(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178083
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】硬化体
(51)【国際特許分類】
C04B 28/26 20060101AFI20241217BHJP
C04B 14/04 20060101ALI20241217BHJP
C04B 22/08 20060101ALI20241217BHJP
C04B 22/06 20060101ALI20241217BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20241217BHJP
C04B 22/10 20060101ALI20241217BHJP
C04B 14/10 20060101ALI20241217BHJP
C04B 38/02 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C04B28/26
C04B14/04 Z
C04B22/08 A
C04B22/06 Z
C04B22/08 Z
C04B22/14 B
C04B22/10
C04B14/10 B
C04B38/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023168487
(22)【出願日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2023096535
(32)【優先日】2023-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】中平 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】黒住 悟
(72)【発明者】
【氏名】江口 勇司
(72)【発明者】
【氏名】中尾 亮介
(72)【発明者】
【氏名】蔦尾 友重
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MA00
4G112MB00
4G112MB02
4G112MB06
4G112MB23
4G112PA03
4G112PA06
4G112PB03
4G112PB06
4G112PD03
(57)【要約】
【課題】耐火性が向上した硬化体を提供すること。
【解決手段】硬化体は、ジオポリマー原料粉末と活性化剤とを含むジオポリマー生成用組成物を硬化させた硬化体であって、(A)硬化体の体積1cm
3以上10cm
3以下の小試験片の断面観察において、0.022μm
2以上7.065μm
2以下の範囲からなる空隙の総面積比率が3%以上となり、且つ、(B)硬化体の体積1cm
3以上10cm
3以下
3以下の小試験片を、電気炉にて10℃/分の昇温速度で室温から800℃まで昇温し、800℃にて60分保持した後、室温まで冷却する加熱処理を行った後の小試験片の断面観察から求められる、0.022μm
2以上7.065μm
2以下の範囲からなる空隙の総面積比率が3%以上である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジオポリマー原料粉末と活性化剤とを含むジオポリマー生成用組成物を硬化させた硬化体であって、
(A)前記硬化体の体積1cm3以上10cm3以下の小試験片の断面観察において、0.022μm2以上7.065μm2以下の範囲からなる空隙の総面積比率が3%以上となり、且つ、
(B)前記硬化体の体積1cm3以上10cm3以下の小試験片を、電気炉にて10℃/分の昇温速度で室温から800℃まで昇温し、800℃にて60分保持した後、室温まで冷却する加熱処理を行った後の小試験片の断面観察から求められる、0.022μm2以上7.065μm2以下の範囲からなる空隙の総面積比率が3%以上である、硬化体。
【請求項2】
(C)前記加熱処理を行った後、前記小試験片の一次元収縮率が15%以下である、
請求項1に記載の硬化体。
【請求項3】
(D)前記加熱処理の前後での細孔分布が0.01μm以上1μm以下の領域で0.1ml/g以上の最大細孔容積である、請求項1または2に記載の硬化体。
【請求項4】
前記ジオポリマー生成用組成物は、骨材を含み、
前記骨材を除いた固形分におけるCa成分が2重量%以下である、請求項1または2に記載の硬化体。
【請求項5】
前記ジオポリマー生成用組成物は、融点が1000℃以上の骨材を含む、請求項1または2に記載の硬化体。
【請求項6】
前記ジオポリマー生成用組成物は、骨材を含まず、
固形分におけるCa成分が2重量%以下である、請求項1または2に記載の硬化体。
【請求項7】
前記ジオポリマー生成用組成物は、吸熱材として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミン酸カルシウム、石膏、または炭酸カルシウムを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の硬化体。
【請求項8】
発泡体である、請求項1または2に記載の硬化体。
【請求項9】
発泡倍率は、1倍以上6倍以下である、請求項1に記載の硬化体。
【請求項10】
発泡倍率は、1.3倍以上3倍以下である、請求項8に記載の硬化体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
