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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178038
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】飛行体の落下補助装置
(51)【国際特許分類】
   B64U 70/83 20230101AFI20241217BHJP
【FI】
B64U70/83
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096528
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】521461546
【氏名又は名称】合同会社アドエア
(72)【発明者】
【氏名】賀家 慎司
(57)【要約】
【課題】
ドローンの緊急落下時等において、パラシュート関連部材の仮固定、パラシュート開傘稼働を安定に実行可能な技術を提供することを目的とする。
【解決手段】
飛行体とパラシュートが接続部材にて連結され、飛行体の一部又は接続部材
の弛み部又はパラシュートの一部に磁石が装着され、接続部材の弛み部又は
パラシュートの一部を仮止めしておき、飛行体の落下時に磁石の仮止めを解
除し、パラシュートを記飛行体から離脱開傘させ、落下中の飛行体を吊り下
げる飛行体の落下補助装置を得る。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体に吊り下げ部材が装着され、前記飛行体と吊り下げ部材が接続部材に
て連結され、前記飛行体の一部又は前記接続部材の一部に、前記接続部材の
弛み部を仮止めする磁石が装着され、前記飛行体の落下時に前記吊り下げ部
材又は前記接続策体に印加される張力にて、前記磁石の仮止めを解除し、前
記吊り下げ部材および前記接続策体を前記飛行体から離脱させ、前記吊り下
げ部材にて落下中の前記飛行体を吊り下げることを特徴とする飛行体の落下
補助装置。
【請求項2】
第1の磁石と第2の磁石が分離して装着され、前記第1の磁石が前記
前記第2の磁石よりも前記吊り下げ部材側に位置するとともに、前記第1
の磁石の磁力を前記第2の磁石の磁力よりも小さくしてなる請求項1記載
の飛行体の落下補助装置。
【請求項3】
吊り下げ部材が飛行体に装着されたパラシュートであり、接続部材が前記
パラシュートのブライダルコードである請求項1記載の飛行体の落下補
助装置。
【請求項4】
飛行体搭載物に吊り下げ部材が装着され、前記飛行体搭載物と吊り下げ部
材が接続部材にて連結され、吊り下げ部材にこの吊り下げ部材の一部
を仮止めする磁石が装着され、前記飛行体搭載物の落下時に前記吊り下げ
部材に印加される張力にて前記磁石の仮止めを解除して前記吊り下げ部
材の一部を展開させ、前記吊り下げ部材と前記接続部材にて、落下中の
前記飛行体搭載物を吊り下げることを特徴とする飛行体の落下補助装置。
【請求項5】
吊り下げ部材が飛行体に装着されたパラシュートであり、前記パラシュート
の一部が磁石にて仮止めされてなる請求項4記載の飛行体の落下補助装置。
【請求項6】
パラシュートの一部が、折り曲げられたキャノピー部である請求項5記載の
飛行体の落下補助装置。
【請求項7】
パラシュートが紙素材よりなる請求項5記載の飛行体の落下補助装置。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドローン等の飛行体が落下・墜落する場合に使用されるパラシュー
ト等の落下補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドローンと呼ばれる複数の回転翼を備えた飛行体は、撮影、配送等の分野での利用が多くなり、今後更なる普及が見込まれている。配送用ドローンには、固定飛行翼を有するタイプも有望視され、ドローンの実用運航における飛行中の予期しない事態発生に基づく緊急落下時の対策が求められる。この対策として、本発明者は、緊急落下時の安全装置としてパラシュートの利用を考慮した技術を開発している。パラシュートシステムは、周知のごとく、本体であるキャノピー、キャノピーに繋がる多数のサスペンションライン、これに繋がるブライダルコード等から構成され、梱包を施して飛行体に装着され、使用時には空気抵抗を利用して開傘される。この開傘動作は支障なくスムーズに行われる必要がある。
