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特開2024-178023磁気共鳴イメージング装置及び磁気共鳴イメージング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178023
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置及び磁気共鳴イメージング方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
A61B5/055 311
A61B5/055 380
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096507
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 英
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB44
4C096AC04
4C096AC05
4C096AC10
4C096AD07
4C096BA07
4C096BB07
4C096BB11
4C096DC33
4C096DC35
(57)【要約】
【課題】UTE撮像法を用いたT2値に関する測定精度を向上すること。
【解決手段】一実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、撮像条件設定部と、データ取得部と、追加解析部と、撮像条件算出部とを備える。撮像条件設定部は、UTE撮像法を用いて、複数のTEを含む撮像条件を設定する。データ取得部は、複数のTEで初回のMR信号データを取得する。追加解析部は、初回のMR信号データに基づいて、追加のMR信号データの取得が必要な領域を特定するための解析をする。撮像条件算出部は、追加のMR信号データの取得が必要な領域において、初回のMR信号データにおける少なくとも1つのTEからΔTE遅延させた追加のMR信号データを取得するための少なくとも1つの追加TEを算出する。撮像条件設定部は、さらに、UTE撮像法を用いて、少なくとも1つの追加TEを含む撮像条件を設定し、データ取得部は、さらに、少なくとも1つの追加TEで追加のMR信号データを取得する。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
UTE(Ultrashort Echo Time)撮像法を用いて、複数のエコー時間(TE:Echo Time)を含む撮像条件を設定する撮像条件設定部と、
設定された複数のTEで初回のMR信号データを取得するデータ取得部と、
取得された前記初回のMR信号データに基づいて、追加のMR信号データの取得が必要な領域を特定するための解析をする追加解析部と、
特定された前記追加のMR信号データの取得が必要な領域において、前記初回のMR信号データにおける少なくとも1つのTEからΔTE遅延させた前記追加のMR信号データを取得するための少なくとも1つの追加TE(Additional Echo Time)を算出する撮像条件算出部と、を備え、
前記撮像条件設定部は、さらに、UTE撮像法を用いて、前記少なくとも1つの追加TEを含む撮像条件を設定し、前記データ取得部は、さらに、前記少なくとも1つの追加TEで前記追加のMR信号データを取得する、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記UTE撮像法は、マルチエコーUTE撮像法である、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記追加解析部は、前記初回のMR信号データの減衰率、及び減衰率とT2値との関係を表す減衰率分布に基づいて、前記追加のMR信号データの取得が必要な領域を特定し、前記追加のMR信号データの取得が必要か否かを判定するための解析をする、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記追加解析部は、前記初回のMR信号データの減衰率が第1の所定の減衰率より大きい急峻な減衰である場合に、前記追加のMR信号データの取得が必要であると判定する、
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記撮像条件算出部は、前記追加のMR信号データを取得するための前記少なくとも1つの追加TEのうち第1エコーのMR信号データを取得するために用いられる追加TEを、前記初回のMR信号データの第1エコーと第2エコーとの間に含まれるように算出する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記撮像条件算出部は、特定された前記追加のMR信号データの取得が必要な領域における前記初回のMR信号データに基づいて、複数時定数成分のT2減衰モデルに近似させた支配的な時定数T2値を算出し、
前記支配的な時定数T2値の信号減衰曲線に基づいて、信号強度を推定し、複数の閾値区分で分割し、
前記追加のMR信号データを取得するための前記少なくとも1つの追加TEのうち第1エコーのMR信号データを取得するために用いられる追加TEを、分割された複数の閾値区分のうち所定の閾値区分で、前記初回のMR信号データの第1エコーと第2エコーとの間に、推定T2確率密度分布に基づいて、推定T2確率密度が最も高くなるように算出する
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記複数の閾値区分は、少なくとも4つの閾値区分である、
請求項6に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記撮像条件算出部は、前記支配的な時定数T2値の信号減衰曲線に基づいて、信号強度を推定し、4つの閾値区分で分割し、
第1の追加のMR信号データを取得するための少なくとも1つの追加TEのうち第1エコーのMR信号データを取得するために用いられる追加TEを、前記初回のMR信号データが存在しない領域区分のうち、前記推定された信号強度が2番目である第2の閾値区分、或いは前記推定された信号強度が3番目である第3の閾値区分において、前記初回のMR信号データの第1エコーと第2エコーとの間に、推定T2確率密度分布に基づいて、推定T2確率密度が最も高くなるように算出し、
前記データ取得部は、第1の追加のMR信号データを取得する、
請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記撮像条件算出部は、さらに、第2の、或いは第3の追加のMR信号データを取得するための少なくとも1つの追加TEのうち第1エコーのMR信号データを取得するために用いられる追加TEを、すでに取得したMR信号データが存在しない領域区分のうち、前記推定された信号強度が1番目である第1の閾値区分、或いは前記推定された信号強度が2番目である第2の閾値区分において、前記初回のMR信号データの第1エコーと第2エコーとの間に、推定T2確率密度分布に基づいて、推定T2確率密度が最も高くなるように算出し、
前記データ取得部は、さらに、第2、或いは第3の追加のMR信号データを取得する、
請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記初回のMR信号データと、前記追加のMR信号データとを合成した中間高密度データを最終高密度データとして生成する高密度データ生成部と、
前記最終高密度データに基づいて、T2マップ、及びR2マップのうち少なくとも1つを生成するマップ生成部と、をさらに備える、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記初回のMR信号データと、前記追加のMR信号データとを合成して中間高密度データを生成する高密度データ生成部を、さらに備える、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記追加解析部は、特定された前記追加のMR信号データの取得が必要な領域における、前記中間高密度データの減衰率、及び減衰率とT2値との関係を表す減衰率分布に基づいて、前記追加のMR信号データの取得が必要か否かの判定をするための解析をする、
