(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177972
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】車両用照明装置、および車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 43/19 20180101AFI20241217BHJP
F21S 43/14 20180101ALI20241217BHJP
F21V 19/00 20060101ALI20241217BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20241217BHJP
F21V 23/06 20060101ALI20241217BHJP
F21W 103/00 20180101ALN20241217BHJP
F21W 103/10 20180101ALN20241217BHJP
F21W 103/20 20180101ALN20241217BHJP
F21W 103/35 20180101ALN20241217BHJP
F21W 103/40 20180101ALN20241217BHJP
F21W 103/45 20180101ALN20241217BHJP
F21W 103/55 20180101ALN20241217BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20241217BHJP
F21Y 115/15 20160101ALN20241217BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20241217BHJP
【FI】
F21S43/19
F21S43/14
F21V19/00 150
F21V19/00 170
F21V19/00 212
F21V19/00 450
F21V23/00 140
F21V23/00 200
F21V23/06
F21W103:00
F21W103:10
F21W103:20
F21W103:35
F21W103:40
F21W103:45
F21W103:55
F21Y115:10 300
F21Y115:10 500
F21Y115:15
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096420
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】松尾 倫宏
【テーマコード(参考)】
3K013
3K014
【Fターム(参考)】
3K013AA03
3K013AA05
3K013AA07
3K013BA01
3K013CA05
3K013DA06
3K013EA13
3K014AA01
3K014HA03
(57)【要約】
【課題】制御素子の出力電流の意図しない変動を抑制することができる車両用照明装置、および車両用灯具を提供することである。
【解決手段】実施形態に係る車両用照明装置は、ソケットと;前記ソケットの一方の端部側に設けられた基板と;前記基板の上に設けられた発光素子と;前記基板の上に設けられ、出力側が前記発光素子と電気的に接続された電流ドライバと、出力側が前記電流ドライバと電気的に接続された電流設定回路と、を有する制御素子と;前記電流設定回路の入力側の端子と、前記基板のグランド端子と、の間の配線系統において、前記基板が設けられた雰囲気に露出する導電部分を覆う保護部と;を具備している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソケットと;
前記ソケットの一方の端部側に設けられた基板と;
前記基板の上に設けられた発光素子と;
前記基板の上に設けられ、出力側が前記発光素子と電気的に接続された電流ドライバと、出力側が前記電流ドライバと電気的に接続された電流設定回路と、を有する制御素子と;
前記電流設定回路の入力側の端子と、前記基板のグランド端子と、の間の配線系統において、前記基板が設けられた雰囲気に露出する導電部分を覆う保護部と;
を具備した車両用照明装置。
【請求項2】
前記電流設定回路の入力側の第1の端子と電気的に接続されたサーミスタをさらに具備し、
前記保護部は、前記第1の端子、および、前記サーミスタの前記雰囲気に露出する接続端子を覆っている請求項1記載の車両用照明装置。
【請求項3】
前記電流設定回路の入力側の第2の端子と電気的に接続された抵抗をさらに具備し、
前記保護部は、
前記第2の端子、および、前記抵抗の前記雰囲気に露出する接続端子、
または、
前記第2の端子、および、前記抵抗のレーザトリミング部分を覆っている請求項1または2に記載の車両用照明装置。
【請求項4】
樹脂を含み、前記発光素子を覆う封止部をさらに具備し、
前記保護部は、前記封止部と同じ樹脂を含んでいる請求項1または2に記載の車両用照明装置。
