(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178056
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】保護素子、及びバッテリパック
(51)【国際特許分類】
H01H 37/76 20060101AFI20241217BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20241217BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241217BHJP
H02H 3/093 20060101ALI20241217BHJP
H02H 3/20 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H01H37/76 P
H02H7/18
H02J7/00 S
H02H3/093 A
H02H3/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096557
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100185845
【弁理士】
【氏名又は名称】穂谷野 聡
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕二
【テーマコード(参考)】
5G004
5G053
5G502
5G503
【Fターム(参考)】
5G004AA04
5G053AA01
5G053AA09
5G053CA01
5G053EC05
5G502AA02
5G502AA20
5G502BD02
5G502FF08
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503FA16
5G503FA17
(57)【要約】
【課題】ヒューズエレメントの溶断後における絶縁性を向上させることができる保護素子、及びこれを用いたバッテリパックを提供する。
【解決手段】保護素子は、ケース2と、ヒューズエレメント3と、ヒューズエレメント3と接続された一対のヒューズ端子4a,4bと、ヒューズエレメント3の少なくとも一方の面に接続され、ヒューズエレメント3を溶断する溶断部材5とを備え、溶断部材5は、絶縁基板6と、絶縁基板6のヒューズエレメント3と接する表面6aに設けられヒューズエレメント3と接続された中間電極7と備え、絶縁基板6と一対のヒューズ端子4a,4bの少なくとも一方との間において、ヒューズエレメント3の上方及び下方に空間10を有し、ヒューズエレメント3と絶縁基板6とが重畳する領域において、ヒューズエレメント3と絶縁基板6の上方及び下方に空間11を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
上記ケースに収納されたヒューズエレメントと、
上記ヒューズエレメントの通電方向に離間して上記ケースの側面部に支持され、上記ヒューズエレメントと接続された一対のヒューズ端子と、
上記一対のヒューズ端子の間において上記ヒューズエレメントの少なくとも一方の面に接続され、上記ヒューズエレメントを溶断する溶断部材とを備え、
上記溶断部材は、絶縁基板と、上記絶縁基板の上記ヒューズエレメントと接する表面に設けられ上記ヒューズエレメントと接続された中間電極と備え、
上記絶縁基板と上記一対のヒューズ端子の少なくとも一方との間において、上記ヒューズエレメントの上方及び下方に空間を有し、
上記ヒューズエレメントと上記絶縁基板とが重畳する領域において、上記ヒューズエレメントと上記絶縁基板の上方及び下方に空間を有する
保護素子。
【請求項2】
上記溶断部材は、上記絶縁基板に形成され、発熱により上記ヒューズエレメントを溶断する発熱体と、上記発熱体を被覆する絶縁層を備える請求項1に記載の保護素子。
【請求項3】
断面視において、上記一対のヒューズ端子間の距離D3が7mm以上である請求項1又は2に記載の保護素子。
【請求項4】
断面視において、一方の上記ヒューズ端子と、上記絶縁基板の上記一方のヒューズ端子と対向する側縁部との距離D1が1mm以上である請求項1又は2に記載の保護素子。
【請求項5】
断面視において、他方の上記ヒューズ端子と、上記絶縁基板の上記他方のヒューズ端子と対向する側縁部との距離D2が1mm以上である請求項4に記載の保護素子。
【請求項6】
断面視において、上記絶縁基板の上記一対の端子間方向の幅Wが、上記一対の端子間の距離D3より小さい請求項1又は2に記載の保護素子。
【請求項7】
以下の条件を満たす請求項6に記載の保護素子。
W<5mm
D3-W<2mm
【請求項8】
上記発熱体が上記絶縁基板の表面又は上記表面と反対側の裏面に設けられている請求項2に記載の保護素子。
【請求項9】
上記絶縁基板は、上記表面と反対側の裏面に保持電極設けられ、
上記中間電極と上記保持電極が上記絶縁基板を貫通する貫通孔によって接続されている請求項1又は2に記載の保護素子。
【請求項10】
1つ以上のバッテリセルと、上記バッテリセルの充放電経路上に接続され、該充放電経路を遮断する保護素子とを備え、
上記保護素子は、上記請求項1~9のいずれか1項に記載の保護素子である
バッテリパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電流経路を遮断する保護素子、及びこれを用いたバッテリパックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池は、モバイル機器用途からEV(Electric Vehicle)や蓄電池などの用途に発展しており、電流の大容量化が進んでいる。この電池は、異常時に発火する等のリスクがあることから、大容量化が進むにつれて、保護素子を使った保護回路を組み込むことで、製品の安全を確保する手法が主流となっている。
【0003】
保護素子は、過電流を保護する電流ヒューズと、過電流と過電圧から保護するヒューズがある。過電流を保護する電流ヒューズは、電気回路に直列に接続され、機器内で発生した電気ショート等による過電流により直ちに電流経路を遮断し、回路を構成する電線や機器を火災等の事故から守ることができる。過電流保護ヒューズは、構造が比較的簡単であり、過電流が流れると、断面積の小さいヒューズの可溶導体エレメント部分がジュール熱により融点に達して溶断し、電流経路を遮断する。
【0004】
過電流保護ヒューズとしては、例えば、ガラス管ヒューズ、ブレードヒューズ、スローブローヒューズ、EVヒューズがある。ガラス管ヒューズは、例えばエンジン点火時の過電流を保護する用途に用いられる。ブレードヒューズは、ガラス管ヒューズよりも単純な構造を有し、ガラス管ヒューズと同じく例えば自動車用のヒューズとして使用されている。スローブローヒューズは、自動車に搭載されるパワーウィンドウ、オートワイパー、エアコン等に使用されるモーター部品の過電流を保護する用途に用いられる。EVヒューズは、ガソリン自動車と異なり、高電圧となるハイブリッド自動車、電気自動車の電気系統の過電流を保護する用途に用いられる。
【0005】
過電流保護ヒューズの機能に加え過電圧保護機能を有するヒューズは、発熱体を備え、発熱体が発熱することでヒューズを溶断するものが主流となっている。具体的に、過電圧保護ヒューズは、あらかじめリチウムイオン電池の電圧や温度をモニターしているICが異常と判断した時に、その信号をON・OFF切替スイッチとして機能するFETに伝え、FETがON状態の時に、発熱体への通電が始まり、その電流により加熱した発熱体の熱により、ヒューズを溶断して電流経路を遮断する。
【0006】
過電流保護、過電圧保護のいずれのタイプの保護素子も、異常と判断された場合は、安全のために速やかな回路遮断が必要である。また、一般的には、保護素子の構造として、厚膜印刷回路基板とヒューズエレメントで構成されている(特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、リチウムイオン電池などはモバイル機器用途からEVや蓄電池などの用途への展開が広がっていることから、保護素子としても電流の定格電圧の高電圧化や、電流容量の大容量化への対応が求められている。
【0009】
