IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイピーゲート・アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

<>
  • 特開-ブレーキシステム 図1
  • 特開-ブレーキシステム 図2
  • 特開-ブレーキシステム 図3
  • 特開-ブレーキシステム 図4
  • 特開-ブレーキシステム 図4a
  • 特開-ブレーキシステム 図5
  • 特開-ブレーキシステム 図5a
  • 特開-ブレーキシステム 図6
  • 特開-ブレーキシステム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178174
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】ブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/18 20060101AFI20241217BHJP
   B60T 13/138 20060101ALI20241217BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20241217BHJP
   B60T 8/40 20060101ALI20241217BHJP
   B60T 11/16 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B60T17/18
B60T13/138 A
B60T8/17 B
B60T8/40 C
B60T11/16 C
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024142010
(22)【出願日】2024-08-23
(62)【分割の表示】P 2024074235の分割
【原出願日】2018-06-20
(31)【優先権主張番号】102017113563.4
(32)【優先日】2017-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】509159159
【氏名又は名称】アイピーゲート・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】IPGATE AG
【住所又は居所原語表記】Churerstrasse 160b, 8808 Pfaeffikon, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ライバー,ハインツ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ツァンテン,アントン
(72)【発明者】
【氏名】ライバー,トーマス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】改良したブレーキシステムを提供する。
【解決手段】ツーボックスブレーキシステムは、第1のボックスとして電動駆動体及び伝動装置を有する第1のピストン-シリンダユニットを備え、かつ第2のボックスとして圧力媒体をホイールブレーキに供給するためのESPユニットを有し、第1のピストン-シリンダユニットは、第1及び第2の油圧ラインを介して圧力媒体をESPユニットに供給する圧力供給ピストンを有し、ESPユニットなしの緊急ABS機能を、第1のピストン-シリンダユニット及び分離弁を使用して実施するように適合され、第1の軸のホイールブレーキと第2の軸のホイールブレーキに供給される圧力とが別個に調整されるように緊急ABS機能を実施し、又は、ESPユニットのモータ-ポンプユニットなしの緊急運転における緊急ABS機能を、第1のピストン-シリンダユニット及びESPユニットの弁を使用して実施するように適合される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-駆動装置、特に、プレーキペダルと、
-弁装置を経由して圧力媒体をブレーキ回路に供給するための2つのピストン、特に、補助ピストン(HiKo)及び第2のピストン(SK)を含む第1のピストン-シリンダユニット(主シリンダ)であって、前記ピストンの一方、特に前記補助ピストンは、前記駆動装置を用いて駆動できる、第1のピストン-シリンダユニットと、
-電動駆動体を有する第2のピストン-シリンダユニットと、
-伝動装置と、
-弁装置を経由して圧力媒体を前記ブレーキ回路の少なくとも1つに供給するための少なくとも1つのピストン(圧力供給部DV)と、
-圧力媒体を前記ブレーキ回路に供給するための、弁装置(ABS/ESPユニット)を含むモータ-ポンプユニットと、
を含むブレーキシステムであって、
油圧ストロークシミュレータ(WS)が、前記第1のピストン-シリンダユニットの圧力チャンバ又は作動チャンバに接続される、
ことを特徴とするブレーキシステム。
【請求項2】
前記第1のピストン-シリンダユニットは、(単一の)ピストン(SK)が配置され、少なくとも1つのブレーキ回路が接続された第1の圧力チャンバ又は第1の作動チャンバと、少なくとも1つのブレーキ回路が接続された第2の圧力チャンバ又は第2の作動チャンバとを有することと、前記ブレーキ回路は、油圧ラインを介して、前記第2のピストン-シリンダユニット(圧力供給部DV)の圧力チャンバ又は作動チャンバに接続されることと、
を特徴とする、請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項3】
前記第1のピストン-シリンダユニットは、第3の圧力チャンバ又は第3の作動チャンバを形成するための、貫通プランジャ(16a)用のシール付き仕切り壁を有し、前記第3の圧力チャンバ内にピストン(補助ピストン16)が配置され、前記第3の圧力チャンバは、特に、弁装置(FV)を介してブレーキ回路(BK1)に接続される、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のブレーキシステム。
【請求項4】
前記ブレーキ回路(BK1)の不具合が発生した場合に、前記プランジャ(16a)は、前記ブレーキペダルの力を前記第2のピストン(SK)に伝達することによって前記第2のブレーキ回路(BK2)内に圧力を発生させる、
ことを特徴とする、請求項3に記載のブレーキシステム。
【請求項5】
前記プランジャ(16a)は、前記第1のピストン-シリンダユニットのピストンよりも大幅に小さい断面積、特に5分の一小さい断面積を含み、圧力増大にほとんど寄与せず、前記ブレーキ回路内の圧力検出に寄与し、前記プランジャは、力を前記ブレーキペダルに伝達することによって、特に、ABS動作及び/又は減速時に、前記ブレーキペダルに触覚フィードバックをもたらす、
ことを特徴とする、請求項4に記載のブレーキシステム。
【請求項6】
前記ストロークシミュレータは、特に、油圧接続ラインを介して前記補助ピストンの前記作動チャンバに接続されたピストンシミュレータ(WS)、又は/及び前記第2のピストン(SK)の作動チャンバに接続されたプランジャシミュレータ(16a)である、
ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項7】
前記圧力供給部(DV)は、ブレーキ回路(BK1)に接続され、第2のブレーキ回路(BK2)は、ピストン(SK)を介して圧力が供給される、
ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項8】
駆動装置、特に、プレーキペダルと、弁装置を介して少なくとも1つのブレーキ回路に圧力媒体を供給するために前記駆動装置を用いて駆動できる第1のピストン-シリンダユニット(主シリンダ)と、弁装置を介して少なくとも1つのブレーキ回路に圧力媒体を供給するために電動駆動体及び伝動装置を有する第2のピストン-シリンダユニット(圧力供給部)と、前記ブレーキ回路に圧力媒体を供給する弁装置を有するモータ-ポンプユニット(ABS/ESPユニット)と、を含むブレーキシステムであって、制御装置を用いて、前記第2のピストン-シリンダユニット(DV)の電動駆動体のモータ、及び前記モータ-ポンプユニット(ABS/ESP)のモータは、互いに連携して、又は独立して使用できる、
ことを特徴とする、特に、請求項1~7のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項9】
前記第2のピストン-シリンダユニット(DV)と前記モータポンプユニット(ABS/ESPユニット)とによる前記圧力供給部は、並列に又は直列に接続され、前記圧力供給ユニットは、各接続毎に予圧を発生させる、
ことを特徴とする、請求項8に記載のブレーキ。
【請求項10】
前記ESPポンプ(P)は、特に、2回路歯車ポンプ、又は各ピストン毎に独立した偏心器を含むピストンポンプ/段付きピストンポンプである、
ことを特徴とする、請求項7~9のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項11】
前記モータ-ポンプユニットの前記圧力供給部の不具合が発生した場合に、ABS機能は、特に、前記モータ-ポンプユニット(ABS/ESP)の圧力調整弁と共に、前記圧力供給ユニット(DV)のピストン制御によって実施される、
ことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項12】
前記第2のピストン-シリンダユニット(圧力供給部DV)は、特定の圧力範囲でのみ、特に、80~100barのホイールロック限界まで有効であることと、前記モータ-ポンプユニット(ABS/ESP)は、さらなる、特に、より高い圧力範囲に対する圧力発生に使用されることと、
を特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項13】
前記第2のピストン-シリンダユニット(圧力供給部DV)は、前記ABS/ESPユニットの前記ポンプモータが、低い最大トルク(pmax,ESP=最大圧力システムpmax-pvor,DV)を想定して設計できるように、前記ESPユニットの前記ピストンポンプ/段付きピストンポンプの前記偏心ピストンに予圧を供給する、
ことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項14】
前記モータ-ポンプユニット(ABS/ESP)及び前記第2のピストン-シリンダユニット(圧力供給部(DV))の前記電気モータは、特に、急速な圧力増大(TTL)時に同時に動作し、よって、各モータは、必要最大出力よりも低い出力、特にそれぞれ最大出力の50%を想定して設計され、前記圧力供給部DVの前記予圧は、前記偏心ポンプにおいて、効果的な並列接続で使用される、
ことを特徴とする、請求項13に記載のブレーキシステム。
【請求項15】
前記第2のピストン-シリンダユニット(圧力供給部DV)は、最大で70-90barの圧力範囲で動作することと、さらにより高い圧力範囲>70~90barに対して、前記モータ-ポンプユニット(ABS/ESP)と同時にさらなる圧力増大用の前記圧力供給部DVとが直列接続で動作し、前記ABS/ESPユニットの前記ポンプ内の予圧は、急速なさらなる圧力増大に対して前記圧力供給部DVを介して使用することができる、
こととを特徴とする、請求項13に記載のブレーキシステム。
【請求項16】
前記第2のピストン-シリンダユニット(圧力供給部DV)は、前記ABS/ESPユニットの前記ポンプモータが、低い最大トルク(pmax,ESP=最大圧力システムpmax-pvor,DV)を想定して設計できるように、前記ABS/ESPユニットの前記ピストンポンプ/段付きピストンポンプの前記偏心ピストンに予圧を供給する、
ことを特徴とする、請求項13に記載のブレーキシステム。
【請求項17】
前記モータ-ポンプユニット(ABS/ESPユニット)の前記ポンプは、特定の状況、例えば、急速なペダル移動において、例えば、急速な圧力増大、又は前記第2のピストン-シリンダユニット(圧力供給部DV)の前記モータの出力低減を達成するように動作を開始する、
ことを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項18】
前記第2のピストン-シリンダユニット(ABS/ESPユニット)の制御は、対応するブレーキブースタ(BKV)特性を用いて、前記ペダルストローク及び前記圧力を通じて行われる、
ことを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項19】
圧力の代わりに、モータ電流を使用して、特に急速パイロット制御で前記圧力供給部DVを制御する、
ことを特徴とする、請求項18に記載のブレーキシステム。
【請求項20】
圧力容積特性曲線は、前記圧力供給を制御し、診断を行うために使用される、
ことを特徴とする、請求項1~19のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項21】
ストロークシミュレータを有し、前記ストロークシミュレータ(WS)は、動作をオフすることができ、第1の範囲では有効でなく、前記ブレーキペダル力は、復帰ばね(18)によって排他的に決まり、第2の範囲において、前記復帰ばね(18)及びストロークシミュレータピストンによって決まる、
ことを特徴とする、請求項1~20のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項22】
ストロークシミュレータを有し、切換弁(WA)は、必要に応じて前記ストロークシミュレータをオン/オフするために、前記ストロークシミュレータよりも上流に配置される、
ことを特徴とする、請求項1~21のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項23】
プランジャシミュレータ(16a)だけが設けられ、ペダルストロークに依存する制御圧力が前記プランジャに作用する、
ことを特徴とする、請求項1~22のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項24】