不燃性の無機材料として、従来からポルトランドセメントが多く使用されており、珪石、セメント、生石灰を主原料とし、発泡剤としてアルミ粉末を加え、オートクレーブの中で高温高圧蒸気養生を行った軽量気泡コンクリートなどが良く知られている。軽量気泡コンクリートはその気泡を内包する構造と不燃性を活かし、軽量の建築材料や耐火断熱材料、遮音材料、調湿材料として利用されている。
【0003】
しかしながらコンクリートは酸に弱く、また500℃以上に加熱されると強度低下が起こると言われており、火災や酸を想定するような用途での使用は不安が残るものであった。
【0004】
ポルトランドセメントを使用しないコンクリートを製造する技術として、ジオポリマーが近年注目されている。ジオポリマーは、アルミナシリカ粉体をアルカリ溶液で反応させた硬化物であり、中心となるアルミノ珪酸構造は熱や酸に強いことが知られている。
【0005】
ジオポリマーを用いた耐火被覆材も研究されており、例えば特許文献1では、活性フィラー、非活性フィラー、軽量耐火性骨材及び発泡剤を含む配合物に、アルカリ溶液を添加し混練し養生して得られ、密度が1.0g/cm3以下であるジオポリマー系軽量耐火材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1で開示されている耐火材料は、受熱した際にひび割れと不整変形を生じにくいジオポリマー系軽量耐火材料ものであるものの、さらなる耐火性の向上が求められていた。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、耐火性が向上した硬化体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1の開示の硬化体は、ジオポリマー原料粉末と活性化剤とを含むジオポリマー生成用組成物を硬化させた硬化体であって、
(A)前記硬化体の体積1cm3以上10cm3以下の小試験片の断面観察において、0.022μm2以上7.065μm2以下の範囲からなる空隙の総面積比率が3%以上となり、且つ、
(B)前記硬化体の体積1cm3以上10cm3以下の小試験片を、電気炉にて10℃/分の昇温速度で室温から800℃まで昇温し、800℃にて60分保持した後、室温まで冷却する加熱処理を行った後の小試験片の断面観察から求められる、0.022μm2以上7.065μm2以下の範囲からなる空隙の総面積比率が3%以上である。
【0010】
このように800℃に昇温した後であっても空隙が十分に残るため、溶融が抑制され耐火性を向上することができる。なお、室温は、23℃である。
【0011】
第2の開示の硬化体は、第1の開示の硬化体であって、(C)加熱処理を行った後、小試験片の一次元収縮率が15%以下である。
【0012】
このように、加熱処理後の一次元収縮率が15%以下となることによって、耐火性能を向上することができる。
【0013】
第3の開示の硬化体は、第1または第2の開示の硬化体であって、(D)加熱処理前後での細孔分布が0.01μm以上1μm以下の領域で0.1ml/g以上の最大細孔容積である。
【0014】
このように800℃に昇温した後であっても空隙が十分に残るため、耐火性を向上することができる。
【0015】
第4の開示の硬化体は、第1または第2の開示の硬化体であって、ジオポリマー生成用組成物は骨材を含み、骨材を除いた固形分におけるCa成分が2重量%以下である。
【0016】
これにより、ジオポリマー生成用組成物にスラグが含まれず、溶融温度が上がるため、耐火性能を向上することができる。
【0017】
第5の開示の硬化体は、第1または第2の開示の硬化体であって、ジオポリマー生成用組成物は、融点が1000℃以上の骨材を含む。
【0018】
このように高耐熱骨材を含むことによって、高温での収縮を抑制することができる。
【0019】
第6の開示の硬化体は、第1または第2の開示の硬化体であって、ジオポリマー生成用組成物は、骨材を含まず、固形分におけるCa成分が2重量%以下である。
【0020】
これにより、ジオポリマー生成用組成物にスラグが含まれず、溶融温度が上がるため、耐火性能を向上することができる。
【0021】
第7の開示の硬化体は、第1または第2の開示の硬化体であって、吸熱材として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミン酸カルシウム、石膏、または炭酸カルシウムを含む。
【0022】
潜熱により伝わる熱の温度が下がるため、耐火性能を向上することができる。
【0023】
第8の開示の硬化体は、第1または第2の開示の硬化体であって、発泡体である。
【0024】
一定体積当たりのジオポリマー生成用組成物、又は骨材の部分を空気で置き換えることで熱の伝達を抑制し、耐火性能を向上することができる。
【0025】
第9の開示の硬化体は、第1の開示の硬化体であって、発泡倍率が1倍以上6倍以下である。発泡倍率が6倍よりも大きくなると、発泡させすぎによって気泡構造が崩れ、耐火性が悪化する場合があるため、発泡倍率を6倍以下にすることで、熱の伝達を抑制し耐火性能を向上することができる。
【0026】
第10の開示の硬化体は、第8の開示の硬化体であって、発泡倍率は、1.3倍以上3倍以下である。これにより、熱の伝達を抑制し耐火性を向上することができる。
【発明の効果】
【0027】
本開示によれば、耐火性が向上した硬化体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】(a)本開示に係る実施形態の硬化体の一例を示す模式斜視図であり、(b)断面が露出した硬化体を示す模式斜視図である。
【
図2】(a)実施例2の硬化体の加熱処理前のSEM画像を示す図であり、(b)
図2(a)について画像解析を行い、0.022μm
2以上7.065μm
2以下の細孔を検出した状態を示す図である。
