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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178061
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】位置決め用治具
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/04 20060101AFI20241217BHJP
   H02K 15/085 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H02K15/04 E
H02K15/085
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096574
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100217696
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 英行
(72)【発明者】
【氏名】吉住 真一
(72)【発明者】
【氏名】小辻 貴志
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP14
5H615QQ03
5H615QQ06
5H615QQ12
5H615SS04
5H615SS10
5H615SS16
5H615TT14
(57)【要約】
【課題】互いに接続される電気導体の接続部対において、接続部対の位置ズレの程度が大きくなっても、位置ズレを適切に矯正できるようにする。
【解決手段】互いに接続される電気導体の接続部の位置決めに用いられる位置決め用治具であって、前記互いに接続される電気導体の接続部の組み合わせである接続部対は、当該接続部対の接続方向に沿う直線上で複数並んで接続部列を形成しており、前記位置決め用治具は、前記直線を挟んだ一方側と他方側に配置されて、前記直線に沿う回動軸回りに回動する回動部材と、前記回動部材から、前記回動軸の径方向に延びる押圧片と、を有し、前記一方側の回動部材と前記他方側の回動部材が、互いの押圧片を対向させる角度位置に配置された際に、前記一方側の回動部材の押圧片と、前記他方側の回動部材の押圧片との間に前記接続部対が把持されるようにした。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接続される電気導体の接続部の位置決めに用いられる位置決め用治具であって、
前記互いに接続される電気導体の接続部の組み合わせである接続部対は、当該接続部対の接続方向に沿う直線上で複数並んで接続部列を形成しており、
前記位置決め用治具は、
前記直線を挟んだ一方側と他方側に配置されて、前記直線に沿う回動軸回りに回動する回動部材と、
前記回動部材から、前記回動軸の径方向に延びる押圧片と、を有し、
前記一方側の回動部材と前記他方側の回動部材が、互いの押圧片を対向させる角度位置に配置された際に、前記一方側の回動部材の押圧片と、前記他方側の回動部材の押圧片との間に前記接続部対が把持されるようにした、位置決め用治具。
【請求項2】
請求項1において、
前記電気導体は、環状のステータコアに設けられており、
前記環状のステータコアの中心軸方向から見て、前記直線は、前記中心軸を通る半径線であり、
前記接続部列は、前記中心軸周りの周方向に間隔を開けて放射状に設けられており、
前記中心軸方向から見て、前記回動軸は、前記半径線に沿って設けられていると共に、前記中心軸周りの周方向で、前記接続部列と交互に設けられており、
前記押圧片は、前記接続部列よりも前記半径線方向の長さが長い、位置決め用治具。
【請求項3】
請求項2において、
前記回動部材は、前記回動軸毎に2つ設けられており、
前記2つの回動部材は、押圧片同士が互いに接触した第1の位置と、
前記接続部列を間に挟んで隣り合う他の回動部材の押圧片との間に、前記接続部対を把持する第2の位置との間で、変位可能である、位置決め用治具。
【請求項4】
請求項3において、
前記押圧片は、前記回動軸の径方向における外径側の側縁に開口する凹部を有しており、
前記回動軸の径方向から見て前記凹部は、
前記外径側の側縁からオフセットした位置を前記回動軸に沿って延びる第1側部と、
前記第1側部の一端から前記外径側の側縁に向けて延びる第2側部と、
前記第1側部の他端から前記外径側の側縁に向けて延びる第3側部と、を有しており、
前記第2側部と前記第3側部は、前記外径側の側縁から前記第1側部に向かうにつれて、前記回動軸方向の幅が狭くなる向きで傾斜しており、
前記凹部は、前記回動部材が前記第2の位置に配置された時に、前記他の回動部材の押圧片の凹部との間に前記接続部対の位置決め孔を形成する、位置決め用治具。
【請求項5】
請求項4において、
前記回動軸方向から見て、前記回動部材の押圧片は、前記回動軸回りの周方向の一方側と他方側に、前記回動軸の径方向に延びる第1側面と第2側面を有しており、
前記第1側面は、前記回動部材が前記第1の位置に配置された時に、同じ回動軸回りに回動する他の回動部材の押圧片の第1側面に当接する当接面であり、
前記第2側面は、前記外径側の側縁に向かうにつれて、前記回動軸周りの周方向における前記押圧片の厚みが薄くなる傾斜面を有する、位置決め用治具。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5の何れか一項において、
前記回動部材を操作するリンク機構をさらに有し、
前記リンク機構は、前記回動部材に設けられた従動リンクと、前記従動リンクに連結された駆動リンクと、を有し、
前記駆動リンクは、前記回動軸から径方向にオフセットした位置で、前記従動リンクに連結されていると共に、前記中心軸に沿う向きに設けられており、
前記駆動リンクにおける前記従動リンクと反対側の端部に、前記中心軸に沿う方向の外力が入力されると、前記従動リンクは前記回動部材と共に前記回動軸周りに回動する、位置決め用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置決め用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
セグメントコイルは、環状のステータコアの中心軸方向の側面から突出した電気導体を、他の電気導体と接続して形成される。電気導体同士の接続は、各電気導体の端部側の領域を、ステータコアの径方向と周方向に湾曲させて、接続される電気導体の端部側の領域同士を接触させたのち、電気導体の互いに接続する領域(接続部)を溶接することで行われる。
溶接前の状態を中心軸方向から見ると、ステータコアの中心軸方向の側面では、互いに溶接される電気導体の接続部の組み合わせである接続部対が、ステータコアの中心軸を通る半径線方向に間隔を開けて複数並んで接続部列を形成している。さらに、複数の接続部列が中心軸回りの周方向に間隔を開けて放射状に並んでいる。
ここで、電気導体を湾曲させると、湾曲に起因する応力が電気導体に蓄積されるため、接続部対を構成する接続部の位置にズレが生じることがある。
【0003】
特許文献1には、セグメントコイルにおける電気導体の接続部対の位置決めを行う位置決め用治具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-171260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の位置決め用治具は、2枚のプレート部材を有している。プレート部材は、それぞれ接続部対を挿通可能な開口を有している。
特許文献1では、開口の重なる領域を持つようにしてプレート部材同士を重ね合わせた後、接続部列の各接続部対が、開口の重なる領域を貫通するように、2枚のプレート部材を配置する。
そして、開口の重なる領域が狭まるように、2枚のプレート部材を周方向に相対変位させることで、電気導体の接続部対を、狭められた開口の領域により位置決めする仕様となっている。
【0006】
ここで、2枚のプレート部材の周方向の相対変位量を大きく取ると、隣り合う他の接続部列がプレート部材に干渉する場合がある。そのため、2枚のプレート部材を相対変位させることができる量は限られている。例えば、接続部対の位置ズレが大きい場合には、別工程(前工程)で大まかに位置ズレを矯正しておくことが必要となる。
【0007】
そこで、互いに接続される電気導体の接続部対において、接続部対の位置ズレの程度が大きくなっても、位置ズレを適切に矯正できるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、
互いに接続される電気導体の接続部の位置決めに用いられる位置決め用治具であって、