前記第1のピストン-シリンダユニット(主シリンダ)の前記各ピストンは直径が異なることと、特に前記補助ピストン(16)は、フォールバックレベル(RFE)時のより小さいペダル力に合わせるために、より小さく寸法を決められること、
とを特徴とする、請求項1~23のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項25】
ツーボックス(Xブースト/ESP)の一方のモジュールは、12Vバッテリ又は12V電圧源に接続され、他方のモジュールは、DC/DCコンバータ、48V車両電気システム、又はより高い電圧を備えた他の車両電気システムに接続され、特に前記Xブーストは、前記DC/DCコンバータ又は前記48V車両電気システムによって給電される、
ことを特徴とする、請求項1~24のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項26】
両方のモジュールは、それぞれ両方の車両電気システム、特に、12Vバッテリ及びDC/DCコンバータに冗長的に接続される、
ことを特徴とする、請求項25に記載のブレーキシステム。
【請求項27】
-駆動装置、特にプレーキペダルと、
-弁装置を経由して圧力媒体をブレーキ回路に供給するための、2つのピストンである補助ピストン(HiKo16)及び第2のピストン(SK)を有する第1のピストン-シリンダユニット(主シリンダ)であって、前記ピストン(HiKo、SK)の一方は、前記駆動装置を用いて駆動できる、第1のピストン-シリンダユニットと、
-電動駆動体を有する第2のピストン-シリンダユニットと、
-伝動装置と、
-弁装置を経由して圧力媒体を前記ブレーキ回路の少なくとも1つに供給するための少なくとも1つのピストン(圧力供給部DV)と、
-圧力媒体を前記ブレーキ回路に供給するための、弁装置(ABS/ESPユニット)を有するモータ-ポンプユニットと、
を有するブレーキシステムであって、
回生制御のために4輪ブレンディングが使用され、圧力制御は、前記ESPユニットの前記弁(USV1、USV2、EV開)が開いたときにDVピストンによって行われる、
ことを特徴とする、特に、請求項1~26のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項28】
-駆動装置、特に、プレーキペダルと、
-弁装置を経由して圧力媒体をブレーキ回路に供給するための、2つのピストンである補助ピストン(HiKo16)及び第2のピストン(SK)を有する第1のピストン-シリンダユニット(主シリンダ)であって、前記ピストンの一方は、前記駆動装置を用いて駆動できる、第1のピストン-シリンダユニットと、
-電動駆動体を有する第2のピストン-シリンダユニットと、
-伝動装置と、
-弁装置を経由して圧力媒体を前記ブレーキ回路の少なくとも1つに供給するための少なくとも1つのピストン(圧力供給部DV)と、
-圧力媒体を前記ブレーキ回路に供給するための、弁装置(ABS/ESPユニット)を有するモータ-ポンプユニットと、
を有するブレーキシステムであって、
2輪ブレンディングが行われ、前記圧力制御は、DVピストン及び前記ESPユニットの弁(USV1、USV2、EV開)を通じて行われる、
ことを特徴とする、特に、請求項1~27のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項29】
前記圧力供給部(DC)の前記伝動装置は、自動ロック式の台形スピンドルを含み、自動ロックは、前記駆動体が故障した場合に作用する、
ことを特徴とする、請求項1~28のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項30】
前記弁(FV)は、前記ブレーキペダルへの力フィードバック(ABSによる触覚フィードバック)を発生させるために、パルス幅変調(PWM)によって制御される、
ことを特徴とする、請求項1~29のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項31】
ブレーキパッドの能動復帰動作は、強力なロールバックシールを用いて実現され、前記ロールバックシールは、特に現在そのようなブレーキシステムで使用されている前記ロールバックシールと比較して、30~50%大きいクリアランスをもたらす、
ことを特徴とする、請求項1~30のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項32】
ストロークシミュレータを有し、少なくとも1つのホイールブレーキの、特にロールバックシールの形体の少なくとも1つのシールは、ホイールブレーキのクリアランスを設定する、
ことを特徴とする、特に、請求項1~31のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項33】
前記シールの変形によって発生する復帰力は、前記クリアランスを形成するために使用される、
ことを特徴とする、請求項32に記載のブレーキシステム。
【請求項34】
前記クリアランスは、従来のクリアランスに比較して30~50%大きい、
ことを特徴とする、請求項32又は33に記載のブレーキシステム。
【請求項35】
前記シールは、関連する前記ブレーキ回路に圧力増大がないとすぐに前記クリアランスを確立する、
ことを特徴とする、請求項32~34のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項36】
前記システム用のプラグコネクタ(ST)が、前記貯蔵容器(VB)の下に配置され、後で対応するプラグを取り外すのを可能にするように前記ユニットの中央に向かって内側に向けられる、
ことを特徴とする、請求項1~35のいずれか一項に記載のブレーキシステム。(図3
【請求項37】
前記第2のピストン-シリンダユニット(圧力供給部DV)は、前記第1のピストン-シリンダユニット(主シリンダ)の軸に平行に又は垂直に向けられる、
ことを特徴とする、請求項1~36のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項38】
-駆動装置、特に、プレーキペダルと、
-弁装置を経由して圧力媒体をブレーキ回路に供給するための、2つのピストンである補助ピストン(HiKo16)及び第2のピストン(SK)を有する第1のピストン-シリンダユニット(主シリンダ)であって、前記ピストンの一方は、前記駆動装置を用いて駆動できる、第1のピストン-シリンダユニットと、
-電動駆動体を有する第2のピストン-シリンダユニットと、
-伝動装置と、
-弁装置を経由して圧力媒体を前記ブレーキ回路の少なくとも1つに供給するための少なくとも1つのピストン(圧力供給部DV)と、
-圧力媒体を前記ブレーキ回路に供給するための、弁装置(ABS/ESPユニット)を有するモータ-ポンプユニットと、
を有するブレーキシステムであって、
前記第1のピストン-シリンダユニット(主シリンダ)の前記第2のピストン(SK、12)は、2つのシール(D4、D5)を設けられた、前記貯蔵容器(VB)に至るラインの流路(ブリーザ穴)に加えて、さらなるシール(4.1)を設けられ、前記貯蔵容器に至るラインに、特に、スロットル(Dr4.1)を介して接続されたさらなる流路を有する、
ことを特徴とする、特に、請求項1~37のいずれか一項に記載のブレーキシステム。(図5
【請求項39】
冗長シール(D2.1 、D3.1)が、前記第1のピストン-シリンダユニット(主シリンダ)の少なくとも1つのピストンシール(D2、D3)に平行に配置され、互いに対して平行に配置された前記シール間の油圧流路(50、51)が前記シリンダに通じており、前記流路は、シリンダ壁に配置され、前記第1のピストン-シリンダユニット(主シリンダ)のシリンダ内部を直接的に又は前記流路に接続された油圧ラインを介して貯蔵容器(VB)に接続し、スロットル(Dr2.1、Dr3.1)が、前記油圧流路(50、51)又は前記油圧ラインに配置される、
ことを特徴とする、請求項1~38のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項40】
冗長シール(D6.1)が、前記ストロークシミュレータ(WS)の前記ピストン-シリンダユニットのピストンシール(D6)に平行に配置され、平行に配置された前記シール(D6、D6.1)間で、前記シリンダ壁又は前記ピストンに配置された油圧流路(53)がシリンダに通じており、前記流路は、前記ストロークシミュレータ(WS)の前記ピストン-シリンダユニットの前記シリンダ内部を直接的に又は油圧ラインを介して貯蔵容器(VB)に、又は前記ストロークシミュレータ(WS)の無圧領域に、又は外部に接続し、スロットル(Dr6.1)が前記流路又は前記油圧ラインに配置される、
ことを特徴とする、請求項1~39のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項41】
高さセンサ(33、34)が、印刷回路板(PCB)の中に、又は印刷回路板(PCB)に接して配置され、又は組み込まれ、特に、漏れを早期に検出するために、前記貯蔵容器(VB)内の液体高さの、特に連続的な評価が、前記高さセンサ(33、34)を用いて行われる、
ことを特徴とする、請求項1~40のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項42】
熱伝導体(37)を用いて、熱が前記印刷回路板(PCB)から前記主シリンダ(THZ)のハウジング及び端部壁(39)に放熱される、
ことを特徴とする、請求項1~41のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項43】
冗長分離弁(FVred)が、前記2つの弁(FV、FVred)の一方によって前記油圧ラインを選択的に遮断できるように、油圧ライン内で前記弁(FV)と直列に配置される、
ことを特徴とする、請求項1~42のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項44】
前記主シリンダ(THZ)の前記シール(D2)に不具合が発生した場合に前記ストロークシミュレータ(WS)の機能を保護するために及び前記ストロークシミュレータ(WS)の前記機能を診断するために、遮断弁(36)が設けられる、
ことを特徴とする、請求項1~43のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項45】
前記ESP戻しポンプ(P)に油圧流体を連続的に供給するための及び/又は前記SKピストン(10)を適切な位置に置くためのミニ油圧流体貯蔵容器(35)を含む、
ことを特徴とする、請求項1~44のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項46】
前記第1のブレーキ回路(BK1)の漏れが発生した場合に前記圧力供給部(DV)の機能を保護するために前記第1のブレーキ回路(BK1)に増設分離弁(TV1)を有する、
ことを特徴とする、請求項1~45のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項47】
前記圧力供給部(DV)は、特にペダルストロークに対する関係ペダル力によって及びストロークシミュレータによって決まるペダル特性が、障害の発生した場合に維持され又は他の影響によって変わらないように制御される、
ことを特徴とする、請求項1~46のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項48】
ブレーキペダル(1)が動きを阻止されるのを回避するために、予圧ばね(41a)及び/又は所定の破断点(2a11)がセンサプランジャ(2a1)に設けられ、そのため、特に、ペダルストロークセンサ(2a)が動かなくなった場合に、前記ブレーキペダル(1)は妨害しない、
ことを特徴とする、請求項1~47のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項49】
前記ペダル(1)の復帰は、ペダルストロークセンサ(2a、2b)のプランジャ(2a1、2b1)に平行に又は同軸に配置された少なくとも1つのばね(18a、18b)を用いて行われ且つ/又は支援される、
ことを特徴とする、請求項1~48のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項50】
吸入弁(28)の漏れが発生した場合に前記圧力供給部(DV)の前記機能を保護するために、前記吸入弁(28)と前記貯蔵容器(VB)への戻りライン(R)との間に増設ソレノイド弁(MV)が設けられ又は配置される、
ことを特徴とする、請求項1~49のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項51】
冗長シール(D8.1)が、前記圧力供給部(DV)の少なくとも1つのピストンシール(D8)に平行に配置され、平行に配置された前記シール(D8、D8.1)間で、シリンダ壁に配置された油圧流路(53)が前記シリンダに通じており、前記流路は、前記圧力供給部(DV)の前記シリンダ内部を直接的に又は前記流路に接続された油圧ラインを介して貯蔵容器(VB)に接続し、スロットル(Dr8.1)が、前記油圧流路(53)又は前記油圧ラインに配置される、
ことを特徴とする、請求項1~50のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項52】
増設シール(D9)が、前記圧力供給部(DV)の前記ピストン(10)の中間位置の領域に配置され、前記増設シール(D9)は、特に、前記吸入弁(28)の漏れが発生した場合に、前記圧力供給部(DV)の前記機能を保護する働きをする、
ことを特徴とする、請求項1~51のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項53】
電子安定性プログラムESPに不具合が発生した場合に、請求項1~52のいずれか一項に記載のブレーキシステムを用いて滑りやすい路面でブレーキをかける方法であって、フロントアクスルのホイールのロックは、切換弁(TV1)を用いて防止される、
ことを特徴とする方法。
【請求項54】
