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特開2024-178216単離された椎間板細胞、その使用方法、および哺乳動物組織からそれを調製する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178216
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】単離された椎間板細胞、その使用方法、および哺乳動物組織からそれを調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/077 20100101AFI20241217BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20241217BHJP
   A61K 35/32 20150101ALI20241217BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20241217BHJP
   A61L 27/36 20060101ALI20241217BHJP
   A61L 27/40 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C12N5/077
A61L27/38 112
A61K35/32
A61P19/00
A61L27/36 120
A61L27/36 312
A61L27/40
【審査請求】有
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024154036
(22)【出願日】2024-09-06
(62)【分割の表示】P 2023107150の分割
【原出願日】2014-03-14
(31)【優先権主張番号】61/794,691
(32)【優先日】2013-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515254574
【氏名又は名称】ディスクジェニックス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】DISCGENICS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ララ・イオネスク・シルバーマン
(72)【発明者】
【氏名】ケビン・ティ・フォーリー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】対象の椎間板の修復または置換に役立ち得る、椎間板のための生物学的処置を提供する。
【解決手段】本発明は、椎間板細胞集団、それを誘導する方法、およびその使用方法に関する。椎間板細胞集団は、哺乳動物椎間板組織から誘導され、インビトロで足場非依存的培養により増殖させた、少なくとも1つの細胞を含む。前記椎間板細胞集団を用いて、対象の損傷、障害または欠損のある椎間板を回復または再生することができる。前記椎間板細胞集団を、対象から誘導し、対象に投与または移植する、または関連のないドナーから誘導することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物椎間板組織から誘導され、インビトロで足場非依存的培養により増殖させた、少なくとも1つの細胞
を含む、椎間板細胞集団。
【請求項2】
軟骨性組織から誘導された1または複数の細胞であって、少なくとも1つの細胞が足場非依存的培養により維持されたものである細胞
を含む、異種細胞集団。
【請求項3】
培養物が、EGF、bFGF、血清、線維芽細胞条件培地、および粘性非反応性物質からなる群から選択される1または複数の添加物を含む培地を含む、請求項1または2に記載の細胞集団。
【請求項4】
低接着コーティングを有する培養容器中で継代される、請求項3に記載の細胞集団。
【請求項5】
足場非依存的培養により少なくとも1回継代される、請求項1~4のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項6】
細胞外マトリックスを生成する、請求項1~5のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項7】
CD24、CD34、CD44、CD73、CD90、CD105、CD166、Stro-1、HIF1、FIT-1、ネスチン、CK8、およびHLAタンパク質を含む群から選択される1または複数の細胞表面マーカーを生成する、請求項1~6のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項8】
細胞表面マーカーを生成する細胞の割合が70%を超える、または40%未満である、請求項7に記載の細胞集団。
【請求項9】
GAPDH、SDHA、HPRT1、B2M、Sox9、アグリカン、Col1、Col2、ネスチン、CK8、Sox1、CD44、ALPI、およびPPARGを含む群から選択される1または複数の遺伝子または遺伝子産物を発現する、請求項1~6のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項10】
椎間板組織から得られる、請求項1~9のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項11】
組織から1または複数の細胞を単離すること;
該1または複数の細胞を足場依存的培養培地中で継代すること;
該1または複数の細胞を足場非依存的培養培地に移すこと
を含む、椎間板細胞集団を誘導する方法。
【請求項12】
少なくとも1つの椎間板の処置を、それを必要とする対象において行うために椎間板細胞を使用する方法であって、
処置有効量の椎間板細胞集団を対象に投与し、それによって対象を処置することを含む方法。
【請求項13】
障害、損傷、または欠損のある少なくとも1つの椎間板を有する対象を処置する方法であって、
対象に、該障害または損傷を処置するのに有効な量の椎間板細胞集団を投与することを含む方法。
【請求項14】
変性椎間板疾患、椎間板ヘルニア、椎間板損傷からなる群から選択される適応症を処置する方法であって、
処置有効量の椎間板細胞集団を投与し、それによって適応症を処置することを含む方法。
【請求項15】
組織が哺乳動物椎間板組織である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
組織が、提供された臓器組織である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
細胞集団が足場非依存的培養により少なくとも1回継代される、請求項11~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
細胞集団が細胞外マトリックスを生成する、請求項11~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
細胞集団が、CD24、CD34、CD44、CD73、CD90、CD105、CD166、Stro-1、HIF1、ネスチン、CK8、およびHLAタンパク質を含む群から選択される1または複数の細胞表面マーカーを生成する、請求項11~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
細胞表面マーカーを生成する集団中の細胞の割合が、70%より高い、または40%未満である、請求項11~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
集団が、GAPDH、SDHA、HPRT1、B2M、Sox9、アグリカン、Col1、Col2、ネスチン、CK8、Sox1、CD44、ALPI、PPARG、ADAMTS、MMP、FMOD、ILを含む群から選択される1または複数の遺伝子または遺伝子産物を発現する、請求項11~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
障害または損傷のある椎間板を処置するためのデバイスであって、
軟骨性組織から誘導された椎間板細胞集団であって、少なくとも1つの細胞が足場非依存的培養により増殖させたものである細胞集団;および
足場、マトリックス、または移植可能な構造体を含むデバイス。
【請求項23】
生物活性物質をさらに含む、請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
人工外輪;
椎間板細胞集団
を含む、人工椎間板置換デバイス。