前記互いに接続される電気導体の接続部の組み合わせである接続部対は、当該接続部対の接続方向に沿う直線上で複数並んで接続部列を形成しており、
前記位置決め用治具は、
前記直線を挟んだ一方側と他方側に配置されて、前記直線に沿う回動軸回りに回動する回動部材と、
前記回動部材から、前記回動軸の径方向に延びる押圧片と、を有し、
前記一方側の回動部材と前記他方側の回動部材が、互いの押圧片を対向させる角度位置に配置された際に、前記一方側の回動部材の押圧片と、前記他方側の回動部材の押圧片との間に前記接続部対が把持されるようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明のある態様によれば、互いに接続される電気導体の接続部対において、接続部対の位置ズレの程度が大きくなっても、位置ズレを矯正できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、モータの概略構成図である。
図2図2は、電気導体を説明する図である。
図3図3は、電気導体で構成されるコイルの概念図である。
図4図4は、スロットと電気導体の配置を説明する図である。
図5図5は、接続部対を説明する図である。
図6図6は、接続部の屈曲を説明する図である。
図7図7は、接続部対の位置ズレを説明する図である。
図8図8は、位置決め用治具を説明する図である。
図9図9は、位置決め用治具を説明する図である。
図10図10は、回動部材を説明する図である。
図11図11は、回動部材を説明する図である。
図12図12は、回動部材を説明する図である。
図13図13は、回動部材を説明する図である。
図14図14は、回動部材を説明する図である。
図15図15は、操作部を説明する図である。
図16図16は、操作部を説明する図である。
図17図17は、操作部を説明する図である。
図18図18は、位置決め用治具による接続部対の位置決めを説明する図である。
図19図19は、位置決め用治具による接続部対の位置決めを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
始めに、本明細書における用語の定義を説明する。
「所定方向視においてオーバーラップする」とは、所定方向に複数の要素が並んでいることを意味し、「所定方向にオーバーラップする」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいることが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていることを説明した文章があるとみなして良い。
【0012】
「所定方向視においてオーバーラップしていない」、「所定方向視においてオフセットしている」とは、所定方向に複数の要素が並んでいないことを意味し、「所定方向にオーバーラップしていない」、「所定方向にオフセットしている」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいないことが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていないことを説明した文章があるとみなして良い。
【0013】
「所定方向視において、第1要素(部品、部分等)は第2要素(部品、部分等)と第3要素(部品、部分等)との間に位置する」とは、所定方向から観察した場合において、第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが観察できることを意味する。「所定方向」とは、軸方向、径方向、重力方向等である。
例えば、第2要素と第1要素と第3要素とが、この順で軸方向に沿って並んでいる場合は、径方向視において、第1要素は第2要素と第3要素との間に位置しているといえる。図面上において、所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが図示されている場合は、明細書の説明において所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることを説明した文章があるとみなして良い。
【0014】
以下、本発明の実施形態として、モータ1のコイル53を形成する際に用いられる位置決め用治具7を例に挙げて説明する。
図1は、モータ1の概略構成図である。
図2は、コイル53を構成する電気導体6を説明する図である。
図3は、コイル53の概念図である。
図4は、ステータ5における電気導体6の配置を説明する図である。図4は、図1におけるA-A断面を模式的に示す図である。なお、図4における中心線Cよりも左側の領域では、電気導体6の図示を省略してスロット52のみを示している。
図5は、接続部対66を説明する図である。図5は、図1のB-B断面の模式図である。なお、図5では、ステータコア51のスロット52を省略している。
図6は、接続部65の屈曲を説明する図である。
図6では、中心線Cよりも左側の領域で、挿入工程を示しており、中心線Cよりも右側の領域で、拡張工程及び捻り工程を示している。なお、図6における中心線Cよりも右側の領域では、拡張工程後の接続部65の位置を仮想線で示している。
図7は、接続部対66の位置ズレを説明する図である。図7は、図5のA-A矢視図である。図7では、位置関係を把握し易くするために、接続部対66を構成する一方の接続部65(接続部65F)にクロスハッチングを付してある。
【0015】
図1に示すように、モータ1では、ロータ4と、ステータ5が、ハウジングHS内に収容されている。ハウジングHSは、ケース2とカバー3を、モータ1の回転軸X方向で組みつけて構成される。
【0016】
ロータ4は、モータシャフト40に外挿されている。ロータ4は、モータシャフト40との相対回転が規制されている。モータシャフト40は、回転軸X方向の一端40a側が、カバー3側の支持部33で、ベアリングBaを介して回転可能に支持されている。図示は省略するが、モータシャフト40の他端側は、ケース2側の支持部で、ベアリングを介して回転可能に支持されている。
【0017】
ステータ5は、回転軸Xを囲む円筒状のステータコア51を有している。すなわち、回転軸Xはステータコア51の中心軸を構成する。
また、ステータコア51には、スロット52が設けられている。スロット52は、ステータコア51の内周51aに開口すると共に、ステータコア51を回転軸X方向に横断している。
【0018】
図4における中心線Cを挟んだ左側の領域に示すように、回転軸X方向から見てスロット52は、回転軸X周りの周方向に等間隔で設けられている。スロット52は、回転軸X周りの周方向の全周に亘って設けられている。
【0019】
ステータコア51においてスロット52は、回転軸Xを通る直径線Lxに沿う直線状に形成されている。回転軸X方向から見てスロット52は、開口を回転軸Xに向けた有底穴である。スロット52は、回転軸Xの径方向の全長に亘って同じ周方向幅W52で形成されている。
【0020】
図1に示すように、ステータ5では、スロット52の部分にコイル53が設けられている。
図3に示すように、コイル53は、複数の電気導体6を螺旋状に繋いで、それらを周方向に繋いで構成される。
図2に示すように、コイル53を構成する電気導体6の各々は、棒状または平板状の金属材料を、長手方向の一端と他端の間で屈曲させて、略U字形状に形成したものである。
電気導体6は、長手方向の一方側に位置する線状部61aと、他方側に位置する線状部61bと、線状部61a、61bを接続する屈曲部60と、を有している。
以下においては、線状部61a、61bを区別しない場合には、単純に線状部61と表記する。
【0021】
一例として、電気導体6は、導電性のある金属材料、例えば銅で形成されている。電気導体6の表面は、線状部61の先端610、610側を除き、絶縁性材料で被覆されている(図2におけるクロスハッチング領域)。電気導体6のうち、絶縁性材料で被覆されていない先端610側の領域は、他の電気導体6と接続される接続部65を構成する。
【0022】
図1に示すように、電気導体6は、回転軸X方向に沿う向きでステータコア51に組み付けられる。この際に電気導体6の線状部61(61a、61b)が、異なるスロット52に収容される。なお、異なるスロット52とは、回転軸X周りの周方向の角度位置が異なるスロット52を意味する。
【0023】
図1の拡大領域に示すように、1つのスロット52では、6つの線状部61(61A~61F)が径方向に順番に並んで収容されている。線状部61A~61Fは、それぞれ異なる6つの電気導体6のものである。
【0024】
図4における中心線Cの右側の領域に示すように、1つの電気導体6をステータコア51に組み付けると、一方の線状部61aがスロット52内の内径側に挿入され、他方の線状部61bが他のスロット52内の外径側に挿入される。
【0025】
