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特開2024-178039非水電解液二次電池および非水電解液二次電池の製造方法
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  • 特開-非水電解液二次電池および非水電解液二次電池の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178039
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池および非水電解液二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0525 20100101AFI20241217BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20241217BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20241217BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241217BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20241217BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241217BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20241217BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20241217BHJP
【FI】
H01M10/0525
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/36 E
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/36 A
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096530
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】花▲崎▼ 亮
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AJ07
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL18
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029CJ08
5H029CJ13
5H029DJ16
5H029HJ01
5H029HJ02
5H050AA07
5H050AA13
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB29
5H050FA05
5H050FA17
5H050GA10
5H050GA13
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
【課題】負極がSi含有材料を含み、優れた容量維持率を有する非水電解液二次電池を提供すること。
【解決手段】ここで開示される電池100は、正極および負極を有する電極体と、非水電解液と、電池ケース10と、を備える電池100である。正極は、正極活物質としてリチウムおよびマンガンを少なくとも含有するリチウム遷移金属複合酸化物を含み、負極は、負極活物質として黒鉛粒子と、Si含有材料と、を含み、非水電解液は、フルオロエチレンカーボネートと、ジフルオロリン酸塩と、を含む。Si含有材料の質量に対するフルオロエチレンカーボネートの質量の比が0.2以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極を有する電極体と、非水電解液と、電池ケースと、を備える非水電解液二次電池であって、
前記正極は、正極活物質としてリチウムおよびマンガンを少なくとも含有するリチウム遷移金属複合酸化物を含み、
前記負極は、負極活物質として黒鉛粒子と、Si含有材料と、を含み、
前記非水電解液は、フルオロエチレンカーボネートと、ジフルオロリン酸塩と、を含み、
前記Si含有材料の質量に対する前記フルオロエチレンカーボネートの質量の比が0.2以上である、非水電解液二次電池。
【請求項2】
前記負極活物質の質量に対する前記フルオロエチレンカーボネートの質量の比が0.04以下である、請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【請求項3】
前記黒鉛粒子と前記Si含有材料との合計を100質量%としたときに、前記Si含有材料が1質量%以上15質量%以下である、請求項1または2に記載の非水電解液二次電池。
【請求項4】
前記正極活物質の質量に対する前記ジフルオロリン酸塩の質量の比が0.001以上である、請求項1または2に記載の非水電解液二次電池。
【請求項5】
前記正極活物質は、以下の一般式:
Li1+aNiMn (I)
(ただし、0.1≦a≦0.33、0≦x≦0.5、0.5≦y≦0.7、0≦z≦0.2、a+x+y+z=1であり、MはCo、Al、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wのうちの少なくとも1種の元素である。);
で示されるリチウム遷移金属複合酸化物である、請求項1または2に記載の非水電解液二次電池。
【請求項6】
前記正極活物質に含まれるLi以外の金属元素をMeとしたときに、Meの物質量に対するLiの物質量の比(Li/Me)が1.2以上2以下である、請求項5に記載の非水電解液二次電池。
【請求項7】
前記Si含有材料は、ケイ素、酸化ケイ素およびケイ素と炭素の複合体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の非水電解液二次電池。
【請求項8】
前記ジフルオロリン酸塩は、ジフルオロリン酸リチウムを含む、請求項1または2に記載の非水電解液二次電池。
【請求項9】
正極および負極を有する電極体と、非水電解液と、電池ケースとを備える非水電解液二次電池の製造方法であって、
前記電極体を前記電池ケースに収容して組立体を構築する構築工程と、
フルオロエチレンカーボネートと、ジフルオロリン酸塩とを含む非水電解液を調製する調製工程と、
前記非水電解液を前記電池ケースに注液する注液工程と、
を含み、
ここで、前記電極体の前記正極は正極活物質を含み、前記負極は負極活物質として黒鉛粒子とSi含有材料とを含み、
前記調製工程において、前記Si含有材料の質量に対する前記フルオロエチレンカーボネートの質量の比が0.2以上となるように前記非水電解液を調製する、非水電解液二次電池の製造方法。
【請求項10】
前記調製工程において、前記負極活物質の質量に対する前記フルオロエチレンカーボネートの質量の比が0.04以下となるように前記非水電解液を調製する、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記調製工程において、前記正極活物質の質量に対する前記ジフルオロリン酸塩の質量の比が0.001以上である、請求項9または10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記正極活物質は、以下の一般式:
Li1+aNiMn (I)
(ただし、0.1≦a≦0.33、0≦x≦0.5、0.5≦y≦0.7、0≦z≦0.2、a+x+y+z=1であり、MはCo、Al、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wのうちの少なくとも1種の元素である。);
