(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178030
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】システム、機械装置、工作機械、設備、及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
F15B 11/06 20060101AFI20241217BHJP
B23Q 1/72 20060101ALI20241217BHJP
F15B 13/044 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
F15B11/06 C
B23Q1/72 A
F15B13/044 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096518
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中須 祥浩
【テーマコード(参考)】
3C048
3H002
3H089
【Fターム(参考)】
3C048BC03
3C048DD10
3C048DD17
3C048EE06
3H002BA02
3H002BB01
3H002BB03
3H002BC04
3H002BE01
3H002BE02
3H089AA02
3H089BB01
3H089CC01
3H089DA05
3H089DB05
3H089DB43
3H089EE36
3H089FF07
3H089GG03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】消費される気体の流量を低減する。
【解決手段】気体供給源10から供給される圧縮気体を圧力室40に導くシステム100は、前記圧力室の圧力を調整可能な第1圧力調整装置11と、前記圧力室の圧力を調整可能な第2圧力調整装置12と、前記圧力室の圧力を、前記第1圧力調整装置及び前記第2圧力調整装置の少なくともいずれかに調整させる制御装置30と、を備える。前記第2圧力調整装置が前記圧力室の圧力を調整する際に前記気体供給源から供給される気体の流量は、前記第1圧力調整装置が前記圧力室の圧力を調整する際に前記気体供給源から供給される気体の流量よりも小さい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体供給源から供給される圧縮気体を圧力室に導くシステムであって、
前記圧力室の圧力を調整可能な第1圧力調整装置と、
前記圧力室の圧力を調整可能な第2圧力調整装置と、
前記圧力室の圧力を、前記第1圧力調整装置及び前記第2圧力調整装置の少なくともいずれかに調整させる制御装置と、を備え、
前記第2圧力調整装置が前記圧力室の圧力を調整する際に前記気体供給源から供給される気体の流量は、前記第1圧力調整装置が前記圧力室の圧力を調整する際に前記気体供給源から供給される気体の流量よりも小さい、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記第1圧力調整装置は、前記第2圧力調整装置に比べ、前記圧力室の圧力を目標圧力に調整する際の前記目標圧力に対する前記圧力室の圧力のばらつきが小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1圧力調整装置は、前記圧力室の圧力を調整する際に排気を伴う、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第2圧力調整装置は、前記圧力室の圧力を調整する際に排気しない、又は前記第1圧力調整装置よりも前記圧力室の圧力を調整する際の排気量が小さい、
ことを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1圧力調整装置は、空気圧サーボ弁を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記空気圧サーボ弁は、ノズルフラッパ型の空気圧サーボ弁である、
ことを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記第2圧力調整装置は、減圧弁を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1圧力調整装置は、前記気体供給源から前記圧力室までの気体流路に配置された第1弁を含み、
前記第2圧力調整装置は、前記気体流路において前記第1弁と並列に配置された第2弁を含み、
前記制御装置は、前記気体流路において前記第1弁及び前記第2弁の下流に配置され、前記第1弁の気体出力側及び前記第2弁の気体出力側を、前記圧力室に選択的に連通させる切替弁を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1圧力調整装置は、前記気体供給源から前記圧力室までの気体流路に配置された第1弁を含み、
前記第2圧力調整装置は、前記気体流路において前記第1弁の上流に配置された第2弁を含み、
前記制御装置は、前記第1弁及び前記第2弁の下流に配置され、前記第1弁の気体出力側及び前記第2弁の気体出力側を、前記圧力室に選択的に連通させる切替弁を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1圧力調整装置は、前記気体供給源から前記圧力室までの気体流路に配置された第1弁を含み、
前記第2圧力調整装置は、前記気体流路において前記第1弁に直列に配置された第2弁を含み、
前記制御装置は、前記第1弁及び前記第2弁を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1弁は、空気圧サーボ弁である、
ことを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記第2弁は、減圧弁である、
ことを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1弁は、空気圧サーボ弁であり、
前記第2弁は、減圧弁であり、
前記空気圧サーボ弁は、前記減圧弁に接続される供給ポート、前記圧力室に接続される制御ポート、及び排気ポートを含み、
