IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三洋化成工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-情報処理システム、情報処理方法 図1
  • 特開-情報処理システム、情報処理方法 図2
  • 特開-情報処理システム、情報処理方法 図3
  • 特開-情報処理システム、情報処理方法 図4
  • 特開-情報処理システム、情報処理方法 図5
  • 特開-情報処理システム、情報処理方法 図6
  • 特開-情報処理システム、情報処理方法 図7
  • 特開-情報処理システム、情報処理方法 図8
  • 特開-情報処理システム、情報処理方法 図9
  • 特開-情報処理システム、情報処理方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178111
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20241217BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20241217BHJP
   G01N 27/04 20060101ALN20241217BHJP
【FI】
G01N27/12 A
G06N20/00 130
G01N27/04 F
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024082029
(22)【出願日】2024-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2023096479
(32)【優先日】2023-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】那須 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】下元 佑也
(72)【発明者】
【氏名】石田 智信
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智大
(72)【発明者】
【氏名】小林 真也
(72)【発明者】
【氏名】松岡 弥樹
【テーマコード(参考)】
2G046
2G060
【Fターム(参考)】
2G046AA10
2G046AA18
2G046AA24
2G046BA01
2G046BB02
2G060AA01
2G060AB21
2G060AB22
2G060AB26
2G060AE19
2G060AF07
2G060AG03
2G060BB08
2G060HC10
2G060JA01
2G060KA01
(57)【要約】
【課題】トイレ空間内の匂いの原因事象を精度良く判定する。
【解決手段】情報処理システム(100)は、測定可能な匂い物質が互いに異なる複数の匂いセンサ素子を備える匂い測定装置(30)と、匂い測定装置(30)から出力される測定信号を学習済モデルに入力して、トイレ空間内の匂いの変化の原因事象を推定した推定結果を出力する推定部(12)と、トイレ空間内の匂いの変化の原因事象を複数の推定結果に基づいて判定する判定部(13)と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレ空間内の匂いを測定して、測定信号を出力する匂い測定装置と、
前記測定信号を取得する取得部と、
前記匂い測定装置から標本期間に出力された測定信号を含む説明変数と、該標本期間の前記測定信号に対応する前記トイレ空間内の匂いの変化の原因として実際に特定された事象を示す事象情報を含む目的変数と、を含む教師データを用いた機械学習によって得られた学習済モデルに、前記匂い測定装置から出力される測定信号を入力して、前記トイレ空間内の匂いの変化の原因事象を推定した推定結果を出力する推定部と、
前記推定部から出力された複数の推定結果に基づいて、前記トイレ空間内の匂いの変化の原因事象を判定する判定部と、
を備え、
前記匂い測定装置は、測定可能な匂い物質が互いに異なる複数の匂いセンサ素子を備え、
前記測定信号は、前記複数の匂いセンサ素子のそれぞれから出力される、
情報処理システム。
【請求項2】
前記取得部は、第1時間毎に前記測定信号を取得し、
前記推定部は、前記取得部によって取得された1以上の前記測定信号の各々から前記推定結果を出力する、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記判定部は、前記原因事象が、該トイレ空間の匂いの変化に与える影響の大きさに関する情報をさらに出力する、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記判定部は、前記原因事象の解消に関する情報をさらに出力する、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記匂い測定装置を2以上備える、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記事象は、前記トイレ空間の、大便による汚染、小便による汚染、および吐しゃ物による汚染、のうちの少なくともいずれかを含む、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記事象は、前記トイレ空間の利用者由来の事象を含む、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項8】
コンピュータが、トイレ空間内の匂いを測定する匂い測定装置から測定信号を取得する取得ステップと、
前記コンピュータが、前記匂い測定装置から標本期間に出力された測定信号を含む説明変数と、該標本期間の前記測定信号に対応する前記トイレ空間内の匂いの変化の原因として実際に特定された事象を示す事象情報を含む目的変数と、を含む教師データを用いた機械学習によって得られた学習済モデルに、前記匂い測定装置から出力される測定信号を入力して、前記トイレ空間内の匂いの変化の原因事象を推定した推定結果を出力する推定ステップと、
前記コンピュータが、前記推定ステップにおいて出力された複数の推定結果に基づいて、前記トイレ空間内の匂いの変化の原因事象を判定する判定ステップと、
を含み、
前記匂い測定装置は、測定可能な匂い物質が互いに異なる複数の匂いセンサ素子を備え、
