(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178161
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】リン酸化タウペプチドワクチンの安全な投与の方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20241217BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241217BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241217BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20241217BHJP
A61K 31/7016 20060101ALI20241217BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20241217BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20241217BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20241217BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241217BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20241217BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20241217BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20241217BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20241217BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20241217BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20241217BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20241217BHJP
C12N 15/117 20100101ALI20241217BHJP
C07K 14/195 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
A61K39/00 Z
A61K39/395 N ZNA
A61K45/00
A61K31/7125
A61K31/7016
A61P25/28
A61K9/127
A61K47/42
A61K47/26
A61K47/24
A61K47/28
A61K39/39
A61K38/08
A61K38/10
A61K38/16
C07K14/47
C12N15/117 Z
C07K14/195
A61K39/395 N
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024136910
(22)【出願日】2024-08-16
(62)【分割の表示】P 2021546263の分割
【原出願日】2020-02-07
(31)【優先権主張番号】62/802,870
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.PLURONIC
3.SPAN
(71)【出願人】
【識別番号】513022966
【氏名又は名称】エーシー イミューン エス.エー.
(71)【出願人】
【識別番号】514010601
【氏名又は名称】ヤンセン ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ファイファー,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ムース,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ピルグレン ボッシュ,マリア
(72)【発明者】
【氏名】ヴキチェヴィッチ ヴェリル,マリヤ
(72)【発明者】
【氏名】ピオット,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ギミレ,サロージ ラージ
(72)【発明者】
【氏名】ラムスバーグ,エリザベス アン
(72)【発明者】
【氏名】デ マルコ,ドナタ
(72)【発明者】
【氏名】サダカ,シャーロット
(57)【要約】 (修正有)
【課題】抗リン酸化タウ抗体を、重度有害事象を誘発せずに、ヒトにおいて誘導するための方法を提供する。
【解決手段】方法は、toll様受容体4アゴニストとリポソームの表面に提示されているタウホスホペプチドとを含む有効量のリポソームを対象に投与することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗リン酸化タウ抗体を、重度有害事象を誘発せずに、それを必要とするヒト対象におい
て誘導する方法であって、toll様受容体4アゴニストと、配列番号1~配列番号3お
よび配列番号5~配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むタウホスホ
ペプチドとを含む有効量のリポソームを前記対象に投与することを含み、前記タウホスホ
ペプチドが1用量当たり約25nmole~約750nmoleの量投与され、前記タウ
ホスホペプチドが前記リポソームの表面に提示されている、方法。
【請求項2】
前記タウホスホペプチドが配列番号27~配列番号29および配列番号31~配列番号
38からなる群から選択されるアミノ酸配列からなり、好ましくは、前記タウホスホペプ
チドが配列番号28のアミノ酸配列からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有効量のリポソームが、1用量当たり100μg~2500μgの前記タウホスホ
ペプチド、好ましくは1用量当たり300μg~2400μg、1用量当たり300μg
~1800μg、または1用量当たり300μg~900μgの前記タウホスホペプチド
を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記有効量のリポソームが、1用量当たり300μg、1用量当たり900μg、1用
量当たり1800μg、または1用量当たり2400μgの前記タウホスホペプチドを含
む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記リポソームが皮下投与される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記リポソームが筋肉内投与される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
初回投与の1~24週間後に第2の用量の前記有効量のリポソームを前記対象に投与す
ることをさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記リポソームが、ヘルパーT細胞エピトープおよび脂質化CpGオリゴヌクレオチド
をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記脂質化CpGオリゴヌクレオチドが配列番号18~配列番号22からなる群から選
択されるヌクレオチド配列を有し、前記CpGオリゴヌクレオチドが1つまたは複数のホ
スホロチオエートヌクレオチド間連結を有し、前記CpGオリゴヌクレオチドが少なくと
も1つの親油基と、任意選択でPEGリンカーを介して、共有結合により連結している、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記CpGオリゴヌクレオチドが少なくとも1つの親油基とPEGリンカーを介して共
有結合により連結している、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記リポソームが、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(D
MPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリル-3’-rac-
グリセロール(DMPG)、およびコレステロールからなる群から選択される1つまたは
複数の脂質をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ヘルパーT細胞エピトープが、配列番号13~配列番号17、配列番号23~配列
番号26、および配列番号39~配列番号44からなる群から選択される少なくとも1つ
のアミノ酸配列を含む、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記有効量のリポソームが、1用量当たり約2nmole~約110nmoleの量の
前記ヘルパーT細胞エピトープを含む、請求項8から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記有効量のリポソームが、1用量当たり25μg~620μg、好ましくは1用量当
たり75μg~450μgの量の、配列番号13~配列番号17、配列番号23~配列番
号26、および配列番号39~配列番号44からなる群から選択されるアミノ酸配列を有
する前記ヘルパーT細胞エピトープを含み、好ましくは前記ヘルパーT細胞エピトープが
配列番号13のアミノ酸配列からなるT50ヘルパーT細胞エピトープである、請求項8
から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記有効量のリポソームが、1用量当たり30μg~900μg、好ましくは1用量当
たり100μg~585μgの量の前記toll様受容体4アゴニストを含み、好ましく
は前記toll様受容体4アゴニストがモノホスホリルヘキサアシルリピドA、3-脱ア
シルである、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記有効量のリポソームが、1用量当たり50μg~1250μg、好ましくは1用量
当たり150μg~800μgの量の、配列番号18~配列番号22からなる群から選択
されるヌクレオチド配列を有する前記脂質化CpGオリゴヌクレオチドを含み、好ましく
は前記脂質化CpGオリゴヌクレオチドが配列番号18のヌクレオチド配列からなる、請
求項8から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記リポソームが、
(1)配列番号28のアミノ酸配列を有する前記タウホスホペプチド、
(2)モノホスホリルヘキサアシルリピドA、3-脱アシルを含む前記toll様受容体
4アゴニスト、
(3)配列番号39のアミノ酸配列を含む前記ヘルパーT細胞エピトープ、
(4)配列番号18のヌクレオチド配列を含む前記脂質化CpGオリゴヌクレオチド、な
らびに
(5)1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,
2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリル-3’-rac-グリセロール(
DMPG)、およびコレステロールからなる群から選択される少なくとも1つの脂質
を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記対象が、アルツハイマー病、好ましくは早期アルツハイマー病、アルツハイマー病
に起因する軽度認知障害(MCI)、または軽度から中等度のアルツハイマー病の処置を
必要とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子的に提出された配列表の参照
本出願は、2020年2月7日の作成日、および22KBのサイズを有する「Sequ
ence Listing 689001_66U1」というファイル名のASCIIフ
ォーマットの配列表としてEFS-Webを介して電子的に提出される配列表を含有する
。EFS-Webを介して提出される配列表は、本明細書の一部であり、その全体が参照
によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は医学の分野におけるものである。本発明は詳細には、リン酸化タウ(pタウ)
ペプチドのリポソーム、およびアルツハイマー病等のタウオパチーを防止または処置する
ためのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
アルツハイマー病(AD)は、世界中で推定4400万人が患う進行性衰弱性神経変性
疾患である(Alzheimers.net)。現在商業化されているAD療法は、臨床症状に作用する
ことを目的としているが、疾患の根底にある発病過程(疾患修飾効果)を標的としていな
い。残念なことに、現在の療法は最小限度で有効であるに過ぎず、したがって追加の防止
および治療措置を開発して試験する緊急の必要性が存在する。
【0004】
アルツハイマー病に特徴的な病態は、著しく凝集したアミロイドベータタンパク質を含
む細胞外プラークの蓄積、および過剰リン酸化タウタンパク質の細胞内「濃縮体(tangle
)」または凝集である。これらのタンパク質の蓄積を引き起こす分子事象は特徴付けが不
十分である。アミロイドに関しては、アミロイド前駆体タンパク質の異常な切断がアミノ
酸1~42を含む易凝集性断片の蓄積を引き起こすと仮定されている。タウに関しては、
キナーゼ、ホスファターゼ、またはその両方の調節不全がタウの異常なリン酸化を引き起
こすと仮定されている。タウは、過剰リン酸化すると、微小管と効果的に結合してそれを
安定化させる能力を喪失し、代わりに影響を受けたニューロンの細胞質に蓄積する。未結
合過剰リン酸化タウは、初めにオリゴマー、次いでより高次の凝集体を形成するようであ
り、これらの存在は、それらが形成されるニューロンの機能に、おそらくは正常な軸索輸
送の中断を介して、負の影響を及ぼすと考えられる。
【0005】
先進諸国では、アルツハイマー病または他の認知症性タウオパチーと診断された個体は
、一般的にコリンエステラーゼ阻害薬(例えばAricept(登録商標))またはメマ
ンチン(例えばNamenda(商標))を用いて処置される。これらの薬物は、適度に
良好な忍容性を示すが、非常にわずかな有効性を有する。例えば、Aricept(登録
商標)は、処置された個体のうちのおよそ50%において、症状の悪化を6~12か月遅
延させる。残りの処置は、非薬理的であり、患者の認知能力が低下する一方で患者が日々
の課題をより処理できるようにすることに焦点を当てている。
【0006】
ADの防止および処置のための免疫療法は現在開発中である。ADと関連がある抗原を
用いる能動免疫化は、ADに対する抗体性免疫と細胞性免疫の両方の応答を潜在的に賦活
化することができる。しかしながら、最初の広く試験されたヒト抗アミロイドベータワク
チンの評価は2002年に停止された。致死的となり得る中枢神経系炎症の一種である髄
膜脳炎は、Aβを標的とした能動免疫療法剤AN-1792のAD患者における臨床研究
において観察された(Orgogozo et al., 2003)。AN-1792に曝露された患者のう
ちの6%に生じた脳炎反応は、望まないAβ特異的T細胞活性化によって誘導されたと考
えられる。
【0007】
今日まで、タウ病態を特異的に標的とする薬剤を用いて行われた研究はほとんど存在し
ない。現在、タウ免疫療法は臨床試験に移行しているが、この分野は依然として初期の段
階にあり、様々な手法の有効性および安全性の機構的理解は十分に確立していない(Sigu
rdsson, Neurodegener Dis. 2016; 16(0):34-38)。脳炎、すなわち脳の炎症は、全長タ
ウタンパク質に対して免疫化されたマウスにおいても報告されている。しかしながら、有
害作用は、CNS炎症誘発性環境下でリン酸化タウペプチドの単回注射を用いて免疫化さ
れた動物からは報告されなかった(Rosenmann H., 2013. Curr. Alzheimer Res. 10, 217
-228)。
【0008】
軽度から中等度のアルツハイマー病を有するヒト患者における非リン酸化タウペプチド
ワクチン(AADvac1)の長期安全性プロファイルが近年公開された(Novak et al.
, Alzheimer's Research & Therapy (2018) 10:108)。このワクチンは、N末端システイ
ンを介してキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)とカップリングしたタウ配列の
アミノ酸294~305に由来する合成ペプチドを含有する。このワクチンは、0.3m
lのリン酸緩衝液容量中、40μgの用量のKLHとカップリングしたペプチド(CKD
NIKHVPGGGS)において水酸化アルミニウムアジュバント(0.5mgのAl3
+を含有する)と共に投与された。研究に登録され、第1相研究(FUNDAMANT研
究)においてAADvac1処置と関連付けられた26名の患者から観察された有害事象
(AE)は、注射部位反応(紅斑、腫脹、熱感、掻痒、疼痛、小結節)であった。これら
のAEのうちの1つまたは複数が、AADvac1処置の患者のうちの50%に観察され
た。注射部位反応は可逆的であり、発現においては主に軽度であった。6つの重度有害事
象(SAE)が観察された(腹部絞扼性ヘルニア、脱水、急性精神病、認知症の行動およ
び精神症状、第2度房室ブロック、ならびに洞性徐脈)。SAEのいずれも、研究者によ
ってAADvac1処置と関連があると判断されなかった。アレルギー反応もアナフィラ
キシー反応も観察されなかった。安全性シグナルは、臨床検査評価(凝固、血液生化学、
血液学、および尿検査)においても、バイタルサイン評価においても、神経学的および理
学的検査においても出現しなかった。安全性シグナルは、MRI評価によって検出されな
かった。浮腫状変化は生じなかった。髄膜変化および髄膜脳炎は観察されなかった。新た
な微小出血が1名のApoE4ホモ接合体において観察され、脳表ヘモジデリンが1名の
ApoE4ヘテロ接合体において検出され、両事象は臨床的に無症状であった。このこと
は、AD患者集団におけるそのような病変の背景発生率と矛盾しないと考えられた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ヒト患者におけるリン酸化タウペプチドワクチンの安全性プロファイル
は報告されていない。アルツハイマー病等のニューロン変性疾患に対する安全かつ効果的
な処置の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、リポソームの表面に提示されているリン酸化タウペプチドを含むリポソーム
ワクチンの臨床研究からの知見に基づく。ワクチンはヒトにおいて良好な忍容性を示すよ
うであった。タウコンジュゲートワクチンAADvac1試験において使用した用量より
もはるかに多い用量において、pタウペプチドリポソームワクチンは重度有害事象を誘発
せずに抗リン酸化タウ抗体をヒト対象において誘導したことが示された。
【0011】
したがって、全般的な一態様では、本発明は、抗リン酸化タウ抗体を、脳炎等の重度有
害事象を誘発せずに、それを必要とするヒト対象において誘導する方法であって、tol
l様受容体4アゴニストと、配列番号1~配列番号3および配列番号5~配列番号12か
らなる群から選択されるアミノ酸配列を含むタウホスホペプチドとを含む有効量のリポソ
ームを対象に投与することを含み、タウホスホペプチドが、1用量当たり約25nmol
e~約750nmole、例えば1用量当たり約29.7nmole~約742.5nm
ole、好ましくは1用量当たり約90nmole~約715nmole、例えば約89
.1nmole~約712.8nmole、または1用量当たり約90nmole~約5
35nmole、例えば1用量当たり約89.1nmole~約534.6nmole、
または1用量当たり約90nmole~約275nmole、例えば1用量当たり約89
.1nmole~約267.3nmoleの量投与され、タウホスホペプチドがリポソー
ムの表面に提示されている、方法を提供する。ある特定の実施形態では、タウホスホペプ
チドは、配列番号27~配列番号29および配列番号31~配列番号38からなる群から
選択されるアミノ酸配列からなり、好ましくは配列番号28のアミノ酸配列からなる。一
実施形態では、有効量のリポソームは、toll様受容体4アゴニストと、配列番号28
のアミノ酸配列からなるテトラパルミトイル化タウホスホペプチドとを含み、テトラパル
ミトイル化タウホスホペプチドは、リポソームの表面に提示されており、1用量当たり2
9.7nmole~742.5nmoleに対応する1用量当たり100μg~2500
μg、好ましくは1用量当たり89.1nmole~712.8nmoleに対応する1
用量当たり300μg~2400μg、例えば1用量当たり89.1nmole、267
.3nmole、534.6nmole、または712.8nmoleに対応する1用量
当たり300μg、900μg、1800μg、または2400μgの量が投与される。
【0012】
一部の実施形態では、本発明は、抗リン酸化タウ抗体を、脳炎等の重度有害事象を誘発
せずに、それを必要とするヒト対象において誘導する方法であって、toll様受容体4
アゴニストとリポソームの表面に提示されているタウホスホペプチドとを含む有効量のリ
ポソームを対象に投与することを含み、タウホスホペプチドが配列番号1~配列番号3お
よび配列番号5~配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、タウホス
ホペプチドが1用量当たり約25nmole~約750nmoleの量投与され、好まし
くは、タウホスホペプチドが、配列番号28のアミノ酸配列からなるテトラパルミトイル
化タウホスホペプチドであり、1用量当たり約300μg、約900μg、約1800μ
g、もしくは約2400μgの量、またはそれらの間の任意の量投与される、方法を提供
する。
【0013】
ある特定の実施形態では、抗リン酸化タウ抗体を、脳炎等の重度有害事象を誘発せずに
、それを必要とするヒト対象において誘導する方法であって、toll様受容体4アゴニ
ストとリポソームの表面に提示されているタウホスホペプチドとを含む有効量のリポソー
ムを対象に投与することを含み、タウホスホペプチドが配列番号27~配列番号29およ
び配列番号31~配列番号38からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、タウホス
ホペプチドが、1用量当たり約90nmole~約715nmole、例えば1用量当た
り約29.7nmole、約267.3nmole、約534.6nmole、もしくは
約712.8nmoleの量、またはそれらの間の任意の量投与される、方法。一実施形
態では、有効量のリポソームは、1用量当たり265~275nmole、例えば1用量
当たり265、266、267、268、269、270、271、272、273、2
74、もしくは275nmole、またはそれらの間の任意の値、例えば1用量当たり約
267.3nmoleの量のタウホスホペプチドを含む。別の実施形態では、有効量のリ
ポソームは、1用量当たり530~540nmole、例えば1用量当たり530、53
1、532、533、534、535、536、537、538、539、もしくは54
0nmole、またはそれらの間の任意の値、例えば1用量当たり534.6nmole
の量のタウホスホペプチドを含む。別の実施形態では、有効量のリポソームは、1用量当
たり710~720nmole、例えば1用量当たり710、711、712、713、
714、715、716、717、718、719、もしくは720nmole、または
それらの間の任意の値、例えば1用量当たり712.8nmoleの量のタウホスホペプ
チドを含む、方法。
【0014】
ある特定の実施形態では、リポソームは皮下投与される。
【0015】
ある特定の実施形態では、リポソームは筋肉内投与される。
【0016】
ある特定の実施形態では、方法は、初回投与の1~24週間後に第2の用量の有効量の
リポソームを対象に投与することをさらに含む。
【0017】
ある特定の実施形態では、リポソームは、ヘルパーT細胞エピトープおよび脂質化Cp
Gオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも一方をさらに含む。ある特定の実施形態では、
脂質化CpGオリゴヌクレオチドは、配列番号18~配列番号22からなる群から選択さ
れるヌクレオチド配列を有し、好ましくは配列番号18のヌクレオチド配列を有し、Cp
Gオリゴヌクレオチドは1つまたは複数のホスホロチオエートヌクレオチド間連結を有し
、CpGオリゴヌクレオチドは少なくとも1つの親油基とリンカー、好ましくはPEGリ
ンカーを介して共有結合により連結している。
【0018】
ある特定の実施形態では、リポソームは、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-
3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ
リル-3’-rac-グリセロール(DMPG)、およびコレステロールからなる群から
選択される1つまたは複数の脂質をさらに含む。
【0019】
ある特定の実施形態では、ヘルパーT細胞エピトープは、配列番号23~配列番号26
からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含み、好ましくは配列番号2
3~25のアミノ酸配列を含む。
【0020】
ある特定の実施形態では、toll様受容体4アゴニストはモノホスホリルリピドA(
MPLA)である。
【0021】
ある特定の実施形態では、有効量のリポソームは、1用量当たり30μg~900μg
、好ましくは100μg~585μgの量のtoll様受容体4アゴニストを含む。ある
特定の実施形態では、有効量のリポソームは、1用量当たり30μg~900μg、好ま
しくは100μg~585μgの量のtoll様受容体アゴニストであるモノホスホリル
ヘキサアシルリピドA、3-脱アシルを含む。
【0022】
ある特定の実施形態では、有効量のリポソームは、1用量当たり25μg~625μg
、好ましくは75μg~450μgの量のヘルパーT細胞エピトープを含む。ある特定の
実施形態では、有効量のリポソームは、1用量当たり25μg~625μg、好ましくは
75μg~450μgの量の、配列番号13のアミノ酸配列からなるT50ヘルパーT細
胞エピトープを含む。
【0023】
ある特定の実施形態では、有効量のリポソームは、1用量当たり約2nmole~約1
10nmole、例えば1用量当たり約4.02nmole~約100.44nmole
、または1用量当たり約4nmole~約75nmole、例えば1用量当たり約4.0
2nmole~約72.32nmole、または1用量当たり約10nmole~約10
5nmole、例えば1用量当たり約12.06nmole~約100.44nmole
、または1用量当たり約70~約105nmole、例えば1用量当たり約72.32n
mole~約100.44nmoleの量のヘルパーT細胞エピトープを含む。ある特定
の実施形態では、有効量のリポソームは、1用量当たり約3nmole~約105nmo
le、好ましくは1用量当たり約10nmole~約105nmole、例えば1用量当
たり約12.06nmole~約100.44nmoleの量の、配列番号13のアミノ
酸配列からなるT50ヘルパーT細胞エピトープを含む。一実施形態では、有効量のリポ
ソームは、1用量当たり2~5nmole、例えば1用量当たり2、3、4、もしくは5
nmole、またはそれらの間の任意の値、例えば1用量当たり約3.82、3.92、
4.02、もしくは4.12nmoleの量のヘルパーT細胞エピトープを含む。別の実
施形態では、有効量のリポソームは、1用量当たり10~15nmole、例えば1用量
当たり10、11、12、13、14、もしくは15nmole、またはそれらの間の任
意の値、例えば1用量当たり11.86、11.96、12.06、12.16nmol
eの量のヘルパーT細胞エピトープを含む。別の実施形態では、有効量のリポソームは、
1用量当たり70~75nmole、例えば1用量当たり70、71、72、73、74
、もしくは75nmole、またはそれらの間の任意の値、例えば72.02、72.1
2、72.22、72.32、72.42の量のヘルパーT細胞エピトープを含む。さら
に別の実施形態では、有効量のリポソームは、1用量当たり98~103nmole、例
えば1用量当たり98、99、100、101、102、もしくは103nmole、ま
たはそれらの間の任意の値、例えば1用量当たり100.24、100.34、100.