前記制御装置は、前記第2圧力調整装置の前記減圧弁に前記圧力室の圧力を調整させる際に、前記排気ポートを閉じて、前記供給ポートと前記制御ポートとを連通させる、
ことを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記制御装置は、前記圧力室を有する機器が待機状態となるときに、前記圧力室の圧力を前記第2圧力調整装置に調整させる、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
請求項1に記載のシステムと、
前記圧力室を有するバランスシリンダと、を備える、
ことを特徴とする機械装置。
【請求項16】
請求項15に記載の機械装置と、
前記機械装置の前記バランスシリンダに支持されたステージと、を備える、
ことを特徴とする工作機械。
【請求項17】
前記ステージは、鉛直方向に駆動される、
ことを特徴とする請求項16に記載の工作機械。
【請求項18】
前記制御装置は、加工プログラムを含む制御プログラムに従って、前記圧力室の圧力を、前記第1圧力調整装置及び前記第2圧力調整装置の少なくともいずれかに調整させる、
ことを特徴とする請求項16に記載の工作機械。
【請求項19】
前記制御装置は、ユーザの指示に従って、前記圧力室の圧力を、前記第1圧力調整装置及び前記第2圧力調整装置の少なくともいずれかに調整させる、
ことを特徴とする請求項16に記載の工作機械。
【請求項20】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載のシステムと、
前記システムに圧縮気体を供給する気体供給源と、を備える、
ことを特徴とする設備。
【請求項21】
前記気体供給源は、電動のコンプレッサを含む、
ことを特徴とする請求項20に記載の設備。
【請求項22】
請求項16乃至19のいずれか1項に記載の工作機械により物品を製造することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、システム、機械装置、工作機械、設備、及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、工作機械が開示されている。特許文献1に開示された工作機械は、主軸ヘッドと、主軸ヘッドを昇降させる電動式の駆動機構と、主軸ヘッドの重量を補償するバランスシリンダと、を有する。特許文献1には、バランスシリンダの圧力室の圧力制御に空気圧サーボ弁を利用することが開示されている。特許文献1に開示された空気圧サーボ弁は、ノズルフラッパ型の空気圧サーボ弁である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空気圧サーボ弁のような圧力室の圧力を調整する圧力調整装置においては、圧力室の圧力を高精度に調整できる反面、消費される気体の流量が大きい。
【0005】
本開示は、消費される気体の流量を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、気体供給源から供給される圧縮気体を圧力室に導くシステムであって、前記圧力室の圧力を調整可能な第1圧力調整装置と、前記圧力室の圧力を調整可能な第2圧力調整装置と、前記圧力室の圧力を、前記第1圧力調整装置及び前記第2圧力調整装置の少なくともいずれかに調整させる制御装置と、を備え、前記第2圧力調整装置が前記圧力室の圧力を調整する際に前記気体供給源から供給される気体の流量は、前記第1圧力調整装置が前記圧力室の圧力を調整する際に前記気体供給源から供給される気体の流量よりも小さい、ことを特徴とするシステムである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、消費される気体の流量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る設備のブロック図である。
【
図2】第2実施形態に係る設備のブロック図である。
【
図3】(a)は第2実施形態に係る空気圧サーボ弁の断面図である。(b)は第2実施形態に係る空気圧サーボ弁の圧力特性図である。
【
図5】第3実施形態に係る設備のブロック図である。
【
図6】第4実施形態に係る設備のブロック図である。
【
図7】第5実施形態に係る設備のブロック図である。
【
図8】第6実施形態に係る工作機械の概略構成図である。
【
図9】第6実施形態に係る工作機械の概略構成図である。
【
図10】第6実施形態に係るバランスシリンダ及びその近傍の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の実施形態は、本開示の好ましい構成を例示的に示すものであり、例えば細部の構成については本開示の趣旨を逸脱しない範囲において当業者が適宜変更して実施をすることができる。また、以下の実施形態の説明において参照する図面では、特に但し書きがない限り、同一の参照番号を付して示す要素は、同様の機能を有するものとする。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る設備200のブロック図である。設備200は、工場等に設置される。設備200は、システム100と、気体供給源10と、を備える。気体供給源10は、圧縮気体をシステム100に供給する。気体は、例えば窒素ガス、酸素ガス又は空気などである。
【0011】
システム100は、気体供給源10から供給される圧縮気体を圧力室40へ導くシステムである。気体供給源10は、電動のコンプレッサでもよいし、ガスボンベであってもよい。電動のコンプレッサは、消費電力に応じた流量の圧縮気体を発生させる。気体供給源10は、工場において、システム100とは別のシステムにも気体を供給するようにしてもよい。即ち、複数のシステムで気体供給源10が共用されてもよい。
【0012】
システム100は、圧力室40の圧力を調整可能な圧力調整装置11と、圧力室40の圧力を調整可能な圧力調整装置12と、圧力室40の圧力を、少なくとも圧力調整装置11及び圧力調整装置12のいずれかに調整させる制御装置30と、を有する。圧力調整装置11は、第1圧力調整装置の一例であり、圧力調整装置12は、第2圧力調整装置の一例である。圧力調整装置11及び圧力調整装置12には、いずれも気体供給源10から圧縮気体が供給される。
【0013】
