(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178028
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】アキシャルギャップモータ用のステータコアの設置構造
(51)【国際特許分類】
H02K 1/12 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
H02K1/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096512
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】小名川 真
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA08
5H601AA09
5H601DD12
5H601GA23
5H601GD02
5H601GD18
5H601KK18
5H601KK19
(57)【要約】
【課題】アキシャルギャップモータ用のステータコアの設置構造において、磁気回路への悪影響を及ぼす様なステータコアへの構成を付加することなく、且つ的確に位置決めしてステータコアを設置することのできるアキシャルギャップモータ用のステータコアの設置構造を提供すること。
【解決手段】円環状のステータコア10は6つの円弧状の分割ステータティース12で構成され、各分割ステータティース12の外周面12aと内周面12bには、それぞれステータプレート16の外周壁部16aと内周壁部16bとの離間間隔が、ロータ側に向かって広くなる様にテーパ部13、15が設けられ、各分割ステータティース12のステータプレート16への装填は、ステータプレート16に固定された係止部材18、20、22にて、それぞれのテーパ部13、15が係止された状態でなされていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のピースに分割されたティース部が中央部に孔部を有する様に円環状に組み合わされた円環状のステータコアと、外周縁と内周縁にそれぞれ外周壁部と内周壁部を有する円環状のステータプレートと、を有し、前記円環状のステータコアが、前記ステータプレートの前記外周壁部と前記内周壁部との間に装填されてなるステータを一対備え、該一対のステータ間にて前記孔部の中心を軸中心として回転するロータが設けられたアキシャルギャップモータ用のステータコアの設置構造において、
前記円環状のステータコアは複数の円弧状の分割ステータティースで構成され、前記各分割ステータティースの外周面と内周面には、それぞれ前記ステータプレートの前記外周壁部と内周壁部との離間間隔が、前記ロータ側に向かって広くなる様にテーパ部が設けられ、
前記各分割ステータティースの前記ステータプレートへの装填は、該ステータプレートに固定された係止部材にて、前記それぞれのテーパ部が係止された状態でなされていることを特徴とするアキシャルギャップモータ用のステータコアの設置構造。
【請求項2】
前記係止部材による前記分割ステータティースの係止構造は、
前記ステータプレートに締結された状態で前記分割ステータティースのテーパ部に直接又は間接に当接された状態となる締結部材にて構成されたことを特徴とする請求項1に記載のアキシャルギャップモータ用のステータコアの設置構造。
【請求項3】
前記締結部材による前記分割ステータティースの係止構造は、
前記ステータプレートの前記内周壁部の外側から該内周壁部を貫通し、先端が前記分割ステータティースのテーパ部に当接された状態となるネジ部材にて構成されたことを特徴とする請求項2に記載のアキシャルギャップモータ用のステータコアの設置構造。
【請求項4】
前記締結部材による前記分割ステータティースの係止構造は、
前記ステータプレートの前記外周壁部と前記分割ステータティースのテーパ部との間に配置されて前記テーパ部に当接される中間部材と、該中間部材を貫通して前記ステータプレートに螺入されるネジ部材にて構成されたことを特徴とする請求項2に記載のアキシャルギャップモータ用のステータコアの設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキシャルギャップモータ用のステータコアの設置構造、特に、複数のピースからなるアキシャルギャップモータ用のステータコアの設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来のラジアルギャップモータに替わって、薄型化や高出力化が可能であるアキシャルギャップモータの利用場面が広がっている。アキシャルギャップモータは、円環状ステータコアと同ステータコアの軸中心として回転するロータが軸方向の片側或いは両側に対向した構造を有する。
【0003】
