(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178037
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】光学装置、制御システム、及び移動装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20241217BHJP
【FI】
G02B7/02 B
G02B7/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096527
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】小野 真生
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AA18
2H044AB06
2H044AB17
(57)【要約】
【課題】構造を複雑化することなく、鏡筒がレンズを高精度で保持することが可能な光学装置を提供する。
【解決手段】第1レンズ及び第2レンズと、第1レンズ及び第2レンズを保持する鏡筒と、を有し、鏡筒は、第1レンズを保持する第1保持部と、第2レンズを保持する第2保持部とを備え、第1レンズの第1非有効面と第2レンズの第2非有効面とは互いに当接しており、第2レンズは、第2保持部により保持される第1領域と、第2非有効面を含む第2領域とを備え、第2領域の外径の最大値が、第1領域の外径の最大値よりも大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1レンズ及び第2レンズと、
前記第1レンズ及び前記第2レンズを保持する鏡筒と、を有し、
前記鏡筒は、前記第1レンズを保持する第1保持部と、前記第2レンズを保持する第2保持部とを備え、
前記第1レンズの第1非有効面と前記第2レンズの第2非有効面とは互いに当接しており、
前記第2レンズは、前記第2保持部により保持される第1領域と、前記第2非有効面を含む第2領域とを備え、
前記第2領域の外径の最大値が、前記第1領域の外径の最大値よりも大きいことを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記第1領域は、径方向において前記鏡筒に対して離間していることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記第1レンズは、前記第1保持部により保持され前記第1非有効面を含む第4領域と、外径が前記第4領域の外径よりも小さい第3領域を含むことを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項4】
前記第2レンズの前記第2領域の外径の最大値をAとし、前記第1レンズの前記第4領域の外径の最大値をBとしたとき、
A/B>1.03
とすることを特徴とする請求項3に記載の光学装置。
【請求項5】
前記第1レンズの前記第3領域と前記第4領域の間を保持する保持部材を有することを特徴とする請求項3に記載の光学装置。
【請求項6】
前記保持部材が前記第1レンズを保持する位置は、前記第1レンズの有効領域外であることを特徴とする請求項5に記載の光学装置。
【請求項7】
前記第2レンズの前記第2非有効面の位置における外径は、前記第1レンズの前記第1非有効面の位置における外径よりも小さいことを特徴とする請求項3に記載の光学装置。
【請求項8】
前記第1保持部は、前記第2レンズを保持しないことを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項9】
前記第1レンズは、複数のレンズのうち光軸方向において最も物体側に位置することを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項10】
前記第1レンズは、複数のレンズのうち光軸方向において最も物体側のレンズに隣接するレンズであることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項11】
前記第1レンズは、プラスチックレンズであることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項12】
撮像素子と、
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の光学装置と、を有する、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項13】
光源からの照明光を用いて物体を走査する走査部を備え、
前記走査部により照明された前記物体からの反射光を、レンズを介して受光素子に導くことを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項14】
請求項13に記載の光学装置を備え、
