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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177999
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】検知装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/60 20170101AFI20241217BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20241217BHJP
   G06V 10/26 20220101ALI20241217BHJP
【FI】
G06T7/60 150Z
G06T7/00 350B
G06V10/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096461
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500081093
【氏名又は名称】株式会社JR東日本環境アクセス
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 虎
(72)【発明者】
【氏名】北川 朝靖
(72)【発明者】
【氏名】勝俣 翠
(72)【発明者】
【氏名】内田 景太朗
(72)【発明者】
【氏名】中尾 清孝
(72)【発明者】
【氏名】相京 凌弐
(72)【発明者】
【氏名】栄 祐実
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA06
5L096AA09
5L096BA02
5L096CA05
5L096DA02
5L096GA08
5L096GA51
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】対象物を撮影する画像に遮蔽物が写り込む可能性がある場合に、その画像を用いて対象物の汚れを検知する精度を向上させる。
【解決手段】検知装置20は、異なる時刻に対象物を撮影した二つの画像の少なくとも一方に遮蔽物が検出された場合に二つの画像の両方から遮蔽物の占める部分を除外して、残りの領域の差から対象物の汚れの量を検知する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる時刻に対象物を撮影した二つの画像の少なくとも一方に遮蔽物が検出された場合に該二つの画像の両方から該遮蔽物の占める部分を除外して、残りの領域の差から前記対象物の汚れの量を検知する検知装置。
【請求項2】
前記差から前記対象物のうち前記汚れの多い部分を検知する
請求項1に記載の検知装置。
【請求項3】
前記量が閾値を超えた場合に通知する
請求項1に記載の検知装置。
【請求項4】
予め決められた所定遮蔽物について機械学習した学習済みモデルを用いて前記遮蔽物を検出する
請求項1に記載の検知装置。
【請求項5】
前記差は、前記領域の輝度の差である
請求項1に記載の検知装置。
【請求項6】
前記対象物を含む、撮影された物までの距離を測定し、測定された該距離に基づいて前記遮蔽物を検出する
請求項1に記載の検知装置。
【請求項7】
前記物を閾値未満の時間差で異なる位置からそれぞれ撮影した複数の画像によって前記物までの距離を測定する
請求項6に記載の検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の汚れを検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理により対象物の汚れを検知する技術が知られている。例えば特許文献1には、カメラにより撮影された現時刻の画像と1つ前の画像との差分により、カメラのレンズに付着した付着物を検出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-273014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術では、カメラにより撮影された画像に人物等の遮蔽物が写り込むと、その遮蔽物が汚れとして誤検知される可能性がある。
【0005】
