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特開2024-177989近赤外線吸収有機半導体インク、膜、近赤外線吸収有機半導体デバイス、および近赤外線有機光検出器
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  • 特開-近赤外線吸収有機半導体インク、膜、近赤外線吸収有機半導体デバイス、および近赤外線有機光検出器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177989
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】近赤外線吸収有機半導体インク、膜、近赤外線吸収有機半導体デバイス、および近赤外線有機光検出器
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/60 20230101AFI20241217BHJP
   H10K 30/30 20230101ALI20241217BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20241217BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20241217BHJP
【FI】
H10K30/60
H10K30/30
G01J1/02 B
H10K85/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096447
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西田 和史
【テーマコード(参考)】
2G065
3K107
5F149
【Fターム(参考)】
2G065AB02
2G065BA09
2G065CA23
3K107AA03
3K107CC03
3K107CC21
3K107DD59
3K107DD64
5F149AB11
5F149BA01
5F149BA21
5F149LA01
5F149XA33
5F149XA53
(57)【要約】      (修正有)
【課題】近赤外領域の外部量子効率(EQE)が高く、かつ、耐性(耐熱性、耐光性、耐候性)の高い近赤外線吸収有機半導体インク等々を提供する。
【解決手段】該インクは下記一般式の化合物を原料に合成できるインディゴ化合物と、p型有機半導体化合物と、n型有機半導体化合物と、有機溶剤とを含む。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)、一般式(2)、または一般式(3)で表されるインディゴ化合物(A)と、p型有機半導体化合物(B)と、n型有機半導体化合物(C)と、有機溶剤とを含むことを特徴とする近赤外線吸収有機半導体インク。