圧力調整装置12は、圧力調整装置11に比べ、圧力室40の圧力を調整する際に消費する気体の流量が小さい。より詳しくは、圧力調整装置12は、圧力調整装置11に比べ、圧力室40の圧力を目標圧力(所定圧力)に調整する際に消費する気体の流量が小さい。また、圧力調整装置11は、圧力調整装置12に比べ、圧力室40の圧力を目標圧力(所定圧力)に調整する際の目標圧力に対する圧力室40の圧力のばらつきが小さい。即ち、圧力調整装置11は、圧力調整装置12よりも圧力室40の圧力を高精度に調整することができる。ここで、圧力調整装置11が気体を消費するとは、圧力調整装置11が圧力室40に気体を供給することと、圧力調整装置11が自身から気体を排出することとを含む。また、圧力調整装置12が気体を消費するとは、圧力調整装置12が圧力室40に気体を供給することと、圧力調整装置12が自身から気体を排出することとを含む。つまり、圧力調整装置11が消費する気体の流量は、気体供給源10から圧力調整装置11に供給される気体の流量と同じである。また、圧力調整装置12が消費する気体の流量は、気体供給源10から圧力調整装置12に供給される気体の流量と同じである。
【0014】
このように、圧力調整装置11は、圧力室40の圧力を調整する精度が圧力調整装置12よりも高いものの、圧力調整装置12よりも消費する気体の流量が大きい。一方、圧力調整装置12は、圧力調整装置11よりも消費する気体の流量が小さいものの、圧力調整装置12よりも圧力室40の圧力を調整する精度が低い。
【0015】
圧力調整装置11は、空気圧サーボ弁であることが好ましい。空気圧サーボ弁は、比例制御弁とノズルフラッパ型の空気圧サーボ弁とに分類される。比例制御弁は、入力信号の大きさに応じた流量(圧力)を出力する。圧力調整装置12は、例えば減圧弁である。減圧弁は、空気圧サーボ弁以外の減圧弁である。
【0016】
圧力室40を有する機器が稼働する稼働状態(第1状態)においては、圧力室40の圧力は、目標圧力に高精度に調整されることが好ましい。そのため、制御装置30は、圧力室40を有する機器が稼働状態においては、圧力調整装置11に、圧力室40の圧力を調整させる。
【0017】
一方、圧力室40を有する機器が待機する待機状態(第2状態)においては、圧力室40の圧力は、目標圧力に調整される必要があるが、圧力室40の圧力の精度は、稼働状態ほど高くする必要はない。そのため、制御装置30は、待機状態においては、圧力調整装置11よりも消費する気体の流量が小さい圧力調整装置12に、圧力室40の圧力を調整させる。
【0018】
制御装置30は、圧力室40の圧力を圧力調整装置11で調整するか、圧力室40の圧力を圧力調整装置12で調整するかを切り替え可能な装置である。制御装置30は、例えば、電磁弁又はエアオペレートバルブなどの切替弁を有してもよい。切替弁により、圧力調整装置11から圧力室40に至る経路と、圧力調整装置12から圧力室40に至る経路とを切り替えることができる。なお、圧力室40の圧力調整を切り替えることができれば、制御装置30は、切替弁を有する構成に限定されるものではない。
【0019】
第1実施形態によれば、圧力調整装置11による圧力室40の圧力の調整が必要ではない場合に、消費される気体の流量が圧力調整装置11よりも小さい圧力調整装置12に、圧力室40の圧力調整を切り替えることができる。これにより、常に圧力調整装置11で圧力室40の圧力調整を行う場合と比較して、システム100において消費される気体の流量を低減することができる。なお、システム100において消費される気体の流量は、気体供給源10からシステム100に供給される気体の流量でもある。
【0020】
システム100において消費される気体の流量が低減されるので、気体供給源10がシステム100に供給する気体の流量が低減される。気体供給源10が電動のコンプレッサである場合、気体供給源10の消費電力を低減することができる。消費電力と二酸化炭素の排出量とは比例関係にあることから、消費電力を低減することで、二酸化炭素の排出量、即ち地球の温室効果ガスの排出量を低減することができる。
【0021】
なお、
図1では、制御装置30による切替対象を、2つの圧力調整装置11,12としているが、これに限定されるものではなく、制御装置30による切替対象を、3つ以上の圧力調整装置としてもよい。
【0022】
[第2実施形態]
本開示の第2実施形態について説明する。以下、第1実施形態と共通の参照符号を付した要素は、特に説明しない場合は第1実施形態で説明したものと実質的に同じ構成及び作用を有するものとし、第1実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0023】
図2は、第2実施形態に係る設備200Aのブロック図である。設備200Aは、工場等に設置される。設備200Aは、システム100Aと、気体供給源の一例である空気供給源10Aと、を備える。空気供給源10Aは、圧縮気体の一例として圧縮空気をシステム100Aに供給する。
【0024】
システム100Aは、空気圧システムである。システム100Aは、空気供給源10Aから供給される圧縮空気を圧力室40へ導くシステムである。空気供給源10Aは、例えば電動のコンプレッサである。電動のコンプレッサは、消費電力に応じた流量の圧縮空気を発生させる。空気供給源10Aは、工場において、システム100Aとは別のシステムにも空気を供給するようにしてもよい。即ち、複数のシステムで空気供給源10Aが共用されてもよい。
【0025】
システム100Aは、圧力室40の圧力を調整可能な空気圧サーボ弁11Aと、圧力室40の圧力を調整可能な減圧弁12Aと、圧力室40の圧力を、空気圧サーボ弁11A及び減圧弁12Aのいずれかに調整させる制御装置30Aと、を有する。制御装置30Aは、圧力室40の圧力を、空気圧サーボ弁11A及び減圧弁12Aのいずれかに調整させる。制御装置30Aは、切替弁31Aと、制御モジュール32Aと、を有する。
【0026】
空気圧サーボ弁11Aは、第1圧力調整装置の一例であり、減圧弁12Aは、第2圧力調整装置の一例である。空気圧サーボ弁11A及び減圧弁12Aには、いずれも空気供給源10Aから圧縮空気が供給される。制御モジュール32Aは、例えば制御基板で構成されており、空気圧サーボ弁11A、減圧弁12A及び切替弁31Aを制御する。
【0027】
