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特開2024-178154胎児ヘモグロビンを増加させ、且つ鎌状赤血球症を処置するための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178154
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】胎児ヘモグロビンを増加させ、且つ鎌状赤血球症を処置するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20241217BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241217BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20241217BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20241217BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20241217BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20241217BHJP
   C12N 9/99 20060101ALI20241217BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20241217BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20241217BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20241217BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20241217BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20241217BHJP
   C07K 16/40 20060101ALI20241217BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20241217BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20241217BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20241217BHJP
【FI】
C12N15/113 130Z
A61K45/00
A61K38/46
A61K31/7105
A61P7/06
C12N15/09 110
C12N9/99
C12N15/11 Z
C12N15/85 Z
C12N15/86 Z
C12N15/864 100Z
C12N5/078
C07K16/40
C07K16/18
A61K38/43
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024133291
(22)【出願日】2024-08-08
(62)【分割の表示】P 2021527930の分割
【原出願日】2019-11-20
(31)【優先権主張番号】62/769,796
(32)【優先日】2018-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.PLURONIC
3.CREMOPHOR
(71)【出願人】
【識別番号】520117639
【氏名又は名称】フルクラム セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ラール,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】カカーチェ,アンジェラ
(72)【発明者】
【氏名】キャメロン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】カクマヌ,アクシャイ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】細胞における胎児ヘモグロビン(HbF)のレベルを増加させる方法、および鎌状赤血球症及びβサラセミアなど、機能性成人ヘモグロビン(HbA)の減少した量に関連するものを含む血液細胞疾患に罹患している患者を処置するための方法を提供する。
【解決手段】真核細胞における胎児ヘモグロビン(HbF)の発現を増加させるための方法であって、細胞を、HbF発現を調節するように機能する標的タンパク質又は標的タンパク質複合体の阻害剤と接触させることを含む、方法である。任意選択で、前記標的タンパク質は、カリン3(CUL3)又はスペックルタイプPOZタンパク質(SPOP)である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞、任意選択で真核細胞における胎児ヘモグロビン(HbF)の発現を増加させるための方法であって、細胞を、HbF発現を調節するように機能する標的タンパク質又は標的タンパク質複合体の阻害剤と接触させることを含み、任意選択で、前記標的タンパク質は、カリン3(CUL3)又はスペックルタイプPOZタンパク質(SPOP)である、方法。
【請求項2】
前記標的タンパク質は、CUL3である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的タンパク質は、SPOPである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記HbFは、ヘモグロビンガンマ及びヘモグロビンアルファを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ヘモグロビンガンマは、ヘモグロビンガンマG1(HBG1)及び/又はヘモグロビンガンマG2(HBG2)を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記標的タンパク質又はタンパク質複合体は、表5に列挙される分子シグナル伝達経路を介してHbF発現を調節する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記分子シグナル伝達経路は、グルカゴンシグナル伝達経路、炭素代謝、オキシトシンシグナル伝達、解糖、糖新生、内分泌抵抗、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)シグナル伝達、卵母細胞減数分裂、脂肪酸分解及び一過性受容体電位(TRP)チャネルの炎症性メディエーター調節からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記標的タンパク質は、表1又は表2に列挙されるものから選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記標的タンパク質は、HbF発現を調節する多重タンパク質複合体と永久的又は一時的に会合される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記多重タンパク質複合体は、表3又は表4に列挙されるものから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
CUL3は、前記多重タンパク質複合体と永久的又は一時的に会合される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記多重タンパク質複合体は、D(4)ドーパミン受容体(DRD4)-Kelch様タンパク質12(KLH12)-CUL3、ユビキチンE3リガーゼ、コイルドコイルドメイン含有タンパク質22(CCDC22)-COMMドメイン含有タンパク質8(COMMD8)-CUL3又はカリン関連NEDD8解離タンパク質(CAND1)-CUL3-E3ユビキチンタンパク質リガーゼRBX1(RBX)から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
SPOPは、前記多重タンパク質複合体と永久的又は一時的に会合される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項14】
前記多重タンパク質複合体は、ユビキチンE3リガーゼ複合体である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記阻害剤は、前記標的タンパク質又は前記タンパク質複合体中のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を標的とするか又はそれに結合し、それにより前記標的タンパク質又は前記タンパク質複合体中のタンパク質の発現を阻害又は防止する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記標的タンパク質又は前記タンパク質複合体中の前記タンパク質をコードする前記ヌクレオチド配列は、DNAである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記標的タンパク質又は前記タンパク質複合体中の前記タンパク質をコードする前記ヌクレオチド配列は、RNAである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ヌクレオチド配列は、CUL3をコードし、且つ任意選択で、配列番号108のアミノ酸配列又はそのアンチセンス配列をコードする核酸を含むか又はそれからなる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ヌクレオチド配列は、SPOPをコードし、且つ任意選択で、配列番号109のアミノ酸配列又はそのアンチセンス配列をコードする核酸を含むか又はそれからなる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記阻害剤は、小分子、核酸、ポリペプチド及び核タンパク質複合体からなる群から選択される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記核酸は、DNA、RNA、shRNA、siRNA、マイクロRNA、gRNA及びアンチセンスオリゴヌクレオチドからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリペプチドは、タンパク質、ペプチド、タンパク質模倣体、ペプチド模倣体、抗体又はその機能的断片及び抗体-薬物コンジュゲート又はその機能的断片からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記核タンパク質複合体は、
a)標的配列に特異的に結合するガイドRNA(gRNA)を含む第1の配列であって、前記標的配列は、HbF発現のレギュレーターを含む、第1の配列、及び
b)CRISPR-Casタンパク質をコードする第2の配列であって、前記CRISPR-Casタンパク質は、DNAヌクレアーゼ活性を含む、第2の配列
を含むリボ核タンパク質複合体(RNP)である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞は、血液細胞である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記血液細胞は、赤血球である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
細胞を前記接触させることは、インビトロ、インビボ、エクスビボ又はインサイチューで行われる、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
胎児ヘモグロビン(HbF)の発現の増加を、それを必要とする対象において行うための医薬組成物であって、
HbF発現を調節するように機能する標的タンパク質又はタンパク質複合体の阻害剤と、
希釈剤、賦形剤及び担体と
を含み、それを必要とする対象への送達のために処方される、医薬組成物。
【請求項28】
前記阻害剤は、小分子である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記小分子阻害剤は、CUL3を標的とする、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記CUL3小分子阻害剤は、MLN4924、スラミン及びDI-591からなる群から選択される、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記阻害剤は、核酸である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記核酸は、DNA、RNA、shRNA、siRNA、マイクロRNA、gRNA及びアンチセンスオリゴヌクレオチドから選択される、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記阻害剤は、ポリペプチドである、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記ポリペプチドは、タンパク質、ペプチド、タンパク質模倣体、ペプチド模倣体、抗体又はその機能的断片及び抗体-薬物コンジュゲート又はその機能的断片から選択される、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記ポリペプチドは、HbF発現のレギュレーターに特異的に結合する、請求項33又は34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記阻害剤は、
a)標的配列に特異的に結合するガイドRNA(gRNA)を含む第1の配列であって、前記標的配列は、HbF発現のレギュレーターを含む、第1の配列、及び
b)CRISPR-Casタンパク質をコードする第2の配列であって、前記CRISPR-Casタンパク質は、DNAヌクレアーゼ活性を含む、第2の配列
を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記gRNAは、前記HbF発現のレギュレーターをコードする遺伝子に結合する、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記標的配列は、表1、3~4及び6~7のいずれか1つに列挙される、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記標的配列は、CUL3である、請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記標的配列は、SPOPである、請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記gRNAは、表2に開示される配列のいずれか1つ若しくはその断片又は上記のもののいずれかのアンチセンス配列を含む、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項42】
