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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178048
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】ボンド磁石の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20241217BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20241217BHJP
   B22F 3/00 20210101ALI20241217BHJP
   B22F 1/107 20220101ALN20241217BHJP
【FI】
H01F41/02 G
B22F1/00 Y
B22F3/00 C
B22F1/107
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096546
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】595109708
【氏名又は名称】ナパック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】井上 尚実
(72)【発明者】
【氏名】林 美穂
(72)【発明者】
【氏名】堂薗 健次
(72)【発明者】
【氏名】小林 広明
(72)【発明者】
【氏名】井上 宜幸
【テーマコード(参考)】
4K018
5E062
【Fターム(参考)】
4K018CA04
4K018CA33
4K018KA46
5E062CD05
5E062CE04
5E062CF04
5E062CG02
(57)【要約】
【課題】成形体の密度および成形体中の磁性粉末の配向度を向上させることが可能なボンド磁石の製造方法を提供する。
【解決手段】このボンド磁石の製造方法では、第1成形体41を解砕して造粒化された造粒粉14を形成する解砕工程(S6)の後に、造粒粉14を含む第2スラリー22(第2混合物)に対して磁性粉末11を配向するための磁場Bを印加しながら、第2スラリー22を圧縮成形して第2成形体42を形成する第2圧縮成形工程(S10)(第2成形体形成工程)が行われる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粉末と樹脂バインダーとを含む第1混合物に対して前記磁性粉末を配向するための磁場を印加しながら、前記第1混合物を圧縮成形して第1成形体を形成する第1成形体形成工程と、
前記第1成形体形成工程の後に、前記第1成形体を解砕して前記磁性粉末の複数の粒子を含む粒状に造粒化された造粒粉を形成する解砕工程と、
前記解砕工程の後に、前記造粒粉と前記樹脂バインダーとを含む第2混合物に対して前記磁性粉末を配向するための磁場を印加しながら、前記第2混合物を圧縮成形して第2成形体を形成する第2成形体形成工程と、を備える、ボンド磁石の製造方法。
【請求項2】
前記第2成形体形成工程は、前記造粒粉と、造粒化されておらず前記造粒粉よりも粒径が小さい非造粒粉と、前記樹脂バインダーとを含む前記第2混合物に対して前記磁性粉末を配向するための磁場を印加しながら、前記第2混合物を圧縮成形して前記第2成形体を形成する工程である、請求項1に記載のボンド磁石の製造方法。
【請求項3】
前記解砕工程の後に、かつ、前記第2成形体形成工程の前に、前記解砕工程において前記第1成形体を解砕した解砕粉を粒径によってふるい分ける分級工程をさらに備え、
前記第2成形体形成工程は、前記造粒粉と、前記分級工程において生じた前記非造粒粉と、前記樹脂バインダーとを含む前記第2混合物に対して前記磁性粉末を配向するための磁場を印加しながら、前記第2混合物を圧縮成形して前記第2成形体を形成する工程である、請求項2に記載のボンド磁石の製造方法。
【請求項4】
前記第1成形体形成工程は、前記樹脂バインダーとしての熱硬化性樹脂を含む前記第1混合物を圧縮成形して前記第1成形体を形成する工程であり、
前記第2成形体形成工程は、前記樹脂バインダーとしての前記熱硬化性樹脂を含む前記第2混合物を圧縮成形して前記第2成形体を形成する工程であり、
前記第1成形体形成工程の後に、かつ、前記解砕工程の前に、前記第1成形体に対して前記熱硬化性樹脂を熱硬化させるための加熱を行う第1熱硬化工程と、
前記第2成形体形成工程の後に、前記第2成形体に対して前記熱硬化性樹脂を熱硬化させるための加熱を行う第2熱硬化工程と、をさらに備える、請求項1に記載のボンド磁石の製造方法。
【請求項5】
前記第1成形体形成工程において前記第1混合物に含まれる前記熱硬化性樹脂の量は、前記第2成形体形成工程において前記第2混合物に含まれる前記熱硬化性樹脂の量よりも少ない、請求項4に記載のボンド磁石の製造方法。
【請求項6】
前記第1成形体形成工程において前記第1混合物を圧縮成形する圧力は、前記第2成形体形成工程において前記第2混合物を圧縮成形する圧力よりも小さい、請求項1に記載のボンド磁石の製造方法。
【請求項7】
前記第1熱硬化工程において前記第1成形体に対して前記熱硬化性樹脂を熱硬化させるための加熱を行う温度は、前記第2熱硬化工程において前記第2成形体に対して前記熱硬化性樹脂を熱硬化させるための加熱を行う温度以下である、請求項4に記載のボンド磁石の製造方法。
【請求項8】
前記第1熱硬化工程において前記第1成形体に対して前記熱硬化性樹脂を熱硬化させるための加熱を行う時間は、前記第2熱硬化工程において前記第2成形体に対して前記熱硬化性樹脂を熱硬化させるための加熱を行う時間以下である、請求項4に記載のボンド磁石の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンド磁石の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁性粉末と樹脂バインダーとを含む混合物を圧縮成形するボンド磁石の製造方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、磁性粉末と樹脂バインダーとを混合してスラリー(混合物)を形成し、スラリーに対して磁性粉末を配向するための磁場を印加しながら、スラリーを圧縮成形する樹脂結合型磁石(ボンド磁石)の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-142032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1に記載のような従来のボンド磁石の製造方法では、磁性粉末を配向するための磁場が印加されながら圧縮成形される混合物に含まれる磁性粉末の各々の粒子は、粒径が比較的小さいので、比表面積(単位体積当たりの表面積)が大きいとともに、磁場が印加されることによる回転トルクが比較的小さい。