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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178096
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20241217BHJP
   G03G 15/06 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G15/06 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024035619
(22)【出願日】2024-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2023096154
(32)【優先日】2023-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】麦田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】黒川 昂太
【テーマコード(参考)】
2H073
2H270
【Fターム(参考)】
2H073AA02
2H073BA04
2H073BA13
2H073BA25
2H073BA28
2H073BA33
2H073BA45
2H073CA03
2H270LA05
2H270LA06
2H270LA18
2H270LA91
2H270LA92
2H270LD03
2H270MA15
2H270MA16
2H270MB14
2H270MB16
2H270MB25
2H270MB35
2H270MB36
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】
濃度ムラを抑制しつつ、トナーかぶりを抑制する。
【解決手段】
交流電圧のうち、直流電圧に対してトナーの帯電極性と同極性側の電圧を、Vgoとし、交流電圧のうち、直流電圧に対してトナーの帯電極性と逆極性側の電圧を、Vreとし、交流電圧のピーク間電圧を、Vgo+Vreとした場合、現像バイアス印加部は、湿度センサによって検知された湿度が第1の湿度である時のピーク間電圧よりも、湿度センサによって検知された湿度が第1の湿度よりも低い第2の湿度である時のピーク間電圧の方が大きくなるように、且つ、湿度センサによって検知された湿度が第2の湿度である時のVgoが、湿度センサによって検知された湿度が第1の湿度である時のVgoと同じになるように、現像剤担持体に現像バイアスを印加する。
【選択図】 図13

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
前記像担持体の表面を所定の帯電電位に帯電させる帯電部と、
前記帯電部によって前記所定の帯電電位に帯電された前記像担持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成部と、
トナーを含む現像剤を担持する現像剤担持体と、
前記潜像形成部によって前記像担持体に形成された静電潜像を前記現像剤担持体に担持された現像剤により現像するために、前記現像剤担持体に直流電圧と交流電圧とを重畳した現像バイアスを印加する現像バイアス印加部と、

湿度を検知する湿度センサと、
を備え、
前記交流電圧のうち、前記直流電圧に対してトナーの帯電極性と同極性側の電圧を、Vgoとし、前記交流電圧のうち、前記直流電圧に対してトナーの帯電極性と逆極性側の電圧を、Vreとし、前記交流電圧のピーク間電圧を、Vgo+Vreとした場合、
前記現像バイアス印加部は、前記湿度センサによって検知された湿度が第1の湿度である時の前記ピーク間電圧よりも、前記湿度センサによって検知された湿度が前記第1の湿度よりも低い第2の湿度である時の前記ピーク間電圧の方が大きくなるように、且つ、前記湿度センサによって検知された湿度が前記第2の湿度である時の前記Vgoが、前記湿度センサによって検知された湿度が前記第1の湿度である時の前記Vgoと同じになるように、前記現像剤担持体に前記現像バイアスを印加する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記現像剤担持体に担持される現像剤は、トナーとキャリアを含み、
前記所定の帯電電位を、Vdとし、前記直流電圧を、Vdcとし、前記Vdと前記Vdcとの差分の絶対値を、Vbackとした場合、
前記現像バイアス印加部は、前記湿度センサによって検知された湿度が前記第2の湿度である時の前記Vbackが、前記湿度センサによって検知された湿度が前記第1の湿度である時の前記Vbackよりも小さくなるように、前記現像剤担持体に前記現像バイアスを印加する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記交流電圧の1周期におけるDuty比を、Vgo/(Vgo+Vre)とした場合、
前記湿度センサによって検知された湿度が前記第1の湿度である時の前記Duty比は50%以上90%以下であり、
前記湿度センサによって検知された湿度が前記第2の湿度である時の前記Duty比は50%以上90%以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記現像剤を収容する現像容器を更に備え、
前記湿度センサは、前記現像容器の内部の湿度を検知する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
像担持体と、
前記像担持体の表面を所定の帯電電位に帯電させる帯電部と、
前記帯電部によって前記所定の帯電電位に帯電された前記像担持体の表面に静電潜像を 形成する潜像形成部と、
トナーを含む現像剤を担持する現像剤担持体と、
前記潜像形成部によって前記像担持体に形成された静電潜像を前記現像剤担持体に担持された現像剤により現像するために、前記現像剤担持体に直流電圧と交流電圧とを重畳した現像バイアスを印加する現像バイアス印加部と、
湿度を検知する湿度センサと、
を備え、
前記交流電圧のうち、前記直流電圧に対してトナーの帯電極性と同極性側の電圧を、Vgoとし、前記交流電圧のうち、前記直流電圧に対してトナーの帯電極性と逆極性側の電圧を、Vreとし、前記交流電圧の1周期におけるDuty比を、Vgo/(Vgo+Vre)とした場合、