前記gRNAは、CUL3をコードする遺伝子に結合し、且つ任意選択で、GAGCATCTCAAACACAACGA(配列番号94)、CGAGATCAAGTTGTACGTTA(配列番号95)又はTCATCTACGGCAAACTCTAT(配列番号96)を含むか又はそれからなる、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項43】
前記gRNAは、SPOPをコードする遺伝子に結合し、且つ任意選択で、TAACTTTAGCTTTTGCCGGG(配列番号91)、CGGGCATATAGGTTTG
TGCA(配列番号92)又はGTTTGCGAGTAAACCCCAAA(配列番号93)を含むか又はそれからなる、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記gRNAを含む前記第1の配列は、真核細胞において前記gRNAを発現することができるプロモーターをコードする配列を含む、請求項36又は37に記載の医薬組成物。
【請求項45】
前記CRISPR-Casタンパク質を含む前記第2の配列は、真核細胞において前記CRISPR-Casタンパク質を発現することができる配列を含む、請求項36又は37に記載の医薬組成物。
【請求項46】
前記真核細胞は、哺乳動物細胞である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法又は請求項44若しくは45に記載の医薬組成物。
【請求項47】
前記真核細胞は、血液細胞である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法又は請求項44~46のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項48】
前記真核細胞は、赤血球である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法又は請求項44~46のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項49】
前記阻害剤は、ベクターを介して送達される、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記ベクターは、ウイルスベクターである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)から単離又は誘導された配列を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
ヘモグロビンタンパク質活性又は発現の欠陥に関連する疾患又は障害を処置する方法であって、それを必要とする対象に、請求項27~51のいずれか一項に記載の組成物を提供することを含む方法。
【請求項53】
前記疾患又は障害は、血液障害である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記血液障害は、鎌状赤血球症、βサラセミア、β中間型サラセミア、βサラセミアメジャー、βサラセミアマイナー及びクーリー貧血からなる群から選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
ヘモグロビンタンパク質は、ヘモグロビン-アルファ及びヘモグロビン-ベータから選択される、請求項52~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記ヘモグロビンタンパク質活性又は発現の前記欠陥は、前記ヘモグロビンタンパク質をコードするヌクレオチド配列に対する突然変異、置換、欠失、挿入、フレームシフト、逆位又は転位から生じる、請求項52~55のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[1] 本出願は、2018年11月20日に出願された米国仮出願第62/769,7
96号の利益及びそれに対する優先権を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表に関する陳述
[2] 本出願に関連する配列表は、紙コピーの代わりにテキスト形式で提供され、参照
により本明細書に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名称は、FULC_033_01WO_ST25.txtである。テキストファイルは、33KBであり、2019年11月20日に作成され、EFS-Webを介して電子的に提出されている。
【0003】
開示の分野
[3] 本開示は、赤血球系細胞における胎児ヘモグロビン(ヘモグロビンγ(HBγ)
又はHbF)発現を誘導する標的、組成物及び方法に関する。本開示は、HbFタンパク質の上昇した発現が、突然変異若しくは欠陥ヘモグロビンβ(HBB)遺伝子、突然変異若しくは欠陥HBBタンパク質又はHBBタンパク質レベルの変化を補償することができるものを含む、鎌状赤血球症(SCD)又はβサラセミアなどの血液細胞障害に関連する疾患に罹患している患者を処置するための方法にさらに関する。
【背景技術】
【0004】
背景
[4] ヘモグロビンは、脊椎動物の全身の酸素輸送に関与する重要なタンパク質である
。ヘモグロビンは、赤血球にみられ、2つのαサブユニット及び2つのβ様サブユニットからなる。ヘモグロビンの組成は、発生的に調節されており、ヒトゲノムは、これらのタンパク質の複数のバージョンをコードしており、これらは、異なる発生段階中に発現される(Blobel et al, Exp Hematol 2015;Stamatoyannopoulos G, Exp Hematol 2005)。一般に、胎児ヘモグロビン(HbF)は、ヘモグロビンγ(HBγ)の2つのサブユニット及びヘモグロビンα(HBα)の2つのサブユニットから構成され、成人ヘモグロビン(HbA)は、ヘモグロビンβ(HBβ)の2つのサブユニット及びHBαの2つのサブユニットから構成される。このように、発生の胎児期に利用されるβ様サブユニット(HBγ)は、出生後にヘモグロビンβ(HBβ)にスイッチする。
【0005】
[5] β様サブユニットの発現の発生的調節は、何十年にもわたって精力的な研究の焦
点となっている(Li et al. Blood 2002)。ヒトの5つのβ様サブユニットは、全て第11染色体上に存在し、そのゲノム上の位置は、その時間的発現パターンに対応する。遺伝子座制御領域(LCR)と呼ばれるエンハンサー要素の遠位クラスターは、βグロビン遺伝子座における発現パターンを調整し、そこでは、GATA1、GATA2、KLF1、KLF2及びMYB並びにTALIを含む複数の転写因子が発生の特定の時期にLCR内の特定の位置に結合する。5つのヒトβ様サブユニットは、イプシロン(HBE1;ε)、ガンマG(HBG2;γ)、ガンマA(HBG1;γ)、デルタ(HBD;δ)及びベータ(HBB;β)である。HBE1遺伝子は、胚発生中に発現し、HBG1及びHBG2遺伝子は、胎児発生中に発現し、HBD及びHBB遺伝子は、成人で発現する。HBG1及びHBG2遺伝子は、136残基の単一アミノ酸変化(HBG1=gly;HBG2=ala)を除いて同一のタンパク質をコードする。鎌状赤血球症(SCD)及びβサラセミアのような赤血球疾患は、ヘモグロビンβ(HBβ)サブユニットの遺伝子内の変化
によって引き起こされる。
【0006】
[6] SCDは、世界中で何百万人もの人々が罹患し、米国で最も一般的な遺伝性血液
障害である(米国人70,000~80,000)。SCDは、アフリカ系米国人での発生率が高く、500人に1人の割合で発生すると推定されている。SCDは、HbSと呼ばれる突然変異ヘモグロビンタンパク質がもたらされる、HBB遺伝子(E6V)の両方のコピーにおける単一のホモ接合突然変異を原因とする常染色体劣性遺伝病である(https://ghr.nlm.nih.gov/condition/sickle-cell-disease)。脱酸素条件下では、HbSタ
ンパク質は、重合し、これは、異常な赤血球形態をもたらす。この異常な形態は、血管閉塞、疼痛クリーゼ、肺高血圧症、器官損傷及び脳卒中を含む複数の病理学的症状につながる可能性がある。
【0007】
[7] βサラセミアは、HBB遺伝子の突然変異によって引き起こされ、ヘモグロビン
産生の低下をもたらす(https://ghr.nlm.nih.gov/condition/beta-thalassemia)。HBB遺伝子の突然変異は、典型的には、成人のβグロビンタンパク質の産生を減少させ、その結果、成人のヘモグロビンであるHbAが低いレベルとなる。そのため、赤血球が不足し、全身への酸素分布が不足する。βサラセミアの患者は、脱力感、疲労感を有することがあり、異常な血栓を生じるリスクがある。毎年数千人の乳児がβサラセミアを有して誕生しており、症状は、典型的には、生後2年以内に検出される。
【0008】
[8] 胎児ヘモグロビンのアップレギュレーションは、SCDにおける突然変異HbS
タンパク質又はβサラセミアにおけるHbAの欠如を補償することができるため、胎児ヘモグロビンの発現を調節する因子の同定は、SCD及びβサラセミアの処置の有用な標的となり得る。β様グロビン発現は、発生的に調節されており、胎児のオルソログ(γ)の減少は、出生直後に起こり、成人のオルソログ(β)の増加と同時に起こることから、抗鎌状化γオルソログの発現を維持することは、小児及び成人の両方において治療的に有益な可能性があると仮定されている。HBβの胎児オルソログであるヘモグロビンγ(HBγ)は、必要なヘモグロビンαサブユニットとも複合体を形成することにより、これらの障害における疾患関連病態生理を逆転させることができる(Paikari and Sheehan, Br J Haematol 2018;Lettre and Bauer, Lancet 2016)。胎児ヘモグロビンタンパク質の発現は、HbS重合及び形態学的欠陥赤血球の阻害を介してSCDの病態生理を逆転させることができる。機能的には、HBG1又はHBG2遺伝子のいずれかのアップレギュレーションは、突然変異又は欠陥のある成人HBβを補償することができる。臨床及び前臨床研究に基づいて、ヘモグロビンγ(HBγ)のアップレギュレーションは、パルモリドミド(Palmolidomide)及びヒドロキシ尿素を含む化合物並びにEHMT1/EHMT2及び
LSD1を含む標的について提案された機構である(Moutouh-de Parseval et al. J Clin Invest 2008;Letvin et al. NEJM 1984;Renneville et al. Blood 2015;Shi et al.
Nature Med 2015)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
[9] HbFタンパク質の上昇した発現が突然変異又は欠陥ヘモグロビンβ(HBβ)
遺伝子を補償することができるものを含む、鎌状赤血球症(SCD)及びβサラセミアなどの血液細胞障害の重篤度及び効果的な処置の欠如を考慮すると、これらの障害の新しい処置方法が明らかに必要とされている。本開示は、これらの障害の処置のためにHbFを増加させるための新規な治療剤及び方法を提供することにより、この必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
[10] 本開示は、部分的には、赤血球系細胞における胎児ヘモグロビン(ヘモグロビン
γ(HBγ)又はHbF)発現を誘導するための新規標的の同定に基づく。本開示は、鎌状赤血球症(SCD)又はβサラセミアなどの血液細胞障害に関連する疾患に罹患している患者を処置するための方法にさらに関する。
【0011】
[11] 一実施形態において、本開示は、細胞における胎児ヘモグロビン(HbF)の発現を増加させるための方法であって、細胞を、HbF発現を調節するように機能する標的タンパク質又はタンパク質複合体の阻害剤と接触させることを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、HbFは、ヘモグロビンガンマ及びヘモグロビンアルファを含む。いくつかの実施形態では、ヘモグロビンガンマは、ヘモグロビンガンマG1(HBG1)及び/又はヘモグロビンガンマG2(HBG2)を含む。特定の実施形態では、標的タンパク質又はタンパク質複合体は、表5に列挙される分子シグナル伝達経路を介してHbF発現を調節する。特定の実施形態では、分子シグナル伝達経路は、グルカゴンシグナル伝達経路、炭素代謝、オキシトシンシグナル伝達、解糖、糖新生、内分泌抵抗、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)シグナル伝達、卵母細胞減数分裂、脂肪酸分解及び一過性受容体電位(TRP)チャネルの炎症性メディエーター調節からなる群から選択される。特定の実施形態では、標的タンパク質は、CUL3である。特定の実施形態では、標的タンパク質は、SPOPである。特定の実施形態では、標的タンパク質は、表1、表2、表3、表4、表5、表6又は表7に列挙されるものから選択される。特定の実施形態では、ヒットは、他の組織及び細胞型に対して、全血において濃縮された発現を示す。特定の実施形態では、標的タンパク質(又はヒット)は、後期赤血球系細胞において発現されるか又は表7に列挙される。いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、HbF発現を調節する多重タンパク質複合体と永久的又は一時的に会合される。いくつかの実施形態では、多重タンパク質複合体は、表3又は表4に列挙されるものから選択され、及び標的は、表3又は表4に列挙されるものから選択される。特定の実施形態では、CUL3は、多重タンパク質複合体と永久的又は一時的に会合される。特定の実施形態では、多重タンパク質複合体は、D(4)ドーパミン受容体(DRD4)-Kelch様タンパク質12(KLH12)-CUL3、ユビキチンE3リガーゼ、コイルドコイルドメイン含有タンパク質22(CCDC22)-COMMドメイン含有タンパク質8(COMMD8)-CUL3又はカリン関連NEDD8解離タンパク質(CAND1)-CUL3-E3ユビキチンタンパク質リガーゼRBX1(RBX)から選択される。特定の実施形態では、SPOPは、多重タンパク質複合体と永久的又は一時的に会合される。特定の実施形態では、多重タンパク質複合体は、ユビキチンE3リガーゼ複合体である。特定の実施形態では、阻害剤は、標的タンパク質又はタンパク質複合体をコードするヌクレオチド配列を標的とし、それにより標的タンパク質又はタンパク質複合体の発現を阻害又は防止する。いくつかの実施形態では、標的タンパク質又はタンパク質複合体をコードするヌクレオチド配列は、DNA又はRNAである。特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、CUL3をコードし、且つ任意選択で、配列番号108のアミノ酸配列をコードする核酸を含むか又はそれからなる。特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、SPOPをコードし、且つ任意選択で、配列番号109のアミノ酸配列をコードする核酸を含むか又はそれからなる。いくつかの実施形態では、阻害剤は、標的タンパク質又は標的タンパク質をコードする遺伝子若しくはrtiRNAなど、標的タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列に結合する小分子、核酸、ポリペプチド及び核タンパク質複合体からなる群から選択される。阻害剤又は標的タンパク質は、標的タンパク質を直接阻害することにより、例えば標的タンパク質に結合することにより、又は標的タンパク質の発現を阻害することにより、例えば標的タンパク質をコードするポリヌクレオチドに結合することにより、標的タンパク質を阻害し得ることが理解されるべきである。いくつかの実施形態では、核酸は、DNA、RNA、shRNA、siRNA、マイクロRNA、gRNA及びアンチセンスオリゴヌクレオチドから選択される。特定の実施形態では、ポリペプチドは、タンパク質、ペプチド、タンパク質模倣体、ペプチド模倣体、抗体又はその機能的断片及び抗体-薬物コンジュゲート又はその機能的断片から選択される。特定の実施形態では、核タンパク質複合体は、a
