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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178010
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】操作装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 65/08 20060101AFI20241217BHJP
   E05C 3/04 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
E05B65/08 R
E05C3/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096476
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 英樹
(57)【要約】
【課題】操作性を損なうことなくキ-シリンダの全長を抑え、防犯性や開閉管理のし易さを維持する。
【解決手段】装置本体1に移動可能に配設されたクレセント10と、アンロック位置に配置された場合に装置本体1に対するクレセント10の回転を許容し、ロック位置に配置された場合に装置本体1に対するクレセント10の回転を阻止するロックプレート20とを備え、前面からキーKが挿入された場合にキーシリンダ収納部1eに対してロック方向及びアンロック方向に回転可能となるキーシリンダ30を備え、ロックプレート20は、装置本体1に対してスライドすることによりロック位置とアンロック位置との間を移動され、キーシリンダ30の底板33にはロックプレート20のガイド孔22に貫通する偏芯突起33aが設けられ、キーシリンダ30には、キーKの先端部が偏芯突起33aに配置される状態でキー挿入孔31が設けられている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に移動可能に配設された操作部と、
前記装置本体に移動可能に配設され、アンロック位置に配置された場合に前記装置本体に対する前記操作部の移動を許容する一方、ロック位置に配置された場合に前記操作部に係合することによって前記装置本体に対する前記操作部の移動を阻止するロック部材と
を備えた操作装置であって、
前記装置本体には、前面からキーが挿入された場合にキーシリンダ収納部に対してロック方向及びアンロック方向に回転可能となるキーシリンダと、前記キーシリンダ及び前記ロック部材の間を連係し、前記キーシリンダが前記ロック方向に回転した場合に前記ロック部材を前記ロック位置に移動させる一方、前記キーシリンダが前記アンロック方向に回転した場合に前記ロック部材を前記アンロック位置に移動させる連係機構とが設けられ、
前記ロック部材は、前記装置本体に対してスライドすることにより前記ロック位置と前記アンロック位置との間を移動され、
前記連係機構は、前記キーシリンダの底板に設けた偏芯突起と、前記ロック部材に設けられ、前記偏芯突起の周面に係合することにより前記キーシリンダの回転に伴う前記偏芯突起の回転を前記ロック部材のスライド移動に変換するガイド面とを有し、
前記キーシリンダには、前記キーの先端部が前記偏芯突起に配置される状態でキー挿入孔が設けられていることを特徴とする操作装置。
【請求項2】
前記ガイド面には、
前記キーシリンダが前記ロック方向に回転した場合に前記ロック位置で前記偏芯突起に係合することにより以降の同方向への回転を阻止するロック側係止面と、
前記アンロック方向に回転した場合に前記アンロック位置で前記偏芯突起に係合することにより以降の同方向への回転を阻止するアンロック側係止面とが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の操作装置。
【請求項3】
前記ロック側係止面及び前記アンロック側係止面は、前記ロック部材に形成された四角形状のガイド孔の内周面に構成され、
前記偏芯突起は、断面が角柱状を成すように形成され、一つの側面を介して前記ロック側係止面及び前記アンロック側係止面に係合されることを特徴とする請求項2に記載の操作装置。
【請求項4】
前記装置本体には、前記操作部の操作に伴って回転する回転防止プレートが設けられ、
前記回転防止プレートには、回転中心を中心とした円周上の一部に係合突起が設けられ、