前記現像バイアス印加部は、前記湿度センサによって検知された湿度が第1の湿度である時の前記ピーク間電圧よりも、前記湿度センサによって検知された湿度が前記第1の湿度よりも低い第2の湿度である時の前記ピーク間電圧の方が大きくなるように、且つ、前記湿度センサによって検知された湿度が前記第2の湿度である時の前記Duty比が、前記湿度センサによって検知された湿度が前記第1の湿度である時の前記Duty比よりも小さくなるように、前記現像剤担持体に前記現像バイアスを印加する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記現像バイアス印加部は、前記湿度センサによって検知された湿度が前記第2の湿度である時の前記Vgoが、前記湿度センサによって検知された湿度が前記第1の湿度である時の前記Vgoと同じになるように、前記現像剤担持体に前記現像バイアスを印加する
ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記現像剤担持体に担持される現像剤は、トナーとキャリアを含み、
前記所定の帯電電位を、Vdとし、前記直流電圧を、Vdcとし、前記Vdと前記Vdcとの差分の絶対値を、Vbackとした場合、
前記現像バイアス印加部は、前記湿度センサによって検知された湿度が前記第2の湿度である時の前記Vbackが、前記湿度センサによって検知された湿度が前記第1の湿度である時の前記Vbackよりも小さくなるように、前記現像剤担持体に前記現像バイアスを印加する
ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記湿度センサによって検知された湿度が前記第2の湿度である時の前記Duty比は50%以上である
ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記湿度センサによって検知された湿度が前記第1の湿度である時の前記Duty比は90%以下である
ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記現像剤を収容する現像容器を更に備え、
前記湿度センサは、前記現像容器内の湿度を検知する
ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体に形成された静電潜像を、トナーを含む現像剤により現像するために現像剤担持体に直流電圧と交流電圧とを重畳した現像バイアスを印加する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録材上にトナー像を形成する画像形成装置において、像担持体に形成された静電潜像をトナーにより現像する際に、現像剤を担持した現像剤担持体に直流電圧と交流電圧とを重畳した現像バイアスを印加する構成が知られている。
【0003】
特許文献1には、このような現像バイアスとして、交流成分におけるトナーの正規帯電極性(マイナス極性)とは逆極性(プラス極性)側の成分のデューティ比を50%以上と高くすることで、画像の粒状性が優れたものになる構成が提案されている。
【0004】
近年、電子写真方式の画像形成装置は印刷業界にも普及し始めており、高速出力且つ高画質化への要求が急速に高まっている。高画質化に関する要求項目の中ではページ内の画像濃度均一性への要望が強く、ページ内の画像濃度ムラを極力抑制することが重要となっている。
【0005】
このような濃度ムラの要因は様々であるが、その要因の一つとして、感光ドラムや現像スリーブにおける偏心などの加工精度不足のために現像ギャップが変動して引き起こされることが挙げられる。
【0006】
上記のような画像プロセス方向の画像濃度ムラ(以下、副走査濃度ムラと称する)は特に低湿環境など、トナーの帯電量が高い場合において顕著に発生する。そこで特許文献2では、中間転写体上のパッチ検濃度に基づいて現像バイアスのDuty比とVppを変更することで、トナーの帯電量によらず画像濃度ムラを低減する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-11981号公報
【特許文献2】特開2016-21043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、副走査濃度ムラの改善のためにトナー帯電量の大きい低湿環境で現像バイアスの交流電圧成分のピーク間電圧Vppを大きくすると、現像バイアスの交流電圧成分の現像側電位と直流電圧成分との電位差Vgoが大きくなり、トナーかぶりが発生する虞がある。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、濃度ムラを抑制しつつ、トナーかぶりを抑制することが可能な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る画像形成装置は以下のような構成を備える。即ち、像担持体と、前記像担持体の表面を所定の帯電電位に帯電させる帯電部と、前記帯電部によって前記所定の帯電電位に帯電された前記像担持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成部と、トナーを含む現像剤を担持する現像剤担持体と、前記潜像形成部によって前記像担持体に形成された静電潜像を前記現像剤担持体に担持された現像剤により現像するために、前記現像剤担持体に直流電圧と交流電圧とを重畳した現像バイアスを印加する現像バイアス印加部と、湿度を検知する湿度センサと、を備え、前記交流電圧のうち、前記直流電圧に対してトナーの帯電極性と同極性側の電圧を、Vgoとし、前記交流電圧のうち、前記直流電圧に対してトナーの帯電極性と逆極性側の電圧を、Vreとし、前記交流電圧のピーク間電圧を、Vgo+Vreとした場合、前記現像バイアス印加部は、前記湿度センサによって検知された湿度が第1の湿度である時の前記ピーク間電圧よりも、前記湿度センサによって検知された湿度が前記第1の湿度よりも低い第2の湿度である時の前記ピーク間電圧の方が大きくなるように、且つ、前記湿度センサによって検知された湿度が前記第2の湿度である時の前記Vgoが、前記湿度センサによって検知された湿度が前記第1の湿度である時の前記Vgoと同じになるように、前記現像剤担持体に前記現像バイアスを印加することを特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するために本発明の他態様に係る画像形成装置は以下のような構成を備える。