(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177971
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】調湿装置
(51)【国際特許分類】
F24F 3/14 20060101AFI20241217BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
F24F3/14
B01D53/26 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096419
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100227732
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 祥二
(72)【発明者】
【氏名】秋田 智行
【テーマコード(参考)】
3L053
4D052
【Fターム(参考)】
3L053BC03
3L053BC05
3L053BC10
4D052AA08
4D052CF00
4D052DA03
4D052DA08
4D052DA09
4D052DB01
4D052FA01
4D052FA05
4D052GA01
4D052GB00
4D052GB11
4D052HA14
4D052HB01
(57)【要約】
【課題】 調湿装置において、除湿に必要なエネルギを低減させる技術を提供する。
【解決手段】 調湿装置は、空気中の水蒸気を吸湿する液体調湿剤と、液体調湿剤と空気とを接触させて空気の除湿をおこなう処理機と、処理機において除湿に使用された液体調湿剤を、処理機において除湿に使用されているときよりも高温の状態とし、空気と接触させることで、空気を加湿し、かつ、液体調湿剤の濃縮をおこなう再生機と、を備え、処理機は、第1の液体調湿剤と空気とを接触させる第1の気液接触器と、第1の気液接触器において除湿された空気と、第1の液体調湿剤よりも溶質濃度が高い第2の液体調湿剤と、を接触させる第2の気液接触器と、を含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調湿装置であって、
空気中の水蒸気を吸湿する液体調湿剤と、
前記液体調湿剤と空気とを接触させて空気の除湿をおこなう処理機と、
前記処理機において除湿に使用された前記液体調湿剤を、前記処理機において除湿に使用されているときよりも高温の状態とし、空気と接触させることで、空気を加湿し、かつ、前記液体調湿剤の濃縮をおこなう再生機と、を備え、
前記処理機は、
第1の前記液体調湿剤と空気とを接触させる第1の気液接触器と、
前記第1の気液接触器において除湿された空気と、第1の前記液体調湿剤よりも溶質濃度が高い第2の前記液体調湿剤と、を接触させる第2の気液接触器と、を含んでいる、
調湿装置。
【請求項2】
請求項1に記載の調湿装置であって、
前記再生機は、
前記第1の気液接触器において除湿された空気の除湿に使用された第2の前記液体調湿剤を、前記第2の気液接触器において除湿に使用されているときよりも高温の状態とし、空気を接触させることで、空気を加湿し、かつ、第2の前記液体調湿剤の濃縮をおこなう第3の気液接触器と、
前記第1の気液接触器において空気の除湿に使用された第1の前記液体調湿剤を、前記第1の気液接触器において除湿に使用されているときよりも高温の状態とし、前記第3の気液接触器において加湿された空気を接触させることで、前記第3の気液接触器において加湿された空気をさらに加湿し、かつ、第1の前記液体調湿剤の濃縮をおこなう第4の気液接触器と、を有する、
調湿装置。
【請求項3】
請求項1に記載の調湿装置であって、
前記再生機は、
前記第1の気液接触器において除湿された空気の除湿に使用された第2の前記液体調湿剤を、前記第2の気液接触器において除湿に使用されているときよりも高温の状態とし、空気と接触させることで、空気を加湿し、かつ、第2の前記液体調湿剤の濃縮をおこなう第3の気液接触器と、
前記第1の気液接触器において空気の除湿に使用された第1の前記液体調湿剤を、前記第1の気液接触器において除湿に使用されているときよりも高温の状態とし、空気と接触させることで、空気を加湿し、かつ、第1の前記液体調湿剤の濃縮をおこなう第4の気液接触器と、を有する、
調湿装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の調湿装置は、さらに、
前記液体調湿剤を加熱するための加熱媒体を前記再生機に供給する温熱供給部を有する加熱部を備え、
前記加熱媒体は、前記第3の気液接触器において第2の前記液体調湿剤を加熱したのち、前記第4の気液接触器において第1の前記液体調湿剤を加熱するように、前記再生機に供給される、
調湿装置。
【請求項5】
請求項4に記載の調湿装置であって、
前記温熱供給部は、太陽熱によって加熱された前記加熱媒体を前記再生機に供給する、
調湿装置。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の調湿装置は、さらに、
液体調湿剤を加熱する加熱部を備え、
前記加熱部は、前記再生機において空気と接触する液体調湿剤に太陽光を照射することで、前記液体調湿剤を前記処理機において除湿に使用されているときよりも高温の状態とする、
調湿装置。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の調湿装置は、さらに、
前記液体調湿剤を冷却するための冷熱媒体を前記処理機に供給する冷熱供給部を備え、
前記冷熱媒体は、前記第2の気液接触器において第2の前記液体調湿剤を冷却したのち、前記第1の気液接触器において第1の前記液体調湿剤を冷却するように、前記処理機に供給される、
調湿装置。
【請求項8】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の調湿装置は、さらに、
前記処理機において空気の除湿に使用された液体調湿剤と、前記再生機において空気を加湿に使用された液体調湿剤との間で熱のやり取りを行うための熱交換器を備える、
調湿装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調湿装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体調湿剤を用いて調湿を行う調湿装置が知られている。例えば、特許文献1,2に記載の調湿装置では、液体調湿剤と空気とを接触させることで、液体調湿剤が空気に含まれる水蒸気を吸湿し、空気は除湿される。空気の除湿に使用された液体調湿剤は、加熱され、空気と接触することで、再生される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-36093号公報
【特許文献2】特開2020-6299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2のような先行技術によっても、調湿装置において、除湿に必要なエネルギを低減させる技術については、なお、改善の余地があった。例えば、特許文献1,2に記載の調湿装置では、除湿に使用された液体調湿剤の再生温度を下げるために、液体調湿剤の濃度を薄くすると、除湿温度が下がるため、除湿時に液体調湿剤を冷却するためのエネルギが大きくなる。また、除湿可能な温度を上げるために、液体調湿剤の濃度を濃くすると、除湿に使用された液体調湿剤の再生温度も上がるため、再生時に液体調湿剤を加熱するためのエネルギが大きくなる。したがって、液体調湿剤を用いて調湿を行う調湿装置において、除湿に必要なエネルギを低減させる技術が求められていた。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、調湿装置において、除湿に必要なエネルギを低減させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、調湿装置が提供される。この調湿装置では、空気中の水蒸気を吸湿する液体調湿剤と、前記液体調湿剤と空気とを接触させて空気の除湿をおこなう処理機と、前記処理機において除湿に使用された前記液体調湿剤を、前記処理機において除湿に使用されているときの液体調湿剤の温度よりも高温の状態とし、空気と接触させることで、空気を加湿し、かつ、前記液体調湿剤の濃縮をおこなう再生機と、を備え、前記処理機は、第1の前記液体調湿剤と空気とを接触させる第1の気液接触器と、前記第1の気液接触器において除湿された空気と、第1の前記液体調湿剤よりも溶質濃度が高い第2の前記液体調湿剤と、を接触させる第2の気液接触器と、を含んでいる。