前記受光素子からの信号に基づき前記物体の距離情報を取得する取得部を有することを特徴とする制御システム。
【請求項15】
前記距離情報に基づき、移動装置の移動を制御する制御装置を備えることを特徴とする請求項14に記載の制御システム。
【請求項16】
前記物体の前記距離情報に応じて警告を行う警告装置を備えることを特徴とする請求項14または15に記載の制御システム。
【請求項17】
請求項1に記載の光学装置を備え、該光学装置を保持して移動可能であることを特徴とする移動装置。
【請求項18】
請求項13に記載の光学装置を備え、
前記受光素子からの信号に基づき前記物体の距離情報を取得する取得手段を有することを特徴とする移動装置。
【請求項19】
前記距離情報に基づき、前記移動装置の移動を制御する制御手段を備えることを特徴とする請求項18に記載の移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置、制御システム、及び移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年ドライバーを補助する運転支援システムや、自動運転への応用のため車載用カメラの需要が増えている。車載カメラは気温、日射、昼夜、地域など様々な要因により環境温度が大きく変わるため、デジタルカメラやスマートフォンカメラなどより、広範囲への環境温度対応が求められる。
【0003】
車載カメラの中でもレンズを鏡筒内に収納するレンズユニットの環境温度に対する課題としては、レンズと鏡筒で材質が異なることで、線膨張係数に差が生じ、高低温環境下と組み立て時の状態で鏡筒のレンズ保持の状態が異なるといった課題がある。例えばレンズの材料の線膨張係数が、鏡筒の材料の線膨張係数より小さい場合、組み立て環境より高温になった時、レンズの径方向、スラスト方向ともに隙間が大きくなる。逆に組み立て環境下より低温環境下ではレンズの径方向、スラスト方向ともに隙間が埋まる。鏡筒は光学性能を担保するため、レンズと鏡筒間の隙間は少なくなることが望ましい。しかしながら組み立て環境下でレンズと鏡筒間を隙間なく埋めるように設定してしまうと、温度が変わった場合に、レンズが鏡筒に締め付けられて変形や破損してしまう可能性がある。特に車載カメラの鏡筒には金属や樹脂材料の中でも材料強度の高い材質が用いられることが多く、レンズの破損や変形の可能性が高い。
【0004】
一方で前述のように鏡筒はレンズを高精度で保持することが期待される。1つの手段として複数のレンズ外径を同径にすることで、レンズを保持する鏡筒内壁の同軸加工精度を向上することが考えられる。しかしながら画角などの光学性能の要求から、一部のレンズは同径で保持できない場合がある。このような場合は一部のレンズだけが異径になり他のレンズに対して径方向に突出してしまうことになる。またこの突出部を押え環などで保持する場合、有効光線に干渉しないよう押え環を配置するため、レンズに段形状の保持部材収納部を作ることがある。このような形状を採用した場合、同径で保持していないレンズの押え環で保持されている保持部が特に変形しやすい形状となってしまうことがある。
【0005】
このような課題に対して特許文献1では、押え環とレンズの間に弾性部材を挟んで、応力を吸収させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、弾性部材を挟むことで部品点数の増加や組み立ての複雑化を招くといった課題があり、鏡筒がレンズを高精度で保持することができない場合もある。
【0008】
そこで、本発明では、構造を複雑化することなく、鏡筒がレンズを高精度で保持することが可能な光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての光学装置は、第1レンズ及び第2レンズと、前記第1レンズ及び第2レンズを保持する鏡筒と、を有し、前記鏡筒は、前記第1レンズを保持する第1保持部と、前記第2レンズを保持する第2保持部とを備え、前記第1レンズの第1非有効面と前記第2レンズの第2非有効面とは互いに当接しており、前記第2レンズは、前記第2保持部により保持される第1領域と、前記第2非有効面を含む第2領域とを備え、前記第2領域の外径の最大値が、前記第1領域の外径の最大値よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、構造を複雑化することなく、鏡筒がレンズを高精度で保持することが可能な光学装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1のレンズユニット構成を示す図である。
【
図2】実施例1のレンズユニットにおける保持部材周辺の拡大図である。
【
図4】実施例1の第1レンズの変形抑制効果を示す図である。
【
図5】実施例2のレンズユニット構成を示すである。
【
図6】実施例2の保持部材周辺の構造の拡大図である。
【
図7】従来例のレンズユニット構成を示す図である。
