要であり、再加熱において空気1kgあたり19kJの温熱Hh2が必要となる。したがって、比較例のヒートポンプにおける除湿に必要な仕事量は、空気1kgあたり88kJとなる。
【0049】
図5は、比較例の調湿装置9の概略構成図である。比較例の調湿装置9は、外気を除湿する処理機91と、液体調湿剤を再生する再生機92と、処理機91と再生機92とに接続する流路93と、液体調湿剤を冷却する冷却部94aと、液体調湿剤を加熱する加熱部94bと、流路93に設けられる複数の熱交換器95a,95b,95cと、制御部96と、を備える。比較例の調湿装置9は、
図5に示すように、処理機91と再生機92とのそれぞれが、1つの気液接触器91a,92aを有している、いわゆる、単段の調湿装置である。比較例の調湿装置9では、液体調湿剤は、処理機91の気液接触器91aにおいて外気g10を除湿する。液体調湿剤は、外気g10を除湿したあと、流路93によって再生機92に送られ、気液接触器92aにおいて加熱されて内気g20に接触することで、内気g20を加湿し、かつ、自身を濃縮することで再生される。
【0050】
比較例の調湿装置9では、冷却部94aは、ヒートポンプである。すなわち、比較例の調湿装置9では、液体調湿剤とヒートポンプとの組み合わせによって、外気g10を除湿する。
【0051】
図6は、比較例の調湿装置9における除湿に必要な仕事量を説明する図である。比較例の調湿装置9では、外気を除湿する場合、比較例のヒートポンプと異なり、外気を給気の露点まで冷却する必要がない。したがって、気温35℃で相対湿度60%の外気(
図6に示す点P10)を、温度25℃で相対湿度30%の給気(
図6に示す点P12)として室内に供給する場合、空気1kgあたり50.6kJの冷熱HLが必要となる。
【0052】
図7は、本実施形態の調湿装置1における除湿に必要な仕事量を説明する図である。調湿装置1でも、気温35℃で相対湿度60%の外気(
図7に示す点P10)を、温度25℃で相対湿度30%の給気(
図7に示す点P12)として室内に供給する場合、
図7に示すように、見かけ上、エンタルピーの変化量は、符号H1(27.8kJ/kg)と符号H2(22.8kJ/kg)の合計である、符号Ht50.6kJ/kgである。しかしながら、符号H1に相当する部分は、外気P10と同じ温度である第1の液体調湿剤を用いて除湿している部分である。第1の液体調湿剤は、外気P10の水蒸気を吸収するときの吸収熱を放熱部41cによって外気へ放出するため、外気P10と同じ温度で第1の気液接触器11に供給される。すなわち、本実施形態の調湿装置1において、符号H2に相当する部分(22.8kJ/kg)のみが、第2の冷却部42の熱源42aであるヒートポンプの仕事量となる。したがって、本実施形態の調湿装置1は、比較例の調湿装置9に比べ、ヒートポンプによる仕事量を約55%削減することができる。
【0053】
以上説明した、本実施形態の調湿装置1によれば、液体調湿剤と外気とを接触させて外気の除湿をおこなう処理機10は、外気の流れに対して直列に並べられる、第1の気液接触器11と第2の気液接触器12とを備えている。第1の液体調湿剤の温度は、第2の液体調湿剤の温度よりも高いため、第1の気液接触器11において第1の液体調湿剤によって除湿された空気は、さらに、第2の気液接触器12において第2の液体調湿材によって除湿される。このように、処理機10は、温度が異なる液体調湿剤を用いて除湿するため、空気に含まれる水蒸気は、段階的に液体調湿材に吸収される。これにより、水蒸気の吸収熱による温度上昇が抑制され、気液接触器1台当たりの除湿における負荷を分割することができるため、単段での除湿よりも除湿温度を高くすることができる。したがって、液体調湿剤の温調に必要なエネルギを低減することができるため、除湿に必要なエネルギを低減させることができる。
【0054】
また、本実施形態の調湿装置1によれば、第1の冷却部41は、第1の気液接触器11に供給された熱媒体の熱を空気に放出する放熱部41cを有する。第1の気液接触器11では、第1の気液接触器11において除湿される外気温と同じ温度の第1の液体調湿剤によって空気が除湿される。このとき、第1の液体調湿剤が吸収する水蒸気の吸収熱は、熱媒体を介して、放熱部41cから空気に放出することができる。これにより、第1の冷却部41は、第1の液体調湿剤の温度を第1の気液接触器11において除湿される空気の温度と同じにする熱媒体を第1の気液接触器11に供給し続けることができる。すなわち、第1の冷却部41では、ヒートポンプなどによる第1の液体調湿剤の冷却が不要となるため、ヒートポンプを用いる場合に比べ冷却のためのエネルギを少なくすることはできる。したがって、除湿に必要なエネルギをさらに低減させることができる。
