(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178013
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の省電力方法
(51)【国際特許分類】
B60W 10/30 20060101AFI20241217BHJP
B60K 6/38 20071001ALI20241217BHJP
B60W 10/02 20060101ALI20241217BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20241217BHJP
B60K 6/54 20071001ALI20241217BHJP
【FI】
B60W10/30 900
B60K6/38 ZHV
B60W10/02 900
B60K6/442
B60K6/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096487
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】田中 悠一
【テーマコード(参考)】
3D202
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202BB37
3D202BB46
3D202CC01
3D202DD06
3D202DD07
3D202FF04
3D202FF13
(57)【要約】
【課題】ハイブリッド車両がEVモードのときに車載バッテリの省電力による燃費の改善とエンジン再始動時の高い応答性の確保を両立させることのできるハイブリッド車両の省電力方法を提供すること。
【解決手段】エンジン12と走行用モータ14を駆動源として備え、エンジン12から駆動輪Wへの動力伝達経路において、エンジン12と走行用モータ14との間にトルクコンバータ16とエンジン切り離しクラッチ18を配置し、走行用モータ14と駆動輪Wとの間にトランスミッション20を配置し、トルクコンバータ16に設けられたロックアップクラッチ16aを電動オイルポンプ24または機械式オイルポンプ26から供給される油圧によってON/OFFするハイブリッド車両の省電力方法において、ハイブリッド車両が走行モード停車時で且つブレーキがOFF状態にあるとき、運転者に発進の意思がないものと判断される場合には、電動オイルポンプ24への給電を遮断してロックアップクラッチ16aをOFFする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと走行用モータを駆動源として備え、
前記エンジンから駆動輪への動力伝達経路において、前記エンジンと前記走行用モータとの間に前記エンジン側からトルクコンバータ、更にエンジン切り離しクラッチが配置され、前記走行用モータと前記駆動輪との間にトランスミッションが配置され、
前記トルクコンバータに設けられたロックアップクラッチに油圧を供給するための、補機バッテリにより駆動される電動オイルポンプ及びエンジンの動力により駆動される機械式オイルポンプを有し、前記エンジンが停止される電気自動車モード選択時には前記電動オイルポンプから油圧の供給が行われるハイブリッド車両の省電力方法において、
前記エンジンが停止される電気自動車モード選択時であって、
パーキングレンジが選択され、且つフットブレーキがOFF状態にあるときに、運転者に短時間での発進の意思がないものと判断される場合には、前記電動オイルポンプへの補機バッテリからの給電を遮断して前記ロックアップクラッチをOFFとすることを特徴とするハイブリッド車両の省電力方法。
【請求項2】
前記運転者に短時間での発進の意思の有無の判断は、
ハザードランプが点灯中、ウィンカーが点灯中、ドアが開放中、サイドブレーキがON、ナビゲーション操作中、オーディオ操作中の少なくとも1つの要件が満たされた場合には、運転者に発進の意思がないものと判断することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の省電力方法。
【請求項3】
前記運転者に短時間での発進の意思の有無の判断は、
ハザードランプが点灯中、ウィンカーが点灯中、ドアが開放中、サイドブレーキがON、ナビゲーション操作中、オーディオ操作中の各要件の何れか複数を組み合わせてそれらの組合せ要件が全て満たされた場合に、運転者に発進の意思がないものと判断することを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両の省電力方法。
【請求項4】