【0003】
ドローンが墜落する場合に、その墜落の飛行姿勢及び挙動は不安定であり、予測が困
難で予想範囲外の不具合も想定される。まず、この墜落時におけるパラシュートの開
傘開始時における本発明者の分析に基ずく問題点を述べる。パラシュートシステム
は、ドローンの通常運航時はドローン本体に折り畳み収納された状態が維持され、ド
ローンの緊急墜落時に支障なく稼働させる必要がある。具体的には、多数のサスペン
ションライン、数種類のブライダルコードは、パラシュート開傘時に張力を得て予定
通りに延び、非稼働時においては張力を有さず弛んだ状態でドローン機体本体に固定
させておく必要がある。飛行体の異常発生時の飛行姿勢は予測が付きにくく、固定翼
型飛行体を例にすると機首を下げて尾翼が上方になる姿勢になると、パラシュートを
打ち出す際に必ずしも飛行体の上面側に打ち出すコースを取れるとは限らない。打ち
出されたパラシュートが飛行体の下面側を通過していくと、飛行体の下面側で開傘し
ていくことになるとともに、尾翼等の突起によって、通常飛行体の上面側に配置され
るブライダルコード、ハーネス等に引っ掛かり部分が発生し、パラシュートの正常な
引き出しと開傘が行われず、パラシュートの完全形状な開傘が出来ず、墜落対策に不
残を残す。
【0004】
さらに、ブライダルコード等の弛んだ部分は、パラシュートの開傘を必要とするド
ローンの予想外の体制・挙動の発生時、予想外の方向からの空気抵抗を受けてドロー
ン突起部等に引っ掛かり、最悪の場合駆動力を失っていない状態のプロペラへ引っ掛
かることによって巻き込み、さらに予定通りに延びない状態が発生し、パラシュー
トの正常な開傘状態が得られない事態が生じる。パイロットシュートとメインパラシ
ュートをサスペンションライン、ブライダルコードで繋いでおき、先にパイロットシ
ュートを射出開傘させ、この開傘で生じるサスペンションライン、ブライダルコード
の張力にてメインパラシュートを引き出し開傘させるシステム(2段パラシュートシ
ステム)においても、上記サスペンションライン、ブライダルコードの弛んだ部分の
引っ掛かり等が生じると、パイロットシュート(メインパラシュート引き出し用の小
型パラシュート)の不十分な開傘、メインパラシュートの引き出しが不十分なために
メインパラシュートの不完全な開傘又は開傘しない事態が生じる。すなわち、パイロ
ットシュートの開傘形状が変形してしまうケース、または順次張力が掛かっていく過
程において予期しない方向へ弛んだ部分が振り回されて更なる引っ掛かりが発生する
ケースが生じると、パイロットシュートの完全形状な開傘が出来ない。このため、そ
の後稼働されるメインパラシュート開傘が出来ない不都合が発生し、この事態の発生
は避ける必要がある。また、ドローンにて貨物を配送する場合、紙製のパラシュート
にて貨物を、指定場所に落下させることが検討されているが、この時のパラシュート
装着、展開策が模索されている。
【0005】
本発明者は、上記不測の事態発生を防止すべく、輪ゴムを使用して機体本体ボディに
サスペンションライン、ブライダルコードを仮止める処置を試みたが、この輪ゴム
使用の対策では留める力が強すぎてはパラシュート開傘を必要としたときにスムース
に引き出されない、またはそこだけが強い力で留められて途中からパラシュートが引
き出されない等の不安が残ることが判明した。また逆に前記の不具合を考慮して弱す
ぎる力で留め固定すると、飛行時の風圧を受けるだけで仮固定が解除されてしまう不
都合が生じる不安も残る。更に、輪ゴムは素材の劣化が早くまた飛行体に張り付けや
すい箇所が少ないことも難点と言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-29366号公報
【特許文献2】特許第7001243号公報
【特許文献3】特開2022-54387号公報 本発明者は、上記課題把握に基づき、磁石による仮固定方式の利用を発案し、今回の発明に至った。一般的に、コード類を磁石で固定する技術は特許文献1、2等に開示され、特許文献3の0113~0129、12A~12Dには、人や物を運ぶ飛翔用キャビンの開閉機構のノブ操作用に磁石連結操作機構を使用する例が開示されているが、上記本発明における問題点、その解決策は何ら開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述の分析に基づき、ドローンの緊急落下時(緊急事態で操縦または飛行の継続が困難となった場合)等において、飛行体落下用の吊り下げ部材であるパラシュートの開傘稼働を安定に実行可能な技術、パラシュート又はこの開傘前に張力を持たないサスペンションライン、キャノピー等の接続策体の一部の弛み部分が風を受けて急激に張力を得て不都合な作用を生じない技術を提供することを目的とする。
