(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178071
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】タッチパネル付き表示装置、及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
G06F3/041 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096633
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003926
【氏名又は名称】弁理士法人イノベンティア
(72)【発明者】
【氏名】末廣 大輔
(72)【発明者】
【氏名】北川 大二
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 仁
(72)【発明者】
【氏名】中邨 陽介
(57)【要約】
【課題】可変フレームレートで動作する場合でも、タッチが検出される周期が長くなるのを防止しながら、1フレーム期間を構成する第1期間及び第2期間のうちの第1期間内に開始したタッチ検出処理が、第2期間内に実行される処理へ影響を与えることを防止することが可能なタッチパネル付き表示装置、及びその制御方法を提供する。
【解決手段】タッチパネル付き表示装置100は、延長期間内において、第1のタッチ検出処理を開始し、通常駆動期間が開始する前に、第1のタッチ検出処理を終了する。タッチパネル付き表示装置100は、延長期間の長さが、所定の長さ以上である場合に、第1の報告データを出力する処理を実行する。タッチパネル付き表示装置100は、通常駆動期間が開始した後に、第2のタッチ検出処理と、書き込み処理と、第2の報告データを出力する処理とを実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変フレームレートで動作するタッチパネル付き表示装置であって、
前記可変フレームレートは、1フレーム期間を構成する第1期間と第2期間とのうちの当該第1期間の長さを変化させることで実現され、
前記タッチパネル付き表示装置は、
画素電極を含むタッチパネルと、
前記画素電極にデータ信号の書き込みを行う書き込み処理と、前記タッチパネルによるタッチ検出処理とを実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1期間内において、第1のタッチ検出処理を開始し、
前記第1のタッチ検出処理を開始した後の前記第2期間が開始する前に、前記第1のタッチ検出処理を終了し、
前記第1期間の長さが、所定の長さ未満である場合、前記第1のタッチ検出処理による検出結果を報告する第1の報告データを出力しないで、前記第1期間の長さが、前記所定の長さ以上である場合に、前記第1の報告データを出力し、
前記第2期間が開始した後に、第2のタッチ検出処理と、前記書き込み処理と、前記第2のタッチ検出処理による検出結果を報告する第2の報告データを出力する処理と、を実行する、タッチパネル付き表示装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1期間内において、前記第1のタッチ検出処理を実行する期間の長さが、前記所定の長さ以上となった場合に、前記第1のタッチ検出処理を終了する、請求項1に記載のタッチパネル付き表示装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1期間の長さが、前記所定の長さ未満である場合に、前記第1のタッチ検出処理による検出結果を破棄する処理を実行する、請求項1または2に記載のタッチパネル付き表示装置。
【請求項4】
画素電極を含むタッチパネルであって、可変フレームレートで動作するタッチパネルを備えたタッチパネル付き表示装置の制御方法であって、
前記可変フレームレートは、1フレーム期間を構成する第1期間と第2期間とのうちの当該第1期間の長さを変化させることで実現され、
前記第1期間内において、前記タッチパネルによる第1のタッチ検出処理を開始し、
前記第1のタッチ検出処理を開始した後の前記第2期間が開始する前に、前記第1のタッチ検出処理を終了し、
前記第1期間の長さが、所定の長さ未満である場合、前記第1のタッチ検出処理による検出結果を報告する第1の報告データを出力しないで、前記第1期間の長さが、前記所定の長さ以上である場合に、前記第1の報告データを出力し、
