(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178067
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20241217BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G03G21/00 318
G03G15/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096629
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】長友 雄也
【テーマコード(参考)】
2H134
2H200
【Fターム(参考)】
2H134GA01
2H134GA06
2H134GB02
2H134HD01
2H134KG08
2H134KH01
2H134KH13
2H200FA09
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA44
2H200GB12
2H200GB22
2H200HA02
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2H200JB10
2H200JC04
2H200LB02
2H200LB09
2H200LB13
2H200MC20
(57)【要約】
【課題】 ブレード端部の自由長を長くすることでブレード捲れを抑制しながら、ブレードの自由長を長くすることで発生するトナーすり抜け等の発生を有効に抑制する画像形成装置を提供すること。
【解決手段】 ブレード幅方向におけるブレード端部の自由長をブレード中央部よりも長くするとともに、ブレード自由長が長く設定された領域のうち、現像領域と対向する位置の感光ドラム表面粗さを小さくする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
現像剤を担持する現像剤担持体を備え、前記像担持体の表面に形成された静電像を現像する現像装置と、
前記像担持体の表面に当接し、前記像担持体の表面から現像剤を除去するブレードと、
前記ブレードの自由長を規制する規制部と、
前記幅方向の両端部のそれぞれにおいて、前記現像剤担持体が現像剤を担持可能な領域である現像領域の端部は、前記像担持体に形成され得る画像形成領域の端部よりも外側に位置され、前記ブレードの前記像担持体と接触する領域であるクリーニング領域の端部は、前記現像領域の端部よりも外側に位置されるように構成されており、
前記幅方向において、前記画像形成領域よりも外側における前記ブレードの自由長は、前記画像形成領域における前記ブレードの自由長よりも長く構成され、
前記幅方向において、前記画像形成領域よりも外側であって、前記現像領域の端部よりも内側である第1領域における前記像担持体の表面粗さは、前記画像形成領域である第2領域における前記像担持体の表面粗さ、及び、前記現像領域の端部よりも外側に配置される前記クリーニング領域である第3領域における前記像担持体の表面粗さよりも小さいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成領域における前記ブレードの自由長の平均値をL1[mm]、前記ブレードの前記幅方向において、前記現像領域の外側の領域における前記ブレードの自由長の平均値をL2[mm]としたとき、次式、
L2≧1.2×L1、
を満たすことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記像担持体は、表面に複数の凹部を有し、前記第1領域の単位面積当たりに形成される前記凹部の面積率は、前記第2領域及び前記第3領域の単位面積当たりに形成される前記凹部の面積率よりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記幅方向において、前記第2領域及び前記第3領域に対応する前記ブレードの自由長は、略一定であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ブレードの幅方向における前記凹部の開口の最大幅が20μm以上80μm以下、前記凹部の深さは0.5μm以上8μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニングブレードによりトナーをクリーニングするクリーニング装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の高速化に伴い、フルカラーの画像形成装置としては、ベルト部材に対応して複数の画像形成部を並べて配置し、各色の作像プロセスを並行処理する構成が主流となっている。例えば、電子写真方式の画像形成装置では、中間転写ベルトを用いたフルカラータンデム方式が挙げられる。