また、貨物を落下配送する場合のパラシュートの仮止め、展開に適した技術を提供す
る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、飛行体にこの飛行体落下用の吊り下げ部材が装着され、前記飛行
体と吊り下げ部材が接続策体にて連結され、前記飛行体の一部又は前記接続
策体の一部に、前記接続策体の弛み部を仮止めする磁石が装着され、前記飛
行体の落下時に前記吊り下げ部材又は前記接続策体に印加される張力にて、
前記磁石の仮止めを解除し、前記吊り下げ部材および前記接続策体を前記飛
行体から離脱させ、前記吊り下げ部材にて前記飛行体を吊り下げることを特
徴とする飛行体の落下補助装置を提供する。又、この装置において、第1
の磁石と第2の磁石が分離して装着され、前記第1の磁石が前記第2の磁石
よりも前記吊り下げ部材側に位置するとともに、前記第1の磁石の磁力を前
記第2の磁石の磁力よりも小さくしてなる構成、又、吊り下げ部材が飛行体
に装着されたパラシュートであり、接続部材が前記パラシュートのブライダ
ルコードである構成を提供する。そして、本発明は、飛行体搭載物に吊り下
げ部材が装着され、前記飛行体搭載物と吊り下げ部材が接続部材にて連結さ
れ、吊り下げ部材にこの吊り下げ部材の一部を仮止めする磁石が装着され前
記飛行体搭載物の落下時に前記吊り下げ部材に印加される張力にて前記磁
石の仮止めを解除して前記吊り下げ部材の一部を展開させ、前記吊り下げ部
材と前記接続部材にて、落下中の前記飛行体搭載物を吊り下げる飛行体の落
下補助装置提供する。また、この装置において、吊り下げ部材が飛行体に装
着されたパラシュートであり、前記パラシュートの一部が磁石にて仮止めさ
れてなる構成、パラシュートが紙素材よりなる構成、パラシュートの一部が、
折り曲げられたキャノピー部である構成を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パラシュート固定用のハーネス又はコード等の接続策体あるいは飛行体の一部側に接続策体の弛み部を仮止めするマグネット(磁石)を取り付け、磁石の引付けを利用して仮固定することができるため、接続策体の弛み部は、パラシュート開傘前には張力を持たず、マグネットによる磁力の引付けで理想的な位置、形状で仮固定が可能であり、開傘を必要とする場合には磁力を振り切って飛行体から確実に離脱、延伸させ、的確な張力を発生させることが可能となる。したがって、この接続策体の張力による引っ張り作用により、パラシュートの梱包からの引き出し、開傘に至る過程で、接続策体およびパラシュートの一部が干渉せず、異常状態にあるドローン等の飛行体の機体部分に引っ掛かることなく放出されることで、計画通りのスムーズなパラシュート開傘・展開動作が行われ、確実に飛行体の落下補助機能が発揮される。また、本発明では、固定用の留め具となるマグネットは、飛行体の取り付け箇所の制限が少なく、さらに、マグネットは、その長さ、パラシュートの大きさから得る揚力、飛行体の通常飛行速度など諸々の使用条件に鑑みて適正な磁力強さのものを選定又は作成が容易であり、設計通りの仮止め、固定解除が可能となる。また、パラシュートの一部を磁石で仮止めしておくと、半開き状態からの開傘展開動作が開始できるため、開傘の確実性は向上し、開傘に要する時間も短縮できる。さらに、このパラシュート体は、完全に折り畳まれていない半開き状態から展開が開始されるため展開動作時の衝撃が小さく開傘もスムーズである。このような半開き状態の活用により、これまでパラシュート素材として使われなかった紙素材を用いたパラシュートの使用も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るドローン機体本体へのコード仮止め前の状態図。
図2】同コード仮止め状態の例を示す図。
図3】同コード仮止め状態の解除開始状況を示す図。
図4】同コード仮止め状態の更に他の例を示す図。
図5】仮止めに使用するベルトと磁石の構成例の斜視図。
図6】仮止めに使用するベルトと磁石の構成例の展開図。