本発明は、対象物を撮影する画像に遮蔽物が写り込む可能性がある場合に、その画像を用いて対象物の汚れを検知する精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、異なる時刻に対象物を撮影した二つの画像の少なくとも一方に遮蔽物が検出された場合に該二つの画像の両方から該遮蔽物の占める部分を除外して、残りの領域の差から前記対象物の汚れの量を検知する検知装置を提供する。
【0007】
前記検知装置は、前記差から前記対象物のうち前記汚れの多い部分を検知してもよい。
【0008】
前記検知装置は、前記量が閾値を超えた場合に通知してもよい。
【0009】
前記検知装置は、予め決められた所定遮蔽物について機械学習した学習済みモデルを用いて前記遮蔽物を検出してもよい。
【0010】
前記差は、前記領域の輝度の差であってもよい。
【0011】
前記検知装置は、前記対象物を含む、撮影された物までの距離を測定し、測定された該距離に基づいて前記遮蔽物を検出してもよい。
【0012】
前記検知装置は、前記物を閾値未満の時間差で異なる位置からそれぞれ撮影した複数の画像によって前記物までの距離を測定してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、対象物を撮影する画像に遮蔽物が写り込む可能性がある場合に、その画像を用いて対象物の汚れを検知する精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】汚れ検知システムの構成を例示する図。
図2】カメラによる対象物の撮影を例示する図。
図3】汚れ検知処理を例示するフローチャート。
図4】突発汚れ検知処理の詳細を例示するフローチャート。
図5】突発汚れを検知するための画像処理の一例を説明する図。
図6】突発汚れを検知するための画像処理の一例を説明する図。
図7】突発汚れを検知するための画像処理の一例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<構成>
図1は、汚れ検知システム1の構成を例示する図である。汚れ検知システム1は、例えば駅に設置され、床、壁、窓等の清掃対象物の汚れを検知し、清掃作業を促す。なお、汚れ検知システム1が設置される場所は駅に限定されず、商業施設等の駅以外の場所でもよい。汚れ検知システム1は、複数のカメラ10と、検知装置20とを備える。複数のカメラ10と検知装置20とは、有線又は無線のネットワーク2を介して通信可能に接続されている。
【0016】
図2は、カメラ10による清掃対象物の撮影を例示する図である。カメラ10は、清掃対象物を撮影し得る位置に設置された固定カメラであり、清掃対象物の画像を撮影する。なお、カメラ10の撮影により得られる画像は、デジタル画像データである。図2(a)に示される例では、カメラ10は、駅の天井付近に設置され、床101の一部と壁102の一部とを含む撮影範囲103の画像を撮影する。図2(b)は、このカメラ10により撮影された画像100を例示する図である。図2(b)に示されるように、画像100には、床101の一部と壁102の一部とが写っている。カメラ10は、5分等の所定の時間間隔で画像を撮影し、撮影した画像に撮影日時を付加して検知装置20に順次送信する。なお、カメラ10は必ずしも同じ時間間隔で画像を撮影しなくてもよく、異なる時間間隔で画像を撮影してもよい。また、画像には撮影日時に代えて、撮影された順序を示す通し番号等の情報が付加されてもよい。
【0017】
図1に戻り、検知装置20は、カメラ10により撮影された画像に画像処理を施すことにより、清掃対象物の汚れを検知する汚れ検知処理を行う。この汚れ検知処理には、徐々に蓄積する汚れを検知する蓄積汚れ検知処理と、吐しゃ物、ポイ捨て等の突発的な汚れを検知する突発汚れ検知処理とが含まれる。検知装置20は、サーバ等のコンピュータである。検知装置20は、プロセッサ21と、通信インタフェース22と、メモリ23と、表示部24とを備える。これらの構成要素は、バスを介して接続されている。
【0018】
プロセッサ21は、検知装置20の各部の制御および演算を行う。また、プロセッサ21は、計時機能を有する。プロセッサ21の例としては、CPU(Central Processing Unit)が挙げられる。通信インタフェース22は、プロセッサ21の制御の下、ネットワーク2を介してカメラ10と通信を行う。通信インタフェース22は、カメラ10から画像を受信する。メモリ23は、汚れ検知プログラム231と画像データベース232とを記憶する。汚れ検知プログラム231は、検知装置20に汚れ検知処理を実行させるためのプログラムである。画像データベース232は、カメラ10から受信した画像を格納する。メモリ23の例としては、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリが挙げられる。表示部24は、プロセッサ21の制御の下、清掃対象物の汚れの検知に応じて清掃作業を促す警告メッセージを表示する。表示部24の例としては、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイが挙げられる。