アキシャルギャップモータのステータコアは、ラジアルギャップモータで使用されている電子鋼板に替わって,軟磁性粉末を金型に充填し加圧成形する工程を伴う圧粉コアが用いられる場合がある。圧粉コアを用いることで、形状の自由度が増し、良好な3次元磁気回路を構成することが可能となる。
【0004】
図11は、特許文献1に開示されているステータコアを示す。
図11に示すように、ステータコア30は、複数(本例では6つ)のピースに分割されたステータティース32を円環状に並べて設置することで構成されている。ステータコア30の中心には、ロータの回転軸が挿通される孔部38が形成されている。1つの分割ステータティース32には、2つのティース部34がロータ側に突設して設けられている。分割ステータティース32は、ハウジングに固定されるが、この固定は、それぞれの分割ステータティース32に形成された貫通孔36を用いて、この貫通孔36にネジなどの固定部材を用いて行われている。
【0005】
アキシャルギャップモータでは、各ティース部34にコイルが巻かれ、ティース部34の表面に磁極が形成され、この磁極とロータに配置された磁石の極性とによりロータが回転可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されたステータコア30では、上記の様に分割ステータティース32はハウジングの蓋部又はステータプレートに、貫通孔36にネジを通すことで固定されている。しかし、ステータコア30に貫通孔36を形成することは、磁気回路への影響を考慮すると好ましくなく、貫通孔36の影響を小さくするためには、ステータコア30のサイズが大きくなったり、複雑になったりする問題がある。
【0008】
また、分割ステータティース32は、上記の様に軟磁性粉末を金型に充填し加圧成形する工程を伴う圧粉コアであることから、分割ステータティース32にネジ止め用の孔部を形成し、ネジ締結することは材料の脆性による分割ステータティースの強度耐久性に課題を有する。更に製造組立工数が増えるという問題も存する。
【0009】
さらに、アキシャルギャップモータにおいては、ステータコアのティ-ス部とロータの磁石との位置関係が重要であることから、ステータコアをステータプレートに正確に位置決めして固定することが重要であるが、ステータコアをネジにより固定する方法では、正確な位置決めが難しい。例えば、ステータプレートに分割ステータティースをネジで固定するためのネジ孔を作成する際に、その位置がずれてしまうと直ちに正確な位置決めは不可能となる。したがって、正確な位置決めができないことから、アキシャルギャップモータの性能が最大現に発揮されないという問題も生じる。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、アキシャルギャップモータ用のステータコアの設置構造において、磁気回路への悪影響を及ぼす様なステータコアへの構成を付加することなく、且つ的確に位置決めしてステータコアを設置することのできるアキシャルギャップモータ用のステータコアの設置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の一実施の形態のアキシャルギャップモータ用のステータコアの設置構造は、
複数のピースに分割されたティース部が中央部に孔部を有する様に円環状に組み合わされた円環状のステータコアと、外周縁と内周縁にそれぞれ外周壁部と内周壁部を有する円環状のステータプレートと、を有し、前記円環状のステータコアが、前記ステータプレートの前記外周壁部と前記内周壁部との間に装填されてなるステータを一対備え、該一対のステータ間にて前記孔部の中心を軸中心として回転するロータが設けられたアキシャルギャップモータ用のステータコアの設置構造において、
前記円環状のステータコアは複数の円弧状の分割ステータティースで構成され、前記各分割ステータティースの外周面と内周面には、それぞれ前記ステータプレートの前記外周壁部と内周壁部との離間間隔が、前記ロータ側に向かって広くなる様にテーパ部が設けられ、
前記各分割ステータティースの前記ステータプレートへの装填は、該ステータプレートに固定された係止部材にて、前記それぞれのテーパ部が係止された状態でなされていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、各分割ステータティースの外周面と内周面にそれぞれテーパ部が設けられたことで、係止部材がこのテーパ部への当接された状態を得ることで、ステータコアの動きが規制される。すなわち、テーパ部は、ステータプレートの外周壁部と内周壁部との離間間隔が、ロータ側に向かって広くなる様に傾斜しており、各分割ステータティースは、ステータプレートに固定された状態の係止部材によってテーパ部にて係止される。この係止は、例えば、係止部材がテーパ部に当接されることなどによって簡単に行うことができ、この当接によって各分割ステータティースのロータ側への動きが規制される。また、この係止部材のテーパ部への係止は、テーパ部が存在する領域であればその係止位置を精密に設定する必要がなく、係止部材によるテーパ部への当接状態の確保作業も容易である。