図1の拡大領域に示すように、線状部61(61A~61F)がスロット52に挿入された状態において、それぞれの接続部65(65A~65F)は、回転軸X方向におけるステータコア51の端面51bからカバー3側に突出する。なお、図示は省略するが、屈曲部60(図2参照)もまた、ステータコア51の端面から回転軸Xにおけるカバー3と反対側に突出する。
以下においては、接続部65A~65Fを区別しない場合には、単純に接続部65とも表記する。
【0026】
ここで、図6に示すように、接続部65、65を接続するにあたり、電気導体6における接続部65が設けられた領域は、回転軸Xの径方向と、回転軸X周りの周方向に屈曲される。
【0027】
接続部65の屈曲は、図示しない成形装置を用いて、以下の順番で行われる。
(A)電気導体6をスロット52に挿入する。この状態において、接続部65A~65Fは、径方向に隙間なく並んでいる(挿入工程、図6における中心線Cより左側の領域参照)。
(B)接続部65A~65Fのうち、接続部65C、65Dと、接続部65E、65Fをそれぞれ重ねた状態で、外径側に広がるように屈曲させる(拡張工程、図6における仮想線参照)。
(C)回転軸X方向から見て、接続部65B、65D、65Fを、それぞれ時計回り方向CWに屈曲させると共に、接続部65A、65C、65Eを、それぞれ反時計回り方向CCWに屈曲させる(捻り工程、図6における中心線Cより右側の領域参照)。
【0028】
なお、接続部65は、先端610側が成形装置で把持される。そのため、接続部65の先端610側は、拡張工程及び捻り工程の前後において、回転軸Xに沿う向きを維持している(図7参照)。
【0029】
捻り工程では、異なるスロット52、52に挿入された接続部65Fと接続部65Eが、周方向における互いに近づく向きに変位する(矢印a、b)と共に、所定の位置で重なる(図7参照)。これにより、予め定められた位置に接続部対66Cが形成される。
図6に示すように、接続部65Dと接続部65C、及び接続部65Bと接続部65Aも同様に変位して、予め定められた位置に接続部対66B、66Aが形成される。
【0030】
図1の拡大領域に示すように、内径側に位置する2つの接続部65A、65Bは、それぞれ線状部61A、61Bから回転軸X方向に延びる直線形状を成している。外径側に位置する4つの接続部65C~65Fは、それぞれ線状部61C~61Fから外径側に屈曲した後、先端610側が回転軸Xに沿う方向を向くように、さらに屈曲した形状を成している。
【0031】
また、図1の拡大領域に示すように、接続部65A、65C、65Eは、線状部61A、61C、61Eから回転軸X周りの周方向(紙面手前側)に屈曲した形状を成している。接続部65B、65D、65Fは、線状部61B、61D、61Fから回転軸X周りの周方向(紙面奥側)に屈曲した形状を成している。この状態において、接続部65A~65Fは、それぞれの先端610が回転軸Xに直交する同一の平面上に位置する長さを有している。
【0032】
本実施形態では、内径側に位置する2つの接続部65A’、65B同士、外径側に位置するの2つの接続部65E’、65F同士、及びこれらの間にある2つの接続部65C’、65D同士が溶接により互いに接続される。ここで、接続部65A’、65C’、65E’は、接続部65A、65C、65Eとは異なる電気導体6の接続部である。
【0033】
互いに接続される接続部65A’、65Bは、接続部対66Aを構成する。互いに接続される接続部65C’、65Dは、接続部対66Bを構成する。互いに接続される接続部65E’、65Fは、接続部対66Cを構成する。
なお、以下の説明では、接続部65A’、65C’、65E’を、単に接続部65A、65C、65Eと表記する。
【0034】
図5に示すように、屈曲後の接続部65A、65B、接続部65C、65D、及び接続部65E、65Fは、直線Lr方向に接続されている。直線Lrは、回転軸Xを通る半径線に沿う直線である。
接続部対66Aは、回転軸Xを中心とする仮想円Im1に沿って複数設けられている。回転軸X周りの周方向において、複数の接続部対66Aは、所定の角度θ毎に配置されると共に、ロータ4の外周を全周に亘って囲むように設けられている。
【0035】
接続部対66Bは、回転軸Xを中心とする仮想円Im2に沿って複数設けられている。
仮想円Im2は、前記した仮想円Im1よりも大径である(Im2>Im1)。回転軸X周りの周方向において、複数の接続部対66Bは、所定の角度θ毎に配置される。
また、回転軸Xの径方向において、接続部対66Bにおける内径側の接続部65Cは、接続部対66Aにおける外径側の接続部65Bと間隔CLを開けて対向する位置に配置される。
【0036】
接続部対66Cは、回転軸Xを中心とする仮想円Im3に沿って複数設けられている。
仮想円Im3は、前記した仮想円Im2よりも大径である(Im3>Im2)。回転軸X周りの周方向において、複数の接続部対66Cは、所定の角度θ毎に配置される。
回転軸Xの径方向において、接続部対66Cにおける内径側の接続部65Eは、接続部対66Bにおける外径側の接続部65Dと間隔CLを開けて対向する位置に配置される。
【0037】
これにより、回転軸X方向から見て、接続部対66A、66B、66Cは、回転軸Xを通る共通の直線Lr上に並んで配置されている。直線Lr上に配置された接続部対66A、66B、66Cは、接続部列66Lを構成する。接続部列66Lは、回転軸X方向から見て、回転軸X周りの周方向に間隔Wを開けて複数並んでおり、放射状を成している。
【0038】
図5に示すように、接続部65A~65Fは、回転軸Xの径方向に沿う断面視において、同じ断面形状を有している。具体的には、接続部65A~65Fの断面形状は、略矩形形状を成している。そのため、周方向で隣り合う接続部列66L、66Lの間隔Wは、外径側から内径側に向かって狭くなっている。
【0039】
ここで、回転軸X方向から見て、接続部対66A、66B、66Cが配置される位置は、予め定められている(図5参照)。本実施形態では、接続部65A~65Fを所定の向きに屈曲することで、接続部対66A、66B、66Cが所定の位置で形成されるようにしている。
以下においては、接続部対66A、66B、66Cを区別しない場合には、単純に接続部対66とも表記する。
【0040】
ここで、接続部対66では、接続部65、65の互いの対向面が全面に亘って接触していることが好ましい。しかしながら、前記した拡張工程、捻り工程を行うと、電気導体6には、湾曲に起因する応力が蓄積される。そのため、接続部65の屈曲の度合いにバラつきが生じることがある。また、スロット52と電気導体6との間には僅かな隙間(挿入代)がある。そのため、拡張工程、捻り工程の際に、電気導体6がスロット52内を僅かに変位することで、成形装置側から作用する外力が逃げて、接続部65が所定の形状まで屈曲し難いことがある。その結果、接続部65、65の相対的な位置が、図5に示す理想的な位置から僅かにズレることがある。
【0041】
例えば、図6の拡大領域、及び図7に示すように、接続部対66Cの接続部65F、65Eにおいて、直線Lr方向に隙間Drが形成されることがある。また、接続部対66Bの接続部65D、65Cにおいて、周方向のズレDcが生じることがある。また、図示は省略するが、これら直線Lr方向の隙間Drと、周方向のズレDcの両方が生じることがある。
【0042】
そこで、本実施形態では、捻り工程の終了後であって、溶接を行う前に、位置決め用治具7を用いて、接続部65の位置を矯正している。
【0043】
図8は、位置決め用治具7を説明する図である。図8では、位置決め用治具7が、鉛直線方向におけるステータ5の上方に配置された状態を示している。図8では、複数の接続部対66が位置する領域を、リング状で示すと共に、ハッチングを付して示している。なお、図8の拡大領域では、接続部対66Cを構成する一方の接続部65Fにクロスハッチングを付してある。
図9は、位置決め用治具7を説明する図である。図9は、図8の面Aの切断面の模式図である。
図10は、一組の回動部材8A、8Bを説明する図である。図10は、図9のA-A断面の模式図である。
【0044】
図8に示すように、位置決め用治具7の使用は、ステータ5をホルダ10にセットした状態で行う。ホルダ10は、例えば鉛直線方向に沿う向きに設けられた筒状部材とすることができる。ホルダ10は、鉛直線方向下側で、図示しない作業台等に固定される。
【0045】
ホルダ10の上面10aは、鉛直線に直交する平坦面であり、位置決め用治具7を支持できる十分な面積を有している。ホルダ10の上面10aには、収容孔11が開口している。収容孔11は、ステータ5を挿入可能な内径を有している。
【0046】
ステータ5を収容孔11に挿入すると、ステータコア51の回転軸Xが、鉛直線方向に沿う向きに設けられる。接続部対66は、ステータコア51の端面51bから鉛直線方向上側に突出する。なお、図示は省略するが、ホルダ10の収容孔11には、ストッパが設けられている。接続部対66は、ストッパによってホルダ10の上面10aから距離h1(図9参照)だけ突出するようになっている。
