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特開2024-178146受動的(自己)展開平行四辺形多関節格子マスト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178146
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】受動的(自己)展開平行四辺形多関節格子マスト
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/22 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
B64G1/22 100B
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024095280
(22)【出願日】2024-06-12
(31)【優先権主張番号】18/333,168
(32)【優先日】2023-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500174708
【氏名又は名称】サウスウェスト リサーチ インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ジェイ. ローズ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ジェイ. ハーヴェイ
(72)【発明者】
【氏名】トビー ジェイ. ハーヴェイ
(72)【発明者】
【氏名】ランディ ジェイ. ローズ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ペイロードを支持するための自己展開可能なマストを提供する。
【解決手段】マストは、折り畳みおよび展開するように動作可能な一連の可動平行四辺形を形成する上部長尺体、下部長尺体、およびヒンジリンク機構を有する。前記マストは、少なくとも1つのバネと、平行四辺形のそれぞれに関連付けられた1つのトラスとを有するバネおよびトラスをさらに有する。前記バネは、マストを折り畳まれた位置から展開された位置に展開するように動作可能である。各トラスは、マストが最終位置に展開されると、その関連する平行四辺形を斜めに横切って張力を受けるように動作可能である。他の実施形態では、バネの代わりにモータを使用することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受動的に展開可能なマストであって、
一連の下部長尺体と、
一連の上部長尺体と、
下部長尺体と上部長尺体との対がアコーディオン状に折り畳まれおよび展開するように動作可能な一連の平行四辺形部を形成するように、下部長尺体を隣接セクションの前記上部長尺体に取り付けるように動作可能なヒンジリンク機構と、
各平行四辺形部に関連する少なくとも1つのバネと、
各平行四辺形部に関連する少なくとも1つの対角線と、
を備え、
前記バネは、前記マストを折り畳まれた位置から展開された位置に展開するように動作可能であり、
各対角線は、前記マストが最終展開位置に展開されるとき、前記バネの作用によって、その関連する平行四辺形部を横切って対角線上に張力がかかるようになるように動作可能である、マスト。
【請求項2】
前記バネは、座屈されることによって荷重状態に置かれ得る板である、請求項1に記載のマスト。
【請求項3】
前記バネは、ねじりバネ、ねじりロッド、または圧縮バネである、請求項1に記載のマスト。
【請求項4】
前記対角線は、可撓性ワイヤ、ケーブル、コード、またはロッドで実装される、請求項1に記載のマスト。
【請求項5】
各セクションの前記上部長尺体及び前記下部長尺体は、第1の側部および第2の側部と、少なくとも1つのバネと、各側部に1つの対角線とを有する、請求項1に記載のマスト。
【請求項6】
各ヒンジリンク機構は、2つの隣接する長尺部材を連結する第1ヒンジと、他の2つの隣接する長尺部材を連結する第2ヒンジと、一対のリンク機構アームとを備え、
前記第2ヒンジは、オフセットヒンジである、請求項1に記載のマスト。
【請求項7】
折り畳みマストが、
一連の下部長尺体と、
一連の上部長尺体と、
下部長尺体と上部長尺体との対がアコーディオン状に折り畳まれおよび展開するように動作可能な一連の平行四辺形部を形成するように、下部長尺体を隣接セクションの前記上部長尺体に取り付けるように動作可能なヒンジリンク機構と、
各平行四辺形部に関連する少なくとも1つのバネと、
各平行四辺形部に関連する少なくとも1つの対角線と、
