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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178014
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20241217BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20241217BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B27/01
G09F9/00 336E
G09F9/00 313
G09F9/00 336B
G09F9/00 324
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096488
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】相田 智久
【テーマコード(参考)】
2H199
5G435
【Fターム(参考)】
2H199CA23
2H199CA27
2H199CA29
2H199CA42
2H199CA43
2H199CA47
2H199CA49
2H199CA54
2H199CA62
2H199CA64
2H199CA68
2H199CA69
2H199CA75
2H199CA82
2H199CA92
2H199CA96
2H199DA03
2H199DA12
2H199DA15
2H199DA34
5G435BB15
5G435BB16
5G435BB19
5G435DD11
5G435DD13
5G435EE22
5G435EE27
5G435FF06
5G435FF08
5G435GG01
5G435LL17
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で良好な解像度を有する画像を表示可能な画像表示装置を提供する。
【解決手段】画像表示装置は、光源部10と、画像光束を生成する画像生成素子30と、光源部からの光束を内部を伝搬させながら照明光束として画像生成素子に向けて出射する導光部材20と、画像生成素子からの画像光束を観察側または投射側に導く光学系50と、導光部材と光学系との間に配置され、画像光束の配光角を制御する配光角制御素子40とを有する。光源部から出射する光束の発散角をθ1、導光部材から画像生成素子に向かって出射する光束の発散角をθ2、配光角制御素子から出射する画像光束の発散角をθ3、光学系の取り込み角としての2NAをθ4とする。0.9≦θ2/θ1≦1.1、θ2<θ3、0.2≦θ3/θ4≦1.5なる条件を満足する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部と、
入射した光束を変調して画像光束を生成する画像生成素子と、
前記光源部からの光束を内部を伝搬させながら該光束の一部ずつを複数の領域から照明光束として前記画像生成素子に向けて出射する導光部材と、
前記画像生成素子からの画像光束を観察側または投射側に導く光学系と、
前記導光部材と前記光学系との間に配置され、前記画像光束の配光角を制御する配光角制御素子とを有し、
前記光源部から出射する光束の発散角をθ1、前記導光部材から前記画像生成素子に向かって出射する光束の発散角をθ2、前記配光角制御素子から出射する前記画像光束の発散角をθ3、前記光学系の取り込み角としての2NAをθ4とするとき、
0.9≦θ2/θ1≦1.1
θ2<θ3
0.2≦θ3/θ4≦1.5
なる条件を満足することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記光学系のバックフォーカスをBF、前記光学系のうち最も前記画像生成素子に近い光学面の頂点と前記配光角制御素子の出射面との間隔をBLとするとき、
0.9≦BL/BF≦1.1
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記画像生成素子は透過型の画像生成素子であり、
前記配光角制御素子が、前記画像生成素子と前記光学系との間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記画像生成素子は反射型の画像生成素子であり、
前記画像生成素子からの前記画像光束が前記導光部材を透過して前記光学系に入射することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記画像生成素子の出射面と前記導光部材の出射面との間隔をL1、前記画像生成素子の前記出射面と前記配光角制御素子の入射面との間隔をL2とするとき、
L1/L2<1
なる条件を満足することを特徴とする請求項4に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記導光部材の出射面の法線と前記導光部材から出射する前記照明光束の主光線とがなす角をω1、前記法線と前記画像生成素子から出射する前記画像光束の主光線とがなす角をω2とするとき、
20°≦|ω1-ω2|≦40°
なる条件を満足することを特徴とする請求項5に記載の画像表示装置。
【請求項7】
光源部と、
入射した光束を変調して画像光束を生成する画像生成素子と、
前記光源部からの光束を内部を伝搬させながら該光束の一部ずつを複数の領域から照明光束として前記画像生成素子に向けて出射する導光部材と、
前記画像生成素子からの画像光束を観察側または投射側に導く光学系と、
前記導光部材と前記画像生成素子との間に配置され、前記照明光束および前記画像光束のうち少なくとも一方の配光角を制御する配光角制御素子とを有し、
前記光源部から出射する光束の発散角をθ1、前記導光部材から前記画像生成素子に向かって出射する光束の発散角をθ2、前記照明光束および前記画像光束のうち前記配光角制御素子から前記光学系に向かって出射する光束の発散角をθ3、前記光学系の取り込み角としての2NAをθ4とするとき、
0.9≦θ2/θ1≦1.1
θ2<θ3
0.2≦θ3/θ4≦1.5
なる条件を満足することを特徴とする画像表示装置。
【請求項8】
前記画像生成素子の入射面と前記配光角制御素子の画像生成素子側の面との間隔をL1、前記画像生成素子の入射面と前記導光部材のうち前記照明光束が出射する出射面との間隔をL2とするとき、
0<L1/L2<1
なる条件を満足することを特徴とする請求項7に記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記光学系のバックフォーカスをBF、前記光学系のうち最も前記画像生成素子に近い光学面の頂点と前記配光角制御素子の出射面との間隔をBLとするとき、
0.9≦BL/BF≦1.1
なる条件を満足することを特徴とする請求項7に記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記画像生成素子は透過型の画像生成素子であり、