【0013】
これにより、ステータコアは固定のための貫通孔が設けられることもないので磁気回路の特性が阻害されることがない。また、係止箇所を充分に多く取りステータコアをより堅固に固定することも可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアキシャルギャップモータ用のステータコアの設置構造によれば、ステータコアに機能を阻害する構造を付加することなく、ステータコアの固定と同時にステータコアをステータプレートに正確に位置決めすることが可能である。また、ステータコアに圧粉を用いることによる強度耐久課題を同時に解決することが可能となり、これらにより、アキシャルギャップモータの高性能化が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のアキシャルギャプモータ用のステータコアの設置構造の一実施の形態に係る斜視図である。
【
図5】
図1に示すステータコアの分割ステータティースの斜視図を示す。
【
図6】
図1に示すステータプレートの斜視図を示す。
【
図7】
図6に示すステータプレートのC-C断面図を示す。
【
図8】
図5に示す分割ステータティースのB-B断面図を示す。
【
図9】
図1に示す円弧状の締結金具の斜視図を示す。
【
図10】
図9に示す円弧状の締結金具のD-D断面図を示す。
【
図11】特許文献1のステータコアについての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明のアキシャルギャップモータ用のステータコアの設置構造の一実施の形態について添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は本実施の形態に係るアキシャルギャップモータ用のステータコア10がステータプレート16に装填された状態の斜視図、
図2はその平面図、
図3は
図2の平面図におけるA-A断面図である。
図4は
図3の断面図における一部拡大断面図である。ステータコア10は、後述する6つの分割ステータティース12で円環状に形成されており、同じく円環状に形成されたステータプレート16に後述する締結部材によって取り付けられている。
【0018】
図示の様に、本実施の形態では、6つの分割ステータティース12により、円環状のステータコア10が形成されている。
図5は、この1つのステータティース12が示されており、それぞれ平面形状は円弧状に形成され、上面には、3つのティース部14がそれぞれ設けられている。この分割ステータティース12は、軟磁性粉末を金型に充填し加圧成形することにより形成されており、各ティース部14には、コイルが巻かれ電圧が印加されて磁気回路が形成される。
【0019】
この分割ステータティース12が円環状に組み合わされたステータコア10の中央部には、孔部28が確保され、この孔部28の中心にロータの回転軸が位置するものであり、図示していないロータはこのステータコア10に対向配置される。
【0020】
図6は、ステータプレート16の斜視図、
図7はそのC-C断面図である。ステータコア10は、このステータプレート16上に固定される。図示の様に、ステータプレート16は、円環状に形成されており、アルミニウム等の非磁性材料で構成されている。そして、その外周縁と内周縁には、外周壁部16aと内周壁部16bとがそれぞれ形成されており、これらの壁部間が分割ステータティース12を載置するための凹部16cとなっている。
【0021】
図8は、
図5に示した分割ステータティース12のB-B断面図であり、1つの分割ステータティース12の最外周である外周面12aには、テーパ部13が設けられている。このテーパ部13の傾斜(角度α°)は、対向するステータプレート16の外周壁部16aとの離間間隔が、対向配置されるロータ側に向かって広くなる傾斜(図上、上方に向かって暫時広くなる傾斜)とされている。また、分割ステータティース12の最内周である内周面12bには、テーパ部15が設けられており、このテーパ部15の傾斜(角度β°)も同様に、対向するステータプレート16の内周壁部16bとの離間間隔が、対向配置されるロータ側に向かって広くなる傾斜(図上、上方に向かって暫時広くなる傾斜)とされている。
【0022】
次に、ステータプレート16の凹部16c内への各分割ステータティース12の係止部材を用いた取付けについて説明する。係止部材としては、内周側での係止は、
図1、
図3及び
図4に示した締結ネジ22が用いられる。外周側での係止は、
図1、
図3及び
図4に示した締結金具18、締結ボルト20及び締結ネジ22が用いられる。
【0023】