【0003】
フルカラータンデム方式とは、配列された複数の画像形成ユニットにより記録媒体上にフルカラー画像を得る画像形成方式である。
【0004】
この方式のフルカラー画像形成装置は、一次転写後に感光ドラム上に残留した転写残トナーを除去する感光体クリーニング装置や、二次転写後に中間転写ベルト上に残留した転写残トナーを除去する中間転写体クリーニング装置を備えている。
【0005】
これらのクリーニング装置としては、ゴム等の弾性材料を支持板金に接着したクリーニングブレードが広く用いられている。特に、クリーニングブレードを感光ドラムや中間転写ベルトの駆動方向に対向するように当接させるカウンター方式はクリーニング性が高いため、一般的に採用されている。
【0006】
しかしながら、このカウンター方式のブレードクリーニングでは、クリーニングブレードと感光ドラムや中間転写ベルトとの間の摩擦力が大きくなった場合に、ブレードめくれといった問題が発生することが知られている。
【0007】
そこで特許文献1では、クリーニングブレードの長手端部での自由長を長手中央部での自由長よりも長くすることで、ブレードめくれの発生を抑制する構成が開示されている。なお、クリーニングブレードの「自由長」とは、クリーニングブレードの面に接触、又は対向して設けられたクリーニングブレードの自由端部側の変形を規制する支持部材や規制部材から突出している部分の短手方向の長さのことをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、クリーニングブレードの自由長を適切に設定することでブレード捲れの発生を安定的に抑制することができる。クリーニングブレード端部には、潤滑剤となるトナーや現像剤がほとんど供給されない領域(以後、高μ領域と呼称)が存在する。このような領域では、摩擦力が高くなるため、特にブレード捲れが起こりやすい。そこで、感光ドラムとクリーニングブレードとの摩擦力を小さくするため、クリーニングブレードの自由長を長く設定する領域の幅を高μ領域の幅よりも大きく設定することが考えられる。一方、自由長を長く設定するとクリーニングブレードの当接圧が低下しクリーニング不良が発生する可能性があるため、自由長を長く設定する領域の幅は、トナー像の形成領域にかからないよう設定することが好ましいと考えられる。
【0010】
しかしながら、トナー像形成領域の外側であっても、現像装置にトナーがコートされている領域(現像領域)に対向する位置の感光ドラム上には、微小なかぶりトナーが供給され続ける。即ち、トナー像形成領域より外側で、高μ領域よりも内側の領域は、微小なかぶりトナーが供給され続ける。この領域のクリーニングブレードの自由長が長いと、微小なかぶりトナーはクリーニングブレードによって十分に回収されず、下流に位置する帯電ローラに付着する。このようなかぶりトナーが長期に渡って帯電ローラに供給され続けると、蓄積されたトナーが抵抗体となって帯電不良が発生し、用紙端部に縦スジが発生してしまうという課題があった。
【0011】
本発明はこれらの問題に鑑みてなされたものであり、現像領域端部におけるかぶりトナーすり抜けの発生を有効に抑制しながら、高μ領域におけるブレード捲れを抑制可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体の表面に供給する現像剤を担持する現像剤担持体と、
前記像担持体の表面から現像剤を除去するクリーニング部材であって、自由端部が前記像担持体の表面の移動方向と略直交する幅方向に沿って前記像担持体の表面に当接する弾性ブレードと、前記弾性ブレードの前記幅方向と交差する方向において前記自由端部とは反対側の基端部側で前記弾性ブレードの自由長を規制する規制部と、を備えたクリーニング部材と、
を有し、前記幅方向の両端部のそれぞれにおいて、前記現像剤担持体が現像剤を担持可能な領域である現像領域の端部は、前記像担持体の現像剤で画像が形成され得る画像形成領域の端部よりも外側に位置し、前記弾性ブレードの前記像担持体と接触する領域であるクリーニング領域の端部は、前記現像領域の端部よりも外側に位置されるように構成されており、前記幅方向において、前記画像形成領域よりも外側における前記ブレードの自由長は、前記画像形成領域における前記ブレードの自由長よりも長く構成され、
前記幅方向において、前記画像形成領域よりも外側であって、前記現像領域の端部よりも内側である第1領域における前記像担持体の表面粗さは、前記画像形成領域である第2領域における前記像担持体の表面粗さ、及び、前記現像領域の端部よりも外側である第3領域における前記像担持体の表面粗さよりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、現像領域端部におけるかぶりトナーすり抜けの発生を有効に抑制しながら、高μ領域におけるブレード捲れを抑制可能な画像形成装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施例の画像形成装置の概略構成図である。