で示されるリチウム遷移金属複合酸化物である、請求項9または10に記載の製造方法。
【請求項13】
前記正極活物質に含まれるLi以外の金属元素をMeとしたときに、Meの物質量に対するLiの物質量の比(Li/Me)が1.2以上2以下である、請求項12に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池および非水電解液二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、正極と負極と非水電解液とを備えた非水電解液二次電池が知られている。このような非水電解液二次電池では、種々の正極活物質、負極活物質、および非水電解液の組み合わせが検討されている。これに関連する先行技術として、引用文献1および2が挙げられる。引用文献1には、所定の一般式で示される正極活物質と、シクロヘキシルベンゼンおよびビフェニルからなる群から選択される添加剤および、ジフルオロリン酸リチウムを含む非水電解液と、を含有する非水電解液二次電池が記載されている。引用文献2には、酸化ケイ素粒子およびケイ素層を含む負極活物質と、フルオロエチレンカーボネートおよびビニレンカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種が含まれている非水電解液と、を含有する非水電解液二次電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-64717号公報
【特許文献2】特開2019-185992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、高容量化等を目的として、負極にSi含有材料を含む非水電解液二次電池が検討されている。フルオロエチレンカーボネートは、負極表面に吸着してSi含有材料の表面を保護し、電解液との副反応を抑制することにより、サイクル後の容量維持率を向上させ得る。また、ジフルオロリン酸リチウムは、正極表面に吸着して正極活物質の表面を保護し、内部抵抗の増加を抑制し得る。しかしながら、本発明者らが検討した結果によれば、負極がSi含有材料を含み、フルオロエチレンカーボネートおよびジフルオロリン酸リチウムのうち、どちらか一方のみを含有した非水電解液を用いた場合、非水電解液二次電池のサイクル特性(例えば、サイクル後の容量維持率)の向上効果が不十分であることを見出した。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、負極がSi含有材料を含み、優れた容量維持率を有する非水電解液二次電池およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、正極と負極とを有する電極体と、非水電解液と、電池ケースと、を備える非水電解液二次電池が提供される。この非水電解液二次電池の上記正極は、正極活物質としてリチウムおよびマンガンを少なくとも含有するリチウム遷移金属複合酸化物を含み、上記負極は、負極活物質として黒鉛粒子と、Si含有材料と、を含み、上記非水電解液は、フルオロエチレンカーボネートと、ジフルオロリン酸塩と、を含む。そして、上記Si含有材料の質量に対する上記フルオロエチレンカーボネートの質量の比が0.2以上である。
【0007】
かかる構成によれば、フルオロエチレンカーボネートによる負極表面(特にSi含有材料の表面)に対する保護効果と、ジフルオロリン酸塩による正極表面(特に正極活物質の表面)に対する保護効果とが好適に発揮される。これにより、充放電に伴うSi含有材料の割れ等が抑制され、優れた容量維持率を有する非水電解液二次電池が実現される。
【0008】
また、他の側面から、正極および負極を有する電極体と、非水電解液と、電池ケースとを備える非水電解液二次電池の製造方法が提供される。この製造方法は、上記電極体を上記電池ケースに収容して組立体を構築する構築工程と、フルオロエチレンカーボネートと、ジフルオロリン酸塩とを含む非水電解液を調製する調製工程と、上記非水電解液を上記電池ケースに注液する注液工程と、を含む。ここで、上記電極体の上記正極は正極活物質を含み、上記負極は負極活物質として黒鉛粒子とSi含有材料とを含み、上記調製工程において、上記Si含有材料の質量に対する上記フルオロエチレンカーボネートの質量の比が0.2以上となるように上記非水電解液を調製する。
かかる構成によれば、優れた容量維持率を有する非水電解液二次電池を好適に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る非水電解液二次電池を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
図3図3は、電極体の構成を示す模式図である。
図4図4は、一実施形態に係る製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術のいくつかの好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない非水電解液二次電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握されうる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0011】
なお、本明細書において「非水電解液二次電池」とは、非水電解液を介して正極と負極の間で電荷担体が移動することによって繰り返し充放電が可能な電池全般をいう。非水電解液二次電池は、リチウムイオン二次電池等のいわゆる蓄電池と、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等のキャパシタと、を包含する概念である。また、本明細書において、範囲を示す「A~B」の表記は、A以上B以下の意と共に、「Aより大きい」および「Bより小さい」の意を包含するものとする。
【0012】
<電池100>
図1は、電池100の斜視図である。図2は、図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表し、図面中の符号X、Y、Zは、電池100の短辺方向、短辺方向と直交する長辺方向、短辺方向および長辺方向と直交する上下方向を、それぞれ表すものとする。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、電池100の設置形態を何ら限定するものではない。
【0013】
図2に示すように、電池100は、電池ケース10と、電極体20と、正極端子30と、負極端子40と、正極集電部50と、負極集電部60と、非水電解液(図示せず)と、を備えている。電池100は、ここではリチウムイオン二次電池である。電池100は、リチウムイオン二次電池であることが好ましい。
【0014】
電池ケース10は、電極体20および非水電解液を収容する筐体である。図1に示すように、電池ケース10は、ここでは扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。電池ケース10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース10は、金属製であることが好ましく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等からなることがより好ましい。ただし、他の実施形態において、電池ケース10は、例えばラミネートフィルム製の袋形状であってもよい。図2に示すように、電池ケース10は、開口12hを有する外装体12と、開口12hを塞ぐ封口板(蓋体)14と、を備えている。封口板14は、外装体12の開口12hを塞ぐように外装体12に取り付けられている。電池ケース10は、外装体12の開口12hの周縁に封口板14が接合(例えば溶接接合)されることによって、一体化されている。電池ケース10は、気密に封止(密閉)されている。
