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特開2024-178072太陽光調光構造、パノラマルーフ調光構造及びゲル体の製造方法
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  • 特開-太陽光調光構造、パノラマルーフ調光構造及びゲル体の製造方法 図1
  • 特開-太陽光調光構造、パノラマルーフ調光構造及びゲル体の製造方法 図2
  • 特開-太陽光調光構造、パノラマルーフ調光構造及びゲル体の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178072
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】太陽光調光構造、パノラマルーフ調光構造及びゲル体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60J 3/04 20060101AFI20241217BHJP
   B60J 3/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B60J3/04
B60J3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096634
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】杉江 信二
(57)【要約】
【課題】新規な調光技術を提供する。
【解決手段】太陽光調光構造は、透光板と、前記透光板における太陽光の進入側とは反対側に配置され、太陽光の進入を規制可能な入光規制部材と、を備え、前記入光規制部材は、透光性を有する収容体にゲル体が収容された構造をなし、前記ゲル体は、太陽光による温度上昇により透光性が下がるとともに上昇した温度が降下すると透光性が上がる物性を有することを特徴とする太陽光調光構造である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光板と
前記透光板における太陽光の進入側とは反対側に配置され、太陽光の進入を規制可能な入光規制部材と、を備え、
前記入光規制部材は、
透光性を有する収容体にゲル体が収容された構造をなし、
前記ゲル体は、太陽光による温度上昇により透光性が下がるとともに上昇した温度が降下すると透光性が上がる物性を有することを特徴とする太陽光調光構造。
【請求項2】
前記ゲル体は、ヒドロキシプロピルセルロース、又は、メチルセルロース、又は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する請求項1に記載の太陽光調光構造。
【請求項3】
前記収容体は、袋構造をなしている請求項1に記載の太陽光調光構造。
【請求項4】
前記透光板は、乗り物のルーフの一部又は全体を構成するルーフ用透光板である請求項1に記載の太陽光調光構造。
【請求項5】
前記ルーフ用透光板は、上方に膨らんだ曲面形状をなし、
前記収容体において前記ゲル体を挟んで対向する上側対向部と下側対向部とのうち少なくとも前記上側対向部の上面は、前記曲面形状に沿った形状をなしている請求項4に記載の太陽光調光構造。
【請求項6】
請求項2に記載のゲル体の製造方法であって、
振動を付与された液体にヒドロキシプロピルセルロース、又は、メチルセルロース、又は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが混合されて前記ゲル体が製造されるゲル体の製造方法。
【請求項7】
電気自動車のパノラマルーフ調光構造であって、
透明樹脂で形成されたルーフパネルと、
前記ルーフパネルの車室側に積層されたゲル封入体と、を備え、
前記ゲル封入体は、
太陽光による温度上昇により透明度が低下するとともに、上昇した温度が降下すると透明度が上がるゲル体を透明フィルムで挟んだ板状体をなしているパノラマルーフ調光構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、太陽光調光構造、パノラマルーフ調光構造及びゲル体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、窓等から入り込む太陽光の調光技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-52463号公報(段落[0015]~[0017]、図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示では、新規な調光技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の第1態様は、透光板と、前記透光板における太陽光の進入側とは反対側に配置され、太陽光の進入を規制可能な入光規制部材と、を備え、前記入光規制部材は、透光性を有する収容体にゲル体が収容された構造をなし、前記ゲル体は、太陽光による温度上昇により透光性が下がるとともに上昇した温度が降下すると透光性が上がる物性を有することを特徴とする太陽光調光構造である。
【0006】
発明の第2態様は、電気自動車のパノラマルーフ調光構造であって、透明樹脂で形成されたルーフパネルと、前記ルーフパネルの車室側に積層されたゲル封入体と、を備え、前記ゲル封入体は、太陽光による温度上昇により透明度が低下するとともに、上昇した温度が降下すると透明度が上がるゲル体を透明フィルムで挟んだ板状体をなしているパノラマルーフ調光構造である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、調光構造を備える車両の斜視図
図2図2は、調光構造の断面図
図3図3は、収容体が袋構造をなす入光規制部材の断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
