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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178053
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/38 20200101AFI20241217BHJP
   D06F 33/58 20200101ALI20241217BHJP
【FI】
D06F33/38
D06F33/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096553
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】川口 智也
(72)【発明者】
【氏名】田中 正昭
【テーマコード(参考)】
3B167
【Fターム(参考)】
3B167AA15
3B167AE02
3B167AE05
3B167AE07
3B167BA53
3B167BA82
3B167HA36
3B167HA53
3B167HA54
3B167JA11
3B167KA13
3B167KA18
3B167KA63
3B167KA65
3B167KA71
3B167KB16
3B167LA05
3B167LA23
3B167LE04
3B167LE05
3B167LF15
3B167LF28
3B167LG08
(57)【要約】
【課題】洗濯物のすすぎ具合を精度良く判定でき、洗濯物をきれいにすすがれた状態に仕上げられ得る洗濯機を提供する。
【解決手段】全自動洗濯機1は、洗剤を含む水を用いて洗濯物を洗う洗い工程と、水を用いて洗濯物をすすぐすすぎ工程と、洗濯脱水槽の回転により遠心力を発生させて洗濯物を脱水する脱水工程とを含む洗濯運転を実行する制御部301と、外槽内の底部に溜まった水の導電率を測定するための導電率センサ60を、を備える。制御部301は、すすぎ工程に続く脱水工程において、洗濯物から絞り出されて外槽内に溜まった脱液の導電率を導電率センサ60により測定する脱液導電率測定工程を実行し、脱液の導電率に基づいてすすぎ工程の回数を調整する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に配置され、水が溜められる外槽と、
前記外槽内に配置された内槽と駆動モータとを含み、前記内槽内に収容された洗濯物に前記駆動モータが発生するトルクに基づく機械力を加える洗濯ユニットと、
前記洗濯ユニットの動作を制御して、洗剤を含む水を用いて洗濯物を洗う洗い工程と、水を用いて洗濯物をすすぐすすぎ工程と、前記内槽の回転により遠心力を発生させて洗濯物を脱水する脱水工程とを含む洗濯運転を実行する制御部と、
前記外槽内の底部に溜まった水の導電率を測定するための導電率センサと、を備え、
前記制御部は、
前記すすぎ工程に続く前記脱水工程において、洗濯物から絞り出されて前記外槽内に溜まった脱液の導電率を前記導電率センサにより測定する脱液導電率測定工程を実行し、
前記脱液の導電率に基づいて前記すすぎ工程の回数を調整する、
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
請求項1に記載の洗濯機において、
水道栓に繋がる給水バルブを含み、前記外槽内に水道水を供給する給水装置を、さらに備え、
前記制御部は、
前記給水装置を動作させて前記外槽内に水道水を溜め、当該水道水の導電率を前記導電率センサにより測定する水導電率測定工程を実行し、
前記水道水の導電率を基準導電率に決定し、
前記脱液の導電率を、前記基準導電率が大きいほど小さくなるように補正し、
補正後の前記脱液の導電率に基づいて前記すすぎ工程の回数を調整する、
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項3】
請求項2に記載の洗濯機において、
液体の洗剤が貯められる洗剤タンクを含み、当該洗剤タンク内の洗剤を前記外槽内に自動投入する洗剤投入装置を、さらに備え、
前記制御部は、
前記洗い工程での給水時に、前記洗剤投入装置および前記給水装置を動作させて前記外槽内に洗剤を含む水を溜め、
前記洗剤投入装置により前記外槽内に洗剤が投入される前に前記水導電率測定工程を実行する、
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項4】
請求項2または3に記載の洗濯機において、
記憶部を、さらに備え、
前記制御部は、
前記基準導電率を前記記憶部に記憶し、
前記水導電率測定工程で測定された前記水道水の導電率が、前記記憶部に記憶されている前記基準導電率よりも小さい場合に、当該水道水の導電率を新たな前記基準導電率に決定する、
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項5】
請求項2に記載の洗濯機において、
前記制御部は、
前記洗い工程の前に1回目の前記水導電率測定工程を実行し、
1回目の前記すすぎ工程に続く前記脱水工程の後に2回目の前記水導電率測定工程を実行し、
1回目および2回目の前記水導電率測定工程で測定された2つの前記水道水の導電率のうち小さい導電率を前記基準導電率に決定し、
2回目の前記すすぎ工程に続く前記脱水工程において前記脱液導電率測定工程を実行する、
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項6】
請求項2に記載の洗濯機において、
前記導電率センサは、前記外槽の底面部の内面から上方に突き出すように配置された一対の電極を含み、
前記制御部は、
前記水導電率測定工程において、前記導電率センサにより測定された導電率の変化率を監視し、当該変化率が規定値以下となった後の導電率を、前記水道水の導電率に決定し、
前記脱液導電率測定工程において、前記導電率センサにより測定された導電率の変化率を監視し、当該変化率が前記規定値以下となった後の導電率を、前記脱液の導電率に決定する、
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項7】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記洗濯運転は、少なくとも2回の前記すすぎ工程と、1回目の前記すすぎ工程に続く前記中間脱水工程と、2回目の前記すすぎ工程に続き、前記中間脱水工程よりも前記内槽が高い脱水回転数で長い脱水時間回転する最終脱水工程とを含み、
前記制御部は、
前記最終脱水工程において前記脱液導電率測定工程を実行し、
前記脱液の導電率に基づいて前記すすぎ工程を追加する場合に、実行中の前記最終脱水工程において、前記脱水回転数を低くなるように変更し、および/または、前記脱水時間を短くなるように変更し、
追加された前記すすぎ工程の後に前記最終脱水工程を実行する、
ことを特徴とする洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外槽内に溜められたすすぎ用の水(以下、「すすぎ水」と称する)の導電率を検知することにより洗濯物のすすぎ具合を確認し、すすぎ不足になりにくいように、すすぎ工程の回数などを調整するようにした洗濯機が知られている。このような洗濯機の一例が、以下の特許文献1に示されている。
【0003】
