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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178100
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1676 20190101AFI20241217BHJP
   G02F 1/167 20190101ALI20241217BHJP
【FI】
G02F1/1676
G02F1/167
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024055957
(22)【出願日】2024-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2023096506
(32)【優先日】2023-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(71)【出願人】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】栗本 宗明
(72)【発明者】
【氏名】田河 和真
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 昌宏
【テーマコード(参考)】
2K101
【Fターム(参考)】
2K101AA04
2K101BA07
2K101BC02
2K101BC13
2K101BD04
2K101BE09
2K101BE32
2K101EC94
2K101EG52
(57)【要約】
【課題】電源装置がなくても表示可能であり、より低コストである表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置1は、第1導電膜12と、第2導電膜22と、第1導電膜12及び第2導電膜22の間に配置された流体26と、流体26内に配置された複数の粒子28と、を備えている。第1導電膜12は、第2導電膜22と向かい合っていると共に、スリット14を有しており、外部の交流電界が作用すると、スリット14のエッジ14E及びその隣接部分において不均一な電界を発生する。粒子28は、第1導電膜12及び第2導電膜22の少なくとも一方に対して直接交流電圧が付与されない状態においても、外部の交流電界により発生した不均一な電界により誘電泳動し、エッジ14E及びその隣接部分に集合する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極及び前記第2の電極の間に配置された流体と、
前記流体内に配置された複数の粒子と、
を備えており、
前記第1の電極及び前記第2の電極の少なくとも一方は、外部の交流電界により不均一な電界を発生可能である不均一電界発生構造を有しており、
前記粒子の一部又は全部は、前記第1の電極及び前記第2の電極の少なくとも一方に対して直接交流電圧が付与されない状態においても、前記外部の交流電界により発生した前記不均一な電界により誘電泳動し、前記不均一な電界における電界勾配が極大となる部分及びその隣接部分である電界勾配極大部分に集合する
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極及び前記第2の電極の間に配置された流体と、
前記流体内に配置された複数の粒子と、
を備えており、
前記第1の電極は、前記第2の電極と向かい合っていると共に、スリットを有しており、外部の交流電界が作用すると、前記スリットのエッジ及びその隣接部分において不均一な電界を発生し、
前記粒子の一部又は全部は、前記第1の電極及び前記第2の電極の少なくとも一方に対して直接交流電圧が付与されない状態においても、前記外部の交流電界により発生した前記不均一な電界により誘電泳動し、前記エッジ及びその隣接部分に集合する
ことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極及び前記第2の電極の間に配置された流体と、
前記流体内に配置された複数の粒子と、
を備えており、
前記第1の電極は、前記第2の電極と向かい合っていると共に、前記第2の電極の側へ突出する内方突出部を有しており、外部の交流電界が作用すると、前記内方突出部の先端部及びその隣接部分において不均一な電界を発生し、
前記粒子の一部又は全部は、前記第1の電極及び前記第2の電極の少なくとも一方に対して直接交流電圧が付与されない状態においても、前記外部の交流電界により発生した前記不均一な電界により誘電泳動し、前記内方突出部の先端部及びその隣接部分に集合する
ことを特徴とする表示装置。
【請求項4】
前記粒子は、中空である
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の表示装置。
【請求項5】
前記粒子の中空部の直径は、350nm以下である
ことを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記粒子の材質は、SiO、Al、TiO、SrTiO、BaTiO、ZnO、HfO、AlN、SiC、GaN、Ga、及びダイヤモンド粒子の少なくとも何れかである
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の表示装置。
【請求項7】
更に、第1の板と、第2の板と、フレームと、を備えており、
前記第1の電極は、第1導電膜であって、前記第1の板に付着されており、
前記第2の電極は、第2導電膜であって、前記第2の板に付着されており、