【0055】
また、本実施形態の調湿装置1によれば、熱交換器53において、第2の気液接触器12において外気の除湿に使用された第2の液体調湿剤と、再生機20において空気の加湿に使用された液体調湿剤とで熱交換をおこなう。これにより、再生機20において加熱された液体調湿剤の熱を空気の除湿に使用された比較的低温の第2の液体調湿剤の予熱に使用することができるため、再生機20における液体調湿剤の加熱に必要なエネルギを少なくすることができる。したがって、除湿に必要なエネルギをさらに低減させることができる。
【0056】
また、本実施形態の調湿装置1によれば、加熱部43は、太陽熱によって加熱された加熱媒体を再生機20に供給する。調湿装置1は、再生温度を比較的低くすることができるため、再生可能エネルギである太陽熱によって加熱された比較的低温の熱媒体でも、再生機20での液体調湿剤の再生を行うことができる。これにより、再生機20での加熱に必要なエネルギが不要となるため、除湿に必要な化石エネルギを低減させることできる。
【0057】
また、本実施形態の調湿装置1によれば、処理機10から排出される液体調湿剤と再生機20から排出される液体調湿剤との間で熱交換させることで、再生機20から排出される液体調湿剤がもっている熱を有効に利用することができる。これにより、除湿に必要なエネルギをさらに低減させることができる。
【0058】
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態の調湿装置の概略構成を示す模式図である。第2実施形態の調湿装置2は、第1実施形態の調湿装置1(
図1)と比較すると、再生機が複数の気液接触器を有する点が異なる。
【0059】
本実施形態の調湿装置2は、処理機10と、液体調湿剤を再生する再生機70と、処理機10と再生機70とに接続する流路35と、処理機10の液体調湿剤を冷却する第1の冷却部41および第2の冷却部42と、再生機70の液体調湿剤を加熱する加熱部43と予熱部44と、流路35に設けられる複数の熱交換器51,52,54,54,55,56と、制御部60と、を備える。
【0060】
再生機70は、処理機10において外気の除湿に使用された液体調湿剤を加熱し、内気と接触させることで、内気を加湿し、かつ、液体調湿剤の濃縮をおこなう。再生機70は、2つの再生用気液接触器21,22と、を備える。
【0061】
再生用気液接触器22は、中空状の容器22aと、気液接触材22bと、噴射部22cと、を有する。気液接触材22bは、親水性や吸水性に優れた多孔質体、例えば、セルロースである。容器22aには、内気g20が容器22a内に流入可能な開口22dと、内気g21が容器22a内から流出可能な開口とが形成されている。本実施形態では、開口22dは、例えば、室内に設置されている。気液接触材22bは、図示しない送風機の駆動によって開口22dを通る内気g20が内部を通るように容器22a内に配置されている。噴射部22cは、気液接触材22bに液体調湿剤を噴射可能に形成されている。これにより、気液接触材22bの内部を通る内気は、噴射部22cによって噴射され気液接触材22bに保持されている液体調湿剤と接触することで加湿される。噴射部22cが噴射した液体調湿剤は、気液接触材22bにおいて内気と接触し自身の水分を内気に放出したのち、容器22aの底部に溜まる。
【0062】
本実施形態の再生機70では、内気の流れに対して、上流側に再生用気液接触器22が配置され、下流側に再生用気液接触器21に配置されている。これにより、内気は、再生用気液接触器22を通ってから再生用気液接触器21を通り、外部に排出される。
【0063】
流路35は、液体調湿剤が流れる流路であって、複数の流路35a,35b,35c,35d,35e,35f,35g,35h,35i,35j,35k,35lを有する。流路35aは、第1の気液接触器11の容器11aの底部と、熱交換器81とに接続している。流路35aには、液体調湿剤の流量を調整する送液ポンプ31が設けられている。流路35bは、熱交換器81と熱交換器82とに接続している。流路35cは、熱交換器82と第2の気液接触器12の噴射部12cとに接続している。流路35dは、第2の気液接触器12の容器12aの底部と、熱交換器81とに接続している。流路35eは、熱交換器81と熱交換器83とに接続している。