図1に示すように、本実施形態の調光構造10は、車両90に設けられる。具体的には、図2に示すように、調光構造10は、車両90のうち窓やパノラマルーフ等の透光板91と、透光板91に重ねられる入光規制部材20と、を備える。なお、車両90としては、例えば、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池車等が挙げられる。
【0009】
透光板91は、透光性を有していればよく、透明であってもよいし、半透明であってもよい。本実施形態の例では、透光板91は、車両90のルーフ92(車両90のボディが複数の車体パネルで構成される場合はルーフパネル)の一部又は全体を構成するルーフ用透光板である。例えば、透光板91がルーフ92の一部を構成する場合、透光板91は、ルーフ92の外枠部93の内側に形成された開口を塞ぐように配置され、外枠部93とともにルーフ92を構成してもよい。なお、例えば、透光板91は、ポリカーボネート樹脂等の樹脂製(例えばポリカーボネート透明樹脂製)であってもよいし、ガラス製であってもよい。
【0010】
入光規制部材20は、透光性を有する収容体21にゲル体28が封入されたゲル封入体である。入光規制部材20(即ち、収容体21)は、室内空間を広くするために、板状をなしていることが好ましいが、このような形状に限定されるものではない。
【0011】
入光規制部材20は、透光板91に一部又は全体が接していてもよいし(例えば接着されていてもよいし)、透光板91に対して間隔を空けて対向配置されていてもよい。本実施形態の例では、入光規制部材20が、透光板91に接着材等により接着されている。
【0012】
本実施形態の例では、透光板91が、上方に膨らんだ曲面形状をなしていて、入光規制部材20(即ち、収容体21)は、透光板91の上記曲面形状に沿った湾曲した薄形形状をなしている。なお、本実施形態の例では、収容体21のうちゲル体28を挟んで対向する1対の対向部23,24の両方が上記曲線形状に沿った形状をなしているが、収容体21は、少なくとも上側の対向部23の外面(上面)が上記曲線形状に沿った形状をなしている構成であってもよい。この構成では、透光板91への入光規制部材20の貼り合わせを容易にすることが可能となる。また、この構成では、下側の対向部24が平坦になっていてもよい。
【0013】
収容体21は、透光性を有していればよく、透明であってもよいし、半透明であってもよい。収容体21としては、例えば、樹脂製のものが挙げられる。収容体21は、袋構造をなしていてもよい(例えば、パウチであってもよい)。この場合、収容体21は、袋のマチが設けられた構成であってもよいし、袋のマチが設けられていない構成(即ち、平袋)であってもよい。図3に示すように、収容体21は、透光性を有する(例えば透明な)フィルム21Fで、ゲル体28を挟んで対向する1対の対向部23,24が構成されたものであってもよく、例えば、フィルム21Fの端部同士をシール(例えばヒートシール)することで内部にゲル体28を収容した袋(平袋等)であってもよい。収容体21が袋構造をなしている場合も、収容体21を板状とすることで、室内空間を広くすることが可能となる。また、収容体21が上記フィルム21Fのように可撓性を有する材料で構成されていれば、透光板91の形状に対応した形状に収容体21を変形させることが可能となる。
【0014】
ここで、調光構造10は、透光性を変化させることが可能になっている。具体的には、ゲル体28が、温度変化によって透光性を変化させる性質を有していることで、調光構造10の透光性が変化する。ゲル体28は、太陽光等による温度上昇により透光性が下がるとともに上昇した温度が降下すると透光性が上がる物性を有している。例えば、ゲル体28としては、所定温度未満では透明であり、所定温度以上になると白濁する等して透明度が下がる(例えば不透明になる)ものが挙げられる。
【0015】
ゲル体28は、例えば、温度応答性高分子を含有している。ゲル体28は、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、又は、メチルセルロース、又は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの少なくとも1つのセルロースを含有していることが好ましい。なお、ゲル体28としては、調光構造10が設置される場所において、透光性の低下が太陽光による温度上昇で起こるような温度応答性を有するものが用いられることが好ましい。また、ゲル体28は、上記セルロースを含むもののように、温度変化による透光性の変化が可逆的に起こるものが、繰り返し使用できるため好ましい。
【0016】
なお、例えば、ゲル体28は、液体に、ヒドロキシプロピルセルロース、又は、メチルセルロース、又は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロースが混合されて製造される。この場合、液体に振動が付与された状態で、上記セルロースが混合されることが好ましい。このようにすれば、液体と上記セルロースをより均一に混合させることが可能となり、ゲル体を容易に得ることが可能となる。また、液体への振動の付与は、液体に発泡剤が添加されて発生する気泡により行ってもよい。このようにすれば、容易に振動を付与することが可能となる。
【0017】