【請求項5】
請求項1記載の車両用照明装置と;
前記車両用照明装置が取り付けられる筐体と;
を具備した車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車両用照明装置、および車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギー化や長寿命化などの観点から、フィラメントを有するランプを備えた車両用照明装置に代えて、発光ダイオードなどの発光素子を備えた車両用照明装置の普及が進んでいる。
【0003】
ここで、発光素子に電流が流れると、発光素子から光が照射されるとともに、発光素子において熱が発生する。また、車両用照明装置の場合には、車両用照明装置が設けられる雰囲気の温度が85℃程度になる場合がある。そのため、発光素子の温度が高くなり過ぎて、最大ジャンクション温度を超えるおそれがある。発光素子の温度が最大ジャンクション温度を超えると、発光素子が故障したり、発光素子の機能が低下したりするおそれがある。
【0004】
そのため、発光素子の周囲温度に応じて、発光素子に流れる電流を制御する制御素子を備えた車両用照明装置が提案されている。すなわち、温度ディレーティングを行う制御素子を備えた車両用照明装置が提案されている。
【0005】
この場合、制御素子の入力側にはサーミスタが電気的に接続され、制御素子の出力側には発光素子が電気的に接続される。サーミスタの抵抗値は、発光素子の周囲温度に応じて変化する。そのため、制御素子は、サーミスタの抵抗値に基づいて、発光素子に流す電流(出力電流)の制御(温度ディレーティング)を行うことができる。
【0006】
ところが、車両用照明装置が設けられる雰囲気によっては、制御素子の出力電流の意図しない変動が生ずることが判明した。制御素子の出力電流の意図しない変動が生じると、発光素子から照射される光の全光束が意図した値とならなくなるおそれがある。
そこで、制御素子の出力電流の意図しない変動を抑制することができる技術の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、制御素子の出力電流の意図しない変動を抑制することができる車両用照明装置、および車両用灯具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係る車両用照明装置は、ソケットと;前記ソケットの一方の端部側に設けられた基板と;前記基板の上に設けられた発光素子と;前記基板の上に設けられ、出力側が前記発光素子と電気的に接続された電流ドライバと、出力側が前記電流ドライバと電気的に接続された電流設定回路と、を有する制御素子と;前記電流設定回路の入力側の端子と、前記基板のグランド端子と、の間の配線系統において、前記基板が設けられた雰囲気に露出する導電部分を覆う保護部と;を具備している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、制御素子の出力電流の意図しない変動を抑制することができる車両用照明装置、および車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態に係る車両用照明装置を例示するための模式斜視図である。
【
図2】
図1における車両用照明装置のA-A線断面図である。
【
図4】表面実装型の回路素子に対して設けられた保護部を例示するための模式斜視図である。
【
図5】レーザトリミングされた膜状の抵抗器と、保護部とを例示するための模式斜視図である。
【
図6】車両用灯具を例示するための模式部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0013】
(車両用照明装置)
本実施の形態に係る車両用照明装置1は、例えば、自動車や鉄道車両などに設けることができる。自動車に設けられる車両用照明装置1としては、例えば、フロントコンビネーションライト(例えば、デイタイムランニングランプ(DRL:Daytime Running Lamp)、ポジションランプ、ターンシグナルランプなどが適宜組み合わされたもの)や、リアコンビネーションライト(例えば、ストップランプ、テールランプ、ターンシグナルランプ、バックランプ、フォグランプなどが適宜組み合わされたもの)などに用いられるものを例示することができる。ただし、車両用照明装置1の用途は、これらに限定されるわけではない。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る車両用照明装置1を例示するための模式斜視図である。
図2は、
図1における車両用照明装置1のA-A線断面図である。
図1、および
図2に示すように、車両用照明装置1には、例えば、ソケット10、発光モジュール20、給電部30、および伝熱部40が設けられている。
【0015】