【
図2】本実施例に係る感光ドラム表面の凹部形状の説明図である。
【
図3】本実施例の画像形成装置の長手配置の説明図である。
【
図4】本実施例に係るクリーニングブレードの概略構成を説明する(a)平面図、(b)斜視図である。
【
図5】従来の画像形成装置の長手端部における感光ドラムとクリーニングブレードとの摩擦力を示す説明図である。
【
図6】本実施例に係る感光ドラムの長手端部における表面粗さ調整位置を示す説明図である。
【
図7】本実施例の画像形成装置の長手端部における感光ドラムとクリーニングブレードとの摩擦力を説明する平面図である。
【
図8】本実施例に係る感光ドラム表面の(a)長手中央部の平面図、(b)長手端部の表面粗さが小さい領域における平面図である。
【
図9】実施例1における感光ドラムの概略構成を説明する平面図である。
【
図10】実施例1におけるクリーニング不良およびブレードめくれの発生状況の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態では、トナー像の形成/転写に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
【0016】
<画像形成装置>
図1は画像形成装置の構成の説明図である。
図1に示すように、画像形成装置100は、中間転写ベルト(ITB)101に沿ってイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成ユニット109Y、109M、109C、109Bkを配列したタンデム型中間転写方式のフルカラープリンタである。
【0017】
画像形成ユニット109Yでは、像担持体としての感光ドラム上にイエロートナー像が形成されて中間転写ベルト101に転写される。画像形成ユニット109Mでは、画像形成ユニット109Yと同様な手順でマゼンタトナー像が形成されて中間転写ベルト101上のイエロートナー像に重ねて転写される。画像形成ユニット109C、109Bkでは、画像形成ユニット109Yと同様な手順でシアントナー像、ブラックトナー像が形成されて中間転写ベルト101に順次重ねて転写される。
【0018】
中間転写ベルト101に担持された四色のトナー像は、二次転写部T2へ搬送されて記録材Pへ一括二次転写される。四色のトナー像を二次転写された記録材Pは、中間転写ベルト101から曲率分離して定着装置112へ送り込まれる。定着装置112は、定着ローラ112aと加圧ローラ112bにより記録材Pを加熱加圧して、トナーを融解して表面に画像を定着させる。その後、記録材Pが機体外へ排出される。
【0019】
画像形成ユニット109Y、109M、109C、109Bkは、それぞれの現像装置で用いるトナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外は、実質的に同一に構成される。以下では、ブラックの画像形成ユニット109Bkについてトナー像の形成プロセスを説明し、他の画像形成ユニット109Y、109M、109Cに関する重複した説明を省略する。また、トナーの色イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックを表す符号Y、M、C、Bkは適宜省略する。
【0020】
画像形成ユニット109Bkは、感光ドラム103の周囲に、帯電ローラ104、露光装置105、現像装置106、一次転写ローラ107、感光体クリーニングブレード108を配置している。
【0021】
感光ドラム103は、アルミ素管の表面に帯電極性が負極性の感光層を形成しており、図示しないモータによって矢印方向に0.3m/sのプロセススピードで駆動される。感光ドラム103は、周面に各々独立した複数の凹部を持つ。
図2に凹部形状の例を示す。軸方向における凹部の開口の輪郭の最大の幅は20μm以上80μm以下、深さは0.5μm以上8μm以下である。また、凹部の開口の輪郭は、感光ドラム103の回転方向の少なくとも上流側に、角度0°以上90°以下の頂部を持ち、凹部の開口の輪郭の幅が最大の幅になっている部分から頂部に向かって小さくなっている。また、軸方向視において、凹部の深さが最深点から頂部に向かって浅くなっている。凹部の形成については、例えば、形成するべき凹部に対応する凸部を有するモールドを感光ドラムの周面に圧接し、形状転写を行う方法がある。モールドの材質としては、金属、金属酸化物、プラスチック、ガラスなどが挙げられる。これらの中でも、機械的強度、寸法精度、耐久性の観点から、ステンレス鋼(SUS)が好ましい。