44、100.54、もしくは100.64nmoleの量のヘルパーT細胞エピトープ
を含む。
【0024】
ある特定の実施形態では、有効量のリポソームは、1用量当たり50μg~1250μ
g、好ましくは150μg~800μgの量の脂質化CpGオリゴヌクレオチドを含む。
ある特定の実施形態では、有効量のリポソームは、1用量当たり50μg~1250μg
、好ましくは150μg~800μgの量の、配列番号18のヌクレオチド配列からなる
CpGオリゴヌクレオチドを含む。
【0025】
ある特定の実施形態では、リポソームは、
(1)配列番号28のアミノ酸配列を有するタウホスホペプチド、
(2)モノホスホリルヘキサアシルリピドA、3-脱アシルを含むtoll様受容体4ア
ゴニスト、
(3)配列番号39のアミノ酸配列を含むヘルパーT細胞エピトープ、
(4)配列番号18のヌクレオチド配列を含む脂質化CpGオリゴヌクレオチド、ならび
に
(5)1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,
2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリル-3’-rac-グリセロール(
DMPG)、およびコレステロールからなる群から選択される少なくとも1つの脂質
を含む。
【0026】
ある特定の実施形態では、対象は、アルツハイマー病、例えば、早期アルツハイマー病
、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害(MCI)、軽度アルツハイマー病、または
軽度から中等度のアルツハイマー病の処置を必要とする。他の実施形態では、対象は、脳
においてアミロイド陽性であるが、顕著な認知障害をまだ示していない。
【0027】
本発明はまた、抗リン酸化タウ抗体を、脳炎等の重度有害事象を誘発せずに、それを必
要とするヒト対象において誘導することにおける使用のためのワクチン組合せ体であって
、本発明の実施形態のプライミングワクチンおよびブースターワクチンを含む、ワクチン
組合せ体に関する。本発明はまた、抗リン酸化タウ抗体を、脳炎等の重度有害事象を誘発
せずに、それを必要とするヒト対象において誘導するための医薬品の製造におけるワクチ
ン組合せ体の使用であって、ワクチン組合せ体が本発明の実施形態のプライミングワクチ
ンおよびブースターワクチンを含む、使用を提供する。抗リン酸化タウ抗体を、脳炎等の
重度有害事象を誘発せずに、ヒト対象において誘導する方法に関する、本明細書に記載さ
れる本発明の全ての態様および実施形態は、抗リン酸化タウ抗体を、脳炎等の重度有害事
象を誘発せずに、それを必要とするヒト対象において誘導するための使用のためのワクチ
ン組合せ体、および/または抗リン酸化タウ抗体を、脳炎等の重度有害事象を誘発せずに
、それを必要とするヒト対象において誘導するための医薬品の製造におけるワクチン組合
せ体の使用に適用することができる。
【0028】
本発明のさらなる態様、特色、および利点は、本発明の以下の詳細な説明および特許請
求の範囲を読むことでより良好に理解されるだろう。
【0029】
前述の概要、および本出願の好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併
せて読む場合、より良好に理解されるだろう。しかしながら、本出願は図面に示される正
確な実施形態に限定されないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】2週間ごとに1回の、35および80pg/用量のACI-35.030の雌C57BL/6マウスへの3回の筋肉内投与後のpタウIgG力価を示すグラフであり、10匹のマウスの群1つ当たりの幾何平均+95%CIが表される。
【
図2】1200μg/用量および2400μg/用量のACI-35.030が持続的な力価の抗リン酸化タウ抗体をアカゲザルにおいて誘導したことを示すグラフであり、ELISAによって測定した、AU/mLで表される群1つ当たりの抗体力価の幾何平均が表される。
【
図3】2400μg/用量のACI-35.030の3回の注射が、結腸切片(パネルD)との交差反応性を伴わずに、AD脳切片(パネルB)のタウ濃縮体に結合する抗体を誘導したことを示す図である。処置前試料は、AD脳切片(パネルA)にも結腸切片(パネルC)にも結合しなかった。
【
図4】1800μg/用量のACI-35.030の筋肉内注射が、同じ用量の同じワクチンの皮下注射と比較して低い群内変動性により抗ePHF IgG抗体力価を誘導したことを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
様々な刊行物、論文、および特許が背景技術および本明細書全体にわたって引用または
記載されるが、これらの参考文献のそれぞれはその全体が参照によって本明細書に組み込
まれる。本明細書に含まれている文書、行為、材料、デバイス、物品等に関する考察は、
本発明のための文脈を提供することを目的とする。そのような考察は、開示または特許請
求されるいかなる発明に関しても、これらの事項のいずれかまたは全てが先行技術の一部
を形成することを承認するものではない。
【0032】
別段の定義がない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明
が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。その他の場合
、本明細書で使用するある特定の用語は本明細書に記載される意味を有する。
【0033】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形の「1つの(a)」、「
1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上別段の指示が明確にない限り、複数
の指示対象を含むことに留意しなければならない。
【0034】
別段の記述がない限り、本明細書に記載されるあらゆる数値、例えば濃度または濃度範
囲は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されていると理解されるべきで
ある。したがって、数値は典型的には示された値の±10%を含む。例えば、1mg/m
Lの濃度は0.9mg/mL~1.1mg/mLを含む。同様に、1%~10%(w/v
)の濃度範囲は0.9%(w/v)~11%(w/v)を含む。本明細書で使用する場合
、数値範囲の使用は、文脈上別段の指示が明確にない限り、全ての可能な部分範囲、すな
わち、そのような範囲内の整数およびその値の小数部を含むその範囲内の全ての個々の数
値を明白に含む。
【0035】
別段の指示がない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、その一連
のあらゆる要素を指すと理解されるべきである。当業者は、単に慣例的な実験を使用して
、本明細書に記載される本発明の具体的な実施形態の多くの均等物を認識するかまたは確
かめることができるだろう。そのような均等物は本発明によって包含されると意図される
。
【0036】
本明細書で使用する場合、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む
(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、
「含有する(contains)」、もしくは「含有する(containing)」という用語、またはそ
れらの任意の他の変化形は、述べられた整数または整数群を含むがいかなる他の整数も整
数群も除外するものではないということを含意すると理解することができ、非排他的また
は非限定的であると意図される。例えば、リストの要素を含む組成物、混合物、工程、方
法、物品、または装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されず、明示的に列挙されて
いないかまたはそのような組成物、混合物、工程、方法、物品、もしくは装置に固有の他
の要素を含むことができる。さらに、反対のことが明示的に述べられていない限り、「ま
たは」は、排他的なまたはではなく、非排他的なまたはを指す。例えば、条件AまたはB
は、以下:Aが真である(または存在する)かつBが偽である(または存在しない)、A
が偽である(または存在しない)かつBが真である(または存在する)、およびAとBの
両方が真である(または存在する)のうちのいずれか1つによって満たされる。
【0037】
好ましい発明の構成成分の寸法または特徴に言及する場合に本明細書で使用する「約」
、「およそ」、「全般的に」、「実質的に」という用語、および同様の用語が、記載され
た寸法/特徴は、当業者によって理解され得るように、厳密な境界でもパラメータでもな
く、機能的に同じであるかまたは類似するそこからのわずかな変動を除外しないことを示
すということもまた理解されるべきである。少なくとも、数値パラメータを含むような指
示対象は、当技術分野で受け入れられている数学的および工業的原理(例えば、丸め、測
定または他の系統誤差、製作公差等)を使用する、最下位桁を変えることのない変動を含
み得る。
【0038】
本発明は、抗リン酸化タウ抗体を、脳炎等の重度有害事象を誘発せずに、それを必要と
するヒト対象において誘導する方法を提供する。特定の実施形態では、方法は、リポソー
ムの表面に提示されているタウホスホペプチドとtoll様受容体4アゴニストとを含む
有効量のリポソームを対象に投与することを含む。
【0039】
本明細書で使用する場合、「抗リン酸化タウ抗体」という用語は、タウのアミノ酸配列
の1つまたは複数の位置のアミノ酸残基がリン酸化されているタウに結合する抗体を指す
。リン酸化されるアミノ酸残基は例えば、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、ま
たはチロシン(Tyr)であり得る。抗リン酸化タウ抗体が結合するリン酸化タウの部位
は好ましくは、アルツハイマー病等の神経変性疾患において特異的にリン酸化される部位
である。抗リン酸化タウ抗体が結合するリン酸化タウの部位の例としては、例えば、Ty
r18、Ser199、Ser202、Thr205、Thr212、Ser214、S
er396、Ser404、Ser409、Ser422、Thr427が挙げられる。
本出願全体にわたって使用する場合、アミノ酸位は、アミノ酸配列がGenBank受託
番号NP_005901.2に表されるヒト微小管関連タンパク質タウアイソフォーム2
の配列を参照して得られる。
【0040】
投与時に抗リン酸化タウ抗体を誘導することができるかどうかは、対象由来の生体試料
(例えば、血液、血漿、血清、PBMC、尿、唾液、糞便、CSF、またはリンパ液)を
、医薬組成物において投与された免疫原性タウペプチドを対象とする抗体、例えばIgG
またはIgM抗体の存在に関して試験することによって決定することができる(例えばHa
rlow, 1989, Antibodies, Cold Spring Harbor Pressを参照のこと)。例えば、免疫原を
提供する組成物の投与に応答して産生される抗体の力価は、酵素連結免疫吸着アッセイ(
ELISA)、他のELISAに基づくアッセイ(例えば、MSD-Meso Scal
e Discovery)、ドットブロット、SDS-PAGEゲル、ELISPOT、
または抗体依存性細胞貪食(ADCP)アッセイによって測定することができる。
【0041】
本明細書で使用する場合、「有害事象」(AE)という用語は、医薬製剤が投与された
患者における、処置との因果関係を必ずしも有しないあらゆる好ましくない医療上の出来
事を指す。本発明の実施形態において、AEは以下の定義を使用する、重症度が増加する
3段階の尺度により評価される:軽度(グレード1)、対象によって容易に耐えられ、最
小の不快感を引き起こし、日常活動を妨害しないAEを指す;中等度(グレード2)、正
常な日常活動を妨害するほど十分に不快であり、介入が必要となる場合があるAEを指す
;重度(グレード3)、正常な日常活動を妨げ、処置または他の介入が通例必要であるA
Eを指す。重度AE(SAE)とは、以下の転帰のいずれかをもたらす任意の用量におい
て生じるいかなるAEであってもよい:事象ではなく転帰である死亡;事象の発現時点で
患者が死亡のリスクにさらされているある事象を指す、生命を脅かすもの;生命を脅かす
ものは、仮により重度であった場合に死亡を引き起こした可能性がある事象を指さない;
治療のための入院、すなわち、計画外の一晩の入院、または現行の入院の延長;正常な生
活機能を遂行する能力の、永続的もしくは顕著な機能不全または実質的な破壊;先天異常
/先天性欠損;患者を危険にさらすおそれがあるか、または上に列挙した他の転帰のうち
の1つを防止するための医学的もしくは外科的介入を必要とし得る重要な医学的事象(研
究者によって判断される)(例えば、アレルギー性気管支痙攣のための緊急治療室もしく
は自宅での集中処置、または入院に至らない血液疾患もしくは痙攣)。入院とは、病院へ
の公式な受け入れである。入院または入院の延長は、AEが重篤となる基準を構成するが
、それ自体はSAEとは見なされない。AEの非存在下では、入院または入院の延長は、
参加している研究者によってSAEとして報告されるべきではない。これは、以下の状況
において当てはまり得る:入院もしくは入院の延長がプロトコルによって必要とされる手
順に必要である;または入院もしくは入院の延長が、中央施設が従う慣例的な手順(例え
ば外科処置後のステント除去)の一部である。このことは、研究ファイルに記録されるべ
きである。研究中に悪化しなかった既存の状態の待機的処置のための入院は、AEとは見
なされない。
【0042】
入院中に生じる合併症はAEである。合併症が入院を延長させるか、または他のSAE
基準のいずれかを満たす場合、その事象はSAEである。
【0043】
本明細書で使用する場合、「脳炎」という用語は、感染性および非感染性の原因に起因
し得る脳の炎症を指す。本明細書で使用する場合、「髄膜脳炎」という用語は、脳髄膜お
よび脳の感染症または炎症によって特徴付けられる状態を指す。脳炎または髄膜脳炎の診
断は、本開示を考慮すると、当業者に公知の技法によって、例えば、臨床的、神経学的、
および精神医学的検査、血液およびCSF試料採取を含む生体試料採取、MRI走査法、
ならびに脳波記録法(EEG)によって決定することができる。
【0044】
本明細書で使用する場合、「リポソーム」という用語は全般的に、高脂質含量を有する
材料、例えば、リン脂質、コレステロールから作製される脂質小胞を指す。これらの小胞
の脂質は全般的に脂質二重層の形態に組織化される。脂質二重層は全般的に、多重ラメラ
脂質小胞(MLV)を形成する脂質二重層の複数のタマネギ様の骨組みの間に散在してい
るかまたは中心部の無定形な空洞内に含有される容量を封入する。中心部の無定形な空洞
を有する脂質小胞は、単ラメラ脂質小胞、すなわち、空洞を囲む単一の外縁の二重層を有
する脂質小胞である。大単ラメラ小胞(LUV)は全般的に、100nm~数マイクロメ
ートル、例えば100~200nmまたはそれ以上の直径を有し、小単ラメラ脂質小胞(
SUV)は全般的に、100nm未満、例えば20~100nm、典型的には15~30
nmの直径を有する。
【0045】
本明細書で使用する場合、微小管関連タンパク質タウ、MAPT、神経原線維濃縮体タ
ンパク質、対らせん状細線維-タウ、PHF-タウ、MAPTL、MTBT1としても公
知である「タウ」または「タウタンパク質」という用語は、複数のアイソフォームを有す
る豊富に存在する中枢および末梢神経系タンパク質を指す。ヒト中枢神経系(CNS)で
は、352~441アミノ酸長のサイズの範囲の6種類の主要なタウアイソフォームが選
択的スプライシングのために存在する(Hanger et al., Trends Mol Med. 15:112-9, 200
9)。タウの例としては、これらに限定されないが、CNSにおけるタウアイソフォーム
、例えば4つの反復配列と2つの挿入断片とを有する、微小管関連タンパク質タウアイソ
フォーム2とも命名される441アミノ酸の最も長いタウアイソフォーム(4R2N)、
例えばアミノ酸配列がGenBank受託番号NP_005901.2に表されるヒトタ
ウアイソフォーム2が挙げられる。タウの他の例としては、3つの反復配列を有し、挿入
断片を有しない、微小管関連タンパク質タウアイソフォーム4とも命名される352アミ
ノ酸の長さの最も短い(胎児型)アイソフォーム(3R0N)、例えばアミノ酸配列がG
enBank受託番号NP_058525.1に表されるヒトタウアイソフォーム4が挙
げられる。タウの例としてはまた、300の追加の残基(エクソン4a)を含有する、末
梢神経に発現する「大型タウ」アイソフォームが挙げられる。Friedhoff et al., Biochi
mica et Biophysica Acta 1502 (2000) 122-132。タウの例としては、6762ヌクレオ
チドの長さのmRNA転写物(NM_016835.4)によってコードされる758ア
ミノ酸の長さのタンパク質であるヒト大型タウ、またはそのアイソフォームが挙げられる
。例示されるヒト大型タウのアミノ酸配列はGenBank受託番号NP_058519
.3に表される。本明細書で使用する場合、「タウ」という用語には、ヒト以外の種、例
えば、カニクイザル(Macaca Fascicularis)(カニクイザル)、リーサスザル、または
チンパンジー(Pan troglodytes)(チンパンジー)由来のタウの相同体が含まれる。本
明細書で使用する場合、「タウ」という用語には、全長野生型タウの変異、例えば点変異
、断片、挿入、欠失、およびスプライスバリアントを含むタンパク質が含まれる。「タウ
」という用語にはまた、タウアミノ酸配列の翻訳後修飾が包含される。翻訳後修飾として
は、これに限定されないが、リン酸化が挙げられる。
【0046】
本明細書で使用する場合、「ペプチド」または「ポリペプチド」という用語は、ペプチ
ド結合を介して連結した、アミノ酸残基から構成されるポリマー、関連する天然に存在す
る構造バリアント、およびその天然に存在しない合成アナログを指す。この用語は、任意
のサイズ、構造、または機能のペプチドを指す。典型的には、ペプチドは少なくとも3ア
ミノ酸の長さである。ペプチドは、天然に存在するペプチド、組換えペプチド、もしくは
合成ペプチド、またはそれらの任意の組合せであり得る。合成ペプチドは、例えば全自動
ポリペプチド合成装置を使用して合成することができる。タウペプチドの例としては、約
5~約30アミノ酸長、好ましくは約10~約25アミノ酸長、より好ましくは約16~
約21アミノ酸長のタウタンパク質の任意のペプチドが挙げられる。本開示では、ペプチ
ドは、リン酸残基が「p」で示される標準的な3または1文字アミノ酸略記法を使用して