ソケット10は、例えば、装着部11、バヨネット12、フランジ13、放熱フィン14、およびコネクタホルダ15を有する。
装着部11は、フランジ13の、放熱フィン14が設けられる側とは反対側の面に設けられている。装着部11の外形形状は、柱状とすることができる。装着部11の外形形状は、例えば、円柱状である。装着部11は、例えば、フランジ13側とは反対側の端部に開口する凹部11aを有する。
【0016】
バヨネット12は、例えば、装着部11の側面に設けられる。バヨネット12は、車両用照明装置1の外側に向けて突出している。バヨネット12は、フランジ13と対向している。バヨネット12は、複数設けることができる。バヨネット12は、車両用照明装置1を、例えば、後述する車両用灯具100の筐体101に装着する際に用いられる。バヨネット12は、ツイストロックに用いることができる。
【0017】
フランジ13は、板状を呈している。フランジ13は、例えば、略円板状を呈している。フランジ13の側面は、バヨネット12の側面よりも車両用照明装置1の外方に位置している。
【0018】
放熱フィン14は、フランジ13の、装着部11側とは反対側に設けられる。放熱フィン14は、少なくとも1つ設けることができる。例えば、
図1に示すように、ソケット10には複数の放熱フィン14を設けることができる。複数の放熱フィン14は、所定の方向に並べて設けることができる。放熱フィン14は、例えば、板状、または筒状を呈している。
【0019】
コネクタホルダ15は、フランジ13の、装着部11側とは反対側に設けられている。コネクタホルダ15は、放熱フィン14と並べて設けることができる。コネクタホルダ15は、筒状を呈し、内部にシール部材105aを有するコネクタ105が挿入される。
【0020】
ソケット10は、発光モジュール20、および給電部30を保持する機能と、発光モジュール20において発生した熱を外部に伝える機能を有する。そのため、ソケット10は、熱伝導率の高い材料から形成するのが好ましい。ソケット10は、例えば、アルミニウム合金などの金属から形成することができる。
【0021】
また、ソケット10は、例えば、高熱伝導性樹脂から形成することもできる。高熱伝導性樹脂は、例えば、PET(Polyethylene terephthalate)やナイロン(Nylon)などの樹脂に、炭素や酸化アルミニウムなどを用いたフィラーを混合させたものである。高熱伝導性樹脂を含むソケット10とすれば、発光モジュール20において発生した熱を効率よく放熱することができる。また、ソケット10の重量を軽くすることができる。
【0022】
給電部30は、例えば、複数の給電端子31、および保持部32を有する。
複数の給電端子31は、棒状体とすることができる。複数の給電端子31の一方の端部は、凹部11aの底面11a1から突出している。複数の給電端子31の一方の端部は、基板21に設けられた配線パターン21aと半田付けされる。複数の給電端子31の他方の端部は、コネクタホルダ15の孔の内部に露出している。コネクタホルダ15の孔の内部に露出する複数の給電端子31には、コネクタ105が嵌め合わされる。複数の給電端子31は、例えば、銅合金などの金属から形成される。なお、複数の給電端子31の形状、配置、材料などは例示をしたものに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
【0023】
ソケット10が、例えば、炭素を用いたフィラーを含む高熱伝導性樹脂や、金属などを用いて形成される場合には、導電性を有するソケット10となる。そのため、保持部32は、複数の給電端子31と、導電性を有するソケット10との間を絶縁するために設けられている。なお、ソケット10が、絶縁性を有する高熱伝導性樹脂(例えば、酸化アルミニウムを用いたフィラーを含む高熱伝導性樹脂など)を用いて形成される場合には、保持部32を省くことができる。保持部32は、例えば、ソケット10に設けられた孔に圧入したり、孔の内壁に接着したりすることができる。
【0024】
伝熱部40は、ソケット10と、発光モジュール20(基板21)との間に設けられている。
図1、および
図2に示すように、伝熱部40は、例えば、凹部11aの底面11a1に開口する凹部11bの内部に設けられる。例えば、伝熱部40は、凹部11bの内壁に接着したり、凹部11bの内部に熱伝導グリス(放熱グリス)を介して取り付けたり、インサート成形法により凹部11bの内部に埋め込んだりすることができる。伝熱部40は、熱伝導率の高い材料から形成される。例えば、伝熱部40は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金などの金属から形成することができる。なお、ソケット10が金属から形成されたり、発光モジュール20において発生する熱が少ない場合には、伝熱部40を省くこともできる。
【0025】
発光モジュール20は、例えば、基板21、発光素子22、枠部23、封止部24、回路素子25、および保護部26を有する。