磁性粉末を含む混合物を圧縮成形する際の圧縮力は、磁性粉末の各々の粒子同士の間を伝播するので、磁性粉末の比表面積が比較的大きい場合、磁性粉末を含む混合物を圧縮成形する際に、磁性粉末の各々の粒子同士の間の接触面積が、比較的大きくなる。したがって、磁性粉末を含む混合物を圧縮成形する際に、磁性粉末の各々の粒子同士の間に生じる摩擦損失(摩擦による熱損失)が比較的大きくなり、摩擦損失が大きくなる分、磁性粉末の各々の粒子同士の間で圧縮力が伝達されにくい。この場合、圧縮成形後の成形体の密度が比較的高くなりにくい。また、磁性粉末の各々の粒子の磁場が印加されることによる回転トルクが比較的小さい場合、磁性粉末を含む混合物に対して磁性粉末を配向するための磁場を印加した際に、磁性粉末が配向されにくい。この場合、圧縮成形後の成形体中の磁性粉末の配向度(配向度合い)が低くなりやすい。このため、成形体の密度および成形体中の磁性粉末の配向度を向上させることが可能なボンド磁石の製造方法が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、圧縮成形後の成形体の密度および圧縮成形後の成形体中の磁性粉末の配向度を向上させることが可能なボンド磁石の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるボンド磁石の製造方法は、磁性粉末と樹脂バインダーとを含む第1混合物に対して磁性粉末を配向するための磁場を印加しながら、第1混合物を圧縮成形して第1成形体を形成する第1成形体形成工程と、第1成形体形成工程の後に、第1成形体を解砕して磁性粉末の複数の粒子を含む粒状に造粒化された造粒粉を形成する解砕工程と、解砕工程の後に、造粒粉と樹脂バインダーとを含む第2混合物に対して磁性粉末を配向するための磁場を印加しながら、第2混合物を圧縮成形して第2成形体を形成する第2成形体形成工程と、を備える。
【0008】
この発明の一の局面におけるボンド磁石の製造方法では、上記のように、第1成形体を解砕して磁性粉末の複数の粒子を含む粒状に造粒化された造粒粉を形成する解砕工程の後に、造粒粉と樹脂バインダーとを含む第2混合物に対して磁性粉末を配向するための磁場を印加しながら、第2混合物を圧縮成形して第2成形体を形成する第2成形体形成工程が行われる。これにより、磁性粉末を配向するための磁場が印加されながら圧縮成形される第2混合物に含まれる造粒粉は、磁性粉末の複数の粒子を含む粒状に造粒化されていることによって、磁性粉末の各々の粒子と比較して粒径が大きいので、磁性粉末の各々の粒子と比較して、比表面積が小さいとともに、磁場が印加されることによる回転トルクが大きい。そして、造粒粉を含む第2混合物を圧縮成形する際の圧縮力は、造粒粉同士の間を伝播するので、造粒粉の比表面積が比較的小さいことによって、造粒粉を含む第2混合物を圧縮成形する際に、造粒粉同士の間の接触面積が比較的小さくなる。したがって、造粒粉を含む第2混合物を圧縮成形する際に、造粒粉同士の間に生じる摩擦損失が比較的小さくなり、摩擦損失が小さくなる分、造粒粉同士の間で圧縮力が伝達されやすい。この場合、圧縮成形後の第2成形体の密度が高くなりやすい。また、造粒粉の磁場が印加されることによる回転トルクが比較的大きいことによって、造粒粉を含む第2混合物に対して磁性粉末を配向するための磁場を印加した際に、磁性粉末が配向されやすい。この場合、圧縮成形後の第2成形体中の磁性粉末の配向度(配向度合い)が高くなりやすい。これらの結果、成形体の密度および成形体中の磁性粉末の配向度を向上させることができる。これにより、ボンド磁石の磁気特性を向上させることができる。
【0009】
上記一の局面によるボンド磁石の製造方法において、好ましくは、第2成形体形成工程は、造粒粉と、造粒化されておらず造粒粉よりも粒径が小さい非造粒粉と、樹脂バインダーとを含む第2混合物に対して磁性粉末を配向するための磁場を印加しながら、第2混合物を圧縮成形して第2成形体を形成する工程である。
【0010】
このように構成すれば、第2成形体形成工程において、造粒粉同士の隙間を、造粒化されておらず造粒粉よりも粒径が小さい非造粒粉が埋めた状態で、第2混合物を圧縮成形することができる。その結果、造粒化されておらず造粒粉よりも粒径が小さい非造粒分が第2混合物に含まれない場合と比較して、第2成形体の密度をより向上させることができる。これにより、ボンド磁石の磁気特性をより向上させることができる。
【0011】
上記第2成形体形成工程が造粒粉と非造粒粉と樹脂バインダーとを含む第2混合物に対して磁場を印加しながら第2混合物を圧縮成形して第2成形体を形成する構成において、好ましくは、解砕工程の後に、かつ、第2成形体形成工程の前に、解砕工程において第1成形体を解砕した解砕粉を粒径によってふるい分ける分級工程をさらに備え、第2成形体形成工程は、造粒粉と、分級工程において生じた非造粒粉と、樹脂バインダーとを含む第2混合物に対して磁性粉末を配向するための磁場を印加しながら、第2混合物を圧縮成形して第2成形体を形成する工程である。
【0012】
このように構成すれば、分級工程によって、解砕工程において第1成形体を解砕した解砕粉の中から、第2成形体形成工程において用いる造粒粉として所望の粒径の解砕粉を容易にふるい分けることができる。また、分級工程において生じた非造粒粉を、第2成形体形成工程において第2混合物に含ませる非造粒粉として利用することができるので、磁性粉末の歩留まりを効果的に削減することができる。
【0013】
上記一の局面によるボンド磁石の製造方法において、好ましくは、第1成形体形成工程は、樹脂バインダーとしての熱硬化性樹脂を含む第1混合物を圧縮成形して第1成形体を形成する工程であり、第2成形体形成工程は、樹脂バインダーとしての熱硬化性樹脂を含む第2混合物を圧縮成形して第2成形体を形成する工程であり、第1成形体形成工程の後に、かつ、解砕工程の前に、第1成形体に対して熱硬化性樹脂を熱硬化させるための加熱を行う第1熱硬化工程と、第2成形体形成工程の後に、第2成形体に対して熱硬化性樹脂を熱硬化させるための加熱を行う第2熱硬化工程と、をさらに備える。