前記配光角制御素子が、前記導光部材と前記光学系との間に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の画像表示装置。
【請求項11】
前記画像生成素子は反射型の画像生成素子であり、
前記画像生成素子からの前記画像光束が、前記配光角制御素子を介して前記導光部材を透過して前記光学系に入射することを特徴とする請求項7に記載の画像表示装置。
【請求項12】
前記配光角制御素子において配光角制御機能を有する面が、前記画像生成素子に対向することを特徴とする請求項11に記載の画像表示装置。
【請求項13】
前記導光部材の出射面の法線と前記導光部材から出射する照明光束の主光線とがなす角をω1、前記法線と前記画像生成素子から出射する画像光束の主光線とがなす角をω2とするとき、
20°≦|ω1-ω2|≦40°
なる条件を満足することを特徴とする請求項11に記載の画像表示装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の画像表示装置と、
該画像表示装置からの前記画像光束を観察者の眼に導く接眼光学系または前記画像光束を投射面に投射する投射光学系とを有することを特徴とする画像表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドマウントディスプレイやスマートグラス等の画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光源からの光を導光部材を介して広い配光特性のバックライトとして画像生成素子に入射させ、画像生成素子からの出射光を光学系を介して観察者の瞳や投射面に導く画像表示装置が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許公開2020/0341194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の画像表示装置では、画像生成素子と光学系との間に配光角を制御する素子(拡散板)が配置される。この結果、光学系から出射する光により形成される像の解像度が低下する。また、導光部材内に配光角を制御する素子が設けられているため、構成が複雑になる。
【0005】
本発明は、簡易な構成でありながらも、良好な解像度を有する画像を表示可能な画像表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての画像表示装置は、光源部と、入射した光束を変調して画像光束を生成する画像生成素子と、光源部からの光束を内部を伝搬させながら該光束の一部ずつを複数の領域から照明光束として画像生成素子に向けて出射する導光部材と、画像生成素子からの画像光束を観察側または投射側に導く光学系と、導光部材と光学系との間に配置され、画像光束の配光角を制御する配光角制御素子とを有する。光源部から出射する光束の発散角をθ1、導光部材から画像生成素子に向かって出射する光束の発散角をθ2、配光角制御素子から出射する画像光束の発散角をθ3、光学系の取り込み角としての2NAをθ4とするとき、
0.9≦θ2/θ1≦1.1
θ2<θ3
0.2≦θ3/θ4≦1.5
なる条件を満足することを特徴とする。
【0007】
また本発明の他の一側面としての画像表示装置は、光源部と、入射した光束を変調して画像光束を生成する画像生成素子と、光源部からの光束を内部を伝搬させながら該光束の一部ずつを複数の領域から照明光束として画像生成素子に向けて出射する導光部材と、画像生成素子からの画像光束を観察側または投射側に導く光学系と、導光部材と画像生成素子との間に配置され、照明光束および画像光束のうち少なくとも一方の配光角を制御する配光角制御素子とを有する。光源部から出射する光束の発散角をθ1、導光部材から画像生成素子に向かって出射する光束の発散角をθ2、照明光束および画像光束のうち配光角制御素子から光学系に向かって出射する光束の発散角をθ3、光学系の取り込み角としての2NAをθ4とするとき、
0.9≦θ2/θ1≦1.1
θ2<θ3
0.2≦θ3/θ4≦1.5
なる条件を満足することを特徴とする。なお、上記画像表示装置と、該画像表示装置からの画像光束を観察者の眼に導く接眼光学系または画像光束を投射面に投射する投射光学系とを有する画像表示システムも、本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な構成でありながらも、良好な解像度を有する画像を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の画像表示装置の構成を示す図。
図2】実施例1における入射偏向素子の構成を示す図。
図3】実施例1における別の入射偏向素子の構成を示す図。
図4】実施例1におけるさらに別の入射偏向素子の構成を示す図。
図5】実施例1における出射偏向素子の構成を示す図。
図6】実施例1における誘電体多層膜の特性を示す図。
図7】実施例1の画像表示装置の別の構成を示す図。
図8】実施例1における光源部の構成を示す図。
図9】実施例1における別の光源部の構成を示す図。
図10】実施例1におけるさらに別の光源部の構成を示す図。
図11】実施例1における配光角制御素子の特性を示す図。
図12】実施例1における画像生成素子の周辺の構成を示す図。
図13】実施例1における解像感を説明する図。
図14】実施例1の画像表示装置における画像生成素子周辺の構成を示す図。
図15】実施例1の画像表示装置の応用例を示す図。
図16】実施例1の画像表示装置の他の応用例を示す図。
図17】実施例1の画像表示装置のさらに他の応用例を示す図。
図18】実施例2の画像生成装置の構成を示す図。
図19】実施例2における画像生成素子の周辺の構成を示す図。
図20】実施例3の画像生成装置の構成を示す図。
図21】実施例3における画像生成素子の周辺の構成を示す図。
図22】実施例4の画像生成装置の構成を示す図。
図23】実施例4における配光角制御素子の構成を示す図。
図24】実施例4における配光角制御素子の構成を示す別の図。
図25】実施例5の画像生成装置の構成を示す図。
図26】実施例5における画像生成素子の周辺の構成を示す図。
図27】実施例5における画像生成素子の周辺の構成を示す別の図。
図28】実施例6の画像生成装置の構成を示す図。
図29】実施例6における画像生成素子の周辺の構成を示す図。
図30】実施例6の画像生成素子周りの構成を示す図
図31】実施例7の画像生成装置の構成を示す図。
図32】実施例7における画像生成素子の周辺の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例0011】
図1は、実施例1の画像表示装置の構成を示している。画像表示装置は、画像生成部100と光学系50とにより構成されており、画像生成部100により生成された画像光束80を光学系50を介して観察側または投射側に導いて観察者に画像として視認させる。
【0012】