前記測定信号は、前記複数の匂いセンサ素子のそれぞれから出力される、
情報処理方法。
【請求項9】
請求項1に記載の情報処理システムとしてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、前記取得部、前記推定部、および前記判定部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【請求項10】
請求項9に記載の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特定の空間内における匂いの原因を特定する装置が開発されている。例えば、特許文献1には、製鉄工場において想定される臭気発生源から採取される臭気であるコークス臭およびタール臭を基準臭気とし、製鉄工場等における未知臭気の発生源および原因を特定するにおい特定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-017467号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トイレ空間内の匂いは、利用者に該トイレ空間の清潔さを実感させ、該トイレ空間を気分よく利用させるために重要である。そして、トイレ空間内の匂いは、利用頻度、清掃頻度、トイレ空間外から流入する空気の匂い、およびトイレ空間内における空気の流れなどに影響され絶えず変化し得る。トイレ空間内の匂いは、様々な既知の匂いの相対的な、および/または、絶対的な強度が変化することによって生じる。
【0005】
本発明の一態様は、トイレ空間内の匂いの変化の原因事象を精度良く判定する情報処理システム、および情報処理方法等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る情報処理システムは、トイレ空間内の匂いを測定して、測定信号を出力する匂い測定装置と、前記匂い測定装置から標本期間に出力された測定信号を含む説明変数と、該標本期間の前記測定信号に対応する前記トイレ空間内の匂いの変化の原因として実際に特定された事象を示す事象情報を含む目的変数と、を含む教師データを用いた機械学習によって得られた学習済モデルに、前記匂い測定装置から出力される測定信号を入力して、前記トイレ空間内の匂いの変化の原因事象を推定した推定結果を出力する推定部と、前記推定部から出力された複数の推定結果に基づいて、前記トイレ空間内の匂いの変化の原因事象を判定する判定部と、を備え、前記匂い測定装置は、測定可能な匂い物質が互いに異なる複数の匂いセンサ素子を備え、前記測定信号は、前記複数の匂いセンサ素子のそれぞれから出力される。
【0007】
本発明の一態様に係る情報処理方法は、トイレ空間内の匂いを測定する匂い測定装置から標本期間に、出力された測定信号を含む説明変数と、該標本期間の前記測定信号に対応する前記トイレ空間内の匂いの変化の原因として実際に特定された事象を示す事象情報を含む目的変数と、を含む教師データを用いた機械学習によって得られた学習済モデルに、前記匂い測定装置から出力される測定信号を入力して、前記トイレ空間内の匂いの変化の原因事象を推定した推定結果を出力する推定ステップと、対象期間中に前記推定部から出力された複数の推定結果に基づいて、前記トイレ空間内の匂いの変化の原因となっている事象を判定する判定ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、トイレ空間内の匂いの変化の原因事象を精度良く判定する情報処理システム、および情報処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る情報処理システムの構成の一例を示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る匂い測定装置を含む情報処理システムの一例を示す機能ブロック図である。
図3】匂いセンサ素子の構成の一例を示す上面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る情報処理システムの構成の一例を示す機能ブロック図である。
図5】本発明の一実施形態に係る情報処理システムがトイレ空間内の匂いを判定する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態に係る情報処理システムの構成の一例を示す概略図である。
図7】本発明の一実施形態に係る情報処理システムの構成の一例を示す概略図である。
図8】本発明の一実施形態に係る情報処理システムの構成の一例を示す機能ブロック図である。
図9】本発明の一実施形態に係る情報処理システムの構成の一例を示す機能ブロック図である。
図10】本発明の一実施形態に係る情報処理システムの構成の一例を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上B以下」を意図する。
【0011】
本明細書において「トイレ空間」とは、1つ以上の便器が設置されている空間であり、トイレット、トイレットルーム、便所、洗面所とも呼称される。トイレ空間は、便器が1つのみ設置されている空間(例えば、個室)であってもよいし、複数の便器が設置されている空間であってもよい。
【0012】
〔実施形態1〕
(情報処理システム100)
まず、図1を用いて本発明の一実施形態に係る情報処理システム100の概要について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理システム100の構成の一例を示す概略図である。
【0013】
図1に示すように、情報処理システム100は、トイレ空間内の匂いに対応する匂い物質に基づく検出信号を出力可能な匂い測定装置30と、当該検出信号に基づきトイレ空間内の匂いの変化の原因事象を判定可能な判定装置10とを備える。情報処理システム100は、図1に示されるように、匂い測定装置30と、判定装置10とが、広域通信ネットワーク40を介して接続されていてもよい。
【0014】
情報処理システム100は、トイレ空間内の匂いの変化の原因事象を判定するための方法として有用である。例えば、トイレ空間の管理者が判定された原因事象に基づいて、適切なタイミングで清掃員を派遣することもできる。また、複数のトイレ空間の状態を情報処理システム100によりデータ化して、効率的なトイレ空間の管理を支援することもできる。
【0015】