【0014】
このように構成すれば、第1熱硬化工程において、第1成形体に含まれる熱硬化性樹脂が熱硬化されることによって、第1成形体に含まれる磁性粉末の複数の粒子同士が結合した状態が維持されやすくなるので、解砕工程において第1成形体を解砕した際に、造粒粉が形成されず、解砕粉の全てが非造粒粉となってしまうのを抑制することができる。また、第2成形体形成工程の後に、第2成形体に含まれる熱硬化性樹脂が熱硬化されることによって、第2成形体に含まれる造粒粉同士が結合した状態が維持されやすくなるので、ボンド磁石として適切な機械的強度を有する成形体を容易に形成することができる。
【0015】
上記第1成形体形成工程が熱硬化性樹脂を含む第1混合物を圧縮成形して第1成形体を形成する工程であり第2成形体形成工程が熱硬化性樹脂を含む第2混合物を圧縮成形して第2成形体を形成する工程である構成において、好ましくは、第1成形体形成工程において第1混合物に含まれる熱硬化性樹脂の量は、第2成形体形成工程において第2混合物に含まれる熱硬化性樹脂の量よりも少ない。
【0016】
このように構成すれば、第1熱硬化工程において熱硬化される熱硬化性樹脂の量を比較的少なくすることができる。これにより、第1成形体中において、磁性粉末の複数の粒子同士の間を埋める熱硬化性樹脂の量が比較的少なくなるので、第1成形体に含まれる磁性粉末の複数の粒子同士が結合した状態が過度に維持されやすくなるのを容易に抑制することができる。その結果、解砕工程において第1成形体が解砕されにくくなり造粒粉が十分に形成されなくなるのを容易に抑制することができる。
【0017】
上記一の局面によるボンド磁石の製造方法において、好ましくは、第1成形体形成工程において第1混合物を圧縮成形する圧力は、第2成形体形成工程において第2混合物を圧縮成形する圧力よりも小さい。
【0018】
このように構成すれば、第1成形体形成工程において第1混合物を圧縮成形する際の圧力を比較的小さくすることができる。これにより、第1成形体に含まれる磁性粉末の複数の粒子同士が結合した状態が過度に維持されやすくなるのを容易に抑制することができる。その結果、解砕工程において第1成形体が解砕されにくくなり造粒粉が十分に形成されなくなるのを容易に抑制することができる。
【0019】
上記第1熱硬化工程と第2熱硬化工程とを備える構成において、好ましくは、第1熱硬化工程において第1成形体に対して熱硬化性樹脂を熱硬化させるための加熱を行う温度は、第2熱硬化工程において第2成形体に対して熱硬化性樹脂を熱硬化させるための加熱を行う温度以下である。
【0020】
このように構成すれば、第1熱硬化工程において熱硬化性樹脂を熱硬化させる温度を比較的低くすることができる。これにより、第1成形体に含まれる熱硬化性樹脂が過度に硬化するのを容易に抑制することができるので、第1成形体に含まれる磁性粉末の複数の粒子同士が結合した状態が過度に維持されやすくなるのを容易に抑制することができる。その結果、解砕工程において第1成形体が解砕されにくくなり造粒粉が十分に形成されなくなるのを容易に抑制することができる。
【0021】
上記第1熱硬化工程と第2熱硬化工程とを備える構成において、好ましくは、第1熱硬化工程において第1成形体に対して熱硬化性樹脂を熱硬化させるための加熱を行う時間は、第2熱硬化工程において第2成形体に対して熱硬化性樹脂を熱硬化させるための加熱を行う時間以下である。
【0022】
このように構成すれば、第1熱硬化工程において熱硬化性樹脂を熱硬化させる時間を比較的短くすることができる。これにより、第1成形体に含まれる熱硬化性樹脂が過度に硬化するのを容易に抑制することができるので、第1成形体に含まれる磁性粉末の複数の粒子同士が結合した状態が過度に維持されやすくなるのを容易に抑制することができる。その結果、解砕工程において第1成形体が解砕されにくくなり造粒粉が十分に形成されなくなるのを容易に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態によるボンド磁石の製造フローを示す図である。
図2】本発明の一実施形態によるボンド磁石の製造フローにおける第1スラリー形成工程を説明するための図である。
図3】本発明の一実施形態によるボンド磁石の製造フローにおける第1配向工程を説明するための図である。
図4】本発明の一実施形態によるボンド磁石の製造フローにおける第1圧縮成形工程を説明するための図である。
図5】本発明の一実施形態によるボンド磁石の製造フローにおける第1熱硬化工程を説明するための図である。
図6】本発明の一実施形態によるボンド磁石の製造フローにおける解砕工程を説明するための図である。
図7】本発明の一実施形態によるボンド磁石の製造フローにおける分級工程を説明するための図である。
図8】本発明の一実施形態によるボンド磁石の製造フローにおける造粒粉を示した模式図である。
図9】本発明の一実施形態によるボンド磁石の製造フローにおける第2スラリー形成工程を説明するための図である。
図10】本発明の一実施形態によるボンド磁石の製造フローにおける第2配向工程を説明するための図である。
図11】本発明の一実施形態によるボンド磁石の製造フローにおける第2圧縮成形工程を説明するための図である。
図12】本発明の一実施形態によるボンド磁石の製造フローにおける第2熱硬化工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1図12を参照して、本発明の一実施形態によるボンド磁石の製造方法について説明する。ボンド磁石は、たとえば、回転電機のロータの内部(磁石挿入孔)に挿入されて固定される永久磁石として用いられる。
【0026】
(第1スラリー形成工程)
図1に示すように、ステップS1において、第1スラリー形成工程が行われる。図2に示すように、第1スラリー形成工程(S1)は、磁性粉末11と熱硬化性樹脂12と溶媒13とを混合して第1スラリー21を形成する工程である。磁性粉末11は、たとえば、Sm-Fe-N系の磁性粉末、Ne-Fe-B系の磁性粉末、等である。熱硬化性樹脂12は、たとえば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、等である。第1スラリー21には、磁性粉末11、熱硬化性樹脂12および溶媒13以外の材料(たとえば、成形助剤)が混合されてもよい。なお、熱硬化性樹脂12および第1スラリー21は、それぞれ、特許請求の範囲の「樹脂バインダー」および「第1混合物」の一例である。
