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  • 特開-スプリングシート、懸架装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178016
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】スプリングシート、懸架装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
F16F9/32 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096493
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】周 松賢
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA50
3J069CC02
3J069DD03
(57)【要約】
【課題】損傷が発生し難いスプリングシートを提供する。
【解決手段】下スプリングシート1は、緩衝装置の周囲に設けられたコイル状のスプリングの端部を支持するスプリングシートであって、緩衝装置のシリンダ部の形状に沿うように成形されて、シリンダ部に連結される連結部10と、連結部10の周囲に設けられて、シリンダ部の中心線方向に交差する方向に突出してスプリングの端部を支持する支持部20と、連結部10と支持部20との間を接続する接続部30と、接続部30と支持部20とを接続するように屈曲するとともに、曲率半径が、スプリングが縮んだときに支持部20に生じる最大荷重ポイントに向かって大きくなるように徐変している屈曲部50と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝装置の周囲に設けられたコイル状のスプリングの端部を支持するスプリングシートであって、
前記緩衝装置のシリンダ部の形状に沿うように成形されて、前記シリンダ部に連結される連結部と、
前記連結部の周囲に設けられて、前記シリンダ部の中心線方向に交差する方向に突出して前記スプリングの端部を支持する支持部と、
前記連結部と前記支持部との間を接続する接続部と、
前記接続部と前記支持部とを接続するように屈曲するとともに、曲率半径が、前記スプリングが縮んだときに前記支持部に生じる最大荷重ポイントに向かって大きくなるように徐変している屈曲部と、
を備えるスプリングシート。
【請求項2】
前記屈曲部の前記曲率半径は、前記最大荷重ポイントから前記スプリングの周方向の90度の範囲内で徐変している、
請求項1に記載のスプリングシート。
【請求項3】
前記屈曲部の前記曲率半径は、前記最大荷重ポイントから周方向の両側において徐変している、
請求項1に記載のスプリングシート。
【請求項4】
前記最大荷重ポイントは、前記スプリングの0.75巻目に対応する位置である、
請求項1に記載のスプリングシート。
【請求項5】
緩衝装置と、
前記緩衝装置の周囲に設けられたコイル状のスプリングと、
前記スプリングの端部を支持する請求項1から4のいずれか1項に記載のスプリングシートと、
を備える懸架装置。
【請求項6】
前記スプリングの座巻きは0.5巻き又は0.75巻きである、
請求項5に記載の懸架装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリングシート及び懸架装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されたスプリングシートは、シート座面に形成された複数の突起によりコイルスプリングの着座部の内側が支持され、複数の突起間においてシート座面の外周の起立フランジに突起を形成し、該起立フランジの突起と前記シート座面の複数の突起とにより、コイルスプリングの着座部を内外から挟持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-232768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スプリングシートの軽量化のために板厚を薄くすることが望まれている。それゆえ、スプリングシートの板厚を薄くしたとしても、割れ等の損傷が発生し難い形状であることが望ましい。