前記フレームは、前記第1導電膜及び前記第1の板の少なくとも一方、並びに、前記第2導電膜及び前記第2の板の少なくとも一方を保持しており、
前記流体は、前記フレームの内方に配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項8】
更に、第1の板と、第2の板と、内板と、フレームと、を備えており、
前記第1の電極は、更に膜状部を有しており、前記内方突出部は、前記膜状部から突出しており、前記膜状部は、前記第1の板に付着されており、
前記第2の電極は、第2導電膜であって、前記第2の板に付着されており、
前記内板は、前記膜状部における、前記第1の板と逆側に付着されており、
前記フレームは、前記第1の電極、前記第1の板及び前記内板の少なくとも何れか、並びに、前記第2導電膜及び前記第2の板の少なくとも一方を保持しており、
前記流体は、前記フレームの内方に配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電泳動現象を用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2005-242320号公報(特許文献1)には、電気泳動表示装置が開示されている。
この表示装置は、複数の閉容器と、その内部に充填された流体と、流体中に分散された複数の帯電粒子と、閉空間内に電界を生じさせる一対の電極と、を備えており、閉容器の各々の帯電粒子の位置の分布により画像を形成する。
一対の電極は、閉容器内に不均一な電界強度の電界を生じさせる。又、一対の電極間に直流電圧を印加することにより、帯電粒子を、一対の電極の一方の電極面とその近傍に分布させ、一対の電極間に交流電圧を印加することにより、帯電粒子の比誘電率と流体の比誘電率との大小関係に応じて、帯電粒子を、電界強度の最大位置とその近傍若しくは最小位置とその近傍に分布させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-242320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記表示装置では、画像を形成するための帯電粒子の分布の変更に、電極への直流電圧又は交流電圧の印加を要する。よって、上記表示装置では、画像の表示のために、直流電圧又は交流電圧を印加する電源装置が必要となる。
【0005】
本発明の主な目的の一つは、電源装置がなくても表示可能な表示装置を提供することである。
又、本発明の主な目的の別の一つは、より低コストである表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書には、表示装置が開示される。この表示装置は、第1の電極を備えていても良い。表示装置は、第2の電極を備えていても良い。表示装置は、第1の電極及び第2の電極の間に配置された流体を備えていても良い。表示装置は、流体内に配置された複数の粒子を備えていても良い。第1の電極及び第2の電極の少なくとも一方は、外部の交流電界により不均一な電界を発生可能である不均一電界発生構造を有していても良い。粒子の一部又は全部は、第1の電極及び第2の電極の少なくとも一方に対して直接交流電圧が付与されない状態においても、外部の交流電界により発生した不均一な電界により誘電泳動しても良い。粒子の一部又は全部は、不均一な電界における電界勾配が極大となる部分及びその隣接部分である電界勾配極大部分に集合しても良い。
又、本明細書には、別の観点の表示装置が開示される。この表示装置は、第1の電極を備えていても良い。表示装置は、第2の電極を備えていても良い。表示装置は、第1の電極及び第2の電極の間に配置された流体を備えていても良い。表示装置は、流体内に配置された複数の粒子を備えていても良い。第1の電極は、第2の電極と向かい合っていても良い。第1の電極は、スリットを有していても良い。第1の電極は、外部の交流電界が作用すると、スリットのエッジ及びその隣接部分において不均一な電界を発生しても良い。粒子の一部又は全部は、第1の電極及び第2の電極の少なくとも一方に対して直接交流電圧が付与されない状態においても、外部の交流電界により発生した不均一な電界により誘電泳動しても良い。粒子の一部又は全部は、エッジ及びその隣接部分に集合しても良い。
加えて、本明細書には、更に別の観点の表示装置が開示される。この表示装置は、第1の電極を備えていても良い。表示装置は、第2の電極を備えていても良い。表示装置は、第1の電極及び第2の電極の間に配置された流体を備えていても良い。表示装置は、流体内に配置された複数の粒子を備えていても良い。第1の電極は、第2の電極と向かい合っていても良い。第1の電極は、第2の電極の側へ突出する内方突出部を有していても良い。第1の電極は、外部の交流電界が作用すると、内方突出部の先端部及びその隣接部分において不均一な電界を発生しても良い。粒子の一部又は全部は、第1の電極及び第2の電極の少なくとも一方に対して直接交流電圧が付与されない状態においても、外部の交流電界により発生した不均一な電界により誘電泳動しても良い。粒子の一部又は全部は、内方突出部の先端部及びその隣接部分に集合しても良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明の主な効果の一つは、電源装置がなくても表示可能な表示装置が提供されることである。
又、本発明の主な効果の別の一つは、より低コストである表示装置が提供されることである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1形態に係る表示装置が2つの主な部分毎に分解された状態で示される図である。