【0015】
封口板14には、図2に示すように、注液孔15と、2つの端子引出孔18、19と、が設けられている。注液孔15は、外装体12に封口板14を組み付けた後に電池ケース10内に非水電解液を注液するためのものである。封口板14には、注液孔15が設けられていることが好ましい。注液孔15は、封止部材16により封止されている。端子引出孔18、19は、封口板14の長辺方向Yの両端部(図2の左端部および右端部)にそれぞれ形成されている。端子引出孔18、19は、封口板14を厚み方向(上下方向Z)に貫通している。
【0016】
正極端子30および負極端子40は、図2に示すように、端子引出孔18、19を挿通して封口板14の内部から外部へと延びている。正極端子30および負極端子40は、ここでは、かしめ加工により、封口板14の端子引出孔18、19を囲む周縁部分に、かしめられている。正極端子30および負極端子40の外装体12の側の端部(図2の下端部)には、かしめ部30c、40cが形成されている。
【0017】
正極端子30は、電池ケース10の内部で正極集電部50を介して電極体20の正極タブ群23と電気的に接続されている。正極端子30は、正極絶縁部材70およびガスケット90によって封口板14と絶縁されている。正極端子30は、金属製であることが好ましく、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなることがより好ましい。負極端子40は、電池ケース10の内部で負極集電部60を介して電極体20の負極タブ群25と電気的に接続されている。負極端子40は、負極絶縁部材80およびガスケット90によって封口板14と絶縁されている。負極端子40は、金属製であることが好ましく、例えば銅または銅合金からなることがより好ましい。
【0018】
上記したとおり、電池ケース10の内部には、電極体20とともに非水電解液が収容される。ここに開示される電池100の非水電解液は、フルオロエチレンカーボネート(以下、「FEC」ともいう。)と、ジフルオロリン酸塩と、を含んでいる。非水電解液は、ここに開示される技術を損なわない範囲において、フルオロエチレンカーボネート以外の非水溶媒、および、ジフルオロリン酸塩以外の塩(支持塩)を含んでいてもよい。
【0019】
上記したFECは、負極24に含まれるSi含有材料の表面に付着し、Si含有材料を保護する効果が特に高い。その一方でFECは、カーボネート骨格を有するため、正極22の表面(詳しくは正極活物質の表面)に吸着しやすい傾向がある。また、ジフルオロリン酸塩は、正極活物質の表面と相互作用しやすく、正極活物質の表面に吸着して該活物質を保護する材料である。本発明者らが検討した結果によれば、FECおよびジフルオロリン酸塩のうちどちらか一方のみを含有する非水電解液を用いた場合には、非水電解液二次電池の容量維持率を向上させる効果が十分に発揮されないことを見出した。これは、FECを含まない場合にはそもそもSi含有材料が保護されず、Si含有材料表面の被膜形成等が生じるためと推測される。また、ジフルオロリン酸塩を含まない場合には、FECが正極表面にも付着し、Si含有材料が十分に保護されず、Si含有材料表面の被膜形成等が生じるためと推測される。そこで、ここに開示される電池100では、FECおよびジフルオロリン酸塩を含有している。ジフルオロリン酸塩が正極22の表面にFECよりも優先的に付着することで、FECによるSi含有材料に対する保護効果が適切に発揮される。これにより、非水電解液二次電池のサイクル特性(例えば、サイクル後の容量維持率)が好適に向上する。
【0020】
フルオロエチレンカーボネート(FEC)は、フッ素化環状カーボネートの一種である。カーボネート類は、構成元素にフッ素(F)を含むか否かで、非フッ素化カーボネートと、フッ素化カーボネートと、に分けられる。また、カーボネート類は、化学構造によって、鎖状カーボネートと、環状カーボネートと、に分けられる。鎖状カーボネートは、カーボネート骨格(O-CO-O)を有する非環式の(鎖状の)カーボネート化合物である。環状カーボネートは、C-C結合で環状に閉じたカーボネート骨格を有するカーボネート化合物である。なお、非水溶媒は、FEC以外のフッ素化カーボネート、例えばフッ素化鎖状カーボネートや、FEC以外のフッ素化環状カーボネートを含んでいてもよい。
【0021】
FEC以外の非水溶媒としては、従来、非水電解液二次電池に使用し得ることが知られているものを、1種または2種以上使用することができる。非水溶媒の一例として、カーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の有機溶剤が挙げられる。非水溶媒は、カーボネート類を含むことが好ましい。具体的に例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等が挙げられる。
【0022】
FECは、非水電解液中の含有量が少なすぎる場合には、上記したSi含有材料の保護効果が適切に発揮され難い。ここで、非水電解液中のFECの含有量は、ここに開示される技術の効果を適切に発揮させる観点から、負極24に含まれるSi含有材料との比率によって規定されることが好ましい。Si含有材料の質量に対するFECの質量の比は、0.2以上であることが好ましく、0.28以上であることがより好ましく、0.45以上であってもよい。これにより、サイクル後の容量維持率が好適に向上する。Si含有材料の質量に対するFECの質量の比の上限は、特に限定されない。非水溶媒中のFECの含有量が多くなると、充放電時におけるガスの発生量が高くなる傾向にある。ガスの発生量を低減させる観点からは、Si含有材料の質量に対するFECの質量の比は、例えば1.6以下であることが好ましく、1.2以下であってもよく、1以下であってもよい。
【0023】
特に限定されないが、負極24に含まれる負極活物質の全量(すなわち、黒鉛粒子、Si含有材料およびその他の負極活物質材料との合計質量)に対するFECの質量の比は、0.04以下であることが好ましい。これにより、サイクル後のガス発生量が好適に低減する。負極活物質の質量に対するFECの質量の比は、0.005以上0.04以下であることが好ましく、0.01以上0.04以下であることがより好ましく、0.01以上0.035以下であってもよい。特に限定されるものではないが、負極活物質の質量に対するFECの質量の比が0.007以上0.048以下であり、かつ、Si含有材料の質量に対するFECの質量の比が0.2以上であるとき、サイクル後の容量維持率の向上とガス発生量の低減とが好適に実現される。
【0024】
特に限定されないが、非水溶媒全体を100体積%としたときに、FECの体積割合は、10体積%以下であることが好ましい。これにより、Si含有材料の保護効果が適切に発揮されつつ、充放電時におけるガスの発生量が好適に抑制され得る。例えば、FECは、非水溶媒全体を100体積%としたときに、0.5体積%~10体積%であることが好ましく、1体積%~10体積%であることがより好ましく、1体積%~7体積%であることがさらに好ましい。
【0025】
ジフルオロリン酸塩は、PO で表されるアニオンと、カチオンとの塩である。カチオンとしては、Li、Na、K等のアルカリ金属イオンや、アンモニウムイオン等が挙げられ、なかでもLiが好ましい。好ましいジフルオロリン酸塩の具体例として、ジフルオロリン酸リチウム(リチウムジフルオロホスフェート(LiDFP)、LiPO)が挙げられる。
【0026】