N末端からC末端へと列挙される。本発明に有用なタウペプチドの例としては、これらに
限定されないが、配列番号1~12のいずれかのアミノ酸配列を含むタウペプチド、また
は配列番号1~12のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、9
0%、もしくは95%同一のアミノ酸配列を有するタウペプチドが挙げられる。
【0047】
本明細書で使用する場合、「ホスホペプチド」または「ホスホエピトープ」という用語
は、1つまたは複数のアミノ酸残基においてリン酸化されているペプチドを指す。タウホ
スホペプチドの例としては、1つまたは複数のリン酸化アミノ酸残基を含む任意のタウペ
プチドが挙げられる。
【0048】
本発明のタウペプチドは、固相ペプチド合成法または組換え発現系によって合成するこ
とができる。自動ペプチド合成装置は数多くの供給業者、例えばApplied Bio
systems(Foster City、Calif.)から市販されている。組換え
発現系としては、細菌、例えば大腸菌(E. coli)、酵母、昆虫細胞、または哺乳動物細
胞を挙げることができる。組換え発現の手順は、Sambrook et al., Molecular Cloning:
A Laboratory Manual (C.S.H.P. Press, NY 2d ed., 1989)によって記載されている。
【0049】
特定の実施形態において、リポソームは1つまたは複数のタウペプチドを含む。特定の
実施形態において、リポソーム中のタウペプチドは同じであっても異なっていてもよい。
本開示を考慮すると、当業者に公知のいかなる好適なタウペプチドも本発明に使用するこ
とができる。特定の実施形態において、1つまたは複数のタウペプチドは、配列番号1~
12のうちの1つのアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、1つまたは複数のタウペプ
チドは、配列番号1~12のうちの1つのアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、8
5%、90%、または95%同一のアミノ酸配列を含み、いずれのアミノ酸残基もリン酸
化されていないか、または1つもしくは複数のアミノ酸残基がリン酸化されている。
【0050】
特定の実施形態において、1つまたは複数のタウペプチドはタウホスホペプチドである
。特定の実施形態において、1つまたは複数のタウホスホペプチドは、配列番号1~3も
しくは5~12のうちの1つのアミノ酸配列、または配列番号1~3もしくは5~12の
うちの1つのアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、もしくは95
%同一のアミノ酸配列を含み、1つまたは複数の示されたアミノ酸残基はリン酸化されて
いる。好ましくは、タウホスホペプチドは、配列番号1~3のうちの1つのアミノ酸配列
を含む。タウペプチドは、C末端がアミド化されていてもよい。
【0051】
本出願の実施形態において、タウペプチドはリポソームの表面に提示されている。タウ
ペプチド、好ましくは、タウホスホペプチドは、本開示を考慮すると、当技術分野で公知
の方法を使用してリポソームの表面に提示され得る。例えば、それらの内容が参照によっ
て本明細書に組み込まれる米国特許第8,647,631号および同第9,687,44
7号、ならびに国際特許出願第PCT/US18/57286号における関連する開示を
参照のこと。特定の実施形態において、ホスホペプチドを含む1つまたは複数のタウペプ
チドは、タウペプチドをリポソームの表面に提示させる1つまたは複数の修飾、例えばパ
ルミトイル化またはドデシル修飾をさらに含む。追加のアミノ酸残基、例えば、Lys、
Cys、または場合によりSerもしくはThrは、タウペプチドに付加されて修飾を容
易にすることができる。脂質アンカーの位置がペプチド配列の異なる立体構造を誘導する
ことが報告された(Hickman et al., J. Biol. Chem. vol. 286, NO. 16, pp. 13966-139
76, April 22, 2011)。理論に拘束されることを望むものではないが、疎水性部分を両末
端に付加することは、タウペプチドの病理的なベータシート立体構造を増大し得ると考え
られる。したがって、1つまたは複数のタウペプチドは、両末端に疎水性部分をさらに含
む。修飾タウペプチドは、C末端がアミド化されていてもよい。好ましくは、リポソーム
の表面に提示されているタウペプチドは、配列番号27~配列番号38のうちの1つのア
ミノ酸配列からなる。
【0052】
本発明に有用なタウリポソームの例としては、これらに限定されないが、米国特許第8
,647,631号および同第9,687,447号、ならびに国際特許出願第PCT/
US18/57286号に記載されているタウリポソームが挙げられ、それぞれの開示は
、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0053】
本明細書で使用する場合、「有効量」という用語は、対象において所望の生物学的また
は医学的応答を誘発する有効成分または構成成分の量を指す。特定の有効用量の選択は、
処置または防止される疾患、関係している症状、患者の体重、患者の免疫状況、および当
業者によって公知の他の因子を含むいくつかの因子の考慮に基づいて、当業者によって(
例えば臨床試験を介して)決定することができる。製剤に用いられる正確な用量は、投与
方法、投与経路、標的部位、患者の生理状態、投与される他の医薬、および疾患の重症度
にも依存し得、実施者の判断および各患者の状況に従って決定されるべきである。例えば
、タウホスホペプチドの有効量は、アジュバントもまた投与されるか否かにも依存し、ア
ジュバントの非存在下ではより高い投薬量が必要とされる。有効用量は、in vitr
oまたは動物モデル試験系に由来する用量応答曲線から外挿することができる。
【0054】
本出願の実施形態において、有効量のリポソームは、脳炎等の重度有害事象を誘発せず
に抗リン酸化タウ抗体のレベルを増加させるのに十分な量のタウホスホペプチドを含む。
特定の実施形態では、有効量のリポソームは、1用量当たり約25nmole~約750
nmole、例えば1用量当たり約29.7nmole~約742.5nmole、好ま
しくは1用量当たり約90nmole~約715nmole、例えば1用量当たり約89
.1nmole~約712.8nmole、または1用量当たり約90nmole~約5
35nmole、例えば1用量当たり約89.1nmole~約534.6nmole、
または1用量当たり約90nmole~約275nmole、例えば1用量当たり約89
.1nmole~約267.3nmoleの量のタウホスホペプチドを含む。投与される
タウホスホペプチドの量は、重量で表すこともできる。例えば、1用量当たり29.7n
moleは1用量当たり100μgの配列番号28のアミノ酸配列からなるテトラパルミ
トイル化タウホスホペプチドに対応し、1用量当たり742.5nmoleは1用量当た
り2500μgの配列番号28のアミノ酸配列からなるテトラパルミトイル化タウホスホ
ペプチドに対応し、1用量当たり89.1nmoleは1用量当たり300μgの配列番
号28のアミノ酸配列からなるテトラパルミトイル化タウホスホペプチドに対応し、1用
量当たり712.8nmoleは1用量当たり2400μgの配列番号28のアミノ酸配
列からなるテトラパルミトイル化タウホスホペプチドに対応し、1用量当たり534.6
nmoleは1用量当たり1800μgの配列番号28のアミノ酸配列からなるテトラパ
ルミトイル化タウホスホペプチドに対応する。テトラパルミトイル化タウホスホペプチド
は、タウホスホペプチドのリポソームの表面への提示を可能にする4本の脂質鎖を有する
。300、900、1800μgの用量の配列番号28のアミノ酸配列からなるテトラパ
ルミトイル化タウホスホペプチドは、それぞれ169、508、1016μgの、いずれ
の脂質鎖も有しない対応する「裸の」ペプチドに対応する。
【0055】
本出願の実施形態において、有効量のリポソームは、1用量当たり約25nmole~
約750nmoleの量のタウホスホペプチド、例えば1用量当たり約25nmole、
約30nmole、約35nmole、約40nmole、約45nmole、約50n
mole、約55nmole、約60nmole、約65nmole、約70nmole
、約75nmole、約80nmole、約85nmole、約90nmole、約95
nmole、約100nmole、約125nmole、約150nmole、約175
nmole、約200nmole、約225nmole、約250nmole、約275
nmole、約300nmole、約325nmole、約350nmole、約375
nmole、約400nmole、約425nmole、約450nmole、約475
nmole、約500nmole、約525nmole、約550nmole、約575
nmole、約600nmole、約625nmole、約650nmole、約675
nmole、約700nmole、約725nmole、約750nmoleの配列番号
1~3または5~12のうちの1つのアミノ酸配列を含むタウホスホペプチドを含む。好
ましくは、タウホスホペプチドは配列番号27~配列番号38のうちの1つのアミノ酸配
列からなる。より好ましくは、タウホスホペプチドは配列番号28のアミノ酸配列からな
る。
【0056】
本出願の実施形態において、有効量のリポソームは、1用量当たり100μg~250
0μg、300μg~2400μg、300μg~1800μg、または300μg~9
00μg、例えば1用量当たり100μg、150μg、200μg、250μg、30
0μg、400μg、500μg、600μg、700μg、800μg、900μg、
1000μg、1100μg、1200μg、1300μg、1400μg、1500μ
g、1600μg、1700μg、1800μg、1900μg、2000μg、210
0μg、2200μg、2300μg、2400μg、または2500μgの量のテトラ
パルミトイル化タウホスホペプチドを含む。
【0057】
本出願の実施形態において、タウホスホペプチドはリポソームの表面に提示されている
。本出願の実施形態において、タウホスホペプチドは配列番号1~3または5~12のう
ちの1つのアミノ酸配列を含む。好ましくは、タウホスホペプチドは配列番号27~配列
番号38のうちの1つのアミノ酸配列からなる。より好ましくは、タウホスホペプチドは
配列番号28のアミノ酸配列からなる。
【0058】
本出願の他の実施形態において、有効量のリポソームは、1用量当たり30μg~90
0μg、好ましくは100μg~585μgの量のtoll様受容体4アゴニストをさら
に含む。例えば、有効量のリポソームは、1用量当たり30μg、50μg、100μg
、150μg、200μg、250μg、300μg、330μg、360μg、390
μg、420μg、450μg、480μg、500μg、520μg、540μg、5
60μg、580μg、600μg、700μg、800μg、または900μgの量の
toll様受容体4アゴニストを含むことができる。
【0059】
本出願の実施形態において、toll様受容体4は3D-(6-acyl)PHAD(
登録商標)を含む。
【0060】
本出願の他の実施形態において、有効量のリポソームは、1用量当たり25μg~62
5μg、好ましくは75μg~450μgの量のヘルパーT細胞エピトープをさらに含む
。例えば、有効量のリポソームは、1用量当たり25μg、50μg、75μg、100
μg、125μg、150μg、175μg、200μg、225μg、250μg、2
75μg、300μg、325μg、350μg、375μg、400μg、425μg
、450μg、475μg、500μg、525μg、550μg、575μg、600
μg、または625μgの量のヘルパーT細胞エピトープを含むことができる。
【0061】
本出願の他の実施形態において、有効量のリポソームは、1用量当たり約3nmole
~約105nmole、例えば1用量当たり約4nmole、約5nmole、約6nm
ole、約7nmole、約8nmole、約9nmole、約10nmole、約15
nmole、約20nmole、約25nmole、約30nmole、約35nmol
e、約40nmole、約45nmole、約50nmole、約55nmole、約6
0nmole、約65nmole、約70nmole、約75nmole、約80nmo
le、約85nmole、約90nmole、約95nmole、約100nmole、
または約105nmoleの量のヘルパーT細胞エピトープをさらに含む。
【0062】
本出願の実施形態において、ヘルパーT細胞エピトープは、配列番号13のアミノ酸配
列からなるT50ヘルパーT細胞エピトープ、配列番号14のアミノ酸配列からなるT4
6ヘルパーT細胞エピトープ、配列番号15のアミノ酸配列からなるT48ヘルパーT細
胞エピトープ、配列番号16のアミノ酸配列からなるT51ヘルパーT細胞エピトープ、
または配列番号17のアミノ酸配列からなるT52ヘルパーT細胞エピトープであり、好
ましくは、ヘルパーT細胞エピトープは、配列番号13のアミノ酸配列からなるT50ヘ
ルパーT細胞エピトープである。
【0063】
ある特定の実施形態では、有効量のリポソームは、1用量当たり50μg~1250μ
g、好ましくは150μg~800μgの量の脂質化CpGオリゴヌクレオチドをさらに
含む。例えば、有効量のリポソームは、1用量当たり50μg、100μg、150μg
、200μg、250μg、300μg、350μg、400μg、450μg、500
μg、550μg、600μg、650μg、700μg、750μg、800μg、8
50μg、900μg、950μg、1000μg、1050μg、1100μg、12
00μg、または1250μgの量の脂質化CpGオリゴヌクレオチドを含むことができ
る。
【0064】
本出願の実施形態において、脂質化CpGオリゴヌクレオチドは配列番号18~22の
うちの1つのヌクレオチド配列を含むCpGオリゴヌクレオチドであり、好ましくは、脂
質化CpGオリゴヌクレオチドは配列番号18のヌクレオチド配列を含むCpGオリゴヌ
クレオチドである。本出願の実施形態において、脂質化CpGオリゴヌクレオチドは、1
つまたは複数のホスホロチオエートヌクレオチド間連結を有し、ポリエチレングリコール
(PEG)を含むリンカーを介してコレステロールと共有結合により連結している、配列
番号18のヌクレオチド配列を含むCpGオリゴヌクレオチドである。
【0065】
実施形態において、有効量のリポソームは、1用量当たり50μg、100μg、15
0μg、200μg、250μg、300μg、350μg、400μg、450μg、
500μg、550μg、600μg、650μg、700μg、750μg、800μ
g、850μg、900μg、950μg、1000μg、1050μg、1100μg
、1200μg、または1250μgの、コレステロールとPEGリンカーを介して共有
結合により連結しているCpGオリゴヌクレオチドを含む。
【0066】
特定の実施形態において、ヒト対象は、神経変性疾患、障害、または状態の処置を必要
とする。
【0067】
本明細書で使用する場合、「神経変性疾患、障害、または状態」には、本開示を考慮す
ると、当業者に公知のあらゆる神経変性疾患、障害、または状態が含まれる。神経変性疾
患、障害、または状態の例としては、神経原線維病変の形成によって引き起こされるかま
たはそれと関連する神経変性疾患または障害、例えばタウオパチーと称されるタウ関連疾
患、障害、または状態が挙げられる。特定の実施形態において、神経変性疾患、障害、ま
たは状態としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、
ボクサー認知症、ダウン症候群、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、封入
体筋炎、プリオンタンパク質脳アミロイド血管症、外傷性脳損傷、筋萎縮性側索硬化症、
グアム島のパーキンソン認知症複合、神経原線維濃縮体を伴う非グアム型運動ニューロン
疾患、嗜銀顆粒性認知症、大脳皮質基底核変性症、レビー認知症を伴う筋萎縮性側索硬化
症(Dementia Lewy Amyotrophic Lateral sclerosis)、石灰化を伴うびまん性神経原線
維濃縮体、前頭側頭型認知症、好ましくは第17染色体と連鎖するパーキンソン症候群を
伴う前頭側頭型認知症(FTDP-17)、前頭側頭葉型認知症、ハラーホルデン・スパ
ッツ病、多系統萎縮症、ニーマン・ピック病C型、ピック病、進行性皮質下グリオーシス
、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性全脳炎、濃縮体型認知症(Tangle only dementia)、
脳炎後パーキンソン症候群、筋強直性ジストロフィー、慢性外傷性脳症(CTE)、原発
性年齢関連タウオパチー(PART)、脳血管症、またはレビー小体型認知症(LBD)
を含むがこれらに限定されない、タウとアミロイド病理との共存を示す任意の疾患または
障害が挙げられる。特定の実施形態において、神経変性疾患、障害、または状態は、アル
ツハイマー病または別のタウオパチーである。好ましい実施形態において、神経変性疾患
、障害、または状態は、アルツハイマー病である。
【0068】
アルツハイマー病の臨床経過は、認知および機能障害の進行パターンにより複数の段階
に分けることができる。段階は、例えばNIA-AA研究枠組みを含む当技術分野で公知
の評価尺度を使用して定義することができる。例えば、それぞれの内容の全体が参照によ
って本明細書に組み込まれる、Dubois et al., Alzheimer's & Dementia 12 (2016) 292-
323、Dubois et al., Lancet Neurol 2014; 13: 614-29、Jack et al., Alzheimer's & D
ementia 14 (2018) 535-562を参照のこと。
【0069】
好ましい実施形態において、神経変性疾患、障害、または状態は、早期アルツハイマー
病、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害(MCI)、軽度アルツハイマー病、また
は軽度から中等度のアルツハイマー病である。
【0070】
一部の実施形態では、処置を必要とする対象は、脳においてアミロイド陽性であるが、
顕著な認知障害をまだ示していない。脳におけるアミロイド沈着は、当技術分野で公知の
方法、例えば、PET走査、免疫沈降質量分析、または他の方法を使用して検出すること
ができる。
【0071】
本明細書で使用する場合、「toll様受容体」または「TLR」という用語は、自然
