IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特開-ノイズ減衰回路 図1
  • 特開-ノイズ減衰回路 図2
  • 特開-ノイズ減衰回路 図3
  • 特開-ノイズ減衰回路 図4
  • 特開-ノイズ減衰回路 図5
  • 特開-ノイズ減衰回路 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017811
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】ノイズ減衰回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240201BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20240201BHJP
   B60L 50/60 20190101ALN20240201BHJP
   B60L 3/00 20190101ALN20240201BHJP
   B60L 9/18 20060101ALN20240201BHJP
【FI】
H02M7/48 E
G01R19/00 L
B60L50/60
B60L3/00 J
B60L9/18 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120709
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100171583
【弁理士】
【氏名又は名称】梅景 篤
(72)【発明者】
【氏名】石原 義昭
(72)【発明者】
【氏名】中田 健一
【テーマコード(参考)】
2G035
5H125
5H770
【Fターム(参考)】
2G035AA08
2G035AB09
2G035AD13
2G035AD18
2G035AD19
2G035AD20
2G035AD22
2G035AD51
2G035AD57
5H125AA01
5H125AC12
5H125BB01
5H125EE11
5H125FF03
5H770AA05
5H770BA02
5H770CA06
5H770HA03Z
5H770HA15W
5H770JA13W
5H770KA01W
5H770QA25
(57)【要約】
【課題】コモンモードノイズの減衰効果を向上可能なノイズ減衰回路を説明する。
【解決手段】ノイズ減衰回路5は、蓄電装置2とインバータ4との間に設けられるコイル31,32のコア30に巻回された補助コイル50と、補助コイル50で検出される検出電圧Vnに基づいて減衰電流Icを生成する変換回路52と、検出電圧Vnの搬送波成分を減衰させる逆相電圧Viを生成する生成回路51と、を備え、変換回路52は、検出電圧Vnと逆相電圧Viとを加算することによって加算電圧Vaを生成する加算回路55と、加算回路55の後段に設けられ加算電圧Vaを増幅する増幅回路56と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置と、当該蓄電装置から供給される直流電力を交流電力に変換するインバータとの間に設けられ、前記インバータで発生するノイズ電流を減衰させるための減衰電流を生成するノイズ減衰回路であって、
前記蓄電装置と前記インバータとの間に設けられるコモンモードチョークコイルのコアに巻回された補助コイルと、
前記補助コイルで検出される検出電圧に基づいて、前記減衰電流を生成する変換回路と、
前記検出電圧の搬送波成分を減衰させる逆相電圧を生成する生成回路と、
を備え、
前記変換回路は、
前記検出電圧と前記逆相電圧とを加算することによって加算電圧を生成する加算回路と、
前記加算回路の後段に設けられ、前記加算電圧を増幅する増幅回路と、を備える、
ノイズ減衰回路。
【請求項2】
前記生成回路は、前記インバータの駆動信号に基づいて、前記逆相電圧の周波数及び位相を設定する制御回路を備える、請求項1に記載のノイズ減衰回路。
【請求項3】
前記生成回路は、前記制御回路によって設定された前記周波数及び前記位相を有する正弦波信号を前記逆相電圧として出力する発振器を更に備える、請求項2に記載のノイズ減衰回路。
【請求項4】
前記制御回路は、前記蓄電装置の電圧である蓄電電圧の電圧値及び前記インバータの変調率に基づいて、前記逆相電圧の振幅を設定し、
前記発振器は、前記制御回路によって設定された前記振幅を更に有する前記正弦波信号を前記逆相電圧として出力する、請求項3に記載のノイズ減衰回路。
【請求項5】
前記制御回路は、前記検出電圧の搬送波成分と同一の周波数を有する第1パルス及び第2パルスを出力し、
前記生成回路は、
前記第1パルス及び第2パルスを合成して合成信号を生成する合成回路と、
前記合成信号から前記検出電圧の搬送波成分と同一の周波数成分を抽出するフィルタ回路と、を更に備え、
前記生成回路は、抽出した前記周波数成分に基づいて、前記逆相電圧を出力する、請求項2に記載のノイズ減衰回路。
【請求項6】