図2図2(A)は、図1の表示装置の模式的な断面図であって、外部に電界が存在しない場合の図であり、図2(B)は、図1の表示装置の模式的な断面図であって、外部に電界が存在する場合の図である。
図3】本発明の変更例に係る表示装置の模式的な断面図である。
図4図4(A)は、本発明の第2形態に係る表示装置の模式的な断面図であって、外部に電界が存在しない場合の図であり、図4(B)は、図4(A)の表示装置の模式的な断面図であって、外部に電界が存在する場合の図である。
図5】スリット幅Lが0.25mmである場合の第1形態のシミュレーションにおける、第1導電膜下面での電界E、並びに、第1導電膜及び第2導電膜間の中央部での電界Eを示す図である。
図6】スリット幅Lが2.0mmである場合の第1形態のシミュレーションにおける、第1導電膜下面での電界E、並びに、第1導電膜及び第2導電膜間の中央部での電界Eを示す図である。
図7】電位付与開始から10分間経過した後における第1実施例の表示の様子を示す画像である。
図8】第2実施例の模式的な断面図である。
図9】通電開始から1分間経過した後における第2実施例の表示の様子を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態及びその変更例が、適宜図面に基づいて説明される。
尚、本発明は、下記の形態及び変更例に限定されない。
【0010】
図1は、本発明の実施の第1形態に係る表示装置1が2つの主な部分毎に分解された状態で示される図である。図2(A)は、図1の表示装置1の模式的な断面図であって、外部に電界が存在しない場合の図である。図2(B)は、図1の表示装置1の模式的な断面図であって、外部に電界が存在する場合の図である。
表示装置1は、全体として平板状であり、パネル部2と、ベース部4と、を有する。尚、表示装置1は、全体として曲板状であっても良いし、ブロック状であっても良いし、その他の形状であっても良い。
表示装置1は、外部に所定態様の電界が存在する場合に表示部における表示を行い、外部に所定態様の電界が存在しない場合に表示部における表示を行わないものであり、電源装置不要で所定態様の電界の存在を検出する電界検出器として使用可能である。所定態様の電界は、例えば下限電界強度以上の交流電界である。ここでの下限電界強度は、表示装置1における表示が可能な最小限の電界強度であり、表示装置1が反応可能でありあるいは検出可能である最小限の電界強度である。尚、表示装置1は、電界検出器以外として使用されても良い。
表示装置1における各種の方向につき、便宜のため、各図に示される通りとする。尚、表示装置1はどのような向きにおいても使用可能である。例えば、表示装置1は、表示装置1の前後方向が鉛直方向を向いていて立てられている状態においても使用可能である。
【0011】
パネル部2は、表示装置1における表示部を構成する。
パネル部2は、第1の板としてのカバー板10と、第1の電極としての第1導電膜12と、を有する。
【0012】
カバー板10は、透光性を有する板であり、ガラス製である。カバー板10は、上下方向の大きさである厚みを除き、表示装置1の全体と同様の大きさを有する。尚、カバー板10は、プラスチック製であっても良いし、他の材質であっても良い。
【0013】
第1導電膜12は、透光性及び導電性を有する膜であり、ITO(Indium Tin Oxide)フィルム製である。第1導電膜12は、カバー板10の下面に付着されている。第1導電膜12は、表示内容に対応するスリット14を有している。図1では、スリット14は、上側から下方へ見て“X”字状に形成されている。尚、第1導電膜12の材質は、導電性ガラスであっても良いし、他の材質であっても良い。又、スリット14の形状は、“X”字状以外であっても良い。
【0014】
ベース部4は、表示装置1の基礎を構成する。
ベース部4は、第2の板としてのベース板20と、第2の電極としての第2導電膜22と、フレーム24と、流体26と、複数の粒子28と、を有する。尚、フレーム24、流体26、及び複数の粒子28の少なくとも何れかは、パネル部2の構成要素と捉えられても良いし、独立した構成要素と捉えられても良い。
【0015】
ベース板20は、透光性を有する板であり、ガラス製である。ベース板20は、上下方向の大きさである厚みを除き、表示装置1の全体と同様の大きさを有する。尚、ベース板20はプラスチック製であっても良いし、他の材質であっても良い。又、ベース板20は、透光性を有していなくても良い。
【0016】
第2導電膜22は、透光性及び導電性を有する膜であり、ITOフィルム製である。第2導電膜22は、ベース板20の上面に付着されている。
尚、第2導電膜22は、導電性ガラス製であっても良いし、他の材質であっても良い。
【0017】
フレーム24は、矩形枠状であり、プラスチック製であって、絶縁体である。フレーム24の厚み以外の外形は、ベース板20の厚み以外の外形と同様の大きさを有する。
フレーム24は、第1導電膜12の周縁部、及び第2導電膜22の周縁部に接触している。フレーム24は、第1導電膜12、及び第2導電膜22を、所定の間隔を有する状態で保持している。