本発明は、損傷が発生し難いスプリングシート等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと完成させた本発明は、緩衝装置の周囲に設けられたコイル状のスプリングの端部を支持するスプリングシートであって、前記緩衝装置のシリンダ部の形状に沿うように成形されて、前記シリンダ部に連結される連結部と、前記連結部の周囲に設けられて、前記シリンダ部の中心線方向に交差する方向に突出して前記スプリングの端部を支持する支持部と、前記連結部と前記支持部との間を接続する接続部と、前記接続部と前記支持部とを接続するように屈曲するとともに、曲率半径が、前記スプリングが縮んだときに前記支持部に生じる最大荷重ポイントに向かって大きくなるように徐変している屈曲部と、を備えるスプリングシートである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、損傷が発生し難いスプリングシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】懸架装置の概略構成の一例を示す図である。
図2】下スプリングシートを中心線方向の第2側から見た図の一例である。
図3図2のIII-III部の断面の一例を示す図である。
図4】下スプリングシートを中心線方向の第1側から見た図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、懸架装置100の概略構成の一例を示す図である。
懸架装置100は、乗用自動車等の四輪車に用いられるサスペンションであり、図1に示すように、油圧式の緩衝装置110と、緩衝装置110の外側に配置されたコイル状のスプリング120と、を備える。以下では、緩衝装置110の後述する外筒112の中心線方向を、単に「中心線方向」と称する場合がある。また、中心線方向の第1側(図1では下側)、中心線方向の第2側(図1では上側)を、それぞれ、単に「第1側」、「第2側」と称する場合がある。また、中心線方向に交差する方向(例えば、直交方向)を、「半径方向」と称する。半径方向において、外筒112の中心線側を単に「内側」と称し、中心線から離れる側を単に「外側」と称する場合がある。
【0009】
懸架装置100は、スプリング120における第1側の端部を支持する下スプリングシート1と、スプリング120における第2側の端部を支持する上スプリングシート130と、を備える。
また、懸架装置100は、後述する外筒112の第1側の端部に取り付けられて、懸架装置100を車輪に取り付けるための車輪側ブラケット140と、後述するロッド113の第2側の端部に固定されて、車両に取り付けるための車体側ブラケット150と、を備える。また、懸架装置100は、ロッド113の少なくとも一部を覆うダストカバー170を備える。
【0010】
緩衝装置110は、オイルを収容するシリンダ(不図示)とシリンダの外側に設けられた円筒状の外筒112とを有するシリンダ部111と、シリンダ内を摺動するピストン(不図示)と、第1側の端部にピストンを保持するとともに第2側の端部がシリンダ部111から突出して設けられるロッド113と、を備えている。ロッド113は、中心線方向に移動するので、中心線方向は、ロッド113の軸方向でもある。
【0011】
スプリング120は、線材121が螺旋状に巻かれて形成されている。スプリング120の座巻きは、0.5巻きであることを例示することができる。
【0012】
(下スプリングシート1)
図2は、下スプリングシート1を中心線方向の第2側から見た図の一例である。
図3は、図2のIII-III部の断面の一例を示す図である。
図4は、下スプリングシート1を中心線方向の第1側から見た図の一例である。
下スプリングシート1は、鋼板等の金属製の薄い板に対してプレス加工が施されることにより成形されている。下スプリングシート1は、緩衝装置110のシリンダ部111の外筒112(図1参照)の形状である円筒状に沿うように成形されて、シリンダ部111に連結される連結部10と、連結部10の周囲に設けられて、シリンダ部111の中心線方向に交差する方向に突出してスプリング120(図1参照)の端部を支持する支持部20と、を備える。また、下スプリングシート1は、連結部10と支持部20との間を接続する接続部30と、連結部10又は接続部30と、支持部20とを接続するように屈曲した屈曲部50と、を備える。
【0013】
連結部10は、円筒状である円筒状部11と、円筒状部11の第2側に設けられた円環状の円環状部12と、円筒状部11と円環状部12との間に設けられた中間部13とを有する。
円筒状部11は、内周面15から外側に突出した突出部16が周方向の一部に形成されている。突出部16は、周方向に複数(図2においては3つ)形成されている。内周面15の径はシリンダ部111の外筒112の外径以上である。