を備え、
前記バネは、前記マストを折り畳まれた位置から展開された位置に展開するように動作可能であり、各対角線が、前記マストが最終展開位置に展開されたとき、前記バネの作用によって、その関連する平行四辺形部分を横切って対角線上に張力をかけるように動作可能であるように、マストを動作させる、マストの展開方法。
【請求項8】
前記動作のステップを減衰させることをさらに含む、請求項7に記載の展開方法。
【請求項9】
前記バネは、座屈されることによって負荷状態に置かれ得る板である、請求項7に記載の展開方法。
【請求項10】
前記バネは、ねじりバネ、ねじりロッド、または圧縮バネである、請求項7に記載の展開方法。
【請求項11】
前記対角線は、可撓性ワイヤ、ケーブル、コード、またはロッドを用いて実装される、請求項7に記載の展開方法。
【請求項12】
前記対の下部長尺体及び上部長尺体のそれぞれは、第1の側部及び第2の側部と、少なくとも1つのバネと、各側部に1つの対角線とを有する、請求項7に記載の展開方法。
【請求項13】
モータ展開可能なマストであって、
一連の下部長尺体と、
一連の上部長尺体と、
下部長尺体と上部長尺体との対がアコーディオン状に折り畳まれおよび展開するように動作可能な一連の平行四辺形部を形成するように、下部長尺体を隣接セクションの前記上部長尺体に取り付けるように動作可能なヒンジリンク機構と、
前記ヒンジリンク機構にトルクを提供するように動作可能な多数のモータであって、少なくとも1つのモータが2つ以上の平行四辺形部ごとに関連付けられている複数のモータと、
各平行四辺形部に関連する少なくとも1つの対角線と、
を備え、
複数の前記モータは、前記マストを折り畳まれた位置から展開された位置に展開するように動作可能であり、
各対角線は、前記マストが最終展開位置に展開されたときに、前記バネの作用によって、その関連する平行四辺形部を横切って対角線上に張力をかけるように動作可能である、マスト。
【請求項14】
前記対角線は、可撓性ワイヤ、ケーブル、コード、またはロッドで実装される、請求項13に記載のマスト。
【請求項15】
各セクションの前記上部長尺体及び前記下部長尺体が、第1の側部および第2の側部と、少なくとも1つのバネと、各側部に1つの対角線とを有する、請求項13に記載のマスト。
【請求項16】
各ヒンジリンク機構は、2つの隣接する長尺部材を連結する第1ヒンジと、他の2つの隣接する長尺部材を連結する第2ヒンジと、一対のリンク機構アームとを備え、
前記第2ヒンジは、オフセットヒンジである、請求項13に記載のマスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は受動的に展開可能な装置に関し、より詳細には、そのような装置のためのマストに関する。
【背景技術】
【0002】
様々なマスト、ブーム、アームなどが、宇宙の上または上に、装備品などのペイロードを保持するための異なる用途で使用される。例えば、通信用途では、「マスト」が電波を十分に送信または受信することができる高さでアンテナを支持する、一般に垂直な構造である。別の例として、「ブーム」は、マイクロフォンを、増幅される音源のより近くに近づけるに使用され得る。
【0003】
本明細書で使用するとき、「マスト」は、ブーム、アーム、及び典型的には格子又は管状構造を有する任意の同様の細長い剛性構造を含むように集合的に使用される。マストは、ペイロードに適切な支持を提供することができると想定される。ペイロードは、マストの端部における「先端質量」であってもよく、マストの全部または一部に沿って分布した質量を有する可能性がある。
【0004】
自己展開可能なマストおよびそれらのペイロードは、時には宇宙または安全でない環境において、または人間のオペレータがすぐに対応できない他の用途のために使用される。これらのマスト/ペイロードシステムは、多くの場合、移動中にコンパクトなモジュールとして収容され、所望の場所に1回展開される。
【0005】
米国特許出願18/100472号では、ソーラーパネルを支持するためのトラスバッキングを有する、宇宙で使用するためのソーラーパネルアレイを記載している。トラスバッキングは、ソーラーアレイと一体化されて自己展開可能な構造を形成するマストである。
【0006】
完全に作動され、制御される(非受動)展開は典型的にはモータを使用し、これは、展開に電力および機構のリスクを加える。多くの場合、いくつかの受動的に展開されたシステムの不確定性はリスクの増大をもたらし、それは、追加のモータを使用する制御された展開のための要件が高まる可能性がある。これらは、重量、複雑さ、および全体的なコストをシステムに追加する。