尚、フレーム24の材質は、プラスチック以外であっても良い。又、フレーム24は、透光性を有していても良いし、有していなくても良い。フレーム24は、絶縁体でなくても良いし、第1導電膜12及び第2導電膜22は、互いに通電しても良い。更に、フレーム24は、第1導電膜12の周縁部以外に接触していても良いし、第2導電膜22の周縁部以外に接触していても良い。又更に、フレーム24は、第1導電膜12及び第2導電膜22の少なくとも一方に代えて、あるいは第1導電膜12及び第2導電膜22の少なくとも一方と共に、カバー板10及びベース板20の少なくとも一方に接触していても良い。加えて、第1導電膜12及び第2導電膜22の少なくとも一方は、フレーム24以外の部材に保持されても良い。
【0018】
流体26は、流動性を有する物体であって、ここではシリコーンオイルであり、絶縁性を有していて、フレーム24内に充填される。流体26は、第2導電膜22、フレーム24、第1導電膜12、及びカバー板10で囲まれた空間内に配置される。流体26は、スリット14の内方に配置されている。流体26は、透光性を有する。
尚、流体26は、純水等、シリコーンオイル以外であっても良い。又、図3に示されるように、変更例に係る表示装置1’のパネル部2’におけるスリット14内の一部又は全部に、カバー板10’の下面から下方へ突出するように形成されたカバー板10の突出部10Jが配置されていても良い。当該変更例において、実施形態と同様に成る部分には、同じ符号が付されている。
【0019】
各粒子28は、泳動粒子である。分散媒である流体26内には、各粒子28が分散している。
各粒子28は、集合することなく分散している場合、視認されない。ここで、各粒子28が視認されないことには、流体26の色の濃さが、流体26単独の場合より一様に大きくなっている結果、各粒子28の存在が認識されない場合が含まれる。
他方、各粒子28は、局所的に集合して一定程度以上の濃度となった場合、周辺の光につき反射及び吸収の少なくとも一方を所定程度以上に行うことで、視認可能となる。
【0020】
図2(A)に示されるように、表示装置1の外部に所定態様の電界が存在しない場合、各粒子28が流体26内で分散しており、又流体26、第1導電膜12、及びカバー板10が透光性を有するため、スリット14の形状は視認されず、表示部には何も表示されない。尚、所定態様の電界が存在しない場合、あるいは常時、表示部において所定の表示がなされても良い。
【0021】
他方、図2(B)に示されるように、表示装置1の外部に所定態様の電界が存在する場合、誘電泳動により、一部の粒子28がスリット14のエッジ14Eに集合し、エッジ14Eの形状に応じた粒子28の集合部分がその部分の光の透過率を低下させて、エッジ14Eの形状に応じた表示が視認可能となる。
粒子28の誘電泳動は、エッジ14E及びその近傍において外部の所定態様の電界により生じる電界勾配に基づいて行われる。エッジ14Eでは、電界勾配が他の箇所に比べて大きくなっていて極大値を有しており、粒子28には、電界勾配の方向に応じ、エッジ14Eへ向かう力あるいはエッジ14Eから遠ざかる力が働く。
【0022】
誘電泳動力FDEPは、直流電界に係る電気泳動力と明確に区別された、電界中の粒子28に働く力である。第1導電膜12及び第2導電膜22の基本構造は、互いに向かい合う平行平板電極であるところ、スリット14の存在により、その部分において不均一な構造となり、不均一な電界が発生し得る不均一電界発生構造USとなっている。そして、不均一電界発生構造USに対して外部から交流電界が作用することにより、電界勾配の極大値が不均一電界発生構造USあるいはその隣接部において生じ、粒子28に対し、電界勾配が極大となる部分あるいはその隣接部分に引きつけられて向かい、あるいは当該部分に反発して当該部分から遠ざかる誘電泳動力FDEPが働く。尚、不均一電界発生構造USとして、スリット14に代えて、あるいはスリット14と共に、非平行電極等が用いられても良い。
誘電泳動力FDEPは、次の式(1)で与えられる。ここで、Eは電界であり、πは円周率であり、εは流体26の比誘電率であり、εは真空の誘電率であり、εは粒子28の比誘電率であり、Dは粒子28の直径である。
【0023】
【数1】
【0024】
又、粒子28の流体26内での運動方程式は、次の式(2)で与えられる。ここで、vは粒子28の移動速度であり、tは時間であり、ηは流体26の粘度である。
【0025】
【数2】
【0026】
各粒子28の直径Dは、どのようなものであっても良く、例えば2nm(ナノメートル)以上2mm(ミリメートル)以下である。
但し、直径Dが大きすぎると外部の所定の電界がない場合でも視認される可能性が増大し、直径Dが小さすぎると外部の所定態様の電界が存在したとしても泳動の速度が低くなりすぎて応答性が良好でなくなり表示に時間がかかりすぎる傾向がある。かような観点からすると、直径Dは、2nm以上0.2mm以下であることが好ましく、10nm以上0.1mm以下であることがより好ましい。
尚、粒子28は、厳密には球体でないことがあるところ、粒子28の直径Dは、同体積の仮想的な球体から得たものであっても良いし、他の計算方法で得たものであっても良い。又、粒子28の形状は、球体からかけ離れることはまれであり、球体に近似されたとしても各種の計算が精度良く行われる。
【0027】
又、外部の所定態様の電界に対する応答性を高めるには、誘電泳動力FDEPは大きい方が好ましい。式(1)より、誘電泳動力FDEPを大きくするためには、(A)粒子28の比誘電率ε及び流体26の比誘電率εにつき、(ε-ε)の所定程度以上の大きさを確保したうえで、ε及びε双方を大きくする、(B)粒子28の直径Dを大きくする、(C)電界Eを大きくする、ことが考えられる。