前記ロック部材には、前記ロック位置に配置された場合に前記係合突起に係合する当接面が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の操作装置。
【請求項5】
前記装置本体には、前記操作部の操作に伴って回転する回転防止プレートが設けられ、
前記回転防止プレートには、回転中心を中心とした円周上の一部に係合凹部が設けられ、
前記ロック部材には、前記ロック位置に配置された場合に前記係合凹部に係合する係合突起が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置本体を介して障子に取り付けられるクレセント錠や操作ハンドル等のように装置本体に対して操作部が移動可能に配設された建具用の操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
引き違い窓等の建具に適用されるクレセント錠には、装置本体にキーシリンダを備えたものが既に提供されている。すなわち、クレセントがクレセント受けに係合した施錠位置でキーシリンダをロック方向に回転させると、キーシリンダの底板に設けられた偏芯突起が装置本体に配設されたロック部材に係合し、ロック部材がロック位置に移動することでクレセントと係合した状態となる。この状態からキーを抜くとキーシリンダをアンロック方向へ回転させることができないため、ロック部材がロック位置に維持されることになり、装置本体に対するクレセントの解錠位置への移動が阻止される。これにより、例えばキーを所有していない他人の操作によってはクレセント錠を解錠させることが困難となり、不用意に障子が開放される事態を防止することができる等、防犯性の点や開閉管理のし易さで有利となる。上述の状態からキーを挿入すれば、キーシリンダをアンロック方向に回転させることが可能となり、ロック部材がアンロック位置に移動されることでクレセントとの係合状態が解除される。従って、クレセントを解錠位置に配置して障子を開放することが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-41725号公報(図5図7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の操作装置では、キーシリンダとしてディスクタンブラ式のものが多く適用されている。すなわち、キー挿入孔にキーを挿入した場合にのみ、キーシリンダ収納部との間に介在する複数のディスクタンブラのシアラインが整列することでキーシリンダ収納部に対するキーシリンダの回転が可能となるものである。このキーシリンダを適用する操作装置においては、ディスクタンブラの数ができるだけ多いことが好ましい。すなわち、ディスクタンブラの数が少ない場合には、構造が単純化されるためキーを用いることなく解錠されるおそれがある。さらに、ディスクタンブラの数が少ないと、複数のキーシリンダ間にランダム性を確保することが難しくなり、同じキーで多数のキーシリンダを回転させることが可能となる事態が懸念される。但し、これらの点を考慮してディスクタンブラの数を増やした場合には、キーシリンダの全長が拡大することになり、適用する操作装置の装置本体が大型化するため、例えばキーシリンダ収納部のみ高さが高くなり、把手長さの制限や意匠性が損なわれる等の問題が生じ得る。
【0005】
ディスクタンブラの数を減らすことなくキーシリンダの全長を抑えるには、最深部となる底板を薄く構成することが考えられる。しかしながら、底板の板厚が小さく構成されたキーシリンダにあっては、挿入したキーの先端部が貫通してキーシリンダ外部に露出することになり、キーシリンダが回転した場合にロック部材に干渉するおそれがある。このため、突出するキーとの干渉を防止して偏芯突起とロック部材との連係構造を具現化するには、偏芯突起とロック部材との連係位置を底板から十分離隔させる必要があり、結局、装置本体の寸法を縮小することが困難となる。
【0006】