特許文献1の洗濯機では、すすぎ工程において、水受け槽(外槽)内に所定量のすすぎ水が給水される。洗濯兼脱水槽が回転するとともに、水受け槽内のすすぎ水が、ポンプにより循環水路を通って洗濯兼脱水槽の上部まで送られ、水供給ノズルから洗濯兼脱水槽内の内部に散水される。循環水路の途中で導電率検知手段によりすすぎ水の導電率が検知され、導電率が所定値より大きい場合、繰り返し回数が所定回数に達していなければ、中間脱水工程を経てすすぎ工程が繰り返される。繰り返し回数が所定回数に達していれば、溜めすすぎのすすぎ工程が行われる。溜めすすぎでは、洗濯兼脱水槽、即ち水受け槽内に所定水位まで給水され、洗濯兼脱水槽内に配置された攪拌翼が回転して洗濯物が攪拌される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-308485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の洗濯機のように、外槽内に溜められたすすぎ水の導電率が検知される構成では、洗濯物を良好にすすぐことができず、すすぎ水の中に洗濯物から円滑に洗剤が排出されないような状況が生じた場合に、検知されたすすぎ水の導電率が小さくなるため、洗濯物に多くの洗剤が残っているにも関わらず洗濯物が十分にすすがれていると判定されて、すすぎ不足の状態で洗濯運転が終了してしまう、ということが懸念される。
【0006】
なお、上記特許文献1の洗濯機では、たとえば、洗濯兼脱水槽内での洗濯物の配置状況によって散布された水の洗濯物への掛かり具合が悪くなった場合に、洗濯物からすすぎ水の中に円滑に洗剤が排出されにくくなることが考えられる。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、洗濯物のすすぎ具合を精度良く判定でき、洗濯物をきれいにすすがれた状態に仕上げられ得る洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主たる態様に係る洗濯機は、筐体内に配置され、水が溜められる外槽と、前記外槽内に配置された内槽と駆動モータとを含み、前記内槽内に収容された洗濯物に前記駆動モータが発生するトルクに基づく機械力を加える洗濯ユニットと、前記洗濯ユニットの動作を制御して、洗剤を含む水を用いて洗濯物を洗う洗い工程と、水を用いて洗濯物をすすぐすすぎ工程と、前記内槽の回転により遠心力を発生させて洗濯物を脱水する脱水工程とを含む洗濯運転を実行する制御部と、前記外槽内の底部に溜まった水の導電率を測定するための導電率センサと、を備える。ここで、前記制御部は、前記すすぎ工程に続く前記脱水工程において、洗濯物から絞り出されて前記外槽内に溜まった脱液の導電率を前記導電率センサにより測定する脱液導電率測定工程を実行し、前記脱液の導電率に基づいて前記すすぎ工程の回数を調整する。
【0009】
たとえば、2回目のすすぎ工程に続く脱水工程において脱液の導電率が測定される場合、制御部は、すすぎ工程の回数を調整する方法として、脱液の導電率に基づいてすすぎが不十分であると判定すると、当該脱水工程の後にすすぎ工程を追加し、脱液の導電率に基づいてすすぎが十分であると判定すると、当該脱水工程の後にすすぎ工程を追加しないようにすることができる。
【0010】
あるいは、1回目のすすぎ工程に続く脱水工程において脱液の導電率が測定される場合、制御部は、すすぎ工程の回数を調整する方法として、脱液の導電率に基づいて、残り1回のすすぎ工程ではすすぎが不十分になり得ると判定すると、当該脱水工程の後にすすぎ工程を2回行い、脱液の導電率に基づいて、残り1回のすすぎ工程ですすぎが十分になり得ると判定すると、当該脱水工程の後にすすぎ工程を1回行うようにすることができる。
【0011】
本態様に係る洗濯機によれば、洗濯物から出た洗剤を含み得る水の導電率が直接的に測定されるので、外槽内に溜められたすすぎ用の水の導電率が測定される場合と違って、洗濯物に残る洗剤の量の多少が、測定された導電率の大小に確実に反映される。これにより、洗濯物のすすぎ具合を精度良く判定して、すすぎが不十分である場合にすすぎ工程を増やすことができ、洗濯物をきれいにすすがれた状態に仕上げることができる。
【0012】
本態様に係る洗濯機において、水道栓に繋がる給水バルブを含み、前記外槽内に水道水を供給する給水装置を、さらに備えるような構成が採られ得る。この場合、前記制御部は、前記給水装置を動作させて前記外槽内に水道水を溜め、当該水道水の導電率を前記導電率センサにより測定する水導電率測定工程を実行し、前記水道水の導電率を基準導電率に決定し、前記脱液の導電率を、前記基準導電率が大きいほど小さくなるように補正し、補正後の前記脱液の導電率に基づいて前記すすぎ工程の回数を調整するような構成とされ得る。
【0013】
上記の構成によれば、脱液の導電率が基準導電率を用いて補正されることにより、水道水の性質の違いによる影響を除くことができるので、洗濯物に残る洗剤の量の多少を精度良く判定することが可能になる。
【0014】
上記のように、脱液の導電率が基準導電率を用いて補正されるような構成が採られた場合、液体の洗剤が貯められる洗剤タンクを含み、当該洗剤タンク内の洗剤を前記外槽内に自動投入する洗剤投入装置を、さらに備えるような構成が採られ得る。この場合、前記制御部は、前記洗い工程での給水時に、前記洗剤投入装置および前記給水装置を動作させて前記外槽内に洗剤を含む水を溜め、前記洗剤投入装置により前記外槽内に洗剤が投入される前に前記水導電率測定工程を実行するような構成とされ得る。
【0015】
上記の構成によれば、水導電率測定工程で測定される水道水に洗剤投入装置が投入する洗剤が混入してしまうことを防止でき、洗剤濃度が高い水道水の導電率が基準導電率に設定されてしまうことを防止できる。
【0016】
上記のように、脱液の導電率が基準導電率を用いて補正されるような構成が採られた場合、記憶部を、さらに備えるような構成が採られ得る。この場合、前記制御部は、前記基準導電率を前記記憶部に記憶し、前記水導電率測定工程で測定された前記水道水の導電率が、前記記憶部に記憶されている前記基準導電率よりも小さい場合に、当該水道水の導電率を新たな前記基準導電率に決定するような構成とされ得る。
【0017】
上記の構成によれば、これまでの水導電率測定工程で測定された水導水の導電率の中で最も小さな導電率が基準導電率に設定されるので、外槽内に溜められた水道水が洗濯物の汚れや洗剤の影響を受け得る状況にあっても、洗濯運転が重ねられることにより、本来の値に近い水導水の導電率が基準導電率として設定される。よって、洗濯物に残る洗剤の量の多少を、一層、精度良く判定することが可能になる。
【0018】
上記のように、脱液の導電率が基準導電率を用いて補正されるような構成が採られた場合、前記制御部は、前記洗い工程の前に1回目の前記水導電率測定工程を実行し、1回目の前記すすぎ工程に続く前記脱水工程の後に2回目の前記水導電率測定工程を実行し、1回目および2回目の前記水導電率測定工程で測定された2つの前記水道水の導電率のうち小さい導電率を前記基準導電率に決定し、2回目の前記すすぎ工程に続く前記脱水工程において前記脱液導電率測定工程を実行するような構成とされ得る。
【0019】
上記の構成によれば、1回目および2回目の水導電率測定工程で測定された2つの水導水の導電率のうち、洗濯物の汚れや洗剤の影響が少なく本来の値に近い水導水の導電率を基準導電率に設定できる。よって、洗濯物に残る洗剤の量の多少を、一層、精度良く判定することが可能になる。
【0020】
上記のように、脱液の導電率が基準導電率を用いて補正されるような構成が採られた場合、前記導電率センサは、前記外槽の底面部の内面から上方に突き出すように配置された一対の電極を含むような構成とされ得る。この場合、前記制御部は、前記水導電率測定工程において、前記導電率センサにより測定された導電率の変化率を監視し、当該変化率が規定値以下となった後の導電率を、前記水道水の導電率に決定し、前記脱液導電率測定工程において、前記導電率センサにより測定された導電率の変化率を監視し、当該変化率が前記規定値以下となった後の導電率を、前記脱液の導電率に決定するような構成とされ得る。
【0021】
上記の構成によれば、一対の電極が完全に水没した状態で測定された導電率が、水道水の導電率および脱液の導電率に決定されるので、水道水自体の導電率および脱液自体の導電率を正確に測定できる。
【0022】