画像生成部100において、光源部10から出射した平行光束60は、導光部材としての導光板20の表面に設けられた入射偏向部21によって偏向されて導光板20内に入射する。導光板20に入射した光束は、導光板20内で内部反射(全反射)しながら伝搬し、伝搬しながら導光板20の表面に設けられた出射偏向部22により複数に分割かつ偏向されて一部ずつ照明光束70として画像生成素子30に導かれる。光変調素子としての画像生成素子30は、導光板20から入射した照明光束70を、外部から入力された画像信号に応じて変調することで画像光束70aを生成する。
【0013】
図2(a)、(b)は、入射偏向部21の例を示している。入射偏向部21a-i、21a-iiはそれぞれ、光源部10からの光束60を屈折または反射して導光板20内を伝搬するために必要な角度に偏向させるプリズム素子である。
【0014】
また図3(a)~(d)は、入射偏向部21の別の例を示している。入射偏向部21b-i、21b-ii、21b-iii、21b-ivはそれぞれ、光束60の波長λ以下の細かいピッチPの格子構造を有する回折光学素子であり、光源部10からの光束60を回折により偏向させて導光板20内に導く。入射偏向部21として回折光学素子を用いることで、物理的な凹凸を減らした薄型構成とすることができる。なお、波長以下のピッチの格子構造を有する回折光学素子は、偏光に対して光学的異方性を有する。本実施例において光源部10から出射する光束60はS偏光であり、入射偏向部21b-i~ivはS偏光を回折する特性を有する。このため、光源部10からのS偏光の光束60が回折されて導光板20内に導かれる。なお、回折次数ごとの効率や回折角を制御するための格子構造の形状、高さおよび屈折率等の設定は、画像表示装置で求められる要求に応じて行えばよい。また、入射偏向部に、光束に対する偏向作用と偏光に対する異方性を有するホログラフィック素子を用いてもよい。
【0015】
図4(a)、(b)は、導光板20に入射偏向部を設けない例を示している。光源部10からの光束60を導光板20の入射面にその法線に対して傾斜した方向から入射させることで、導光板20の入射面の屈折作用により光束60を導光板20内に導くことができる。
【0016】
図1において導光板20内を伝搬した光束60は、出射偏向部22において図中のx方向に複数に分割された照明光束70として画像生成素子30に向かって出射する。図5(a)~(c)は、出射偏向部22の構成を示している。被照射面となる画像生成素子30上での明るさの均一性を向上させるために、出射偏向部22は出射効率が互いに異なる複数(第1~第3)の領域(22a-i、2a-ii、22a-iii)、(22b-i、22b-ii、22b-iii)、(22c-i、2c-ii、22c-iii)を有する。表1に示すように複数の領域のそれぞれの出射効率を適切に設定することで、出射偏向部22からの出射光量を均一にすることができる。
【0017】
【表1】
【0018】
図5(a)に示す出射偏向部22は、図3(a)~(d)のいずれかの回折光学素子により構成され、出射効率と偏向作用が同一の素子で制御される。これにより、画像生成素子30の入射面に対して照明光束70を垂直またはほぼ垂直にかつ均一に入射させることができる。
【0019】
なお、回折光学素子は製造ばらつきが大きく、出射効率が所望の効率から乖離するおそれがある。このため、出射偏向部22は成膜ばらつきが少ない誘電体多層膜により構成されることが望ましい。図6は一例として、図5(b)に示す出射偏向部22の領域22b-iiを構成する誘電体多層膜の特性を示している。領域22b-iiは、偏向作用を有さないので、そこから出射する照明光束70は導光板20の出射面の法線に対して傾斜した方向に進む。この場合、図7に示すように、出射偏向部22から出射した照明光束70が画像生成素子30に垂直またはほぼ垂直に入射するように導光板20を配置することが望ましい。
【0020】
図7に示す配置が困難である場合には、図5(c)に示すように、出射偏向部22と画像生成素子30との間に、出射偏向部22から斜めに出射した照明光束70を画像生成素子30に垂直またはほぼ垂直に向かわせる偏向素子23を配置してもよい。偏向素子23は、照明光束70に対して屈折、反射および回折のうちいずれかの作用を有すればよい。
【0021】
図8(a)、(b)は、光源部10の構成を示している。光源部10は、発光部11、コリメータレンズ12およびマスク13を有する。図8(c)は発光部11から出射する光束14の断面を示している。発光部11は、半導体レーザ素子である。発光部11からz方向に出射した直線偏光としての光束14は、図8(a)、(b)に示すようにx方向とy方向とで異なる配光角u、vを有する。このため、図9にも示すように、xy面上での光束14の断面(FFP)は楕円形である。この楕円形の断面を有する光束14をx方向とy方向とで同一の焦点距離を有する。コリメータレンズ12により平行光束化する。
【0022】
なお、アナモフィックなコリメータレンズ系を用いて楕円形の断面を有する光束を整形してほぼ円形のコリメート光束を光源部10から出射させることも可能である。
【0023】
また、コリメータレンズ12の後に配置されたマスク13は、光束14の形状を整形する。マスク13の開口形状は、前述したように領域分割された出射偏向部22の各領域の形状と相似形状を有する。
【0024】
なお、図8(a)、(b)および図9では、光源部10が単一の発光部11を有する場合について説明した。これに対して、カラー画像を表示するために、光源部10を図10(a)~(c)に示すように少なくとも2つ(本実施例では3つ)の発光部11a~11cを有する構成としてもよい。そして、これら発光部11a~11cからの互いに異なる3つの波長の光を単一の導光板20に入射させるようにしてもよい。
【0025】
図10(a)、(b)において、発光部11aは波長620~650nmの範囲の赤色レーザ光を発する赤色半導体レーザ素子であり、発光部11bは波長440~470nmの範囲の青色レーザ光を発する青色半導体レーザ素子である。発光部11cは、波長520~550nmの範囲の緑色レーザ光を発する緑色半導体レーザ素子である。発光部11a~11cから出射した光束は、発光部ごとに設けられたコリメータレンズ12a~12cによって平行光束化された後に合成素子15a~15cによって合成され、白色光として光源部10から出射する。合成素子15a~15cとしては、波長選択性ダイクロイックフィルタを用いることができるが、偏光選択性偏光ビームスプリッタを用いてもよい。また合成素子15a~15cとして板状の素子を示しているが、内部がガラスや樹脂で満たされたプリズム状の素子を用いてもよい。
【0026】
なお、画像表示装置の明るさを決定するのに重要な緑色レーザ光を発する緑色半導体レーザ素子は、損出を低減するために、緑色レーザ光が通過する光学素子数が少なく、かつ平行光束化後の光路が短いことが望ましいので、発光部11cとして配置されている。
【0027】
また、赤色半導体レーザ素子は、温度による特性変化が大きいので、光源部10内で排熱機構であるヒートシンク(図示せず)の体積を最も確保しやすい発光部11aとして配置されている。