前記第2期間が開始した後に、前記タッチパネルによる第2のタッチ検出処理と、前記画素電極にデータ信号の書き込みを行う書き込み処理と、前記第2のタッチ検出処理による検出結果を報告する第2の報告データを出力する処理と、を実行する、タッチパネル付き表示装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タッチパネル付き表示装置、及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タッチパネル付き表示装置が記載されている。このタッチパネル付き表示装置は、表示部と、検出部と、制御部とを備える。表示部は、画像を表示するための表示動作を行う。検出部は、表示動作が行われる通常駆動期間とは異なる期間であるタッチ検出期間において、外部近接物体に応じた検出信号を検出するためのタッチ検出動作を行う。1フレームの画像が表示される1フレーム期間は、通常駆動期間と、タッチ検出期間と、画像の表示を調整するための表示調整期間と、を含む。制御部は、1フレーム期間が、通常駆動時の長さである16.6ms(60Hz)よりも長い所定の期間である33.3ms(30Hz)低速駆動を行う場合、表示調整期間にタッチ検出動作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、通常駆動時の1フレーム期間と、低速駆動時の1フレーム期間との2種類のみのフレーム期間ではなく、1フレーム期間の長さが様々に変化する可変フレームレートで動作するタッチパネル付き表示装置及びその制御方法が望まれている。この場合、1フレーム期間内に、長さが変化する期間(以下、「第1期間」と呼ぶ)と、第1期間の後に通常駆動を行う期間(以下、「第2期間」と呼ぶ)とが設けられる。
【0005】
しかしながら、可変フレームレートで動作するタッチパネル付き表示装置では、第1期間の長さが短い場合、第1期間中に開始したタッチ検出動作を実行している間に、第2期間が開始してしまう。これにより、タッチ検出動作を実行している間に、通常駆動が開始してしまい、第1期間に開始したタッチ検出動作が、第2期間における通常駆動に影響を与えてしまう場合がある。
【0006】
これを防止するために、第1期間中にタッチ検出動作を実行しない方法がある。しかしながら、この場合、第1期間の長さに応じて、タッチ検出動作の周期が長くなる。この結果、タッチが検出される周期が長くなる。
【0007】
そこで、本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、可変フレームレートで動作する場合でも、タッチが検出される周期が長くなるのを防止しながら、1フレーム期間を構成する第1期間及び第2期間のうちの第1期間内に開始したタッチ検出処理が、第2期間内に実行される処理へ影響を与えることを防止することが可能なタッチパネル付き表示装置、及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の第1の態様に係るタッチパネル付き表示装置は、可変フレームレートで動作するタッチパネル付き表示装置であって、前記可変フレームレートは、1フレーム期間を構成する第1期間と第2期間とのうちの当該第1期間の長さを変化させることで実現され、前記タッチパネル付き表示装置は、画素電極を含むタッチパネルと、前記画素電極にデータ信号の書き込みを行う書き込み処理と、前記タッチパネルによるタッチ検出処理とを実行する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1期間内において、第1のタッチ検出処理を開始し、前記第1のタッチ検出処理を開始した後の前記第2期間が開始する前に、前記第1のタッチ検出処理を終了し、前記第1期間の長さが、所定の長さ未満である場合、前記第1のタッチ検出処理による検出結果を報告する第1の報告データを出力しないで、前記第1期間の長さが、前記所定の長さ以上である場合に、前記第1の報告データを出力し、前記第2期間が開始した後に、第2のタッチ検出処理と、前記書き込み処理と、前記第2のタッチ検出処理による検出結果を報告する第2の報告データを出力する処理と、を実行する。
【0009】
第2の態様に係るタッチパネル付き表示装置の制御方法は、画素電極を含むタッチパネルであって、可変フレームレートで動作するタッチパネルを備えたタッチパネル付き表示装置の制御方法であって、前記可変フレームレートは、1フレーム期間を構成する第1期間と第2期間とのうちの当該第1期間の長さを変化させることで実現され、前記第1期間内において、前記タッチパネルによる第1のタッチ検出処理を開始し、前記第1のタッチ検出処理を開始した後の前記第2期間が開始する前に、前記第1のタッチ検出処理を終了し、前記第1期間の長さが、所定の長さ未満である場合、前記第1のタッチ検出処理による検出結果を報告する第1の報告データを出力しないで、前記第1期間の長さが、前記所定の長さ以上である場合に、前記第1の報告データを出力し、前記第2期間が開始した後に、前記タッチパネルによる第2のタッチ検出処理と、前記画素電極にデータ信号の書き込みを行う書き込み処理と、前記第2のタッチ検出処理による検出結果を報告する第2の報告データを出力する処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0010】