前記制御回路は、前記蓄電装置の電圧である蓄電電圧の電圧値及び前記インバータの変調率に基づいて、前記第1パルスと前記第2パルスとの位相差を設定する、請求項5に記載のノイズ減衰回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ノイズ減衰回路に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ等において発生するコモンモードノイズを減衰させるキャンセラ回路が知られている。例えば、特許文献1には、直流高電圧電源と三相インバータ回路との間に設けられた一次コイルと、一次コイルと電磁的に結合する二次コイルと、ノイズキャンセル回路と、を備えるコモンモードノイズキャンセル回路装置が記載されている。この装置では、一次コイルにコモンモード電流が流れると、二次コイルにおいてコモンモード電圧が生じ、コモンモード電圧に基づいてコモンモード電流と逆相のコモンモードキャンセル電流がノイズキャンセル回路によって生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-333647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コモンモードノイズの減衰効果を向上させるためには、キャンセラ回路のゲインを大きくする必要がある。しかし、コモンモード電圧とゲインとを乗算することによって得られる電圧値がキャンセラ回路の電源電圧の電圧値もよりも大きくなると、キャンセラ回路が正常に動作しないおそれがある。そのため、キャンセラ回路のゲインを十分に大きくすることができず、コモンモードノイズを十分に減衰させることができないおそれがある。
【0005】
本開示は、コモンモードノイズの減衰効果を向上可能なノイズ減衰回路を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係るノイズ減衰回路は、蓄電装置と、蓄電装置から供給される直流電力を交流電力に変換するインバータとの間に設けられ、インバータで発生するノイズ電流を減衰させるための減衰電流を生成する回路である。ノイズ減衰回路は、蓄電装置とインバータとの間に設けられるコモンモードチョークコイルのコアに巻回された補助コイルと、補助コイルで検出される検出電圧に基づいて、減衰電流を生成する変換回路と、検出電圧の搬送波成分を減衰させる逆相電圧を生成する生成回路と、を備える。変換回路は、検出電圧と逆相電圧とを加算することによって加算電圧を生成する加算回路と、加算回路の後段に設けられ、加算電圧を増幅する増幅回路と、を備える。
【0007】
このノイズ減衰回路では、変換回路において、補助コイルで検出される検出電圧と逆相電圧とが加算されることによって、加算電圧が生成され、加算電圧が増幅される。検出電圧の搬送波成分は、ノイズ規制の対象ではないので、逆相電圧として検出電圧の搬送波成分を減衰させる電圧を用いることによって、検出電圧の搬送波成分が減衰される。これにより、検出電圧の振幅よりも小さい振幅を有する加算電圧が得られるので、増幅回路のゲインを大きくすることができる。その結果、コモンモードノイズの減衰効果を向上させることが可能となる。
【0008】
いくつかの実施形態においては、生成回路は、インバータの駆動信号に基づいて、逆相電圧の周波数及び位相を設定する制御回路を備えてもよい。検出電圧の搬送波成分の周波数及び位相は、インバータの駆動信号に応じて定まり得る。上記構成では、インバータの駆動信号を考慮することにより、逆相電圧の周波数及び位相を検出電圧の搬送波成分の周波数及び位相にそれぞれ合わせることができる。したがって、検出電圧の搬送波成分をより確実に減衰させることができるので、加算電圧の振幅をより確実に低減することができる。その結果、コモンモードノイズの減衰効果を更に向上させることが可能となる。
【0009】
いくつかの実施形態においては、生成回路は、制御回路によって設定された周波数及び位相を有する正弦波信号を逆相電圧として出力する発振器を更に備えてもよい。この構成によれば、検出電圧の搬送波成分以外の周波数成分を減衰させることなく、搬送波成分を減衰させることができる。したがって、ノイズ規制の対象となる周波数成分の減衰効果を損なうことなく、増幅回路のゲインを大きくすることが可能となる。
【0010】
いくつかの実施形態においては、制御回路は、蓄電装置の電圧である蓄電電圧の電圧値及びインバータの変調率に基づいて、逆相電圧の振幅を設定してもよく、発振器は、制御回路によって設定された振幅を更に有する正弦波信号を逆相電圧として出力してもよい。検出電圧の搬送波成分の振幅は、蓄電電圧の電圧値及びインバータの変調率に応じて定まり得る。上記構成では、蓄電電圧の電圧値及びインバータの変調率を考慮することにより、逆相電圧の振幅を検出電圧の搬送波成分の振幅に近づけることができる。したがって、加算電圧の振幅を一層低減することができ、増幅回路のゲインを更に大きくすることができる。その結果、コモンモードノイズの減衰効果を一層向上させることが可能となる。
【0011】
いくつかの実施形態においては、制御回路は、検出電圧の搬送波成分と同一の周波数を有する第1パルス及び第2パルスを出力してもよい。生成回路は、第1パルス及び第2パルスを合成して合成信号を生成する合成回路と、合成信号から検出電圧の搬送波成分と同一の周波数成分を抽出するフィルタ回路と、を更に備えてもよい。生成回路は、抽出した周波数成分に基づいて、逆相電圧を出力してもよい。この構成では、発振器を用いることなく逆相電圧を生成することができるので、ノイズ減衰回路の回路規模を低減することができる。
【0012】