本発明の一実施形態に係る情報処理システム100が備える匂い測定装置30の個数は特に限定されず、1つ以上、3つ以上、5つ以上、10以上であってもよい。また、匂い測定装置30はそれぞれが異なる場所に設けられたトイレ空間に設置されていてもよいし、一部、または全部が同じ場所に設けられたトイレ空間に設置されていてもよい。一実施形態において、匂い測定装置30は床面の方向に向いた吸気口の高さが床から50cm以下となるように設置してもよい。臭気は通常床から立ち昇るため、上記構成であれば、臭気をより正確に検知できる。
【0016】
広域通信ネットワーク40としては特に限定されず、インターネット、電話回線網、移動体通信網、CATV通信網、衛星通信網等であってもよく、より具体的にはBluetooth(登録商標)、Bluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)、Wi-Fi(登録商標)、Thread、ZigBee(登録商標)、セルラー型低電力ワイドエリア(LPWA)(例えば、狭帯域(NB)-IoT、LTE-M)、非セルラー型LPWA(例えば、Sigfox(登録商標)、LoRaWAN)等であってもよい。また、広域通信ネットワーク40はさらに、匂い測定装置30が出力した検出信号、および判定装置10が出力する判定結果等を記憶するクラウドサーバと接続されていてもよい。また、広域通信ネットワーク40がクラウドサーバと接続されている場合、判定装置10はクラウドサーバとして実現してもよい。
【0017】
さらに、判定装置10は、トイレ空間内の匂いの変化の原因事象の判定結果を、トイレ空間の管理者が所有する管理者端末50に送信してもよい。本明細書において、トイレ空間の管理者とは、例えばトイレ空間が存在する建造物の所有者、トイレ空間の管理を委託された管理人等が挙げられる。これにより、トイレ空間の管理者はトイレ空間内の匂いの変化の原因事象に関する情報を入手することが可能であり、トイレ空間に対して、清掃員の派遣等の適切な処置を行うことができる。管理者端末50としては、例えばノートパソコン、スマートフォン、タブレット端末等が挙げられる。また、判定装置10は、管理者端末によりアクセス可能なWebページ等に判定結果を表示してもよい。
【0018】
情報処理システム100において、匂い測定装置30は、測定可能な匂い物質が互いに異なる複数のセンサ素子を備えている。前記測定信号は当該複数の匂いセンサ素子のそれぞれから出力される。以下、センサ素子に関して説明する。その後、匂いセンサ素子31を適用した匂い測定装置30、および匂い測定装置30および判定装置10を備える情報処理システム100の詳細について説明する。
【0019】
(匂い測定装置30)
以下では、匂いセンサ素子31を適用した匂い測定装置30の概要および効果について、図2を用いて説明する。図2は、匂いセンサ素子31を適用した匂い測定装置30を備える情報処理システム100の構成の一例を示す機能ブロック図である。匂い測定装置30は、匂い物質を検出する匂いセンサ素子31、電源32(電源)、および時計33(タイマー)、制御部34、通信部35を備えている。上述した通り、匂い測定装置30は、広域通信ネットワーク40に接続されていてもよい。
【0020】
電源32は、匂いセンサ素子31に給電するための電源である。電源32は、定電圧電源であってもよいし、定電流電源であってもよいし、交流電源であってもよい。電源32が定電圧電源である場合は、匂いセンサ素子31にリード線を介して電流(例えば、1μA~10mAの直流電流)を供給する。電源32が供給する電圧値は、例えば0.01V~10Vであり、より具体的には2.5Vまたは5.0Vである。
【0021】
時計33は、時刻を測定する。時計33は、測定した時刻を制御部34に送信する。時計33は、ユーザによって時刻が設定される時計であってもよいし、電波時計であってもよい。
【0022】
制御部34は、匂い測定装置30の各部を統括して制御する。また、制御部34は匂いセンサ素子31により検出された匂いを、測定信号として出力する。制御部34は、時計33により測定された時刻に応じて、匂いの測定信号を出力してもよい。
【0023】
通信部35は、制御部34が出力した測定信号を送信する。通信部35は広域通信ネットワーク40に測定信号を送信し、送信された測定信号は判定装置10により取得される。
【0024】
匂い測定装置30は、必須の構成ではないが、筐体をさらに備えていてもよい。筐体は、匂い物質を含む空気を内包可能な容器である。筐体を備えている場合、匂いセンサ素子31は筐体内に設置される。
【0025】
匂い測定装置30は、匂いセンサ素子31に匂い物質が吸着する前後における、該匂いセンサ素子31の電気伝導性の経時的な変化を示す測定信号を出力する。これにより、さまざまな匂い物質を検出したり、識別したりすることが可能である。
い。
【0026】
<匂いセンサ素子31>
図3は、匂いセンサ素子31の構成の一例を示す上面図である。匂いセンサ素子31は、上述の樹脂組成物を含む匂い物質受容層315、第1金属配線313A、および第2金属配線313Bを備えている。なお、以下では、第1金属配線313Aおよび第2金属配線313Bを区別しない場合、金属配線313と記す場合がある。
【0027】
第1金属配線313Aおよび第2金属配線313Bはそれぞれ、匂い物質受容層315(すなわち、樹脂組成物)の電気伝導性の変化を計測するための電極として機能する金属配線である。すなわち、第1金属配線313Aと第2金属配線313Bとは互いに離間しており、匂い物質受容層315は、第1金属配線の少なくとも一部と第2金属配線の少なくとも一部とに接している。一例において、第1金属配線313Aおよび第2金属配線313Bは、互いに直接接していない金属配線であり、図2に示すように、互いに略平行な金属配線であってもよい。
【0028】
図3に示すように第1金属配線313Aおよび第2金属配線313Bを含む金属配線313は、基板311上に配置されていてもよい。基板311は、電子回路に一般的に用いられるガラスエポキシ等の基板であり得る。金属配線313は、銅、または金等の金属配線であり得る。基板の面に対して垂直な方向から見た第1金属配線313Aおよび第2金属配線313Bそれぞれの太さは、例えば10μm~2mmであってもよい。
【0029】