【
図8】従来例の保持部材周辺の構造の拡大図である。
【
図9】実施例3に係る車載システムの構成図である。
【
図10】実施例3に係る車載システムを含む移動装置としての車両の模式図である。
【
図11】実施例3に係る車載システムの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって適宜修正又は変更されるべきものであり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
<実施例1>
図1は、実施例1のレンズユニットの断面図の一例を示す図である。
図1に示すように、実施例1におけるレンズユニット(光学装置)には、光軸101に沿うように複数のレンズ102が鏡筒103に組み込まれる(収納される)。尚、不図示ではあるが、実施例1におけるレンズユニットはカメラユニット(撮像装置)に含まれる。また、カメラユニットは例えば、IRカットフィルタ、撮像素子、基板等を含みうる。
【0014】
IRカットフィルタは、複数のレンズ102を通過する光から可視波長の光を透過し近赤外波長の光を遮断するフィルタ(赤外光除去フィルタ)から構成される。撮像素子は、CCDセンサまたはCMOSセンサなどのイメージセンサからなり、レンズ群によって結像された被写体像等を光電変換してアナログ画像信号として出力する。基板は、例えば、駆動用基板やインターフェース基板等の基盤を含む。駆動用基板は、撮像素子を駆動させるための基板である。インターフェース基板は、電気的に接続されたコネクタを介して外部装置と接続し、各情報の通信が可能な基板である。
【0015】
複数のレンズ102は、鏡筒103もしくはスペーサー104によって保持される。具体的には、第1レンズ102aが保持部材(レンズ保持部材)105によってスラスト方向(光軸101方向)を押える(保持する)ことで鏡筒103に対して各レンズ102が固定される。実施例1における第1レンズ102aは、複数のレンズ102のうち光軸方向において最も物体側に位置するレンズである。
【0016】
図2は、実施例1のレンズユニットにおける保持部材105周辺の構造の拡大図の一例である。以下、
図2を参照して実施例1のレンズユニットにおける保持部材105周辺の構造を説明する。
【0017】
実施例1における第1レンズ102aは、第3領域(第1レンズ102aの第1外径部)109と、当該第3領域109における外径よりも外径が大きい第4領域(第1レンズ102aの第2外径部)108を有するように構成される。具体的には、第1レンズ102aにおける第4領域108の外径の最大値が第3領域109の外径の最大値よりも大きい。このように、第3領域109と第4領域108とでは外径が異なるため、第1レンズ102aは、例えば光軸と直交した方向で見た際に、段違いの構造(2段構造)になっている。
【0018】
また、第1レンズ102aは、結像に寄与する有効光線が通過する領域であり有効面(レンズ面、光学面)と結像に寄与しない領域(有効領域よりも外側の領域)である非有効面(第1非有効面)112aを有するように構成される。
図2等に示すように非有効面112aは第4領域108に含まれる。
【0019】
第1レンズ102aは、鏡筒103の第1の保持部(第1の嵌合部)107によって保持される。具体的には、第1の保持部107は、第1レンズ102aの第4領域108をラジアル方向(径方向、光軸直行方向)に保持する。
【0020】
また、保持部材105は、第1レンズ102aの第3領域109と第4領域108間の部位である平面部113を保持している。平面部113は、径方向で第1レンズ102aの第3領域109と第4領域108を繋いでいる面である。実施例1における平面部113は、第1レンズ102aの有効光線を避けた位置(有効領域外)に構成される。
【0021】
このように、第1レンズ102aを保持するために平面部113をレンズに構成し、保持部材105によって平面部113を保持することで、有効光線を避けて、第1レンズ102aを保持(有効領域外で保持)することが可能となる。これによりレンズユニットを小型化することができる。
【0022】
実施例1における第2レンズ102bは、第1領域(第2レンズ102bの第2外径部)111と、当該第1領域111における外径よりも外径が大きい第2領域(第2レンズ102bの外径部)110を有するように構成される。具体的には、第2レンズ102bにおける第2領域110の外径の最大値が第1領域の外径の最大値よりも大きい。このように、第1領域111と第2領域110とでは外径が異なるため、第2レンズ102bは、例えば光軸と直交した方向で見た際に、段違いの構造(2段構造)になっている。
【0023】
また、第2レンズ102bは、結像に寄与する有効光線が通過する領域であり有効面(レンズ面、光学面)と結像に寄与しない領域(有効領域よりも外側の領域)である非有効面(第2非有効面)112bを有するように構成される。