【0008】
この構成によれば、空気の除湿をおこなう処理機は、空気の流れに対して直列に並べられる、第1の気液接触器と第2の気液接触器とを備えている。これにより、処理機では、濃度が異なる液体調湿剤が、空気に含まれる水蒸気を段階的に吸収することから、除湿における気液接触器の負荷を分割することができるため、単段での除湿よりも除湿温度を高くすることができる。したがって、処理機において空気を除湿するときの除湿温度と、再生機において液体調湿剤の濃縮をおこなうことで再生するときの再生温度との温度差を小さくすることができるため、除湿に必要なエネルギを低減させることができる。
【0009】
(2)上記形態の調湿装置において、前記再生機は、前記第1の気液接触器において除湿された空気の除湿に使用された第2の前記液体調湿剤を、前記第2の気液接触器において除湿に使用されているときの第2の液体調湿剤の温度よりも高温の状態とし、空気を接触させることで、空気を加湿し、かつ、第2の前記液体調湿剤の濃縮をおこなう第3の気液接触器と、前記第1の気液接触器において空気の除湿に使用された第1の前記液体調湿剤を、前記第1の気液接触器において除湿に使用されているときの第1の液体調湿剤の温度よりも高温の状態とし、前記第3の気液接触器において加湿された空気を接触させることで、前記第3の気液接触器において加湿された空気をさらに加湿し、かつ、第1の前記液体調湿剤の濃縮をおこなう第4の気液接触器と、を有してもよい。この構成によれば、液体調湿剤を濃縮する再生機は、空気の流れに対して直列に並べられる、第3の気液接触器と第4の気液接触器とを備えている。処理機において除湿された空気に含まれていた水蒸気は、第1の液体調湿剤と第2の液体調湿剤とのそれぞれに吸収されているため、液体調湿剤の再生における気液接触器の負荷を分割することができる。これにより、再生温度を比較的低くすることができるため、除湿温度と再生温度との温度差がさらに小さくなり、除湿に必要なエネルギを低減させることができる。
【0010】
(3)上記形態の調湿装置において、前記再生機は、前記第1の気液接触器において除湿された空気をさらに除湿したあとの第2の前記液体調湿剤を、前記第2の気液接触器において除湿に使用されているときの第2の液体調湿剤の温度よりも高温の状態とし、空気と接触させることで、空気を加湿し、かつ、第2の前記液体調湿剤の濃縮をおこなう第3の気液接触器と、前記第1の気液接触器において空気を除湿したあとの第1の前記液体調湿剤を、前記第1の気液接触器において除湿に使用されているときの第1の液体調湿剤の温度よりも高温の状態とし、空気と接触させることで、空気を加湿し、かつ、第1の前記液体調湿剤の濃縮をおこなう第4の気液接触器と、を有してもよい。この構成によれば、液体調湿剤を濃縮する再生機は、第3の気液接触器と第4の気液接触器とを備えているため、液体調湿剤の再生における気液接触器の負荷を分割することができる。また、第3の気液接触器と第4の気液接触器とは、空気の流れに対して並列に配置されるため、第3の気液接触器と第4の気液接触器とのそれぞれは、除湿されていない空気を加湿することで液体調湿剤の濃縮をおこなうことができる。これにより、第3の気液接触器と第4の気液接触器とのいずれにおいても、液体調湿剤に含まれる水分を空気に放出しやすくなるため、再生温度をさらに低くすることができる。したがって、除湿温度と再生温度との温度差をさらに小さくすることができるため、除湿に必要なエネルギを低減させることができる。
【0011】
(4)上記形態の調湿装置は、さらに、前記液体調湿剤を加熱するための加熱媒体を前記再生機に供給する温熱供給部を有する加熱部を備え、前記加熱媒体は、前記第3の気液接触器において第2の前記液体調湿剤を加熱したのち、前記第4の気液接触器において第1の前記液体調湿剤を加熱するように、前記再生機に供給されてもよい。この構成によれば、加熱媒体は、第3の気液接触器において第2の液体調湿剤を加熱したのち、第4の気液接触器において第1の液体調湿剤を加熱する。これにより、比較的溶質濃度が高い第2の液体調湿剤は、第1の液体調湿剤よりも温度が高くなるように加熱することができる。したがって、第2の液体調湿剤の除湿能力を確実に回復させることができる。
【0012】
(5)上記形態の調湿装置において、前記温熱供給部は、太陽熱によって加熱された前記加熱媒体を前記再生機に供給してもよい。この構成によれば、温熱供給部は、再生可能エネルギである太陽熱によって加熱された加熱媒体を前記再生機に供給する。これにより、除湿に必要な化石エネルギを低減させることできる。
【0013】
(6)上記形態の調湿装置は、液体調湿剤を加熱する加熱部を備え、前記加熱部は、前記再生機において空気と接触する液体調湿剤に太陽光を照射することで、前記液体調湿剤を前記処理機において除湿に使用されているときよりも高温の状態としてもよい。この構成によれば、再生可能エネルギである太陽熱によって加熱される程度の温度でも、再生機において、液体調湿剤を濃縮することができる。
【0014】
(7)上記形態の調湿装置は、さらに、前記液体調湿剤を冷却するための冷熱媒体を前記処理機に供給する冷熱供給部を備え、前記冷熱媒体は、前記第2の気液接触器において第2の前記液体調湿剤を冷却したのち、前記第1の気液接触器において第1の前記液体調湿剤を冷却するように、前記処理機に供給してもよい。この構成によれば、冷熱媒体は、第2の気液接触器において第2の液体調湿剤を冷却したのち、第1の気液接触器において第1の液体調湿剤を冷却する。これにより、第2の液体調湿剤の温度を狙いの温度とすることで、処理機から排出される除湿された外気を狙いの湿度とすることができる。
【0015】
(8)上記形態の調湿装置において、前記処理機において空気を除湿したあとの液体調湿剤と、前記再生機において空気を加湿で使用された液体調湿剤との間で熱のやり取りを行うための熱交換器を備えてもよい。この構成によれば、処理機から排出される液体調湿剤と再生機から排出される液体調湿剤との間で熱交換させることで、再生機から排出される液体調湿剤がもっている温熱を有効に利用することができる。これにより、除湿に必要なエネルギをさらに低減させることができる。
【0016】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、調湿装置の製造方法、調湿装置を含むシステム、これら装置およびシステムの制御方法、これら装置およびシステムにおいて除湿を実行させるコンピュータプログラム等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態の調湿装置の概略構成を示す模式図である。
【
図2】調湿装置の第1の動作例を説明する第1の図である。
【
図3】調湿装置の第1の動作例を説明する第2の図である。
【
図4】調湿装置の第1の動作例を説明する第3の図である。
【
図5】調湿装置の第2の動作例を説明する第1の図である。
【
図6】調湿装置の第2の動作例を説明する第2の図である。
【
図7】調湿装置の第3の動作例を説明する第1の図である。
【
図8】調湿装置の第3の動作例を説明する第2の図である。
【
図10】比較例の調湿装置の動作例を説明する第1の図である。
【
図11】比較例の調湿装置の動作例を説明する第2の図である。
【
図12】比較例の調湿装置の動作例を説明する第3の図である。
【
図13】第2実施形態の調湿装置の概略構成を示す模式図である。
【
図14】第1実施形態の調湿装置の変形例の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の調湿装置1の概略構成を示す模式図である。本実施形態の調湿装置1は、液体調湿剤を用いて気体の調湿を行う。本実施形態では、調湿装置1は、室外の空気である外気を除湿するとともに、室内の空気である内気を用いて除湿に用いた液体調湿剤を再生する。調湿装置1は、外気を除湿する処理機10と、液体調湿剤を再生する再生機20と、処理機10と再生機20とに接続する第1の流路31および第2の流路32と、処理機10の液体調湿剤を冷却する冷却部40と、再生機20の液体調湿剤を加熱する加熱部50と、第1の流路31または第2の流路32に設けられる複数の熱交換器61,62と、制御部70と、を備える。