ハザードランプが点灯中、ウィンカーが点灯中、ドアが開放中、サイドブレーキがON、ナビゲーション操作中、オーディオ操作中の少なくとも1つの要件が満たされてから所定時間が経過した後に前記電動オイルポンプへの給電を遮断して前記ロックアップクラッチをOFFすることを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両の省電力方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の省電力方法、特に、エンジン、トルクコンバータ及びエンジン切り離しクラッチとトランスミッションとの間に走行用モータが配置され、電気自動車モードで走行するときにはエンジンと走行用モータが切り離される構成を有するハイブリッド車両の省電力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンと走行用モータを駆動源として走行するハイブリッド車両は、エンジンの駆動力を走行用モータによってアシストすることによって、排気ガスを減少させるとともに、燃費を改善することができるという利点を有している。このようなハイブリッド車両においては、アクセル開度や車速などの車両の走行状態を検出してエンジンと走行用モータとの使用分担を制御することが行われている。
【0003】
また、ハイブリッド車両には、エンジンから駆動輪までの間において、エンジン側から順に、トルクコンバータ、エンジン切り離しクラッチ、走行用モータ、トランスミッションを配置した駆動系を備えるものがある。ここで、トルクコンバータは、滑らかなクラッチ機能とトルク増幅機能という2つの有利な点を有する反面、オイルを媒体として動力を伝達するため、摩擦クラッチなどの機械式クラッチに比して動力伝達効率が低いという問題がある。
【0004】
そこで、トルクコンバータにおいてトルク増幅効果が薄れる領域、すなわち、ポンプインペラとタービンランナの回転速度が近づくためにトルク増幅機能を必要としない領域においては、入出力軸を直結して高い動力伝達効率を確保するためにトルクコンバータにはロックアップクラッチ(LC)を設けることが行われている。
【0005】
このロックアップクラッチは、電動オイルポンプ(EOP)又は機械式オイルポンプ(MOP)から供給される油圧によってON(締結)/OFF(切断)される。ここで、電動オイルポンプは、走行用モータとは別に搭載されている車載バッテリ(補機バッテリ)から供給される電力によって駆動され、機械式オイルポンプは、エンジンの動力の一部によって駆動される。
【0006】
また、ハイブリッド車両の走行モードが電気のみで走行するEVモードにある場合で、エンジンが停止している状態であっても、その後のエンジンンの再始動の応答性を考慮して、トルクコンバータのロックアップクラッチをON状態に維持しておくことが行われている。そして、この場合には、エンジンは停止しているため、機械式オイルポンプを用いることができないことからトルクコンバータのロックアップクラッチは、電動オイルポンプから供給される油圧によって動作することとなる。このようにトルクコンバータのロックアップクラッチをON状態に維持しておけば、エンジン再始動時は、エンジン切り離しクラッチを締結することでエンジン始動に遷移できる。
【0007】
しかしながら、この様にエンジンが停止している状態であっても、電動オイルポンプを駆動してトルクコンバータのロックアップクラッチをON状態に維持しておくと、車載バッテリの電力を過度に消費してしまうという問題がある。
【0008】
上記のような問題に関連して、例えば、特許文献1には、エンジンと、エンジンに連結された自動変速機と、自動変速機に油圧を供給するための電動オイルポンプを備えた車両が開示されている。また、この車両は、走行条件の所定条件成立時にはエンジンを自動停止可能なエンジン自動停止/再始動車両(エコラン車両)であり、自動変速機のオイルポンプ制御装置が設けられている。この制御装置では、車両停止およびエンジン停止の状態が長期間持続するか否かを予測する停止状態判断手段が設けられ、停止状態判断手段が、前記停止状態が長期間持続されると予測するときは、電動オイルポンプの作動を停止する制御を行う技術が提案されている。
【0009】
これによれば、車両停止およびエンジン停止の状態が長期間持続することが十分予測されるときには、再始動の際のタイムラグを損なうことなく、電動オイルポンプの作動を停止する制御を行うため、電動オイルポンプを駆動するモータの耐久寿命の向上と、エコラン中の消費電力の低減による燃費改善を図ることができる。
【0010】
また、特許文献2には、走行ポジションと非走行ポジションとを選択可能で、駆動力を伝達する係合装置又は変速比を設定する係合装置を有する駆動装置と、電動機によって駆動されて前記係合装置を係合するための油圧を供給するオイルポンプとを備え、車両の停止要求がある場合に、前記電動機によるオイルポンプの駆動を低下させることができる電動装置用電動オイルポンプを備えた車両の制御装置が提案されている。