図2等に示すように非有効面112bは第2領域110に含まれる。
【0024】
第2レンズ102bは、第1レンズ102aと当接する。具体的には、第1レンズ102aの非有効面112aと第2レンズ102bの非有効面112bとが互いに当接する。
【0025】
第2レンズ102bは、鏡筒103の第2の保持部(第2の嵌合部)106によって保持される。具体的には、第2の保持部106によって第2レンズ102bの第1領域111をラジアル方向に保持する。第2の保持部106が第1領域111を保持した際、第2の保持部106は第2領域110とは接触しない。第2の保持部106の内径は、第1の保持部107の内径より小さい。
【0026】
また、第2レンズ102bの非有効面112bの位置における外径は第2の保持部106の内径よりも大きい。このようにすることで、平面部113における保持位置を保持部材105で押える時の荷重や、環境温度の変化、レンズの線膨張差の影響でレンズを変形させる荷重が加わった場合でも、第1レンズ102aの変形を抑え安定して保持することができる。そして、本実施例では、複数のレンズ102やスペーサー104を1つの保持部材105により固定している。このようにすることで、鏡筒103内径に保持するレンズ102及びスペーサー104の光軸方向の長さが長くなり、線膨張係数の差による影響を受けやすくなるため効果的である。
【0027】
図2等に示すように、第2の保持部106が第1領域111を保持した際、第1領域111の少なくとも一部は径方向において鏡筒103と非接触となっている。即ち、第1領域111の少なくとも一部は径方向において鏡筒103と離間している。
【0028】
このように本実施例では、鏡筒103は、第1レンズ102aの第4領域108を保持する部分である第1の保持部107と第2レンズ102bの第1領域111を保持する部分である第2の保持部106を有するように構成される。また、
図2に示すように第1の保持部107と第2の保持部106はそれぞれ鏡筒103の異なる位置に構成される。
【0029】
第2レンズ102bより像側(像面側)のレンズは、
図1に示すように第2の保持部106によって保持される。尚、第2レンズ102bより像側のレンズの外径は第2レンズ102bの外径と同径であることが好ましい。具体的には、第2レンズ102bより像側のレンズの外径は第2レンズ102bが第2の保持部106で保持され位置の径と同径であることが好ましい。これは前述のレンズ102を保持する鏡筒103の内壁の同軸加工精度向上のためである。
【0030】
また、本実施例においては、第1レンズ102aの非有効面112aの位置における外径は、第2レンズ102bの非有効面112bの位置における外径よりも大きい。即ち、第4領域108の外径の方が第2領域における外径より大きい。そのため、第1レンズ102aの非有効面112aと第2レンズ102bの非有効面112bを当接させて、第1の保持部107で第1レンズ102aを保持した際には、第2領域110は径方向において、鏡筒103に対して離間している。即ち、第2領域110は、径方向において鏡筒103の第1の保持部107と非接触となり、径方向で第2領域110の外径から第1の保持部107の内径の間には所定の空間が形成される。このように、第1の保持部107は、第1レンズ102aの第4領域108は保持するが第2レンズ102bの第2領域110を保持しない。
【0031】
実施例1のレンズユニットにおける安定して保持する効果について、以下に従来例と比較して説明する。
図7は、従来例のレンズユニット構成を示す断面図である。
図8は、従来例の保持部材周辺の構造の拡大図を示している。尚、従来例のレンズユニットと本実施例のレンズユニットとで、同様の構成の箇所には同じ符号を付して説明をする。
【0032】
従来例では、
図8に示すように第1レンズ102aの非有効面112aに当接する第2レンズ102bの非有効面112bの接触面積が本実施例における接触面積より少ない。そのため、前述のような押え荷重や環境温度変化で保持部に荷重が加わった際に、保持部材105から第1レンズ102aを折り曲げる力115が働き、第1レンズ102aの外径の隅部116に応力集中が発生しやすい構造となる。特に、第1レンズ102aの第3領域109の外径よりも第2レンズ102bの領域111(実施例1における第1領域111)の外径が小さい場合は、従来例では応力集中がより生じやすくなる。
【0033】
尚、第1レンズ102aはプラスチックレンズを採用するようにしてもよい。第1レンズ102aがプラスチックレンズの場合、保持部材105に発生する荷重により変形し光学性能が低下する恐れがある。そのため、本実施例では第2レンズ102bの第2領域110の外径を第1レンズ102aの第3領域109の外径より大きくしている。
【0034】
図3は、第2レンズ102bの非有効面112bの位置における外径と第1レンズ102aの第3領域109の外径の比と隅部116の応力比の関係を示す図である。