請求項11に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
前記追加解析部は、前記中間高密度データの減衰率が第2の所定の減衰率より大きい急峻な減衰である場合に、前記追加のMR信号データの取得が必要であると判定する、
請求項12に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項14】
撮像条件算出部は、特定された前記追加のMR信号データの取得が必要な領域における前記中間高密度データに基づいて、複数時定数成分のT2減衰モデルに近似させた支配的な時定数T2を算出し、
前記支配的な時定数T2値の信号減衰曲線に基づいて、信号強度を推定し、複数の閾値区分で分割し、
前記追加のMR信号データを取得するための前記少なくとも1つの追加TEのうち第1エコーのMR信号データを取得するために用いられる追加TEを、分割された前記複数の閾値区分のうち所定の閾値区分で、前記初回のMR信号データの第1エコーと第2エコーとの間で推定T2確率密度分布に基づいて、推定T2確率密度が最も高くなるように算出する、
請求項11に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項15】
前記追加のMR信号データを取得するために設定されたUTE撮像法の複数の前記追加TEの間隔は、前記初回のMR信号データを取得するために設定されたUTE撮像法の複数の前記TEの間隔と同じである、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項16】
前記追加のMR信号データを取得するために設定された前記UTE撮像法のマルチエコー数は、前記初回のMR信号データを取得するために設定された前記UTE撮像法のマルチエコー数より少ない、
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項17】
前記追加のMR信号データを取得するために設定されたUTE撮像法の繰り返し時間(TR:Reputation Time)は、前記初回のMR信号データを取得するために設定されたUTE撮像法のTRより短い、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項18】
前記追加のMR信号データの信号強度を補正する信号補正部を、さらに備える、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項19】
前記信号補正部は、取得された前記初回のMR信号データと前記追加のMR信号データとにおいて、複数のTE間での信号強度の変化と、前記初回のMR信号データの撮像条件と前記追加のMR信号データの撮像条件とにおける理論式によるシミュレーションから算出される複数のTE間での信号強度の変化との誤差が最小になる信号補正係数を算出し、前記追加のMR信号データの信号強度を補正する、
請求項18に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項20】
UTE撮像法を用いて、複数のTEを含む撮像条件を設定し、
設定された複数のTEを含む撮像条件で初回のMR信号データを取得し、
取得された前記初回のMR信号データに基づいて、追加のMR信号データの取得が必要な領域を特定するための解析をし、
特定された前記追加のMR信号データの取得が必要な領域において、前記初回のMR信号データにおける少なくとも1つのTEからΔTE遅延させた前記追加のMR信号データを取得するための少なくとも1つの追加TEを算出し、
UTE撮像法を用いて、前記少なくとも1つの追加TEを含む撮像条件を設定し、
前記少なくとも1つの追加TEを含む撮像条件で前記追加のMR信号データを取得する、
磁気共鳴イメージング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置及び磁気共鳴イメージング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置は、静磁場に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波(RF:Radio Frequency)信号で励起し、励起に伴って被検体から発生する磁気共鳴(MR:Magnetic Resonance)信号を再構成して画像を生成する撮像装置である。
【0003】
一般的に、骨部や肺野部等の水分の少ない組織では、横緩和時間(T2値、あるいは磁場不均一性を考慮したT2値)が非常に短く、そのような組織からのMR信号は、励起パルスの印加後に直ぐに減衰してしまう。そこで、T2値が非常に短い場合の撮像を可能とする撮像方法として、UTE(Ultrashort Echo Time)撮像法と呼ばれる技術が知られている。
【0004】
UTE撮像法は、励起パルス印加からデータ収集までの時間、すなわちエコー時間(TE:Echo Time)が非常に短く設定されたパルスシーケンスを用いて行われる撮像法である。例えば、臨床上で肝性鉄量(HIC:Hepatic Iron Content)の推定に肝組織の有効横緩和率(R2値)を利用する等、UTE撮像法によるT2値測定やR2値測定で新たな可能性が期待されている。しかしながら、従来のUTE撮像法では、横緩和時間が非常に短い場合に、T2値測定やR2値測定の精度が十分でない場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Axel J. Krafft et al., “Quantitative Ultrashort Echo Time Imaging for Assessment of Massive Iron Overload at 1.5 and 3 Tesla”, Magnetic Resonance in Medicine 78:1839-1851 (2017)
【非特許文献2】Tipirneni-Sajja A et al., “Ultrashort Echo Time Imaging for Quantification of Hepatic Iron Overload: Comparison of Acquisition and Fitting Methods via Simulations, Phantoms, and In vivo Data”,1686551626262_0.fcgi?dbfrom=pubmed&retmode=ref&cmd=prlinks&id=30358001 (2019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の1つは、UTE撮像法を用いたT2値に関する測定精度を向上することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、撮像条件設定部と、データ取得部と、追加解析部と、撮像条件算出部とを備える。撮像条件設定部は、UTE(Ultrashort Echo Time)撮像法を用いて、複数のTE(Echo Time)を含む撮像条件を設定する。データ取得部は、設定された複数のTEで初回のMR信号データを取得する。追加解析部は、取得された初回のMR信号データに基づいて、追加のMR信号データの取得が必要な領域を特定するための解析をする。撮像条件算出部は、特定された追加のMR信号データの取得が必要な領域において、初回のMR信号データにおける少なくとも1つのTEからΔTE遅延させた追加のMR信号データを取得するための少なくとも1つの追加TE(Additional Echo Time)を算出する。撮像条件設定部は、さらに、UTE撮像法を用いて、少なくとも1つの追加TEを含む撮像条件を設定し、データ取得部は、さらに、少なくとも1つの追加TEで追加のMR信号データを取得する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の全体構成例を示す概略図。
図2】比較例のUTE撮像法によるT2値測定についての説明図。
図3】第1の実施形態に係るUTE撮像法によるデータ収集についての説明図。
図4】第1の実施形態に係るUTE撮像法によるT2値測定についての説明図。
図5】第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の処理回路の構成例を示す概略図。