本態様に係る洗濯機において、前記洗濯運転は、少なくとも2回の前記すすぎ工程と、1回目の前記すすぎ工程に続く前記中間脱水工程と、2回目の前記すすぎ工程に続き、前記中間脱水工程よりも前記内槽が高い脱水回転数で長い脱水時間回転する最終脱水工程とを含み得る。この場合、前記制御部は、前記最終脱水工程において前記脱液導電率測定工程を実行し、前記脱液の導電率に基づいて前記すすぎ工程を追加する場合に、実行中の前記最終脱水工程において、前記脱水回転数を低くなるように変更し、および/または、前記脱水時間を短くなるように変更し、追加された前記すすぎ工程の後に前記最終脱水工程を実行するような構成とされ得る。
【0023】
上記の構成によれば、追加されるすすぎ工程の前の最終脱水工程に要する時間を短縮でき、すすぎ工程と最終脱水工程とが追加されたことによる洗濯運転の時間の増加を抑制できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、洗濯物のすすぎ具合を精度良く判定でき、洗濯物をきれいにすすがれた状態に仕上げられ得る洗濯機を提供できる。
【0025】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明によりさらに明らかとなろう。ただし、以下の実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実施の形態に係る、全自動洗濯機の側面断面図である。
図2図2は、実施の形態に係る、給水装置の構成を模式的に示す図である。
図3図3(a)は、実施の形態に係る、外槽の平面断面図である。図3(b)は、実施の形態に係る、図3(a)のA-A´線の位置で切断された、外槽における導電率センサの周辺の側面断面図である。
図4図4は、実施の形態に係る、全自動洗濯機の構成を示すブロック図である。
図5図5は、実施の形態に係る、洗濯運転での制御部による制御処理を示すフローチャートである。
図6図6は、実施の形態に係る、洗濯運転に含まれる水導電率測定工程での制御部による制御処理を示すフローチャートである。
図7図7は、実施の形態に係る、洗濯運転に含まれる脱液導電率測定工程での制御部による制御処理を示すフローチャートである。
図8図8は、変更例1に係る、洗濯運転での制御部による制御処理を示すフローチャートである。
図9図9は、変更例1に係る、洗濯運転に含まれるすすぎ追加判定工程での制御部による制御処理を示すフローチャートである。
図10図10は、変更例2に係る、洗濯運転での制御部による制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の洗濯機の一実施形態である全自動洗濯機1について、図面を参照して説明する。
【0028】
図1は、全自動洗濯機1の側面断面図である。
【0029】
全自動洗濯機1は、外郭を構成する筐体10を備える。筐体10は、上下の面が開放された方形筒状の胴体部11と、胴体部11の上面を覆う上面板12と、胴体部11を支持する脚台13とを含む。上面板12には、洗濯物の投入口14が形成される。投入口14は、開閉自在な上蓋15により覆われる。上面板12の前部には、内部に制御ユニット16が配置される。制御ユニット16は、全自動洗濯機1による洗濯運転を制御する。
【0030】
筐体10内には、上面が開口する外槽20が配置される。外槽20は、防振装置を有する4本の吊棒21により弾性的に吊り下げ支持される。外槽20は、ほぼ円筒状の周面部201と、ほぼ円盤状の底面部202とを有する。
【0031】
外槽20内には、洗濯脱水槽22が配置される。洗濯脱水槽22は、有底の円筒状を有し、上方に開口し、鉛直方向に延びる回転軸を中心に回転する。洗濯脱水槽22の内周面には、全周に亘って多数の脱水孔22aが形成される。また、洗濯脱水槽22の内底面には、多数の排出孔22bが形成される。
【0032】
洗濯脱水槽22の上部には、バランスリング23が設けられる。また、洗濯脱水槽22の底部には、パルセータ24が配置される。パルセータ24の表面には、放射状に複数の羽根24aが設けられる。洗濯脱水槽22は、本発明の「内槽」に相当する。
【0033】
外槽20の底面部202には、外側に、洗濯脱水槽22およびパルセータ24を駆動するトルクを発生させる駆動ユニット30が配置される。駆動ユニット30は、駆動モータ31と、伝達機構部32とを含む。伝達機構部32は、クラッチ機構32aを有し、当該クラッチ機構32aによる切替操作により、洗い工程およびすすぎ工程では、駆動モータ31のトルクをパルセータ24のみに伝達してパルセータ24のみを回転させ、脱水工程では、駆動モータ31のトルクをパルセータ24および洗濯脱水槽22に伝達してパルセータ24および洗濯脱水槽22を一体的に回転させる。
【0034】
洗濯脱水槽22、パルセータ24および駆動ユニット30により、洗濯ユニットWUが構成される。洗濯ユニットWUは、駆動モータ31がパルセータ24を回転させて洗濯脱水槽22内で水流を発生させることにより、洗濯脱水槽22内に収容された洗濯物に、駆動モータ31が発生するトルクに基づく機械力を加える。
【0035】
外槽20の底面部202には、排水口部203が形成される。排水口部203には、排水バルブ40が設けられる。排水バルブ40は、たとえば、バルブと、バルブを開閉させるトルクモータとを含む。排水バルブ40には、排水ホース41が接続される。排水バルブ40が開放されると、洗濯脱水槽22内および外槽20内に溜められた水が排水ホース41を通じて機外へ排出される。
【0036】
外槽20には、外槽20内の水位を検出する水位検出部50が設けられる。水位検出部50は、外槽20の底部に形成されたエアトラップ51と、エアトラップ51にホース52を介して接続される水位センサ53とを含む。水位センサ53は、ダイヤフラム式の水位センサであり、外槽20内の水位に応じて変化するエアトラップ51内の空気圧を検出することにより、外槽20内の水位を検出する。
【0037】
上面板12の後部には、給水装置100が配置される。給水装置100は、水道栓に繋がり、洗濯脱水槽22内、即ち外槽20内へ給水を行う機能を有する。外槽20内には、給水装置100から水道水が供給される。さらに、給水装置100は、液体の洗剤を洗濯脱水槽22内、即ち外槽20内に自動投入する機能も有する。
【0038】
図2は、給水装置100の構成を模式的に示す図である。
【0039】
給水装置100は、給水バルブユニット110と、注水口部120と、第1給水路130と、第2給水路140と、三方バルブ150と、ポンプ160と、洗剤タンク170とを備える。
【0040】
給水バルブユニット110は、いわゆる2連バルブであり、第1給水バルブ111および第2給水バルブ112を有する。給水バルブユニット110の入水口113は、図示しない給水ホースを介して水道栓に接続される。第1給水バルブ111の定格流量は、第2給水バルブ112の定格流量よりも多い。第1給水バルブ111および第2給水バルブ112は、本発明の「給水バルブ」に相当する。
【0041】
注水口部120は、箱状に形成され、洗濯脱水槽22の後部の上方に位置する。注水口部120の底面には、下方に開口する注水口121が形成される。図1に示すように、注水口121は、洗濯脱水槽22の後端部の上方に位置して、洗濯脱水槽22内に臨む。
【0042】
第1給水路130および第2給水路140は、給水バルブユニット110と注水口部120との間に配置される。第1給水路130は、その上流端が第1給水バルブ111に接続され、その下流端が注水口部120に接続される。第2給水路140は、その上流端が第2給水バルブ112に接続され、その下流端が注水口部120に接続される。
【0043】
三方バルブ150は、第2給水路140に配置される。ポンプ160は、たとえばピストンポンプであり、第2給水路140における三方バルブ150よりも下流側に配置される。
【0044】
洗剤タンク170には、液体の洗剤が貯められる。洗剤タンク170の上面には、投入口171が形成される。投入口171には、投入口171から侵入する異物を捕獲するフィルタ(図示せず)が装着される。洗剤タンク170の底面には、下方に張り出す排出部172が形成される。排出部172の周面には、円筒状の排出口173が形成される。排出口173には、供給パイプ180が接続される。洗剤タンク170は、供給パイプ180を介して三方バルブ150に接続される。