【0035】
図3に示す縦軸の応力比は、第2の保持部106の内径と第2レンズ102bの第2領域110の外径が同等である場合を基準に算出している。これは、第2の保持部106の内径と第2領域110の外径が同等の場合の従来例を想定し、当該従来例の構成と本実施例の構成とを比較するためである。さらに、当該従来例では、
図8に示すように第2レンズ102bにおける領域(実施例1における第1領域111)は1つで構成されるため、第2レンズ102bは2段構成になっていない。即ち、従来例では、実施例1における第2レンズ102bの第2領域110の外径と第2レンズ102bの第1領域111の外径が同等となる。
【0036】
図3に示すように第2レンズ102bの非有効面112bの位置における外径と第1レンズ102aの第3領域109の外径の比が、1の近傍を境に、隅部116への応力集中が大きく変化することがわかる。これは前述のように、第2レンズ102bの第2領域110の非有効面112bの位置における外径>第1レンズ102aの第3領域109の外径、の関係となると、折り曲げる力(荷重)115を抑制する効果が大きくなるためである。
【0037】
第2レンズ102bの非有効面112bの位置における外径が第1レンズ102aの第3領域109の外径より約5%小さい場合を想定する。この場合、製造誤差で第2レンズ102bの非有効面112bの位置における外径>第1レンズ102aの第3領域109の外径の関係が逆転する。そのため、十分応力集中を抑制する効果が得られない可能性がある。さらに、第1レンズ102aの第4領域108の外径に対して、第3領域109の外径が小さくなると、レンズ102の加工コスト増や、不要光がレンズ内に入りやすい等の懸念がある。
【0038】
そのため、第2レンズ102bの非有効面112bの位置における外径が第3領域109の外径より、5%以上大きいと好ましい。即ち、第1レンズ102aの第3領域109の外径と、第2レンズ102bの非有効面112bの位置における外径の比は所定の範囲内であることが望ましい。
【0039】
具体的には、第2レンズ102bの第2領域110の外径の最大値をAとし、第1レンズ102aの第3領域109の外径の最大値をBとしたとき、AとBの比が、A/B>1.05となるよう設定することが好ましい。尚、Aを、第2レンズ102bの非有効面112bの位置における外径としてもよい。ここで、第2レンズ102bの第2領域110の外径の最大値が第3領域109の外径の最大値より3%以上大きいとより好ましい。従って、上記したAとBの比が、A/B>1.03となるよう設定することがより望ましい。
【0040】
また、
図3に示す通り、隅部116の応力は第2レンズ102bの第2領域110の外径の最大値が第3領域109の外径の最大値より3%以上大きいとき、従来に比べ60%程度にすることができ、十分応力集中を抑制する効果が期待できる。より望ましくは応力集中を従来の25%程度とすることができる、第2レンズ102bの第2領域110の外径の最大値が第3領域109の外径の最大値より10%以上とすることである。応力集中を25%程度に低減することができれば、従来例においてはガラスが破損するような場合においても、ガラスの破損なく安定して保持することができる。
【0041】
図4は、第2レンズ102bの第2領域110の非有効面112bの位置における外径と第1レンズ102aの第3領域109の外径比と第1レンズ102aの第1面頂点117の光軸方向の変形比の関係を示した図である。
図4に示す縦軸の変形比は、
図3と同様に第2の保持部106の内径と第2レンズ102bの第2領域110の外径が同等である場合を基準に算出している。
【0042】
図4における傾向は、
図3の隅部116の応力比と同様であるが、第1レンズ102aがプラスチックレンズの場合、前述のレンズ破損よりも変形量が光学性能に影響を及ぼす可能性が高い。プラスチックレンズの変形量は通常ガラスレンズの変形量に対して、数倍~数十倍になるため、第1レンズ102aにプラスチックレンズを採用する場合は、変形量を考慮しガラスレンズより第2レンズ102bの第2領域110の外径を大きくしてもよい。
【0043】
本実施例においては、第1レンズ102aの第3領域109のレンズコバ部から入射した光が撮像素子に入射してフレアなどの不要光となる場合がある。そのため、フレア対策として、第1レンズ102aの第3領域109周辺に黒塗りを施してもよいし、鏡筒103内部で不要光を切るような構成を用いても構わない。
【0044】
また、本実施例においては、第2の保持部106に複数のレンズが保持される例を示した。ここで、第2の保持部106に第2レンズ102bを含む2つ以上のレンズが保持されれば本実施例の効果がある。そのため、第2レンズ102b以降の像面側に配置されたレンズは、第1の保持部107及び第2の保持部106とは異なる第3の保持部(第3の嵌合部)等の鏡筒103における保持部分に保持される構成をとしても構わない。