【0028】
図10(b)に示す構成では、発光部11cからの緑色レーザ光を合成素子15dにて透過させて赤色および青色レーザ光と合成する。これにより発光部11cと合成素子15dとの配置誤差による効率低下を、図10(a)の構成よりも低減させることができる。
【0029】
また図10(c)に示す構成のように、発光部11a~11cから発せられたレーザ光を光導波路16を介して合成した後にレンズ12d、12eから出射させるようにしてもよい。この場合、光導波路16から出射した合成レーザ光は同軸の白色光になっているので、発光部ごとのコリメータレンズは不要となる。ただし、色ごとの収差を補正するために負のパワーのレンズ12dと正のパワーのレンズ12eを設けている。なお、光導波路16の断面形状を上下左右の幅が等しい円形もしくは矩形とすることで、光導波路16から出射する光束の断面(FFP)を円形にすることもできる。
【0030】
また図1において、入射偏向部21および出射偏向部22のうち少なくとも一方に回折光学素子を用いる際には、それらに入射する光束の波長ごとに回折角度が異なるため、使用する発光部の波長に応じて導光板20が複数必要となる。一方、入射偏向部21および出射偏向部22のうち少なくとも一方に誘電体多層膜を用いる場合は、複数の波長の光束を単一の導光板20で伝搬することができる。これは、発光スペクトルが狭帯域である半導体レーザ素子を発光部として用いることで、波長ごとの特性を満足する誘電体多層膜を設けることが可能なためである。
【0031】
以上のように構成された画像生成部100において、前述したように、光源部10から出射する光束60は、光源部10内に配置されたコリメータレンズ系により平行光束化されている。光源部10内の半導体レーザ素子は発光点が非常に小さく(例えば50μm以下)かつ配光角が狭い(例えば半値全幅(FWHM)が25deg.以下である)ので、コリメータレンズ系からは非常に平行度が高い光束が出射する。本実施例では、光束60の配光特性をFWHM±2deg.以内と想定している。なお、前述した出射偏向部22の出射効率のばらつきを低減するためには、光束60の配光特性をFWHM±1deg.以内とすることが望ましい。さらに出射偏向部22の前述した複数の領域のそれぞれに入射する光束の入射位置ばらつきを低減させるために、光束60の配光特性をFWHM±0.5deg.以内とすることが望ましい。
【0032】
導光板20の入射面と出射面は高い平行度で配置されており、導光板20内を光束60はその角度が保存された状態で伝搬する。このため、導光板20内を伝搬して出射偏向部22から出射する照明光束70の配光特性は、光源部10から出射して導光板20に入射する光束60の配光特性と概ね等しい。すなわち光束60の配光角としての発散角(FWHM)をθ1、照明光束70の配光角としての発散角(FWHM)をθ2とする。このとき、θ1とθ2は、
0.9≦θ2/θ1≦1.1 (1)
なる条件を満足する。
【0033】
出射偏向部22から出射する照明光束70は、式(1)の配光特性を保った状態で画像生成素子30に入射する。本実施例の画像生成素子30は透過型液晶素子であり、外部から入力された画像信号に応じて液晶を駆動することにより、表面の入射面から入射した照明光束70を画像信号に応じた画像光束70aに変換して裏面の出射面から出射させる。なお、画像生成素子30の通過前後で光束の配光特性はほとんど変化しない。また、透過型液晶素子は入射角度特性を有するため、照明光束70を透過型液晶素子の入射面に対して垂直(入射面の法線方向から)またはほぼ垂直に入射させることが望ましい。画像生成素子30から出射する画像光束は光学系50を介して画像表示装置から出射する。
【0034】
光学系50の光線の取り込み角(2NA:NAは開口数)は、画像表示装置で求められる要求に応じて異なる。但し、前述したように画像生成素子30から出射する画像光束70aは式(1)式に示した配光特性を保持している。つまり、光学系50で要求される光線の取り込み角(2NA)に合わせて画像光束70aの配光特性を設定する必要がある。このため、本実施例では、画像生成素子30と光学系50との間に配光角制御素子40を配置している。
【0035】
画像生成素子30から出射した画像光束70aは、配光角制御素子40に入射し、画像光束70aとは異なる配光特性(配光角)の画像光束80に変換されて光学系50に入射する。導光板20から出射する照明光束70の発散角としてのFWHMをθ2、配光角制御素子40から光学系50に向かう画像光束80の発散角としてのFWHMをθ3、光学系50の取り込み角(2NA)をθ4とする。このとき、θ2~θ4は、
θ2<θ3 (2)
0.2≦θ3/θ4≦1.5 (3)
なる条件を満足するよう設定される。式(3)の上限値が大きすぎると、光学系50の取り込み効率の低下を招くので、式(3)の上限値を以下のように設定するとより好ましい。
【0036】
0.2≦θ3/θ4≦1.2 (3a)
また、式(3a)の下限値が小さすぎると、表示される画像の視認性の低下を招くので、式(3a)の下限値を以下のように設定するとさらに好ましい。
【0037】
0.5≦θ3/θ4≦1.2 (3b)
以上の条件を満足することで、画像表示装置で求められる要求に合った画像光束80を高い効率で生成することができる。
【0038】
配光角制御素子40は、マイクロレンズアレイを有するレンズ拡散板であってもよいし、表面に様々なパターンが形成されたホログラフィック素子であってもよい。また、配光角制御素子40は、光軸上(中心部)と光軸外(周辺部)で異なる特性を有していてもよい。図11(a)は、中心部と周辺部で画像光束80の発散角が異なる場合を示している。中心部から出射する画像光束80の発散角80aをθ3α、周辺部から出射する画像光束80の発散角80bをθ3βとするとき、θ3αとθ3βは、
θ3α>θ3β (4)
なる条件を満足する。これにより、周辺部での光量損失を減らすことができ、光量および周辺光量比をともに向上させることができる。
【0039】
また図11(b)は、配光角制御素子40の中心部から出射する画像光束80の主光線80cと周辺部から出射する画像光束80の主光線80dとで角度が異なる、すなわち中心部の主光線80cに対して周辺部の主光線80dが傾斜している場合を示している。この図に示すように、配光角制御素子40に周辺部の主光線80dが収斂する(中心部の主光線80cに近づく)配光角制御特性を与えることで、後段の光学系50を小型化することができる。本実施例にいう主光線は、画像生成素子30の各領域や配光角制御素子40の各領域やから出射する画像光束の中心に位置する光線であり、また導光板20の出射偏向部22の各領域から出射する照明光束の中心に位置する光線である。
【0040】