前記弁(TV1)は、IIブレーキ回路分割の場合に、前記第1のブレーキ回路(BK1)に割り当てられた前記フロントアクスルの前記ホイールが、ロックする傾向を見せたときに閉じられ、この場合に、前記第2のブレーキ回路(BK2)に割り当てられたリアアクスルに作用するホイールブレーキシリンダのブレーキ圧は、前記リアアクスルのホイールが同様にロックする傾向を見せるまで前記圧力供給部(DV)を用いてさらに高くなる、
ことを特徴とする、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記リアアクスルの前記ホイールブレーキシリンダ内の前記圧力が高くなった後、前記フロントアクスルの前記ホイールブレーキシリンダ内の前記圧力は、前記弁TV1を短時間開くことでさらに高くなる、
ことを特徴とする、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
Xブレーキ回路分割において、前記弁(TV1)は、前記第1のブレーキ回路(BK1)の前記フロントホイールがロックする傾向を見せたときに閉じられ、前記第2のブレーキ回路(BK2)内の前記圧力は、前記弁(TV1)が閉じられた場合に、前記第2のブレーキ回路(BK2)の前記リアホイールがロックする傾向を見せるまでさらに高くなる、
ことを特徴とする、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記切換弁(TV1、TV2)は、前記切換弁(USV1、USV2)の代わりとして、前記ESPモジュール(ESP)に組み込まれる、
ことを特徴とする、請求項1~56のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項58】
前記切換弁(TV1、TV2)は、特に各ブレーキ回路毎に個別にABS及びブレンディングに使用される、
ことを特徴とする、請求項1~57のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項59】
吸入弁(EV)は、前記ESPシステムの不具合が発生した場合にホイール毎のABSに使用される、
ことを特徴とする、請求項1~58のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項60】
前記切換弁(TV1、TV2)を用いて油圧媒体を連続的に補給する、
ことを特徴とする、請求項1~59のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項61】
前記Xブースト及びESPは、特に特別な機能に対して冗長ECUを使用し、前記冗長ECUは、特に冗長性の理由から少なくとも2つの連結部(S1、Sn)を介して車両電気供給部に接続される、
ことを特徴とする、請求項1~60のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルにおけるブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転(AD)を備えた自動車に向けてのトレンドとして、一つには障害耐性の観点から、他方では、ブレーキ圧生成、電力供給、及び計算機機能(ECU)などに対する冗長機能の観点から、ブレーキシステムに高い要請が寄せられている。いわゆるワンボックス及びツーボックスシステムが支持されている。後者は、電動ブレーキブースタ(BKV)、いわゆるe-ブースタ及びESPシステムからなる。これは、電気モータ及びECUを備えたe-ブースタ及び戻しポンプに対して、電気モータ及び電子制御ユニット(ECU)によるブレーキ圧の生成などを冗長化するものである。
【0003】
公知の課題解決手段は、比較的長い全長と大きな重量を備えるものである。
【0004】
国際公開第2011/098178号(以下、変形例A又は追従ブースタ若しくはeブースタと称する)では、電気モータがギヤ及びピストンを介してHZピストン(=主シリンダピストン)に作用する同軸駆動体を備えた、かかる課題解決手段が記載されている。BKV制御は、いわゆる追従ブースタとしての電気要素及びリアクションディスクを介して行われ、ペダルストロークは、ブレーキ圧とブレーキシステムのボリューム吸収(volume absorption)とによって決まる。これは、フェード現象又はブレーキ回路の不具合が生じた場合に、長いペダルストロークを必要とする。
【0005】
国際公開第2009/065709号(以下、変形例B又は追従ブースタ若しくはeブースタと称する)は、eブースタをフォロワBKVとしても示している。ここで、BKV制御は、ペダルストローク及び圧力を通して行われる。電気モータ及びプランジャを有する独立した圧力供給部が、増幅ピストンを介してHZピストンに作用する。
【0006】
国際公開第2012/019802号(以下、変形例C)は、電気モータがギヤ及びピストンを介してHZピストンに作用する同軸駆動体を有する国際公開第2011/098178号と同様の構成を示している。ここでは、ストロークシミュレータピストン(WS)に作用する補助ピストンシリンダユニットが使用される。したがって、ペダルストロークは、フェード現象及びブレーキ回路の不具合などとは無関係である。しかし、とても複雑になり、構造が長くなる。
【0007】
DE10 2009 033 499号(以下、変形例Dとも称する)は、油圧駆動式のブースタピストン及び外部圧力供給部を有するさらなるESPユニット付きのブレーキブースタ(BKV)を示している。4つ又は5つのピストン及び6つのソレノイド弁(MV)を有するこの構成は複雑であり、長さにおいても不利である。非油圧作動式ストロークシミュレータ(WS)は、主シリンダより上流のピストン-シリンダユニット内に配置され、ソレノイド弁(MV)を介して制動したり切り換えたりすることができない。
【0008】
上記した課題解決手段は全て、冗長なブレーキ力増幅(BKV)機能を有している。なぜなら、BKVモータに不具合が発生した場合、真空BKVを用いた支援機能と同様に、ポンプを備えたESPユニットが、自動運転モードにおけるブレーキ機能を保障するからである。
【0009】
本出願人による国際公開第2010/088920号で説明しているように、ESPモータの不具合が発生した場合には、BKVモータによって可能な圧力調整を通じてABSが機能する。しかし、これは、すべての4つのホイールに対して共通な圧力制御を可能にするに過ぎず、ブレーキ距離の最適化は行われない。
【0010】
すでに知られているワンボックスシステムは全て、ペダルストローク特性を高度化するために、いわゆるストロークシミュレータ(特に、ブレーキバイワイヤに対する)を有する。
【0011】
eブースタ及びESPを有する公知のシステムは、圧力供給部(DV)にただ1つの冗長構成を有する、すなわち、eブースタが故障した場合には、冗長圧力供給部(DV)は、ESPによるブレーキブースタ(BKV)用の冗長な出力を用い、より高い安全要求は考慮されない。また、ESPが故障した場合には、十分なABS機能がeブースタによって保障される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
先行技術を踏まえて、本発明の目的は、改良したブレーキシステムを提供することである。
【0013】
本発明は、ますます強力になっている回生出力(発電機運転での発電機/又は駆動モータを介した制動によるエネルギ回生)を有する、自動運転操作(下記ではAD)及び/又は電気車両/ハイブリッド車両で使用するブレーキシステムを創出するという目的に基づいており、このブレーキシステムは、先行技術と比較して大幅に改良される。
【0014】
さらに、自動運転用のコスト効率の高いブレーキシステムが形成され、このブレーキシステムは、きわめて高い安全要求だけでなく、必要とされるすべての冗長性を満たす。
【0015】
さらに、ESPが故障した場合に、ブレーキ距離及び安定性の点でのABSの十分な機能と、回生に関する十分な機能との両方をブレーキシステムを用いて達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的は、特許請求項1の特徴部を有する本発明によって解決される。
【0017】
とりわけ、改良点は、ブレーキブースタの構造が、精度要求が低い、きわめて少数の単純な構成要素(例えば、開/閉動作のみの弁)を有することによって、コスト効率が高く、構造が非常に短く且つ細く、特に、強力な回生と共に、一定のペダルストローク特性を可能にすることを特徴とする。
【0018】
本発明の有益な実施形態又は構造は、さらなる請求項と図面及び図形記述とに含まれ、これらは、ここに引用したものとする。
【0019】
本発明と本発明の実施形態及び構造とによる課題解決手段によれば、きわめて短い構造であるとともに有益なペダル特性を有するブレーキシステムが形成される。
【0020】
特に、2つの油圧ラインを介して標準的なESPユニットに接続される電動ブレーキブースタを有するツーボックスシステム(以下、ツーボックスシステムと称すると共に、X-ブースト及びESP/ABSユニットと称する)が、本発明に従って形成される。前記ブレーキブースタは、ブレーキシステムのボリューム吸収及び回生度と無関係なペダル特性を有する。
【0021】
さらに、本発明は、ボックス体積が小さいブレーキブースタのコンパクトな構造を達成する。このブレーキブースタは、きわめて短く且つ細く、例えば、圧力発生、電気供給、ESPユニットのポンプモータの不具合などに対する多くの冗長性を有し、ESPユニットの不具合が発生した場合に性能が限定されるABS機能も含む。ESPのない緊急運転では、ABS機能は、ブレーキ距離を改善するために、少なくともアクスルごとの個々の調整(「セレクトロー」圧力調整)を含むべきである。
【0022】
ユニットコンパートメントの設置空間は、ますます小さくなっている。したがって、ブレーキユニットの寸法は、特に、幅及び長さに関して、可能な限り小さくすべきである。このコンパクトな構造は、一方で、主シリンダ(HZ)ピストンをモータ駆動体から切り離すことによって、他方で、本出願人による国際公開第2016/023994号による特別に短い主シリンダ(HZ)によって可能になる。この特別に短い主シリンダは、ピストン駆動体を有する電気モータからなる平行に配置された圧力供給部(以下、圧力供給部又はDV)と共に、以下説明される。
【0023】
圧力供給部(DV)は、最大で80~100barのホイールロック限界までのみ有効である。より高い圧力に対して(例えば、運転者支援機能に対して)、ESPのポンプが作動する。したがって、これは、上記に説明した先行技術の変形例Aよりも、本発明による課題解決手段を用いて実現することができ、その理由は、ブレーキペダルが切り離されるために、ESPポンプ機能は、ペダル感覚に影響を及ぼさないからである。
【0024】
DVを備えたXブーストの目的は、ESPポンプの圧力を増大させるために、80~100barの最大圧力で対応する液量を供給することである。
【0025】
これは、駆動モータ又はエンジンを備えたXブーストの圧力供給装置DVが、単に低い機械負荷を想定して設計されさえすればよいという利点や、電気モータがESPポンプの約200barの最大圧力に比較して、例えば80~100barの低いトルクしか必要としないという利点を有する。これは、コスト効率の高いボールねじ駆動体(KGT)又はプラスチックナットを有する台形スピンドルを使用可能にする。
【0026】
第2に、ポンプ(ESPポンプ)は、ポンプモータが、200bar-(80~100)bar(=100~120bar)の差圧でのみ負荷をかけられるように設計することができる。従来のESPポンプは、例えば、200barの最大圧力で負荷をかけられる。この利点は、ポンプモータの出力又はトルクの有益な低減をもたらす。
【0027】
この場合に、相互接続に対するさらなる可能性もある。ESPポンプは、Xブースト(80~120bar)の作動と一緒に作動するだけでなく、例えば、20barでペダルを素早く動作させる場合にも作動することができる。これは、ロック時間(TTL)に対するより急速な圧力増大か、又はXブーストのDVのモータのさらなる出力低減かのいずれかをもたらす。
【0028】
ESPポンプの場合の直列及び/又は並列のポンプのこの接続は、2回路の歯車ポンプを必要とするか又はピストンポンプの場合に各ピストン毎に独立した偏心器を必要とする。
【0029】
ペダル特性において、例えば、ブレーキ回路の不具合が生じた場合に、ボリューム吸収からの遡及効果は排除されるべきである。他方で、ABS機能を任意選択で断続的にも使用する場合に、望ましいペダルフィードバック、例えば、ペダルの小動作をもたらすことが可能でなければならない。ペダルを並行して動かすことで、障害、例えば、ブレーキ回路の不具合を警告ランプに伝えることもできる。
【0030】
ペダルストロークシミュレータに対して様々な課題解決手段が想定できる。全圧力範囲(150~200bar)において、ペダルストロークシミュレータは、Xブースト又はESPユニットが圧力を供給したがどうかにかかわらず、影響なしに、例えば、フラットな特性曲線で30barまで、次いで、漸進的に上昇する良好なペダルストローク特性を発揮しなければならない。追従ブースタ(先行技術による変形例A)としてのeブースタの実施形態では、ペダル力特性曲線は、eブースタからESPへの移行時に大きく変わり、これに必要な弁のPWM動作に対して多くのソフトウェア作業を必要とする。これは、本発明による課題解決手段には当てはまらず、その理由は、ペダルがストロークシミュレータを介して切り離されるために、ESPポンプの動作が、ペダル特性に影響を及ぼさないからである。
【0031】
構造物の体積を縮小するために、ペダルストローク特性曲線の平坦部分に復帰ばね(18)を使用することによって、ここに引用される本出願人による国際公開第2013/072198号にも示すように、ピストンストロークシミュレータの容積がより小さくなり、特性曲線の累進的部分にのみ対応するようになる。
【0032】
ストロークシミュレータは、好適には、油圧接続ラインを介して補助ピストンの作動チャンバに接続されたピストンシミュレータ(WS)又は/及び第2のピストン(SK)の作動チャンバに接続されたプランジャシミュレータとすることができる。プランジャシミュレータが設けられた場合に、ペダルストロークに依存する制御圧力がプランジャに作用する。