上記の構成によれば、第1期間の長さが変化する可変フレームレートで動作する場合でも、第1のタッチ検出処理が開始した後の第2期間が開始する前に、第1のタッチ検出処理が強制的に終了する。これにより、第1期間内に開始した第1のタッチ検出処理が、第2期間内に実行される処理へ影響を与えることを防止することができる。そして、第1期間の長さが、タッチ検出処理に要する所定の長さ以上である場合に、第1の報告データを出力する処理が行われるので、第1期間にタッチ検出処理が実行されない場合に比べて、タッチが検出される周期が長くなるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態による表示システム100aの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、タッチパネル1の構成を模式的に示した平面図である。
【
図3】
図3は、薄膜トランジスタ13と画素電極14との接続関係を説明するための回路図である。
【
図4】
図4は、表示装置100の可変フレームレートによる動作を説明するための図(1)である。
【
図5】
図5は、表示装置100の可変フレームレートによる動作を説明するための図(2)である。
【
図6】
図6は、表示装置100の可変フレームレートによる動作を説明するための図(3)である。
【
図7】
図7は、一実施形態の変形例による表示システム200aの構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、一実施形態の変形例による表示装置200の可変フレームレートによる動作を説明するための図(1)である。
【
図9】
図9は、一実施形態の変形例による表示装置200の可変フレームレートによる動作を説明するための図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本開示の実施形態を詳しく説明する。図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0013】
[表示システムの全体構成]
本実施形態によるタッチパネル付き表示装置100(以下、「表示装置100」という)の構成、及び本実施形態による表示システム100aの構成について説明する。
図1は、本実施形態による表示システム100aの構成を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、表示システム100aは、表示装置100とホストコントローラ3とを備える。なお、
図1では、表示装置100とホストコントローラ3とを、別の装置として図示している。しかし、表示装置100として機能する構成と、ホストコントローラ3として機能する構成とが、1つの装置内に一体的に収容されていてもよい。
【0015】
表示装置100は、タッチパネル1と、制御回路2とを含む。そして、表示装置100は、タッチパネル1に映像又は画像を表示する。また、表示装置100は、タッチパネル1により指示体によるタッチを検出する。指示体には、指、及びペンが含まれる。制御回路2は、タッチパネル1のタッチ検出に関する制御処理と、表示に関する制御処理とを行うプロセッサを含む。
【0016】
図2は、タッチパネル1の構成を模式的に示した平面図である。
図2に示すように、タッチパネル1は、タッチ検出電極11と、駆動回路12と、薄膜トランジスタ13と、画素電極14とを含む。また、本実施形態では、制御回路2は、タッチパネル1上に配置されている。なお、この例に限られず、制御回路2が、タッチパネル1の外部に配置され、制御回路2とタッチパネル1とが配線(例えば、フレキシブルプリント基板)により接続されていてもよい。タッチパネル1は、例えば、インセル型のタッチパネルである。すなわち、タッチ検出電極11が、タッチを検出するための電極と、映像を表示するための画素電極14との間で電界を生成する対向電極とを兼ねている。なお、
図1では、説明を容易にするために、タッチ検出電極11及び画素電極14は、1つずつ記載している。駆動回路12は、例えば、1つまたは複数個の集積回路を含む。
【0017】