【0022】
帯電ローラ104は、負極性の直流電圧を印加されて感光ドラム103の表面を負極性に帯電させる。露光装置105は、ブラックの分解色画像を展開した走査線画像データをON-OFF変調したレーザービームを回転ミラーで走査して、感光ドラム103の表面に画像の静電像を書き込む。
【0023】
現像装置106は帯電極性が負極性の非磁性トナーと磁性キャリアを含む二成分現像剤を攪拌部材により摩擦帯電させる。現像剤は搬送部材により搬送されて、現像剤担持体としての現像スリーブに担持される。現像スリーブに担持された現像剤は、規制ブレードにより厚さを規制された後、感光ドラム103との対向部へ搬送される。現像スリーブは感光ドラム103に対して所定の距離を空けて保持されている。負極性の直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧を現像スリーブに印加することで、負極性に帯電したトナーが相対的に正極性になった感光ドラム103の露光部分へ移転して静電像が反転現像される。
【0024】
本実施形態で用いるトナーとしては、バインダ樹脂に着色材や帯電制御材等を添加した公知のものが使用できる。また、トナーの体積平均粒径としては5μm以上15μm以下のものを好適に使用することができる。本実施形態では、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの全色について体積平均粒径6μmのトナーを用いた。
【0025】
一次転写ローラ107は、感光ドラム103と中間転写ベルト101の間に一次転写部T1を形成する。一次転写ローラ107に正極性の直流電圧を印加することで、感光ドラム103に担持されたトナー像が中間転写ベルト101へ一次転写される。
【0026】
感光体クリーニングブレード108は感光ドラム103の駆動方向に対向するように当接して、感光ドラム103に残った転写残トナーを回収する。感光体クリーニングブレード108は板状の弾性部材と支持板金とで構成されており、弾性部材としては例えば硬度77°(JIS-A)、厚さ2mmのウレタンゴムが用いられる。また、感光体クリーニングブレード108は弾性部材の当接エッジが感光体ドラム103に対して22°の角度、30N/mの線圧で当接している。この線圧は長手方向全域の平均値である。
【0027】
二次転写ローラ111は、トナー像の移送方向の画像形成ユニット109Bkから中間転写体クリーニングブレード102までの間で中間転写ベルト101の外側面に当接する。二次転写ローラ111は、対向ローラ(駆動ローラ)110に内側面を支持された中間転写ベルト101に当接して二次転写部T2を形成する。二次転写ローラ111に正極性の直流電圧を印加することで、中間転写ベルト101に担持されたフルカラートナー像が記録材Pへ二次転写される。
【0028】
中間転写体クリーニングブレード102はテンションローラ115を対向として中間転写ベルト101の駆動方向に対向するように当接して、中間転写ベルト101に残った転写残トナーを回収する。中間転写体クリーニングブレード102は板状の弾性部材と支持板金とで構成されており、弾性部材としては例えば硬度77°(JIS-A)、厚さ2mmのウレタンゴムが用いられる。また、中間転写体クリーニングブレード102は弾性部材の当接エッジが中間転写ベルト101に対して25°の角度、35N/mの線圧で当接している。この線圧は長手方向全域の平均値である。
【0029】
中間転写ベルト101は、矢印Rの方向へと搬送駆動されるベルト部材であり、駆動部材である駆動ローラ110、張架部材である張架ローラ113、114、中間転写ベルト101に所定の張力を付与するテンションローラ115によって張架されている。駆動ローラ110は、二次転写部T2に配置される二次転写内ローラの機能を兼ね備えている。ただし、中間転写ベルト101を張架するローラの本数は
図1の構成に限定されるものではない。
【0030】
<トナーすり抜けの説明>
図3は画像形成装置100の主要な要素の長手配置の説明図である。長手端部での現像安定性を鑑みて、現像装置106の長手幅は必要なトナー像の長手幅(最大画像形成領域の長手幅)よりも大きく設定されている。また、現像装置106の長手端部から飛散したトナーもクリーニングできるように、感光体クリーニングブレード108の長手幅は現像装置106の長手幅よりも大きく設定されている。さらに、中間転写ベルト101の蛇行による長手方向の位置ずれが発生しても、中間転写ベルト101上のトナーをクリーニングできるように、以下のような長さ関係にしている。即ち、中間転写体クリーニングブレード102の長手幅は感光体クリーニングブレード108の長手幅よりも大きく設定されている。