【
図3】(a)実施例2の硬化体の加熱処理後のSEM画像を示す図であり、(b)
図3(a)について画像解析を行い、0.022μm
2以上7.065μm
2以下の細孔を検出した状態を示す図である。
【
図4】(a)実施例2の硬化体の耐火性の評価前の状態を示す写真であり、(b)実施例2の硬化体の耐火性の評価後の状態を示す写真である。
【
図5】(a)比較例3の硬化体の加熱処理前のSEM画像を示す図であり、(b)
図5(a)について画像解析を行い、0.022μm
2以上7.065μm
2以下の細孔を検出した状態を示す図である。
【
図6】(a)比較例3の硬化体の加熱処理後のSEM画像を示す図であり、(b)
図6(a)について画像解析を行い、0.022μm
2以上7.065μm
2以下の細孔を検出した状態を示す図である。
【
図7】(a)比較例3の硬化体の耐火性の評価前の状態を示す写真であり、(b)比較例3の硬化体の耐火性の評価後の状態を示す写真である。
【
図8】実施例2、4、5、6および比較例4の発泡倍率と耐火性の関係を示すグラフである。
【
図9】(a)実施例2の硬化体の断面を示す写真である。(b)実施例5の硬化体の断面を示す写真である。(c)実施例6の硬化体の断面を示す写真である。(d)比較例4の硬化体の断面を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明の実施形態における硬化体について説明する。
【0030】
(硬化体)
本実施形態の硬化体は、ジオポリマー原料粉末と活性化剤とを含むジオポリマー生成用組成物を硬化させたものであり、(A)硬化体の体積1cm3以上10cm3以下の小試験片の断面観察において、0.022μm2以上7.065μm2以下の範囲からなる空隙の総面積比率が3%以上%となり、且つ、(B)硬化体の体積1cm3以上10cm3以下の小試験片を、電気炉にて10℃/分の昇温速度で室温から800℃まで昇温し、800℃にて60分保持した後、室温まで冷却する加熱処理を行った後の小試験片の断面観察から求められる、0.022μm2以上7.065μm2以下の範囲からなる空隙の総面積比率が3%以上である。
【0031】
上述したジオポリマー生成用組成物は、使用時にジオポリマー原料粉末と活性化剤が混合されて硬化されればよく、保管及び輸送時等においては、各成分はそれぞれ分離していてもよい。また、ジオポリマー生成用組成物は、後述する他の成分を含む場合、一部のみ、例えば、ジオポリマー原料粉末と骨材とのみが混合されていてもよい。このように、各成分を分離して保管及び輸送することにより、施工時に必要な量だけ各成分を混合して硬化体として用いることができる。また、各成分を混合せずに保存することで、各成分の性質の劣化を抑制できるため、長期間の保存安定性を維持することができる。ジオポリマー生成用組成物の各成分の混合は、当該分野で通常行なわれている方法を利用すればよい。混合の順序は任意に設定することができる。
【0032】
(ジオポリマー原料粉末)
ジオポリマー原料粉末は、活性フィラーである。活性フィラーは、アルカリ環境下でジオポリマーの生成反応を示すガラス質(非晶質)を含んだ粉体である。活性フィラーはポゾラン活性を有する方が好ましい。
【0033】
ポゾラン活性を有する物質は、それ自体に水硬性はほとんど有さないが、水の存在下で、アルカリ金属塩、例えば、水酸化カルシウム等と常温で反応して、不溶性の化合物を生成して硬化する物質のことである。ポゾラン活性を有する物質としては、例えば、粘土、堆積物、鉱物、シリカ系粒子、炭灰等が挙げられる。例えば、メタカオリン、カオリン、活性白土、酸性白土等の粘土;珪藻土等の堆積物;タルク等の鉱物;シリカダスト、シリカフューム、アエロジル等のシリカ系粒子;フライアッシュ、ホワイトカーボン、もみ殻灰等の炭灰等が挙げられる。
【0034】
活性フィラーは、酸素配位数5のアルミニウムを含むものを含有することが好ましい。酸素配位数5のアルミニウムは、活性フィラーに含まれる全アルミニウムに対して、10質量%以上、好ましくは20質量%以上となるように含有させることが好ましい。酸素配位数5のアルミニウムは反応性に富むため、硬化体において、活性化剤と常温にて十分に反応させることができる。
【0035】
このようなアルミニウム及び珪素を含むために、例えば、活性フィラーは、メタカオリンであることが好ましい。活性フィラーにはメタカオリンが、30質量%以上100質量%以下で含有されるものが好ましく、40質量%以上80質量%以下で含有されるものがより好ましく、40質量%以上60質量%以下で含有されるものがさらに好ましい。
【0036】
メタカオリンは、カオリンを約500℃以上900℃以下で焼成して結晶水を一部除去したものであり、非晶性で、ポゾラン活性を有する。メタカオリンは、粉体であることが好ましい。ここで、粉体とは、粉又は粒子が集まった集合体を意味する。例えば、メタカオリン粉体の数平均粒子径(D50)は、0.1μm以上20μm以下が好ましく、0.5μm以上15μm以下がより好ましい。粉体はレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置にて測定することが可能である。メタカオリンは、より活性化させるために、粉体の比表面積を12m2/g以上とするものが好ましい。なお、粉体の比表面積は、例えば、BET法により算出した値を意味する。より活性化させる方法としては限定されないが、粉砕分級、機械的エネルギーの作用、溶射処理等の方法を用いることができる。
【0037】
粉砕分級する方法としては公知の任意の方法が採用できる。粉砕は、ジェットミル、ロールミル、ボールミル等を用いる方法が挙げられる。また、分級は、篩、比重、風力、湿式沈降等を用いる方法が挙げられる。これらの手段は任意に併用することができる。
