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特開2024-178076ポリフェノール成分含有焼成ゼオライトの製造方法、及びその利用法。
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  • 特開-ポリフェノール成分含有焼成ゼオライトの製造方法、及びその利用法。 図1
  • 特開-ポリフェノール成分含有焼成ゼオライトの製造方法、及びその利用法。 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178076
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】ポリフェノール成分含有焼成ゼオライトの製造方法、及びその利用法。
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/30 20060101AFI20241217BHJP
   G21F 9/12 20060101ALI20241217BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B01J20/30
G21F9/12 501F
B01J20/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023106505
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】502166662
【氏名又は名称】熊谷 照男
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 照男
【テーマコード(参考)】
4G066
【Fターム(参考)】
4G066AA61A
4G066AA61B
4G066AC07A
4G066BA09
4G066BA12
4G066CA12
4G066DA08
4G066FA02
4G066FA22
4G066FA34
4G066FA37
(57)【要約】      (修正有)
【課題】常温下で効率的に、汚染水中の放射性物質濃度を低減することを可能とする、ポリフェノール成分含有焼成ゼオライトの製造方法、及びHTO等放射性物質濃度の低減装置を提供する。
【解決手段】ゼオライトを粉砕した石灰長石質などの陶器土に、ポリフェノール成分を多く含有する渋柿をすり潰した有機物を加えて混成し、350℃乃至450℃に調整した焼成釜で焼成してポリフェノール成分含有焼成ゼオライトを得る、製造方法とする。前記ゼオライト及びクリノプチオライトの硬質ゼオライトを濾過槽に収容し、HTO等放射性物質含有汚染水を接触させ、HTO等放射性物質含有汚染水中のHTO等放射性物質をゼオライトに吸収させ、HTO等放射性物質を吸収させ得なかったHTO等放射性物質含有汚染水を、HTO等放射性物質濃度の低減したHTO等放射性物質含有汚染水として放水放出する、HTO等放射性物質濃度の低減装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライトを粉砕した石灰長石質などの陶器土、70%に対し、ポリフェノール成分を多く含有する渋柿をすり潰した有機物、30%を加えて混成して、350℃乃至450℃に調整した焼成釜にいれ炭化空洞化した、ポリフェノール成分含有焼成ゼオライトの製造方法。
【請求項2】
公知の柿渋液に粒状のゼオライトを浸漬し、取り上げて乾燥して350℃乃至450℃に加熱して得たポリフェノール成分含有焼成ゼオライトの製造方法。
【請求項3】
請求項1及び請求項2記載のポリフェノール成分含有焼成ゼオライト 及び、クリノプチオライトの硬質ゼオライトを濾過槽に収容し、HTO等放射性物質含有汚染水を接触させ、HTO等放射性物質含有汚染水中のHTO等放射性物質をポリフェノール成分含有焼成ゼオライト 及び、クリノプチオライトの硬質ゼオライトに吸収させ、HTO等放射性物質を吸収させ得なかったHTO等放射性物質含有汚染水を、HTO等放射性物質濃度の低減したHTO等放射性物質含有汚染水として間欠放水することを特徴とする、ポリフェノール成分含有焼成ゼオライトの製造方法及びHTO等放射性物質濃度の低減装置。
【請求項4】