【0045】
なお、第2給水バルブ112、第2給水路140、三方バルブ150、ポンプ160および洗剤タンク170は、洗剤投入装置100aを構成する。
【0046】
外槽20内への給水の際、第1給水バルブ111および第2給水バルブ112が開放される。これにより、給水装置100が、洗濯脱水槽22の上方から洗濯脱水槽22内に向けて水を放出する。
【0047】
給水の際に、洗剤投入装置100aが洗濯脱水槽22内、即ち外槽20内に洗剤を投入する場合、三方バルブ150が、供給パイプ180と第2給水路140における三方バルブ150の下流側とが連通する状態に切り替えられる。次に、ポンプ160が作動し、第2給水路140内のポンプ160の上流側の空気が吸引されて上流側が負圧になる。これにより、図2の破線に示すように、洗剤タンク170内の液体の洗剤が吸引され、供給パイプ180を介して第2給水路140内に送られる。ポンプ160の動作時間に応じた量の洗剤が第2給水路140内に溜まる。
【0048】
次に、三方バルブ150が、第2給水路140における三方バルブ150の上流側と下流側とが連通する状態に切り替えられる。第2給水バルブ112が開かれ、図2の実線矢印に示すように、水道栓からの水が第2給水路140内に供給される。第2給水路140内を流れる水は、第2給水路140内に溜まった洗剤を押し流す。水に押し流された洗剤は、水とともに注水口部120へと流れ、注水口121から洗濯脱水槽22内へ投入される。
【0049】
図3(a)は、外槽20の平面断面図である。図3(b)は、図3(a)のA-A´線の位置で切断された、外槽20における導電率センサ60の周辺の側面断面図である。
【0050】
外槽20の底面部202には、中心側から外周縁側に向かって延びる段差部204が設けられ、底面部202の内面が、段差部204の右側から図3の破線矢印の方向に周回するに従って低くなるように傾斜する。底面部202の内面が最も低い段差部204の左側には、底面部202を凹ませるようにして排水凹部205が形成され、排水凹部205内に排水口部203が設けられる。また、外槽20の底面部202の内面は、中心側から外周縁側に向かって下方に傾斜する。
【0051】
外槽20の底面部202には、外周縁近傍であって、排水凹部205の左側、即ち底面部202の内面が高い側の近傍に、下方に僅かに突出する円筒形の取付口206が形成される。取付口206には、電極式の導電率センサ60が取り付けられる。
【0052】
導電率センサ60は、上側部分60aが下側部分60bよりも外径の小さな円柱状を有し、上側部分60aが取付口206に嵌め込まれる。下側部分60bと取付口206との間にパッキン210が設けられ、水封がなされる。上側部分60aは、その先端部が底面部202の内面よりも上方に突出し、中央部に溝部61を有する。溝部61の底面は、取付口206の周囲の底面部202の内面よりも低く、底面部202の内面よりも低い溝部61の部分が、底面部202の内面から凹む残水ポケット207となる。
【0053】
導電率センサ60には、溝部61における対向する2つの側壁面に、一対の電極62が設けられる。一対の電極62は、方形の板状を有し、底面部202の内面の一部である残水ポケット207の底面から上方に突き出すように、底面部202と洗濯脱水槽22との間の空間に配置される。
【0054】
導電率センサ60は、給水装置100から外槽20内に供給された水道水の導電率や脱水工程において洗濯物から絞り出された水(以下、「脱液」と称する)の導電率を測定するために用いられる。一対の電極62に電圧が印加された状態で、2つの電極62の間に水道水や脱液が溜まると、これら電極62の間に水道水や脱液の導電率に応じた大きさ(値)の電流が流れる。導電率センサ60は、電流値に応じた信号を、導電率を示す導電率信号として制御部301に出力する。
【0055】
図4は、全自動洗濯機1の構成を示すブロック図である。
【0056】
全自動洗濯機1は、上述した構成に加え、操作部70および表示部80を備える。また、制御ユニット16は、制御部301、記憶部302、モータ駆動部303、クラッチ駆動部304、給水バルブ駆動部305、三方バルブ駆動部306、排水バルブ駆動部307およびポンプ駆動部308を含む。
【0057】
操作部70は、電源の入切を行うための電源ボタン、洗濯運転をスタートさせるためのスタートボタン、運転コースを選択するためのコース選択ボタンなどの各種の操作ボタンを含み、これら操作ボタンに応じた操作信号を制御部301に出力する。
【0058】
表示部80は、複数のLEDおよび7セグ表示器を含み、制御部301からの制御信号に従って、運転コースの表示、洗濯運転の進行度合および残り時間の表示、各種のエラー表示などを行う。
【0059】
水位センサ53は、洗濯脱水槽22内、即ち外槽20内の水位に応じた水位信号を制御部301に出力する。
【0060】
モータ駆動部303は、制御部301から出力された制御信号に従って、駆動モータ31を駆動する。モータ駆動部303は、駆動モータ31の回転数を検出する回転センサ、インバータ回路等を含み、制御部301により設定された回転数で駆動モータ31が回転するよう、駆動電力を調整する。さらに、モータ駆動部303には、駆動モータ31に流れる電流を検出する電流検出回路が含まれる。
【0061】
クラッチ駆動部304は、制御部301から出力された制御信号に従って、伝達機構部32のクラッチ機構32aを駆動する。
【0062】
給水バルブ駆動部305は、制御部301からの制御信号に従って、第1給水バルブ111および第2給水バルブ112を駆動する。
【0063】
三方バルブ駆動部306は、制御部301からの制御信号に従って、三方バルブ150を駆動する。
【0064】
排水バルブ駆動部307は、制御部301からの制御信号に従って、排水バルブ40を駆動する。
【0065】
ポンプ駆動部308は、制御部301からの制御信号に従って、ポンプ160を駆動する。
【0066】
記憶部302は、EEPROM、RAM等を含む。記憶部302には、各種運転コースの洗濯運転を実行するためのプログラムが記憶される。また、記憶部302には、洗濯運転に用いられる各種の運転条件が記憶される。
【0067】
制御部301は、CPU等を含み、操作部70、水位センサ53、導電率センサ60等からの各信号に基づいて、記憶部302に記憶されたプログラムに従い、表示部80、モータ駆動部303、クラッチ駆動部304、給水バルブ駆動部305、三方バルブ駆動部306、排水バルブ駆動部307、ポンプ駆動部308等を制御する。
【0068】
全自動洗濯機1では、制御部301による制御の下、各種運転コースの洗濯運転が行われる。洗濯運転には、洗い工程、すすぎ工程および脱水工程が含まれる。脱水工程には、洗濯運転の中間に実行される中間脱水工程と洗濯運転の最後に実行される最終脱水工程とがある。
【0069】
本実施の形態では、すすぎ工程に続く最終脱水工程において、洗濯物から絞り出されて外槽20内に溜まった脱液の導電率を導電率センサ60により測定する脱液導電率測定工程が実行される。そして、測定された脱液の導電率に基づいて、洗濯物に残っている洗剤の多少が判定される。洗濯物に残った洗剤が多いために脱液の導電率が高くなった場合、最終脱水工程の後にすすぎ工程が追加される。
【0070】
脱液の導電率は、洗濯物に残る洗剤の量だけでなく、洗濯物に含まれる水、即ち水道水の性質によっても変動し得る。水道水の性質は、各地域によって異なり得る。たとえば、水道水がカルシウムイオンやマグネシウムイオンを多く含む硬水である場合には、それらイオンが少ない軟水である場合に比べて導電率が高くなる。よって、本実施の形態では、水道水の性質の違いによる影響を排除するため、給水装置100から供給された水道水の導電率を測定する水導電率測定工程が実行される。そして、水道水の導電率が基準導電率に決定され、当該基準導電率により補正された脱液の導電率に基づいて、すすぎ工程を追加するか否かが決定される。