【0038】
機械的エネルギーを作用させる方法としては、ボール媒体ミル、媒体撹拌型ミル、ローラミル等を用いる方法が挙げられる。作用させる機械的エネルギーは、適度に活性化しつつ、負荷を最小限とするために、0.5kwh/kg以上30kwh/kg以下が好ましい。このような範囲とすることにより、原料のメタカオリンによっては結晶構造の変性が十分となり、メタカオリン粉体の常温での反応性を向上させることができる。また、メタカオリン粉体中のスピネル及びムライト等の鉱物が再結晶化することを抑制して、常温での反応性を維持又は向上させることができる。
【0039】
溶射処理する方法としては、セラミックコーティングに適用される溶射技術が応用される。溶射技術は、例えば、プラズマ溶射法、高エネルギーガス溶射法、アーク溶射法等が挙げられる。好ましくは、材料粉末を2000℃以上16000℃以下の温度で溶融し、30m/秒以上800m/秒以下の速度で噴霧し、比表面積が12m2/g以上100m2/g以下の粉末とすることが好ましい。
【0040】
活性フィラーは、通常、塊又は粉末状であるが、塊状又は粉末状のものをそのまま用いてもよい。また、活性化させるために、粉砕分級、機械的エネルギーの作用、溶射処理等の方法を用いて、その状態を変化させたものを用いてもよい。粉砕分級する方法、機械的エネルギーを作用させる方法及び溶射処理する方法は、上記と同様の方法を利用することができる。なかでも、材料粉末を2000℃以上16000℃以下の温度で溶融し、30m/秒以上800m/秒以下の速度で噴霧し、比表面積が0.1m2/g以上100m2/g以下の粉末とすることが好ましい。微細で比表面積の大きいものは、反応性が高く、また吸着能が大きいため、金属に対する安定化効果を発揮することができる。例えば、その粒径は、50μm以下が挙げられ、20μm以下が好ましく、5nm以上10μm以下がより好ましい。
【0041】
ポゾラン活性を有する物質は、電気伝導率差が0.4mS/cm以上である方が好ましい。珪酸塩水溶液との反応性の観点から、ポゾラン活性を有する物質の電気伝導率差は0.5mS/cm以上、0.6mS/cm以上又は0.7mS/cm以上であるものがより好ましく、0.8mS/cm以上、1.0mS/cm以上、1.2mS/cm以上であるものがさらに好ましい。
【0042】
このような電気伝導率差とすることにより、珪酸塩水溶液との反応性を十分に確保することができる。電気伝導率差は、アルカリ物質により誘発されるポゾラン活性物質の反応性に関連する指標であり、ポゾラン活性を有する物質について『Cement Concrete Research, Vol.19, pp.63-68, 1989』に従い、40±1℃の条件で、Ca(OH)2飽和水溶液200mlの電気伝導率を測定し、続いてメタカオリン5gを投入し、攪拌して2分後の電気伝導率を測定する。そして、投入前の電気伝導率と投入後の電気伝導率との差を算出し、電気伝導率差とした。
【0043】
なお、活性フィラーには、ポゾラン活性を有し、電気伝導率差が0.4mS/cmよりも小さい物質を含有していてもよい。
【0044】
活性フィラーは、活性化剤100重量部に対して、30重量部以上150重量部以下の割合で含まれる方が好ましい。
【0045】
また、ジオポリマー原料粉末として、スラグを用いない方が好ましい。スラグを用いることによって、溶融温度が下がるためである。スラグは、後述するその他の成分として少量含有されていてもよいが、硬化体中における骨材を除いた固形分におけるCa成分が2重量%以下となる程度の少量含まれていてもよい。すなわち、硬化体に骨材が含まれていない場合は、硬化体の固形分におけるCa成分が2重量%以下となる。
【0046】
(活性化剤)
活性化剤は、例えば、アルカリ金属を含む。活性化剤としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム等の第1族に属する元素の塩を含むものであり、なかでも、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩を含むものが好ましい。活性化剤は、特に、アルカリ金属珪酸塩を含むものが好ましい。
【0047】
アルカリ金属珪酸塩としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム及び珪酸リチウムからなる群から選択される1種以上が挙げられ、なかでも、価格及び入手の容易さの観点から、珪酸ナトリウムが好ましく、水ガラスが好ましい。アルカリ金属珪酸塩は、通常、その取り扱いの容易さから水溶液の形態のものを用いることが好ましい。アルカリ金属珪酸塩として、例えば、市販されている、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム又はこれらの混合物を用いることができる。アルカリ金属珪酸塩は、特に、JIS規格(K1408)の1~3号珪酸ソーダ、4号珪酸ソーダ、メタ珪酸ナトリウム1種、2種を用いて調整することが容易である。
【0048】
アルカリ金属珪酸塩である珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムは、一般にM2O・nSiO2の分子式で表され、nが0.5以上4.0以下の範囲にある組成物及びこれらの混合物を意味する。nは0.7以上3.0以下であることが好ましく、1.0以上2.0以下であることがより好ましい。nは、上述したアルカリ金属珪酸塩と、アルカリ金属の水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を混合することにより任意に調整することができる。アルカリ金属の水酸化物は、固形物または水溶液のいずれも用いることができる。