【0033】
ストロークシミュレータが、さらなる展開において動作をオフすることができ、第1の範囲において有効でなく、ブレーキペダル力が復帰ばねによって排他的に決まり、第2の範囲において復帰ばね及びストロークシミュレータピストンによって決まるならばそれも有利である。
【0034】
さらに、切換弁は、必要に応じてストロークシミュレータをオン又はオフに切り換えるために、ストロークシミュレータより上流で接続することができる。しかし、切換弁が、ストロークシミュレータより上流で接続されない場合に、切換弁(WA)は、ストロークシミュレータにつながった補助ピストンの圧力チャンバ又は作動チャンバから貯蔵容器に分岐する分岐ラインに配置されなければならない。
【0035】
圧力供給制御及び診断に圧力-容積特性が使用されるならば、それも有利である。
【0036】
本出願人による国際公開第2016/023994号に説明又は図示しているように、ペダルストロークシミュレータを実現する他の可能なものとして、プランジャを有し、ピストンストロークシミュレータのないTHZ(=タンデム型主ブレーキシリンダ)があり、この特許は、この点に関してここに引用したものとする。この場合に、ペダルストロークに依存するBKVへの制御圧力はプランジャに作用することによって、ペダルフィードバック効果をもたらす。
【0037】
ペダル位置に応じて、圧力は、圧力供給部のピストンからブレーキ圧を発生させる主ブレーキシリンダ(T)HZのSKピストンに送られる。圧力供給部は、スピンドルを介してピストンを駆動する電気モータからなる。ボールねじ駆動体(KGT)とナットを有する台形スピンドルとの両方が伝動装置として使用することができる。後者は、より安価で静粛であるが、効率が低く、自動ロック式である。後者は、圧力供給部DVで、例えば、エンジンの不具合が発生した場合に、ピストンは定位置のままであるため、ブレーキ圧の影響を受けて、ブレーキ回路の液量が増えることはないという利点を有する。
【0038】
ボールねじ駆動体(KGT)の場合、この不具合に対して、増設した遮断弁を使用しなければならない。貯蔵容器(VB)からの液体の吸入は、主シリンダ(HZ)と同様に、吸入弁、又はブリーザ穴を有するピストンスリーブシールを介して行われる。
【0039】
ピストンストロークシミュレータへの流路は、ソレノイド弁(WA)によって閉じることができ、圧力供給部の不具合(DV)が発生した場合と同様に、ペダル力が主シリンダ(HZ)に作用することによって、いわゆるフォールバックレベル(RFE)のブレーキ圧を発生させる。弁(WA)のない場合に、フォールバックレベル(RFE)でのペダルストロークは、ピストンストロークシミュレータ(WS)のボリューム吸収によって延長される。
【0040】
Xブースト及びESPユニットの相互接続は、冗長な電源と共に、圧力発生用の2つの冗長システムをもたらすので、フォールバックレベル(RFE)は、牽引時のみ有効である。例えば、車両のトランスミッションが遮断され得る場合などの実際上極度の負荷に対してのみ有効である。これらのことから、例えば、WAソレノイド弁を不要にするなど、より高い自由度がシステム及びピストン構造に付与される。
【0041】
パッドクリアランス制御に対する1つの可能性は、ホイールブレーキの強力なロールバックシールを用いて、パッドを復帰させることである。このシールは、特に、シールに蓄えられた変形エネルギにより、必要なクリアランスを形成することができる。蓄えられた変形エネルギは、ブレーキ回路でもはや圧力が増大しなくなるとすぐに、ブレーキパッドをブレーキディスクから引き離す(クリアランス又は空隙)復帰力を発生させる。これは、本発明において好適に可能であり、その理由は、切り離しによるブレーキペダルへの影響がないからである。
【0042】
Xブースト及びESPユニットは別々の電源を有し、例えば、ESPは、12Vバッテリに接続され、Xブーストは、多電圧車両電気システムのDC/DCコンバータに接続される。或いは、Xブースト及びESPユニットは共に、12Vバッテリ及びDC/DCコンバータの両方に接続することができる。したがって、ツーボックスのブレーキシステムの両方のモジュールは、いずれも冗長電源を有する。
【0043】
本発明による課題解決手段は、従来技術の変形例Aに勝るさらにより多くの以下の利点を有する。
I.ブレーキ回路が故障した場合に、ペダルが機能しなくなることはない。
II.ESPモータが故障した場合に、圧力は、アクスル毎に又はホイール毎に制御することができ、これはブレーキ距離をかなり短縮することを可能にする。
III.多くの運転者支援機能は、Xブーストで実施することができ、ESPユニットで実施するよりも高い精度で実施することができる。
IV.回生制御は、DVを介して制御することで、ESPユニットの吸入及び排出弁並びにポンプを介するよりも容易であり静粛であり正確である。
【0044】
このように、ペダルの機能停止I)は回避することができる。その理由は、ストロークシミュレータが切り離されるので、システム内の漏れが、ペダル感覚に影響を及ぼさないからである。本発明による課題解決手段とは対照的に、システム内の漏れは、例えば、変形例A及びBではペダル感覚に直接影響を及ぼすため、最悪の場合に、ペダルストロークが突然延長され、運転者がその変化を制御することができず、事故につながる。
【0045】
アクスル、さらにホイールブレーキの個々の圧力調整II)は、本発明による課題解決手段によって可能になる。その理由は、ESPモータの不具合が発生した場合に、Xブーストの圧力供給部DVの電気モータが圧力調整を引き継ぎ、圧力調整は、ペダルに影響を及ぼさないからである。これは、アクスル毎又はホイール毎の制御に対して、追従ブースタという課題解決手段(変形例A及びB)よりもかなり多くの自由度があることを意味する。このために、(本出願人によるDE10 2005 018649号)によるピストンストローク及びモータ電流と圧力勾配調整(本出願人によるDE10 2005 055751号)とを通じた本発明の圧力制御は、ESPユニットの弁のパルス幅変調(PWM)制御では達成できない高精度の圧力制御に使用される(これら特許は、この点に関してここに引用したものとする)。
【0046】
システムの分離(システムのペダル)も、以下にさらに詳細に説明するように、III)運転者支援機能の実施にとって非常に重要である。
【0047】
回生制御(IV)は、ハイブリッド化の増加及び電気車両の普及によりますます重要になっている。ブレーキ圧は、可能な発電機ブレーキ効果と運転者から要求される全ブレーキ効果とに応じて変わる。これは、ブレーキ圧ブレンディングと呼ばれる。ブレーキ圧ブレンディングは、すべてのホイールブレーキ(4輪ブレンディング)、1つだけの車両アクスル(2輪ブレンディング)、又は単一ホイールブレーキを個々に含むことができる。ブレーキ圧ブレンディングは、適切なブレーキ圧制御及び弁制御を必要とする。これについては、図面の説明で詳細に説明する。
【0048】
本発明に係る課題解決手段による回生制御(IV)は、最も単純な課題解決手段(4輪ブレンディング)での圧力供給部DVのピストンストローク制御により排他的に実施される。車両の発電機又は発電機モードで動作する電気車両の駆動モータの減速効果に応じて、油圧ブレーキ力と駆動モータによるブレーキ効果との総計が、望ましい全減速力をもたらすようにピストンを調整することで、対応するブレーキ圧が設定される。
【0049】
これは、Xブーストの圧力供給部DVの圧力状態がペダル感覚に影響を及ぼさないので、完全に可変の態様で可能である。このことは、特に、同じペダル感覚を維持しながら減速を弱めるためには、ペダルとHZ容積部との間を接続することがESPユニットの貯蔵チャンバが空にしなければならないことを意味する先行技術の変形例A及びBと比較してかなりの利点を有する。この先行技術は、ESP内に介在物を必要とし、ESPユニットの排出弁の非常に複雑な制御を必要とする。さらに、本発明による課題解決手段の場合、異なるブレーキ回路分布(アクスル毎の対角及び平行/ブレーキ回路、リア及びフロント駆動体)に対する様々なESPの変形をなくすようにすることができる。その理由は、ブレーキ回路分布及び駆動タイプと無関係に、制御がピストンによって排他的に行われるからである。特に、Xブーストの以下に述べる利点も回生によってもたらされる。
【0050】
以下にきわめて詳細に説明するように、アクスル毎のブレンディング(2輪ブレンディング又はアクスル毎のブレンディング)は、実施がはるかに容易である。
【0051】
本発明による課題解決手段の一部、特に、Xブーストは、先行技術と比較して、ペダル感覚に以下の利点をもたらす。
・ブレンディングによるペダル感覚の変化がない。
・ブレーキシステムの変更(例えば、ブレーキ解放クリアランスの変更、PV特性曲線の変更)によるペダル感覚の変化がない。
【0052】
Xブートによるブレンディングは、要約すると、以下の利点をもたらす。

・発電機トルク=>単純なポイントブレーキが急激に変化した場合でさえ精密なブレーキ圧調整、
・例えば、ESPユニットの切換弁からの知覚できる騒音がないこと、
・車両減速範囲全体でのブレンディング、
・従来のeブースタよりもはるかに単純なブレンディング用ソフトウェア、
・対角(X)及び軸平行(II)ブレーキ回路分割用の均一なブレンディング、
・ブレーキ力分布が、ホイールロック限界まで任意に表示することができる。特に、滑りやすい、でこぼこの路面での車両安定化のためのESP干渉と、回生から完全油圧式ブレーキへの、及びその逆の複雑な切換えを用いた回生プロセスの中断とを回避することができること、
・非駆動アクスルに作用するホイールブレーキの変化(例えば、圧力-容積特性、又はp-V特性)は、油圧ブレーキに影響を及ぼさないこと、
・油圧流体を保持するために必要とされる追加部品がない(例えば、「スマートアクチュエータ」がない)こと、
・ペダル用のより強力な復帰ばね(RFEのPmaxにとって重要)がないこと、及び/又は、
・ブレーキシステムのPV特性曲線の変化が分析されること。
【0053】
追従ブースタを有する変形例Aによる公知のシステムでは、ペダルストロークは、容積吸収によって決まる。ペダルストロークが、通常動作時に大きくなるのを防止するために、様々なピストン径を有する様々な車両タイプに対して、主シリンダHZの容積を調整することが必要である。フォールバックレベルRFEでシステムの不具合が発生した場合に、これは、ボリューム吸収がより大きいブレーキシステムにおける同じペダルストロークに対して高いペダル力を生じさせる。ECE-13Hの要件によれば、500Nの最大足力に対して、少なくとも0.24~0.3gの車両減速が必要とされる。
【0054】
本発明による課題解決手段の一部、特に、Xブーストは、SKピストンに比較して小さい補助ピストン径の使用を可能にすることによって、500Nの足力でフォールバックレベルRFEでのより高いブレーキ圧を可能にする。さらに、ブレーキ回路の液量は、DVが送り続けることで、ブレーキフェード現象に対してさらに増やすことができる。この増量分は、補助ピストンよりも大きいSKピストン直径を用いてか、又はSKピストンのより長いストロークを用いて、SKピストンからフローティング回路に送ることができなければならない。
【0055】
本出願人によるDE10 2005 018649号及び同第10 2005 055751号による一実施形態において、BKVは、ペダルストロークに応じて、圧力供給部DVのピストンによって、BKV特定曲線による圧力をブレーキ回路に加えることで制御される(これらの特許は、この点に関して、ここに引用する)。圧力はESPユニットで測定され、圧力供給部DVによって、対応するピストンストロークを通して供給される。圧力センサが故障した場合に、この圧力信号は利用することができない。圧力センサの不具合は、圧力供給部DVによって、圧力容積特性曲線(p-V特性曲線)の評価を通して検出される。この場合に、対応する圧力値は、ピストンストローク中には分からない。
【0056】
この場合に、圧力測定の代わりとして、DVモータの電流測定を使用することもできる。一般的に、電流測定だけを使用することも想定される。圧力の増減に対する精度に関しては、駆動体の摩擦力によるヒステリシスが、任意の選択によって、例えば、電流と車両の減速との相関関係による補正値と共に、圧力供給部DVの特性曲線(ピストンストローク及び圧力又は代替として電流)に含まれなければならない。
【0057】
この概念は、以下を通じて機能及びエラー安全性を強化するさらなる可能性を有する。
a)機能
・圧力供給部(DV)の吸入ストローク時に、ESPポンプが、ホイールブレーキシリンダ内の圧力をさらに増大させることを可能にする、ミニ貯蔵容器とも称される、ブレーキ回路1(BK1)に接続された小アキュムレータ。
・フォールバックレベルでの油圧ペダル力ブレンディング。
b)安全性
・ブレーキ回路1(BK1)の不具合が発生した場合のブレーキ回路1(BK1)での増設分離弁(TV1)の使用。
・ストロークシミュレータの遮断弁(WA)の不要化。これはまた、その起こり得るエラーをなくす。
・センサ作動阻止に備えた方策。
・貯蔵容器(VB)内のブレーキ流体用の線形レベルの送信機。この送信機は、貯蔵容器(VB)内の小さい液量変化を検出し、ブレーキシステムに漏れが発生した場合に、早期に警告を出すことができる。
・補助ピストンチャンバから貯蔵容器(VB)への油圧接続部の増設遮断弁(36)。
・主シリンダ(THZ)及び圧力供給部(DV)のための診断オプションを含む冗長シール。
・吸入弁(28)が故障した場合の圧力供給部(DV)から貯蔵容器(VB)への戻りライン内の冗長方策、例えば、増設遮断弁(MV)。
・センサ信号を読み込んで処理し、FV弁及びPD1弁を制御するための部分冗長制御ユニット(ECU)。
・電子部品の温度を下げ、電子部品の故障率を低くする、PCBから本体への、したがって、クーラスプレー壁への放熱。
・モータの2x3相制御、つまり、冗長巻線。
【0058】
これは、フェイルオペレーショナル(FO)に関するきわめて高い要件を満たすこともできることを意味する。