【0019】
プロセッサ21は、メモリ23に記憶された汚れ検知プログラム231を実行して演算を行い又は検知装置20の各部を制御することにより、取得部211、切替部212、蓄積汚れ検知部213、物体検出部214、突発汚れ検知部215、判定部216、及び通知部217として機能する。これらの機能は、ソフトウェアがハードウェア資源と協働することによって実現される。
【0020】
取得部211は、通信インタフェース22によりカメラ10から画像を受信し、受信された画像と撮影日時とを関連付けて画像データベース232に格納する。また、取得部211は、カメラ10により異なる時刻に撮影された対象画像と基準画像とを画像データベース232から読み出して取得する。対象画像は、例えばカメラ10により撮影された最新の画像である。基準画像は、例えばカメラ10により最新の画像より一つ前に撮影された画像である。
【0021】
切替部212は、汚れ検知処理が実行される時刻によって、蓄積汚れ検知処理と突発汚れ検知処理とを切り替える。蓄積汚れ検知処理は、駅が閉鎖する夜間等、清掃対象物を撮影する画像に人物が写り込まない指定時間内に撮影された画像を用いて行われる。一方、突発汚れ検知処理は、指定時間外、すなわち駅が開いている時間等、清掃対象物を撮影する画像に人物が写り込む可能性がある時間に撮影された画像を用いてリアルタイムで行われる。
【0022】
蓄積汚れ検知部213は、指定時間内に撮影された対象画像に画像処理を施すことにより、蓄積汚れ検知処理を行う。より具体的には、蓄積汚れ検知部213は、対象画像の輝度値と基準値との差により蓄積汚れを検知する。基準値は、例えば初期状態の清掃対象物を撮影した画像の輝度値である。
【0023】
物体検出部214は、指定時間外に撮影された対象画像と基準画像から人物を検出する。指定時間外に撮影された画像には人物が写り込む可能性がある。物体検出部214は、画像に写り込んだ人を検出する。より具体的には、物体検出部214は、AI(Artificial Intelligence)を利用して人物を検出する。例えば物体検出部214は、人物について機械学習した機械学習済みモデルを用いて人物を検出する。また、物体検出部214は、ディープラーニングにより人物を検出してもよい。人物は、本発明に係る遮蔽物の一例である。
【0024】
なお、この実施形態では物体検出部214は人物を検出しているが、人物以外の遮蔽物を検出してもよい。物体検出部214が検出する遮蔽物は、対象画像と基準画像との差として表れる可能性がある汚れ以外の対象であればよい。より具体的には、遮蔽物は、カメラ10の撮影範囲に突発的に現れる可能性がある物である。遮蔽物の例としては、台車や電車等の移動体、一時的に置かれた物が挙げられる。機械学習済みモデルを用いて遮蔽物を検出する場合、機械学習済みモデルは予め決められた所定遮蔽物を機械学習しておく。
【0025】
突発汚れ検知部215は、指定時間外に撮影された対象画像と基準画像に画像処理を施すことにより、突発汚れ検知処理を行う。より具体的には、突発汚れ検知部215は、指定時間外に撮影された対象画像と基準画像から人物の占める部分である人領域を除外し、対象画像の輝度値と基準画像の輝度値との差から清掃対象物の突発汚れを検知する。対象画像及び基準画像のうち少なくとも一方に人物が写り込むと、清掃対象物の汚れだけでなく人物も対象画像と基準画像の差として表れる。そこで、対象画像と基準画像から人領域を除外することにより、対象画像と基準画像の差から清掃対象物の汚れだけを検知することができる。なお、この実施形態では突発汚れ検知部215は汚れの有無を検知しているが、汚れを検知するということは、検知可能な最小量以上の汚れの量を検知することを意味する。また、この実施形態では汚れを検知するための画像処理に輝度値が用いられているが、輝度値に代えて、彩度値、階調値、明度値、又は画素値が用いられてもよい。
【0026】
判定部216は、蓄積汚れ検知部213又は突発汚れ検知部215の検知結果に基づいて、清掃作業が必要か否かを判定する。例えば判定部216は、蓄積汚れ検知部213又は突発汚れ検知部215により汚れが検知された場合には清掃作業が必要であると判定し、汚れが検知されない場合には清掃作業が不要であると判定する。