いくつかの実施形態においては、制御回路は、蓄電装置の電圧である蓄電電圧の電圧値及びインバータの変調率に基づいて、第1パルスと第2パルスとの位相差を設定してもよい。第1パルスと第2パルスとの位相差を調整することにより、合成信号の振幅を変更することができる。上述のように、検出電圧の搬送波成分の振幅は、蓄電電圧の電圧値及びインバータの変調率に応じて定まり得るので、蓄電電圧の電圧値及びインバータの変調率に基づいて、第1パルスと第2パルスとの位相差を設定することで、逆相電圧の振幅を検出電圧の搬送波成分の振幅に近づけることができる。したがって、加算電圧の振幅を一層低減することができ、増幅回路のゲインを更に大きくすることができる。その結果、コモンモードノイズの減衰効果を一層向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、コモンモードノイズの減衰効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、第1実施形態に係るノイズ減衰回路を含む電力供給装置の概略構成図である。
図2図2の(a)は、検出電圧の波形の一例を示す図である。図2の(b)は、逆相電圧の波形の一例を示す図である。図2の(c)は、加算電圧の波形の一例を示す図である。
図3図3は、第2実施形態に係るノイズ減衰回路を含む電力供給装置の概略構成図である。
図4図4は、合成信号を説明するための図である。
図5図5の(a)~(e)は、2つのパルスの位相差が135°である場合の各信号の波形例を示す図である。
図6図6の(a)~(e)は、2つのパルスの位相差が0°である場合の各信号の波形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら実施形態に係るノイズ減衰回路を詳細に説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0016】
(第1実施形態)
図1を参照しながら、第1実施形態に係るノイズ減衰回路を含む電力供給装置の構成を説明する。図1は、第1実施形態に係るノイズ減衰回路を含む電力供給装置の概略構成図である。図1に示される電力供給装置1は、モータMに交流電力を供給する装置である。電力供給装置1は、蓄電装置2と、主回路3と、インバータ4と、ノイズ減衰回路5と、を備えている。電力供給装置1では、インバータ4で発生するノイズ電流Inをノイズ減衰回路5によって減衰させる。
【0017】
蓄電装置2は、直流電力をインバータ4に供給する。蓄電装置2は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、及び電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられ得る。蓄電装置2は、例えば、リチウムイオン電池、鉛蓄電池、及びニッケル水素電池等によって構成される。蓄電装置2の電圧である蓄電電圧は、蓄電装置2の種類及び蓄電装置2の蓄電量に応じて変動し得る。蓄電電圧は、蓄電装置2の開放電圧である。つまり、蓄電電圧は、蓄電装置2の正極端子と負極端子との間の電圧である。
【0018】
主回路3は、コイル31と、コイル32と、接続線33と、接続線34と、コンデンサ35と、コンデンサ36と、を備えている。コイル31及びコイル32は、磁性材料で形成されたコア30に巻回され、コモンモードチョークコイルを構成している。
【0019】
コモンモードチョークコイルでは、コイル31及びコイル32にコモンモードの電流(以下、「コモンモード電流」と称する。)が流れると、コイル31及びコイル32における電磁誘導現象によって磁束が発生する。この場合、発生した磁束の向きは同じ方向になり、互いの磁束が強め合ってコモンモードチョークコイルはインダクタとして機能する。コイル31及びコイル32にディファレンシャルモードの電流が流れると、発生した磁束の方向は逆方向になるため、磁束が打ち消し合う。これにより、ディファレンシャルモードの電流に対しては、コモンモードチョークコイルはインダクタとして機能しない。
【0020】
コイル31及びコイル32は、蓄電装置2とインバータ4との間に設けられる。コイル31の一端は、蓄電装置2の正極端子に接続されている。コイル31の他端は、接続線33に接続されている。コイル32の一端は、蓄電装置2の負極端子に接続されている。コイル32の他端は、接続線34に接続されている。
【0021】
接続線33は、コイル31とインバータ4とを接続している。具体的には、接続線33の一端は、コイル31の他端に接続されている。接続線33の他端は、インバータ4に接続されている。
【0022】
接続線34は、コイル32とインバータ4とを接続している。具体的には、接続線34の一端は、コイル32の他端に接続されている。接続線34の他端は、インバータ4に接続されている。
【0023】
コンデンサ35及びコンデンサ36は、Yコンデンサであり、接続線33及び接続線34と接地電位(アース)との間に設けられる。具体的に説明すると、コンデンサ35の一端は、接続線33の他端に接続されている。コンデンサ35の他端は、接地電位(アース)に接続されている。コンデンサ36の一端は、接地電位(アース)に接続されている。コンデンサ36の他端は、接続線34の他端に接続されている。
【0024】