匂い物質受容層315は、第1金属配線313Aの少なくとも一部と第2金属配線313Bの少なくとも一部とに接していてもよい。匂い物質受容層315は、例えば、図2および図3に示すように、第1金属配線313Aと第2金属配線313Bとに挟まれた領域を埋めるように配されていてもよい。
【0030】
匂い物質受容層315の電気伝導性(すなわち、匂いセンサ素子31の電気伝導性)が低い場合、第1金属配線313Aと第2金属配線313Bとの間隔は所定の距離(例えば、500μm)以下であることが望ましい。
【0031】
匂い物質受容層は、樹脂組成物を含んでいてもよい。前記樹脂組成物は、樹脂を含み、さらに界面活性剤、およびフィラー(例えば、導電性炭素材料)から選択される1種類以上を含んでいてもよい。本明細書中、「匂い物質受容層」とは、識別対象となる匂い物質を吸着する層を意味する。匂い物質受容層315は上述の樹脂組成物から形成される。匂い物質受容層315は、匂いセンサ素子31の一部として設けられ得る。この匂い物質受容層315は、匂い物質の吸着等に応じて電気抵抗値が変化する。すなわち、匂いセンサ素子31は、このような匂い物質受容層315を備える匂い検知デバイスであり、匂いセンサ素子31の匂い測定方式はケミレジスタ型であってもよい。また、匂いセンサ素子31は上述したケミレジスタ型の匂いセンサ素子に限定されず、公知のガスセンサ、アンモニアセンサ、臭気センサ、VOCセンサ(揮発性有機化合物センサ)等に使用される匂いセンサ素子を1種類以上備えていてもよい。これらの公知のセンサに使用されるセンサ素子による検知結果は、匂いの解析時の基準値として使用されてもよい。
【0032】
情報処理システム100は、匂いセンサ素子31とは異なる公知のセンサを含んでいてもよい。公知のセンサとしては特に限定されず、公知のセンサに使用され得るものを使用できる。公知のセンサとしては例えば、ガスセンサ、温湿度計、揮発性有機化合物(VOC)センサ、アルコールセンサ、光学式センサ、人感センサ、ドア開閉センサ等が挙げられる。公知のセンサを匂い測定装置30と併用することにより、より正確にトイレ空間内の匂いの原因事象をより正確に判別できる場合がある。なお、情報処理システム100において、匂い測定装置30は、匂いセンサ素子31と、これらの公知のセンサと同じセンサ素子とを備える構成であってもよい。
【0033】
例えば、ガス漏れによる臭気の検出は、ガスセンサが適している。また、煙による臭気の検出は、光学式センサ等が適している。吐しゃ物にアルコールが含まれている場合、アルコールセンサの方がより正確に吐しゃ物を検出できる。温湿度計は、匂いセンサ、VOCセンサ、ガスセンサ等が検出した値の補正、およびセンサが設置されている環境に基づくセンサプローブの寿命の推定等に使用できる。なお、匂いセンサと、それ以外のセンサの結果が異なった場合、匂いセンサの結果を優先してもよい。
【0034】
匂いセンサ素子31が樹脂組成物を含むケミレジスタ型である場合、匂い物質Aが吸着した場合と、匂い物質Aとは異なる匂い物質Bが吸着した場合とで、電気伝導性の経時的な変化が異なるため、さまざまな匂い物質を検出したり、識別したりすることが可能である。なお、後述する匂い測定装置30では、匂い物質を検出するための構成(金属配線313および匂い物質受容層315)が設けられた基板311を備える匂いセンサ素子31が複数配設されている。それぞれの基板311には、測定可能な匂い物質が互いに異なる匂い物質受容層315を含む複数のセットが配設されている。複数の匂いセンサ素子31は、それぞれが定電圧電源および電圧計を備えてもよい。匂い測定装置30において、各基板311上に匂い物質を検出するための構成(金属配線313および匂い物質受容層315)が1つ配設されていてもよい。あるいは、匂い測定装置30において、1つの基板311上に匂い物質を検出するための構成(金属配線313および匂い物質受容層315)のセットが複数配設されていてもよい。後者の場合、基板311上に設けられるセットの各々に定電圧電源および電圧計が接続される。
【0035】
匂い測定装置30が備える複数の匂いセンサ素子31の匂い物質受容層315が含む樹脂組成物は、それぞれ同じであってもよいし異なっていてもよい。複数の匂いセンサ素子31が含む匂い物質受容層315が同じ組成である場合、複数の匂い物質受容層315はそれぞれにおいて同じ匂い物質を検出することができる。また、複数の匂いセンサ素子30がそれぞれ異なる組成の匂い物質受容層315を含む場合、複数の匂い物質受容層315のそれぞれは、匂い物質に対して異なる応答をする。このように、匂い物質を検出するための構成のセットを複数備えることで、匂い測定装置30における匂い物質の識別精度を向上させることができる。
【0036】
上述した匂い測定装置30は、匂いセンサ素子31にさまざまな匂い物質が吸着した場合、該匂いセンサ素子31の電気伝導性の経時的な変化を匂い物質毎に出力することができる。この匂い測定装置30を適用すれば、匂い物質Aが匂いセンサ素子31に吸着した場合の該匂いセンサ素子31の電気伝導性の経時的な変化と、匂い物質Bが匂いセンサ素子31に吸着した場合の該匂いセンサ素子31の電気伝導性の経時的な変化と比較することができる。このような比較結果に基づいて、匂いセンサ素子31に吸着した匂い物質から、後述するトイレ空間内の匂いの変化の原因を判定可能な判定装置10を実現することができる。
【0037】
(判定装置10)
以下では、判定装置10の概要および効果について説明する。判定装置10は、上述した匂い測定装置30より出力された測定信号から、トイレ空間内の匂いの変化の原因事象を判定する装置である。判定装置10は、機械学習によって得られた学習済みモデルを用いるため、高精度な匂い物質の判定を行うことができる。
【0038】
図4は、判定装置10の構成の一例を示す機能ブロック図である。判定装置10は、判定装置10の各部を統括して制御する制御部1、判定装置10が使用する各種データを記憶する記憶部2を備えているが、この構成に限定されない。例えば、記憶部2は、判定装置10に外付けされた装置であってもよい。また、判定装置10は、上述した通り、広域通信ネットワーク40に接続されていてもよい。
【0039】
<制御部1>
まず制御部1について説明する。制御部1は、測定信号取得部11、推定部12、判定部13、通信部14、出力制御部15を備えている。また、制御部1に含まれるブロックの一部について、その機能を判定装置10と通信可能な他の装置に持たせて、制御部1から当該ブロックを省略してもよい。例えば、出力制御部15の機能を他の装置に持たせてもよい。この場合、判定装置10は、判定部13により判定された結果を、当該他の装置により出力してもよい。