【0031】
このような長手配置の場合、感光体クリーニングブレード108の長手方向端部と中間転写体クリーニングブレード102の長手方向端部には、潤滑剤となるトナーや外添剤がほとんど供給されない領域(以後、高μ領域と呼称)が存在する。ここで、「高μ領域」とは、感光体クリーニングブレード108が感光体ドラム103と当接する感光体ドラムの領域であるクリーニング領域のうち、現像スリーブの現像剤を担持する領域である現像領域よりも外側の領域である。この領域には、現像装置からかぶりトナーすら供給されないため、感光ドラム103と感光体クリーニングブレード108との間の摩擦係数が非常に高くなる領域である。
【0032】
図4は本実施例に係るクリーニングブレードの概略構成の説明図である。クリーニングブレードは、弾性ブレードとしての弾性部材1と、支持板金2で構成されている。本実施例では、支持板金2は、弾性部材1の自由長を規制する規制部として機能している。本実施例では、支持板金2の形状によって、長手方向で自由長を変化させている。具体的には、弾性部材1の長手方向中央部での弾性部材201と支持板金202の接着面から弾性部材201の自由端までの長さ(以後、自由長と呼称)L1[mm]とする。また、長手方向端部の幅wの領域での自由長をL2[mm]としたとき、次式、L1<L2の関係を満たすように設定している。本実施例では、画像形成領域における自由長は略一定である。また、クリーニングブレードの幅方向の両端部において、幅wの領域、即ち、現像領域よりも外側の領域における自由長は略一定に設定されている。
【0033】
ここで、自由長L1[mm]は、画像形成領域におけるクリーニングブレードの自由長L1[mm]の平均値である。また、自由長L2[mm]は、クリーニングブレードの幅方向において、現像領域よりも外側におけるクリーニングブレードの自由長L2[mm]の平均値である。
【0034】
この幅wが高μ領域の幅よりも大きくなるように設定することで、高μ領域において弾性部材1にかかる負荷を逃がすことができる。本実施例では、1.2×L1≦L2の関係とすることでより負荷を逃がす構成としている。なお、支持板金2の詳細な形状は
図4の構成に限定されるものではない。
【0035】
自由長を長く設定すると弾性部材1の感光ドラム103への当接圧が低下する。このため、トナー像の形成領域にかかるほど幅wが大きい場合にはクリーニング不良が発生する可能性がある。したがって、幅wは高μ領域の幅よりも大きく、かつトナー像の形成領域にかからないように設定するのが望ましい。
【0036】
しかしながら、トナー像形成領域の外側であっても、現像装置106にトナーがコートされている領域に対向する位置の感光ドラム103上には、微小なかぶりトナーが供給され続ける。この領域のクリーニングブレード108の自由長が長い(感光ドラム103への当接圧が低い)と、微小なかぶりトナーはクリーニングブレード108によって十分に回収されず、下流に位置する帯電ローラ104に付着する。クリーニングブレード108をすり抜けたかぶりトナーは、短期的には画像不良として顕在化しないが、長期に渡って帯電ローラ104に供給され続けると、蓄積されたトナーが抵抗体となって帯電不良が発生し、用紙端部に縦スジが発生してしまう。
【0037】
従来構成においてトナーすり抜けが発生するメカニズムを、
図5を用いて説明する。端部で自由長が長いクリーニングブレードにおいては、画像形成領域に対して自由長が長い領域でブレード圧は低くなる。感光ドラム103表面の摩擦係数は、現像装置106に対向する位置ではトナーや外添剤が供給されるため小さくなる。一方、トナーや外添剤が供給されない外側の領域においては、摩擦係数は大きくなる。その結果、感光ドラム103とクリーニングブレード108との摩擦力は、
図5に示すようなプロファイルとなる。摩擦力が大きすぎるとブレードめくれが発生してしまう一方で、摩擦力が小さすぎると十分なクリーニング性が得られず、クリーニング不良(トナーすり抜け)が発生する虞がある。
図5の点線aは、クリーニング不良発生閾値を表しており、摩擦力が波線aを下回るとクリーニング不良が発生する。従来構成においては、クリーニングブレード108の自由長が長い領域と現像装置106が対向している長手位置において、摩擦力が点線aを下回っており、クリーニング不良が発生してしまう。(以後、この長手位置をトナーすり抜け発生領域と呼称)
【実施例0038】
<ブレードの自由長>