即ち、像担持体と、前記像担持体の表面を所定の帯電電位に帯電させる帯電部と、前記帯電部によって前記所定の帯電電位に帯電された前記像担持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成部と、トナーを含む現像剤を担持する現像剤担持体と、前記潜像形成部によって前記像担持体に形成された静電潜像を前記現像剤担持体に担持された現像剤により現像するために、前記現像剤担持体に直流電圧と交流電圧とを重畳した現像バイアスを印加する現像バイアス印加部と、湿度を検知する湿度センサと、を備え、前記交流電圧のうち、前記直流電圧に対してトナーの帯電極性と同極性側の電圧を、Vgoとし、前記交流電圧のうち、前記直流電圧に対してトナーの帯電極性と逆極性側の電圧を、Vreとし、前記交流電圧の1周期におけるDuty比を、Vgo/(Vgo+Vre)とした場合、前記現像バイアス印加部は、前記湿度センサによって検知された湿度が第1の湿度である時の前記ピーク間電圧よりも、前記湿度センサによって検知された湿度が前記第1の湿度よりも低い第2の湿度である時の前記ピーク間電圧の方が大きくなるように、且つ、前記湿度センサによって検知された湿度が前記第2の湿度である時の前記Duty比が、前記湿度センサによって検知された湿度が前記第1の湿度である時の前記Duty比よりも小さくなるように、前記現像剤担持体に前記現像バイアスを印加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、濃度ムラを抑制しつつ、トナーかぶりを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る電子写真方式による画像形成装置の概略構成図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る図1の現像装置及び感光ドラムの概略構成断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る図1の現像装置の一部を省略した平面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る図2の現像スリーブに印加する現像バイアスの経時変化を示すグラフである。
図5】本発明の第1実施形態に係る現像バイアス印加時のトナーとキャリアへかかる静電気力の方向示す説明図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る周期濃度ムラとトナー帯電量の関係を示すグラフである。
図7】本発明の第1実施形態に係るトナー帯電量と環境湿度の関係を示すグラフである。
図8】本発明の第1実施形態に係る現像バイアスのピーク間電圧と周期濃度ムラの関係を示すグラフである。
図9】本発明の第1実施形態に係る現像バイアスの交流電圧成分の現像側電位と直流電圧成分との電位差とかぶりの関係を示すグラフである。
図10】本発明の第1実施形態に係る環境湿度に対する現像バイアスの設定電圧及び設定Duty比を示すグラフである。
図11】本発明の第1実施形態に係る現像バイアスの構成とその構成による周期濃度ムラ及びかぶりに対する効果を示す表である。
図12】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の制御ブロック図である
図13】本発明の第1実施形態に係る現像バイアス決定フローを示す図12のCPUのフローチャートである。
図14】本発明の第2実施形態に係る現像バイアスの異なるDuty対するVbackとキャリア付着との関係を示すグラフである。
図15】本発明の第2実施形態に係る環境湿度に対する現像バイアスの設定電圧及び設定Duty比を示すグラフである。
図16】本発明の第2実施形態に係る現像バイアスの構成とその構成による周期濃度ムラ、かぶり及びキャリア付着数に対する効果を示す表である。
図17】本発明の第3実施形態に係る現像バイアス設定変更時の諧調ごとの濃度変化示すグラフでである
図18】本発明の第3実施形態に係る環境湿度に対する現像バイアスの設定Duty比を示すグラフである。
図19】本発明の第3実施形態に係る第3実施形態に係る現像バイアス設定変更時の記録材上の画像の濃度推移を示すグラフである。
図20】本発明の第4実施形態に係る図12のCPUのフローチャートである。
図21】本発明の第4実施形態に係る現像バイアス設定変更と画像濃度調整制御の実施タイミングを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態に記載される構成要素はあくまで例示であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において本発明が適用される装置の構成や機能、寸法、材質、形状、相対配置等の各種条件は適宜修正又は変更可能であり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子写真方式による画像形成装置の概略構成図である。
【0016】
図1において、画像形成装置200は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色に対応して設けられた4つの画像形成部PY、PM、PC、PKを有する電子写真方式のフルカラープリンタである。本実施形態では、画像形成部PY、PM、PC、PKを後述する中間転写ベルト10の回転方向に沿って配置したタンデム型としている。画像形成装置200は、画像形成装置本体に接続された原稿読み取り装置(図示せず)又は画像形成装置本体に対し通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のホスト機器からの画像信号に応じてトナー像(画像)を記録材に形成する。記録材としては、用紙、プラスチックフィルム、布などのシート材が用いられる。
【0017】
この画像形成装置200の画像形成プロセスの概略を説明すると、まず、各画像形成部PY、PM、PC、PKでは、それぞれ、感光ドラム13Y、13M、13C、13K上に各色のトナー像を形成する。このように形成された各色のトナー像は、中間転写ベルト10上へ転写され、続いて中間転写ベルト10から記録材上に転写される。トナー像が転 写された記録材は、定着装置11に搬送されて、トナー像が記録材に定着される。
【0018】
以下、画像形成装置200の構成を詳しく説明する。なお、画像形成装置200が備える4つの画像形成部PY、PM、PC、PKは、現像色が異なる点を除いて実質的に同一の構成を有する。したがって、以下では、代表して画像形成部PYについて説明し、他の画像形成部の構成は、画像形成部PYの各構成要素に付した符号の添え字「Y」をそれぞれM、C、Kに置き換えて示し、それらの説明は省略する。
【0019】
画像形成部PYには、像担持体として円筒型の感光体、即ち、感光ドラム13Yが配設されている。感光ドラム13Yの周囲には帯電装置(帯電部)としての帯電ローラ12Y、現像剤収容部としての現像装置1Y、一次転写ローラ17Y、クリーニング装置15Yが配置されている。感光ドラム13Yの図中下方には露光装置(潜像形成部)としてのレーザースキャナ14Yが配置されている。
【0020】
帯電ローラ12Yは、画像形成時に感光ドラム13Yに従動して回転する。帯電ローラ12Yは、感光ドラム13Yに向かって加圧バネ(不図示)によって付勢されている。また、帯電ローラ12Yは、高圧電源から帯電バイアスが印加される。これによって、感光ドラム13Yは、帯電ローラ12Yによりほぼ均一に帯電される。