上述のように、本実施形態の調光構造10には、温度上昇により透光性が下がるとともに上昇した温度が降下すると透光性が上がる物性を有するゲル体28が備えられている。これにより、入光規制部材20の透光性を調節することが可能となる。ここで、夏場等のように車両90の室内が暑くなった場合、太陽光によるさらなる室内の温度上昇を抑えることが求められる。これに対し、調光構造10では、温度上昇によりゲル体28の透光性が下がり、入光規制部材20を太陽光が透過し難くなるため、太陽光の進入による過度な室内の温度上昇を抑えることが可能となる。また、調光構造10では、このように透光性が下がることで、紫外線を透過し難くすることができ、車両90の乗員の日焼けを抑制することも可能となる。一方、車両90の空調装置が作動する等して、ゲル体28の上昇した温度が下がると、ゲル体28の透光性が上がる。これにより、入光規制部材20の透光性が上がり(例えば、透明になり)、開放感を高めることが可能となり、快適なドライブを提供することが可能となる。また、冬場等のように車両90の室内が寒い場合に、入光規制部材20の透光性が上がった状態となっていることで、太陽光(例えば赤外線)を室内に取り込み易くなり、室内温度を確保することが可能となる。このように、調光構造10によれば、空調装置の稼働を抑えることが可能となるので、電力消費を抑えることが可能となる。また、従来のように、太陽光の遮光用のサンシェードを駆動する場合に比べて、電力消費を抑えることが可能となる。また、サンシェードを手動で動かす場合に比べて、手間を低減することが可能となる。以上のように、調光構造10によれば、従来には全く無かった新規な調光技術を提供することができる。
【0018】
なお、上記の例では、調光構造10は、車両90(例えば電気自動車等)のパノラマルーフの調光構造のような太陽光の調光構造に適用されたが、太陽光以外の光の透光性を調節する調光構造に適用することもできる。
【0019】
[他の実施形態]
調光構造10は、自動車以外の車両(例えば鉄道車両)に設けられてもよいし、車両以外の乗り物(例えば、飛行機や船等)に設けられてもよい。例えば、透光板91が、乗り物のルーフの一部又は全体を構成するルーフ用透光板であってもよい。調光構造10は、建物に設けられてもよく、透光板91が建物の窓であってもよい。
【0020】
<付記>
以下、上記実施形態から抽出される特徴群について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお、以下では、理解の容易のため、上記実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、これら特徴群は、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0021】
例えば、以下の特徴群は、太陽光調光構造、パノラマルーフ調光構造及びゲル体の製造方法に関し、「従来から、窓等から入り込む太陽光の調光技術が知られている(例えば、特開2010-52463号公報(段落[0015]~[0017]、図1等)参照)。」という背景技術について、「新規な調光技術を提供する。」という課題をもって想到されたものと考えることができる。また、従来から新規な調光技術の登場が求められている。
【0022】
[特徴1]
透光板と
前記透光板における太陽光の進入側とは反対側に配置され、太陽光の進入を規制可能な入光規制部材と、を備え、
前記入光規制部材は、
透光性を有する収容体にゲル体が収容された構造をなし、
前記ゲル体は、太陽光による温度上昇により透光性が下がるとともに上昇した温度が降下すると透光性が上がる物性を有することを特徴とする太陽光調光構造(調光構造10)。
【0023】
[特徴2]
前記ゲル体は、ヒドロキシプロピルセルロース、又は、メチルセルロース、又は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する特徴1に記載の太陽光調光構造。
【0024】
[特徴3]
前記収容体は、袋構造をなしている特徴1に記載の太陽光調光構造。
【0025】
[特徴4]
前記透光板は、乗り物のルーフの一部又は全体を構成するルーフ用透光板である特徴1に記載の太陽光調光構造。
【0026】
[特徴5]
前記ルーフ用透光板は、上方に膨らんだ曲面形状をなし、
前記収容体において前記ゲル体を挟んで対向する上側対向部(上側の対向部23)と下側対向部(下側の対向部24)とのうち少なくとも前記上側対向部の上面は、前記曲面形状に沿った形状をなしている特徴4に記載の太陽光調光構造。
【0027】
[特徴6]
特徴2に記載のゲル体の製造方法であって、
振動を付与された液体にヒドロキシプロピルセルロース、又は、メチルセルロース、又は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが混合されて前記ゲル体が製造されるゲル体の製造方法。
【0028】
[特徴7]
特徴1から6に記載の太陽光調光構造の製造方法であって、
振動を付与された液体にヒドロキシプロピルセルロース、又は、メチルセルロース、又は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが混合されて前記ゲル体が製造される太陽光調光構造の製造方法。
【0029】
[特徴8]
電気自動車(車両90)のパノラマルーフ調光構造(調光構造10)であって、
透明樹脂で形成されたルーフパネル(透光板91)と、
前記ルーフパネルの車室側に積層されたゲル封入体(入光規制部材20)と、を備え、
前記ゲル封入体は、
太陽光による温度上昇により透明度が低下するとともに、上昇した温度が降下すると透明度が上がるゲル体を透明フィルムで挟んだ板状体をなしているパノラマルーフ調光構造。
【0030】
[特徴9]
透光板に対向して、前記透光板を透過した太陽光の進入を規制可能な入光規制部材であって、
透光性を有する収容体にゲル体が収容された構造をなし、
前記ゲル体は、太陽光による温度上昇により透光性が下がるとともに上昇した温度が降下すると透光性が上がる物性を有することを特徴とする入光規制部材。
【0031】
上記特徴によれば、新規な調光技術が提供される。また、上記特徴によれば、太陽光の進入による過度な温度上昇を抑制することが可能となる。
【0032】
特徴2によれば、上記物性を有するゲル体を容易に得ることが可能となる。
【0033】
特徴5によれば、透光板への入光規制部材の貼り合わせを容易にすることが可能となる。
【0034】
特徴6,7によれば、液体と上記セルロースの混合を容易にすることが可能となる。
【0035】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0036】
10 調光構造
20 入光規制部材
21 収容体
28 ゲル体
90 車両
91 透光板
92 ルーフ
図1
図2
図3