【0040】
測定信号取得部11は、匂い測定装置30から出力された測定信号を、広域通信ネットワーク40を介して取得する。測定信号取得部11は、匂い測定装置30から出力された測定信号をリアルタイムに取得する構成であってもよいし、広域通信ネットワーク40上に保存された測定信号を、一定の間隔で取得する構成であってもよい。測定信号取得部11は、好ましくは、第1時間毎に測定信号を取得する。測定信号取得部は、取得した測定信号データを記憶部2に保存する。
【0041】
前記第1時間は例えば、1分、5分、10分、30分、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、またはそれ以上であってもよいが、特に限定されない。
【0042】
推定部12は、前記測定信号データを学習済みモデル22に入力して、トイレ空間内の匂いの変化の原因事象を推定する。前記測定信号は、記憶部2に記憶された測定信号データ21であってもよい。推定部12が学習済みモデル22に入力する測定信号は、推定の正確性を向上させる観点から、複数であることが好ましい。推定部は、前記トイレ空間の大便による汚染、小便による汚染、および吐しゃ物による汚染、のうちの少なくともいずれかを含む事象を、トイレ空間内の匂いの変化の原因事象として推定してもよい。推定部12は、前記原因事象の種類の推定を、例えばクラス分類によって行ってもよい。また、推定部12は、前記原因分析の強度の推定を行ってもよく、その場合は強度の推定を回帰分析によって実施してもよい。推定部12は、第2時間毎に推定結果を出力してもよい。第2時間は前記第1時間に対して、短くてもよいし、同じでもよいし、長くてもよい。推定部の推定結果の正確性を向上させる観点から、第2時間は前記第1時間より長いことが好ましい。推定部12は、出力した推定結果を記憶部2に保存する。
【0043】
前記事象は、大便による汚染、小便による汚染、および吐しゃ物による汚染以外の、トイレ空間の利用者由来の事象であってもよい。本明細書において、「トイレ空間の利用者由来の事象」とは、前記利用者自体が発する匂いにより、トイレ空間内の匂いが変化する事象を意味する。換言すれば、「トイレ空間の利用者由来の事象」はトイレ空間そのものの汚染とは関係が無い臭気とも言える。具体的には、利用者由来の香水、タバコ、体臭、利用者の衣服の柔軟剤、利用者の衣服の洗剤等の匂いが挙げられる。トイレ空間の利用者由来の事象を原因事象として推定可能となることにより、トイレ空間の汚染以外によるトイレ空間の匂いの変化を検出可能となるため、より正確な推定を行うことができる。
【0044】
判定部13は、推定部12から出力された複数の推定結果に基づいて、前記トイレ空間内の匂いの変化の原因事象を判定する。前記複数の推定結果は、推定結果データ23として記憶部2に記憶されていてもよい。判定部13は、複数の推定結果に基づいて原因事象を推定する。判定部13は、例えば直近N回の推定によって得られた推定結果において、原因事象としてもっとも多く推定された原因事象を特定することによって、原因事象を判定してもよい。判定部13は、複数の推定結果に基づいて前記原因事象を判定するため、前記原因事象を精度良く判定することが可能となる。判定部13は、原因事象として前記トイレ空間の、大便による汚染、小便による汚染、および吐しゃ物による汚染、のうちの少なくともいずれかを含む事象を前記原因事象として判定してもよい。判定部13は、必要に応じて、前記原因事象が前記トイレ空間内の匂いに与える影響の大きさに関する情報、および/または前記原因事象の解消に関する情報をさらに出力してもよい。
【0045】
前記トイレ空間内の匂いに与える影響の大きさに関する情報としては例えば、匂いの強度、匂いの持続時間、匂いの種類、匂いの不快度等が挙げられる。また、前記原因事象の解消に関する情報としては例えば、清掃サービスの派遣、清掃員への指示等が挙げられる。
【0046】
出力制御部15は、判定部13による判定結果を通信部16に出力する。判定部13による判定結果が管理者端末50に送信される場合、出力制御部15は、当該判定結果の送信先である管理者端末50を、管理者端末データ24に基づいて特定してもよい。
【0047】
通信部14は、出力制御部15により出力された判定結果を、管理者端末データ24に基づき、広域通信ネットワーク40を介して管理者端末50に送信する。通信部14は、管理者端末50に直接判定結果を送信してもよいし、管理者端末50がアクセス可能な、広域通信ネットワーク40上のWebページ等に判定結果を送信してもよい。
【0048】
<記憶部2>
次に、記憶部2について説明する。記憶部2には、測定信号データ21、学習済みモデル22、推定結果データ23、管理者端末データ24が記憶されていてもよい。
【0049】
測定信号データ21は、匂い測定装置30から出力されて、測定信号取得部11により取得された、測定信号のデータである。測定信号データ21には、測定された時間、測定された場所、匂い測定装置30の識別番号、測定信号パターンの種類等の情報がラベル付けされていてもよい。
【0050】
学習済みモデル22は、教師データを用いた機械学習によって学習されている。
教師データは、下記の説明変数および目的変数を含んでいる。
・説明変数は、匂い測定装置30から標本期間に出力された測定信号を含む。
・目的変数は、標本期間の前記測定信号に対応する前記トイレ空間内の匂いの変化の原因として実際に特定された事象を示す事象情報を含む。なお、標本期間は、上述した第1時間よりも長い期間、短い期間、または同じ期間のいずれであってもよい。学習済みモデル22は、公知の機械学習アルゴリズムを用いて生成されてもよい。学習済みモデル22の生成方法として使用可能な機械学習アルゴリズムとしては、例えば、k近似法(k-nearest neighbor method)、ロジスティック回帰、サポートベクトルマシン、ランダムフォレスト、およびニューラルネットワーク等が挙げられる。
【0051】
一実施形態において、情報処理システム100が匂い測定装置30以外のセンサを備えている場合、学習済みモデル22は説明変数としてさらに、匂い測定装置30以外のセンサから標本期間に出力された測定信号を含む。
【0052】