【0021】
また、感光ドラム13Y、13M、13C、13Kと対向して中間転写ベルト10が配置されている。
【0022】
感光ドラム13Y13M、13C、13Kと中間転写ベルト10を挟んでそれぞれ対向する位置には一次転写部材としての一次転写ローラ17Y、17M、17C、17Kが配置され、感光ドラム13Y、13M、13C、13K上に形成されるトナー像を中間転写ベルト10に転写する一次転写部T1Y、T1M、T1C、T1Kを形成している。
【0023】
中間転写ベルト10は、複数の張架ローラにより張架され、複数の張架ローラの何れかである駆動ローラの駆動により周回移動する。複数の張架ローラのうちの二次転写内ローラ18と中間転写ベルト10を挟んで対向する位置には、二次転写部材としての二次転写外ローラ16が配置され、中間転写ベルト10上のトナー像を記録材に転写する二次転写部T2を形成している。二次転写部T2の記録材搬送方向下流には定着装置11が配置される。
【0024】
画像形成装置200の下部には、不図示の給送部が配置され、画像形成動作開始とともに給送部から給送される記録材は、所定のタイミングで二次転写部T2に搬送される。
【0025】
次に、上述のように構成される画像形成装置200により画像を形成するプロセスについて説明する。
【0026】
まず、画像形成動作が開始されると、回転する感光ドラム13Yの表面が帯電ローラ12Yによって一様に帯電される。次いで、感光ドラム13Yは、露光装置14Yから発せられる画像信号に対応したレーザ光により露光される。これにより、感光ドラム13Y上に画像信号に応じた静電潜像が形成される。静電潜像担持体としての感光ドラム13Y上の静電潜像は、現像装置1Y内に収容されたトナーによって顕像化され、可視像(トナー像)となる。
【0027】
感光ドラム13Y上に形成されたトナー像は、一次転写部T1Yにて、中間転写ベルト10に一次転写される。一次転写後に感光ドラム13Y表面に残ったトナー(転写残トナー)は、クリーニング装置15Yによって除去される。このような動作をマゼンタ、シアン、ブラックの各画像形成部でも順次行い、中間転写ベルト10上で4色のトナー像を重ね合わせる。
【0028】
その後、トナー像の形成タイミングに合わせて給送部の記録材収納カセット(図示せず)に収容された記録材が二次転写部T2に搬送され、中間転写ベルト10上の4色のトナー像が、記録材上に一括で二次転写される。二次転写部T2で転写しきれずに中間転写ベルト10に残留したトナーは、中間転写ベルトクリーナ19により除去される。
【0029】
次いで、記録材は定着装置11に搬送される。定着装置11は、内部にハロゲンヒータ等の熱源を有する定着ローラ20と加圧ローラ21を備え、定着ローラ20と加圧ローラ21によって定着ニップ部を形成する。定着装置11に搬送された記録材は、定着ニップ部を通過することにより記録材にトナー像が定着され、機外へ排出される。
【0030】
これにより、一連の画像形成プロセスが終了する。なお、所望の画像形成部のみを用いて、所望の色の単色又は複数色の画像を形成することも可能である。
【0031】
ここで、本実施形態で用いる二成分現像剤について説明する。現像剤はマイナス帯電極性の非磁性トナーと、プラス帯電極性の磁性キャリアを混合したものを用いる。即ち、本実施形態では、正規に帯電したトナーの帯電極性はマイナス極性である。非磁性トナーは、ポリエステル、スチレンアクリル等の樹脂に着色料、ワックス成分などを内包し、粉砕あるいは重合によって粉体としたものに、酸化チタン、シリカ等の微粉末を表面に添加したものである。磁性キャリアは、フェライト粒子や磁性粉を混錬した樹脂粒子からなるコアの表層に樹脂コートを施したものである。
【0032】
次に、現像装置1Yの詳細な構成について説明する。なお、現像装置1M、1C、1Kについても同様の構成となる。
【0033】
図2は、図1の現像装置1Y及び感光ドラム13Yの概略構成断面図、図3は、図1の現像装置1Yの一部を省略した平面図である。
【0034】
図2図3において、現像装置1Yは、磁性を有するキャリアと非磁性のトナーからなる現像剤を収容する現像容器2と、現像容器内の現像剤を担持して搬送する現像剤担持体としての現像スリーブ54を有する。現像スリーブ54は、その表面が回転可能に保持されている一方、内部には複数の磁極(S1、S2、S3、N1、N2)からなるマグネットロール54aが回転不能に配置されている。
【0035】
現像容器2は、隔壁51によって第1室としての第一搬送路(撹拌室)52と、第2室としての第二搬送路(現像室)53に区切られており、第一搬送路52と第二搬送路53とは、両端部の連通口によって互いに連通している。これにより、第一搬送路52と第二搬送路53とで現像剤の循環経路を形成している。
【0036】
現像容器2には、現像剤を撹拌しつつ搬送する搬送部材としての二本のスクリュー部材が設けられている。即ち、第一搬送路52には第一搬送スクリュー(第1搬送部)58が、第二搬送路53には第二搬送スクリュー(第2搬送部)59がそれぞれ備えられている。第一、第二搬送スクリュー58、59は、それぞれ、回転軸58a、59aと、回転軸58a、59aの周り(回転軸上)に螺旋状に設けられた羽根58b、59bとを有する。
【0037】
第一搬送スクリュー58は、回転軸58a周りに回転すると、螺旋状の羽根58bによって第一搬送路52で現像剤を、現像装置1Yの長手方向(回転軸58aの軸方向)の一方側である矢印α方向(第1方向)に搬送する。第二搬送スクリュー59は、回転軸59a周りに回転すると、螺旋状の羽根59bによって第二搬送路53で現像剤を、現像装置1Yの長手方向(回転軸58aの軸方向)の他方側である矢印β方向(第2方向)に搬送する。これにより、第一搬送路52と第二搬送路53との間で現像剤を循環させている。
【0038】
第二搬送路53内の現像剤は、第二搬送路53の内部で現像スリーブ54の下方に設置されている第二搬送スクリュー59によって、S2極の磁力範囲内に汲み上げられ、現像スリーブ54表面に担持される。担持された現像剤は現像スリーブ54表面の回転に伴って搬送される。現像スリーブ54の磁極N1極近傍には、現像剤の薄層を形成する部材として、現像スリーブ54の表面から所定の隙間をあけて規制ブレード55が配置される。現像スリーブ54と規制ブレード55の間の隙間は200~500μmほどに設定されるのが一般的であり、隙間が広いほど現像スリーブ54上に担持される現像剤の量が多くなる関係がある。
【0039】
搬送された現像剤は、N1極において磁気ブラシを形成し、現像スリーブ54と所定の間隔をあけて設置された規制ブレード55によって所望量の現像剤が現像スリーブ54の表面上に薄層形成される。その後、感光ドラム13Yの対向部まで搬送された現像剤は、S1極で再び磁気ブラシを形成し、感光ドラム13Yとの間で現像ニップを形成する。