【0007】
いくつかの自己展開システムは、装置の展開(展開する)が能動的に開始されても、その後、外部制御なしで完了するため、「受動的」展開システムと呼ばれる。所望の時間に、1つ以上のアクチュエータが、展開を開始するために使用される。受動的展開に依存する多くのシステムは機械的に不確定な展開を有し、これは、システムの損傷または不十分な動作のリスクを高めることにつながる可能性がある。
【0008】
本実施形態およびその利点のより完全な理解は、同様の参照番号が同様の特徴を示す添付の図面と併せて以下の説明を参照することによって得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、装置を支持する、展開状態にあるマストの斜視図である。
図2図2は、折り畳まれた(展開されていない)状態のマストの側面図である。
図3図3は、展開されていない状態のマストの上面図である。
図4図4は、展開中のマストを示す。
図5図5は、図4の後の時点における、マストの展開中の第2の図である。
図6図6は、図5の谷の詳細図である。
図7図7は、図5の山の詳細図である。
図8図8は、完全に展開したマストの一部を示す。
図9図9は、ヒンジリンク機構の一例を示す。
図10図10は、バネおよびヒンジリンク機構の代替実施形態を伴うマストを図示する。
図11図11は、ヒンジリンク機構がv字形ではなくx字形であるマストの実施形態を示す。
図12図12は、展開がバネではなくモータを使用して達成されるマストの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明は、典型的にはペイロードを垂直または水平に支持するために使用される、受動的に展開可能なマストを対象とする。マストは、決定論的に展開する一連の平行四辺形関節部を備える。
【0011】
図1は、本発明によるマスト10の斜視図である。図1において、マスト10は、その展開された(折り畳まれていない)位置にある。
【0012】
図1の例では、マスト10は一端で基地局から展開されている。もう一方の端でペイロード11を支持する。ペイロード11は「ブラックボックス」として表され、先端質量であり、すなわち、マスト10の端部に取り付けられる。他の用途では、ペイロードがマスト上の任意の場所に配置されてもよく、またはマストの長さに沿って分配されてもよい。ペイロードは、多くの場合、装置の一部である。それは、任意のデバイス、例えば、カメラまたは他の検査もしくはデータ収集デバイスであってもよい。別の例として、ペイロード11は、ツール、ロボット、または遠隔で機械的に操作されるものであってもよい。
【0013】
マスト10が展開された基地局は、明示的に示されていない。基地局は固定式であってもよいし、移動式であってもよい。マスト10は、重力または非重力環境において展開可能である。
【0014】
マスト10のサイジングは、典型的にはそれが支持するペイロード11のサイズによって決定される。より大きい質量を有するペイロードは、より短いリーチおよびより重いマストを必要とし得るが、より小さい質量のペイロードは、より長いリーチおよびより軽いマスト設計を可能にし得る。ペイロード11から基地局への様々な電気接続または他の配線またはケーブル配線は、従来通りに実現することができるが、図示されていない。
【0015】
マスト10の例示的な用途は、宇宙空間に打ち上げられるマストシステムである。マストシステム(マスト10およびそれに付随するペイロード11)を発射装置に適合させるために、マストシステムは、ランチャーに折り畳まれ、収容される。ランチャーが所望の軌道に達すると、マストシステムが展開される。展開は、システムが収納状態から動作(展開された)状態になるように行われる。本明細書に記載される本発明の特徴は、マスト10全体が一連の作動ではなく同時に展開するという意味で、展開が「同期」されることである。
【0016】
したがって、マスト10はペイロード11を、その基地局の上または基地局の外から所望の位置に展開し、展開後にペイロード11を指示するための手段を提供する。マスト10は、ペイロード11を所望の到達範囲で支持するための所望の剛性を提供する。
【0017】
マスト10が図1のように展開されると、マストは、その長さに沿って剛性構造を形成する。展開後、マスト10は、マスト用途において「ベイ」とも呼ばれる一連の反復部Sを含むトラス構造となる。図1の例では、マスト10は4つのセクションを有する。各セクションは、セクションを分離するヒンジリンク機構23を有する2つの剛性長尺体21および22を有する。各セクションはまた、関連するバネ24および対角線25を有する。