因に、キーの先端部を切断すれば、底板から突出する事態を防止することは可能となる。すなわち、底板から突出する分だけキーの先端部を切断すれば、上述の問題は解決することが可能となるかもしれない。しかしながら、先端が平坦となったキーをキー挿入孔に挿入する作業はきわめて煩雑であり、操作性を著しく損なう事態を招来する。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、操作性を損なうことなくキ-シリンダの全長を抑え、かつ防犯性や開閉管理のし易さを維持することのできる操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る操作装置は、装置本体に移動可能に配設された操作部と、前記装置本体に移動可能に配設され、アンロック位置に配置された場合に前記装置本体に対する前記操作部の移動を許容する一方、ロック位置に配置された場合に前記操作部に係合することによって前記装置本体に対する前記操作部の移動を阻止するロック部材とを備えた操作装置であって、前記装置本体には、前面からキーが挿入された場合にキーシリンダ収納部に対してロック方向及びアンロック方向に回転可能となるキーシリンダと、前記キーシリンダ及び前記ロック部材の間を連係し、前記キーシリンダが前記ロック方向に回転した場合に前記ロック部材を前記ロック位置に移動させる一方、前記キーシリンダが前記アンロック方向に回転した場合に前記ロック部材を前記アンロック位置に移動させる連係機構とが設けられ、前記ロック部材は、前記装置本体に対してスライドすることにより前記ロック位置と前記アンロック位置との間を移動され、前記連係機構は、前記キーシリンダの底板に設けた偏芯突起と、前記ロック部材に設けられ、前記偏芯突起の周面に係合することにより前記キーシリンダの回転に伴う前記偏芯突起の回転を前記ロック部材のスライド移動に変換するガイド面とを有し、前記キーシリンダには、前記キーの先端部が前記偏芯突起に配置される状態でキー挿入孔が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、キーシリンダの底板から突出するとともにロック部材のガイド面に係合する偏芯突起にキーの先端部を収容させるようにしているため、底板を薄く構成した場合にもキーの先端部がキーシリンダ外部に露出する事態を防止することができる。従って、ディスクタンブラの数を減らしたり、キーの先端部を切除することなくキーシリンダの全長を抑えることが可能となり、適用する装置本体の寸法が大型化するおそれがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態である操作装置が施錠位置に配置され、かつロック部材がロック位置に配置された状態を示すもので、(a)は後面側から見た図、(b)は縦断面図である。
図2図1に示した操作装置が施錠位置に配置され、かつロック部材がアンロック位置に配置された状態を示すもので、(a)は後面側から見た図、(b)は縦断面図である。
図3図1に示した操作装置が解錠位置に配置され、かつロック部材がアンロック位置に配置された状態を示すもので、(a)は後面側から見た図、(b)は縦断面図である。
図4図1に示した操作装置に適用されるキーシリンダを前面が上方に向いた姿勢で示すもので、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図、(d)は背面図、(e)は平面図、(f)は平面図、(g)は(c)におけるX1-X1線断面図である。
図5図1に示した操作装置の装置本体のキーシリンダ収納部を後面側から見たもので、(a)はキーシリンダがアンロック方向の端部で停止した状態の図、(b)はキーシリンダがロック方向の端部で停止した状態の図である。
図6図1に示した操作装置に適用されるキーシリンダを示すもので、(a)はキーを挿入する以前の断面図、(b)はキーを挿入した状態の断面図である。
図7図6(a)に示したキーを挿入する以前のキーシリンダを示すもので、(a)はフランジ部とスロットとの間に位置する部分の断面図、(b)はフランジ部にもっとも近接したスロットの断面図、(c)は次のスロットの断面図、(d)はストッパプレートが配置されるスロットの断面図である。
図8図6(b)に示したキーを挿入した状態のキーシリンダを示すもので、(a)はフランジ部とスロットとの間に位置する部分の断面図、(b)はフランジ部にもっとも近接したスロットの断面図、(c)は次のスロットの断面図、(d)はストッパプレートが配置されるスロットの断面図である。
図9図1に示した操作装置においてキーシリンダの回転位置とロック部材との関係を示すもので、(a)はキーシリンダがアンロック方向の端部で停止した状態の図、(b)はキーシリンダが(a)の位置から反時計方向に約45°回転した状態の図、(c)はキーシリンダが(a)の位置から反時計方向に約135°回転した状態の図、(d)はキーシリンダが(a)の位置から約180°回転した状態の図である。