次に図12および図13(a)、(b)を用いて、表示画像の解像感について説明する。一般的には、画像を適切に表示するために、図12に示すように光学系50のバックフォーカスBFの位置と画像生成素子30の出射面(画像表示面)とを一致させる。但し、光学系50の光路内に配光角制御素子40が配置されていると、図13(a)に示す本来の画像(光学像)が図13(b)に示す解像感が低下した画像になる。本実施例では、前述したように、配光角制御素子40に入射するまでの光束として平行度が高い光束が保証されている。この場合、画像生成素子30上の光学像と配光角制御素子40上での光学像はほぼ等しい。すなわち、配光角制御素子40上での光学像を画像生成素子30上の光学像の2次像とみなすことができる。このため、光学系50のバックフォーカスBFの位置と配光角制御素子40の位置とを概ね一致させることで、表示画像の解像感の低下を回避することができる。
【0041】
具体的には、図12に示すように光学系50のバックフォーカスをBF、光学系50のうち最も画像生成素子30に近い光学面(レンズ面)の頂点と配光角制御素子40の出射面との光軸上の間隔をBLとする。このとき、これらBFとBLを、
0.9≦BL/BF≦1.1 (5)
なる条件を満足するように設定する。
【0042】
図14は、本実施例の画像表示装置を応用した画像表示システム300の構成を示している。図14の上側にはxz断面を示し、下側にはxy断面を示している。画像生成部100から出射し、さらに光学系50から出射した画像光束は、接眼導光板200に設けられた入射偏向部200iで偏向されて接眼光学系としての接眼導光板200に入射し、接眼導光板200内を全反射しながら分割偏向部200eに入射する。分割偏向部200eに入射した画像光束は、x方向に複数に分割されながら偏向されて出射偏向部200oに導かれる。
【0043】
出射偏向部200oに入射した画像光束は、y方向に複数に分割されながら偏向されて観察者の眼(瞳)SPに向う。図14では、入射偏向部200iで画像光束が偏向される方向(x方向)と分割偏向部200eで画像光束が偏向される方向(y方向)とが互いに直交するが、これらは直交しなくても接眼導光板200に入射した画像光束を瞳SPに向かわせるように出射させればよい。また、画像生成部100から出射した画像光束を瞳SPに導けばよいので、接眼導光板200に代えて、ハーフミラーを使うバードバス光学系や、偏光反射レンズまたはフレネルレンズ等を使う屈折光学系を用いてもよい。
【0044】
図15は、図14の画像表示システムを用いたヘッドマウントディスプレイ(HMD)やスマートグラスを示している。フレーム400は、観察者1000の両眼前にて接眼導光板200を保持するとともに、これら接眼導光板200のそれぞれに対応する画像表示装置を保持している。各画像表示装置の画像生成部100から出射した画像光束は、接眼導光板200を介して観察者1000の眼に導かれる。これにより、観察者1000は、表示画像1100を視認することができる。左右の眼に対して互いに視差を有する表示画像を提示することで、観察者に立体画像を視認させることもできる。またフレーム400には、画像生成部100内の画像生成素子の駆動や光源部10の光量等を制御する制御ユニット430が接続されている。制御ユニット430は、図に示すようにフレーム400外に配置されて画像生成部100と有線または無線にて通信可能に接続されてもよいし、フレーム400内に配置されてもよい。
【0045】
さらにフレーム400には、観察者1000の瞳の位置や動き(視点または視線)を示す瞳情報を取得するカメラを含む第1情報取得ユニット410が取り付けられている。制御ユニット430は、瞳情報に基づいて表示画像1100の位置(画像生成素子上における画像の生成位置)を補正する。またフレーム400には、外界(周辺)情報を取得するカメラを含む第2情報取得ユニット420も取り付けられている。制御ユニット430は、外界情報から得られる外界の明るさに応じて表示画像1100の輝度を調整する。
【0046】
図16は、本実施例の画像表示装置を応用した車載画像表示システムとしてのヘッドアップディスプレイ(HUD)450を示している。HUD450は、画像生成部100a、投射光学系50a、第1情報取得ユニット420a、第2情報取得ユニット410aおよび制御ユニット430aを有する。HUD450は、移動装置としての自動車500に搭載され、自動車500の使用者(運転者や搭乗者)を支援するための画像(虚像)1100aを投射光学系50aを介して投射面としてのフロントガラスに投射表示する。なお、移動装置としては、自動車以外に、鉄道、船舶および航空機等でもよい。
【0047】
第1情報取得ユニット420aは、使用者の瞳SPの位置や動き(視点または視線)を示す瞳情報を取得するカメラを含む。制御ユニット430aは、瞳情報に基づいて表示画像1100aの位置(画像生成素子上における画像の生成位置)を補正する。第2情報取得ユニット410aには、外界(周辺)情報を取得するカメラを含む。制御ユニット430aは、外界情報から得られる外界の明るさに応じて表示画像1100aの輝度を調整したり、外界情報から得られる外界画像に表示画像1100aを重畳表示したりする。第2情報取得ユニット410aは、前方の外界情報だけでなく、後方や側方等の外界情報を取得してもよい。また制御ユニット430aは、外界情報から得られる障害物(物体)に対する自動車500の衝突可能性を判定し、衝突可能性がある場合に警告を発生したり自動車500の駆動部(エンジンやモータ等)、ブレーキおよび操舵のいずれかを制御したりする。警告方法には、警告音の発生、カーナビゲーションシステムの表示画面への警告情報の表示およびシートベルトやステアリングへの振動の発生等がある。
【0048】
図17は、本実施例の画像表示装置を応用した画像表示システムとしての実像投射システム(プロジェクタ)の構成を示している。画像生成部100bから出射した画像光束は、投射光学系50bを介してスクリーン等の被投射面1100bに投射される。被投射面1100bは、平面でもよいし、曲面であってもよい。制御ユニット430bは、外部から入力された画像信号に応じて画像生成素子を駆動したり、光源部10の光量を調整したり、投射光学系50aのズームやフォーカスを調整したりする。
【0049】
なお、図14図17に示す画像表示システムにおいて、本実施例の画像生成部100に代えて後述する他の実施例の画像生成部を用いてもよい。
【実施例0050】
図18は、実施例2の画像表示装置の構成を示している。画像表示装置は、画像生成部110と光学系50とを有する。本実施例の画像生成部110は、画像生成素子31が反射型液晶素子である点が実施例1と異なり、他の実施例1と同じ構成要素には実施例1と同符号を付して説明に代える。
【0051】
導光板20に設けられた出射偏向部22cから出射した照明光束71は、画像生成素子31に入射して画像光束71aに変換されるとともに反射されて、出射偏向部22cに向かって出射する。なお、画像生成素子31に対する入出射前後で光束の配光特性は変化しない。また、反射型液晶素子も透過型液晶素子と同様に入射角度特性を有するため、画像生成素子31の入射面の法線に対して垂直またはほぼ垂直に照明光束71を入射させることが望ましい。
【0052】