請求項1及び請求項2のポリフェノール成分含有焼成ゼオライト及び、クリノプチオライトの硬質ゼオライトを1対1の割合に混和して濾過槽内に収容し、HTO等放射性物質含有汚染水を接触させ、HTO等放射性物質含有汚染水中の放射性物質をポリフェノール成分含有焼成ゼオライト及び、クリノプチオライトの硬質ゼオライトの混成体に吸収させ、HTO等放射性物質を吸収させ得なかったHTO等放射性物質含有汚染水を、HTO等放射性物質濃度の低減したHTO等放射性物質含有汚染水として放水放出することを特徴とする、ポリフェノール成分含有焼成ゼオライトの製造方法及びHTO等放射性物質濃度の低減装置。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェノール成分含有焼成ゼオライトの製造方法、及びそのポリフェノール成分含有焼成ゼオライトを用いて、HTO等放射性物質を含有する汚染水を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
福島第一原子力発電所で発生するトリチウム等を含有する汚染水は、放射能濃度をトリチウムの質量濃度に換算すると1リットル当たり数ナノグラムと超希薄濃度で、この様な僅かな量のトリチウムを大量の水から水分子を室温下で同位体のトリチウムを効率的に汚染水中から分離回収することは極めて難しいとされている。
【0003】
一方、炭やスポンズのように多量の穴を持つ構造「多孔質体」とストローのような細い管を液体につけた際に、液体が管の中を上がっていく現象「毛管擬宿」に着目し、この現象を除染技術に応用するための研究が公開されている。(特許文献1参照)及び、重水またはトリチウム水を含有するガスを接触させる、トリチウム水、重水のゼオライトを用いた分離方法が公開されている。(特許文献2参照)。又、ゼオライトによるトリチウム含有水からトリチウム水を分離・濃縮する方法が紹介されている。(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-071171号公報
【特許文献2】特開平10-128072号公報
【非特許文献1】ゼオライトによるトリチウムの分離。富山大学水素同位体化学センター
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HTO等放射性物質含有汚染水に含まれるHTOは水の形で存在している為、分離が難しく、水で薄めて海に放出することが検討されるなど、未だ決定的な解決策は見出されていない。
【0006】
本発明者はHTO等放射性物質の吸着材に、ポリフェノールを多く含む柿渋等のタンニン酸の水酸基反応に基づく化学反応で、金属やタンパク質等を強く吸着・擬集する特性と、ゼオライトの放射能物質をイオン交換する原理に着目した。
【0007】
前記特性のあるカキタンニンは、水溶性であるため吸着材として用いるには不溶化にする必要があり、従来の未熟な渋柿を800℃の焼成炉で炭化、粉末にして用いる方法を、全く処理条件及び吸着擬集物の異なる放射性物質含有汚染水の処理に応用するには、大量の渋柿の収集及び炭化処理費用を要することになる。
【0008】
対処する方法として、石灰長石質などのゼオライト粉末の陶器土に、ポリフェノール成分を多く含有する渋柿を擂り潰した有機物を混成したポリフェノール成分含有焼成ゼオライトを製造し、低コストの簡易な装置でHTO等放射性物質を含有する汚染水の処理装置を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前項の課題を解決するためのポリフェノール成分含有焼成ゼオライトの製造法は、石灰長石質などのゼオライト粉末の陶器土70%(重量)に、ポリフェノール成分を多く含有する渋柿をすり潰した有機物30%(重量)を加えた混成物を原料とし、孔径5mm~8mmの押出す器で粒状に成形・押出して乾燥し、100℃乃至800℃内に調整した、好ましくは300℃乃至450℃の温度帯の焼成釜で焼成、渋柿の有機物が炭化空洞化した、課題のHTO等放射性物質を含有する汚染水の処理用ポリフェノール成分含有焼成ゼオライを得て、本発明を完成するに至った。
【0010】
ポリフェノール成分含有焼成ゼオライトを用いる本発明のHTO等放射性物質を含有する汚染水の処理する方法は、放射性物質濃度を低減する装置の4の濾過槽と、4の濾過槽内には前項に記載のHTO等放射性物質を含有する汚染水処理用の、6のポリフェノール成分含有焼成ゼオライト、及び放射性物質の吸着助材としてクリノプチオライトの硬質ゼオライトが1:1の割合で収容する。
【0011】
この6のポリフェノール成分含有焼成ゼオライト及びクリノプチオライトの硬質ゼオライトにHTO等放射性物質を含有する汚染水を接触させ、HTO等放射性物質含有汚染水中のHTO等放射性物質をポリフェノール成分含有焼成ゼオライト及び、クリノプチオライトの硬質ゼオライトに吸収させる。