ここで、電流の定格電圧の高電圧化を図ると、ヒューズエレメントの溶断後において電極間にスパーク(放電)が発生し易くなり、このスパークが繰り返されることで、トラッキング現象が生じる。また、ヒューズエレメントの溶断を妨げる、未切断に繋がる等、ヒューズエレメントの溶断後の絶縁性を悪化させるおそれがある。
【0010】
また、定格電圧の高電圧化には、部品サイズを大きくすれば実現できるが、ケースの内部空間を拡大することにより部品サイズが大きくなるほか、費用も上がり使用者側の使い勝手が悪くなる。
【0011】
また、電流容量の大容量化を図るためには、ヒューズエレメントの体積や、絶縁基板上の導体厚みを厚くする方法が考えられるが、ヒューズエレメントの体積の増加や導体厚みが厚くなるに従ってヒューズエレメントの溶断時の衝撃が激しくなり、溶融飛散物の付着などにより溶断後の絶縁性が悪化するおそれがある。また、ヒューズエレメントの溶断後において溶融飛散物を介したトラッキング現象が生じやすくなる。
【0012】
図30は、従来の高電圧に対応した保護素子100の一例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のD-D’断面図であり、(C)は(A)のP-P’断面図である。
図31は保護素子100の上側ケースを省略して示す平面図であり、(A)は動作前の状態、(B)は過電流による自己発熱による遮断が起きた状態、(C)は遮断後の状態を模式的に示す。
【0013】
図30、
図31に示すように、保護素子100は、上下一対のケース101と、可溶導体からなるヒューズエレメント102と、ヒューズエレメント102を溶断する溶断部材103を備える。溶断部材103は、絶縁基板104と、ヒューズエレメント102と接続された中間電極105と、通電することにより発熱してヒューズエレメント102を溶断する発熱体106が設けられている。下ケース101aは、側縁部に、ヒューズエレメント102と接続された一対のヒューズ端子107,108と、発熱体106と接続された発熱体端子109が載置され、中央部に、絶縁基板104が載置されている。また、発熱体106は、一端が中間電極105と接続され、他端が発熱体端子109を介して外部電源と接続されている。
【0014】
ヒューズエレメント102は、ハンダ等の導電材料によってヒューズ端子107,108及び中間電極105と接続されている。また、ヒューズエレメント102は、絶縁層及び中間電極105を介して発熱体106と重畳されている。保護素子100は、ヒューズ端子107,108が外部回路の端子と接続されることにより、外部回路の電流経路上にヒューズエレメント102が組み込まれる。そして、保護素子100は、外部電源から発熱体106に通電されると発熱体106の熱によりヒューズエレメント102を溶断する。また、外部回路に異常電流が流れた場合には、ヒューズエレメント102が自己発熱(ジュール熱)によって溶断することにより、外部回路の電流経路を遮断する。
【0015】
ここで、従来の高電圧に対応した保護素子においては、定格電圧が80V程度が限界であり、これよりも大きい電圧、例えば100V以上の電圧下では、ヒューズエレメント102の溶断衝撃も大きくなり、ヒューズエレメント102が溶融した煤状の飛散物102aがケース内面や絶縁基板表面に付着する(
図31(C)参照)。これにより、ヒューズエレメント102の溶断後に、ヒューズ端子107-絶縁基板104-ヒューズ端子108の間でスパーク(放電)が発生し、その後トラッキングが起こるリスクがある。
【0016】
そこで、本技術は、ヒューズエレメントの溶断後における絶縁性を向上させることができる保護素子、及びこれを用いたバッテリパックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題を解決するために、本技術に係る保護素子は、ケースと、上記ケースに収納されたヒューズエレメントと、上記ヒューズエレメントの通電方向に離間して上記ケースの側面部に支持され、上記ヒューズエレメントと接続された一対のヒューズ端子と、上記一対のヒューズ端子の間において上記ヒューズエレメントの少なくとも一方の面に接続され、上記ヒューズエレメントを溶断する溶断部材とを備え、上記溶断部材は、絶縁基板と、上記絶縁基板の上記ヒューズエレメントと接する表面に設けられ上記ヒューズエレメントと接続された中間電極と備え、上記絶縁基板と上記一対のヒューズ端子の少なくとも一方との間において、上記ヒューズエレメントの上方及び下方に空間を有し、上記ヒューズエレメントと上記絶縁基板とが重畳する領域において、上記ヒューズエレメントと上記絶縁基板の上方及び下方に空間を有するものである。
【0018】
また、本技術に係るバッテリパックは、1つ以上のバッテリセルと、上記バッテリセルの充放電経路上に接続され、該充放電経路を遮断する保護素子とを備え、上記保護素子は、上記記載の保護素子であるものである。
【発明の効果】
【0019】
本技術によれば、ヒューズ端子と絶縁基板の間に空間があるため、ヒューズ端子-中間電極間においてヒューズエレメントのジュール熱が放熱され難くなる。また、ヒューズエレメント及び絶縁基板の上方及び下方に空間があるため、絶縁基板の表面上に、ヒューズエレメントが溶融時に球状に膨張し、溶融導体が中間電極やヒューズ端子上に凝集するとともに、ヒューズエレメントのジュール熱が放熱され難くなる。これにより、ヒューズエレメントが広範囲に加熱されることで、融点に達したヒューズエレメントが溶断する際の爆発的な熱衝撃が分散、緩和される。したがって、本技術によれば、高電圧での過電流による自己発熱遮断においても、安全に遮断でき、また、溶融飛散物による絶縁性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本技術が適用された保護素子の上面図である。
【
図2】
図2は、保護素子の上側ケースを省略して示す平面図である。
【
図5】
図5は、上側ケースと下側ケースを示す図であり、(A)は上側ケースの平面図、(B)は下側ケースの平面図、(C)は上側ケース及び下側ケースを突き合せた状態を示す断面である。
【
図6】
図6は、溶断部材を示す図であり、(A)は平面図、(B)は底面図である。
【
図7】
図7は、ヒューズエレメントの一例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図3に示す保護素子においてヒューズエレメントが溶断した状態を示す断面図である。
【
図9】
図9は、バッテリパックの構成例を示す回路図である。
【
図11】
図11は、発熱体を絶縁基板の裏面に形成した保護素子を示す断面図である。
【
図13】
図13は、
図11に示す保護素子の絶縁基板を示す図であり、(A)は平面図、(B)は底面図である。
【
図14】
図14は、絶縁基板の裏面に保持電極が形成された保護素子を示す断面図である。
【
図16】
図16は、
図14に示す保護素子の絶縁基板を示す図であり、(A)は平面図、(B)は底面図である。
【
図17】
図17は、
図14に示す保護素子において、ヒューズエレメントが溶断した状態を示す断面図である。
【
図19】
図19は、絶縁基板の裏面に発熱体、絶縁層及び保持電極が形成された保護素子を示す断面図である。
【
図21】
図21は、
図19に示す保護素子の絶縁基板を示す図であり、(A)は平面図、(B)は底面図である。
【
図22】
図22は、
図19に示す保護素子において、ヒューズエレメントが溶断した状態を示す断面図である。
【
図23】
図23は、ヒューズエレメントの一面及び他面に、絶縁基板の表面に発熱体が形成された溶断部材が接続された保護素子を示す断面図である。
【
図26】
図26は、
図23に示す保護素子において、ヒューズエレメントが溶断した状態を示す断面図である。
【
図27】
図27は、ヒューズエレメントの一面及び他面に、絶縁基板の裏面に発熱体が形成された溶断部材が接続された保護素子を示す断面図である。
【
図29】
図29は、
図27に示す保護素子において、ヒューズエレメントが溶断した状態を示す断面図である。
【
図30】
図30は、従来の高電圧に対応した保護素子100の一例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のD-D’断面図である。
【
図31】