画像生成素子31から出射した画像光束71aは、出射偏向部22cおよび導光板20を通過して配光角制御素子40に入射する。本実施例の出射偏向部22cは、入射する光の波長より細かい格子構造からなる回折光学素子であり、偏光に対する光学的異方性を有する。具体的には、出射偏向部22cは、S偏光を回折させ、P偏光を透過させる特性を有する。このため、光源部10から出射したS偏光としての光束60は、入射偏向部21で偏向され、導光板20を伝搬して出射偏向部22cで回折されて照明光束71として画像生成素子31に入射する。照明光束71は、画像生成素子31において画像光束71aに変調されるとともに反射される。この際、画像光束71aは、液晶によって位相が変調されてP偏光として出射する。
【0053】
P偏光としての画像光束71aは、出射偏向部22cで回折されずにこれを透過し、さらに導光板20を透過して配光角制御素子40に入射する。配光角制御素子40は、入射した画像光束71aを光学系50で要求される光線の取り込み角(2NA)に合わせて拡散する。
【0054】
また、光束を高効率で出射偏向部22cを透過させるために、出射偏向部22cに高い偏光純度の光束を入射させる必要がある。このため、配光角制御素子40は出射偏向部22cを通過した画像光束71aが入射するように配置される。図19に示すように、導光板20における照明光束71の出射面(出射偏向部22c)と画像生成素子31の入出射面との光軸上の間隔をL1、画像生成素子31の入出射面と配光角制御素子40の入射面との光軸上の間隔をL2とする。このとき、L1とL2は、
L1/L2<1 (6)
なる条件を満足する。
【実施例0055】
図20は、実施例3の画像表示装置の構成を示している。画像表示装置は、画像生成部120と光学系50とを有する。本実施例の画像生成部120は、画像生成素子32が微小なマイクロミラーが2次元配列された反射型マイクロミラー素子(デジタルマイクロミラーデバイス:DMD)である点が実施例2と異なり、他の実施例2と共通する構成要素には実施例2と同符号を付して説明に代える。
【0056】
実施例2における画像生成素子31としての反射型液晶素子は、照明光束の入射角と画像光束の出射角が互いに同じである。一方、実施例3における画像生成素子32としてのDMDは、照明光束72が斜め入射する画素ごとのマイクロミラーの傾き(ONとOFFの2値)を切り替えて、反射する画像光束72aの偏向方向を制御することで画像を形成する。なお、DMDは光の偏向(進行)方向を制御するだけであるので、液晶表示素子のように入射する照明光束の偏向方向が統一されていなくてもよい。
【0057】
図21に示すように、出射偏向部22dから出射した照明光束72は、画像生成素子32により反射方向が偏向されて画像光束72aとして出射する。導光板20の出射面の法線Nと導光板20から出射する照明光束72の主光線72pとのなす角をω1、導光板20の出射面の法線Nと画像生成素子32から出射する画像光束72aの主光線72apとのなす角をω2とするとき、ω1とω2は、
20°≦|ω1-ω2|≦40° (7)
なる条件を満足する。
【0058】
なお、OFF状態のマイクロミラーで反射した非画像光束(図示せず)は、ON状態のマイクロミラーで反射した画像光束72aとは異なる方向に偏向されて画像光束72aの光路外に出射する。本実施例では、非画像光束を画像生成部120内で処理(吸収等)し、かつ非画像光束が光学系50に入射して観察者に視認されないように、図20に示すように導光板20と配光角制御素子40との間に非画像光束を遮光するマスク17を配置している。前述したように配光角制御素子40に入射する前の光束は高い平行度を有しており、画像光束と非画像光束の切り分けが容易となるので、マスク17を上記の位置に配置している。
【0059】
画像生成素子32としてDMDを用いる場合、照明光束72と画像光束72aとを出射偏向部22dに対する入射角度によって分離するので、出射偏向部22dは誘電体多層膜により構成される。具体的には、誘電体多層膜の入射角度特性を利用して入射角度によって透過率と反射率を制御することにより、出射偏向部22dに斜め入射する光は反射され、垂直またはほぼ垂直に入射する光は透過される。
【0060】
なお、出射偏向部22dに斜め入射する光の透過率と反射率の比率を制御することで、画像生成素子32の全体に入射する照明光束72の均一性も確保することができる。
【実施例0061】
図22は、実施例4の画像表示装置の構成を示している。画像表示装置は、実施例3と同じ画像生成部130と光学系50とを有する。本実施例は、配光角制御素子41がマイクロレンズアレイを備えた透過型液晶素子である点が実施例3と異なり、他の実施例3と共通する構成要素には実施例3と同符号を付して説明に代える。
【0062】
図23および図24は、本実施例における配光角制御素子41の構成を示している。配光角制御素子41は、図23に示すように水平および垂直の2次元方向に画素構造44を有する自発光デバイスである。
【0063】
図24は、配光角制御素子41における画素の拡大モデルを示している。対向する基板としての透明電極45内に液晶分子47が充填されており、一方の基板上の画素構造内に駆動回路46が配置されている。透過型液晶素子は、画素構造内に駆動回路46が配置されるために開口率が低い。
【0064】
そこで、光束が入射する面に画素ごとに対応するマイクロレンズを有するマイクロレンズアレイ48が配置されている。配光角制御素子41に入射してくる光束はマイクロレンズアレイ48により駆動回路46を避けるように収斂されるため、開口率を改善することができる。なお、マイクロレンズアレイ48により収斂された光束は、集光点を通過した後に発散光束として配光角制御素子41から出射する。すなわち、配光角制御素子41は、出射する光束の配光角を制御する機能を有する。
【0065】
また、配光角制御素子41は画素構造を有する画像生成素子でもある。このため、観察者に視認させる画像を配光角制御素子41で表示することも可能である。この場合、配光角制御素子41よりも上流側である画像生成部130内に配置される画像生成素子(DMD)32は、配光角制御素子41で表示される画像に応じた照明光束72を配光角制御素子41に供給するように照明光束73を制御する。これにより、配光角制御素子41の表示面内における領域ごとの調光が可能となり、明るさのダイナミックレンジが広い画像(HDR画像)を観察者に視認させることができる。
【0066】
一般的にHDR画像を視認可能とする光学系には、複数のパネル間をリレー結像させるリレー光学系が必要となる。しかし、本実施例のように配光角制御素子41に入射するまでの光束の平行度が高い場合は、リレー光学系を含まない簡素な構成でHDR画像を視認可能とすることができる。
【0067】
なお、配光角制御素子41における調光領域は1画素のみ含む領域であってもよいし複数画素を含む領域であってもよい。また、本実施例に示した配光角制御素子41を、前述した他の実施例において配光角制御素子40に代えて用いてもよい。
【実施例0068】