図2に示すように、複数のタッチ検出電極11は、例えば、行列状に配置されている。駆動回路12は、タッチ検出用ドライバを含む。そして、複数のタッチ検出電極11と駆動回路12(タッチ検出用ドライバ)とは、それぞれ、タッチ信号線15を介して接続されている。タッチ検出電極11は、指示体との間で容量結合することにより、静電容量が変化する。駆動回路12は、複数のタッチ検出電極11にタッチ駆動信号(パルス信号)を供給する。パルス信号の波形は、タッチ検出電極11の静電容量の大きさによって変化する。駆動回路12は、タッチ検出電極11からのパルス信号(以下、「検出信号」という)の波形に基づいて、指示体によるタッチ(タッチされた位置)を検出する。なお、「タッチ」とは、タッチパネル1に指示体が接触することのみならず、タッチパネル1に指示体が接近したことをも含む概念である。すなわち、タッチパネル1は、自己容量方式のタッチパネルである。なお、この例に限られず、タッチパネル1は、相互容量方式のタッチパネルとして構成されてもよい。タッチパネル1による指示体のタッチを検出する処理を、以下「タッチ検出処理」という。
【0018】
図3は、薄膜トランジスタ13と画素電極14との接続関係を説明するための回路図である。駆動回路12(
図1参照)は、ゲートドライバ、及びソースドライバをさらに含む。そして、駆動回路12のゲートドライバは、ゲート線16に接続されている。駆動回路12のソースドライバは、ソース線17に接続されている。薄膜トランジスタ13のゲート電極が、ゲート線16に接続されており、薄膜トランジスタ13のソース電極が、ソース線17に接続されている。また、薄膜トランジスタ13のドレイン電極は、画素電極14に接続されている。画素電極14は、タッチ検出電極11との間に静電容量を形成する。タッチ検出電極11は、複数の画素電極14に共通して設けられており、共通電極として機能する。
【0019】
駆動回路12のゲートドライバは、複数のゲート線16の各々に順次、ゲート信号(走査信号)を供給する。また、駆動回路12のソースドライバは、映像信号に基づくデータ信号を、複数のソース線17の各々に供給する。これにより、ゲート信号が供給された薄膜トランジスタ13がオンすることにより、データ信号が画素電極14に書き込まれる。画素電極14にデータ信号の書き込みを行う処理を、以下「書き込み処理」という。そして、タッチパネル1では、画素電極14とタッチ検出電極11(共通電極)とにより生じる電界によって、図示しない液晶層が駆動して、映像が表示される。
【0020】
図4~
図6は、表示装置100の可変フレームレートによる動作を説明するための図である。ここで、表示装置100は、
図4~
図6に示すように、可変フレームレートで動作する表示装置である。「可変フレームレート」は、1フレーム期間を構成する第1期間と第2期間とのうち第1期間の長さを変化させることで実現される。本実施形態では、第1期間を、以下「延長期間」と呼ぶ。また、第2期間を、以下「通常駆動期間」と呼ぶ。「1フレーム期間」とは、垂直同期信号が駆動回路12に入力される時間間隔である。通常駆動期間は、一定の長さを有する期間(長さが変化しない期間)である。また、延長期間は、通常駆動期間に対して1フレーム期間の長さを延長させるための期間である。延長期間の長さは、規則的に変化しても良いし、ランダムに変化しても良い。また、延長期間の長さは、フレーム毎または複数フレーム毎に周期的に変化しても良いし、ランダムな周期で変化しても良い。また、可変フレームレートを使用する目的は特に限定されない。例えば、消費電力を低減させるために、動画中の画像の変化(動き)の多寡に応じてフレームレートを変化させることがある。この場合、表示装置100は、画像の変化が多い場面では高フレームレート(例えば120Hz)で動作し、画像の変化が少ない場面では低フレームレート(例えば60Hz)で動作する。
【0021】
図4に示すように、制御回路2は、駆動回路12に対して、タッチ検出処理を実行させるための信号STを入力する。駆動回路12は、信号STがLowレベルの場合に、タッチ検出処理を実行し、Highレベルの場合に、タッチ検出処理を停止する。また、制御回路2は、駆動回路12により検出したタッチ位置(タッチ座標)を含む報告データRPをホストコントローラ3に送信する。ホストコントローラ3は、
図4に示すように、制御回路2から出力されるストローブ信号SRがLowレベルとなった場合に、報告データRPを受信する(読み取る)。
【0022】
通常駆動期間は、
図4に示すように、タッチ検出処理が実行される期間であるタッチ検出期間Tと、書き込み処理が実行される期間である表示期間Dと、垂直ブランキング期間V(垂直帰線期間)とを含む。また、本実施形態では、通常駆動期間内において、垂直ブランキング(垂直ブランキング期間V)、タッチ検出処理(タッチ検出期間T)、及び書き込み処理(表示期間D)の順に実行される。すなわち、通常駆動期間内において、制御回路2は、垂直ブランキング期間Vの終了後に、信号STをHighレベルからLowレベルに変更し、その後、信号STをHighレベルに変更する。垂直ブランキング期間Vの長さは、変化しない長さでありT0である。本実施形態では、表示装置100は、通常駆動期間内に、垂直ブランキング期間Vが1回のみ設けられるLVB(Long Vertical Blanking)方式により駆動を行う。