特に(A)の観点に鑑み、例えば、シリコーンオイルの比誘電率εは2である一方、純水の比誘電率εは80であることから、流体26として純水を用いることがより好ましい。又、シリカ(SiO)製の粒子28の比誘電率εは3である一方、アルミナ(Al)製の粒子28の比誘電率εは10であり、チタニア(TiO)製の粒子28の比誘電率εは80であり、SrTiO製の粒子28の比誘電率εは310であり、BaTiO製の粒子28の比誘電率εは1000~10000であることから、粒子28としてアルミナ、チタニア、SrTiO、及びBaTiOの少なくとも何れかを用いることがより好ましい。
例えば、シリコーンオイルとシリカの組合せでは、式(1)の右辺の一部である次の式(3)の値は、0.29となる。又、純水とBaTiO(ε=1000)の組合せでは、式(3)の値は、63となる。更に、シリコーンオイルとチタニアの組合せでは、式(3)の値は、1.9となる。
【0028】
εε{(ε-ε)/(ε+2ε)} (3)
【0029】
又、式(2)の観点からは、流体26の粘度η、及び粒子28の直径Dは小さい方が好ましいこととなる。直径Dは、式(1),(2)でのバランスをみて決定されることが好ましい。
更に、式(1),(2)に表されていないものの、実際には、粒子28及び流体26の比重、即ち(粒子28の単位体積当たりの質量/流体26の単位体積当たりの質量)が所定閾値以上に小さければ、粒子28に作用する浮力が小さくなり、粒子28の流体26中での移動がより円滑になって粒子28が動き易くなるため、好ましい。
各粒子28の一部又は全部として、中空の粒子28が用いられれば、流体26及び粒子28のみかけの比重が、中空の粒子ではなく中実の粒子28が用いられる場合に比べて小さくなる。中空の粒子28は、好ましくは密閉されている。即ち、中空の粒子28の内部空間即ち中空部に対する流体26の進入は、抑制されている。
例えば、直径Dが100nm程度のシリカ製の粒子28において、粒子28の空隙率が大きくなるほど、粒子28及び流体26のみかけの比重が小さくなる。空隙率(%)は、粒子28全体の体積に対する中空部の体積の百分率であり、(中空部の体積/全体の体積)×100である。中実の、換言すれば空隙率0%のシリカ製の粒子28における当該比重は2.2g/ml(グラム毎ミリリットル、以下比重について同様)であるのに対し、空隙率10%のシリカ製の中空の粒子28における当該比重は1.98g/mlであり、空隙率50%のシリカ製の中空の粒子28における当該比重は1.1g/mlであり、空隙率70%のシリカ製の中空の粒子28における当該比重は0.66g/mlである。直径Dが100nm程度のシリカ製の中空の粒子28は、中空シリカナノ粒子と呼ばれ得る。
【0030】
又、交流電界における電子の平均自由行程は、380nm程度である。ここで、電子の平均自由行程は、電子が他の電子にぶつからずに移動できる平均的な距離である。
そして、中空の粒子28に係る放電の継続時間をゼロに近いものとして、表示装置1,1’が絶縁破壊される可能性を低減する観点から、粒子28の中空部の直径は、電子の平均自由行程未満、例えば350nm以下であることが好ましく、100nm以下であることが更に好ましい。
【0031】
以上の第1形態及び図3の変更例に係る表示装置1,1’は、第1導電膜12と、第2導電膜22と、第1導電膜12及び第2導電膜22の間に配置された流体26と、流体26内に配置された複数の粒子28と、を備えている。第1導電膜12及び第2導電膜22は、外部の交流電界により不均一な電界を発生可能である不均一電界発生構造USを有している。粒子28の一部又は全部は、第1導電膜12及び第2導電膜22の少なくとも一方に対して直接交流電圧が付与されない状態においても、外部の交流電界により発生した不均一な電界により誘電泳動し、不均一な電界における電界勾配が極大となる部分及びその隣接部分である電界勾配極大部分、即ちスリット14のエッジ14Eに集合する。
よって、電源装置がなくても表示可能な表示装置1,1’が提供される。又、外部の電源装置が不要であって、表示のための主要な構成要素が流体26、粒子28、第1導電膜12及び第2導電膜22であることから、より低コストである表示装置1,1’が提供される。
特に、高圧装置では、点検時等において、作業者は、稼働中で導通しているか、あるいは非稼働状態で非導通状態であるか判別したいことがある。この場合、作業者は、表示装置1,1’を当該装置の隣接位置に設置するだけで、表示装置1,1’のための電源を用意することなく、装置の稼働(表示あり)又は非稼働(表示なし)を判別することができ、手間及びコストが抑制された状態で装置の稼働の有無を判別することができる。
【0032】
又、表示装置1,1’は、第1導電膜12と、第2導電膜22と、第1導電膜12及び第2導電膜22の間に配置された流体26と、流体26内に配置された複数の粒子28と、を備えている。第1導電膜12は、第2導電膜22と向かい合っていると共に、スリット14を有しており、外部の交流電界が作用すると、スリット14のエッジ14E及びその隣接部分において不均一な電界を発生する。粒子28の一部又は全部は、第1導電膜12及び第2導電膜22の少なくとも一方に対して直接交流電圧が付与されない状態においても、外部の交流電界により発生した不均一な電界により誘電泳動し、エッジ14E及びその隣接部分に集合する。
よって、電源装置がなくても、スリット14のエッジ14E及びその隣接部に集まる粒子28により表示可能な表示装置1,1’が、より低コストで提供される。
【0033】
更に、粒子28の一部又は全部が中空であれば、より良好な表示速度が得られる。
又、中空の粒子28の一部又は全部における中空部の直径が350nm以下であれば、より円滑な表示が得られる。