【0049】
ジオポリマー生成用組成物においては、活性化剤の含有量は、ジオポリマー生成用組成物の全質量に対して、通常10質量%以上70質量%以下、好ましくは15質量%以上65質量%以下、より好ましくは20質量%以上60質量%以下、さらに好ましくは30質量%以上55質量%以下である。上記範囲であると、ジオポリマー組成物から得られる硬化体の機械強度が向上する傾向にある。
【0050】
活性化剤、例えば、アルカリ金属珪酸塩は、前述したジオポリマー原料粉末と混合した際、脱水反応を誘起し、Si-O結合を形成することによって硬化が開始される。また、後述するように、硬化促進剤を利用することにより、アルカリ金属珪酸塩のアルカリ金属を二価以上の金属と置き換えることによってSi-O-金属-O-Siの結合を形成して硬化を促進することが可能である。
【0051】
(その他の成分)
ジオポリマー生成用組成物は、ジオポリマー原料粉末および活性化剤の他の成分として、骨材、吸熱材、または発泡剤を含んでいてもよい。
【0052】
骨材としては、ワラストナイト、パーライト、SLW17、またはCA6のいずれか1種類、若しくは、これらのうち少なくとも2種類を混合したものを用いることができる。骨材は、硬化体において全体積に対して、0体積%以上90体積%以下の割合で含まれる。
【0053】
骨材は、針状若しくは繊維状骨材を含んでもよく、このような骨材として、上述のワラスナイトを用いることができる。
【0054】
骨材は、軽量骨材を含んでもよい。軽量骨材としては、例えば、上述したパーライトのうち粒度3mm以下、密度が0.3g/cm3以下のものを用いることができる。
【0055】
骨材は、融点が1000℃以上のものが好ましい。ジオポリマー原料粉末と活性化剤との混合物の融点と異なる融点を持つ骨材を用いることによって、硬化体の熱による収縮を抑制することができる。
【0056】
吸熱材としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミン酸カルシウム、石膏、または炭酸カルシウムのいずれか1種類、若しくは、これらのうち少なくとも2種類を混合したものを用いることができる。吸熱材は、硬化体において全体重量%に対して0重量%から40重量%含有することができる
【0057】
化学発泡、もしくは機械発泡を用いることによって、硬化体を発泡体とすることができる。化学発泡としては、過酸化水素、またはステアリン酸亜鉛を用いることができる。過酸化水素は、発泡剤として用いられ、ステアリン酸亜鉛は、整泡剤として用いられる。また、機械発泡としては、水、又はアルカリ水溶液と起泡剤を用いることができる。発泡剤によって形成される空隙は、直径0.01mm以上1mm以下の大きさとなる。
【0058】
発泡倍率は、1倍以上、6倍以下の範囲であることが好ましい。耐火性能を向上させる観点から、発泡倍率は1.6倍以上3倍以下の範囲である方がさらに好ましい。発泡倍率とは、発泡剤、または起泡剤を用いてガスを含有させる前の試験体の比重を1としたとき、ガスを含有させた試験体の比重と、発泡剤、または起泡剤を用いてガスを含有させる前の試験体の比率の逆数を、その試験体の発泡倍率とする。
【0059】
試験体の比重は、試験体作製後、105℃で質量変化率が0.1%になるまで乾燥させた状態の試験体の重量と体積から計算する。
【0060】
発泡倍率は、(ガスを含有させた試験体の比重)/(発泡剤、または起泡剤を用いてガスを含有させる前の試験体の比重)=(発泡倍率)で計算することができる。
【0061】
ジオポリマー生成用組成物は、更に、その他の成分として、当該分野で公知の添加剤を含んでいてもよい。例えば、硬化促進剤、フィラー、改質剤、硬化遅延剤、または界面活性剤等が挙げられる。これらの添加剤は、ジオポリマー原料粉末、活性化剤、または骨材中、又はこれらの混合物中のいずれに添加してもよい。硬化促進剤、フィラー、改質剤、硬化遅延剤、界面活性剤等としては、公知のものを利用することができる。
【0062】
硬化促進剤は、活性剤の硬化を促進するための成分が挙げられる。硬化促進剤は、脱水反応を促進させるために、pH中性付近に調整するものが好ましい。また、Si-O-金属-O-Siの結合を形成して硬化を促進するために、珪酸ナトリウム、又は珪酸カリウム、又はこれらの混合物中のアルカリ金属を二価以上の金属と置き換えることができるものが好ましい。硬化促進剤としては、有機酸エステル、ジアルデヒド、無機酸エステル、有機酸金属塩、無機酸金属塩、並びに金属酸化物及び金属水酸化物からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましく、有機酸エステル、金属酸化物及び金属水酸化物からなる群より選択される1種以上の化合物を用いることがより好ましい。
【0063】
有機酸エステルは、水溶液中で酸を発生させることによりSi-O結合の形成を促進することができるという利点がある。有機酸エステルとしては、例えば、炭酸エステル、酢酸エステル等が挙げられる。なかでも、トリアセチンが好ましい。ジアルデヒドとしては、例えば、マロンジアルデヒド等が挙げられる。無機酸エステルとしては、硝酸、塩酸、硫酸、燐酸等のエステル、例えば、燐酸トリメチル等が挙げられる。有機酸金属塩としては、蟻酸、酢酸、マロン酸、炭酸等のアルカリ金属、アルカリ土類金属塩、例えば、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0064】