図6】第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の処理例を示すフローチャート。
図7】第1の実施形態に係る追加のMR信号データを取得する領域を解析するための処理例を示すフローチャート。
図8】減衰率とT2値測定についての説明図。
図9】減衰率とT2値とのヒストグラムについての説明図。
図10】第1の実施形態に係る追加のMR信号データに最適な撮像条件を算出する処理例を示すフローチャート。
図11】追加TEの算出方法についての第1の説明図。
図12】追加TEの算出方法についての第2の説明図。
図13】第2の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の処理例を示すフローチャート。
図14】第2の実施形態に係る中間高密度データを解析する処理例を示すフローチャート。
図15】第1の追加のMR信号データの取得による減衰率とT2値とのヒストグラムの変化についての説明図。
図16】第2の追加のMR信号データの取得による減衰率とT2値とのヒストグラムの変化についての説明図。
図17】第2の実施形態の変形例に係るUTE撮像法によるデータ収集についての説明図。
図18】第3の実施形態に係るUTE撮像法によるデータ収集についての説明図。
図19】第3の実施形態に係るUTE撮像法によるT2値測定についての説明図。
図20】第3の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の処理回路の構成例を示す概略図。
図21】第3の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の処理例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、磁気共鳴イメージング装置及び磁気共鳴イメージング方法の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
(磁気共鳴イメージング装置の全体構成)
実施形態に係る磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置1は、磁気共鳴イメージング技術を利用可能である。図1は、実施形態に係るMRI装置1の全体構成例を示す概略図である。MRI装置1は、磁石架台100と、制御キャビネット300と、例えば、コンソール等の画像処理装置400と、寝台500とを備えて構成される。
【0011】
磁石架台100と寝台500は、例えば、検査室と呼ばれるシールドルームに配置される。一方、制御キャビネット300は、例えば、機械室に配置され、画像処理装置400は、例えば、操作室に配置される。なお、画像処理装置400は、MRI装置1とネットワークを介して接続されて操作室と離れた遠隔地に設置されてもよい。
【0012】
磁石架台100は、静磁場磁石10と、傾斜磁場コイル11と、WB(Whole Body)コイル12を備える。磁石架台100の静磁場磁石10は、磁石が円筒形状の磁石構造である円筒型と、撮像空間を挟んで上下に一対の磁石が配置された開放型とに大別される。ここでは、磁石架台100が円筒型のMRI装置1について説明するが、開放型のMRI装置であってもよい。なお、開放型のMRI装置は、磁石架台を構成する静磁場磁石と、傾斜磁場コイルと、WBコイルとが、平行平板状をなしている以外は、円筒型のMRI装置1と同様の構成を備える。
【0013】
静磁場磁石10は、概略円筒形状をなしており、被検体Pが搬送されるボア内に静磁場を発生する。ボアとは、磁石架台100の円筒内部の空間のことである。静磁場磁石10は、例えば、液体ヘリウムを保持するための筐体と、液体ヘリウムを極低温に冷却するための冷凍機と、筐体内部の超伝導コイルとによって構成される。なお、静磁場磁石10は、永久磁石によって構成されてもよい。以下、静磁場磁石10が、超伝導コイルを有する場合について説明する。
【0014】
静磁場磁石10は、超伝導コイルを内蔵し、液体ヘリウムによって超伝導コイルが極低温に冷却されている。静磁場磁石10は、励磁モードにおいて静磁場電源から供給される電流を超伝導コイルに印加することで静磁場を発生する。その後、永久電流モードに移行すると、静磁場電源は切り離される。一旦永久電流モードに移行すると、静磁場磁石10は、長時間、例えば、1年以上に亘って、静磁場を発生し続ける。
【0015】
傾斜磁場コイル11は、静磁場磁石10と同様に概略円筒形状をなし、静磁場磁石10の内側に設置される。傾斜磁場コイル11は、X軸用、Y軸用、Z軸用の3つの傾斜磁場コイルから構成されている。夫々の傾斜磁場コイルは、傾斜磁場電源31(X軸用31x、Y軸用31y、Z軸用31z)から傾斜磁場電流(電力)を供給されることにより、X軸,Y軸,Z軸の方向に傾斜磁場を発生し、被検体Pに印加する。ここで、Z軸方向は静磁場に沿った方向、Y軸方向は垂直方向、X軸方向はZ軸とY軸それぞれに直交する方向である。
【0016】
WBコイル12は、全身用コイルとも呼ばれ、傾斜磁場コイル11の内側に被検体Pを取り囲むように概略円筒形状に設置されている。WBコイル12は、送信コイルとして機能する。つまり、WBコイル12は、RF送信器32から伝送された高周波(RF:Radio Frequency)信号に従ってRFパルスを被検体Pに向けて送信する。一方、WBコイル12は、RFパルスを送信する送信コイルとしての機能に加え、受信コイルとしての機能を備える場合もある。その場合、WBコイル12は、受信コイルとして、原子核の励起によって被検体Pから放出されるMR信号を受信する。
【0017】
MRI装置1は、WBコイル12の他、ローカルコイル20を備える場合もある。ローカルコイル20は、被検体Pの体表面に近接して配置される。ローカルコイル20は、複数のコイル要素を備えてもよい。また、ローカルコイル20には、頭部コイル、胸部コイル、腹部コイル、脊椎コイル、膝コイル等の幾つかの種別がある。なお、図1では、ローカルコイル20が、胸部コイルである場合が示されているが、その場合に限定されるものではない。
【0018】
ローカルコイル20は、受信コイルとして機能する。つまり、ローカルコイル20は、前述のMR信号を受信する。なお、ローカルコイル20は、MR信号を受信する受信コイルとしての機能に加え、RFパルスを送信する送信コイルとしての機能を備える送受信コイルでもよい。つまり、ローカルコイル20は、送信専用、受信専用、送受信兼用の種別を問わない。
【0019】
寝台500は、寝台本体50と天板51とを備える。寝台本体50は天板51を上下方向及び水平方向に移動可能であり、撮像前に天板51に載った被検体Pを所定の高さまで移動させる。その後、撮像時には天板51を水平方向に移動させて被検体Pをボア内に移動させる。
【0020】
制御キャビネット300は、傾斜磁場電源31(X軸用31x、Y軸用31y、Z軸用31z)と、RF送信器32と、RF受信器33と、シーケンスコントローラ34とを備える。
【0021】
傾斜磁場電源31は、X軸方向と、Y軸方向と、Z軸方向とについて傾斜磁場を発生させるコイルそれぞれを駆動する各チャンネル用の傾斜磁場電源31x,31y,31zを備える。傾斜磁場電源31x,31y,31zは、シーケンスコントローラ34の指令により、必要な電流を各チャンネル独立に出力する。
【0022】
RF送信器32は、シーケンスコントローラ34からの指示に基づいて高周波信号を生成する。RF送信器32は、生成した高周波信号をWBコイル12やローカルコイル20に伝送する。
【0023】
WBコイル12やローカルコイル20で受信したMR信号は、RF受信器33に伝送される。RF受信器33は、WBコイル12やローカルコイル20からのMR信号をアナログ-デジタル(AD:Analog to Digital)変換して、シーケンスコントローラ34に出力する。デジタルに変換されたMR信号は、生データ(Raw Data)と呼ばれることもある。
【0024】
シーケンスコントローラ34は、画像処理装置400による制御の下、傾斜磁場電源31と、RF送信器32と、RF受信器33とをそれぞれ駆動することによって被検体Pの撮像を行う。撮像によってRF受信器33から生データを受信すると、シーケンスコントローラ34は、その生データを画像処理装置400に送信する。