図25は、実施例5の画像表示装置の構成を示している。画像表示装置は、画像生成部140と光学系50とを有する。本実施例は、配光角制御素子44が導光板20と透過型液晶素子としての画像生成素子34との間に配置されている点が実施例1と異なり、他の実施例1と共通する構成要素には実施例1と同符号を付して説明に代える。
【0069】
本実施例および後述する実施例6、7において、光源部10から出射する光束の発散角(FWHM)をθ1、照明光束70の発散角(FWHM)をθ2とする。また、照明光束と画像光束のうち配光角制御素子44(45)から光学系50に向かって出射する光束の発散角をθ3、光学系50の取り込み角(2NA)をθ4とする。このとき、
0.9≦θ2/θ1≦1.1 (8)
θ2<θ3 (9)
0.2≦θ3/θ4≦1.5 (10)
なる条件を満足する。
【0070】
実施例1に示した画像生成部100では、前述したように配光角制御素子40に入射する光束は高い平行度を有し、画像生成素子30上の光学像と配光角制御素子40上での光学像はほぼと等しい。このため、光学系50のバックフォーカスBFの位置と配光角制御素子40の位置とを一致させることで、解像感の低下を抑制できる。逆に言えば、光学系50の光路に配置された配光角制御素子40に平行度が低い光束が入射すると、図13(b)に示したように解像感が低い光学像が表示される。
【0071】
このため、本実施例では、導光板20と画像生成素子34との間に配光角制御素子44を配置する。図26に示すように、画像生成素子34の入射面と配光角制御素子44の画像生成素子側の面との間隔をL1、画像生成素子34の入射面と導光板20の出射面(出射偏向部22)との間隔をL2とする。このとき、配光角制御素子44は、
0<L1/L2<1 (11)
なる条件を満足するように配置される。式(11)の上限値が大きすぎると画像生成素子30の透過効率の低下を招くので、式(11)の上限値を以下のようにすることが好ましい。
【0072】
0<L1/L2≦0.5 (11a)
また図27に示すように、光学系50のバックフォーカスをBF、光学系50における最も画像生成素子34に近い光学面(レンズ面)の頂点と配光角制御素子44の出射面との光軸上の間隔をBLとする。このとき、配光角制御素子44を、
0.9≦BL/BF≦1.1 (12)
なる条件を満足するように配置することで、表示画像の解像感の低下を回避することができる。
【0073】
配光角制御素子44は、実施例1の配光角制御素子40と同様に、マイクロレンズアレイを有するレンズ拡散板であってもよいし、表面に様々なパターンが形成されたホログラフィック素子であってもよい。また、配光角制御素子44は、光軸上(中心部)と光軸外(周辺部)で異なる特性を有していてもよい。さらに、配光角制御素子44から光学系50に向かう画像光束のうち中心部の主光線に対して周辺部の主光線が傾斜していてもよい。
【実施例0074】
図28は、実施例6の画像表示装置の構成を示している。画像表示装置は、画像生成部150と光学系50とを有する。本実施例は、画像生成素子35が反射型液晶素子である点が実施例5と異なり、実施例5と共通する構成要素には実施例5と同符号を付して説明に代える。
【0075】
導光板20の出射偏向部22mから出射した照明光束75は、画像生成素子35に入射して画像光束85に変換されるとともに反射されて出射偏向部22mに向かって出射し、出射偏向部22mおよび導光板20を透過して光学系50に向かう。なお、画像生成素子35に対する入出射前後で光束の配光特性はほとんど変化しない。このため、導光板20と画像生成素子35との間に配置される配光角制御素子45に入射した画像光束85は、光学系50で要求される光線の取り込み角(2NA)に合わせて拡散される。
【0076】
本実施例の構成では、光学系50の光路に配光角制御素子45が配置されているため、表示画像の解像感の低下が危惧される。但し、解像感の低下には、画像生成素子35と配光角制御素子45との間の距離と相関関係がある。図29に示すように、画像生成素子35の入出射面と配光角制御素子45の画像生成素子側の面との間隔をL1、画像生成素子35の入出射面と導光板20の出射面(出射偏向部22m)との間隔をL2とする。このとき、配光角制御素子45は、
0<L1/L2<1 (13)
なる条件を満足するように配置される。式(13)の上限値が大きすぎると表示画像の解像度の低下を招くので、式(10)の上限値を以下のようにすることが好ましい。
【0077】
0<L1/L2≦0.5 (13a)
配光角制御素子45が画像生成素子35に近いほど解像感の低下が少ない。このため、配光角制御素子45のうち配光角制御機能を有する面が、画像生成素子35の入出射面に近接して(例えばL1/L2が0.2以下となるように)対向することが望ましい。
【0078】
さらに、図30に示すように、光学系50のバックフォーカスをBF、光学系50のうち最も画像生成素子に近い光学面(レンズ面)の頂点と配光角制御素子45の出射面との光軸上の間隔をBLとする。このとき、配光角制御素子45を、
0.9≦BL/BF≦1.1 (14)
なる条件を満足するように配置することで、解像感の低下を抑制することができる。
【0079】
本実施例において、出射偏向部22mは、波長より細かい格子構造からなる回折光学素子であり、偏光に対する光学的異方性を有する。具体的には、出射偏向部22mは、S偏光を回折させ、P偏光を透過させる特性を有する。このため、光源部10から出射したS偏光としての光束60は、入射偏向部21で偏向されて導光板20を伝搬し、出射偏向部22mで回折されて配光角制御素子45を通過し、照明光束75として画像生成素子35に入射する。照明光束75は、画像生成素子35において画像光束85に変調されるとともに反射される。この際、画像光束85は、液晶によって位相が変調されてP偏光として出射する。
【0080】
P偏光としての画像光束85は、配光角制御素子45で拡散され、出射偏向部22mで回折されずに導光板20を透過して光学系50に入射する。画像光束85は、配光角制御素子45によって光学系50で要求される光線の取り込み角(2NA)に合わせて拡散されるが、本実施例では往復の光路で配光角制御素子45によって拡散される。配光角制御素子45に必要な拡散度をσとするとき、1面(往路と復路のそれぞれでの拡散度は、σ×1/√2となる。
【0081】
なお、配光角制御素子45として、往復の光路ではなく、一方の光路でのみ光束を拡散させるものを用いてもよい。
【実施例0082】
図31は、実施例7の画像表示装置の構成を示している。画像表示装置は、画像生成部160と光学系50とを有する。本実施例は、画像生成素子36が、DMDである点が実施例6と異なり、実施例6と共通する構成要素には実施例6と同符号を付して説明に代える。
【0083】
画像生成素子36としてのDMDは、実施例2でも説明したように、導光板20(出射偏向部22n)からの照明光束76が斜め入射する画素ごとのマイクロミラーの傾き(ON/OFF)を切り替えて、反射する画像光束86の偏向方向を制御することで画像を形成する。DMDは光の偏向(進行)方向を制御するだけであるので、液晶表示素子のように入射する照明光束の偏向方向が統一されていなくてもよい。