図31は、保護素子100の上側ケースを省略して示す平面図であり、(A)は動作前の状態、(B)は過電流による自己発熱による遮断が起きた状態、(C)は遮断後の状態を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本技術が適用された保護素子、及びバッテリパックについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本技術は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0022】
[保護素子]
図1は本技術が適用された保護素子1の上面図であり、
図2は保護素子1の上側ケースを省略して示す平面図であり、
図3は
図1のD-D’断面図であり、
図4は
図1のP-P’断面図である。
【0023】
図1~
図4に示すように、本発明が適用された保護素子1は、ケース2と、ケース2に収納されたヒューズエレメント3と、ヒューズエレメント3の通電方向に離間してケース2の側面部に支持され、ヒューズエレメント3と接続された一対のヒューズ端子4a,4bと、一対のヒューズ端子4a,4bの間においてヒューズエレメント3の少なくとも一方の面に接続され、ヒューズエレメント3を溶断する溶断部材5とを備える。溶断部材5は、絶縁基板6と、絶縁基板6のヒューズエレメント3と接する表面6aに設けられヒューズエレメント3と接続された中間電極7と備える。そして、保護素子1は、絶縁基板6と一対のヒューズ端子4a,4bの少なくとも一方との間において、ヒューズエレメント3の上方及び下方に空間10を有し、ヒューズエレメント3と絶縁基板6とが重畳する領域において、ヒューズエレメント3と絶縁基板の上方及び下方に空間11を有する。
【0024】
ヒューズエレメント3は、中間電極7及び一対のヒューズ端子4a,4bと、接続ハンダ13等の接合材料によって接続されている。また、ヒューズエレメント3は、ヒューズ端子4a,4bが外部回路の電流経路上の端子と接続されることにより、当該外部回路の電流経路の一部に組み込まれる。ヒューズエレメント3は、所定の定格電流が流れている間は、自己発熱(ジュール熱)によっても溶断することがない。そして、定格よりも高い値の電流が流れると、自己発熱によって溶融し、ヒューズ端子4a,4b間の電流経路を遮断する。
【0025】
このような保護素子1によれば、ヒューズ端子4a,4bと絶縁基板6の間に空間10があるため、ヒューズ端子4a,4b-中間電極7間においてヒューズエレメント3のジュール熱が放熱され難くなる。また、ヒューズエレメント3及び絶縁基板6の上方及び下方に空間11があるため、絶縁基板6の表面6a上に、ヒューズエレメント3が溶融時に球状に膨張し、溶融導体が中間電極7やヒューズ端子上に凝集するとともに、ヒューズエレメント3のジュール熱が放熱され難くなる。
【0026】
これにより、ヒューズエレメント3が広範囲に加熱されることで、融点に達したヒューズエレメント3が溶断する際の爆発的な熱衝撃が分散、緩和される。したがって、保護素子1は、高電圧での過電流による自己発熱遮断においても、安全に遮断でき、また、溶融飛散物による絶縁性の低下を抑制することができる。
【0027】
以下、保護素子1を構成するケース2、ヒューズエレメント3、ヒューズ端子4a,4b、溶断部材5について詳細に説明する。
【0028】
[ケース]
ケース2は、例えば、各種エンジニアリングプラスチック、熱可塑性プラスチック、セラミックス、ガラスエポキシ基板等の絶縁性を有する部材を用いて形成することができる。ケース2は、ヒューズエレメント3及び溶断部材5を収納するとともに、ヒューズ端子4a,4b及び発熱体端子15を支持し、ケース内外にわたって導出させる。また、ケース2は、ヒューズエレメント3の溶融時に溶融導体3aが球状に膨張し、中間電極7やヒューズ端子4a,4b上に凝集するのに十分な内部空間を有する。
【0029】
図3、
図4に示すように、ケース2は、上側ケース21と下側ケース22が組み合わされて形成されている。
図5は、上側ケース21と下側ケース22を示す図であり、(A)は上側ケース21の平面図、(B)は下側ケース22の平面図、(C)は上側ケース21及び下側ケース22を突き合せた状態を示す断面である。上側ケース21には側壁下面に嵌合凹部23が形成されている。下側ケース22は、側壁上面に嵌合凹部23と嵌合する嵌合凸部24が形成されている。上下ケース21,22は、嵌合凹部23に嵌合凸部24が嵌合することにより組み合わされ、側壁上下面に設けられた接着材25によって固着される。
【0030】
図5(B)に示すように、下側ケース22は、略方形状に形成され、嵌合凸部24が形成されるとともに後述するヒューズ端子4a,4b及び発熱体端子15を支持する側縁部22aと、側縁部22aに囲まれた領域として設けられ、ヒューズエレメント3に接続された溶断部材5が位置する中空部22bを有する。側縁部22aは、下側ケース22の内面全周にわたって張り出して形成され、ヒューズ端子4a,4b及び発熱体端子15が載置され、ケース2の内外にわたって支持する。
図3及び
図4に示すように、ヒューズ端子4a,4b及び発熱体端子15は、各先端面が側縁部22aの内側端と面一となるように支持される。中空部22bは、ヒューズエレメント3に接続された溶断部材5が位置するとともに、溶断部材5の下方に内部空間を有し、溶断部材5を中空に保持可能となっている。
【0031】
図5(A)に示すように、上側ケース21は、下側ケース22と同様に略方形状に形成され、下側ケース22と突き合わせ結合されることによりヒューズエレメント3及びヒューズエレメント3に接続された溶断部材5を覆う。また、上側ケース21は、ヒューズエレメント3の上方に、ヒューズ端子4a,4b及び中間電極7に溶融導体3aが濡れ広がり凝集可能な内部空間を有する。
【0032】
[ヒューズ端子]
ヒューズ端子4a,4bは、純銅、銅合金等の公知の端子材料を用いて形成することができる。また、ヒューズ端子4a,4bは、例えば矩形板状をなし、ヒューズエレメント3の通電方向に離間して、下側ケース22の側縁部22aに支持され、ケース2内から外部へ導出されている。
【0033】
ヒューズ端子4a,4bは、ケース2の外部に導出された先端部にネジ孔14が設けられ、外部回路に設けられた接続電極にねじ止め等により接続可能とされている。ヒューズ端子4a,4bは、それぞれヒューズエレメント3の端部と接続ハンダ13等の接合材料によって接続される。なお、ネジ孔14が無く、接続ハンダ等を用いて接続してもよい。
【0034】
これにより、ヒューズ端子4a,4bは、ヒューズエレメント3を介して電気的に接続される。また、ヒューズエレメント3が溶断されることによって接続が遮断される。
【0035】
[溶断部材]
溶断部材5は、一対のヒューズ端子4a,4bの間においてヒューズエレメント3の少なくとも一方の面に接続され、ヒューズエレメント3を溶断するものである。
【0036】
[絶縁基板]
溶断部材5は、絶縁基板6を備える。絶縁基板6は、たとえば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材によって形成される。その他、絶縁基板6は、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよい。絶縁基板6の表面6aにはヒューズエレメント3と接続される中間電極7が形成されている。
【0037】
また、絶縁基板6は、表面6aに形成された中間電極7を介してヒューズエレメント3に物理的に接続されている。本技術にかかる絶縁基板6においては、
図2~4に示すように、ヒューズエレメント3と接続される中間電極7が形成されている面を表面6aとし、表面6aの反対側の面を裏面6bとする。
【0038】
[中間電極]
中間電極7は、AgやCu等の導電パターンによって形成されている。また、中間電極7の表面上には、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の被膜が、メッキ処理等の公知の手法によりコーティングされていることが好ましい。
【0039】
[発熱体/絶縁層]
本技術が適用された保護素子は、絶縁基板6に、発熱によりヒューズエレメント3を溶断する発熱体8と、発熱体8を被覆する絶縁層9を備えることが好ましい。
図2~
図4に示す保護素子1では、絶縁基板6の表面6aに、発熱体8及び絶縁層9が設けられている。