)標的配列に特異的に結合するガイドRNA(gRNA)を含む第1の配列であって、標的配列は、HbF発現のレギュレーターを含む、第1の配列、及びb)CRISPR-Casタンパク質をコードする第2の配列であって、CRISPR-Casタンパク質は、DNAヌクレアーゼ活性を含む、第2の配列を含むリボ核タンパク質複合体(RNP)である。特定の実施形態では、細胞は、血液細胞、例えば赤血球である。特定の実施形態では、細胞を接触させることは、インビトロ、インビボ、エクスビボ又はインサイチューで行われる。
【0012】
[12] 関連する実施形態において、本開示は、胎児ヘモグロビン(HbF)の発現を増加させるための医薬組成物であって、HbF発現を調節するように機能する標的タンパク質又はタンパク質複合体の阻害剤と、希釈剤、賦形剤及び担体とを含み、それを必要とする患者への送達のために処方される医薬組成物を提供する。特定の実施形態では、阻害剤は、小分子、核酸、例えばDNA、RNA、shRNA、siRNA、マイクロRNA、gRNA若しくはアンチセンスオリゴヌクレオチド又はポリペプチド、例えばタンパク質、ペプチド、タンパク質模倣体、ペプチド模倣体、抗体若しくはその機能的断片又は抗体-薬物コンジュゲート若しくはその機能的断片である。いくつかの実施形態では、小分子阻害剤は、CUL3を標的とする。いくつかの実施形態では、CUL3小分子阻害剤は、MLN4924、スラミン又はDI-591から選択される。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、HbF発現のレギュレーターに特異的に結合する。特定の実施形態では、阻害剤は、a)標的配列に特異的に結合するガイドRNA(gRNA)を含む第1の配列であって、標的配列は、HbF発現のレギュレーターを含む、第1の配列、及びb)CRISPR-Casタンパク質をコードする第2の配列であって、CRISPR-Casタンパク質は、DNAヌクレアーゼ活性を含む、第2の配列を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である。特定の実施形態では、gRNAは、HbF発現のレギュレーターをコードする遺伝子に結合する。特定の実施形態では、標的配列は、表1、3~4又は6~7のいずれかに列挙される。いくつかの実施形態では、gRNAは、表2の標的若しくは配列のいずれか1つ又はその断片或いは標的配列又はその断片のアンチセンス配列を含む。いくつかの実施形態では、標的配列は、CUL3である。いくつかの実施形態では、標的配列は、SPOPである。いくつかの実施形態では、gRNAは、表2に開示される配列のいずれか1つを含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、CUL3をコードする遺伝子に結合し、且つ任意選択で、GAGCATCTCAAACACAACGA(配列番号94)、CGAGATCAAGTTGTACGTTA(配列番号95)又はTCATCTACGGCAAACTCTAT(配列番号96)を含むか又はそれからなる。いくつかの実施形態では、gRNAは、SPOPをコードする遺伝子に結合し、且つ任意選択で、TAACTTTAGCTTTTGCCGGG(配列番号91)、CGGGCATATAGGTTTGTGCA(配列番号92)又はGTTTGCGAGTAAACCCCAAA(配列番号93)を含むか又はそれからなる。特定の実施形態では、gRNAを含む第1の配列は、真核細胞においてgRNAを発現することができるプロモーターをコードする配列を含む。いくつかの実施形態では、CRISPR-Casタンパク質を含む第2の配列は、真核細胞、例えば哺乳動物細胞、例えば血液細胞、例えば赤血球においてCRISPR-Casタンパク質を発現することができる配列を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、ベクター、例えばAAVなどのウイルスベクターを介して送達される。
【0013】
[13] 別の関連する実施形態において、本開示は、ヘモグロビンタンパク質活性又は発現の欠陥に関連する疾患又は障害を処置する方法であって、それを必要とする対象に、本明細書に開示される組成物を提供することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、疾患又は障害は、血液障害、例えば鎌状赤血球症、βサラセミア、β中間型サラセミア、βサラセミアメジャー、βサラセミアマイナー及びクーリー貧血である。いくつかの実施形態では、ヘモグロビンタンパク質は、ヘモグロビン-アルファ及びヘモグロビン-ベータから選択される。特定の実施形態では、ヘモグロビンタンパク質活性又は発現の欠
陥は、ヘモグロビンタンパク質をコードするヌクレオチド配列に対する突然変異、置換、欠失、挿入、フレームシフト、逆位又は転位から生じる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図面の簡単な説明
図1】[14]CRISPRプールスクリーニングサンプル収集プロセスを詳述する概略図である。サンプルをピューロマイシン選択(1)後、FAC選別(2)前及びHbF高細胞についての選別(3)後に収集した。
図2】[15]ライブラリー#1を用いたCRISPRスクリーニングからのFACS選別プロットを提供する。FACプロットは、対照gGFP(ダークグレー)及びCRISPRライブラリー#1(ライトグレー)を有するHUDEP2細胞について示される。左のパネルは、各事象についてのHbF(X軸)及びβ-アクチン(Y軸)のレベルをプロットし、線「L」は、HbF高細胞のHbF閾値を示す。右のパネルは、HbFレベル(X軸)及び事象(Y軸)を示す一次元プロットにおける同じデータを表し、線「C」は、HbF高細胞のHbF閾値を示す。HbF閾値を超えるいかなる細胞もHbF高集団で収集された。
図3】[16]ライブラリー#2を用いたCRISPRスクリーニングからのFACS選別プロットを提供する。FACプロットは、対照sgGFP(ダークグレー)及びCRISPRライブラリー#2(ライトグレー)を有するHUDEP2細胞について示される。左のパネルは、各事象についてのHbF(X軸)及びβ-アクチン(Y軸)のレベルをプロットし、線「L」は、HbF高細胞のHbF閾値を示す。右のパネルは、HbFレベル(X軸)及び事象(Y軸)を示す一次元プロットにおける同じデータを表し、線「C」は、HbF高細胞のHbF閾値を示す。HbF閾値を超えるいかなる細胞もHbF高集団で収集された。
図4A】[17]CRISPRスクリーニングデータ:ゲノムアラインメント(左パネル)、ヒット定量化(中央パネル)及びヒット優先順位付け(右パネル)について行われた全てのバイオインフォマティクス解析のリストを詳述する。
図4B】[18]2つの異なるスクリーニングライブラリー(ライブラリー#1、左;ライブラリー#2、右)にわたる異なるサンプルにおけるガイド存在量の分布を示す一連のプロットである。矢印は、入力時、選択後及びHbF+ve(HbF高陽性選別集団)後の所与の存在量レベルを有するガイドの数についてのピークを示す。
図4C】[19]ライブラリー#1についてのサンプルにわたるzスコア差の分布を示すプロットである。四角形は、分化を促進するヒットを示し、三角形は、分化を妨げるヒットを示す。
図5A】[20]初期ライブラリー#1スクリーニングデータにおいて2つ以上の濃縮gRNAを有する全ての遺伝子を示すヒートマップである。
図5B】[21]ライブラリー#1とライブラリー#2との間のオーバーラップを詳細に示すプロットである。三角形は、スクリーニングライブラリーの両方でヒットと呼ばれた遺伝子に対応する。
図5C】[22]Zスコア(y軸)対UBE2H遺伝子座(x軸)を示す例示的なグラフであり、これは、10個の設計されたガイドRNAのうちの4個が、2.5より大きいZスコアを有することを示す。
図6】[23]示された別個の生物学的複合体の各々についてのヒット数を詳述するチャートである。複合体メンバーシップ情報は、CORUMデータベースから取得された。
図7A】[24]全血において濃縮されたCRISPRヒットの発現zスコアを示すヒートマップである(307ヒットのうちの32ヒットが、他の組織及び細胞型に対して全血において高度に濃縮された発現を示す、データ源:GTEx)。全血において高度に濃縮された発現を示す32ヒットを表7に列挙する。
図7B】[25]「後期赤血球系」発現パターンを有するヒットを示すヒートマップである(データ源:DMAP)。「後期赤血球系」発現パターンを有するヒットは、CUL3、SAP130、PRPS1、NAP1L4、GCLC、CUL4A、GCDH、NEK1、HIRA、MST1、SPOP、GOLGA5、AUH、MAST3、CDKN1B、UBR2、MAP4K4、TAF10、HDGF、YWHAE、AMD1、EID1、HIF1AN、CDK8、DCK、FXR2、UQCRC1、TESK2、ADCK2、USP21、CAMK2D、FGFR1、PHC2、UBE2H、BPGM、SIRT2、S1RT3、NFYC及びCPT2を含む。
図7C】[26]例示的な「後期赤血球系」発現パターンを有するUBE2Hの階層的分化ツリーである。
図8A】[27]CRISPR Cas9-RNPに基づく機能喪失を用いてHbF免疫細胞化学(ICC)によって決定されたHbFレベルを示す一連の画像である。Cas9-RNP複合体を増殖中のCD34+細胞に電気穿孔した。次いで、細胞を7日間赤血球系に分化させ、HbF ICCを用いてHbFレベルを定量した。陰性対照、sgBCL11A、sgSPOP及びsgCUL3について、パーセントF細胞(上列)及び平均HbF強度(下列)を定量した。
図8B】[28]shRNAに基づく機能喪失を用いてHbF ICCによって決定されたHbFレベルを示す一連のグラフである。パーセントF細胞を個々のshRNA構築物について、陰性対照、shBCL11A、shSPOP及びshCUL3について定量した。
図8C】[28]shRNAに基づく機能喪失を用いてHbF ICCによって決定されたHbFレベルを示す一連のグラフである。平均HbF強度を個々のshRNA構築物について、陰性対照、shBCL11A、shSPOP及びshCUL3について定量した。
図8D】[28]shRNAに基づく機能喪失を用いてHbF ICCによって決定されたHbFレベルを示す一連のグラフである。パーセントF細胞を個々のshRNA構築物について、陰性対照、shBCL11A、shSPOP及びshCUL3について定量した。
図8E】[28]shRNAに基づく機能喪失を用いてHbF ICCによって決定されたHbFレベルを示す一連のグラフである。平均HbF強度を個々のshRNA構築物について、陰性対照、shBCL11A、shSPOP及びshCUL3について定量した。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
[29] 本発明は、例えば、ヘモグロビンγ(HBγ)の発現を増加させることにより、赤血球系細胞における胎児ヘモグロビン(HbF)を増加させるための標的、組成物及び方法に関する。これは、HbFの上昇をもたらすヘモグロビンγ mRNAレベル(例えば、HBG1又はHBG2)のアップレギュレーション及び/又は胎児ヘモグロビンタンパク質(HBγ)レベルのアップレギュレーションを介して行われ得る。標的、組成物又は方法は、単独で或いはHbFをアップレギュレートするか、又はSCD若しくはβサラセミアの症状(血管閉塞及び貧血を含むが、これらに限定されない)を標的とする別の薬剤と組み合わせて使用され得る。
【0016】
略語
[30] 本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「1つの(a)
」、「1つの(an)」及び「その」は、内容が特に明確に指示しない限り、複数の参照を含む。
【0017】
[31] 本明細書で使用されるように、用語「及び/又は」は、特に指示がない限り、本開示では「及び」又は「又は」のいずれかに使用される。
【0018】
[32] 本明細書全体を通して、文脈が特に要求しない限り、単語「含む(comprise)」又は「含む(comprises)」若しくは「含んでいる」などの変形は、記載された要素、又
は整数、又は要素若しくは整数の群を含むことを示唆するが、任意の他の要素、又は整数、又は要素若しくは整数の群を排除するものではないことが理解される。
【0019】
[33] 本出願で使用されるように、用語「約」及び「ほぼ」は、同等のものとして使用される。約/ほぼを伴う又は伴わない、本出願で使用される任意の数字は、関連する技術分野の当業者によって認識される任意の通常の変動を包含することが意図される。特定の実施形態では、用語「ほぼ」又は「約」は、特に断らない限り又は文脈から明らかでない限り(そのような数が、可能な値の100%を超える場合を除いて)、言及された参照値のいずれかの方向(より大きいか又はより小さい)において25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以内に入る値の範囲を指す。