【0027】
(第1配向工程)
図1に示すように、ステップS2において、第1配向工程が行われる。図3に示すように、第1配向工程(S2)は、磁性粉末11(図2参照)を含む第1スラリー21に対して磁性粉末11を配向するための磁場Bを印加して、磁性粉末11を配向する工程である。具体的には、第1スラリー21が、圧縮成形用の金型30の本体部31に形成されたキャビティ31aに充填される。そして、キャビティ31aを塞ぐようにキャビティ31aの上方に金型30の上パンチ32が配置される。そして、第1スラリー21が金型30の本体部31と上パンチ32とにより密閉された状態で、第1スラリー21に対して磁性粉末11を配向するための静磁場B1およびパルス磁場B2が印加される。静磁場B1は、継続的に印加される。また、パルス磁場B2は、瞬間的に印加される。パルス磁場B2が印加される回数は、1回でもよいし複数回でもよい。
【0028】
(第1圧縮成形工程)
図1に示すように、ステップS3において、第1圧縮成形工程が行われる。図4に示すように、第1圧縮成形工程(S3)は、磁性粉末11(図2参照)と熱硬化性樹脂12(図2参照)とを含む第1スラリー21(図3参照)に対して磁性粉末11を配向するための磁場Bを印加しながら、第1スラリー21を圧縮成形して第1成形体41を形成する工程である。具体的には、第1スラリー21が金型30と上パンチ32とにより密閉された状態で、かつ、第1スラリー21に対して磁性粉末11を配向するための磁場B(静磁場B1およびパルス磁場B2)が印加された状態で、上パンチ32が第1スラリー21を加圧しながらキャビティ31aに向かって下降する。上パンチ32が所定の高さまで下降すると、第1スラリー21に含まれる磁性粉末11が配向されるとともに、第1スラリー21が圧縮成形された第1成形体41が形成される。上述したように、第1スラリー21は、溶媒13(図2参照)を含む。すなわち、第1圧縮成形工程(S3)は、湿式圧縮成形を行う工程である。なお、第1圧縮成形工程(S3)は、特許請求の範囲の「第1成形体形成工程」の一例である。
【0029】
第1圧縮成形工程(S3)は、第1スラリー21(図3参照)から溶媒13を除去しながら、第1成形体41を形成する工程である。具体的には、キャビティ31aの下方に配置された下パンチ33には、溶媒除去用の複数の流路33aが形成されている。複数の流路33aの各々は、下パンチ33の下部において、吸引ポンプ34に接続されている。また、キャビティ31aと下パンチ33との間には、濾過フィルター35が配置されている。そして、第1スラリー21が圧縮成形されている間、吸引ポンプ34による吸引が行われる。第1スラリー21が圧縮成形されることにより滲み出た溶媒13は、濾過フィルター35および複数の流路33aを介して、吸引ポンプ34によって吸引される。
【0030】
第1圧縮成形工程(S3)において第1スラリー21(図3参照)に含まれる熱硬化性樹脂12の量は、後述する第2圧縮成形工程(S10)(図11参照)において第2スラリー22(図11参照)に含まれる熱硬化性樹脂12の量よりも少ない。具体的には、第1圧縮成形工程(S3)において第1スラリー21に含まれる熱硬化性樹脂12の量は、0.2wt%以上かつ2wt%以下であり、第2圧縮成形工程(S10)において第2スラリー22に含まれる熱硬化性樹脂12の量は、3wt%以上かつ7wt%以下である。好ましくは、第1圧縮成形工程(S3)において第1スラリー21に含まれる熱硬化性樹脂12の量は、0.5wt%以上かつ1wt%以下であり、第2圧縮成形工程(S10)において第2スラリー22に含まれる熱硬化性樹脂12の量は、5wt%以上かつ6wt%以下である。
【0031】
第1圧縮成形工程(S3)において第1スラリー21(図3参照)を圧縮成形する圧力は、後述する第2圧縮成形工程(S10)(図11参照)において第2スラリー22(図11参照)を圧縮成形する圧力よりも小さい。具体的には、第1圧縮成形工程(S3)において第1スラリー21を圧縮成形する圧力は、0.3ton/cm以上かつ2ton/cm以下であり、第2圧縮成形工程(S10)において第2スラリー22を圧縮成形する圧力は、2ton/cmよりも大きく、かつ、10ton/cm以下である。好ましくは、第1圧縮成形工程(S3)において第1スラリー21を圧縮成形する圧力は、0.5ton/cm以上かつ1ton/cm以下であり、第2圧縮成形工程(S10)において第2スラリー22を圧縮成形する圧力は、2ton/cmよりも大きく、かつ、3ton/cm以下である。
【0032】
(第1脱磁工程)
図1に示すように、ステップS4において、第1脱磁工程が行われる。第1脱磁工程(S4)は、磁性粉末11(図2参照)を含む第1成形体41(図4参照)に対して、互いに逆方向の磁場Bを交互にかつ徐々に小さくしながら印加して、第1成形体41に含まれる磁性粉末11を脱磁する工程である。
【0033】
(第1熱硬化工程)
図1に示すように、ステップS5において、第1熱硬化工程が行われる。図5に示すように、第1熱硬化工程(S5)は、第1成形体41に対して熱硬化性樹脂12(図2参照)を熱硬化させるための加熱を行う工程である。具体的には、第1成形体41が加熱炉51内に配置される。そして、加熱炉51内において、熱硬化性樹脂12が熱硬化するように、熱硬化性樹脂12が加熱される。第1熱硬化工程(S5)において第1成形体41に対して熱硬化性樹脂12を熱硬化させるための加熱は、約120℃以上の温度で、かつ、30分以上の時間で行われる。第1熱硬化工程(S5)における第1成形体41に含まれる熱硬化性樹脂12の熱硬化により、後述する解砕工程(S6)(図1参照)から、後述する第2圧縮成形工程(S10)(図1参照)を行う直前までの間において、第1成形体41に含まれる磁性粉末11(図2参照)の複数の粒子11a(図8参照)同士が結合した状態が維持されやすくなり、解砕工程(S6)において形成される造粒粉14(図7参照)の形状および造粒粉14に含まれる複数の粒子11aの配向状態が維持されやすくなる。
【0034】
(解砕工程)