図7】同コード仮止めに使用する磁石の他の使用例を示す図。
図8】同コード仮止めに使用する磁石の更に他の使用例を示す図。
図9】本発明によるコード仮止め機構を用いたパラシュート開傘・展開状況を示す図。
図10】本発明によるコード仮止め機構を用いたパラシュート開傘・展開状況を示す図。
図11】本発明によるコード仮止め機構を用いたパラシュート開傘・展開状況を示す図。
図12】本発明によるコード仮止め機構を用いたパラシュート開傘・展開状況を示す図。
図13】本発明によるコード仮止め機構を用いたパラシュート開傘・展開状況を示す図。
図14】本発明によるコード仮止め機構を用いたパラシュート開傘・展開状況を示す図。
図15】本発明によるコード仮止め機構を用いたパラシュート開傘・展開状況を示す図。
図16】本発明によるコード仮止め機構を用いたパラシュート開傘・展開状況を示す図。
図17】本発明によるコード仮止め機構を用いたパラシュート開傘・展開状況を示す図。
図18】本発明によるコード仮止め機構を用いたパラシュート開傘・展開状況を示す図。
図19図9図18におけるコード仮止め機構を用いたパラシュート開傘・展開の詳細状況を示す図。
図20図9図18におけるコード仮止め機構を用いたパラシュート開傘・展開の詳細状況を示す図。
図21図9図18におけるコード仮止め機構を用いたパラシュート開傘・展開の詳細状況を示す図。
図22図9図18におけるコード仮止め機構を用いたパラシュート開傘・展開の詳細状況を示す図。
図23】本発明によるパラシュート仮止め機構を用いたパラシュート開傘・展開の他例の状況を示す図。
図24】本発明によるパラシュート仮止め機構を用いたパラシュート開傘・展開の他例の状況を示す図。
図25】本発明によるパラシュート仮止め機構を用いたパラシュート開傘・展開の他例の状況を示す図。
図26】本発明によるパラシュート仮止め機構を用いたパラシュート開傘・展開の他例の状況を示す図。
図27】本発明によるパラシュート仮止め機構を用いたパラシュート開傘・展開の他例の状況を示す図。
図28】本発明によるパラシュート仮止め機構を用いたパラシュート開傘・展開の他例の状況を示す図。
図29】本発明によるパラシュート仮止め機構を用いたパラシュート開傘・展開の他例の状況を示す図。
図30】本発明によるパラシュート仮止め機構を用いたパラシュート開傘・展開の他例の状況を示す図。
図31】本発明によるパラシュート仮止め機構を用いたパラシュート開傘・展開の別の他例の状況を示す図。
図32】本発明によるパラシュート仮止め機構を用いたパラシュート開傘・展開の別の他例の状況を示す図。
図33】本発明によるパラシュート仮止め機構を用いたパラシュート開傘・展開の別の他例の状況を示す図。
図34】本発明によるパラシュート仮止め機構を用いたパラシュート開傘・展開の別の他例の状況を示す図。
図35】本発明によるパラシュート仮止め機構を用いたパラシュート開傘・展開の別の他例の状況を示す図。
図36】本発明によるパラシュート仮止め機構を用いたパラシュート開傘・展開の別の他例の状況を示す図。
図37】紙製パラシューの組み立て状況を示す図。
図38】紙製パラシューの組み立て状況を示す図。
図39】紙製パラシューの組み立て状況を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示すように、ブライダルコード1の弛み部分において縫製部分2に磁石(マグネット)3が埋め込み設置され(図1では4個)、ドローン機体の本体ボディ4側に4個の磁石(マグネット)5がベルト6にて固定された状況を作成する。ベルト6には図5に示すように磁石5が固定され、両端には図6に示すようにベルクロ(登録商標)又はマジックテープ(登録商標)7,8を設けており、これを用いてボデイ4に巻き付け固定される。磁石3はブライダルコード1の留めておきたい位置と方向へ整列させて縫い込んでおき、磁石5もブライダルコード1の留めておきたい位置と方向へ整列させて固定しておく。次に、磁石3と5の引き合う力(N極とS極の引き合う力)を利用してホックさせ、図2に示すように、磁石3と5を仮接着させ、ブライダルコード1をドローン機体の本体ボディ4に仮固定した状態を得る。9はドローン本体ボデイまたはメインパラシュートへ接続する方向を示す。この状態は、ドローンの通常飛行時において維持される。ブライダルコード1に繋がる方向10(パイロットシュートまたはパラシュートに接続される方向)に射出されこの斜め引き出す方向10へ力が発生してブライダルコード1に張力が掛かると、図3に示すように、方向10側の磁石3と5からその仮固定解除が始まる。磁石3と5の磁力の設計・調整しておくことにより、ドローンの通常飛行時におけるブライダルコード1の仮固定維持と、緊急落下開始時に発生する方向10の張力による磁石3と5を順序良く仮固定の解除動作が終了してブライダルコード1が順序良く磁石から外れて引き出すことが可能となる。図3の状態を経て磁石の仮固定が終了し、ブライダルコード1は予め磁石を配列した線状に沿ってスムーズに引き出されていく状態となる。