図10】本発明の変形例である操作装置を示すもので、(a)はロック部材がアンロック位置に配置された状態を後面側から見た図、(b)はロック部材がロック位置に配置された状態を後面側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る操作装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1図3は、本発明の実施の形態である操作装置を示すものである。ここで例示する操作装置は、引き違い窓の内障子と外障子との間に設けられるクレセント錠として提供されるものである。クレセント錠は、図には明示していないが、例えば内障子の召し合わせとなる縦框の見込み面に設けられ、外障子の召し合わせとなる縦框に設けられたクレセント受け部(図示せず)に係合することで内障子及び外障子の移動を阻止するもので、装置本体1を備えている。装置本体1は、召し合わせ框の外周側となる見込み面に取り付けられるもので、見込み面に接する面が開放した縦長の直方体状を成している。以下においては便宜上、召し合わせ框に取り付けた姿勢で装置本体1の上下を特定し、かつ開放した面を後面、対向する面を前面と称して説明を行う。
【0012】
図示の例では、樹脂もしくは金属によって成形したケース1aと、ケース1aの内部に配設した金属製の補強材1bとを備えて装置本体1が構成してある。なお、この補強材1bは必ずしも必要ではない。この装置本体1には、前面にクレセント(操作部)10が配設してあるとともに、内部にロックプレート(ロック部材)20が配設してある。
【0013】
クレセント10は、外形が円形の皿状を成すクレセント本体11と、クレセント本体11の中心部に設けた支持軸12とを備えて構成したもので、支持軸12が装置本体1の前面に直交し、かつ支持軸12の軸心回りに回転可能となる状態で装置本体1の補強材1bに支持してある。クレセント本体11は、外障子及び内障子がそれぞれ閉じ位置に配置された状態で回転することにより、外障子のクレセント受け部(図示せず)に係合する部分である。
【0014】
このクレセント10は、把手部13及び回転防止プレート14を備えている。把手部13は、クレセント本体11から径方向に沿って延在したもので、クレセント本体11と一体に回転する。図示の例では、クレセント本体11がクレセント受け部(図示せず)に係合した場合に装置本体1に対して把手部13が上方に延在し、かつクレセント本体11がクレセント受け部(図示せず)との係合状態を解除した場合に装置本体1に対して把手部13が下方に延在するように把手部13が設けてある。回転防止プレート14は、支持軸12において装置本体1の内部に位置する部分に設けた板状を成すもので、クレセント本体11と一体に回転する。回転防止プレート14には、スプリング受け部14a及び係合突起14bが設けてある。
【0015】
スプリング受け部14aは、装置本体1に設けたスプリング掛け部1cとの間に中立スプリング2を設けるためのもので、回転防止プレート14から後面側に向けて突出している。図示の例では、操作装置が施錠位置に配置されている場合に後面側から見ると、図1(a)に示すように、装置本体1に対して把手部13が上方に延在した場合に支持軸12の周囲において時計の9時となる位置にスプリング受け部14aが設けてある。スプリング受け部14aに対してスプリング掛け部1cは上方となる部分に設けてある。この状態から操作装置を解錠位置に移行させるべく把手部13を操作すると、スプリング受け部14aは、反時計方向に回転することにより支持軸12の下方を通過し、図3(a)に示すように、把手部13が下方に延在した場合に支持軸12の周囲において時計の3時となる位置に配置される。これにより、中立スプリング2のバネ力により、把手部13が常に上方に延在した状態、もしくは下方に延在した状態に維持される。
【0016】
係合突起14bは、回転防止プレート14から後面側に突出したものである。より具体的に説明すると、操作装置が施錠位置に配置されている場合に後面側から見ると、図1(a)に示すように、時計の9時の位置に配置されたスプリング受け部14aから時計の6時となる位置までの間に係合突起14bが設けてあり、時計の6時の位置となる部分にほぼ鉛直方向に沿った係合面14cが構成してある。把手部13を操作した場合には、回転防止プレート14とともに係合突起14bも回転することになる。
【0017】