【0040】
感光ドラム13Yの表面は、上述したように、帯電ローラ12Yによって一定の電位に帯電されつつ、露光装置14Yによって画像部が露光されて露光電位を形成する。一方で、現像スリーブ54には不図示の高圧回路を通じて現像バイアスが印加される。現像スリーブ54に印加する現像バイアスについては後程詳述する。
【0041】
現像装置1Y内で帯電したトナーは、現像ニップ内で、現像バイアスとドラム表面の電位差によって駆動力を得て露光部に付着することで現像工程が完了する。
【0042】
キャリア及び現像されなかったトナーは、さらに現像スリーブ54の回転方向下流に搬送され、S2極とS3極の間に形成されたゼロガウス帯(径方向の磁束密度がゼロになる領域)において磁気的拘束力を失い、再び第二搬送路53に回収される。
【0043】
このとき、本実施形態に係る画像形成装置200は、現像バイアスとして、直流電圧であるDC(Direct Current)電圧に対して交流電圧であるAC(Alternating Current)電圧を重畳した直流電圧成分と交流電圧成分からなる現像バイアスを現像スリーブ54に印加するAC現像により静電潜像を現像するように構成されている。
【0044】
ここで、本実施形態に係る画像形成装置200が、感光ドラム13Yに形成された静電潜像を現像する際のAC現像の原理について、図4、5を参照して説明する。
【0045】
図4は、図2の現像スリーブ54に印加する現像バイアスの経時変化を示す図グラフである。本実施形態に係る画像形成装置200は、AC電圧の最大電圧値と最小電圧値との電位差であるピーク間電圧(以下、「Vpp」とする)がV2-V1ボルト(V)となるように、最大電圧値がV2(V)、最小電圧値がV1(V)のAC電圧を現像バイアスとして現像スリーブ54に印加するように構成されている。前述したとおり、本実施形態では、正規に帯電したトナーの帯電極性はマイナス極性である。このため、本実施形態では、AC電圧のうち、感光ドラムの帯電電位(Vd)(即ち、非画像部の表面電位、所定の帯電電位)に対してトナーの帯電極性と逆極性側の電圧の値がAC電圧の最大電圧値(V2)となる。また、本実施形態では、感光ドラムの帯電電位(Vd)に対してトナーの帯電極性と同極性側の電圧の値がAC電圧の最小電圧値(V1)となる。
【0046】
また、AC電圧1周期における最大電圧値(V2)の印加時間の割合(以下、「Duty比」とする)は、最小電圧値(V1)の印加時間をT1(s)、最大電圧値(V2)の印加時間をT2(s)とすると、T2/(T1+T2)により算出される。
【0047】
このとき、AC電圧の最小電圧値(V1)とDC電圧(Vdc)との電位差(以下、「Vgo」とする)、AC電圧の最大電圧値(V2)とDC電圧(Vdc)との電位差(以下、「Vre」とする)、Duty比、Vppは、Vppを変更した場合でもDC電圧への影響を相殺するために以下の2式を満たす関係となっている。なお、AC電圧の最小電圧値(V1)の印加時間(T1)は、AC電圧1周期におけるVgoの印加時間に相当する。また、AC電圧の最大電圧値(V2)の印加時間(T2)は、AC電圧1周期におけるVreの印加時間に相当する。
【0048】
Duty比 = Vgo/Vpp (式1)
Vpp = Vgo+Vre (式2)
図5(A)は、現像バイアスが印加された際のトナーへかかる静電気力の方向を示し、図5(B)は、現像バイアスが印加された際のキャリアへかかる静電気力の方向を示す説明図である。
【0049】
図5(A)に示すように、トナーは現像バイアスが現像側電位(感光ドラム13Yの表面の帯電電位(Vd)に対してトナーの帯電極性と同極性側の電位)である最小電圧値(V1)のときに感光ドラム13Y方向への静電気力を受けて静電潜像が現像され、一方、現像バイアスが最大電圧値(V2)のときには、現像スリーブ54方向への静電気力を受けて、感光ドラム13Yに一度付着したトナーの一部が現像スリーブ54へ引き戻されることになる。
【0050】
一方、図5(b)に示すように、キャリアに対しては現像バイアスが最小電圧値(V1)のときに現像スリーブ54方向への静電気力を受け、一方、現像バイアスが最大電圧値(V2)のときには感光ドラム13Y方向への静電気力を受けることになる。
【0051】
また、Duty比に関しては、Vreを小さくすることで感光ドラム13Y上に付着したトナーを引き戻す力が弱くなり、これにより潜像の浅いハイライト部の再現性を高めることができ、がさつきを改善できるので、50%以上が望ましい。また、Duty比を大きくし過ぎるとかぶりの大幅な悪化が懸念されるため、より望ましくは50%以上90%以下が適当である。
【0052】
通常、現像領域における現像スリーブ54の表面と感光ドラム13Yの表面との間の距離(以下、「現像ギャップ」とする)は、現像スリーブ54及び感光ドラム13Yの偏心等により、現像スリーブ54及び感光ドラム13Yの回転に伴って周期的に変動する。そして、このように現像ギャップが変動すると、現像スリーブ54に印加されている現像バイアスによる電界は、現像ギャップが小さいときには強くなり、一方、現像ギャップが大きいときには弱くなる。
【0053】
そのため、このように、現像ギャップが変動する画像形成装置においては、現像ギャップが小さいときには静電潜像に移動するトナー量が増えてその部分に対応する画像の濃度は濃くなり、一方、現像ギャップが大きいときには静電潜像に移動するトナー量が減ってその部分に対応する画像の濃度は薄くなるといった現象が生じる。その結果、このように、現像ギャップが変動する画像形成装置においては、現像ギャップの変動に伴って周期的な画像濃度ムラ(以下、「周期濃度ムラ」とする)が発生してしまうといった問題がある。
【0054】
このような周期濃度ムラの濃度差ΔDとトナー帯電量(トナートリボ)μC/gとの関係を図6に示す。なお、濃度差ΔDは現像ギャップの変動量が15μmの際の最大濃度と最小濃度の差を表している。周期濃度ムラとトナー帯電量の関係を表わす図6のグラフに示すように、濃度差ΔDはトナー帯電量が高いほど大きくなり周期濃度ムラは悪化する。これは、トナー帯電量が高いとトナーとキャリア間に働く静電付着力が大きくなるため、現像ギャップが大きく現像バイアスによる電界が小さいときに、トナーがキャリアから離脱しにくくなるためである。
【0055】
一方、トナー帯電量は、トナー帯電量と環境湿度の関係を表わす図7のグラフに示すように、環境湿度が低いほど高くなる傾向がある。すなわち、周期濃度ムラは現像ギャップの変動量が同じでも低湿環境のほうが発生し易い傾向にある。
【0056】
このような、低湿環境において顕在化する周期濃度ムラを抑制するための技術として、現像バイアスのVppを高湿環境と比較して低湿環境で大きくすることが一般的である。
【0057】