【0023】
延長期間は、書き込み処理が実行されずにタッチパネル1の表示の更新が休止する期間である。1フレーム期間内に、延長期間が設けられない場合(延長期間の長さが0の場合)、フレームレートは上限値となる。この場合、
図4に示すように、1フレーム期間の長さは、通常駆動期間TNと等しくなる。
【0024】
図4に示すように、1フレーム期間TLaは、延長期間TLa1と通常駆動期間TLa2とを含む。なお、本実施形態では、1フレーム期間TLaにおいて、延長期間TLa1の後に、通常駆動期間TLa2が設けられている。延長期間TLa1は、垂直ブランキング期間Vとタッチ検出期間Tとを含む。すなわち、本実施形態では、延長期間TLa1内に、タッチ検出処理が実行される。ここで、タッチ検出レートを向上させる際に、通常駆動期間内に追加のタッチ検出処理を行うように制御回路(IC)を構成することが考えられる。しかしながら、通常駆動期間内に追加のタッチ検出処理を行う場合、追加のタッチ検出処理を追加する必要がない駆動を行っている際にも、通常駆動期間内に追加のタッチ検出処理を行うことを可能にするための猶予を予め用意しておく必要がある。インセル型のタッチパネルでは、タッチ検出処理と書き込み処理とを時分割で行うため、上記の猶予を設けるためには、さらに高い性能を有する制御回路(IC)が必要になる。このため、追加のタッチ検出処理を追加する必要がない駆動(通常通りの駆動)を、過剰な性能を有する制御回路(IC)により実施することになる。これに対して、本実施形態では、延長期間内に、タッチ検出処理が追加されるので、通常駆動期間の駆動を変更する必要がない。この結果、本実施形態では、要求される制御回路(IC)の性能が過剰になるのを防止することができる。
【0025】
ここで、
図4に示すように、制御回路2は、延長期間の長さが、タッチ検出処理に要する所定の長さ以上である場合に、当該タッチ検出処理による検出結果を報告する報告データRPを、ホストコントローラ3に出力する。「タッチ検出処理に要する所定の長さ」とは、
図4に示す例の場合、延長期間TLa1が開始した時点t1からタッチ検出処理が開始する時点t2までの期間(垂直ブランキング期間V)の長さT0と、タッチ検出処理を実行中の期間Tの長さTTとを合わせた長さである。長さTTは、複数のタッチ検出電極11の全ての検出信号を取得する(スキャンする)ために要する時間である。すなわち、延長期間の長さが、期間T0と期間TTとを合わせた長さ以上の場合、報告データRPがホストコントローラ3に出力される。なお、報告データRPは、タッチ検出処理が終了した時点t3よりも後の時点t4において、ホストコントローラ3に出力される。
【0026】
これにより、報告データRPが出力される周期(タッチが検出される周期)を、延長期間にタッチ検出処理を実行しない場合(時点t0から時点t7までの期間が周期となる場合)に比べて、時点t6から時点t7までの期間TR1に短くすることができる。すなわち、上記の構成によれば、タッチ検出レートを高くすることができる。そして、時点t3以降の時点t5において、延長期間TLa1から通常駆動期間TLa2に切り替わる。なお、
図4では、時点t4を、時点t5よりも前の時点として記載しているが、時点t4が時点t5よりも後であってもよい。
【0027】
また、表示装置100において、タッチの検出の周期の最大値(タッチ検出レートの最小値)がTRrであるとする。すなわち、要求されるタッチの検出の周期は、TRr以下であるとする。この場合、延長期間の長さの最大値がTRrとなる。例えば、通常駆動期間TNが8.33ms(120Hz)であり、最大値TRrが、9.09ms(タッチ検出レートの下限値が110Hz)であるとする。この場合、
図4に示す例の場合、延長期間TLa1が0.76msであるため、期間TR1(延長期間におけるタッチ検出の時点t6から通常駆動期間におけるタッチ検出の時点t7までの期間)は、0.76msとなる。このため、期間TR1は、タッチの検出の周期の最大値(9.09ms)よりも小さい。
【0028】
また、フレームレート(フレームの繰り返し周波数)の下限値xは、1フレーム期間中に、通常駆動期間TNのみを含む場合のフレームレートをfとし、要求されるタッチ検出レートをmとした場合、下限値xが、以下の式(1)を満たす映像信号に対して、表示装置100は、動作する。
f×m/(f+m) < x ・・・(1)
ここで、上記の例のように、m=110及びf=120とすると、x>57.39となる。
【0029】
図6は、フレームレートが低い場合(例えば、58Hz)の1フレーム期間TLc中の動作を示す図である。延長期間TLc1において報告データRPが出力された時点から通常駆動期間TLc2において報告データRPが出力された時点までの期間TRxは、8.91msとなる。このため、タッチ検出レートは、116Hzとなり、mよりも大きくなる。