空気圧サーボ弁11Aは、空気供給源10Aから圧力室40までの気体流路A1に配置された弁である。減圧弁12Aは、気体流路A1において空気圧サーボ弁11Aと並列に配置された弁である。空気圧サーボ弁11Aは第1弁の一例であり、減圧弁12Aは、第2弁の一例である。切替弁31Aは、気体流路A1において空気圧サーボ弁11A及び減圧弁12Aの下流に配置され、空気圧サーボ弁11Aの気体出力側及び減圧弁12Aの気体出力側を、圧力室40に選択的に連通させる切替弁である。
【0028】
減圧弁12Aは、空気圧サーボ弁11Aに比べ、圧力室40の圧力を調整する際に消費する空気の流量が小さい。より詳しくは、減圧弁12Aは、空気圧サーボ弁11Aに比べ、圧力室40の圧力を目標圧力(所定圧力)に調整する際に消費する空気の流量が小さい。また、空気圧サーボ弁11Aは、減圧弁12Aに比べ、圧力室40の圧力を目標圧力(所定圧力)に調整する際の目標圧力に対する圧力室40の圧力のばらつきが小さい。即ち、空気圧サーボ弁11Aは、減圧弁12Aよりも圧力室40の圧力を高精度に調整することができる。ここで、空気圧サーボ弁11Aが空気を消費するとは、空気圧サーボ弁11Aが圧力室40に空気を供給することと、空気圧サーボ弁11Aが自身から空気を排出することとを含む。また、減圧弁12Aが空気を消費するとは、減圧弁12Aが圧力室40に空気を供給することと、減圧弁12Aが自身から空気を排出することとを含む。つまり、空気圧サーボ弁11Aが消費する空気の流量は、空気供給源10Aから空気圧サーボ弁11Aに供給される空気の流量と同じである。また、減圧弁12Aが消費する空気の流量は、空気供給源10Aから減圧弁12Aに供給される空気の流量と同じである。
【0029】
このように、空気圧サーボ弁11Aは、圧力室40の圧力を調整する精度が減圧弁12Aよりも高いものの、減圧弁12Aよりも消費する空気の流量が大きい。一方、減圧弁12Aは、空気圧サーボ弁11Aよりも消費する空気の流量が小さいものの、減圧弁12Aよりも圧力室40の圧力を調整する精度が低い。
【0030】
空気圧サーボ弁11Aは、比例制御弁又はノズルフラッパ型の空気圧サーボ弁である。第2実施形態では、空気圧サーボ弁11Aは、ノズルフラッパ型の空気圧サーボ弁である。ノズルフラッパ型の空気圧サーボ弁は、高精度に空気圧を制御するのに適している。
【0031】
図3(a)は、第2実施形態に係る空気圧サーボ弁11Aの断面図である。空気圧サーボ弁11Aは、3つのポート111,112,113を有するノズルフラッパ型の空気圧サーボ弁である。供給ポート111は、圧縮空気が供給されるポートである。制御ポート112は、圧力が調整された圧縮空気が出力されるポートである。排気ポート113は、空気が外部に排出されるポートである。供給ポート111は、空気供給源10Aに接続され、制御ポート112は、切替弁31Aに接続されている。
【0032】
空気圧サーボ弁11Aは、アーマチュアフラッパ51と、供給ポート111側のノズル52と、排気ポート113側のノズル53と、アーマチュアフラッパ51を駆動するコイル54と、を有する。アーマチュアフラッパ51は、コイル54に指令された電流に応じて傾斜させられ、供給ポート111側のノズル52及び排気ポート113側のノズル53との隙間を調整することにより、2つのノズル52,53の間にある制御ポート112から圧力が調整された圧縮空気が出力される。
【0033】
図3(b)は、第2実施形態に係る空気圧サーボ弁11Aの圧力特性図である。横軸は、コイル54に指令可能な最大電流i_maxに対するコイル54への指令電流iの比率(i/i_max)である。縦軸は、供給ポート111の供給圧力Psに対する制御ポート112の制御圧力Pcの比率(Pc/Ps)である。
【0034】
図3(b)に示すように、指令電流iを変えることにより、制御ポート112の制御圧力Pcを連続的に変えることができる。指令電流iがゼロの場合には、アーマチュアフラッパ51が、供給ポート111側のノズル52をほぼ塞ぐ状態に傾斜し、制御ポート112の制御圧力Pcは、排気ポート113とほぼ同じ圧力、例えば大気圧となる。また、指令電流iが最大電流i_maxの場合、すなわちi/i_max=1の場合、アーマチュアフラッパ51が排気ポート113側のノズル53をほぼ塞ぐ状態に傾斜し、制御ポート112の制御圧力Pcは、供給ポート111の供給圧力Psとほぼ同じ圧力となる。なお、通常の使用状態において、i/i_max=1に制御されることはほとんどない。
【0035】
図4は、第2実施形態に係る減圧弁12Aの断面図である。減圧弁12Aは、入力ポート121、出力ポート122、及びダイアフラム123を有し、圧力室40の圧力を調整する際に排気しない構成となっている。入力ポート121には、圧縮空気が供給される。出力ポート122からは、圧力が調整された圧縮空気が出力される。入力ポート121は空気供給源10Aに接続され、出力ポート122は切替弁31Aに接続されている。なお、減圧弁12Aは、直動式であってもパイロット式であってもよい。
【0036】
空気圧サーボ弁11Aの構造上、供給ポート111から供給された空気の一部は排気ポート113から排出されるため、空気圧サーボ弁11Aにおいて消費される空気の流量は、排気する分、減圧弁12Aよりも大きい。例えば、空気圧サーボ弁11Aを用いて圧力室40を目標圧力(所定圧力)に維持しようとする場合、圧力室40の圧力の精度は高まるが、減圧弁12Aを用いて圧力室40を目標圧力(所定圧力)に維持しようとする場合と比較して、消費される空気の流量が約10倍となる。
【0037】
圧力室40を有する機器が稼働する稼働状態(第1状態)においては、圧力室40の圧力は、目標圧力に高精度に調整されることが好ましい。そのため、切替弁31Aは、圧力室40を有する機器が稼働状態においては、空気圧サーボ弁11Aの制御ポート112が圧力室40に連通されるよう制御モジュール32Aに切り替えられ、その結果、空気圧サーボ弁11Aにより圧力室40の圧力が調整される。
【0038】
一方、圧力室40を有する機器が待機する待機状態(第2状態)においては、圧力室40の圧力は、目標圧力に調整される必要があるが、圧力室40の圧力の精度は、稼働状態ほど高くする必要はない。そのため、切替弁31Aは、待機状態においては、減圧弁12Aの出力ポート122が圧力室40に連通されるよう制御モジュール32Aに切り替えられ、その結果、減圧弁12Aにより圧力室40の圧力が調整される。この際、空気圧サーボ弁11Aにおいては、指令電流iをゼロ、即ち供給ポート111側のノズル52をアーマチュアフラッパ51で塞ぐことが好ましい。これにより、空気圧サーボ弁11Aの排気ポート113が閉じられ、排気ポート113から排気される空気の流量がほぼゼロとなる。