図1に示すように、ステップS6において、解砕工程が行われる。図6に示すように、解砕工程(S6)は、第1成形体41を解砕して磁性粉末11(図2参照)の複数の粒子11a(図8参照)を含む粒状に造粒化された造粒粉14(図8参照)を形成する工程である。具体的には、第1成形体41が解砕装置52により解砕される。解砕装置52は、たとえば、らいかい機、ジョークラッシャー、ピンミル等の粉砕機である。解砕された第1成形体41は解砕粉15となる。図7に示すように、解砕粉15中には、造粒粉14が含まれる。図8に示すように、造粒粉14は、磁性粉末11の複数の粒子11aが熱硬化性樹脂12を介して結合することによって塊となっている。
【0035】
図7に示すように、解砕工程(S6)では、解砕粉15中に含まれる粒径の分布が比較的広くなるように解砕される。具体的には、解砕粉15中に含まれる粒径の分布が比較的広くなるように、解砕装置52(図6参照)の種類が選択されるか、または、解砕装置52の設定が調整される。これにより、解砕工程(S6)において開催された解砕粉15そのものには、様々な粒径を有する後述する非造粒粉16(図7参照)が含まれる。
【0036】
(分級工程)
図1に示すように、ステップS7において、分級工程が行われる。図7に示すように、分級工程(S7)は、解砕工程(S6)において第1成形体41(図6参照)を解砕した解砕粉15(図6参照)を粒径によってふるい分ける工程である。具体的には、解砕粉15が、分級機53により、造粒粉14と、造粒化されておらず造粒粉14よりも粒径が小さく、かつ、様々な粒径を有する非造粒粉16とに分級される。
【0037】
(第2スラリー形成工程)
図1に示すように、ステップS8において、第2スラリー形成工程が行われる。図9に示すように、第2スラリー形成工程(S8)は、造粒粉14(図8参照)を含む解砕粉15と熱硬化性樹脂12と溶媒13とを混合して第2スラリー22を形成する工程である。第2スラリー22には、解砕粉15、熱硬化性樹脂12および溶媒13以外の材料(たとえば、成形助剤)が混合されてもよい。第2スラリー形成工程(S8)における熱硬化性樹脂12は、第1スラリー形成工程(S1)における熱硬化性樹脂12と同一種類の熱硬化性樹脂であってもよいし、第1スラリー形成工程(S1)における熱硬化性樹脂12と異なる種類の熱硬化性樹脂であってもよい。第2スラリー形成工程(S8)における溶媒13は、第1スラリー形成工程(S1)における溶媒13と同一種類の溶媒であってもよいし、第1スラリー形成工程(S1)における溶媒13と異なる種類の溶媒であってもよい。なお、第2スラリー22は、特許請求の範囲の「第2混合物」の一例である。
【0038】
(第2配向工程)
図1に示すように、ステップS9において、第2配向工程が行われる。図10に示すように、第2配向工程(S9)は、磁性粉末11(図2参照)を含む第2スラリー22に対して磁性粉末11を配向するための磁場Bを印加して、磁性粉末11を配向する工程である。具体的には、第2スラリー22が、圧縮成形用の金型30に形成されたキャビティ31aに充填される。そして、キャビティ31aを塞ぐようにキャビティ31aの上方に金型30の上パンチ32が配置される。そして、第2スラリー22が金型30と上パンチ32とにより密閉された状態で、第2スラリー22に対して磁性粉末11を配向するための静磁場B1およびパルス磁場B2が印加される。静磁場B1は、継続的に印加される。また、パルス磁場B2は、瞬間的に印加される。パルス磁場B2が印加される回数は、1回でもよいし複数回でもよい。
【0039】
(第2圧縮成形工程)
図1に示すように、ステップS10において、第2圧縮成形工程が行われる。図11に示すように、第2圧縮成形工程(S10)は、造粒粉14(図8参照)と熱硬化性樹脂12(図9参照)とを含む第2スラリー22対して磁性粉末11(図2参照)を配向するための磁場Bを印加しながら、第2スラリー22を圧縮成形して第2成形体42を形成する工程である。具体的には、第2スラリー22が金型30と上パンチ32とにより密閉された状態で、かつ、第2スラリー22に対して磁性粉末11を配向するための磁場B(静磁場B1およびパルス磁場B2)が印加された状態で、上パンチ32が第2スラリー22を加圧しながらキャビティ31aに向かって下降する。上パンチ32が所定の高さまで下降すると、第2スラリー22に含まれる磁性粉末11が配向されるとともに、第2スラリー22が圧縮成形された第2成形体42が形成される。上述したように、第2スラリー22は、溶媒13(図9参照)を含む。すなわち、第2圧縮成形工程(S10)は、湿式圧縮成形を行う工程である。なお、第2圧縮成形工程(S10)は、特許請求の範囲の「第2成形体形成工程」の一例である。
【0040】
上述したように、第2スラリー22は、解砕粉15(図9参照)を含み、解砕粉15は、造粒粉14(図7参照)と、非造粒粉16(図7参照)と、を含む。すなわち、第2圧縮成形工程(S10)は、造粒粉14と、分級工程(S7)において生じた非造粒粉16と、熱硬化性樹脂12とを含む第2スラリー22に対して磁性粉末11を配向するための磁場Bを印加しながら、第2スラリー22を圧縮成形して第2成形体42を形成する工程である。
【0041】
第2圧縮成形工程(S10)において第2スラリー22に混合される解砕粉15のうちの非造粒粉16(図7参照)の量は、第2圧縮成形工程(S10)において第2スラリー22(図10参照)に混合される解砕粉15(図9参照)のうち造粒粉14(図7参照)の粒径に応じた量に調整される。具体的には、第2圧縮成形工程(S10)において第2スラリー22に混合される解砕粉15のうち造粒粉14の粒径が3mm以下となるように第1成形体41が解砕され、第2圧縮成形工程(S10)において第2スラリー22に混合される解砕粉15のうちの非造粒粉16の量は、解砕粉15における割合が50%以下となるように調整される。好ましくは、第2圧縮成形工程(S10)において第2スラリー22に混合される解砕粉15のうち造粒粉14の粒径が2mm以下となるよう第1成形体41が解砕され、第2圧縮成形工程(S10)において第2スラリー22に混合される解砕粉15のうちの非造粒粉16の量は、解砕粉15における割合が20%以下となるように調整される。
【0042】
(第2脱磁工程)
図1に示すように、ステップS11において、第2脱磁工程が行われる。第2脱磁工程(S4)は、磁性粉末11(図2参照)を含む第2成形体42に対して、互いに逆方向の磁場Bを交互にかつ徐々に小さくしながら印加して、第2成形体42に含まれる磁性粉末11を脱磁する工程である。
【0043】
(第2熱硬化工程)