【0047】
図8に示すように、位置決め用治具7は、内輪71と、当該内輪71を囲む外輪72と、内輪71と外輪72との間に設けられた開閉体73と、を有する。開閉体73は、内輪71と外輪72との間の空間Rを連通または遮断する。また、位置決め用治具7は、開閉体73を操作する操作部9を有する。
【0048】
位置決め用治具7では、内輪71と外輪72の中心線が、回転軸Xと同心に配置されるようになっている。以下の説明では、回転軸Xを基準として位置決め用治具7の各部の構成を説明する。
【0049】
図9に示すように、開閉体73は、内輪71と外輪72とに跨って設けられたシャフト75(回動軸)と、当該シャフト75に回動可能に設けられた2つの回動部材8A、8Bと、を有する。シャフト75は、回転軸Xの径方向に沿う向きに設けられている。
【0050】
図8に示すように、開閉体73は、1本のシャフト75及び2つの回動部材8A、8Bを基本構成(図9参照)として、これらシャフト75及び回動部材8A、8Bを、回転軸X周りの周方向に間隔を空けて複数並べて形成される。そのため、開閉体73では、複数のシャフト75及び回動部材8A、8Bは、内輪71から外輪72に向かって放射状に延びている。
【0051】
図10に示すように、回動部材8A、8Bは、同じ形状を有している。回動部材8A、8Bは、シャフト75に回動可能に設けられた状態で1組の蝶番を構成する。
以下の説明では、回動部材8Bを例に挙げて、回動部材8Bの各部の構成を説明する。
【0052】
図10に示すように、回動部材8Bは、シャフト75を外挿する筒部81と、筒部81と一体に形成されると共に、シャフト75の径方向に延びるプレート部80(押圧片)と、を有する。
【0053】
図9に示すように、回動部材8Bの筒部81は、回転軸Xの径方向に間隔を空けて2つ設けられている。回動部材8Aの筒部81もまた、回転軸Xの径方向に間隔を空けて2つ設けられている。回動部材8Aの筒部81と、回動部材8Bの筒部81は、回転軸Xの径方向(図9における左右方向)に交互に並んでいる。
【0054】
図9に示すように、プレート部80は、長手方向を回転軸Xの径方向に沿う向きに設けた帯状部材である。プレート部80は、回転軸Xの径方向において、接続部列66Lの長さL1よりも長い長さL2を有する(L2>L1)。すなわち、プレート部80は、直線Lr方向(図6参照)で接続部列66Lを把持する長さを有する。
【0055】
プレート部80は、シャフト75の径方向における外径側の側縁を構成する端面80a側が、自由端となっている。端面80aは、シャフト75の軸線Ca方向における内輪71側から外輪72側に向かうにつれて筒部81から離れる向きに傾斜した傾斜面となっている。
【0056】
プレート部80の端面80aには、同一形状の3つの凹部85(85A、85B、85C)が開口している。凹部85は、プレート部80の一部を切欠いて形成したものである。これら凹部85A、85B、85Cは、回転軸Xの径方向で間隔を空けて設けられている。詳細は後記するが、凹部85A、85B、85Cは、接続部対66A、66B、66Cに対応する位置に設けられている。
以下においては、凹部85A、85B、85Cを区別しない場合には、単純に凹部85とも表記する。
【0057】
図10に示すように、プレート部80は、筒部81の外周面に接続される第1当接面80b(第1側面)及び第2当接面80cを有する。第1当接面80bと第2当接面80cは、筒部81から互いに直交する平坦面である。
【0058】
第1当接面80bは、軸線Caと反対側の端部で、端面80aに接続している。第2当接面80cは、軸線Caと反対側の端部で、側面80dに接続している。側面80dは、第1当接面80bに平行な平坦面である。
【0059】
側面80dは、ガイド面80eを介して端面80aに接続している。側面80dとガイド面80eは、プレート部80の第2側面を構成する。ガイド面80eは、端面80aに向かうにつれて、軸線Ca周りの周方向のプレート部80の厚みT8を薄くする向きに傾斜する傾斜面である。
第1側面である第1当接面80bと、第2側面である側面80dとガイド面80eは、軸線Ca方向から見て、軸線Ca回りの周方向におけるプレート部80の一方側と他方側に設けられていると共に、軸線Caの径方向に沿って延びている。
【0060】
凹部85Bは、プレート部80のうち、第1当接面80bと、ガイド面80eとに跨る領域に設けられている。なお、図示は省略するが、他の凹部85A、85Cも同様に、第1当接面80bと、ガイド面80eとに跨る領域に設けられている。
【0061】
図10に示すように、シャフト75の軸線Ca方向から見て、回動部材8A、8Bのプレート部80、80は、回転軸Xを挟んで互いに線対称となる向きで設けられている。回動部材8A、8Bは、後記する操作部9によって、シャフト75周りにそれぞれ回動(矢印a1、a2、及び矢印b1、b2)する。これにより、蝶番が閉じた状態と開いた状態が切り替えられる。
【0062】
具体的には、回動部材8A、8Bは、第1当接面80b、80b同士が当接する位置(図10における実線で示す位置、閉位置)と、第2当接面80c、80c同士が当接する位置(図10における仮想線で示す位置、開位置)とが、切り替えられるようになっている。
【0063】
閉位置においては、回動部材8A、8Bのプレート部80は、第1当接面80b同士が当接した状態で重なり合うと共に、ガイド面80eが設けられた領域が、軸線Caから離れるにつれて、軸線Ca周りの周方向の厚みが薄くなる先細り形状となる。
また、閉位置においては、回動部材8A、8Bは、それぞれ回転軸X周りの周方向で隣り合う他の回動部材8A’、8B’と間隔を空けて対向する。そのため、前記した空間Rが回転軸X方向で連通した状態となる。
【0064】
開位置においては、回動部材8A、8Bは、それぞれ回転軸X周りの周方向で隣り合う他の回動部材8A’、8B’と、端面80a同士が当接する。そのため、回転軸X方向における空間Rの連通が遮断された状態となる(図10における仮想線参照)。
【0065】
図9に示すように、内輪71と外輪72を、回転軸Xと同心に配置すると、内輪71は、接続部対66Aよりも内径側に配置される。外輪72は、ホルダ10の収容孔11よりも外径側に配置される。回動部材8A、8Bは、接続部列66Lを径方向(図中、左右方向)に横切る範囲に配置される。回転軸X方向において、凹部85A、85B、85Cは、それぞれ接続部対66A、66B、66Cとオーバーラップする位置に配置される。
【0066】
図11は、回動部材8A、8Bを説明する図である。図11は、図9のB-B矢視図である。図11は、閉位置に配置された回動部材8A、8Bと、接続部列66Lとの位置関係を説明する図である。
図12は、回動部材8A、8Bを説明する図である。図12は、開位置に配置された回動部材8A、8Bと、接続部列66Lとの位置関係を説明する図である。図12では、1つの接続部列66Lと、当該接続部列66Lの一方側と他方側に設けられた回動部材8A、8Bのみを記載している。
図13は、回動部材8A、8Bを説明する図である。図13は、図11に示す回動部材8A、8Bが開位置に配置された状態を示している。
なお、図11図12図13では、回動部材8A、8Bを区別し易くするために、回動部材8A、8Bに異なるクロスハッチングを付してある。
図14は、回動部材8A、8Bを説明する図である。図14は、図13のA-A断面の模式図である。
【0067】
図11に示すように、シャフト75は、所定の角度θa毎に複数配置される。そのため、シャフト75に外挿される1組の回動部材8A、8Bもまた、角度θa毎に並んで配置される。角度θaは、周方向に並ぶ接続部列66Lの角度θと略整合する角度である(θa≒θ)。
【0068】
また、回動部材8A、8Bは、閉位置に配置された2つのプレート部80の厚み(T8×2)が、少なくとも周方向で隣り合う接続部対66Aの間隔Wよりも狭い厚みに設定されている(T8×2<W)。
これにより、回転軸X周りの周方向において、接続部列66L(直線Lr)と1組の回動部材8A、8Bとが交互に配置されるようになっている。
【0069】
図11図12に示すように、シャフト75の軸線Caは、直線Lrに沿う向きに設けられている。直線Lrを挟んだ一方側(図12中、直線Lrの上側)と他方側(図12中、直線Lrの下側)には、それぞれ回動部材8A、8Bが配置されている。
直線Lrを挟んだ一方側の回動部材8Aと、他方側の回動部材8Bは、周方向で隣り合う他の組の回動部材8A、8Bである。直線Lrを挟んだ一方側の回動部材8Aと、他方側の回動部材8Bは、それぞれシャフト75周りに回動することで、互いに隙間を開けた状態(図11参照)と、当接した状態(図12参照)が切り替えられる。
【0070】