【0027】
通知部217は、判定部216により清掃作業が必要であると判定された場合には、清掃作業を促す通知を行う。より具体的には、通知部217は、判定部216により清掃作業が必要であると判定された場合には、清掃作業を促す警告メッセージを表示部24に表示させる。なお、清掃作業を促す通知は警告メッセージの表示に限定されず、スピーカーからの清掃作業を促す音声の出力でもよいし、清掃員が携帯する携帯端末への清掃作業を促すメッセージの送信でもよい。
【0028】
<動作>
図3は、検知装置20が行う汚れ検知処理を例示するフローチャートである。各カメラ10は、所定の時間間隔で清掃対象物の画像を撮影し、撮影した画像に撮影日時をメタデータとして付加して検知装置20に送信する。汚れ検知処理は、カメラ10から画像を受信したことを契機として、所定の時間間隔で開始される。
【0029】
ステップS11において、取得部211は、各カメラ10から送信された画像を通信インタフェース22により受信し、受信した画像とその撮影日時とを関連付けて画像データベース232に格納する。
【0030】
ステップS12において、切替部212は、現在時刻が指定時間内であるか否かを判定する。現在時刻が指定時間内である場合(ステップS12の判定がYES)、切替部212は蓄積汚れ検知処理の実行を指示する。これにより、処理はステップS13に進む。
【0031】
ステップS13において、蓄積汚れ検知部213は、ステップS11にて受信された画像を用いて、蓄積汚れ検知処理を実行する。より具体的には、蓄積汚れ検知部213は、受信された画像を対象画像とし、対象画像の輝度値と基準値との差を算出する。上述したように、指定時間は、駅が閉鎖する夜間等の清掃対象物を撮影する画像に人物が写り込まない時間であるため、指定時間内に撮影された対象画像に人物は写っていない。そのため、対象画像の輝度値と基準値との差が閾値を超える場合には、清掃対象物に蓄積汚れが付着していることを示す。したがって、蓄積汚れ検知部213は、この差が閾値を超える場合には蓄積汚れを検知し、閾値以下の場合には蓄積汚れを検知しない。
【0032】
一方、上述したステップS12において、現在時刻が指定時間外であると判定された場合(ステップS12の判定がNO)、切替部212は突発汚れ検知処理の実行を指示する。これにより、処理はステップS14に進む。ステップS14では、突発汚れ検知処理が実行される。突発汚れ検知処理の詳細については後述する。
【0033】
ステップS15において、判定部216は、上述した蓄積汚れ検知処理又は突発汚れ検知処理の結果に基づいて清掃作業が必要か否かを判定する。例えば判定部216は、上述した蓄積汚れ検知処理又は突発汚れ検知処理において汚れが検知された場合には清掃作業が必要であると判定し、汚れが検知されなかった場合には清掃作業が不要であると判定する。清掃作業が必要であると判定された場合(ステップS15の判定がYES)、処理はステップS16に進む。
【0034】
ステップS16において、通知部217は、清掃作業を促す警告メッセージを表示部24に表示させる。そして、汚れ検知処理は終了する。一方、清掃作業が不要であると判定された場合には(ステップS15の判定がNO)、ステップS16の処理を行わずに汚れ検知処理は終了する。
【0035】
図4は、上述したステップS14の突発汚れ検知処理の詳細を例示するフローチャートである。図5~7は、突発汚れを検知するための画像処理の一例を説明する図である。
【0036】
ステップS21において、取得部211は、撮影日時を参照して対象画像と基準画像とを画像データベース232から読み出して取得する。ここでは、所定の時間間隔が5分である場合を例に挙げて説明する。現在時刻を10時05分とすると、図5に示される例では、取得部211は、まず10時05分にカメラ10により撮影された画像100Bを対象画像として画像データベース232から読み出す。続いて、取得部211は、現在時刻の5分前である10時00分に同じカメラ10により撮影された画像100Aを基準画像として画像データベース232から読み出す。この例では、画像100Aと画像100Bにはそれぞれ人物が写っている。また、画像100A及び100Bに写っている床101には10時00分の後且つ10時05分以前に汚れが発生したため、画像100Bには画像100Aにはない汚れが写っている。
【0037】