【0064】
流路35fは、熱交換器83と再生用気液接触器22の噴射部22cとに接続している。流路35gは、再生用気液接触器22の容器22aの底部と、熱交換器84とに接続している。流路35gには、液体調湿剤の流量を調整する送液ポンプ34が設けられている。流路35hは、熱交換器84と熱交換器85とに接続している。流路35iは、熱交換器85と再生用気液接触器21の噴射部21cとに接続している。流路35jは、再生用気液接触器21の容器21aの底部と、熱交換器84とに接続している。流路35jには、液体調湿剤の流量を調整する送液ポンプ33が設けられている。流路35kは、熱交換器84と熱交換器86とに接続している。流路35lは、熱交換器86と第1の気液接触器11の噴射部11cとに接続している。
【0065】
予熱部44は、再生用気液接触器22の液体調湿剤の温度を調整する。予熱部44は、熱源44aと、熱交換部44bと、を含む。熱源44aは、中温の熱媒体を生成する。ここで、「中温」とは、第2の冷却部42の設定温度よりも高く、かつ、加熱部43の設定温度よりも低い温度である。本実施形態では、熱源44aは、外気と同じ温度の熱媒体を生成する。ここで、「同じ温度」とは、第1実施形態と同様に、外気温と全く同じ温度だけでなく、外気温に対して+5℃の範囲に含まれる温度を指す。熱交換部44bは、再生用気液接触器22の気液接触材22bに内蔵されている。熱源44aと熱交換部44bとは、熱源44aから供給される熱媒体が流通可能な流路によって接続されている。
【0066】
本実施形態では、再生用気液接触器21の液体調湿剤の温度を調整する加熱部43において、熱源43aは、外気よりも高い温度の熱媒体を熱交換部43bに供給する。これにより、再生用気液接触器21での液体調湿剤の再生は、再生用気液接触器22による再生よりも高い温度で行われる。
【0067】
熱交換器81は、第1の気液接触器11の容器11aの底部から排出される液体調湿剤と、第2の気液接触器12の容器12aの底部から排出される液体調湿剤との熱交換を行う。熱交換器82は、熱交換器81を通過した液体調湿剤と、熱交換部42bに供給される前の熱源42aが生成する低温の熱媒体との熱交換を行う。熱交換器83は、熱交換器81を通過した液体調湿剤と、熱交換部44bに供給される前の熱源44aが生成する中温の熱媒体との熱交換を行う。熱交換器84は、再生用気液接触器21の容器21aの底部から排出される液体調湿剤と、再生用気液接触器22の容器22aの底部から排出される液体調湿剤との熱交換を行う。熱交換器85は、熱交換器84を通過した液体調湿剤と、熱交換部43bに供給される前の熱源43aが生成する高温の熱媒体との熱交換を行う。熱交換器86は、熱交換器84を通過した液体調湿剤と、熱交換部41bに供給される前の熱源41aが生成する低温の熱媒体との熱交換を行う。
【0068】
制御部60は、送液ポンプ31,32,33,34、第1の冷却部41、第2の冷却部42,加熱部43、予熱部44、および、図示しない送風機に電気的に接続している。制御部60は、事前に入力されているプログラムに応じて、第1の冷却部41と第2の冷却部42と加熱部43と予熱部44とによる液体調湿剤の温度を制御するとともに、送液ポンプ31,32,33,34による液体調湿剤の流量を制御する。また、制御部60は、送風機を制御し、処理機10に導入する外気g10の流量や、再生機70に導入する内気g20の流量を調整する。
【0069】
第2実施形態の調質装置2は、再生機70が複数の気液接触器21,22を有している。複数の気液接触器21,22のうち、再生用気液接触器22は、外気を利用して生成される中温程度の熱媒体を利用して液体調湿剤を再生する。
【0070】
図9は、第2実施形態の調湿装置2の動作例を説明する図である。
図9には、調湿装置2の再生機70における液体調湿剤の再生の過程を塩化リチウム水溶液の空気線図上の気液平衡を表すxy線図上に示している。
【0071】
再生機70による液体調湿剤の再生では、最初に、内気が再生用気液接触器22に導入される。再生用気液接触器22では、予熱部44の熱源44aが供給する熱媒体によって外気温と同程度の温度となっている熱交換部44bにおいて、処理機10から送られる低温の液体調湿剤と内気(