【請求項25】
外輪が非吸収性材料を含んで構成される、請求項24に記載の人工椎間板置換デバイス。
【請求項26】
非吸収性材料がポリウレタンである、請求項25に記載の人工椎間板置換デバイス。
【請求項27】
外輪が吸収性材料を含んで構成される、請求項24に記載の人工椎間板置換デバイス。
【請求項28】
吸収性材料が、ポリグリコール酸もしくはポリ乳酸、またはその組合せである、請求項27に記載の人工椎間板置換デバイス。
【請求項29】
椎間板細胞集団が、足場材料、マトリックス材料、担体材料、増殖因子、および他の生物活性物質のうちの1または複数をさらに含む、請求項24に記載の人工椎間板置換デバイス。
【請求項30】
デバイスを1または複数の椎体にしっかり固定するためのアタッチメント手段をさらに含む、請求項24に記載の人工椎間板置換デバイス。
【請求項31】
1また複数の椎体へのネジ固定を可能にするための、スルーホール、カフ、タブ、ループ、またはワッシャをさらに含む、請求項30に記載の人工椎間板置換デバイス。
【請求項32】
椎間板を置換する方法であって、
請求項24に記載の人工椎間板をインビトロで製造すること;および
該人工椎間板を対象に外科的に移植し、それによって椎間板を置換すること
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35U.S.C.§119(e)に準拠して、全体が参照により本明細書に組込まれる2013年3月15日に出願された米国仮特許出願第61/794,691号の優先権の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本開示は、変性椎間板疾患の処置における、椎間板細胞(intervertebral disc cell)の単離およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
哺乳動物の脊椎は、2つの基本的な機能:(1)上半身の耐荷重支援および(2)脊柱を含む神経の保護を果たす。脊椎は、椎間板により隔てられた、連結する椎骨からなる。椎間板は衝撃吸収体として作用し、これによって脊椎は、曲がる、圧縮する、およびねじることができる。椎間板は、2つの基本的な部分:外側の線維構造(線維輪)、およびゲル状の内部構造(髄核)を有する。若い哺乳動物における健康な髄核は、約80%が水である。時間と共に、髄核はその高い水分含量を失い、かくして、衝撃を吸収するその能力を失う。さらに、椎間板は、脱水、疾患、酷使、傷害または外傷により損なわれ、断裂、膨張、ヘルニア形成などをもたらし得る。椎間板はまた、変性椎間板疾患などの他の疾患の影響も受けやすい。
【0004】
健康な椎間板においては、細胞は全体積のほんの一部である。椎間板体積の多くは、細胞により生成される細胞外マトリックス(ECM;大量の水の保持に役立つコラーゲンおよびプロテオグリカン)であり、髄核と線維輪との違いは主に、水分含量およびECMの組成にある。
【0005】
変性椎間板疾患の結果生じる背部痛は、病的状態、身体障害、および生産性低下の主な原因である。背部痛は、45歳までの人々の活動を制約するものとしてしばしば報告され、医師への受診、入院、および外科的処置の理由である。慢性的な背部症状は、毎年、人口の15%~45%により報告され、一生のある時点で人口の70%~85%において報告される。医療費および労働時間損失の観点から、財政的影響は大きい。米国では毎年、100万を超える脊椎の外科的処置が実施されている。さらに、脊椎手術市場の腰椎固定分は、歳入で10億ドルをはるかに超えると見積もられている。
【0006】
背部痛および脊椎疾患に罹患する対象のための手術的および非手術的治療選択肢の両方における継続的改善にも拘らず、この状態を解消する、または確実に改善するための解決法は存在しない。脊椎疾患のための現在の治療としては、ステロイド注射、理学療法、椎間板切除術および脊椎固定術が挙げられる。人工脊椎が、いくつかの会社によって導入されている。しかしながら、これらの人工器官は、その設計、例えば、ベアリング面、骨への固定、関節数、材料、制約、回転の可動性がまちまちで、実際のところはほとんど成功していないように見える。
【0007】
核関節形成または核置換もまた、変性椎間板疾患を治療するための選択肢である。いくつかの場合、これらのデバイスは、ヒドロゲルコア中心がポリエチレンスリーブ中に包み込まれたものからなり、通常の荷重および非荷重下に収縮および膨張することができる。これは、椎間板腔の高さの回復に部分的に役立ち、健康なヒトの椎間板を模倣するのに役立ち得る。
【0008】
椎間板置換術には、合併症がないわけではない。最も一般的な合併症としては、隣接レベル脊椎疾患、沈下、および椎間関節症が挙げられる。さらに、臨床試験に基づく最近の研究により、感染、椎体骨折、インプラントの位置異常、沈下、器質的な機能不全、および傍脊椎異所性骨化の発生が示された。インプラントの前方脱臼などの、より重篤な合併症も報告されている。また、全椎間板置換術に由来する摩耗粒子の問題および脊髄に対する潜在的な影響はまだわかっていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
対象の椎間板の修復または置換に役立ち得る、椎間板のための生物学的処置が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
単離された椎間板細胞(discogenic cell)集団、その使用方法、および調製方法が、本明細書に開示される。椎間板細胞集団は、損傷、傷害または障害のある椎間板の、修復、再生および置換において用いられる。いくつかの実施形態においては、椎間板細胞集団は、哺乳動物椎間板組織から誘導され、足場非依存的条件下、インビトロで増殖させる。いくつかの実施形態においては、細胞培養は、EGF、bFGF、血清、線維芽細胞条件培地、および粘性の非反応性物質からなる群から選択される1または複数の添加物を含む培地を含む。いくつかの場合、細胞を、低接着コーティングを有する容器中で増殖させる。開示される椎間板細胞集団を、それを必要とする対象において、椎間板の自家および/または非自家処置のために用いることができる。
【0011】
開示される椎間板細胞を、非吸収性材料または吸収性材料を用いるインビトロまたはインビボの人工椎間板置換物の形成のために用いることができる。前記材料は、椎間板細胞集団を収容するよう機能する人工輪を形成することができ、以下の少なくとも1つ-足場材料、マトリックス材料、担体材料、増殖因子、および/または他の生物活性物質、と組み合わせるか、または組み合わせなくてよい。この人工外輪は、それを1または複数の椎体に固定することができるように装着手段を含み得る。例えば、人工輪は、1または複数の椎体へのネジ固定を可能にするための、スルーホール、カフ、タブ、ループ、またはワッシャを含み得る。人工椎間板を、対象に外科的に移植して、椎間板を全置換することができる。
【0012】
また、自己および非自己ドナーから椎間板細胞を取得および調製するための様々な方法も開示される。組織から1または複数の細胞を単離すること、足場依存的培養培地中で1または複数の細胞を継代すること、および足場非依存的培養培地に1または複数の細胞を移すことを含む、椎間板細胞集団を誘導する方法が開示される。処置量の椎間板細胞集団を対象に投与し、それによって対象を処置することを含む、それを必要とする対象中の少なくとも1つの椎間板を処置するために椎間板細胞を用いる方法も開示される。様々な実施形態において、組織は、哺乳動物椎間板組織であり、例えば提供された臓器または脊椎から得る。いくつかの態様において、開示される方法は、細胞集団を足場非依存的培養物中で少なくとも1回継代することを含み、その細胞集団は細胞外マトリックスを生成する。いくつかの態様において、細胞集団は、CD24、CD34、CD44、CD73、CD90、CD105、CD166、Stro-1、HIF1、ネスチン、CK8、およびHLAタンパク質を含む群から選択される1または複数の細胞表面マーカーを生成し、細胞表面マーカーを発現する細胞の、集団中のパーセンテージは、70%より高い、または40%未満である。開示される方法のいくつかの態様において、細胞集団は、GAPDH、SDHA、HPRT1、B2M、Sox9、アグリカン、Col1、Col2、ネスチン、CK8、Sox1、CD44、ALPI、PPARG、ADAMTS、MMP、FMOD、ILを含む群から選択される1または複数の遺伝子または遺伝子産物を発現する。
【0013】