【化1】

[X~X52はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基、アミノ基、置換基を有していてもよいアルキルアミノ基、置換基を有していてもよいアリールアミノ基、置換基を有していてもよい複素環、シアノ基、ハロゲン原子を表す。X~X36で示される基のうち隣り合う2個の基は、連結してそれぞれが結合する炭素原子と共に環構造を形成してもよい。M~Mはそれぞれ独立に、Zn、Co、Ni、Pdを表す。nは重合度を示し、0以上8以下である。]
【請求項2】
さらに、添加剤として、1,8-ジヨードオクタン、または1-クロロナフタレンを含むことを特徴とする請求項1に記載の近赤外線吸収有機半導体インク。
【請求項3】
請求項1または2に記載の近赤外線吸収有機半導体インクにより形成されてなることを特徴とする膜。
【請求項4】
請求項3に記載の膜を有することを特徴とする近赤外線吸収有機半導体デバイス。
【請求項5】
光電変換層が、請求項3に記載の膜であることを特徴とする近赤外線吸収有機半導体デバイス。
【請求項6】
請求項5に記載の近赤外線吸収有機半導体デバイスを用いることを特徴とする近赤外線吸収有機光検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線吸収有機半導体インク、膜、近赤外線吸収有機半導体デバイス、および近赤外線有機光検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機光検出器は、柔軟でウェアラブルな電子機器に応用が期待されており、高性能な紫外線、および可視光の光検出器については実現されている。一方で、吸収波長が750nmを超える近赤外線領域では、生体組織内での減衰が少なく、伝播距離が長いため、科学および産業用途において非常に望まれているが、近赤外線光検出器に応用できる有機化合物は、非常に限られた数しか報告されていない。また、有機光検出は、医療診断、環境モニタリング、農業生産、自動運転技術への適用が期待されているが、外部環境下での使用用途への適応のためには、耐熱性、耐光性、耐候性といった耐性面の向上が必要である。
非特許文献1ではこれまでに開発されてきた近赤外線吸収有機半導体化合物が記載されているが、近赤外線領域において、光電変換効率に課題がある。特許文献1、2にでは、有機光電変換層において、p型有機半導体とn型有機半導体に加え、第3の化合物を加え混合させ、バルクヘテロ構造にすることで、光電変換効率を高めていることが開示されているが、近赤外線領域に関する記載はない。特許文献3では、p型半導体高分子化合物と、特異なn型有機半導体化合物と、850~1100nmに吸収極大を持ち、かつ、940nmのモル吸光係数を規定した有機色素を、活性層に用いる有機半導体デバイスが開示されているが、耐性面(耐熱性、耐光性、耐候性)に関する記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Chem.Mater.2019, 31,6539
【特許文献1】特開2015-92546号公報
【特許文献2】特開2018-129505号公報
【特許文献3】特開2022-30124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、近赤外領域の外部量子効率(EQE)が高く、かつ、耐性(耐熱性、耐光性、耐候性)の高い近赤外線吸収有機半導体インク、それを用いた膜、近赤外線吸収有機半導体デバイス、および近赤外線有機光検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記諸問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定のインディゴ化合物と、p型有機半導体化合物と、n型有機半導体化合物と、有機溶剤とを含む近赤外線吸収有機半導体インクが、近赤外線領域の光電変換効率に優れ、耐性(耐熱性、耐光性、耐候性)が高いことを見出し、本発明に至った。
【0006】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)、一般式(2)、または一般式(3)で表されるインディゴ化合物(A)と、p型有機半導体化合物(B)と、n型有機半導体化合物(C)と、有機溶剤とを含むことを特徴とする近赤外線吸収有機半導体インクに関する。
【0007】
【化1】
[X~X52はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基、アミノ基、置換基を有していてもよいアルキルアミノ基、置換基を有していてもよいアリールアミノ基、置換基を有していてもよい複素環、シアノ基、ハロゲン原子を表す。X~X36で示される基のうち隣り合う2個の基は、連結してそれぞれが結合する炭素原子と共に環構造を形成してもよい。M~Mはそれぞれ独立に、Zn、Co、Ni、Pdを表す。nは重合度を示し、0以上8以下である。]
【0008】
また、本発明は、さらに、添加剤として、1,8-ジヨードオクタン、または1-クロロナフタレンを含むことを特徴とする前記近赤外線吸収有機半導体インクに関する。
【0009】
また、本発明は、前記近赤外線吸収有機半導体インクにより形成されてなることを特徴とする膜に関する。
【0010】
また、本発明は前記膜を有することを特徴とする近赤外線吸収有機半導体デバイスに関する。
【0011】
また、本発明は、光電変換層が、前記膜であることを特徴とする近赤外線吸収有機半導体デバイスに関する。
【0012】
また、本発明は、前記近赤外線吸収有機半導体デバイスを用いることを特徴とする近赤外線吸収有機光検出器に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、近赤外領域の外部量子効率(EQE)に優れ、耐性(耐熱性、耐光性、耐候性)の高い、近赤外線吸収有機半導体インクを提供することができる。さらに、該近赤外線吸収有機半導体インクを用いた被膜、該被膜を光電変換層として具備する近赤外線吸収有機半導体デバイス、および近赤外線吸収有機光検出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の膜を備えた光電変換デバイスの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願明細書の用語を定義する。本明細書に挙げる「C.I.」は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。着色剤は、顔料および染料を含む。
【0016】
<インディゴ化合物(A)>
本発明におけるインディゴ化合物(A)は、近赤外線吸収性色素として機能する。インディゴ化合物(A)は、下記一般式(1)、一般式(2)、または一般式(3)で表される。インディゴ化合物(A)の極大吸収波長は、750nm以上の範囲が好ましく、800nm以上1300nm以下の範囲がより好ましい。
【0017】
【化2】
【0018】
~X52はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基、アミノ基、置換基を有していてもよいアルキルアミノ基、置換基を有していてもよいアリールアミノ基、置換基を有していてもよい複素環、シアノ基、ハロゲン原子を表す。X~X36で示される基のうち隣り合う2個の基は、連結してそれぞれが結合する炭素原子と共に環構造を形成してもよい。M~Mはそれぞれ独立に、Zn、Co、Ni、Pdを表す。nは重合度を示し、0以上8以下である。