【0040】
発熱体8は、比較的抵抗値が高く通電すると発熱する導電性を有する部材であって、例えばニクロム、W、Mo、Ru等又はこれらを含む材料からなる。発熱体8は、これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板6上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成することができる。
【0041】
図6に示すように、発熱体8は、一端が発熱体給電電極16と接続され、他端が発熱体電極17と接続されている。発熱体給電電極16は、発熱体8の一端と接続され発熱体8への給電端子となる電極であり、接続ハンダ13を介して発熱体端子15と接続されている(
図2、
図4参照)。また、発熱体8は、絶縁層9に被覆されるとともに、絶縁層9上に形成された中間電極7が重畳されている。
【0042】
発熱体端子15は、上述したヒューズ端子4a,4bと同様の材質、形状をなし、ヒューズ端子4a,4bと同様に下側ケース22の側縁部22aに支持され、ケース2内から外部へ導出されている。また、発熱体端子15は、ケース2の外部に導出された先端部にネジ孔14が設けられ、外部回路に設けられた接続電極にねじ止め等により接続可能とされている。
【0043】
また、
図4に示すように、発熱体端子15と絶縁基板6とは略同じ高さに設けられ、発熱体端子15と絶縁基板6の側面が、接続ハンダ13を介して密着されている。これにより、絶縁基板6は、発熱体給電電極16から発熱体端子15にかけて塗布される接続ハンダ13によって、中空部22bに保持される。すなわち、絶縁基板6はケース2と発熱体端子15を介して接続される以外は、中空部22bに中空状に保持されている。
【0044】
発熱体給電電極16は、外部回路と接続されている発熱体端子15と接続されることにより、外部回路に設けられた電源と接続され、発熱体8へ給電可能とされる。また、発熱体電極17は、上述した中間電極7が接続されている。これにより、中間電極7は、発熱体電極17を介して発熱体8と接続された発熱体引出電極として機能する。
【0045】
発熱体給電電極16及び発熱体電極17は、それぞれ、AgやCu等の導電パターンによって形成されている。また、発熱体給電電極16及び発熱体電極17の表面上には、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の被膜が、メッキ処理等の公知の手法によりコーティングされていることが好ましい。これにより、保護素子1は、発熱体給電電極16及び発熱体電極17の酸化を防止し、導通抵抗の上昇に伴う定格の変動を防止することができる。
【0046】
絶縁層9は、発熱体8の保護及び絶縁を図るために設けられ、例えばガラス層からなる。絶縁層9は、厚みが例えば10~40μmと薄く形成されている。なお、絶縁層9は、絶縁基板6の表面6aと発熱体8の間にも形成してもよい。
【0047】
[補助電極]
なお、絶縁基板6の表面6aには、補助電極18が設けられている。補助電極18は、中間電極7とともに、接続ハンダ13などの接合材料によりヒューズエレメント3に接続されるとともに、溶融導体3aを保持するものである。補助電極18は、中間電極7を挟んで絶縁基板6のヒューズエレメント3の延在方向の両側縁部に形成されている。
【0048】
[溶断部材の形成工程]
溶断部材5は、絶縁基板6の表面6aに、いずれもスクリーン印刷等の公知の形成方法を用いて、発熱体給電電極16、発熱体電極17、補助電極18を形成した後、発熱体8を形成し、絶縁層9を積層形成する。次いで、中間電極7を形成する。溶断部材5は、中間電極7及び補助電極18が接続ハンダ13によりヒューズエレメント3に接続される。溶断部材5が接続されたヒューズエレメント3は、接続ハンダ13により下側ケース22の側縁部22aに支持されたヒューズ端子4a,4bに接続される。また、絶縁基板6の発熱体給電電極16が、接続ハンダ13により下側ケース22の側縁部22aに支持された発熱体端子15に接続される。
【0049】
[空間]
ここで、
図3に示すように、本技術が適用された保護素子1は、中間電極7とヒューズエレメント3が接続されるとともに、発熱体給電電極16が発熱体端子15と接続されることにより、溶断部材5がケース2内において中空に保持されている。これにより、絶縁基板6と一対のヒューズ端子4a,4bの少なくとも一方、好ましくは両方との間において、ヒューズエレメント3の上方及び下方に空間10が形成され、ヒューズエレメント3と絶縁基板6とが重畳する領域において、ヒューズエレメント3と絶縁基板6の上方及び下方に空間11が形成される。
【0050】
このような保護素子1は、ヒューズエレメント3に異常電流が通電されると、ヒューズ端子4a,4bと絶縁基板6の間に空間10があるため、ヒューズ端子4a,4b-中間電極7間においてヒューズエレメント3のジュール熱が放熱され難くなる。また、ヒューズエレメント3及び絶縁基板6の上方及び下方に空間11があるため、絶縁基板6の表面6a上に、ヒューズエレメント3が溶融時に球状に膨張し、溶融導体が中間電極7やヒューズ端子上に凝集するとともに、ヒューズエレメント3のジュール熱が放熱され難くなる。
【0051】
これにより、ヒューズエレメント3が広範囲に加熱されることで、融点に達したヒューズエレメント3が溶断する際の爆発的な熱衝撃が分散、緩和される。したがって、保護素子1は、高電圧での過電流による自己発熱遮断においても、安全に遮断できる。また、溶融飛散物を介したスパークやトラッキングの発生を防止し、絶縁性の低下を抑制することができる。
【0052】
[D3≧7mm]
保護素子1は、
図3に示すヒューズエレメント3の延在方向の断面視において、一対のヒューズ端子4a,4b間の距離D3が大きいほど好ましく、なかでもD3が7mm以上であることが好ましい。すなわち、ヒューズエレメント3のジュール熱の放熱抑制の見地から、一対のヒューズ端子4a,4b間の距離D3は大きいほど好ましいが、ヒューズ端子4a,4bが離れるほど端子間の抵抗値が上昇する。そのため、大電流化を図るために、ヒューズエレメント3の体積を増加させる必要が生じる。ヒューズ端子4a,4b間の距離D3を7mm以上とすることは、部品を小型にしつつ、電流定格の大容量化、及び高電圧化を図るうえで好ましい。
【0053】
[D1、D2≧1mm]
保護素子1は、
図3に示すヒューズエレメント3の延在方向の断面視において、一方のヒューズ端子4aと、絶縁基板6のヒューズ端子4aと対向する一方の側縁部との距離D1を1mm以上とすることが好ましい。保護素子1は、絶縁基板6と一方のヒューズ端子4aとの間において、ヒューズエレメントの上方及び下方に空間10を有し、ヒューズエレメント3の延在方向の断面視において、空間10の距離はヒューズ端子4aと絶縁基板6の側縁部との距離D1として規定される。
【0054】
すなわち、保護素子1は、ヒューズ端子4aが絶縁基板6にオーバーラップする構成(D1<0mm)や、ヒューズ端子4aが絶縁基板6に接触する構成(D1=0mm)が除かれる。
【0055】
そして、保護素子1は、当該距離D1を1mm以上とする、より好ましくは1mmより大きくすることで、ヒューズエレメント3の放熱抑制の効果をより奏することができる。
【0056】
同様の理由で、保護素子1は、
図3に示すヒューズエレメント3の延在方向の断面視において、他方のヒューズ端子4bと、絶縁基板6のヒューズ端子4bと対向する他方の側縁部との距離D2を1mm以上とすることが好ましい。すなわち、保護素子1は、ヒューズ端子4bが絶縁基板6にオーバーラップする構成(D2<0mm)や、ヒューズ端子4bが絶縁基板6に接触する構成(D2=0mm)が除かれる。
【0057】
[W<D3]
また、保護素子1は、
図3に示すヒューズエレメント3の延在方向の断面視において、絶縁基板6の一対のヒューズ端子4a,4b間方向の幅Wが、一対のヒューズ端子4a,4b間の距離D3より小さい。これにより、保護素子1は、絶縁基板6とヒューズ端子4a,4bとの間において、ヒューズエレメントの上方及び下方に空間10を設けることができる。
【0058】
[D3-W<2mm / W<5mm]
そして、保護素子1は、ヒューズ端子4aと絶縁基板6の側縁部との距離D1及びヒューズ端子4bと絶縁基板6の側縁部との距離D2を1mm以上確保するために、以下の条件を満たすことが好ましい。