ジフルオロリン酸塩は、非水電解液中の含有量が少なすぎる場合には、上記したようにFECが正極表面に優先的に付着し得るため、FECによるSi含有材料の保護効果が適切に発揮され難い。ここで、非水電解液中のジフルオロリン酸塩の含有量は、ここに開示される技術の効果を適切に発揮させる観点から、正極22に含まれる正極活物質との比率によって規定されることが好ましい。正極活物質の質量に対するジフルオロリン酸塩の質量の比は、0.0008以上であることが好ましく、0.001以上であることがより好ましく、0.0015以上であることがさらに好ましい。これにより、正極表面および負極表面への保護効果がより適切に発揮され、サイクル後の容量維持率が好適に向上する。正極活物質の質量に対するジフルオロリン酸塩の質量の比の上限は、特に限定されないが、例えば0.01以下であることが好ましく、0.005以下であることがより好ましく、0.0045以下であってもよい。
【0027】
特に限定されないが、ジフルオロリン酸塩は、非水電解液全体に占める割合が、0.1質量%以上2質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上1.2質量%以下であることがより好ましい。
【0028】
ジフルオロリン酸塩以外の塩としては、従来、非水電解液二次電池に使用し得ることが知られているものを、1種または2種以上使用することができる。リチウムイオン二次電池の場合、例えば、LiPF、LiBF等のフッ素含有リチウム塩が挙げられる。
【0029】
非水電解液は、さらに添加的な成分(添加剤)を含んでもよい。添加剤としては、従来、非水電解液に添加しうることが知られているものを、1種または2種以上使用することができる。例えば、ビフェニル(BP)、シクロヘキシルベンゼン(CHB)等のガス発生剤;分散剤;増粘剤等の各種添加剤を含み得る。
【0030】
電極体20は、図2に示すように、電池ケース10の内部(詳しくは、外装体12の内部)に収容されている。1つの電池ケース10の内部に配置される電極体20の数は特に限定されず、1つであってもよく、2つ以上(複数)であってもよい。
【0031】
図3は、電極体20の構成を示す模式図である。図3に示すように、電極体20は、正極22と負極24とセパレータ26とを含んでいる。電極体20は、ここでは扁平形状の捲回電極体である。電極体20は、帯状の正極22と帯状の負極24とが帯状のセパレータ26を介して積層され、捲回軸WLを中心として捲回されて構成されている。ただし、電極体20は、方形状(典型的には矩形状)の正極と方形状(典型的には矩形状)の負極とが絶縁された状態で積み重ねられてなる積層電極体であってもよい。
【0032】
正極22は、正極集電体22cと、正極集電体22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aと、を有する。正極集電体22cは、帯状である。正極集電体22cは、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。正極集電体22cは、ここでは金属箔、具体的にはアルミニウム箔である。正極22は、長辺方向の一方の端部において、正極保護層22pを有していてもよい。正極22が正極保護層22pを有している場合、正極保護層22pは長辺方向Yにおいて正極集電体22cと正極活物質層22aとの間に設けられている。正極保護層22pは、例えば無機フィラー(例えば、アルミナ)を含んでいる。
【0033】
正極集電体22cの長辺方向Yの一方の端部(図3の左端部)には、複数の正極タブ22tが設けられている。正極タブ22tは、ここでは正極集電体22cの一部であり、金属箔(アルミニウム箔)からなっている。複数の正極タブ22tは、長辺方向Yの一方の端部(図3の左端部)で積層されて、図2に示すように、正極タブ群23を構成している。正極タブ群23には、正極集電部50が付設(詳しくは接合)されている。正極タブ群23は、正極集電部50を介して正極端子30と電気的に接続されている。
【0034】
正極活物質層22aは、帯状の正極集電体22cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。正極活物質層22aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質を含んでいる。正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物を含む。正極活物質は、リチウムおよびマンガンを少なくとも含有するリチウム遷移金属複合酸化物であることが好ましい。リチウム遷移金属複合酸化物の結晶構造は特に限定されず、層状構造、スピネル構造、オリビン構造等であってよい。いくつかの態様において、リチウム遷移金属複合酸化物は、高エネルギー密度を実現する観点から、空間群C2/mの層状岩塩型結晶構造(所謂、リチウム過剰型の結晶構造)を有することが好ましい。そのような化合物として、下記式(I)で表されるリチウム過剰遷移金属複合酸化物が挙げられる。このようなリチウム過剰遷移金属複合酸化物の具体例としては、例えば、Li1.1Ni0.35Mn0.55、Li1.14Ni0.29Mn0.57、Li1.17Ni0.25Mn0.58、Li1.2Ni0.2Mn0.6、Li1.33Mn0.67等が挙げられる。
【0035】
Li1+aNiMn 式(I)
式(I)において、a、x、y、zは、0.1≦a≦0.33、0≦x≦0.5、0.5≦y≦0.7、0≦z≦0.2、a+x+y+z=1を満たし、0<zのとき、Mは、Co,Al,Mg,Ca,Ti,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,TaおよびWのうちの1種または2種以上の元素である。
【0036】
特に限定されないが、正極活物質は、Li以外の金属元素(Me)の物質量に対するLiの物質量の比(Li/Me)が1.1以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましく、1.26以上であることがさらに好ましく、1.3以上であることが特に好ましい。Li/Meの値の上限は、2.0以下であり、1.5以下であってもよく、1.4以下であってもよい。正極活物質におけるLi以外の金属元素(Me)の物質量に対するLiの物質量の比(Li/Me)は、例えば1.2以上2以下であることが好ましく、1.2以上1.5以下であることがより好ましく、1.26以上1.45以下であることがさらに好ましい。正極活物質として、Li/Meが上記した数値範囲を満たすような正極活物質を用いることにより、サイクル特性(例えば、サイクル後の容量維持率)が好適に向上する。
【0037】
ここに開示される技術を限定する意図はないが、かかる効果が得られる理由は、以下のように推測される。上記したとおり、非水電解液がFECおよびジフルオロリン酸塩を含むことにより、正極表面および負極表面が好適に保護されてサイクル後の容量維持率が向上する。ここで、上記したようなリチウム過剰系のリチウム遷移金属複合酸化物では、ジフルオロリン酸塩がより付着しやすい傾向にある。特に、Li/Meの値が1.2以上(好ましくは1.26以上、より好ましくは1.3以上)であるLi過剰系の正極活物質では、ジフルオロリン酸塩がさらに吸着しやすく、その結果、FECによる負極表面の保護効果が特に好適に発揮される。これにより、FECの負極24の保護効果、およびジフルオロリン酸塩の正極22の保護効果が適切に発揮され、電池100のサイクル特性(例えば、サイクル後の容量維持率)が向上する。
【0038】
正極活物質層22aにおける正極活物質の含有量は、特に限定されない。正極活物質の含有量は、正極活物質層22a中(すなわち、正極活物質層の全質量に対し)、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上99質量%以下であり、さらに好ましくは85質量%以上98質量%以下である。
【0039】
正極活物質の平均粒子径(D50粒子径)は、特に限定されない。正極活物質の平均粒子径(D50粒子径)は、例えば0.5μm以上25μm以下であり、好ましくは10μm以上25μm以下である。なお、本明細書において、「D50粒子径」とは、レーザー回折・光散乱法に基づく粒度分布測定により測定した体積基準の粒度分布において、微粒子側から累積50%に相当する粒子径のことをいう。