【0020】
[34] 「投与」は、本明細書では、薬剤若しくは組成物を対象に導入すること又は薬剤若しくは組成物を細胞及び/又は組織と接触させることを指す。
【0021】
方法及び組成物
[35] 一態様において、本開示は、細胞における胎児ヘモグロビン(HbF)の量を増加させるための方法を提供する。特定の実施形態では、本方法は、細胞におけるHbFの1つ以上の成分の発現を増加させることを含む。特定の実施形態では、HbFの成分は、ヘモグロビンγ(HBγ)、例えばヒトヘモグロビンサブユニットガンマ-1(HBG1)又はヒトヘモグロビンサブユニットガンマ-2(HBG2)である。特定の実施形態では、胎児ヘモグロビンの成分は、ヘモグロビンα(HBα)、例えばヒトヘモグロビンサブユニットアルファ-1(HBA1)又はヒトヘモグロビンサブユニットアルファ-2(HBA2)である。特定の実施形態では、HBγ及びHBαの両方の発現が増加する。
【0022】
[36] 特定の実施形態では、胎児ヘモグロビンは、NCBI参照配列:NP_000550.2に記載され、以下に示されるタンパク質配列を有するヒトヘモグロビンサブユニットガンマ-1(HBG1)を含む。
【化1】
【0023】
[37] 特定の実施形態では、HBG1タンパク質は、NCBI参照配列:NM_000559.2に記載され、以下に示されるポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【化2】
【0024】
[38] 特定の実施形態では、胎児ヘモグロビンは、NCBI参照配列:NP_000175.1に記載され、以下に示されるタンパク質配列を有するヒトヘモグロビンサブユニットガンマ-2(HBG2)を含む。
【化3】
【0025】
[39] 特定の実施形態では、HBG2タンパク質は、NCBI参照配列:NM_000184.2、NCBI参照配列:NM_000184.3に記載されるか、又は以下に示されるポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【化4】
【0026】
[40] 特定の実施形態では、胎児ヘモグロビンは、NCBI参照配列:NP_000549.1に記載され、以下に示されるタンパク質配列を有するヒトヘモグロビンサブユニットアルファ-1(HBA1)を含む。
【化5】
【0027】
[41] 特定の実施形態では、HBA1タンパク質は、NCBI参照配列:NM_000558.4、NCBI参照配列:NM_000558.5に記載されるか、又は以下に示されるポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【化6】
【0028】
[42] 特定の実施形態では、胎児ヘモグロビンは、NCBI参照配列:NP_000508.1に記載され、以下に示されるタンパク質配列を有するヒトヘモグロビンサブユニットアルファ-2(HBA2)を含む。
【化7】
【0029】
[43] 特定の実施形態では、HBA2タンパク質は、NCBI参照配列:NM_000517.4、NCBI参照配列:NM_000517.6に記載されるか、又は以下に示されるポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【化8】
【0030】
[44] 特定の実施形態では、胎児ヘモグロビンは、2つのHBG1及び/又はHBG2タンパク質並びに2つのHBA1及び/又はHBA2タンパク質を含む。
【0031】
[45] 本明細書に開示される方法は、インビトロ又はインビボで実施され得る。
【0032】
[46] 本明細書に開示される方法は、細胞を、本明細書に開示される標的遺伝子、mRNA又はタンパク質(集合的に「標的」と呼ばれ得る)の阻害剤と接触させることを含み、標的の阻害は、細胞、例えば赤血球系又は赤血球における胎児ヘモグロビンの量の増加をもたらす。特定の実施形態では、標的の阻害は、細胞におけるHBG1又はHBG2の量の増加をもたらす。特定の実施形態では、Hbγ及び/又はHbFのレベルの増加をもたらすのに有効な量の阻害剤が使用される。特定の実施形態では、本方法は、組織、器官又は生物、例えば哺乳動物を阻害剤と接触させることを含む。特定の実施形態では、各々が同じ又は異なる標的を標的とする1つ以上の阻害剤が使用され得る。
【0033】
[47] 特定の実施形態では、標的遺伝子、mRNA又はタンパク質は、カリン3(CUL3)である。CUL3は、プロテアソーム分解に至る標的タンパク質のユビキチン化を調節する複数のE3ユビキチンリガーゼタンパク質複合体のコア成分である。いくつかの実施形態では、CUL3-E3ユビキチンリガーゼ複合体は、タンパク質輸送、ストレス応答、細胞周期調節、シグナル伝達、タンパク質品質管理、転写及びDNA複製を担う複数の細胞プロセスを調節する。
【0034】
[48] 一態様において、本開示は、CUL3の発現を阻害又は調節することにより、細胞における胎児ヘモグロビン(HbF)の量を増加させるための方法を提供する。
【0035】
[49] 特定の実施形態では、CUL3は、以下のタンパク質配列を含む。
【化9】
【0036】
[50] 特定の実施形態では、標的遺伝子、mRNA又はタンパク質は、スペックルタイプPOZタンパク質(SPOP)である。特定の実施形態では、SPOPは、複数のE3ユビキチンリガーゼ複合体に会合される。
【0037】
[51] 一態様において、本開示は、SPOPの発現を阻害又は調節することにより、細胞における胎児ヘモグロビン(HbF)の量を増加させるための方法を提供する。
【0038】
[52] 特定の実施形態では、SPOPは、以下のタンパク質配列を含む。
【化10】
【0039】
[53] 用語「阻害剤」は、細胞、組織、器官又は対象における標的遺伝子、mRNA及び/又はタンパク質の発現又は活性を阻害する任意の薬剤を指すことができる。細胞における標的mRNA及び/又はタンパク質の発現レベル又は活性は、標的タンパク質の総量を減少させること又は標的タンパク質の1つ以上の活性を阻害することを含むが、これらに限定されない、多様な手段を介して減少され得る。様々な実施形態では、阻害剤は、標的遺伝子、標的mRNA若しくは標的タンパク質の発現を阻害することができ、及び/又は阻害剤は、標的タンパク質の生物学的活性を阻害することができる。特定の実施形態では、生物学的活性は、キナーゼ活性である。例えば、阻害剤は、キナーゼのATP結合部位に競合的に結合し、そのキナーゼ活性を阻害し得るか、又は阻害剤は、キナーゼ活性をアロステリックにブロックし得る。特定の実施形態では、阻害剤は、標的タンパク質の分解の増加を引き起こす。特定の実施形態では、阻害剤は、表1、表2、表6、表7、表8若しくは表9に同定される標的遺伝子若しくはタンパク質のいずれか、又は表3若しくは表4に同定される複合体のいずれかの任意の成分若しくはサブユニット、又は表5に同定される経路を阻害する。標的遺伝子又はポリペプチドの発現レベル又は活性を決定するための方法は、当技術分野で公知であり、例えばRT-PCR及びFACSを含む。
【0040】
[54] 特定の実施形態では、阻害剤は、標的遺伝子、mRNA又はタンパク質の発現又は活性を直接阻害し、例えば、阻害剤は、標的遺伝子、mRNA又はタンパク質に直接結合し得る。いくつかの実施形態では、阻害剤は、標的遺伝子、mRNA又はタンパク質の発現又は活性を間接的に阻害し、例えば、阻害剤は、標的遺伝子、mRNA又はタンパク質(転写因子など)の発現を媒介するタンパク質に結合し、阻害することができるか、又は阻害剤は、標的タンパク質の活性に関与する別のタンパク質(標的タンパク質との複合体中に存在する別のタンパク質など)に結合し、その活性の発現を阻害することができる。
【0041】
[55] 特定の実施形態では、阻害剤は、SPOP又はSPOPが永久的若しくは一時的に会合されるタンパク質複合体を阻害する。特定の実施形態では、タンパク質複合体は、SPOP関連E3ユビキチンリガーゼ複合体である。特定の実施形態では、複合体は、コアヒストンマクロ-H2A.1(H2AFY)、SPOP及びCUL3;DNA損傷結合タンパク質1(DDB1)、DNA損傷結合タンパク質2(DDB2)、カリン-4A(CUL4A)、カリン-4B(CUL4B)及びE3ユビキチンタンパク質リガーゼRBX1(RBX);又はポリコーム複合体タンパク質BMI-1(BMI1)、SPOP及びCUL3;SPOP、デスドメイン関連タンパク質6(DAXX)及びCUL3;コアヒストンマクロ-H2A.1(H2AFY)、SPOP及びCUL3;又はBMI1、SPOP及びCUL3を含む。特定の実施形態では、阻害剤は、これらの複合体のいずれかの1つ以上の成分を阻害する。いくつかの実施形態では、阻害剤は、SPOPの発現を阻害するが、他の実施形態では、阻害剤は、SPOPの活性を阻害する。
【0042】
[56] 特定の実施形態では、阻害剤は、CUL3又はCUL3が永久的若しくは一時的に会合されるタンパク質複合体を阻害する。特定の実施形態では、タンパク質複合体は、CUL3関連E3ユビキチンリガーゼ複合体である。特定の実施形態では、CUL3関連タンパク質複合体は、D(4)ドーパミン受容体(DRD4)-Kelch様タンパク質12(KLH12)-CUL3である。特定の実施形態では、CUL3関連タンパク質複合体は、コイルドコイルドメイン含有タンパク質22(CCDC22)-COMMドメイン含有タンパク質8(COMMD8)-CUL3複合体である。特定の実施形態では、CUL3関連タンパク質複合体は、カリン関連NEDD8解離タンパク質(CAND1)-CUL3-E3ユビキチンタンパク質リガーゼRBX1(RBX1)である。いくつかの実施形態では、複合体は、SPOP、デスドメイン関連タンパク質6(DAXX)及びCUL3;コアヒストンマクロ-H2A.1(H2AFY)、SPOP及びCUL3;DNA損傷結合タンパク質1(DDB1)、DNA損傷結合タンパク質1(DDB2)、カリン-4A(CUL4A)、カリン-4B(CUL4B)及びE3ユビキチン-タンパク質リガーゼRBX1(RBX1);ポリコーム複合体タンパク質BMI-1(BMI1)、SPOP及びCUL3;COP9シグナロソーム複合体サブユニット1(CSN1)、COP9シグナロソーム複合体サブユニット8(CSN8)、YRPWモチーフタンパク質1に関連するヘアリー/エンハンサーオブスプリット(HRT1)、S相キナーゼ関連タンパク質1(SKP1)、S相キナーゼ関連タンパク質2(SKP2)、カリン-1(CUL1)、カリン-2(CUL2)及びカリン-3;CUL3、Kelch様タンパク質3(KLHL3)及びセリン/スレオニン-タンパク質キナーゼWNK4(WNK4);CUL3、KLHL3及びセリン/スレオニン-タンパク質キナーゼWNK1(WNK1);CUL3及びKLHL3を含む。特定の実施形態では、阻害剤は、これらの複合体のいずれかの1つ以上の成分を阻害する。いくつかの実施形態では、阻害剤は、CUL3の発現を阻害するが、他の実施形態では、阻害剤は、CUL3の活性を阻害する。
【0043】
[57] 一実施形態では、細胞、組織、器官又は対象における胎児ヘモグロビンの量を増加させる方法は、細胞、組織、器官又は対象を、細胞における1つ以上の標的遺伝子、mRNA又はタンパク質の量の減少をもたらす薬剤と接触させることを含む。特定の実施形態では、薬剤は、細胞又は組織における1つ以上の標的遺伝子、mRNA又はポリペプチドの発現又は活性を阻害する。特定の実施形態では、薬剤は、1つ以上の標的遺伝子、mRNA又はポリペプチドの分解の増加を引き起こす。特定の実施形態では、細胞又は組織は、細胞又は組織における1つ以上の標的遺伝子、mRNA又はポリペプチドの発現又は活性を減少させるのに有効な量の薬剤と接触する。特定の実施形態では、細胞又は組織は、細胞又は組織における活性標的タンパク質の量を減少させるのに有効な量の薬剤と接触する。特定の実施形態では、細胞は、造血細胞、例えば赤血球である。特定の実施形態では、細胞は、最終的に分化した、例えば最終的に分化した赤血球である。
【0044】
[58] 本明細書に開示される方法のいずれかの特定の実施形態では、細胞は、血液細胞障害、例えばSCD又はβサラセミアに関連する1つ以上の突然変異を含む。本明細書に開示される方法のいずれかの特定の実施形態では、細胞は、対照細胞、例えば非疾患細胞と比較して減少した量の、機能的に活性なHbAを有する。特定の実施形態では、細胞は、血液細胞障害、例えばSCD又はβサラセミアに関連する。例えば、細胞は、血液細胞障害と診断された対象からの細胞又は組織に由来し得るか又はそれから得られ得る。特定の実施形態では、本方法は、血液細胞障害、例えばSCD又はβサラセミアと診断された対象に対して実施される。本明細書に開示される方法は、インビトロ又はインビボで実施され得る。
【0045】
[59] 関連する態様において、本開示は、減少した量の機能的に活性なHbA(又は総HbA)に関連する血液細胞疾患又は障害の処置又は予防を、それを必要とする対象にお
いて行う方法であって、対象又は対象の特定の細胞若しくは組織における1つ以上の標的タンパク質の発現又は活性を阻害する薬剤を対象に提供することを含み、処置は、対象又は対象の1つ以上の細胞若しくは組織、例えば造血細胞、例えば赤血球(erythrocyte)
若しくは赤血球(red blood cell)におけるHbFの量の増加をもたらす、方法を含む。特定の実施形態では、薬剤は、医薬組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、対象は、対象又は対象の特定の細胞若しくは組織における1つ以上の標的タンパク質の発現又は活性を阻害する1つ以上(例えば、2つ、3つ又はそれを超える)の薬剤を提供される。いくつかの実施形態では、2つ以上の薬剤は、本明細書に開示される同じ標的又は標的複合体を阻害するが、他の実施形態では、2つ以上の薬剤は、本明細書に開示される異なる標的又は標的複合体を阻害する。特定の実施形態では、細胞は、最終的に分化した、例えば最終的に分化した赤血球である。いくつかの実施形態では、薬剤は、1つ以上の標的タンパク質の発現又は活性を阻害する。特定の実施形態では、薬剤は、1つ以上の標的タンパク質の分解を誘導する。特定の実施形態では、薬剤は、1つ以上の標的タンパク質の活性を阻害する。方法のいずれかの特定の実施形態では、阻害剤は、対象の細胞又は組織、例えば造血細胞、例えば赤血球における1つ以上の標的遺伝子、mRNA又はタンパク質の発現を減少させる。特定の実施形態では、阻害剤は、表1、表2、表6、表7、表8若しくは表9に同定される標的遺伝子若しくはタンパク質のいずれか、又は表3若しくは表4に同定される複合体のいずれかの任意の成分若しくはサブユニット、又は表5に同定される経路を阻害する。
【0046】
[60] 本明細書に開示される処置方法の特定の実施形態では、血液疾患又は障害は、鎌状赤血球症、βサラセミア、ベータサラセミア形質若しくはベータサラセミアマイナー、中間型サラセミア、サラセミアメジャー又はクーリー貧血から選択される。