【0025】
シーケンスコントローラ34は、処理回路(図示を省略)を具備する。この処理回路は、例えば、所定のプログラムを実行するプロセッサや、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアで構成される。
【0026】
続いて、画像処理装置400の説明に移る。画像処理装置400は、処理回路40と、記憶回路41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、通信回路44とを備える。
【0027】
処理回路40は、専用又は汎用のプロセッサを有し、記憶回路41に記憶された又は処理回路40内に直接組み込まれたプログラムを実行することによるソフトウェア処理によって、各種の機能を実現する。処理回路40は、シーケンスコントローラ34の動作を制御し、パルスシーケンスに従った撮像を実行してMR画像を生成する機能を実現する。処理回路40は、FPGAやASIC等のハードウェアで構成してもよい。これらのハードウェアによっても後述する各種の機能を実現することができる。また、処理回路40は、ソフトウェア処理とハードウェア処理とを組みわせて、各種の機能を実現してもよい。
【0028】
記憶回路41は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等を備える。記憶回路41は、USB(Universal Serial Bus)メモリ、DVD(Digital Video Disk)等の可搬型メディアを備えてもよい。記憶回路41は、処理回路40において用いられる各種処理プログラムや、プログラムの実行に必要なデータや、医用画像を記憶する。
【0029】
ディスプレイ42は、例えば、液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等の一般的な表示出力装置により構成される。ディスプレイ42は、処理回路40の制御に従って各種情報を表示する。なお、ディスプレイ42は、表示デバイスであると共に、例えば、タッチパネル等のユーザからの各種操作を受け付けることができるGUI(Graphical User Interface)であってもよい。
【0030】
入力インターフェース43は、ユーザによって操作が可能な入力デバイスと、入力デバイスからの信号を入力する入力回路とを含む。入力デバイスは、トラックボール、スイッチ、マウス、キーボード、タッチパッド、タッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力デバイス、音声入力デバイス等によって実現される。ユーザにより入力デバイスが操作されると、入力回路はその操作に応じた信号を生成して処理回路40に出力する。
【0031】
通信回路44は、有線又は無線で、ネットワークに接続された通信を行うためのインターフェースを含む。通信回路44は、例えば、ネットワークと記憶回路41との間で各種データのやり取りを行うことができる。
【0032】
これらの各構成品によって、画像処理装置400は、MRI装置1全体を制御する。具体的には、検査技師等のユーザによる、マウスやキーボード等の入力インターフェース43の操作によって撮像条件その他の各種情報や指示を受け付ける。そして、処理回路40は、入力された撮像条件に基づいてシーケンスコントローラ34にスキャンを実行させる一方、シーケンスコントローラ34から送信されたデータに基づいて画像を再構成する。再構成された画像はディスプレイ42に表示され、或いは記憶回路41に保存される。
【0033】
(UTE撮像法)
MRI装置1は、UTE撮像法によるスキャンを可能にする。UTE撮像法は、RF励起パルス印加からMR信号データ収集までの時間、すなわちTEが非常に短く設定されたパルスシーケンスを用いて行われる撮像法である。UTE撮像法は、例えば、グラジエントエコー(GRE:Gradient Echo)系のパルスシークエンスにより、K空間を、2Dではラジアル状に、3Dではクッシュボール状に、充填することで、T2値の短い組織の描出を可能にする。なお、以下では、マルチエコーUTE撮像法によって説明しているが、UTE撮像法は、シングルエコーのパルスシークエンスを用いて異なるTEの複数のMR信号を取得するUTE撮像法であってもよい。
【0034】
ここで、図2は、比較例のUTE撮像法によるT2値測定についての説明図である。図2(A)は、1回のマルチエコーUTE撮像法のスキャンによりT2値測定データを取得する低密度データ収集である。図2(A)に示すように、低密度データ収集の場合には、T2値の短い、すなわち急峻なMR信号の減衰を示す組織等において、T2値測定のために充分な量のデータが取得されず、信頼性の高いT2値測定が難しくなる。
【0035】
また、図2(B)は、複数のマルチエコーUTE撮像法によりT2値測定データを取得する従来型の高密度データ収集の場合である。図2(B)では、エコー数を8として、6回のマルチエコーUTE撮像法のスキャンにより高密度データ収集が行われている。図2(B)では、初回スキャンにより取得されたT2値測定データがハッチングで示されている。図2(B)に示すように、従来の高密度データ収集の場合には、予め設定された一定のΔTE分を遅延させた複数の追加TEにおけるMR信号を取得してる。そのため、T2値測定データを収集したい組織等のMR信号の減衰に適した追加TEが設定されていないことがある。
【0036】
また、T2値の短い、すなわち急峻なMR信号の減衰を示す組織等において、T2値測定をするために充分な量のデータを確保するために、スキャン回数を増やす必要があり、撮像時間が長くなってしまうこともある。さらには、充分な量のデータを確保するために、T2値の短い組織等のMR信号の減衰後のノイズ成分の多いデータもT2値測定データとして用いることになる。それにより、T2値測定データの精度が低くなることもある。
【0037】
このように、従来型のUTE撮像法では、T2値に関する測定精度が十分でないことがある。同様に、R2値測定の精度も十分でないことがある。そこで、実施形態に係るMRI装置1では、UTE撮像法による複数のスキャンのうち追加スキャンにおいて、T2値に関する測定精度を向上するようにTEが設定される。
【0038】
(第1の実施形態)
図3は、第1の実施形態に係るUTE撮像法によるデータ収集についての説明図である。第1の実施形態に係るUTE撮像法によるデータ収集は、図3では、1TR内のマルチエコー数を6として、初回スキャンと、第1の追加スキャンと、第2の追加スキャンとの3回のスキャンによってデータ収集が行われている。初回スキャンの第1エコーから第6エコーは、それぞれTE1からTE6においてデータ収集される。なお、マルチエコー数は、6に限らず複数のエコー数でよい。
【0039】
初回スキャンと、第1の追加スキャンと、第2の追加スキャンとの3回のスキャンの場合に、例えば、全てのスキャンにおいてマルチエコーUTE撮像法が用いられてもよい。また、初回スキャンでマルチエコーUTE撮像法、第1の追加スキャンでシングルエコーUTE撮像法、第2の追加スキャンでシングルエコーUTE撮像法が用いられるように、それぞれのスキャンがマルチエコーUTE撮像法とシングルエコーUTE撮像法の組み合わせによって行われてもよい。また、追加スキャンの回数は、2回に限らず、1回でもよいし、3回以上の複数回数でもよい。
【0040】
図3に示すように、第1の追加スキャンの第1エコーのデータ収集は、TE1からΔTE1分遅延させた第1追加TE1で行われる。このように、第1の追加スキャンの第1エコー乃至第6エコーのデータ収集は、初回スキャンの第1エコー乃至第6エコーのTE1乃至TE6に対してΔTE1分遅延させた複数の追加TEにおいて行われる。
【0041】
また、第2の追加スキャンの第1エコーのデータ収集は、TE1からΔTE2分遅延させた第2追加TE1で行われる。このように、第2の追加スキャンの第1エコー乃至第6エコーのデータ収集は、初回スキャンの第1エコー乃至第6エコーのTE1乃至TE6に対してΔTE2分遅延させた複数の追加TEにおいて行われる。
【0042】
つまり、追加のMR信号データを取得するために設定されたUTE撮像法の複数の追加TEの間隔は、初回のMR信号データを取得するために設定されたUTE撮像法の複数のTEの間隔と同じになる。