【0012】
ブライダルコード1の緩んでいる部分が長い場合は、図4に示すように、ブライダルコードを折り畳み、ブライダルコード1の磁石3同志にて二重構造のを仮固定を施し、コードの1の弛みの処理をしておくことも可能である。なお、図5、6に示すベルト6に磁石5を固着した構造以外に、ベルト状磁石を用いて磁石5の機能をベルト自体に持たせることも可能である。また、ブライダルコードにマグネットパーツを埋め込むことが困難な場合は、ブライダルコード1上に磁石3を貼り付けるか、ブライダルコード1上に磁石3を配置し図7に示すように、オーバーコート部材18をコード1の周囲に縫い付け、この部材18で整列配置された4個の磁石3を固定する構造も可能である。更にまた、オーバーコート部材18として熱収縮樹脂を用い、熱を加えて収縮させて4個の磁石3を固定しても良い。また4個の磁石3のそれぞれにこの固定の仕方を用いても良い。また、特に、ドローンボデイ4へ固着する磁石機構とては、ベルトではなく、図8に示すように平板上のマグネットシート38を任意の部分に貼り付けて使用しても良く、磁石取り付け場所の選択範囲を広げることが可能となる。
【0013】
図1~図4図8に示す機構で明らかなように、パラシュート開傘前には、張力が掛からず弛んでいるブライダルコード1の部分を磁石3,5による磁力の引付けで理想的な位置、形状で仮固定可能であり、開傘を必要とする緊急落下開始時、磁力の調整により、パラシュート1の射出・開傘開始で発生する空気抵抗の力、または自然落下による風圧によって仮止めの磁力を振り切って開傘を確実に実現することが可能となる。なお、図1図4図8に示す機構は、サスペンションライン、ハーネス等の折り畳みが必要で弛みを取り除きたい部分、かつ仮固定しておきたい接続用部分に適用可能であり、仮固定の開放順をコーディネートすることで誘導的でスムーズなパラシュート開傘の実現に寄与できる。なお、仮固定用の留め機構となる磁石の磁力は、接続用部分の長さ、パラシュートの大きさから得る揚力、飛行体の通常飛行速度など諸々の使用条件を鑑みて適正な強さのものを設計・選択すれば良い。たとえば、図2において、方向10側に設置された磁石の磁力を方向9側に設置された磁石の磁力よりも小さく設計しておくと、図3の離脱動作がよりスムーズに実行される。また、仮止め機構としては、シート状の磁石または磁力に反応する金属片をブライダルコード、ハーネスに内装または外装しておき、飛行体表面にタブレット型またはゴムシート状の磁石または金属板を飛行体表面に張り付ける等の構成も可能で、容易にブライダルコード、ハーネスの誘導路を設計することが出来る。上記機構により、パラシュートシステムとして要求性能、すなわち、複数のサスペンションラインおよび複数のあるいはまた数種類から組み立てられているブライダルコードが稼働開傘時に張力を得て予定された形状を成し、非稼働時においては張力を有さず、弛んだ状態でドローン機体本体ボディ表面のブライダルコード稼働時に障害物が存在しない部位に沿っての仮固定構造を実現出来る。
【0014】
本発明を用いた固定翼型ドローンでのパラシュート展開事例(2段パラシュートシステム)を図9~22とともに説明する。たとえば、図2で示す機構を用いて磁石3が装着されたブライダルコード1は、図9に示すように磁石3とドローン本体ボデイ4の磁石5の仮固定作用にてボデイ4と尾翼45に仮固定されている。ブライダルコード1はメインパラシュート14が内部に折り畳み収納されたインナーコンテナ17とカプセル内に折り畳み収納されたパイロットシュート12を接続し、一部が尾翼45の下側を配されてマグネットフックによる折り返し点19で上部に折り返し配置されている。このドローンの主翼44の中央部には、内部にメインパラシュート14が折り畳み収納されたインナーコンテナ17を内包梱包したアウターコンテナ16が装着されている。また、たとえば、ハーネス15にも磁石が埋め込まれ、機体表面には、メインパラシュートと機体を接続する4本のブライダルコード(ハーネス)15がたとえば図8の磁石機構にて仮固定されている。図19にこの状態の詳細を示す。固定翼型の飛行機に見られる尾翼を持つ飛行体形状において、たとえばパイロットシュートの射出を尾翼よりも下側から射出する可能性が高い場合、図9図19に示すように、予め尾翼45の下表面側から尾翼45の上表面へブライダルコード1を通して仮固定しておく。