【0019】
置換基を有していてもよいアルキル基は、直鎖構造、分岐構造、単環構造、又は縮合多環構造のいずれであってもよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、2-エチルヘキシル基、2-ヘキシルドデシル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、tert-オクチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボロニル基、又は4-デシルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0020】
上記アルキル基中の水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシ基、エステル基、スルホ基、スルフアニル基、スルフアモイル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アミド基などの置換基で置換されてもよい。また、置換基は複数有していてもよい。なお、置換基は上記に限定されるものではない。
【0021】
上記アルキル基は、2以上のアルキル基(但し、一方はアルキレン基となる)が連結基を介して互いに結合した構造を有してもよい。連結基の具体例として、エステル結合(-COO-)、エーテル結合(-〇-)、スルフィド結合(-S-)が挙げられる。すなわち、本明細書において、アルキル基は、例えば、「-R’-O-R」で表される基が挙げられる(R’は上記アルキル基から水素原子を1つ除いた原子団を表す)。具体例として、-C-O-Cが挙げられる。
【0022】
置換基を有していてもよいアリール基は、例えば、フェニル基、トリル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、クオーターフェニリル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、クオーターナフタレニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、へキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、又は才バレニル基等が挙げられる。
【0023】
上記アリール基中の水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシ基、エステル基、スルホ基、スルフアニル基、スルフアモイル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アミド基などの置換基で置換されてもよい。また、置換基は複数有していてもよい。なお、置換基は上記に限定されるものではない。
【0024】
置換基を有していてもよいアルコキシル基は、上述のアルキル基(-R)に酸素原子が結合した基(-OR)である。
【0025】
置換基を有していてもよいアリールオキシ基は、上述のアリール基(-Ar)に酸素原子が結合した基(-OAr)である。
【0026】
置換基を有していてもよいアリールアルキル基は、上述のアルキル基(-R)にアリール基(-Ar)が結合した基(-RAr)である。
【0027】
置換基を有してもよいアルキルチオ基は、上述のアルキル基(-R)に硫黄原子が結合した基(-SR)である。
【0028】
置換基を有していてもよいアリールチオ基は、上述のアリール基(-Ar)に硫黄原子が結合した基(-SAr)である。
【0029】
置換基を有していてもよいアルキルアミノ基は、上述のアルキル基(-R)に窒素原子が結合した2級アミノ基、3級アミノ基である。
【0030】
置換基を有していてもよいアリールアミノ基は、上述のアリール基(-Ar)に窒素原子が結合した2級アミノ基、3級アミノ基である。
【0031】
置換基を有していてもよい複素環は、5員環又は6員環構造の環の中に少なくとも2種類以上の異なる元素を含む環式化合物である。例えば、フラン、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピリジン、ピペリジン、モルフォリン、ピペラジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、ベンゾイミダゾール、キノリン、イソキノリン、カルバゾール、アクリジン、フェノキサジン、フェノチアジン、アクリドン等が挙げられる。
【0032】
上記複素環中の水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシ基、エステル基、スルホ基、スルフアニル基、スルフアモイル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アミド基などの置換基で置換されてもよい。また、置換基は複数有していてもよい。なお、置換基は上記に限定されるものではない。
【0033】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0034】
~X36で示される基のうち隣り合う2個の基は連結してそれぞれが結合する炭素原子とともに環構造を形成してもよい。該環構造は置換基を有していてもよい。
【0035】
(インディゴ化合物(A)の合成法)
インディゴ化合物(A)は、一般式(4)で表される化合物を原料に合成することができる。
【0036】
一般式(4)
【化3】
【0037】
一般式(4)中、X53~X60は、X~X52と同義である。
【0038】
一般式(4)で表される化合物は、特開2012-224593号公報に記載の合成法に従い得ることができる。
【0039】
インディゴ化合物(A)は、一般式(4)で表される化合物とホウ素化合物、または金属錯体とを反応させることで得ることができる。必要に応じ四塩化チタンや塩化アルミニウム等のルイス酸を添加する。
【0040】
反応温度は特に限定されないが、40~170℃の範囲が好ましく、より好ましくは50~130℃である。
【0041】
反応溶媒は特に限定されないが、中間体及びホウ素化合物または金属錯体が溶解するものが好ましい。具体例としては、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、ブロモベンゼン等が挙げられる。
【0042】
ホウ素化合物を使用する場合、ボリン酸エステルが好ましく、ジフェニルボリン酸2-アミノエチルが特に好ましい。
【0043】
反応時間は特に限定されないが、反応の進行をMALDI TOF-MSスペクトルや分光光度計で確認して、原料の消失を確認すればよい。
【0044】
インディゴ化合物(A)としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。なお、式中のnは重合度を示し、0以上8以下である。本発明は、これらに限定されるものではない。
【0045】
【化4】
【0046】
【化5】
【0047】
<p型有機半導体化合物(B)>
本発明において、p型有機半導体化合物(B)は、p型有機半導体特性を示すホール輸送性有機化合物であり、低分子化合物と高分子化合物が挙げられる。例えば、ルブレン誘導体、アントラセン・テトラセン・ペンタセン等のアセン誘導体、ヘテロアセン誘導体、チオフェン誘導体、チアゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、フルオレン誘導体、カルバゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、ベンゾジフラノン誘導体等が挙げられる。具体的な構造では、以下(B-1~B-4)の化合物が挙げられる。なお式中のnは重合度を示し、正の数である。本発明は、これらに限定されるものではない。