円環状部12は、円筒状部11よりも中心線方向に直交する方向に突出する部位である。
中間部13は、円筒状部11における第2側の端部から円環状部12の内側の部位にかけて径が徐々に大きくなるように屈曲している。
【0014】
下スプリングシート1は、連結部10の円筒状部11の内側に外筒112が挿入された後に、円筒状部11が外筒112に溶接されることで、外筒112に固定されている。それゆえ、下スプリングシート1が外筒112に固定された後においては、連結部10の円筒状部11の中心線Clとシリンダ部111の外筒112の中心線とは一致する。なお、下スプリングシート1の外筒112への固定方法は、溶接に限定されない。例えば、連結部10の円筒状部11の内周面15の径を外筒112の外径よりも小さくし、円筒状部11を外筒112に圧入することで下スプリングシート1を外筒112へ固定しても良い。
【0015】
支持部20は、スプリング120の第1側の端部に設けられた座巻きが着座する支持面21を有する。支持面21は、中心線Clの方向(言い換えれば中心線方向)に対して傾斜した面であるとともに、中心線Clの方向に対して傾斜した傾斜線Csを中心とした螺旋状である。傾斜線Csは、中心線方向において下スプリングシート1が存在する領域では中心線Clと交わらないように、中心線Clに対してオフセットしている。
【0016】
支持面21が傾斜線Csを中心とした螺旋状であるため、支持面21における傾斜線Cs周りの周方向の一端である始点22と、支持面21における傾斜線Cs周りの周方向(図2の反時計回り方向)の他端である終点23とは、傾斜線Csの方向にずれている。これにより、支持部20には、始点22と終点23との間に段差部24が設けられている。以下、傾斜線Cs周りの周方向における始点22と終点23との間の中央の部位を「第1部25」、第1部25と終点23との間の中央の部位を「第2部26」と称する場合がある。第1部25、第2部26は、それぞれ、始点22から、傾斜線Cs周りの周方向に略180度、270度の位置である。
【0017】
ここで、スプリング120は、線材121の第1側の端部が始点22に載せられる。そして、スプリング120の座巻きは0.5巻きであることから、スプリング120が自由長である場合、スプリング120は、始点22から第1部25まで着座する。
【0018】
また、支持部20は、支持面21における外周部から外側に傾斜線Csの方向に対して傾斜する方向に延びて、スプリング120が外側に移動するのを規制する外側規制部27を有する。外側規制部27の外周部における傾斜線Csの方向の位置は同一であり、始点22に対応する位置から、傾斜線Cs周りの周方向に終点23に向けて、傾斜線Csの方向の大きさが徐々に小さくなっている。
【0019】
また、支持部20は、支持面21における内周部に、支持面21から第2側に突出してスプリング120が内側に移動するのを規制する内側規制部28を、傾斜線Cs周りの周方向の一部に有している。内側規制部28は複数(図2においては2つ)設けられている。
【0020】
接続部30は、連結部10の円環状部12における外周部から外側に傾斜線Csの方向に対して傾斜する方向に延びて、支持面21に接続する。連結部10の円環状部12は中心線方向の位置が同一であり、支持面21は傾斜線Csを中心とした螺旋状であること、また、傾斜線Csは中心線Clに対してオフセットしていることから、接続部30は、始点22に対応する位置から、傾斜線Cs周りの周方向に第2部26の方向に向けて、傾斜線Csの方向の大きさが徐々に大きくなっている。
【0021】
屈曲部50は、接続部30における外周部から支持面21の内周部にかけて傾斜線Csを中心とする径が徐々に大きくなるように屈曲している。屈曲部50における傾斜線Csを通る面にて切断した断面形状は円弧状である。屈曲部50は、内側規制部28が設けられている領域を除いて、傾斜線Cs周りの周方向に連続して設けられている。そして、図4に示すように、屈曲部50の曲率半径、言い換えれば屈曲部50の曲げRは、始点22から第1部25までは同一である第1Rであり、第1部25から第2部26に向けて第1Rから第2R(第2R>第1R)まで徐々に大きくなり、第2部26から終点23に向けて第2Rから第3R(第2R>第3R)まで徐々に小さくなっている。つまり、屈曲部50の曲率半径は、第2部26において最大であり、第2部26から傾斜線Cs周りの周方向両側の90度の範囲内で徐変している。なお、第3Rは第1Rと同一であることを例示することができる。