ロックプレート20は、装置本体1の内部において回転防止プレート14よりも下方となる部分に配設した板状を成すもので、装置本体1の両側壁の内面1dをガイドとして上下にスライドすることが可能である。ロックプレート20には、当接面21及びガイド孔22が設けてある。当接面21は、ロックプレート20の上縁部に設けてあり、把手部13が上方に向けて延在している状態においてロックプレート20が上方に移動してロック位置に配置された場合に回転防止プレート14の係合面14cに当接して回転防止プレート14の反時計方向の回転を阻止することが可能である。装置本体1に対してロックプレート20が下方に移動してアンロック位置に配置されると、回転防止プレート14と当接面21との係合状態が解除され、装置本体1に対して回転防止プレート14の反時計方向の回転を行うことが可能となる。ガイド孔22は、後述するキーシリンダの偏芯突起33aが貫通するとともに、ガイド面となる内周面を介して偏芯突起33aに係合する貫通孔であり、ロックプレート20の下方部に設けてある。ガイド孔22の詳細形状については後に詳述する。
【0018】
また、装置本体1には、下方部にキーシリンダ収納部1eが設けてあるとともに、キーシリンダ収納部1eにキーシリンダ30が設けてある。キーシリンダ収納部1eは、中心部に円形状の摺動孔1fを形成するもので、軸心が支持軸12の軸心とほぼ平行となり、かつ装置本体1の前面から後面へ貫通している。キーシリンダ30は、図4図9に示すように、前面側にフランジ部30aを有した円柱状を成すものである。フランジ部30aの外径は、キーシリンダ収納部1eの摺動孔1fに挿入可能となる寸法に形成してある。このキーシリンダ30は、フランジ部30aが前面側となる状態で摺動孔1fの内部に回転可能に配設してある。
【0019】
キーシリンダ30には、キー挿入孔31及び3つのスロット32A,32B,32Cが設けてある。キー挿入孔31は、キーシリンダ30の前面からキーシリンダ30の軸心方向に沿って形成した貫通孔である。このキー挿入孔31には、キーシリンダ30の前面から施解錠用のキーKを挿入することが可能である。図示の例では、一方側と他方側とで互いに幅の異なる非対称形状の断面を有したキー挿入孔31が形成してあり、正しい向きに配置されたキーKのみの挿入が可能となる。
【0020】
スロット32A,32B,32Cは、それぞれキーシリンダ30の軸心に直交する方向に沿ってキーシリンダ30を貫通し、互いに平行となる状態でキーシリンダ30の軸心方向に並設してある。図7図8に示すように、スロット32A,32B,32Cは、互いに同一の形状となるように形成してあり、係止用段部32a及び付勢用段部32bを有している。係止用段部32a及び付勢用段部32bは、スロット32A,32B,32Cの延在方向に対して直交する方向に延在するものである。係止用段部32aは、スロット32A,32B,32Cの一方の開口(以下、区別する場合に退避側開口32cという)に向けて突出するように設けてあり、付勢用段部32bは、スロット32A,32B,32Cの他方の開口(以下、区別する場合に突出側開口32dという)に向けて突出するように設けてある。
【0021】
フランジ部30aに近接した2つのスロット32A,32Bには、それぞれディスクタンブラ40A,40Bが配設してあり、フランジ部30aから離隔したスロット32Cには、ストッパプレート40Cが配設してある。ディスクタンブラ40A,40B及びストッパプレート40Cは、それぞれスロット32A,32B,32Cの内部に収容可能となる大きさの平板状を成すもので、スロット32A,32B,32Cの延在方向に沿ってスライド可能となる状態でスロット32A,32B,32Cに配設してある。ディスクタンブラ40A,40B及びストッパプレート40Cには、係止用突起40a及び付勢用突起40bが設けてある。係止用突起40aは、スロット32A,32B,32Cの係止用段部32aに当接することにより、ディスクタンブラ40A,40Bの端部及びストッパプレート40Cの端部が突出側開口32dを介してそれぞれキーシリンダ30の周面から突出した突出位置を制限するものである。付勢用突起40bは、スロット32A,32B,32Cの付勢用段部32bとの間に介在する図示せぬ付勢部材の付勢力によってディスクタンブラ40A,40B及びストッパプレート40Cがそれぞれ突出位置に維持されるように機能するものである。
【0022】