【0012】
前記の方法でHTO等放射性物質を吸収させ得なかったHTO等放射性物質含有汚染水を、HTO等放射性物質濃度の低減したHTO等放射性物質含有汚染水として放水放出することを特徴とする装置である。
【0013】
HTO等放射性物質含有汚染水中のHTO等放射性物質濃度を低減して放出する装置には、濾過槽下部に濾過槽内の放射性物質含有汚染水内のポリフェノール成分含有焼成ゼオライト及びクリノプチオライトの硬質ゼオライトを暴露して、酸素の取り込みと放射性物質の成分間移行の促進にサイフォンの原理を援用した放水管が構成してあり、HTO等放射性物質の濃度の低減したHTO等放射性物質含有水を自動的に間欠放水する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、ポリフェノール成分含有焼成ゼオライト及びクリノプチオライトの硬質ゼオライトにHTO等放射性物質含有汚染水を接触させ、HTO等放射性物質をポリフェノール成分含有焼成ゼオライト及びクリノプチオライトの硬質ゼオライトに吸収させ、HTO等放射性物質を吸収させ得なかったHTO等放射性物質含有汚染水を、HTO等放射性物質濃度の低減した汚染水として放水放出することを特徴とする。
【0015】
前記の装置を多段式に組み合わせることで、HTO等放射性物質濃度軽減率が高めることができ、国の環境放出の規制基準に沿った排水中の濃度を下回る処理水の放水が可能となり、HTO等放射性物質含有汚染水タンクを無くす方向にできる最大の利点があり、しかも安価で連続的に管理することができるため、今後益々ニーズが高まって行くことが予想できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】HTO等放射性物質濃度を低減する、ポリフェノール成分含有焼成ゼオライトの製造工程図である。
図2】HTO等放射性物質含有汚染水中のHTO等放射性物質濃度を低減する装置の断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態の原料について概要を説明する。
ポリフェノール成分含有焼成ゼオライトの主原料である石灰長石質などの陶器土とは、結晶中に多くの空洞を持つアルミノ珪酸塩鉱物系の多孔質のゼオライトの粉末で、水分と接触すると強い吸着力を持つ性質と、水溶液中で異なった陽イオンと接するとイオンを交換する塩基交換能の化学的性質がある。
【0018】
ポリフェノール成分含有焼成ゼオライトを形成する際にダレ及び崩れなどを生ずる場合には軽量陶器土、粗陶器土、白雲陶器土などのいずれかの粉末を繋ぎ材として適量加えることができる。
【0019】
一方、ポリフェノールは日々食する食品の成分であり、農芸化学分野において科学的な解明がすすめられ、タンニン酸など酸化されやすいポリフェノールの水酸基反応に基づく化学反応は、様々な材料表面に対しての高い吸着性や各種金属イオンを変換する性質を示すことから、HTO等放射性物質含有汚染水中のHTO等放射性物質濃度を低減する用途に採用した。
【0020】
図1は、HTO等放射性物質含有汚染水中のHTO等放射性物質濃度を低減する、ポリフェノール成分含有焼成ゼオライトの製造工程である。ゼオライトを粉砕した石灰長石質などの陶器土、70%に対し、ポリフェノール成分を多く含有する渋柿をすり潰した有機物、30%を加えて混成する。
【0012】
前記の混成したポリフェノール成分含有焼成ゼオライト原料を、押出し器のホッパーに供給し、孔径5mm~8mmの押出し器を駆動して粒状に押出・成形して乾燥する。
【0013】
前記の押出・成形された乾燥物を、100℃乃至800℃内に調整した、好ましくは300℃乃至450℃の温度帯の焼成釜で焼成し、ゼオライト及びゼオライト粉末のイオンを交換能、及びポリフェノールの水酸基反応に基づく化学反応等の特性を組み合わせて本願の目的とする、HTO等放射性物質含有汚染水中のHTO等放射性物質濃度を低減するポリフェノール成分含有焼成ゼオライトを得た。
【0014】
前記のポリフェノール成分含有焼成ゼオライトは、ゼオライト粉末にポリフェノール成分を多く含有する渋柿をすり潰した有機物を混成して成っているが、公知の製法である柿渋液に粒状のゼオライトを浸漬し、取り上げて乾燥して300℃乃至450℃の温度帯の焼成釜で焼成し得た多孔質体も、本発明のHTO等放射性物質含有汚染水中のHTO等放射性物質を吸着するポリフェノール成分含有焼成ゼオライトとして用いることも含む。
【0015】