【0019】
ここで、調湿装置1に用いられる液体調湿剤について説明する。本実施形態の調湿装置1において外気の除湿に用いられる液体調湿剤は、溶質として塩化リチウム(LiCl)を含む水溶液である。本実施形態の液体調湿剤は、気液平衡において、同じ温度で塩化リチウム濃度が高くなるほど、気液平衡状態での空気の絶対湿度が低くなる。すなわち、同じ温度で塩化リチウム濃度が高くなるほど、その液体調湿剤による水蒸気を吸湿する能力、すなわち、除湿能力は大きくなる。
【0020】
処理機10は、液体調湿剤と外気とを接触させることで、外気を除湿する。処理機10は、第1の気液接触器11と、第2の気液接触器12と、を備える。本実施形態では、
図1に示すように、第1の気液接触器11と第2の気液接触器12とは、外気の流れに対して直列に接続されており、ほぼ同じ温度において、外気を除湿する。ここで、便宜的に、第1の気液接触器11に導入される前の外気を外気g10とし、第1の気液接触器11において液体調湿剤と接触した外気g11とし、第2の気液接触器12において液体調湿剤と接触した外気を外気g12とする。
【0021】
第1の気液接触器11は、中空状の容器11aと、気液接触材11bと、噴射部11cと、を有する。気液接触材11bは、親水性や吸水性に優れた多孔質体、例えば、セルロースである。容器11aには、外気g10が容器11a内に流入可能な開口11dと、外気g11が容器11a内から流出可能な開口とが形成されている。本実施形態では、開口11dは、例えば、室外に設置されている。気液接触材11bは、図示しない送風機の駆動によって開口11dを通る外気g10が内部を通るように容器11a内に配置されている。噴射部11cは、気液接触材11bに液体調湿剤を噴射可能に形成されている。これにより、気液接触材11bの内部を通る外気は、噴射部11cによって噴射され気液接触材11bに保持されている液体調湿剤と接触することで除湿される。噴射部11cが噴射した液体調湿剤は、気液接触材11bにおいて外気と接触し外気に含まれる水蒸気を吸湿したのち、容器11aの底部に溜まる。
【0022】
第2の気液接触器12は、中空状の容器12aと、気液接触材12bと、噴射部12cと、を有する。気液接触材12bは、親水性や吸水性に優れた多孔質体、例えば、セルロースである。容器12aには、外気g11が容器12a内に流入可能な開口12dと、外気g13が容器12a内から流出可能な開口とが形成されている。気液接触材12bは、外気が内部を通るように容器12a内に配置されている。噴射部12cは、気液接触材12bに液体調湿剤を噴射可能に形成されている。これにより、気液接触材12bの内部を通る外気は、噴射部12cによって噴射され気液接触材12bに保持されている液体調湿剤と接触することで除湿される。噴射部12cが噴射した液体調湿剤は、気液接触材12bにおいて外気と接触し外気に含まれる水蒸気を吸湿したのち、容器12aの底部に溜まる。
【0023】
本実施形態では、処理機10において、第1の気液接触器11の噴射部11cが噴射する液体調湿剤と、第2の気液接触器12の噴射部12cが噴射する液体調湿剤とは、塩化リチウム濃度が異なっている。噴射部12cが噴射する液体調湿剤の塩化リチウム濃度(第2濃度)は、噴射部11cが噴射する液体調湿剤の塩化リチウム濃度(第1濃度)よりも大きい。以下、噴射部11cが噴射する液体調湿剤を「第1の液体調湿剤」とし、噴射部12cが噴射する液体調湿剤を「第2の液体調湿剤」という。
【0024】
再生機20は、処理機10において外気の除湿に使用された液体調湿剤を加熱し、内気と接触させることで、内気を加湿し、かつ、液体調湿剤の濃縮をおこなう。再生機20は、第3の気液接触器23と、第4の気液接触器24と、を備える。本実施形態では、第3の気液接触器23と第4の気液接触器24とは、内気の流れに対して直列に接続されており、ほぼ同じ温度において、内気を加湿すると同時に、液体調湿剤の濃縮をおこなう。ここで、便宜的に、第3の気液接触器23に導入される前の内気を内気g20とし、第3の気液接触器23において液体調湿剤と接触した内気を内気g21とし、第4の気液接触器24において液体調湿剤と接触した内気を内気g22とする。
【0025】
第3の気液接触器23は、中空状の容器23aと、気液接触材23bと、噴射部23cと、を有する。気液接触材23bは、親水性や吸水性に優れた多孔質体、例えば、セルロースである。容器23aには、内気g20が容器23a内に流入可能な開口23dと、内気g21が容器23a内から流出可能な開口とが形成されている。本実施形態では、開口23dは、例えば、室内に設置されている。気液接触材23bは、図示しない送風機の駆動によって開口23dを通る内気g20が内部を通るように容器23a内に配置されている。噴射部23cは、気液接触材23bに液体調湿剤を噴射可能に形成されている。これにより、気液接触材23bの内部を通る内気は、噴射部23cによって噴射され気液接触材23bに保持されている液体調湿剤と接触することで加湿される。噴射部23cが噴射した液体調湿剤は、気液接触材23bにおいて内気と接触し自身の水分を内気に放出したのち、容器23aの底部に溜まる。
【0026】
第4の気液接触器24は、中空状の容器24aと、気液接触材24bと、噴射部24cと、を有する。気液接触材24bは、親水性や吸水性に優れた多孔質体、例えば、セルロースである。容器24aには、内気g21が容器24a内に流入可能な開口24dと、内気g22が容器24a内から流出可能な開口とが形成されている。気液接触材24bは、内気が内部を通るように容器24a内に配置されている。噴射部24cは、気液接触材24bに液体調湿剤を噴射可能に形成されている。これにより、気液接触材24bの内部を通る内気は、噴射部24cによって噴射され気液接触材24bに保持されている液体調湿剤と接触することで加湿される。噴射部24cが噴射した液体調湿剤は、気液接触材24bにおいて内気と接触し自身の水分を内気に放出したのち、容器24aの底部に溜まる。
【0027】
本実施形態では、第3の気液接触器23の噴射部23cが噴射する液体調湿剤は、処理機10の第2の気液接触器12において除湿に用いられた液体調湿剤である。第4の気液接触器24の噴射部24cが噴射する液体調湿剤は、処理機10の第1の気液接触器11において除湿に用いられた液体調湿剤である。本実施形態の調湿装置1が備える第1の流路31は、第1の気液接触器11と第4の気液接触器24とを接続し、第2の流路32は、第2の気液接触器12と第3の気液接触器23とを接続する。
【0028】
第1の流路31は、第1の液体調湿剤が流れる流路であって、複数の流路31a,31b,31c,31d,31e,31fを有する。流路31aは、第1の気液接触器11の容器11aの底部と、熱交換器61とに接続している。流路31aには、第1の液体調湿剤の流量を調整する送液ポンプ33が設けられている。流路31bは、熱交換器61と熱交換器55とに接続している。流路31cは、熱交換器55と第4の気液接触器24の噴射部24cとに接続している。流路31dは、第4の気液接触器24の容器24aの底部と、熱交換器61とに接続している。流路31dには、第1の液体調湿剤の流量を調整する送液ポンプ34が設けられている。流路31eは、熱交換器61と熱交換器45とに接続している。流路31fは、熱交換器45と第1の気液接触器11の噴射部11cとに接続している。
【0029】
第2の流路32は、第2の液体調湿剤が流れる流路であって、複数の流路32a,32b,32c,32d,32e,32fを有する。流路32aは、第2の気液接触器12の容器12aの底部と、熱交換器62とに接続している。流路32aには、第2の液体調湿剤の流量を調整する送液ポンプ35が設けられている。流路32bは、熱交換器62と熱交換器52とに接続している。流路32cは、熱交換器52と第3の気液接触器23の噴射部23cとに接続している。流路32dは、第3の気液接触器23の容器23aの底部と、熱交換器62とに接続している。流路32dには、第2の液体調湿剤の流量を調整する送液ポンプ36が設けられている。流路32eは、熱交換器62と熱交換器42とに接続している。流路32fは、熱交換器42と第2の気液接触器12の噴射部12cとに接続している。