これらディスクタンブラ40A,40B及びストッパプレート40Cには、キー貫通孔41,42,43が設けてある。ディスクタンブラ40A,40Bに形成したキー貫通孔41,42は、キー挿入孔31を介して前面からキーシリンダ30にキーKを挿入した場合にキー溝部k1,k2に当接することにより、付勢部材の付勢力に抗してディスクタンブラ40A,40Bの端部をスロット32A,32Bに収容した収容位置に配置させるものである。フランジ部30aに近接したディスクタンブラ40Aとフランジ部30aから離隔したディスクタンブラ40Bとでは、キー貫通孔41,42において退避側開口32cに近接する縁部41a,42aの位置が互いに異なっており、図6に示すように、対応したキープロファイルを有するキーKが挿入された場合にのみ2つのディスクタンブラ40A,40Bが同時に収容位置に配置された状態となる。一方、ストッパプレート40Cに形成したキー貫通孔43は、キー挿入孔31に挿入されたキーKを通過させるものであり、退避側開口32cに近接する縁部が開放された状態となっている。すなわち、ストッパプレート40Cは、キーシリンダ30に如何なるキーKが挿入された場合であっても、端部がキーシリンダ30の周面から突出した状態に維持されるものである。
【0023】
図には明示していないが、キーシリンダ収納部1eの摺動孔1fにおいてストッパプレート40Cに対応する部分には、ストッパプレート40Cの端部が突出した状態においても180°の範囲でのみキーシリンダ30の回転を許容できるように円弧状の溝部が設けてある。また、キーシリンダ収納部1eの摺動孔1fにおいて2つのディスクタンブラ40A,40Bに対向する部分には、キーシリンダ30が180°の両端部においてのみディスクタンブラ40A,40Bの端部が収容可能となる収容溝部が設けてある。
【0024】
また、キーシリンダ30には、ストッパプレート40Cよりも装置本体1の後面側に位置する底板33の後端面に偏芯突起33aが設けてある。偏芯突起33aは、断面が略四角の柱状を成すもので、底板33の後端面においてキー挿入孔31の一方の端部を含む位置に形成してある。キー挿入孔31の一方の端部とは、キーKの先端部Kaに位置する端部である。すなわち、キーシリンダ30に挿入されるキーKは、挿入操作が容易となるように挿入側先端部が斜めとなるように形成してある。上述した偏芯突起33aは、キーKを正しい向きでキー挿入孔31に挿入した場合に最先端側となる端部に位置するように底板33に設けてある。偏芯突起33aの突出高さは、キーシリンダ30のキー挿入孔31に対してキーKをもっとも深くまで挿入した状態において底板33の後面から突出するキーKの先端部Kaを収容することのできる寸法に形成してある。本実施の形態では、キーシリンダ30のキー挿入孔31にキーKを挿入した場合にキーKの先端部Kaが底板33を貫通して突出するまで底板33の板厚を薄く構成し、底板33から突出するキーKの先端部Kaを偏芯突起33aに設けたキーK孔に収容させるようにしている。
【0025】
偏芯突起33aの外形寸法は、ロックプレート20のガイド孔22に挿通し、かつキーシリンダ30が回転した場合にガイド孔22を介してロックプレート20をロック位置とアンロック位置との間にスライドさせることが可能となるように構成してある。すなわち、図9(a)に示すように、ロックプレート20がアンロック位置に配置されている場合、キーシリンダ30は、キー挿入孔31が上下に沿って延在し、かつ偏芯突起33aが下方に位置した状態となる。このとき、ロックプレート20は、図9(a)においてガイド孔22の上方内周面22a及び左方内周面(ロック側係合面及びアンロック側係合面)22bを介して偏芯突起33aに当接し、かつガイド孔22の下方内周面22c及び右方内周面22dとの間に隙間が確保してある。
【0026】
この状態からキーシリンダ30が図9(a)において反時計方向(ロック方向)に回転すると、偏芯突起33aの右上隅部がガイド孔22の上方内周面22aを押圧することにより、ロックプレート20が上方にスライドを開始する。さらに、キーシリンダ30が同方向に回転すると、図9(b)及び図9(c)に示すように、偏芯突起33aの右側面及び右下隅部が順次ガイド孔22の上方内周面22aに当接することによりロックプレート20の上方への移動が進行し、最終的にキーシリンダ30が180°回転すると、図9(d)に示すように、ロックプレート20がロック位置に配置された状態となる。このとき、偏芯突起33aは、上下に沿って延在するキー挿入孔31の上方部分に位置し、図9(d)においてガイド孔22の上方内周面22a及び左方内周面22bに当接した状態となる。上述の状態からキーシリンダ30を時計方向(アンロック方向)に回転させると、偏芯突起33aがガイド孔22の下方内周面22cに順次当接することにより、再び図9(a)に示した状態に復帰することになる。