図9に示す点P13、温度25℃、相対湿度50%)とが接触する。これにより、液体調湿剤に含まれる水分の一部が内気に放出されるとともに、内気の温度が35℃となり、相対湿度が30%となる(
図9に示す点P14、温度35℃ 相対湿度30%)。再生用気液接触器22において水分の一部を内気に放出した液体調湿剤は、再生用気液接触器21に送られる。再生用気液接触器21では、加熱部43の熱源43aが供給する熱媒体によって外気温よりも高い温度となっている熱交換部43bにおいて、再生用気液接触器22から送られる液体調湿剤と、再生用気液接触器22を通過した内気とが接触する。これにより、液体調湿剤に含まれる水分の一部が内気に放出され、処理機10での除湿に利用可能な液体調湿剤となる。再生用気液接触器21において液体調湿剤を再生した内気(
図9に示す点P15、温度50℃ 相対湿度32%)は、調湿装置2の外部に放出される。
【0072】
調湿装置2での液体調湿剤の再生では、予熱部44の熱源44aは、12.2kJ/kgの熱量Rg1が必要となり、加熱部43の熱源43aは、53.2kJ/kgの熱量Rg2が必要となる。予熱部44は、外気の温度を利用するため、調湿装置2全体での液体調湿剤の再生では、ヒートポンプのみで再生する場合に比べ、18.7%程度のエネルギを低減することができる。
【0073】
以上説明した、本実施形態の調湿装置2によれば、液体調湿剤と外気とを接触させて外気の除湿をおこなう処理機10は、外気の流れに対して直列に並べられる、第1の気液接触器11と第2の気液接触器12とを備えている。これにより、水蒸気の吸収熱による温度上昇が抑制され、気液接触器1台当たりの除湿における負荷を分割することができるため、液体調湿剤の温調に必要なエネルギを低減することができる。したがって、除湿に必要なエネルギを低減させることができる。
【0074】
また、本実施形態の調湿装置2によれば、再生機70による液体調湿剤の再生は、ヒートポンプを熱源とする再生用気液接触器21における再生の前に、外気を熱源とする再生用気液接触器22における再生を行う。これにより、液体調湿剤の再生に必要なエネルギを低減することができる。
【0075】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0076】
[変形例1]
上述の実施形態では、調湿装置は、外気を除湿する処理機と、液体調湿剤を再生する再生機と、処理機と再生機とに接続する流路と、処理機の液体調湿剤を冷却する冷却部と、再生機の液体調湿剤を加熱する加熱部と、流路に設けられる複数の熱交換器と、制御部と、を備えるとした。しかしながら、調湿装置の構成は、これに限定されない。冷却部や熱交換器はなくてもよい。また、冷却部と加熱部とがない場合でも、再生機の液体調湿剤の温度を処理機の液体調湿剤より高くすることができればよい。
【0077】
[変形例2]
上述の実施形態では、処理機は、2つの気液接触器を備えるとした。処理機が備える気液接触器の数は、これに限定されない。処理機が2つ以上の気液接触器を備えていればよく、3つ以上気液接触器を備えてもよい。また、再生機も、2つ以上気液接触器を備えてもよい。処理機が備える気液接触器の数と、再生機が備える気液接触器の数とが異なっていてもよい。
【0078】
[変形例3]
上述の実施形態では、熱源41aは、第1の気液接触器11において空気と接触する液体調湿剤の温度を、調湿装置1が設置されている環境における温度、すなわち、外気温(外部の空気の温度)と同じ温度とする熱媒体を生成するとした。しかしながら、熱源41aが生成する熱媒体は、液体調湿剤の温度を外気温と同じ温度とすることに限定しない。熱源41aが生成する熱媒体の温度は、外気温を含む所定の範囲内の温度、例えば、外気温を含む±5℃の温度の範囲内としてもよい。「所定の範囲」を±5℃とすることにより、第1の気液接触器11での処理の熱源を外気とすることができるため、除湿される空気の冷却を第1の気液接触器11と第2の気液接触器12とに分割している処理機10において、空気の冷却に必要なエネルギを低減することができる。したがって、除湿に必要なエネルギをさらに低減させることができる。なお、「同じ温度」は、+5℃の範囲に限定されず、「所定の範囲」は、±5℃の範囲に限定されない。
【0079】
[変形例4]
上述の実施形態では、調湿装置は、2つの液体調湿剤の間、または、液体調湿剤と熱媒体との間において、熱のやり取りをおこなう熱交換器を備えるとした。熱交換器はなくてもよいが、処理機10を流れる比較的低温の液体調湿剤と、再生機20,70を流れる比較的高温の液体調湿剤との間で熱をやり取りすることで、調湿装置全体でのエネルギ使用量を低減することができる。