図1に示すように、ステップS12において、第2熱硬化工程が行われる。図12に示すように、第2熱硬化工程(S12)は、第2成形体42に対して熱硬化性樹脂12(図9参照)を熱硬化させるための加熱を行う工程である。第2熱硬化工程(S12)において第2成形体42に対して熱硬化性樹脂12を熱硬化させるための加熱は、約120℃以上の温度で、かつ、30分以上の時間で行われる。すなわち、第1熱硬化工程(S5)において第1成形体41に対して熱硬化性樹脂12を熱硬化させるための加熱を行う温度および時間は、それぞれ、第2熱硬化工程(S12)において第2成形体42に対して熱硬化性樹脂12を熱硬化させるための加熱を行う温度および時間と同じである。
【0044】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0045】
本実施形態では、上記のように、第1成形体41を解砕して磁性粉末11の複数の粒子11aを含む粒状に造粒化された造粒粉14を形成する解砕工程(S6)の後に、造粒粉14と熱硬化性樹脂12(樹脂バインダー)とを含む第2スラリー22(第2混合物)に対して磁性粉末11を配向するための磁場Bを印加しながら、第2スラリー22を圧縮成形して第2成形体42を形成する第2圧縮成形工程(S10)(第2成形体形成工程)が行われる。これにより、磁性粉末11を配向するための磁場Bが印加されながら圧縮成形される第2スラリー22に含まれる造粒粉14は、磁性粉末11の複数の粒子11aを含む粒状に造粒化されていることによって、磁性粉末11の各々の粒子11aと比較して粒径が大きいので、磁性粉末11の各々の粒子11aと比較して、比表面積が小さいとともに、磁場Bが印加されることによる回転トルクが大きい。そして、造粒粉14を含む第2スラリー22を圧縮成形する際の圧縮力は、造粒粉14同士の間を伝播するので、造粒粉14の比表面積が比較的小さいことによって、造粒粉14を含む第2スラリー22を圧縮成形する際に、造粒粉14同士の間の接触面積が比較的小さくなる。したがって、造粒粉14を含む第2スラリー22を圧縮成形する際に、造粒粉14同士の間に生じる摩擦損失が比較的小さくなり、摩擦損失が小さくなる分、造粒粉14同士の間で圧縮力が伝達されやすい。この場合、圧縮成形後の第2成形体42の密度が高くなりやすい。また、造粒粉14の磁場Bが印加されることによる回転トルクが比較的大きいことによって、造粒粉14を含む第2スラリー22に対して磁性粉末11を配向するための磁場Bを印加した際に、磁性粉末11が配向されやすい。この場合、圧縮成形後の第2成形体42中の磁性粉末11の配向度(配向度合い)が高くなりやすい。これらの結果、成形体の密度および成形体中の磁性粉末11の配向度を向上させることができる。これにより、ボンド磁石の磁気特性を向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態では、上記のように、第2圧縮成形工程(S10)(第2成形体形成工程)は、造粒粉14と、造粒化されておらず造粒粉14よりも粒径が小さい非造粒粉16と、熱硬化性樹脂12(樹脂バインダー)とを含む第2スラリー22(第2混合物)に対して磁性粉末11を配向するための磁場Bを印加しながら、第2スラリー22を圧縮成形して第2成形体42を形成する工程である。これにより、第2圧縮成形工程(S10)において、造粒粉14同士の隙間を、造粒化されておらず造粒粉14よりも粒径が小さい非造粒粉16が埋めた状態で、第2スラリー22を圧縮成形することができる。その結果、造粒化されておらず造粒粉14よりも粒径が小さい非造粒粉16が第2スラリー22に含まれない場合と比較して、第2成形体42の密度をより向上させることができる。これにより、ボンド磁石の磁気特性をより向上させることができる。
【0047】
また、本実施形態では、上記のように、解砕工程(S6)の後に、かつ、第2圧縮成形工程(S10)(第2成形体形成工程)の前に、解砕工程(S6)において第1成形体41を解砕した解砕粉15を粒径によってふるい分ける分級工程(S7)が行われる。そして、第2圧縮成形工程(S10)は、造粒粉14と、分級工程(S7)において生じた非造粒粉16と、熱硬化性樹脂12(樹脂バインダー)とを含む第2スラリー22(第2混合物)に対して磁性粉末11を配向するための磁場Bを印加しながら、第2スラリー22を圧縮成形して第2成形体42を形成する工程である。これにより、分級工程(S7)によって、解砕工程(S6)において第1成形体41を解砕した解砕粉15の中から、第2圧縮成形工程(S10)において用いる造粒粉14として所望の粒径の解砕粉15を容易にふるい分けることができる。また、分級工程(S7)において生じた非造粒粉16を、第2圧縮成形工程(S10)において第2スラリー22に含ませる非造粒粉16として利用することができるので、磁性粉末11の歩留まりを効果的に削減することができる。
【0048】
また、本実施形態では、上記のように、第1圧縮成形工程(S3)(第1成形体形成工程)は、樹脂バインダーとしての熱硬化性樹脂12を含む第1スラリー21(第1混合物)を圧縮成形して第1成形体41を形成する工程である。また、第2圧縮成形工程(S10)(第2成形体形成工程)は、樹脂バインダーとしての熱硬化性樹脂12を含む第2スラリー22(第2混合物)を圧縮成形して第2成形体42を形成する工程である。そして、第1圧縮成形工程(S3)の後に、かつ、解砕工程(S6)の前に、第1成形体41に対して熱硬化性樹脂12を熱硬化させるための加熱を行う第1熱硬化工程(S5)が行われる。また、第2圧縮成形工程(S10)の後に、第2成形体42に対して熱硬化性樹脂12を熱硬化させるための加熱を行う第2熱硬化工程(S12)が行われる。これにより、第1熱硬化工程(S5)において、第1成形体41に含まれる熱硬化性樹脂12が熱硬化されることによって、第1成形体41に含まれる磁性粉末11の複数の粒子11a同士が結合した状態が維持されやすくなるので、解砕工程(S6)において第1成形体41を解砕した際に、造粒粉14が形成されず、解砕粉15の全てが非造粒粉16となってしまうのを抑制することができる。また、第2圧縮成形工程(S10)の後に、第2成形体42に含まれる熱硬化性樹脂12が熱硬化されることによって、第2成形体42に含まれる造粒粉14同士が結合した状態が維持されやすくなるので、ボンド磁石として適切な機械的強度を有する成形体を容易に形成することができる。
【0049】