免疫応答において重要な役割を果たすパターン認識受容体(PRR)タンパク質のクラス
を指す。TLRは、宿主分子と区別することができる、微生物病原体、例えば、細菌、真
菌、寄生虫、およびウイルス由来の病原体関連分子パターン(PAMP)を認識する。T
LRは、典型的には二量体として機能し、抗原提示樹状細胞および貪食マクロファージを
含む自然免疫応答に関与する細胞によって発現される膜貫通タンパク質である。少なくと
も10のヒトTLRファミリーメンバー、すなわちTLR1~TLR10、ならびに少な
くとも12のマウスTLRファミリーメンバー、すなわちTLR1~TLR9およびTL
R11~TLR13が存在し、これらは認識する抗原の種類の点で異なる。例えば、TL
R4は、多くのグラム陰性菌に存在する構成成分であるリポ多糖(LPS)、ならびにウ
イルスタンパク質、多糖、および内在性タンパク質、例えば、低密度リポタンパク質、ベ
ータデフェンシン、および熱ショックタンパク質を認識し、TLR9は、原核ゲノムにお
いては豊富に存在するが脊椎動物ゲノムにおいては希少である非メチル化シトシン-リン
酸-グアニン(CpG)一本鎖または二本鎖ジヌクレオチドによって活性化するヌクレオ
チド感知性TLRである。TLRの活性化は一連のシグナル伝達事象を引き起こし、I型
インターフェロン(IFN)、炎症性サイトカイン、およびケモカインの産生、ならびに
免疫応答の誘導をもたらす。最終的に、この炎症は獲得免疫系も活性化させ、次いで侵入
病原体および感染細胞の排除をもたらす。
【0072】
本明細書で使用する場合、「アゴニスト」という用語は、1つまたは複数のTLRに結
合し、受容体媒介性応答を誘導する分子を指す。例えば、アゴニストは、受容体の活性を
誘導するか、賦活化するか、上昇させるか、活性化させるか、容易にするか、増強するか
、または上方調節することができる。そのような活性は「アゴニスト活性」と称される。
例えば、TLR4またはTLR9アゴニストは、結合した受容体を介して細胞シグナル伝
達を活性化または増加させることができる。アゴニストとしては、これらに限定されない
が、核酸、低分子、タンパク質、炭水化物、脂質、または受容体と結合もしくは相互作用
する任意の他の分子が挙げられる。アゴニストは天然受容体リガンドの活性を模倣するこ
とができる。アゴニストは、配列、立体構造、電荷、またはアゴニストが受容体によって
認識されることが可能となるような他の特徴に関して、これらの天然受容体リガンドと一
致し得る。この認識は、天然受容体リガンドが存在する場合と同様に細胞がアゴニストの
存在に反応するように、生理学的および/または生化学的変化を細胞内に生じ得る。特定
の実施形態において、toll様受容体アゴニストは、toll様受容体4アゴニストお
よびtoll様受容体9アゴニストのうちの少なくとも一方である。
【0073】
本明細書で使用する場合、「誘導する」および「賦活化する」という用語ならびにそれ
らの変化形は、細胞活性の任意の測定可能な上昇を指す。免疫応答の誘導としては、例え
ば、免疫細胞の集団の活性化、増殖、もしくは成熟、サイトカインの産生を増加させるこ
と、および/または免疫機能の増加の別の指標を挙げることができる。ある特定の実施形
態では、免疫応答の誘導としては、B細胞の増殖を高めること、抗原特異的抗体を産生さ
せること、抗原特異的T細胞の増殖を高めること、樹状細胞抗原提示を向上すること、な
らびに/またはある特定のサイトカイン、ケモカイン、および共刺激マーカーの発現を増
加させることを挙げることができる。
【0074】
本明細書で使用する場合、「toll様受容体4アゴニスト」という用語は、TLR4
のアゴニストとして作用する任意の化合物を指す。本開示を考慮すると、当業者に公知の
いかなる好適なtoll様受容体4アゴニストも本発明に使用することができる。本発明
に有用なtoll様受容体4リガンドの例としては、モノホスホリルリピドA(MPLA
)を含むがこれに限定されないTLR4アゴニストが挙げられる。本明細書で使用する場
合、「モノホスホリルリピドA」または「MPLA」という用語は、内毒素であるグラム
陰性菌リポ多糖(LPS)の生物学的に活性な部分であるリピドAの修飾形態を指す。M
PLAは、LPSよりも毒性が低いが、免疫賦活活性を維持する。ワクチンアジュバント
として、MPLAは、ワクチン抗原に対する細胞性応答と液性応答の両方を賦活化する。
MPLAの例としては、これらに限定されないが、3-O-デスアシル-4’-モノホス
ホリルリピドA、モノホスホリルヘキサアシルリピドA、3-脱アシル(合成)(3D-
(6-acyl)PHAD(登録商標)とも称される)、モノホスホリル3-脱アシルリ
ピドA、およびそれらの構造的に関連する変種が挙げられる。本発明に有用なMPLAは
、当技術分野で公知の方法を使用するか、または商業的供給源から取得することができ、
例えば、Avanti Polar Lipids(Alabaster、Alabam
a、USA)製の3D-(6-acyl)PHAD(登録商標)、PHAD(登録商標)
、PHAD(登録商標)-504、3D-PHAD(登録商標)、または様々な商業的供
給源からのMPL(商標)である。特定の実施形態において、toll様受容体4アゴニ
ストはMPLAである。特定の実施形態において、タウホスホペプチドとtoll様受容
体4アゴニストとを含むリポソームは、大半または全てのHLA DR(ヒト白血球抗原
-抗原D関連)分子と結合することができるヘルパーT細胞エピトープも含む。ヘルパー
T細胞エピトープは次いで、CD4+T細胞を活性化させることができ、不可欠な成熟お
よび生存シグナルをタウ特異的B細胞に提供する。タウリポソームは、リポソームがプラ
イムおよび/またはブーストにおいて使用される同種または異種免疫化スキームにおいて
、pタウ抗原に対する高品質抗体を生成するために使用することができる。
【0075】
本明細書で使用する場合、「ヘルパーT細胞エピトープ」という用語は、ヘルパーT細
胞による認識が可能であるエピトープを含むポリペプチドを指す。ヘルパーT細胞エピト
ープの例としては、これらに限定されないが、破傷風トキソイド(例えば、それぞれT2
およびT30とも命名されるP2およびP30エピトープ)、B型肝炎表面抗原、コレラ
毒素B、トキソイド、ジフテリアトキソイド、麻疹ウイルスFタンパク質、クラミジア・
トラコマチス(Chlamydia trachomatis)主要外膜タンパク質、熱帯熱マラリア原虫(Pla
smodium falciparum)スポロゾイト周囲T、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)CS
抗原、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)トリオースリン酸イソメラーゼ、百日
咳菌(Bordetella pertussis)、破傷風菌(Clostridium tetani)、ペルツサリア・トラ
キタリナ(Pertusaria trachythallina)、大腸菌(Escherichia coli)TraT、なら
びにインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)が挙げられる。
【0076】
本開示を考慮すると、当業者に公知のいかなる好適なヘルパーT細胞エピトープも本発
明に使用することができる。特定の実施形態において、ヘルパーT細胞エピトープは配列
番号23~配列番号26からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む
。好ましくは、ヘルパーT細胞エピトープは、リンカー、例えば1つまたは複数のアミノ
酸、例えば、Val(V)、Ala(A)、Arg(R)、Gly(G)、Ser(S)
、Lys(K)を含むペプチドリンカーを介して一緒に融合した、配列番号23~配列番
号26のアミノ酸配列のうちの2つ以上を含む。リンカーの長さは変えることができ、好
ましくは1~5アミノ酸である。好ましくは、ヘルパーT細胞エピトープは、VVR、G
S、RR、RKからなる群から選択される1つまたは複数のリンカーを介して一緒に融合
した、配列番号23~配列番号26のアミノ酸配列のうちの3つ以上を含む。ヘルパーT
細胞エピトープは、そのC末端がアミド化されていてもよい。
【0077】
本出願の実施形態において、ヘルパーT細胞エピトープは、リポソーム表面に組み込む
、例えば共有結合した疎水性部分によって固定することができ、ここで前記疎水性部分は
、特に少なくとも3個の炭素原子、特に少なくとも4個の炭素原子、特に少なくとも6個
の炭素原子、特に少なくとも8個の炭素原子、特に少なくとも12個の炭素原子、特に少
なくとも16個の炭素原子の炭素骨格を有する、アルキル基、脂肪酸、トリグリセリド、
ジグリセリド、ステロイド、スフィンゴ脂質、糖脂質、またはリン脂質、特にアルキル基
または脂肪酸である。本発明の一実施形態では、疎水性部分はパルミチン酸である。ある
いは、ヘルパーT細胞エピトープはリポソームに封入することができる。特定の実施形態
において、ヘルパーT細胞エピトープはリポソームに封入される。
【0078】
本開示を考慮すると、ヘルパーT細胞エピトープは、リポソームにおける所望の位置の
ために当技術分野で公知の方法を使用して修飾することができる。特定の実施形態におい
て、本発明に有用なヘルパーT細胞エピトープは配列番号39~配列番号44のうちの1
つのアミノ酸配列を含む。好ましくは、ヘルパーT細胞エピトープは配列番号13~配列
番号17からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる。
【0079】
特定の実施形態において、タウホスホペプチドとtoll様受容体4アゴニストとを含
むリポソームは、toll様受容体9アゴニストも含む。本明細書で使用する場合、「t
oll様受容体9アゴニスト」という用語は、TLR9のアゴニストとして作用する任意
の化合物を指す。本開示を考慮すると、当業者に公知のいかなる好適なtoll様受容体
9アゴニストも本発明に使用することができる。本発明に有用なtoll様受容体9リガ
ンドの例としては、CpGオリゴヌクレオチドを含むがこれに限定されないTLR9アゴ
ニストが挙げられる。
【0080】
本明細書で使用する場合、「CpGオリゴヌクレオチド」、「CpGオリゴデオキシヌ
クレオチド」、または「CpG ODN」という用語は、少なくとも1つのCpGモチー
フを含むオリゴヌクレオチドを指す。本明細書で使用する場合、「オリゴヌクレオチド」
、「オリゴデオキシヌクレオチド」または「ODN」とは、複数の連結したヌクレオチド
単位から形成されるポリヌクレオチドを指す。そのようなオリゴヌクレオチドは、現存す
る核酸源から取得することができるか、または合成法によって生産することができる。本
明細書で使用する場合、「CpGモチーフ」という用語は、リン酸結合またはホスホジエ
ステル骨格または他のヌクレオチド間連結によって連結した非メチル化シトシン-リン酸
-グアニン(CpG)ジヌクレオチド(すなわち、シトシン(C)の次にグアニン(G)
が続く)を含有するヌクレオチド配列を指す。
【0081】
特定の実施形態において、CpGオリゴヌクレオチドは脂質化、すなわち脂質部分とコ
ンジュゲート(共有結合により連結)している。
【0082】
本明細書で使用する場合、「脂質部分」とは、親油性構造を含有する部分を指す。脂質
部分、例えば、アルキル基、脂肪酸、トリグリセリド、ジグリセリド、ステロイド、スフ
ィンゴ脂質、糖脂質、またはリン脂質、特にコレステロール等のステロールまたは脂肪酸
は、高度に親水性の分子、例えば核酸に結合する場合、血漿タンパク結合、および結果と
して親水性分子の循環半減期を実質的に向上させることができる。加えて、ある特定の血
漿タンパク質、例えばリポタンパク質に結合することは、対応するリポタンパク質受容体
(例えば、LDL受容体、HDL受容体、またはスカベンジャー受容体SR-B1)を発
現する特定の組織への取込みを増加させることが示されている。特に、ホスホペプチドお
よび/またはCpGオリゴヌクレオチドとコンジュゲートした脂質部分は、前記ペプチド
および/またはオリゴヌクレオチドをリポソームの膜に疎水性部分を介して固定すること
を可能にする。
【0083】
特定の実施形態において、本開示を考慮すると、CpGオリゴヌクレオチドはいかなる
好適なヌクレオチド間連結も含むことができる。
【0084】
本明細書で使用する場合、「ヌクレオチド間連結」という用語は、2つのヌクレオチド
をそれらの糖を介してつなぐ、隣接するヌクレオシド間のリン原子および荷電または中性
基からなる化学的連結を指す。ヌクレオチド間連結の例としては、ホスホジエステル(p
o)、ホスホロチオエート(ps)、ホスホロジチオエート(ps2)、メチルホスホネ
ート(mp)、およびメチルホスホロチオエート(rp)が挙げられる。ホスホロチオエ
ート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、およびメチルホスホロチオエートは
安定化ヌクレオチド間連結であり、ホスホジエステルは天然に存在するヌクレオチド間連
結である。オリゴヌクレオチドホスホロチオエートは典型的にはRpおよびSpホスホロ
チオエート連結の無作為なラセミ混合物として合成される。
【0085】
本開示を考慮すると、当業者に公知のいかなる好適なCpGオリゴヌクレオチドも本発
明に使用することができる。そのようなCpGオリゴヌクレオチドの例としては、これら
に限定されないが、CpG2006(CpG7909としても公知)(配列番号18)、
CpG1018(配列番号19)、CpG2395(配列番号20)、CpG2216(
配列番号21)、またはCpG2336(配列番号22)が挙げられる。
【0086】
CpGオリゴヌクレオチドは、本開示を考慮すると、当技術分野で公知の方法を使用し
て脂質化することができる。一部の実施形態では、CpGオリゴヌクレオチドはコレステ
ロール分子と共有結合により直接連結する。一部の実施形態では、CpGオリゴヌクレオ
チドの3’末端はコレステロール分子とリン酸結合によって、任意選択でPEGリンカー
を介して、共有結合により連結する。一部の実施形態では、CpGオリゴヌクレオチドの
5’末端はコレステロール分子とリン酸結合によって、任意選択でPEGリンカーを介し
て、共有結合により連結する。他の親油性部分もまたCpGオリゴヌクレオチドの5’ま
たは3’末端と共有結合により連結することができる。例えば、CpGオリゴヌクレオチ
ドは、リポソーム由来のリン脂質と同じ長さの脂質アンカー、例えば1本のパルミチン酸
鎖(カップリングのために活性化させたPal-OHもしくは類似体を使用する)、また
は2つのパルミチン酸(例えば、カップリングのために活性化させた1,2-ジパルミト
イル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(スクシニル)もしくは類似
体を使用する)と、任意選択でPEGリンカーを介して、共有結合により連結することが
できる。例えば、その内容が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7,741
,297号における関連する開示を参照のこと。PEGの長さは変えることができ、例え
ば1~5PEG単位である。
【0087】
他のリンカーもまた、CpGオリゴヌクレオチドを親油性部分(例えばコレステロール
分子)に共有結合により接続するために使用することができ、その例としては、これに限
定されないが、3~12個の炭素を有するアルキルスペーサーが挙げられる。オリゴヌク
レオチド化学と適合性の短いリンカーはアミノジオールとして必要である。ある実施形態
では、リンカーは共有結合に使用されない。例えば、その関連する開示が参照によって本
明細書に組み込まれる、Ries et al., "Convenient synthesis and application of vers
atile nucleic acid lipid membrane anchors in the assembly and fusion of liposome
s, Org. Biomol. Chem., 2015, 13, 9673を参照のこと。
【0088】
特定の実施形態において、本発明に有用な脂質化CpGオリゴヌクレオチドは配列番号
18~配列番号22からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチド配
列は1つまたは複数のホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含み、ヌクレオチド配列
は少なくとも1つのコレステロールとリンカーを介して共有結合により連結している。好
ましい実施形態において、脂質化CpGオリゴヌクレオチドは、配列番号18のヌクレオ
チド配列を含み、1つまたは複数のホスホロチオエートヌクレオチド間連結を有し、コレ
ステロールと共有結合により連結している。いかなる好適なリンカーも、CpGオリゴヌ
クレオチドをコレステロール分子と共有結合により連結するために使用することができる
。好ましくは、リンカーはポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0089】
特定の実施形態において、リポソームは、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-
3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ
リル-3’-rac-グリセロール(DMPG)、およびコレステロールからなる群から
選択される1つまたは複数の脂質をさらに含む。
【0090】
特定の実施形態において、リポソームは緩衝液をさらに含む。本開示を考慮すると、当
業者に公知のいかなる好適な緩衝液も本発明に使用することができる。一実施形態では、
リポソームはリン酸緩衝食塩水を含む。特定の実施形態において、緩衝液はヒスチジンお
よびスクロースを含む。
【0091】
本発明に使用される例示的なリポソームは、タウテトラパルミトイル化ホスホペプチド
(pタウペプチドT3、配列番号28)であって、該タウペプチドの各末端の2つのパル
ミチン酸を介してリポソームの表面に提示されている、タウテトラパルミトイル化ホスホ
ペプチド;コレステロール分子を介してリポソーム膜に組み込まれている脂質化CpG(
アジュバントCpG7909-Chol、配列番号18)を含むTLR-9リガンドであ
って、コレステロール分子がCpGとPEGリンカーを介して共有結合により連結してい
る、TLR-9リガンド;膜に組み込まれているTLR-4リガンド(モノホスホリルリ
ピドA(例えば3D-(6-acyl)PHAD(登録商標)));封入されたヘルパー
T細胞エピトープ(PAN-DR結合部位T50、配列番号13);ならびにリポソーム
の脂質構成成分としての1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-コリン