【0045】
また、本実施例においては、第1レンズ102aは、第3領域109と第4領域108を有するように構成されるため、第1レンズ102aは少なくとも2つの外径を有するように構成される例を示した。ここで、第2レンズ102bが第1領域111と第2領域110の2つの径を有している状態で、第2レンズ102bの第2領域110の外径が所定量以上に大きい状態を想定する。このような場合、第1レンズ102aが上記で説明した2段の構成になっておらず、隅部116を有さない構成であっても、第1レンズ102aのガラス破損や変形を抑制する効果は得られる。また、隅部116は、
図2等では90度の直角としているが、これに限らず隅部116に対してR加工を施すようにしてもよい。
【0046】
以上のように、実施例1のレンズユニットの構成とすることで、レンズユニットの構造を複雑化することなく、鏡筒がレンズを高精度で保持することが可能とすることができる。
【0047】
<実施例2>
実施例2におけるレンズユニットの構成について
図5、
図6を参照して説明する。
図5は、実施例2におけるレンズユニットの構成を示す図である。
図6は、第1レンズ102aと第2レンズ102bと保持部材105周辺の構造を拡大した図である。以下、実施例2において実施例1と同様の構成については説明を省略し、実施例2における特徴的な部分のみ説明を行う。
【0048】
図5に示すように、実施例2における第1レンズ102aは物体側から見て光軸方向で2番目のレンズである。そして、当該第1レンズ102aと当接する第2レンズ102bは、物体側から見て光軸方向で3番目のレンズである。即ち、実施例2における第1レンズ102aは、最も物体側のレンズに隣接するレンズである(光軸方向で最も物体側の次に配置されるレンズ)。画角の広いレンズユニットは、最も物体側のレンズが他のレンズに比べ大きくなることがあり、実施例2に示すように保持部材105単独で保持する場合がある。実施例2における第1レンズ102aは、スラスト方向を固定する保持部材105により保持される。
【0049】
実施例2では、実施例1と同様に第2レンズ102bの非有効面112bは、第1レンズ102aの非有効面112aに当接している。そして、第2レンズ102bより像側のレンズは、鏡筒103の第2の保持部106により保持される。このようなレンズ保持方法を採用した場合、実施例1と同様に第1レンズ102aと第2レンズ102bにおける関係が発生する。そして、このような場合においても実施例1に示した方法と同様に、第2レンズ102bの第2領域110の外径を第2の保持部106の内径より大きくすることにより、第1レンズ102aの変形を抑制することができる。これにより実施例1と同様に、より安定して保持部材105はレンズ102を保持することが可能になる。
【0050】
また、実施例2に示したように第1レンズ102aは必ずしも最も物体側のレンズでなくともよい。実施例1及び実施例2には、第2レンズ102bの第2領域110に対して隣接する物体側のレンズの外径(第1レンズ102aの第4領域108)が大きい場合を示した。しかし、実施例1で示した鏡筒103とレンズ102の関係が成立すればよく、外径が大きいレンズが像側に配置されても、実施例1の第1レンズ102aと第2レンズ102bにおける同様の関係が成立すれば、同様の効果が得られる。
【0051】
以上のように、実施例2のレンズユニットの構成とすることで、実施例1と同様にレンズユニットの構造を複雑化することなく、鏡筒がレンズを高精度で保持することが可能とすることができる。
【0052】
<実施例3>
図9は、上記の各実施例に係る光学装置及びそれを備える車載システム(運転支援装置)1000の構成図である。実施例3における光学装置1は、実施例1及び2における光学装置の構成を有する。
【0053】
車載システム1000は、自動車(車両)等の移動可能な移動体(移動装置)により保持され、光学装置1により取得した車両の周囲の障害物や歩行者などの対象物の距離情報に基づいて、車両500の運転(操縦)を支援するための制御システムである。
図10は、車載システム1000を含む移動装置としての車両500の模式図である。
図10においては、光学装置1の測距範囲(検出範囲)を車両500の前方に設定した場合を示しているが、測距範囲を車両500の後方や側方などに設定してもよい。
【0054】
図9に示すように、車載システム1000は、光学装置1と、車両情報取得装置200と、制御装置(制御部、ECU:エレクトロニックコントロールユニット)300と、警告装置(警告部)400とを備える。車載システム1000において、光学装置1が備える制御部(不図示)は、距離取得部(取得部)及び衝突判定部(判定部)としての機能を有する。ただし、必要に応じて、車載システム1000において制御部とは別体の距離取得部や衝突判定部を設けてもよく、夫々を光学装置1の外部(例えば車両500の内部)に設けてもよい。あるいは、制御装置300を制御部として用いてもよい。また、光学装置1は、光源(不図示)からの照明光を用いて物体を走査する走査部を備えうる。