別の態様において、記載される椎間板細胞集団において、40%を超える細胞が細胞表面マーカーCD44、CD73、CD90、HLA-A、BもしくはC、CD24、CD105、CD166、またはそれらの組合せを生成し、細胞集団の約20%未満がCD34、HLA-DRもしくは-DQ、またはSTRO-1を生成する。いくつかの実施形態においては、集団の約80~100%が、CD73、CD90、CD44、HLA ABC、またはそれらの組合せを生成する。いくつかの実施形態においては、集団の約20~75%がCD105、CD166、CD24、またはそれらの組合せを生成する。
【0014】
一態様によれば、本発明は、加齢、外傷、毒素曝露、薬物曝露、放射線曝露、酸化、免疫複合体沈着、または移植片拒絶により誘導される、椎間板損傷により引き起こされる障害または損傷を少なくとも1つの椎間板に有する対象を処置するための方法を提供する。
【0015】
別の態様によれば、本発明は、少なくとも1つの椎間板に障害または損傷を有する対象を処置するためのキットであって、薬学的に許容される担体、該障害または損傷を処置するのに有効な量の椎間板細胞、脊柱組織を含み、前記細胞が培養物中で増殖することができ、分化する能力を有する、キットを提供する。いくつかの実施形態においては、キットは、少なくとも1つの薬剤を含む。
本発明の態様をさらに記載する:
[項1]
哺乳動物椎間板組織から誘導され、インビトロで足場非依存的培養により増殖させた、少なくとも1つの細胞
を含む、椎間板細胞集団。
[項2]
軟骨性組織から誘導された1または複数の細胞であって、少なくとも1つの細胞が足場非依存的培養により維持されたものである細胞
を含む、異種細胞集団。
[項3]
培養物が、EGF、bFGF、血清、線維芽細胞条件培地、および粘性非反応性物質からなる群から選択される1または複数の添加物を含む培地を含む、上記項1または2に記載の細胞集団。
[項4]
低接着コーティングを有する培養容器中で継代される、上記項3に記載の細胞集団。
[項5]
足場非依存的培養により少なくとも1回継代される、上記項1~4のいずれか1項に記載の細胞集団。
[項6]
細胞外マトリックスを生成する、上記項1~5のいずれか1項に記載の細胞集団。
[項7]
CD24、CD34、CD44、CD73、CD90、CD105、CD166、Stro-1、HIF1、FIT-1、ネスチン、CK8、およびHLAタンパク質を含む群から選択される1または複数の細胞表面マーカーを生成する、上記項1~6のいずれか1項に記載の細胞集団。
[項8]
細胞表面マーカーを生成する細胞の割合が70%を超える、または40%未満である、上記項7に記載の細胞集団。
[項9]
GAPDH、SDHA、HPRT1、B2M、Sox9、アグリカン、Col1、Col2、ネスチン、CK8、Sox1、CD44、ALPI、およびPPARGを含む群から選択される1または複数の遺伝子または遺伝子産物を発現する、上記項1~6のいずれか1項に記載の細胞集団。
[項10]
椎間板組織から得られる、上記項1~9のいずれか1項に記載の細胞集団。
[項11]
組織から1または複数の細胞を単離すること;
該1または複数の細胞を足場依存的培養培地中で継代すること;
該1または複数の細胞を足場非依存的培養培地に移すこと
を含む、椎間板細胞集団を誘導する方法。
[項12]
少なくとも1つの椎間板の処置を、それを必要とする対象において行うために椎間板細胞を使用する方法であって、
処置有効量の椎間板細胞集団を対象に投与し、それによって対象を処置することを含む方法。
[項13]
障害、損傷、または欠損のある少なくとも1つの椎間板を有する対象を処置する方法であって、
対象に、該障害または損傷を処置するのに有効な量の椎間板細胞集団を投与することを含む方法。
[項14]
変性椎間板疾患、椎間板ヘルニア、椎間板損傷からなる群から選択される適応症を処置する方法であって、
処置有効量の椎間板細胞集団を投与し、それによって適応症を処置することを含む方法。
[項15]
組織が哺乳動物椎間板組織である、上記項11に記載の方法。
[項16]
組織が、提供された臓器組織である、上記項15に記載の方法。
[項17]
細胞集団が足場非依存的培養により少なくとも1回継代される、上記項11~14のいずれか1項に記載の方法。
[項18]
細胞集団が細胞外マトリックスを生成する、上記項11~15のいずれか1項に記載の方法。
[項19]
細胞集団が、CD24、CD34、CD44、CD73、CD90、CD105、CD166、Stro-1、HIF1、ネスチン、CK8、およびHLAタンパク質を含む群から選択される1または複数の細胞表面マーカーを生成する、上記項11~16のいずれか1項に記載の方法。
[項20]
細胞表面マーカーを生成する集団中の細胞の割合が、70%より高い、または40%未満である、上記項11~17のいずれか1項に記載の方法。
[項21]
集団が、GAPDH、SDHA、HPRT1、B2M、Sox9、アグリカン、Col1、Col2、ネスチン、CK8、Sox1、CD44、ALPI、PPARG、ADAMTS、MMP、FMOD、ILを含む群から選択される1または複数の遺伝子または遺伝子産物を発現する、上記項11~16のいずれか1項に記載の方法。
[項22]
障害または損傷のある椎間板を処置するためのデバイスであって、
軟骨性組織から誘導された椎間板細胞集団であって、少なくとも1つの細胞が足場非依存的培養により増殖させたものである細胞集団;および
足場、マトリックス、または移植可能な構造体を含むデバイス。
[項23]
生物活性物質をさらに含む、上記項22に記載のデバイス。
[項24]
人工外輪;
椎間板細胞集団
を含む、人工椎間板置換デバイス。
[項25]
外輪が非吸収性材料を含んで構成される、上記項24に記載の人工椎間板置換デバイス。
[項26]
非吸収性材料がポリウレタンである、上記項25に記載の人工椎間板置換デバイス。
[項27]
外輪が吸収性材料を含んで構成される、上記項24に記載の人工椎間板置換デバイス。
[項28]
吸収性材料が、ポリグリコール酸もしくはポリ乳酸、またはその組合せである、上記項27に記載の人工椎間板置換デバイス。
[項29]
椎間板細胞集団が、足場材料、マトリックス材料、担体材料、増殖因子、および他の生物活性物質のうちの1または複数をさらに含む、上記項24に記載の人工椎間板置換デバイス。
[項30]
デバイスを1または複数の椎体にしっかり固定するためのアタッチメント手段をさらに含む、上記項24に記載の人工椎間板置換デバイス。
[項31]
1また複数の椎体へのネジ固定を可能にするための、スルーホール、カフ、タブ、ループ、またはワッシャをさらに含む、上記項30に記載の人工椎間板置換デバイス。
[項32]
椎間板を置換する方法であって、
上記項24に記載の人工椎間板をインビトロで製造すること;および
該人工椎間板を対象に外科的に移植し、それによって椎間板を置換すること
を含む方法。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本特許のファイルは、少なくとも1つのカラー図面/写真を含む。カラー図面/写真を含む本特許の写しは、請求し必要な費用を支払えば米国特許商標庁により提供される。
【0017】
発明と見なされる内容は、特に指摘され、本書の最後で明確に特許請求される。しかしながら、本発明は、構成および実施方法の両方に関して、発明の目的、特徴および利点と共に、下記の詳細な説明を添付の図面と併せて参照することによって、よく理解され得る。
【0018】
図1図1は、幹細胞および軟骨形成細胞を同定するために知られる様々な表面マーカーの発現プロファイルを示す。8種類の細胞が調査されている:線維芽細胞、軟骨細胞、間葉系幹細胞(MSC)、単層(接着依存的)で増殖させた椎間板細胞、および懸濁液中(接着非依存的)で増殖させた椎間板細胞。
図2図2は、懸濁培養により増殖させた椎間板細胞の細胞形態を示す。
図3図3は、MSCと比較した椎間板細胞の軟骨形成能力を示す。
図4図4は、椎間板細胞の脂肪生成能力および骨形成能力を示す。
図5図5は、粘性1%ヒアルロン酸足場と組み合わせた後、および27ゲージの1.5インチ外科用針を通して押し出された後の、細胞の生存能力を示す(緑色、またはモノクロの場合は明るい部分-生細胞;赤色、またはモノクロの場合は暗い部分-死細胞)。
図6図6は、様々な形態の椎間板疾患を処置するための椎間板細胞の治療的使用において使用し得る装置および方法を示す。処置は、注射(上図)または移植(下図)によるものであり得る。細胞と担体/足場とは、一緒にしておく、または使用直前に組み合わせることができる。