【0018】
図1において、各セクションSは、1つの上部長尺体21と、1つの下部長尺体22と、2つのバネ24と、2つの対角線25とを有する。長尺体21および22は平坦かつ平面であり、剛性材料の単一片から作製されるが、管状であってもよく、またはいくつかの他の平坦な剛性構造を有し得る。
【0019】
この展開状態では、バネ24が一定のバネ力を提供することによって展開を補助している。トラス25は、マスト10の全長にその所望の剛性を与える張力をかけられている。バネ24およびトラス25の構造および動作は、以下でさらに説明する。
【0020】
バネ24およびトラス25は、左から右にミラーリングされる。他の実施形態では、これらの構成要素のうちの1つまたは複数を単一の構成要素に縮小することができる。バネの数とトラスの数との間には必ずしも1対1の関係があるとは限らない。
【0021】
ヒンジリンク機構23は、断片セクションSを接続する。幾何学的には、ヒンジリンク機構23の間で、各断片の上部および下部長尺体が一連の平行四辺形を形成する。ヒンジリンク機構23は、マスト10がその非展開状態でアコーディオン状に折り畳まれることを可能にする。マスト10が展開するとき、ヒンジリンク機構23は各平行四辺形の内部形状が「広がる」、すなわち、開き、より平坦ではなくなり、より長方形になることを可能にする。ヒンジリンク機構23は様々な機構で構成することができ、いくつかの例を以下に説明する。
【0022】
図1の実施形態では、各セクションが2つのバネ24および2つの対角線25を有し、一方のバネおよびトラスは長尺体の一方の側にあり、他方のバネおよびトラスは長尺体の他方の側にある。各側部において、トラス25は、下部長尺体21の角部と、上部長尺体22の対向する角部とに取り付けられる。言い換えれば、トラス25は、平行四辺形の側面を斜めに横切って延びる。
【0023】
バネ24は同様に斜めに取り付けられているが、角からずれて取り付けられていてもよい。バネ24はそれらの関連する部分の一方の側および他方の側にあるが、本明細書に記載されるようにマスト10を開くように機能する限り、他の方法で配置されてもよい。
【0024】
対角線25は第1のセクションにおいて「下から上」に、次いで次のセクションにおいて「上から下」に延びるように構成される。したがって、トラス25は各セクション内で同じ対角線方向に延びるが、対角線方向はセクションごとに交互になる。
【0025】
図1において、対角線25は、展開中にバネ24の反対の力によって張力を受けて張られた状態になっている。デプロイメント処理について説明する。
【0026】
図2は、折り畳まれた(展開されていない)状態のマスト10の側面図である。図示されるように、収納時には、ヒンジリンク機構23によりマスト10を折り畳むことができ、その結果、コンパクトなパッケージが得られる。バネ24及びトラス25は図示されていない。この図では、セクションによって形成された平行四辺形が展開後に有する「開いた」矩形形状とは対照的に、「平坦」または「閉じた」状態にある。
【0027】
マスト10の部分は、交互に折り畳まれたアコーディアン状に折り畳まれる。典型的には、マスト部は同じ長さであり、一連の対称的な折り畳みまたは「ジグザグ」が生じる。
【0028】
図3は、展開されていない状態のマスト10の底面図である。バネ24は「座屈板、例えば、薄い可撓性材料の細いストリップとして実装される。適切な材料の例は、ガラス繊維ロッドである。板は、解放されると各セクション内で、後述するようにヒンジリンク機構23に押し付けられるように、座屈されている(予荷重されている)。
【0029】
バネ24の他の可能な実施形態は、ねじりバネ、ねじりロッド、または圧縮バネである。展開中に一定のバネ力を加える様々な受動的機構を使用することができる。
【0030】
図示されていないが、展開を制御するためには、様々なダンパ機構が望ましい場合がある。界面における単一のダンパで十分であり得る。
【0031】
トラス25は図3には示されていないが、マスト10が展開されていないとき、緩んだ(張力がかかっていない)状態にある。トラス25は、可撓性ストリップ、ケーブル、ワイヤ、コード、もしくはロッド、または展開中のバネ24の力に応答して弛んだ状態から張力をかけることができる他の可撓性の細長い材料で実装されてもよい。この張力は、上部および下部セクションおよびリンク機構によって形成された平行四辺形を横切って対角線上に加えられる。軸方向に剛性でバネ板よりも短い板などの可撓性ストリップまたはカーボンコードは有利であり得る。
【0032】