【0071】
図5は、洗濯運転での制御部301による制御処理を示すフローチャートである。図6は、洗濯運転に含まれる水導電率測定工程での制御部301による制御処理を示すフローチャートである。図7は、洗濯運転に含まれる脱液導電率測定工程での制御部301による制御処理を示すフローチャートである。
【0072】
ユーザは、洗濯脱水槽22内に洗濯物を投入した後、操作部70を操作して洗濯運転を開始させる。
【0073】
図5を参照して、洗濯運転が開始されると、制御部301は、まず、洗濯脱水槽22内の洗濯物の負荷量を検出する負荷量検知工程を実行する(S101)。即ち、制御部301は、駆動モータ31を動作させてパルセータ24を回転させ、駆動モータ31の駆動電流や駆動モータ31が停止するまでの惰性回転量に基づいて負荷量を決定する。負荷量が多いほど、駆動電流が大きくなり、惰性回転量が少なくなる。制御部301は、検出された負荷量に応じて、洗い工程およびすすぎ工程での給水量(洗い水位、すすぎ水位)と、洗い工程での洗剤の投入量とを設定する。負荷量が多いほど、給水量および洗剤の投入量が多くなる。
【0074】
次に、制御部301は、給水装置100により供給される水道水の導電率を測定する1回目の水導電率測定工程を実行する(S102)。
【0075】
図6を参照して、制御部301は、第1給水バルブ111および第2給水バルブ112を開放して給水装置100による外槽20内への給水を開始する(S201)。給水装置100の注水口121から洗濯脱水槽22内に向けて水道水が放出される。水道水は、洗濯脱水槽22内に収容された洗濯物に降り掛かるなどした後、洗濯脱水槽22の脱水孔22aや排出孔22bから流れ出て外槽20内の底部に溜まっていく。
【0076】
制御部301は、導電率センサ60による導電率の測定を、一定のサンプリングタイムの間隔、たとえば、0.1秒の間隔で行い、前回測定した導電率と今回測定した導電率とを比較することにより、導電率の変化率が規定値以下に達したか否かを監視する(S202~S204)。
【0077】
導電率センサ60の一対の電極62は、外槽20の内底面から上方に突き出すように配置されているため、水道水が溜まっていくに従って徐々に水没する。一対の電極62が完全に水没するまでは、水道水が接触する電極62の表面積が変化するため、電極間に流れる電流の大きさが変化し、導電率が変化する。このため、水道水自体の導電率を正確に測定できない。
【0078】
一対の電極62が完全に水没すると、測定された導電率の変化が無くなり、変化率が規定値以下に達する。制御部301は、導電率の変化率が規定値以下に達したと判定すると(S203:YES)、今回測定された導電率、即ち規定値以下に達した直後の導電率を、水道水の導電率(以下、「水導電率」と称する)に決定する(S205)。これにより、水道水自体の導電率を正確に測定できる。
【0079】
なお、変化率が規定値以下となった後の導電率が複数回測定され、複数の導電率の平均値が水導電率に決定されるようにしてもよい。
【0080】
こうして、水導電率が測定されると、1回目の水導電率測定工程が終了する。給水装置100による外槽20内への給水は継続される。
【0081】
図5に戻り、1回目の水導電率測定工程が終了すると、制御部301は、基準導電率が記憶部302に記憶されているか否かを確認する(S103)。そして、制御部301は、基準導電率が記憶部302に記憶されていれば(S103:YES)、水導電率測定工程で測定された水導電率が基準導電率よりも小さいか否かを判定する(S104)。
【0082】
制御部301は、基準導電率が記憶部302に記憶されていない場合(S103:NO)、または、水導電率が記憶部302に記憶された基準導電率よりも小さい場合(S104:YES)、当該水導電率を新たな基準導電率に決定し、新たな基準導電率を記憶部302に記憶する(S105)。
【0083】
一方、制御部301は、水導電率が記憶部302に記憶された基準導電率以上である場合(S104:NO)、記憶部302に記憶された基準導電率を維持する。
【0084】
次に、制御部301は、洗い工程を実行する(S106~S108)。まず、制御部301は、外槽20内に洗剤を含む水を溜める給水動作を行う(S106)。制御部301は、第2給水バルブ112を閉鎖するとともに第1給水バルブ111の開放を維持する。給水装置100による第1給水バルブ111からの水の供給は継続する。さらに、制御部301は、洗剤投入装置100aを動作させて負荷量に応じて設定された投入量の洗剤を外槽20内に投入する。なお、洗剤投入の際には、第2給水バルブ112が開放されるが、当該開放が洗剤投入後も維持される。その後、制御部301は、外槽20内の水位が、負荷量に応じて設定された洗い水位に達すると、第1給水バルブ111および第2給水バルブ112を閉鎖して給水を停止させる。
【0085】
次に、制御部301は、洗い動作を行う(S107)。制御部301は、駆動モータ31を動作させ、パルセータ24を、停止を挟んで右方向と左方向とに交互に回転させる。パルセータ24の回転により洗濯脱水槽22内に水流が発生し、当該水流の力、即ち機械力と洗剤の力とにより洗濯物が洗浄される。制御部301は、所定の洗い時間が経過すると、パルセータ24を停止させる。
【0086】
次に、制御部301は、排水バルブ40を開放することにより、排水動作を行う(S108)。外槽20内に溜められた洗剤を含む水が排水ホース41を通じて機外へ排出される。水位検出部50により最低水位が検出されてから一定の時間が経過し、外槽20内の水が完全に排出されると、洗い工程が終了する。排水バルブ40は開放されたままとなる。
【0087】
なお、洗剤投入装置100aにより洗剤を自動投入しない設定がなされている場合、洗い工程の給水動作において、洗剤投入装置100aは動作しない。この場合、ユーザが給水動作時などに、手動により洗濯脱水槽22内に洗剤を投入する。
【0088】
次に、制御部301は、中間脱水工程を実行する(S109)。制御部301は、駆動モータ31を動作させて、洗濯脱水槽22をパルセータ24と一体的に所定の脱水回転数(たとえば、800rpm)で高速回転させる。このとき、制御部301は、洗濯脱水槽22の回転数を脱水回転数まで段階的に立ち上げる。即ち、制御部301は、回転数の立上げ途中に第1回転数(たとえば、120rpm)と、第1回転数よりも高い第2回転数(たとえば、240rpm)とによる一定時間の定常回転を行う。
【0089】
洗濯脱水槽22の回転により発生した遠心力で洗濯物が洗濯脱水槽22の内周面に押し付けられて、洗濯物から水が絞り出される。洗濯物からの脱液は、脱水孔22aを通って外槽20内に排出され、排水ホース41を通って機外に排出される。
【0090】
制御部301は、洗濯脱水槽22の回転数が脱水回転数に到達してから所定の脱水時間が経過すると、洗濯脱水槽22を停止させる。これにより、中間脱水工程が終了する。排水バルブ40が開放されたままとなる。
【0091】
なお、脱水時間は、洗濯脱水槽22の回転数が脱水回転数に到達してから洗濯脱水槽22を停止させるまでの時間でなく、洗濯脱水槽22の回転を開始させてから停止させるまでの時間であってもよい。
【0092】
次に、制御部301は、1回目のすすぎ工程として、シャワーすすぎ工程を実行する(S110)。シャワーすすぎ工程では、制御部301は、第1給水バルブ111および第2給水バルブ112を開放して給水装置100による洗濯脱水槽22内への給水を行うとともに、駆動モータ31を動作させて洗濯脱水槽22をパルセータ24と一体的に低速回転させる。
【0093】
中間脱水工程によって洗濯脱水槽22の内周面側に寄せられた洗濯物に、給水装置100の注水口121から放出された水道水が降り掛けられる。洗濯物が水を十分に吸収するともに、洗濯物が吸収しきらない水が洗剤とともに洗濯物から流れ出る。これにより、洗濯物がすすがれる。