図7図7は、粘性足場担体と併用した椎間板細胞の、変性椎間板(動物モデル)を修復するインビボ効能を、ウサギにおいて示す。
図8図8は、椎間板細胞の調製および移植を示すフロー図である。工程aには、椎間板の図を示す。工程bには、脊椎から単離された新鮮なヒト椎間板を示す。工程cには、切開および酵素消化後の髄核細胞を示す。接着する細胞を、EGFおよびFGF-2の存在下で増殖させる。スケールバー=50μm。工程dには、メチルセルロースを含有する接触阻害培養環境に移した細胞の顕微鏡写真を示す。約2週間でクラスターおよび球体が生じる。スケールバー=200μm。工程eには、メチルセルロース含む培地を洗浄により除去し、非架橋ヒアルロン酸足場と組み合わせた細胞を注入するためのシリンジを示す。工程fには、細胞と足場の混合物を変性ウサギ椎間板に注入するために用いられるシリンジを示す。その後、安全性および効能を約1ヶ月間にわたり調べた。
図9図9A~Fは、アグリカンおよびコラーゲンの生成を調べた椎間板細胞を示す。図9Aは、ヘマトキシリンおよびエオシン染色の位相画像である。図9Bは、ヌクレアファストレッドで対比染色されたアルシアンブルーの位相画像である。単一の細胞の周囲のマトリックスの存在に留意されたい(左図)。スケールバー=10μm。図9Cは、ピクロシリウスレッド染色の位相画像である。図9Dは、アクチン(赤色)および細胞核(青色)を含む共焦点画像である。図9Eは、さらに拡大された、アグリカン、コラーゲンおよびアクチン(核なし)の共焦点画像であり、ここで、黒色の矢印は細胞内アグリカンを示し、白色の矢印は細胞外アグリカンを示す。図9Fは、培養中の経時、14日目の採取時点、および軟骨形成分化の後の、マトリックス分子(アグリカンおよびコラーゲン2A)のRT-PCR分析を示す棒グラフである。発現倍数は、ハウスキーピング遺伝子HRPTおよび0日目でのベースライン遺伝子発現に対する正規化された交差閾値により算出した。
図10図10A~Cは、椎間板細胞に対するフローサイトメトリー解析を示す。図10Aは、前方および側方散乱プロットであり、細胞集団の89%を含む、その後の全ての解析に適用されたゲーティングを示す。図10Bは、5人の異なるヒトドナーに由来する椎間板細胞の発現レベル(アイソタイプコントロールと比較)を示す棒グラフである。図10Cは、表面マーカー発現の代表的なヒストグラムを示す。
図11図11A~Eは、椎間板細胞の多能性を示す。図11Aは、アリザリンレッド染色により示される骨形成分化を示す。図11Bは、オイルレッドO染色により示される脂肪生成分化を示す。図11Cは、マイクロマス形成後の軟骨形成分化(アルシアンブルーおよびヌクレアファストレッド)を示す。スケールバー=100μm。図11Dは、関節軟骨細胞(AC)、成人線維芽細胞(FB)、骨髄由来MSC、および椎間板細胞(DC)について、軟骨形成分化後の可溶性(培地)および不溶性(マイクロマス)のGAGの生成を定量的に評価する棒グラフである。図11Eは、様々な種類の細胞について、DNA量に対して正規化された総GAG生成を示す棒グラフである。線は、有意差(p<0.01、Bonferroniのポストホック検定を用いる一元配置ANOVA)を示す。
図12図12Aは、変性椎間板疾患のウサギモデルにおける処置の安全性および効能評価を示す。図12Aは、示される18の骨ランドマークに基づいて、2週間毎に撮影し、椎間板高指数(disk height index; DHI)を計算するのに用いた、代表的なX線写真である。図12Bは、試験期間にわたり(14日目に注入処置)、ウサギの体重が正常範囲内にとどまったことを示す。図12Cは、6週間の処置にわたるDHIのグラフであり、4週間および6週間後において、コントロール条件と比較して処置がDHIを改善し、高用量よりも低用量の方が効果が高いことを示す。足場コントロールまたは損傷コントロールにおいては改善は認められず、未損傷コントロールの椎間板高は週0時点から変化しなかった。
図13図13A~Bは、6週間のパイロット試験後の、処置の組織学的評価を示す。図13Aは、健康な椎間板、損傷椎間板、および処置された椎間板の断面である(ヘマトキシリンおよびエオシン染色、スケールバー=2mm)。図13Bは、骨髄、線維輪(AF)、軟骨終板(CEP)、および髄核(NP)を含む、処置後のIVDの様々な領域の組織を示す;ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)またはアルシアンブルーで染色(スケールバー=100μm)。
図14図14A~Cは、ブタにおける処置のパイロット試験(12週)における安全性および効能を示す。図14Aは、IDCTの用量が、12週において持続的に、損傷コントロールと比較してDHIを改善した(p<0.05)ことを示すグラフである;足場コントロールまたは損傷コントロールにおいては改善はなく、未損傷コントロールの椎間板高は週0から変化することがなかった。図14Bは、試験を受けているブタ脊椎の蛍光透視画像である(損傷を受けた椎間板において椎間板腔の崩壊が認められる)。図14Cは、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)ならびにアルシアンブルーで染色された、髄核(NP)、軟骨終板(CEP)および線維輪(AF)を含む、IDCT処置された椎間板の組織学的評価である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書で記載される椎間板細胞は、椎間板組織から誘導され、椎間板の処置および/または修復のために用いることができる細胞である。いくつかの場合、椎間板細胞をインビトロで処理して、既存のまたは損傷のある髄核組織の修復、置換、または増強において他の細胞よりも強力である椎間板細胞を提供することができる。様々な実施形態において、椎間板細胞は、細胞外マトリックスを生成する。いくつかの実施形態においては、椎間板細胞は、プロテオグリカンを生成する。他の実施形態においては、椎間板細胞は、コラーゲンを生成する。他の実施形態においては、天然細胞に隣接して埋込まれた椎間板細胞は、化学的、機械的または他の力を介して天然細胞を刺激するのに役立ち得る。例えば、椎間板細胞は、増殖因子、サイトカインまたは他のタンパク質を放出することができる。
【0020】
本明細書で用いられる「椎間板(の)」(または「椎間板形成性」)(discogenic)とは、インビボで椎間板組織を生成する能力を指す。いくつかの実施形態においては、椎間板細胞は、障害もしくは損傷のある椎間板組織、および/または1もしくは複数の椎間板組織特性を喪失した椎間板組織をインビボで再生させることができる。いくつかの場合、「椎間板」細胞はインビトロで椎間板組織を生成することができ、例えば、椎間板細胞を用いて移植のための人工椎間板を作成することができる。
【0021】
インビトロで増殖させた細胞を言う場合に本明細書で用いられる「維持される」とは、細胞が24時間を超えて培養物中で増殖することを包含する。いくつかの場合、維持される細胞は、細胞培養物中で分裂した細胞である。
【0022】
「マイクロマス」は、接着を阻害する円錐容器中で約10,000~1,000,000個の細胞を濃縮し、その結果、細胞が少なくとも1つの単一の塊を形成することによって形成される。マイクロマスは、細胞外マトリックスをさらに含有してもよい。それは、軟骨形成能力を決定するアッセイに基づくものであり、ペレットとも称される。
【0023】
量、時間などの測定可能な値を言う場合に本明細書で用いられる「約」とは、±約20%未満の変動を包含することを意味する。いくつかの場合、約は10%もしくはそれ以下、または±5%もしくはそれ以下の変動を指し得る。いくつかの場合、約は±1%~±0.1%の変動を指し得る。
【0024】
「誘導される」は、ある細胞が、その天然の、または以前の生物学的状態または位置から取得または単離され、そして、培養物中で維持、成長もしくは増殖され、または不死化され、または他の処理がインビトロでなされたことを示すために用いられ得る。例えば、いくつかの本発明の実施形態においては、本発明の椎間板集団を、椎間板組織または軟骨性組織から誘導することができ、いくつかの実施形態においては、ディスコスフィア(discosphere)を、椎間板細胞集団から誘導することができる。
【0025】
細胞または分子が「単離」される場合、それは、人間の介入によって、その天然の状態から取り出され、またはその天然の状態に関して変化させられている。
【0026】
用語「発現する」、「発現した」または「発現」とは、核酸分子または遺伝子からの遺伝子産物の生合成、例えば、ポリペプチドの生合成を指す。ある細胞表面マーカーが細胞表面上に、何らかの事象、例えばインビトロ増殖の後に多少存在する場合、該細胞表面マーカーは細胞表面に発現すると言える。