(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-rac-(1
-グリセロール)]ナトリウム塩(DMPG)、およびコレステロールを含む。
【0092】
本発明のリポソームは、本開示を考慮すると、当技術分野で公知の方法を使用して作製
することができる。リポソームの各構成成分の最適な比は、本開示を考慮すると、当業者
に公知の技法によって決定することができる。
【0093】
リポソームは、予防および/または治療処置に好適な手段によって投与することができ
る。好ましい実施形態において、リポソームは皮下または筋肉内注射によって投与される
。筋肉内注射は最も典型的には腕または脚の筋肉に対して実施される。
【0094】
全般的な一態様では、本発明は、治療有効量のリポソームを薬学的に許容される賦形剤
および/または担体と一緒に含む医薬組成物に関する。薬学的に許容される賦形剤および
/または担体は当技術分野で周知である(Remington's Pharmaceutical Science (15th e
d.), Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1980を参照のこと)。医薬組成物の好ま
しい製法は、所期の投与方法および治療用途に依存する。組成物は、動物またはヒト投与
のための医薬組成物を製剤化するために一般的に使用されるビヒクルとして定義される、
薬学的に許容される非毒性の担体または希釈剤を含むことができる。希釈剤は、組合せ体
の生物活性に影響を及ぼさないように選択される。そのような希釈剤の例は、蒸留水、生
理学的リン酸緩衝食塩水、リンガー液、デキストロース溶液、およびハンクス液である。
加えて、医薬組成物または製剤はまた、他の担体、アジュバント、または非毒性、非治療
性、および非免疫原性安定剤等を含んでもよい。担体、賦形剤、または希釈剤の特徴は特
定の用途のための投与経路に依存し得ることが理解されるだろう。
【0095】
ワクチンの標的抗原は脳に位置しており、脳は血液脳関門(BBB)と呼ばれる特殊な
細胞構造によって循環から隔てられている。BBBは物質の循環から脳への移行を制限す
る。このことは毒素、微生物等の中枢神経系への進入を防止する。BBBはまた、免疫メ
ディエーター(例えば抗体)の、脳を囲む間質液および脳脊髄液への効率的な進入を妨げ
るという潜在的により望ましくない効果を有する。
【0096】
体循環に存在する抗体のうちのおよそ0.1%がBBBを越えて脳に進入する。これは
、CNS抗原を標的とするワクチンによって誘導される全身力価が、脳において有効とな
る最小有効力価よりも少なくとも1000倍大きくなければならないことを示唆する。有
効性をもたらすために必要となる血清中の抗体の最小力価は容易には明らかでない。加え
て、免疫応答の量だけでなく質(例えばアビディティ)も、CNS障害、例えば神経変性
疾患、障害、または状態を標的とする安全かつ効果的な免疫療法のために考慮しなければ
ならない。
【0097】
したがって、特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、対象において所望の免
疫応答を達成するために1種または複数種の好適なアジュバントをさらに含む。好適なア
ジュバントは、リポソームの投与の前、後、または同時に投与することができる。好まし
いアジュバントは、応答の質的な形式に影響を及ぼす免疫原の立体構造変化を引き起こさ
ずに、免疫原に対する固有の応答を増大させる。アジュバントの例は、アルミニウム塩(
アラム)、例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、および硫酸アルミニウム
である。そのようなアジュバントは、他の特異的免疫賦活剤、例えば、MPLA類(3脱
-O-アシル化モノホスホリルリピドA(MPL(商標))、モノホスホリルヘキサアシ
ルリピドA 3-脱アシル合成(3D-(6-acyl)PHAD(登録商標)、PHA
D(商標)、PHAD(登録商標)-504、3D-PHAD(登録商標))リピドA)
、ポリマーもしくはモノマーアミノ酸、例えばポリグルタミン酸もしくはポリリジンと共
にまたはこれらを伴わずに使用することができる。そのようなアジュバントは、他の特異
的免疫賦活剤、例えば、ムラミルペプチド(例えば、N-アセチルムラミル-L-スレオ
ニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチル-ノルムラミル-L-アラ
ニル-D-イソグルタミン(nor-MDP)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-
D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1’-2’ジパルミトイル-sn-グリセ
ロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(MTP-PE)、N-アセチル
グルコサミニル-N-アセチルムラミル-L-Al-D-isoglu-L-Ala-ジ
パルミトキシプロピルアミド(DTP-DPP)Theramide(商標))、もしく
は他の細菌細胞壁構成成分と共にまたはこれらを伴わずに使用することができる。水中油
型エマルションとしては、マイクロ流動化装置を使用してマイクロメートル未満の粒子に
製剤化される、5%スクアレン、0.5%Tween80、および0.5%Span85
を含有する(任意選択で、様々な量のMTP-PEを含有する)MF59(国際公開第9
0/14837号パンフレットを参照のこと);マイクロメートル未満のエマルションに
マイクロ流動化されるかまたはより大きな粒径のエマルションを生成するためにボルテッ
クスされる、10%スクアレン、0.4%Tween80、5%pluronicブロッ
クポリマーL121、およびthr-MDPを含有するSAF;ならびに0.2%Twe
en80、および、モノホスホリルリピドA(MPL(商標))、トレハロースジミコー
ル酸(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)、好ましくはMPL(商標)+CWS(D
etox(商標))からなる群から選択される1つまたは複数の細菌細胞壁構成成分を含
有するRibi(商標)アジュバントシステム(RAS)(Ribi ImmunoCh
em、Hamilton、Mont.)が挙げられる。他のアジュバントとしては、完全
フロイントアジュバント(CFA)、ならびにサイトカイン、例えば、インターロイキン
(IL-1、IL-2、およびIL-12)、マクロファージコロニー刺激因子(M-C
SF)、および腫瘍壊死因子(TNF)が挙げられる。
【0098】
本明細書で使用する場合、「組合せにおいて」という用語は、対象への2種以上の療法
の投与の文脈では、1種類よりも多い療法の使用を指す。「組合せにおいて」という用語
の使用は、療法が対象に投与される順番を制限しない。例えば、第1の療法(例えば本明
細書に記載される組成物)は、第2の療法の投与の前(例えば、5分、15分、30分、
45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、16時間、24時間、48時間、
72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、また
は12週間前)、同時、または後(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2
時間、4時間、6時間、12時間、16時間、24時間、48時間、72時間、96時間
、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間後)に対
象に投与することができる。
【0099】
投与のタイミングは、1日に1回から1年に1回、10年に1回まで大きく変えること
ができる。典型的なレジメンは、免疫化と、その後の時間間隔、例えば1~24週間の間
隔を空けたブースター注射とからなる。別のレジメンは、免疫化と、その後の1、2、4
、6、8、10、および12か月後のブースター注射とからなる。別のレジメンは、生涯
にわたる2か月ごとの注射を伴う。あるいは、ブースター注射は、免疫応答のモニタリン
グによって適応となる場合、不定期であってもよい。
【0100】
プライミングおよびブースティング投与に関するレジメンが投与後に測定される免疫応
答に基づいて調整できることは当業者によって容易に理解される。例えば、ブースティン
グ組成物は全般的に、プライミング組成物の投与の数週間もしくは数か月後、例えば、約
1週間、もしくは2週間、もしくは3週間、もしくは4週間、もしくは8週間、もしくは
16週間、もしくは20週間、もしくは24週間、もしくは28週間、もしくは32週間
、もしくは36週間、もしくは40週間、もしくは44週間、もしくは48週間、もしく
は52週間、もしくは56週間、もしくは60週間、もしくは64週間、もしくは68週
間、もしくは72週間、もしくは76週間、またはプライミング組成物の投与の1~2年
後に投与される。
【0101】
特定の態様において、1回または複数回の追加免疫が投与され得る。それぞれのプライ
ミングおよびブースティング組成物における抗原は、いかに多くのブースティング組成物
が用いられるとしても、同一である必要はなく、共通の抗原決定基を有するかまたは互い
に実質的に類似するべきである。
【0102】
本発明の医薬組成物は、本開示を考慮すると、当技術分野で公知の方法に従って製剤化
することができる。組成物における各構成成分の最適な比は、本開示を考慮すると、当業
者に公知の技法によって決定することができる。
【0103】
本発明の好ましい実施形態では、本発明のある実施形態に従った医薬組成物の投与を介
したタウペプチドの投与はタウペプチドおよびタウの病理形態に対する能動免疫応答を対
象において誘導し、それにより、関連するタウ凝集体の排除を容易にし、タウ病態関連行
動の進行を緩慢にし、および/または根底にあるタウオパチーを処置する。
【0104】
タウはヒト「自己」タンパク質である。このことは、原則として、タウに特異的な受容
体を保有する全てのリンパ球が発達中に取り除かれる(中枢性免疫寛容)か、または末梢
性免疫寛容機構によって不応性となるはずだったことを意味する。この問題は、自己また
は「変化した自己」タンパク質(例えば腫瘍抗原)に対するワクチンの開発における大き
な障害であることが判明している。抗原(自己または感染性)に対する高品質抗体を生成
することは、抗体を産生するBリンパ球だけでなく、CD4+T「ヘルパー」リンパ球の
作用も必要とする。CD4+T細胞は極めて重要な生存および成熟シグナルをBリンパ球
に提供し、CD4+T細胞欠損動物は大いに免疫抑制される。CD4+T細胞はまた免疫
寛容機構の影響を受けやすく、強力な抗自己(例えば抗タウ)抗体応答を引き起こすこと
におけるさらなる障害は、タウ反応性CD4+T細胞がまた、ヒト/動物レパートリーに
おいて希少であるかまたは存在しない可能性が高いことである。
【0105】
本発明のこの態様においては、免疫応答は、タウペプチドを対象にする有益な液性(抗
体媒介性)応答、およびT細胞エピトープまたは免疫原性担体を対象にする細胞性(抗原
特異的T細胞またはその分泌産物によって媒介される)応答の発生を伴う。
【0106】
本明細書で使用する場合、タウ病態関連行動表現型としては、限定されないが、認知障
害、早期人格変化および脱抑制、感情鈍麻、無為、無言症、失行、保続、常同運動/行動
、口唇傾向、解体、連続した課題を計画または整理する能力の欠如、利己的行動/冷淡、
反社会的特徴、共感の欠如、一貫性の欠如、頻繁な錯誤的誤りを含むが理解力は比較的保
たれている失文法的発言、理解力障害および喚語障害、緩徐進行性歩行不安定、後方突進
、すくみ、頻回転倒、非レボドパ応答性体軸性固縮、核上性注視麻痺、矩形波眼球運動、
緩徐な垂直性衝動性眼球運動、仮性球麻痺、四肢失行、ジストニア、皮質性感覚消失、な
らびに振戦が挙げられる。
【0107】
本発明の方法を実行する場合、本発明の特定の実施形態において、本発明の免疫原性ペ
プチドまたは抗体を投与する前にアルツハイマー病もしくは他のタウオパチーを有してい
るかもしくは有しているリスクがある対象、タウ凝集体を脳に有している対象、または濃
縮体関連行動表現型を呈している対象を選択することが好ましい。処置可能な対象として
は、疾患のリスクがあるが症状を示していない個体、および症状を現在示している患者が
挙げられる。アルツハイマー病の場合、事実上全ての人がアルツハイマー病に罹患するリ
スクがある。したがって、本方法は、対象患者のリスクに関するいかなる評価も必要とせ
ずに、一般集団に予防的に投与することができる。本方法は、アルツハイマー病の公知の
遺伝的リスクを有する個体にとりわけ有用である。そのような個体としては、該疾患を経
験している親族を有する個体、および遺伝子マーカーまたは生化学的マーカーの分析によ
ってリスクが決定される個体が挙げられる。好ましい実施形態では、対象は、アルツハイ
マー病、好ましくは早期アルツハイマー病、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害(
MCI)、軽度アルツハイマー病、または軽度から中等度のアルツハイマー病の処置を必
要とする。
【0108】
無症候性患者では、処置は任意の年齢(例えば、10、20、30歳)で開始すること
ができる。しかしながら、通例、患者が40、50、60、または70歳に達するまでは
処置を開始する必要はない。処置は典型的にはある期間にわたり複数の投薬量を伴う。処
置は、抗体、または治療剤に対する活性化T細胞もしくはB細胞応答をアッセイすること
によって経時的にモニタリングすることができる。応答が低下する場合、ブースター投薬
量が適応となる。
【0109】
予防用途では、タウペプチドを含有する医薬組成物は、アルツハイマー病もしくは他の
タウオパチーに罹患しやすいかまたはそうでなければそれらのリスクがある患者に、疾患
の生化学的、組織学的、および/または行動学的症状、その合併症、ならびに疾患の発生
中に現れる病理学的中間表現型を含む疾患の、リスクを取り除くもしくは低下させるか、
重症度を軽減するか、または発症を遅延させるのに十分な量投与される。治療用途では、
タウペプチドを含有する医薬組成物は、そのような疾患の疑いがあるか、またはすでに罹
患している患者に、疾患の合併症および疾患の発生における病理学的中間表現型を含む疾
患の症状(生化学的、組織学的、および/または行動学的)を治療するか、または少なく
とも部分的に停止させるのに十分な量投与される。
【0110】
組成物は、所望される場合、有効成分を含有する1つまたは複数の単位剤形を含有する
ことができるキット、容器、または分注装置において提供することができる。キットは、
例えば、ブリスターパックのように金属またはプラスチック箔を含むことができる。キッ
ト、容器、または分注装置には投与のための説明書を添付することができる。
【0111】
実施形態
本発明はまた、以下の非限定的な実施形態を提供する。
【0112】
実施形態1は、抗リン酸化タウ抗体を、重度有害事象を誘発せずに、それを必要とする
対象において誘導する方法であって、1用量当たり約25nmole~約750nmol
e、好ましくは1用量当たり約90nmole~約715nmole、1用量当たり約9
0nmole~約535nmole、または1用量当たり約90nmole~約275n
mole、例えば1用量当たり約25nmole、約30nmole、約35nmole
、約40nmole、約45nmole、約50nmole、約55nmole、約60
nmole、約65nmole、約70nmole、約75nmole、約80nmol
e、約85nmole、約90nmole、約95nmole、約100nmole、約
125nmole、約150nmole、約175nmole、約200nmole、約
225nmole、約250nmole、約275nmole、約300nmole、約
325nmole、約350nmole、約375nmole、約400nmole、約
425nmole、約450nmole、約475nmole、約500nmole、約
525nmole、約550nmole、約575nmole、約600nmole、約
625nmole、約650nmole、約675nmole、約700nmole、約
725nmole、約750nmole、またはそれらの間の任意の値の量の、配列番号
1~配列番号3および配列番号5~配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列
を含むタウホスホペプチドと、toll様受容体4アゴニストとを含む有効量のリポソー
ムを対象に投与することを含み、タウホスホペプチドがリポソームの表面に提示されてい
る、方法である。
【0113】
実施形態1aは、抗リン酸化タウ抗体を、脳炎を誘発せずに、それを必要とする対象に
おいて誘導する方法であって、1用量当たり100μg~2500μg、好ましくは30
0μg~2400μg、300μg~1800μg、または300μg~900μg、例
えば1用量当たり100μg、150μg、200μg、250μg、300μg、40
0μg、500μg、600μg、700μg、800μg、900μg、1000μg
、1100μg、1200μg、1300μg、1400μg、1500μg、1600
μg、1700μg、1800μg、1900μg、2000μg、2100μg、22
00μg、2300μg、2400μg、2500μg、またはそれらの間の任意の値の
、リポソームの表面に提示されているテトラパルミトイル化タウホスホペプチドと、to
ll様受容体4アゴニストとを含む有効量のリポソームを対象に投与することを含み、タ
ウホスホペプチドが、配列番号1~配列番号3および配列番号5~配列番号12からなる
群から選択されるアミノ酸配列を含む、方法である。
【0114】
実施形態2は、タウホスホペプチドが配列番号27~配列番号29および配列番号31
~配列番号38からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる、実施形態1または1a
に記載の方法である。
【0115】
実施形態3aは、タウホスホペプチドが配列番号27のアミノ酸配列からなる、実施形
態1から2のいずれかに記載の方法である。
【0116】
実施形態3bは、タウホスホペプチドが配列番号28のアミノ酸配列からなる、実施形
態1から2のいずれかに記載の方法である。
【0117】
実施形態3cは、タウホスホペプチドが配列番号29のアミノ酸配列からなる、実施形
態1から2のいずれかに記載の方法である。
【0118】
実施形態3dは、タウホスホペプチドが配列番号31のアミノ酸配列からなる、実施形
態1から2のいずれかに記載の方法である。