ステップS22において、物体検出部214は、ステップS21にて取得された対象画像及び基準画像の各々に対して人検出処理を施す。図5に示される例では、画像100Aには人領域105が含まれ、画像100Bには人領域106が含まれる。そのため、物体検出部214は、画像100Aから人領域105を検出し、画像100Bから人領域106を検出する。
【0038】
ステップS23において、突発汚れ検知部215は、ステップS22の人検出処理の結果に基づいて、対象画像及び基準画像の少なくとも一方に人物が写り込んでいるか否かを判定する。例えば突発汚れ検知部215は、対象画像及び基準画像の少なくとも一方から人領域が検出された場合には、対象画像及び基準画像の少なくとも一方に人物が写り込んでいると判定し、対象画像及び基準画像の何れからも人領域が検出されない場合には、対象画像及び基準画像の何れにも人物が写り込んでいないと判定する。対象画像及び基準画像の何れにも人物が写り込んでいない場合(ステップS23の判定がNO)、処理はステップS24に進む。
【0039】
ステップS24において、突発汚れ検知部215は、ステップS21にて取得された対象画像と基準画像との差分画像を作成する。より具体的には、突発汚れ検知部215は、対象画像の輝度値から基準画像の輝度値を引くことにより得られた値が0以外となる差分領域を切り取ることにより、差分画像を作成する。ステップS24において用いられる対象画像及び基準画像には人が写り込んでいないため、対象画像と基準画像とに差があるということは、清掃対象物に汚れがあることを示す。そのため、突発汚れ検知部215は、対象画像と基準画像との差分領域が差分画像に含まれる場合には突発汚れを検知する。一方、突発汚れ検知部215は、対象画像と基準画像との差分領域が差分画像に含まれず、背景領域だけが含まれる場合には突発汚れを検知しない。
【0040】
一方、上述したステップS23において対象画像及び基準画像の少なくとも一方に人物が写り込んでいると判定された場合(ステップS23の判定がYES)、処理はステップS25に進む。ステップS25において、突発汚れ検知部215は、ステップS21にて取得された対象画像及び基準画像の各々について、ステップS22にて検出された人領域をマスクしたマスク画像を作成する。すなわち、突発汚れ検知部215は、対象画像及び基準画像の両方から人領域を除外する。図5に示される例では、突発汚れ検知部215は、画像100Bに含まれる人領域106の輝度値を0に変換してマスクし、マスクした人領域106以外の領域を除去することにより、マスク画像110Bを作成する。また、突発汚れ検知部215は、画像100Aの人領域105の輝度値を0に変換してマスクし、マスクした人領域105以外の領域を除去することにより、マスク画像110Aを作成する。
【0041】
ステップS26において、突発汚れ検知部215は、ステップS25にて作成された対象画像のマスク画像と基準画像のマスク画像とを加算により合成した合成マスク画像を作成する。図5に示される例では、突発汚れ検知部215は、マスク画像110Aの輝度値とマスク画像110Bの輝度値とを画素毎に可算することにより、合成マスク画像120を作成する。合成マスク画像120には、マスク画像110Bに含まれる人領域106と画像100Aに含まれる人領域105の両方が含まれる。
【0042】
ステップS27において、突発汚れ検知部215は、ステップS26にて作成された合成マスク画像に含まれる人領域を第1色により色付けする。図7に示される例では、突発汚れ検知部215は、合成マスク画像120の人領域105及び106の輝度値、すなわち0という輝度値を第1色を示す輝度値に変換する。これにより、人領域105及び106の色が第1色となる。
【0043】
ステップS28において、突発汚れ検知部215は、ステップS21にて取得された対象画像と基準画像との差分画像を作成する。図6に示される例では、突発汚れ検知部215は、画像100Bの輝度値から画像100Aの輝度値を引くことにより得られた値が0以外となる差分領域を切り取ることにより、差分画像130を作成する。差分画像130には、人領域105、人領域106、及び汚れ領域107が差分領域として含まれる。差分画像130の背景領域の輝度値は0であり、これらの差分領域の輝度値は0以外の値である。
【0044】
ステップS29において、突発汚れ検知部215は、差分画像の差分領域を第2色により色付けする。なお、人領域と汚れ領域との区別を容易にするには、第2色は上述した第1色とは異なる色であることが好ましい。図7に示される例では、突発汚れ検知部215は、差分画像130に含まれる人領域105、人領域106、及び汚れ領域107の輝度値、すなわち0以外の輝度値を第2色を示す輝度値に変換する。これにより、人領域105、人領域106、及び汚れ領域107の色が第2色となる。