【0027】
「損傷」とは、加齢、外傷、または疾患に起因するものであろうとなかろうと、椎間板に対する任意の障害、損傷、変性、または外傷を指す。
【0028】
「疾患」は、当分野で好適な任意の手段によって測定される、細胞、組織、臓器、系、または生体全体の、健康、状態、または機能からの、任意の逸脱、またはその障害である。
【0029】
「治療する」、「治療すること」または「治療」とは、症状の軽減、寛解、減少、あるいは疾患、障害、または状態を対象にとってより忍容可能なものにすること(例えば痛みの軽減による)、変性または悪化の速度を減速させること、変性の終点の程度を軽くすること、対象の身体的または精神的健康状態を改善すること、または生存期間を延長することなどの、任意の客観的または主観的パラメータを含む、疾患、障害、または状態の任意の減衰または改善を指す。症状の治療または改善は、身体検査、放射線検査、神経学的検査、および/または精神鑑定の結果を含む、客観的および/または主観的パラメータに基づき得る。
【0030】
「有効量」または「処置有効量」は本明細書では互換的に用いられ、特定の生物学的結果、例えば、これに限定されるものではないが本明細書に開示され、記載され、または例示される生物学的結果、を達成するのに有効な、本明細書に記載の化合物、材料、または組成物の量を指す。そのような結果としては、これに限定されるものではないが、当文献で好適な任意の手段により決定される、対象における椎間板疾患または障害の処置が挙げられる。
【0031】
「薬学的に許容される」とは、組成物、製剤、安定性、対象の許容性およびバイオアベイラビリティに関して、薬学的/毒物学的観点から対象にとって、また、物理的/化学的観点から製薬化学者にとって許容可能である特性および/または物質を指す。
【0032】
「薬学的に許容される担体」とは、活性成分の生物活性の有効性を妨害せず、投与を受ける宿主に対して毒性でない媒体を指す。薬学的に許容される担体の一例は、ヒアルロン酸である。
【0033】
「ディスコスフィア(discosphere)」は、米国特許第8,227,246B2号およびPCT出願番号PCT/US2012/025066に記載されており、その全体が参照により本明細書に組込まれる。
【0034】
椎間板組織からの椎間板細胞の取得
本明細書に記載される椎間板細胞は、椎間板組織から取得することができる。椎間板組織は、髄核組織、移行帯組織、および線維輪組織のいずれをも含み得る。いくつかの場合、椎間板細胞を、椎間板の軟骨終板から取得することができる。他の場合、椎間板細胞を、体内の他の軟骨性組織から取得することができる。
【0035】
様々な実施形態において、椎間板組織を、生存しているまたは死亡したドナーから取得することができる。ドナーは、哺乳動物、例えば、ヒトであってよい。いくつかの場合、ドナーは組織ドナーであり、レシピエントに遺伝的に関連していなくてもよい。ドナーは、新生児、若年者、成人および高齢者などの、任意の年齢のものであってよい。
【0036】
様々な実施形態において、椎間板組織は、健康な椎間板組織、または障害もしくは損傷のある椎間板組織であってよい。本明細書で開示される椎間板細胞および方法に用いることができる、障害または損傷のある椎間板組織としては、例えば、変性した組織、ヘルニア組織、痛みのある椎間板から取り出された組織、死亡ドナーから取り出された組織が挙げられる。
【0037】
様々な実施形態において、組織は、細胞を取得するために直接用いられる。他の実施形態においては、組織は、例えば、凍結保存またはガラス化により、使用前に凍結され、後日用いられる。他の実施形態においては、組織は、細胞が抽出されるまで、特殊培地中で4℃で保持される。組織を、糖、凍結防止剤、安定剤、血清などを含有する培地中で維持することができる。
【0038】
椎間板細胞の培養
椎間板細胞を、哺乳動物細胞培養において増殖させることができる。多くの場合、細胞培養は、基材を足場とさせる、または、基材を足場とさせないことができる。いくつかの場合、細胞培養は、培地を含み得る。細胞培養培地は、培養物中における哺乳動物細胞の増殖にとって好適な任意の培地、例えば、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、MEM(改変イーグル培地)、RPMI、RPMI1640などであってよい。いくつかの場合、培地は、栄養培地、例えば、Ham’s F12(F12)などの添加物をさらに含んでもよい。いくつかの場合、細胞培養培地は、さらなる添加物を含んでも、または含まなくてもよい。
【0039】
様々な実施形態においては、血清を培養培地に添加しても、または添加しなくてもよい。血清は、哺乳動物、例えば、ウシ、ニワトリ、ヤギ、ウマ、ヒト、ヒツジ、ブタ、ウサギなどから誘導される動物血清を指し得る。いくつかの場合、血清を、成体、新生児、または胎仔動物から誘導することができ、例えば、ウシ胎仔血清を、ウシまたはウシ胎仔から取得することができる。いくつかの場合、動物血小板溶解物(例えば、ヒト血小板溶解物)、血清変換された血小板溶解物、動物血清アルブミン(ウシ血清アルブミン)、または別の細胞培養に由来する条件培地(例えば、新生児包皮線維芽細胞条件培地)などの血清添加物を、血清と共に、または血清の代わりに添加してもよい。
【0040】
いくつかの場合、培養培地中の血清または血清添加物濃度は、0体積%、1体積%、2体積%、3体積%、4体積%、5体積%、6体積%、7体積%、8体積%、9体積%、10体積%、11体積%、12体積%、13体積%、14体積%、15体積%、16体積%、17体積%、18体積%、19体積%、20体積%、25体積%、および30体積%より高い、および/または約35体積%、30体積%、25体積%、20体積%、19体積%、18体積%、17体積%、16体積%、15体積%、14体積%、13体積%、12体積%、11体積%、10体積%、9体積%、8体積%、7体積%、6体積%、5体積%、4体積%、3体積%、2体積%、および1体積%未満であってよい。いくつかの場合、培地中の血清濃度は、0%であってよい。いくつかの実施形態においては、血清濃度は、0~17%、0~5%。5~17%または0~2.5%である。
【0041】
いくつかの場合、さらなるサプリメントを、培養培地に添加する、または添加しなくてもよい。いくつかの場合、サプリメントは、ホルモンまたは増殖因子であってよい。いくつかの場合、ホルモンまたは増殖因子は、アドレノメデュリン(AM)、アンギオポエチン(Ang)、自己分泌型細胞運動刺激因子、骨形成タンパク質(BMP)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、上皮成長因子(EGF)、エリスロポエチン(EPO)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF、FGF-2、またはFGF-β)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、増殖分化因子-9(GDF9)、肝細胞増殖因子(HGF)、ヘパトーマ由来増殖因子(HDGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、遊走刺激因子、ミオスタチン(GDF-8)、神経成長因子(NGF)および他のニューロトロフィン、血小板由来増殖因子(PDGF)、トロンボポエチン(TPO)、トランスフォーミング増殖因子α(TGF-α)、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、血管内皮増殖因子(VEGF)、胎盤増殖因子(PlGF)、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、インスリン、プロゲステロン、プトレシン、トランスフェリン、亜セレン酸ナトリウムであってよい。多くの場合、増殖因子は、EGFおよびbFGFであってよい。