【0094】
制御部301は、所定のすすぎ時間が経過すると、洗濯脱水槽22を停止させる。これにより、シャワーすすぎ工程が終了する。
【0095】
次に、制御部301は、中間脱水工程を実行する(S111)。洗濯物に残る洗剤がシャワーすすぎ工程によって洗濯物に十分に含まれた水とともに排出される。よって、洗濯物は、脱水されるとともにすすがれる。中間脱水工程が終了する際、排水バルブ40が閉鎖される。
【0096】
次に、制御部301は、2回目の水導電率測定工程を実行する(S112)。これにより、1回目の水導電率測定工程と同様、水導電率が測定される。
【0097】
制御部301は、2回目の水導電率測定工程で測定された水導電率が基準導電率よりも小さいか否かを判定する(S113)。そして、水導電率が記憶部302に記憶された基準導電率よりも小さい場合(S114:YES)、制御部301は、当該水導電率を新たな基準導電率に決定し、新たな基準導電率を記憶部302に記憶する(S114)。一方、水導電率が記憶部302に記憶された基準導電率以上である場合(S113:NO)、制御部301は、記憶部302に記憶された基準導電率を維持する。
【0098】
給水装置100から供給された水道水は、洗濯脱水槽22内を介して外槽20内に溜められる。よって、水道水は、洗濯脱水槽22内に収容された洗濯物に触れやすく、洗濯物に付着している汚れが水道水に混ざりやすい。よって、洗い工程の前に実行される1回目の水導電率測定工程では、外槽20内に溜めれた水道水が汚れを含みやすく、測定された水導電率が汚れの量に影響されやすい。さらに、1回目の水導電率測定工程の前に洗剤が手動で投入された場合、測定された水導電率が洗剤の影響を受けやすくなる。
【0099】
一方、1回目のすすぎ工程に続く中間脱水工程の後に実行される2回目の水導電率測定工程では、洗い工程で洗濯物の汚れが除去されているため、1回目の水導電率測定工程に比べて、測定された水導電率が汚れの量に影響されにくい。さらに、手動による洗剤投入が行われる場合は、1回目の水導電率測定工程で測定された水導電率が洗剤の影響を大きく受けやすいため、2回目の水導電率測定工程では、水導電率への洗剤の影響が、1回目の水導電率測定工程に比べて小さくなり得る。なお、洗剤投入装置100aにより洗剤が自動投入される場合には、1回目の水導電率測定工程で測定された水導電率が洗剤の影響を受けにくいため、2回目の水導電率測定工程では、洗い工程で使用された洗剤が残留し得る分、水導電率への洗剤の影響が、1回目の水導電率測定工程に比べて大きくなり得る。
【0100】
このような理由により、外槽20内に溜められた水道水に洗濯物の汚れが含まれにくい場合や手動による洗剤の自動投入が行われる場合は、1回目の水導電率測定工程で測定された水導電率が2回目の水導電率測定工程で測定された水導電率よりも小さくなり得る。一方、外槽20内に溜められた水道水に洗濯物の汚れが含まれやすい場合や手動による洗剤投入が行われる場合は、2回目の水導電率測定工程で測定された水導電率が1回目の水導電率測定工程で測定された水導電率よりも小さくなり得る。
【0101】
本実施の形態では、制御部301は、ステップS103~S105、S112~S114の処理を実行することにより、1回目および2回目の水導電率測定工程で測定された2つの水導電率のうち小さい水導電率を基準導電率に決定する。これにより、これら2つの水導電率のうち、洗濯物の汚れや洗剤の影響が少なく本来の値に近い水導電率(水道水の導電率)を基準導電率に設定できる。
【0102】
さらに、本実施の形態では、制御部301は、水導電率測定工程で測定された水導電率が、記憶部302に記憶されている基準導電率よりも小さい場合に、当該水導電率を新たな基準導電率に決定する。これにより、これまでの1回目および2回目の水導電率測定工程で測定された水導電率の中で最も小さな水導電率が基準導電率に設定される。よって、外槽20内に溜められた水道水が洗濯物の汚れや洗剤の影響を受け得る状況にあっても、洗濯運転が重ねられることにより、洗濯物の汚れや洗剤の影響が少なく本来の値に近い水導電率(水道水の導電率)が、基準導電率として設定される。
【0103】
次に、制御部301は、2回目のすすぎ工程として、溜めすすぎ工程を実行する(S115~S117)。まず、制御部301は、外槽20内に水を溜める給水動作を行う(S115)。制御部301は、第1給水バルブ111および第2給水バルブ112の開放を維持して、2回目の水導電率測定工程で開始した外槽20内への給水を継続する。制御部301は、外槽20内の水位が、負荷量に応じて設定されたすすぎ水位に達すると、第1給水バルブ111および第2給水バルブ112を閉鎖して給水を停止させる。
【0104】
次に、制御部301は、溜めすすぎ動作を行う(S116)。制御部301は、駆動モータ31を動作させ、パルセータ24を、停止を挟んで右方向と左方向とに交互に回転させる。パルセータ24の回転により洗濯脱水槽22内に水流が発生し、当該水流の力により洗濯物がすすがれる。これにより、洗濯物に残った洗剤が排出される。制御部301は、所定のすすぎ時間が経過すると、パルセータ24を停止させる。
【0105】
次に、制御部301は、排水バルブ40を開放することにより、排水動作を行う(S117)。外槽20内の水が完全に排出されると、溜めすすぎ工程が終了する。排水バルブ40は開放されたままとなる。
【0106】
次に、制御部301は、最終脱水工程を実行する(S118)。制御部301は、駆動モータ31を動作させて、洗濯脱水槽22をパルセータ24と一体的に所定の脱水回転数で高速回転させる。最終脱水工程では、中間脱水工程よりも高い脱水回転数(たとえば、1000rpm)に設定される。制御部301は、中間脱水工程と同様、洗濯脱水槽22の回転数を脱水回転数まで段階的に立ち上げる。洗濯物からの脱液が洗濯脱水槽22の脱水孔22aを通って外槽20内に排出される。
【0107】
最終脱水工程では、中間脱水工程よりも長い脱水時間に設定される。制御部301は、脱水回転数に到達してから脱水時間が経過すると、洗濯脱水槽22を停止させる。これにより、最終脱水工程が終了する。最終脱水工程が終了する際、排水バルブ40が閉鎖される。
【0108】
制御部301は、最終脱水工程において、洗濯物から絞り出されて外槽20内に溜まった脱液の導電率を導電率センサ60により測定する脱液導電率測定工程を実行する(S119)。
【0109】
図7を参照して、制御部301は、排水バルブ40を閉鎖する(S301)。これにより、外槽20内に排出された脱液が外槽20内の底部に溜まりやすくなる。
【0110】
制御部301は、導電率センサ60による導電率の測定を、一定のサンプリングタイムの間隔、たとえば、0.1秒の間隔で行い、前回測定した導電率と今回測定した導電率とを比較することにより、導電率の変化率が規定値以下に達したか否かを監視する(S302~S304)。導電率センサ60の一対の電極62は、外槽20内に脱液が溜まっていくに従って徐々に水没する。
【0111】
一対の電極62が完全に水没すると、測定された導電率の変化が無くなり、変化率が規定値以下に達する。制御部301は、導電率の変化率が規定値以下に達したと判定すると(S303:YES)、今回測定された導電率、即ち規定値以下に達した直後の導電率を、脱液の導電率(以下、「脱液導電率」と称する)に決定する(S305)。これにより、脱液自体の導電率を正確に測定できる。
【0112】
なお、変化率が規定値以下となった後の導電率が複数回測定され、複数の導電率の平均値が脱液導電率に決定されるようにしてもよい。
【0113】
制御部301は、排水バルブ40を開放する(S306)。これにより、外槽20内に排出された脱液が、排水ホース41を介して機外に排出されるようになる。
【0114】
こうして、脱液導電率測定工程が終了する。なお、脱液導電率測定工程は、洗濯脱水槽22の回転が開始されると同時に開始され、少なくとも洗濯脱水槽22の回転数が脱水回転数に達するまでに終了する。