【0030】
冷却部40は、冷熱源41と、2つの熱交換器42,45と、2つの熱交換部43,44と、を含む。冷熱源41と、2つの熱交換器42,45と、2つの熱交換部43,44とは、冷熱媒体が流通可能な流路によって接続されている。冷熱源41は、例えば、ヒートポンプや冷却塔であって、冷熱媒体を生成する。熱交換器42は、第2の気液接触器12の噴射部12cから噴射される前の第2の液体調湿剤と冷熱媒体との熱交換を行う。熱交換器45は、第1の気液接触器11の噴射部11cから噴射される前の第1の液体調湿剤と冷熱媒体との熱交換を行う。これらの熱交換によって、液体調湿剤の冷却に必要なエネルギを低減することができる。熱交換部43は、第2の気液接触器12の気液接触材12bに内蔵されている。熱交換部44は、第1の気液接触器11の気液接触材11bに内蔵されている。本実施形態では、冷熱源41が生成する冷熱媒体は、熱交換器42、熱交換部43、熱交換部44、熱交換器45の順に流れ、冷熱源41に戻る。
【0031】
加熱部50は、温熱源51と、2つの熱交換器52,55と、2つの熱交換部53,54と、を含む。温熱源51と、2つの熱交換器52,55と、2つの熱交換部53,54とは、加熱媒体が流通可能な流路によって接続されている。温熱源51は、例えば、ヒートポンプや太陽熱受光装置であって、加熱媒体を生成する。本実施形態では、温熱源51は、太陽熱を利用して、再生機20に供給する加熱媒体を加熱する。熱交換器52は、第3の気液接触器23の噴射部23cから噴射される前の第2の液体調湿剤と加熱媒体との熱交換を行う。熱交換器55は、第4の気液接触器24の噴射部24cから噴射される前の第1の液体調湿剤と加熱媒体との熱交換を行う。これらの熱交換によって、液体調湿剤の加熱に必要なエネルギを低減することができる。熱交換部53は、第3の気液接触器23の気液接触材23bに内蔵されている。熱交換部54は、第4の気液接触器24の気液接触材24bに内蔵されている。本実施形態では、温熱源51が生成する加熱媒体は、熱交換器52、熱交換部53、熱交換部54、熱交換器55の順に流れ、温熱源51に戻る。温熱源51と、2つの熱交換器52,55とは、特許請求の範囲に記載の「温熱供給部」に相当する。
【0032】
熱交換器61は、第1の気液接触器11から第4の気液接触器24に向かって流れる第1の液体調湿剤と、第4の気液接触器24から第1の気液接触器11に向かって流れる第1の液体調湿剤との熱交換を行う。熱交換器61での熱交換によって、第1の気液接触器11から第4の気液接触器24に向かって流れる第1の液体調湿剤の温度は上昇し、第4の気液接触器24から第1の気液接触器11に向かって流れる第1の液体調湿剤の温度は低下する。これにより、第4の気液接触器24での第1の液体調湿剤の加熱に必要なエネルギを低減し、かつ、第1の気液接触器11での第1の液体調湿剤の冷却に必要なエネルギを低減することができる。
【0033】
熱交換器62は、第2の気液接触器12から第3の気液接触器23に向かって流れる第2の液体調湿剤と、第3の気液接触器23から第2の気液接触器12に向かって流れる第2の液体調湿剤との熱交換を行う。熱交換器62での熱交換によって、第2の気液接触器12から第3の気液接触器23に向かって流れる第2の液体調湿剤の温度は上昇し、第3の気液接触器23から第2の気液接触器12に向かって流れる第2の液体調湿剤の温度は低下する。これにより、第3の気液接触器23での第2の液体調湿剤の加熱に必要なエネルギを低減し、かつ、第2の気液接触器12での第2の液体調湿剤の冷却に必要なエネルギを低減することができる。
【0034】
制御部70は、ROM、RAM、および、CPUを含んで構成されるコンピュータである。制御部70は、送液ポンプ33,34,35,36、冷却部40、加熱部50、および、図示しない送風機に電気的に接続している。制御部70は、事前に入力されているプログラムに応じて、冷却部40と加熱部50とによる液体調湿剤の温度を制御するとともに、送液ポンプ33,34,35,36による液体調湿剤の流量を制御する。また、制御部70は、送風機を制御し、処理機10に導入する外気g10の流量や、再生機20に導入する内気g20の流量を調整する。
【0035】
次に、本実施形態の調湿装置1による除湿方法の詳細を説明する。本実施形態の調湿装置1による除湿方法は、例えば、室内にいる人(操作者)が室内の湿度を下げるときに、調湿装置1を操作することで実行可能である。
【0036】
制御部70に操作者による除湿命令が入力されると、制御部70は、送液ポンプ33,34,35,36、冷却部40、加熱部50、および、送風機のそれぞれを駆動させる。冷却部40は、冷熱源41において冷熱媒体を生成し、第1の気液接触器11と第2の気液接触器12とに供給する。加熱部50は、温熱源51において加熱媒体を生成し、第3の気液接触器23と第4の気液接触器24とに供給する。これにより、気液接触材11b,12bは、例えば、外気よりも低い温度となり、気液接触材23b,24bは、例えば、内気よりも高い温度となる。
【0037】
送液ポンプ33,34は、第1の流路31において、第1の液体調湿剤の流通を開始する。送液ポンプ35,36は、第2の流路32において、第2の液体調湿剤の流通を開始する。これにより、4つの気液接触器11,12,23,24のそれぞれが備える噴射部11c,12c,23c,24cのそれぞれにおいて液体調湿剤の噴射が開始され、気液接触材11b,12b,23b,34bが液体調湿剤によって濡れた状態となる。
【0038】
処理機10では、図示しない送風機の駆動によって外気g10が導入される。導入される外気g10は、第1の気液接触器11の気液接触材11bの内部、第2の気液接触器12の気液接触材12bの内部の順に流れ、それぞれにおいて液体調湿剤と接触する。気液接触材11bの内部では、外気g10は、第1の液体調湿剤と接触することで、外気g10に含まれる水蒸気の一部が第1の液体調湿剤に吸収され、外気g11となる。さらに、気液接触材12bの内部では、外気g11は、第2の液体調湿剤と接触することで、外気g11に含まれる水蒸気の一部が第2の液体調湿剤に吸収される。これにより、外気g11よりもさらに除湿された外気g12となる。外気g12は、給気として室内に供給される。これにより、室内の湿度を低下させることができる。
【0039】
第1の気液接触器11において外気g10と接触した第1の液体調湿剤は、外気g10に含まれる水蒸気の一部を吸湿しているため、塩化リチウム濃度が低下している。外気g10と接触した第1の液体調湿剤は、流路31a,31b,31cを通って、第4の気液接触器24に送られる。第2の気液接触器12において外気g11と接触した第2の液体調湿剤は、外気g11に含まれる水蒸気の一部を吸湿しているため、塩化リチウム濃度が低下している。外気g11と接触した第2の液体調湿剤は、流路32a,32b,32cを通って、第3の気液接触器23に送られる。
【0040】
再生機20では、図示しない送風機の駆動によって内気g20が導入される。導入される内気g20は、第3の気液接触器23の気液接触材23bの内部、第4の気液接触器24の気液接触材24bの内部の順に流れ、それぞれにおいて液体調湿剤と接触する。気液接触材23bの内部では、第2の液体調湿剤と内気g20とが接触することで、第2の液体調湿剤に含まれる水の一部が内気に放出されるため、内気g20は加湿され、内気g21となる。一方、自身の水の一部を放出した第2の液体調湿剤は濃縮され、塩化リチウム濃度が大きくなるため、第2の液体調湿剤の除湿能力が回復し、再生される。さらに、気液接触材24bの内部では、第1の液体調湿剤と内気g21とが接触することで、第1の液体調湿剤に含まれる水の一部が内気に放出されるため、内気g21は加湿され、内気g22となる。一方、自身の水の一部を放出した第1の液体調湿剤は濃縮され、第1の液体調湿剤の塩化リチウム濃度が大きくなるため、第1の液体調湿剤の除湿能力が回復し、再生される。内気g22は、排気として室外に排気される。
【0041】
再生した第1の液体調湿剤は、流路31d,31e,31fを通り、第1の気液接触器11の噴射部11cから噴射される。これにより、気液接触材11bにおける外気g10の除湿を継続して行うことができる。また、再生した第2の液体調湿剤は、流路32d,32e,32fを通り、第2の気液接触器12の噴射部12cから噴射される。これにより、気液接触材12bにおける外気g11の除湿を継続して行うことができる。