【0011】
具体的には、この車両の制御装置は、車両の停止要求が発生したか否かを判断する停止要求判断手段と、車両の停止要求が発生した場合は、その車両の停止要求が継続的な車両の停止を意思したものであると判断することができる所定時間が経過した後に電動機によるオイルポンプの駆動を低下させる遅延手段を備えている。これによれば、運転者の意思や道路状況と電動オイルポンプの状態とを可及的に適合させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002-372139号公報
【特許文献2】特許第4055297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1及び2の技術は、自動変速機に油圧を供給するための電動オイルポンプや係合装置を係合するための油圧を供給する電動のオイルポンプを備え、車両の停止との関係で電動ポンプの制御を行っているが、何れもエンジンのみによって駆動される車両である。したがって、ハイブリッド車において、且つ、エンジンとトランスミッションとの間に走行用モータが配置されているという前提構成がなく、また、EVモードで走行するときにはエンジンと走行用モータが切り離されるという前提がない。
【0014】
さらに、特許文献1及び2では、エンジンとトランスミッション(車軸に繋がっている)との間にロックアップクラッチを備えるトルクコンバータが配置されているという特有な構成状況もなく、したがって、この特有な構成のハイブリッド車におけるEVモード走行時(エンジン停止時)における車載バッテリの省電力という課題に対応することができない。
【0015】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、ハイブリッド車両がEVモードのときに車載バッテリの省電力による燃費の改善とエンジン再始動時の高い応答性の確保を両立させることのできるハイブリッド車両の省電力方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため本発明の一実施の形態のハイブリッド車両の省電力方法は、
エンジンと走行用モータを駆動源として備え、
前記エンジンから駆動輪への動力伝達経路において、前記エンジンと前記走行用モータとの間に前記エンジン側からトルクコンバータ、更にエンジン切り離しクラッチが配置され、前記走行用モータと前記駆動輪との間にトランスミッションが配置され、
前記トルクコンバータに設けられたロックアップクラッチに油圧を供給するための、補機バッテリにより駆動される電動オイルポンプ及びエンジンの動力により駆動される機械式オイルポンプを有し、前記エンジンが停止される電気自動車モード選択時には前記電動オイルポンプから油圧の供給が行われるハイブリッド車両の省電力方法において、
前記エンジンが停止される電気自動車モード選択時であって、
パーキングレンジが選択され、且つフットブレーキがOFF状態にあるときに、運転者に短時間での発進の意思がないものと判断される場合には、前記電動オイルポンプへの補機バッテリからの給電を遮断して前記ロックアップクラッチをOFFとすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、エンジンと車軸に繋がれているトランスミッションとの間にトルクコンバータ(ロックアップクラッチを備える)が配置されている構成のハイブリッド車両において、EVモードが選択されているときの車載バッテリの省電力を達成することができる。すなわち、エンジンの再始動時の迅速な応答性を確保しつつ、意思トルクコンバータのロックアップクラッチを作動させるための車載バッテリ(補機バッテリ)の省電力が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明方法が実施されるハイブリッド車両の動力伝達系の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明方法の処理手順を示すフローチャートである。
【
図3】ハイブリッド車両のEVモードPレンジ停車時における各種要素(エンジン、エンジン切り離しクラッチ、走行用モータ、電動オイルポンプ、機械式オイルポンプ)のON/OFFを示す図である。
【
図4】ハイブリッド車両のEVモードDレンジ停車時における各種要素(エンジン、エンジン切り離しクラッチ、走行用モータ、電動オイルポンプ、機械式オイルポンプ)のON/OFFを示す図である。
【