【0119】
実施形態3eは、タウホスホペプチドが配列番号32のアミノ酸配列からなる、実施形
態1から2のいずれかに記載の方法である。
【0120】
実施形態3fは、タウホスホペプチドが配列番号33のアミノ酸配列からなる、実施形
態1から2のいずれかに記載の方法である。
【0121】
実施形態3gは、タウホスホペプチドが配列番号34のアミノ酸配列からなる、実施形
態1から2のいずれかに記載の方法である。
【0122】
実施形態3hは、タウホスホペプチドが配列番号35のアミノ酸配列からなる、実施形
態1から2のいずれかに記載の方法である。
【0123】
実施形態3iは、タウホスホペプチドが配列番号36のアミノ酸配列からなる、実施形
態1から2のいずれかに記載の方法である。
【0124】
実施形態3jは、タウホスホペプチドが配列番号37のアミノ酸配列からなる、実施形
態1から2のいずれかに記載の方法である。
【0125】
実施形態3kは、タウホスホペプチドが配列番号38のアミノ酸配列からなる、実施形
態1から2のいずれかに記載の方法である。
【0126】
実施形態4は、リポソームが皮下投与される、実施形態1から3kのいずれかに記載の
方法である。
【0127】
実施形態5は、リポソームが筋肉内投与される、実施形態1から3kのいずれかに記載
の方法である。
【0128】
実施形態6は、初回投与の1~24週間後に第2の用量の有効量のリポソームを対象に
投与することをさらに含む、実施形態1から5のいずれか1つに記載の方法である。
【0129】
実施形態7は、リポソームがヘルパーT細胞エピトープおよび脂質化CpGオリゴヌク
レオチドのうちの少なくとも一方、好ましくはヘルパーT細胞エピトープおよび脂質化C
pGオリゴヌクレオチドをさらに含む、実施形態1から6のいずれか1つに記載の方法で
ある。
【0130】
実施形態7aは、有効量のリポソームが、1用量当たり30μg~900μg、好まし
くは100μg~585μg、例えば30μg、50μg、100μg、150μg、2
00μg、250μg、300μg、330μg、360μg、390μg、420μg
、450μg、480μg、500μg、520μg、540μg、560μg、580
μg、600μg、700μg、800μg、もしくは900μg、またはそれらの間の
任意の値の量のtoll様受容体4アゴニストを含む、実施形態7に記載の方法である。
【0131】
実施形態7bは、toll様受容体4アゴニストがモノホスホリルヘキサアシルリピド
A、3-脱アシルである、実施形態7または7aに記載の方法である。
【0132】
実施形態7cは、有効量のリポソームが、1用量当たり25μg~625μg、好まし
くは75μg~450μg、例えば25μg、50μg、75μg、100μg、125
μg、150μg、175μg、200μg、225μg、250μg、275μg、3
00μg、325μg、350μg、375μg、400μg、425μg、450μg
、475μg、500μg、525μg、550μg、575μg、600μg、もしく
は625μg、またはそれらの間の任意の値の量のヘルパーT細胞エピトープを含む、実
施形態7から7bのいずれか1つに記載の方法である。
【0133】
実施形態7dは、ヘルパーT細胞エピトープが、配列番号13のアミノ酸配列からなる
T50ヘルパーT細胞エピトープ、配列番号14のアミノ酸配列からなるT46ヘルパー
T細胞エピトープ、配列番号15のアミノ酸配列からなるT48ヘルパーT細胞エピトー
プ、配列番号16のアミノ酸配列からなるT51ヘルパーT細胞エピトープ、または配列
番号17のアミノ酸配列からなるT52ヘルパーT細胞エピトープである、実施形態7か
ら7cのいずれか1つに記載の方法である。
【0134】
実施形態7eは、ヘルパーT細胞エピトープが配列番号13のアミノ酸配列からなるT
50ヘルパーT細胞エピトープである、実施形態7dに記載の方法である。
【0135】
実施形態7fは、有効量のリポソームが、1用量当たり50μg~1250μg、好ま
しくは150μg~800μg、例えば50μg、100μg、150μg、200μg
、250μg、300μg、350μg、400μg、450μg、500μg、550
μg、600μg、650μg、700μg、750μg、800μg、850μg、9
00μg、950μg、1000μg、1050μg、1100μg、1200μg、も
しくは1250μg、またはそれらの間の任意の値の量の脂質化CpGオリゴヌクレオチ
ドを含む、実施形態7から7eのいずれか1つに記載の方法である。
【0136】
実施形態8は、脂質化CpGオリゴヌクレオチドが配列番号18~配列番号22からな
る群から選択されるヌクレオチド配列を有する、実施形態7から7fのいずれか1つに記
載の方法である。
【0137】
実施形態9aは、CpGオリゴヌクレオチドが配列番号18のヌクレオチド配列を有す
る、実施形態8に記載の方法である。
【0138】
実施形態9bは、CpGオリゴヌクレオチドが配列番号19のヌクレオチド配列を有す
る、実施形態8に記載の方法である。
【0139】
実施形態9cは、CpGオリゴヌクレオチドが配列番号20のヌクレオチド配列を有す
る、実施形態8に記載の方法である。
【0140】
実施形態9dは、CpGオリゴヌクレオチドが配列番号21のヌクレオチド配列を有す
る、実施形態8に記載の方法である。
【0141】
実施形態9eは、CpGオリゴヌクレオチドが配列番号22のヌクレオチド配列を有す
る、実施形態8に記載の方法である。
【0142】
実施形態10は、CpGオリゴヌクレオチドが1つまたは複数のホスホロチオエートヌ
クレオチド間連結を有する、実施形態8から9eのいずれか1つに記載の方法である。
【0143】
実施形態11は、CpGオリゴヌクレオチドが少なくとも1つの親油基と共有結合によ
り連結している、実施形態8から10のいずれかに記載の方法である。
【0144】
実施形態11aは、CpGオリゴヌクレオチドが少なくとも1つの親油基とPEGリン
カーを介して共有結合により連結している、実施形態8から10のいずれかに記載の方法
である。
【0145】
実施形態12は、CpGオリゴヌクレオチドがコレステロール基と共有結合により連結
している、実施形態11または11aに記載の方法である。
【0146】
実施形態12aは、CpGオリゴヌクレオチドがコレステロール基とPEGリンカーを
介して共有結合により連結している、実施形態12に記載の方法である。
【0147】
実施形態13は、リポソームが、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホス
ホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリル-3
’-rac-グリセロール(DMPG)、およびコレステロールからなる群から選択され
る1つまたは複数の脂質をさらに含む、実施形態1から12aのいずれか1つに記載の方
法である。
【0148】
実施形態14は、ヘルパーT細胞エピトープが配列番号23~配列番号26からなる群
から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、実施形態1から13のいずれか1
つに記載の方法である。
【0149】
実施形態15は、ヘルパーT細胞エピトープが、配列番号23、配列番号24、および
配列番号25のアミノ酸配列を含む、実施形態14に記載の方法である。
【0150】
実施形態16は、ヘルパーT細胞エピトープが配列番号13~17および39~44か
らなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態14または15に記載の方法であ
る。
【0151】
実施形態17は、toll様受容体4アゴニストがモノホスホリルリピドA(MPLA
)である、実施形態1から16のいずれか1つに記載の方法である。
【0152】
実施形態18は、抗リン酸化タウ抗体を、重度有害事象を誘発せずに、それを必要とす
る対象において誘導する方法であって、1用量当たり約25nmole~約750nmo
le、好ましくは約90nmole~約715nmole、もしくは1用量当たり約90
nmole~約535nmole、もしくは1用量当たり約90nmole~約275n
mole、例えば1用量当たり約25nmole、約30nmole、約35nmole
、約40nmole、約45nmole、約50nmole、約55nmole、約60
nmole、約65nmole、約70nmole、約75nmole、約80nmol
e、約85nmole、約90nmole、約95nmole、約100nmole、約
125nmole、約150nmole、約175nmole、約200nmole、約
225nmole、約250nmole、約275nmole、約300nmole、約
325nmole、約350nmole、約375nmole、約400nmole、約
425nmole、約450nmole、約475nmole、約500nmole、約
525nmole、約550nmole、約575nmole、約600nmole、約
625nmole、約650nmole、約675nmole、約700nmole、約
725nmole、約750nmole、またはそれらの間の任意の値、あるいは1用量
当たり300μg~2400μg、例えば300μg~1800μg、もしくは300μ
g~900μg、例えば1用量当たり100μg、150μg、200μg、250μg
、300μg、400μg、500μg、600μg、700μg、800μg、900
μg、1000μg、1100μg、1200μg、1300μg、1400μg、15
00μg、1600μg、1700μg、1800μg、1900μg、2000μg、
2100μg、2200μg、2300μg、2400μg、2500μg、またはそれ
らの間の任意の値の、リポソームの表面に提示されているテトラパルミトイル化タウホス
ホペプチドを含む有効量のリポソームを対象に投与することを含み、タウホスホペプチド
が配列番号1~配列番号3および配列番号5~配列番号12からなる群から選択されるア
ミノ酸配列を含み、リポソームが、モノホスホリルリピドA(MPLA)、1,2-ジミ
リストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル
-sn-グリセロ-3-ホスホリル-3’-rac-グリセロール(DMPG)、コレス
テロール、および緩衝液をさらに含む、方法である。
【0153】
実施形態18aは、抗リン酸化タウ抗体を、脳炎を誘発せずに、それを必要とする対象
において誘導する方法であって、1用量当たり約25nmole~約750nmole、
好ましくは約90nmole~約715nmole、もしくは1用量当たり約90nmo
le~約535nmole、もしくは1用量当たり約90nmole~約275nmol
e、例えば1用量当たり約25nmole、約30nmole、約35nmole、約4
0nmole、約45nmole、約50nmole、約55nmole、約60nmo
le、約65nmole、約70nmole、約75nmole、約80nmole、約
85nmole、約90nmole、約95nmole、約100nmole、約125
nmole、約150nmole、約175nmole、約200nmole、約225
nmole、約250nmole、約275nmole、約300nmole、約325
nmole、約350nmole、約375nmole、約400nmole、約425
nmole、約450nmole、約475nmole、約500nmole、約525
nmole、約550nmole、約575nmole、約600nmole、約625
nmole、約650nmole、約675nmole、約700nmole、約725
nmole、約750nmole、またはそれらの間の任意の値、あるいは1用量当たり
100μg~2500μgもしくは300μg~2400μg、例えば300μg~18
00μgもしくは300μg~900μg、例えば1用量当たり100μg、150μg
、200μg、250μg、300μg、400μg、500μg、600μg、700
μg、800μg、900μg、1000μg、1100μg、1200μg、1300
μg、1400μg、1500μg、1600μg、1700μg、1800μg、19
00μg、2000μg、2100μg、2200μg、2300μg、2400μg、
2500μg、またはそれらの間の任意の値の、リポソームの表面に提示されているテト
ラパルミトイル化タウホスホペプチドを含む有効量のリポソームを対象に投与することを
含み、タウホスホペプチドが配列番号1~配列番号3および配列番号5~配列番号12か
らなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、リポソームが、モノホスホリルリピドA(
MPLA)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)
、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリル-3’-rac-グリセロ
ール(DMPG)、コレステロール、および緩衝液をさらに含む、方法である。
【0154】
実施形態19は、リポソームが、ヘルパーT細胞エピトープ、およびコレステロール基
と共有結合により連結したCpGオリゴヌクレオチドをさらに含む、実施形態18または
18aに記載の方法である。
【0155】
実施形態19aは、CpGオリゴヌクレオチドがコレステロール基とPEGリンカーを
介して共有結合により連結している、実施形態19に記載の方法である。
【0156】
実施形態19bは、ヘルパーT細胞エピトープが、配列番号23、配列番号24、およ
び配列番号25のアミノ酸配列を含む、実施形態19または19aに記載の方法である。
【0157】
実施形態19cは、ヘルパーT細胞エピトープが配列番号13~17および39~44
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態19または19aに記載の方法
である。
【0158】
実施形態19dは、ヘルパーT細胞エピトープが配列番号39のアミノ酸配列を含む、
実施形態19または19aに記載の方法である。
【0159】
実施形態19eは、ヘルパーT細胞エピトープが配列番号13のアミノ酸配列を含む、
実施形態19または19aに記載の方法である。
【0160】
実施形態19fは、CpGオリゴヌクレオチドが配列番号18のヌクレオチド配列を有
する、実施形態19から19eのいずれか1つに記載の方法である。
【0161】
実施形態19gは、CpGオリゴヌクレオチドが配列番号19のヌクレオチド配列を有
する、実施形態19から19eのいずれか1つに記載の方法である。
【0162】
実施形態20aは、タウホスホペプチドが配列番号27のアミノ酸配列からなる、実施
形態18から19gのいずれか1つに記載の方法である。
【0163】
実施形態20bは、タウホスホペプチドが配列番号28のアミノ酸配列からなる、実施
形態18から19gのいずれか1つに記載の方法である。
【0164】
実施形態20cは、タウホスホペプチドが配列番号29のアミノ酸配列からなる、実施
形態18から19gのいずれか1つに記載の方法である。
【0165】
実施形態21aは、緩衝液がリン酸緩衝液を含む、実施形態18から20cのいずれか
1つに記載の方法である。
【0166】
実施形態21bは、緩衝液がヒスチジンおよびスクロースのうちの少なくとも一方を含
む、実施形態18から20cのいずれか1つに記載の方法である。
【0167】
実施形態22aは、MPLAがモノホスホリルリピドA(例えば3D-(6-acyl
)PHAD(登録商標))を含む、実施形態18から21bのいずれか1つに記載の方法
である。
【0168】
実施形態23は、対象がアルツハイマー病の処置を必要とする、実施形態1から22a
のいずれか1つに記載の方法である。
【0169】
実施形態24は、対象がアルツハイマー病の防止を必要とする、実施形態1から22a
のいずれか1つに記載の方法である。
【0170】
実施形態25は、対象が、早期アルツハイマー病、アルツハイマー病に起因する軽度認
知障害(MCI)、軽度アルツハイマー病、または軽度から中等度のアルツハイマー病の
処置を必要とする、実施形態23に記載の方法である。
【0171】
実施形態26は、対象がヒト対象である、実施形態1から25のいずれか1つに記載の
方法である。
【実施例0172】
以下の本発明の実施例は本発明の本質をさらに例証するためのものである。以下の実施
例は本発明を限定せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって決定されるべきで
あることが理解されるべきである。
【0173】
以下の実施例において使用される実験方法は、別段の指示がない限り、全て常法である
。以下の実施形態において使用される試薬は、別段の指示がない限り、全て通常の試薬供
給業者から購入されている。
【0174】
以下の全ての実施例では、ACI-35.030とは、1200μg/mLの配列番号
28のアミノ酸配列を有するリン酸化タウペプチド、MPLA(3D-(6-acyl)
PHAD(登録商標))、DMPC、DMPG、コレステロール、300μg/mLの配
列番号13のヘルパーT細胞エピトープ、コレステロール基とPEGリンカーを介して共
有結合により連結しているCpGオリゴヌクレオチド、および緩衝液を含有する本発明の
実施形態のリポソーム製剤であり、ACI-35とは、配列番号28のアミノ酸配列を有
するリン酸化タウペプチド、MPLA、DMPC、DMPG、コレステロール、および緩
衝液を含有する本発明の実施形態のリポソーム製剤である。
【0175】
[実施例1]
C57BL/6JマウスにおけるACI-35.030の用量応答
目的:筋肉内(i.m.)注射によってC57BL/6雌マウスに投与した場合のAC
I-35.030ワクチンの免疫原性を評価すること。
【0176】
方法:研究デザインを表1で説明する。
【0177】
【0178】
リン酸化タウペプチドを対象にする特異的IgG抗体応答(ELISAによって決定し
た)を測定した。
【0179】
結果/結論:
ACI-35.030(1200:300)ワクチン中35および80μgの標的用量
のT3を用いた免疫化は、配列番号2のアミノ酸配列を有するT3.5ペプチドを対象に
する抗体を誘導した(
図1を参照のこと)。
【0180】
[実施例2]
アカゲザルにおけるACI-35.030(リポソーム表面のテトラパルミトイル化T3
ホスホ-タウペプチド、MPLA(3D-(6-acyl)PHAD(登録商標))、お
よびCpG7909-Chol、ならびに封入されたT50)ワクチンによって誘導され
たIgG応答の評価
目的:皮下または筋肉内注射によって雄および雌アカゲザルに投与したACI-35.