また、本実施形態では、上記のように、第1圧縮成形工程(S3)(第1成形体形成工程)において第1スラリー21(第1混合物)に含まれる熱硬化性樹脂12の量は、第2圧縮成形工程(S10)(第2成形体形成工程)において第2スラリー22(第2混合物)に含まれる熱硬化性樹脂12の量よりも少ない。これにより、第1熱硬化工程(S5)において熱硬化される熱硬化性樹脂12の量を比較的少なくすることができる。これにより、第1成形体41中において、磁性粉末11の複数の粒子11a同士の間を埋める熱硬化性樹脂12の量が比較的少なくなるので、第1成形体41に含まれる磁性粉末11の複数の粒子11a同士が結合した状態が過度に維持されやすくなるのを容易に抑制することができる。その結果、解砕工程(S6)において第1成形体41が解砕されにくくなり造粒粉14が十分に形成されなくなるのを容易に抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態では、上記のように、第1圧縮成形工程(S3)(第1成形体形成工程)において第1スラリー21(第1混合物)を圧縮成形する圧力は、第2圧縮成形工程(S10)(第2成形体形成工程)において第2スラリー22(第2混合物)を圧縮成形する圧力よりも小さい。これにより、第1成形体41に含まれる磁性粉末11の複数の粒子11a同士が結合した状態が過度に維持されやすくなるのを容易に抑制することができる。その結果、解砕工程(S6)において第1成形体41が解砕されにくくなり造粒粉14が十分に形成されなくなるのを容易に抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態では、上記のように、第1熱硬化工程(S5)において第1成形体41に対して熱硬化性樹脂12を熱硬化させるための加熱を行う温度は、第2熱硬化工程(S12)において第2成形体42に対して熱硬化性樹脂12を熱硬化させるための加熱を行う温度と同じである。これにより、第1熱硬化工程(S5)において熱硬化性樹脂12を熱硬化させる温度を比較的低くすることができる。これにより、第1成形体41に含まれる熱硬化性樹脂12が過度に硬化するのを容易に抑制することができるので、第1成形体41に含まれる磁性粉末11の複数の粒子11a同士が結合した状態が過度に維持されやすくなるのを容易に抑制することができる。その結果、解砕工程(S6)において第1成形体41が解砕されにくくなり造粒粉14が十分に形成されなくなるのを容易に抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態では、上記のように、第1熱硬化工程(S5)において第1成形体41に対して熱硬化性樹脂12を熱硬化させるための加熱を行う時間は、第2熱硬化工程(S12)において第2成形体42に対して熱硬化性樹脂12を熱硬化させるための加熱を行う時間と同じである。これにより、第1熱硬化工程(S5)において熱硬化性樹脂12を熱硬化させる時間を比較的短くすることができる。これにより、第1成形体41に含まれる熱硬化性樹脂12が過度に硬化するのを容易に抑制することができるので、第1成形体41に含まれる磁性粉末11の複数の粒子11a同士が結合した状態が過度に維持されやすくなるのを容易に抑制することができる。その結果、解砕工程(S6)において第1成形体41が解砕されにくくなり造粒粉14が十分に形成されなくなるのを容易に抑制することができる。
【0053】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0054】
たとえば、上記実施形態では、第1熱硬化工程(S5)において第1成形体41に対して熱硬化性樹脂12を熱硬化させるための加熱を行う温度および時間が、それぞれ、第2熱硬化工程(S12)において第2成形体42に対して熱硬化性樹脂12を熱硬化させるための加熱を行う温度および時間と同じである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1熱硬化工程において第1成形体に対して熱硬化性樹脂を熱硬化させるための加熱を行う時間は、第2熱硬化工程において第2成形体に対して熱硬化性樹脂を熱硬化させるための加熱を行う時間よりも短くてもよい。これにより、第1熱硬化工程において熱硬化性樹脂を熱硬化させる時間を比較的短くすることができる。また、第1熱硬化工程において第1成形体に対して熱硬化性樹脂を熱硬化させるための加熱を行う温度は、第2熱硬化工程において第2成形体に対して熱硬化性樹脂を熱硬化させるための加熱を行う温度よりも低くてもよい。これにより、第1熱硬化工程において熱硬化性樹脂を熱硬化させる温度を比較的低くすることができる。これらにより第1成形体に含まれる熱硬化性樹脂が過度に硬化するのを容易に抑制することができるので、第1成形体に含まれる磁性粉末の複数の粒子同士が結合した状態が過度に維持されやすくなるのを容易に抑制することができる。これらの結果、解砕工程において第1成形体が解砕されにくくなり造粒粉が十分に形成されなくなるのを容易に抑制することができる。
【0055】
また、上記実施形態では、第1圧縮成形工程(S3)(第1成形体形成工程)において第1スラリー21(第1混合物)を圧縮成形する圧力が、第2圧縮成形工程(S10)(第2成形体形成工程)において第2スラリー22(第2混合物)を圧縮成形する圧力よりも小さい例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1成形体形成工程において第1混合物を圧縮成形する圧力が、第2成形体形成工程において第2混合物を圧縮成形する圧力と同じでもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、第1圧縮成形工程(S3)(第1成形体形成工程)において第1スラリー21(第1混合物)に含まれる熱硬化性樹脂12の量が、第2圧縮成形工程(S10)(第2成形体形成工程)において第2スラリー22(第2混合物)に含まれる熱硬化性樹脂12の量よりも少ない例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1成形体形成工程において第1混合物に含まれる熱硬化性樹脂の量が、第2成形体形成工程において第2混合物に含まれる熱硬化性樹脂の量と同じであってもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、第1圧縮成形工程(S3)(第1成形体形成工程)が、樹脂バインダーとしての熱硬化性樹脂12を含む第1スラリー21(第1混合物)を圧縮成形して第1成形体41を形成する工程であり、第1圧縮成形工程(S3)の後に、かつ、解砕工程(S6)の前に、第1成形体41に対して熱硬化性樹脂12を熱硬化させるための加熱を行う第1熱硬化工程(S5)が行われる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1成形体形成工程の後に、かつ、解砕工程の前に、第1成形体に対して熱硬化性樹脂を熱硬化させるための加熱を行う第1熱硬化工程が行われなくてもよい。