無機酸金属塩としては、硝酸、塩酸、硫酸、燐酸等のアルカリ金属、アルカリ土類金属塩、例えば、硫酸マグネシウム等が挙げられる。金属酸化物及び金属水酸化物は、金属イオンが溶け出すことにより、Si-O-金属-O-Si結合を形成し、珪酸ナトリウム、又は珪酸カリウム、又はこれらの混合物を硬化させることができる。金属酸化物及び金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
【0065】
フィラーとしては、有機フィラー(例えば、セルロース等)及び無機フィラー(例えば、カーボン、鉱物質微粉末、合成された無機質結晶粉末、炭酸カルシウム等)等が挙げられる。鉱物質微粉末としては、硬砂岩粉末、ケイ砂粉末、ゼオライト、ジルコニア、シリカの粉末等が挙げられる。
【0066】
改質剤としては、ジオポリマー生成用組成物を硬化させた硬化体の表面を改質して緻密化し、表面強度を向上させる物質が挙げられる。改質剤としては、例えば、珪酸塩水溶液と反応することができる各種金属塩が挙げられ、軽焼酸化マグネシウム、亜鉛華等が好ましい。
【0067】
硬化遅延剤としては、ショ糖、酒石酸ナトリウム、クエン酸、金属キレート剤等が挙げられる。
【0068】
界面活性剤とは、ジオポリマー生成用組成物の分散安定化に寄与する物質のことである。界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性及び非イオン性のいずれでもよい。なかでも、非イオン性界面活性剤が好ましい。アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては塩化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、モノメチルアミン塩酸塩が挙げられる。非イオン性界面活性剤としてはソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエンチレンアルキルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ラウリン酸ジエタノールアミド等が挙げられる。
【0069】
これらの添加剤は、硬化体の意図する作用を損なわない範囲において、任意の含有量で用いることができる。通常、ジオポリマー生成用組成物の全質量に対して10質量%以下で配合されていることが好ましい。
【0070】
(加熱処理の前後における硬化体の状態)
少なくともジオポリマー原料粉末と活性化剤とを混合することによって生成された硬化体について、卓上走査電子顕微鏡(SEM)JCM-7000を用いてジオポリマー生成用組成物を硬化させた硬化体の断面を、BED-C、入射電圧10.0kV、WD:12.4の撮影条件において6000倍の倍率で撮影する。例えば、
図1(a)に示すような硬化体1を作成する。硬化体1は、体積1cm
3以上10cm
3以下の小試験片である。
図1(a)では、硬化体1の形状は円柱形状であるが、これに限られなくてもよい。硬化体1の上面を1aとし、下面を1bとする。この硬化体1を矢印Aに沿って、例えばノミを用いて叩き割る。
図1(b)は、叩き割られた硬化体1を示す図である。硬化体1の断面1sのうち平面が出ている破断面を卓上操作電子顕微鏡で撮影する。
【0071】
撮影した画像に対してImageJを用いてAlで画像処理を行い、スケールバーの長さから1μmが60pixelであることから、円相当径の指標を用いて、直径1μmの円は2827pixelとなるため、画像解析可能な最小面積は1pixel(直径0.16μmの円相当の面積=0.022μm2)であって、孔と解析される面積範囲である0.022μm2以上7.065μm2(直径3μm円相当の面積)以下の面積になっている孔の総面積量を算出する。加熱前と加熱後で同じ画像処理を行い、((0.022μm2以上7.065μm2以下と検出された面積の和)/(撮影したSEM画像から小試験片が写っている部分の全面積))×100(%)の計算式に当てはめて、微小細孔面積比率を算出する。本実施形態の硬化体の体積1cm3以上10cm3以下の小試験片の断面について、微小細孔面積比率を算出すると、実施形態の硬化体では、0.022μm2以上7.065μm2以下からなる空隙の微小細孔面積比率が3%以上となる。微小細孔面積比率の上限は、例えば、99%以下である。
【0072】
また、本実施形態の硬化体の体積1cm3以上10cm3以下の小試験片を、電気炉にて10℃/分の昇温速度で室温から800℃まで昇温し、800℃にて60分保持した後、室温まで冷却する加熱処理を行った後、上記と同様に微小細孔面積比率を算出する。本実施形態の硬化体では、加熱処理後の0.022μm2以上7.065μm2以下からなる空隙の微小細孔面積比率が3%以上となる。微小細孔面積比率の上限は、例えば、99%以下である。
【0073】
後述の実施例2におけるSEM画像を用いて、具体的に説明する。
図2(a)は、実施例2の硬化体の断面の加熱処理前のSEM画像を示す図である。
図2(a)に示す画像について、画像解析を行い、0.022μm
2以上7.065μm
2以下の細孔(空隙)を検出する。
図2(b)は、
図2(a)について画像解析を行い、0.022μm
2以上7.065μm
2以下の細孔(空隙)を検出した状態を示す図である。なお、
図2(b)では、0.022μm
2以上7.065μm
2以下の細孔(空隙)11を黒で塗りつぶして示す。
【0074】
SEM画像上の細孔11の面積の和を、
図2(b)に撮影されているSEM画像の全面積で割った値に100(%)を掛けることによって、熱処理前の微小細孔面積比率を算出することができる。