【0043】
図4は、第1の実施形態に係るUTE撮像法によるT2値測定についての説明図である。図4は、図3のデータ収集が行われた場合の信号減衰曲線であり、初回スキャンのデータ収集がハッチングで示されている。図4に示すように、T2値測定データを収集したい組織等のMR信号の減衰に適した追加TEが設定されると、即ち、測定対象に応じた最適な追加TEが設定されると、T2値に関する測定精度が向上する。また、急峻なMR信号の減衰を示す組織等においても、T2値測定するために必要十分な量のデータを確保するために、スキャン回数を増やして撮像時間が長くなることを防ぐことができる。T2値に関する測定精度を向上させるための追加TEの設定について以下詳細に説明する。
【0044】
図5は、第1の実施形態に係るMRI装置1の処理回路40の構成例を示す概略図である。図5に示すように、第1の実施形態の処理回路40は、撮像条件設定機能F1、データ取得機能F2、追加解析機能F3、撮像条件算出機能F4、高密度データ生成機能F5、及びマップ生成機能F6の各機能を実現する。第1の実施形態の処理回路40の各機能の構成及び動作について、図6乃至図12を用いて説明する。始めに、被検体Pは、寝台500の天板51の上に載置され、静磁場内に収容される。
【0045】
ステップST10において、撮像条件設定機能F1は、UTE撮像法を用いて、複数のTEを含む、初回スキャンのための撮像条件を設定する。撮像条件は、例えば、入力インターフェース43を介したユーザの操作により、又は記憶回路41に予め記憶された撮像条件を読み出すことにより設定される。撮像条件として、例えば、マルチエコー数、TE、TR、加算回数、分解能設定に用いられるマトリックスサイズ、スライス厚、FOV(Field Of View)等が設定されてもよい。
【0046】
ステップST20において、データ取得機能F2は、複数のTEを含む設定された撮像条件で初回スキャンのMR信号データを取得する。
【0047】
ステップST30において、追加解析機能F3は、取得された初回スキャンのMR信号データに基づいて、追加のMR信号データの取得が必要な領域を特定するための解析をする。ここで、図7は、ステップST30追加のMR信号データを取得する領域を解析するための処理例を示すフローチャートである。図7に示すように、ステップST30は、例えば、ステップST301乃至ステップST303で構成される。
【0048】
ステップST301では、取得された初回スキャンのMR信号データの減衰率マップが算出される。ここで、図8を用いて、減衰率とT2値測定について説明する。図8(A)は、領域A0内に、3つの異なる減衰値(即ち、3つの異なるT2値)を有するファントムに対応する初回スキャンのMR信号データの減衰率マップを例示している。図8(A)では、領域A0、A1、A2、及びA3のそれぞれで減衰率が異なる様子が示されている。図8(A)の0%は減衰なしを意味する。なお、領域A0、A1、A2、及びA3のそれぞれの内部においては、均一な減衰率(即ち、均一なT2値)を有するものとしている。
【0049】
また、以下では、説明の便宜上、撮像対象が上記のようなファントムである例で説明するが、撮像対象はこれに限定されるわけではなく、撮像対象が人体であっても一般性は失われない。
【0050】
図8(B)では、領域A1、A2、及びA3のそれぞれの信号減衰曲線が描出されている。図8(B)に示すように、減衰率が比較的小さい、すなわちT2値が比較的長い領域A1においては、測定精度の高いT2値測定のために充分な量のデータが初回のMR信号データによって取得されている。
【0051】
一方で、減衰率が大きい、すなわちT2値が短い領域A2及びA3においては、測定精度の高いT2値測定のために充分な量のデータが初回スキャンのMR信号データによって取得されていない。言い換えると、図8(B)のT2値測定は、領域A2及びA3においては測定精度が低い。そこで、追加のMR信号データの取得が必要な領域を特定するための解析をする。
【0052】
ステップST302では、減衰率とT2値とを2D又は3Dのヒストグラムで表した減衰率分布が生成される。減衰率分布の生成は、減衰率が大きく、かつT2値が短い領域において行われる。なお、減衰率分布の生成は、初回スキャンのMR信号データの全領域で行われてもよい。また、例えば、入力インターフェース43を介したユーザの操作により、初回のMR信号データの減衰率マップ上で指定された領域について行われてもよい。
【0053】
ここで、図9を用いて、減衰率とT2値とのヒストグラムについて説明する。図9は、図8(A)の減衰率が大きい、すなわちT2値が短い領域A2及びA3において、減衰率とT2値とを3Dのヒストグラムで表した減衰率分布の一例である。図9のヒストグラムでは、例えば、80%から100%と減衰率が大きい。
【0054】
また、図9のヒストグラムでは、減衰率が異なる、すなわちT2値が異なる2つの領域A2及びA3に対するヒストグラムにもかかわらず、T2値がばらついているため2種類のT2値についてピークの確認が難しい。このように、T2値がばらついているためT2値のピークを確認しがたい場合を、減衰率分布の均一性が低いともいう。ステップST303では、減衰率が大きく、かつ減衰率分布の均一性が低い領域を、追加のMR信号データの取得が必要な領域として特定する。
【0055】
図6に戻り、ステップST40において、撮像条件算出機能F4は、特定された追加のMR信号データの取得が必要な領域において、初回のMR信号データにおける少なくとも1つのTEからΔTE遅延させた追加のMR信号データを取得するための少なくとも1つの追加TEを算出する。ここで、ΔTEは、例えば、初回のMR信号データの第1エコーのTE1と第2エコーのTE2との差分より小さい値である。
【0056】
すなわち、撮像条件算出機能F4は、追加のMR信号データを取得するための少なくとも1つの追加TEのうち第1エコーのMR信号データを取得するために用いられる追加TEを、初回のMR信号データの第1エコーと第2エコーとの間に含まれるように算出する。
【0057】
図10は、追加のMR信号データに最適な撮像条件を算出する処理例を示すフローチャートである。また、図11及び図12は、追加TEの算出方法についての説明図である。ここで、図10に示すように、ステップST40は、例えば、ステップST401乃至ステップST405で構成される。
【0058】
ステップST401において、撮像条件算出機能F4は、特定された追加のMR信号データの取得が必要な領域における初回のMR信号データに基づいて、複数時定数成分のT2減衰モデルに近似させた支配的な時定数T2値を算出する。T2減衰モデルは、複数時定数成分にT2S値に関する成分を含む。複数時定数成分のT2減衰モデルによる信号強度式は、例えば、式(1)で与えられる。
【0059】
【数1】
【0060】
ここで、T2S値は短いT2成分の緩和時間、A21は短いT2成分の信号強度、T2L値は長いT2成分の緩和時間、A22は長いT2成分の信号強度、n(TE)はTEにおけるノイズ等他成分を表す。初回のMR信号データで取得した各エコーのTEと信号強度とに基づいて、式(1)のT2減衰モデルに対して非線形最小二乗法を用いることで支配的な時定数T2値、すなわちT2S値が算出される。
【0061】
ステップST402において、撮像条件算出機能F4は、支配的な時定数T2値の信号減衰曲線に基づいて、信号強度を推定し、複数の閾値区分に分割する。図11の第1乃至第4の閾値区分に示されるように、複数の閾値区分は、少なくとも4つの閾値区分であるとよい。
【0062】
図11に示すように、第1乃至第4の4つの閾値区分に分割される。具体的には、初回のMR信号データの第1エコーにおける信号強度を第1の閾値区分の上限Y0とした場合、第2の閾値区分の上限Y1は、Y1=Y0・exp(-1/2)とする。同様に、第3の閾値区分の上限Y2は、Y2=Y0・exp(-1)とする。また、第4の閾値区分の上限Y3は、Y3=Y0・exp(-2)として、第4の閾値区分の下限Y4は、Y4=Y0・exp(-3)とする。
【0063】