インバータ4は、蓄電装置2から供給される入力電力としての直流電力を交流電力に変換してモータMに出力する。本実施形態では、インバータ4は、三相インバータであり、複数のスイッチング素子(図示省略)を有している。スイッチング素子は、電気的な開閉を切り替え可能な要素である。スイッチング素子としては、例えばMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、及びバイポーラトランジスタ等が用いられる。なお、インバータ4は、不図示の駆動回路を含んでいる。
【0025】
ノイズ減衰回路5は、インバータ4で発生するノイズ電流In(コモンモード電流)を減衰させるための減衰電流Icを生成する回路である。ノイズ電流Inは、インバータ4のスイッチング動作により発生する。ノイズ電流Inは、搬送波成分と高調波成分とから構成される。ノイズ電流Inの搬送波成分の周波数は、インバータ4を駆動するための信号(以下、「インバータ4の駆動信号」と称する。)の搬送波成分の周波数と一致する。ノイズ減衰回路5は、蓄電装置2とインバータ4との間に設けられている。ノイズ減衰回路5は、補助コイル50と、生成回路51と、変換回路52と、を含む。ノイズ減衰回路5は、補助コイル50において検出電圧Vnを検出し、検出電圧Vnに基づいてノイズ電流Inと逆位相の減衰電流Icを生成することで、インバータ4において発生したノイズ電流Inを減衰させる。
【0026】
補助コイル50は、コイル31及びコイル32のコア30に巻回されており、検出電圧Vnを検出する。補助コイル50の一端は、接地電位(アース)に接続されている。補助コイル50の他端は、変換回路52に接続されている。補助コイル50は、検出した検出電圧Vnを変換回路52に出力する。なお、補助コイル50に電流が流れることによって、補助コイル50には検出電圧Vnが発生する。検出電圧Vnは、補助コイル50に流れる電流を電圧に変換することによって得られ、搬送波成分と高調波成分とから構成されている。補助コイル50には、減衰電流Icが生成される前は、ノイズ電流Inのみが流れ、減衰電流Icが生成された後は、ノイズ電流Inと減衰電流Icとの合成電流が流れるが、本実施形態では、減衰電流Icが生成される前の初期段階について説明を行う。
【0027】
生成回路51は、検出電圧Vnの搬送波成分を減衰させる逆相電圧Viを生成する回路である。生成回路51は、逆相電圧Viを変換回路52に出力する。生成回路51は、制御回路53と、発振器54と、を含む。
【0028】
制御回路53は、逆相電圧Viのパラメータ値を設定する回路である。本実施形態では、制御回路53は、逆相電圧Viの周波数、位相、及び振幅を設定する。制御回路53は、インバータ4の駆動信号に基づいて、逆相電圧Viの周波数及び位相を設定する。具体的には、制御回路53は、インバータ4の駆動信号の搬送波成分の周波数を逆相電圧Viの周波数として設定する。インバータ4の駆動信号の搬送波成分の周波数は、例えば、20kHzである。
【0029】
制御回路53は、逆相電圧Viの位相が、インバータ4の駆動信号の搬送波成分の位相の逆位相となるように設定する。検出電圧Vnの搬送波成分の位相は、インバータ4を制御するための駆動信号の搬送波成分の位相と同位相であるため、逆相電圧Viの位相は、検出電圧Vnの搬送波成分の位相とも逆位相である。
【0030】
制御回路53は、蓄電装置2の蓄電電圧の電圧値及びインバータ4の変調率に基づいて、逆相電圧Viの振幅を設定する。本実施形態では、制御回路53は、蓄電電圧の電圧値とインバータ4の変調率と逆相電圧Viの振幅との関係を規定するテーブルを有している。言い換えると、テーブルには、蓄電電圧の電圧値とインバータ4の変調率との様々な組み合わせに対して、逆相電圧Viの振幅が設定されている。
【0031】
テーブルの設定方法を詳述する。検出電圧Vnの振幅は、蓄電電圧の電圧値及びインバータ4の変調率に応じて変動し得る。検出電圧Vnの搬送波成分を0に近づけるためには、検出電圧Vnの搬送波成分の振幅と同じ振幅を有する逆相電圧Viが検出電圧Vnから差し引かれる必要がある。このため、各組み合わせ(蓄電電圧の電圧値及びインバータ4の変調率)で電力供給装置1を動作させ、補助コイル50において発生する検出電圧Vnを測定することにより、測定された検出電圧Vnの搬送波成分の振幅と同じ振幅が、当該組み合わせに対応する逆相電圧Viの振幅として決定される。以上のようにして、テーブルが設定される。
【0032】
制御回路53は、蓄電電圧の電圧値及びインバータ4の変調率を取得し、上記テーブルから、取得した蓄電電圧の電圧値及びインバータ4の変調率の組み合わせに対応する逆相電圧Viの振幅を取得する。
【0033】
制御回路53は、逆相電圧Viの周波数、位相、及び振幅の各指令値を発振器54に出力する。
【0034】
なお、本実施形態では、制御回路53は、インバータ4の制御部としても機能している。したがって、制御回路53は、インバータ4に駆動信号を供給しているので、インバータ4の駆動信号の搬送波成分の周波数、スイッチングタイミング、及び変調率を把握している。制御回路53は、例えば、蓄電装置2の正極端子と負極端子との間に設けられた電圧センサから蓄電電圧の電圧値を取得する。
【0035】
発振器54は、制御回路53によって設定されたパラメータ値を有する正弦波信号を逆相電圧Viとして出力する。本実施形態では、発振器54は、制御回路53によって設定された周波数、位相、及び振幅を有する正弦波信号を生成する。発振器54は、生成した正弦波信号を逆相電圧Viとして変換回路52に出力する。