【0055】
図11は、実施例3に係る車載システム1000の動作例を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに沿って車載システム1000の動作を説明する。
【0056】
まず、ステップS1では、光学装置1の光源からの照明光より車両500の周囲の対象物を照明し、対象物からの反射光を受光する。制御部は、反射光を、レンズを介して受光することで不図示の受光素子(受光部)が出力する信号に基づき、対象物の距離情報を取得する。この時、距離取得部は、受光素子からの信号に基づき物体の距離情報を取得する取得手段として機能する。ここで、距離情報は、移動装置(車両500)から物体までの距離に関する情報であればよく、距離そのものでなくてもよい。また、ステップS2では、車両情報取得装置200により車両500の車速、ヨーレート、舵角などを含む車両情報の取得を行う。そして、ステップS3では、制御部によって、ステップS1で取得された距離情報やステップS2で取得された車両情報を用いて、対象物までの距離が予め設定された設定距離の範囲内に含まれるか否かの判定を行う。
【0057】
これにより、車両500の周囲の設定距離内に対象物が存在するか否かを判定し、車両500と対象物との衝突可能性を判定することができる。尚、ステップS1及びS2は、上記の順番とは逆の順番で行われてもよいし、互いに並列して処理を行われてもよい。制御部は、設定距離内に対象物が存在する場合は「衝突可能性あり」と判定し(ステップS4)、設定距離内に対象物が存在しない場合は「衝突可能性なし」と判定する(ステップS5)。
【0058】
次に、制御部は、「衝突可能性あり」と判定した場合、その判定結果を制御装置300や警告装置400に対して通知(送信)する。このとき、制御装置300は制御部での判定結果に基づいて車両500を制御し(ステップS6)、警告装置400は制御部での判定結果に基づいて車両500のユーザ(運転者、搭乗者)への警告を行う(ステップS7)。この時、警告装置400は、物体の距離情報に応じて警告を行う警告手段として機能する。尚、判定結果の通知は、制御装置300及び警告装置400の少なくとも一方に対して行えばよい。
【0059】
制御装置300は、車両500の駆動部(エンジンやモータなど)に対して制御信号を出力することで、車両500の駆動及び移動を制御することができる制御手段として機能する。制御装置300は、例えば、車両500においてブレーキをかける、アクセルを戻す、ハンドルを切る、各輪に制動力を発生させる制御信号を生成してエンジンやモータの出力を抑制するなどの制御を行う。また、警告装置400は、ユーザに対して、例えば警告音を発する、カーナビゲーションシステムなどの画面に警告情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどの警告を行う。
【0060】
以上、実施例3に係る車載システム1000によれば、上記の処理により対象物の検出及び測距を行うことができ、車両500と対象物との衝突を回避することが可能になる。特に、上記した各実施例に係る光学装置を車載システム1000に適用することで、高い測距精度を実現することができるため、対象物の検出及び衝突判定を高精度に行うことが可能になる。
【0061】
尚、実施例3では、車載システム1000を運転支援(衝突被害軽減)に適用したが、これに限らず、車載システム1000をクルーズコントロール(全車速追従機能付を含む)や自動運転などに適用してもよい。また、車載システム1000は、自動車等の車両に限らず、例えば船舶や航空機、産業用ロボットなどの移動体に適用することができる。また、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)や監視システム等の物体認識を利用する種々の機器に適用することができる。
【0062】
また、車載システム1000や車両500は、万が一、車両500が障害物に衝突した場合に、その旨を車載システムの製造元(メーカ)や移動装置の販売元(ディーラ)などに通知するための通知装置(通知部)を備えていてもよい。例えば、通知装置としては、車両500と障害物との衝突に関する情報(衝突情報)を予め設定された外部の通知先に対して電子メールなどによって送信するもの採用することができる。
【0063】
このように、通知装置によって衝突情報を自動通知する構成を採ることにより、衝突が生じた後に点検や修理などの対応を速やかに行うことができる。尚、衝突情報の通知先は、保険会社、医療機関、警察などや、ユーザが設定した任意のものであってもよい。また、衝突情報に限らず、各部の故障情報や消耗品の消耗情報を通知先に通知するように通知装置を構成してもよい。衝突の有無の検知については、上述した受光素子からの出力に基づいて取得された距離情報を用いて行ってもよいし、他の検知部(センサ)によって行ってもよい。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0065】