【0047】
[61] 本明細書に記載される方法のいずれかの特定の実施形態では、医薬組成物は、非経口的に対象に提供される。
【0048】
[62] 本明細書に記載される阻害剤及び/又は他の薬剤及び組成物(例えば、阻害剤)は、所望の投与経路(例えば、非経口又は経口投与)に適した任意の様式で処方され得る。いくつかの実施形態では、薬剤又は組成物を細胞及び/又は組織と接触させることは、薬剤又は組成物を対象に投与又は提供した結果である。いくつかの実施形態では、薬剤又は組成物(例えば、阻害剤)は、少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20回又はそれを超えて投与される。併用療法のいくつかの実施形態では、第1の薬剤又は組成物の投与は、第2の薬剤若しくは組成物の投与が続くか、又は第2の薬剤若しくは組成物の投与と重複して行われるか、又は第2の薬剤若しくは組成物の投与と同時に行われる。第1及び第2の薬剤又は組成物は、同じであるか又は異なり得る。いくつかの実施形態では、第1及び第2の薬剤又は組成物は、同じ行為者により及び/又は同じ地理的位置で投与される。いくつかの実施形態では、第1及び第2の薬剤又は組成物は、異なる行為者により及び/又は異なる地理的位置で投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される複数の薬剤は、単一の組成物として投与される。
【0049】
[63] 多様な投与方法を、本明細書に開示される方法による阻害剤と併せて使用することができる。例えば、阻害剤は、局所、経口、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮、舌下、筋肉内、経直腸、口腔内、経鼻、リポソーム内、吸入、膣内、眼内、局所送達を介して(例えば、カテーテル又はステントにより)、皮下、脂肪内、関節内、髄腔内、経粘膜、肺内又は非経口的に、例えば皮下、皮内、筋肉内、静脈内、動脈内、心臓内、髄腔内、脊髄内、のう内、のう下、眼窩内、眼窩内、腹腔内、気管内、表皮下、関節内、くも膜下及び胸骨内を含む注射により;デポー又はリザーバのインプラントにより、例えば皮下又は筋肉内に投与又は同時投与することができる。
【0050】
[64] 「対象」は、動物(例えば、哺乳動物、ブタ、魚、鳥、昆虫など)を含む。いくつかの実施形態では、対象は、哺乳動物、特に霊長類、特にヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、畜牛、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタなどの家畜;ニワトリ、アヒル、ガチョウ、七面鳥などの家禽;並びにイヌ及びネコなどの飼い慣らされた動物である。いくつかの実施形態では(例えば、特に研究に関連して)、対象は、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター)、ウサギ、霊長類又は近交系ブタなどのブタなどである。用語「対象」及び「患者」は、本明細書では互換的に使用される。
【0051】
[65] 「組織」は、一緒になって特定の機能を実行する、同じ起源由来の類似の細胞の集合である。
【0052】
[66] 本明細書に開示される方法は、標的遺伝子、mRNA又はタンパク質の発現又は活性を阻害することができる任意の薬剤、例えば本明細書、例えば表1~9のいずれかに開示される遺伝子、mRNA又はタンパク質、複合体又は経路の阻害剤を用いて実施され得る。
【0053】
[67] 特定の実施形態では、本明細書に開示される方法は、例えば、阻害剤と接触していない対照細胞若しくは組織における発現レベル若しくは活性又は参照レベルと比較して、1つ以上の細胞又は組織(例えば、対象内の)における標的遺伝子、mRNA又はタンパク質の発現レベル又は活性の減少をもたらす。「減少」は、参照レベルと比較して例えば少なくとも5%、例えば少なくとも5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99又は100%の減少を指す。減少は、参照又は対照細胞若しくは組織のレベルと比較して例えば少なくとも1倍、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、500、1000倍以上の減少も意味する。
【0054】
[68] 特定の実施形態では、本明細書に開示される方法は、例えば、阻害剤と接触していない対照細胞若しくは組織における発現レベル若しくは活性化レベル又は参照レベルと比較して、1つ以上の細胞又は組織(例えば、対象内の)におけるHbF又はHBγの量の増加をもたらす。特定の実施形態では、本明細書に開示される方法は、例えば、阻害剤と接触していない対照細胞若しくは組織における発現レベル又は参照レベルと比較して、1つ以上の細胞又は組織(例えば、対象内の)におけるヘモグロビンガンマ(例えば、HBG1又はHBG2)の発現の増加をもたらす。「増加」は、参照レベル又は対照細胞若しくは組織におけるレベルと比較して例えば少なくとも5%、例えば少なくとも5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99若しくは100%又は少なくとも2倍、3倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、500倍若しくは1000倍の増加を指す。
【0055】
[69] 本明細書に記載される方法は、例えば、細胞又は組織における、例えば対象の細胞又は組織における標的遺伝子、mRNA又はタンパク質の量又はレベルの減少をもたらす任意のタイプの阻害剤を使用して実施され得る。特定の実施形態では、阻害剤は、例えば、阻害剤と接触させた細胞又は組織において活性標的タンパク質の減少、全標的タンパク質の減少、標的mRNAレベルの減少及び/又は標的タンパク質活性の減少を引き起こす。特定の実施形態では、減少は、阻害剤と接触していない同じタイプの細胞若しくは組織におけるレベル又は参照レベルと比較して少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%である。細胞における全タンパク質又はmRNAレベル又は活性を測定する方法は、当技術分野で公知である。特
定の実施形態では、阻害剤は、標的タンパク質の活性又は発現、例えばmRNA及び/又はタンパク質の発現を阻害又は減少させる。特定の実施形態では、阻害剤は、標的タンパク質の分解の増加を引き起こし、細胞又は組織における標的タンパク質のより少ない量をもたらす。
【0056】
[70] 開示された方法を実施するために使用することができる阻害剤には、標的遺伝子、mRNA又はタンパク質などであるが、これらに限定されない生体分子の発現又は活性を阻害するか、又は低下させるか、又は減少させる薬剤が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、阻害剤は、生体分子の分解の増加を引き起こすことができる。特定の実施形態では、阻害剤は、競合的、不競合的又は非競合的手段によって生体分子を阻害することができる。例示的な阻害剤には、核酸、DNA、RNA、gRNA、shRNA、siRNA、修飾mRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、タンパク質、タンパク質模倣体、ペプチド、ペプチド模倣体、抗体、小分子、有機小分子、無機分子、化学物質、酵素、受容体又は他のタンパク質の結合部位を模倣する類似体(例えば、シグナル伝達に関与する)、治療剤、医薬組成物、薬物及びこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、阻害剤は、細胞における機能性タンパク質の量を減少させる、siRNAを含むが、これに限定されない核酸分子であり得る。したがって、特定の標的タンパク質を「阻害することができる」と言われる化合物又は薬剤は、任意のタイプの阻害剤を含む。
【0057】
[71] 特定の実施形態では、阻害剤は、標的遺伝子又はmRNAに結合する核酸を含む。したがって、核酸阻害剤は、標的ポリヌクレオチド配列又はその領域若しくはそのアンチセンスに相補的な配列を含み得る。特定の実施形態では、核酸阻害剤は、標的ポリヌクレオチド配列又はそのアンチセンスに対応するか又はそれに相補的な少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも14、少なくとも16、少なくとも20、少なくとも24又は少なくとも30ヌクレオチド配列を含む。
【0058】
[72] 特定の実施形態では、核酸阻害剤は、細胞に投与された場合に標的遺伝子の発現を減少させるRNA干渉若しくはアンチセンスRNA剤、又はその一部若しくは模倣体、又はモルホリノである。典型的には、核酸阻害剤は、標的核酸分子若しくはそのオルソログの少なくとも一部を含むか、又は標的核酸分子の相補鎖の少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態では、標的遺伝子の発現は、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%又はさらに90~100%減少する。
【0059】
[73] 「相補的」核酸配列は、相補的ヌクレオチド塩基対から構成される別の核酸配列とハイブリダイズすることができる核酸配列である。「ハイブリダイズする」とは、適切なストリンジェンシー条件下において、相補的ヌクレオチド塩基間で二本鎖分子を形成する対を意味する(例えば、アデニン(A)は、DNA中のチミン(T)と塩基対を形成し、同様に、グアニン(G)は、シトシン(C)と塩基対を形成する)。(例えば、Wahl, G. M. and S. L. Berger (1987) Methods Enzymol. 152: 399;Kimmel, A. R. (1987) Methods Enzymol. 152:507を参照されたい)。
【0060】
[74] 「アンチセンス」は、長さにかかわらず、核酸配列に相補的な核酸配列を指す。特定の実施形態では、アンチセンスRNAは、個々の細胞、組織又は対象に導入され、内因性遺伝子サイレンシング経路に依存しない機構によって標的遺伝子の発現の減少をもたらすことができる一本鎖RNA分子を指す。アンチセンス核酸は、修飾された骨格、例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート又は当技術分野で公知の他のものを含み得るか、又は非天然ヌクレオシド間結合を含み得る。アンチセンス核酸は、例えば、ロックド核酸(LNA)を含むことができる。
【0061】
[75] 本明細書で使用される「RNA干渉」は、内因性遺伝子サイレンシング経路(例えば、Dicer及びRNA誘導サイレンシング複合体(RISC))を介した標的mRNAの分解により標的遺伝子の発現を減少させる薬剤の使用を指す。RNA干渉は、shRNA及びsiRNAを含む様々な薬剤を使用して達成され得る。「短いヘアピンRNA」又は「shRNA」は、RNA干渉(RNAi)を介して標的遺伝子発現をサイレンシングするために使用され得る、ヘアピンターンを有する二本鎖人工RNA分子を指す。細胞におけるshRNAの発現は、典型的には、プラスミドの送達によって又はウイルス若しくは細菌ベクターを介して達成される。shRNAは、分解及び代謝回転の速度が比較的低いという点でRNAiの有利なメディエーターである。低分子干渉RNA(siRNA)は、miRNAと類似する、通常20~25塩基対の長さの二本鎖RNA分子のクラスであり、RNA干渉(RNAi)経路内で機能する。転写後にmRNAを分解し、翻訳を妨げることにより、相補的なヌクレオチド配列を有する特定の遺伝子の発現を妨げる。特定の実施形態では、siRNAは、18、19、20、21、22、23又は24ヌクレオチド長であり、その3’末端に2塩基の突出を有する。siRNAは、個々の細胞及び/又は培養系に導入され得、標的mRNA配列の分解をもたらす。本明細書で使用される「モルホリノ」は、標準核酸塩基がモルホリン環に結合され、ホスホロジアミデート結合を介して連結されている修飾核酸オリゴマーを指す。siRNA及びshRNAと同様に、モルホリノは、相補的なmRNA配列に結合する。しかしながら、モルホリノは、分解のために相補的なmRNA配列を標的とするのではなく、mRNA翻訳の立体的阻害及びmRNAスプライシングの変化を介して機能する。
【0062】
[76] 特定の実施形態では、核酸阻害剤は、細胞に導入され得るメッセンジャーRNAであり、ここで、核酸阻害剤は、本明細書に開示される標的のポリペプチド阻害剤をコードする。特定の実施形態では、mRNAは、例えば、1つ以上の修飾ヌクレオシドの組み込みにより、例えばその安定性を増加させるか又はその免疫原性を低下させるように修飾される。適切な修飾は、当技術分野で公知である。
【0063】
[77] 特定の実施形態では、阻害剤は、本明細書に開示される標的のポリヌクレオチド又はポリペプチド阻害剤をコードする発現カセットを含む。特定の実施形態では、発現カセットは、遺伝子治療ベクター、例えばウイルス遺伝子治療ベクター中に存在する。ウイルス遺伝子治療ベクターを含む多様な遺伝子治療ベクターが当技術分野で公知であり、例えばAAVベースの遺伝子治療ベクターが挙げられる。
【0064】
[78] いくつかの実施形態では、阻害剤は、ポリペプチド阻害剤である。特定の実施形態では、ポリペプチド阻害剤は、標的ポリペプチドに結合し、したがってその活性、例えばキナーゼ活性を阻害する。ポリペプチド阻害剤の例には、抗体及びその断片などの任意のタイプのポリペプチド(例えば、ペプチド及びタンパク質)が含まれる。
【0065】
[79] 「抗体」は、免疫グロブリンIg分子の可変領域に位置する、少なくとも1つのエピトープ認識部位を介して、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質又はポリペプチドなどの標的に特異的に結合することができる免疫グロブリン(Ig)分子である。本明細書で使用される場合、この用語は、インタクトなポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体のみならず、その断片、例えばdAb、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、一本鎖(scFv)、その合成変異体、天然に存在する変異体、必要とされる特異性の抗原結合断片を有する抗体部分を含む融合タンパク質、キメラ抗体、ナノボディ及び必要とされる特異性の抗原結合部位又は断片を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変された配置も包含する。
【0066】