図8は、現像バイアスのVppと周期濃度ムラの濃度差ΔDとの関係を示すグラフである。図8に示されるように、周期濃度ムラは現像バイアスのVppを大きくすることで小さくなる傾向がある。これは、Vppを大きくすることでキャリアからトナーが離脱しやすくなるためである。このように、現像バイアスのVppはキャリアからのトナーの離脱に寄与しているため、以下の式(3)、式(4)に示すように、Vpp印加時にトナーにかかる力F1(N)がトナーの対キャリア付着力F2よりも大きくする必要がある。なお、qはトナーの帯電量、dは現像ギャップをそれぞれ示している。
【0058】
F1>F2 (式3)
F1=Vpp×q/d (式4)
一方で、現像バイアスのVppを大きくすると、それに伴いVgoも大きくなることで、現像バイアスのVgoとかぶりとの関係を表わす図9のグラフに示すように、かぶりが悪化する。すなわち、Duty比が一定の条件下においては、周期濃度ムラの改善のために低湿環境でVppを大きくすると、それに伴いVgoが大きくなるため、低湿環境でのかぶりの問題が顕在化してしまう。
【0059】
そこで、本実施形態では、環境湿度に対して設定する現像バイアスの電圧及びDuty比を表わす図10のグラフに示すように、環境湿度に応じて現像バイアスのVppとDuty比を同時に制御することによりVgoを一定に保つ(維持する)ことで、周期濃度ムラとかぶりを同時に抑制する。本実施形態においてDuty比の設定は、0.1%単位で変更可能とするものである。
【0060】
以上のようにする本実施形態の現像バイアスの構成とその構成による周期濃度ムラ及びかぶりに対する効果を図11に示す。図11(A)の表1は本実施形態の現像バイアスの構成を、図11(B)の表2は図11(A)に示す本実施形態の現像バイアスの構成による周期濃度ムラとかぶりに対する効果を比較例1、2と併せて示したものである。
【0061】
図11(A)、(B)において、比較例1は環境湿度によらず現像バイアスのDuty比とVppが75%/1400Vで固定となっている。そのため、トナー電荷量が高くなる環境湿度5%において、周期濃度ムラが悪化している。
【0062】
比較例2では、環境湿度に応じてDuty比は75%固定でVppのみを制御しており、環境湿度が小さいほどVppが大きくなるものである。そのため、比較例1とは異なり、環境湿度によらず周期濃度ムラは抑えられているが、低湿環境において、Vgoが大きくなってかぶりが悪化してしまっている。
【0063】
一方、本実施形態では、環境湿度が低いほどVppを大きくするのに対してDuty比は小さくし、環境湿度によらずVgoを1050V一定に制御する構成としている。これにより周期濃度ムラとかぶりを同時に抑制している。
【0064】
図12は、画像形成装置200の制御ブロック図である。
【0065】
図12において、画像形成装置200は、上述した画像形成動作などの各種制御を行うための制御部70を備えている。画像形成装置200の各部の動作は、画像形成装置200に設けられた制御部70によって制御される。一連の画像形成動作は、装置本体の上面の操作部、或いは、ネットワークを経由した各入力信号に従って制御部70が制御している。
【0066】
制御部70は、演算制御手段としてのCPU(Central Processing Unit)71、ROM(Read Only Memory)72、RAM(Random Access Memory)73等を有する。CPU71は、ROM72に格納された制御手順に対応するプログラムを読み出しながら画像形成装置200の各部の制御を行う。RAM73には、作業用データや入力データが格納されており、CPU71は、前述のプログラム等に基づいてRAM73に収納されたデータを参照して制御を行う。
【0067】
また、制御部70は、画像処理部74で画像情報を処理して各部の駆動信号を生成し、画像形成制御部75で各部の動作を制御し、補給制御部76で現像装置1Y、1M、1C、1Kに対するトナー補給制御を行う。
【0068】
また制御部70には、環境湿度を検知するための湿度検知手段としての温湿度センサ79と、現像装置1Y、1M、1C、1Kに現像バイアスを供給するバイアス電源80とが接続されている。なお、温湿度センサ79は、一例として現像装置1の内部の温度及び湿度に関する情報を検知するために、例えば、第一搬送路(撹拌室)52の壁部のトナー搬送方向下流側の一部に設けられている。制御部70は、温湿度センサ79の検知結果である現像装置1Yの内部の温度及び湿度に関する情報に基づいて、現像装置1の内部の絶対水分量を算出する。すなわち、温湿度センサ79は、現像容器2の内部の絶対水分量に関する情報を検知する。
【0069】
なお、本実施形態では、制御部70は、絶対水分量に関する情報として、容積絶対湿度に関する情報を算出する。但し、絶対水分量に関する情報としては容積絶対湿度に関する情報に限られず、重量絶対湿度に関する情報を算出するようにしてもよい。
【0070】
制御部70は、算出した絶対水分量に関する情報を基に、現像バイアスを決定する。バイアス電源80は、制御部70で決定した現像バイアスを出力する。
【0071】
また、制御部70には、中間転写ベルト10に画像濃度調整用のトナー画像を形成して、形成したトナー像の濃度を検知する濃度検知手段としての濃度検知センサ22が接続されている。濃度検知センサ22は、画像形成部PY、PM、PC、PKにおいて中間転写ベルト10上に形成される各パッチ画像に測定光を照射し、パッチ画像からの反射光量を検出する。検出結果は受光出力信号として制御部70に送信される。
【0072】
濃度検知センサ22としては、一般 にLED等から成る発光素子と、フォトダイオード等から成る受光素子を備えた光学センサが用いられる。中間転写ベルト10上のトナー付着量を測定する際、発光素子からトナー像に対し測定光を射出すると、測定光はトナーによって反射される光、及びベルト表面によって反射される光として受光素子に入射する。トナーの付着量が多い場合には、ベルト表面からの反射光がトナーによって遮光されるので、受光素子の受光量が減少する。一方、トナーの付着量が少ない場合には、逆にベルト表面からの反射光が多くなる結果、受光素子の受光量が増大する。
【0073】
これにより、受光した反射光量に基づく受光信号の出力値に基づいて各色のパッチ画像の濃度を検知し、予め定められた基準濃度と比較して露光装置14の設定値を調整することにより、各色について濃度補正が行われる。濃度検知センサ22を用いた画像濃度調整は所定の画像出力枚数の画像形成ごとに実行される。本実施形態ではA4サイズの画像を500枚出力するごとに画像濃度調整制御を実行する。
【0074】
本実施形態における現像バイアスの決定フローを図13に示すCPU71のフローチャートに従って説明する。なお、以下では例として画像形成動作信号が入力された場合のフローについて説明している。