更に、粒子28の一部又は全部の材質が、SiO、Al、TiO、SrTiO、BaTiO、ZnO、HfO、AlN、SiC、GaN、Ga、及びダイヤモンド粒子の少なくとも何れかであれば、より良好な表示速度が得られる。
【0034】
加えて、表示装置1,1’は、カバー板10,10’と、ベース板20と、フレーム24と、を備えている。第1導電膜12は、カバー板10に付着されている。第2導電膜22は、ベース板20に付着されている。フレーム24は、第1導電膜12、並びに、第2導電膜22を保持している。流体26は、フレーム24の内方に配置されている。
よって、表示装置1,1’が、より効率の良い構成となり、より一層形成し易いものとなる。
【0035】
図4(A)は、本発明の実施の第2形態に係る表示装置101の模式的な断面図であって、外部に電界が存在しない場合の図である。図4(B)は、図4(A)の表示装置101の模式的な断面図であって、外部に電界が存在する場合の図である。
表示装置101は、パネル部を除き、第1形態の表示装置1と同様に成る。表示装置101における、表示装置1と同様に成る部分には、第1形態と同じ符号が付されて、適宜説明が省略される。尚、表示装置101は、表示装置1の変更例と同様の変更例を適宜有する。
【0036】
表示装置101のパネル部102は、カバー板10と、第1の電極としての第1導電体112と、内板114を有する。
【0037】
第1導電体112は、透光性及び導電性を有しており、ITO製である。第1導電体112は、膜状部112Pと、内方突出部112Nと、を有する。
膜状部112Pは、スリット14を有しておらず、内方突出部112Nと接続されることを除き、第1形態の第1導電膜12と同様に成る。尚、膜状部112Pは、スリット14を有していても良い。
内方突出部112Nは、膜状部112Pの内面から内方に突出する部分である。内方突出部112Nは、第2導電膜22の側へ突出している。内方突出部112Nは、上方又は下方から見て、表示内容に対応する形状を有している。内方突出部112Nは、図4では、全体として下端部即ち先端部に行くほど細くなるようなテーパ状である。尚、内方突出部112Nは、先端部のみテーパ状であっても良いし、テーパ状でなくても良い。又、内方突出部112Nの数は、いくつでも良い。更に、内方突出部112Nは、膜状部112Pに代えて、あるいは膜状部112Pと共に、第2導電膜22から突出していても良い。
【0038】
内板114は、カバー板10と同じガラス製であり、第1導電体112の下側に付着されている。内板114は、膜状部112Pにおける、カバー板10と逆側に付着されている。内板114は、内方突出部112Nに接する部分を除き、内方突出部112Nと同様な上下方向の大きさ即ち厚さを有している。内方突出部112Nの先端は、内板114から露出している。
尚、内板114は、プラスチック製であっても良いし、他の材質であっても良い。又、内方突出部112Nの先端は、内板114から露出していなくても良い。
【0039】
表示装置101のベース部4におけるフレーム24の上面は、内板114の下面と接触している。表示装置101のフレーム24の厚さは、表示装置1のフレーム24の厚さより薄い。尚、表示装置101のフレーム24の厚さは、表示装置1のフレーム24の厚さより薄くなくても良い。又、表示装置101のフレーム24は、内板114に代えて、あるいは内板114と共に、カバー板10及び第1導電体112の少なくとも一方を保持しても良い。
表示装置101のベース部4における流体26及び複数の粒子28は、膜状部112Pの下面及び内方突出部112Nの先端と、第2導電膜22の上面との間に配置されている。
【0040】
図4(A)に示されるように、表示装置101の外部に所定態様の電界が存在しない場合、各粒子28が流体26内で分散しており、又流体26、第1導電体112、カバー板10、及び内板114が透光性を有するため、内方突出部112Nの形状は視認されず、表示部には何も表示されない。尚、所定態様の電界が存在しない場合、あるいは常時、表示部において所定の表示がなされても良い。
【0041】
他方、図4(B)に示されるように、表示装置101の外部に所定態様の電界が存在する場合、誘電泳動により、一部の粒子28が内方突出部112Nの先端及びその隣接部に集合し、内方突出部112Nの先端の形状に応じた粒子28の集合部分がその部分の光の透過率を低下させて、内方突出部112Nの先端の形状に応じた表示が視認可能となる。
粒子28の誘電泳動は、内方突出部112Nの先端及びその近傍において外部の所定態様の電界により生じる電界勾配に基づいて行われる。内方突出部112Nの先端では、電界勾配が他の箇所に比べて大きくなっていて極大値を有しており、粒子28には、電界勾配の方向に応じ、内方突出部112Nの先端へ向かう力あるいは内方突出部112Nの先端から遠ざかる力が働く。
【0042】
以上の第2形態に係る表示装置101は、第1導電体112と、第2導電膜22と、第1導電体112及び第2導電膜22の間に配置された流体26と、流体26内に配置された複数の粒子28と、を備えている。第1導電体112及び第2導電膜22は、外部の交流電界により不均一な電界を発生可能である不均一電界発生構造USを有している。粒子28の一部又は全部は、第1導電体112及び第2導電膜22の少なくとも一方に対して直接交流電圧が付与されない状態においても、外部の交流電界により発生した不均一な電界により誘電泳動し、不均一な電界における電界勾配が極大となる部分及びその隣接部分である電界勾配極大部分、即ち内方突出部112Nの先端に集合する。