推定結果データ23は、推定部12から出力された、トイレ空間内の匂いの変化の原因事象を推定した結果である。推定結果データ23は、推定の根拠となった測定信号データと同じ情報がラベル付けされていてもよい。
【0053】
管理者端末データ24は、匂い測定装置30が設置されているトイレ空間の管理者が所有する端末に関するデータである。管理者端末データ24は、匂い測定装置30と、該匂い測定装置30が設置されているトイレ空間の管理者が所有する管理者端末50を紐づけするためのデータである。管理者端末データ24は例えば、匂い測定装置30の装置番号と、管理者端末50の端末番号とが紐づけされたデータであってもよいし、匂い測定装置30が設置されているトイレ空間の所在地と、該トイレ空間の管理者が所有する管理者端末の所在地とが紐付けされたデータであってもよい。
【0054】
(情報処理システム100が行う処理)
本発明の一実施形態に係る情報処理方法の概要を、図5に基づいて説明する。図5は情報処理システム100による情報処理方法の概要を示したフローチャートである。
【0055】
ステップS1では、匂い測定装置30がトイレ空間内の匂いを測定し、測定信号として出力する。この時、匂い測定装置30は匂いを測定した結果をリアルタイムで判定装置10に出力してもよいし、上述した第1時間毎に出力してもよい。
【0056】
取得ステップS2では、測定信号取得部11が、匂い測定装置30から出力された測定信号を取得する。測定信号取得部11は、匂い測定装置30から出力された測定信号をリアルタイムに取得してもよいし、ネットワーク上に保存された測定信号を、前記第1時間ごとに取得してもよい。測定信号取得部11は、取得した測定信号を記憶部2に記憶させてもよい。
【0057】
推定ステップS3では、推定部12が匂い測定装置30から出力された測定信号を学習済みモデルに入力して、トイレ空間内の匂いの変化の原因事象を推定し、推定結果を出力する。この時、学習済みモデル22は、教師データを用いた機械学習によって得られる。教師データが含む説明変数および目的変数については、上述した通りである。推定部12は、出力した推定結果を記憶部2に記憶させてもよい。
【0058】
判定ステップS4では、判定部13が、推定部12が出力した複数の推定結果に基づいてトイレ空間内の匂いの変化の原因事象を判定する。判定部13が判定した情報は、出力制御部15により出力される。出力制御部15は、トイレ空間内の匂いの変化の原因事象だけでなく、原因事象がトイレ空間内の匂いに与える影響の大きさに関する情報、および/または前記原因事象の解消に関する情報をさらに出力してよい。
【0059】
ステップS5では、通信部14が、出力制御部15により出力された判定結果を送信する。
【0060】
トイレ空間内の匂いは様々な要因によって絶えず変化し得るため、匂いの変化の原因事象の推定は困難であった。情報処理システム100を使用すれば、判定部13は単一の推定結果ではなく、複数の推定結果に基づいて判定するため、トイレ空間内の原因事象を精度よく判定することができる。
【0061】
〔実施形態2〕
以下、本発明の別の実施形態に係る情報処理システム100aの概要について、図6に基づいて説明する。図6は、実施形態1とは異なる情報処理システム100aの構成の一例を示す概略図である。なお、既に説明した事項については記載を省略する。
【0062】
図6に示すように、情報処理システム100aにおいて、匂い測定装置30が出力した測定信号は、管理者端末50に送信される。管理者端末50は取得した測定信号を、広域通信ネットワーク40を介して、判定装置10へと送信する。また、管理者端末50は測定信号に基づき判定装置10から出力された判定結果を、広域通信ネットワーク40を介して受信する。
【0063】
情報処理システム100aは、判定装置10、匂い測定装置30、および管理者端末50を備えている。情報処理システム100aは、必要に応じて広域通信ネットワーク40を備えていてもよい。上述した通り、情報処理システム100aにおいて、判定装置10と管理者端末50とは、広域通信ネットワーク40を介して接続されていてもよい。また、情報処理システム100aにおいて、匂い測定装置30と、管理者端末50とは、プロバイダ等を介さないローカルエリアネットワーク(LAN)接続、LTE通信等により接続されていてもよい。
【0064】
前記構成であれば、測定信号が管理者端末50から送信されるため、測定信号と管理者端末データ24とを紐づけすることが容易である。
【0065】
〔実施形態3〕
以下、本発明の別の実施形態に係る情報処理システム100bの概要について、図7に基づいて説明する。図7は、情報処理システム100bの構成の一例を示す概略図である。なお、既に説明した事項については記載を省略する。
【0066】
図7に示すように、情報処理システム100bにおいて、匂い測定装置30が出力した測定信号は、判定装置10aに直接送信される。判定装置10aは取得した測定信号に基づいて、トイレ空間内の匂いの変化の原因事象を判定し、判定した結果を出力する。つまり、情報処理システム100bにおいて、判定装置10aは管理者端末50と一体化しているとも言える。また、情報処理システム100bにおいて、判定装置10aと匂い測定装置30とは、プロバイダ等を介さないローカルエリアネットワーク接続、LTE通信等により接続されていてもよい。
【0067】
(情報処理システム100bの構成)
図8は、実施形態1、2とは別の情報処理システム100bの構成の一例を示す機能ブロック図である。情報処理システム100bは、判定装置10a、匂い測定装置30を備えている。情報処理システム100bは、必要に応じて広域通信ネットワーク40を備えていてもよい。
【0068】
判定装置10aは管理者端末50の各部を統括して制御する制御部1a、および情報処理装置が使用する各種データを記憶する記憶部2a、判定結果を出力する出力部16を備えている。制御部1aには、測定信号取得部11、推定部12、判定部13、出力制御部15が含まれている。記憶部2aには、測定信号データ21、学習済みモデル22、推定結果データ23が記憶されている。
【0069】
<制御部1a>
制御部1aは、測定信号取得部11、推定部12、判定部13、出力制御部15を備えている。
【0070】
出力制御部15は、判定部13によって出力された判定結果を、出力部16に出力させる。出力部16の出力態様は特に限定されず、例えば、表示出力であってもよいし、印字出力であってもよいし、音声出力であってもよい。