【0048】
【化6】
【0049】
<n型有機半導体化合物(C)>
本発明において、n型有機半導体化合物(C)は、n型有機半導体特性を示す電子輸送性有機化合物であり、低分子化合物と高分子化合物が挙げられる。例えば、フラーレン誘導体、ルブレン誘導体、アントラセン・テトラセン・ペンタセン等のハロゲン化アセン誘導体、ヘテロアセン誘導体、ペリレン誘導体、チオフェン誘導体、チアゾール誘導体、フルオレン誘導体、カルバゾール誘導体、ハロゲン化フタロシアニン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、ベンゾジフラノン誘導体、等が挙げられる。具体的な構造では、以下(C-1~C-4)のの化合物が挙げられる。なお式中のnは重合度を示し、正の数である。本発明は、これらに限定されるものではない。
【0050】
【化7】
【0051】
<有機溶剤>
本発明の近赤外線吸収有機半導体インクは、有機溶剤を含む。具体的には、乳酸エチル、乳酸ブチル、ベンジルアルコール、1,2,3-トリクロロプロパン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,3-ブタンジオール、1,3-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,4-ジオキサン、2-ヘプタノン、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート、3-メトキシブタノール、3-メトキシブチルアセテート、4-ヘプタノン、m-キシレン、m-ジエチルベンゼン、m-ジクロロベンゼン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、n-ブチルアルコール、n-ブチルベンゼン、n-プロピルアセテート、o-キシレン、o-クロロトルエン、o-ジエチルベンゼン、o-ジクロロベンゼン、p-クロロトルエン、p-ジエチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、γ-ブチロラクトン、イソブチルアルコール、イソホロン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノールアセテート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ダイアセトンアルコール、トリアセチン、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、N-メチルピロリドン、ベンジルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノール、酢酸n-アミル、酢酸n-ブチル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、二塩基酸エステル等が挙げられるが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0052】
<近赤外線吸収有機半導体インク>
本発明の近赤外線吸収有機半導体インクは、インディゴ化合物(A)と、p型有機半導体化合物(B)と、n型半導体有機化合物(C)と、有機溶剤とを含む。
【0053】
近赤外線吸収有機半導体インク中の、インディゴ化合物(A)は0.2質量%以上、1.0質量%以下が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上がさらに好ましい。
【0054】
近赤外線吸収有機半導体インク中の、p型有機半導体化合物(B)は0.4質量%以上、1.5質量%以下が好ましく、0.6質量%以上がより好ましく、0.8質量%以上がさらに好ましい。
【0055】
近赤外線吸収有機半導体インク中の、n型半導体有機化合物(C)は0.6質量%以上、2.0%質量%以下が好ましく、0.8質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上がさらに好ましい。
【0056】
近赤外線吸収有機半導体インク中の有機溶剤は、塗布性の点から、トルエン、キシレン、クロロホルム、1-クロロベンゼンが好ましい。
【0057】
近赤外線吸収有機半導体インク中の有機溶剤は、単独又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0058】
<添加剤>
近赤外線吸収有機半導体インクは、インディゴ化合物(A)と、p型有機半導体化合物(B)と、n型半導体有機化合物(C)とのバルクヘテロ構造を安定化する目的から、添加剤として、1,8-ジヨードオクタンまたは1-クロロナフタレンを含有することが望ましい。1,8-ジヨードオクタンまたは1-クロロナフタレンは、p型有機半導体化合物(B)と、n型半導体有機化合物(C)のπスタッキングを促進し、p型有機半導体化合物(B)と、n型半導体有機化合物(C)とのバルクヘテロ構造形成を促進できる。
【0059】
近赤外線吸収有機半導体インク中の有機溶剤全量に対して、1,8-ジヨードオクタン、または1-クロロナフタレンを、0.5~5.0体積%添加することが好ましく、1.0~3.0体積%であることがより好ましく、1.5~2.5体積%であることがさらに好ましい。
【0060】
<膜>
本発明の近赤外線吸収有機半導体インクを用いた被膜の作成には、スピンコート方式、インクジェット方式、シルクスクリーン方式、バーコーター方式、転写方式、スプレー方式を使用することが挙げられるが、これらに限定されるものではない。簡便性の観点からスピンコート方式が好ましい。
【0061】
<近赤外線吸収有機半導体デバイス>
本発明の近赤外線吸収有機半導体インクより形成された被膜を用いた近赤外線吸収有機半導体デバイスとして、有機電界効果トランジスタ、及び、有機光検出器や有機薄膜太陽電池といった光電変換デバイスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。高い近赤外線領域の吸収を持つインディゴ化合物(A)を添加する観点から、光電変換デバイスが好ましく、有機光検出器がさらに好ましい。
【0062】
(光電変換デバイス)
光電変換デバイス構造の具体例を図1に示すが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0063】
電極素材としては、銀、金、白金、銅、鉄、亜鉛、錫、アルミニウム、インジウム、ニッケル、コバルト、スカンジウム、イットリウム、バナジウム、インジウム、イイテルビウム、リチウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、などの金属、インジウム、錫、モリブデン、ニッケルなどの金属酸化物、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム亜鉛酸化物(GZO)などの複合金属酸化物が挙げられるが、本発明は、これらに限定されるものではない。正極、および負極の少なくとも一方が透明であることが好ましい。透明電極は、400nm以上の可視領域の平均透過率が80%以上であることが好ましい。
【0064】