図5】ハイブリッド車両のEVモードエンジン再始動時における各種要素(エンジン、エンジン切り離しクラッチ、走行用モータ、電動オイルポンプ、機械式オイルポンプ)のON/OFFを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
[本発明が適用されるハイブリッド車両の動力伝達系の構成]
まず、本発明方法が実施されるハイブリッド車両の動力伝達系の構成を
図1に基づいて以下に説明する。
【0021】
図1は本発明方法が実施されるハイブリッド車両の動力伝達系の全体構成10を示すブロック図であり、駆動源としてエンジン12と走行用モータ14が設けられている。そして、エンジン12と走行用モータ14との間の動力伝達経路には、エンジン12側からトルクコンバータ16とエンジン切り離しクラッチ18が順次配置されている。また、走行用モータ14と駆動輪Wとの間の動力伝達経路には、トランスミッション20が配置され、トランスミッション20は駆動輪W側に繋がっている。
【0022】
また、トルクコンバータ16には、上述のようにトルク増幅機能を必要としない領域において、入出力軸を直結して高い動力伝達効率を確保するためのロックアップクラッチ(LC)16aが設けられている。
【0023】
ここで、トルクコンバータ16には、補機バッテリ22に接続された電動オイルポンプ24及びエンジン12の動力の一部によって駆動される機械式オイルポンプ26が接続されており、ロックアップクラッチ16aは、EPO24又はMPO26から供給される油圧によってON(締結)とOFF(切断)を切り替える。
【0024】
また、エンジン切り離しクラッチ18は、ハイブリッド車両がEVモードで走行する場合、すなわち、エンジン12が停止された状態で走行用モータ14の動力のみで走行する場合にエンジン12と走行用モータ14とを切り離すものであって、電動オイルポンプ24または機械式オイルポンプ26から供給される油圧によって締結と切断が行われる。
【0025】
走行用モータ14は、ハイブリッド車両の走行に必要な動力を発生するものであって、高圧バッテリ28からインバータ30を介して供給される電力によって駆動される。ここで、高圧バッテリ28には、リチウムイオン電池などが使用され、この高圧バッテリ28からの直流電流は、インバータ10によって交流電流に変換されて走行用モータ14に供給される。
【0026】
トランスミッション20は、走行用モータ14の出力軸から入力される回転をハイブリッド車両の走行状態に応じて所定の変速比で変速するものであって、このトランスミッション5には、変速比を無段階に変化させることができる無段変速機(CVT(Continuously Variable Transmission))が広く用いられている。この無段変速機は、駆動側のドライブプーリと従動側のドリブンプーリとの間に無端状の金属ベルトやチェーンを巻き掛けて構成されており、ドライブプーリとドリブンプーリに油圧によって作用する軸方向の推力を調整することによって、これらのドライブプーリとドリブンプーリへの金属ベルトなどの巻き掛け径を変化させて変速比を連続的に変化させるものである。ここで、ドライブプーリとドリブンプーリへの油圧の供給は、電動オイルポンプ24または機械式オイルポンプ26によってなされる。なお、トランスミッション20には、複数の変速ギヤの噛み合いを変更して変速比を段階的に変化させる有段式のものを使用することができるが、この有段式のトランスミッション20においても、変速ギヤの切り替えは、電動オイルポンプ24または機械式オイルポンプ26から供給される油圧によってなされる。
【0027】
本発明の実施の形態に係る省電力方法について以下に詳細に説明する。
【0028】
まず、EVモード選択時において、車両が停車している状態で、更にパーキングレンジが選択され、且つブレーキがOFF状態(運転者がブレーキペダルを踏み込んでいない状態)にある状態が運転者が直ちに発進する意思がないものと判断する条件の基本条件とされる。そして、これが満たされない場合、すなわち、パーキングレンジが選択されていないかブレーキがON状態(ブレーキペダルが踏まれている状態)と判断された場合、本発明に係る制御は行われず通常とおり、EOP24には補機バッテリ22から電力供給が行われる。すなわち、補機バッテリ22の電力によってトルクコンバータ16のロックアップクラッチ16aがON状態とされる。
【0029】
次に、上記のパーキングレンジが選択され且つブレーキがOFF状態という基本条件が充足されているときは、運転者が直ちに発進する意思がないものと判断する要件として、本実施の形態では、以下の6つの判断が行われる。
ハザードランプが点灯中か否か?
ウィンカー点灯中か否か?
3)ドア開放中か否か?
4)サイドブレーキがONか否か?
5)ナビ(ナビゲーション)操作中か否か?
6)オーディオ操作中か否か?