本発明のHTO等放射性物質を吸着するポリフェノール成分含有焼成ゼオライトは、ゼオライト及びゼオライト粉末のイオン交換する塩基交換能及び、ポリフェノールの水酸基反応に基づく化学反応による金属イオンの吸着能及び、抗酸化物質のポリフェノールの酸化されやすさとその酸化反応を伴う成分間反応の貴金属に対する還元及び吸着能力等は、ゼオライト、及びポリフェノール本来の特性を援用した。
【0016】
前記の特性を組み合わせたHTO等放射性物質を吸着するポリフェノール成分含有焼成ゼオライトは、化学構造が変化して潜在的な能力を持つことを意味するが、ポリフェノール成分含有焼成ゼオライトは天然の物質の組み合わせである以上、化学的原理の情報は今後に委ねたい。
【0017】
次に、図2の放射性物質含有汚染水中の放射性物質濃度の低減装置について説明する
【0018】
その1、HTO等放射性物質含有汚染水中のHTO等放射性物質濃度を低減する装置は、4の濾過槽内の下部に有孔仕切板、5を敷き、ゼオライト粉末に渋柿をすり潰して混成したポリフェノール成分含有焼成ゼオライト単独、又は、及びクリノプチオライトの硬質ゼオライトを1:1の割合に混和して、6のポリフェノール成分含有焼成ゼオライトを収容する。ポリフェノール成分含有焼成ゼオライト等の交換を容易にする目的で、メッシュ袋に収容して濾過槽内に収納してもよい。
【0019】
その2、前記に同じくする、HTO等放射性物質含有汚染水中のHTO等放射性物質濃度を低減する装置に、柿渋液にゼオライトを浸漬したポリフェノール成分含有焼成ゼオライト及び、クリノプチオライトの硬質ゼオライト単独、又は、1:1の割合に混和して、6のポリフェノール成分含有焼成ゼオライトを収容する。ポリフェノール成分含有焼成ゼオライト等の交換を容易にする目的で、メッシュ袋に収容して濾過槽内に収納してもよい。
【0020】
HTO等放射性物質含有汚染水貯蔵タンクより、含有汚染水を減圧して直接、又は1のポンプを介し、2の通水管の、3の給水量調整バルブで供給量を調整して、4の濾過槽内に注水する。
【0021】
4の濾過槽内に注水されたHTO等放射性物質含有汚染水は、4の濾過槽内、6のポリフェノール成分含有焼成ゼオライト及び、クリノプチオライトの硬質ゼオライトと接触し、HTO等放射性物質含有汚染水中のHTO等放射性物質はポリフェノール成分含有焼成ゼオライト及び、クリノプチオライトの硬質ゼオライトに吸収する。
【0022】
4の濾過槽内で、6のポリフェノール成分含有焼成ゼオライト及び、クリノプチオライトの硬質ゼオライトに吸収し得なかったHTO等放射性物質濃度の低減したHTO等放射性物質含有汚染水は、3の給水量調整バルブで給水量を調整することで、4の濾過槽下部の、7のサイフォン式放水管より自動的に間欠放水される。
【0023】
本発明の、HTO等放射性物質含有汚染水中のHTO等放射性物質濃度を低減する装置は、HTO等放射性物質含有汚染水タンクからの汚染水を減圧する等、設置条件によっては、石油エネルギーに頼らず、物理的処理によってHTO等放射性物質含有汚染水中の、濃度を低減することが可能である。
【0024】
本発明のHTO等放射性物質が吸収されたポリフェノール成分含有焼成ゼオライト及び、クリノプチオライトの硬質ゼオライトから、電気的あるいは加熱処理によってHTO等放射性物質を回収して貯蔵することを含め、HTO等放射性物質が吸収されたポリフェノール成分含有焼成ゼオライト及び、クリノプチオライトの硬質ゼオライトを回収し、コンクリートに封入しアスファルトコーティングして地中に埋設することも想定とする。
【0025】
ポリフェノール成分含有焼成ゼオライトのHTO等放射性物質含有汚染水中のHTO等放射性物質濃度の吸着実験は、実際に放射能を有する元素を用いた実験は困難なため、塩化ストロンチウム水溶液におけるストロンチウムの吸着率で評価した。
【0006】
0.10mmol/Lとした塩化ストロンチウム水溶液を作成しておき、別容器にポリフェノール成分含有焼成ゼオライト100gを計り入れ、これに塩化ストロンチウム水溶液100mlを注ぎ入れて1昼夜静置した。
【0007】
ポリフェノール成分含有焼成ゼオライトを取り出して上澄み液を原子吸光スペクトルで測定して、既知の濃度溶液の検量線から金属イオン濃度を求め、ポリフェノール成分含有焼成ゼオライトの吸客率を算出した結果、80%以上のストロンチウムの吸着が可能であることが確認できた
【符号の説明】
1、給水ポンプ 2、通水管 3、給水量調整バルブ 4、濾過槽
5、有孔仕切板 6、ポリフェノール成分含有焼成ゼオライト 7、放水管
図1
図2