図12に示すように、プレート部80の直線Lrの径方向の長さL80は、シャフト75(軸線Ca)から直線Lrに及ぶ長さに設定されている。そのため、直線Lrを挟んだ一方側の回動部材8Aと、他方側の回動部材8Bは、開位置おいて、互いのプレート部80の端面80a同士が当接する。よって、直線Lrを挟んだ一方側の回動部材8Aのプレート部80と、他方側の回動部材8Bのプレート部80との間に、接続部対66(接続部対66A、66B、66C)が把持されるようになっている。
【0071】
図13に示すように、開位置では、直線Lrを挟んだ一方側の回動部材8Aの端面80aと、他方側の回動部材8Bの端面80aとが当接する。この場合において、回転軸X周りの周方向で互いに対向する一対の凹部85A、85A、一対の凹部85B、85B、及び一対の凹部85C、85Cが、貫通孔86A、86B、86Cを形成する。貫通孔86A、86B、86Cは、それぞれプレート部80、80を回転軸X方向に貫通している。
【0072】
位置決め用治具7において、貫通孔86A、86B、86Cが形成される位置は、予め定められた接続部対66A、66B、66Cの位置(図5参照)に対応している。
具体的には、貫通孔86A、86B、86Cは、回転軸Xを通る半径線である直線Lrに沿う向きに並んでいる。貫通孔86Aは、回転軸Xを中心とする仮想円Im1’上に設けられる。貫通孔86Bは、回転軸Xを中心とする仮想円Im2’上に設けられる。貫通孔86Cは、回転軸Xを中心とする仮想円Im3’上に設けられる。
【0073】
これら仮想円Im1’、Im2’、Im3’は、前記した接続部対66A、66B、66Cが並ぶ仮想円Im1、Im2、Im3(図5参照)と略整合する直径の円である(Im1’≒Im1、Im2’≒Im2、Im3’≒Im3)。そのため、回転軸X方向から見て、貫通孔86A、86B、86Cの位置が、接続部対66A、66B、66Cの位置と一致するようになっている。
以下においては、貫通孔86A、86B、86Cを区別しない場合には、単純に貫通孔86とも表記する。
【0074】
図13に示すように、貫通孔86を構成する凹部85Bは、端面80aと平行な底面88(第1側部)を有する。底面88は、プレート部80の端面80aからシャフト75側にオフセットした位置に設けられている。
凹部85Bは、底面88と端面80aとを接続する傾斜面87(第2側部)を有する。傾斜面87は、直線Lr方向における底面88の内径側端部に接続している。
凹部85Bは、底面88と端面80aとを接続する傾斜面89(第3側部)を有する。傾斜面89は、直線Lr方向における底面88の外径側端部に接続している。
【0075】
傾斜面87は、底面88から端面80aに向かうにつれて内径側に傾斜している。傾斜面89は、底面88から端面80aに向かうにつれて外径側に傾斜している。傾斜面87、89は、底面88から見て同じ傾斜角αで傾斜している。すなわち、傾斜面87、89は、端面80aから底面88に向かうにつれて、直線Lr方向の幅が狭くなる向きで傾斜している。
【0076】
貫通孔86では、底面88、88が互いに平行に配置される。回動部材8A側の傾斜面87と、回動部材8B側の傾斜面89とが互いに平行に配置される。回動部材8A側の傾斜面89と、回動部材8B側の傾斜面87とが互いに平行に配置される。従って、回転軸X方向から見て、貫通孔86は、六角形形状を成している。
【0077】
ここで、接続部対66は、回転軸X方向から見て略矩形形状を成している。本実施形態では、六角形形状の貫通孔86に、矩形形状の接続部対66が内接するようにしている。
【0078】
具体的には、直線Lr方向における底面88の長さL88が、接続部対66の長さL66(接続部65、65の接合方向の長さ)よりも短くなるように設定されている(L88<L66)。周方向における底面88、88の間隔W86が、接続部対66の周方向幅W66よりも長くなるように設定されている(W86>W66、図14参照)。
傾斜面87と端面80aとの接続部は、接続部対66よりも内径側に位置している。傾斜面89と端面80aとの接続部は、接続部対66よりも外径側に位置している。
【0079】
図13の拡大領域に示すように、例えば、接続部対66Bでは、接続部65Cの角部が回動部材8A、8Bの傾斜面87、87に当接する。また、接続部65Dの角部が回動部材8A、8Bの傾斜面89、89に当接する。これにより、接続部対66Bが貫通孔86Bに内接するようになっている。なお、説明は省略するが、接続部対66A、66Cもまた、それぞれ貫通孔86A、86Cに内接するようになっている。
【0080】
ここで、本実施形態では、回動部材8A、8Bの閉位置(図11参照)と開位置(図12参照)の切り替えは、操作部9を介して行われる。
図15は、操作部9を説明する図である。図15は、図9のC-C断面の模式図である。
図16は、操作部9を説明する図である。図16は、図15のA-A断面の模式図である。
図17は、操作部9を説明する図である。図17は、図15のB-B断面の模式図である。
【0081】
図15に示すように、操作部9は、回動部材8A、8Bに設けられたリンク機構90A、90Bと、リンク機構90A、90Bを支持する支持板95と、を有する。
図8の拡大領域に示すように、リンク機構90A、90Bは、1組の回動部材8A、8Bに1対1で設けられている。そのため、リンク機構90A、90Bは、回転軸X周りの周方向において、間隔を空けて複数設けられている。支持板95は、回転軸Xを囲むリング状を成しており、周方向に並ぶ複数のリンク機構90A、90Bをまとめて支持している。
【0082】
図15に示すように、リンク機構90A、90Bは、それぞれ駆動リンクを構成する第1腕部91と、従動リンクを構成する第2腕部82と、を有する。
第1腕部91は、長手方向を鉛直線方向に沿う向きに設けた帯状部材である。
鉛直線方向における第1腕部91の上端部911は、第2腕部82に連結している。鉛直線方向における第1腕部91の下端部912は、支持板95に連結している。
【0083】
第1腕部91には、上端部911と下端部912との間に屈曲部913が形成されている。リンク機構90Aの屈曲部913と、リンク機構90Bの屈曲部913は、シャフト75の軸線Ca方向から見て、互いに離れる向きに屈曲している。
【0084】
第2腕部82、82は、それぞれ回動部材8A、8Bと一体に形成されている。
図15の拡大領域に示すように、シャフト75の軸線Ca方向から見て、第2腕部82は、プレート部80の第2当接面80cと側面80dとの境界部に設けられている。第2腕部82は、第2当接面80cと面一に設けられていると共に、側面80dから距離T82だけ突出している。
【0085】
図16に示すように、回転軸X方向から見て、回動部材8Bの第2腕部82は、プレート部80の外径側の端部に設けられている。回動部材8Bの第2腕部82には、回転軸X方向の外径側から第1腕部91の上端部911が当接している。
【0086】
回動部材8Bの第2腕部82と、第1腕部91には、それぞれ貫通孔820、911aが形成されている。これら貫通孔820、911aは、同一の孔径であると共に、シャフト75の軸線Caに平行な直線Lbに沿う向きに設けられている。貫通孔820、911aは、シャフト75の軸線Caから距離L9だけオフセットした位置に設けられている。
【0087】
貫通孔820、911aには、1本のピンPが挿通している。ピンPは、両端部に設けられたスナップリングSrによって、貫通孔820、911aからの脱落が防止されている。これにより、回動部材8Bの第2腕部82と、第1腕部91とは、直線Lb回りに相対回転可能に連結されている。
【0088】
また、図16に示すように、回動部材8Aも同様に、回転軸X方向から見て、第2腕部82は、プレート部80の外径側の端部に設けられている。回動部材8Aの第2腕部82には、回転軸X方向の外径側から第1腕部91の上端部911が当接している。
【0089】
回動部材8Aの第2腕部82と、第1腕部91には、それぞれ貫通孔820、911aが形成されている。これら貫通孔820、911aは、同一の孔径であると共に、シャフト75の軸線Caに平行な直線Laに沿う向きに設けられている。貫通孔820、911aは、シャフト75の軸線Caから距離L9だけオフセットした位置に設けられている。
【0090】
貫通孔820、911aには、1本のピンPが挿通している。ピンPは、両端部に設けられたスナップリングSrによって、貫通孔820、911aからの脱落が防止されている。これにより、回動部材8Aの第2腕部82と第1腕部91は、直線La回りに相対回転可能に連結されている。
なお、回動部材8Aの第2腕部82は、回動部材8B側の第2腕部82(図中右側)よりも、第1腕部91の厚みT91分だけ外径側にオフセットした位置に設けられている。
【0091】
図15に示すように、シャフト75の軸線Ca方向から見て、リンク機構90Aの第1腕部91と、リンク機構90Bの第1腕部91では、それぞれの下端部912、912が、回転軸X上で重なった状態で、支持板95に連結されている。