【0026】
基板21は、ソケット10の一方の端部側に設けられている。基板21は、例えば、伝熱部40の上に接着することができる。この場合、接着剤は、熱伝導率の高い接着剤とすることが好ましい。例えば、接着剤は、導電性材料や無機材料を用いたフィラーが混合された接着剤とすることができる。
【0027】
基板21は、板状を呈している。基板21の平面形状(車両用照明装置1の中心軸1aに沿った方向から見た場合の形状)は、例えば、略四角形である。基板21は、例えば、セラミックス(例えば、酸化アルミニウムや窒化アルミニウム)などの無機材料、紙フェノールやガラスエポキシなどの有機材料などから形成することができる。また、基板21は、金属板の表面を絶縁性材料で被覆したメタルコア基板であってもよい。また、基板21は、単層構造を有するものであってもよいし、多層構造を有するものであってもよい。
【0028】
また、基板21の表面には、配線パターン21aが設けられている。配線パターン21aは、例えば、銀を主成分とする材料や、銅を主成分とする材料などから形成される。
また、配線パターン21aを覆う被覆部21a1を設けることができる。被覆部21a1は、例えば、ガラス材料を含むことができる。
【0029】
発光素子22は、基板21の上(基板21のソケット10側とは反対側の面)に設けられている。発光素子22は、配線パターン21aと電気的に接続される。発光素子22は、少なくとも1つ設けることができる。
図1、および
図2に例示をした車両用照明装置1(発光モジュール20)には、複数の発光素子22が設けられている。複数の発光素子22を設ける場合には、複数の発光素子22を直列接続することができる。
【0030】
発光素子22は、例えば、発光ダイオード、有機発光ダイオード、レーザダイオードなどとすることができる。
発光素子22は、チップ状の発光素子とすることもできるし、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)型などの表面実装型の発光素子とすることもできるし、砲弾型などのリード線を有する発光素子とすることもできる。
図2に例示をした発光素子22は、チップ状の発光素子である。この場合、発光モジュール20の小型化、ひいては車両用照明装置1の小型化を考慮すると、チップ状の発光素子とすることが好ましい。以下においては、一例として、発光素子22がチップ状の発光素子である場合を説明する。
【0031】
チップ状の発光素子22は、COB(Chip On Board)により配線パターン21aに実装することができる。チップ状の発光素子22は、上部電極型の発光素子、上下電極型の発光素子、フリップチップ型の発光素子のいずれであってもよい。
【0032】
枠部23は、基板21の上に設けられている。枠部23は、基板21に接着されている。枠部23は、枠状を呈し、発光素子22を囲んでいる。枠部23は、例えば、熱可塑性樹脂から形成される。枠部23は、封止部24の形成範囲を規定する機能と、リフレクタの機能とを有することができる。なお、枠部23は、省くこともできる。枠部23が省かれる場合には、例えば、ドーム状の封止部24が基板21の上に設けられる。
【0033】
封止部24は、枠部23の内側に設けられる。封止部24は、枠部23により囲まれた領域を覆うように設けられる。封止部24は、発光素子22を覆うように設けられる。封止部24は、透光性を有する樹脂を含んでいる。樹脂は、例えば、シリコーン樹脂などである。例えば、溶剤などで軟化させた樹脂を、ディスペンサなどを用いて、枠部23の内側に供給して、封止部24を形成することができる。また、封止部24には蛍光体を含めることもできる。
【0034】
その他、必要に応じて、光学要素などを設けることもできる。光学要素は、例えば、凸レンズ、凹レンズ、導光体などである。光学要素は、例えば、封止部24の上に設けることができる。
【0035】
回路素子25は、発光素子22を有する発光回路20aを構成するために用いられる受動素子または能動素子とすることができる。回路素子25は、基板21の上に設けられている。回路素子25は、例えば、枠部23の周辺に設けられ、配線パターン21aと電気的に接続される。回路素子25は、配線パターン21aを介して、発光素子22と電気的に接続されている。
【0036】
図3は、発光回路20aを例示するための回路図である。
図3に示すように、発光回路20aは、例えば、発光素子22、および回路素子25を有する。回路素子25は、例えば、抵抗25a、保護素子25b、制御素子25c、抵抗25d、および負特性サーミスタ25eとすることができる。ただし、発光回路20aに設けられる回路素子25は例示をしたものに限定されるわけではない。例えば、発光回路20aは、前述したものの他に、コンデンサ、正特性サーミスタ、インダクタ、サージアブソーバ、バリスタ、集積回路、演算素子などをさらに有することもできる。
【0037】