【0059】
以下に、上記に説明した可能な実施形態のために、さらに可能で有利な特徴を列挙する。これらの特徴は、組み合わせて又は単独で実施形態に追加することができる。
・例えば、第1のピストン-シリンダユニット(主シリンダ)のピストンは、様々な直径を有することができる。特に補助ピストンは、フォールバックレベル(RFE)の小さいペダル力に合わせるために、より小さい寸法とすることができる。
・さらに、ツーボックス構造(Xブースト/ESP)の一方のモジュールは、12Vバッテリ又は12V電圧源に接続することができる。他方のモジュールは、DC/DCコンバータ、又は48V車両電気システム若しくは高い電圧を備えた他の車両電気システムに接続することができる。特に、Xブーストは、DC/DCコンバータ又は48V車両電気システムによって給電される。安全性を高めるために、両方のモジュールは、両方の車両電気システム、特に12Vバッテリ及びDC/DCコンバータに冗長的に接続することができる。
・圧力供給部の伝動装置は、駆動体の不具合が発生した場合に、自動ロック動作を行う自動ロック式台形スピンドルを有することができる。
・弁(FV)は、ブレーキペダルへの力フィードバック(ABSを用いた触覚フィードバック)を発生させるために、パルス幅変調(PWM)によって制御することができる。
・システム用のプラグ接続部は貯蔵容器の下に配置し、対応するプラグが横に引き抜かれるのを可能にするように、装置の中心に向かって内側に向けることができる。
・第2のピストン-シリンダユニット(圧力供給部DV)は、有利にも、第1のピストン-シリンダユニット(主シリンダ)の軸に平行又は垂直に整列することができる。
・補給によって、より大量のブレーキ流体を利用可能にすることができる。これは、より重い車両において、又はブレーキ流体に気泡が存在する場合に、又はブレーキが過熱した結果として発生し得る蒸気泡がブレーキ流体に存在する場合に有利である。
・フォールトトレランスの改善は、ESP及びXブーストの制御装置の部分冗長化によって達成することができる。
・ESPが故障した場合のブレーキ距離及び運転安定性に関する適切な機能は、分離弁(TV1、TV2)をブレーキ回路(BK1、BK2)に導入することと、圧力供給部DCの油圧多重動作とによって達成することができる。各ブレーキ回路毎の個々の回生を達成することもできる。さらに、ブレーキ回路2(BK2)に補給を行うこともできる。
【0060】
本発明のさらなる特徴及び利点が、本発明の実施形態、実施例、及びその構造についての以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図の説明
図1】ESPを備えた全Xブーストシステムを示している。
図2】ペダル特性を示している。
図3】システムの主要な構成要素を示している。
図4】拡張したXブーストを示している。
図4a】機能的安全性を高めるための弁FVの冗長化を示している。
図5】機能的安全性を高めるための方策を含むXブーストを示している。
図5a】機能的安全性を高めるための方策を含むペダルストロークセンサを示している。
図6】機能的安全性を高めるために弁を増設した圧力供給部を示している。
図7】機能的安全性を高めるためにシールを冗長化した圧力供給部を示している。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1は、駆動装置、特に、ブレーキペダル1と、駆動装置を用いて駆動することができる第1のピストン-シリンダユニットTHZと、電動駆動体及び伝動装置を備えた第2のピストン-シリンダユニット(以下、Xブースト又はブースタ)と、ABS/ESPユニットとを有するブレーキシステムの概略図を示している。モータMを備えた、主要構成要素であるポンプPと、弁HSV1、HSV2、弁USV1、USV2と、ホイールブレーキに割り当てられた排出弁EV及びAVと、貯蔵チャンバ(SpK)とを含むABS/ESPユニットは公知である。このシステムは、多くの出版物及び特許出願で説明されている。このシステムは、eブースタとしてすでに市場に出て、主に電気車両及びハイブリッド車両に使用されている。その理由は、ブレーキシステムが、発電機のブレーキトルク、すなわち、回生と併せて制御されるからである。よく知られているように、eブースタ及びESP要素は共に、特に、ペダル特性において役割を果たすことができる。出願の別の分野は自動運転を備えた車両である。ここで焦点となるのは、エラー安全性、圧力供給機能及びABS機能などの機能の冗長化である。システム構造における主要な相違は、新たなXブースト概念である。このXブーストは、ストロークシミュレータWS及び圧力供給部DVを含む特別な主シリンダHZからなり、圧力供給部DVは、図3にも示す短い全長を達成するために、主シリンダHZに平行に又は垂直に配置される。
【0063】
主シリンダHZは、基本的に、補助ピストン(HiKo)16と復帰ばね12aを備えたSKピストン(浮遊ピストン)(12)とからなる。補助ピストン16は、プランジャ16aに連結され、プランジャ16aは、シールを有する仕切り壁14を通って、圧力チャンバ12dに入るように動作する。補助ピストン(HiKo)16のストロークの約50%の距離は、プランジャの端部とSKピストンとの間である。プランジャ(16a)は、第1のピストン-シリンダユニットのピストンよりも大幅に小さい断面積(>5倍小さい)を有し、ブレーキ回路内での圧力増大及び圧力検出にほとんど寄与せず、この力をブレーキペダルに伝達することによって、特に、ABS動作及び/又はフェード現象時に、ブレーキペダルへの触覚フィードバックを発生させる。
【0064】
通常、弁FVは、ブレーキの始動時に閉じられ、補助ピストンHiKoは、ストロークシミュレータWSに作用する。ストロークシミュレータWSの機能及び変形例は後で説明される。補助ピストンHiKoは、通常動作に対する機能と圧力供給部DVの不具合が発生した場合のフォールバックレベルに対する機能との2つの機能を有する。通常動作である第1の場合に、補助ピストンは、弁FVが閉じた状態でストロークシミュレータWSに流体を送り、ペダルストロークは、圧力供給部DVに対する入力信号である。圧力供給部DVが故障した場合のフォールバックレベルでは、補助ピストンは、同様に、弁FVが閉じられたときにストロークシミュレータWSに流体を送るが、このとき、ペダルストロークは、ESPブースタに対する入力信号である。
【0065】
ブレーキペダル1がペダルプランジャ3と共に駆動されると、冗長ペダルストロークセンサ2a/2bが同時に作動する。さらに、これらのセンサは、本出願人によるDE11 2011 103274号で説明しているように、弾性部材KWSを介して切り離すことができる。この特許はこの点に関して本明細書に引用する。利点は、一方で、補助ピストン(HiKo)16が止められたことを検出することであり、他方で、補助ピストン(HiKo)16が止められた時のセンサ間のストローク差が補助ブレーキに対する制御信号をもたらすことである。弾性部材は、WSストロークシミュレータのばね特性の一部とすることもできる。補助ピストン(HiKo)16は、貯蔵容器VBに接続されたTHZピストンの標準ブリーザ穴を有する。主シールが機能しなくなった場合に、ブレーキ回路が機能しなくなることはよく知られている。これは、VBへの接続ラインで、排出に使用される逆止弁RVとスロットルとを使用して回避することができる。スロットルは、小流量に対して位置決めされるので、シールが機能しなくなり、依然として診断され得る場合であっても、ペダル特性は大幅に変化しない(10秒で3mmのペダルストローク)。同じ構成は、浮遊ピストン(SK)12(図示せず)に使用することもでき、これは、両シールの不具合を非致命的なものにする。或いは、通常は開いたソレノイド弁をフィードバックラインで使用することもできる。ソレノイド弁は、ペダル駆動又は診断後に閉じる。これは、HZの両方のピストン(補助ピストンHiKo及び第2のピストンSK)に当てはまる。
【0066】
ストロークシミュレータWSは、様々な方法で設計することができる。図示した構造は、WSピストンとばねとの組み合わせからなる様々な特許出願に記載された先行技術に相当する。この組み合わせは、ペダルストロークの機能としてのペダルストローク特性を付与する。弁RVは、ペダルがきわめて急に解放された場合に、ストロークシミュレータWSからの急速圧力低減Pabに使用される。スロットルDは、対応するペダル特性を有する所望の調整された圧力増大Paufに使用される。さらに、ストロークシミュレータWSは、弁WAによって作動を停止することができる。これは、フォールバックレベル(RFE)にある非冗長システムに不可欠である。ストロークシミュレータWSの吸入量は、ブレーキ回路BK1及び圧力チャンバ12dへの補助ピストンHiKoの送出量に影響を及ぼさない。このシステム(図1)では、ESPは、Xブーストの不具合が発生した場合に冗長的に機能する。ESPポンプは、主シリンダTHZ及び圧力供給部DVを介して貯蔵容器からボリュームを吸入する。したがって、弁WAはなくすことができる。ペダルプランジャ16aを備えた補助ピストン(HiKo)16は、ブレーキ作動後に、ペダル復帰ばね18によって初期位置に移動する。
【0067】
圧力供給部又はDVは、BKV機能に必要とされる。圧力供給部は、スピンドル7及びナットを介してピストン10を移動させるECモータ8からなり、圧力媒体をブレーキ回路BK1及び圧力チャンバ12dに送出する。液量は、ESP内の圧力変換器DGによって測定されたBKV特性曲線によって、ペダルストローク2a/2bからの圧力を制御するBKV制御からもたらされる。或いは、圧力の代わりに、分流器を介して測定されたモータ電流を使用することができる。電流測定による圧力制御の精度を改善するために、電流測定による圧力制御は、特性マップのPauf及びPabにおける圧力損失の記録を必要とし、選択的に、車両の減速との比較によるなどの補正要素によってさらに改善される。これは、スピンドル駆動体がボールねじ駆動体KGTではなくて、例えば、プラスチックナットを有する台形スピンドルの場合に特に重要である。
【0068】
ピストン10は、主シリンダTHZと同様に、始動位置にブリーザ穴27を有する。ボリュームは、温度依存性のないスリーブ又は開弁に低い減圧しか必要としない吸入弁(SV)28を介して吸入することができる。
【0069】
台形スピンドルが使用される場合、ピストンは、モータ駆動体がピストンの自動ロックにより動作できない位置に留まる。
【0070】
圧力供給部DVの寸法決めは、DVピストンの全ストロークがブレーキ回路BK2のボリューム消費又はSKピストン2のストロークに対応するように調整することができる。SKピストンは、ボリューム吸入が大きいほど直径、さらにストロークを大きく設計することができる。他方で、圧力供給部DVは、相応して設計することができる。又はピストン復帰ストロークに対してSV吸入弁を介して補給することで、不足した液量を使用可能にして、容積(ピストン及びストローク)をより小さく設計することもできる。このために、図1には示されていない(図4を参照のこと)通常は閉じたソレノイド弁PD1が必要とされる。圧力低減Pabが発生した場合に、完全な液量を補償するために、ピストンは、ブリーザ穴が開いた状態でその初期位置に移動しなければならない。吸入弁28及びブリーザ穴27は、VBに向かう戻りラインに接続されている。圧力供給部DVのすべての構成要素は、1つのハウジング25内に組み込まれている。
【0071】
ブレーキ回路BK1及びブレーキ回路BK2の圧力増大Pauf及び圧力低減Pabは、BKV制御及びペダルストロークセンサを通じて達成され、DVのピストンは相応して移動する。通常、Xブーストは、ボリュームを最大で遮断限界80~120barまでブレーキ回路BKに圧送する。フェード現象に対してより高いブレーキ圧が必要とされる場合、Xブーストは、80~120barでESPポンプに圧送し、これは、より高い圧力レベルをもたらす。以前は、ESPポンプは、ASR動作によって例えば200barの最大限の圧力に対応する搬送量に対して容量を決めなければならなかった。適切なポンプ構造、例えば、2回路歯車ポンプ又はポンプピストン用の独立した偏心器、さらに、段付きピストンなどによって、ESPポンプは、ブレーキ回路圧力とXブースト圧力との間の圧力差だけに対処しさえすればよい。例えば、PBremskreis(=200bar)-Xブースト(=80~120bar)=80~120barであり、よって200barではなく、80~120barだけがESPポンプの構造にとって必要となり、そのため相応したより小さいESPモータで十分である。さらに、ポンプのこの構造では、急速な減速に対して、すでに低い圧力範囲、例えば、20barから、Eブースト及びESPポンプを並列で配置することが可能である。したがって、これは、Pauf(TTL)をより素早くしたりXブーストモータをより小さくしたりする可能性をもたらす。
【0072】
ブレーキプロセス時に、圧力供給部DVが故障した場合に、DVピストンは、ブレーキ回路BK1内の圧力を受けて押し戻されるので、ブレーキ圧は完全に低減することができる。自動ロックギヤがDVピストンに使用される場合に(プラスチックナットを備えた台形スピンドル)、そのような圧力低減は不可能である。この場合に、通常閉じたソレノイド弁AVが、貯蔵容器(図示せず)への接続部と共に、ブレーキ回路BK1内に、又はHikoのブリーザ穴から貯蔵容器VBへの接続部に設けられる。
【0073】
まれに起こるXブースト及びESPの両方の電子制御又は調整ユニット(ECU)の不具合が発生した場合に、フォールバックレベルRFEにおいて、補助ピストン(HiKo)16によって、ボリュームが開いた弁FVを通ってブレーキ回路BK1とSKピストンの後部側の主シリンダHZとに送られ、ブレーキ圧が増大する。主シリンダHZ内のブレーキ圧は、SKピストンを移動させ、ブレーキ回路BK2内の圧力が増大する。このボリュームが、DVの開いたブリーザ穴を通って漏出するのを防止するために、通常閉じたソレノイド弁PD1が設けられている(図1には示していない、図1aを参照のこと)。
【0074】
ブレーキ回路(BK)の不具合が発生した場合の機能