【0027】
上記のように構成したクレセント錠によれば、クレセント10がクレセント受け部(図示せず)に係合した状態でキーシリンダ30にキーKを挿入し、ロック方向に回転させれば、ロックプレート20がロック位置に配置され、回転防止プレート14に設けた係合突起14bの係合面14cとロックプレート20の当接面21とが対向した状態となる。従って、解錠方向に向けてクレセント10を回転させることができず、クレセント錠を施錠状態に維持することが可能となる。上述したように、キーシリンダ30の回転は、対応するキーKを挿入した場合にのみ許容されるものである。これにより、キーKを有していない他人の操作によっては、外障子及び内障子を開放することができず、防犯上及び開閉管理のし易さの点で有利となる。
【0028】
上述の状態からキーシリンダ30にキーKを挿入してアンロック方向に回転させれば、ロックプレート20がアンロック位置に移動し、回転防止プレート14の係合面14cとロックプレート20の当接面21との対向状態が解除される。従って、クレセント10を解錠方向に向けて回転させることができ、外障子や内障子を開放することができる。
【0029】
上述した動作の間、クレセント錠においては、底板33の後面から突出するキーKの先端部Kaが偏芯突起33aのキーK孔に配置された状態に維持されるため、キーKとロックプレート20との干渉を招来することなく、底板33の板厚を薄く構成することが可能となる。従って、ディスクタンブラ40A,40Bの数を減らしたり、キーKの先端部Kaを切除することなくキーシリンダ30の全長を抑えることが可能となり、適用する装置本体1の寸法が大型化するおそれがなくなる。
【0030】
しかも、偏芯突起33aがガイド孔22の左側縁に当接することでキーシリンダ30の回転が180°に制限されるため、ストッパプレート40Cに加えられる力が低減もしくは無くなることになる。これにより、ストッパプレート40Cの板厚を小さく構成した場合にもストッパプレート40Cに変形を来すおそれがなくなり、さらにキーシリンダ30の全長を抑えることが可能となる。
【0031】
なお、上述した実施の形態では、操作装置としてクレセント錠を例示しているが、装置本体に対して操作部が移動可能に配設されるものであれば、その他のものにも適用することが可能である。この場合、操作部の移動は必ずしも回転に限らず、例えば、操作部が直線方向に移動するものであっても構わない。装置本体が樹脂ケースと金属補強材とからなるものである必要もない。キーシリンダ30の回転角度が180°である必要はなく、キーシリンダ30の回転方向も逆で良い。
【0032】
また、上述した実施の形態では、2つのディスクタンブラ40A,40Bと1つのストッパプレート40Cとを備えたキーシリンダ30を例示しているが、ディスクタンブラの数は2つに限らない。
【0033】
さらに、上述した実施の形態では、偏芯突起33aに係合するガイド面として四角形状を成すガイド孔22の内周面を例示しているが、必ずしもこれに限定されない。また、ロック部材が必ずしもスライドする平板状を成すロックプレート20である必要もない。さらに、図1において装置本体の下方側にロック部材を配設する一方、装置本体の上方側に回転防止プレートを配設しているが、ロック部材を回転防止プレートの上方側に配設するように構成しても良い。
【0034】
またさらに、上述した実施の形態では、回転防止プレート14に係合突起14bを設ける一方、ロックプレート20に当接面21を設けるようにしているが、本発明はこれに限定されない。例えば、図10に示す変形例のように、把手部113と一体に回転する回転防止プレート114において回転中心を中心とした円周上の一部に係合凹部114aを設ける一方、ロック部材120に回転防止プレート114に嵌合可能となる係合突起120aを設けるようにしても良い。すなわち、図10(a)に示すように、キーシリンダ130の回転により偏芯突起133aを介してロック部材120がアンロック位置に配置されている場合には、係合凹部114aから係合突起120aが逸脱しているため、装置本体101に対して回転防止プレート114を把手部113と一体に回転させることが可能となる。一方、図10(b)に示すように、キーシリンダ130の回転によりロック部材120がロック位置に配置されている場合には、係合凹部114aに係合突起120aが嵌合されるため、装置本体101に対して回転防止プレート114及び把手部113を回転させることができない状態となる。この変形例においてもキー挿入孔131が偏芯突起133aを含む位置に形成してあるのはいうまでもない。