【0092】
支持板95は、回転軸Xを囲むリング状の基部950と、基部950から回転軸X方向の一方側(鉛直線方向上側)に突出する接続片951と、を有する。
シャフト75の軸線Ca方向から見て、接続片951は、シャフト75の軸線Caを通る回転軸X上に設けられている。また、図示は省略するが、接続片951は、シャフト75と同数設けられており、回転軸X周りの周方向に間隔を空けて設けられている。
【0093】
図17に示すように、回転軸X方向における基部950の他方側(鉛直線方向下側)の面950aは、回転軸Xに直交する平坦面である。
図9に示すように、回転軸X方向において、支持板95がステータコア51から離間した状態において、支持板95の面950aと凹部85Aとの距離h2は、ホルダ10の上面10aと接続部対66の先端610までの距離h1よりも短い距離に設定されている(h2<h1)。すなわち、支持板95の面950aと凹部85B、85Cとの距離もまた、ホルダ10と接続部対66の距離h1よりも短い距離となっている。
【0094】
図17に示すように、接続片951には、回転軸X方向の外径側からリンク機構90Bの下端部912が当接している。また、リンク機構90Bの下端部912には、回転軸X方向の外径側からリンク機構90Aの下端部912が当接している。
【0095】
接続片951と、リンク機構90A、90Bの下端部912、912には、それぞれ貫通孔951a、912a、912aが形成されている。これら貫通孔951a、912a、912aは、同一の孔径であると共に、シャフト75の軸線Caに平行な直線Lcに沿う向きに設けられている(図9参照)。
【0096】
貫通孔951a、912a、912aには、1本のピンPが挿通している。ピンPは、両端部に設けられたスナップリングSrによって、貫通孔951a、912a、912aからの脱落が防止されている。これにより、リンク機構90A、90Bの第1腕部91、91は、支持板95に対してそれぞれ直線Lc回りに相対回転可能に連結されている。
【0097】
例えば、図9に示すように、位置決め用治具7をステータコア51に向けて移動させて(図中、下向き矢印方向)、支持板95をホルダ10に押し付けると、支持板95には、ホルダ10から押し付け力の反力が作用する。この反力は、支持板95を回動部材8A、8Bに近づける方向(図15における太線の上向き矢印方向)に作用する外力となる。これにより、支持板95及び駆動リンクである第1腕部91は、上側に変位する。第1腕部91の変位に伴って、従動リンクである第2腕部82もまた上方に変位しようとする。
【0098】
この場合において、回動部材8A、8Bの第2腕部82、82は、それぞれシャフト75の軸線Caから距離L9だけオフセットした位置で第1腕部91と連結している(図16参照)。
そのため、第2腕部82、82は、シャフト75の軸線Ca周りの周方向に回動して、シャフト75の上側まで移動する(図15における矢印a1、b1方向)。第2腕部82と一体に形成されたプレート部80もまた、第2腕部82と同じ方向に回動する。これにより、回動部材8A、8Bのプレート部80、80は、互いに離れる向きに回動する(図10の仮想線参照)。
【0099】
この際、リンク機構90A、90Bのそれぞれの第1腕部91、91は、接続片951を中心として直線Lc回りに回動する。具体的には、第1腕部91、91は、互いに近づく向きに回動する(図15における矢印a3、b3)。
【0100】
プレート部80、80が所定量回動して、第2当接面80c同士が当接すると(図10の仮想線参照)、リンク機構90A、90Bの移動が規制される。これにより、回動部材8A、8Bが開位置に位置決めされる(図12参照)。
【0101】
一方で、例えば、図9に示すように、位置決め用治具7をステータコア51から遠ざけて(図中、上向き矢印方向)、支持板95をステータコア51から離間させると、支持板95には、重力が作用する。重力は、支持板95が回動部材8A、8Bから離れる方向(図15における太線の下向き矢印方向)に作用する外力となる。これにより、支持板95及び第1腕部91は、下側に変位する。第1腕部91の変位に伴って、第2腕部82もまた下方に変位しようとする。
【0102】
この場合において、回動部材8A、8Bのそれぞれの第2腕部82及びプレート部80は、シャフト75の軸線Ca周りの周方向に回動する。そして、プレート部80は、シャフト75の下側に配置される(図15における矢印a2、b2)。
これにより、回動部材8A、8Bのプレート部80、80は、互いに近づく向きに回動する(図10の実線参照)。
【0103】
この際、リンク機構90A、90Bのそれぞれの第1腕部91、91は、接続片951を中心として直線Lc回りに回動する。具体的には、第1腕部91、91は、互いに離れる向きに回動する(図15における矢印a4、b4)。
【0104】
プレート部80、80が所定量回動して、第1当接面80b同士が当接すると(図10の実線参照)、リンク機構90A、90Bの移動が規制される。これにより、回動部材8A、8Bが閉位置に位置決めされる(図11参照)。
【0105】
本実施形態では、リンク機構90A、90B及び支持板95は、鉛直線方向において、回動部材8A、8Bの下側に配置されている。そのため、位置決め用治具7を使用していない状態では、支持板95は、重力(下向きの外力)によって、回動部材8A、8Bから離れる方向の力が作用する。そのため、回動部材8A、8Bは、閉位置(第1当接面80b同士が当接した状態)で位置決めされている。
【0106】
以下、位置決め用治具7による接続部対66の位置決めを説明する。
図18は、位置決め用治具7による接続部対66の位置決めを説明する図である。図18の(a)~(c)は、図9のD-D方向から見た状態で、接続部対66が位置決めされる過程を順番に示している。また、図18の(a)~(c)では、外輪72を省略すると共に、回動部材8A、8Bの一部を断面で示し、凹部85を露出させている。
図19は、位置決め用治具7による接続部対66の位置決めを説明する図である。図19の(a)~(d)は、位置決め用治具7を鉛直線方向上側から見た状態であって、接続部対66が位置決めされる過程を順番に示している。
なお、図18及び図19では、接続部対66Cが位置決めされる過程を例示している。
【0107】
まず、図9に示すように、位置決め用治具7をステータコア51の上方に配置しつつ、一組の回動部材8A、8Bを、周方向に並ぶ複数の接続部列66Lの間(図11参照)に配置する。なお、周方向における位置決め用治具7の位置決めは、作業者が目視で行っても良い。または、図示は省略するが、ホルダ10と外輪72に、互いに係合する突起と切欠を形成して、突起と切欠を係合させることで、周方向における位置決め用治具7の位置決めを行っても良い。
【0108】
次に、図18の(a)に示すように、位置決め用治具7をステータコア51に近づける(図中、下向き矢印方向)。そうすると、位置決め用治具7は、操作部9の支持板95の面950aが、ホルダ10の上面10aに最初に当接する。そして、回動部材8A、8Bの凹部85Cが、接続部対66Cの先端610よりも下側に位置する。
【0109】
回動部材8A、8Bは、ガイド面80e側から接続部対66C、66Cの間に挿入される。そして、回動部材8A、8Bのプレート部80は、ガイド面80eが設けられた領域が、軸線Caから離れるにつれて、軸線Ca周りの周方向の厚みが薄くなる先細り形状となっている。そのため、回動部材8A、8Bを接続部対66C、66Cの間に挿入し易くしている。
【0110】
また、ガイド面80eは、回転軸X方向でステータコア51側に向かうにつれて接続部対66Cから離れる向きに傾斜している。
そのため、周方向に大きく位置ズレしている接続部対66Cがあっても、位置ズレした接続部対66Cは、位置決め用治具7の挿入の進行に伴って、ガイド面80e上を摺動することができる(図18の(a)の拡大領域参照)。この際に、大きく位置ズレした接続部対66Cは、他の接続部対66Cから離れる側(図中、白抜き矢印方向)に変位することで、位置ズレが大まかに矯正される。これにより、接続部対66Cを凹部85Cに誘導し易くしている。
【0111】
これにより、直線Lrを挟んだ一方側(図中、直線Lrの上側)と他方側(図中、直線Lrの下側)に、それぞれ回動部材8A、8Bが配置される(図19の(a)参照)。
回転軸X周りの周方向において、回動部材8A、8Bの側面80d、80dは、接続部対66Cを挟んで間隔を空けて対向配置される。
【0112】
そして、図18の(b)に示すように、位置決め用治具7をステータコア51に近づける方向にさらに押し付けると、支持板95には、押し付け力に対応する反力が作用する(図中、ハッチング矢印)。この反力は、ホルダ10の上面10aから支持板95に作用する上向きの外力である。なお、図18の(b)の拡大図では、回動部材8Bの断面のみを示している。