【0045】
ステップS30において、突発汚れ検知部215は、第2色で色付けされた差分画像の上に第1色で色付けされた合成マスク画像を乗算により合成した合成画像を作成する。図7に示される例では、突発汚れ検知部215は、差分画像130の輝度値と合成マスク画像120の輝度値とを画素毎に乗算することにより、合成画像140を作成する。合成画像140においては、人領域105及び人領域106と汚れ領域107とは異なる色を有するため、突発汚れ検知部215は、これらの領域の輝度値によって人領域105及び106と汚れ107とを区別して抽出することができる。汚れ領域107は、画像100A及び100Bから人領域105及び106を除外した残りの領域の差分である。人領域105及び106を除外した残りの領域に差分があるということは、清掃対象物に汚れがあることを示す。したがって、突発汚れ検知部215は、合成画像140から汚れ領域107が抽出された場合には突発汚れを検知する。一方、突発汚れ検知部215は、合成画像140から汚れ領域が抽出されない場合には突発汚れを検知しない。ステップS30の処理が完了すると、突発汚れ検知処理は終了する。
【0046】
上述したステップS16において清掃作業を促す警告メッセージが表示され、これに応じて汚れの清掃作業が行われると、清掃作業後に撮影された画像には汚れ領域は含まれなくなる。清掃作業により汚れが除去された場合にも対象画像と基準画像との間に差が生じるが、この場合には、汚れの検知及び清掃作業を促す通知は行われない方が好ましい。そこで、突発汚れ検知部215は、清掃対象物から汚れが除去された場合には、差分画像から汚れ領域が抽出されないように汚れ領域の輝度値を変換する。
【0047】
ここでは、図6に示されるように10時05分に画像100Bが撮影された後に清掃対象物の汚れが清掃作業により除去され、続いて10時10分に清掃対象物の画像が撮影された場合を想定する。この場合、突発汚れ検知処理において、10時10分に撮影された画像を対象画像、10時05分に撮影された画像100Bを基準画像として差分画像を作成すると、この差分画像において画像100Bに含まれる汚れ領域107に対応する領域の輝度値は負の値になる。差分画像において汚れ領域107に対応する領域の輝度値が負の値になるということは、清掃作業により汚れが除去されたことを示す。そこで、突発汚れ検知部215は、差分画像において汚れ領域107に対応する領域の輝度値、すなわち負の値の輝度値を背景領域の輝度値と同じ0に変換する。この輝度値の変換により汚れ領域が抽出されなくなるため、汚れの検知及び清掃作業を促す通知も行われない。
【0048】
上述した実施形態によれば、対象画像と基準画像から人物等の遮蔽物の占める領域を除外して、対象画像と基準画像の差分から清掃対象物の汚れを検知するため、清掃対象物を撮影する画像に人物等の遮蔽物が写り込んでいても遮蔽物が汚れとして誤検知されない。したがって、このような画像を用いて清掃対象物の汚れを検知する場合において、汚れを検知する精度が向上する。また、上述した実施形態によれば、駅が開いている時間等の清掃対象物を撮影する画像に人物が写り込む可能性がある時間帯にリアルタイムで汚れを検知することが可能となるため、このような時間帯に発生する突発的な汚れを検知し、迅速に汚れを清掃することが可能となる。リアルタイムで汚れの検知及び清掃作業を促す通知を行うことが可能であると、対象物に汚れが生じた時だけ清掃作業を行えばよいため、定期的に清掃作業を行う場合に比べて、清掃作業の効率が向上する。さらに、指定時間内には蓄積汚れ検知処理が行われ、指定時間外には突発汚れ検知処理が行われるため、これらの汚れ検知処理により幅広い種類の汚れの検知が可能になる。さらに、機械学習等のAIを利用して人物を検出することにより、人物の検出精度が向上する。
【0049】
<変形例>
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例は組み合わされてもよい。
【0050】