正孔ブロック層、および電子ブロック層の素材としては、ポリチオフェン系ポリマー、ポリフルオレンポリマー、ポリピロールポリマーなどの導電性ポリマーや、グラフェン、モリブデン、タングステン、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、亜鉛、銅、ルテニウムなどの金属酸化物が挙げられるが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0065】
<近赤外線吸収有機光検出器>
本発明の近赤外線吸収有機半導体デバイスは、近赤外線吸収有機光検出器として、光センサーや撮像素子に備えられ使用することができる。近赤外線吸収性色素として機能するインディゴ化合物(A)が含まれるため、近赤外線領域の光を検出することに優れている。
【実施例0066】
以下、実施例で本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。なお、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」である。
【0067】
実施例に先立ち、各測定方法について説明する。
【0068】
(化合物の同定方法)
本発明に用いた化合物の同定には、赤外吸収スペクトル、およびMALDI TOF-MSスペクトルを用いた。MALDI TOF-MSスペクトルは、ブルカー・ダルトニクス社製MALDI質量分析装置autoflexIIIを用い、得られたポジティブモードおよび、ネガティブモードにおけるマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって、得られた化合物を同定した。
【0069】
(インディゴ化合物(A)の極大吸収波長)
インディゴ化合物(A)の極大吸収波長は、インディゴ化合物(A)を1-クロロベンゼンで20ppm溶液にした後、400~1300nmの範囲の吸収スペクトルにおいて、最大の吸光度を示す波長を極大吸収波長として、紫外可視近赤外分光光度計U-4150(日立ハイテクノロジーズ社製)により測定した。
【0070】
<インディゴ化合物(A)の製造>
(インディゴ組成物(A-1)の製造)
【化8】
【0071】
4口フラスコに、アニリンを26.6部、ブロモベンゼンを120部、およびジアザビシクロオクタンを53.5部加え、20分攪拌した。その後、四塩化チタンを45.2部、滴下した。30分撹拌した後、インディゴを25.0部加え、窒素雰囲気下、10時間加熱還流した。反応終了後、メタノールを500部加え、ろ過し、粉末を得た。これをジクロロメタンと水で分液を行い、有機層を濃縮することで、化合物(1)を25.6部得た。
4口フラスコに、化合物(1)を10部、酢酸ニッケル(II)4水和物を18.10部、とテトラヒドロフランを120部混合攪拌し、昇温後40℃で5時間攪拌した。攪拌したまま30℃まで冷却した反応溶液を、メタノール500部へ攪拌しながら注入し、スラリーを得た。このスラリーをろ過し、メタノール500部で洗浄した後に、固形分を乾燥して、(A-1)で表されるインディゴ組成物8.6部を得た。nはMALDI TOF-MSスペクトル上では0以上8以下であり、最も大きな極大吸収波長は、820nmであった。
【0072】
(インディゴ組成物(A-2)の製造)
【化9】
【0073】
4口フラスコに、6,6-ジブロモインディゴを25部、フェノチアジンを26.6部、炭酸セシウムを77.6部、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)を1.4部、XPhosを1.4部、トルエンを120部加え、10時間加熱還流した。反応終了後、ヘキサンを100部加え、ろ過し、粉末を得た。これをジクロロメタンと水で分液を行い、有機層を濃縮することで、化合物(2)を25.8部得た。
窒素雰囲気化の4口フラスコに、アニリン10.7部、ブロモベンゼン120部、およびジアザビシクロオクタン21.4部を加え、攪拌した。その後、四塩化チタンを18.1部、滴下した。30分撹拌した後、化合物(2)を25部加え、10時間加熱還流した。反応終了後、メタノールを加え、ろ過し、緑色粉末を得た。これをジクロロメタンと水で分液を行い、有機層を濃縮することで、化合物(3)を18.7部得た。
4口フラスコに、化合物(3)を10部、酢酸亜鉛2水和物を8.2部、とテトラヒドロフランを120部混合攪拌し、昇温後40℃で5時間攪拌した。攪拌したまま30℃まで冷却した反応溶液を、メタノール500部へ攪拌しながら注入し、スラリーを得た。このスラリーをろ過し、メタノール500部で洗浄し、乾燥して、7.7部のインディゴ組成物(A-2)を得た。nはMALDI TOF-MSスペクトル上では0以上8以下であり、最も大きな極大吸収波長は、940nmであった。
【0074】
(インディゴ組成物(A-3)の製造)
【化10】
【0075】
3口フラスコに、4-メトキシアニリンを25部、硫化水素ナトリウムを1.9部、2-エチルヘキサノールを31.7部、脱水トルエンを250mL加え、窒素雰囲気下、10時間加熱還流した。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却し、水と酢酸エチルで分液抽出した。抽出溶液を飽和食塩水で洗浄した後に、抽出液に無水硫酸ナトリウム30gを加え、15分静置した。硫酸ナトリウムをろ別後、抽出液の溶媒を留去した。得られた反応物を蒸留精製することで、化合物(4)を33.7部得た。
4口フラスコに、化合物(4)を63.3部、ブロモベンゼンを120部、およびジアザビシクロオクタンを53.5部加え、20分攪拌した。その後、四塩化チタンを45.2部、滴下した。30分撹拌した後、インディゴを10.0部加え、窒素雰囲気下、10時間加熱還流した。反応終了後、メタノールを500部加え、ろ過し、粉末を得た。これをジクロロメタンと水で分液を行い、有機層を濃縮することで、化合物(5)を42.1部得た。
4口フラスコに、化合物(5)を10部、酢酸亜鉛2水和物を9.8部、とテトラヒドロフランを120部混合攪拌し、昇温後40℃で5時間攪拌した。攪拌したまま30℃まで冷却した反応溶液を、メタノール500部へ攪拌しながら注入し、スラリーを得た。このスラリーをろ過し、メタノール500部で洗浄した後に、固形分を乾燥して、8.1部のインディゴ組成物(A-3)を得た。nはMALDI TOF-MSスペクトル上では1以上5以下であり、最も大きな極大吸収波長は、840nmであった。
【0076】
(インディゴ化合物(A-4)の製造)
【化11】
【0077】
4口フラスコに、化合物(4)を55.7部、ブロモベンゼンを120部、およびジアザビシクロオクタンを47部加え、20分攪拌した。その後、四塩化チタンを39.7部、滴下した。30分撹拌した後、6,6-ジフルオロインディゴを25.0部加え、窒素雰囲気下、10時間加熱還流した。反応終了後、メタノールを500部加え、ろ過し、粉末を得た。これをジクロロメタンと水で分液を行い、有機層を濃縮することで、化合物(6)を42部得た。
4口フラスコに、化合物(6)を13.5部、亜鉛(II)アセチルアセトナートを8.2部、とテトラヒドロフランを120部混合攪拌し、昇温後40℃で5時間攪拌した。攪拌したまま30℃まで冷却した反応溶液を、メタノール500部へ攪拌しながら注入し、スラリーを得た。このスラリーをろ過し、メタノール500部で洗浄した後に、固形分を乾燥して、9.7部のインディゴ化合物(A-4)を得た。極大吸収波長は、845nmであった。
【0078】
(インディゴ化合物(A-5)の製造)
【化12】
【0079】