【0039】
切替弁31Aは、例えば、電磁弁又はエアオペレートバルブなどの切替弁であり得る。切替弁31Aにより、空気圧サーボ弁11Aから圧力室40に至る経路と、減圧弁12Aから圧力室40に至る経路とを切り替えることができる。なお、制御装置30Aが切替弁31A及び制御モジュール32Aを有する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。制御装置30Aが、圧力室40の圧力を、少なくとも空気圧サーボ弁11A及び減圧弁12Aのいずれかに調整させることができれば、制御装置30Aはどのような構成であってもよい。
【0040】
第2実施形態によれば、空気圧サーボ弁11Aによる圧力室40の圧力の調整が必要ではない場合に、消費される空気の流量が空気圧サーボ弁11Aよりも小さい減圧弁12Aに、圧力室40の圧力調整を切り替えることができる。これにより、常に空気圧サーボ弁11Aで圧力室40の圧力調整を行う場合と比較して、システム100Aにおいて消費される空気の流量を低減することができる。なお、システム100Aにおいて消費される空気の流量は、空気供給源10Aからシステム100Aに供給される空気の流量でもある。
【0041】
システム100Aにおいて消費される空気の流量が低減されるので、空気供給源10Aがシステム100Aに供給する空気の流量が低減される。空気供給源10Aが電動のコンプレッサである場合、空気供給源10Aの消費電力を低減することができる。消費電力と二酸化炭素の排出量とは比例関係にあることから、消費電力を低減することで、二酸化炭素の排出量、即ち地球の温室効果ガスの排出量を低減することができる。
【0042】
なお、
図2では、切替弁31Aによる切替対象を、空気圧サーボ弁11A及び減圧弁12Aとしているが、これに限定されるものではなく、切替弁31Aによる切替対象を、3つ以上の圧力調整装置としてもよい。
【0043】
また、
図3(a)に空気圧サーボ弁11Aの一例を示したが、空気圧サーボ弁11Aの構成は、これに限定されるものではない。空気圧サーボ弁11Aは、電圧あるいは電流の入力信号に応じて、出力される圧力や流量を連続的に制御できる弁であればよい。
【0044】
また、
図4に減圧弁12Aの一例を示したが、減圧弁12Aの構成は、これに限定されるものではない。減圧弁12Aは、空気圧サーボ弁11Aよりも空気の消費流量が小さければ、
図4に示す構成に限定されるものではない。例えば、減圧弁12Aは、圧力室40の圧力変動に追従しやすいようにリリーフ付きの減圧弁であってもよく、この場合、減圧弁12Aは、空気圧サーボ弁11Aよりも圧力室40の圧力を調整する際の排気量が小さい。
【0045】
[第3実施形態]
本開示の第3実施形態について説明する。以下、第1実施形態又は第2実施形態と共通の参照符号を付した要素は、特に説明しない場合は第1実施形態又は第2実施形態で説明したものと実質的に同じ構成及び作用を有するものとし、第1実施形態又は第2実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0046】
図5は、第3実施形態に係る設備200Bのブロック図である。設備200Bは、工場等に設置される。設備200Bは、システム100Bと、気体供給源の一例である空気供給源10Aと、を備える。空気供給源10Aは、圧縮気体の一例として圧縮空気をシステム100Bに供給する。
【0047】
システム100Bは、空気圧システムである。システム100Bは、空気供給源10Aから供給される圧縮空気を圧力室40へ導くシステムである。システム100Bは、空気圧サーボ弁11Aと、減圧弁12Aと、制御装置30Aと、減圧弁50Bと、を有する。制御装置30Aは、切替弁31A及び制御モジュール32Aを含む。
【0048】
減圧弁50Bは、システム100Bの気体流路B1において、空気圧サーボ弁11A及び減圧弁12Aの上流に配置されている。このような構成により、減圧弁50Bによって空気圧サーボ弁11Aの供給圧力Psが定められる。そして、減圧弁12Aの設定圧力を、空気圧サーボ弁11Aの制御圧力Pcと略等しくすることが可能になる。即ち、減圧弁50Bが気体流路B1に配置されることにより、空気圧サーボ弁11Aと減圧弁12Aとの間で圧力室40に接続するのを切り替えた際に、圧力室40の圧力変動を低減することができる。
【0049】
[第4実施形態]
本開示の第4実施形態について説明する。以下、第1~第3実施形態と共通の参照符号を付した要素は、特に説明しない場合は第1~第3実施形態で説明したものと実質的に同じ構成及び作用を有するものとし、第1~第3実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0050】
図6は、第4実施形態に係る設備200Cのブロック図である。設備200Cは、工場等に設置される。設備200Cは、システム100Cと、気体供給源の一例である空気供給源10Aと、を備える。空気供給源10Aは、圧縮気体の一例として圧縮空気をシステム100Cに供給する。
【0051】
システム100Cは、空気圧システムである。システム100Cは、空気供給源10Aから供給される圧縮空気を圧力室40へ導くシステムである。システム100Cは、空気圧サーボ弁11Aと、減圧弁12Aと、制御装置30Aと、を有する。制御装置30Aは、切替弁31Aと制御モジュール32Aとを含む。減圧弁12Aには、空気供給源10Aから圧縮空気が供給され、空気圧サーボ弁11Aには、減圧弁12Aを介して圧縮空気が供給される。
【0052】
空気圧サーボ弁11Aは、空気供給源10Aから圧力室40までの気体流路C1に配置された弁である。減圧弁12Aは、気体流路C1において空気圧サーボ弁11Aの上流に配置された弁である。空気圧サーボ弁11Aは第1弁の一例であり、減圧弁12Aは第2弁の一例である。切替弁31Aは、空気圧サーボ弁11A及び減圧弁12Aの下流に配置され、空気圧サーボ弁11Aの気体出力側である制御ポート112及び減圧弁12Aの気体出力側である出力ポート122を、圧力室40に選択的に連通させる切替弁である。