【0022】
これは以下の理由による。すなわち、本発明者等が鋭意研究したところによると、スプリング120が縮むことに起因して下スプリングシート1の屈曲部50に生じる最大荷重ポイントは第2部26であることが判明した。それゆえ、最大荷重ポイントとなる第2部26で曲率半径を最大とし、第2部26に対応する屈曲部50、言い換えれば、傾斜線Cs周りの周方向の位置が第2部26と同一である屈曲部50に生じる応力を小さくした。その結果、繰り返し生じるスプリング120の伸縮に対する耐久性が高まった。
【0023】
以上、説明したように、下スプリングシート1は、緩衝装置110の周囲に設けられたコイル状のスプリング120の端部を支持するスプリングシートの一例である。下スプリングシート1は、緩衝装置110のシリンダ部111の形状に沿うように成形されて、シリンダ部111に連結される連結部10と、連結部10の周囲に設けられて、シリンダ部111の中心線方向に交差する方向に突出してスプリング120の端部を支持する支持部20と、を備える。また、下スプリングシート1は、連結部10と支持部20との間を接続する接続部30と、接続部30と支持部20とを接続するように屈曲する屈曲部50と、を備える。そして、屈曲部50は、曲率半径(言い換えれば曲げR)が、スプリング120が縮んだときに支持部20に生じる最大荷重ポイントである第2部26に向かって大きくなるように(例えば第1Rから第2Rとなるように)徐変している。
【0024】
以上のように構成された下スプリングシート1によれば、例えば曲率半径が徐変しておらず第1Rで一定である構成よりも耐久性が高まっているので、損傷を発生し難くすることができる。それゆえ、下スプリングシート1の軽量化のために板厚を薄くすることができる。また、スプリング120の強度が大きくされたとしても損傷し難い。
【0025】
ここで、屈曲部50の曲率半径は、最大荷重ポイントである第2部26からスプリング120の周方向の90度の範囲内で徐変している。これにより、例えば曲率半径が徐変しておらず第2Rで一定である構成よりもスプリング120が着座する支持面21の面積を大きくすることができる。
【0026】
そして、最大荷重ポイントである第2部26は、スプリング120の0.75巻目に対応する位置である。つまり、第2部26は、傾斜線Cs周りの周方向に始点22から略270度の位置である。このように、第2部26が傾斜線Cs周りの周方向に始点22から360度未満の位置であることから、下スプリングシート1においては、屈曲部50の曲率半径は、第2部26から傾斜線Cs周りの周方向の両側において徐変している。つまり、傾斜線Cs周りの周方向における180度から270度に向けて第1Rから第2Rまで徐々に大きくなり、傾斜線Cs周りの周方向における270度から360度に向けて第2Rから第3Rまで徐々に小さくなっている。これにより、下スプリングシート1は、スプリング120が着座する支持面21の面積が小さくなることを抑制しつつ、耐久性が向上して損傷が発生し難くなっている。
【0027】
また、懸架装置100は、緩衝装置110と、緩衝装置110の周囲に設けられたコイル状のスプリング120と、スプリング120の端部を支持する下スプリングシート1と、を備える。そして、スプリング120の座巻きは0.5巻きである。このように、スプリング120の座巻きが0.5巻きである場合、スプリング120が縮むことに起因して下スプリングシート1に生じる最大荷重ポイントはスプリング120の0.75巻目に対応する位置であることから、下スプリングシート1にてスプリング120の端部を支持することで懸架装置100の損傷を発生し難くすることができる。
【0028】
なお、本発明者等が鋭意研究したところによると、スプリング120の座巻きが0.75巻きである場合においても、スプリング120が縮むことに起因してスプリング120の第1側の端部を支持するスプリングシートに生じる最大荷重ポイントはスプリング120の0.75巻目に対応する位置であることが判明した。それゆえ、下スプリングシート1を、座巻きが0.75巻きであるスプリング120の第1側の端部を支持するスプリングシートとして用いることで、懸架装置100の損傷を発生し難くすることができる。
【符号の説明】
【0029】
1…下スプリングシート、10…連結部、20…支持部、21…支持面、22…始点、23…終点、25…第1部、26…第2部、30…接続部、50…屈曲部、100…懸架装置、110…緩衝装置、111…シリンダ部、112…外筒、113…ロッド、120…スプリング
図1
図2
図3
図4