【0084】
図32に示すように、出射偏向部22nから出射した照明光束76は、配光角制御素子45を介して画像生成素子36に入射し、画像生成素子36により反射方向が偏向されて画像光束86として出射する。導光板20の出射面の法線Nと導光板20から出射する照明光束76の主光線76pとのなす角をω1、導光板20の出射面の法線Nと画像生成素子36から出射する画像光束86の主光線86pとのなす角をω2とするとき、ω1とω2は、
20°≦|ω1-ω2|≦40° (15)
なる条件を満足する。
【0085】
なお、OFF状態のマイクロミラーで反射した非画像光束(図示せず)は、ON状態のマイクロミラーで反射した画像光束86とは異なる方向に偏向されて画像光束86の光路外に出射する。本実施例では、非画像光束を画像生成部160内で処理(吸収等)し、かつ非画像光束が光学系50に入射して観察者に視認されないように、図31に示すように導光板20と光学系50との間に非画像光束を遮光するマスク17aを配置している。
【0086】
画像生成素子36としてDMDを用いる場合、照明光束76と画像光束86とを出射偏向部22nに対する入射角度によって分離するので、出射偏向部22nは誘電体多層膜により構成される。具体的には、誘電体多層膜の入射角度特性を利用して入射角度によって透過率と反射率を制御することにより、出射偏向部22nに斜め入射する光は反射され、垂直またはほぼ垂直に入射する光は透過される。
【0087】
なお、出射偏向部22nに斜め入射する光の透過率と反射率の比率を制御することで、画像生成素子36の全体に入射する照明光束76の均一性も確保することができる。
【0088】
以上の実施の形態は、以下の構成を含む。
【0089】
(構成1)
光源部と、
入射した光束を変調して画像光束を生成する画像生成素子と、
前記光源部からの光束を内部を伝搬させながら該光束の一部ずつを複数の領域から照明光束として前記画像生成素子に向けて出射する導光部材と、
前記画像生成素子からの画像光束を観察側または投射側に導く光学系と、
前記導光部材と前記光学系との間に配置され、前記画像光束の配光角を制御する配光角制御素子とを有し、
前記光源部から出射する光束の発散角をθ1、前記導光部材から前記画像生成素子に向かって出射する光束の発散角をθ2、前記配光角制御素子から出射する前記画像光束の発散角をθ3、前記光学系の取り込み角としての2NAをθ4とするとき、
0.9≦θ2/θ1≦1.1
θ2<θ3
0.2≦θ3/θ4≦1.5
なる条件を満足することを特徴とする画像表示装置。
(構成2)
前記光学系のバックフォーカスをBF、前記光学系のうち最も前記画像生成素子に近い光学面の頂点と前記配光角制御素子の出射面との間隔をBLとするとき、
0.9≦BL/BF≦1.1
なる条件を満足することを特徴とする構成1に記載の画像表示装置。
(構成3)
前記画像生成素子は透過型の画像生成素子であり、
前記配光角制御素子が、前記画像生成素子と前記光学系との間に配置されていることを特徴とする構成1または2に記載の画像表示装置。
(構成4)
前記画像生成素子は反射型の画像生成素子であり、
前記画像生成素子からの前記画像光束が前記導光部材を透過して前記光学系に入射することを特徴とする構成1または2に記載の画像表示装置。
(構成5)
前記画像生成素子の出射面と前記導光部材の出射面との間隔をL1、前記画像生成素子の前記出射面と前記配光角制御素子の入射面との間隔をL2とするとき、
L1/L2<1
なる条件を満足することを特徴とする構成4に記載の画像表示装置。
(構成6)
前記導光部材の出射面の法線と前記導光部材から出射する前記照明光束の主光線とがなす角をω1、前記法線と前記画像生成素子から出射する前記画像光束の主光線とがなす角をω2とするとき、
20°≦|ω1-ω2|≦40°
なる条件を満足することを特徴とする構成5に記載の画像表示装置。
(構成7)
光源部と、
入射した光束を変調して画像光束を生成する画像生成素子と、
前記光源部からの光束を内部を伝搬させながら該光束の一部ずつを複数の領域から照明光束として前記画像生成素子に向けて出射する導光部材と、
前記画像生成素子からの画像光束を観察側または投射側に導く光学系と、
前記導光部材と前記画像生成素子との間に配置され、前記照明光束および前記画像光束のうち少なくとも一方の配光角を制御する配光角制御素子とを有し、
前記光源部から出射する光束の発散角をθ1、前記導光部材から前記画像生成素子に向かって出射する光束の発散角をθ2、前記照明光束および前記画像光束のうち前記配光角制御素子から前記光学系に向かって出射する光束の発散角をθ3、前記光学系の取り込み角としての2NAをθ4とするとき、
0.9≦θ2/θ1≦1.1
θ2<θ3
0.2≦θ3/θ4≦1.5
なる条件を満足することを特徴とする画像表示装置。
(構成8)
前記画像生成素子の入射面と前記配光角制御素子の画像生成素子側の面との間隔をL1、前記画像生成素子の入射面と前記導光部材のうち前記照明光束が出射する出射面との間隔をL2とするとき、
0<L1/L2<1
なる条件を満足することを特徴とする構成7に記載の画像表示装置。
(構成9)
前記光学系のバックフォーカスをBF、前記光学系のうち最も前記画像生成素子に近い光学面の頂点と前記配光角制御素子の出射面との間隔をBLとするとき、
0.9≦BL/BF≦1.1
なる条件を満足することを特徴とする構成7または8に記載の画像表示装置。
(構成10)
前記画像生成素子は透過型の画像生成素子であり、
前記配光角制御素子が、前記導光部材と前記光学系との間に配置されていることを特徴とする構成7に記載の画像表示装置。
(構成11)
前記画像生成素子は反射型の画像生成素子であり、
前記画像生成素子からの前記画像光束が、前記配光角制御素子を介して前記導光部材を透過して前記光学系に入射することを特徴とする構成7に記載の画像表示装置。
(構成12)
前記配光角制御素子において配光角制御機能を有する面が、前記画像生成素子に対向することを特徴とする構成11に記載の画像表示装置。
(構成13)
前記導光部材の出射面の法線と前記導光部材から出射する照明光束の主光線とがなす角をω1、前記法線と前記画像生成素子から出射する画像光束の主光線とがなす角をω2とするとき、
20°≦|ω1-ω2|≦40°
なる条件を満足することを特徴とする構成11または12に記載の画像表示装置。
(構成14)
構成1から13のいずれか1つに記載の画像表示装置と、
該画像表示装置からの前記画像光束を観察者の眼に導く接眼光学系または前記画像光束を投射面に投射する投射光学系とを有することを特徴とする画像表示システム。
【0090】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0091】
10 光源部
20 導光板
30 画像生成素子
40 配光角制御素子
50 光学系
図1
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