【0030】
そして、本発明方法においては、上記1)~6)の6つの要件はOR条件で有り、何れか1つが満足される場合には、運転者が直ちに発進の意思はないものと判断して電動オイルポンプ24への補機バッテリ22からの給電を遮断してオイルの供給を停止し、トルクコンバータ16のロックアップクラッチ16aをOFFする。すなわち、運転者に発進の意思がない場合(エンジン1が直ぐに再始動される可能性がない場合)には、エンジン1の再始動時の応答性を考慮する必要がないため、電動オイルポンプ24への給電を遮断し、トルクコンバータ16のロックアップクラッチ16aをOFFするものである。なお、ハイブリッド車両がEVモードで停車しており、パーキングレンジが選択されているときには、エンジン1は停止しているため、機械式オイルポンプ26によるロックアップクラッチ16aの作動はできない状況にある。
【0031】
他方、前記1)~6)の6つの要件の全てが満足されない場合には、運転者に発進の意思があるものと判断し、補機バッテリ22の電力によるロックアップクラッチ16aのON状態が保たれる。これにより、直ちにエンジン12の再始動が行われることに対する応答性が高められている。
【0032】
次に、以上の制御手順を
図2に示すフローチャートにしたがって説明する。なお、電動オイルポンプ24と機械式オイルポンプ26の駆動制御は、不図示のECU(Electronic Control Unit)によってなされる。
【0033】
ハイブリッド車両がEVモードで停車している状態において、まず、シフトレンジがP(パーキング)レンジにあり、且つ、ブレーキがOFFであるか否かが判断される(
図2のステップS1)。なお、ハイブリッド車両がEVモードで停車している場合には、
図3に示すように、エンジン1はOFF(停止)、エンジン切り離しクラッチ4はOFF(切断)、走行用モータ2はOFF(停止)、機械式オイルポンプ26はOFF(停止)されている。
【0034】
本実施の形態では、シフトレンジがP(パーキング)レンジにあり、且つ、ブレーキがOFFである場合(ステップS1:Yes)には、ハザードランプが点灯中であるか否かが判断され(ステップS2)、ハザードランプが点灯中でない場合(ステップS2:No)には、ウィンカーが点灯中であるか否かが判断される(ステップS3)。そして、ウィンカーが点灯中でない場合(ステップS3:No)には、ドアが開放中であるか否かが判定され(ステップS4)、ドアが開放中でない場合(ステップS4:No)には、サイドブレーキがONであるか否かが判断される(ステップS5)。
【0035】
上記判断において、サイドブレーキがONでない場合(ステップS5:No)には、ナビゲーション(ナビ)を運転者が操作中であるか否かが判断され(ステップS6)、ナビゲーションを運転者が操作していない場合(ステップS6:No)には、運転者がオーディオを操作中であるか否かが判断される(ステップS7)。
【0036】
ここで、操作中の意味は、ナビゲーションやオーディオがON状態にあるという意味ではなく、実際にスイッチなどを操作してナビゲーションやオーディオの調整をしている状態を意味する。
【0037】
以上のステップS2~S7における判断、つまり、ハイブリッド車両がEVモード停車時で且つブレーキがOFF状態にあるとき(ステップS1:Yes)、前記1)~6)の6つの要件のうち少なくとも1つが満足され、ステップS2~S7の判断の少なくとも1つがYesである場合には、運転者に発進の意思がないものと判断され、電動オイルポンプ24への給電が遮断され(ステップS8)、トルクコンバータ16のロックアップクラッチ16aに電動オイルポンプ24から油圧が供給されないためにトルクコンバータ16のロックアップクラッチ16aがOFF(切断)され(
図3参照)、一連の制御が終了する(ステップS10)。
【0038】
また、判断は、組み合わせて判断しても良い。例えば、ドア開放中?(ステップS4)、サイドブレーキON?(ステップS5)、ナビ操作中?(ステップS6)などの条件を組み合わせることができる。一例として、ウインカー点灯中?(ステップS3)とドア開放中?(ステップS4)をand条件とすることで、
ウインカーが点灯中であり、且つドアが開放中である場合に、電動オイルポンプ24への給電が遮断され、より判断の確実性を高めることができる。
【0039】
以上のように、本発明に係る省電力方法によれば、ハイブリッド車両がEVモード停車時で且つブレーキがOFF状態にあるとき、運転者に発進の意思がないと判断される場合、つまり、エンジン12の再始動時の応答性を考慮する必要がない場合には、電動オイルポンプ24への給電を遮断してトルクコンバータ16のロックアップクラッチ16aをOFF(切断)するようにしたため、省電力が実現して燃費の改善を図ることができる。
【0040】