本実施形態の開示は、以下の構成、及びシステムを含む。
【0066】
(構成1)
第1レンズ及び第2レンズと、
前記第1レンズ及び前記第2レンズを保持する鏡筒と、を有し、
前記鏡筒は、前記第1レンズを保持する第1保持部と、前記第2レンズを保持する第2保持部とを備え、
前記第1レンズの第1非有効面と前記第2レンズの第2非有効面とは互いに当接しており、
前記第2レンズは、前記第2保持部により保持される第1領域と、前記第2非有効面を含む第2領域とを備え、
前記第2領域の外径の最大値が、前記第1領域の外径の最大値よりも大きいことを特徴とする光学装置。
【0067】
(構成2)
前記第1領域は、径方向において前記鏡筒に対して離間していることを特徴とする構成1に記載の光学装置。
【0068】
(構成3)
前記第1レンズは、前記第1保持部により保持され前記第1非有効面を含む第4領域と、外径が前記第4領域の外径よりも小さい第3領域を含むことを特徴とする構成1または2に記載の光学装置。
【0069】
(構成4)
前記第2レンズの前記第2領域の外径の最大値をAとし、前記第1レンズの前記第4領域の外径の最大値をBとしたとき、
A/B>1.03
とすることを特徴とする構成3に記載の光学装置。
【0070】
(構成5)
前記第1レンズの前記第3領域と前記第4領域の間を保持する保持部材を有することを特徴とする構成3または4に記載の光学装置。
【0071】
(構成6)
前記保持部材が前記第1レンズを保持する位置は、前記第1レンズの有効領域外であることを特徴とする構成5に記載の光学装置。
【0072】
(構成7)
前記第2レンズの前記第2非有効面の位置における外径は、前記第1レンズの前記第1非有効面の位置における外径よりも小さいことを特徴とする構成3乃至6のいずれか1つに記載の光学装置。
【0073】
(構成8)
前記第1保持部は、前記第2レンズを保持しないことを特徴とする構成1乃至7のいずれか1つに記載の光学装置。
【0074】
(構成9)
前記第1レンズは、複数のレンズのうち光軸方向において最も物体側に位置することを特徴とする構成1乃至8のいずれか1つに記載の光学装置。
【0075】
(構成10)
前記第1レンズは、複数のレンズのうち光軸方向において最も物体側のレンズに隣接するレンズであることを特徴とする構成1乃至8のいずれか1つに記載の光学装置。
【0076】
(構成11)
前記第1レンズは、プラスチックレンズであることを特徴とする構成1乃至10のいずれか1つに記載の光学装置。
【0077】
(構成12)
撮像素子と、
構成1乃至11のいずれか1つに記載の光学装置と、を有する、
ことを特徴とする撮像装置。
【0078】
(構成13)
光源からの照明光を用いて物体を走査する走査部を備え、
前記走査部により照明された前記物体からの反射光を、レンズを介して受光素子に導くことを特徴とする構成1乃至11のいずれか1つに記載の光学装置。
【0079】
(構成14)
構成13に記載の光学装置を備え、
前記受光素子からの信号に基づき前記物体の距離情報を取得する取得部を有することを特徴とする制御システム。
【0080】
(構成15)
前記距離情報に基づき、移動装置の移動を制御する制御装置を備えることを特徴とする構成14に記載の制御システム。
【0081】
(構成16)
前記物体の前記距離情報に応じて警告を行う警告装置を備えることを特徴とする構成14または15に記載の制御システム。
【0082】
(構成17)
構成1乃至11のいずれか1つに記載の光学装置を備え、該光学装置を保持して移動可能であることを特徴とする移動装置。
【0083】
(構成18)
構成13に記載の光学装置を備え、
前記受光素子からの信号に基づき前記物体の距離情報を取得する取得手段を有することを特徴とする移動装置。
【0084】
(構成19)
前記距離情報に基づき、前記移動装置の移動を制御する制御手段を備えることを特徴とする構成18に記載の移動装置。
【0085】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。その場合、そのプログラム、該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することとなる。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0086】
101 光軸
102 レンズ
103 鏡筒
104 スペーサー
102a 第1レンズ
102b 第2レンズ
105 保持部材
106 第2の保持部
107 第1の保持部
108 第4領域
109 第3領域
110 第2領域
111 第1領域
112a 第1レンズの非有効面
112b 第2レンズの非有効面
113 平面部