ブレーキ回路の不具合は、診断サイクルの一部として、特定の間隔で、特性マップに保存されたブレーキシステムのp-V特性曲線を比較することで、圧力供給部DVによって検出される。
【0075】
例えば、ピストンストローク/容積が標準値よりも大きい場合に、呼応してブレーキ回路(BK)内に空気が存在するか又は漏れがある。これは、p-V特性曲線によって識別することができる。漏れが発生した場合に、漏れがユニット以外に、例えば、ホイールシリンダにあることを条件として、4つの弁EVを順次閉じることで漏れを識別することができる。例えば、漏れがブレーキ回路BK1内にある場合には、ブレーキ回路BK1の弁EVが閉じられる。次いで、圧力供給部DVは、SKピストンを介してブレーキ回路BK2に作用する(ここで引用する特許出願DE10 2015 106 089.2号及びDE10 2016 112 971.2号での診断ロジックの説明と同様である)。これがうまく働かない場合には、圧力供給部DVは機能しておらず、ブレーキブースタBKVも機能しない。この場合、ESPポンプはブレーキ回路BK2でブレーキブースタBKVとして機能する。
【0076】
SKピストン(12)は、ブレーキ回路BK1、BK2の分離と共に重要な安全ゲートとなるので、ブレーキ回路BK2の不具合により、圧力供給部DVに不具合が発生することはない。
【0077】
両方の場合において、ペダル特性は同じであり、ペダルが機能しなくなることはない。
【0078】
ESPでポンプ/モータの不具合が発生した場合のABS機能
ABS圧力低減信号Pabが発生した場合に、DV制御は、ホイールがロックするのを防止するためにブレーキ圧を修正する。両方のブレーキ回路での対応する圧力低減Pabは、2つのブレーキ回路の一方のホイールがロックするのを防止するのに必要である。ただし、これは最適なブレーキ効果を意味しないが、これは改善することができる。
【0079】
例えば、ホイールロック時に、一方のブレーキ回路で対応する圧力低減Pabを行った場合に、他方のブレーキ回路は、弁USVを閉じることで圧力低減Pabを受けることができない。これは、ここに引用する特許出願DE11 2009 004636号(E112)で説明しているように、並列逆止弁RVなしに、弁EVの調整による個々のホイール調整で最適化することができる。
【0080】
図2は、ペダルストロークSにわたるペダル特性を示している。領域Aでは、曲線1での力の増大は、すべてのブレーキ動作の約85%に相当する約30barのブレーキ圧まで比較的一定である。このプロセスは、ペダル復帰ばねを介して実施することができる。次いで、より累進的な部分Bが動作阻止限界まで作用し、例えば、フェード現象の場合などのより高い圧力領域が続く。この場合に、運転者もブレーキシステムに変化があったことを感じる。
【0081】
曲線1は、ストロークシミュレータWSを備えたXブーストに対応する。WSがない場合、すなわち、追従ブースタの場合、ペダルストロークが排出(venting)状態又はフェード現象によって変わる曲線2になる。したがって、ブレーキ回路(BK)の不具合が発生した場合に、さらにより極端な2aへの拡散(図示せず)がある。従来のeブースタの場合に、BKVは、xでeブースタからESPブースタに切り換えられる。これはペダル特性を変える。BKV制御に影響を及ぼすことなく、同じ圧力及び同じペダル力で、主シリンダ(HZ)ピストンを有するペダルは、ホイールシリンダ内の圧力が目標値に達するまでさらなるボリュームをESPポンプに送る。そのボリュームは、弁USVを越流して主シリンダHZに戻される。
【0082】
ペダルストロークが大きい、変化したペダル特性は、Xブーストの増幅率を小さくすることで得られ、これは、輪郭が明瞭なスキャッタバンドをもたらす。さらに、弁HSV1、HSV2は調整することができる。
【0083】
ここで、ストロークシミュレータWSを有する本発明によるXブーストは、ペダルストロークに応じて、対応する累進的力が増大する曲線Aのように挙動する。
【0084】
ABSによるペダルフィードバック
ABS機能の場合、DVによって供給される予圧は絶えず変わる。この予圧は、プランジャ16aに作用し、連結されたペダルプランジャ3に作用する小さい力変化として感じることができる。このことは、多くのブレーキ専門家から要望されている。この予圧は、ABSの最初に又は減速時に断続的に吸入圧力を短時間で増大させることで変化することができる。
【0085】
反応がより顕著な場合には、FV弁は開き、DVの制御圧は補助ピストンHiKoに直接作用する。
【0086】
ストロークシミュレータWSによる回生
ペダル特性は、ストロークシミュレータWSによって決まる。ここで、発電機を用いたブレーキ管理は、必要とされる車両の減速に対する発電機ブレーキトルク(電気ブレーキトルク)とブレーキ圧(油圧ブレーキトルク)との割合を定める。両方の量は、減速時に任意に変えることができる。回生は、a.4つのすべてのホイールシリンダで同じブレーキ圧か、b.車両アクスルでアクスル毎のブレーキ圧か、又はc.4つのすべてのホイールシリンダでホイール毎のブレーキ圧かを適用することができる。ここで、圧力供給部DVに対して、並びに、b.及びc.の場合に、対応する弁構造又はESPユニットの対応する弁及びポンプ制御に対して、特別な制御方法が必要である。
【0087】
a.による回生時のブレーキ圧の計算は、ホイール力に基づくことが好ましい。ホイールに作用する、必要とされる全ブレーキ力(目標ブレーキ力)は、ペダルストロークから求められる。目標ブレーキ力を電気で加えることができる場合に、油圧ブレーキ力は0N(シリンダ内のブレーキ圧は0bar)である。目標ブレーキ力が最大可能電気ブレーキ力を超える場合に、目標ブレーキ力と電気ブレーキ力との間の差が油圧目標ブレーキ力である。油圧目標ブレーキ力は、ホイールシリンダ内での圧力発生により圧力供給部DVによって実現される。このために、ホイールブレーキの個々のCp値を使用して、目標ブレーキ圧を計算し、ホイールブレーキのCp値は、ブレーキ圧に対するブレーキ力の比を表す。目標圧力は、DVピストンの対応する移動によって発生する。ESPの圧力センサは、ピストン移動のフィードバック用に使用される。このようにして、圧力供給部DVは、圧力増大時及び圧力低減時の両方で目標圧力を設定することができる。DVピストンの高精度の位置制御により、圧力設定は非常に正確である。DVによる圧力制御は、Pauf及びPabに対して弁が作動する必要がないので、きわめて静かである。ESPユニットの騒音の原因となる弁及びポンプの作動は必要とされない。さらに、この回生制御は、前輪、後輪、及び全輪駆動の車両、並びにX及びIIブレーキ回路分割に対して一律に使用することができる。ペダル特性は変わらないままである。
【0088】
車両アクスルでのアクスル毎のブレーキ圧を用いるb.の場合に、ESPの弁及びポンプモータが制御されなければならないこともある。目標ブレーキ力が、最大可能電気ブレーキ力を超える場合に、目標ブレーキ力と電気ブレーキ力との間の差が油圧目標ブレーキ力である。この油圧目標ブレーキ力は、最初に圧力供給部によって駆動アクスルにのみ加えられる。非駆動アクスルのEVは閉じられる。非駆動アクスルも、特定の車両減速から(例えば、0.2gから)、(ブレーキ中の車両の安定化のために)油圧でブレーキをかけられなければならない。そして、油圧目標ブレーキ力は、2つの車両アクスルに一緒に加えられなければならない。非駆動アクスルでのブレーキ圧は、駆動アクスルでのブレーキ圧以下である。駆動アクスルでの圧力は、EVが開いたときにDVによって増大する。非駆動アクスルでの圧力は、非駆動アクスルのEVの適切なPWM制御によって調整される。例えば、運転者がブレーキペダルを解放したために又は発電機時間が延びたために油圧目標ブレーキ力が低減されなければならない場合、両方のアクスルでのブレーキ圧が低減される。これは、弁EVが開いた駆動アクスルにおいて、圧力供給部DVの適切な制御により行われる。非駆動アクスルでの圧力低減は、ESPポンプの制御及び非駆動アクスルの弁(EV)のパルス幅変調(PWM)制御と併せて、弁AVの(場合によってはクロック制御された)開放によって行われる。弁EVのPWM制御は、リアアクスルでの圧力が極端に低下するのを防止することを意図されている。結果として、リアアクセルでの圧力が0barまで低下した場合には、油圧目標ブレーキ力のさらなる低減が圧力供給部DVを介して排他的に生じ、駆動アクスルで弁が開き、駆動アクスルで弁EV、AVが閉じる。駆動アクスルのAVは、これらのプロセス時に、常に閉じたままである。このため、弁及びポンプの騒音は、特定の車両減速(例えば、0.2g)を超えた場合にのみ非駆動アクスルだけで発生する。
【0089】
4つのすべてのシリンダで、ホイール毎のブレーキ圧を用いるc.の場合に、ESPの弁及びポンプモータが制御されなければならないこともある。圧力供給部DV、弁、及びESPポンプの制御は、b.において説明した状況と同様に行われる。
【0090】
運転者支援機能
自動ブレーキ干渉を必要とする以下のような多くの運転者支援機能がある。
・望ましい車両減速が能動ブレーキ干渉によって設定されるACC(アダプティブクルーズコントロール)。
・ブレーキインパルスが眠りに落ちた運転者を目覚めさせるAWB(自動警報ブレーキ)。
・ホイールシリンダのきわめて低いブレーキ圧が、降雨時にブレーキディスクから水の薄膜を拭き取り、それにより、次のブレーキ時に最大ブレーキ効果がすぐに得られるBDW(ブレーキディスクワイピング)。
【0091】
これらの支援機能では、圧力供給部DVは、ホイールシリンダ内に必要なブレーキ圧を発生させることができる。目標ブレーキ圧は、様々な運転者支援システムによって指定される。ACCの場合、目標ブレーキ圧は可変であり、必要とされる車両減速によって決まる。これに対して、BDWの場合、目標圧力は、小さい値(例えば、1~3bar)を有する。回生と同様に、ブレーキ圧は、DVピストンの対応する移動によって発生する。この場合に、ESPの圧力センサは、ピストン移動のフィードバック用に使用される。回生と同様に、ブレーキ圧設定は、DVピストンの精密な位置制御によりきわめて正確である。圧力供給部DVによる圧力制御は、運転者支援システムにおいても非常に静かである。
【0092】
図2の図形記述は、特に、全長に加えて、本発明の決定的な利点を示している。
【0093】
図3は、Xブーストの以下の主要な構成要素を空間表現で示している。
・ペダルプランジャ3
・前部壁上の取付フランジBF
・ペダル連結部を含む第1のピストン-シリンダユニット又は主シリンダHZ
・有利にも、主シリンダに平行に配置された(HZのアクスルに垂直に整列することもできる)、ハウジング圧力供給部l(DV)25を含むモータ8
・油圧制御及び調整ユニットHCU
・電子制御及び調整ユニットECU
・貯蔵容器VB
・プラグコネクタSTは、貯蔵容器VBの下で、HZ及びHCUの上に配置され、対応するコネクタが横に引き出されるのを可能にするために、ユニットの中心に向かって内側を向いている。
【0094】
図4は、図1及び図1aへの追加物を示し、この説明に基づいている。追加物は、貯蔵コンテナ(VB)と、センサ、ソレノイド弁、及びモータの電気接続部eとにつながった制御ユニット(ECU)である。制御ユニット(ECU)は、例えば、FV弁などの安全関連の構成要素をオプションの独立型車両電気システム接続を用いて作動させるための部分冗長化部分制御ユニット(ECU2)を有する。例えば、ペダルストロークセンサ(2a、2b)の信号が使用されるこの部分制御ユニット(ECU2)は、好ましくは冗長電源を有する既存のASICに組み込むことができる。
【0095】
貯蔵容器(VB)への接続部において、印刷回路板(PCB)へのセンサ要素(33)の組込部には、貯蔵容器(VB)内に浮遊体(34)及びターゲット(T)が設けられている。これは、貯蔵容器(VB)内のブレーキ流体の高さのアナログ評価を可能にし、システムの診断を支援する。例えば、圧力が圧力供給部(DV)によって増大し、次に圧力が低下した後、高さが低くなった場合にシステム内に漏れが発生している。
【0096】
印刷回路板(PCB)は、好適には、本体(38)及びスプレー壁(39)への良好な熱伝導を有するアルミニウムプレート又はアルミニウム担体(37)に取り付けられている。ピーク負荷において、続く車室(39a)の最大温度が冷却により30℃のときに、制御ユニット(ECU)の外側温度は120℃、スプレー壁(39)で60℃になることがある。アルミニウムプレートは、Mosfet(33a)において、かなりの温度低下が達成されるのを可能にする。Mosfet(33a)のタブは、いわゆるバイア穴(V)を介してアルミニウムプレート(37)に伝達される。よく知られているように、電子部品の故障率には、特にアレーニウスの法則による強い温度依存性がある。
【0097】
ECモータ(8)は、冗長接続部eredを介して、2x3相制御によって冗長的に制御することができる。プロセスは公知である。通常、ECモータ(8)は、モータセンサ(40)として角度エンコーダを必要とする。
【0098】
ここで、圧力供給部DVは、通常は閉じた増設ソレノイド弁PD1を有する。このソレノイド弁は、DVピストンがフォールバックレベルで圧力を受けて押し戻され、対応する液量が、ブレーキ回路BK1、BK2で失われる場合に必要である。これは、大容積の補助ピストンHiKoによって補償することができるが、ペダル特性に悪影響を及ぼす。DVピストンが初期位置に達すると、ブリーザ穴が開き、ブレーキ流体が貯蔵容器に流入する。フォールバックレベルRFEでは、弁PD1は閉じられる。ESP干渉又はESPブーストが発生した場合に、弁PO1は再度開くことができる。
【0099】