図4は、展開中のマスト10を示す。ヒンジリンク機構23は、マスト10のこの折り畳みおよび展開を可能にする。具体的には、ヒンジリンク機構23がマストが展開するにつれて、平行四辺形(上部及び下部長尺体によって形成される)がそれらの閉じた折り畳まれた形状から、より開いた長方形の形状に形状を変化させることを可能にする。
【0033】
図4において特に興味深いのは、バネ24およびトラス25の動作である。マスト10は、バネ24が解放され、マスト10を押し出して基地局(衛星または他のもの)へのその取り付け点から離れるように作動されている。折り畳み中にバネ24に蓄積された弾性エネルギーは、展開力を提供する。この状態では、対角線25は依然としてたるんでいる。ヒンジリンク機構23は展開中、マスト10を真っ直ぐに保ち、その角度を一致させる。
【0034】
図5は、図4の後のある時点での展開中のマスト10の中間展開の別の図である。展開のこの段階において、バネ24は、その展開力を継続する。トラスの対角線25は、依然として緩んでいる。ヒンジリンク機構23はマスト10のセクションを一列に保ち、展開を同期させ、決定論的に保ち続ける。
【0035】
図6および図7は、図5の谷(図6)および山(図7)の詳細図である。ヒンジリンク機構23については、以下に詳細に説明する。
【0036】
図8は、完全に展開したマスト10の一部を示す。バネ24は、マスト10の各セクションに力を加え続ける。対角線25は、バネ24の力の結果として張力を受けるようになっている。リンク機構23内のスロップ(Slop)は対角線25がマスト10の端位置部を制御し、張力をかけられたマスト10を作り出すことを可能にする。
【0037】
ヒンジリンク機構23は、ソーラーアレイが展開されると、その動作上の役割が終了するという意味で、展開中にのみ「アクティブ」である。展開中、ヒンジリンク機構23は均一な展開を提供するが、マストが展開されると、それらは構造的に不可視である。
【0038】
図9は、ヒンジリンク機構23の一例を示す。ここで、マスト10は展開状態にあり、対角線25は上述のように張力をかけられる。各セクションの長尺体21および22は完全に離間しており、それらが形成する平行四辺形は、平坦からより長方形に開いている。ヒンジリンク機構23は、マスト10のこの展開状態では「v」字形に開いている。
【0039】
図9の実施形態では、各ヒンジリンク機構23がマスト10の隣接する部分の2つの隣接する長尺部を接続する第1のヒンジ91を有する。第2のヒンジ92は、他の2つの隣接する長尺体を接続する。ここで、ヒンジ91は2つの下部長尺体22を接続し、ヒンジ92は、2つの上部長尺体21を接続する。しかしながら、前述の図に示されるように、ヒンジリンク機構23はヒンジ91とヒンジ92とが交互に上側および下側の長尺体を接続するように、部間でそれらの向きが交互に変わる。この構成は、マスト10が上述のように折り畳まれることを可能にする。
【0040】
ヒンジ91は旋回ヒンジであり、わずかにオフセットされて、その2つの長尺体が互いに折り畳まれることを可能にする。ヒンジ92はまた、マスト10が折り畳まれたときにその2つの長尺体が離間することを可能にするオフセットヒンジ(ヒンジ91よりもオフセットが大きい)であり、その結果、これらの2つの長尺体は、隣接する部の他の2つの長尺体の外側で折り畳まれる。長尺体のこの平坦化およびアコーディオン折り畳みは、図2および3に関連して上に示されている。
【0041】
ヒンジリンク機構23はさらに、2対のリンク機構アーム93を有する。リンク機構アーム93は、ヒンジリンク機構23の「v」形状を形成する。全てのリンク機構アーム93は、ヒンジ91に一端で取り付けられ、ヒンジリンク機構23のv字形状の頂点から延びる。アーム93の一方の対はヒンジ91から対向する長尺体の一方に延在し、アーム93の他方の対は対向する長尺体の他方に延在し、全て、オフセットヒンジ92付近の点でそれぞれの長尺体に接続するように延在する。
【0042】
再び上記の図を参照すると、ヒンジリンク機構23はマスト10のセクション間で交互に、そのv字形が上下になるように配向される。
【0043】
図10は、バネ及びヒンジリンク機構の別の実施例を有するマスト10を示す。バネ124および/またはヒンジリンク機構123は、上述のマスト10と共に使用されてもよい。
【0044】
図9の実施形態と同様に、各ヒンジリンク機構123は、マスト10の隣接するセクションの2つの隣接する長尺体を接続する第1のヒンジ111を有する。第2のヒンジ112は、他の2つの隣接する長尺体を接続する。ここで、ヒンジ111は2つの下部長尺体22を接続し、ヒンジ112は、2つの上部長尺体22を接続する。ヒンジリンク機構23と同様に、ヒンジリンク機構123はヒンジ111とヒンジ112とが交互に上部長尺体と下部長尺体とを接続するように、セクション間の向きが交互に変わる。