抵抗25aは、例えば、表面実装型の抵抗器、リード線を有する抵抗器(酸化金属皮膜抵抗器)、スクリーン印刷法などを用いて形成された膜状の抵抗器などとすることができる。なお、
図1に例示をした抵抗25aは、表面実装型の抵抗器である。
【0038】
ここで、発光素子22の順方向電圧特性には、ばらつきがあるので、アノード端子とグランド端子との間の印加電圧を一定にすると、発光素子22から照射される光の明るさ(光束、輝度、光度、照度)にばらつきが生じる。そのため、発光素子22から照射される光の明るさが所定の範囲内に収まるように、発光素子22に直列接続された抵抗25aにより、発光素子22に流れる電流の値が所定の範囲内となるようにする。この場合、抵抗25aの抵抗値を変化させることで、発光素子22に流れる電流の値が所定の範囲内となるようにする。
【0039】
抵抗25aが表面実装型の抵抗器やリード線を有する抵抗器などの場合には、発光素子22の順方向電圧特性に応じて適切な抵抗値を有する抵抗25aを選択する。抵抗25aが膜状の抵抗器の場合には、抵抗25aの一部を除去すれば、抵抗値を増加させることができる。例えば、膜状の抵抗器にレーザ光を照射すれば、膜状の抵抗器の一部を容易に除去することができる。なお、抵抗25aの数、配置、大きさなどは、例示をしたものに限定されるわけではなく、発光素子22の数や仕様などに応じて適宜変更することができる。
【0040】
保護素子25bは、例えば、逆方向電圧が発光素子22に印加されないようにするため、および、逆方向からのパルスノイズが発光素子22に印加されないようにするために設けられる。保護素子25bは、例えば、ダイオードである。
図1に例示をした保護素子25bは、表面実装型のダイオードである。
【0041】
制御素子25cは、発光素子22の周囲温度に応じて、発光素子22に流す電流(出力電流Ia)を制御する。例えば、制御素子25cは、温度ディレーティングを実行可能な集積回路とすることができる。
【0042】
図3に示すように、制御素子25cは、VIN端子、OUT端子、RTH端子(第1の端子の一例に相当する)、ISET端子(第2の端子の一例に相当する)、およびGND端子を有する。VIN端子には、例えば、保護素子25bを介して、車両に搭載されているバッテリが電気的に接続される。OUT端子には、例えば、抵抗25aを介して、発光素子22が電気的に接続される。この場合、発光素子22のアノードが、OUT端子に電気的に接続される。発光素子22のカソードは、車体のシャーシなどの車両のグランドに電気的に接続される。RTH端子には、例えば、負特性サーミスタ25eが電気的に接続される。ISET端子には、例えば、抵抗25dが電気的に接続される。GND端子は、例えば、車両のグランドに電気的に接続される。
【0043】
また、制御素子25cは、例えば、電流ドライバ25c1、電流設定回路25c2、および定電流回路25c3を有する。
電流ドライバ25c1の入力側は、VIN端子と電気的に接続されている。電流ドライバ25c1の出力側は、OUT端子を介して、発光素子22と電気的に接続されている。電流ドライバ25c1は、発光素子22に流す電流(出力電流Ia)を生成する。電流ドライバ25c1は、出力電流Iaが、所定の値となるように出力電流Iaを定電流制御する。電流ドライバ25c1は、例えば、出力トランジスタ、センス抵抗、誤差増幅器(エラーアンプ)などを備えた定電流回路を有する。なお、出力電流Iaの目標値は、電流設定回路25c2からの設定電流Ibに基づいて設定される。
【0044】
電流設定回路25c2の一方の入力側は、ISET端子を介して、抵抗25dと電気的に接続されている。電流設定回路25c2の他方の入力側は、RTH端子を介して、負特性サーミスタ25eと電気的に接続されている。電流設定回路25c2の出力側は、電流ドライバ25c1と電気的に接続されている。電流設定回路25c2は、出力電流Iaの目標値を設定するための設定電流Ibを生成する。設定電流Ibは、ISET端子に電気的に接続された抵抗25dの抵抗値の変化に基づいて生成される。また、電流設定回路25c2は、RTH端子に生じた端子電圧に基づいて、設定電流Ibを調整する。
【0045】
定電流回路25c3は、電流設定回路25c2の入力側とRTH端子との間に電気的に接続されている。定電流回路25c3は、RTH端子を介して、負特性サーミスタ25eに所定の値の電流を流す。そのため、RTH端子には、負特性サーミスタ25eの抵抗値に基づいた端子電圧が生じる。つまり、電流設定回路25c2は、RTH端子に電気的に接続された負特性サーミスタ25eの抵抗値に基づいて、設定電流Ibを調整する。
【0046】
抵抗25dは、例えば、表面実装型の抵抗器、リード線を有する抵抗器、スクリーン印刷法などを用いて形成された膜状の抵抗器のいずれであってもよい。なお、
図1に例示をした抵抗25dは、表面実装型の抵抗器である。