[80] 「断片」は、ポリペプチド又は核酸分子の一部分を指す。この部分は、好ましくは、参照核酸分子又はポリペプチドの全長の少なくとも10%、20%、30%、40%
、50%、60%、70%、80%又は90%を含む。断片は、10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100、200、300、400、500、600、700、800、900又は1000個のヌクレオチド又はアミノ酸を含み得る。抗体の「機能的断片」は、抗体の1つ以上の活性を維持する断片であり、例えば、機能的断片は、同じエピトープに結合し、及び又は抗体の生物学的活性を有する。特定の実施形態では、機能性断片は、抗体中に存在する6つのCDRを含む。
【0067】
[81] 特定の実施形態では、阻害剤は、標的ポリペプチドの分解を誘導する。例えば、阻害剤は、標的タンパク質の選択的細胞内タンパク質分解を誘導するタンパク質分解誘導キメラ(PROTAC)を含む。PROTACは、共有結合したタンパク質結合分子であり得る機能ドメインを含み、一方は、E3ユビキチンリガーゼと結合することができ、他方は、分解が意図される標的タンパク質に結合する。E3リガーゼが標的タンパク質に動員されると、ユビキチン化及びそれに続くプロテアソームによる標的タンパク質の分解が起こる。特定の実施形態では、阻害剤は、本明細書に開示される標的のいずれかを標的とするPROTACである。
【0068】
[82] 特定の実施形態では、阻害剤は、小分子阻害剤又はその立体異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、同位体濃縮、プロドラッグ又は薬学的に許容され得る塩である。特定の実施形態では、HbF発現を調節するように機能する標的タンパク質又はタンパク質複合体の小分子阻害剤は、SPOPを標的とする。特定の実施形態では、HbF発現を調節するように機能する標的タンパク質又はタンパク質複合体の小分子阻害剤は、CUL3を標的とする。特定の実施形態では、CUL3阻害剤は、MLN4924(CAS番号:905579-51-3)、スラミン(CAS番号:145-63-1)又はDI-591(CAS番号:2245887-38-9)である。
【0069】
[83] 特定の実施形態では、阻害剤は、遺伝子編集システムの1つ以上の成分を含む。本明細書で使用される場合、用語「遺伝子編集システム」は、細胞に導入された場合に内因性DNA配列の標的遺伝子座を改変することができるタンパク質、核酸又はそれらの組み合わせを指す。本発明の方法における使用に適した多数の遺伝子編集システムが当技術分野において公知であり、これには、亜鉛フィンガーヌクレアーゼシステム、TALENシステム及びCRISPR/Casシステムが含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
[84] いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法において使用される遺伝子編集システムは、CRISPR(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート)/Cas(CRISPR関連)ヌクレアーゼシステムであり、これは、哺乳動物ゲノム工学のために使用され得る細菌系に基づく操作されたヌクレアーゼシステムである。一般に、このシステムは、CRISPR関連エンドヌクレアーゼ(例えば、Casエンドヌクレアーゼ)及びガイドRNA(gRNA)を含む。gRNAは、2つの部分から構成される:標的ゲノムDNA配列に特異的なcrispr-RNA(crRNA)及び標的挿入部位のDNAへのエンドヌクレアーゼの結合を容易にするトランス活性化型RNA(tracrRNA)。いくつかの実施形態では、crRNA及びtracrRNAは、同じRNAオリゴヌクレオチド中に存在し得、単一ガイドRNA(sgRNA)と呼ばれる。いくつかの実施形態では、crRNA及びtracrRNAは、別個のRNAオリゴヌクレオチドとして存在し得る。このような実施形態では、gRNAは、crRNA:tracrRNA二重鎖を形成するように会合されるcrRNAオリゴヌクレオチド及びtracrRNAオリゴヌクレオチドから構成される。本明細書で使用される場合、用語「ガイドRNA」又は「gRNA」は、sgRNA又はcrRNA:tracrRNA二重鎖のいずれかとして存在する、tracrRNA及びcrRNAの組み合わせを指す。
【0071】
[85] いくつかの実施形態では、CRISPR/Casシステムは、Casタンパク質
、crRNA及びtracrRNAを含む。いくつかの実施形態では、crRNA及びtracrRNAは、二重鎖RNA分子として組み合わされてgRNAを形成する。いくつかの実施形態では、crRNA:tracrRNA二重鎖は、細胞への導入前にインビトロで形成される。いくつかの実施形態では、crRNA及びtracrRNAは、別個のRNA分子として細胞に導入され、次いでcrRNA:tracrRNA二重鎖が細胞内で形成される。いくつかの実施形態では、crRNA及びtracrRNAをコードするポリヌクレオチドが提供される。このような実施形態では、crRNA及びtracrRNAをコードするポリヌクレオチドが細胞に導入され、次いでcrRNA及びtracrRNA分子が細胞内で転写される。いくつかの実施形態では、crRNA及びtracrRNAは、単一のポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの実施形態では、crRNA及びtracrRNAは、別個のポリヌクレオチドによってコードされる。
【0072】
[86] いくつかの実施形態では、Casエンドヌクレアーゼは、gRNAのcrRNA部分の配列特異性によって標的挿入部位に向けられ、これは、標的挿入部位の近くにプロトスペーサーモチーフ(PAM)配列を含み得る。特定のエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9エンドヌクレアーゼ)とともに使用するのに適した多様なPAM配列が当技術分野で公知である(例えば、Nat Methods. 2013 Nov; 10(11):1116-1121及びSci Rep. 2014; 4: 5405を参照されたい)。
【0073】
[87] 標的遺伝子座に対するgRNAの特異性は、crRNA配列によって媒介され、crRNA配列は、標的遺伝子座におけるDNA配列に相補的である(例えば、標的DNA配列に相補的である)約20ヌクレオチドの配列を含む。いくつかの実施形態では、本発明の方法において使用されるcrRNA配列は、標的遺伝子座のDNA配列に少なくとも90%相補的である。いくつかの実施形態では、本発明の方法において使用されるcrRNA配列は、標的遺伝子座のDNA配列に少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%相補的である。いくつかの実施形態では、本発明の方法において使用されるcrRNA配列は、標的遺伝子座のDNA配列に100%相補的である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるcrRNA配列は、特定の標的遺伝子座又は標的遺伝子に固有の標的配列を同定するために、当技術分野で公知のアルゴリズム(例えば、Cas-OFFファインダー)を使用して、オフ標的結合を最小限にするように設計される。
【0074】
[88] いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、Casタンパク質又はオルソログである。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、Cas9タンパク質である。いくつかの実施形態では、Cas9タンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)(例えば、SpCas9)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(例えば、SaCas9)又はナイセリア・メニンギチデ
ィス(Neisseria meningitides)(NmeCas9)に由来する。いくつかの実施形態では、Casエンドヌクレアーゼは、Cas9タンパク質又はCas9オルソログであり、SpCas9、SpCas9-HF1、SpCas9-HF2、SpCas9-HF3、SpCas9-HF4、SaCas9、FnCpf、FnCas9、eSpCas9及びNmeCas9からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、C2C1、C2C3、Cpf1(Cas12aとも呼ばれる)、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1及びCsx12としても知られる)、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3及びCsf4からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Cas9は、Cas9ニッカーゼ突然変異体である。Cas9ニッカーゼ突然変異体は、1つの触媒活性ドメイ
ン(HNHドメイン又はRuvCドメインのいずれか)のみを含む。
【0075】
[89] 特定の態様において、本開示は、本明細書に記載される様々なクラスの阻害剤のいずれかを含む、本明細書に開示される標的の阻害剤を含む組成物、例えば医薬組成物を含む。本発明は、阻害剤及び薬学的に許容され得る担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物を包含する。担体又は希釈剤として一般的に使用される任意の不活性賦形剤、例えば糖、ポリアルコール、可溶性ポリマー、塩及び脂質を本発明の組成物中に使用することができる。使用され得る糖及びポリアルコールには、ラクトース、スクロース、マンニトール及びソルビトールが含まれるが、これらに限定されない。使用され得る可溶性ポリマーの例は、ポリオキシエチレン、ポロキサマー、ポリビニルピロリドン及びデキストランである。有用な塩としては、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム及び塩化カルシウムが挙げられるが、これらに限定されない。使用され得る脂質には、脂肪酸、グリセロール脂肪酸エステル、糖脂質及びリン脂質が含まれるが、これらに限定されない。
【0076】
[90] 加えて、医薬組成物は、結合剤(例えば、アカシア、コーンスターチ、ゼラチン、カルボマー、エチルセルロース、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン)、崩壊剤(例えば、コーンスターチ、ジャガイモ澱粉、アルギン酸、二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グアーガム、澱粉グリコール酸ナトリウム、Primogel)、様々なpH及びイオン強度の緩衝剤(例えば、トリス-HCL、酢酸塩、リン酸塩)、表面への吸収を防止するためのアルブミン又はゼラチンなどの添加剤、洗剤(例えば、Tween 20、Tween 80、Plutonic F68、胆汁酸塩)、プロテアーゼ阻害剤、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、浸透増強剤、可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリセロール、シクロデキストリン)、流動化剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール)、安定剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、粘度増加剤(例えば、カルボマー、コロイド状二酸化ケイ素、エチルセルロース、グアーガム)、甘味料(例えば、スクロース、アスパルテーム、クエン酸)、着香剤(例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル又はオレンジの香味料)、保存剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、流動助剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素)、可塑剤(例えば、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル)、乳化剤(例えば、カルボマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリマーコーティング(例えば、ポロキサマー又はポロキサミン)、コーティング及びフィルム形成剤(例えば、エチルセルロース、アクリレート、ポリメタクリレート)及び/又は補助剤をさらに含み得る。
【0077】
[91] 一実施形態では、医薬組成物は、インプラント及びマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤など、身体からの急速な排除から阻害剤を保護する担体を用いて調製される。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤の調製方法は、当業者に自明である。材料は、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.からも商業的に入手可能であり得る。リポソーム懸濁液
(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて、感染細胞に標的化されるリポソームを含む)も、薬学的に許容され得る担体として使用することができる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されているように、当業者に公知の方法に従って調製することができる。
【0078】
[92] 加えて、本発明は、任意の固体又は液体の物理的形態の阻害剤を含む医薬組成物
を包含する。例えば、阻害剤は、結晶形態、非晶質形態であり得、任意の粒径を有し得る。粒子は、微粉化又は凝集され得、粒状顆粒、粉末、油、油性懸濁液又は固体若しくは液体物理的形態の任意の他の形態であり得る。
【0079】
[93] 阻害剤が不十分な溶解度を示す場合、化合物を可溶化するための方法が用いられ得る。このような方法は、当技術分野で公知であり、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)300、PEG 400、DMA(10~30%)、DMSO(10~20%)、NMP(10~20%)、界面活性剤、例えばポリソルベート80、ポリソルベート20(1~10%)、cremophor EL、Cremophor RH40、Cremophor RH60(5~10%)、Pluronic F68/Poloxamer 188(20~50%)、Solutol HS15(20~50%)、ビタミンE TPGS及びd-a-トコフェリルPEG 1000