【0053】
即ち、空気圧サーボ弁11Aの供給ポート111は、減圧弁12Aの出力ポート122に接続され、空気圧サーボ弁11Aの制御ポート112は、切替弁31Aに接続されている。また、減圧弁12Aの出力ポート122は、切替弁31Aに接続されている。
【0054】
減圧弁12Aは、空気圧サーボ弁11Aの供給ポート111の供給圧力Psを設定することもできる。空気圧サーボ弁11Aによる圧力室40の圧力調整が必要ではない場合、切替弁31Aにおいて圧力室40への接続を、空気圧サーボ弁11Aから減圧弁12Aに切り替えられる。つまり、減圧弁12Aから出力された圧縮空気は、空気圧サーボ弁11Aを経ずに、切替弁31Aを経て圧力室40に至る。
【0055】
この際、空気圧サーボ弁11Aにおいては、指令電流iをゼロ、即ち供給ポート111側のノズル52をアーマチュアフラッパ51で塞ぐことが好ましい。これにより、空気圧サーボ弁11Aの排気ポート113から排出される空気の流量がほぼゼロとなる。これにより、システム100Cにおいて消費される空気の流量を、空気圧サーボ弁11Aで常に圧力室40の圧力を調整する場合に比べて、小さくすることができる。
【0056】
[第5実施形態]
本開示の第5実施形態について説明する。以下、第1~第4実施形態と共通の参照符号を付した要素は、特に説明しない場合は第1~第4実施形態で説明したものと実質的に同じ構成及び作用を有するものとし、第1~第4実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0057】
図7は、第5実施形態に係る設備200Dのブロック図である。設備200Dは、工場等に設置される。設備200Dは、システム100Dと、気体供給源の一例である空気供給源10Aと、を備える。空気供給源10Aは、圧縮気体の一例として圧縮空気をシステム100Dに供給する。
【0058】
システム100Dは、空気圧システムである。システム100Dは、空気供給源10Aから供給される圧縮空気を圧力室40へ導くシステムである。システム100Dは、空気圧サーボ弁11Aと、減圧弁12Aと、制御装置30Dと、を有する。制御装置30Dは、圧力室40の圧力を、空気圧サーボ弁11A及び減圧弁12Aのいずれかに調整させる。制御装置30Dは、制御モジュール32Dを含む。減圧弁12Aには、空気供給源10Aから圧縮空気が供給され、空気圧サーボ弁11Aには、減圧弁12Aを介して圧縮空気が供給される。
【0059】
空気圧サーボ弁11Aは、空気供給源10Aから圧力室40までの気体流路D1に配置された弁である。減圧弁12Aは、気体流路D1において空気圧サーボ弁11Aの上流に配置された弁である。空気圧サーボ弁11Aは第1弁の一例であり、減圧弁12Aは第2弁の一例である。制御モジュール32Dは、例えば制御基板で構成されており、空気圧サーボ弁11A及び減圧弁12Aを制御する。
【0060】
気体流路D1において空気圧サーボ弁11Aと減圧弁12Aとは直列に配置されている。第5実施形態では、空気圧サーボ弁11Aの供給ポート111は、減圧弁12Aの出力ポート122に接続され、空気圧サーボ弁11Aの制御ポート112は、圧力室40に接続されている。
【0061】
空気圧サーボ弁11Aに圧力室40の圧力を調整させるときには、制御モジュール32Dは、指令電流iを、ゼロと最大電流i_maxとの間の電流、例えば、i/i_max=0.5に設定する。減圧弁12Aに圧力室40の圧力を調整させるときには、制御モジュール32Dは、空気圧サーボ弁11Aを全開状態、すなわち指令電流をi/i_max=1とする。このようにすることで、空気圧サーボ弁11Aにおいて、供給ポート111と制御ポート112とが連通され、排気ポート113が閉じられる。
【0062】
このように、空気圧サーボ弁11Aと減圧弁12Aとが直列に接続されても、圧力室40の圧力が、空気圧サーボ弁11A及び減圧弁12Aのいずれかに調整されるので、システム100Dにおいて消費される空気の流量を低減することができる。
【0063】
[第6実施形態]
本開示の第6実施形態について説明する。以下、第1~第5実施形態と共通の参照符号を付した要素は、特に説明しない場合は第1~第5実施形態で説明したものと実質的に同じ構成及び作用を有するものとし、第1~第5実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0064】
図8及び
図9は、第6実施形態に係る工作機械600の概略構成図である。
図8には、工作機械600の斜視図が図示され、
図9には、+Y軸方向に向かって見た工作機械600の正面図が図示されている。
【0065】
工作機械600は、ワーク72に加工を施して物品を製造する製造方法に用いられる。工作機械600は、直動3軸と回転2軸を有する5軸の工作機械である。工作機械600は、ベッド60を備える。工作機械600は、直動3軸として、ベッド60に対して直線方向であるX軸方向に往復移動可能なX軸ステージ61と、ベッド60に対してX軸方向に直交する直線方向であるY軸方向に往復移動可能なY軸ステージ62と、ベッド60に対してX軸方向及びY軸方向に直交する直線方向であるZ軸方向に往復移動可能なZ軸ステージ63と、を備える。X軸方向及びY軸方向は、水平方向と平行である。Z軸方向は、重力方向と平行な鉛直方向(上下方向)である。
【0066】
ベッド60上には一対のZ軸コラム66が配置されており、Z軸コラム連結バー67が一対のZ軸コラム66に接続されている。Z軸ステージ63は、一対のZ軸コラム66及びZ軸コラム連結バー67に対してZ軸方向に駆動される。
【0067】
また、工作機械600は、回転2軸として、Z軸まわりに往復回転可能なC軸ステージ65と、Y軸まわりに高速回転が可能なB軸ステージ64と、を有する。B軸ステージ64は、一方向又は往復方向に回転可能である。X軸ステージ61及びY軸ステージ62により平面ステージが構成されている。Y軸ステージ62にC軸ステージ65が搭載されている。また、Z軸ステージ63にB軸ステージ64が搭載されている。
【0068】
ワーク72がB軸ステージ64に搭載され、工具の一例であるバイト71がC軸ステージ65に搭載される。B軸ステージ64を高速回転させながら、バイト71をX軸ステージ61、Y軸ステージ62及びC軸ステージ65によって、ワーク72に対して相対運動させることにより、ワーク72に旋削加工を施すことができる。