【0030】
また、制御回路2は、延長期間の長さが、タッチ検出処理に要する所定の長さ未満である場合に、当該タッチ検出処理による検出結果を破棄する。例えば、
図5に示すように、延長期間TLb1から通常駆動期間TLb2に切り替わる際に、制御回路2は、タッチ検出処理を強制的に終了させる。具体的には、制御回路2は、1フレーム期間TLbを構成する延長期間TLb1から、垂直ブランキング期間Vの長さT0を差し引いた長さTTa(垂直ブランキング期間Vの終了時点t11から通常駆動期間TLb2の開始時点t12までの期間の長さ)が、TT未満である場合、信号STをLowレベルからHighレベルに変更し、タッチ検出処理を強制的に終了させる。長さTTaがTT未満である場合、制御回路2は、延長期間TLb1におけるタッチ検出処理による検出結果を、図示しないメモリから削除する。そして、制御回路2は、信号SRを、通常駆動期間TLb2のタッチ検出処理が完了するまで、Highレベルのままに保持する。延長期間においてタッチ検出処理が完了できなかった場合に、不要な検出結果を破棄することができるとともに、未完成の報告データRPがホストコントローラ3に送信されるのを防止することができる。
【0031】
また、延長期間TLb1内にタッチ検出処理が実行されない場合でも、当該延長期間TLb1の長さが短いため、タッチ検出レートの低下は抑制されている。例えば、
図5に示すように、延長期間TLb1の報告データRPがホストコントローラ3に出力されない場合、タッチ検出の周期TR2は、延長期間TLb1の直前の通常駆動期間TNの報告データRPが出力された時点t13から、延長期間TLb1の直後の通常駆動期間TLb2の報告データRPが出力された時点t14までの期間となる。ここで、延長期間TLb1が0.68ms、通常駆動期間TN及びTLb2がそれぞれ8.33msとすると、タッチ検出の周期TR2は、9.01ms(=0.68ms+8.33ms)となる。この場合、タッチ検出レートは、111Hzとなり、上記したタッチ検出レートの下限値110Hzよりも高い値となり、タッチ検出レートの低下は下限値よりも高い値に維持されている。
【0032】
(表示装置の制御方法)
次に、
図4及び
図5を参照して、本実施形態による表示装置100の制御方法について説明する。
【0033】
〈延長期間の長さが所定の長さ以上である場合〉
図4を参照して、延長期間TLa1の長さがタッチ検出処理に要する所定の長さ(T0+TT)以上である場合の表示装置100の制御方法について説明する。
図4に示すように、時点t1において、制御回路2は、フレーム期間TLaのうちの延長期間TLa1を開始させる。制御回路2は、時点t1から時点t2までの期間(垂直ブランキング期間V)では、タッチ検出処理及び書き込み処理を実行しない。
【0034】
時点t2において、垂直ブランキング期間Vが終了すると、制御回路2は、信号STをHighレベルからLowレベルに変更する。時点t2から時点t3までの期間中、制御回路2は、信号STをLowレベルとし、タッチ検出処理を実行する。
【0035】
時点t4から時点t6までの期間において、制御回路2は、報告データRPをホストコントローラ3に出力する。ホストコントローラ3は、報告データRPを取得する。
【0036】
時点t5において、制御回路2は、フレーム期間TLaのうちの通常駆動期間TLa2を開始させる。制御回路2は、時点t5から時点t7aまでの期間(垂直ブランキング期間V)では、タッチ検出処理及び書き込み処理を実行しない。
【0037】
時点t7aにおいて、垂直ブランキング期間Vが終了すると、制御回路2は、信号STをHighレベルからLowレベルに変更する。時点t7aから時点t7bまでの期間中、制御回路2は、信号STをLowレベルとし、タッチ検出処理を実行する。
【0038】
時点t7bから時点t8までの期間(表示期間D)において、制御回路2は、書き込み処理を実行する。また、時点t7cから時点t7までの期間において、制御回路2は、報告データRPをホストコントローラ3に出力する。ホストコントローラ3は、報告データRPを取得する。そして、時点t8において、次のフレーム期間が開始される。
【0039】
上記の制御方法によれば、延長期間TLa1内にタッチ検出処理が実行されるので、タッチを検出する周期が長くなるのを防止することができる。
【0040】
〈延長期間の長さが所定の長さ未満である場合〉
図5を参照して、延長期間TLa1の長さがタッチ検出処理に要する所定の長さ(T0+TT)未満である場合の表示装置100の制御方法について説明する。