W<5mm
D3-W<2mm
W:絶縁基板6の一対のヒューズ端子4a,4b間方向の幅
D3:一対のヒューズ端子4a,4b間の距離
【0059】
[ヒューズエレメント]
次いで、ヒューズエレメント3について説明する。ヒューズエレメント3は、ヒューズ端子4a,4b間にわたって実装され、発熱体8の通電による発熱、又は定格を超える電流が通電することによる自己発熱(ジュール熱)により溶断し、ヒューズ端子4aとヒューズ端子4bとの間の電流経路を遮断するものである。
【0060】
ヒューズエレメント3は、発熱体8の通電による発熱、又は過電流状態によって溶融する導電性の材料であればよく、例えば、SnAgCu系のPbフリーハンダのほか、BiPbSn合金、BiPb合金、BiSn合金、SnPb合金、PbIn合金、ZnAl合金、InSn合金、PbAgSn合金等を用いることができる。
【0061】
また、ヒューズエレメント3は、高融点金属と、低融点金属とを含有する構造体であってもよい。例えば、
図7に示すように、ヒューズエレメント3は、内層と外層とからなる積層構造体であり、内層として低融点金属層26、低融点金属層26に積層された外層として高融点金属層27を有する。ヒューズエレメント3は、ヒューズ端子4a,4b、中間電極7及び補助電極18上に接続ハンダ13等の接合材料を介して接続される。
【0062】
低融点金属層26は、好ましくは、ハンダ又はSnを主成分とする金属であり、「Pbフリーハンダ」と一般的に呼ばれる材料である。低融点金属層26の融点は、必ずしもリフロー炉の温度よりも高い必要はなく、200℃程度で溶融してもよい。高融点金属層27は、低融点金属層26の表面に積層された金属層であり、例えば、Ag若しくはCu又はこれらのうちのいずれかを主成分とする金属であり、ヒューズ端子4a,4b、中間電極7及び補助電極18とヒューズエレメント3との接続をリフローによって行う場合においても溶融しない高い融点を有する。
【0063】
このようなヒューズエレメント3は、低融点金属箔に、高融点金属層をメッキ技術を用いて成膜することによって形成することができ、あるいは、他の周知の積層技術、膜形成技術を用いて形成することもできる。ヒューズエレメント3は、低融点金属層26の全面が高融点金属層27によって被覆された構造としてもよく、相対向する一対の側面を除き被覆された構造であってもよい。また、ヒューズエレメント3は、高融点金属層27を内層とし、低融点金属層26を外層とした被覆構造としてもよい。さらに、被覆構造以外にも、下層を低融点金属層26とし上層を甲融点金属層27とした2層構造としたり、低融点金属層と高融点金属層とが交互に積層された3層以上の多層構造としたりする等の積層構造や、外層の一部に開口部を設けて内層の一部を露出させる構造など、様々な構成によって形成することができる。
【0064】
ヒューズエレメント3は、低融点金属層26と高融点金属層27の被覆構造や積層構造を備えることによって、リフロー温度が低融点金属層26の溶融温度を超えた場合であっても、ヒューズエレメント3として形状を維持することができ、溶断するに至らない。したがって、ヒューズ端子4a,4b、中間電極7及び補助電極18とヒューズエレメント3との接続を、リフローによって効率よく行うことができ、また、リフローによってもヒューズエレメント3の変形に伴って局所的に抵抗値が高く又は低くなる等により所定の温度で溶断しない、あるいは所定の温度未満で溶断する等の溶断特性の変動を防止することができる。したがって、保護素子1は、発熱体8の発熱によって速やかにヒューズエレメント3を溶断することができる(
図8)。
【0065】
また、ヒューズエレメント3は、所定の定格電流が流れている間は、自己発熱によっても溶断することがない。そして、定格よりも高い値の電流が流れると、自己発熱(ジュール熱)によって溶融し、ヒューズ端子4a,4b間の電流経路を遮断する。このとき、上述したように、保護素子1は、ヒューズ端子4a,4bと絶縁基板6の間に空間10を設け、また、ヒューズエレメント3及び絶縁基板6の上方及び下方に空間11を設けることにより、ヒューズエレメント3のジュール熱が放熱されにくくなり、ヒューズエレメント3が広範囲に加熱されることで、融点に達したヒューズエレメント3が溶断する際の爆発的な熱衝撃が分散、緩和される。したがって、保護素子1は、高電圧での過電流による自己発熱遮断においても、安全に遮断できる。また、溶融飛散物を介したスパークやトラッキングの発生を防止し、絶縁性の低下を抑制することができる。
【0066】
また、ヒューズエレメント3は、発熱体8の発熱又は過電流による自己発熱の際に、先行して溶融した低融点金属層26が高融点金属層27を浸食(ハンダ食われ)することにより、高融点金属層27が溶融温度よりも低い温度で溶解する。したがって、ヒューズエレメント3は、低融点金属層26による高融点金属層27の浸食作用を利用して短時間で溶断することができる。また、ヒューズエレメント3は、中間電極7及び補助電極18による溶融導体3aの物理的な引き込み作用により分断されることから、速やかに、かつ確実に、ヒューズ端子4a,4b間の電流経路を遮断することができる。
【0067】
また、ヒューズエレメント3は、低融点金属層26の体積を、高融点金属層27の体積よりも多く形成するようにしてもよい。ヒューズエレメント3は、過電流による自己発熱又は発熱体8の発熱によって加熱され、低融点金属が溶融することにより高融点金属を溶食し、これにより速やかに溶融、溶断することができる。したがって、ヒューズエレメント3は、低融点金属層26の体積を高融点金属層27の体積よりも多く形成することにより、この溶食作用を促進し、速やかにヒューズ端子4a,4b間を遮断することができる。
【0068】
また、内層となる低融点金属層26に高融点金属層27が積層されて構成されたヒューズエレメント3においては、溶断温度を従来の高融点金属からなるチップヒューズ等よりも大幅に低減することができる。したがって、ヒューズエレメント3は、同一サイズのチップヒューズ等に比して、断面積を大きくでき電流定格を大幅に向上させることができる。また、同じ電流定格をもつ従来のチップヒューズよりも小型化、薄型化を図ることができ、速溶断性に優れる。
【0069】
また、ヒューズエレメント3は、保護素子1が組み込まれた電気系統に異常に高い電圧が瞬間的に印加されるサージへの耐性(耐パルス性)を向上することができる。すなわち、ヒューズエレメント3は、例えば100Aの電流が数msec流れたような場合にまで溶断してはならない。この点、極短時間に流れる大電流は導体の表層を流れることから(表皮効果)、外層として抵抗値の低いAgメッキ等の高融点金属層27が設けられたヒューズエレメント3においては、サージによって印加された電流を流しやすく、自己発熱による溶断を防止することができる。したがって、ヒューズエレメント3は、従来のハンダ合金からなるヒューズに比して、大幅にサージに対する耐性を向上させることができる。
【0070】
なお、ヒューズエレメント3は、酸化防止、及び溶断時の濡れ性の向上等のため、フラックス(図示せず)を塗布してもよい。
【0071】
[回路構成例]
このような保護素子1は、
図9に示すように、例えばリチウムイオン二次電池のバッテリパック40内の回路に組み込まれて用いられる。バッテリパック40は、例えば、合計4個のリチウムイオン二次電池のバッテリセル41a~41dからなるバッテリスタック45を有する。
【0072】
バッテリパック40は、バッテリスタック45と、バッテリスタック45の充放電を制御する充放電制御回路46と、バッテリスタック45の異常時に充放電経路を遮断する本発明が適用された保護素子1と、各バッテリセル41a~41dの電圧を検出する検出回路47と、検出回路47の検出結果に応じて保護素子1の動作を制御するスイッチ素子となる電流制御素子48とを備える。
【0073】
バッテリスタック45は、過充電及び過放電状態から保護するための制御を要するバッテリセル41a~41dが直列接続されたものであり、バッテリパック40の正極端子40a、負極端子40bを介して、着脱可能に充電装置42に接続され、充電装置42からの充電電圧が印加される。充電装置42により充電されたバッテリパック40は、正極端子40a、負極端子40bをバッテリで動作する電子機器に接続することによって、この電子機器を動作させることができる。