多くの場合、細胞培養培地中のサプリメントの濃度は、約1ng/ml、2ng/ml、3ng/ml、4ng/ml、5ng/ml、6ng/ml、7ng/ml、8ng/ml、9ng/ml、10ng/ml、11ng/ml、12ng/ml、13ng/ml、14ng/ml、15ng/ml、20ng/ml、25ng/ml、30ng/ml、35ng/ml、40ng/ml、50ng/ml、100ng/ml、200ng/ml、300ng/ml、400ng/ml、500ng/ml、600ng/ml、700ng/ml、800ng/ml、900ng/ml、1μg/ml、10μg/ml、20μg/ml、30μg/ml、40μg/ml、50μg/ml、60μg/ml、70μg/ml、80μg/ml、90μg/ml、100μg/ml、200μg/ml、300μg/ml、400μg/ml、500μg/ml、600μg/ml、700μg/ml、800μg/ml、900μg/ml、および1mg/mlより高い、および/または約1.1mg/ml、900μg/ml、800μg/ml、700μg/ml、600μg/ml、500μg/ml、400μg/ml、300μg/ml、200μg/ml、100μg/ml、90μg/ml、80μg/ml、70μg/ml、60μg/ml、50μg/ml、40μg/ml、30μg/ml、20μg/ml、10μg/ml、9μg/ml、8μg/ml、7μg/ml、6μg/ml、5μg/ml、4μg/ml、3μg/ml、2μg/ml、1μg/ml、900ng/ml、800ng/ml、700ng/ml、600ng/ml、500ng/ml、400ng/ml、300ng/ml、200ng/ml、150ng/ml、100ng/ml、50ng/ml、40ng/ml、35ng/ml、30ng/ml、25ng/ml、20ng/ml、16ng/ml、15ng/ml、14ng/ml、13ng/ml、12ng/ml、11ng/ml、10ng/ml、9ng/ml、8ng/ml、7ng/ml、6ng/ml、5ng/ml、4ng/ml、3ng/ml、2ng/ml、および1ng/ml未満であってよい。いくつかの場合、サプリメントの濃度は、1nM、2nM、3nM、4nM、5nM、6nM、7nM、8nM、9nM、10nM、11nM、12nM、13nM、14nM、15nM、20nM、25nM、30nM、35nM、40nM、50nM、100nM、200nM、300nM、400nM、500nM、600nM、700nM、800nM、900nM、1μM、10μM、20μM、30μM、40μM、50μM、60μM、70μM、80μM、90μM、100μM、200μM、300μM、400μM、500μM、600μM、700μM、800μM、900μM、および1mMより高い、および/または約1.1mM、1mM、900μM、800μM、700μM、600μM、500μM、400μM、300μM、200μM、100μM、90μM、80μM、70μM、60μM、50μM、40μM、30μM、20μM、10μM、9μM、8μM、7μM、6μM、5μM、4μM、3μM、2μM、1μM、900nM、800nM、700nM、600nM、500nM、400nM、300nM、200nM、150nM、100nM、50nM、40nM、35nM、30nM、25nM、20nM、16nM、15nM、14nM、13nM、12nM、11nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、および1nM未満であってよい。いくつかの実施形態においては、濃度は、約5~110ng/ml、5~15ng/ml、または90~110ng/mlである。
【0042】
いくつかの場合、細胞培養培地は、神経サプリメントを含んでも、または含まなくてもよい。いくつかの場合、神経サプリメントは、市販の神経サプリメント、例えば、B27、N2、またはN10であってよい。神経培地サプリメントを添加する場合、細胞培養培地中のサプリメントの濃度は、約0X、1X、2X、3X、4X、および5Xより高い、および/または約10X、6X、5X、4X、3X、2Xおよび1X未満であってよい。他の市販製品としては、NeuroCult、ANS Neural Mediaサプリメント、Neurobasalサプリメント、B28、NS21、G5、N21、NS21などが挙げられる。
【0043】
いくつかの場合、細胞培養培地は、哺乳動物細胞培養分野で公知の他の化学物質、分子、サプリメント、または添加物、例えば、アミノ酸、ペプチド、塩、ビタミン、抗生物質、抗かび剤、抗真菌剤、ミネラル、pH緩衝剤、pH指示剤、および糖を含んでもよい。多くの場合、細胞培養培地のpHは、約6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8および7.9より高い、および/または約8.0、7.9、7.8、7.7、7.6、7.5、7.4、7.3、7.2、7.1、7.0、6.9、6.8、6.7、6.5、6.6、6.4、6.3、6.2、6.1、および6.0未満であってよい。様々な実施形態において、pHは、約6.9~7.7、7.0~7.4、または7.3~7.7である。
【0044】
椎間板細胞を、単層中で、または懸濁液中で増殖させることができる。いくつかの場合、細胞を、必要に応じてガスおよび培地の交換を可能にする、哺乳動物細胞培養のためのプレート、皿、フラスコ、ローラーフラスコ、およびリアクターなどの細胞無菌容器中で増殖させることができる。様々な実施形態において、容器を静置する、または、容器を例えば回転もしくはローリングにより動かしながら、細胞を増殖させることができる。いくつかの場合、細胞培養培地を、例えば、容器の回転、震とう、またはローリングにより撹拌することができる。また、細胞培養培地を、他の方法で撹拌することもでき、例えば、静置容器中の細胞培養培地を、例えばその中の撹拌棒、撹拌子または他の機械的撹拌機構で物理的に動かすことにより撹拌することができる。いくつかの場合、容器は、培地の撹拌を補助するためのバッフルを含んでもよい。
【0045】
いくつかの場合、容器を、例えば、細胞の接着を補助する、または阻害するために処理することができる。様々な培養方法を用いて、足場非依存的条件下で細胞を増殖させることができる。一般に、懸濁液中で増殖することができる細胞を、足場非依存的条件で増殖させることができる。例えば、基材への接着なしに増殖および分裂することができる細胞は、足場非依存的であり得る。いくつかの場合、接着を補助するように、例えばゼラチンまたはコラーゲンで、容器をコーティングし得る。いくつかの場合、細胞接着または付着を阻害するように、例えば超低接着表面改変により、容器をコーティングし得る。いくつかの場合、容器は、市販のもの、例えば、超低接着容器(Corning)であってよい。さらに、細胞の自由浮遊懸濁を維持するように、メチルセルロース、ポロキサマー、または寒天/アガロースなどの粘性の非反応性培地添加物を用いる、または用いなくてよい。
【0046】
いくつかの場合、細胞接着を防止または阻害するよう細胞培養培地に添加物を加える場合、例えば、粘性の非反応性物質を添加する場合、細胞培養培地中の該添加物の濃度は、約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%および15%より高い、および/または約20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1.0%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%および0.1%未満であってよい。粘性添加物の最終濃度は、用いられる添加物に依存し得、例えば、メチルセルロースを用いる場合、その濃度は約0.6~0.9%、0.7~0.8%、または0.75%であってよい。アガロースを用いる場合、その濃度は、約1~5%、2~4%、または3%であってよい。
【0047】
いくつかの場合、椎間板細胞を、周囲レベルの酸素またはより高レベルもしくは低レベルの酸素を有する雰囲気中で増殖させることができる。多くの場合、周囲レベルの酸素は、22~19%の酸素であり得る。いくつかの場合、細胞を増殖させる雰囲気は、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、および5%未満である、および/または約4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%を超える。低酸素状態が望ましいいくつかの実施形態においては、酸素の濃度は約3~7%、4~6%、5%または6%であり得る。
【0048】
表面マーカー
いくつかの場合、椎間板細胞集団は、細胞表面マーカーの発現により特徴付けられ得る。いくつかの場合、椎間板細胞集団は、1または複数の特異的細胞表面マーカーおよび/または分化タンパク質群を発現しても、またはしなくてもよい。様々な実施形態において、椎間板細胞集団は、ゲーティングにより選択される特定マーカーを有する細胞の割合が、参照細胞、例えば、軟骨細胞または脂肪細胞のそれよりも高い、または低くてよい。他の場合、椎間板細胞集団は、ゲーティングにより選択される、ある特定の細胞表面マーカーを有する細胞を、ある割合で含み得る。いくつかの場合、ゲーティングにより選択される、ある特定の細胞表面マーカーを有する細胞の割合は、40%、50%、60%、70%、80%および90%を超える、および/または約100%、90%、80%、70%、60%および50%未満である。