よって、電源装置がなくても表示可能な表示装置101が提供される。又、外部の電源装置が不要であって、表示のための主要な構成要素が流体26、粒子28、第1導電体112及び第2導電膜22であることから、より低コストである表示装置101が提供される。
【0043】
又、表示装置101は、更に、カバー板10と、ベース板20と、内板114と、フレーム24と、を備えている。第1導電体112は、更に膜状部112Pを有している。内方突出部112Nは、膜状部112Pから突出している。膜状部112Pは、カバー板10に付着されている。第2導電膜22は、ベース板20に付着されている。内板114は、膜状部112Pにおける、カバー板10と逆側に付着されている。フレーム24は、第1導電体112、カバー板10及び内板114の少なくとも何れか、並びに、第2導電膜22及びベース板20の少なくとも一方を保持している。流体26は、フレーム24の内方に配置されている。
よって、表示装置101が、より効率の良い構成となり、より一層形成し易いものとなる。
【実施例0044】
上述の実施形態に基づく実施例について、いくつかの試験が行われた。尚、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0045】
まず、コンピュータを用いたシミュレーションにより、第1形態において、スリット幅Lが0.25mm,2.0mmである各場合について、電界強度が計算された。
各種の条件は、次の通りに設定された。即ち、第1導電膜12及び第2導電膜22は、何れも厚さ1μm(マイクロメートル)のITO膜とされ、それらの間の距離は、0.1mmとされた。スリット14のエッジ14Eの角度は、90°とされた。カバー板10及びベース板20は、何れも厚さ1mmのガラス板とされた。流体26は、シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製30CS)とされた。そして、第1導電膜12の電位が50V(ボルト)とされ、第2導電膜22の電位が0Vとされた。又、遠方境界条件として、カバー板10の上面から1mm離れた、当該上面と平行である仮想的な平面における電位は、0Vとされた。
尚、カバー板10及びベース板20並びに第1導電膜12及び第2導電膜22に係る左右方向の各大きさは、計算を容易にするため、スリット幅Lに比べて十分に大きいものとされた。又、カバー板10及びベース板20、第1導電膜12及び第2導電膜22、並びにスリット14に係る前後方向の各大きさは、計算を容易にするため、スリット幅Lに比べて十分に大きいものとされた。
【0046】
図5は、スリット幅Lが0.25mmである場合の第1形態のシミュレーションにおける、第1導電膜12下面での電界E、並びに、第1導電膜12及び第2導電膜22間の中央部での電界Eを示す図である。図6は、スリット幅Lが2.0mmである場合の第1形態のシミュレーションにおける、第1導電膜12下面での電界E、並びに、第1導電膜12及び第2導電膜22間の中央部での電界Eを示す図である。
図5及び図6において、横軸は、左右方向にとられる軸であって、スリット14の左右方向中央地点を5mmとするものであり、縦軸は、対応する横軸の地点での、kV/mm(キロボルト毎ミリメートル)を単位とする電界強度である。第1導電膜12及び第2導電膜22間の中央部は、第1導電膜12下面から0.05mmだけ下方に離れた仮想的な平面に相当する。
又、図5及び図6において、電界Eは「-」でプロットされ、電界Eは「×」でプロットされている。
【0047】
電界勾配は、電界Eから電界Eを減じた値を距離で割ったものであり、即ち、(E-E)/距離、であって、距離が同じ場合には、電界Eと電界Eの差が大きいほど、それに応じて大きくなる。
図5及び図6によれば、スリット14のエッジ14Eの地点で、電界Eが他の地点に比べて大きくなっており、電界勾配が大きくなっていることが分かる。従って、粒子28が、外部の所定態様の電界が存在する場合に、エッジ14Eに近寄るための力の発生源である電界勾配が、十分に生じていると言える。
又、図6のように、スリット幅Lが所定程度以上あれば、より十分な電界勾配が得られる。他方、スリット幅Lが広すぎると、スリット14の左右方向での中央地点及びその隣接地点の電界勾配が小さくなり、当該地点に位置する粒子28に力が作用し難くなる。かような観点から、スリット幅Lは、好ましくは0.5mm以上50mm以下とされ、より好ましくは1mm以上30mm以下とされる。
【0048】
次いで、上述の第1形態に係るスリット幅Lが2.0mmである場合の計算における設定に準じて、表示装置1の実施例、即ち第1実施例が作成された。
第1実施例において当該設定と異なる点は、次の通りである。
第1導電膜12に、周波数が60Hz(ヘルツ)で電圧の実効値(RMS)が500Vである交流の電位が生じるようにする。第2導電膜22は接地され、その電位は0である。粒子28は、直径Dが100nm程度のチタニアナノ粒子で、流体26に対し0.1質量%の濃度で分散されている。カバー板10及びベース板20並びに第1導電膜12及び第2導電膜22に係る左右前後の各大きさは、全て左右50mm程度、前後40mm程度とされている。スリット14の全体形状は、縦横比4:3程度である前後に長い“X”字状であり、スリット14全体の左右方向の大きさは10mm程度である。
【0049】
図7は、電位付与開始から10分間経過した後における第1実施例の表示の様子を示す画像である。
第1実施例では、スリット14のエッジ14Eを主要部として、交流電界に基づく粒子28の誘電泳動による表示がなされている。