【0036】
変換回路52は、検出電圧Vnに基づいて、減衰電流Icを生成する回路である。変換回路52は、ノイズ電流Inと逆位相の電流を生成し、減衰電流Icとして出力することで、インバータ4において発生したノイズ電流Inを減衰させる。変換回路52は、加算回路55と、増幅回路56と、出力コンデンサ57と、を含む。
【0037】
加算回路55は、検出電圧Vnと逆相電圧Viとを加算することによって加算電圧Vaを生成する回路である。加算回路55は、加算電圧Vaを増幅回路56に出力する。加算回路55の回路構成としては公知の回路構成が用いられる。
【0038】
増幅回路56は、加算電圧Vaを増幅する回路である。増幅回路56は、加算回路55の後段に設けられている。増幅回路56の回路構成としては公知の回路構成が用いられる。
【0039】
出力コンデンサ57は、増幅回路56によって増幅された加算電圧Vaを減衰電流Icに変換する。出力コンデンサ57は、増幅回路56と変換回路52の出力端子(接続線34)との間に設けられている。具体的には、出力コンデンサ57の一端は増幅回路56の出力端子に接続され、出力コンデンサ57の他端は接続線34に接続されている。
【0040】
次に、図2の(a)~(c)を更に参照しながら、電力供給装置1の動作を説明する。図2の(a)は、検出電圧の波形の一例を示す図である。図2の(b)は、逆相電圧の波形の一例を示す図である。図2の(c)は、加算電圧の波形の一例を示す図である。図2の(a)の縦軸は、検出電圧Vn(単位:V)を示す。図2の(b)の縦軸は、逆相電圧Vi(単位:V)を示す。図2の(c)の縦軸は、加算電圧Va(単位:V)を示す。図2の(a)~(c)のぞれぞれの横軸は、時間(単位:μs)を示す。
【0041】
電力供給装置1では、蓄電装置2から直流電力がインバータ4に供給されると、インバータ4のスイッチング動作によりノイズ電流Inが発生する。このとき、コイル31及びコイル32にはノイズ電流Inが流れ、補助コイル50には、コイル31及びコイル32に流れるノイズ電流Inによって検出電圧Vnが発生する。図2の(a)に示される例では、検出電圧Vnは、20kHzの搬送波成分を主成分として含み、更に高調波成分も含んでいる。
【0042】
そして、生成回路51によって、検出電圧Vnの搬送波成分を減衰させる逆相電圧Viが生成される。具体的には、図2の(b)に示されるように、検出電圧Vnの搬送波成分の周波数と同一の周波数、検出電圧Vnの搬送波成分の位相と逆相の位相、及び検出電圧Vnの搬送波成分の振幅と同一の振幅を有する正弦波信号が逆相電圧Viとして生成される。そして、変換回路52の加算回路55において、検出電圧Vnと逆相電圧Viとが加算されることにより、加算電圧Vaが生成される。図2の(c)に示されるように、加算電圧Vaは、検出電圧Vnから検出電圧Vnの搬送波成分が差し引かれた波形であり、加算電圧Vaの振幅は検出電圧Vnの振幅よりも小さくなっている。
【0043】
そして、加算電圧Vaが増幅回路56によって増幅され、増幅された加算電圧Vaが出力コンデンサ57によってノイズ電流Inとは逆位相の減衰電流Icに変換される。そして、減衰電流Icがインバータ4(接続線34)に供給されることにより、ノイズ電流Inの高調波成分が減衰される。
【0044】
以上説明したノイズ減衰回路5では、変換回路52において、補助コイル50で検出される検出電圧Vnと逆相電圧Viとが加算されることによって、加算電圧Vaが生成され、加算電圧Vaが増幅される。ここで、CISPR等の規格では、150kHz以上の周波数成分がノイズ規制の対象であるので、検出電圧Vnの搬送波成分(例えば、20kHz)は、ノイズ規制の対象ではない。そのため、逆相電圧Viとして、検出電圧Vnの搬送波成分を減衰させる電圧を用いることによって、検出電圧Vnの搬送波成分が減衰される。これにより、検出電圧Vnの振幅よりも小さい振幅を有する加算電圧Vaが得られるので、増幅回路56のゲインを大きくすることができる。その結果、コモンモードノイズの減衰効果を向上させることが可能となる。
【0045】
図2の(a)に示される例では、検出電圧Vnはおおよそ±2.5Vの範囲で変動しており、検出電圧Vnの振幅は5V程度である。増幅回路56の電圧範囲が±15Vであると仮定すると、検出電圧Vnがそのまま増幅回路56に供給される場合には、増幅回路56のゲインの最大値は6である。一方、図2の(c)に示されるように、加算電圧Vaはおおよそ±1.8Vの範囲で変動しており、加算電圧Vaの振幅は3.6V程度である。加算電圧Vaが増幅回路56に供給される場合には、増幅回路56のゲインの最大値は8.3程度となる。したがって、増幅回路56のゲインを1.4倍程度大きくすることができる。
【0046】
検出電圧Vnの搬送波成分の周波数及び位相は、インバータ4の駆動信号に応じて定まり得る。電力供給装置1では、制御回路53が、インバータ4の駆動信号に基づいて逆相電圧Viの周波数及び位相を設定している。この構成によれば、インバータ4の駆動信号が考慮されるので、逆相電圧Viの周波数及び位相を、検出電圧Vnの搬送波成分の周波数及び位相にそれぞれ合わせることができる。したがって、検出電圧Vnの搬送波成分をより確実に減衰させることができるので、加算電圧Vaの振幅をより確実に低減することができ、増幅回路56のゲインを一層大きくすることができる。その結果、コモンモードノイズの減衰効果を更に向上させることが可能となる。