【0074】
充放電制御回路46は、バッテリスタック45と充電装置42との間の電流経路に直列接続された2つの電流制御素子43a、43bと、これらの電流制御素子43a、43bの動作を制御する制御部44とを備える。電流制御素子43a、43bは、たとえば電界効果トランジスタ(以下、FETという。)により構成され、制御部44によりゲート電圧を制御することによって、バッテリスタック45の電流経路の充電方向及び/又は放電方向への導通と遮断とを制御する。制御部44は、充電装置42から電力供給を受けて動作し、検出回路47による検出結果に応じて、バッテリスタック45が過放電又は過充電であるとき、電流経路を遮断するように、電流制御素子43a、43bの動作を制御する。
【0075】
保護素子1は、例えば、バッテリスタック45と充放電制御回路46との間の充放電電流経路上に接続され、その動作が電流制御素子48によって制御される。
【0076】
検出回路47は、各バッテリセル41a~41dと接続され、各バッテリセル41a~41dの電圧値を検出して、各電圧値を充放電制御回路46の制御部44に供給する。また、検出回路47は、いずれか1つのバッテリセル41a~41dが過充電電圧又は過放電電圧になったときに電流制御素子48を制御する制御信号を出力する。
【0077】
電流制御素子48は、たとえばFETにより構成され、検出回路47から出力される検出信号によって、バッテリセル41a~41dの電圧値が所定の過放電又は過充電状態を超える電圧になったとき、保護素子1を動作させて、バッテリスタック45の充放電電流経路を電流制御素子43a、43bのスイッチ動作によらず遮断するように制御する。
【0078】
以上のような構成からなるバッテリパック40に用いられる、本発明が適用された保護素子1は、
図10に示すような回路構成を有する。すなわち、保護素子1は、ヒューズ端子4aがバッテリスタック45側と接続され、ヒューズ端子4bが正極端子40a側と接続され、これによりヒューズエレメント3がバッテリスタック45の充放電経路上に直列に接続される。また、保護素子1は、発熱体8が発熱体給電電極16及び発熱体端子15を介して電流制御素子48と接続されるとともに、発熱体8がバッテリスタック45と接続される。これにより、発熱体8は、一端が発熱体電極17及び中間電極7を介してヒューズエレメント3及びバッテリスタック45の一端と接続され、他端が発熱体端子15を介して電流制御素子48及びバッテリスタック45の他端と接続される。これにより、電流制御素子48によって通電が制御される発熱体8への給電経路が形成される。
【0079】
[保護素子の動作]
発熱体8は、保護素子1が外部回路基板に実装されることにより、発熱体端子15を介して外部回路に形成された電流制御素子48等と接続され、平常時においては通電及び発熱が規制されている。そして、検出回路47がバッテリセル41a~41dのいずれかの異常電圧を検出すると、電流制御素子48へ遮断信号を出力する。すると、電流制御素子48は、発熱体8に通電するよう電流を制御する。発熱体8は、バッテリスタック45から電流が流れることにより発熱を開始する。
【0080】
発熱体8の熱は、発熱体電極17及び中間電極7を経てヒューズエレメント3に伝達され、また、絶縁基板6から中間電極7や補助電極18を経てヒューズエレメント3に伝わり、ヒューズエレメント3を溶融させる。ヒューズエレメント3は、溶融導体3aが中間電極7、補助電極18上に凝集し、ヒューズ端子4aとヒューズ端子4bとの間で溶断される(
図8)。これにより、バッテリパック40の充放電経路を遮断することができる。
【0081】
また、保護素子1は、ヒューズエレメント3に定格を超える過電流が通電された場合にも、ヒューズエレメント3が自己発熱により溶融し、ヒューズ端子4aとヒューズ端子4bとの間で溶断される。これにより、バッテリパック40の充放電経路を遮断することができる。
【0082】
また、保護素子1は、ヒューズエレメント3を高融点金属と低融点金属とを含有させて形成することにより、高融点金属の溶融前に低融点金属が溶融し、溶融した低融点金属による高融点金属の溶食作用を利用して短時間でヒューズエレメント3を溶解させることができる。
【0083】
ヒューズエレメント3が溶断することにより、バッテリスタック45の充放電経路がヒューズ端子4a,4b間で遮断する。また、発熱体8は、ヒューズエレメント3が溶断することにより、自身への給電経路も遮断されることから発熱が停止する。
【0084】
本発明に係る保護素子1は、リチウムイオン二次電池のバッテリパックに用いる場合に限らず、電気信号による電流経路の遮断を必要とする様々な用途にももちろん応用可能である。
【0085】
[変形例1]
次いで、本技術が適用された保護素子の変形例について説明する。なお、以下の説明において、上述した保護素子1と同一の部材については同一の符号を付して、その詳細を省略することがある。
図11に示すように、本技術が適用された保護素子は、発熱体8を絶縁基板6の裏面6bに形成してもよい。
図11は、発熱体8を絶縁基板6の裏面6bに形成した保護素子50を示す断面図である。
図12は、保護素子50の上側ケース21を省略して示す平面図である。
図13は、保護素子50の絶縁基板6を示す図であり、(A)は平面図、(B)は底面図である。
【0086】
絶縁基板6は、表面6aに中間電極7及び補助電極18が形成され、裏面6bに発熱体8及び絶縁層9が形成されている。また、絶縁基板6は、発熱体給電電極16が表面6a及び裏面6bの一側縁部にそれぞれ形成されている。表面6aに形成された発熱体給電電極16aと裏面6bに形成された発熱体給電電極16bは、キャスタレーションを介して連続されている。裏面側発熱体給電電極16bは発熱体8と接続されている。表面側発熱体給電電極16aは発熱体端子15と接続されている。
【0087】
同様に、発熱体電極17が表面6a及び裏面6bの他側縁部にそれぞれ形成されている。表面6aに形成された発熱体電極17aと裏面6bに形成された発熱体電極17bは、導電スルーホールを介して連続されている。裏面側発熱体電極17bは発熱体8と接続されている。表面側発熱体電極17aは中間電極7と接続されている。
【0088】
[溶断部材の形成工程]
保護素子50に係る溶断部材5は、側面に予めキャスタレーション用のハーフスルーホールが形成された絶縁基板6の表面6aに、いずれもスクリーン印刷等の公知の形成方法を用いて、表面側発熱体給電電極16a、表面側発熱体電極17a及び補助電極18を形成した後、中間電極7を形成する。また、絶縁基板6の裏面6bも、スクリーン印刷等の公知の形成方法を用いて、裏面側発熱体給電電極16b、裏面側発熱体電極17bを形成する。次いで、発熱体8を形成し、絶縁層9を積層形成する。その後、ドリル等で貫通孔を形成し、発熱体電極17a,17bを連続させる。次いで、メッキ等により、表面側及び裏面側発熱体給電電極16a,16bを接続するキャスタレーションと、表面側及び裏面側発熱体電極17a,17bを接続する貫通孔を導通させる。溶断部材5は、中間電極7及び補助電極18とヒューズエレメント3が接続ハンダ13によりに接続される。溶断部材5が接続されたヒューズエレメント3は、接続ハンダ13により下側ケース22の側縁部22aに支持されたヒューズ端子4a,4bに接続される。また、絶縁基板6の表面側発熱体給電電極16aが、接続ハンダ13により下側ケース22の側縁部22aに支持された発熱体端子15に接続される。
【0089】
[変形例2]
次いで、本技術が適用された保護素子の他の変形例について説明する。なお、以下の説明において、上述した保護素子1,50と同一の部材については同一の符号を付して、その詳細を省略することがある。
図14に示す保護素子60は、絶縁基板6の裏面6bに、ヒューズエレメント3の溶断時にヒューズエレメント3の溶融導体3aを保持する保持電極61が形成されている。保持電極61は、絶縁基板6を貫通する貫通孔62によって、絶縁基板6の表面6aに形成された中間電極7と連続されている。
【0090】
図14は、絶縁基板6の裏面6bに保持電極61が形成された保護素子60を示す断面図である。
図15は、保護素子60の上側ケース21を省略して示す平面図である。