4口フラスコに、6,6-ジブロモインディゴを25部、フェノキサジンを32.7部、炭酸セシウムを77.6部、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)を1.4部、XPhosを1.4部、トルエンを120部加え、10時間加熱還流した。反応終了後、ヘキサンを100部加え、ろ過し、粉末を得た。これをジクロロメタンと水で分液を行い、有機層を濃縮することで、化合物(7)を23.8部得た。
窒素雰囲気化の4口フラスコに、2-ナフチルアミン17.2部、ブロモベンゼン120部、およびジアザビシクロオクタン22.4部を加え、攪拌した。その後、四塩化チタンを19部、滴下した。30分撹拌した後、化合物(7)を22.1部加え、10時間加熱還流した。反応終了後、メタノールを加え、ろ過し、緑色粉末を得た。これをジクロロメタンと水で分液を行い、有機層を濃縮することで、化合物(8)を22.1部得た。
4口フラスコに、化合物(8)を13.5部、パラジウムアセチルアセトナートを7.7部、とテトラヒドロフランを120部混合攪拌し、昇温後40℃で5時間攪拌した。攪拌したまま30℃まで冷却した反応溶液を、メタノール500部へ攪拌しながら注入し、スラリーを得た。このスラリーをろ過し、メタノール500部で洗浄した後に、固形分を乾燥して、9.0部のインディゴ化合物(A-5)を得た。極大吸収波長は、940nmであった。
【0080】
(インディゴ化合物(A-6)の製造)
【化13】
【0081】
4口フラスコに、6,6-ジブロモインディゴを25部、ジフェニルアミンを30.2部、炭酸セシウムを77.6部、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)を1.4部、XPhosを1.4部、トルエンを120部加え、10時間加熱還流した。反応終了後、ヘキサンを100部加え、ろ過し、粉末を得た。これをジクロロメタンと水で分液を行い、有機層を濃縮することで、化合物(9)を24.9部得た。
窒素雰囲気化の4口フラスコに、3,5-ジメチルアニリン15.2部、ブロモベンゼン120部、およびジアザビシクロオクタン23.5部を加え、攪拌した。その後、四塩化チタンを19.9部、滴下した。30分撹拌した後、化合物(9)を25部加え、10時間加熱還流した。反応終了後、メタノールを加え、ろ過し、緑色粉末を得た。これをジクロロメタンと水で分液を行い、有機層を濃縮することで、化合物(10)を23.6部得た。
4口フラスコに、化合物(10)を10部、コバルトアセチルアセトナートを7.0部、とテトラヒドロフランを120部混合攪拌し、昇温後40℃で5時間攪拌した。攪拌したまま30℃まで冷却した反応溶液を、メタノール500部へ攪拌しながら注入し、スラリーを得た。このスラリーをろ過し、メタノール500部で洗浄し、乾燥して、9.2部のインディゴ化合物(A-6)を得た。極大吸収波長は、960nmであった。
【0082】
(インディゴ化合物(A-7)の製造)
【化14】
【0083】
4口フラスコに、6,6-ジブロモインディゴを25部、9(10H)-アクリドンを34.9部、炭酸セシウムを77.6部、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)を1.4部、XPhosを1.4部、トルエンを120部加え、10時間加熱還流した。反応終了後、ヘキサンを100部加え、ろ過し、粉末を得た。これをジクロロメタンと水で分液を行い、有機層を濃縮することで、化合物(11)を18.5部得た。
窒素雰囲気化の4口フラスコに、4-ヘトキシアニリン22.3部、ブロモベンゼン120部、およびジアザビシクロオクタン21.6部を加え、攪拌した。その後、四塩化チタンを18.3部、滴下した。30分撹拌した後、化合物(11)を25部加え、10時間加熱還流した。反応終了後、メタノールを加え、ろ過し、緑色粉末を得た。これをジクロロメタンと水で分液を行い、有機層を濃縮することで、化合物(12)を20部得た。
4口フラスコに、化合物(12)を10部、亜鉛(II)アセチルアセトナートを5.8部、とテトラヒドロフランを120部混合攪拌し、昇温後40℃で5時間攪拌した。攪拌したまま30℃まで冷却した反応溶液を、メタノール500部へ攪拌しながら注入し、スラリーを得た。このスラリーをろ過し、メタノール500部で洗浄し、乾燥して、8.4部のインディゴ化合物(A-7)を得た。極大吸収波長は、900nmであった。
【0084】
(インディゴ化合物(A-8)の製造)
【化15】
【0085】
窒素雰囲気化の4口フラスコに、3,4-ジフルオロアニリン33.4部、ブロモベンゼン120部、およびジアザビシクロオクタン48.3部を加え、攪拌した。その後、四塩化チタンを40.8部、滴下した。30分撹拌した後、6-メチルインディゴを25部加え、10時間加熱還流した。反応終了後、メタノールを加え、ろ過し、緑色粉末を得た。これをジクロロメタンと水で分液を行い、有機層を濃縮することで、化合物(13)を部得た。
窒素雰囲気化の4口フラスコに、化合物(13)を10部、ジフェニルボリン酸2-アミノエチルを13.2部、と脱水テトラヒドロフランを120部混合攪拌し、その後、四塩化チタンを9.3部、滴下した。滴下終了後、2時間加熱還流した。攪拌したまま30℃まで冷却した反応溶液を、メタノール500部へ攪拌しながら注入し、スラリーを得た。このスラリーをろ過し、メタノール500部で洗浄し、乾燥して、12.3部のインディゴ化合物(A-8)を得た。極大吸収波長は、1030nmであった。
【0086】
(インディゴ化合物(A-9)の製造)
【化16】
【0087】
4口フラスコに、6,6-ジブロモインディゴを25部、モルフォリンを29.5部、炭酸セシウムを77.6部、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)を1.4部、XPhosを1.4部、トルエンを120部加え、10時間加熱還流した。反応終了後、ヘキサンを100部加え、ろ過し、粉末を得た。これをジクロロメタンと水で分液を行い、有機層を濃縮することで、化合物(14)を18.5部得た。
窒素雰囲気化の4口フラスコに、2-ヘトキシアニリン28.7部、ブロモベンゼン120部、およびジアザビシクロオクタン32.4部を加え、攪拌した。その後、四塩化チタンを27.4部、滴下した。30分撹拌した後、化合物(14)を25部加え、10時間加熱還流した。反応終了後、メタノールを加え、ろ過し、緑色粉末を得た。これをジクロロメタンと水で分液を行い、有機層を濃縮することで、化合物(15)を26.5部得た。
窒素雰囲気化の4口フラスコに、化合物(15)を10部、ジフェニルボリン酸2-アミノエチルを9.3部、と脱水テトラヒドロフランを120部混合攪拌し、その後、四塩化チタンを6.5部、滴下した。滴下終了後、2時間加熱還流した。攪拌したまま30℃まで冷却した反応溶液を、メタノール500部へ攪拌しながら注入し、スラリーを得た。このスラリーをろ過し、メタノール500部で洗浄し、乾燥して、10.3部のインディゴ化合物(A-9)を得た。極大吸収波長は、1100nmであった。
【0088】
(比較化合物1)
日本カーリット株式会社製ジイモニウム系色素(CIR-108X)(極大吸収波長は1070nm)
【0089】
<近赤外線吸収有機半導体インクの製造>
[実施例1]
(近赤外線吸収有機半導体インク(D-1))
下記の組成の混合物をマヨネーズ瓶に加え、60℃で4時間撹拌混合した後、0.5μmのフィルタで濾過し、近赤外線吸収有機半導体インクを作製した。
p型有機半導体化合物(B-1)、n型有機半導体化合物(C-1)は、上述したp型有機半導体化合物(B)、n型有機半導体化合物(C)の具体例で挙げた化合物を用いた。