030(リポソーム表面のテトラパルミトイル化T3ホスホ-タウペプチド、MPLA(
3D-(6-acyl)PHAD(登録商標))、およびCpG7909-Chol、な
らびに封入されたT50)ワクチンの免疫原性を評価して、それによりワクチンの最適な
投与経路および濃度を決定すること。
【0181】
方法:研究デザインを表2で説明する。
【0182】
【0183】
リポソームワクチンの理論用量は、動物1匹当たり1800μgのテトラパルミトイル
化ホスホペプチド(T3)および1800μgのT50ペプチドであった。
【0184】
用量を以下の間隔で4回投与した:1、29、85、および169日目。抗体決定のた
めの血液試料を以下の間隔で回収した:-14、8、22、36、50、64、78、9
2、106、120、134、148、162、176、および190日目。
【0185】
リン酸化および非リン酸化タウペプチド(それぞれT3.5およびT3.6;ELIS
Aによって決定した)、全長ホスホ-タウ(pタウ)タンパク質(ELISAによって決
定した)、ならびにアルツハイマー病患者のヒト脳から抽出したタウの病理形態(ヒトP
HF;MSDによって決定した)を対象にする特異的IgG抗体応答を測定した。臨床徴
候(健康状態、行動変化等)を動物に関して、授受の当日から研究全体にわたって毎日2
回記録した。体重を全ての動物に関して、処置の開始前に少なくとも1回、その後は毎週
少なくとも1回記録した。
【0186】
結果/結論:
全体として、全身性有害作用も注射部位における永続的な皮膚感受性も、いずれのワク
チンレジメンを用いた免疫化後においても観察することができなかった。
【0187】
濃縮(1200:1200)および非濃縮(400:400)ACI-35.030ワ
クチンは、類似したT3.5およびヒトPHF特異的IgG力価を誘導した。T3.5特
異的IgG力価とヒトPHF特異的IgG力価との差は、同じワクチン製剤のs.c.投
与とi.m.投与との間において検出されなかった。
【0188】
[実施例3]
2週間の無処置期間(GLP)が後に続く、2週間ごとのACI-35の8回の皮下注射
後のC57BL/6マウスにおける反復投与毒性研究
目的:14週間にわたる2週間ごとの皮下注射後のC57BL/6マウスにおけるAC
I-35の潜在的な毒性を評価すること。処置期間の完了後、指定した動物を2週間の無
処置期間の間維持して、任意の所見の可逆性を評価した。加えて、ACI-35の免疫原
性を研究中に評価した。
【0189】
方法:研究デザインを表3で説明する。
【0190】
【0191】
結果/結論:
ACI-35-非含有または390μg/注射の最も高い用量レベルでのACI-35
の反復注射は、8回の注射後にアルブミン/グロブリン(A/G)比の低下を引き起こし
た。免疫化した動物において一般的に示されるこの変化はグロブリン(抗体)血漿割合の
増分と一致すると考えられ、このことは、全てのACI-35処置動物が抗体(IgMお
よびIgGのクラスにおける)を生じたために説明される。全般的に、IgG力価は反復
注射後ではIgM力価よりも高く、雌は雄よりも多くの抗体を生じる傾向を有した。
【0192】
注射の部位において、局所かつ一過性の反応(肥厚)が98または390μgのペプチ
ドのACI-35を用いて処置した群に観察された。これらの用量では、両方の性別にお
いて脾臓重量と肝臓重量との増加および胸腺重量の減少、ならびに雌のみにおいて腎臓重
量の増加が記録された。注射部位において、肉眼所見が主に98および390μg/注射
でのACI-35の場合に見られた。顕微鏡的に、PBS対照、ACI-35-非含有、
または24μg/注射のACI-35の投与は、局所において良好な忍容性を示した。非
含有リポソームと関連がある泡沫状マクロファージおよび単核炎症性浸潤物は、用量依存
性の重症度を伴って全ての用量レベルにおいて見られたが、PBS対照群では見られなか
った。皮下組織の線維症および場合により変性/壊死を伴う亜急性炎症反応は、390μ
g/注射でのACI-35の場合にわずかに増加した。
【0193】
ACI-35-非含有または390μg/注射でのACI-35の投与は、髄外造血を
脾臓および肝臓において誘導し、骨髄の骨髄細胞数を増加し、これらは非含有リポソーム
の投与と関連した。加えて、複数の全身臓器における単核炎症性細胞の浸潤物が、主に雌
における390μg/注射でのACI-35の場合に見られ、ACI-35非含有ではよ
り小さな程度であった。この所見は、容易に誘導可能な免疫系を有することが周知のマウ
スの系統であったために、これらの動物においては予期することができた種類の応答であ
り、したがって臨床的に重要ではないと考えられた。98μg/注射でのACI-35の
投与後の唯一の全身所見は脾臓および肝臓における髄外造血であった。24μg/注射で
のACI-35の投与後の全身所見は存在しなかった。
【0194】
これらの所見のいずれも、それらの軽度から中等度の重症度、2週間後の完全または部
分的な回復、および顕著な臨床的相関物または臨床病理相関物の非存在を考慮すると、研
究の定義に従って有害であると考えられなかった。結果として、この研究の実験条件下で
は、3か月にわたって2週間ごとにC57BL/6J雄および雌マウスに投与された39
0μgのペプチドのACI-35用量レベルはNOAEL(全身毒性の徴候がなく、局所
レベルにおいて有害な徴候が存在しない)と考えられた。
【0195】
[実施例4]
4週間の回復期間(GLP)が後に続く、ACI-35を用いたカニクイザルにおける6
か月にわたる皮下毒性研究
目的:4週間ごとに1回の頻度でカニクイザルに7回皮下投与した場合のACI-35
の累計毒性を評価すること。処置関連変化の可逆性もしくは進行、または任意の遅延毒性
を、処置期間後に一部の動物に関して4週間の回復期間中に評価した。
【0196】
方法:研究デザインを表4で説明する。
【0197】
【0198】
結果/結論:
6か月の期間にわたる28日ごとに1回の358、716、および1431μg/注射
でのカニクイザルへのACI-35の皮下投与は、全ての動物において良好な忍容性を示
した。
【0199】
処置との関連性を除外することはできなかったが、好中球数のわずかな増加およびグル
コースレベルのわずかな減少は、全ての値が過去の背景データの範囲内であり、予備試験
値に関して関連する変動が記録されなかったため、有害ではないと考えられた。
【0200】
全ての被験物質処置群は抗体を生じた。1回目の投与の2週間後の免疫応答は、全ての
被験物質処置群において類似した。その後、平均抗pタウ抗体力価は、処置期間全体にわ
たって、用量効果関係の傾向に従って増加した。4週間の回復を経た動物は、7回目の投
与の2週間後に記録された抗体レベルに関して明確な減少を示した。
【0201】
取得された結果に基づくと、これらの研究条件下では、6か月にわたり28日ごとに1
回投与された1431μg/注射の用量は、この研究に関してNOAEL(無毒性量)と
考えられた。
【0202】
[実施例5]
4週間の回復期間(GLP)が後に続く、ACI-35.030を用いたリーサスザルに
おける3か月にわたる筋肉内毒性研究
目的:この研究の目的は、月に1回の頻度で3回ナイーブ雄および雌リーサスザルに筋
肉内投与した場合のACI-35.030の潜在的な毒性を評価することであった。起こ
り得る処置関連変化の可逆性を、対照および高用量群の2匹/性別に関して4週間の回復
期間中に評価した。
【0203】
デザイン:適用した研究プロトコルは以下の通りであった(表5)。
【0204】
【0205】
被験および参照物質を単回筋肉内注射によって1、29、および85日目に大腿の3つ
の異なる部位に投与した。研究全体にわたって、全ての動物を生存/死亡および臨床徴候
に関して毎日少なくとも2回観察した。各投与日において、動物を、投薬前ならびに投薬
の6、24、および48時間後に、投薬部位における局所反応に関する評価(ドレイズス
コア化)に供した。
【0206】
食物消費を、研究を通してケージごとに定性的に推定した。体重を馴化期間の開始から
研究の終了まで毎週評価した。眼底検査を予備試験中および最終投与の3/4日後に1回
実施した。心電図(四肢誘導I、II、およびIII、ならびに増高誘導aVR(増高電
位右)、aVL(増高電位左)、およびaVF(増高電位足))を、予備試験中および最
終投与のおよそ24時間後に1回動物ごとに記録した。
【0207】
臨床病理評価(血液学、臨床化学、凝固、および尿検査)を、全ての動物に関して予備
試験期間中、最終注射の2日後(87日目)に1回、および全ての生存動物に関して回復
期間の終了頃(125日目)に1回実施した。
【0208】
抗p-タウおよび抗T50のELISAによる決定のための血清の血液試料を、-14
、8、22、36、50、64、78、92、99、106、120、および127日目
に採取した(106、120、および127日目は回復動物に関してのみ採取した)。
【0209】
PBMCを全ての群において-14日目、最終免疫化の2週間後、および回復群におい
て剖検前に収集した。IL-4およびIFN-γ ELISPOT分析を実施して、タウ
特異的T細胞応答を決定した。
【0210】
免疫表現型同定を全ての動物において、予備試験中および剖検時に1回、試料採取した
血液に基づいて評価した。
【0211】
血液を-14および99日目(主要および回復)ならびに127日目(回復)にPMB
C(T3.5に対するT細胞応答に関するELISpot)のために採取した。
【0212】
脳脊髄液(CSF)試料を全ての動物から鎮静下で、予備試験中および各死後検査前に
、細胞学評価のために採取した。
【0213】
予定された処置または回復期間の完了後、全ての動物を剖検し、様々な臓器の重量を測
定した。組織病理学的検査を、全ての研究動物の脳、注射部位、およびリンパ節に対して
実施した。
【0214】
免疫組織化学(IHC)技法により、ACI-35.030によって誘導された抗体の
種々のヒト組織に対する潜在的な結合活性を専用の研究段階において評価し、ここで、ヒ
ト組織に対するACI-35.030誘導サル抗体の交差反応性は、2400μgのT3
を投薬された動物の99日目に試料採取した血清を使用して、3名の関連のない個体由来
の42の凍結ヒト組織および血液塗抹のパネルにおいて評価した。
【0215】
結果:
死亡も、体重、身体変化、性向(appetence)、眼科学、心電図検査、臨床病理(血液
学、凝固、臨床化学、および尿検査)、または免疫表現型同定に対するACI-35.0
30関連効果も存在しなかった。
【0216】
注射部位における皮膚刺激症状(紅斑および浮腫)の一過性の軽微から中等度の徴候が
、免疫化後に全ての群にわたって数匹の動物に観察された。一時的な重度の局所浮腫が、
2400μgのT3/注射を投与した5匹の雌のうちの1匹の処置した後肢に48時間で
29日目および87日目に観察された。しかしながら、浮腫は1日後(30日目および8
8日目)に消失した。
【0217】
平均臓器重量における用量非依存性のいくつかの差が対照群とおよび被験物質投薬群と
の間に認められた。肉眼的に、鼠径、腸骨、および骨盤リンパ節は、対照を含む全ての群
にわたって腫大していると無作為に評され、多くの場合顕微鏡的にリンパ球過形成と相関
し、4週間の回復期間後に大半が回復し、ワクチン/ワクチンアジュバントによる賦活化
に起因する可能性が高いと解釈された。顕微鏡的に、最小から軽度の炎症が、注射部位の
骨格筋、ならびに真皮および/または皮下組織に観察され、これに付随して、骨格筋の最
小の変性および/または再生が対照を含む全ての群にわたって認められた。炎症は、針穿
刺に関連する注射手技と注射した材料に対する局所免疫応答との組合せに起因する可能性
が高いと考えられた。これらの変化は有害とは考えられず、4週間の回復期間後に回復す
ると予測された。
【0218】
ACI-35.030の投与と関連がある脳の顕微鏡的変化は存在しなかった。
【0219】
ACI-35.030は、1200μg/用量と2400μg/用量の両方において持
続的な抗pタウIgG力価を誘導した(
図2)。
【0220】
タウ特異的T細胞応答は処置の終了時に観察されず、T細胞活性化関連毒性、例えば髄
膜脳炎の低いリスクを示唆した。
【0221】
3名の関連のない個体由来の42の凍結ヒト組織および血液塗抹に基づいて行った免疫
組織化学検査は、1/300および1/100において検査したACI-35.030誘
導サル抗体が、AD脳切片におけるタウ濃縮体を特異的に染色した(
図3、パネルA、A
CI-35.030を用いた処置前、パネルB:2400μg/用量でのACI-35.
030の3回の注射後、1/100に希釈した血清)が、試験した対照組織のいずれにお
いても、オンターゲット染色もオフターゲット染色ももたらさなかったことを強調した。
一例として、処置前および後の血清を用いた結腸切片染色(それぞれパネルCおよびパネ
ルD)を
図3に示す。
【0222】
結論:
全体として、1、29、および85日目の免疫化後のACI-35関連変化の非存在の
ために、2400μgのT3の最も高い用量レベルは無影響量(NOEL)と考えられた
。
【0223】
[実施例6]
ペプチドのEpiScreen(商標)免疫原性分析
目的:
2種の16マーペプチド、すなわちタウ393~408[pS396/pS404](
配列番号2のアミノ酸配列を有するT3.5)およびタウ393~408(配列番号4の
アミノ酸配列を有するT3.6)を、51名のヒトドナーにおいて、CD4+T細胞応答
を誘導する能力に関してEpiScreen(商標)経時的T細胞アッセイにて試験した
。
【0224】
デザイン:
EpiScreen(商標)経時的T細胞増殖アッセイおよびIL-2 ELISPOT
アッセイ
51名のヒトドナー由来のPBMCを、5μMの最終濃度のいずれかのペプチドを用い
て刺激した。ドナーごとに、再現性対照(100μg/mL KLHと共にインキュベー
トした細胞)、ベンチマーク臨床対照(0.3μMヒト化A33と共にインキュベートし
た細胞)、および培養培地のみのウェルも含めた。増殖およびIL-2産生を種々の時点
後に評価した。
【0225】
EpiScreen(商標)データ分析
増殖アッセイおよびIL-2 ELISPOTアッセイに関して、2以上の刺激指数(
SI)という経験的な閾値(SI≧2.00)がこれまでに確立されており、それによっ
て、この閾値を超える応答を誘導する試料を陽性と見なし、SI≧1.90を境界応答試
料と考えた。
【0226】
ある範囲の生物製剤を用いたこれまでのEpiScreen(商標)経時的T細胞アッ
セイは、EpiScreen(商標)アッセイにおけるドナーT細胞応答の百分率と臨床
において観察された免疫原性のレベルとの明確な相関を示している。全般に、EpiSc
reen(商標)アッセイにおいて10%超の陽性応答を誘導するタンパク質治療薬は、
臨床における免疫原性の顕著なリスクと関連する。
【0227】
結果:
増殖アッセイとIL-2 ELISPOTアッセイとの全体的な相関は高く(KLHの
場合に98%)、したがって応答性ドナーを、各試料に対する陽性応答をIL-2 EL
ISPOTアッセイと増殖アッセイの両方において開始したドナーとして定義した。これ
らの2種のアッセイから組み合わせたデータセットの分析は、51名中1名(2%)のド
ナーがタウ393~408[pS396/pS404]に応答し、51名中2名(4%)
のドナーがタウ393~408に応答したことを明らかにした。境界応答、および2種の
アッセイのうちの一方にのみ応答するドナーを考慮すると、51名中4名のドナー(8%
)がタウ393~408[pS396/pS404]に応答し、51名中4名のドナー(
8%)がタウ393~408に応答した。したがって、応答の全体的な頻度および規模は
両方のペプチドに関して低く、最大で8%のドナーが応答性であった。
【0228】
結論:
増殖およびIL-2分泌によって測定される被験ペプチド(タウ393~408[pS
396/pS404]およびタウ393~408)のCD4+T細胞応答を誘導する能力
を、51名のHLA型のドナーのコホートに対して試験した。研究のデータは、CD4+
T細胞応答を誘導する全体的な相対リスクが両方のペプチドに関して低かった(2~8%
)ことを示した。
【0229】
EpiScreen(商標)アッセイにおいて試験したタンパク質治療薬との比較にお
いて、この研究のデータは、両方のペプチドがCD4+T細胞応答をヒトにおいて誘導す
る低い潜在的リスクを有すると考えられ得ることを示す。
【0230】
[実施例7]
ヒトにおけるACI-35の安全性および有効性
ACI-35ワクチン(ACI-35)の安全性、忍容性、および免疫原性を、UKお
よびフィンランドの軽度から中等度のADを有する患者において行った第Ib相臨床研究
において評価した(ACI-35-1201:軽度から中等度のアルツハイマー病を有す
る患者におけるACI-35の安全性、忍容性、および免疫原性に関する第Ib相多施設
二重盲検無作為化プラセボ対照研究)。
【0231】
目的:軽度から中等度のADを有する患者における3用量および3回投薬レジメンでの
ACI-35を、安全性および忍容性、ならびに抗ホスホ-タウ(pタウ)免疫グロブリ
ンG(IgG)力価の血清への誘導に関して予備的に評価すること。
【0232】
方法:5つのコホートのそれぞれは、表5に記載されているように、種々の用量(30
0μg、900μg、または1800μgのテトラパルミトイル化ホスホペプチド(pタ
ウペプチドT3、配列番号28))、および/または6か月にわたって続く投薬レジメン
(2、3、または5用量投与)と、その後の最終注射の12~16か月後(コホート1)
または6か月後(コホート2~5)のブースター注射とからなった。
【0233】
【0234】
24名の患者を無作為化し、少なくとも1用量の研究薬ワクチンを投与した。平均患者
年齢は73.6±5.88歳であり、平均MMSEスコアはスクリーニング時において2
3.3±2.71であった。15名の女性と9名の男性を無作為化した。22名の患者が
研究を完了した。コホート2の2名の患者(1名は900μg、1名はプラセボ)は、研
究の完了を著しく妨げたかまたは不可能にしたACI-35と関連のない重大な医学的状
態のために研究を中止した。
【0235】
選択基準は以下の通りであった:
1.米国立神経疾患・コミュニケーション疾患・脳卒中研究所-アルツハイマー病・関連
障害協会の基準に従ってアルツハイマー病(AD)である可能性が高い
2.60歳以上かつ85歳以下の年齢
3.スクリーニング時に18~28点のミニメンタルステート検査(MMSE)
4.患者は安定用量のアセチルコリンエステラーゼ阻害薬をスクリーニング前に少なくと
も3か月間受けていなければならなかった
5.同意書を提出して、臨床評価を支援し、安全性問題を報告する信頼できる配偶者また
は他の在宅介護者によって介護されている患者
6.研究者の見解において、書面によるインフォームドコンセントを理解して署名し、全
ての研究手順に従うことができた患者(同意は任意の試験関連手順を行う前に取得しなけ
ればならなかったことに留意されたい)