第1実施例では、電位付与開始から3分間程度経過した時点で表示が視認可能となり、5分間程度経過した時点で表示が十分に鮮明になった。
第1実施例に対し、更に、粒子28を中空にしたり、流体26の材質及び粒子28の材質の少なくとも一方を変えたりする、といった変更が施されれば、表示が視認可能となる時間、及び表示が十分に鮮明になる時間の少なくとも一方は、より一層短縮することが可能である。
【0050】
又、第1実施例の表示装置1に対して電位の付与が停止されれば、スリット14のエッジ14Eに集合していた粒子28は自然に分散し、表示装置1は、スリット14の形状に基づく表示が行われない非表示状態となる。
【0051】
続いて、上述の第2形態の表示装置101に準じた実施例、即ち第2実施例が作成された。
第2実施例は、表示装置101の機能を簡易に確かめるため、図8及び図9に示されるように形成される。図8は、第2実施例の模式的な断面図である。図9は、第2実施例の表示の様子を示す、第2実施例を上側から下方へ見た場合の画像である。図9は、通電開始から1分間経過した後における第2実施例の表示の様子を示す画像である。
【0052】
即ち、透光性を有する0.7mm厚のガラス製のカバー板10の下面に、真鍮製の4つの画鋲が付着される。各画鋲は、板状の頭部と、頭部から下方に突出する針と、を有している。3つの画鋲は、カバー板10の辺縁部に配置される。図8では、これらの3つの画鋲の内の2つが左右に示されている。残りの1つの画鋲は、カバー板10の中央に配置される。各画鋲の頭部は、互いにITO製の導電性膜で連結されている。各針の先端部は、テーパ状である。各針の先端は、巨視的には尖っており、微視的には直径数十μmの半球状となっている。
又、半径10mmの円形で0.7mm厚のガラス製のベース板20の上面に、ITO製の第2導電膜22が付着される。第2導電膜22は、アース線GNDにより接地されている。
各画鋲の頭部の下面と第2導電膜22の上面との間隔は、10mmである。
【0053】
第2導電膜22の上面には、内径の直径が10mmであるリング状のフレーム24が置かれている。フレーム24の厚さは、0.05mmである。フレーム24の上面には、テープTPが置かれている。テープTPは、中央の画鋲における針の先端部の位置を調整し確認するための目印として、上側から下方へ見て半径10mmの円形に内接する三角形状としている。中央の画鋲における針の先端部の上下方向における位置は、フレーム24の上面と合致するように調整される。中央の画鋲における針の先端部の前後左右方向における位置は、フレーム24の内径の中心と合致するように調整される。又、フレーム24の上面であって、テープTPの外方には、中央以外の3つの画鋲における針の先端が接している。
フレーム24の内方には、粒子28入りの流体26が滴下されている。流体26はシリコーン油である。粒子28は、チタニアである。粒子28の平均径は、直径で35nmである。粒子28の流体26に係る質量濃度は、0.1wt%である。粒子28入りの流体26は、フレーム24の上面内側の上方に至る量において滴下される。中央の画鋲における針の先端部は、粒子28入りの流体26内に入っている。粒子28入りの流体26は、左右の画鋲には達していない。
【0054】
第2実施例では、各画鋲の頭部と第2導電膜22との間の空気が、内板114の役割を担う。
又、第2実施例では、各画鋲の互いに連結された頭部及び導電性膜が、膜状部112Pとなる。
更に、第2実施例では、中央の画鋲の針が内方突出部112Nとなる。
又更に、中央以外の3つの画鋲の針は、内方突出部112Nを保持する保持部となり、フレーム24と同様の役割を担う。
【0055】
かような第2実施例におけるカバー板10の上面から7mm上方に、通電可能なステンレススチール製の鋼板が、電界付与のため配置された。
当該鋼板の前後左右の大きさは、カバー板10と同様である。又、当該鋼板の厚さは、0.5mmである。
【0056】
第2実施例では、内方突出部112Nの先端を中心として、交流電界に基づく粒子28の誘電泳動によるドット状の表示がなされている。かような表示は、図9では、黒いカバー板10の中央におけるグレーのドットとして行われている。
第2実施例では、電位付与開始から1分間程度経過した時点で表示が視認可能となり(図9)、5分間程度経過した時点で表示が十分に鮮明になった。
第2実施例に対し、更に、粒子28を中空にしたり、流体26の材質及び粒子28の材質の少なくとも一方を変えたり、内方突出部112Nの先端を更に尖らせたりする、といった変更が施されれば、表示が視認可能となる時間、及び表示が十分に鮮明になる時間の少なくとも一方は、より一層短縮することが可能である。又、針状の内方突出部112Nの数が増加すれば、複数のドットによる多彩な表示が行える。
【0057】
又、第2実施例の表示装置101に近接した鋼板に対する通電が停止されれば、内方突出部112Nの先端に集合していた粒子28は自然に分散し、表示装置101は、内方突出部112Nの形状に基づく表示が行われない非表示状態となる。
【符号の説明】
【0058】
1,1’,101・・表示装置、10,10’・・カバー板(第1の板)、12・・第1導電膜(第1の電極)、14・・スリット(不均一電界発生構造)、14E・・(スリットの)エッジ、20・・ベース板(第2の板)、22・・第2導電膜(第2の電極)、24・・フレーム、26・・流体、28・・粒子、112・・第1導電体(第1の電極)、112N・・内方突出部、112P・・膜状部、114・・内板、US・・不均一電界発生構造。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9