インディゴ組成物(A-1) :0.04g
p型有機半導体化合物(B-1) :0.08g
n型有機半導体化合物(C-1) :0.12g
有機溶剤1:1-クロロベンゼン :10.0mL
有機溶剤2:1,8-ジヨードオクタン :0.2mL
【0090】
[実施例2~44、比較例1~4]
(近赤外線吸収有機半導体インク(D-2)~(D-48))
以下、インディゴ組成物、インディゴ化合物、または比較化合物、p型有機半導体化合物、n型有機半導体化合物、有機溶剤を表1に示す組成、量に変更した以外は近赤外線吸収有機半導体インク(D-1)と同様にして、近赤外線吸収有機半導体インク(D-2)~(D-48)を調整した。
p型有機半導体化合物(B-1)~(B-4)、n型有機半導体化合物(C-1)~(C-4)は、上述したp型有機半導体化合物(B)、n型有機半導体化合物(C)の具体例で挙げた化合物を用いた。
【0091】
【表1】
【0092】
<近赤外線吸収有機半導体デバイスの製造>
[実施例100]
(近赤外線吸収有機半導体デバイス(E-1))
ITO膜がパターニングされたガラス基板をトルエン、アセトン、超純水、イソプロピルアルコールでそれぞれ20分間超音波洗浄した後、プラズマ洗浄機に入れて、基板表面を20分間洗浄処理した。次に、オゾンUVを30分間照射した後に、電子ブロック層としてPEDOT:PSS薄膜の厚さが60nmとなるように、スピンコート装置により形成し、120℃で30分間加熱処理した。
次いで、近赤外線吸収有機半導体インク(D-1)を膜の厚さが100nmとなるように、スピンコート装置により塗工し、150℃で10分間加熱処理をして、近赤外線吸収有機半導体層を形成させ、積層体を得た。
その後、小型高真空蒸着装置を用い、作製した前記積層体を高真空蒸着装置中のマスクの上に置き、正孔ブロック層としてCa(20nm)、及び正極としてのAl層(80nm)を順次製膜し近赤外線吸収有機半導体デバイス(E-1)を作製した。
【0093】
[実施例101~143、比較例100~103]
(近赤外線吸収有機半導体デバイス(E-2)~(E-48))
以下、近赤外線吸収有機半導体インクを表2に示す組成に変更した以外は近赤外線吸収有機半導体デバイス(E-1)と同様にして、近赤外線吸収有機半導体デバイス(E-2)~(D-48)を調整した。
【0094】
[実施例200]
(近赤外線吸収有機半導体デバイス(F-1))
ITO膜がパターニングされたガラス基板をトルエン、アセトン、超純水、イソプロピルアルコールでそれぞれ20分間超音波洗浄した後、プラズマ洗浄機に入れて、プラズマにより基板表面を20分間洗浄処理した。次に、オゾンUVを30分間照射した後に、正孔ブロック層としてAvantama-N10(ZnO、2.5wt%イソプロパノール分散液)を用いて厚さが60nmとなるように、スピンコート装置により形成し、90℃で30分間加熱処理した。
次いで、近赤外線吸収有機半導体インク(D-1)を膜の厚さが100nmとなるように、スピンコート装置により塗工し、150℃で10分間加熱処理をして、近赤外線吸収有機半導体層を形成させ、積層体を得た。
その後、小型高真空蒸着装置を用い、作製した前記積層体を高真空蒸着装置中のマスクの上に置き、電子ブロック層としてMoO(10nm)、及び負極としてのAu層(80nm)を順次製膜し近赤外線吸収有機半導体デバイス(F-1)を作製した。
【0095】
[実施例201~243、比較例200~203]
(近赤外線吸収有機半導体デバイス(F-2)~(F-48))
以下、近赤外線吸収有機半導体インクを表3に示す組成に変更した以外は近赤外線吸収有機半導体デバイス(F-1)と同様にして、近赤外線吸収有機半導体デバイス(F-2)~(F-48)を調整した。
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】
<近赤外線吸収有機半導体デバイスの光検出器としての評価>
(外部量子効率(EQE)の評価)
得られた近赤外線吸収有機半導体デバイスを光電変換素子として使用するため、電流-電圧を測定した。バイアス1Vを印加したときの940nmにおける外部量子効率(EQE)を測定した。実施例と比較例のEQEに対して、下記式から相対的なEQEを算出して評価した。2以上が実用上問題なく使用できる。結果を表4-1、4-2に示す。