【0035】
以上のように、本発明に係る操作装置は、装置本体に移動可能に配設された操作部と、前記装置本体に移動可能に配設され、アンロック位置に配置された場合に前記装置本体に対する前記操作部の移動を許容する一方、ロック位置に配置された場合に前記操作部に係合することによって前記装置本体に対する前記操作部の移動を阻止するロック部材とを備えた操作装置であって、前記装置本体には、前面からキーが挿入された場合にキーシリンダ収納部に対してロック方向及びアンロック方向に回転可能となるキーシリンダと、前記キーシリンダ及び前記ロック部材の間を連係し、前記キーシリンダが前記ロック方向に回転した場合に前記ロック部材を前記ロック位置に移動させる一方、前記キーシリンダが前記アンロック方向に回転した場合に前記ロック部材を前記アンロック位置に移動させる連係機構とが設けられ、前記ロック部材は、前記装置本体に対してスライドすることにより前記ロック位置と前記アンロック位置との間を移動され、前記連係機構は、前記キーシリンダの底板に設けた偏芯突起と、前記ロック部材に設けられ、前記偏芯突起の周面に係合することにより前記キーシリンダの回転に伴う前記偏芯突起の回転を前記ロック部材のスライド移動に変換するガイド面とを有し、前記キーシリンダには、前記キーの先端部が前記偏芯突起に配置される状態でキー挿入孔が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、キーシリンダの底板から突出するとともにロック部材のガイド面に係合する偏芯突起にキーの先端部を収容させるようにしているため、底板を薄く構成した場合にもキーの先端部がキーシリンダ外部に露出する事態を防止することができる。従って、ディスクタンブラの数を減らしたり、キーの先端部を切除することなくキーシリンダの全長を抑えることが可能となり、適用する装置本体の寸法が大型化するおそれがなくなる。
【0036】
また本発明は、上述した操作装置において、前記ガイド面には、前記キーシリンダが前記ロック方向に回転した場合に前記ロック位置で前記偏芯突起に係合することにより以降の同方向への回転を阻止するロック側係止面と、前記アンロック方向に回転した場合に前記アンロック位置で前記偏芯突起に係合することにより以降の同方向への回転を阻止するアンロック側係止面とが設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、ロック部材の移動を制限する部材を別途設ける必要がなく、構造の単純化を図ることが可能となる。
【0037】
また本発明は、上述した操作装置において、前記ロック側係止面及び前記アンロック側係止面は、前記ロック部材に形成された四角形状のガイド孔の内周面に構成され、前記偏芯突起は、断面が角柱状を成すように形成され、一つの側面を介して前記ロック側係止面及び前記アンロック側係止面に係合されることを特徴としている。
この発明によれば、偏芯突起がロック側係止面及びアンロック側係止面に当接することでキーシリンダの回転範囲が180°に制限される。
【0038】
また本発明は、上述した操作装置において、前記操作部は、前記装置本体に回転可能に配設されたクレセントであり、前記クレセントには、回転中心を中心とした円周上の一部に係合突起が設けられ、前記ロック部材は、前記ロック位置に配置された場合に前記係合突起に係合する当接面が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、当接面に係合突起が係合することにより装置本体に対するクレセントの回転が阻止された状態となる。
【符号の説明】
【0039】
1,101 装置本体、1e キーシリンダ収納部、1f 摺動孔、10 クレセント、11 クレセント本体、12 支持軸、13,113 把手部、14,114 回転防止プレート、14b,120a 係合突起、14c 係合面、20 ロックプレート、21 当接面、22 ガイド孔、22b 左方内周面、30,130 キーシリンダ、31,131 キー挿入孔、33 底板、33a,133a 偏芯突起、40A,40B ディスクタンブラ、K キー、Ka 先端部、114a 係合凹部、120 ロック部材
図1
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図8
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図10