【0042】
熱交換器61では、第1の気液接触器11の気液接触材11bに保持されたことで低温となった第1の液体調湿剤と、第4の気液接触器24の気液接触材24bに保持されたことで高温となった第1の液体調湿剤との間で熱交換が行わる。これにより、流路31bを流れる第1の液体調湿剤は、流路31aを流れているときよりも温度が上昇し、流路31eを流れる第1の液体調湿剤は、流路31dを流れているときよりも温度が低下する。したがって、流路31dを流れる第1の液体調湿剤の再生と、流路31eを流れる第1の液体調湿剤による除湿とのそれぞれにおいて、必要とする温度まで変化させるためのエネルギを低減することができる。
【0043】
熱交換器62では、第2の気液接触器12の気液接触材12bに保持されたことで低温となった第2の液体調湿剤と、第3の気液接触器23の気液接触材23bに保持されたことで高温となった第2の液体調湿剤との間で熱交換が行わる。これにより、流路32bを流れる第2の液体調湿剤は、流路32aを流れているときよりも温度が上昇し、流路32eを流れる第2の液体調湿剤は、流路32dを流れているときよりも温度が低下する。したがって、流路32dを流れる第2の液体調湿剤の再生と、流路32eを流れる第2の液体調湿剤による除湿とのそれぞれにおいて、必要とする温度まで変化させるためのエネルギを低減することができる。
【0044】
次に、本実施形態の調湿装置1の複数の動作例について説明する。ここでは、気液平衡を表すxy線図における具体的な数値を用いて、調湿装置1の動作例を説明する。
【0045】
図2は、本実施形態の調湿装置1の第1の動作例を説明する第1の図である。
図3は、本実施形態の調湿装置1の第1の動作例を説明する第2の図である。
図2は、塩化リチウム水溶液の空気線図上の気液平衡を表すxy線図において、処理機10での除湿と再生機20での加湿(再生)とのそれぞれでの溶液温度と絶対湿度との関係を示している。
図3には、気液平衡を表すxy線図において、処理機10における外気からの水の吸収量と、再生機20における液体調湿剤から内気への水の放出量(再生量)とを示している。
図2および
図3のそれぞれには、相対湿度20、30、40、50、60、70、80、100%を、鎖線L20,L30,L40,L50,L60,L70,L80、および、実線L100で示す。
【0046】
図2および
図3に示す調湿装置1の第1の動作例の運転条件は、以下のとおりである。
外気:気温35℃ 相対湿度60%(
図2および
図3に示す点P10)
内気:気温25℃ 相対湿度50%(
図2および
図3に示す点P20)
室内に供給される空気の絶対湿度:5.6g/kg(温度25℃における相対湿度30%相当)
第1の液体調湿剤の塩化リチウム濃度:31%
第2の液体調湿剤の塩化リチウム濃度:38.5%
冷熱源温度:29.5℃(除湿温度)
温熱源温度:45℃(再生温度)
図2および
図3には、xy線図における、塩化リチウム濃度が31%の液体調湿剤の気液平衡線を実線C31で示し、塩化リチウム濃度が38.5%の液体調湿剤の気液平線を実線C38.5で示す。
【0047】
処理機10では、最初に、塩化リチウム濃度が31%の第1の液体調湿剤を用いて外気の除湿を行う。具体的には、外気は、冷却部40により29.5℃まで冷却された第1の液体調湿剤と接触することで除湿され、相対湿度が39.8%となる(
図2に示す点線矢印D11、および、点P11)。このとき、
図3に示すように、第1の液体調湿剤は、外気から、11.2g/kgの水蒸気を吸収する。
【0048】
処理機10では、次に、塩化リチウム濃度が38.5%の第2の液体調湿剤を用いて、第1の液体調湿剤によって除湿された外気の除湿をさらに行う。具体的には、第1の液体調湿剤によって除湿された外気(
図2に示す点P11)は、第1の液体調湿剤による除湿と同様に、冷却部40により29.5℃まで冷却された第2の液体調湿剤と接触することで除湿され、相対湿度が22.0%となる(
図2に示す点線矢印D12、および、点P12)。このとき、
図3に示すように、第2の液体調湿剤は、外気から、4.6g/kgの水蒸気を吸収する。相対湿度22.0%まで除湿された外気は、気温25℃として、室内に給気される(
図2に示す点P13)。
【0049】
再生機20では、最初に、外気の除湿に使用された第2の液体調湿剤の再生を行う。具体的には、外気を除湿したあと加熱部50により45℃まで加熱された第2の液体調湿剤と内気とを接触させることで、外気の除湿に使用された第2の液体調湿剤に含まれる水分の一部が内気に放出され、内気の相対湿度が、23.7%となる(
図2に示す点線矢印D21、および、点P21)。水分の一部を内気に放出した、外気の除湿に使用された第2の液体調湿剤は、濃縮され、除湿能力が回復することで再生される。このとき、
図3に示すように、外気の除湿に使用された第2の液体調湿剤から内気に、4.4g/kgの水蒸気が放出される。
【0050】
再生機20では、次に、外気の除湿に使用された第1の液体調湿剤の再生を行う。具体的には、外気を除湿したあと加熱部50により45℃まで加熱された第1の液体調湿剤と、外気の除湿に使用された第2の液体調湿剤によって加湿された内気(
図2に示す点P21)とを接触させることで、外気の除湿に使用された第1の液体調湿剤に含まれる水分の一部が内気に放出され、内気の相対湿度が、41.4%となる(
図2に示す点線矢印D22、および、点P22)。水分の一部を内気に放出した、外気の除湿に使用された第1の液体調湿剤は、濃縮され、除湿能力が回復することで再生される。このとき、
図3に示すように、外気の除湿に使用された第2の液体調湿剤から内気に、11.1g/kgの水蒸気が放出される。
【0051】
図4は、本実施形態の調湿装置1の第1の動作例を説明する第3の図である。
図4は、
図2および
図3で説明した本実施形態の調湿装置1による第1の動作例における水蒸気の吸収と放出の収支を示した図である。第1の動作例での運転条件において、第1の液体調湿剤に対する、第1の気液接触器11での「1段目除湿」と第4の気液接触器24での「2段目再生」との系統を見ると、「1段目除湿」で11.2g/kgの吸収を行い、「2段目再生」で11.1g/kgの放出を行っている。第2の液体調湿剤に対する、第2の気液接触器12での「2段目除湿」と第3の気液接触器23での「1段目再生」との系統を見てみると、「2段目除湿」で4.6kg/kgの吸収を行い、「1段目再生」で4.4g/kgの放出を行っている。すなわち、調湿装置1による第1の動作例における水蒸気の吸収と放出の収支は、ほぼ釣り合っていることがわかる。
【0052】
次に、本実施形態の調湿装置1の第2の動作例として、除湿温度が比較的高い運転条件での動作例について説明する。第2の動作例としては、例えば、外気に放熱できるよう、外気温度と除湿温度とが同じになるように運転する。これにより、処理機10における液体調湿剤の冷却がほぼ不要となるため、除湿に必要なエネルギを低減させることができる。
【0053】
図5は、本実施形態の調湿装置の第2の動作例を説明する第1の図である。
図5には、上述の
図2および
図3と同じ、塩化リチウム水溶液の空気線図上の気液平衡を表すxy線図を示している。調湿装置1において、外気温度と除湿温度とを同じにし、除湿後の絶対湿度を気温20℃における相対湿度29%と同等にするためには、液体調湿剤の塩化リチウム濃度を42%程度にする必要がある。そこで、
図5に示すように、第2の動作例では、第2の液体調湿剤の塩化リチウム濃度を42%(
図5の線C42)とし、第1の液体調湿剤の塩化リチウム濃度を35.2%(
図5の線C35.2)として、水蒸気の吸収と放出の収支が釣り合う再生温度を算出した。
【0054】
図5に示すxy線図では、外気P10と、1段目除湿時の外気P11と、2段目除湿時の外気P12とを同じ温度(気温35℃)としている。例えば、処理機と再生機とのそれぞれに、気液接触器が一つずつしかない調湿装置では、液体調湿剤の塩化リチウム濃度が42%の場合、再生温度が60℃以上必要である。しかしながら、本実施形態の調湿装置1では、第1の液体調湿剤と第2の液体調湿剤の再生温度を
図5に示す50.5℃とすることで、第1の液体調湿剤と第2の液体調湿剤の再生が可能となる。したがって、再生温度を高くすることなく、除湿温度を高くすることができる。
【0055】