【0075】
画像形成動作信号が入力されると、ステップS101で、温湿度センサ79により現像容器2の内部の絶対水分量に関する情報を検知し、ステップS102で、その情報を基にCPU71は容積絶対湿度に関する情報を算出する。
【0076】
次に、ステップS103で、算出した容積絶対湿度に関する情報を基に、図11(A)の表1に示したように現像バイアスのVppとDuty比を環境湿度によらずVgoが一定になるように決定し、ステップS104で、その情報をRAM73に保存する。
【0077】
そしてステップS105で、バイアス電源80に対してステップS104でRAM73に保存したDuty比とVppから構成される現像バイアスの出力指示を行い、ステップS106で画像形成動作を実行する。
【0078】
なお、以上の実施形態では、現像剤として二成分現像剤を用いる例を示したが、一成分現像剤であっても本発明は同様に適用できるものである。
【0079】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0080】
本実施形態では、第1実施形態の環境湿度に応じて現像バイアスのVppとDuty比をVgoが一定に保たれるように変更することに加えて、感光ドラムの帯電電位(Vd)(即ち、非画像部の表面電位)とVdcとの電位差(即ち、VdとVdcとの差分の絶対値)(以下、Vbackとする)も同時に変更するものでる。なお、その他の構成は第1実施形態と同様であるので、それらを援用するものとする。
【0081】
現像バイアスの印加中に、キャリアが現像スリーブ54から離脱し、感光ドラム13Y上にキャリアが付着する現象(以下、キャリア付着とする)が発生することがある。キャリア付着が発生することで、感光ドラム13Yの摩耗による耐久劣化への悪影響等があるため、キャリア付着は発生しないことが望ましい。
【0082】
キャリア付着は、現像バイアスのDuty比及びVbackと大きな相関がある。図14は、異なるDuty比に対するVdcとキャリア付着との関係を示すグラフである。なお、現像バイアスのそれぞれのVgoはいずれも1050Vである。また、キャリア付着の値として、感光ドラム13Yに付着したキャリアを粘着テープにより回収し、単位面積当たりのキャリア数を目視で計測した値を示した。
【0083】
図14に示すように、キャリア付着はDuty比が小さいほど、また、Vbackが大きいほど悪化する傾向がある。そのため、第1実施形態のように環境湿度に応じてDuty比を制御する場合、Duty比の小さくなる低湿環境においてキャリア付着が悪化してしまう。そこで、本実施形態では、環境湿度に応じて設定する現像バイアスを表わす図15のグラフに示すように、環境湿度に応じて現像バイアスのVpp、Duty比に加えてVdcを同時に制御することで、周期濃度ムラ、かぶり及びキャリア付着を共に抑制する。
【0084】
なお、Vbackに関しては、50V~200Vの範囲で設定することが望ましい。Vbackを50V以上とした理由は、非画像部の電位の安定性を考えると、50V未満(例えば0V)ではかぶりが生じ易くなる可能性があるためである。一方、Vbackを200V以下にした理由は、200Vよりも大きくすると上述したキャリア付着の懸念があるためである。
【0085】
以上のようにする本実施形態の現像バイアスの構成とその構成による周期濃度ムラ、かぶり及びキャリア付着数に対する効果を図16に示す。図16(A)の表3は本実施形態の現像バイアスの構成を、図16(B)の表4は図16(A)に示す本実施形態の現像バイアスの構成による周期濃度ムラとかぶり、さらにキャリア付着数に対する効果を比較例1、2及び第1実施形態と併せて示したものである。なお、以下では周期濃度ムラとかぶりへの効果に関しては第1実施形態と重複するので、ここでは説明を省略する。
【0086】
キャリア付着数は、先述の通りDuty比が小さいほうが多くなる。そのため、環境湿度が低いほどDuty比が小さくなる第1実施形態では、環境湿度が低いほどキャリア付着が悪化する。それに対して本実施形態では、図12のCPU71は、環境湿度が低いほどVbackを小さくすることで、周期濃度ムラ、かぶり及びキャリア付着をいずれの環境湿度においても抑制している。
【0087】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
【0088】
第1、第2実施形態において、環境湿度の変化に応じて現像バイアスのVpp、Duty比、Vdcの設定を変更したとしても、トナーの帯電量はすぐには変化せずに、現像装置内で撹拌搬送されて徐々に環境に応じた値に変化する。そのため、現像バイアス設定を変更すると、トナー帯電量は変わらずに現像特性だけが変化し、各諧調の濃度が変化してしまう。
【0089】
例えば、現像装置1が稼働停止中に現像装置内の湿度が50%から30%に変化した場合、次の稼働時の現像バイアスの設定ではVppとDuty比を変更するが、稼働停止中の現像装置内のトナーは撹拌されないために、湿度変化前の50%の湿度でのトナー帯電量のままである。
【0090】
したがって、トナー帯電量が変わらないまま、現像バイアスの設定のみが変更されるため、感光ドラム13へのトナーの現像性が変化して、現像バイアス設定変更時の諧調ごとの濃度変化を表わす図17のグラフに示すように、出力された記録材の諧調ごとの濃度が変化する。このとき濃度変化ΔDは特に低濃度付近(0.3~0.6)で大きくなり、現像装置1Y、1M、1C、1Kにおいて起きると4色合わせた画像上の色味の変動が発生してしまう。
【0091】
そこで本実施形態では、現像バイアス設定の変更時に色味変動の発生を抑制しようとするものである。なお、その他の構成は実施形態1、2と同様であるため、それらを援用するものとする。
【0092】
実施形態1、2でも、例えば、湿度50%の部屋で画像形成装置の稼働時間が長いと装置内の温度が上昇して、現像装置内の湿度は50%から30%に少しずつ変化し、現像バイアスの設定も湿度変化に合わせて徐々に変化させるためバイアス変更時の濃度変化ΔDは小さい。しかし、夜間放置などで本体の稼働がしばらくないと、現像装置内の湿度は50%に戻り、次の稼働時にバイアスの設定を一度に大きく切り替えると、稼働停止中のトナー帯電量は変化していないため濃度変化ΔDが大きくなる。
【0093】
本実施形態では、現像バイアスの一回あたりのVpp、Duty比の変更幅に最大値を持たせ、湿度変化に伴う現像バイアスの変更幅が最大値より大きくなる時は、複数回に分けて変更を行うことによって、現像バイアス変更時の濃度変化ΔDを低減する。
【0094】
本実施形態では、図12のCPU71が現像バイアスの一回あたりのDuty比の変更幅の最大値を所定値0.5%(Vpp=10V)として、次の変更は前回変更時点から100枚画像形成を行うといった所定の画像形成後に実行する。