スクシネート(20~50%)などの共溶媒を使用し、HP β-CD及びSBE β-CD(10~40%)などの複合体形成を用いたpH調整及び塩形成並びに高度なアプローチ、例えばミセル、ポリマーの添加、ナノ粒子懸濁液及びリポソーム形成を含むが、これらに限定されない。
【0080】
[94] 阻害剤は、徐放性剤形でも投与又は同時投与され得る。阻害剤は、使用される投与経路に適した様式で処方された気体、液体、半液体又は固体の形態であり得る。経口投与の場合、適切な固体経口製剤には、錠剤、カプセル剤、ピル、顆粒、ペレット、サシェ及び発泡剤、粉末などが含まれる。適切な液体経口製剤には、溶液、懸濁液、分散液、シロップ、エマルジョン、油などが含まれる。非経口投与の場合、凍結乾燥粉末の再構成が典型的に使用される。
【0081】
[95] 本明細書に記載される疾患又は障害を処置する際に使用するための阻害剤の適切な用量は、当業者によって決定され得る。一般に、治療用量は、動物試験から得られた予備的な証拠に基づいて、ヒトにおける用量設定試験を通して特定される。用量は、望ましくない副作用を引き起こすことなく、所望の治療的利益をもたらすのに十分であるべきである。投与モード、剤形及び適切な医薬賦形剤も当業者によって十分に使用及び調整され得る。全ての変更形態及び修正形態は、本特許出願の範囲内で想定される。
【0082】
[96] 特定の実施形態では、本開示は、標的ポリペプチドの発現又は活性を阻害する(又は標的タンパク質のレベルの低下をもたらす)薬剤と、薬学的に許容され得る担体、希釈剤又は賦形剤とを含む医薬組成物の単位剤形を含み、この単位剤形は、単位剤形が投与される対象における1つ以上の組織におけるヘモグロビンガンマの発現を増加させるのに有効である。
【0083】
[97] 特定の実施形態では、単位剤形は、血液細胞疾患又は障害、例えば突然変異体又は異常なヘモグロビンベータに関連するもの(本明細書に開示される疾患又は障害、例えばSCD又はβサラセミアのいずれかを含む)を処置するための阻害剤の有効量、有効濃度及び/又は阻害濃度を含む。
【0084】
[98] 「医薬組成物」は、本明細書に開示される1つ以上の阻害剤及び1つ以上の薬学的に受容される担体、賦形剤又は希釈剤の組成物を含む。
【0085】
[99] 「薬学的に許容され得る」は、本明細書では、健全な医学的判断の範囲内において、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応又は他の問題若しくは合併症を伴わずに、妥当な利益/リスク比に見合う、ヒト及び動物の組織と接触して使用するのに適している化合物、材料、組成物及び/又は剤形を指すために使用される。
【0086】
[100] 「薬学的に許容され得る担体」には、ヒト及び/又は家畜における使用に許容
され得るものとして米国食品医薬品局によって承認されている任意の補助剤、担体、賦形剤、流動化剤、甘味料、希釈剤、保存剤、染料/着色剤、香味増強剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤、等張剤、溶媒、界面活性剤及び/又は乳化剤が含まれるが、これらに限定されない。例示的な薬学的に許容され得る担体としては、ラクトース、グルコース及びスクロースなどの糖;コーンスターチ及びジャガイモ澱粉などの澱粉;セルロース及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース;トラガント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバター、ワックス、動物性及び植物性脂肪、パラフィン、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、酸化亜鉛;油、例えばピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油;グリコール、例えばプロピレングリコール:ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール;エステル、例えばオレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱性物質除去蒸留水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;及び医薬製剤に使用される任意の他の適合性物質が挙げられるが、これらに限定されない。任意の従来の媒体及び/又は薬剤が本開示の薬剤と不適合である限りを除いて、治療組成物におけるその使用が意図される。補足的な活性成分も組成物に組み込むことができる。
【0087】
[101] 本明細書で使用される「有効量」は、特定の効果、例えば細胞、組織、器官又
は対象における胎児ヘモグロビン(又はヘモグロビンガンマ)のレベルの増加を達成するのに有効な薬剤の量を指す。特定の実施形態では、増加は、処置前又は処置なしの量と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%又は少なくとも70%である。対象の治療的処置に関連して、有効量は、例えば、対象、例えば鎌状赤血球症を有する対象における1つ以上の疾患症状を減少させるために有効又は十分な量であり得る。
【0088】
[102] 本明細書で使用される「有効濃度」は、特定の生理学的効果をもたらすのに必
要な薬剤及び/又は組成物の最小濃度(質量/体積)を指す。本明細書で使用される場合、有効濃度は、典型的には、特定の生理学的効果を増加、活性化及び/又は増強するのに必要な薬剤の濃度を指す。
【0089】
[103] 「阻害濃度」「阻害濃度」は、特定の生理学的効果を阻害するのに必要な薬剤
の最小濃度(質量/体積)である。本明細書で使用される場合、阻害濃度は、典型的には、特定の生理学的効果を減少、阻害及び/又は抑制するのに必要な薬剤の濃度を指す。
【0090】
[104] いくつかの実施形態では、本明細書に記載される薬剤又は化合物は、約1mg
/kg~約300mg/kgの投与量で投与され得る。別の実施形態では、本明細書に記載される薬剤又は化合物は、約1mg/kg~約20mg/kgの投与量で投与され得る。例えば、薬剤又は化合物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20mg/kg又はこれらの値のいずれかの間の範囲内、例えば約10mg/kg~約15mg/kg、約6mg/kg~約12mg/kgなどの投与量で対象に投与され得る。別の実施形態では、本明細書に記載される薬剤又は化合物は、≦15mg/kgの投与量で投与される。例えば、薬剤又は化合物は、15mg/kg/日で7日間、合計105mg/kg/週で投与され得る。例えば、化合物は、10mg/kgで1日2回、7日間、合計140mg/kg/週で投与され得る。
【0091】
[105] 多くの実施形態では、本明細書に記載される投与量は、単一投与量、1日投与
量又は1週間投与量を指し得る。一実施形態では、薬剤又は化合物は、1日に1回投与され得る。別の実施形態では、化合物は、1日に2回投与され得る。いくつかの実施形態で
は、薬剤又は化合物は、1日に3回投与され得る。いくつかの実施形態では、化合物は、1日当たり4回であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される薬剤又は化合物は、1週間に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23又は24回投与され得る。他の実施形態では、化合物は、隔週で1回投与される。
【0092】
[106] いくつかの実施形態では、本明細書に記載される薬剤又は化合物は、経口投与
され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される薬剤又は化合物は、≦15mg/kgの投与量で1日に1回経口投与され得る。
【0093】
[107] 使用される実際の投与量は、患者の要求及び処置される状態の重篤度に応じて
変化し得る。特定の状況のための適切な投与レジメンの決定は、当技術分野の範囲内である。便宜上、必要に応じて総1日投与量を分割し1日の間に分けて投与し得る。
【0094】
[108] 開示される化合物を使用する投与レジメンは、患者のタイプ、種、年齢、体重
、性別及び医学的状態;処置される状態の重篤度;投与経路;患者の腎臓又は肝臓機能;並びに使用される特定の開示される化合物を含む多様な因子に従って選択される。当業者の医師又は獣医師は、状態を予防するか、状態に対抗するか、又は状態の進行を停止するのに必要な薬物の有効量を容易に決定及び処方することができる。
【0095】
[109] 本発明の化合物及び/又はその薬学的に許容され得る塩の投与の量及び頻度は
、患者の年齢、状態及び大きさ並びに処置される症状の重症度などの因子を考慮して、担当臨床医の判断に従って調節される。
【実施例0096】
実施例1
標的同定方法
[110] 赤血球系統におけるHbFタンパク質をアップレギュレートする因子を、図1
に図解されるように、プールされたCR1SPRスクリーニングアプローチを用いて同定した。ヒト臍帯血から単離したCD34+細胞に由来する赤血球系前駆体モデルであるHUDEP2細胞を、HBB/HBβグロビンが発現する優勢β様グロビンであることから、HbF再活性化を研究するための細胞モデルとして使用した。
【0097】
[111] CRISPR gRNAのプールを、MOI約0.1でレンチウイルス送達法
を介して増殖中のHUDEP2細胞に導入した。ライブラリー構築に依存して、これは、1ベクター系(gRNA及びCas9の両方をコードするベクター)又は2ベクター系(gRNAをコードするベクター)のいずれかであった。2ベクター系の場合、Cas9タンパク質を構成的に発現するHUDEP2細胞にレンチウイルスプールを送達した。レンチウイルス形質導入の1日後、細胞を、500ng/mlのピューロマイシンを含有するHUDEP2増殖培地(StemSpan SFEM、StemCell Technologies;50ng/ml SCF;3IU/mlエリスロポエチン;luMデキサメタゾン;lug/mlドキシサイクリン)中で増殖させて、CRISPR構築物を受けた細胞を選択した。増殖培地+ピューロマイシンにおける選択を2日間行った。次いで、選択した細胞を増殖培地中でさらに7日間増殖させ、次いでHUDEP2分化培地(Iscoveの改変ダルベッコ培地;1% L-グルタミン;2%ペニシリン/ストレプトマイシン;330ug/mlホロヒトトランスフェリン;2IU/mlヘパリン;10ug/ml組換えヒトインスリン;3IU/mlエリスロポエチン;100ng/ml SCF;4%ウシ胎仔血清)に10日間移行させた。
【0098】
[112] HbF蛍光活性化細胞選別(FAC)アッセイ(Invitrogen、HFH01)を用いて
、HbFレベルが上昇した細胞を単離した。陰性対照gRNA(sgGFP)をゲート閾値として形質導入したHUDEP2細胞を用いて、HbF高細胞を選択した。細胞は、3日間のピューロマイシン選択後(選択後サンプル)及びFAC選別前(FAC入力サンプル)にも収集され、ヒットを同定するための下流分析のために使用された。
【0099】
[113] ゲノムDNAをHbF高単離細胞、選択後サンプル及びFAC入力サンプルか
ら単離した。ゲノムDNA中に存在するgRNAを、ネステッドPCR増幅を用いて増幅した。第2ラウンドのPCR増幅を行って、Illumina配列決定アダプターもサンプルに組み込んだ。Illumina配列決定を行って、各サンプル中に存在するgRNAを定量した。gRNAは、保存された識別子を用いて同定され、続いてgRNA標的遺伝子を同定するためにヒト参照ゲノムにマッピングされて、標的遺伝子とHbFアップレギュレーションをもたらした遺伝的撹乱との関係を提供した。
【0100】
[114] スクリーニングの結果を図2(CRISPRライブラリー#1)及び図3(C
RISPRライブラリー#2)に示す。各図において、左のパネルは、各事象についてのHbF(X軸)及びβ-アクチン(Y軸)のレベルをプロットし、線「L」は、HbF高細胞のHbF閾値を示す。右のパネルは、HbFレベル(X軸)及び事象(Y軸)を示す一次元プロットにおける同じデータを表し、線「C」は、HbF高細胞のHbF閾値を示す。HbF閾値を超えるいかなる細胞もHbF高集団で収集された。図2及び図3の両方において、各パネルの左側のより暗い陰影の付いた細胞は、対照sgGFPで形質導入されたHUDEP2細胞であり、各パネルの右側のより明るい陰影の付いた細胞は、CRISPRライブラリーで形質導入されたHUDEP2細胞である。
【0101】
実施例2
HBFをアップレギュレートするGRNAを同定するための計算方法
[115] Illumina配列決定を用いて、選択後サンプル、FAC入力サンプル及びHbF
高サンプル中のgRNAのライブラリーを配列決定した。各読取りは、5’又は3領域のいずれかで保存された識別子を探索し、保存された識別子を含む読取りのみが保持された。保存された識別子間の20bp gRNA配列を保持された読取りから抽出し、ヒトゲノム(hg19)にマッピングした。所与のgRNAを用いた単一の保持された読取りは、各サンプル中のそのgRNAについての1カウントを表した。カウントをRPM(100万当たりの読取り)に変換して、配列決定の深さを正規化し、異なるgRNAライブラリーにわたる比較を可能にした。gRNAのRPMは、以下のように計算した。
【数1】

上記の定義では、Nは、ライブラリーの読取りの合計数である。4つの異なる統計的方法を使用して、HbF高サンプル間のヒットを同定した。以下に記載される方法2を使用して行われるバイオインフォマティクス解析は、図4Aに要約される。図4Bは、2つの異なるスクリーニングライブラリー(ライブラリー#1及びライブラリー#2)由来の異なるサンプルにおけるガイド存在量の分布を示し、図4Cは、ライブラリー#1についてのサンプルにわたるZスコア差を示す。
【0102】
方法1:HbF高サンプルにおけるZスコアに基づくアプローチ:
[116] このアプローチでは、HbFサンプルにおけるgRNArpm値の分布に基づ
いてZスコアを計算した。より形式的には、以下の式を使用してZスコアを計算した。
【数2】
【0103】