【0047】
検出電圧Vnの搬送波成分の振幅は、蓄電装置2の蓄電電圧の電圧値及びインバータ4の変調率に応じて定まり得る。電力供給装置1では、制御回路53は、蓄電装置2の蓄電電圧の電圧値及びインバータ4の変調率に基づいて、逆相電圧Viの振幅を設定している。このため、蓄電電圧の電圧値及びインバータ4の変調率を考慮することによって、逆相電圧Viの振幅を検出電圧Vnの搬送波成分の振幅に近づけることができる。したがって、加算電圧Vaの振幅を一層低減することができ、増幅回路56のゲインを更に大きくすることができる。その結果、コモンモードノイズの減衰効果を一層向上させることが可能となる。
【0048】
発振器54は、制御回路53によって設定された周波数、位相、及び振幅を有する正弦波信号を逆相電圧Viとして出力する。この構成によれば、検出電圧Vnの搬送波成分以外の周波数成分を減衰させることなく、搬送波成分を減衰させることができる。したがって、ノイズ規制の対象となる周波数成分の減衰効果を損なうことなく、増幅回路56のゲインを大きくすることが可能となる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、図3及び図4を参照しながら、第2実施形態に係るノイズ減衰回路を含む電力供給装置の構成を説明する。図3は、第2実施形態に係るノイズ減衰回路を含む電力供給装置の概略構成図である。図4は、合成信号を説明するための図である。図3に示される電力供給装置1Aは、ノイズ減衰回路5に代えてノイズ減衰回路5Aを備える点において、電力供給装置1と主に相違する。ノイズ減衰回路5Aは、生成回路51に代えて生成回路51Aを含む点において、ノイズ減衰回路5と主に相違する。生成回路51Aは、制御回路53及び発振器54に代えて制御回路61、合成回路62、フィルタ回路63、及び増幅回路64を含む点において、生成回路51と主に相違する。
【0050】
制御回路61は、逆相電圧Viを生成するためのパルスP1(第1パルス)及びパルスP2(第2パルス)を出力する。パルスP1及びパルスP2のそれぞれは、インバータ4の駆動信号の搬送波成分の周波数と同一の周波数成分(以下、「特定周波数成分」と称する。)を有する。パルスP1及びパルスP2は、同一の振幅を有する方形波である。本実施形態では、パルスP1の位相はパルスP2の位相と同じかパルスP2の位相よりも進んでいる。
【0051】
制御回路61は、逆相電圧Viの位相が、インバータ4の駆動信号の搬送波成分の位相の逆位相となるように、パルスP1及びパルスP2の位相を設定する。検出電圧Vnの搬送波成分の位相は、インバータ4を制御するための駆動信号の搬送波成分の位相と同位相であるため、逆相電圧Viの位相は、検出電圧Vnの搬送波成分の位相とも逆位相である。
【0052】
制御回路61は、蓄電装置2の蓄電電圧の電圧値及びインバータ4の変調率に基づいて、パルスP1とパルスP2との位相差θを設定する。本実施形態では、制御回路61は、蓄電電圧の電圧値とインバータ4の変調率と位相差θとの関係を規定するテーブルを有している。言い換えると、テーブルには、蓄電電圧の電圧値とインバータ4の変調率との様々な組み合わせに対して、位相差θが設定されている。テーブルの設定方法については後述する。
【0053】
制御回路61は、蓄電電圧の電圧値及びインバータ4の変調率を取得し、上記テーブルから、取得した蓄電電圧の電圧値及びインバータ4の変調率の組み合わせに対応する位相差θを取得する。そして、制御回路61は、位相差θでパルスP1及びパルスP2を合成回路62に出力する。
【0054】
なお、本実施形態では、制御回路61は、インバータ4の制御部としても機能している。したがって、制御回路61は、インバータ4に駆動信号を供給しているので、インバータ4の駆動信号の搬送波成分の周波数、スイッチングタイミング、及び変調率を把握している。制御回路61は、例えば、蓄電装置2の正極端子と負極端子との間に設けられた電圧センサから蓄電電圧の電圧値を取得する。
【0055】
合成回路62は、パルスP1及びパルスP2を合成して合成信号Vsを生成する回路である。合成回路62は、合成信号Vsをフィルタ回路63に出力する。本実施形態では、合成回路62は、抵抗器62aと、抵抗器62bと、コンデンサ62cと、を含む。抵抗器62aの一端は、制御回路61のパルスP1を出力する出力端子に接続されている。抵抗器62bの一端は、制御回路61のパルスP2を出力する出力端子に接続されている。抵抗器62aの他端と抵抗器62bの他端とは、接続点CPにおいて互いに接続されるとともに、フィルタ回路63の入力端子に接続されている。コンデンサ62cの一端は接続点CPに接続され、コンデンサ62cの他端は接地電位に接続されている。例えば、抵抗器62aの抵抗値は、抵抗器62bの抵抗値と実質的に等しい。
【0056】
合成回路62にパルスP1及びパルスP2が入力されると、抵抗器62a及び抵抗器62bによる抵抗分圧によって、接続点CPには、パルスP1の電圧とパルスP2の電圧との平均電圧が発生する。この平均電圧をコンデンサ62cが受けることにより、合成信号Vsが生成される。ここで、図4に示されるように、合成信号Vsの振幅は、位相差θによって決まる。パルスP1の特定周波数成分の振幅及びパルスP2の特定周波数成分の振幅がAであるとすると、合成信号Vsの特定周波数成分の振幅は、Acos(θ/2)となる。