図6は、本実施例における画像形成装置100の主要な要素の長手関係の説明図である。上記の通り、トナー像が形成され得る画像形成領域(最大画像形成領域)におけるクリーニングブレード108の自由長は第1長さである。そして、クリーニングブレード108の幅方向において、最大画像形成領域よりも外側におけるクリーニングブレード108の自由長は、第1長さよりも長い第2長さである。即ち、クリーニングブレード108の幅方向において、最大画像形成領域よりも外側の領域であるクリーニングブレード108の端部の自由長を長くすることで、現像剤が供給されにくい領域におけるブレード捲れを抑制できる。
【0039】
<感光ドラムの表面粗さ>
上述したとおり、クリーニングブレード108の自由長が長い領域のうち、現像装置106(現像領域)対向している位置が、トナーすり抜けが発生しやすい。即ち、感光ドラム103の領域のうちトナー像が形成され得る画像形成領域(最大画像形成領域)よりも外側、かつ、現像装置の現像スリーブが現像剤を担持可能な現像領域よりも内側の領域でトナーすり抜けが発生しやすい(トナーすり抜けが発生しやすい領域をクリーニング不良発生領域とも呼ぶ。)。
【0040】
そこで、本実施例では、クリーニング不良発生領域における感光ドラム表面粗さを他の長手位置(他のクリーニング領域)に対して小さく設定している。
【0041】
感光ドラムの表面粗さは、例えば、レーザー顕微鏡、光学顕微鏡、電子顕微鏡、原子力顕微鏡などの顕微鏡等を用いて観察することができる。例えば、レーザー顕微鏡としては以下の機器が利用可能である。(株)キーエンス製の超深度形状測定顕微鏡VK-8550、超深度形状測定顕微鏡VK-9000、超深度形状測定顕微鏡VK-9500、VK-X200,VK-X100が利用可能である。また、オリンパス(株)製の走査型共焦点レーザー顕微鏡OLS3000、レーザーテック(株)製のリアルカラーコンフォーカル顕微鏡オプリテクスC130も利用可能である。本実施例においては、測定器としてレーザー顕微鏡(VK-X110)を用い、20倍の対物レンズにて算術平均面粗さ(Sa)を測定した。上記測定条件にて、感光ドラム表面の凹凸形状を検出することが可能である。
【0042】
本実施例の構成におけるクリーニング不良への対策の効果を、
図7を用いて説明する。本実施例の構成において、クリーニングブレード圧は従来構成と同様に、画像形成領域に対して自由長が長い領域で低くなる。こうすることでブレード端部で発生するブレード捲れを効果的に抑制することができる。
【0043】
一方、クリーニングブレード108の自由長が長い領域と現像装置106(現像領域)が対向している長手位置における感光ドラム103の表面粗さを小さくする。こうすることにより、トナーすり抜けが起きやすい領域における感光ドラム表面の摩擦係数を大きくすることができ、クリーニングブレード108のクリーニング性を高め、トナーすり抜けの発生を効果的に回避することが可能となる。即ち、表面粗さを小さくしている領域においては、感光体ドラム103とクリーニングブレード108との接触面積が増加することにより、感光ドラム表面の摩擦係数が大きくなる。その結果、感光ドラム103とクリーニングブレード108との摩擦力は、長手全域においてクリーニング不良発生閾値である点線aを上回り、クリーニング不良の発生を回避することが可能となる。
【0044】
本実施例の効果を確認すべく、長手方向一部の表面粗さを小さくした感光ドラムを複数作製し、画像形成装置100に搭載して連続通紙試験を実施した。画像はトナーすり抜けを効率的に検知すべく、印字率30%の画像を用いた。また、ブレードめくれへの耐性も確認するため、ブレードめくれが発生しやすい印字率0%の画像を用いた試験も別途実施した。クリーニングブレード108の自由長が長い領域は、高μ領域の幅よりも大きく、トナー像の形成領域にかからないような設定とした。
【0045】
図8に、本実施例における感光ドラム103周面の模式図を示す。感光ドラム103周面の凹部は、感光ドラム103の周面の任意の位置に一辺500μmの正方形領域(面積250000μm
2)を配置したとき、その領域における凹部の面積が100000μm
2となるような設定とした(
図8-a)。表面粗さの小さい箇所は、凹部の面積率を小さくすることで表面粗さを調整した(
図8-b)。具体的には、上記の正方形領域における凹部の面積が50000μm
2となるような設定とした。即ち、クリーニングブレード108の幅方向において、画像形成領域を第1領域とし、画像形成領域よりも外側であって、現像領域の端部よりも内側である領域を第2領域(トナーすり抜け発生領域)とし、現像領域の端部よりも外側である第3領域(高μ領域)とする。このとき、画像形成領域である第1領域における感光ドラム103の表面粗さ、及び、現像領域の端部よりも外側である第3領域(高μ領域)における感光ドラム103の表面粗さは、第1表面粗さとしている。また、画像形成領域よりも外側であって、現像領域の端部よりも内側である第2領域(トナーすり抜け発生領域)における感光ドラム103の表面粗さは、第1粗さよりも小さい第2表面粗さとしている。また、別の言い方をすれば、感光ドラム103の表面のうち、第1領域(画像形成領域)及び第3領域(高μ領域)における単位面積当たりに形成される凹部の面積率は第1面積率である。また、第2領域(トナーすり抜け発生領域)における単位面積当たりに形成される凹部の面積率は第1面積率よりも小さい第2面積率である。