【0015】
パラシュートはブライダルコードによって機体との接続を行うことが必須であるため、適したブライダルコードの長さや本数を予め配線しておく必要があり、これが飛行時に受ける風圧などで弛んだり、外れてしまうとブライダルコード自体が風圧を受けた際に発生する空気抵抗で機体の一部に絡まりパラシュートは正常に機能しなくなってしまう。本発明によれば、ブライダルコード1、ハーネス15と飛行体側にそれぞれ複数の磁石を取り付けることで磁石の引付けを利用してこれらの弛み部分を仮固定することができる。
【0016】
飛行体の機首が下方向に向き緊急落下が始まると、図10図20に示すように、ブライダルコードの離脱方向11に尾翼45の下側にパイロットシュート12を射出させる。これによりコード1の磁石機構の仮止めの解除が開始され、パイロットシュート12は機体から離脱していき、空気抵抗を受けて、図11図21に示すように、コード1を引きながら展開を開始する。ブライダルコード1は仮固定の磁力を振り切って予め磁石を配列した線状に沿って引き出され、尾翼45よりも下側から引き出されて、その後、機体上部側に配した磁石に従って引き出されて行き、パイロットシュート12およびブライダルコード1を尾翼45に巻きつかせることなく正常に引き出す方向への誘導が可能となる。
【0017】
図12に示すように、パイロットシュート12が矢印X方向に上昇・展開・開傘し、パイロットシュート12の引力にて機体に磁石で仮固定されている残りのブライダルコード1部分が離脱し、図13に示すように、メインパラシュートを収納しているインナーコンテナ17の引き出し開始状態となる。落下の風圧にてメインパラシュートがコンテナ17から引き出され、図14に示すように、メインパラシュート14の展開が始まり、続いて図15に示すように、メインパラシュート14が開傘し、コンテナ17内に収納されていたブライダルコード13(両端がメインパラシュート14とハーネス15に接続されている)も引き出される。そして、図16に示すように、ブライダルコード13がハーネス15を引っ張り、機体に弛み部が仮固定されているハーネス15が機体から離脱し、図17に示すメインパラシュート14にて機体を吊り下げた状態となる。この状態を得て、機体は、図18に示すように、ほぼ水平姿勢の安定した落下状態となる。機首を下げた墜落挙動姿勢の飛行体から射出または引き出されたメインパラシュート14またはそのインナーコンテナ17が尾翼への衝突の可能性がある場合に、強い磁力を有する磁石で飛行体前方位置にブライダルコードを折り返した状態で仮止めしておき、パイロットシュートの開傘の引く力で飛行体の機首に近い側を引き上げる効果をもたせることで、パイロットシュート12につながって張力を発揮するブライダルコード1と尾翼45との位置に距離を生み出した状態となって、その後にメインパラシュート14またはそのインナーコンテナ17が引き出される際に尾翼45への衝突を確実に回避出来る。
【0018】
通常、パラシュートのキャノピー及びサスペンションラインは、開傘時の急激な膨張、展開といった圧力の衝撃を緩和させるための柔軟性が求められ、その素材として石油製品系繊維生地・テープ・ベルト(ナイロン・ポリエステル等)が用いられ、使用後も再利用されている。しかしながら、ドローン配送の場合に使用後の回収を行わない低コストのパラシュートを用いることも試みられており、この場合に適した、本発明を使用した落下補助装置を次に説明する。この装置では、本発明者が工夫した独創的な「半開きパラシュート」構造を用いるものである。
【0019】
本発明を用いたドローンでの紙製パラシュートの他の展開・開傘事例を図23~39でともに説明する。この事例で使用する図23の開傘状態を示す紙製のパラシュート60はクロスタイプ・パラシュートに分類されるもので、使い捨て用途等での使用に適しており、展開時、キャノピー部の上部71は平坦で4個のサイドパネル70,両側が開閉部50で囲まれたスリット51を有している。このパラシュートは図30で示すように、ドローン(図示せず)の下部に搭載された移送用の荷物を落下させる時に輸送物収納用ボックスの吊り下げに使用される。