【0080】
[変形例5]
上述の実施形態では、再生機において、液体調湿剤の温度を高くするために、温熱源が生成する加熱媒体と熱交換器とを用いて液体調湿材を加熱するとした。しかしながら、液体調湿剤の温度を高くする方法は、これに限定されない。例えば、液体調湿剤に太陽光を照射し、液体調湿剤を太陽熱によって直接加熱してもよく、加熱媒体を用いずに、液体調湿剤をヒータなどにより直接加熱してもよい。また、加熱媒体の供給源として、熱交換器のみを備えていてもよい。さらに、上述の実施形態のように、2つの気液接触器を有する場合、温熱媒体の流れに対して2つの気液接触器を並列に配置してもよい。処理機においても、同様に、液体調湿剤の温度を低くするために、冷熱媒体を用いずに、液体調湿剤を冷却塔などによって直接冷却してもよいし、冷熱媒体の供給源として、熱交換器のみを備えていてもよいし、上述の実施形態のように、2つの気液接触器を有する場合、冷熱媒体の流れに対して2つの気液接触器を並列に配置してもよい。
【0081】
[変形例6]
上述の実施形態では、調湿装置は、室内の空気である内気を用いて除湿に用いた液体調湿剤を再生するとした。液体調湿剤を再生する空気は、内気に限られず、外気によって再生を行ってもよい。
【0082】
[変形例7]
上述の実施形態では、液体調湿剤は、溶質として塩化リチウム(LiCl)を含む水溶液であるとした。しかしながら、液体調湿剤の種類は、これに限定しない。イオン液体など、一般的に吸湿作用を有する液体であればよい。
【0083】
[変形例8]
上述の実施形態では、処理機は、液体調湿剤と外気とを接触させることで、外気を除湿するとした。処理機は、液体調湿剤と内気とを接触させることで内気を除湿する内気循環用の除湿器として擁してもよい。
【0084】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0085】
<適用例1>
調湿装置であって、
空気中の水蒸気を吸湿する液体調湿剤と、
前記液体調湿剤と空気とを接触させて空気の除湿をおこなう処理機と、
前記処理機において除湿に使用された前記液体調湿剤を、前記処理機において除湿に使用されているときよりも高温の状態とし、空気と接触させることで、空気を加湿し、かつ、前記液体調湿剤の濃縮をおこなう再生機と、を備え、
前記処理機は、
第1の前記液体調湿剤と空気とを接触させる第1の気液接触器と、
前記第1の気液接触器において除湿された空気と、第1の前記液体調湿剤よりも温度が低い第2の前記液体調湿剤と、を接触させる第2の気液接触器と、を含んでいる、
調湿装置。
<適用例2>
適用例1に記載の調湿装置は、さらに、
第1の前記液体調湿剤の温度を、前記第1の気液接触器において除湿される空気の温度を含む所定の範囲内の温度にする熱媒体を、前記第1の気液接触器に供給する熱媒体供給部を備える、
調湿装置。
<適用例3>
適用例2に記載の調湿装置であって、
前記熱媒体供給部は、
前記熱媒体の熱を空気に放出する放熱部を有し、
第1の前記液体調湿剤の温度を前記第1の気液接触器において除湿される空気の温度と同じ温度にする熱媒体を前記第1の気液接触器に供給する、
調湿装置。
<適用例4>
適用例1から適用例3のいずれか一例に記載の調湿装置は、さらに、
前記第2の気液接触器において空気の除湿に使用された第2の液体調湿剤と、前記再生機において空気の加湿に使用された液体調湿剤とで熱交換をおこなう熱交換器を備える、
調湿装置。
<適用例5>
適用例1から適用例4のいずれか一例記載の調湿装置は、さらに、
前記処理機において空気の除湿に使用された前記液体調湿剤を加熱する加熱部を備え、
前記加熱部は、太陽熱によって加熱された熱媒体を前記再生機に供給する、
調湿装置。
<適用例6>
適用例1から適用例5のいずれか一例記載の調湿装置は、さらに、
前記処理機において空気の除湿に使用された液体調湿剤と、前記再生機において空気の加湿に使用された液体調湿剤とで熱交換をおこなう熱交換器を備える、
調湿装置。
【符号の説明】
【0086】
1…調湿装置
10…処理機
11…第1の気液接触器
12…第2の気液接触器
20,70…再生機
41a…熱源
41c…放熱部
43…加熱部
51,52,53,54,55,81,82,83,84,85,86…熱交換器