【0075】
また、
図1(a)に示す硬化体1を一方の面(図では下面1b)側から加熱し、その後、ノミ等で叩き割り、
図1(b)に示す断面1sを露出させ、破断面を卓上操作電子顕微鏡で撮影する。
図3(a)は、実施例2の硬化体の加熱処理後のSEM画像を示す図である。
図3(b)は、
図3(a)について画像解析を行い、0.022μm
2以上7.065μm
2以下の細孔を検出した状態を示す図である。
図3(b)では、
図2(b)と同様に、0.022μm
2以上7.065μm
2以下の細孔(空隙)11を黒で塗りつぶして示す。SEM画像上の細孔11の面積の和を、
図3(b)に撮影されているSEM画像の全面積で割った値に100(%)を掛けることによって、熱処理前の微小細孔面積比率を算出することができる。
このようにして、加熱処理前と加熱処理後の微小細孔面積比率を算出することができる。
【0076】
また、本実施形態の硬化体では、加熱処理を行う前にノギスを用いて1辺の長さを測定し、加熱処理を行った後も同様にノギスを用いて1辺の長さを測定し、[{(加熱処理前の1辺の長さ(mm))-(加熱処理後の1辺の長さ(mm))}/(加熱処理前の1辺の長さ(mm))]×100=(小試験片の一次元収縮率(%))から計算される小試験片の一次元収縮率が15%以下となる。
【0077】
また、本実施形態の硬化体は、オートボアV9620も用い、前処置として120℃、4時間の恒温乾燥を行った後、水銀圧入法により細孔直径0.0036μm以上200μm以下の範囲で測定した細孔容量と、前記測定法の細孔径をWashburnの式を用いて算出した細孔径からなる細孔分布を測定し、加熱処理の前後で細孔分布において、0.01μm以上1μm以下の範囲で、最大細孔容積が0.1ml/g以上である。
【0078】
また、本実施形態の硬化体は、前記SEMの測定方法を用いて組成マッピングを行い、骨材を除いた固形分におけるCa濃度が2重量%以下である。
【0079】
また、本実施形態の硬化体の耐火性は、300mm×300mm×厚み25mmで作製した硬化体をISO834-1に準拠する耐火曲線を描く加熱条件において、非加熱面側に硬化体と接触した材質SS400で300mm×300mm×厚み6mmの鋼板の硬化体と接触していない面の中心を熱電対で温度を測定し、測定温度が500℃になる時間を耐火性とする。
【0080】
(実施例)
上述した加熱処理の前後における硬化体の状態について実施例1~6および比較例1~3を用いて説明する。
【0081】
(実施例1)
実施例1のジオポリマー生成用組成物は、ジオポリマー原料粉末として粉砕メタカオリンを用い、活性化剤として水ガラスを用いた。実施例1のジオポリマー生成用組成物は、その他の成分として骨材と吸熱材を含む。骨材は、ワラストナイトおよびSLW17を用い、吸熱材は水酸化アルミニウムを用いた。また、希釈剤として、水を用いた。本実施例1および以下の実施例2~4並びに比較例1~3における各材料の混合量は、下記表1に水ガラスを100重量部として示す。
【0082】
これらの組成物を混合することによって硬化させた硬化体について以下の評価を行った。硬化体1は、上述した
図1(a)に示す形状であり、体積1cm
3以上10cm
3以下の小試験片に相当する。上述したように、
図1(a)に示す硬化体1を例えばノミを用いて叩き割り、
図1(b)に示す断面1sを上述したように卓上走査電子顕微鏡(SEM)JCM-7000を用いて観察した。
・上述した加熱処理の前において、上述した総面積比率の算出を行った。
・上述した加熱処理の後において、上述した総面積比率の算出を行った。
・硬化体について加熱処理後の小試験片の一次元収縮率を計測した。
・骨材を除いた固形分におけるCa濃度の測定を行った。
・上述した硬化体の形態において、上述の耐火性の測定を行った。
これらの評価については、実施形態で上述した方法に従って行った。
【0083】
以下の(表1)に結果を示す。
【0084】
(実施例2)
実施例2のジオポリマー生成用組成物は、ジオポリマー原料粉末として粉砕メタカオリンを用い、活性化剤として水ガラスを用いた。実施例2のジオポリマー生成用組成物は、その他の成分として骨材を含む。骨材は、ワラストナイトを用いた。実施例2では、実施例1と比較して、骨材としてワラストナイトのみを用い、吸熱材を使用していない。
【0085】
このようなジオポリマー生成用組成物を用いた硬化体について上記評価を行った。なお、上述したように、本実施例2の加熱処理前におけるSEM画像が
図2(a)に示され、
図2(a)のSEM画像を解析した結果が
図2(b)に示されている。
図2(b)に示す細孔11の面積の和を、
図2(b)に撮影されているSEM画像の全面積で割った値に100(%)を掛けることによって、熱処理前の微小細孔面積比率が算出される。また、本実施例2の加熱処理後におけるSEM画像が
図3(a)に示され、
図3(a)のSEM画像を解析した結果が
図3(b)に示されている。
図3(b)に示す細孔11の面積の和を、
図3(b)に撮影されているSEM画像の全面積で割った値に100(%)を掛けることによって、加熱処理後の微小細孔面積比率が算出される。
【0086】
また、耐火性の評価において、実施例2の硬化体を下面101bから加熱した前後における状態を
図4(a)および
図4(b)に示す。
図4(a)は、硬化体の耐火性の評価前の状態を示す写真である。
図4(b)は、硬化体の耐火性の評価後の状態を示す写真である。
図4(a)および
図4(b)から、耐火性の評価の前後において、硬化体の外観に変化が生じていないことが分かる。
【0087】
(実施例3)