【0049】
椎間板細胞集団を特徴付けるのに役立ち得る細胞表面マーカーとしては、これらに限定されるものではないが、CD24、CD34、CD44、CD73、CD90、CD105、CD166、Stro-1、HIF1、ネスチン、CK8、およびHLAタンパク質(ヒト白血球抗原、例えば、HLA-A、-B、-C、HLA-DQ、およびHLA-DR)が挙げられる。いくつかの場合、CD24は、細胞表面(例えば、リンパ球、顆粒球、および神経芽細胞)にグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)結合により固定される、細胞表面に発現する糖タンパク質であり得る。CD24は、熱安定抗原(HSA)とも称される。CD44は、細胞間相互作用、細胞接着および移動に関与する細胞表面糖タンパク質を指し得る。CD73は、5’-リボヌクレオチドホスホヒドロラーゼとも称され、例えば、B細胞、T細胞、内皮細胞、周皮細胞、濾胞樹状細胞、線維芽細胞、上皮細胞、心筋細胞、ニューロン、骨芽細胞、トロホブラストおよび間葉系幹細胞(MSC)上に発現する。CD90は、糖タンパク質Thy-1胸腺細胞抗原を指し得る。CD105は、TGF-β受容体複合体の糖タンパク質成分であるエンドグリンを指し得る。CD166は、活性化白血球細胞接着分子(ALCAM)を指し得る。Stro-1は、未熟な間葉系幹細胞のマーカーを指し得る。HIF-1は、低酸素誘導因子を指し得る。ネスチンは、神経マーカーを指し得る。CK8は、サイトケラチンマーカーを指し得る。
【0050】
いくつかの場合、椎間板細胞上の細胞表面タンパク質/マーカーの発現を測定し得る。様々な実施形態において、細胞表面タンパク質発現を、測定される細胞表面タンパク質のエピトープを認識する蛍光抗体を用いることにより測定する。いくつかの場合、測定は、標準的な技術を用いる蛍光活性化細胞選別(FACS)を含むフローサイトメトリーを用いて行われる。FACSにより測定される場合、発現は、ゲーティングにより選択される、特定の範囲内にある細胞の割合として測定され、ここでゲーティングはIgGコントロールを用いて設定される。いくつかの場合、発現は、HLA-ABC、CD44、CD73およびCD90については約70%よりも高く、CD24、CD105およびCD106については40%より低い。
【0051】
さらに、いくつかの場合、表面マーカーを用いて、特定のサブ集団または細胞を選別、単離、または濃縮することができる。例えば、磁気ビーズ、蛍光マーカーまたは他の技術を用いる細胞選別を用いて、集団内のサブ集団を選択することができる。
【0052】
遺伝子発現
表面マーカーに加えて、いくつかの場合、ゲノムおよび遺伝子解析を用いて、椎間板細胞を同定する。技術としては、定量的ポリメラーゼ連鎖反応、マイクロアレイ分析、ウェスタンブロットなどが挙げられる。DNA、mRNA、miRNAまたはタンパク質の測定により、ハウスキーピング遺伝子(GAPDH-グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ、SDHA-コハク酸デヒドロゲナーゼ複合体、サブユニットA、HPRT1-ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ、B2M-ベータ2ミクログロブリンなど)に対する増加または減少として測定される遺伝子(例えば、転写因子Sox9、細胞外マトリックス成分アグリカン、細胞外マトリックス成分コラーゲン1および2、神経マーカーネスチン、サイトケラチン8、転写因子Sox1、CD44(ヒアルロン酸の受容体)、ALPI(アルカリホスファターゼ)、PPARG(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ)、MMP(マトリックスメタロプロテイナーゼ)、ADAMTS(トロンボスポンジンモチーフを有するディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼ)、FMOD(フィブロモジュリン)、インターロイキンなど)の発現を用いて、椎間板細胞を同定することができる。
【0053】
凍結保存
いくつかの場合、細胞を凍結保存することができる。細胞を、Cryostor、HyCryo、UltraCruz、Cyagenなどの、予め製剤化された凍結保存媒体と混合することができる。あるいは、細胞を、血清、アルブミン、ジメチルスルホキシド、トレハロース、スクロース、他の糖、エチレングリコール、グリセロール、プロピレングリコール、ヒアルロン酸、コラーゲン、マトリゲル、他の天然細胞外マトリックス分子などを含有しても、またはしなくてもよい、製剤化された凍結保存媒体と混合することができる。細胞を急速に(ガラス化)、またはゆっくりと(様々な温度で定められた時間経過で、または速度制御された凍結装置により)凍結することができる。細胞を、10万~1000万個の細胞/mLで凍結することができる。
【0054】
椎間板細胞集団の単離
椎間板組織から椎間板細胞を誘導、取得、または単離する方法を説明する。いくつかの場合、単離された椎間板細胞集団は、自己または非自己ドナーから誘導される。自己ドナーは、椎間板細胞集団が、その細胞を用いて処置される対象から誘導される場合であり得る。同種異系ドナーとも称される非自己ドナーは、異なる対象であり得る。また、生存および/または死亡ドナーから椎間板細胞を取得および調製するための様々な方法も開示する。
【0055】
多くの場合、椎間板組織から椎間板細胞を単離する方法は、細胞外マトリックスから椎間板細胞を分離することを含む。いくつかの場合、椎間板組織を、機械的、化学的、および/または酵素的に破壊することができる。いくつかの場合、椎間板組織を、切り刻む、スライスする、またはミンチ状にすることができる。いくつかの場合、椎間板組織を、酵素、例えば、コラゲナーゼを用いて処理する。椎間板組織の処理は、細胞外マトリックスの除去に役立ち得る。いくつかの場合、組織を、組織培養処理された皿に、皿の表面に直接接触するよう、培地と共に入れると、組織からプレート上に細胞が移動する。他の場合、細胞を、フィルターを用いて組織から分離する。
【0056】
細胞外マトリックスは、コラーゲン、プロテオグリカン、および他の分子を含み得る。いくつかの場合、コラーゲンは、動物、例えば哺乳動物中に見出される、天然に存在するタンパク質群を指し得る。天然コラーゲンは、三重らせんを含む長い線維を形成し得る。多くの場合、コラーゲンの3本のらせんは、2つの同一のアルファ1鎖(α1)および1つのアルファ2鎖(α2)を含む。多くの場合、コラーゲンは、転写後に、ヒドロキシル化、架橋、グリコシル化、切断などにより修飾される。コラーゲンを、動物または動物細胞から取得することができる。コラーゲンを、当業者には周知の技術を用いて、哺乳動物細胞および細菌などの非哺乳動物細胞を含む様々な細胞から合成することができる。プロテオグリカンは、グリコシル化されたタンパク質を指し得る。プロテオグリカンは、Ser残基で結合し得る1または複数の硫酸化グリコサミノグリカン(sGAG)鎖(一般に、配列-Ser-Gly-X-Gly-、ここで、Xは任意のアミノ酸残基であり得る)を有し得る。プロテオグリカン鎖は、一般に、生理的条件下で、長く、線状であり、負に荷電している。グリコサミノグリカンを、例えばジメチルメチレンブルー比色アッセイまたは酵素結合免疫吸着アッセイを用いて、細胞からのプロテオグリカン生成を決定する方法としてアッセイすることができる。多くの場合、マイクロマス中のグリコサミノグリカンおよび交換された培地(培地変更による)の両方をアッセイする。いくつかの場合、例えば、TGF-B(トランスフォーミング増殖因子ベータ)または軟骨細胞表現型を生成することが知られる他の増殖因子を含有する軟骨形成促進(prochondrogenic)培地においてマイクロマス培養で増殖させた椎間板細胞は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10μgより多い、および約20、19、18、17、16、15、14、13、12、11μgより少ないsGAGを生成し得る。多くの場合、これらの結果を、細胞あたりのプロテオグリカン生成を決定するために、細胞数、DNA含量またはタンパク質含量に対して正規化し得る。細胞数に対して正規化する場合、その値は、約0.001、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06ng sGAG/細胞より大きい、および1、0.09、0.08、0.07ng sGAG/細胞より小さいものであり得る。sGAGをそのタンパク質含量に対して正規化する場合、その値は、50、60、70、80、90、100、200、300、400ng sGAG/μgタンパク質より大きい、および約1000、900、800、700、600、500ng sGAG/μgタンパク質より小さいものであり得る。多くの場合、椎間板細胞は、同様の時間にわたって接着非依存的条件で増殖され、またはされていない他の細胞(例えば、線維芽細胞、間葉系幹細胞、または椎間板細胞)よりも多く、または少なく、可溶性プロテオグリカンを生成する。