その場合、第1成形体形成工程が、樹脂バインダーとしての熱硬化性樹脂を含まない(熱硬化性樹脂以外の樹脂バインダーを含む)第1混合物を圧縮成形して第1成形体を形成する工程であってもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、第2圧縮成形工程(S10)(第2成形体形成工程)が、樹脂バインダーとしての熱硬化性樹脂12を含む第2スラリー22(第2混合物)を圧縮成形して第2成形体42を形成する工程であり、第2圧縮成形工程(S10)の後に、第2成形体42に対して熱硬化性樹脂12を熱硬化させるための加熱を行う第2熱硬化工程(S12)が行われる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2成形体形成工程の後に、第2成形体に対して熱硬化性樹脂を熱硬化させるための加熱を行う第2熱硬化工程が行われなくてもよい。その場合、第2成形体形成工程が、樹脂バインダーとしての熱硬化性樹脂を含まない第2混合物を圧縮成形して第2成形体を形成する工程であってもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、第2圧縮成形工程(S10)(第2成形体形成工程)が、造粒粉14と、分級工程(S7)において生じた非造粒粉16と、熱硬化性樹脂12(樹脂バインダー)とを含む第2スラリー22(第2混合物)に対して磁性粉末11を配向するための磁場Bを印加しながら、第2スラリー22を圧縮成形して第2成形体42を形成する工程である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2成形体形成工程が、造粒粉と、分級工程において生じた非造粒粉以外の非造粒粉と、樹脂バインダーとを含む第2混合物に対して磁性粉末を配向するための磁場を印加しながら、第2混合物を圧縮成形して第2成形体を形成する工程であってもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、解砕工程(S6)の後に、かつ、第2圧縮成形工程(S10)(第2成形体形成工程)の前に、解砕工程(S6)において第1成形体41を解砕した解砕粉15を粒径によってふるい分ける分級工程(S7)が行われる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、解砕工程の後に、かつ、第2成形体形成工程の前に、解砕工程において第1成形体を解砕した解砕粉を粒径によってふるい分ける分級工程が行われなくてもよい。たとえば、解砕工程において解砕された解砕粉が、第2成形体形成工程において第2混合物に混合させる解砕粉として粒径の分布が好適な状態(解砕工程において解砕された解砕粉を、第2成形体形成工程において第2混合物に混合させる解砕粉としてそのまま用いることができる状態)であれば、第2混合物に混合させる解砕粉の粒径を調整する必要がないので、分級工程が行われなくてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、第2圧縮成形工程(S10)(第2成形体形成工程)が、造粒粉14と、造粒化されておらず造粒粉14よりも粒径が小さい非造粒粉16と、熱硬化性樹脂12(樹脂バインダー)とを含む第2スラリー22(第2混合物)に対して磁性粉末11を配向するための磁場Bを印加しながら、第2スラリー22を圧縮成形して第2成形体42を形成する工程である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2成形体形成工程が、造粒粉と樹脂バインダーとを含むとともに、造粒化されておらず造粒粉よりも粒径が小さい非造粒粉を含まない第2混合物に対して磁性粉末を配向するための磁場を印加しながら、第2混合物を圧縮成形して第2成形体を形成する工程であってもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、第1圧縮成形工程(S3)の後で、かつ、第1熱硬化工程(S5)の前に、第1成形体41に含まれる磁性粉末11を脱磁する第1脱磁工程(S4)が行われる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1熱硬化工程の後に、かつ、解砕工程の前に、第1成形体に含まれる磁性粉末を脱磁する第1脱磁工程が行われてもよいし、圧縮成形体に含まれる磁性粉末を脱磁する第1脱磁工程が行われなくてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、磁性粉末11を配向するための磁場Bとして、静磁場B1およびパルス磁場B2が印加される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、磁性粉末を配向するための磁場として、静磁場のみが印加されてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、第1圧縮成形工程(S3)(第1成形体形成工程)および第2圧縮成形工程(S10)(第2成形体形成工程)が、湿式圧縮成形を行う工程である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1成形体形成工程および第2成形体形成工程が、乾式圧縮成形を行う工程であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
磁性粉末…11、(磁性粉末の複数の)粒子…11a、熱硬化性樹脂(樹脂バインダー)…12、造粒粉…14、解砕粉…15、非造粒粉…16、第1スラリー(第1混合物)…21、第2スラリー(第2混合物)…22、第1成形体…41、第2成形体…42、磁場…B
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12