【0057】
フィルタ回路63は、合成信号Vsから特定周波数成分を抽出する回路である。本実施形態では、フィルタ回路63は、ハイパスフィルタ65と、ローパスフィルタ66と、を含む。
【0058】
ハイパスフィルタ65は、合成回路62から出力された合成信号Vsの低周波数成分を減衰させるための回路である。ハイパスフィルタ65は、合成回路62の後段に設けられている。ハイパスフィルタ65は、ハイパスフィルタ65のカットオフ周波数以下の低周波数成分を減衰させ、当該カットオフ周波数よりも高い周波数成分を通過させる。ハイパスフィルタ65のカットオフ周波数は、特定周波数成分よりも低い周波数に設定されている。これにより、合成信号VsからDC成分を含む低周波成分が除去されて信号Vacが生成される。ハイパスフィルタ65は、信号Vacをローパスフィルタ66に出力する。
【0059】
本実施形態では、ハイパスフィルタ65は、コンデンサ65aと抵抗器65bとを含む。コンデンサ65aの一端は合成回路62の出力端子(接続点CP)に接続され、コンデンサ65aの他端は抵抗器65bを介して接地電位に接続されるとともに、ローパスフィルタ66に接続されている。
【0060】
ローパスフィルタ66は、ハイパスフィルタ65から出力された信号Vacの高周波成分を減衰させるための回路である。ローパスフィルタ66は、ハイパスフィルタ65の後段に設けられている。ローパスフィルタ66は、ローパスフィルタ66のカットオフ周波数以上の高周波成分を減衰させ、当該カットオフ周波数よりも低い周波数成分を通過させる。ローパスフィルタ66のカットオフ周波数は、ノイズ規制の対象となる周波数範囲のうちの下限の周波数(例えば、150kHz)よりも低く、特定周波数成分よりも高い周波数に設定されている。これにより、信号Vacから高周波成分が除去されて、特定周波数成分が抽出される。ローパスフィルタ66は、合成信号Vsの特定周波数成分を、周波数成分Vfとして増幅回路64に出力する。
【0061】
本実施形態では、ローパスフィルタ66は、抵抗器66aとコンデンサ66bとを含む。抵抗器66aの一端はハイパスフィルタ65の出力端子に接続され、抵抗器66aの他端はコンデンサ66bを介して接地電位に接続されるとともに、増幅回路64に接続されている。
【0062】
増幅回路64は、フィルタ回路63から出力された合成信号Vsの特定周波数成分である周波数成分Vfを増幅することによって逆相電圧Viを生成する。増幅回路64は、逆相電圧Viを変換回路52(加算回路55)に出力する。増幅回路64の回路構成としては公知の回路構成が用いられる。このように、生成回路51Aは、逆相電圧Viを出力する。
【0063】
ここで、制御回路61が有するテーブルの設定方法を詳述する。上述のように、検出電圧Vnの搬送波成分の振幅は、蓄電装置2の蓄電電圧の電圧値及びインバータ4の変調率に応じて変動し得る。検出電圧Vnの搬送波成分を0に近づけるためには、検出電圧Vnの搬送波成分の振幅と同じ振幅を有する逆相電圧Viが検出電圧Vnから差し引かれる必要がある。上述のように、逆相電圧Viの振幅は、位相差θ及び増幅回路64のゲインによって定まり得る。このため、各組み合わせ(蓄電電圧の電圧値及びインバータ4の変調率)で電力供給装置1Aを動作させ、補助コイル50において発生する検出電圧Vnを測定することにより、測定された検出電圧Vnの搬送波成分の振幅と同じ振幅の逆相電圧Viが得られる位相差θが、当該組み合わせに対応する位相差θとして決定される。以上のようにして、テーブルが設定される。
【0064】
次に、図5の(a)~(e)及び図6の(a)~(e)を更に参照しながら、電力供給装置1Aの動作を説明する。図5の(a)~(e)は、2つのパルスの位相差が135°である場合の各信号の波形例を示す図である。図6の(a)~(e)は、2つのパルスの位相差が0°である場合の各信号の波形例を示す図である。図5の(a)~(e)及び図6の(a)~(e)のぞれぞれの縦軸は電圧(単位:V)を示し、それぞれの横軸は時間(単位:μs)を示す。なお、各図には、各波形に含まれる搬送波成分が破線で示されている。
【0065】
電力供給装置1と同様に、電力供給装置1Aでは、蓄電装置2から直流電力がインバータ4に供給されると、インバータ4のスイッチング動作によりノイズ電流Inが発生する。このとき、コイル31、コイル32及び補助コイル50にはノイズ電流Inが流れ、補助コイル50には、検出電圧Vnが発生する。なお、補助コイル50には、減衰電流Icが生成される前は、ノイズ電流Inのみが流れ、減衰電流Icが生成された後は、ノイズ電流Inと減衰電流Icとの合成電流が流れるが、本実施形態では、減衰電流Icが生成される前の初期段階について説明を行う。
【0066】
そして、生成回路51Aによって、検出電圧Vnの搬送波成分を減衰させる逆相電圧Viが生成される。具体的には、制御回路61は、蓄電装置2の蓄電電圧の電圧値とインバータ4の変調率とを取得し、上記テーブルを参照して、これらの値の組み合わせに応じた位相差θを決定する。そして、制御回路61は、位相差θでパルスP1及びパルスP2を合成回路62に出力する。例えば、位相差θが135°である場合には、図5の(a)及び(b)に示されるように、パルスP1とパルスP2とが135°の位相差で出力される。位相差θが0°である場合には、図6の(a)及び(b)に示されるように、パルスP1とパルスP2とが0°の位相差で出力される。