他方、前記6つの要件の全てが満たされないためにステップS2~S7での判断が全てNoである場合、或いは、そもそもハイブリッド車両がEV停車時で且つブレーキがOFF状態でない場合(ステップS1:No)には、運転者に発進の意思があるものと判断し、電動オイルポンプ24に給電して該電動オイルポンプ24を駆動し(ステップS9)、一連の制御が終了する(ステップS10)。このように、電動オイルポンプ24が駆動されると(
図3参照)、該電動オイルポンプ24から供給される油圧によってトルクコンバータ16のロックアップクラッチ16aがON(締結)され、エンジン12とトルクコンバータ16が直結され、エンジン12の再始動時の応答性が高められる。
【0041】
なお、本実施形態においては、運転者に発進の意思がないと判断する要件として、ハザードランプ点灯中、ウィンカー点灯中、ドア開放中、サイドブレーキON、ナビゲーション操作中、オーディオ操作中の6つを挙げたが、これらの要件に他の要件を追加してもよい。また、本実施形態では、運転者に発進の意思がないものと判断する6つの要件の少なくとも1つが満たされる場合には、運転者に発進の意思がないものと判断して電動オイルポンプ24への給電を遮断するようにしたが、6つの要件の少なくとも1つが満たされてから所定時間が経過した後に電動オイルポンプ24への給電を遮断するようにしてもよい。
【0042】
以上の説明で明らかなように、本発明に係る省電力方法によれば、ハイブリッド車両がEVモードで停車し、且つ、シフトレンジがパーキングレンジ(Pレンジ)に設定されている場合において、省電力による燃費の改善とエンジン再始動時の高い応答性の確保を実現することができるという効果が得られる。
【0043】
[参考例1]
次に、参考例1として、ハイブリッド車両のEVモードDレンジ停車時における各種要素(エンジン12、エンジン切り離しクラッチ18、走行用モータ14、電動オイルポンプ24、機械式オイルポンプ26)のON/OFFの状態を
図4に示す。
【0044】
ハイブリッド車両の走行モードがEVモードに設定され、且つ、シフトレンジがD(ドライブ)レンジに設定された状態で停車しているときには、
図4に示すように、エンジン12はOFF(停止)され、エンジン切り離しクラッチ18はOFF(切断)され、走行用モータ14はOFF(停止)されている。このとき、エンジン12がOFF(停止)しているために機械式オイルポンプ26もOFF(停止)しているが、電動オイルポンプ24はON(駆動)状態にあり、この電動オイルポンプ24から供給される油圧によってトルクコンバータ16のロックアップクラッチ16aがON(締結)されてエンジンの再始動時の応答性が高められている。
【0045】
[参考例2]
次に、参考例2として、ハイブリッド車両のEVモードにおけるエンジン再始動時における各要素(エンジン12、エンジン切り離しクラッチ18、走行用モータ14、電動オイルポンプ24、機械式オイルポンプ26)ON/OFFの状態を
図5に示す。
【0046】
ハイブリッド車両の走行モードがEVモードに設定された状態においてエンジン12が再始動される場合には、
図5に示すように、エンジン切り離しクラッチ18がON(締結)されてエンジン12と走行用モータ14が連結されるとともに、走行用モータ14がON(駆動)される。そして、電動オイルポンプ24は、補機バッテリ22からの給電によってON(駆動)される。このとき、エンジン12はまだ始動されていないために機械式オイルポンプ26はOFF(停止)しているが、電動オイルポンプ24が前述のようにON(駆動)されてトルクコンバータ16のロックアップクラッチ16 がON(締結)されている。
【0047】
上記状態において、走行用モータ14がON(駆動)されると、その動力の一部がエンジン切り離しクラッチ18とトルクコンバータ16のロックアップクラッチ16aを経てエンジン12へと伝達され、該エンジン12の再始動に供される。つまり、走行用モータ14がエンジン12を始動させるスタータモータとして機能する。
【0048】
そして、エンジン12が再始動すると、該エンジン12の動力と走行用モータ14の動力がトランスミッション20に伝達され、該トランスミッション20に入力される回転の速度比がハイブリッド車両の走行条件に対応した適切な値に設定され、トランスミッション20によって変速された回転が駆動輪Wへと伝達されて該駆動輪Wが所定の回転速度で回転駆動されるため、ハイブリッド車両が所定の速度で走行する。
【0049】
なお、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
10 ハイブリッド車両の動力伝達系の全体構成
12 エンジン
14 走行用モータ
16 トルクコンバータ(トルコン)
16a ロックアップクラッチ
18 エンジン切り離しクラッチ
20 トランスミッション
22 補機バッテリ
24 電動オイルポンプ(EOP)
26 機械式オイルポンプ(MOP)
28 高電圧バッテリ
30 インバータ
W 駆動輪