図16は、保護素子60の絶縁基板6を示す図であり、(A)は平面図、(B)は底面図である。
【0091】
絶縁基板6は、表面6aに発熱体8と、発熱体8を被覆する絶縁層9と、絶縁層9に積層された中間電極7と、補助電極18が形成されている。また、絶縁基板6は、裏面6bに、保持電極61が形成されている。そして、中間電極7と保持電極61とが絶縁基板6を貫通する貫通孔62によって、連続されている。
【0092】
図14に示す保護素子60においては、絶縁基板6の表面6aに2つの発熱体8が並列して形成されている。各発熱体8は、一端が発熱体給電電極16と接続され、他端が発熱体電極17と接続されている。なお、保護素子60において、発熱体8を1つ又は3つ以上設けてもよい。
【0093】
[保持電極]
絶縁基板6の裏面6bに形成された保持電極61は、絶縁基板6を介して、表面6aの略中央部に形成された中間電極7と対向する位置に形成されている。また、保持電極61は、保持電極61の表面から中間電極7の表面まで貫通する貫通孔62を介して中間電極7と連続されている。これにより、溶融したヒューズエレメント3の溶融導体3aが、貫通孔62を介して保持電極61側に吸引される。
【0094】
保持電極61は、AgやCuあるいはAgやCuを主成分とする合金材料等の公知の電極材料を用いて、スクリーン印刷等の公知の方法により形成することができる。
【0095】
貫通孔62は、ヒューズエレメント3が溶融すると、毛管現象によってヒューズエレメント3の溶融導体3aを吸引し、中間電極7上で保持する溶融導体3aの体積を減少させることができる。これにより、保護素子60の高定格化、高容量化に伴いヒューズエレメント3が大型化することにより溶融量が増大した場合にも、
図17に示すように、大量の溶融導体3aを保持電極61、中間電極7及び補助電極18によって保持することができ、ヒューズエレメント3を確実に溶断することができる。
【0096】
貫通孔62は、絶縁基板6の発熱体8が形成されていない領域に形成されている。
図14~
図16に示す溶断部材5では、並列する発熱体8の間の領域に形成されている。
【0097】
貫通孔62は、内面に導電層64が形成されている。導電層64は、保持電極61及び中間電極7と連続する。これにより、保持電極61と中間電極7が導電層64を介して電気的に接続される。また、導電層64が形成されることにより、発熱体8の熱が中間電極7及び貫通孔62を介して保持電極61にも伝わる。
【0098】
また、中間電極7は、溶断時には溶融導体3aが凝集するため、中間電極7と導電層64とが連続することにより、溶融導体3aを貫通孔62内に導きやすくすることができる。また、溶融導体3aは、導電層64と連続する保持電極61に濡れ広がり、保持される(
図17)。したがって、より多くの溶融導体3aを貫通孔62及び保持電極61に吸引、保持することができ、中間電極7及び補助電極18によって保持される溶融導体3aの体積を減少させ、確実に溶断することができる。
【0099】
導電層64は、例えば銅、銀、金、鉄、ニッケル、パラジウム、鉛、錫のいずれか、又はいずれかを主成分とする合金によって形成され、貫通孔62の内面を電解メッキや導電ペーストの印刷等の公知の方法により形成することができる。また、導電層64は、複数の金属線や、導電性を有するリボンの集合体を貫通孔62内に挿入することにより形成してもよい。
【0100】
なお、溶断部材5は、貫通孔62を複数形成してもよい。これにより、ヒューズエレメント3の溶融導体3aを吸引する経路を増やし、速やかにより多くの溶融導体3aを吸引することで、中間電極7及び補助電極18によって保持される溶融導体3aの体積を減少させることができる。
【0101】
[溶断部材の形成工程]
保護素子60に係る溶断部材5は、絶縁基板6の表面6aに、いずれもスクリーン印刷等の公知の形成方法を用いて、発熱体給電電極16、発熱体電極17及び補助電極18を形成した後、発熱体8を形成し、絶縁層9を積層形成する。次いで、中間電極7を形成する。また、絶縁基板6の裏面6bも、スクリーン印刷等の公知の形成方法を用いて、保持電極61を形成する。その後、ドリル等で貫通孔62を形成し、メッキ等により導電層64を形成することにより完成する。溶断部材5は、中間電極7及び補助電極18とヒューズエレメント3が接続ハンダ13により接続される。溶断部材5が接続されたヒューズエレメント3は、接続ハンダ13により下側ケース22の側縁部22aに支持されたヒューズ端子4a,4bに接続される。また、絶縁基板6の発熱体給電電極16が、接続ハンダ13により下側ケース22の側縁部22aに支持された発熱体端子15に接続される。
【0102】
図18は、保護素子60の回路図である。ヒューズエレメント3に接続された溶断部材5は、絶縁基板6の表面6aに形成された各発熱体8の一端が、発熱体電極17及び中間電極7を介してヒューズエレメント3と接続されている。また、溶断部材5は、各発熱体8の他端と接続された発熱体給電電極16が発熱体端子15と接続ハンダ13等の接続材料を介して接続されている。これにより、溶断部材5は、発熱体端子15を介して各発熱体8が外部回路に設けられた電源に接続され、各発熱体8が発熱可能とされる。
【0103】
[変形例3]
次いで、本技術が適用された保護素子の他の変形例について説明する。なお、以下の説明において、上述した保護素子1,50,60と同一の部材については同一の符号を付して、その詳細を省略することがある。
図19に示す保護素子70は、絶縁基板6の裏面6bに、発熱体8と、発熱体8を被覆する絶縁層9と、ヒューズエレメント3の溶断時にヒューズエレメント3の溶融導体3aを保持する保持電極61が形成されている。保持電極61は、絶縁基板6を貫通する貫通孔62によって、絶縁基板6の表面6aに形成された中間電極7と連続されている。
【0104】
図19は、絶縁基板6の裏面6bに発熱体8、絶縁層9及び保持電極61が形成された保護素子70を示す断面図である。
図20は、保護素子70の上側ケース21を省略して示す平面図である。
図21は、保護素子70の絶縁基板6を示す図であり、(A)は平面図、(B)は底面図である。
【0105】
絶縁基板6は、表面6aに中間電極7及び補助電極18が形成され、裏面6bに発熱体8、絶縁層9及び保持電極61が形成されている。また、絶縁基板6は、発熱体給電電極16が表面6a及び裏面6bの一側縁部にそれぞれ形成されている。表面6aに形成された発熱体給電電極16aと裏面6bに形成された発熱体給電電極16bは、キャスタレーションを介して連続されている。裏面側発熱体給電電極16bは発熱体8と接続されている。表面側発熱体給電電極16aは発熱体端子15と接続されている。
【0106】
また、絶縁基板6は、発熱体電極17が絶縁基板6の裏面6bの他側縁部に形成されている。発熱体電極17は発熱体8と接続されるとともに、絶縁層9上に積層された保持電極61と接続されている。
【0107】
保持電極61は、絶縁層9の上に積層され、絶縁基板6を介して、表面6aの略中央部に形成された中間電極7と対向する位置に形成されている。
【0108】
貫通孔62は、絶縁基板6の発熱体8が形成されていない領域に形成されている。
図19に示す溶断部材5では、並列する発熱体8の間の領域に形成されている。また、貫通孔62は、内面に保持電極61及び中間電極7と連続する導電層64が形成されている。
【0109】
これにより、絶縁基板6の表面6aに形成された中間電極7と裏面6bに形成された発熱体8は、発熱体電極17、保持電極61及び貫通孔62を介して連続されている。
【0110】
図19に示す保護素子70においては、絶縁基板6の裏面6bに2つの発熱体8が並列して形成されている。各発熱体8は、一端が裏面側発熱体給電電極16bと接続され、他端が発熱体電極17と接続されている。なお、保護素子70においても、発熱体8は1つ又は3つ以上設けてもよい。
【0111】
そして、保護素子70は、ヒューズエレメント3の溶断時に溶融導体3aが中間電極7に凝集すると、溶融導体3aを貫通孔62内に導き、溶融導体3aを導電層64と連続する保持電極61に濡れ広がり、保持させる(
図22参照)。したがって、より多くの溶融導体3aを貫通孔62及び保持電極61に吸引、保持することができ、中間電極7及び補助電極18によって保持される溶融導体3aの体積を減少させ、確実に溶断することができる。
【0112】