まず、ステータプレート16の凹部16cに分割ステータティース12が装填され、この装填された分割ステータティース12のテーパ部15に締結ネジ22の先端が当接されることで内周側での係止が行われる。この締結ネジ22は、ステータプレート16の内周壁部16bに形成されている締結ネジ孔16eに螺合され、その先端がテーパ部15に当接される。この締結ネジ22のテーパ部15への当接により、分割ステータティース12は、
図4において図上上方への移動が規制される。
【0024】
すなわち、ステータプレート16の内周壁部16bに締結ネジ22が通される貫通孔16eを形成することだけで、係止構造が構成される。そして、分割ステータティース12のテーパ部13に対向する内周壁部16bの箇所に締結ネジ22を通してその先端をテーパ部15に直接に当接させることで、各分割ステータティース12のロータ側への動きを規制することができ、安定した設置状態が得られる。
【0025】
次に、外周側での係止について説明する。まず、各分割ステータティース12の外周面12aとステータプレート16の外周壁部16aとの隙間に中間部材としての締結金具18が嵌め込まれる。
【0026】
図9は、この締結金具18の構成を示しており、
図10は、
図9に示す円弧状の締結金具のD-D断面図を示す。締結金具18は、アルミニウム等の非磁性材料で構成され、図示の様に、ステータプレート16の外周壁部16aと分割ステータティース12の外周面12aの隙間が平面視で円弧状であることから、この形状に適合するように円弧状に形成されている。そして、重要なことは、締結金具18の内周面18cには、テーパ部19が設けられていることである。このテーパ部19の傾斜は、締結金具18がステータプレート16の外周壁部16aと分割ステータティース12の外周面12aとの隙間に嵌合されたときに、分割ステータティース12の外周面12aのテーパ部13に密着して当接されるように設定されている。すなわち、テーパ部19の傾斜(角度γ°)は、分割ステータティース12の外周面12aのテーパ部15の傾斜(角度α°)とほぼ等しくなるように構成されている。
【0027】
この締結金具18を貫通してネジ部材である締結ボルト20がステータプレート16に螺入されて固定されることで、締結金具18の分割ステータティース12のテーパ部13への当接状態は安定した状態が確保される。したがって、締結ボルト20のステータプレート16への螺入の方向は、締結金具18によるテーパ部への当接方向とは異なる方向で行うことが可能であり、締結ボルト20による係止構造の適用のバリエーションが拡がる。この締結金具18を利用する係止構造によっても、各分割ステータティース12のロータ側への動きは的確に規制される。
【0028】
上記の様に、本実施の形態に係るアキシャルギャップモータ用のステータコア10の設置構造によれば、分割ステータティース12の外周面12aと内周面12bに、それぞれステータプレート16の外周壁部16aと内周壁部16bとの離間間隔が、ロータ側に向かって広くなるテーパ部13、15が設けられている。したがって、分割ステータティース12の外周面12aには、締結ボルト20によりステータプレート16に固定された中間部材としての締結金具18が当接され、、また分割ステータティース12の内周面12bは、同じくステータプレート16に固定された締結ネジ22の先端が当接され、安定した固定状態が得られる。
【0029】
したがって、ステータプレート16には締結部材の取付のための貫通孔や凹部が生じるが、ステータコア10自体には付加構造は生じない。この状態で、締結部材が分割ステータティース12のテーパ部13、15に直接又は間接に当接された状態となることで、各分割ステータティース12は、ロータ側への動きが規制され、磁気回路への悪影響等による機能低下の弊害が回避される。
【0030】
また、ステータコア10に機能を阻害する構造を付加することなく、ステータコア10をステータプレート16に正確に位置決めして固定することが可能である。これにより、アキシャルギャップモータの高性能化も達成される。
【0031】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、分割ステータティース12の数を6個とした例を示したが他の数で構成される場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0032】
10 ステータコア
12 分割ステータティース
12a 外周面
12b 内周面
13、15、19 テーパ部
14 ティース部
16 ステータプレート
16a 外周壁部
16b 内周壁部
16c 凹部
16e 締結ネジ孔
16f 締結ボルト孔
18 円弧状の締結金具
18a ボルト貫通孔
18b 内周面
18c 外周面
20 締結ボルト
22 締結ネジ
28 回転軸孔
30 特許文献1のステータコア
32 分割ステータティース
34 ティース部
36 貫通孔
38 回転軸孔