ステップST403において、撮像条件算出機能F4は、初回のMR信号データの第1エコーと第2エコーとの間のTEにおいて、TE毎に算出される推定T2密度に基づいて、推定T2密度分布を生成する。推定T2密度とは、所定の閾値区分内に含まれる、特定のTEにおける推定T2値の上限値と推定T2値の下限値との差分で表される。所定の閾値区分は、例えば、ステップST402において分割された第1乃至第4の閾値区分のうち少なくとも1つの閾値区分である。
【0064】
ここで、図11の実線で示される信号減衰曲線は、支配的な時定数T2値として算出されたT2S値(例えば、T2Sa値)を式(1)のT2S値に与えた信号減衰曲線である。また、図11の破線で示される複数の信号減衰曲線は、支配的な時定数T2値として算出されたT2S値を少しずつ変化させた複数のT2値(例えば、T2Sb値)を式(1)のT2S値に与えて生成した信号減衰曲線である。破線で示される複数の信号減衰曲線は、式(1)においてT2S値以外の他のパラメータの値は、例えば、実線で示される信号減衰曲線と同じ値が用いられる。
【0065】
図11では、TEがTEaの場合に、推定T2値の上限値としてT2Sb値が、推定T2値の下限値としてT2Sa値が、第2の閾値区分に含まれている様子が示されている。つまり、図11では、推定T2密度はT2Sb値とT2Sa値との差分で表される。同様に、TE毎の推定T2密度を算出することで、推定T2密度分布が生成される。
【0066】
ステップST404では、推定T2密度分布に基づいて、推定T2確率密度分布が生成される。推定T2確率密度分布は、例えば、図12に示すように、推定T2密度分布を、例えば、ガンマ分布モデルに従って解析して生成される。
【0067】
ステップST405では、初回のMR信号データにおける少なくとも1つのTEからΔTE遅延させた少なくとも1つの追加TEが算出される。具体的には、撮像条件算出機能F4は、例えば、追加のMR信号データを取得するための少なくとも1つの追加TEのうち第1エコーのMR信号データを取得するために用いられる追加TEを、初回のMR信号データの第1エコーと第2エコーとの間に配置する。第1エコーのMR信号データを取得するために用いられる追加TEは、分割された複数の閾値区分のうち所定の閾値区分で、推定T2確率密度分布に基づいて、推定T2確率密度が最も高くなるように算出される。
【0068】
図6に戻り、ステップST50において、撮像条件設定機能F1は、さらに、UTE撮像法を用いて、少なくとも1つの追加TEを含む撮像条件を設定する。他の撮像条件については、例えば、ステップST10において設定された撮像条件が設定される。
【0069】
ステップST60において、データ取得機能F2は、さらに、少なくとも1つの追加TEを含む設定された撮像条件で追加のMR信号データを取得する。
【0070】
ステップST70において、高密度データ生成機能F5は、初回のMR信号データと、追加のMR信号データとを合成した中間高密度データを最終高密度データとして生成する。
【0071】
ステップST80において、マップ生成機能F6は、画素毎に得られた最終高密度データに基づいて画素毎にT2値を算出し、T2マップを生成する。また、マップ生成機能F6は、最終高密度データに基づいて、T2マップに加えてR2マップを生成してもよいし、T2マップとR2マップのいずれかを生成してもよい。
【0072】
第1の実施形態に係るMRI装置1によれば、T2値測定データを収集したい組織等のMR信号の減衰に適した追加TEが設定される。そして、MR信号の減衰に適した追加TEが設定されることにより、T2値に関する測定精度が向上する。また、同様にR2値に関する測定精度が向上する。さらに、第1の実施形態に係るMRI装置1によれば、初回のMR信号データに加えて、T2値の短い組織等の追加のMR信号データも取得されるため、生成されたT2マップにおいて、例えば、0.3~10[ms]の広いダイナミックレンジが実現できる。
【0073】
(第2の実施形態)
図13は、第2の実施形態に係るMRI装置1の処理例を示すフローチャートである。図13に示すように、第2の実施形態は、追加のMR信号データの取得が必要か否かを判定する点と、初回のMR信号データと追加のMR信号データとを合成して中間高密度データを生成する点で、第1の実施形態と異なる。他の構成及び作用については、図1及び図5に示す第1の実施形態と実質的に異ならないため、同じ構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。第2の実施形態の処理回路40の各機能の構成及び動作について、図13のフローチャートを用いて説明する。
【0074】
第2の実施形態のステップST10、ステップST20、及びステップST30は、第1の実施形態のステップST10、ステップST20、及びステップST30と実質的に異ならないため、重複する説明を省略する。第2の実施形態では、ステップST30の後に、ステップST31に進む。ここで、わかり易さのために、ステップST30の後のステップST31はステップST31Aとし、後述するステップST66の後のステップST31はステップST31Bとする。
【0075】
ステップST31Aにおいて、追加解析機能F3は、追加のMR信号データの取得が必要か否かを判定するための解析をする。追加のMR信号データの取得が必要か否かを判定は、追加解析機能F3がステップST30で特定した追加のMR信号データの取得が必要な領域において行われる。追加のMR信号データの取得が必要な領域は、初回のMR信号データの減衰率、及び減衰率とT2*値との関係を表す減衰率分布に基づいて、特定された領域である。
【0076】
ステップST31Aにおいて、追加解析機能F3は、例えば、初回のMR信号データの減衰率が第1の所定の減衰率より大きい急峻な減衰である場合に、追加のMR信号データの取得が必要であると判定する。第1の所定の減衰率は、例えば、70%程度又はそれより大きい減衰率が挙げられる。追加のMR信号データの取得が必要であると判定された場合(すなわち、ステップST31AでYES)には、ステップST40に進む。ここで、わかり易さのために、ステップST31Aの後のステップST40はステップST40Aとし、後述するステップST31Bの後のステップST40はステップST40Bとする。
【0077】
第2の実施形態のステップST40A、ステップST50、及びステップST60は、第1の実施形態のステップST40、ステップST50、及びステップST60と実質的に異ならないため、重複する説明を省略する。第2の実施形態では、ステップST60の後に、ステップST65に進む。
【0078】
ステップST65において、高密度データ生成機能F5は、初回のMR信号データと、追加のMR信号データとを合成した中間高密度データを生成する。なお、ステップST65の高密度データは、第1の実施形態のステップST70とは異なり、最終高密度データではない。なお、追加のMR信号データの取得前には、初回のMR信号データが中間高密度データとなる。そして、ステップST65の後に、ステップST66に進む。
【0079】
ステップST66において、追加解析機能F3は、合成した中間高密度データに基づいて、追加のMR信号データの取得が必要か否かの判定をするための解析をする。ここで、図14は、第2の実施形態に係る中間高密度データを解析する処理例を示すフローチャートである。図14に示すように、ステップST66は、例えば、ステップST661及びステップST662で構成される。
【0080】
ステップST661では、中間高密度データの減衰率マップが算出される。そして、ステップST662では、減衰率とT2値とを2D又は3Dのヒストグラムで表した減衰率分布が生成される。
【0081】
ここで、図15及び図16は、それぞれ第1及び第2の追加のMR信号データ収集による減衰率とT2値とのヒストグラムの変化についての説明図である。図15及び図16は、図9と同様に、図8(A)の2つの領域A2及びA3における減衰率とT2値とを3Dのヒストグラムで表した減衰率分布の一例である。
【0082】
図15のヒストグラムでは、減衰率が80%程度と大きいものの、図9のヒストグラムと比較すると、減衰率は小さくなっている。また、T2値のピークが2つ確認できるものの、T2値のばらつきが大きくT2値のデータとして信頼性が低い。
【0083】