【0071】
前記構成であれば、判定装置10aが管理者端末50と一体化されているため、判定結果を得るまでのタイムラグが低減される。
【0072】
〔実施形態4〕
以下、本発明の別の実施形態に係る情報処理システム100cの概要について、図9に基づいて説明する。図9は、情報処理システム100cの一例を示す概略図である。なお、既に説明した事項については記載を省略する。以下では、匂い測定装置30aおよび30bを区別しない場合、単に「匂い測定装置30」と記す。
【0073】
図9に示すように、情報処理システム100cは、匂い測定装置30aおよび30bを備えている。匂い測定装置30aおよび30bは、例えば、同じトイレ空間に設置されていてもよい。その場合、匂い測定装置30aと30bは同じトイレ空間の異なる領域および/または位置に設置されていてもよい。
【0074】
具体的には、例えば匂い測定装置30aが小便器の近傍に、匂い測定装置30bが大便器の近傍に設置されていてもよい。また、別の例としては、匂い測定装置30aがトイレ空間の床に近い位置に、匂い測定装置30bが当該トイレ空間の天井に近い位置に設置されていてもよい。
【0075】
匂い測定装置30aおよび30bが設置され得るトイレ空間内の領域の例としては、小便器近辺、大便器近辺、パウダールーム、手洗い場、および清掃道具入れ等が挙げられる。匂い測定装置30は、これらの領域のうちの少なくともいずれかの場所ごとに1または複数設置されてもよい。
【0076】
この構成であれば、トイレ空間内のどの場所に汚染が生じているのかを容易に判定することができる。なお、設置された複数の匂い測定装置30のうち、1個のみが常に他の装置と異なる値を検出し続けている場合、当該装置が故障していることを容易に判定することができる。
【0077】
情報処理システム100cにおいて、匂い測定装置30aと30bは測定結果を、広域通信ネットワーク40を介して判定装置10に送信する。前記測定結果は、管理者端末50にも送信されてよい。広域通信ネットワーク40は、実施形態1において説明した通りである。
【0078】
匂い測定装置30は、測定結果として、トイレ空間内の匂いに対応する匂い物質に基づく検出信号を送信する。一実施形態において、匂い測定装置30は、さらに匂い測定装置30自体に関係するデータを、上記測定結果に関連付けて送信してもよい。
【0079】
匂い測定装置30に関連するデータとしては、例えば各匂い測定装置30のIDデータ、各匂い測定装置30が備える匂いセンサ素子31のIDデータ、および各匂い測定装置30の設置場所データ等が挙げられる。匂い測定装置30のIDデータとしては、例えば匂い測定装置30がそれぞれ有するSIMカードの識別番号、および匂い測定装置30のそれぞれに付された装置番号等が挙げられる。匂い測定装置30が備えるセンサ素子のIDデータとしては、例えば各匂いセンサ素子31に付された識別番号、各匂いセンサ素子31の種類に係るデータ等が挙げられる。匂い測定装置30の設置場所データとしては、各匂い測定装置30が設置されている領域のIDデータ、匂い測定装置30が設置されている位置のデータ(例えば、床面からの距離)、匂い測定装置30が設置されている方向のデータ(例えば、吸気口の向き)等が挙げられる。
【0080】
一実施形態において、匂い測定装置30が送信するデータは、トイレ空間内の匂いに対応する匂い物質に基づく検出信号、各匂い測定装置30がそれぞれ有するSIMカードの識別番号、各匂いセンサ素子31の識別番号、および各匂い測定装置30が備えているGPSに基づく位置データを、判定装置10に送信してもよい。
【0081】
匂い測定装置30は、上述したデータ以外に、例えば検出信号の送信時の時間、および検出信号の検出時の時間等の時間データをさらに送信してもよい。
【0082】
匂い測定装置30を含む情報処理システム100cについて説明したが、この構成に限定されない。例えば、情報処理システム100cは、3以上の匂い測定装置30を備える構成であってもよい。
【0083】
〔実施形態5〕
以下、本発明の別の実施形態に係る情報処理システム100dの概要について、図10に基づいて説明する。図10は、情報処理システム100dの一例を示す概略図である。なお、既に説明した事項については記載を省略する。以下では、匂い測定装置30a~30fを区別しない場合、単に「匂い測定装置30」と記す。また、以下では、管理者端末50a~50cを区別しない場合、単に「管理者端末50」と記す。さらに、以下では、ネットワーク60a~60cを区別しない場合、単に「ネットワーク60」と記す。
【0084】
図10に示すように、情報処理システム100dは異なる所在地に設置された複数の匂い測定装置30、および各所在地の匂い測定装置30にそれぞれ対応する管理者端末50を備える。例えば、図10に示される匂い測定装置30aおよび30bは、管理者端末50aと同じ所在地に存在している。
【0085】
前記所在地としては例えば、ビル、店舗、駅、病院、介護施設、公園、役場等の公共施設であってもよいし、自宅等であってもよい。情報処理システム100d内に存在している、匂い測定装置30および管理者端末50の組み合わせのそれぞれが設置されている所在地は同じ建造物内であってもよいし、異なる建造物内であってもよい。例えば、ビル内、店舗内、駅内等のトイレ空間のそれぞれに匂い測定装置30が設置されており、前記トイレ空間が存在するビル内、店舗内、駅内のそれぞれに管理者端末50が設置されていてもよい。また、同じビル内の異なるトイレ空間に匂い測定装置30が設置されており、前記異なるトイレ空間のそれぞれに対応する管理者端末50が設置されていてもよい。
【0086】
情報処理システム100dにおいて、匂い測定装置30は測定結果を、広域通信ネットワーク40を介して判定装置10に送信する。広域通信ネットワーク40は、実施形態1において説明した通りである。
【0087】
また、同じ所在地に存在する匂い測定装置30と管理者端末50とは、ネットワーク接続60を介して接続されていてもよい。前記ネットワーク接続60としては特に限定されず、上述した広域通信ネットワークとして使用可能な接続方法から選択されてもよいし、ローカルエリアネットワークであってもよい。一実施形態において、匂い測定装置30aおよび30bは測定結果を、ネットワーク接続60aを介して匂い測定装置30aおよび30bに対応する管理者端末50aに送信してもよい。
【0088】