図5に示すように、時点t10において、制御回路2は、フレーム期間TLbのうちの延長期間TLb1を開始させる。制御回路2は、時点t10から時点t11までの期間(垂直ブランキング期間V)では、タッチ検出処理及び書き込み処理を実行しない。
【0041】
時点t11において、垂直ブランキング期間Vが終了すると、制御回路2は、信号STをHighレベルからLowレベルに変更する。制御回路2は、タッチ検出処理を実行する。ここで、時点t12において、延長期間TLb1が終了し通常駆動期間TLb2が開始すると、制御回路2は、タッチ検出処理を実行している期間の長さがTT未満であっても、信号STをLowレベルからHighレベルに変更する。これにより、タッチ検出処理は、強制的に終了される(中止する)。この場合、制御回路2は、ホストコントローラ3に対して、中止されたタッチ検出処理に関する報告データRPの出力を行わない。
【0042】
時点t12において、制御回路2は、フレーム期間TLbのうちの通常駆動期間TLb2を開始させる。その後の制御方法は、延長期間の長さがタッチ検出処理に要する所定の長さ以上である場合の通常駆動期間TLa2と同一であるため、説明を省略する。
【0043】
上記の制御方法によれば、延長期間TLb1の長さが短い場合でも、通常駆動期間TLb2が開始する前に、タッチ検出処理が強制的に終了する。これにより、延長期間TLb1内に開始したタッチ検出処理が、通常駆動期間TLb2内に実行される処理へ影響を与えることを防止することができる。
【0044】
[変形等]
以上、上述した実施形態は本開示を実施するための例示に過ぎない。よって、本開示は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0045】
(1)上記実施形態では、延長期間及び通常駆動期間に、それぞれ、1回ずつ、タッチ検出処理を実行する例を示したが、本開示はこれに限られない。すなわち、延長期間及び通常駆動期間に、それぞれ、複数回ずつ、タッチ検出処理を実行してもよい。
【0046】
(2)上記実施形態では、数値例(例えば、通常駆動期間の長さを8.33msとするなど)を示して説明したが、本開示はこれに限られない。上記の数値例以外の値(例えば、通常駆動期間の長さを16.66msとするなど)を本開示の表示装置に適用してもよい。
【0047】
(3)上記実施形態では、延長期間の長さが、垂直ブランキング期間Vの長さT0とタッチ検出期間Tの長さTTとを合わせた長さ(T0+TT)以上の場合に、報告データRPを出力する例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、延長期間において、垂直ブランキング期間Vがタッチ検出期間Tよりも後に設けられる場合は、延長期間の長さが、TT以上の場合に、報告データRPを出力してもよいし、延長期間の長さが、T0+TTよりもさらに長い時間となった場合のみに報告データRPを出力してもよい。
【0048】
(4)上記実施形態では、延長期間の長さが、垂直ブランキング期間Vの長さT0とタッチ検出期間Tの長さTTとを合わせた長さ(T0+TT)未満の場合に、タッチ検出処理による検出結果をメモリから消去する例を示したが、本開示はこれに限られない。すなわち、延長期間の長さが、垂直ブランキング期間Vの長さT0とタッチ検出期間Tの長さTTとを合わせた長さ(T0+TT)未満の場合に、報告データRPをホストコントローラ3に送信しなければ、検出結果をメモリから消去しなくてもよい。
【0049】
(5)上記実施形態では、1フレーム期間内において、第1期間(延長期間)の後に、第2期間(通常駆動期間)が設けられる例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、
図7~
図9に示す変形例による表示システム200aのように、1フレーム期間内において、第2期間(通常駆動期間)の後に、第1期間(延長期間)が設けられてもよい。
【0050】
図7に示すように、変形例による表示システム200aは、制御回路202を含むタッチパネル付き表示装置200を含む。制御回路202は、
図8に示すように、1フレーム期間TLd内において、通常駆動期間TLd1の動作の後に、延長期間TLb2の動作を駆動回路12に実行させる。制御回路202は、延長期間TLb2において、タッチ検出処理Tを実行する。そして、制御回路202は、延長期間TLd2の長さが所定の長さ(例えば、T0+TT)以上である場合、報告データRPをホストコントローラ3に出力する。また、
図9に示すように、制御回路202は、延長期間TLe2の長さ(