【0067】
そして、図5の(c)及び図6の(c)に示されるように、合成回路62において、パルスP1及びパルスP2が合成され、位相差θに応じた振幅を有する合成信号Vsが生成される。そして、図5の(d)及び図6の(d)に示されるように、ハイパスフィルタ65によって、合成信号VsからDC成分を含む低周波成分が除去されて信号Vacが生成される。そして、図5の(e)及び図6の(e)に示されるように、ローパスフィルタ66によって、信号Vacから高周波成分が除去されて合成信号Vsの特定周波数成分が抽出され、増幅回路64に周波数成分Vfとして出力される。例えば、位相差θが135°である場合には、図5の(e)に示されるように、周波数成分Vfの搬送波成分の振幅は、1.2Vである。位相差θが0°である場合には、図6の(e)に示されるように、周波数成分Vfの搬送波成分の振幅は、3.2Vである。そして、増幅回路64によって、周波数成分Vfが増幅されて逆相電圧Viが生成される。
【0068】
そして、変換回路52の加算回路55において、検出電圧Vnと逆相電圧Viとが加算されることにより、加算電圧Vaが生成される。加算電圧Vaは、検出電圧Vnから検出電圧Vnの搬送波成分が差し引かれた波形であり、加算電圧Vaの振幅は検出電圧Vnの振幅よりも小さくなっている。
【0069】
そして、加算電圧Vaが増幅回路56によって増幅され、増幅された加算電圧Vaが出力コンデンサ57によってノイズ電流Inとは逆位相の減衰電流Icに変換される。そして、減衰電流Icがインバータ4(接続線34)に供給されることにより、ノイズ電流Inの高調波成分が減衰される。
【0070】
以上説明したノイズ減衰回路5Aにおいても、上述したノイズ減衰回路5と共通の構成については、ノイズ減衰回路5と同様の効果が奏される。さらに、ノイズ減衰回路5Aでは、発振器を用いることなく逆相電圧Viを生成することができる。したがって、ノイズ減衰回路5と比較して、ノイズ減衰回路5Aの回路規模を低減することができる。
【0071】
検出電圧Vnの搬送波成分の振幅は、蓄電装置2の蓄電電圧の電圧値及びインバータ4の変調率に応じて定まり得る。パルスP1とパルスP2との位相差θを調整することにより、合成信号Vsの振幅を変更することができる。逆相電圧Viの振幅は、合成信号Vsの振幅に応じて定まる。このため、蓄電電圧の電圧値及びインバータ4の変調率に基づいて、位相差θを設定することで、逆相電圧Viの振幅を検出電圧Vnの搬送波成分の振幅に近づけることができる。したがって、加算電圧Vaの振幅を一層低減することができ、増幅回路56のゲインを更に大きくすることができる。その結果、コモンモードノイズの減衰効果を一層向上させることが可能となる。
【0072】
以上、本開示の実施形態が詳細に説明されたが、本開示に係るノイズ減衰回路は上記実施形態に限定されない。
【0073】
制御回路53及び制御回路61は、インバータ4の制御部として機能しなくてもよい。言い換えると、電力供給装置1は、制御回路53とは別に、インバータ4の制御部を備えていてもよい。同様に、電力供給装置1Aは、制御回路61とは別に、インバータ4の制御部を備えていてもよい。
【0074】
制御回路53は、蓄電装置2の蓄電電圧の電圧値及びインバータ4の変調率のいずれか一方に基づいて、逆相電圧Viの振幅を設定してもよい。同様に、制御回路61は、蓄電装置2の蓄電電圧の電圧値及びインバータ4の変調率のいずれか一方に基づいて、位相差θを設定してもよい。
【0075】
制御回路53は、テーブルに代えて、蓄電装置2の蓄電電圧の電圧値及びインバータ4の変調率と逆相電圧Viの振幅との関係を規定する関数を用いて、逆相電圧Viの振幅を設定してもよい。同様に、制御回路61は、テーブルに代えて、蓄電装置2の蓄電電圧の電圧値及びインバータ4の変調率と位相差θとの関係を規定する関数を用いて、位相差θを設定してもよい。
【0076】
制御回路53は、逆相電圧Viの振幅を設定しなくてもよい。同様に、制御回路61は、位相差θを設定しなくてもよい。
【0077】
フィルタ回路63において、ハイパスフィルタ65とローパスフィルタ66との順番が入れ替えられてもよい。つまり、合成回路62の後段にローパスフィルタ66が設けられ、ローパスフィルタ66の後段にハイパスフィルタ65が設けられてもよい。フィルタ回路63は、ハイパスフィルタ65及びローパスフィルタ66に代えて、合成信号Vsの特定周波数成分を抽出可能なバンドパスフィルタを含んでもよい。
【0078】
生成回路51Aは、増幅回路64を含んでいなくてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1,1A…電力供給装置、2…蓄電装置、4…インバータ、5,5A…ノイズ減衰回路、30…コア、31,32…コイル、50…補助コイル、51,51A…生成回路、52…変換回路、53,61…制御回路、54…発振器、55…加算回路、56…増幅回路、62…合成回路、63…フィルタ回路、M…モータ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6