【0020】
このパラシュートの組み立て、稼働展開について、説明する。図24の形状に加工された平板上の紙体を、折曲げ線25,26,43(4方向にそれぞれ存在する)にて折り畳む。詳しくは、図24の状態で、4個の折り曲げ線25と43では下向き、4個の折り曲げ線26では上向きに折り曲げて、スリット開閉部50となる部分にサスペンションライン30を取り付けて、図25の半開き状態を形成する。この紙製パラシュート60は、図26に示すように、キャノピー部分24の一部に複数の磁石27(折り畳み形状固定用)を貼り付けまたは縫製などの手段により固着しておくことで、キャノピー部分24を仮止めしておく。このパラシュート60は、パラシュートの開傘動作に適した半開きの折り畳み状態であり、インナーコンテナを使用することなく装着出来る。キャノピーまたはキャノピーの一部をマグネットキャッチを用いて折り畳んだ場合に完全なパッキングではなく輸送貨物用の収納箱半開き状態での折り畳みと仮固定が可能であり、パラシュートのキャノピー部分の一部に複数のマグネットを貼り付けることまたは縫製などの手段により挿入しておくことでパラシュートの開傘に従った折り畳み方をインナーコンテナを使用することなく可能とした。
【0021】
図25のように折り畳み、更にサスペンションライン30を取り付けた四角形状の半開き状態パラシュート60は、投下用物品を収納している四角形状の輸送物収納用ボックス29上部を包み込むように輸送物収納用ボックス29(吊り下げ用のハーネス31が装着されている)の上に設置された図26に示す状態において、飛行中のドローンから収納用ボックス29の投下が開始されると(図27)、自然落下で発生する風圧を受けてのボックス29の落下と、ライン30の引っ張りにより、キャノピー部分24の磁石27の仮止めが解除される。そして、落下の開始されたボックス29に繋がったサスペンションライン30にてキャノピーの一部は、下方向に引っ張られて境界線52~54に沿って折り曲げられ、図29に示すようにキャノピー部分の上部71から下向きのサイドパネル70が形成され始める。すなわち、図28の落下開始後、半開き状態のパラシュート60は、の展開開始状態図29を経て、図23の開傘状態となり、図30に示すように、開傘されたパラシュート60にボックス29がハーネス31を介して吊り下げられた安定な落下状態が得られる。図25から図28に示す紙製四角形状の半開きパラシュート体は、半開き状態からの開傘で展開動作が開始されるため、開傘の確実性は向上し、開傘に要する時間も短縮できる。
【0022】
さらに、このパラシュート体は、展開動作時の衝撃が、完全に折り畳まれたナイロン製クロスタイプパラシュートに比べ小さいため開傘がスムーズである。このような半開き状態の活用により、これまでパラシュート素材として使われなかった紙素材を用いたパラシュートの使用が可能となった。また、この半開き状態からの開傘は、柔軟性に劣る紙素材で制作してもパラシュートの開傘時の破裂も起こりにくい。また、紙製パラシュートは、ナイロン製素材が持つ静電気による不具合で予想される開傘性の不安も払拭される。そして、紙素材は、低コスト製作、使用後の焼却処分などの手段が手軽であるため、使用後に回収再利用しない物品投下配送用パラシュートとしての使用に好適である。なお、本発明に用いる「半開きパラシュート」としては、紙製以外に薄いビニール素材を用いても良く、前述した紙製パラシュートと同様の加工で制作された薄いビニール製パラシュートでも紙製パラシュートと同等の機能、効果を発揮できる。
【0023】
上述した「半開きパラシュート」のメリットを整理しておくと、
1: 従来のパラシュートのように完全に折り畳んだ状態ではなく開く過程の形状(半開き状態)で嵩張るまたは傘高い形状でもなく、配送用コンテナの上部形状を模して密着した状態を作り出すことが可能である。
2:「半開きパラシュート」は通常のパラシュートのごとく、完全な折り畳み状態からの開傘、展開ではなく、半開き状態から開傘動作開始するため開傘時間が短縮でき、開傘不具合のリスクも解消される。
3:完全に折り畳んだパラシュートでは、落下開始後、自然落下速度状態に達してから開傘が開始され急制動による空気抵抗の衝撃に耐える素材が必要とされるが、「半開きパラシュート」は落下開始直後から、制動機能が発揮され、受ける衝撃が少なく、安価な紙素材、薄いビニール素材等の使用が可能となる。