【0040】
正極活物質層22aは、正極活物質以外の任意成分、例えば、バインダ、導電材、各種添加成分等を含んでいてもよい。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を好適に使用しうる。正極活物質層22a中のバインダの含有量は、特に限定されないが、例えば0.5質量%以上15質量%以下であり、好ましくは1質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以上8質量%以下である。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等のカーボンブラックやそのほか(例えば、グラファイト等)の炭素材料を好適に使用し得る。正極活物質層22a中の導電材の含有量は、特に限定されないが、例えば0.1質量%以上20質量%以下であり、好ましくは1質量%以上15質量%以下であり、より好ましくは2質量%以上10質量%以下である。
【0041】
負極24は、負極集電体24cと、負極集電体24cの少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aと、を有する。負極集電体24cは、帯状である。負極集電体24cは、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。負極集電体24cは、ここでは金属箔、具体的には銅箔である。
【0042】
負極集電体24cの長辺方向Yの一方の端部(図3の右端部)には、複数の負極タブ24tが設けられている。負極タブ24tは、ここでは負極集電体24cの一部であり、金属箔(銅箔)からなっている。複数の負極タブ24tは、長辺方向Yの一方の端部(図3の右端部)で積層されて、図2に示すように、負極タブ群25を構成している。負極タブ群25には、負極集電部60が付設(詳しくは接合)されている。負極タブ群25は、負極集電部60を介して負極端子40と電気的に接続されている。
【0043】
負極活物質層24aは、帯状の負極集電体24cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。負極活物質層24aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質を含んでいる。負極活物質は、少なくとも黒鉛粒子およびSi含有材料を含んでいる。ここに開示される電池100では、上記した非水電解液によるSi含有材料への保護効果が適切に発揮されため、Si含有材料の割れ等が抑制される。これにより、サイクル特性(特にはサイクル後の容量維持率)が向上する。また、正極活物質として、上記したリチウム過剰系のリチウム遷移金属複合酸化物を用いることにより、さらにSi含有材料の割れ等が抑制される。ここに開示される技術を限定する意図はないが、かかる効果が得られる理由は、以下のように推測される。非水電解液がFECおよびジフルオロリン酸塩を含むことにより、Si含有材料表面が保護され、電解液の分解を抑制し被膜形成が抑制される。これにより、サイクル特性(特にはサイクル後の容量維持率)が向上する。さらに、リチウム過剰系のリチウム遷移金属複合酸化物は、従来のリチウム遷移金属複合酸化物(例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3等のリチウム過剰系ではないリチウム遷移金属複合酸化物)と比較して、作動電位の範囲がやや狭い傾向にある。このため、充放電時におけるSi含有材料の使用範囲も比較的狭くすることができる。これにより、Si含有材料の充放電時における体積変化が抑制され、Si含有材料の割れが好適に抑制される。Si含有材料の割れが抑制されることで、割れにより生じる新生面も少なくなり、新生面をFECがさらに保護するという必要性も下がる傾向にある。これらによって、FECの保護効果が十分に発揮される。これにより、電池100のサイクル後の容量維持率が好適に向上する。
【0044】
Si含有材料は、炭素材料よりも比容量が大きいことから、電池100の高容量化等を目的として好適に用いられる。Si含有材料は、Siを含む限り、Si以外の成分を含んでいてもよい。Si含有材料の一好適例として、Si(ケイ素)、SiO(酸化ケイ素)、ケイ素と炭素との複合体(炭化ケイ素、シリコン粒子の内部に炭素が分散されているSiC複合体を含む。)、SiN含有材料(窒化ケイ素)、多孔質粒子内にナノSi粒子が分散されたもの、等が挙げられる。Si含有材料は、上記した材料を1種または2種以上使用することができる。なかでも、Si含有材料としては、ケイ素、酸化ケイ素、およびケイ素と炭素との複合体を好ましく用いることができる。特に限定されるものではないが、Si含有粒子のD50粒子径は、例えば1μm以上15μm以下であることが好ましく、2μm以上10μm以下であることがより好ましい。
【0045】
負極活物質中のSi含有材料の質量割合は、特に限定されない。例えば、電池100の高容量化とサイクル特性の向上との両立の観点から、負極活物質の全量を100質量%としたときに、Si含有材料の含有割合は、1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
【0046】
黒鉛粒子としては、例えば人造黒鉛、天然黒鉛等が好適に用いられる。黒鉛粒子は、その表面に非晶質炭素の被覆層を有していてもよい。特に限定されないが、黒鉛粒子は略球形状であるとよい。なお、本明細書において、「略球形状」とは、球状、ラグビーボール状等を包含する用語であり、例えば、平均アスペクト比(粒子の外接する最小の長方形において、短軸方向の長さに対する超軸方向の長さの比。)が、例えば1~2(好ましくは、1~1.5)であるものをいう。黒鉛粒子のD50粒子径は、特に限定されないが、例えば5μm以上30μm以下であることが好ましく、10μm以上25μm以下であることがより好ましい。
【0047】
特に限定されないが、負極活物質の全量を100質量%としたときに、黒鉛粒子の含有割合は、85質量%以上99質量%以下であることが好ましく、90質量%以上99質量%以下であることがより好ましい。これにより、電池100の高容量化とサイクル特性の向上とが好適に両立される。
【0048】
なお、負極活物質は、Si含有材料や黒鉛以外の負極活物質材料を含んでいてもよい。Si含有材料や黒鉛以外のそのほかの負極活物質材料の具体例として、ハードカーボン、ソフトカーボン、非晶質炭素等の炭素材料が挙げられる。
【0049】
負極活物質層24aにおける負極活物質の含有量は、特に限定されない。負極活物質の含有量は、負極活物質層24a中、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上99質量%以下である。
【0050】
負極活物質層24aは、負極活物質以外の任意成分、例えば、バインダ、分散剤、導電材、各種添加成分等を含んでいてもよい。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム類や、ポリアクリル酸(PAA)等のアクリル樹脂を好適に使用しうる。負極活物質層24a中のバインダの含有量は、特に限定されないが、例えば0.1質量%以上10質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロール類を好適に使用しうる。負極活物質層24a中の分散剤の含有量は、特に限定されないが、例えば0.1質量%以上10質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。
【0051】