負特性サーミスタ25eは、例えば、表面実装型の負特性サーミスタ、およびリード線を有する負特性サーミスタのいずれであってもよい。なお、
図1に例示をした負特性サーミスタ25eは、表面実装型の負特性サーミスタである。また、負特性サーミスタ25eに抵抗器をさらに電気的に接続してもよい。抵抗器は、表面実装型の抵抗器、リード線を有する抵抗器、膜状の抵抗器のいずれであってもよい。
【0047】
また、以上においては、ISET端子に抵抗25dが電気的に接続される場合を例示したが、ISET端子に正特性サーミスタや負特性サーミスタなどを電気的に接続することもできる。負特性サーミスタは、温度上昇とともに抵抗値が減少するので、ISET端子に負特性サーミスタを電気的に接続しても、制御素子25cは、温度ディレーティング制御を行うことができる。
【0048】
また、ISET端子には、少なくとも抵抗が電気的に接続されていればよい。例えば、ISET端子に、抵抗25dと負特性サーミスタとを電気的に接続することもできるし、抵抗25dおよび負特性サーミスタの少なくともいずれかと、抵抗などとを電気的に接続することもできる。
【0049】
この場合、電流設定回路25c2は、ISET端子に電気的に接続された抵抗25dの抵抗値に基づいて、設定電流Ibを生成する。設定電流Ibは、電流ドライバ25c1に入力され、電流ドライバ25c1は、設定電流Ibを用いて、出力電流Iaの目標値を設定する。
【0050】
ここで、車両用照明装置1が設けられる雰囲気によっては、基板21の上に、雰囲気に含まれていた水蒸気が結露したり、海水などに含まれていた塩分などの異物が析出したりする場合がある。水蒸気が結露したり、異物が析出したりすれば、配線パターン21aにおいて短絡が生じるおそれがある。
【0051】
そのため、前述した様に、配線パターン21aを覆う被覆部21a1が設けられている。被覆部21a1が設けられていれば、配線パターン21aに、水分や異物が付着するのを抑制することができる。
【0052】
ここで、被覆部21a1は、基板21の上に配線パターン21aが形成された後に、配線パターン21aの上に形成される。また、回路素子25は、被覆部21a1が形成された配線パターン21aに実装される。そのため、配線パターン21aの、回路素子25が実装されるパッドには被覆部21a1を設けることができない。また、回路素子25の接続端子は、樹脂などから形成されたパッケージから露出している。
【0053】
そのため、配線パターン21aの実装パッドと、実装パッドに電気的に接続される回路素子25の接続端子は、被覆部21a1から露出することになる。被覆部21a1から露出する実装パッドと、回路素子25の接続端子には、水分や異物が付着するおそれがある。
【0054】
本発明者の得た知見によれば、電流設定回路25c2の入力側の端子(RTH端子およびISET端子)と、基板21のグランド端子21a2と、の間の配線系統において、基板21が設けられた雰囲気に露出する導電部分に水分や異物が付着すると、出力電流Iaが変動することが判明した。例えば、電気伝導率が5mS/m以上、10mS/m以下の水分や異物が、回路素子25の接続端子などに付着すると、出力電流Iaが50%程度低下する場合がある。出力電流Iaが変動すると、温度ディレーティングを行った際に意図した全光束が得られなくなるおそれがある。
【0055】
そこで、本実施の形態に係る車両用照明装置1(発光モジュール20)には、保護部26が設けられている。
保護部26は、電流設定回路25c2の入力側の端子(RTH端子およびISET端子)と、基板21のグランド端子21a2と、の間の配線系統において、基板21が設けられた雰囲気に露出する導電部分を覆っている。
【0056】
図4は、表面実装型の回路素子25に対して設けられた保護部26を例示するための模式斜視図である。
なお、
図4は、回路素子25が表面実装型の抵抗25dの場合である。保護部26が設けられる回路素子25は、抵抗25dに限定されるわけではなく、電流設定回路25c2の入力側に電気的に接続された回路素子25であればよい。
【0057】
図4に示すように、保護部26は、抵抗25dの接続端子25d1を覆っている。この場合、接続端子25d1は、配線パターン21aの実装パッド21aaに実装されているので、接続端子25d1が保護部26により覆われれば、実装パッド21aaが保護部26により覆われることになる。
【0058】
保護部26は、例えば、絶縁性材料を、接続端子25d1の近傍に供給することで形成することができる。例えば、溶剤などで軟化させた樹脂を、ディスペンサなどを用いて接続端子25d1の近傍に供給することができる。また、加熱することで軟化させた樹脂をホットメルト装置などを用いて接続端子25d1の近傍に供給することもできる。
【0059】
この場合、封止部24を形成する樹脂と同じ樹脂を用いて、保護部26を形成すれば、同じ工程で、封止部24と、保護部26を形成することができる。例えば、溶剤などで軟化させた樹脂(例えば、シリコーン樹脂)を、ディスペンサなどを用いて、枠部23の内側、および接続端子25d1の近傍に順次供給することができる。この様にすれば、製造工程の簡略化と製造時間の短縮、ひいては製造コストの低減を図ることができる。