一実施形態において、匂い測定装置30は、匂い測定装置30が設置されている所在地に係るデータを、上記測定結果に関連付けて送信してもよい。前記所在地に係るデータとしては、各匂い測定装置30が備えているGPSに基づく位置データ、および匂い測定装置30が設置されているトイレ空間が存在する場所のIDデータ等が挙げられる。匂い測定装置30は、実施形態4で記載したデータをさらに送信してもよい。
【0089】
図10に記載の情報処理システム100dの構成であれば、複数の所在地における空間内の匂いの変化、および匂いの変化の原因事象等を比較することができるため、トイレ空間において要求される清潔さの平均を特定できる。また、各トイレ空間における匂い測定装置30の設置状況が類似している場合、異常値を出力している故障した匂い測定装置30を容易に特定できる。
【0090】
匂い測定装置30、および管理者端末50を含む情報処理システム100dについて説明したが、この構成に限定されない。例えば、情報処理システム100dは、匂い測定装置30と管理者端末50をさらに備える構成であってもよい。
【0091】
〔ソフトウェアによる実現例〕
情報処理システム100、100a、100b、100c、100dが備える判定装置10、10aにおいて、制御ブロック(特に制御部1)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0092】
後者の場合、判定装置10、10aは、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路等を用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)等をさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0093】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0094】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る情報処理システムは、トイレ空間内の匂いを測定して、測定信号を出力する匂い測定装置と、前記測定信号を取得する取得部と、前記匂い測定装置から標本期間に出力された測定信号を含む説明変数と、該標本期間の前記測定信号に対応する前記トイレ空間内の匂いの変化の原因として実際に特定された事象を示す事象情報を含む目的変数と、を含む教師データを用いた機械学習によって得られた学習済モデルに、前記匂い測定装置から出力される測定信号を入力して、前記トイレ空間内の匂いの変化の原因事象を推定した推定結果を出力する推定部と、前記推定部から出力された複数の推定結果に基づいて、前記トイレ空間内の匂いの変化の原因事象を判定する判定部と、を備え、前記匂い測定装置は、測定可能な匂い物質が互いに異なる複数の匂いセンサ素子を備え、前記測定信号は、前記複数の匂いセンサ素子のそれぞれから出力される。
【0095】
本発明の態様2に係る情報処理システムは、上記態様1において、前記取得部が、第1時間毎に前記測定信号を取得してもよく、前記推定部は、前記取得部によって取得された1以上の前記測定信号の各々から前記推定結果を出力してもよい。
【0096】
本発明の態様3に係る情報処理システムは、上記態様1または2において、前記判定部が、前記原因事象が該トイレ空間の匂いの変化に与える影響の大きさに関する情報をさらに出力してもよい。
【0097】
本発明の態様4に係る情報処理システムは、態様1~3のいずれかにおいて、前記判定部が、前記原因事象の解消に関する情報をさらに出力してもよい。
【0098】
本発明の態様5に係る情報処理システムは、態様1~4のいずれかにおいて、前記匂い測定装置を2以上備える。
【0099】
本発明の態様6に係る情報処理システムは、上記態様1~5のいずれかにおいて、前記事象が、前記トイレ空間の、大便による汚染、小便による汚染、および吐しゃ物による汚染、のうちの少なくともいずれかを含んでもよい。
【0100】
本発明の態様7に係る情報処理システムは、上記態様1~6のいずれかにおいて、前記事象は、前記トイレ空間の利用者由来の事象を含んでもよい。
【0101】
本発明の態様8に係る情報処理方法はコンピュータが、トイレ空間内の匂いを測定する匂い測定装置から測定信号を取得する取得ステップと、前記コンピュータが、前記匂い測定装置から標本期間に出力された測定信号を含む説明変数と、該標本期間の前記測定信号に対応する前記トイレ空間内の匂いの変化の原因として実際に特定された事象を示す事象情報を含む目的変数と、を含む教師データを用いた機械学習によって得られた学習済モデルに、前記匂い測定装置から出力される測定信号を入力して、前記トイレ空間内の匂いの変化の原因事象を推定した推定結果を出力する推定ステップと、前記コンピュータが、前記推定ステップにおいて出力された複数の推定結果に基づいて、前記トイレ空間内の匂いの変化の原因事象を判定する判定ステップと、を含み、前記匂い測定装置は、測定可能な匂い物質が互いに異なる複数の匂いセンサ素子を備え、前記測定信号は、前記複数の匂いセンサ素子のそれぞれから出力される。
【0102】
本発明の態様9は、前記態様1~7の情報処理システムとしてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、前記取得部、前記推定部、および前記判定部としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであってもよい。
【0103】
本発明の態様10は、前記態様9に記載の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であってもよい。
【0104】
本発明に係る情報処理システムは、態様1~7のいずれかにおいて、匂い測定装置以外のセンサをさらに備えてもよい。
【符号の説明】
【0105】
10 判定装置
30、30a、30b、30c、30d、30e、30f 匂い測定装置
31 匂いセンサ素子
40 広域通信ネットワーク
50、50a、50b、50c 管理者端末
60a、60b、60c ネットワーク接続
311 基板
313A 第1金属配線
313B 第2金属配線
315 匂い物質受容層
W リード線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10