セパレータ26は、正極22の正極活物質層22aと、負極24の負極活物質層24aと、を絶縁する部材である。セパレータ26は従来と同様でよく、特に制限はない。セパレータ26としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂からなる樹脂製の多孔性シートが好ましい。セパレータ26は、樹脂製の多孔性シートからなる基材部の表面に、耐熱層(Heat Resistance Layer:HRL)や接着層を有していてもよい。耐熱層や接着層の構成は、従来と同様であってよい。
【0052】
<非水電解液二次電池の製造方法>
図4は、一実施形態に係る製造方法のフローチャートである。図4に示すように、電池100は、例えば、構築工程(ステップS1)と、調製工程(ステップS2)と、注液工程(ステップS3)と、を含む製造方法によって製造することができる。ただし、ここに開示される製造方法は、任意の段階でさらに他の工程を含んでいてもよい。
【0053】
構築工程(ステップS1)は、電池ケース10に電極体20を収容して、組立体(電池ケース10と電極体20の合体物)を構築する工程である。好適な一実施形態において、本工程は、電極作製工程(ステップS1-1)と、電極体作製工程(ステップS1-2)と、配置工程(ステップS1-3)と、溶接接合工程(ステップS1-4)とを、含む。また、任意の段階で、さらに他の工程を含んでもよい。
【0054】
まず、電極作製工程(ステップS1-1)では、正極22と負極24とをそれぞれ作製する。正極22は、例えば、正極活物質と導電材とバインダと分散溶媒とを混合して、正極合材スラリーを調製し、調製した正極合材スラリーを従来公知の方法で正極集電体22c上に塗布、乾燥し、適宜プレスすることで作製しうる。正極活物質としては、上記したような材料のなかから、1種類を単独で、または2種以上を混合して適宜使用でき、なかでも上記式(I)で表されるリチウム過剰遷移金属複合酸化物を好適に使用できる。
【0055】
負極24は、例えば、負極活物質とバインダと分散剤と分散溶媒とを混合して、負極合材スラリーを調製し、調製した負極合材スラリーを従来公知の方法で負極集電体24c上に塗布、乾燥し、適宜プレスすることで作製しうる。負極活物質としては、少なくとも黒鉛粒子とSi含有材料(好ましくは、ケイ素、酸化ケイ素、およびケイ素と炭素との複合体のうちの少なくとも1種)と、を用いる。電池100の高容量化とサイクル特性の向上との両立の観点から、負極活物質の全量を100質量%としたときに、Si含有材料の含有割合が1質量%以上15質量%以下となるように調製することが好ましく、1質量%以上10質量%以下となるように調製することがより好ましい。なお、負極活物質としては、上記したような材料を、さらに1種または2種以上使用してもよい。
【0056】
次に、電極体作製工程(ステップS1-2)では、上記で作製した正極22と負極24とを、セパレータ26を介して対向させ、電極体20を作製する。次に、配置工程(ステップS1-3)では、外装体12の内部に電極体20を配置する。例えば、外装体12の開口12hから外装体12の内部に電極体20を収容する。次に、溶接接合工程(ステップS1-4)では、外装体12の開口12hに封口板14を嵌め合わせ、開口12hの周縁に封口板14を溶接して、外装体12と封口板14とを一体化する。
【0057】
調製工程(ステップS2)は、非水電解液を調製する工程である。ここに開示される電池100の非水電解液は、フルオロエチレンカーボネートと、ジフルオロリン酸塩とを含んでいる。上記したとおり、非水電解液がFECおよびジフルオロリン酸塩を含むことにより、正極活物質の表面および負極活物質(特にはSi含有材料)の表面がともに好適に保護されて、電池100の容量維持率が向上する。ここに開示される技術の効果を高いレベルで発揮する観点から、調製工程では、Si含有材料の質量に対するFECの質量の比が0.2以上となるように非水電解液を調製することが好ましい。調製工程では、Si含有材料の質量に対するFECの質量の比が0.2以上1.6以下となるように非水電解液を調製することが好ましく、0.28以上1.2以下となるように非水電解液を調製することがより好ましい。
【0058】
特に限定されないが、調製工程では、負極活物質の全量(すなわち、黒鉛粒子、Si含有材料およびその他の負極活物質材料との合計質量)に対するFECの質量の比が0.04以下となるように非水電解液が調製されることが好ましい。調製工程では、負極活物質の質量に対するFECの質量の比は、0.005以上0.04以下となるように非水電解液を調製することが好ましく、0.01以上0.04以下となるように非水電解液を調製することがより好ましく、0.01以上0.035以下となるように非水電解液を調製してもよい。
【0059】
特に限定されるものではないが、調製工程では、非水溶媒を100体積%としたときに、FECの体積割合が10体積%以下となるように調製することが好ましい。これにより、Si含有材料の保護効果が適切に発揮されつつ、充放電時におけるガスの発生量が好適に抑制され得る。調製工程は、非水溶媒全体を100体積%としたときに、FECの体積割合が0.5体積%~10体積%となるように実施することが好ましく、1体積%~10体積%となうように実施することがより好ましく、1体積%~7体積%となるように実施することがさらに好ましい。
【0060】
好適な一態様において、非水電解液は、FECに加えて、FEC以外のカーボネート類を含んでいる。カーボネート類は、上記したような材料のなかから、1種類を単独で、または2種以上を混合して適宜使用することができる。なかでも、調製工程では、非水電解液がDMC、DEC、EMC、EC、およびVCのうちの少なくとも1種を含むように調製することが好ましい。
【0061】
ジフルオロリン酸塩としては、LiPOを好適に使用できる。特に限定されるものではないが、調製工程では、正極活物質の質量に対するジフルオロリン酸塩の質量の比が0.001以上となるように非水電解液を調製することが好ましい。調製工程では、正極活物質の質量に対するジフルオロリン酸塩の質量の比が0.001以上0.01以下となるように非水電解液を調製することが好ましく、0.001以上0.005以下となるように非水電解液を調製することがより好ましく、0.0015以上0.0045以下となるように非水電解液を調製することがさらに好ましい。これにより、正極表面およびSi含有材料への保護効果がより適切に発揮され、サイクル後の容量維持率が好適に向上する。
【0062】
特に限定されないが、調製工程では、非水電解液全体に占めるジフルオロリン酸塩の割合が、0.1質量%以上2質量%以下となるように非水電解液を調製することが好ましく、0.2質量%以上1.2質量%以下となるように非水電解液を調製することがより好ましい。
【0063】
好ましくは、非水電解液は、FECとジフルオロリン酸塩とに加えて、支持塩(リチウムイオン二次電池の場合、リチウム塩)を含んでいる。支持塩としては、上記したような材料のなかから、1種類を単独で、または2種以上を混合して適宜使用でき、なかでもLiPFを好適に使用できる。
【0064】
注液工程(ステップS3)では、上記調製した非水電解液を、封口板14の注液孔15から電池ケース10の内部に注液する。注液は、大気圧で行ってもよいし、例えば電極体20内への非水電解液の含浸性を向上させる目的等で、電池ケース10内を減圧した状態で行ってもよい。注液孔15から注液された非水電解液は、電極体20に含浸される。言い換えれば、非水電解液が、電極体20に満遍なく行き渡る。
【0065】
特に限定されないが、注液工程後、組立体を所定の時間、放置(保持)してもよい。これにより、例えば長辺方向Yの長さが比較的長い場合であっても、長辺方向Yにバランスよく非水電解液が行き渡り、電極体20にしっかりと非水電解液を含浸させることができる。放置温度は、常温(例えば25℃±10℃、25℃±5℃程度)でもよいし、例えば電極体20内への非水電解液の含浸性を向上させる目的等で、35~45℃程度の高温環境としてもよい。放置時間は、例えば電極体20のサイズ(特には長辺方向Yの長さ)や第1の非水電解液の粘度、減圧の有無、放置温度等にもよるため、特に限定されないが、例えば5分以上が好ましく、10分以上がより好ましく、1時間以上が特に好ましい。また、製造効率等の観点から、240時間(10日)以内が好ましく、48時間(2日)以内がより好ましく、24時間(1日)以内が特に好ましい。