上述した実施形態において、突発汚れ検知部215は、さらに対象画像の輝度値と基準画像の輝度値との差を算出し、算出した輝度値の差に応じて汚れの量を検知してもよい。例えば突発汚れ検知部215は、算出した輝度値の差が大きいほど、汚れの量が多いと検知する。そして、突発汚れ検知部215により閾値を超える汚れの量が検知された場合、すなわち汚れの多い部分が検知された場合には、判定部216は清掃作業が必要であると判定し、通知部217は清掃作業を促す警告メッセージを表示部24に表示させてもよい。言い換えると、突発汚れ検知部215により検知された汚れの量が閾値以下の場合には、判定部216は清掃作業が不要であると判定し、通知部217は清掃作業を促す通知を行わなくてもよい。この変形例によれば、清掃対象物の汚れの量が多い場合に限り、清掃作業を促す通知を行うことができる。言い換えると、清掃対象物に汚れがある場合でも汚れの量が少ないときは、清掃作業を促す通知を行わないようにすることができる。
【0051】
上述した実施形態において、画像に写った汚れがたまたま人物のように見える場合、物体検出部214は画像に写った汚れを人物と誤検出する可能性がある。そこで、人物等の遮蔽物を検出する精度を向上させるために、物体検出部214は、カメラ10から撮影された物までの距離を加味して、遮蔽物の検出を行ってもよい。この距離を測定する方法としては、例えばステレオカメラを用いた三角測量による方法、ToF(Time Of Flight)方式の測距装置を用いた方法が挙げられるが、既知の他の方法でもよい。三角測量による方法では、カメラ10はステレオカメラであり、ステレオカメラにより同じタイミングで異なる位置からそれぞれ複数の画像を撮影して検知装置20に送信する。なお、ステレオカメラが複数の画像を撮影するタイミング必ずしも同時でなくてもよく、閾値未満の時間差があってもよい。検知装置20は、カメラ10から受信したこれらの画像を用いて三角測量の原理を利用して撮影された物までの距離を測定し、測定した距離に基づいて遮蔽物を検出する。より具体的には、カメラ10から清掃対象物までの距離は予め定められ、検知装置20のメモリ23に記憶される。AIを利用して検出した人領域により示される人候補の物の位置までの距離が予め定められた距離である場合には、この人候補は人物ではなく清掃対象物の汚れである可能性がある。そこで、物体検出部214は、カメラ10からこの人候補の物の位置までの距離が予め定められた距離である場合には、この人候補を人物として検出せず、予め定められた距離以外の距離である場合には、この人候補を人物として検出する。この変形例によれば、人物を検出する精度が向上する。
【0052】
上述した実施形態において、汚れ検知システム1の構成は上述した例に限定されない。汚れ検知システム1は、上述した装置を1つ又は複数含むように構成されてもよいし、一部の装置を含まずに構成されてもよい。検知装置20も、上述した構成要素を1つ又は複数含むように構成されてもよいし、一部の構成要素を含まずに構成されてもよい。
【0053】
上述した実施形態において、プロセッサ21はCPUに限定されず、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又は他のプログラマブル論理デバイスを含んでもよい。また、検知装置20の機能の少なくとも一部は、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の回路により実現されてもよい。
【0054】
上述した実施形態において、汚れ検知システム1及び検知装置20の動作は上述した例に限定されない。汚れ検知システム1及び検知装置20の処理手順は、矛盾の無い限り、順序が入れ替えられてもよいし、一部の処理手順が省略されてもよい。
【0055】
本発明の別の形態は、汚れ検知システム1において行われる処理のステップを有する方法を提供してもよい。また、本発明のさらに別の形態は、検知装置20において実行されるプログラムを提供してもよい。このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記憶されて提供されてもよいし、インターネット等を介したダウンロードによって提供されてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1:検知システム、2:ネットワーク、10:カメラ、20:検知装置、21:プロセッサ、22:通信インタフェース、23:メモリ、24:表示部、211:取得部、212:切替部、213:蓄積汚れ検知部、214:物体検出部、215:突発汚れ検知部、216:判定部、217:通知部
図1
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図5
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図7