すなわち、保護部26は、封止部24と同じ樹脂を含んでいることが好ましい。
【0060】
なお、以上においては、表面実装型の回路素子25の場合を例示したが、リード線を有する回路素子25の場合も同様である。例えば、リード線および実装パッド21aaを保護部26により覆う様にすればよい。また、チップ状の回路素子25の場合には、チップ状の回路素子25を保護部26により覆う様にすればよい。
また、以上においては、回路素子25が抵抗器の場合を例示したが、回路素子25が正特性サーミスタや負特性サーミスタの場合も同様である。例えば、正特性サーミスタや負特性サーミスタの接続端子やリード線を保護部26により覆う様にすればよい。
【0061】
なお、電流設定回路25c2の入力側(RTH端子)に電気的に接続された負特性サーミスタ25eに直列接続した抵抗器が、膜状の抵抗器となる場合がある。前述した様に、膜状の抵抗器は、スクリーン印刷法などを用いて形成される。この場合、基板21の上に配線パターン21aを形成し、配線パターン21aの実装パッド21aaの上に膜状の抵抗器を形成し、配線パターン21aと膜状の抵抗器の上に被覆部21a1を形成する。そのため、膜状の抵抗器の場合には、実装パッド21aaおよび膜状の抵抗器が被覆部21a1により覆われるので保護部26を省くこともできる。
【0062】
ただし、前述した様に、膜状の抵抗器の抵抗値を調整する際に、被覆部21a1により覆われた膜状の抵抗器にレーザ光が照射される場合(レーザトリミング)がある。レーザ光が照射されると、レーザ光が照射された領域にある膜状の抵抗器と被覆部21a1が除去される。そのため、膜状の抵抗器と被覆部21a1が除去された部分の断面に、膜状の抵抗器の側面が露出する。
【0063】
図5は、レーザトリミングされた膜状の抵抗器25e1と、保護部26とを例示するための模式斜視図である。
図5に示すように、レーザトリミングされた部分には、膜状の抵抗器25e1の側面25e1aが露出する。この場合、側面25e1aに水分や異物が付着すると、出力電流Iaが変動する場合がある。
そのため、膜状の抵抗器25e1がレーザトリミングされる場合には、
図5に示すように、レーザトリミングされた部分に保護部26を設けることができる。この様にすれば、膜状の抵抗器25e1の側面25e1aを、保護部26により覆うことができる。そのため、出力電流Iaが変動するのを抑制することができる。
【0064】
また、制御素子25cに設けられた電流設定回路25c2の入力側の端子(RTH端子およびISET端子)が、樹脂などから形成されたパッケージから露出している。そのため、前述した、抵抗25dの場合と同様に、制御素子25cのRTH端子およびISET端子を、保護部26により覆うことができる。この様にすれば、出力電流Iaが変動するのを抑制することができる。
【0065】
また、以上においては、配線パターン21aの上に被覆部21a1が形成されている場合を例示したが、被覆部21a1が形成されていない場合もある。この様な場合には、配線パターン21aの露出部分を、保護部26により覆うことができる。この様にすれば、出力電流Iaが変動するのを抑制することができる。
【0066】
以上に説明した様に、電流設定回路25c2の入力側の端子(RTH端子およびISET端子)と、基板21のグランド端子21a2との間の配線系統において、基板21が設けられた雰囲気に露出する導電部分を保護部26により覆えば、導電部分に水分や異物が付着することで電位が変動するのを抑制することができる。そのため、出力電流Iaの意図しない変動を抑制することができる。その結果、温度ディレーティングを行った際に意図した全光束を得ることができる。
【0067】
(車両用灯具)
本発明の1つの実施形態において、車両用照明装置1を具備した車両用灯具100を提供することができる。前述した車両用照明装置1に関する説明、および車両用照明装置1の変形例(例えば、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもので、本発明の特徴を備えているもの)は、いずれも車両用灯具100に適用することができる。
【0068】
なお、以下においては、一例として、車両用灯具100が自動車に設けられるフロントコンビネーションライトである場合を説明する。ただし、車両用灯具100は、自動車に設けられるフロントコンビネーションライトに限定されるわけではない。車両用灯具100は、自動車や鉄道車両などに設けられる車両用灯具であればよい。
【0069】
図6は、車両用灯具100を例示するための模式部分断面図である。
図6に示すように、車両用灯具100は、例えば、車両用照明装置1、筐体101、カバー102、光学要素103、シール部材104、およびコネクタ105を有する。