【0066】
また、ここに開示される製造方法は、充電工程を含んでいてもよい。充電工程は、非水電解液が注液された組立体を、少なくとも一回、充電する工程である。組立体の充電は、従来と同様に行うことができる。典型的には、組立体の正極端子と負極端子との間に外部電源を接続し、組立体が所定の電圧となるまで充電を行う。特に限定されるものではないが、電圧が、概ね4V以上、好ましくは4.1V以上、4.2V以上、例えば4.2Vとなるまで充電することが好ましい。正極活物質としてリチウム過剰遷移金属複合酸化物を使用している場合は、電気化学的に活性な状態として高容量を発現させる観点から、電圧が、概ね4.6V以上、好ましくは4.7V以上、例えば4.7Vとなるまで充電することがより好ましい。充放電レートは、例えば、0.1~2C程度とし得る。充電は1回でもよく、例えば放電を挟んで、2回以上繰り返し行うこともできる。また充電の後、放電を行ってもよい。充電工程は、常温(例えば25℃±10℃、25℃±5℃程度)環境下で行ってもよいし、35~45℃程度の高温環境下で行ってもよい。以上のようにして、電池100を好適に製造することができる。
【0067】
<電池100の用途>
電池100は各種用途に利用可能であるが、例えば、サイクル特性(例えばサイクル後の容量維持率)が優れることから、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。
【0068】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に限定することを意図したものではない。
【0069】
≪第1試験≫
<評価用二次電池の作製>
(例1)
まず、正極と負極を作製した。正極は、次のようにして作製した。正極活物質として、Li1.14Ni0.29Mn0.57と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、用意した。これらの材料を、正極活物質:AB:PVdF=100:1:1の質量比で混合し、分散溶媒としてのN-メチルピロリドン(NMP)で流動性を調整して、正極合材スラリーを調製した。次に、調製した正極合材スラリーを、正極集電体としてのAl箔上に塗布し、乾燥後、所定の厚みまでプレスした。そして、所定のサイズに切り出して、正極を作製した。
【0070】
負極は、次のように作製した。まず、負極活物質として、黒鉛およびSiO(Si含有材料)を用意した。これらの材料を、黒鉛:SiO=95:5の質量比で混合して、混合物を得た。次に、得られた混合物(100質量部)に、バインダとしてのSBRと、分散剤としてのCMCとを、それぞれ1質量部の割合で添加し(負極活物質:SBR:CMC=100:1:1)、分散溶媒(水)で流動性を調整して、負極合材スラリーを調製した。次に、調製した負極合材スラリーを、負極集電体としてのCu箔上に塗布し、乾燥後、所定の厚みまでプレスした。そして、所定のサイズに切り出して、負極を作製した。
【0071】
次いで、非水電解液は以下のようにして調製した。溶媒として、フルオロエチレンカーボネート(FEC)と、エチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)と、を用意した。これらを、FEC:EC:EMC=0.08:0.92:3の体積比で混合して、非水溶媒を用意した。用意した非水溶媒に、LiPFを1mol/Lの濃度で溶解させた。また、LiPOを0.7質量%で溶解させた。このようにして、非水電解液を調製した。
【0072】
セパレータとして、PP/PE/PPの三層からなる多孔性シートを用意した。上記で作製した正極と負極を、セパレータを介して対向させ、電極体を作製した。次に、作成した電極体に正極端子および負極端子を取り付け、非水電解液と共に、アルミニウムラミネートフィルム製の袋状の電池ケースに収容し、封止した。上記用意した二次電池を0.1Cの充電レートで4.2Vまで定電流充電した後、0.1Cの放電レートで3.0Vまで定電流放電する活性化処理を実施した。このようにして、例1の評価用二次電池を作製した。
【0073】
(例2)
非水電解液として、FECおよびLiPOを含有しないものを用意した。具体的には、EC:EMC=1:3の体積比で混合して、非水溶媒を用意した。用意した非水溶媒に、LiPFを1mol/Lの濃度で溶解させた。このようにして、例2の非水電解液を調製した。このこと以外は、例1と同様にして、例2の評価用二次電池を用意した。
【0074】
(例3)
非水電解液として、LiPOを含有しないものを用意した。具体的には、FEC:EC:EMC=0.08:0.92:3の体積比で混合して、非水溶媒を用意した。用意した非水溶媒に、LiPFを1mol/Lの濃度で溶解させた。このようにして、例3の非水電解液を調製した。このこと以外は、例1と同様にして、例3の評価用二次電池を用意した。
【0075】
(例4)
非水電解液として、FECを含有しないものを用意した。具体的には、EC:EMC=1:3の体積比で混合して、非水溶媒を用意した。用意した非水溶媒に、LiPFを1mol/Lの濃度で溶解させた。また、LiPOを0.7質量%で溶解させた。このようにして、例4の非水電解液を調製した。このこと以外は、例1と同様にして、例4の評価用二次電池を用意した。
【0076】
(例5~例8)
非水電解液として、例1の非水電解液中のLiPOの濃度(質量%)を表1に示すように変更したものを用意した。このこと以外は、例1と同様にして、例5~例8の評価用二次電池を用意した。
【0077】
(例9~例11)
非水電解液として、例1の非水電解液中のFECの濃度(体積%)を表1に示すように変更したものを用意した。このこと以外は、例1と同様にして、例9~例11の評価用二次電池を用意した。
【0078】
(例12~例15)
負極活物質として、黒鉛:SiO=97:3の質量比で混合した混合物を用意した。また、非水電解液として、例1の非水電解液中のFECの濃度(体積%)を表1に示すように変更したものを用意した。このこと以外は、例1と同様にして、例12~例15の評価用二次電池を用意した。
【0079】
(例16~例19)
負極活物質として、黒鉛:SiO=90:10の質量比で混合した混合物を用意した。また、非水電解液として、例1の非水電解液中のFECの濃度(体積%)を表1に示すように変更したものを用意した。このこと以外は、例1と同様にして、例16~例19の評価用二次電池を用意した。
【0080】
<容量維持率の評価>
25℃の環境下、0.5Cの充電レートで4.2Vまで定電流充電を行った後、0.5Cの放電レートで3.0Vまで定電流放電を行う充放電を1サイクルとして、300サイクルの充放電を繰り返した。1サイクル目の放電容量を「初期容量」とした。次いで、300サイクル後の評価用二次電池を、25℃の環境下、0.1Cの充電レートで4.2Vまで定電流充電を行った後、0.1Cの放電レートで3.0Vまで定電流放電を行った。このときの放電容量を「サイクル後容量」とした。次の式:容量維持率=(サイクル後容量/初期容量)×100;で、容量維持率(%)を算出した。結果を表1に示す。
【0081】
<ガス発生量の評価>