図9では、T0+TTb)が所定の長さ(例えば、T0+TT)未満である場合、報告データRPをホストコントローラ3に出力しないで破棄する。例えば、制御回路202は、フレーム期間TLe内の通常駆動期間TLe1の後の延長期間TLe2において、タッチ検出処理中に、次のフレーム期間が開始しようとする場合、当該タッチ検出処理を終了して報告データRPは出力せずに、通常駆動期間の駆動を開始させる。このように、変形例によっても、延長期間にタッチ検出処理を実行するので、タッチが検出される周期が長くなるのを防止しながら、延長期間内に開始したタッチ検出処理が、通常駆動期間内に実行される処理へ影響を与えることを防止することができる。
【0051】
上述した構成は、以下のように説明することができる。
【0052】
第1の構成に係るタッチパネル付き表示装置は、可変フレームレートで動作するタッチパネル付き表示装置であって、前記可変フレームレートは、1フレーム期間を構成する第1期間と第2期間とのうちの当該第1期間の長さを変化させることで実現され、前記タッチパネル付き表示装置は、画素電極を含むタッチパネルと、前記画素電極にデータ信号の書き込みを行う書き込み処理と、前記タッチパネルによるタッチ検出処理とを実行する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1期間内において、第1のタッチ検出処理を開始し、前記第1のタッチ検出処理を開始した後の前記第2期間が開始する前に、前記第1のタッチ検出処理を終了し、前記第1期間の長さが、所定の長さ未満である場合、前記第1のタッチ検出処理による検出結果を報告する第1の報告データを出力しないで、前記第1期間の長さが、前記所定の長さ以上である場合に、前記第1の報告データを出力し、前記第2期間が開始した後に、第2のタッチ検出処理と、前記書き込み処理と、前記第2のタッチ検出処理による検出結果を報告する第2の報告データを出力する処理と、を実行する(第1の構成)。
【0053】
上記第1の構成によれば、第1期間の長さが変化する可変フレームレートで動作する場合でも、第2期間が開始する前に、第1のタッチ検出処理が強制的に終了する。これにより、第1期間内に開始した第1のタッチ検出処理が、第1のタッチ検出処理の後の第2期間内に実行される処理へ影響を与えることを防止することができる。そして、第1期間の長さが、所定の長さ以上である場合には、第1の報告データを出力する処理が行われるので、第1期間にタッチ検出処理が実行されない場合に比べて、タッチが検出される周期が長くなるのを防止することができる。
【0054】
第1の構成において、前記制御部は、前記第1期間内において、前記第1のタッチ検出処理を実行する期間の長さが、前記所定の長さ以上となった場合に、前記第1のタッチ検出処理を終了する(第2の構成)。
【0055】
上記第2の構成によれば、第1のタッチ検出処理が完了している状態で、第1のタッチ検出処理を終了することができる。
【0056】
第1及び第2の構成において、前記制御部は、前記第1期間の長さが、前記所定の長さ未満である場合に、前記第1のタッチ検出処理による検出結果を破棄する処理を実行する(第3の構成)。
【0057】
上記第3の構成によれば、第1のタッチ検出処理が完了できなかった場合に、不要な検出結果を破棄することができる。
【0058】
第4の構成に係るタッチパネル付き表示装置の制御方法は、画素電極を含むタッチパネルであって、可変フレームレートで動作するタッチパネルを備えたタッチパネル付き表示装置の制御方法であって、前記可変フレームレートは、1フレーム期間を構成する第1期間と第2期間とのうちの当該第1期間の長さを変化させることで実現され、前記第1期間内において、前記タッチパネルによる第1のタッチ検出処理を開始し、前記第1のタッチ検出処理を開始した後の前記第2期間が開始する前に、前記第1のタッチ検出処理を終了し、前記第1期間の長さが、所定の長さ未満である場合、前記第1のタッチ検出処理による検出結果を報告する第1の報告データを出力しないで、前記第1期間の長さが、前記所定の長さ以上である場合に、前記第1の報告データを出力し、前記第2期間が開始した後に、前記タッチパネルによる第2のタッチ検出処理と、前記画素電極にデータ信号の書き込みを行う書き込み処理と、前記第2のタッチ検出処理による検出結果を報告する第2の報告データを出力する処理と、を実行する(第4の構成)。
【0059】
上記第4の構成によれば、可変フレームレートで動作する場合でも、タッチが検出される周期が長くなるのを防止しながら、1フレーム期間を構成する第1期間及び第2期間のうちの第1期間内に開始したタッチ検出処理が、当該タッチ検出処理の後の第2期間内に実行される処理へ影響を与えることを防止することが可能なタッチパネル付き表示装置の制御方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0060】
1…タッチパネル、2、202…制御回路、3…ホストコントローラ、11…タッチ検出電極、12…駆動回路、13…薄膜トランジスタ、14…画素電極、100、200…タッチパネル付き表示装置