図6は、本実施形態の調湿装置の第2の動作例を説明する第2の図である。
図6は、
図5で説明した、第2の動作例における水蒸気の吸収と放出の収支を示した図である。
図6に示すように、第1の液体調湿剤に対する、第1の気液接触器11での「1段目除湿」と第4の気液接触器24での「2段目再生」との系統を見ると、11.0g/kgの吸収を行い、10.9g/kgの放出を行っている。第2の液体調湿剤に対する、第2の気液接触器12での「2段目除湿」と第3の気液接触器23での「1段目再生」との系統を見ると、4.7g/kgの吸収を行い、4.6g/kgの放出を行っている。すなわち、調湿装置1による第2の動作例における水蒸気の吸収と放出の収支は、ほぼ釣り合っていることがわかる。
【0056】
次に、本実施形態の調湿装置1の第3の動作例として、再生温度が比較的低い運転条件での動作例について説明する。第3の動作例としては、例えば、室内温度と除湿温度とが同じになるように運転する。
【0057】
図7は、本実施形態の調湿装置1の第3の動作例を説明する第1の図である。
図7には、上述の
図5と同じ、塩化リチウム水溶液の空気線図上の気液平衡を表すxy線図を示している。調湿装置1において、室内温度と除湿温度とを同じ温度とし、除湿後の絶対湿度を気温20℃における相対湿度29%と同等にするため、第1の液体調湿剤の塩化リチウム濃度を26.5%(
図7の線C26.5)、第2の液体調湿剤の塩化リチウム濃度を35%(図の線C35)とする。このような運転条件において、水蒸気の吸収と放出の収支が釣り合う再生温度を算出した。
【0058】
図7に示すxy線図では、1段目除湿時の外気P11と、2段目除湿時の外気P12と、給気P13とが同じ温度(気温25℃)となっている。例えば、処理機と再生機とのそれぞれに、気液接触器が一つずつしかない調湿装置では、液体調湿剤の塩化リチウム濃度が35%の場合、再生温度は、50℃以上となり、除湿温度は、16℃以下となる。しかしながら、本実施形態の調湿装置1では、第1の液体調湿剤と第2の液体調湿剤の再生温度を
図7に示す40.5℃とすることで、第1の液体調湿剤と第2の液体調湿剤の再生が可能となる。したがって、除湿温度を維持しながら、再生温度を下げることができる。
【0059】
図8は、本実施形態の調湿装置1の第3の動作例を説明する第2の図である。
図8は、
図7で説明した、第3の動作例における水蒸気の吸収と放出の収支を示した図である。
図8に示すように、第1の液体調湿剤に対する、第1の気液接触器11での「1段目除湿」と第4の気液接触器24での「2段目再生」の系統を見ると、11.1g/kgの吸収を行い、11.2g/kgの再生を行っている。第2の液体調湿剤に対する、第2の気液接触器12での「2段目除湿」と第3の気液接触器23での「1段目再生」の系統を見ると、4.6g/kgの吸収を行い、4.7g/kgの放出を行っている。すなわち、調湿装置1による第3の動作例における水蒸気の吸収と放出の収支は、ほぼ釣り合っていることがわかる。
【0060】
図9は、比較例の調湿装置9の概略構成図である。ここで、比較例の調湿装置9の課題について説明する。比較例の調湿装置9は、外気を除湿する処理機91と、液体調湿剤を再生する再生機92と、処理機91と再生機92とに接続する流路93と、液体調湿剤を冷却する冷却部94aと、液体調湿剤を加熱する加熱部94bと、流路93に設けられる複数の熱交換器95a,95b,95cと、制御部96と、を備える。
図9に示すように、処理機91と再生機92とのそれぞれが、1つの気液接触器91a,92aを有している、いわゆる、単段の調湿装置である。比較例の調湿装置9では、液体調湿剤は、処理機91の気液接触器91aにおいて外気g10を除湿する。液体調湿剤は、外気g10を除湿したあと、流路93によって再生機92に送られ、気液接触器92aにおいて加熱されて内気g20に接触することで、内気g20を加湿し、かつ、自身を濃縮することで再生される。
【0061】
図10は、比較例の調湿装置9の動作例を説明する第1の図である。
図10は、塩化リチウム水溶液の空気線図上の気液平衡を表すxy線図を示している。
図10は、
図9で示した比較例の調湿装置9で使用される、塩化リチウム濃度が35%の液体調湿剤に対して平衡する空気の状態を実線C35で示している。
図10に示す比較例の調湿装置9における運転条件は、以下のとおりである。
外気:気温35℃ 相対湿度60%(
図10に示す点P90)
内気:気温25℃ 相対湿度50%(
図10に示す点P92)
処理機側の液体調湿剤の温度:25℃(除湿温度)
再生機側の液体調湿剤の温度:50℃(再生温度)
【0062】
図10に示すように、処理機91では、外気(
図10に示す点P90)は、気液接触器91aにおいて、液体調湿剤と十分に接触することで気液平衡状態の給気(
図10に示す点P91)となる。給気は、気温25℃、相対湿度29%の空気として、室内に供給される。このとき、液体調湿剤は、外気から15.7g/kgの水蒸気を吸収し、室内では、内気と給気の湿度差である4.1g/kgの除湿が行われる。再生機92では、内気(
図10に示す点P92)は、気液接触器92aにおいて、液体調湿剤と十分に接触することで、気液平衡状態の排気(
図10に示す点P93)となる。排気は、気温50℃、湿度32%の空気として、室外に排出される。このとき、液体調湿剤は、排気に15.5g/kgの水分を放出することで、自身が濃縮され、再生される。
【0063】
比較例の調湿装置9では、
図10に示すように、絶対湿度が5.6g/kgとなるまで除湿する場合、除湿温度は、25℃となり、再生温度は、50℃となる(
図10参照)。このため、比較例の調湿装置9では、比較的大きな温度差(25度)が必要となる。
【0064】
一方、本実施形態の調湿装置1では、処理機10と再生機20とのそれぞれが備える、2つの気液接触器のそれぞれに、異なる溶質濃度の液体調湿剤を用いることによって、
図2で説明したように、除湿温度は29.5℃となり、再生温度は45℃となる。すなわち、本実施形態の調湿装置1は、除湿温度を高くしつつ、再生温度を低くすることができるため、比較的小さい温度差(15.5度)でも、除湿と再生とを行うことができる。
【0065】
図11は、比較例の調湿装置9の動作例を説明する第2の図である。
図11には、液体調湿剤の溶質濃度を低くした場合における比較例の調湿装置9の動作例を示している。
図11に示すように、例えば、液体調湿剤の塩化リチウム濃度を35%(
図11の線C35)から30%(
図11の線C30)に変更することで、比較例の調湿装置9では、液体調湿剤の再生温度を50℃(
図11の点P93a)から44℃(
図11の点P93b)に下げることができる。しかしながら、除湿温度も、25℃(
図11の点P91a)から19℃(
図11の点P91b)まで低下させる必要がある。このため、比較例の調湿装置9では、液体調湿剤の塩化リチウム濃度を低くしても、除湿温度と再生温度との温度差が大きく変化しないため、除湿に必要なエネルギも大きく減少しない。
【0066】
図12は、比較例の調湿装置9の動作例を説明する第3の図である。
図12には、液体調湿剤の溶質濃度を高くした場合における比較例の調湿装置9の動作例を示している。
図12に示すように、例えば、液体調湿剤の塩化リチウム濃度を35%(
図12の線C35)から40%(
図12の線C40)に変更することで、除湿温度を25℃(
図12の点P91c)から31℃(
図12の点P91d)に上げることができる。しかしながら、再生温度も、50℃(
図12の点P93c)から58℃(
図12の点P93d)まで上昇させる必要がある。このため、比較例の調湿装置9では、液体調湿剤の塩化リチウム濃度を高くしても、除湿温度と再生温度との温度差は大きく変化しないため、除湿に必要なエネルギも大きく減少しない。
【0067】
一方、本実施形態の調湿装置1では、