【0113】
そうすると、リンク機構90A、90Bが駆動して、回動部材8A、8Bがそれぞれシャフト75の軸線Ca周りに回動する。回動部材8A、8Bのプレート部80、80は、互いに離れる向きに回動する(矢印a1、b1方向)。これにより、回動部材8A、8Bは、閉位置から開位置に移動する。回動部材8A、8Bは、閉位置から開位置に移動する過程で、接続部対66Cが、凹部85Cに収容されるようになっている。
【0114】
図19の(b)に示すように、例えば、接続部対66Cのうちの接続部65Eのように、直線Lrに対して回動部材8A側に位置ズレしている場合、接続部65Eには、回動部材8Aの凹部85Cの傾斜面87が当接する。また、接続部対66Cのうちの接続部65Fのように、直線Lrに対して回動部材8B側に位置ズレしている場合、接続部65Fには、回動部材8Bの凹部85Cの傾斜面89が当接する。
【0115】
図19の(c)に示すように、回動部材8Aをさらに軸線Ca周りに回動すると、接続部65Eは、傾斜面87によって押される。接続部65Eは、回転軸Xの径方向の外径側と、回転軸X周りの周方向における直線Lr側に向かって傾斜面87上を摺動する(図中、白抜き矢印)。
また、回動部材8Bをさらに軸線Ca周りに回動すると、接続部65Fは、傾斜面89によって押される。接続部65Fは、回転軸Xの径方向の内径側と、回転軸X周りの周方向における直線Lr側に向かって傾斜面89上を摺動する(図中、白抜き矢印)。
これにより、接続部65E、65Fは、回転軸Xの径方向の隙間Drと、周方向のズレDcとが狭められて、位置が矯正されるようになっている。
【0116】
さらに、図18の(c)に示すように、位置決め用治具7をステータコア51に近づける方向に押し付けると、回動部材8A、8Bの回動が進み、プレート部80、80の第2当接面80c、80c(図10参照)同士が当接する。これにより、回動部材8A、8Bは、開位置で固定される。
【0117】
この場合において、回動部材8A、8Bと、周方向で隣り合う他の回動部材8A’、8B’との間には、互いの凹部85C、85Cから成る貫通孔86Cが形成される。接続部対66Cは、貫通孔86Cに収容される。
【0118】
図19の(d)に示すように、回動部材8A、8Bが開位置に位置決めされて、回動が停止すると、接続部65E、65Fの摺動も停止する。この状態において、接続部対66Cは、六角形形状の貫通孔86Cに内接するようになっている。
【0119】
具体的には、接続部65Eは、回転軸Xの径方向内径側で回動部材8A、8Bの傾斜面87、87に当接する。接続部65Fは、回転軸Xの径方向外径側で回動部材8A、8Bの傾斜面89、89に当接する。また、接続部65E、65Fは、回転軸Xの径方向における傾斜面87、傾斜面89の間で互いに当接する。
これにより、接続部65E、65Fは、直線Lrに沿って並ぶと共に、貫通孔86C内で相対移動不能に固定される。
【0120】
このように、接続部65E、65Fは、回動部材8A、8Bが開位置に位置決めされる過程(図19の(a)~(d)参照)で、位置ズレが矯正されるようになっている。なお、他の接続部対66A、66Bも同様にして、貫通孔86A、86B内で位置が固定される。これにより、各接続部対66は、所定の位置に位置決めされる(図5参照)。
よって、位置決め用治具7は、回転軸X方向(上下方向)に移動させるだけで、接続部対66の位置ズレを矯正できるようになっている。
【0121】
なお、位置決め用治具7をホルダ10から離れる方向に持ち上げると、支持板95は、自重(下向きの外力)により、回動部材8A、8Bから離れる方向の力が作用する。そのため、回動部材8A、8Bのプレート部80、80は、自然に互いに近づく向きに回動する。これにより、位置決め用治具7をホルダ10から離間させるだけで、回動部材8A、8Bは、接続部対66Cを貫通孔86Cから解放しつつ、自然に閉位置に位置決めされる。
【0122】
接続部対66は、位置ズレの矯正後、溶接される。この場合において、接続部対66の溶接は、位置決め用治具7を接続部対66に装着したまま行っても良いし、取り外してから行っても良い。また、位置決め用治具7の脱着は、作業者が手動で行っても良いし、ロボットアーム等で自動で行っても良い。
【0123】
以下に、本発明のある態様における位置決め用治具7の例を列挙する。
(1)位置決め用治具7は、互いに接続される電気導体6の接続部65、65の位置決めに用いられる。
互いに接続される電気導体6の接続部65、65の組み合わせである接続部対66(接続部対66A、66B、66C)は、接続部65、65の接続方向に沿う直線Lr上で複数並んでおり、接続部列66Lを形成している。
位置決め用治具7は、
直線Lrを挟んだ一方側と他方側にそれぞれ配置されて、直線Lrに沿うシャフト75、75(回動軸)回りに回動する回動部材8A、8Bと、
回動部材8A、8Bから、シャフト75(回動軸)の径方向に延びるプレート部80(押圧片)と、を有する。
一方側の回動部材8Aと他方側の回動部材8Bが、互いのプレート部80を対向させる角度位置(図12参照)に配置された際に、一方側の回動部材8Aのプレート部80と、他方側の回動部材8Bのプレート部80との間に接続部対66(接続部対66A、66B、66C)が把持されるようにした。
【0124】
このように構成すると、直線Lrの径方向から見て、直線Lrを挟んだ一方側と他方側に、それぞれ回動部材8Aと、回動部材8Bが配置される(図11参照)。
この状態で、回動部材8A、8Bを、プレート部80を互いに近づける方向に回動させて、一方側の回動部材8Aと他方側の回動部材8Bが、互いのプレート部80を対向させる角度位置(図12参照)に配置する。
ここで、プレート部80の直線Lrの径方向の長さL80を、シャフト75(軸線Ca)から直線Lrに及ぶ長さに設定する。そうすると、直線Lrを挟んだ一方側の回動部材8Aのプレート部80と、他方側の回動部材8Bのプレート部80と、の間に接続部対66(接続部対66A、66B、66C)を把持して、接続部対66を直線Lr上に位置決めできる。
よって、互いに接続される電気導体6の接続部対66の位置ズレを適切に矯正できる。
【0125】
ここで、特許文献1の場合には、2枚のプレート部材の周方向での相対変位させることで電気導体の接続部対を位置決めする仕様となっている。2枚のプレート部材の周方向の相対変位量を大きく取ると、隣接する他の接続部列と干渉する場合がある。そのため、2枚のプレート部材を周方向で相対変位させることができる量は限られている。例えば、接続部対の位置ズレが大きい場合には、別工程(前工程)で大まかに位置ズレを矯正しておくことが考えられる。
【0126】
これに対して、位置決め用治具7は、回動部材8Aと回動部材8Bのプレート部80を、それぞれシャフト75、75周りに回動させて、接続部対66を位置決めできるようにしている。
そのため、位置決め用治具7は、プレート部80の周方向の相対変位を考慮する必要がない分、特許文献1のものよりも周方向の空間に余裕があるものとなる。これにより、接続部対の位置ズレが大きい場合でも、別工程を設けることなく1工程で、位置ズレを矯正することができる。
【0127】
(2)電気導体6は、環状のステータコア51に設けられている。
ステータコア51の回転軸X(中心軸)方向から見て、直線Lrは、回転軸Xを通る半径線である(図5参照)。
接続部列66Lは、回転軸X周りの周方向に間隔を開けて放射状に設けられている。
回転軸X方向から見て、位置決め用治具7のシャフト75は、半径線に沿って設けられている。
シャフト75、75は、回転軸X周りの周方向で、直線Lrと交互に設けられている。
プレート部80の半径線方向(回転軸Xの径方向)の長さL2は、接続部列66Lの長さL1よりも長い(図9参照)。
【0128】
このように構成すると、位置決め用治具7を、回転軸X方向からステータコア51に近づけると、回転軸X周りの周方向において接続部列66Lを挟んだ一方側と他方側に、回動部材8Aと回動部材8Bがそれぞれ配置される(図12参照)。
この状態で、回動部材8Aのプレート部80と、回動部材8Bのプレート部80を、それぞれシャフト75、75周りにおける互いに近づく向きに回動させることで、接続部対66を直線Lr上に位置決めできる。
【0129】
特に、回転軸Xの径方向において、回動部材8A、8Bのプレート部80の長さL2が、接続部列66Lの長さL1よりも長くなっている。そのため、プレート部80は、接続部列66Lのうち、最も内径側に位置する接続部対66Aから、最も外径側に位置する接続部対66Cまで及ぶ範囲に設けられる。そのため、接続部列66Lに含まれる接続部対66A、66B、66Cを一度に位置決めできる。
これにより、ステータコア51の回転軸X方向の端面51bから突出した電気導体6の接続部対66の各々を適切に位置決めできる。