図16のヒストグラムでは、減衰率が小さくなり、T2値のピークが2つ確認できる。すなわち、減衰率分布の均一性が高くなっている。図15及び図16は、追加のMR信号データが取得されるに応じて、減衰率が小さくなり、T2値の測定精度が高くなる様子を示している。このように、中間高密度データの解析は、中間高密度データの減衰率、及び減衰率とT2*値との関係を表す減衰率分布に基づいて行われる。
【0084】
図13に戻り、ステップST66の後には、ステップST31(すなわち、ST31B)に進む。ステップST31Bは、ステップST31Aと追加のMR信号データの取得が必要か否かの判定に用いられるデータが、それぞれ初回のMR信号データか中間高密度データかで異なる。
【0085】
ステップST31Bにおいて、追加解析機能F3は、追加のMR信号データの取得が必要か否かを判定する。追加のMR信号データの取得が必要か否かを判定は、ステップST30において特定された追加のMR信号データの取得が必要な領域において行われる。
【0086】
また、追加解析機能F3は、例えば、中間高密度データの減衰率が第2の所定の減衰率より大きい急峻な減衰である場合に、追加のMR信号データの取得が必要であると判定する。第2の所定の減衰率は、例えば、40%程度又はそれより大きい減衰率が挙げられる。追加のMR信号データの取得が必要であると判定された場合(すなわち、ステップST31BでYES)には、ステップST40(すなわち、ST40B)に進む。
【0087】
ステップST40Bにおいて、撮像条件算出機能F4は、特定された追加のMR信号データの取得が必要な領域において、中間高密度データにおける少なくとも1つのTEからΔTE遅延させた追加のMR信号データを取得するための少なくとも1つの追加TEを算出する。つまり、ステップST40Bは、中間高密度データに基づいて、少なくとも1つの追加TEを算出している点で、ステップ40Aと異なる。
【0088】
ステップST40Bにおいて、撮像条件算出機能F4は、例えば、特定された追加のMR信号データの取得が必要な領域における中間高密度データに基づいて、複数時定数成分のT2減衰モデルに近似させた支配的な時定数T2値を算出する。そして、支配的な時定数T2値の信号減衰曲線に基づいて、信号強度を推定し、複数の閾値区分で分割する。さらに、追加のMR信号データを取得するための少なくとも1つの追加TEのうち第1エコーのMR信号データを取得するために用いられる追加TEを、初回のMR信号データの第1エコーと第2エコーとの間に配置する。第1エコーのMR信号データを取得するために用いられる追加TEは、分割された複数の閾値区分のうち所定の閾値区分で、推定T2確率密度分布に基づいて、推定T2確率密度が最も高くなるように算出する。
【0089】
ここで、図11のように、撮像条件算出機能F4が、支配的な時定数T2値の信号減衰曲線に基づいて、信号強度を推定し、第1乃至第4の4つの閾値区分で分割した場合の所定の閾値区分について次のようにしてもよい。例えば、1回目のステップST40Bで所定の閾値区分を、初回のMR信号データが存在しない領域区分のうち、推定された信号強度が2番目である第2の閾値区分として、追加TEを算出して、第1の追加スキャンでMR信号データを取得する。その後に、追加のMR信号データの取得が必要であると判定された場合に、2回目のステップST40Bで所定の閾値区分を、すでに取得したMR信号データが存在しない領域区分のうち、推定された信号強度が1番目である第1の閾値区分として、追加TEを算出して、第2の追加スキャンでMR信号データを取得する。
【0090】
他に、第1の追加スキャンでは、所定の閾値区分を推定された信号強度が3番目である第3の閾値区分として、追加TEを算出して、MR信号データを取得してもよい。また、第2の追加スキャンでは、所定の閾値区分を推定された信号強度が2番目である第2の閾値区分として、追加TEを算出して、MR信号データを取得してもよい。さらに、第3の追加スキャンでは、所定の閾値区分を推定された信号強度が1番目である第1の閾値区分、或いは推定された信号強度が2番目である第2の閾値区分として、追加TEを算出して、MR信号データを取得してもよい。
【0091】
そして、ステップST40Bの後は、前述したように、ステップST50、ステップST60、ステップST65、及びステップST66に進む。なお、第1の追加スキャンでMR信号データと、第2の追加スキャンでMR信号データの取得は、ステップST60でデータ取得機能F2が行う。
【0092】
このように、所定の閾値区分は、分割した閾値区分のうち追加のMR信号データが少なくてすむような順番で選択されてもよい。なお、閾値区分は、前述した4つに限らず、それよりも多い閾値区分で分割されてもよい。また、追加のMR信号データは、前述した1つの追加データや、第1と第2の追加データの2つの追加データに限らず、それよりも多く取得されてもよく、追加のMR信号データの取得が必要であると判定された場合に取得されればよい。
【0093】
また、ステップST31AとステップST31Bとにおいて、追加のMR信号データの取得が必要でないと判定された場合(すなわち、ステップST31AとステップST31BとでNO)には、ステップST70に進む。
【0094】
第2の実施形態のステップST70及びステップST80は、第1の実施形態のステップST70及びステップST80と実質的に異ならないため、重複する説明を省略する。
【0095】
第2の実施形態に係るMRI装置1によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、第2の実施形態では、初回のMR信号データに加えて、中間高密度データを用いて追加のMR信号データの取得が必要か否かの判定をするための解析をする。そのため、T2値測定やR2値測定において測定精度が向上すると共に、必要十分な追加のMR信号データの取得が可能になる。すなわち、必要以上の撮像時間の延長をすることなく、T2値測定するために充分な量のデータを確保することができる。
【0096】
(第2の実施形態の変形例)
図17は、第2の実施形態の変形例に係るUTE撮像法によるデータ収集についての説明図である。図17では、初回スキャンによるデータ収集は、1TR内のマルチエコー数を6として行われている。また、第1の追加スキャンと、第2の追加スキャンとによるデータ収集は、1TR内のマルチエコー数を2として行われている。そして、初回スキャンと、第1の追加スキャンと、第2の追加スキャンとの3回のスキャンにおいて、それぞれ同じTRが用いられている。
【0097】
すなわち、第2の実施形態の変形例は、追加のMR信号データを取得するために設定されたUTE撮像法のマルチエコー数が、初回のMR信号データを取得するために設定されたUTE撮像法のマルチエコー数より少ない点で、第2の実施形態と異なる。他の構成及び作用については第2の実施形態と実質的に異ならないため、重複する説明を省略する。
【0098】
第2の実施形態の変形例に係るMRI装置1によれば、第2の実施形態と同様の効果が得られる。なお、第2の実施形態の変形例では、第2の実施形態と同様に、初回スキャンと、第1の追加スキャンと、第2の追加スキャンとの3回のスキャンにおけるTRはそれぞれ同じため撮像時間は変わらない。しかしながら、第2の実施形態の変形例では、第2の実施形態と異なり、追加スキャンにおいて、T2値の短い組織等のMR信号の減衰後のノイズ成分の多いデータをT2値測定データとして用いないことになる。そのため、T2値測定データの精度が向上する可能性がある。
【0099】
(第3の実施形態)
図18は、第3の実施形態に係るUTE撮像法によるデータ収集についての説明図である。図19は、第3の実施形態に係るUTE撮像法によるT2値測定についての説明図である。図19は、図18のデータ収集が行われた場合の信号減衰曲線であり、初回スキャンのデータ収集がハッチングで示されている。
【0100】
図18及び図19では、初回スキャンによるデータ収集は、1TR内のマルチエコー数を6として行われている。また、第1の追加スキャンと、第2の追加スキャンとによるデータ収集は、1TR内のマルチエコー数を2として行われている。そして、初回スキャンにおけるTRと、第1の追加スキャンと、第2の追加スキャンとの3回のスキャンにおいて、それぞれ同じTRが用いられている。なお、各追加スキャンにおいてTRが異なっていてもよい。
【0101】