実施例3のジオポリマー生成用組成物は、ジオポリマー原料粉末として粉砕メタカオリンを用い、活性化剤として水ガラスを用いた。実施例3では、実施例1と比較して、骨材および吸熱材を使用していない。
【0088】
このようなジオポリマー生成用組成物を用いた硬化体について上記評価を行った。
【0089】
(実施例4)
実施例4のジオポリマー生成用組成物は、ジオポリマー原料粉末としてメタカオリンを用い、活性化剤として水ガラスを用いた。実施例4のジオポリマー生成用組成物は、その他の成分として骨材および発泡剤を含む。骨材は、ワラストナイトを用いた。発泡剤は、過酸化水素を用い、整泡剤は、ステアリン酸亜鉛を用いた。実施例4では、実施例1と比較して、骨材としてワラストナイトのみを用い、吸熱材を使用せず、発泡剤としての過酸化水素と整泡剤としてのステアリン酸を用いた。
【0090】
このようなジオポリマー生成用組成物を用いた硬化体について上記評価を行った。
【0091】
(実施例5)
実施例5のジオポリマー生成用組成物は、ジオポリマー原料粉末としてメタカオリンを用い、活性化剤として水ガラスを用いた。実施例5のジオポリマー生成用組成物は、その他の成分として骨材および起泡剤を含む。骨材は、ワラストナイトを用いた。起泡剤は、パールクリート5%水溶液を用いた。実施例5では、実施例4と比較して、起泡剤としてパールクリート5%水溶液を用い、整泡剤を使用しなかった。
【0092】
このようなジオポリマー生成用組成物を用いた硬化体について上記評価を行った。
【0093】
(実施例6)
実施例6のジオポリマー生成用組成物は、実施例5と同様の成分を含んでいるが、実施例5よりもパールクリート5%水溶液の含有量を増加させた。
【0094】
このようなジオポリマー生成用組成物を用いた硬化体について上記評価を行った。
【0095】
(比較例1)
比較例1のジオポリマー生成用組成物は、ジオポリマー原料粉末として粉砕メタカオリンおよびスラグを用い、活性化剤として水ガラスを用いた。このようなジオポリマー生成用組成物を用いた硬化体について上記評価を行った。
【0096】
(比較例2)
比較例2のジオポリマー生成用組成物は、ジオポリマー原料粉末として粉砕メタカオリンおよびスラグを用い、活性化剤として水ガラスを用いた。比較例2のジオポリマー生成用組成物は、骨材としてパーライトを更に含む。このようなジオポリマー生成用組成物を用いた硬化体について上記評価を行った。
【0097】
(比較例3)
比較例3のジオポリマー生成用組成物は、ジオポリマー原料粉末としてメタカオリンおよびスラグを用い、活性化剤として水ガラスを用いた。比較例3では、下記表1に示すように、比較例1と比べて、水ガラスに対する粉砕メタカオリンの混合量を減らし、水ガラスに対するスラグの混合量を増やした。
このようなジオポリマー生成用組成物を用いた硬化体について上記評価を行った。
【0098】
(比較例4)
比較例4のジオポリマー生成用組成物は、実施例6と同様の成分であるが、実施例6よりもパールクリート5%水溶液の含有量を増加させた。
【0099】
このようなジオポリマー生成用組成物を用いた硬化体について上記評価を行った。
【0100】
図5(a)は、比較例3の硬化体の加熱処理前におけるSEM画像を示す図である。
図5(b)は、
図5(a)のSEM画像を解析して0.022μm
2以上7.065μm
2以下の細孔(空隙)を検出した結果を示す図である。なお、
図5(b)では、0.022μm
2以上7.065μm
2以下の細孔(空隙)111を黒で塗りつぶして示す。
【0101】
図6(a)は、比較例3の硬化体の加熱処理後におけるSEM画像を示す図である。
図6(b)は、
図6(a)のSEM画像を解析して0.022μm
2以上7.065μm
2以下の細孔(空隙)を検出した結果を示す図である。なお、
図6(b)では、0.022μm
2以上7.065μm
2以下の細孔(空隙)111を黒で塗りつぶして示す。
【0102】
比較例3の硬化体は融点が低いため、加熱によって細孔が減少し、空隙比率が小さくなり、耐加熱性が悪くなることが分かる。
【0103】
また、
図7(a)は、硬化体101の耐火性の評価前の状態を示す写真である。
図7(b)は、硬化体101の耐火性の評価後の状態を示す写真である。
図7(b)に示すように、上面101aにひび割101dが生じていることがわかる。これより、比較例3の硬化体は、実施例よりも耐火性に劣ることが分かる。
【0104】
図8は、実施例2、4、5、6および比較例4の発泡倍率と耐火性の関係を示すグラフである。耐火性は80分以上の場合良好とする。80分のラインがMで示されている。
図8に示すように、発泡倍率が大きくなると、耐火性が向上するが、大きくなり過ぎると劣化することがわかる。
【0105】
図9(a)は、実施例2の硬化体の断面を示す写真である。
図9(b)は、実施例5の硬化体の断面を示す写真である。
図9(c)は、実施例6の硬化体の断面を示す写真である。
図9(d)は、比較例4の硬化体の断面を示す写真である。
図9(a)~
図9(d)の写真は、いずれも50倍に拡大したものである。図に示すように、発泡倍率が6.1倍になると、気泡同士が繋がっていることがわかる。このように、大きすぎる発泡では気泡同士が繋がり、断熱性が劣化することが分かる。そのため、発泡倍率は、1倍以上6倍以下が好ましく、1.3倍以上3倍以下がより好ましい。
【0106】
【0107】
実施例1~6および比較例1~4に示すように、ジオポリマー原料粉末としてスラグを用いないことにより、融点を上げることができ、耐加熱性を向上することができる。
【符号の説明】
【0108】
1 硬化体
1a 上面
1b 下面
1s 断面
11 細孔(空隙)