【0115】
図5に戻り、脱液導電率測定工程が終了した後、さらに最終脱水工程が終了すると、制御部301は、記憶部302に記憶された基準導電率を用いて脱液導電率測定工程で測定された脱液導電率の補正を行う。即ち、制御部301は、脱液導電率から基準導電率を減算することにより補正後の脱液導電率(以下、「補正導電率」と称する)を求める(S120)。補正導電率は、脱液導電率が同じである場合、基準導電率が大きいほど小さくなる。補正導電率は、水道水の性質の違いによる影響が除かれて洗濯物に残る洗剤の量の多少を良好に反映した値となる。
【0116】
次に、制御部301は、補正導電率が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する(S121)。洗濯物に洗剤が多く残り、すすぎ不足の状態にある場合に、補正導電率が閾値よりも大きくなる。
【0117】
補正導電率が閾値以下である場合(S121:NO)、すすぎ不足の状態でないと見做すことができるため、制御部301は、すすぎ工程を追加することなく、洗濯運転を終了する。
【0118】
一方、補正導電率が閾値よりも大きい場合(S121:YES)、すすぎ不足の状態にあると見做すことができるため、制御部301は、追加のすすぎ工程として溜めすすぎ工程を実行する。即ち、制御部301は、給水動作、溜めすすぎ動作および排水動作を行う(S122~S124)これにより、洗濯物のすすぎ不足が解消される。
【0119】
追加のすすぎ工程が終了すると、制御部301は、最終脱水工程を実行した後(S125)、洗濯運転を終了する。
【0120】
<実施の形態の効果>
本実施の形態によれば、制御部301は、すすぎ工程に続く脱水工程において、洗濯物から絞り出されて外槽20内に溜まった脱液の導電率を導電率センサ60により測定する脱液導電率測定工程を実行し、脱液の導電率に基づいてすすぎ工程の回数を調整する。具体的には、制御部301は、最終脱水工程において脱液の導電率を測定し、脱液の導電率に基づいてすすぎが不十分であると判定すると、最終脱水工程の後にすすぎ工程を追加し、脱液の導電率に基づいてすすぎが十分であると判定すると、最終脱水工程の後にすすぎ工程を追加しない。
【0121】
この構成によれば、洗濯物から出た洗剤を含み得る水の導電率が直接的に測定されるので、外槽20内に溜められたすすぎ用の水の導電率が測定される場合と違って、洗濯物に残る洗剤の量の多少が、測定された導電率の大小に確実に反映される。これにより、洗濯物のすすぎ具合を精度良く判定して、すすぎが不十分である場合にすすぎ工程を増やすことができ、洗濯物をきれいにすすがれた状態に仕上げることができる。
【0122】
さらに、本実施の形態によれば、制御部301は、給水装置100を動作させて外槽20内に水道水を溜め、当該水道水の導電率を導電率センサ60により測定する水導電率測定工程を実行し、水道水の導電率を基準導電率に決定する。そして、制御部301は、脱液の導電率を、基準導電率が大きいほど小さくなるように補正し、補正後の脱液の導電率に基づいてすすぎ工程の回数を調整する。
【0123】
この構成によれば、脱液の導電率が基準導電率を用いて補正されることにより、水道水の性質の違いによる影響を除くことができるので、洗濯物に残る洗剤の量の多少を精度良く判定することが可能になる。
【0124】
さらに、本実施の形態によれば、制御部301は、洗い工程での給水時に、洗剤投入装置100aおよび給水装置100を動作させて外槽20内に洗剤を含む水を溜める。そして、制御部301は、洗剤投入装置100aにより外槽20内に洗剤が投入される前に1回目の水導電率測定工程を実行する。
【0125】
この構成によれば、1回目の水導電率測定工程で測定される水道水に洗剤投入装置100aが投入する洗剤が混入してしまうことを防止でき、洗剤濃度が高い水道水の導電率が基準導電率に設定されてしまうことを防止できる。
【0126】
さらに、本実施の形態によれば、制御部301は、基準導電率を記憶部302に記憶し、水導電率測定工程で測定された水道水の導電率が、記憶部302に記憶されている基準導電率よりも小さい場合に、当該水道水の導電率を新たな基準導電率に決定する。
【0127】
この構成によれば、これまでの水導電率測定工程で測定された水導水の導電率の中で最も小さな導電率が基準導電率に設定されるので、外槽20内に溜められた水道水が洗濯物の汚れや洗剤の影響を受け得る状況にあっても、洗濯運転が重ねられることにより、本来の値に近い水導水の導電率が、基準導電率として設定される。よって、洗濯物に残る洗剤の量の多少を、一層、精度良く判定することが可能になる。
【0128】
さらに、本実施の形態によれば、制御部301は、洗い工程の前に1回目の水導電率測定工程を実行し、1回目のすすぎ工程に続く脱水工程(中間脱水工程)の後に2回目の水導電率測定工程を実行する。そして、制御部301は、1回目および2回目の水導電率測定工程で測定された2つの水道水の導電率のうち小さい導電率を基準導電率に決定し、2回目のすすぎ工程に続く脱水工程(最終脱水工程)おいて脱液導電率測定工程を実行する。
【0129】
この構成によれば、1回目および2回目の水導電率測定工程で測定された2つの水道水の導電率のうち、洗濯物の汚れや洗剤の影響が少なく本来の値に近い水道水の導電率を基準導電率に設定できる。よって、洗濯物に残る洗剤の量の多少を、一層、精度良く判定することが可能になる。
【0130】
さらに、本実施の形態によれば、導電率センサ60は、外槽20の底面部202の内面から上方に突き出すように配置された一対の電極62を含む。そして、制御部301は、水導電率測定工程において、導電率センサ60により測定された導電率の変化率を監視し、当該変化率が規定値以下となった後の導電率を、水道水の導電率に決定する。さらに、制御部301は、脱液導電率測定工程において、導電率センサ60により測定された導電率の変化率を監視し、当該変化率が前記規定値以下となった後の導電率を、脱液の導電率に決定する。
【0131】
この構成によれば、一対の電極62が完全に水没した状態で測定された導電率が、水道水の導電率および脱液の導電率に決定されるので、水道水自体の導電率および脱液自体の導電率を正確に測定できる。
【0132】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態によって何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も、上記以外に種々の変更が可能である。
【0133】
<変更例1>
上記実施の形態では、最終脱水工程が終了した後に、脱液の導電率に基づいてすすぎ工程を追加するか否かが判定された。
【0134】
これに対し、本変更例では、最終脱水工程において、脱液の導電率に基づいてすすぎ工程を追加するか否かが判定される。さらに、すすぎ工程を追加する判定が行われた場合は、実行中の最終脱水工程において、脱水回転数が低くなるように変更され、および/または、脱水時間が短くなるように変更される。
【0135】
図8は、変更例1に係る、洗濯運転での制御部301による制御処理を示すフローチャートである。図9は、変更例1に係る、洗濯運転に含まれるすすぎ追加判定工程での制御部301による制御処理を示すフローチャートである。
【0136】
図8を参照して、制御部301は、最終脱水工程において、脱液導電率測定工程が終了すると(S119)、追加すすぎ判定工程を実行する(S126)。
【0137】
図9を参照して、制御部301は、記憶部302に記憶された基準導電率を用いて脱液導電率測定工程で測定された脱液導電率の補正を行う。即ち、制御部301は、脱液導電率から基準導電率を減算することにより補正導電率を求める(S401)。そして、制御部301は、補正導電率が閾値よりも大きいか否かを判定する(S402)。
【0138】
補正導電率が閾値以下である場合(S402:NO)、すすぎ不足の状態でないと見做すことができるため、制御部301は、すすぎ追加判定工程を終了する。