図1に示すように、除湿用の処理機10と再生用の再生機20とのそれぞれが備える気液接触器が多段化している。また、調湿装置1は、液体調湿剤が流れる流路として、異なる溶質濃度の第1の液体調湿剤と第2の液体調湿剤のそれぞれが流れる第1の流路31と第2の流路32との2系統を備えている。処理機10では、2つの気液接触器11,12が外気g10の流れに対して直列に接続されており、再生機20では、2つの気液接触器23,24が内気g20の流れに対して直列に接続されている。2つの気液接触器11,12のうち外気g10の流れに対して上流側に位置する気液接触器11と、2つの気液接触器23,24のうち内気g20の流れに対して下流側に位置する気液接触器24とには、溶質濃度が比較的小さい第1の液体調湿剤が流れる。2つの気液接触器11,12のうち外気g10の流れに対して下流側に位置する気液接触器12と、2つの気液接触器23,24のうち内気g20の流れに対して上流側に位置する気液接触器23とには、溶質濃度が第1の液体調湿剤よりも大きい第1の液体調湿剤が流れる。本実施形態の調湿装置1では、このような構成によって、空気の除湿時および液体調湿剤の再生時の負荷を、溶液濃度が異なる2系統に分割することができるため、除湿温度と再生温度との温度差を小さくすることができる。
【0068】
また、本実施形態の調湿装置1では、処理機10では、最初に、第1の気液接触器11の第1の液体調湿剤が除湿を行い、その後、第2の気液接触器12の第2の液体調湿剤が気液接触器11で除湿し切れなかった水蒸気を除湿する。再生機20では、第3の気液接触器23において第2の液体調湿剤の再生を行い、第4の気液接触器24において第1の液体調湿剤の再生を行う。第2の液体調湿剤の気液平衡湿度は、第1の液体調湿剤よりも低いため、本実施形態の調湿装置1のように、同じ温度で液体調湿剤の再生を行う場合、第2の液体調湿剤の再生に続いて、第1の液体調湿剤の再生を連続して行うことができる。
【0069】
以上説明した、本実施形態の調湿装置1によれば、液体調湿剤と外気とを接触させて外気の除湿をおこなう処理機10は、外気の流れに対して直列に並べられる、第1の気液接触器11と第2の気液接触器12とを備えている。第2の気液接触器12では、第1の気液接触器11において空気を除湿する第1の液体調湿剤よりも塩化リチウム濃度が高い第2の液体調湿剤が、第1の気液接触器11において除湿された外気をさらに除湿する。これにより、処理機10では、濃度が異なる液体調湿剤によって外気に含まれる水蒸気を段階的に吸収することから、除湿における負荷を気液接触器11,12に分割させることができるため、単段での除湿よりも除湿温度を高くすることができる。したがって、処理機10において外気を除湿するときの除湿温度と、再生機20において液体調湿剤の濃縮をおこなうことで再生するときの再生温度との温度差を小さくすることができるため、除湿に必要なエネルギを低減させることができる。
【0070】
また、本実施形態の調湿装置1によれば、液体調湿剤を加熱し内気を接触させることで液体調湿剤を濃縮する再生機20は、内気の流れに対して直列に並べられる、第3の気液接触器23と第4の気液接触器24とを備えている。処理機10において除湿された外気に含まれていた水蒸気は、第1の液体調湿剤と第2の液体調湿剤とのそれぞれに吸収されている。これにより、液体調湿剤の再生における気液接触器の負荷を、第1の液体調湿剤を再生する第4の気液接触器24と、第2の液体調湿剤を再生する第3の気液接触器23とのそれぞれに分割させることができる。したがって、液体調湿剤の再生温度を比較的低くすることができるため、除湿温度と再生温度との温度差がさらに小さくなり、除湿に必要なエネルギを低減させることができる。
【0071】
また、本実施形態の調湿装置1は、液体調湿剤を加熱するための加熱媒体を生成し、生成した加熱媒体を再生機20に供給する温熱源51を有する加熱部50を備えている。温熱源51において生成される加熱媒体は、第3の気液接触器23において第2の液体調湿剤を加熱したのち、第4の気液接触器24において第1の液体調湿剤を加熱するように、再生機20に供給される。これにより、塩化リチウム濃度が比較的高い第2の液体調湿剤は、第1の液体調湿剤よりも、温度が高くなるように加熱される。したがって、第2の液体調湿剤の除湿能力を確実に回復させることができる。
【0072】
また、本実施形態の調湿装置1によれば、温熱源51は、太陽熱によって加熱された加熱媒体を再生機20に供給する。調湿装置1は、再生温度を比較的低くすることができるため、再生可能エネルギである太陽熱によって加熱された比較的低温の加熱媒体でも、再生機20での液体調湿剤の再生を行うことができる。これにより、再生機20での加熱に必要なエネルギが不要となるため、除湿に必要な化石エネルギを低減させることできる。
【0073】
また、本実施形態の調湿装置1によれば、冷熱媒体は、第2の気液接触器12において第2の液体調湿剤を冷却したのち、第1の気液接触器11において第1の液体調湿剤を冷却する。これにより、第2の液体調湿剤の温度を狙いの温度とすることができるため、処理機10から室内に供給される除湿された外気(給気)を狙いの湿度とすることができる。
【0074】
また、本実施形態の調湿装置1は、処理機10から排出される液体調湿剤と再生機20から排出される液体調湿剤との間で熱交換させる熱交換器61,62を備えている。処理機10から排出される液体調湿剤は、比較的低温となっているが、再生されるときには高温となっている必要があり、再生機20での加熱が必要である。そこで、熱交換器61、62を備えることで、処理機10から再生機20に送られる液体調湿剤を、再生機20から処理機10に送られる液体調湿剤が有する熱によっていくらかでも加熱することで、温熱を有効に利用することができる。これにより、除湿に必要なエネルギをさらに低減させることができる。
【0075】
<第2実施形態>
図13は、第2実施形態の調湿装置の概略構成を示す模式図である。第2実施形態の調湿装置2は、第1実施形態の調湿装置1(
図1)と比較すると、再生機において内気が導入される気液接触器が異なる。
【0076】
本実施形態の調湿装置2は、外気を除湿する処理機10と、液体調湿剤を再生する再生機80と、処理機10と再生機80とに接続する第1の流路31および第2の流路32と、処理機10の液体調湿剤を冷却する冷却部40と、再生機80の液体調湿剤を加熱する加熱部50と、第1の流路31または第2の流路32に設けられる複数の熱交換器61,62と、制御部70と、を備える。
【0077】
再生機80は、処理機10において外気の除湿に使用された液体調湿剤を加熱し、内気と接触させることで、内気を加湿し、かつ、液体調湿剤の濃縮をおこなう。再生機80は、第3の気液接触器23と、第4の気液接触器24と、を備える。
【0078】
再生機80では、第3の気液接触器23と第4の気液接触器24とのそれぞれに、内気g20が導入される。具体的には、第3の気液接触器23では、内気g20は、噴射部23cによって噴射され気液接触材23bに保持されている第2の液体調湿剤と接触し、加湿される。第3の気液接触器23において加湿された内気g23は、室外に排気される。第4の気液接触器24では、内気g20は、噴射部24cによって噴射され気液接触材24bに保持されている第1の液体調湿剤と接触し、加湿される。第4の気液接触器24において加湿された内気g24は、室外に排気される。
【0079】
以上説明した、本実施形態の調湿装置2によれば、液体調湿剤と外気とを接触させて外気の除湿をおこなう処理機10は、外気の流れに対して直列に並べられる、第1の気液接触器11と第2の気液接触器12とを備えている。これにより、処理機10では、除湿における気液接触器11,12の負荷を分割することができるため、除湿温度と再生温度との温度差を小さくすることができる。したがって、除湿に必要なエネルギを低減させることができる。
【0080】
また、本実施形態の調湿装置2によれば、液体調湿剤を濃縮する再生機20は、第3の気液接触器23と第4の気液接触器24とを備えているため、液体調湿剤の再生における気液接触器の負荷を分割することができる。また、第3の気液接触器23と第4の気液接触器24とは、内気の流れに対して並列に配置されるため、第3の気液接触器23と第4の気液接触器24とのそれぞれは、比較的湿度が低い内気を加湿することで液体調湿剤の濃縮をおこなうことができる。これにより、第3の気液接触器23と第4の気液接触器24とのいずれにおいても、液体調湿剤に含まれる水分を空気に放出しやすくなるため、再生温度をさらに低くすることができる。したがって、除湿温度と再生温度との温度差をさらに小さくすることができるため、除湿に必要なエネルギを低減させることができる。
【0081】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0082】
[変形例1]