【0070】
筐体101には、車両用照明装置1が取り付けられる。筐体101は、装着部11を保持する。筐体101は、一方の端部側が開口した箱状を呈している。筐体101は、例えば、光を透過しない樹脂などから形成される。筐体101の底面には、装着部11の、バヨネット12が設けられた部分が挿入される取付孔101aが設けられる。取付孔101aの周縁には、装着部11に設けられたバヨネット12が挿入される凹部が設けられる。なお、筐体101に取付孔101aが直接設けられる場合を例示したが、取付孔101aを有する取付部材が筐体101に設けられていてもよい。
【0071】
車両用照明装置1を車両用灯具100に取り付ける際には、装着部11のバヨネット12が設けられた部分を取付孔101aに挿入し、車両用照明装置1を回転させる。すると、例えば、取付孔101aの周縁に設けられた嵌合部にバヨネット12が保持される。この様な取り付け方法は、ツイストロックと呼ばれている。
【0072】
カバー102は、筐体101の開口を塞ぐように設けられる。カバー102は、透光性樹脂などから形成される。カバー102は、レンズなどの機能を有することもできる。
【0073】
光学要素103には、車両用照明装置1から出射した光が入射する。光学要素103は、車両用照明装置1から出射した光の反射、拡散、導光、集光、所定の配光パターンの形成などを行う。例えば、
図6に例示をした光学要素103はリフレクタである。この場合、光学要素103は、車両用照明装置1から出射した光を反射して、所定の配光パターンを形成する。
【0074】
シール部材104は、フランジ13と筐体101の間に設けられる。シール部材104は、環状を呈し、ゴムやシリコーン樹脂などの弾性を有する材料から形成される。
【0075】
車両用照明装置1が車両用灯具100に取り付けられた際には、シール部材104は、フランジ13と筐体101との間に挟まれる。そのため、シール部材104により、筐体101の内部空間を密閉することができる。また、シール部材104の弾性力により、バヨネット12が筐体101に押し付けられる。そのため、車両用照明装置1が、筐体101から脱離するのを抑制することができる。
【0076】
コネクタ105は、コネクタホルダ15の内部に露出している複数の給電端子31の端部に嵌め合わされる。コネクタ105には、点灯回路などが電気的に接続される。そのため、コネクタ105を複数の給電端子31の端部に嵌め合わせることで、点灯回路などと、発光素子22とを電気的に接続することができる。
【0077】
また、コネクタ105には、シール部材105aが設けられている。シール部材105aを有するコネクタ105が、コネクタホルダ15の内部に挿入された際には、コネクタホルダ15の内部が水密となるように密閉される。
【0078】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【0079】
以下、前述した実施形態に関する付記を示す。
【0080】
(付記1)
ソケットと;
前記ソケットの一方の端部側に設けられた基板と;
前記基板の上に設けられた発光素子と;
前記基板の上に設けられ、出力側が前記発光素子と電気的に接続された電流ドライバと、出力側が前記電流ドライバと電気的に接続された電流設定回路と、を有する制御素子と;
前記電流設定回路の入力側の端子と、前記基板のグランド端子と、の間の配線系統において、前記基板が設けられた雰囲気に露出する導電部分を覆う保護部と;
を具備した車両用照明装置。
【0081】
(付記2)
前記電流設定回路の入力側の第1の端子と電気的に接続されたサーミスタをさらに具備し、
前記保護部は、前記第1の端子、および、前記サーミスタの前記雰囲気に露出する接続端子を覆っている付記1記載の車両用照明装置。
【0082】
(付記3)
前記電流設定回路の入力側の第2の端子と電気的に接続された抵抗をさらに具備し、
前記保護部は、
前記第2の端子、および、前記抵抗の前記雰囲気に露出する接続端子、
または、
前記第2の端子、および、前記抵抗のレーザトリミング部分を覆っている付記1または2に記載の車両用照明装置。
【0083】
(付記4)
樹脂を含み、前記発光素子を覆う封止部をさらに具備し、
前記保護部は、前記封止部と同じ樹脂を含んでいる付記1~3のいずれか1つに記載の車両用照明装置。
【0084】
(付記5)
付記1~4のいずれか1つに記載の車両用照明装置と;
前記車両用照明装置が取り付けられる筐体と;
を具備した車両用灯具。
【符号の説明】
【0085】
1 車両用照明装置、10 ソケット、11 装着部、20 発光モジュール、21 基板、20a 発光回路、22 発光素子、25 回路素子、25a 抵抗、25b 保護素子、25c 制御素子、25c1 電流ドライバ、25c2 電流設定回路、25d 抵抗、25e 負特性サーミスタ、26 保護部、100 車両用灯具、101 筐体、Ia 出力電流