上記の式において、gRNAHbF+は、HbF+サンプルにおけるZスコアであり、gRNArpm,Hbf+は、存在量であり、μHbf+,及びσHbf+は、HbF+サンプルにおけるgRNArpm,Hbf+の平均及び標準偏差である。同様に、全ガイドについて入力(gRNAinput)及び選択後(gRNApost-selected)サンプルのZスコアを計算した。細胞の健康又は増殖に負の影響をもたらしたgRNAは、gRNAドロップアウト分析を行うことによって同定した。より正式には、このドロップアウト分析では、|gRNAinput-gRNApost-selected|≧1を有するガイドを全て削除した。gRNAHbF+>3を有する全ての残りのgRNAは、HbF+サンプルにおいて濃縮されていると考えられた。このアプローチを用いて、少なくとも1つの濃縮gRNAを含む合計174ヒットを同定した。
【0104】
方法2:HbF高及びFAC入力におけるZスコア差に基づくアプローチ:
[117] このアプローチでは、(方法1で行ったものと)同じドロップアウト分析を行
った。gRNAHbF+-gRNAinput>2.5を有する全てのgRNAは、HbF+サンプルにおいて濃縮されていると考えられた。このアプローチを用いて、少なくとも1つの濃縮gRNAを含む合計307ヒットを同定した。これらを表1に提供する。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】
【0108】
【表4】
【0109】
【表5】
【0110】
【表6】
【0111】
【表7】
【0112】
【表8】
【0113】
方法3:HbF高及びFACs入力における倍数変化に基づくアプローチ:
[118] このアプローチでは、RPM値の倍数変化を用いてドロップアウト及びヒット
コールを行った。より正式には、
【数3】

をgRNAドロップアウトの基準として用いた。ドロップアウトろ過後、
【数4】

を有する残りのgRNAは、全てHbF+サンプル中で濃縮されていると考えられた。このアプローチを用いて、少なくとも1つの濃縮gRNAを含む合計314ヒットを同定した。
【0114】
1遺伝子当たりのgRNAヒット数:
[119] このアプローチでは、方法2を用いて濃縮gRNAを同定した。少なくとも2
つの濃縮gRNAを有する遺伝子をヒットとみなした。このアプローチを用いて、39ヒットを同定した。これらは、図5Aに列挙されている。ヒット及び関連gRNAのリストを表2に要約する。
【0115】
【表9】
【0116】
【表10】
【0117】
【表11】
【0118】
実施例3
HBFをアップレギュレートする標的遺伝子ヒットのバイオインフォマティクス解析
[120] 複数のバイオインフォマティック解析を用いて、HbFタンパク質レベルを有
意にアップレギュレートする上位標的において濃縮された特定の経路、複合体及び組織特異的発現パターンを同定した。
【0119】
タンパク質複合体解析:
[121] HbFをアップレギュレートする複数の標的を有するタンパク質複合体を同定
するために、上記の方法によって同定された上位標的を、既存のタンパク質複合体注釈(CORUMタンパク質複合体注釈(Giurgiu M et al, Nucleic Acids Research))とオ
ーバーラップさせた。この解析は、複数の標的を有するいくつかの複合体を同定した。これらの複合体及び各複合体の成分として同定された標的の数を図6に示す。複合体注釈のオーバーラップ並びに方法2及び3を用いて同定された標的を表3及び表4に示す。
【0120】
【表12】
【0121】
【表13】
【0122】
【表14】
【0123】
【表15】
【0124】
【表16】
【0125】
【表17】
【0126】
【表18】
【0127】
【表19】
【0128】
【表20】
【0129】
【表21】
【0130】
【表22】
【0131】
【表23】
【0132】
【表24】
【0133】
【表25】
【0134】
【表26】
【0135】
【表27】
【0136】
【表28】
【0137】
【表29】
【0138】
【表30】
【0139】
【表31】
【0140】
【表32】
【0141】
【表33】
【0142】
分子経路解析:
複数の標的で濃縮された上位分子経路を同定するために、上位標的を、clusterProfiler Rパッケージを用いてKEGG経路マップとオーバーラップさせた。方法2を用いて同
定されたヒットに由来する上位経路を表5に示す。
【0143】
【表34】
【0144】
【表35】
【0145】
【表36】
【0146】
【表37】
【0147】
2つの異なるCRISPRライブラリー間の一貫性:
[122] 同定された標的に対してより高い信頼性を得るために、異なる組の遺伝子及び
対応するgRNAを有するさらなるCRISPRライブラリー(ライブラリー#2)を使用した。HbF+及びFACs入力サンプルのみをライブラリー#2で配列決定した。ライブラリー#2におけるヒットは、方法2(カットオフを1.0に変更)を用い、ドロップアウトフィルターなしで同定した。このアプローチを用いて、合計209ヒットが同定された(図6B)。いくつかの共通のヒットが両方のライブラリーにおいて同定された(図5B及び表6)。
【0148】
【表38】
【0149】
血液組織及び赤血球系統におけるヒットの発現特異性:
[123] 方法2を用いて同定されたヒットを、SCDに関連する血液組織におけるそれ
らの発現に基づいて優先順位付けした。これは、31の異なる組織にわたる15,598サンプルからのGTEx遺伝子発現データを用いて行った(The GTEx Consortium, Nature Genetics)。平均Zスコアを算出して、血液特異的発現が高い遺伝子を同定した。ヒットについての血液Zスコアは、以下のように計算した。
【数5】
【0150】
[124] 上記の式において、Zg,bloodは、血液組織における遺伝子「g」の平
均Zスコアであり、gは、サンプル「i」中の遺伝子「g」の発現であり、μは、全てのサンプルにわたる遺伝子「g」の平均発現であり、σは、全てのサンプルにわたる遺伝子「g」の標準偏差である。合計で、1より大きいZg,bloodを有する32ヒットが同定された(図7A及び表7)。
【0151】
【表39】
【0152】
【表40】
【0153】
【表41】
【0154】
[125] 血液組織は、不均一であり、多くの異なる細胞型を有し、全てがSCDに関連
するわけではない。SCDで主に影響を受ける赤血球系統に焦点を当てるために、ヒットは、DMAPプロジェクト(Novershtem et al, Cell)によって同定された系統特異的モジュールとオーバーラップさせた。前駆体及び後期赤血球系統において発現された多くのヒットが同定された(表8)(図7B及び7C)。
【0155】
【表42】
【0156】
【表43】
【0157】
【表44】
【0158】
[126] 表9は、HbFの発現を増加させるための標的として本明細書で同定される複
合体及び経路の様々な成分のリストを提供する。これらのいずれも、本明細書に開示される方法のいずれかに従って標的化され得る。
【0159】
【表45】
【0160】
【表46】
【0161】
【表47】
【0162】
実施例4
一次CD34+細胞におけるSPOP及びCUL3遺伝子バリデーション
[127] SPOP及びCUL3は、胎児ヘモグロビン発現のレギュレーターとしてHU
DEP2モデルにおけるプールCRISPRスクリーニングを用いて同定した。胎児ヘモグロビン調節におけるSPOP及びCUL3の役割をさらに調べるために、健常ドナー由来の一次CD34+細胞をCRISPR Cas9及びshRNAを介した遺伝的撹乱アプローチとともに用いた。HbFレベルに対する影響を、HbF免疫細胞化学(ICC)を用いて分化したCD34+細胞において研究した(図8A)。
【0163】
[128] HbFレベルは、CRISPR Cas9-RNPに基づく機能喪失を用いて
、HbF ICCによって決定した。Cas9-RNP複合体を増殖中のCD34+細胞に電気穿孔した。次いで、細胞を7日間赤血球系統に分化させ、HbF ICCを用いてHbFレベルを定量した。非標的ガイドRNAを陰性対照として使用し、BCL11Aを標的とするガイドRNAをこの実験計画における陽性対照として使用した。CRISPR-Cas9又はshRNAのいずれかを用いてSPOP及びCUL3を遺伝的に撹乱すると、分化した赤血球系細胞の集団内の1つのパーセントF細胞又は細胞当たりの平均HbFレベルで測定されるように、HbFレベルが上昇した。電気穿孔を介したCRISPR
Cas9-RNA方法を用いて、SPOPのために使用したgRNAは、TAACTTTAGCTTTTGCCGGG(配列番号91)、CGGGCATATAGGTTTGUGCA(配列番号92)、GTTTGCGAGTAAACCCCAAA(配列番号93)であり、CUL3のために使用したgRNAは、GAGCATCTCAAACACAACGA(配列番号94)、CGAGATCAAGTTGTACGTTA(配列番号95)、TCATCTACGGCAAACTCTAT(配列番号96)であった。Cas9-gRNA複合体を独立して作製し、1標的当たり3つの複合体を細胞アッセイのためにプールした。SPOPのために使用したshRNAは、
【化11】

であった。CUL3のために使用したshRNAは、
【化12】

であった。HbF ICCは、1つのパーセントF細胞及び細胞当たりのHbF強度の定量を可能にする。F細胞は、HbFの検出可能なレベルが規定の閾値を超えている赤血球系細胞であり、パーセントF細胞は、F細胞と定義される細胞集団中の細胞のパーセントとして定義される。パーセントF細胞及び平均HbF強度細胞を陰性対照、sgBCL11A、sgSPOP及びsgCUL3について定量した。shRNAベースの機能喪失を用いてHbF ICCにより決定されたHbFレベルである。shRNAベクターを増殖中のCD34+細胞に電気穿孔した。次いで、細胞を7日間赤血球系統に分化させ、ICCを用いてHbFレベルを定量した。パーセントF細胞(図8B及び図8D)及び平均HbF強度(図8C及び図8E)を、個々のshRNA構築物について、陰性対照、shBCL11A、shSPOP及びshCUL3について定量した。
【0164】
方法
細胞培養
[129] ヒト可動化末梢血一次CD34+細胞を、IMDM、100ng/mL hS
CF、5ng/mL IL-3、3IU/mL EPO、250ug/mLトランスフェリン、2.5%正常ヒト血清、1% pen/strep、10ng/mLヘパリン、10ug/mLインスリンから構成されるCD34+第1相培地を含む培養フラスコに100,000生細胞/mLを播種することによって解凍から増殖させた。解凍後3日目に、追加の1X培養容量のCD34+第1相培地を添加することによって細胞を補充した。5日間の増殖後、一次CD34+細胞にRNP複合体をトランスフェクトした。
【0165】
Cas9-gRNA RNPの調製及びヌクレオフェクション
[130] TE緩衝液を使用して、凍結乾燥crRNA及びtracrRNAを再懸濁し
た。crRNA及びtracrRNAをアニーリング緩衝液に添加し、サーモサイクラー中でアニーリングした。遺伝子ごとに複数のsgrRNAを微小遠心管にプールした。各sgRNAをTrueCut Cas9v2と混合し、10分間インキュベートしてRNP複合体を生成した。計数後、144,000個のCD34+細胞をトランスフェクションキュベットに添加し、トランスフェクション溶液(P3、RNP複合体、グリセロール)と合わせた。細胞を、Amaxa Nucleofectorを用いてトランスフェクトし、次いで1mlの予め温めた第1相培地を有する12ウェルプレートに移した。
【0166】
インビトロ分化
[131] トランスフェクションの翌日、細胞にさらに0.5mLの第1相培地を補充す
る。トランスフェクション後5日目に、細胞は、IMDM、100ng/mL hSCF、5ng/mL IL-3、3IU/mL EPO、250ug/mLトランスフェリン、2.5%正常ヒト血清、1%pen/strep、10ng/mLヘパリン、10ug/mLインスリンから構成されるCD34+第2相培地への完全培地交換によって赤血球系に向かって分化した。第2相培地に変えた2日後、細胞を遠心分離し、1mLの第2相培地を新鮮な第2相培地と交換した。さらに2日後、細胞をICCによるHbF分析のために回収した。
【0167】
HbFICCプロトコル
[132] CD34+細胞を収集するために、各ウェルからの40uLを384ウェルプ
レートに2連で移し、プレートを遠心分離した。最初に、プレートを25μLのPBSで洗浄した。次いで、プレートを25μLの4%パラホルムアルデヒドで10分間室温において固定した。次いで、細胞を25μLのPBSで3回洗浄した。次に、細胞を、IX PBS、1%ウシ血清アルブミン、10%ウシ胎仔血清、0.3Mグリシン及び0.1%
tween-20から構成される25μLのPerm/Block緩衝液中、室温で1時間透過化し、ブロックした。次いで、細胞をPBS中0.1% tween25μLで3回洗浄した
。洗浄後、細胞を、0.1% tweenで1:40に希釈したHbF-488一次抗体(ThermoFisher MHFHO1-4)25μL及び0.1% tweenで1:2000に希釈したHoeschtとともに4℃で一晩インキュベートした。翌日、細胞を再度25μLのPBS中0.1% tweenで3回洗浄し、ThermoFisher CellInsight CX7上での画像化のためにホイルシール
した。
【0168】
[133] 次いで、プレートを10×倍率でCX7上においてスキャンし、1ウェル当た
り9個の画像を取得した。次いで、ソフトウェアアルゴリズムは、核を同定し、チャネル1上のHoechst染色を使用して、全核数を計算した。核が同定された後、アルゴリズムは
、チャネル2上のHbF染色の平均核強度を計算した。
【0169】
参考文献
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The Genotype-Tissue Expression (GTEx) project
The GTEx Consortium
Nat Genet. 2013 Jun;45(6):580-5. doi: 10.1038/ng.2653. PMID: 23715323
【0170】
本明細書に記載された全ての刊行物及び特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0171】
本発明は、上述の特定の実施形態に関連して説明されてきたが、その多くの代替形態、修正形態及び他の変形形態が当業者に明らかであろう。全てのこのような代替形態、修正形態及び変形形態は、本発明の趣旨及び範囲内に含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
【配列表】
2024178154000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-09-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の発明。
【外国語明細書】