【0046】
図9に連続通紙試験に用いた4水準の感光ドラムA~Dの模式図を示す。比較例としての感光ドラムAは従来同様、表面粗さを長手均一としている。本実施例としての感光ドラムB~Dは、長手方向の一部で表面粗さの小さい箇所を設けており、その領域の幅を変化させたものである。
【0047】
図10は本実施例での連続通紙試験におけるクリーニング不良とブレードめくれの発生状況の説明図である。連続通紙枚数は10000枚とし、通紙中にブレードめくれが発生した場合はその時点で通紙を中止した。従来構成である感光ドラムAでは、ブレードめくれは発生しないものの、上記の通りクリーニングブレード108の自由長が長い領域と現像装置106とが対向している長手位置においてクリーニング不良が発生した。感光ドラムBは、トナーすり抜け発生領域全域の表面粗さを小さく設定しているため、クリーニング不良は発生しなかった。また、ブレード端部の自由長を長くすることによりブレード端部で発生するブレード捲れを抑制できた。しかしながら、クリーニングブレード108の自由長が長い領域よりも内側まで表面粗さが小さい領域を設けているため、この領域における感光ドラム103の摩擦係数が大きくなる。このため、環境条件によってはブレードめくれが発生する虞がある。このため、好ましくは、表面粗さが小さくする領域は、クリーニングブレード108の自由長が長い領域を超えて、ブレード内側の領域に形成しない方が好ましい。感光ドラムCは、ブレード端部の自由長を長くすることによりブレード端部で発生するブレード捲れを抑制できた。また、トナーすり抜け発生領域の少なくとも一部の領域の表面粗さを小さく設定している。このため、トナーすり抜け発生領域のうち一部で軽微なクリーニング不良が発生する場合があったものの、クリーニング不良の発生を抑制することができた。感光ドラムDは、クリーニング不良およびブレードめくれのどちらも発生しなかった。
【0048】
以上の結果から、
図6に示すように、トナーすり抜け発生領域に対向する位置の感光ドラム103の表面粗さを小さくすることにより、ブレードの捲れを抑制しつつ、トナーすり抜けの発生を抑制することが確認できた。また、感光ドラム103の表面粗さを小さくすることで引き起こされるブレードめくれを抑制するため、感光ドラム103の表面粗さが小さい領域は、クリーニングブレード108の自由長が長い領域より内側に侵入しない範囲に設定するのが好ましい。また、感光ドラム103の表面粗さが小さい領域は、クリーニング不良の抑制効果をより高めるため、可能な限りトナーすり抜け発生領域に対向する領域全域に設定することがより好ましい。例えば、感光ドラム103の表面粗さが小さい領域は、トナーすり抜け発生領域に対向する領域の80%以上に設定することができる。より好ましくは、トナーすり抜け発生領域に対向する領域の90%以上に設定することができる。
【0049】
<その他>
本実施例では、クリーニングブレードの自由長は、ブレード中央部とブレード端部で1段階異なるように構成したが、これに限定されない。例えば、ブレード端部においてクリーニングブレードの自由長を段階的もしくは無段階的に変更してもよい。上述した「トナーすり抜け発生領域」における自由長を画像形成領域における自由長よりも長くし、高μ領域における自由長よりも短く設定してもよい。
【0050】
また、本実施例では、感光ドラムの第1領域と第3領域における表面粗さを同じに設定していたが、第3領域と第1領域で異なっていても良く、第3領域(高μ領域)の方が第1領域(画像形成領域)よりも表面粗さを大きくすることでブレード捲れを抑制してもよい。
【0051】
トナーすり抜け発生領域における感光ドラムとクリーニングブレードとの摩擦力を大きくする手段として、クリーニングブレードの自由長をトナーすり抜け発生領域から高μ領域にかけて段階的に長くすることが考えられる。しかしながら、本実施例の構成と比較して効果は小さい。本実施例のように、クリーニングブレードの自由長をある長手位置から急峻に変更したとしても、
図5に示すようにクリーニングブレード圧の分布は自由長変更位置の前後でなだらかに推移する。そのため、クリーニングブレードの自由長をトナーすり抜け発生領域から高μ領域にかけて段階的に長くしたとしても、クリーニングブレード圧の分布としては本実施例の分布と大差なく、トナーすり抜け領域で十分な摩擦力を得ることはできない。