図1ですでに説明したように、その後のある量のブレーキ流体をブレーキ回路1(BK1)に送出するために、DVピストン(10)を引き戻すことで、ボリュームが吸入弁(28)を介して貯蔵容器(VB)から吸入される。このために、弁PD1は閉じられ、DVピストン(10)は後退する。DVピストン(10)は、貯蔵容器(VB)から吸入弁(28)及び油圧接続部(R)を介してブレーキ流体を吸入する。再送出ボリュームがDVチャンバ(10)に吸入されると、弁PD1は開かれ、DVピストン(10)は前方に移動する。DVピストン(10)は、再送出ボリュームをブレーキ回路1(BK1)に押し込む。圧力供給部(DV)の吸入段階時に、ESP戻しポンプ(P、図1)が、ホイールブレーキシリンダ内の圧力を能動的に高くする場合に、ブレーキ回路1(BK1)内に負圧が発生する。この場合に、ESP戻しポンプ(P、図1)のボリューム送達が滞り、場合によっては、ブレーキ回路1(BK1)内のESP戻しポンプ(P、図1)は、シールD4と主シリンダ(THZ)の補給穴(47)と貯蔵容器(VB)からの油圧接続部(48)とを通る補充ボリュームを吸入する。SKピストン(12)は、SKピストンばね(12a)によって押し戻される。この場合に、SKピストンの位置は、もはやホイールブレーキシリンダ内の圧力に対応しない。これは、運転者がブレーキペダル(1)を解放したときに、圧力低減に悪影響を及ぼすことがある。ブレーキ回路1(BK1)内のミニ貯蔵容器(35)は、ボリューム送出のこの停滞又はSKピストンのこの後退移動が起こるのを防止するために設けることができる。圧力供給部(DV)の吸入段階時に、ミニ貯蔵容器(35)は、ESP戻しポンプ(P、図1)にボリュームを供給する。ミニ貯蔵容器(35)の必要とされる容量は、吸入段階の持続時間と、ESP戻しポンプ(P、図1)のボリューム送出能力とに依存する。
【0100】
Xブーストの有用性を高め、ストロークシミュレータ(WS)の機能をチェックするために、補助ピストンの補給穴(42)と貯蔵容器(VB)との間の油圧接続部(44)に遮断弁(36)を設けることができる。例えば、補助ピストンシール(D2)に漏れがある場合に、遮断弁(36)は閉じることができ、したがって、ストロークシミュレータ(WS)の不具合を回避する。
【0101】
遮断弁(36)を使用して、様々な診断機能をチェックすることもできる。この目的のために、弁PD1は開かれ、遮断弁(36)は閉じられる。圧力供給部(DV)が作動すると、ブレーキ回路1(BK1)に圧力が加えられ、例えば、ESPの圧力センサ(DG)を用いて、圧力を測定することができる。このとき、例えば、ストロークシミュレータの遮断弁(WA)の閉鎖機能をチェックすることができる。DVピストン(10)が一定の位置にあるときに、弁FVが開かれたならば、ブレーキ回路1内の圧力は、ストロークシミュレータの遮断弁(WA)が正しく機能している場合にほんのわずかだけ降下する。次いで、ストロークシミュレータの遮断弁(WA)が開かれると、ブレーキ回路1(BK1)内の圧力は、ストロークシミュレータの遮断弁(WA)が無傷の場合にかなりより大きく降下する。ストロークシミュレータの遮断弁(WA)に漏れがあると、ブレーキ回路1(BK1)内の圧力は、ストロークシミュレータの遮断弁(WA)がまだ作動していない場合でさえかなり大きく降下し、ストロークシミュレータの遮断弁(WA)が開かれたときにそれ以上降下しない。ストロークシミュレータのピストン(49)のピストンシールD6に漏れがある場合、ブレーキ回路1(BK1)内の圧力は、ストロークシミュレータの遮断弁(WA)を開いた後、さらに降下し続ける。
【0102】
ストロークシミュレータ(WS)が故障した場合に、例えば、弁FVに漏れがあるとしても、弁FVは通常開かれる。ブレーキペダル(1)を駆動するときに、運転者は、ボリュームを補助ピストンチャンバ(43)からブレーキ回路1(BK1)内のESP戻しポンプ(P、図1)に押し込む。次いで、ESPは、ペダル(1)の位置に応じて、ESPの能動ブレーキ機能によって圧力をシリンダに加えることができる。ペダルストロークは、ホイールブレーキシリンダ内で特定の圧力を達成するのに、無傷のXブーストを用いるよりも大幅に長い。これは運転者を驚かし、予測できない行動をもたらすことがある。これを回避するために、圧力供給部(DV)を使用して、油圧ペダルリセット力を発生させることができ、そのため、ペダル力は、無傷のXブースト機能によるペダル力と同様になる。このために、ブレーキ回路1(BK1)内の圧力、したがって、補助ピストンチャンバ(43)内の圧力も、車両メーカが意図した、ストロークシミュレータの標準ペダル力/ペダルストローク特性を再現するように、圧力供給部(DV)によって調整される。この再現がうまく成功したならば、運転者は、より長いペダルストロークによって驚かされず、運転者の行動はより予測可能になる。この例では、ストロークシミュレータ(WS)は、通常通り機能するが、圧力供給部(DV)によるブレーキ回路1(BK1)内のブレーキ圧増大は、補助ピストンのスニフ穴(sniff hole)(45)が閉じられた後にのみ、又は遮断弁(36)が使用された場合のみ、より短いペダルストロークで起こり得る。しかし、ESPの能動ブレーキ機能を使用する場合に、ホイールブレーキシリンダ内の圧力は、補助ピストンブリーザ穴(45)が閉じる前にすでに高いことがある。
【0103】
図4aは、Xブーストの機能上の安全性を高める方策を示している。弁FVは、FVredによって、好ましくは、封止ボールから弁座への調整された流れを用いて、冗長性に関して拡張することができる。
【0104】
図5は、Xブーストの全システムをESPと共に示している。THZを有するXブースト、弁、及び圧力供給部DVは、図7にも示す吸入弁(28)の改善された接続部を除いて、図4のものと同様である。図5は、貯蔵容器(VB)へのスロットル付き排出部(Dr2.1)と共に、補助ピストン(16)用の冗長シール(D2.1)及び補給穴(50)を示している。スロットルDr2.1は、シール(D2)に漏れがある場合に、小漏出流だけが、補助ピストンチャンバ(43)から補給穴(50)を通って、貯蔵容器(VB)に至ることができるように狭小に設計されるが、これは、単に、制限のあるブレーキ時間中に、ブレーキペダル(1)のストロークの遅くて短い非干渉性の伸長をもたらすに過ぎない。この漏出流は、妥当性チェックにおいて、ペダルストロークセンサ(2a、2b)によって検出されるが、E144で説明したシステム診断でも検出される。
【0105】
シールD4に対する冗長化として、さらなるシールD4.1も示されている。このシールD4.1が機能しなくなると、それと共に、ブレーキ回路BK1及び圧力供給部DVも機能しなくなる。この場合に、ESPユニットは、圧力供給部の作業、すなわち、圧力増大を行う。これは、シールD4、D4.1及び補給穴52の組み合わせによって回避することができ、補給穴52の貯蔵容器への接続部には、補助ピストン(HiKo)16と同様に、スロットルDr4.1が設けられている。小漏出流がスロットルD44.1を通るこのシール4.1の不具合は、ブレーキ回路BK1又は圧力供給部DVの不具合をもたらさない。さらに、シールD4.1の診断が、好適には、この構成を用いて可能である。或いは、通常は開いた弁TVを貯蔵容器への接続部に設けることができる。この弁は、シールD4又はシールD5に漏れが発生した場合に閉じることができる。
【0106】
シールD3に対して、冗長シールD3.1を補給穴51及びスロットルDr3.1と共に使用することもできる。さらに、ストロークシミュレータシールD6は、シールD6.1、補給穴53、及びスロットルDr6.1を冗長的に装備することもできる。これは、機能上重要なすべてのシールが冗長化し、ブレーキ及び診断時に漏れが検出され得ることを意味する。これは、フェイルオペレーショナル(FO)に対する高い安全レベルを達成する。このシール構成は、圧力ロッドピストンを有し、フローティング回路を有さない一回路主シリンダ(THZ)と併用することもできる。
【0107】
ESPとブレーキ回路1(BK1)のホイールシリンダとの間のブレーキ回路1(BK1)に漏れがある場合、ブレーキ回路1(BK1)及びXブーストの圧力供給部(DV)は機能しなくなる。漏れにより、ブレーキ流体が周囲環境に失われ得るリスクもある。対応策として、ESPは、ブレーキ回路1(BK1)の両方の吸入弁EVを閉じることができる。不具合がXブーストで検出されたが、Xブーストがこれらの弁(EV)にアクセスしない場合に、Xブーストは、ESPの能動ブレーキ機能に切り換えられなければならない。この場合に、ESPは、ブレーキ回路2(BK2)のホイールブレーキシリンダ内の圧力を調整する。ブレーキ回路1(BK1)のホイールブレーキシリンダ内の圧力調整をしない場合、ESPは、ブレーキ回路1(BK1)にボリュームを絶えず送らなければならない。ESPがブレーキ回路1(BK1)の漏れを検出しない場合、ブレーキ流体は絶えず失われる。この状況に対して、主シリンダ(THZ)の圧力チャンバ(12d)とESPとの間のブレーキ回路1(BK1)に分離弁TV1が設けられている。Xブーストがブレーキ回路1(BK1)の漏れを検出した場合に、弁TV1は閉じられる。次いで、圧力供給部(DV)は、ブレーキ流体を失うことなく、主シリンダ(THZ)の圧力チャンバ(12d)に、ひいては、ブレーキ回路2(BK2)に圧力を供給することができる。
【0108】
さらに、ESPの不具合が発生した場合に、弁TV1を使用して、滑りやすい道路での最適化されたブレーキ距離をもたらすことができる。法律上の理由から、滑りやすい道路でブレーキをかける場合に、フロントアクスルのホイールは、リアアクスルのホイールの前にロックする必要がある。このために、リアアクスルのホイールは、車両が若干減速する場合に、ブレーキが不十分になる。Xブーストの場合、IIブレーキ回路分割のブレーキ回路1(BK1)のフロントアクスルのホイールがロック傾向を見せた場合に、弁TV1を閉じることができる。この場合に、ブレーキ回路2(BK2)のリアアクスルのホイールブレーキシリンダ内のブレーキ圧は、リアアクスルのホイールもロック傾向を見せるまで、Xブーストの圧力供給部(DV)を用いてさらに高くすることができる。これは、滑りやすい路面に対して、ほぼ最大限の減速を達成できることを意味する。当然のことながら、リアアクスルのホイールブレーキシリンダ内の圧力を上げた後で、弁TV1を短時間開放することで、フロントアクスルのホイールブレーキシリンダ内の圧力をさらに高くすることも可能である。Xブレーキ回路分割の場合、弁TV1は、ブレーキ回路1(BK1)のフロントホイールがロック傾向を見せた場合に閉じることができる。弁TV1が閉じた後、ブレーキ回路2(BK2)内の圧力は、ブレーキ回路2(BK2)のリアホイールがロック傾向を見せるまでさらに高くすることができる。ブレーキ回路1(BK1)内の圧力は低いので、車両は、それでもなお十分に安定しており、一方、ブレーキ回路2(BK2)内の高い圧力は、短いブレーキ距離をもたらす。
【0109】
THZからESPへの供給ラインBK2では、分離弁TV2が、ブレーキ回路2(BK2)で使用されている。分離弁TV1と同様に、弁座の出力部はESPに接続されているので、油圧接続は重要である。これらの2つの分離弁TV1、TV2は、以下の機能を行うために使用することができる。
1.補給、ステップ2。図4に対してすでに説明したように、ブレーキ回路1(BK1)内の液量、したがって、ブレーキ回路1(BK1)及びブレーキ回路2(BK2)内の到達可能な圧力レベルは、主シリンダ(THZ)のSKピストン(12)が停止したときに、補給によって抑制される。この場合に、さらなる圧力上昇は、ブレーキ回路1(BK1)内でのみ可能である。SKピストン(12)の停止は、このときブレーキ回路1(BK1)内の圧力が、ブレーキ回路1(BK1)内のボリューム増加と共に2倍の素早さで増大するために識別可能である。SKピストンが停止した場合に、それに伴い分離弁TV1、TV2は閉じられ、圧力供給部(DV)のピストン(10)は後退する。ブレーキ回路1(BK1)内の圧力はきわめて急速に落ちる。SKピストン(12)の復帰ばね(12a)の影響を受けて、SKピストン(12)は、場合によっては、初期位置まで後退し、ボリュームを主シリンダ(THZ)の主チャンバ(12d)からブレーキ回路1(BK1)のラインを通り、弁PD1を通って、圧力供給部(DV)のチャンバに移動させる。同時に、SKピストン(12)は、貯蔵容器(VB)に至る主シリンダ(THZ)の油圧接続部48を用いて、ボリュームを貯蔵容器(VB)からSKピストン(12)のシールD5を経由し、穴47を経由して、主シリンダのSKピストン(12)の前のチャンバに吸入する。吸入弁(28)の接続が修正されたために、吸入弁は、圧力供給部(DV)のピストン(10)が前部領域にある間、有効ではなく、圧力供給部(DV)のピストン(10)が後退するときに、ボリュームは、貯蔵容器から吸入弁(28)及び連結部Rを経由して吸入されない(図7についての説明も参照のこと)。この吸入プロセスの終わりに、分離弁TV1、TV2は再度開かれる。圧力供給部(DV)のピストン(10)の次の前進ストロークと共に、主シリンダ(THZ)のSKピストン(12)が再度前進し、ブレーキ回路1(BK1)内の圧力とブレーキ回路2(BK2)内の圧力の両方は、さらに高くなることができる。圧力供給部(DV)は、Xブーストの圧力基準値を用いて制御されるのが好ましい。
2.分離弁TV1、TV2は、弁排出口を吸入弁(EV)を介してホイールシリンダに油圧接続するという上記の前提条件と共に、切換弁(US1、USV2)の代わりとして、ESPに組み込むこともできる。これは、コスト及び重量の節減につながる。
3.すでに説明したように、ESPが故障した場合に、ブレーキ回路1(BK1)のABS機能は、分離弁TV1及び圧力供給部(DV)を用いて果たすことができる。分離弁TV2と共に、ABS機能は、ブレーキ回路1(BK1)及びブレーキ回路2(BK2)の両方で果たすことができる。ブレーキ回路の各ホイールが個別にABS制御される場合に、それと共に、4つの吸入弁(EV)を使用することができる。これは、特に、ブレーキ回路の対角分割に関して大きな利点である。ここでは、制御プロセスは示さない。圧力制御は、圧力供給部(DV)によって常に行われる。
【0110】
ESP(ESP-ECU)の主制御ユニットに代わる部分冗長制御ユニット(部分冗長ESP-ECU)は、吸入弁(EV)とさらに分離弁(TV1、TV2)との制御用にESPで使用することができる。機能として、速度センサとさらにABS緊急機能用のヨー速度センサとのセンサ信号の処理が含まれるのが好ましい。しかし、この部分冗長制御ユニット(部分冗長ESP-ECU)は、Xブースト(XブーストECU)の制御ユニットに接続することもできる。