4:「半開きパラシュート」は、空気抵抗が集中するパラシュートのキャノピー中央部分は畳むことなく収納可能であるため、自然落下速度の初速から空気抵抗が大きく働いており、開傘による速度差が生じない。
5:同パラシュートを用いると、飛行中のドローンからの投下による荷物配送が可能であり、かつ焼却処分にすぐれているため回収の必要がなく処分が可能である。
6:同パラシュートは、製法がシンプルであり、荷物の重量、容積に合わせて要望される任意の開傘後の沈下速度に対してのスペックおよび、形状のアレンジの簡単さに優れている。
【0024】
さらに開傘速度を速めて確実性を高める例を図12で説明する。追加部材として図31に示す格子状紙製部材からなる開傘補助用補強フレーム28を用いる。この場合、図32に示すように、紙製パラシュート60とボックス28間に輸送物を収納したボックス29よりも若干大きめの補強フレーム28を設置介在させる。33はフレーム28の上部に設けた紙製のリボンである。図32の状態でドローンに搭載され、図33~36に示す展開、開傘動作が行われる。この構造を用いると、下方向からの空気80がフレーム28の周辺から流入してパラシュート60の開傘が開始され、より速く、確実に開傘の成形を完了させることができる。このことにより一層スムースで正確な開傘を得ることが可能となる。なお補強フレー28ムとしてはパラシュート内部形状に合わせた形状に切り揃えたスポンジ等も使用可能である。開傘補助用補強フレーム28は、配送用コンテナの上面面積よりも若干広くすることで下面からの空気の流入効率を高めることができ、いち早くパラシュートの完全開傘が可能となる。すなわち、成形したフレーム28をパラシュート中央部分の下面に設置した状態で自然落下をすると、キャノピーの正常な形状での開傘効率をより一層高めることが可能となる。開傘後、補強フレーム28はキャノピー下面と密着せず、下方向からの空気抵抗を受けた自然な膨張形状により中央部の盛り上がりを阻害しない。リボン33は、開傘後、キャノピー部分の上部71が凹状に変形することを防止し、フレーム28とキャノピー7との間に隙間となる空間を作りだすことに寄与する。
【0025】
図37~39に、半開き状態の紙製パラシュートを作成するための折り曲げ・組み立ての仕方の詳細を示す。図24に示す状態の紙部材を4個の山折り線25で矢印39に示すように上向きに折り曲げ(図37)、次に、矢印40で示すように4個の谷折り線26で上向きに折り曲げ(図38)、更に矢印41で示すように山折り線43で下向きにに折り曲げ(図39)、キャノピー部分24が形成され、サスペンションライン30を取り付けて図25示される半開き状態のパラシュート60を形成する。前述したように、このパラシュート体は、図26から図30に示したように展開・開傘する。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、ドローン等の飛行体の落下補助パラシュートの梱包からの引き出し、開傘に至る過程で、接続策体およびパラシュートの一部が干渉せず、ドローン等の飛行体の機体部分に引っ掛かることなく放出されることで、計画通りのスムーズなパラシュート開傘・展開動作が行われ、飛行体の落下補助機能が確実に発揮され、飛行体の安全運航に寄与出来る。また、本発明では、パラシュートの一部を磁石で仮止めしておく機構を有する、半開き状態のパラシュートの活用により、これまでパラシュート素材として使われなかった紙素材を用いたパラシュートの使用にも貢献する。
【符号の説明】
【0027】
1 ブライダルコード
2 縫製部分
3 ブライダルコード用磁石(ブライダルコード縫い込み)
4 ドローン本体ボディ
5 固定側用磁石(ドローンボディ固定用ベルト縫い込み)
12 パイロットシュート
13 ブライダルコード
14 (メイン)パラシュート
16 パイロットシュート梱包状態アウターコンテナ
17 メインパラシューインナーコンテナ
24 パラシュートキャノピー部分
25 43 山折り線
26 谷折り線
27 折り畳み形状固定用磁石
30 サスペンションライン
31 ハーネス
51 スリット
52 53 54 55 境界線
60 パラシュート
70 サイドパネル
71 キャノピー部分の上部
72 キャノピー部分の下部
80 空気の流入方向




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