[実施例100~110の相対EQE]
相対EQE=(実施例のEQE)÷(比較例100のEQE)×100

[実施例111~121の相対EQE]
相対EQE=(実施例のEQE)÷(比較例101のEQE)×100

[実施例122~132の相対EQE]
相対EQE=(実施例のEQE)÷(比較例102のEQE)×100

[実施例133~143の相対EQE]
相対EQE=(実施例のEQE)÷(比較例103のEQE)×100

[実施例200~210の相対EQE]
相対EQE=(実施例のEQE)÷(比較例200のEQE)×100

[実施例211~221の相対EQE]
相対EQE=(実施例のEQE)÷(比較例201のEQE)×100

[実施例222~232の相対EQE]
相対EQE=(実施例のEQE)÷(比較例202のEQE)×100

[実施例233~243の相対EQE]
相対EQE=(実施例のEQE)÷(比較例203のEQE)×100

3:相対EQEが101.5%以上
2:相対EQEが100.5%以上、101.5%未満
1:相対EQEが100.5%未満
【0099】
【表4-1】
【0100】
【表4-2】
【0101】
表4-1、4-2の結果から、p型有機半導体、n型有機半導体の種類、及び素子構成に関わらず実施例100~143、200~243は、比較例よりも940nmの相対EQEが優れていることが判明した。
【0102】
(耐熱性試験)
得られた近赤外線吸収有機半導体デバイス(F-1)~(F-48)の耐熱性試験として、130℃で12時間追加加熱した後に、電流-電圧を測定した。バイアス1Vを印加したときの940nmにおける外部量子効率(EQE)を測定した。この追加加熱前のEQE、および追加加熱後のEQEの値から、下記式で残存率を算出し、耐熱性を評価した。2以上が実用上問題なく使用できる。結果を表5に示す。

残存率=(追加加熱後のEQE)÷(追加加熱前のEQE)×100

3:残存率 が90%以上
2:残存率 が85%以上、90%未満
1:残存率 が85%未満
【0103】
(耐光性試験の評価)
得られた近赤外線吸収有機半導体デバイス基板上に紫外線カットフィルター(ホヤ社製「COLOREDOPTICAL GLASS L38」)を貼り、耐光性試験機(TOYOSEIKI社製「SUNTEST CPS+」)を用い、470W/m2のキセノンランプを用いて紫外線を24時間の条件下で放置した後に、電流-電圧を測定した。バイアス1Vを印加したときの940nmにおける外部量子効率(EQE)を測定した。この耐光性試験前のEQE、および耐光性試験後のEQEの値から、下記式で残存率を算出し、耐光性を評価した。2以上が実用上問題なく使用できる。結果を表5に示す。

残存率=(耐光性試験後のEQE)÷(耐光性試験前のEQE)×100

3:残存率 が90%以上
2:残存率 が85%以上、90%未満
1:残存率 が85%未満
【0104】
(耐候性試験の評価)
得られた近赤外線吸収有機半導体デバイス基板上に紫外線カットフィルター(ホヤ社製「COLORED OPTICAL GLASS L38」)を貼り、超促進耐候性試験機(岩崎電気社製、アイスーパーキセノンテスターSUV-W151)を用い、900W/m2、48時間(昼夜12時間の2サイクル)の条件下で放置した後に、電流-電圧を測定した。バイアス1Vを印加したときの940nmにおける外部量子効率(EQE)を測定した。この耐候性試験前のEQE、および耐候性試験後のEQEの値から、下記式で残存率を算出し、耐光性を評価した。2以上が実用上問題なく使用できる。結果を表5に示す。

残存率=(耐候性試験後のEQE)÷(耐候性試験前のEQE)×100

3:残存率 が90%以上
2:残存率 が85%以上、90%未満
1:残存率 が85%未満
【0105】
【表5】
【0106】
表5の結果から、p型有機半導体、n型有機半導体の種類に関わらず実施例300~343は、比較例よりも耐熱性、耐光性、および耐候性が優れていることが判明した。
図1