【0111】
すべての制御ユニット(ECU)及び部分冗長制御ユニット及び部分冗長制御ユニット(部分冗長ECU)は、車両電気システム(S1)への接続部に加えて、電源及びバスシステム(Sn)を含む車両電気システムへの冗長接続部を有する。ESPへの部分冗長接続部は、「十字の入った円」のシンボルで示されている。
【0112】
図4の説明ですでに言及したように、Xブースト(XブーストECU)の制御ユニットは、部分冗長部分(部分冗長Xブースト_ECU)を有することもできる。この部分冗長部分は、「円」で示す次の構成要素、すなわち、ペダルストロークセンサ(2a、2b)、分離弁FV、及びDV弁PD1に給電するのが好ましい。この部分冗長制御ユニット(部分冗長XブーストECU)はまた、ESPの部分冗長制御ユニット(部分冗長ESP-ECU)の作業を実行することも想定できる。その理由は、ABSの緊急機能は、Xブーストの部分冗長制御ユニット(部分冗長XブーストECU)にも提供されなければならないからである。
【0113】
ECU又は部分冗長ECUはそれぞれ、車両電気システムへの冗長接続部を有する。
【0114】
図5aは、ペダルストロークセンサ(2a)の例を使用して、安全性を高めるための課題解決手段を示している。ブレーキペダル(1)が駆動されたときに、きわめてまれな、センサ2aが動かない状態が起こった場合に、ペダルの移動は不可能であり、ブレーキが機能しなくなる。予圧ばね(41a)がセンサ(2a)の内部に設けられ、センサのプランジャ(2a1)は、センサ(2a)が動きを阻止されたときに、ばね(41a)の予圧力に抗して移動することができる。エラーは、弾性部材(KWS)の付いた2つのペダルストロークセンサ(2a、2b)の信号の妥当性チェックで判断することができる。ブレーキペダル(1)が駆動されたときに動作する2つの冗長復帰ばね18a、18bは、中心復帰ばね18の代わりとなる。ブレーキペダル(1)が解放されたときに、センサ2aが動かない場合に、ブレーキペダル(1)を完全に解放することは不可能である。その結果、車両は、運転者の意思に反してブレーキを連続的にかけられ続ける。この状況に対して、ノッチ(2a11)がプランジャ2a1に設けられ、このノッチは、プランジャ力の影響を受けて、プランジャがノッチ(2a11)の部分で破断するように寸法を決められている。当然のことながら、この課題解決手段は、ペダルストロークセンサ2aの安全性を高めるために、ペダルストロークセンサ2bと共に使用することもできる。
【0115】
図6及び図7は、圧力供給部(DV)の吸入弁(28)の不具合に対する課題解決手段を示している。吸入弁(28)の不具合、例えば、漏れは、圧力供給部(DV)の機能を損なう。その理由は、圧力供給部の作動チャンバ(11)内のボリュームが、弁PD1を経由してブレーキ回路1(BK1)に入るのではなくて、吸入弁(28)及び戻りライン(R)を経由して貯蔵容器(VB)に戻るからである。
【0116】
課題解決手段1(図6):吸入弁(28)と貯蔵容器(VB)との間の戻りライン(R)に遮断弁としてソレノイド弁(MV)を使用する。吸入弁(28)の漏れが検出された場合に、ソレノイド弁(MV)は閉じる。ソレノイド弁(MV)は、ブレーキ流体を圧力供給部(DV)の中のDVチャンバに吸入するために開くことができる。
【0117】
課題解決手段2(図7):圧力供給部(DV)のDVピストン(10)の中間位置には、増設した吸入穴(46)とDVピストン(10)の増設したシール(D9)とが設けられている。増設吸入穴(46)は、DV作動チャンバ(11)を吸入弁(28)及び戻りライン(R)を介して貯蔵容器(VB)に接続している。その結果、シール(D9)が無傷の状態で圧力が増大する場合に、吸引弁(28)は、DVピストン(10)が中間位置を過ぎた後で機能することができない。この場合に、吸引弁(28)の不具合は、圧力供給部(DV)の圧力増大機能に何ら影響を及ぼさない。DVピストン(10)が中間位置まで後退すると、DVピストン(10)は、貯蔵容器(VB)からスリーブ(D9)、吸入穴(46)、吸入弁(28)、及び戻りライン(R)を経由した容量だけを吸入するが、2つの圧力損失(シールD9及び吸入弁28)を伴う。DVピストン(10)の中間位置の前でのみ、吸気弁(28)だけが再度機能することができる。吸入機能は、次の移送時にのみ機能するので、さらなる不利益は見つけることができない。さらなる移送は、高い圧力レベルに対して、又は不十分なベンチレーションを補償するために、補充ボリュームが必要とされる場合に必要である。
【0118】
主シリンダ(THZ)のシールD4と同様に、冗長シールD8.1をブリーザ穴(53)及びスロットルDr8.1と共にピストンシールD8に対して使用することができる。このように、圧力供給部(DV)は、「フェイルオペレーショナル」(FO)の要件も満たす。
【0119】
上記の説明から、詳細に説明した方策は、本発明によるブレーキシステムのさらなる修正形態につながることになり、その修正形態も、本発明の特許請求の範囲に属する。
【符号の説明】
【0120】
参照数字のリスト
1 ブレーキペダル
2a マスタペダルストロークセンサ
2a1 ペダルストロークセンサ2aのプランジャ
2a11 ペダルストロークセンサ2aのプランジャ2a1のノッチ
2b スレーブペダルストロークセンサ
2b1 ペダルストロークセンサプランジャ2b
3 ペダルプランジャ
7 スピンドル(KGT)、台形スピンドル
8 ECモータ
10 ピストン(DV)
11 DVの圧力チャンバ又は作動チャンバ
12 SKピストン
12a 復帰ばねSKピストン
12d 浮動ピストンSKの圧力チャンバ又は作動チャンバ(後部)
14 仕切り壁
16 補助ピストン
16a プランジャ
18 ペダル復帰ばね
18a ペダルストロークセンサ2a用のペダル復帰ばね
18b ペダルストロークセンサ2b用のペダル復帰ばね
25 DVハウジング
27 ブリーザ穴
28 吸入弁
33 センサ要素
33a 素子、例えば、MOSFET
34 浮遊体
35 ミニ貯蔵容器
36 貯蔵容器(VB)用の遮断弁
37 アルミニウムプレート又は支持体
38 本体
39 スプレー壁
39a 車室
40 モータセンサ
41a ペダルストロークセンサ2aの予圧ばね
41b ペダルストロークセンサ2bの予圧ばね
42 補助ピストン(16)の補給穴
43 補助ピストン(16)のチャンバ
44 油圧接続部
45 補助ピストン(16)のブリーザ穴
46 圧力供給部(DV)の吸入穴
47 主シリンダ(THZ)の補給穴
48 油圧接続部
49 ストロークシミュレータ(WS)のピストン
50 補助ピストン(16)の補給穴
51 補助ピストンプランジャ(16a)の補給穴
52 主シリンダ(THZ)の補給穴
53 圧力供給部(DV)の補給穴
AV 排出弁ABS
B1 車両電気システム接続部1
B2 車両電気システム接続部2
BF 端部壁用取付フランジ
BK ブレーキ回路
BK1 ブレーキ回路1
BK2 ブレーキ回路2
D 絞り用オリフィス
DV 圧力供給部
DG 圧力変換器
Dr2.1~Dr6.1、Dr8.1 貯蔵容器(VB)への戻り流れ中のスロットル
D1 補助ピストン(16)のシール1
D2 補助ピストン(16)のシール2
D2.1 冗長シール(D2)
D3 補助ピストンプランジャ(16a)のシール
D3.1 冗長シール(D3)
D4 SKピストン(12)のシール4
D4.1 冗長シール(D4)
D5 SKピストン(12)のシール5
D6 ストロークシミュレータピストン(49)のシール6
D6.1 冗長シール(D6)
D7 DVピストン(10)のシール7
D8 DVピストン(19)のシール8
D8.1 冗長シール(D8)
D9 DVピストン(10)の増設シール
e 電気接続部
red 冗長電気接続部
ECU Xブーストの制御ユニット(電子制御ユニット)
ECU2 Xブーストの部分冗長コントローラ
EV 吸入弁ABS
FO フェイルオペレーショナル
FV 分離弁、通常は開
HZ 主シリンダ
KGT ボールねじ駆動体(スピンドル)
KWS 力-変位センサ
MV 遮断弁、通常は閉
PCB 印刷回路板
PD1 DV作動チャンバに対する(通常は閉じた)ソレノイド弁
R 貯蔵容器VBへの戻り
R 貯蔵容器VBへの戻りライン
RV 補助ピストンのブリーザ穴に向けた逆止弁
S1 車両給電接続部
Sn 冗長車両給電接続部
SK フローティング回路
ST プラグコネクタ
SV 吸入弁
T ターゲット
THZ (タンデム型)主シリンダ
TTL ロック時間
TV1 ブレーキ回路1(BK1)の分離弁、通常は開
TV2 ブレーキ回路2(BK2)の分離弁2、通常は開
TV 貯蔵容器(VB)に対する(通常は開いた)ソレノイド弁
V バイア穴
VB 貯蔵容器
WA ソレノイド弁(通常は閉)
WS ストロークシミュレータ
図1
図2
図3
図4
図4a
図5
図5a
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-09-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転操作(AD)及び/又は電気車両/ハイブリッド車両で使用するためのツーボックスブレーキシステムであって、前記車両は2つの軸を有し、前記軸のうちの少なくとも1つの軸は、少なくとも1つの電気駆動モータによって駆動され、各軸は、各々に割り当てられた1対のホイールブレーキを有し、
前記ツーボックスブレーキシステムは、第1のボックスの一部として、電動駆動体及び伝動装置を有する第1のピストン-シリンダユニット(DV)を備え、かつ第2のボックスの一部として、圧力媒体を前記ホイールブレーキに供給するために、弁を有する弁装置、貯蔵チャンバ(SpK)及びモーターポンプユニットを備える前記ESPユニットを有し、
前記第1のピストン-シリンダユニット(DV)は、前記電動駆動体、前記伝動装置、並びに第1及び第2の油圧ラインを介して圧力媒体を前記ESPユニットに供給するための少なくとも1つの圧力供給ピストンを有し、前記第1の油圧ラインは、第1の油圧ブレーキ回路の一部であり、前記第2の油圧ラインは、第2の油圧ブレーキ回路の一部であり、
前記ツーボックスブレーキシステムは、機能的ESPユニットなしの緊急運転における緊急ABS機能を、前記第1のピストン-シリンダ(DV)ユニット及び少なくとも1つの分離弁(TV1、TV2)を使用して実施するように適合され、
前記ツーボックスブレーキシステムは、第1の軸の前記ホイールブレーキに供給される圧力が、第2の軸の前記ホイールブレーキに供給される圧力とは別個に調整されるように、前記緊急ABS機能を実施し、又は、
前記ツーボックスブレーキシステムは、前記ESPユニットの一部としての機能的モータ-ポンプユニットなしの緊急運転における緊急ABS機能を、前記第1のピストン-シリンダ(DV)ユニット及び前記ESPユニットの前記弁の少なくとも1つを使用して実施するように適合される、ツーボックスブレーキシステム。
【請求項2】
前記システムは、電動ブレーキブースタを備え、前記電動ブレーキブースタは、
・駆動装置と、
・前記第1のピストン-シリンダ(DV)と、
・前記第1及び第2のブレーキ回路のうちの少なくとも1つのブレーキ回路に圧力媒体を供給するための第2のピストン-シリンダユニットであって、前記駆動装置によって駆動される第2のピストン-シリンダユニットと、
を有する、請求項1に記載のツーボックスブレーキシステム。
【請求項3】
前記ブレーキブースタは、前記第1のピストン-シリンダユニットに接続されたピストンストロークシミュレータを備える、
ことを特徴とする、請求項1~2のいずれか一項に記載のツーボックスブレーキシステム。
【請求項4】
前記第1のボックスは切換弁(TV1、TV2)を備え、前記緊急運転において、各ブレーキ回路に個々にABSを提供するために、前記切換弁は個別に制御される、
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のツーボックスブレーキシステム。
【請求項5】
前記第2のボックスは吸入弁を備え、前記緊急運転において、各ブレーキ回路に個々にABSを提供するために、前記吸入弁は個別に制御される、
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のツーボックスブレーキシステム。
【請求項6】
前記電動ブレーキブースタ及び/又は前記ESPユニットはそれぞれ、第1のECU及び第2の少なくとも部分的に冗長なECUを備え、前記第1のECUは第1の電源に接続され、前記第2のECUは第2の電源に接続される、
ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のツーボックスブレーキシステム。
【請求項7】
自動運転操作(AD)及び/又は電気車両/ハイブリッド車両で使用するためのツーボックスブレーキシステムであって、前記車両は2つの軸を有し、前記軸のうちの少なくとも1つの軸は、少なくとも1つの電気駆動モータによって駆動され、
前記ツーボックスブレーキシステムは、第1のボックスの一部として電動ブレーキブースタを備え、かつ第2のボックスの一部としてESPユニットを備え、
前記電動ブレーキブースタは、第1の油圧ライン及び第2の油圧ラインを介して前記ESPユニットに接続され、前記第1の油圧ラインは第1の油圧ブレーキ回路の一部であり、前記第2の油圧ラインは第2の油圧ブレーキ回路の一部であり、
前記電動ブレーキブースタ及び前記ESPユニットはそれぞれ、第1のECU及び第2の少なくとも部分的に冗長なECUを備え、前記第1のECUは第1の電源に接続され、前記第2のECUは第2の電源に接続される、ツーボックスブレーキシステム。
【請求項8】
前記電動ブレーキブースタは、電動駆動体と、伝動装置と、前記第1のブレーキ回路及び前記第2のブレーキ回路に圧力媒体を供給するための少なくとも1つの圧力供給ピストンとを有するピストン-シリンダ(DV)ユニットを備え、
前記電動駆動体のECモータ(8)は、冗長接続部(ered)を介して、2x3相制御によって冗長的に制御されるか、かつ/又は前記ECモータ(8)は、2x3相制御されるECモータである、請求項7に記載のツーボックスブレーキシステム。
【外国語明細書】