サイクルの前後の各例の評価用二次電池に対して、フロリナートを溶媒としたアルキメデス法によりケース内体積を測定することで、ガス発生量を算出した。具体的には、まず、活性化処理後の各例の評価用二次電池に対してアルキメデス法を用いて、空中重量と水中重量との関係よりケース内体積を算出した。これを「初期体積」とした。次いで、25℃の環境下、0.5Cの充電レートで4.2Vまで定電流充電を行った後、0.5Cの放電レートで3.0Vまで定電流放電を行う充放電を1サイクルとして、300サイクルの充放電を繰り返した。300サイクル後の評価用二次電池に対してアルキメデス法を用いて上記と同様にケース内体積を算出した。これを「サイクル後体積」とした。そして、サイクル後体積と初期体積との差(mL)を求め、これをガス発生量とした。さらに、ガス発生量(mL)が各評価用二次電池の定格容量(Ah)で除されることにより、電池容量あたりのガス発生量(ml/Ah)を算出した。結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
表1に示すように、負極活物質がSi含有材料を含み、非水電解液がLiPOおよびFECを含み、Si含有材料の質量に対するFECの質量の比が0.2以上である例1、例5~例8、例10~例15、例18および例19は、容量維持率が93%以上であることがわかる。すなわち、正極活物質としてリチウムおよびマンガンを少なくとも含有するリチウム遷移金属複合酸化物を含み、負極活物質として黒鉛粒子と、Si含有材料と、を含み、FECおよびジフルオロリン酸塩を含む非水電解液を備え、Si含有材料の質量に対するFECの質量の比が0.2以上であることにより、サイクル後の容量維持率に優れる非水電解液二次電池が実現される。
【0084】
一方で、FECが添加されていない例2および例4では、容量維持率が低いことがわかる。また、Si含有材料の質量に対するFECの質量の比が0.2未満である例9、例16および例17でも容量維持率が低いことがわかる。これは、FECによって負極(特に負極に含まれるSi含有材料)に対する保護効果が十分に発揮されないためと推測される。さらに、LiPOを含まない例3も容量維持率が低いことがわかる。これは、LiPOを含まないことにより、正極表面にもFECが付着し、負極表面に対するFECの保護効果が減少することによるものと推測される。
【0085】
表1に示すように、例1と例5とを比較すると、正極活物質の質量に対するLiPOの質量の比が0.001未満である例5では、容量維持率がやや低いことがわかる。これは、正極活物質に対してLiPOの量が少ないことにより、正極表面におけるFECの吸着量が増え、負極表面へのFECの保護効果がやや小さくなることによると推測される。
【0086】
表1に示すように、負極活物質の質量に対するFECの質量の比が0.04を上回る例11、例15、例19では、ガス発生量が比較的多いことがわかる。これは、負極活物質の質量に対してFECの質量が多くなるとFECを分解する際のガス量が増加するためと推測される。
【0087】
≪第2試験≫
<評価用二次電池の作製>
(例20~例24)
第2試験では、正極活物質の種類を変更して各例の評価用二次電池を作製し、容量維持率およびガス発生量を評価した。具体的には、表2に示す正極活物質を用いて、各例の評価用二次電池を作製した。このこと以外は、例1と同様にして、例20~例24の評価用二次電池を用意した。
【0088】
<容量維持率およびガス発生量の評価>
上記した評価方法と同様にして、各例の評価用二次電池の容量維持率およびガス発生量を評価した。結果を表2に示す。なお、表2では、比較のために例1および例2の結果も記載している。
【0089】
【表2】
【0090】
表2に示すように、正極活物質の種類が異なる場合でも、同様の効果が得られることがわかる。また、表2に示すように、Li以外の金属の物質量に対するLiの物質量の比(Li/Me)が1.2を上回る例1、例22~例24では容量維持率が特に良好であることがわかる。
【0091】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0092】
以上の通り、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:正極および負極を有する電極体と、非水電解液と、電池ケースと、を備える非水電解液二次電池であって、前記正極は、正極活物質としてリチウムおよびマンガンを少なくとも含有するリチウム遷移金属複合酸化物を含み、前記負極は、負極活物質として黒鉛粒子と、Si含有材料と、を含み、前記非水電解液は、フルオロエチレンカーボネートと、ジフルオロリン酸塩と、を含み、前記Si含有材料の質量に対する前記フルオロエチレンカーボネートの質量の比が0.2以上である、非水電解液二次電池。
項2:前記負極活物質の質量に対する前記フルオロエチレンカーボネートの質量の比が0.04以下である、項1に記載の非水電解液二次電池。
項3:前記黒鉛粒子と前記Si含有材料との合計を100質量%としたときに、前記Si含有材料が1質量%以上15質量%以下である、項1または項2に記載の非水電解液二次電池。
項4:前記正極活物質の質量に対する前記ジフルオロリン酸塩の質量の比が0.001以上である、項1~項3のいずれか1つに記載の非水電解液二次電池。
項5:前記正極活物質は、以下の一般式:
Li1+aNiMn (I)
(ただし、0.1≦a≦0.33、0≦x≦0.5、0.5≦y≦0.7、0≦z≦0.2、a+x+y+z=1であり、MはCo、Al、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wのうちの少なくとも1種の元素である。);
で示されるリチウム遷移金属複合酸化物である、項1~項4のいずれか1つに記載の非水電解液二次電池。
項6:前記正極活物質に含まれるLi以外の金属元素をMeとしたときに、Meの物質量に対するLiの物質量の比(Li/Me)が1.2以上2以下である、項1~項5のいずれか1つに記載の非水電解液二次電池。
項7:前記Si含有材料は、ケイ素、酸化ケイ素およびケイ素と炭素の複合体からなる群から選択される少なくとも1種である、項1~項6のいずれか1つに記載の非水電解液二次電池。
項8:前記ジフルオロリン酸塩は、ジフルオロリン酸リチウムを含む、項1~項7のいずれか1つに記載の非水電解液二次電池。
項9:正極および負極を有する電極体と、非水電解液と、電池ケースとを備える非水電解液二次電池の製造方法であって、前記電極体を前記電池ケースに収容して組立体を構築する構築工程と、フルオロエチレンカーボネートと、ジフルオロリン酸塩とを含む非水電解液を調製する調製工程と、前記非水電解液を前記電池ケースに注液する注液工程と、を含み、ここで、前記電極体の前記正極は正極活物質を含み、前記負極は負極活物質として黒鉛粒子とSi含有材料とを含み、前記調製工程において、前記Si含有材料の質量に対する前記フルオロエチレンカーボネートの質量の比が0.2以上となるように前記非水電解液を調製する、非水電解液二次電池の製造方法。
項10:前記調製工程において、前記負極活物質の質量に対する前記フルオロエチレンカーボネートの質量の比が0.04以下となるように前記非水電解液を調製する、項9に記載の製造方法。
項11:前記調製工程において、前記正極活物質の質量に対する前記ジフルオロリン酸塩の質量の比が0.001以上である、項9または項10に記載の製造方法。
項12:前記正極活物質は、以下の一般式:
Li1+aNiMn (I)
(ただし、0.1≦a≦0.33、0≦x≦0.5、0.5≦y≦0.7、0≦z≦0.2、a+x+y+z=1であり、MはCo、Al、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wのうちの少なくとも1種の元素である。);
で示されるリチウム遷移金属複合酸化物である、項9~項11のいずれか1つに記載の製造方法。
項13:前記正極活物質に含まれるLi以外の金属元素をMeとしたときに、Meの物質量に対するLiの物質量の比(Li/Me)が1.2以上2以下である、項9~項12のいずれか1つに記載の製造方法。
【符号の説明】
【0093】
10 電池ケース
20 電極体
22 正極
22a 正極活物質層
24 負極
24a 負極活物質層
100 電池
S1 構築工程
S2 調製工程
S3 注液工程
図1
図2
図3
図4