【0045】
ヒンジ111は旋回ヒンジであり、わずかにオフセットされて、その2つの長尺体が互いに折り畳まれることを可能にする。ヒンジ112はまた、隣接するセクションの2つの他の長尺体の外側で2つの長尺体が折り畳まれることを可能にするオフセットヒンジである。この構成は、マスト10が上述のようにアコーディオン折り畳まれることを可能にする。
【0046】
ヒンジリンケージ103は、再びv字形である。そのリンクアーム116はヒンジ112および上部長尺体21から下部長尺体22まで延びており、下部長尺体22の連結点は、ヒンジ111からオフセットしている。
【0047】
ヒンジリンク機構23と同様に、ヒンジリンク機構103は、v字形がマストのセクション間で交互に上下するように配向される。しかしながら、この実施形態では、リンクアーム116に取り付けられた上部長尺体21の端部がヒンジリンク機構123のv字形に折り畳まれる。この折り曲げ方向は、図10の矢印によって示されている。
【0048】
各セクションは長尺体21と22との間に取り付けられた2つのバネ124を有し、1つは長尺体の各側にある。これらのバネ124は、それらの対角線端部ではなく、長尺体の中間点のより近くに取り付けられる。他の全ての実施形態と同様に、バネ24は展開中に上部長尺体21及び下部長尺体22を押し離し、対角線125に張力をかけるように機能する。
【0049】
他の実施形態と同様に、トラス125は、1つのセクションのヒンジ111から次のセクションのヒンジ111に斜めに取り付けられる。トラス125の交互の対角パターンは、ヒンジリンク機構123の交互の向きによって維持される。
【0050】
図11は、ヒンジ連結部133がv字形ではなくx字形であるマスト10の実施形態を示す。連結アーム134は、長尺体間で交差している。連結アーム134の端部は、マストの頂部および底部の両方において、長尺体間のヒンジからオフセットされる。
【0051】
他の実施形態と同様に、ヒンジリンク機構133の1つのヒンジ135は、2つの取り付けられた長尺体が折り畳まれることを可能にする。ヒンジリンケージ133の他方のヒンジ136はオフセットヒンジであり、上述のように、その2つの取り付けられた長尺体が互いに対して折り畳まれることを可能にする。トラス135は、対向する対角ヒンジ125に取り付けられる。
【0052】
要するに、マスト10は、機械的に決定論的な受動的に展開される支持構造を可能にする。展開は、マストに使用されるセクションの数に関係なく、内部的に同期される。マストは、サイズ、幾何学的形状、搭載物の質量、ソーラーパネルの量、ルートアタッチメント、および展開力において容易に拡張可能である。
【0053】
図12は、展開がバネではなくモータを使用して達成されるマストの実施形態を示す。この実施形態は展開が開始されると、展開が自己作動し、展開中に基地局(宇宙船など)からの外部制御を必要としないという意味で、上記の実施形態と同様である。
【0054】
具体的には、マスト100がヒンジリンク機構23に設置されたモータ101を有する。図12の例では、モータ101が上部長尺体21に対してヒンジリンク機構23を回転させ、したがって、2つのセクションを作動させる。代替的に又は追加的に、モータを使用して、下部長尺体22を回転させることができる。あるいは、モータが全てのヒンジリンク機構23に配置することができる。一般に、少なくとも1つおきのヒンジリンク機構23を回転させるために、モータ101を用いて展開が達成され得ることが期待される。
【0055】
上述の実施形態のように、最初の解放またはトリガが、展開を開始するために使用されるが、その後、マストは自己展開する。例えば、モータ101は機構がリミットスイッチに当たるまで動作し、次いで、電力を停止するラッチ回路に電力供給されてもよい。スイッチロジックはモータ101を駆動するために使用することができ、やはり、展開の制御を助けるために基地局を必要としない。モータ101は、電気モータに給電するために使用される任意の従来の手段によって給電されてもよい。
【0056】
展開中、モータ101は、ヒンジリンク機構123にトルクを提供する。上述のバネと同様に、モータ101はヒンジリンク機構123を開き、対角線25に張力を生成する。
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図12