7.女性は閉経後少なくとも1年経過していなければならない、および/または外科的に
不妊となっていなければならなかった
8.閉経後でもなく、外科的に不妊となってもいない男性患者の女性パートナーは、信頼
性の高い避妊措置、例えば二重バリア避妊法またはホルモン避妊法を使用しなければなら
なかった
【0236】
結果/結論:
全体として、ACI-35は、ヒト対象において試験した全ての用量および処置レジメ
ンにおいて安全であり、良好な忍容性を示し、注射は、全ての研究コホートにおいて1回
目の注射直後に抗pタウ抗体の急速な誘導を引き起こした。注射部位紅斑、注射部位反応
、および疲労は、研究薬と関連する最も一般的な治療下で発現した有害事象(TEAE)
であった。CNS炎症の発生を示唆する証拠は、臨床的にも臨床検査所見または放射線所
見からも存在しなかった。注射部位反応を除いては、プラセボと比較したAEのパターン
は研究医薬との関連性を示唆しなかった。全般的に軽度かつ自己限定的であった注射部位
反応は、高用量であるほど高頻度であり、コホート4および5では活性医薬を投与された
全ての患者によって報告された。無症候性低血糖は、プラセボよりも活性医薬においてよ
り一般的に観察されたが、この現象の自然発生が公知であることを考慮すると、研究医薬
との不確かな関連性を有する。5例のSAEが報告され、全てコホート2の患者において
であり、そのうちの1名の患者はプラセボを用いて処置され、2例のSAE(尿路性敗血
症および腎盂腎炎)を経験した。これらの2例のSAEは研究薬と関連しなかった。3例
の研究薬と関連する可能性があるSAE(急性腎盂腎炎、洞結節機能不全、およびめまい
)はACI-35を用いて処置した2名の患者に関して報告され、これらが唯一の観察さ
れた有害反応であった。死亡はこの研究では報告されなかった。
【0237】
[実施例7]
ヒトにおけるACI-35.030の安全性および有効性
ACI-35.030ワクチン(ACI-35.030)の安全性、忍容性、および免
疫原性を、欧州の早期AD(ADに起因する軽度認知障害(MCI)および軽度AD)を
有する患者において行った第Ib/IIa相多施設二重盲検無作為化プラセボ対照臨床研
究において評価する(ACI-35-1802研究)。
【0238】
目的:早期AD(例えばADに起因する軽度認知障害(MCI)および軽度AD)を有
する参加者における最大3用量でのACI-35.030を、早期ADを有する参加者に
おける安全性および忍容性、ならびに抗ホスホ-タウ(抗pタウ)の血清への誘導を含む
タウタンパク質の異常形態に対する免疫応答の誘導に関して、74週の時間枠で予備的に
評価すること。
【0239】
副次的目的:74週の時間枠で、例えばタウに対するIgG力価およびpタウとタウと
に対するIgM力価の血清への誘導を評価することによって研究ワクチンの免疫原性をさ
らに評価すること、ならびに免疫化によって誘発される抗体のアビディティを評価するこ
と。
【0240】
探索的目的:それぞれ74週の時間枠で、ADの進行に関する推定バイオマーカー、す
なわち総タウおよびpタウタンパク質の血中および/またはCSF中濃度に対する研究ワ
クチンの効果を探索すること;血中のT細胞の活性化に対する研究ワクチンの効果を探索
すること;血中炎症性サイトカイン(例えば、IL-1β、IL-2、IL-6、IL-
8、IL-10、IFN-γ、およびTNF-α)に対する研究ワクチンの効果を探索す
ること;行動、認知的および機能的活動に対する研究ワクチンの効果を探索すること。
【0241】
方法:3つのコホートのそれぞれは、48週間にわたって続く(0、8、24、および
48週目に用量投与)、組成物におけるpタウペプチドT3の量(300μg、900μ
g、または1800μgのテトラパルミトイル化ホスホペプチドpタウペプチドT3、配
列番号28)によって言及される種々の用量のACI-35.030と、その後の24週
間(6か月)の安全性追跡期間とを受ける患者からなる。
【0242】
24名の患者を3つのサブコホートに無作為化し、各サブコホートにおいて2名の患者
はプラセボを受け、6名の患者はACI-35.030を受ける。投薬量を筋肉内投与す
る。
【0243】
安全性評価は、各投薬直後およびその48~72時間後に電話によって全ての研究患者
に関して実施する。各サブコホートでは、最初の4名の患者の1回目の投薬は、前の患者
の48~72時間での安全性評価を実施して、現場の研究責任者によって研究ワクチンと
関連がある臨床的に関連のある安全性問題が存在しないことを確認してから実施する。
【0244】
全ての処置患者は、処置期間の終了後に24週間(6か月)の安全性追跡期間を有する
。この期間中、患者は、最終投与の19週間後の1回目の追跡来院と、追跡期間の終了時
(最終投与の26週間後)の最終来院とをするように求められる。参加者の安全性は、デ
ータ安全性モニタリング委員会(DSMB)による安全性データの定期的な検討によって
研究全体にわたってモニタリングする。
【0245】
中間分析を以下の通りに実行する:
【0246】
第1の中間分析は、全てのコホート1患者が4回目の来院(10週目)を完了してから
、すなわち2回目の注射の2~4週間後に行う。目的は、この時点までの安全性、忍容性
、および免疫原性データを検討して、コホート2を開始すべきか否かを決定することであ
る。
【0247】
第2の中間分析は、全てのコホート2患者が4回目の来院(10週目)を完了してから
、すなわち2回目の注射の2~4週間後に行う。目的は、この時点までの安全性、忍容性
、および免疫原性データを収集して、コホート3を開始すべきか否かを決定することであ
る。
【0248】
第3の中間分析は、全てのコホート3患者が6回目の来院(26週目)を完了してから
、すなわち3回目の注射の2~4週間後に行う。目的は、コホート1、2、または3のい
ずれかを延長して、免疫原性、安全性、および忍容性の点で最も好ましいプロファイルを
提示する用量での追加の安全性/忍容性データを収集することを決定することである。
【0249】
第4の中間分析は、処置期間の終了時(すなわち4回目の注射の2~4週間後)に実施
する。目的は、該当する場合はサブコホート拡大の患者のデータを含む、この時点までの
安全性/忍容性および免疫原性データを検討することである。バイオマーカー結果は、支
持的な探索データとして含めることができる。結果を、他のコホートに関してその後に取
得された結果と比較して、さらなる臨床開発のための最良の戦略を全ての研究コホートか
ら選択する。
【0250】
第5の中間分析は、安全性追跡期間の終了時、すなわち全てのコホート1患者が11回
目の来院(74週目)を完了してから実施する。目的は、第4の中間分析と同じであり、
その後、結果を全てのコホートにわたって比較する。
【0251】
研究集団は、NIA-AA基準に従った軽度ADまたはADに起因するMCIの診断を
有する50~75歳(男性および女性)である。
【0252】
選択基準は以下の通りである:
1.50から75歳までの男性または女性。
2.NIA-AA基準に従ったADに起因する軽度認知障害(MCI)または軽度AD、
かつ0.5または1の臨床認知症評価尺度(CDR)総合スコア。
3.22以上のミニメンタルステート検査(MMSE)スコア。
4.AD病態に関するNIA-AA2018基準と矛盾しないスクリーニング時のCSF
アミロイドベータ42(Aβ42)およびリン酸化タウのレベル。CSF Aβ42レベ
ルに関して境界である症例では、アミロイド陽性を決定するのに役立つ他の結果、例えば
Aβ42/Aβ40比、および症例ごとの陽性アミロイドPET走査または陽性CSF
Aβ42レベルの病歴を考慮してもよい。スクリーニング前3か月以内に実施したCSF
試料採取の結果は、それらがアミロイド病理の存在と矛盾せず、かつ対応するCSF試料
を検査のために研究に使用することができるという条件で、症例ごとに許容される。
5.ベースライン前の少なくとも3か月間に、販売されているADのためのいかなる処置
も受けていないか、または安定用量のアセチルコリンエステラーゼ阻害薬および/もしく
はメマンチンを受けている患者。
6.服薬遵守を保証し、臨床評価を支援し、安全性問題を報告する信頼できる情報提供者
または介護者によって介護されている患者。
7.女性は閉経後少なくとも1年経過していなければならない、および/または外科的に
不妊となっていなければならない。出産の可能性があるかまたは閉経後ではない女性は、
スクリーニング時に陰性の妊娠検査結果を有し、かつスクリーニング来院から参加の終了
まで高度に効果的な避妊方法を使用する意思を有していなければならない。尿妊娠再検査
を処置期間の全体にわたって実施して、対象が研究ワクチンを受け続けることができるか
どうかを決定する。出産の可能性があるパートナーを有する男性患者は、研究中適切な避
妊措置を使用する意思を有していなければならない。
8.研究者の見解において、書面によるインフォームドコンセントを理解して同意するこ
とができる患者。
9.患者および情報提供者または介護者は、研究の言語のうちの1つが流暢であり、腰椎
穿刺を含む全ての研究手順に従うことができなければならない。
【0253】
除外基準は以下の通りである:
1.患者がプラセボのみを用いて処置され、プラセボ製剤がいかなる特異的免疫応答も誘
導すると予期されないという文書化された証拠が存在する場合を除く、能動免疫化を使用
したADおよび/または神経障害に関する以前の臨床試験への参加。
2.対象がプラセボのみを用いて処置され、プラセボがいかなる特異的免疫応答も誘導す
ると予期されないという文書化された証拠が存在する場合を除く、任意の受動的免疫化を
使用したADおよび/または神経障害に関する以前の臨床試験へのスクリーニング前過去
12か月以内の参加。
3.BACE-1阻害薬を含む任意の低分子薬を使用したADおよび/または神経障害に
関する以前の臨床試験へのスクリーニング前過去3か月以内の参加。
4.実験的または承認された医薬または療法を使用する任意の他の臨床試験への同時参加
。
5.自己免疫疾患の臨床症状を有しない患者における少なくとも1/160の希釈度での
陽性抗核抗体(ANA)力価の存在。
6.自己免疫疾患、または自己免疫疾患の存在と矛盾しない臨床症状の現在または過去の
病歴。
7.スクリーニング前に3か月を超えて一時的に処方されている場合を除く、免疫抑制薬
または全身性ステロイドの使用を含むがこれに限定されない免疫抑制。
8.以前のワクチンおよび/または医薬に対する重度のアレルギー反応を含むがこれに限
定されない重度のアレルギー反応(例えばアナフィラキシー)の病歴。
9.臨床的に有意な低血糖エピソードの前歴。
10.精神障害の診断・統計マニュアルV(DSM-V)基準に従って現在満たされてい
るかまたは過去5年以内に満たされていた薬物またはアルコール乱用または依存。
11.研究処置の安全性および忍容性の評価、ならびに/または全研究来院予定の遵守を
妨害する可能性が高い任意の臨床的に有意な医学的状態。
12.患者における、免疫系に影響を与える可能性が高い、および/または研究ワクチン
の免疫化可能性を潜在的に損なうと予期される任意の臨床的に有意な医学的状態(例えば
獲得または自然免疫抑制障害の任意の病歴)。
13.ヒドララジン、プロカインアミド、キニジン、イソニアジド、TNF阻害薬、ミノ
サイクリンのスクリーニング直前12か月以内の使用。
14.安定用量の場合を除く、スクリーニング前の少なくとも3か月間のジルチアゼムの
使用。
15.コロンビア自殺重症度評価尺度を使用して、対象が自殺念慮質問4もしくは5に「
はい」と回答するかまたは過去12か月以内の自殺行動に「はい」と回答することとして
定義される、顕しい自殺のリスク。
16.ADと関連があると考えられるもの以外の併発している精神または神経性障害(例
えば、意識喪失を伴う頭部損傷、症候性脳卒中、パーキンソン病、重度の頸動脈閉塞性疾
患、TIA)。
17.非制御型てんかん発作の病歴または存在。てんかん発作の病歴の場合、てんかん発
作は、その発生がベースライン前2年以内に存在しないように良好に制御されていなけれ
ばならない。抗てんかん薬の使用は、スクリーニング前の少なくとも3か月間安定用量で
ある場合に容認される。
18.スクリーニング前過去10年以内の髄膜脳炎の病歴。
19.出血性および/または非出血性脳卒中の病歴を有する患者。
20.末梢神経障害の存在または病歴。
21.CNS関与の可能性を有する炎症性神経障害の病歴。
22.患者の症状を引き起こし得るADと矛盾する代替病態の構造的証拠を示すスクリー
ニングMRI走査。1cm未満の直径の良性髄膜腫、3つ以上のラクナ梗塞もしくは直径
1cm超のただ1つの梗塞、または脳表ヘモジデリン沈着症の任意の単一の領域以外の空
間占有性病変の証拠、あるいは10mm以上の以前の大出血の証拠。T2*MRIにおけ
る微小出血は、部位にかかわらず最大で10まで認められる。
23.MRI検査を、MRI研究が禁忌である金属インプラントおよび/または重度の閉
所恐怖症を含むがこれらに限定されない何らかの理由のために行うことができない。
24.顕著な聴力もしくは視力障害、またはプロトコルに従うことおよびアウトカム測定
を実施することを妨げることに関連すると研究者によって判断される他の問題。
25.スクリーニング前3か月以内の臨床的に有意な感染症または大きな外科手術。研究
への参加中に行われることが予想される計画された外科処置は、スクリーニング時に医療
監視者によって検討および承認されなければならない。
26.インフルエンザワクチンを含む、ベースライン前過去2か月以内に投与された任意
のワクチン。
27.スクリーニング時のECGにおける臨床的に有意な不整脈または他の臨床的に有意
な異常。
28.ベースライン前1年以内の心筋梗塞、不安定狭心症、または重大な冠動脈疾患。
29.処置された扁平上皮癌腫、基底細胞癌腫、および表皮内黒色腫、または完全に除去
され、治療されたと考えられる非浸潤性前立腺癌もしくは非浸潤性乳癌以外の癌の病歴を
過去5年以内に有する患者。
30.現場の研究者の見解における、血液学的パラメータ、肝機能検査、および他の生化
学的測定に関する、臨床的に有意と判断される正常値からの臨床的に有意な逸脱。
31.スクリーニング時の血清検査によって確認した場合に妊娠しているか、または妊娠
を計画しているかまたは授乳中の女性対象。
32.毎日100mg未満の用量のアスピリンを除く任意の抗凝固薬または抗血小板薬を
受けている患者(予定されているかまたは予定されていない腰椎穿刺中の出血のリスクを
避けるため)。
33.不眠症の処置のための安定低用量の場合を除く、抗精神病薬を受けている患者。
34.スクリーニング前30日の間に血液もしくは血液製剤を提供したか、または研究に
参加している間に血液を提供することを計画している患者。
35.スクリーニング時の活性梅毒と矛盾しない陽性のVDRL(性病研究所)。
36.スクリーニング時に陽性のHIV検査結果を有する患者。
37.スクリーニング時に検査によって測定した場合に活性Bおよび/またはC型肝炎を
有する患者。
38.正常の上限の1.5倍超のクレアチニン、異常な甲状腺機能検査結果、または血清
B12もしくは葉酸レベルの臨床的に有意な低下を有する患者(注:甲状腺補充剤の全て
の経口用量、B12、または葉酸は、スクリーニング前の少なくとも3か月間安定でなけ
ればならない)。
【0254】
結果/結論:
以下の主要評価項目を評価する:
安全性および忍容性-有害事象、即時および遅延型反応原性(例えばアナフィラキシー、
疼痛、発赤、免疫複合体疾患、腫脹、発熱を含む局所および全身性反応原性);忍容性の
総合評価;自殺念慮(C-SSRS);行動(NPI);安全性を評価するための認知お
よび機能評価(RBANS、CDR-SB);バイタルサイン;MRI画像診断;心電図
;血液および尿における慣例的な血液学および生化学評価;血液における抗DNA抗体を
含む自己免疫抗体の評価;血中およびCSF中の炎症性マーカー。
免疫応答-血清中の抗pタウIgG力価(幾何平均、ベースラインからの変化、応答者率
、ピーク、および曲線下面積)。
【0255】
以下の副次的評価項目を評価する:
免疫応答-血清中の抗タウIgG、抗pタウおよび抗タウIgM力価(幾何平均、ベース
ラインからの変化、応答者率、ピーク、および曲線下面積)、アビディティ検査によるI
gG応答プロファイルの決定。
【0256】
以下の探索的評価項目を評価する:
血中および/またはCSF中のバイオマーカー力価のベースラインからの変化(例えば総
タウおよびpタウタンパク質)、血中のT細胞活性化レベルのベースラインからの変化、
血中の炎症性サイトカイン(例えば、IL-1B、IL-2、IL-6、IL-8、IL
-10、IFN-γ、およびTNF-α)力価のベースラインからの変化、自殺念慮(C
-SSRS)、行動(NPI)、認知的および機能的活動(RBANS、CDR-SB)
スコアのベースラインからの変化。
【0257】
[実施例8]
筋肉内注射は皮下注射よりも多くの同種免疫応答を誘導した
アカゲザルの群(群1つ当たりn=3匹の雄および3匹の雌)を、1800μg/用量
のACI-35.030を用いた1日目、29日目、85日目、および169日目のワク
チン接種によって筋肉内または皮下免疫化した。
【0258】
濃縮対らせん状細線維(ePHF)の調製物を、修正したGreenbergおよびD
aviesの方法(1991, Proc Natl Acad Sci U S A, 87(15):5827-31)を使用して、不
溶性タウのサルコシル抽出によって組織学的に確認したAD対象の死後脳組織から取得し
た。濃縮対らせん状細線維(ePHF)に特異的な抗体力価を、Mesoscale D
iscovery(MSD)プラットフォームを使用して評価した。MSDストレプトア
ビジンプレートを、ビオチン化抗タウ捕捉抗体(HT7-ビオチン、ThermoSci
entific)を用いてコーティングした後に、AD患者から単離したePHFを用い
てインキュベーションし、ePHFに特異的なIgG抗体を、サルIgG抗体と交差反応
するSulfoTag標識抗ヒトIgG抗体を使用してさらに検出した。より詳細には、
ePHFを、事前に1%BSAで飽和させ、ビオチン化HT-7(Thermo Sci
entific)を用いてコーティングしたMSD Gold小スポットストレプトアビ
ジン96ウェルプレート(MSD)に添加した。1時間のインキュベーション後、プレー
トを、PBSTを用いて洗浄し、血清の段階希釈液を添加し、2時間インキュベートした
。結合した抗体を、SulfoTag標識抗ヒトIgG抗体を使用し、続いて1%PFA
への固定ステップを行った後、読取り緩衝液Tを添加して検出した。プレートを、Sec
tor Imager(MSD)を使用して分析した。結果を個々のサルごとに、群1つ
当たりの幾何平均と一緒に1ミリリットル当たりの任意単位(AU/mL)で表した(図
4)。1回目の免疫化後50日目、106日目、および190日目のePHFに特異的な
抗体力価を表す。
【0259】
図4は、リポソームワクチンが高いePHF特異的IgG力価を誘導したこと、および
筋肉内注射が皮下注射よりも多い同種抗体応答を誘導したことを示す。
[配列表]
【0260】
【0261】
【0262】