上述の実施形態では、調湿装置は、外気を除湿する処理機と、液体調湿剤を再生する再生機と、処理機と再生機とに接続する流路と、処理機の液体調湿剤を冷却する冷却部と、再生機の液体調湿剤を加熱する加熱部と、流路に設けられる複数の熱交換器と、制御部と、を備えるとした。しかしながら、調湿装置の構成は、これに限定されない。冷却部や熱交換器はなくてもよい。また、冷却部と加熱部とがない場合でも、再生機の液体調湿剤の温度を処理機の液体調湿剤より高くすることができればよい。
【0083】
[変形例2]
上述の実施形態では、処理機および再生機は、それぞれ2つの気液接触器を備えるとした。処理機または再生機が備える気液接触器の数は、これに限定されない。処理機が2つ以上の気液接触器を備えていればよく、3つ以上の気液接触器を備えてもよいし、処理機が備える気液接触器の数と、再生機が備える気液接触器の数とが異なっていてもよい。
【0084】
[変形例3]
上述の実施形態では、温熱源が再生機に供給する加熱媒体は、内気の流れに対して、上流側の気液接触器(第3の気液接触器)から下流側の気液接触器(第4の気液接触器)に流れるとした。加熱媒体が流れる順番は、これに限定されない。
【0085】
[変形例4]
上述の実施形態では、冷熱源が処理機に供給する冷熱媒体は、外気の流れに対して、下流側の気液接触器(第2の気液接触器)から上流側の気液接触器(第1の気液接触器)に流れるとした。冷熱媒体が流れる順番は、これに限定されない。
【0086】
[変形例5]
上述の実施形態では、再生機において、液体調湿剤の温度を高くするために、温熱源が生成する加熱媒体と熱交換器とを用いて液体調湿材を加熱するとした。しかしながら、液体調湿剤の温度を高くする方法は、これに限定されない。例えば、液体調湿剤に太陽光を照射し、液体調湿剤を太陽熱によって直接加熱してもよく、加熱媒体を用いずに、液体調湿剤をヒータなどにより直接加熱してもよい。また、加熱媒体の供給源として、熱交換器のみを備えていてもよい。さらに、上述の実施形態のように、2つの気液接触器を有する場合、温熱媒体の流れに対して2つの気液接触器を並列に配置してもよい。処理機においても、同様に、液体調湿剤の温度を低くするために、冷熱媒体を用いずに、液体調湿剤を冷却塔などによって直接冷却してもよいし、冷熱媒体の供給源として、熱交換器のみを備えていてもよいし、上述の実施形態のように、2つの気液接触器を有する場合、冷熱媒体の流れに対して2つの気液接触器を並列に配置してもよい。
【0087】
図14は、第1実施形態の調湿装置の変形例の概略構成を示す模式図である。
図145に示す調湿装置1では、熱交換器62と第3の気液接触器23の噴射部23cとの間に、太陽光S1を照射することで、第2の液体調湿剤を処理機10において除湿に使用されているときよりも高温の状態とする受光部56が設けられている。熱交換器61と第4の気液接触器24の噴射部24cとの間に、太陽光S1を照射することで、第1の液体調湿剤を処理機10において除湿に使用されているときよりも高温の状態とする受光部57が設けられている。
図14に示す調湿装置1の変形例では、太陽光S1を液体調湿剤に照射することで、液体調湿剤が加熱される。これにより、調湿装置1は、再生可能エネルギである太陽熱によって加熱される程度の温度であっても、再生機20において、液体調湿剤を濃縮することができる。受光部56,57は、特許請求の範囲に記載の「加熱部」に相当する。
【0088】
[変形例6]
上述の実施形態では、調湿装置は、室内の空気である内気を用いて除湿に用いた液体調湿剤を再生するとした。液体調湿剤を再生する空気は、内気に限られず、外気によって再生を行ってもよい。
【0089】
[変形例7]
上述の実施形態では、液体調湿剤は、溶質として塩化リチウム(LiCl)を含む水溶液であるとした。しかしながら、液体調湿剤の種類は、これに限定しない。イオン液体など、一般的に吸湿作用を有する液体であればよい。
【0090】
[変形例8]
上述の実施形態では、処理機は、液体調湿剤と外気とを接触させることで、外気を除湿するとした。処理機は、液体調湿剤と内気とを接触させることで内気を除湿する内気循環用の除湿器として擁してもよい。
【0091】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0092】
<適用例1>
調湿装置であって、
空気中の水蒸気を吸湿する液体調湿剤と、
前記液体調湿剤と空気とを接触させて空気の除湿をおこなう処理機と、
前記処理機において除湿に使用された前記液体調湿剤を、前記処理機において除湿に使用されているときの液体調湿剤の温度よりも高温の状態とし、空気と接触させることで、空気を加湿し、かつ、前記液体調湿剤の濃縮をおこなう再生機と、を備え、
前記処理機は、
第1の前記液体調湿剤と空気とを接触させる第1の気液接触器と、
前記第1の気液接触器において除湿された空気と、第1の前記液体調湿剤よりも溶質濃度が高い第2の前記液体調湿剤と、を接触させる第2の気液接触器と、を含んでいる、
調湿装置。
<適用例2>
適用例1に記載の調湿装置であって、
前記再生機は、
前記第1の気液接触器において除湿された空気の除湿に使用された第2の前記液体調湿剤、前記第2の気液接触器において除湿に使用されているときよりも高温の状態とし、空気を接触させることで、空気を加湿し、かつ、第2の前記液体調湿剤の濃縮をおこなう第3の気液接触器と、
前記第1の気液接触器において空気の除湿に使用された第1の前記液体調湿剤、前記第1の気液接触器において除湿に使用されているときよりも高温の状態とし、前記第3の気液接触器において加湿された空気を接触させることで、前記第3の気液接触器において加湿された空気をさらに加湿し、かつ、第1の前記液体調湿剤の濃縮をおこなう第4の気液接触器と、を有する、
調湿装置。
<適用例3>
適用例1に記載の調湿装置であって、
前記再生機は、
前記第1の気液接触器において除湿された空気の除湿に使用された第2の前記液体調湿剤を、前記第2の気液接触器において除湿に使用されているときよりも高温の状態とし、空気と接触させることで、空気を加湿し、かつ、第2の前記液体調湿剤の濃縮をおこなう第3の気液接触器と、
前記第1の気液接触器において空気の除湿に使用された第1の前記液体調湿剤を、前記第1の気液接触器において除湿に使用されているときよりも高温の状態とし、空気と接触させることで、空気を加湿し、かつ、第1の前記液体調湿剤の濃縮をおこなう第4の気液接触器と、を有する、
調湿装置。
<適用例4>
適用例1から適用例3のいずれか一例に記載の調湿装置は、さらに、
前記液体調湿剤を加熱するための加熱媒体を前記再生機に供給する温熱供給部を有する加熱部を備え、
前記加熱媒体は、前記第3の気液接触器において第2の前記液体調湿剤を加熱したのち、前記第4の気液接触器において第1の前記液体調湿剤を加熱するように、前記再生機に供給される、
調湿装置。
<適用例5>
適用例1から適用例4のいずれか一例に記載の調湿装置であって、
前記温熱供給部は、太陽熱によって加熱された前記加熱媒体を前記再生機に供給する、
調湿装置。
<適用例6>
適用例1から適用例5のいずれか一例に記載の調湿装置は、さらに、
液体調湿剤を加熱する加熱部を備え、
前記加熱部は、前記再生機において空気と接触する液体調湿剤に太陽光を照射することで、前記液体調湿剤を前記処理機において除湿に使用されているときよりも高温の状態とする、
調湿装置。
<適用例7>
適用例1から適用例6のいずれか一例に記載の調湿装置は、さらに、
前記液体調湿剤を冷却するための冷熱媒体を前記処理機に供給する冷熱供給部を備え、
前記冷熱媒体は、前記第2の気液接触器において第2の前記液体調湿剤を冷却したのち、前記第1の気液接触器において第1の前記液体調湿剤を冷却するように、前記処理機に供給される、
調湿装置。
<適用例8>
適用例1から適用例7のいずれか一例に記載の調湿装置は、さらに、
前記処理機において空気の除湿に使用された液体調湿剤と、前記再生機において空気を加湿に使用された液体調湿剤との間で熱のやり取りを行うための熱交換器を備える、
調湿装置。
【符号の説明】
【0093】
1,2…調湿装置
10…処理機
11…第1の気液接触器
12…第2の気液接触器
20,80…再生機
23…第3の気液接触器
24…第4の気液接触器
40…冷却部
41…温熱源
42,45,52,55,61,62…熱交換器
50…加熱部
56,57…受光部