また、保護素子70においても、貫通孔62を複数形成することが好ましい。これにより、ヒューズエレメント3の溶融導体3aを吸引する経路を増やし、速やかにより多くの溶融導体3aを吸引することで、中間電極7及び補助電極18によって保持される溶融導体3aの体積を減少させることができる。
【0113】
[変形例4]
次いで、本技術が適用された保護素子の他の変形例について説明する。なお、以下の説明において、上述した保護素子1,50,60,70と同一の部材については同一の符号を付して、その詳細を省略することがある。
図23に示す保護素子80は、絶縁基板6の表面6aに発熱体8が設けられた保護素子60に係る溶断部材5が、ヒューズエレメント3の一面及び上記一面と反対側の他面に接続されたものである。すなわち、保護素子80は、ヒューズエレメント3が複数の溶断部材5に挟持されている。
【0114】
図23は、ヒューズエレメント3の一面及び他面に、絶縁基板6の表面6aに発熱体8が形成された溶断部材5が接続された保護素子80を示す断面図である。
図24は、保護素子80の上側ケース21を省略して示す平面図である。
【0115】
図25は、保護素子80の回路図である。ヒューズエレメント3の一面及び他面に接続された各溶断部材5は、各絶縁基板6の表面6aに形成された発熱体8の一端が、発熱体電極17及び中間電極7を介してヒューズエレメント3と接続されている。また、各溶断部材5は、発熱体8の他端と接続された各発熱体給電電極16が対向され、それぞれ発熱体端子15と接続ハンダ13等の接続材料を介して接続されている。これにより、各溶断部材5は、発熱体端子15を介して外部回路に設けられた発熱体8を発熱させるための電源に接続される。
【0116】
また、
図26に示すように、保護素子80は、発熱体8の発熱によりヒューズエレメント3を溶断する際には、ヒューズエレメント3の両面に接続された各溶断部材5,5の発熱体8が発熱し、ヒューズエレメント3の両面から加熱する。したがって、保護素子80は、大電流用途に対応するためにヒューズエレメント3の断面積を増大させた場合にも、速やかにヒューズエレメント3を加熱し、溶断することができる。
【0117】
また、保護素子80は、ヒューズエレメント3の両面から溶融導体3aを、各溶断部材5に形成した各貫通孔62内に吸引し、保持電極61で保持する。したがって、保護素子80は、大電流用途に対応するためにヒューズエレメント3の断面積を増大させ溶融導体3aが多量に発生した場合にも、複数の溶断部材5によって吸引し、確実にヒューズエレメント3を溶断させることができる。また、保護素子80は、複数の溶断部材5によって溶融導体3aを吸引することにより、より速やかにヒューズエレメント3を溶断させることができる。
【0118】
保護素子80は、ヒューズエレメント3として、内層を構成する低融点金属を高融点金属で被覆する被覆構造や低融点金属と高融点金属の積層構造を用いた場合にも、ヒューズエレメント3を速やかに溶断させることができる。すなわち、高融点金属が被覆又は積層されたヒューズエレメント3は、発熱体8が発熱した場合にも、高融点金属が溶融する温度まで加熱するのに時間を要する。ここで、保護素子80は、複数の溶断部材5を備え、同時に各発熱体8を発熱させることで、高融点金属を速やかに溶融温度まで加熱することができる。したがって、保護素子80によれば、外層を構成する高融点金属層の厚みを厚くすることができ、さらなる高定格化を図りつつ、速溶断特性を維持することができる。
【0119】
また、保護素子80は、
図23に示すように、一対の溶断部材5,5が対向してヒューズエレメント3に接続されることが好ましい。これにより、保護素子80は、一対の溶断部材5,5で、ヒューズエレメント3の同一箇所を両面側から同時に加熱するとともに溶融導体3aを吸引することができ、より速やかにヒューズエレメント3を加熱、溶断することができる。
【0120】
また、保護素子80は、一対の溶断部材5,5の各絶縁基板6に形成された補助電極18がヒューズエレメント3を介して互いに対向することが好ましい。これにより、一対の溶断部材5,5が対称に接続されることで、リフロー実装時やヒューズエレメント3の加熱時等において、ヒューズエレメント3に対する溶断部材5からの負荷のかかり方がアンバランスとなることを抑制し、ヒューズエレメント3の変形や溶断部材5の接続ズレ等への耐性を向上させることができる。
【0121】
なお、発熱体8は、貫通孔62の両側に形成することが、補助電極18及び中間電極7を加熱し、またより多くの溶融導体3aを凝集、吸引するうえで好ましい。
【0122】
[変形例5]
次いで、本技術が適用された保護素子の他の変形例について説明する。なお、以下の説明において、上述した保護素子1,50,60,70,80と同一の部材については同一の符号を付して、その詳細を省略することがある。
図27に示す保護素子90は、絶縁基板6の裏面6bに発熱体8が設けられた保護素子70に係る溶断部材5が、ヒューズエレメント3の一面及び他面に接続されたものである。すなわち、保護素子90は、ヒューズエレメント3が複数の溶断部材5に挟持されている。
【0123】
図27は、ヒューズエレメント3の一面及び他面に、絶縁基板6の裏面6bに発熱体8が形成された溶断部材5が接続された保護素子90を示す断面図である。
図28は、保護素子90の上側ケース21を省略して示す平面図である。
【0124】
保護素子90は、
図25に示す保護素子80の回路構成と同様の回路構成を有する。ヒューズエレメント3の一面及び他面に接続された各溶断部材5は、各絶縁基板6の裏面6bに形成された発熱体8の一端が、発熱体電極17、保持電極61及び貫通孔62を介して連続された中間電極7を介してヒューズエレメント3と接続されている。また、各溶断部材5は、発熱体8の他端と接続された表面側発熱体給電電極16aが対向され、それぞれ発熱体端子15と接続ハンダ13等の接続材料を介して接続されている。これにより、各溶断部材5は、発熱体端子15を介して外部回路に設けられた発熱体8を発熱させるための電源に接続される。
【0125】
保護素子90における、発熱体8の発熱による溶断動作及び効果は、上述した保護素子80と同様であり、ヒューズエレメント3の両面から加熱する。また、
図29に示すように、保護素子90は、保護素子80と同様に、ヒューズエレメント3の両面から溶融導体3aを、各溶断部材5に形成した各貫通孔62内に吸引し、保持電極61で保持する。
【0126】
また、保護素子90は、複数の溶断部材5によって溶融導体3aを吸引することにより、より速やかにヒューズエレメント3を溶断させることができる。また、保護素子90は、複数の溶断部材5を備え、同時に各発熱体8を発熱させることで、高融点金属を速やかに溶融温度まで加熱することができる。したがって、保護素子90によれば、外層を構成する高融点金属層の厚みを厚くすることができ、さらなる高定格化を図りつつ、速溶断特性を維持することができる。
【0127】
なお、保護素子90においても、
図27に示すように、一対の溶断部材5,5が対向してヒューズエレメント3に接続されることが好ましい。また、保護素子90においても、一対の溶断部材5,5の各絶縁基板6に形成された補助電極18がヒューズエレメント3を介して互いに対向することが好ましい。
【0128】
なお、発熱体8は、貫通孔62の両側に形成することが、補助電極18及び中間電極7を加熱し、またより多くの溶融導体3aを凝集、吸引するうえで好ましい。
【符号の説明】
【0129】
1 保護素子、2 ケース、3 ヒューズエレメント、4a,4b ヒューズ端子、5 溶断部材、6 絶縁基板、6a 表面、6b 裏面、7 中間電極、8 発熱体、9 絶縁層、10 空間、11 空間、13 接続ハンダ、14 ネジ孔、15 発熱体端子、16 発熱体給電電極、17 発熱体電極、18 補助電極、21 上側ケース、22 下側ケース、22a 側縁部、22b 中空部、23 嵌合凹部、24 嵌合凸部、25 接着剤、26 低融点金属層、27 高融点金属層、40 バッテリパック、41 バッテリセル、42 充電装置、43 電流制御素子、44 制御部、45 バッテリスタック、46 充放電制御回路、47 検出回路、48 電流制御素子、50 保護素子、60 保護素子、61 保持電極、62 貫通孔、64 導電層、70 保護素子、80 保護素子、90 保護素子