【0130】
(3)回動部材8A、8Bは、回動軸である1つのシャフト75に設けられた2つの回動部材である。
1つのシャフト75に設けられた回動部材8A、8Bは、プレート部80(押圧片)の第1当接面80b同士が互いに接触した閉位置(第1の位置)と、接続部列66Lを間に挟んで隣り合う他のシャフト75に設けられた回動部材8A、8Bのプレート部80、80(押圧片)で接続部対66を把持する開位置(第2の位置)と、の間で、変位可能である。
【0131】
このように構成すると、回動部材8A、8Bは、それぞれシャフト75周りに回動可能な1組の蝶番を構成する(図10参照)。
例えば、回動部材8A、8Bのプレート部80を閉位置に配置した(閉脚した)状態で、位置決め用治具7をステータコア51に近づけることで、放射状に配置された接続部列66Lの間に、プレート部80、80を挿入できる(図11参照)。
この状態で、回動部材8A、8Bのプレート部80、80を、互いに離れる方向に回動させて開位置に配置する(開脚する)と、それぞれ隣り合う他の回動部材8A、8Bのプレート部80、80との間で接続部対66を把持できる(図12参照)。これにより、接続部対66は、直線Lr上で位置決めできる。
【0132】
(4)プレート部80は、シャフト75(回動軸)の径方向における端面80a(外径側の側縁)に開口する凹部85を有する。
シャフト75の径方向から見て凹部85は、
端面80aからオフセットした位置に設けられると共に、端面80aと平行な底面88(第1側部)と、
直線Lr方向における底面88の内径側端部から端面80aに向けて延びる傾斜面87(第2側部)と、
直線Lr方向における底面88の外径側端部から端面80aに向けて延びる傾斜面89(第3側部)と、を有する。
傾斜面87と傾斜面89は、端面80aから底面88に向かうにつれて、シャフト75の軸線Ca方向(回動軸方向)に沿う方向である直線Lr方向の幅が狭くなる向きで傾斜している。
凹部85は、回動部材8A、8Bが開位置に配置された時に、隣り合う他の回動部材8A、8Bのプレート部80の凹部85との間で、接続部対66を収容する貫通孔86(位置決め孔)を形成する。
【0133】
このように構成すると、貫通孔86の大きさを、接続部対66に外接して、接続部対66の接続部65、65を、溶接するための所定位置に配置できる大きさで形成することで、接続部対66の接続部65、65を所定位置に配置できる。
また、回動部材8A、8Bが、閉位置から開位置に向けて回動することで、貫通孔86を形成する。そして、貫通孔86の形状を、接続部対66に外接する六角形形状にすると、接続部65、65が、回転軸Xの径方向または周方向に位置ズレしている場合、貫通孔86を形成する過程で、接続部65、65が、傾斜面87や傾斜面89に接触する。
そして、傾斜面87、89は、底面88側に向かうにつれて直線Lr方向の幅が狭くなっている。そのため、位置ズレしている接続部65、65は、プレート部80が開位置に向けて回動する過程で、傾斜面87や傾斜面89に沿って摺動して、互いに近づく方向に変位する。
これにより、接続部65、65における回転軸Xの径方向及び周方向の位置ズレは、プレート部80が開位置に向けて回動する過程で矯正されて、最終的に接続部65、65は、直線Lr上に並んだ状態で互いに当接する。
特に、回動部材8A、8Bの回動により、貫通孔86の形成と、接続部65、65の位置ズレの矯正が行われるので、2つのプレート部材を相対変位させて位置ズレの矯正を行う特許文献1の場合と比べて、回動部材8A、8Bが周囲の部品などと干渉する可能性を低減できる。
【0134】
(5)シャフト75の軸線Ca方向(回動軸方向)から見て、回動部材8A、8Bの押圧片であるプレート部80は、軸線Ca回りの周方向の一方側と他方側に、軸線Caの径方向に延びる第1側面と第2側面を有している。
第1側面は、回動部材8A、8Bが第1の位置(閉位置)に配置された時に、同じ軸線Ca回りに回動する他の回動部材8A、8Bのプレート部80の第1側面に当接する第1当接面80bである。
第2側面は、外径側の側縁である端面80aに向かうにつれて、軸線Ca周りの周方向におけるプレート部80の厚みが薄くなるガイド面80e(傾斜面)を有する。
【0135】
このように構成すると、閉位置に配置された回動部材8A、8Bでは、プレート部80は、第1当接面80b同士が当接した状態で重なり合うと共に、ガイド面80eが設けられた領域が、軸線Caから離れるにつれて厚みが薄くなる先細り形状となる(図10参照)。
図18の(a)に示すように、回動部材8A、8Bを閉位置に配置した状態で、位置決め用治具7を回転軸X方向に沿ってステータコア51に近づけると、回動部材8A、8Bは、先細り形状を成すガイド面80e側から、接続部対66C、66Cの間に挿入される。
【0136】
例えば、ガイド面80eを有しない回動部材8A、8Bを用いる場合、接続部対66が大きく位置ズレしていると、位置決め用治具7を挿入する過程で、プレート部80、80が接続部対66に干渉する可能性がある。
そこで、本願のようにガイド面80eを設けることで、回動部材8A、8Bを接続部対66C、66Cの間に挿入し易くしている。また、位置決め用治具7の挿入の進行に伴って、位置ズレした接続部対66がガイド面80e上を摺動して、他の接続部対66から離れる側(図中、白抜き矢印方向)に変位することで、位置ズレが大まかに矯正されて、凹部85に誘導し易くなる。
【0137】
(6)位置決め用治具7は、回動部材8A、8Bを操作するリンク機構90A、90Bを有する。
リンク機構90A、90Bは、それぞれ回動部材8A、8Bに一体に設けられた第2腕部82(従動リンク)と、第2腕部82に連結された第1腕部91(駆動リンク)と、を有する。
第1腕部91は、シャフト75の軸線Caから径方向に距離L9だけオフセットした位置で、第2腕部82に連結されていると共に、回転軸Xに沿う向きに設けられている。
第1腕部91における第2腕部82と反対側の端部である下端部912に、回転軸Xに沿う方向の外力が入力されると、第2腕部82は回動部材8A、8Bと共にシャフト75(回動軸)周りに回動する。
【0138】
このように構成すると、位置決め用治具7を回転軸X方向に移動させて、ステータコア51側に押し付けるだけで、押し付け力により回動部材8A、8Bを開位置に位置決めすることができる。一方、位置決め用治具7をステータコア51から回転軸X方向に離間させるだけで、回動部材8A、8Bは、自重により閉位置に位置決めされる。
【0139】
例えば、特許文献1では、回転軸X方向に位置決めしたのち、2枚のプレートを周方向変位させている。すなわち、特許文献1では、接続部対の矯正に2アクションを必要としている。
これに対して、本実施形態に係る位置決め用治具7は、ステータコア51に対して回転軸X方向に押し込む1アクションだけで、接続部対66の矯正を行えるようになっている。
【0140】
本実施形態では、図9に示すように、リンク機構90A、90Bを、回動部材8A、8Bと外輪72の間に設けたものを例示したが、この位置に限定されるものではない。例えば、回動部材8A、8Bと内輪71の間に設けても良いし、回動部材8A、8Bと外輪72との間、及び回動部材8A、8Bと内輪71との間の両方に設けても良い。
【0141】
また、本実施形態では、図9に示すように、3つの凹部85A、85B、85Cを有するものを例示したが、この態様に限定されない。凹部85の数は、接続部列66Lを構成する接続部対の数に対応させて適宜変更可能である。
【0142】
また、本実施形態では、六角形形状の貫通孔86を例示したが、この態様に限定されない。接続部対66に外接する形状であればよい。例えば、傾斜面87、89から成る四角形形状としても良い。また、貫通孔86は、偶数の多角形形状、円形形状としても良い。
【0143】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0144】
1 モータ
5 ステータ
6 電気導体
7 位置決め用治具
8A、8B 回動部材
9 操作部
51 ステータコア
65(65A~65F) 接続部
66(66A、66B、66C) 接続部対
66L 接続部列
75 シャフト(回動軸)
80 プレート部(押圧片)
82 第2腕部(従動リンク)
80a 端面(外径側の側縁)
80b 第1当接面(第1側面)
80e ガイド面(傾斜面)
85(85A、85B、85C) 凹部
86(86A、86B、86C) 貫通孔(位置決め孔)
87 傾斜面(第2側部)
88 底面(第1側部)
89 傾斜面(第3側部)
90A、90B リンク機構
91 第1腕部(駆動リンク)
95 支持板
Ca シャフトの軸線
Lr 直線(接続方向に沿う直線)
X 回転軸(ステータコアの中心軸)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19