【0095】
図18は、環境湿度に対する現像バイアスの設定Duty比を示すグラフである。図18において、湿度50%の部屋で3000枚連続して出力して、翌日まで稼働停止し、再び連続出力した場合の湿度変化に対する本実施形態と実施形態2による現像バイアスのDuty比の設定を示す。なお、本実施形態においてもDuty比と同時に実施形態2と同様にVpp、Vbackも変更する。
【0096】
実施形態2では3000枚出力後の翌日に湿度変化に応じて大きくDuty比を変更するが、実施形態3では段階的にDuty比を切り替える。現像バイアス設定変更時の記録材上の画像の濃度推移を表わす図19のグラフにこのときの濃度0.4の記録材上の画像の濃度推移を示す。現像バイアス変更時のΔDの最大値は、実施形態2ではΔD=0.06であるのに対し、実施形態3ではΔD=0.012に減少して色味変動を抑制することができた。
【0097】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
【0098】
本実施形態では、環境湿度に応じた現像バイアス設定の変更を、濃度検知センサによる画像濃度調整制御の直前にのみ実行することによって現像バイアス設定変更時の色味変動を抑制しようとするものである。なお、その他の構成は実施形態1~3と同様であるため、それらを援用するものとする。
【0099】
本実施形態について図20に示す図12のCPU71のフローチャートに従って説明する。
【0100】
ステップS201で、画像を1枚出力後、ステップS202で、温湿度センサ79により現像装置内の湿度を確認する。ステップS203で、温湿度センサ79により検知される現像装置内の湿度応じて現像バイアス設定変更の必要性の有無を判定し、ステップS203で現像バイアス設定変更が必要と判定された場合は、ステップS204で、500枚に1回行う画像濃度調整制御が実行直前かどうかを判定する。ステップS204で、画像濃度調整制御が実行直前であると判定された場合は、ステップS205で、現像バイアス設定の変更を実行した後に、ステップS206で、画像濃度調整制御を実行する。
【0101】
一方、ステップS204で、画像濃度調整制御が実行直前でないと判定された場合は、現像バイアスを変更せずにS202に戻り、温湿度センサ79により現像装置内の湿度を確認する。
【0102】
また、ステップS203で、現像バイアス設定変更が不要と判定された場合は、ステップS207に進み、画像濃度調整制御が実行直前かどうかを判定し、画像濃度調整制御の実行直前のタイミングであると判定された場合は、ステップS206に進み、画像濃度調整制御のみ行う。
【0103】
図21は、本実施形態と実施形態2での現像バイアス設定の変更と画像濃度調整制御の実施タイミングを示すグラフである。図21において、実施形態2では湿度変化が大きいと頻繁に現像バイアスの変更を行い、変更のたびに色味変動が発生してしまう。本実施形態では湿度が変化しても次の画像濃度調整制御までは現像バイアスの変更はせずに、画像濃度調整制御の直前に現像バイアスの変更を行う。このとき、一回あたりの現像バイアスの変更幅は実施形態2より大きくなる場合もあるが、変更後の現像バイアスに合わせて画像濃度調整制御を実行するため、色味変動を低減させることができる。
【0104】
〔第5実施形態〕
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
【0105】
実施形態3、4は現像バイアス変更時の色味変動を低減することができるが、現像バイアス変更の影響が無くなるわけではない。上記課題である周期濃度ムラは画像印字率の高い画像を出力する際に顕著となるものである。一方、画像印字率の低い画像を多くとる場合には現像バイアスの変更をする必要性が低い。
【0106】
そこで、本実施形態では、現像装置内の湿度が変わっても現像バイアスの変更を行わない色味変動優先モードと現像バイアスの変更行う面内濃度ムラ優先モードを持ち、自由に選択可能とするものである。なお、その他の構成は実施形態1~4と同様であるため、それらを援用するものとする。
【0107】
本実施形態では、画像形成装置200の操作部に色味変動優先モードと面内濃度ムラ優先モードを選択できるボタンを設け、使用者が自由に選択することができるようにする。そして、図12のCPU71は、上記ボタンによる選択操作に応じて、色味変動優先モードと面内濃度ムラ優先モードの切り替えを行う。
【0108】
以上の各実施形態では、画像形成装置がプリンタである構成について説明したが、本発明は、複写機、ファクシミリ装置、又はこれらの複数の機能を備えた複合機などにも適用可能である。
【0109】
また、以上の各実施形態では、Vgoが1050Vの場合を例として説明したが、Vgoは1050Vでなくても環境湿度によらずVgoが一定であれば同様の効果が期待できる。なお、環境湿度によらずVgoが一定であるとは、環境湿度が低いほどVppを大きくするのに対してDuty比は小さくする関係を満たす限りにおいて、環境湿度によってVgoが基準に対して±5%以内の範囲で上下に変動している場合を含んでいてもよい。
【0110】
例えば、前述した第1の実施形態では、環境湿度が80%である場合に、Vppが1400V、Vgoが1050V、Duty比が75%である例について説明したが(図11(A)参照)、これに限られない。環境湿度が80%である場合に、Vppが1400V、Vgoが1000V、Duty比が71.4%である変形例であってよい。なお、この変形例において、環境湿度が50%である場合は、前述した第1の実施形態と同様に、Vppが1475V、Vgoが1050V、Duty比が71.2%であるとする。このような変形例にあっては、環境湿度が80%である場合と50%である場合でVgoが同じ値ではないものの、環境湿度が50%である場合は80%である場合と比べて、Vppを大きくするのに対してDuty比は小さくする関係を満たしている。
【0111】
また、以上の各実施形態において、環境湿度、Vpp、Duty比、Vbackの組み合わせは、図10図11(A)、図15図16(A)に記載した組み合わせに限らない。例えば、環境湿度50%における第2実施形態の現像バイアスは、Vpp1500V、Duty比70%、Vgo1050V、Vback140Vであってもよい。
【符号の説明】
【0112】
1Y、1M、1C、1K…現像装置
12Y、12M、12C、12K…帯電ローラ
13Y、13M、13C、13K…感光ドラム
14Y、14M、14C、14K…露光装置
54…現像スリーブ
70…制御部
71…CPU
79…温湿度センサ
80…バイアス電源
200…画像形成装置
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