【0069】
なお、工作機械600が直動3軸及び回転2軸の5軸の工作機械としたが、これに限定されるものではない。空気圧システムが適用される工作機械は、重力方向であるZ軸方向に移動可能なZ軸ステージを有していればよく、加工形態も旋削加工に限定されるものではない。
【0070】
図9に示すように、工作機械600は、機械装置300を備える。機械装置300は、工作機械600の位置決め機構に用いることができる。機械装置300は、第3実施形態のシステム100Bと、Z軸ステージ63に配置されたバランスシリンダ400と、を備える。バランスシリンダ400は、圧力室40を有する機器の一例であるエアバランサの一種である。本実施形態におけるバランスシリンダ400は、Z軸ステージ63の重量を補償するためのものである。つまり、バランスシリンダ400は、Z軸ステージ63を支持するためのものである。バランスシリンダ400は、Z軸ステージ63の重量に見合う付勢力を発生させることができ、不図示のZ軸駆動装置が、Z軸方向の重量支持分を負担せずに、Z軸ステージ63を駆動できるようにしている。Z軸駆動装置は、例えばリニアモータ又はボールねじである。
【0071】
図10は、第6実施形態に係るバランスシリンダ400及びその近傍の拡大図である。バランスシリンダ400は、Z軸コラム連結バー67に接続されたバランスシリンダロッド45を有する。バランスシリンダロッド45とZ軸ステージ63との間に、バランスシリンダ400の圧力室40が形成されている。バランスシリンダロッド45を挟んで圧力室40に対向する位置に設けられた空間44は、大気に開放されている。また、バランスシリンダロッド45とZ軸ステージ63とは、2箇所のシール部46によってシールされている。Z軸ステージ63は、圧力室40の圧縮空気を閉じ込めた状態で、Z軸方向に移動することができる。
【0072】
圧力室40には、第3実施形態のシステム100Bが接続されている。例えば、空気圧サーボ弁11A(第1実施形態における圧力調整装置11)及び空気圧サーボ弁11A(第2圧力調整装置12)の、バランスシリンダ400の圧力室40を調整することで、バランスシリンダ400を動作させる。工作機械600が加工を行う稼働状態において、バランスシリンダ400の圧力室40の圧力は、空気圧サーボ弁11Aによって高精度に調整される。これにより、バランスシリンダ400の圧力室40の圧力変動が抑制され、Z軸ステージ63を高精度に位置決めすることが可能である。従って、工作機械600は例えばナノメールオーダの精度でワーク72を加工することができる。
【0073】
空気圧サーボ弁11Aによる圧力室40の圧力調整が必要ではない場合、例えば工作機械600が待機状態である場合、切替弁31Aにより空気圧サーボ弁11Aから減圧弁12Aに切り替えられる。
【0074】
工作機械600が待機状態とは、工作機械600が加工を行わない状態である。工作機械600の加工精度を維持するために、段取時や夜間等において、工作機械600は加工を行わない待機状態となる。このような場合、工作機械600は電源が入れたままとされることが多い。例えば、工作機械600の総立上げ時間に対する待機時間の割合が80%に達することもある。
【0075】
工作機械600が待機状態にある場合、圧力室40の圧力は、ある程度、目標圧力(所定圧力)に達していればよく、目標圧力に対して高精度に調整されなくてもよい。即ち、工作機械600の待機状態では、加工を行う稼働状態ほど、Z軸ステージ63に高い位置決め精度が要求されるものではない。仮に、工作機械600の待機時であってもバランスシリンダ400の圧力室40の圧力調整を空気圧サーボ弁11Aで行うと、システム100Bにおいて多く空気が消費される。
【0076】
一方、第6実施形態によれば、工作機械600の待機時には、空気圧サーボ弁11Aから減圧弁12Aに切り替えられて、減圧弁12Aにてバランスシリンダ400の圧力室40の圧力が調整されるので、消費される空気の流量を大幅に低減することが可能となる。
【0077】
また、圧力室40の圧力を調整する圧力調整装置の切り替えは、工作機械600の加工プログラムを含む制御プログラムに従って行われてもよい。即ち、
図5に示す制御装置30Aは、制御プログラムに従って、圧力室40の圧力を、少なくとも空気圧サーボ弁11A及び減圧弁12Aのいずれかに調整させる。例えば、工作機械600の待機時は、減圧弁12Aによりバランスシリンダ400の圧力室40の圧力が調整され、加工が開始される直前で、減圧弁12Aから空気圧サーボ弁11Aに自動で切り替えられる。加工終了後には、空気圧サーボ弁11Aから減圧弁12Aに自動で切り替えられる。このように切り替えることで、消費される空気の流量を更に効率的に小さくすることができる。
【0078】
また、圧力室40の圧力を調整する圧力調整装置の切り替えは、工作機械の操作パネルから、操作者(ユーザ)が指示してもよい。即ち、
図5に示す制御装置30Aは、操作パネルからのユーザの指示に従って、圧力室40の圧力を、少なくとも空気圧サーボ弁11A及び減圧弁12Aのいずれかに調整させる。また、工作機械に操作指示がない状態から一定時間を経たときには、圧力室40を調整する圧力調整装置が自動で切り替わるようにしてもよい。
【0079】
なお、第6実施形態では、工作機械600に第3実施形態のシステム100Bが適用された場合について説明したが、これに限定されるものではなく、工作機械600に、第1実施形態のシステム100、第2実施形態のシステム100A、第4実施形態のシステム100C、又は第5実施形態のシステム100Dが適用されてもよい。
【0080】
また、工作機械600にバランスシリンダ400を有する機械装置300が適用される場合について説明したが、機械装置300が適用される対象は、工作機械に限定されない。また、システム100~100Dは、空気圧が用いられるプレス装置や空気圧で駆動されるロボット等にも適用可能である。
【0081】
本開示は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、実施形態は、本開示の技術的思想内で多くの変形が可能である。また、本実施形態に記載された効果は、本開示の実施形態から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本開示の実施形態による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されない。