つまり、第3の実施形態は、追加のMR信号データを取得するために設定されたUTE撮像法の繰り返し時間(TR:Reputation Time)は、初回のMR信号データを取得するために設定されたUTE撮像法のTRより短い点で、図17に示された第2の実施形態の変形例と異なる。また、追加のMR信号データを取得するために設定されたUTE撮像法のマルチエコー数が、初回のMR信号データを取得するために設定されたUTE撮像法のマルチエコー数より少ない点で、第2の実施形態と異なる。
【0102】
図20は、第3の実施形態に係るMRI装置1の処理回路40の構成例を示す概略図である。図20に示すように、第3の実施形態の処理回路40は、さらに、追加のMR信号データの信号強度を補正する信号補正機能F7を実現する点で、第2の実施形態の処理回路40と異なる。第3の実施形態の処理回路40の各機能の構成及び動作について、図21のフローチャートを用いて説明する。
【0103】
第3の実施形態のステップST10、ステップST20、及びステップST30は、第2の実施形態のステップST10、ステップST20、及びステップST30と実質的に異ならないため、重複する説明を省略する。第3の実施形態では、ステップST30の後には、ステップST31に進む。そして、ステップST31でYESの場合には、ステップST40に進む。
【0104】
ここで、わかり易さのために、ステップST30の後のステップST31はステップST31Aとし、ステップST31Aの後のステップST40はステップST40Aとする。また、後述するステップST66の後のステップST31はステップST31Bとし、ステップST31Bの後のステップST40はステップST40Cとする。
【0105】
第3の実施形態のステップST31A、ステップST40A、ステップST50、及びステップST60は、第2の実施形態のステップST31A、ステップST40A、ステップST50、及びステップST60と実質的に異ならないため、重複する説明を省略する。第3の実施形態では、ステップST60の後に、ステップST61に進む。
【0106】
ステップST61において、信号補正機能F7は、追加のMR信号データの信号強度を補正する。前述したように、UTE撮像法では、例えば、GRE系のパルスシークエンスが用いられる。一般的なSpoiled GRE法の信号強度式Sigは、初期信号強度Mフリップ角θ°のRFパルスで、TR>>T2の場合、式(2)で与えられる。なお、GRE系のパルスシークエンスにおいては、磁場不均一等の影響からT2に代えてT2となる。
【0107】
【数2】
【0108】
式(2)に示されるように、TRが異なる初回のMR信号データと追加のMR信号データとでは信号強度が異なる。そこで、追加のMR信号データの信号強度は補正する必要がある。信号補正機能F7は、例えば、実際に取得された初回のMR信号データと追加のMR信号データとにおける複数のTE間での信号強度の変化と、初回のMR信号データの撮像条件と追加のMR信号データの撮像条件とにおける理論式によるシミュレーションから算出される複数のTE間での信号強度の変化と、の誤差が最小になる信号補正係数を算出し、追加のMR信号データの信号強度を補正する。第3の実施形態では、ステップST61の後に、ステップST65に進む。
【0109】
第3の実施形態のステップST65、ステップST66、及びステップST66の後のステップST31(すなわち、ST31B)は、第2の実施形態のステップST65、及びステップST31Bと実質的に異ならないため、重複する説明を省略する。第3の実施形態では、ステップST31の後に、ステップST40(すなわち、ST40C)に進む。
【0110】
ステップST40Cにおいて、撮像条件算出機能F4は、追加のMR信号データを取得するためのTRを、初回のMR信号データを取得するためのTRより短く設定する。また、追加のMR信号データを取得するためのマルチエコー数を、初回のMR信号データを取得するためのマルチエコー数より少なく設定する。
【0111】
撮像条件算出機能F4は、特定された追加のMR信号データの取得が必要な領域において、初回のMR信号データにおける少なくとも1つのTEからΔTE遅延させた追加のMR信号データを取得するための少なくとも1つの追加TEを算出する。そして、ステップST40Cの後には、前述したように、ステップST50、ステップST60、ステップST61、ステップST65、及びステップST66に進む。
【0112】
また、ステップST31AとステップST31Bとにおいて、追加のMR信号データの取得が必要でないと判定された場合(すなわち、ステップST31AとステップST31BとでNO)には、ステップST70に進む。
【0113】
第3の実施形態のステップST70及びステップST80は、第2の実施形態のステップST70及びステップST80と実質的に異ならないため、重複する説明を省略する。
【0114】
第3の実施形態に係るMRI装置1によれば、第2の実施形態の変形例と同様の効果が得られる。また、第3の実施形態では、追加のMR信号データを取得するためのマルチエコー数は初回のMR信号データを取得するためのマルチエコー数よりも少なく、追加のMR信号データを取得するためのTRは初回のMR信号データを取得するためのTRよりも短いため、撮像時間がさらに短縮されうる。
【0115】
以上説明した少なくとも1つの実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置によれば、UTE撮像法を用いたT2値に関する測定精度を向上することができる。
【0116】
なお、上記実施形態において、「プロセッサ」という文言は、例えば、専用又は汎用のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)又は特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
【0117】
プロセッサが、例えば、CPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することにより、各種機能を実現する。また、プロセッサが、例えば、ASICである場合、記憶回路にプログラムを保存するかわりに、当該プログラムに相当する機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行するハードウェア処理により各種機能を実現する。或いは、また、プロセッサは、ソフトウェア処理とハードウェア処理とを組み合わせて各種機能を実現することもできる。
【0118】
また、上記実施形態では処理回路の単一のプロセッサが各機能を実現する場合の例について示したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサが各機能を実現してもよい。また、プロセッサが複数設けられる場合、プログラムを記憶する記憶回路は、プロセッサごとに個別に設けられてもよいし、1つの記憶回路が全てのプロセッサの機能に対応するプログラムを一括して記憶してもよい。
【0119】
なお、実施形態の説明における撮像条件設定機能F1、データ取得機能F2、追加解析機能F3、撮像条件算出機能F4、高密度データ生成機能F5、マップ生成機能F6、及び信号補正機能F7は、それぞれ、特許請求の範囲の記載における、撮像条件設定部、データ取得部、追加解析部、撮像条件算出部、高密度データ生成部、マップ生成部、及び信号補正部の一例である。
【0120】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0121】
1…磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置 F1…撮像条件設定機能 F2…データ取得機能 F3…追加解析機能 F4…撮像条件算出機能 F5…高密度データ生成機能 F6…マップ生成機能 F7…信号補正機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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図16
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図19
図20
図21