【0139】
一方、補正導電率が閾値よりも大きい場合(S402:YES)、すすぎ不足の状態にあると見做すことができるため、制御部301は、追加フラグをセットする(S403)。追加フラグは、たとえば、制御部301に備えられる。
【0140】
さらに、制御部301は、最終脱水工程の脱水回転数を低くなるように変更するとともに、最終脱水工程の脱水時間を短くなるように変更する(S404)。たとえば、中間脱水工程の脱水回転数および脱水時間に変更される。この場合、最終脱水工程が、実質的に中間脱水工程に変更されることになる。その後、制御部301は、すすぎ追加判定工程を終了する。なお、すすぎ追加判定工程は、少なくとも洗濯脱水槽22の回転数が脱水回転数に達するまでに終了する。
【0141】
なお、制御部301は、最終脱水工程の脱水回転数および脱水時間の何れか一方のみを変更するようにしてもよい。
【0142】
図8に戻り、制御部301は、すすぎ追加判定工程が終了した後、さらに最終脱水工程が終了すると、追加フラグがセットされているか否かを判定する(S127)。制御部301は、追加フラグがセットされていなければ(S127:NO)、洗濯運転を終了する。一方、制御部301は、追加フラグがセットされていなければ(S127:NO)、追加のすすぎ工程として溜めすすぎ工程を実行した後(S122~S124)、最終脱水工程を実行し(S125)、洗濯運転を終了する。
【0143】
本変更例の構成によれば、すすぎ工程が追加されることにより、当該すすぎ工程の後に、再度、最終すすぎ工程が実行されることになる場合には、追加されるすすぎ工程の前の最終脱水工程において、脱水回転数が低くなるように変更される、および/または、脱水時間が短くなるように変更される。これにより、追加されるすすぎ工程の前の最終脱水工程に要する時間を短縮でき、すすぎ工程と最終脱水工程とが追加されたことによる洗濯運転の時間の増加を抑制できる。
【0144】
<変更例2>
上記実施の形態では、制御部301が、最終脱水工程において脱液の導電率を測定し、脱液の導電率に基づいてすすぎが不十分であると判定すると、最終脱水工程の後にすすぎ工程を追加し、脱液の導電率に基づいてすすぎが十分であると判定すると、最終脱水工程の後にすすぎ工程を追加しない。
【0145】
これに対し、本変更例では、制御部301が、1回目のすすぎ工程に続く中間脱水工程において脱液の導電率を測定し、脱液の導電率に基づいて、残り1回のすすぎ工程ではすすぎが不十分になり得ると判定すると、当該中間脱水工程の後にすすぎ工程を2回行い、脱液の導電率に基づいて、残り1回のすすぎ工程ですすぎが十分になり得ると判定すると、当該中間脱水工程の後にすすぎ工程を1回行う。
【0146】
図10は、変更例2に係る、洗濯運転での制御部301による制御処理を示すフローチャートである。
【0147】
図10を参照して、制御部301は、1回目のすすぎ工程であるシャワーすすぎ工程が終了すると(S110)、中間脱水工程を行う(S130)。さらに、制御部301は、中間脱水工程において脱液導電率測定工程を実行し(S131)、脱液導電率を測定する。
【0148】
脱液導電率測定工程が終了した後、さらに中間脱水工程が終了すると、制御部301は、脱液導電率から基準導電率を減算することにより補正導電率を求め(S132)、補正導電率が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する(S133)。本変更例の閾値は、上記実施の形態での閾値よりも大きくされる。
【0149】
補正導電率が閾値よりも大きい場合(S133:YES)、残り1回のすすぎ工程ではすすぎが不十分になり得るため、制御部301は、2回のすすぎ工程を実行すべく、溜めすすぎ工程(S134~S136)、中間脱水工程(S137)、溜めすすぎ工程(S138~S140)および最終脱水工程(S141)を、順番に実行する。
【0150】
一方、補正導電率が閾値以下である場合(S133:NO)、残り1回のすすぎ工程ですすぎが十分になり得るため、制御部301は、1回のすすぎ工程を実行すべく、溜めすすぎ工程(S138~S140)および最終脱水工程(S141)を、順番に実行する。
【0151】
本変更例の構成によっても、上記実施の形態と同様、洗濯物のすすぎ具合を精度良く判定して、すすぎが不十分である場合にすすぎ工程を増やすことができ、洗濯物をきれいにすすがれた状態に仕上げることができる。
【0152】
なお、本変更例において、給水装置100の洗剤投入装置100aが、液剤投入装置として、洗剤タンク170に加えて、液体の柔軟剤が貯められる柔軟剤タンクを備えてもよい。柔軟剤タンクは、洗剤タンク170と同様、三方バルブを介して第2給水路140に接続される。この場合、最終脱水工程の前に実行される最後のすすぎ工程(溜めすすぎ工程)において、柔軟剤タンク内の柔軟剤が外槽20内に自動投入されるとよい。
【0153】
<その他の変更例>
上記実施の形態では、水導電率測定工程が2回、即ち、洗い工程の前とすすぎ工程に続く中間脱水工程の後に実行される。しかしながら、水導電率測定工程が、洗い工程の前とすすぎ工程に続く中間脱水工程の後のどちらか1回のみ実行されてもよい。水導電率測定工程が1回のみ実行される場合、上記実施の形態のように、給水装置100が、洗剤タンク170内の洗剤が自動投入される洗剤投入装置100aを備えているときには、洗い工程の前に水導電率測定工程が実行されることが望ましい。一方、給水装置100が、外槽20内への給水路の途中に1回分の洗剤が投入される洗剤ケースを備えていて、給水装置100から給水が行われる際に水道水が必ず洗剤ケースを通過するときには、洗剤ケースから外槽20内に投入される洗剤が影響しないように、すすぎ工程に続く中間脱水工程の後に水導電率測定工程が実行されることが望ましい。
【0154】
さらに、上記実施の形態では、1回目のすすぎ工程として、シャワーすすぎ工程が実行される。しかしながら、1回目のすすぎ工程として、溜めすすぎ工程が実行されてもよい。ただし、1回目のすすぎ工程として、シャワーすすぎ工程が実行される場合は、溜めすすぎ工程が実行される場合よりもすすぎ不足が生じやすくなるため、全自動洗濯機1が、洗濯物からの脱液の導電率に基づいてすすぎ回数を調整する機能を備える意義が大きいものとなる。
【0155】
さらに、導電率センサ60の構成および配置は、上記実施の形態の構成および配置に限られず、外槽20内に溜められた水導水や脱液の導電率が測定できれば、如何なる構成および配置でもよい。
【0156】
さらに、洗剤投入装置100aの構成は、上記実施の形態の構成に限られない。たとえば、洗剤投入装置100aは、給水装置100に含まれず、給水装置100と別に設けられてもよい。
【0157】
さらに、上記実施の形態では、全自動洗濯機1に本発明が適用された例が示された。しかしながら、衣類の乾燥機能が搭載された全自動洗濯乾燥機に本発明を適用することもできる。さらに、本発明は、外槽内に、内槽として横軸型のドラムを備えるドラム式洗濯機およびドラム式洗濯乾燥機に適用することもできる。ドラム式洗濯機およびドラム式洗濯乾燥機では、ドラムと、当該ドラムを回転させる駆動モータとにより洗濯ユニットが構成され、ドラムが回転して洗濯物がタンブリングすることにより、洗濯物に機械力が加わる。
【0158】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0159】
1 全自動洗濯機(洗濯機)
10 筐体
20 外槽
22 洗濯脱水槽(内槽)
31 駆動モータ
60 導電率センサ
62 電極
100 給水装置
100a 洗剤投入装置
111 第1給水バルブ(給水バルブ)
112 第2給水バルブ(給水バルブ)
170 洗剤タンク
202 底面部
301 制御部
302 記憶部
WU 洗濯ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10