【0082】
さらに、本明細書の開示内容は、本明細書に明示的に記載したことのみならず、本明細書および本明細書に添付した図面から把握可能な全ての事項を含む。また本明細書の開示内容は、本明細書に記載した個別の概念の補集合を含んでいる。すなわち、本明細書に例えば「AはBである」旨の記載があれば、たとえ「AはBでない」旨の記載を省略していたとしても、本明細書は「AはBでない」旨を開示していると云える。なぜなら、「AはBである」旨を記載している場合には、「AはBでない」場合を考慮していることが前提だからである。
【0083】
以上の実施形態の開示は、以下の項を含む。
【0084】
(項1)
気体供給源から供給される圧縮気体を圧力室に導くシステムであって、
前記圧力室の圧力を調整可能な第1圧力調整装置と、
前記圧力室の圧力を調整可能な第2圧力調整装置と、
前記圧力室の圧力を、前記第1圧力調整装置及び前記第2圧力調整装置の少なくともいずれかに調整させる制御装置と、を備え、
前記第2圧力調整装置が前記圧力室の圧力を調整する際に前記気体供給源から供給される気体の流量は、前記第1圧力調整装置が前記圧力室の圧力を調整する際に前記気体供給源から供給される気体の流量よりも小さい、
ことを特徴とするシステム。
【0085】
(項2)
前記第1圧力調整装置は、前記第2圧力調整装置に比べ、前記圧力室の圧力を目標圧力に調整する際の前記目標圧力に対する前記圧力室の圧力のばらつきが小さい、
ことを特徴とする項1に記載のシステム。
【0086】
(項3)
前記第1圧力調整装置は、前記圧力室の圧力を調整する際に排気を伴う、
ことを特徴とする項1又は2に記載のシステム。
【0087】
(項4)
前記第2圧力調整装置は、前記圧力室の圧力を調整する際に排気しない、又は前記第1圧力調整装置よりも前記圧力室の圧力を調整する際の排気量が小さい、
ことを特徴とする項3に記載のシステム。
【0088】
(項5)
前記第1圧力調整装置は、空気圧サーボ弁を含む、
ことを特徴とする項1乃至4のいずれか1項に記載のシステム。
【0089】
(項6)
前記空気圧サーボ弁は、ノズルフラッパ型の空気圧サーボ弁である、
ことを特徴とする項5に記載のシステム。
【0090】
(項7)
前記第2圧力調整装置は、減圧弁を含む、
ことを特徴とする項1乃至6のいずれか1項に記載のシステム。
【0091】
(項8)
前記第1圧力調整装置は、前記気体供給源から前記圧力室までの気体流路に配置された第1弁を含み、
前記第2圧力調整装置は、前記気体流路において前記第1弁と並列に配置された第2弁を含み、
前記制御装置は、前記気体流路において前記第1弁及び前記第2弁の下流に配置され、前記第1弁の気体出力側及び前記第2弁の気体出力側を、前記圧力室に選択的に連通させる切替弁を含む、
ことを特徴とする項1に記載のシステム。
【0092】
(項9)
前記第1圧力調整装置は、前記気体供給源から前記圧力室までの気体流路に配置された第1弁を含み、
前記第2圧力調整装置は、前記気体流路において前記第1弁の上流に配置された第2弁を含み、
前記制御装置は、前記第1弁及び前記第2弁の下流に配置され、前記第1弁の気体出力側及び前記第2弁の気体出力側を、前記圧力室に選択的に連通させる切替弁を含む、
ことを特徴とする項1に記載のシステム。
【0093】
(項10)
前記第1圧力調整装置は、前記気体供給源から前記圧力室までの気体流路に配置された第1弁を含み、
前記第2圧力調整装置は、前記気体流路において前記第1弁に直列に配置された第2弁を含み、
前記制御装置は、前記第1弁及び前記第2弁を制御する、
ことを特徴とする項1に記載のシステム。
【0094】
(項11)
前記第1弁は、空気圧サーボ弁である、
ことを特徴とする項8乃至10のいずれか1項に記載のシステム。
【0095】
(項12)
前記第2弁は、減圧弁である、
ことを特徴とする項8乃至11のいずれか1項に記載のシステム。
【0096】
(項13)
前記第1弁は、空気圧サーボ弁であり、
前記第2弁は、減圧弁であり、
前記空気圧サーボ弁は、前記減圧弁に接続される供給ポート、前記圧力室に接続される制御ポート、及び排気ポートを含み、
前記制御装置は、前記第2圧力調整装置の前記減圧弁に前記圧力室の圧力を調整させる際に、前記排気ポートを閉じて、前記供給ポートと前記制御ポートとを連通させる、
ことを特徴とする項10に記載のシステム。
【0097】
(項14)
前記制御装置は、前記圧力室を有する機器が待機状態となるときに、前記圧力室の圧力を前記第2圧力調整装置に調整させる、
ことを特徴とする項1乃至13のいずれか1項に記載のシステム。
【0098】
(項15)
項1乃至14のいずれか1項に記載のシステムと、
前記圧力室を有するバランスシリンダと、を備える、
ことを特徴とする機械装置。
【0099】
(項16)
項15に記載の機械装置と、
前記機械装置の前記バランスシリンダに支持されたステージと、を備える、
ことを特徴とする工作機械。
【0100】
(項17)
前記ステージは、鉛直方向に駆動される、
ことを特徴とする項16に記載の工作機械。
【0101】
(項18)
前記制御装置は、加工プログラムを含む制御プログラムに従って、前記圧力室の圧力を、前記第1圧力調整装置及び前記第2圧力調整装置の少なくともいずれかに調整させる、
ことを特徴とする項16又は17に記載の工作機械。
【0102】
(項19)
前記制御装置は、ユーザの指示に従って、前記圧力室の圧力を、前記第1圧力調整装置及び前記第2圧力調整装置の少なくともいずれかに調整させる、
ことを特徴とする項16又は17に記載の工作機械。
【0103】
(項20)
項1乃至14のいずれか1項に記載のシステムと、
前記システムに圧縮気体を供給する気体供給源と、を備える、
ことを特徴とする設備。
【0104】
(項21)
前記気体供給源は、電動のコンプレッサを含む、
ことを特徴とする項20に記載の設備。
【0105】
(項22)
項16乃至19のいずれか1項に記載の工作機械により物品を製造することを特徴とする物品の製造方法。
【符号の説明】
【0106】
10…気体供給源、11…圧力調整装置(第1圧力調整装置)、12…圧力調整装置(第2圧力調整装置)、30…制御装置、40…圧力室、100…システム