【0057】
分化した接着単層細胞培養物に対して特殊培地を用いるLife TechnologiesによるStemPro多能性キットを使用するなどの、当業者に公知の技術により、細胞を、脂肪細胞、骨細胞、および神経細胞系列に沿って分化させることができる。骨細胞分化の後、アリザリンレッド染料を用いて石灰化された骨の存在を確認する。脂肪細胞分化の後、オイルレッドO染料を用いて脂肪の存在を確認する。神経細胞分化の後に、神経形態の存在を観察する。さらに、遺伝子マーカーを試験して、関連する表現型変化を確認することができる。
【0058】
細胞は、自己再生を行うことができるものであり得、自己再生は、細胞表現型を変化することなく複製する能力と定義される。この特性を、多くの継代にわたって増殖特性評価によりインビトロで、または連続的な移植および抽出によりインビボで確認することができる。
【0059】
いくつかの実施形態において、椎間板細胞は、細胞外マトリックス分子を生成し得る。他の実施形態においては、椎間板細胞は、タンパク質を生成し得る。他の実施形態においては、椎間板細胞は、増殖因子を生成し得る。他の実施形態においては、椎間板細胞は、サイトカインを生成し得る。他の実施形態においては、椎間板細胞は、ホルモンを生成し得る。他の実施形態においては、椎間板細胞は、糖を生成し得る。
【0060】
細胞外マトリックスの除去、減少、または分解の後、椎間板組織に由来する細胞を、接着依存的または接着非依存的培養系に移すことができる。多くの場合、椎間板組織を接着依存的系に付す場合、容器をゼラチンおよび/またはコラーゲンで処理することができる。椎間板組織細胞を接着非依存的培養系に付す場合、培地は、メチルセルロースなどの、ゲルを形成する粘性の非反応性材料を含有し得る。
【0061】
一旦接着したら、細胞を最大で約10回継代する(容器から剥離し、より低密度で再懸濁し、再度容器に接着させる)。いくつかの場合、細胞は容器中で決して集密に達しない。他の場合、細胞は容器中で集密に達する。細胞は、標準的な細胞培養技術を用いて継代する。十分な量の細胞が得られたら(ただし、増殖「低下」(すなわち、細胞が有意により低い速度で分裂すること)の前)、細胞を、所望の期間にわたって、粘性の非反応性培地を用いる懸濁培養に移行させる。完了後、細胞を単離し、他の物質を洗い落とし、さらに必要に応じて凍結保存または直接的な治療的使用のために処理する。
【0062】
ゼラチンまたはコラーゲンでコーティングされた容器上における椎間板組織由来細胞の増殖は、椎間板細胞の成長、増殖、および/または分化を可能にし得る。椎間板細胞を、1,000~50,000細胞/cmで加えることができる。このような場合、細胞を、血清、EGF、およびbFGFの存在下で増殖させることができる。いくつかの場合、血清添加物を細胞培地に添加することができ、例えば、線維芽細胞培養に由来する条件培地を添加してもよい。これらの場合、非椎間板形成性および低椎間板形成性の細胞を、椎間板細胞と共に成長、増殖、および/または分化することもできる。
【0063】
足場非依存的条件での椎間板組織由来細胞の増殖は、椎間板細胞の成長、増殖、および/または選抜に役立ち得る。椎間板細胞を、10,000細胞/mLで、または80,000細胞/mLまで加えることができる。いくつかの場合、神経サプリメント、bFGF、およびEGFを、接着非依存的細胞培養培地に添加してもよい。いくつかの場合、血清を培地に添加しても、または添加しなくてもよい。多くの場合、接着依存的条件で増殖させた椎間板細胞培養物に由来する椎間板細胞は、接着非依存的条件で増殖させた細胞よりも少なく細胞外マトリックスを生成する。
【0064】
多くの場合、細胞から、細胞培養培地を洗い落とすことができる。いくつかの場合、細胞をPBS、さらなる培地、凍結保護培地などで洗浄する。いくつかの場合、洗浄前に容器を4℃に冷却して、粘性成分の溶解を補助する。時には、繰り返し遠心分離して、望ましくない成分を除去する。時には、細胞を新しい容器に接着させて、望ましくない成分の除去を可能にする。時には、細胞を担体に接着させて、望ましくない成分の除去を可能にする。時には、化学物質を用いて、望ましくない成分を除去する。
【0065】
標準的な技術に従って、細胞を、トリプシン、組換えトリプシン、アキュターゼ、HyQTase、TrypLEなどの酵素を用いて、容器または他の細胞から剥離または分離してもよく、またはしなくてもよい。細胞を、さらなる培地と混合して、様々な速度で、例えば、異なる細胞密度(単一の細胞とクラスター)の分離を可能にする低速、底部に細胞濃縮物を形成させるための標準的速度、密な細胞ペレットを形成させるための高速などで、遠心分離することができる。
【0066】
多くの実施形態において、椎間板細胞集団は、インビボで椎間板組織を回復させる、再生する、および/または増殖させる能力を特徴とする。例えば、椎間板細胞集団は、損傷または障害のある椎間板を有する対象において、損傷または障害のある椎間板を回復させることができる。多くの実施形態においては、対象の損傷椎間板への椎間板細胞集団の導入は、椎間板高を、ほぼ損傷前の高さまで回復させる。
【0067】
細胞形態
椎間板細胞は、単核であり得る。椎間板細胞は、多核であり得る。椎間板細胞は、ミトコンドリア、ゴルジ体、およびリボソームなどの細胞小器官を有し得る。椎間板細胞の生存能力を、トリパンブルー、アラマーブルー、live/deadアッセイ(Life Technologies)、または他のアッセイにより示すことができる。椎間板細胞は、増殖可能であり得る。椎間板細胞は、細胞外マトリックス生成可能であり得る。
【0068】
接着非依存的条件下で増殖させた椎間板細胞は、単層として増殖させた椎間板細胞とは異なる形態を有し得る。例えば、接着非依存的細胞培養に由来する椎間板細胞は、単離された丸い細胞であってよい。あるいは、それらは他の細胞および/または丸い細胞の集合体と緩く結合した細胞クラスターを形成してよい。あるいは、それらは、ディスコスフィアとして知られる密な細胞クラスターを形成してもよい。椎間板細胞クラスターは、十分な増殖後、約50μmを超える少なくとも1つの寸法を有し得る。椎間板細胞は、単離された丸い細胞として始まり、時間と共に、いくつかの細胞が増殖してクラスターまたはディスコスフィアを形成してもよい。その時間は、1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、14、21、または28日間であり得る。椎間板細胞は、結合した細胞外マトリックス、例えばプロテオグリカンおよびコラーゲンを有してもよい。
【0069】
細胞集団
椎間板細胞集団の一実施形態においては、細胞は、これらに限定されるものではないが、以下の細胞:軟骨細胞、線維芽細胞、髄核細胞、線維輪細胞、間葉系幹細胞、幹細胞、前駆細胞、軟骨性細胞のうちの1または複数を含んでよい。椎間板細胞団の別の実施形態においては、細胞は、これらに限定されるものではないが、エクスビボで改変された以下の細胞:軟骨細胞、線維芽細胞、髄核細胞、線維輪細胞、間葉系幹細胞、幹細胞、前駆細胞、軟骨性細胞のうちの1または複数を含んでよい。椎間板細胞集団の別の実施形態においては、集団は、以下のもの:単離された細胞、または集合した細胞のクラスター、またはディスコスフィアのうちの1または複数を含んでよい。椎間板細胞集団の別の実施形態においては、細胞を分離して、単離された細胞の集団を形成させることができる。椎間板細胞集団の別の実施形態においては、細胞を凝集させて、少なくとも1つのマイクロマスを形成させることができる。別の実施形態においては、椎間板細胞は、細胞を分離する前に、より処置有効性であり得る。
【0070】
椎間板細胞集団の治療的使用
椎間板細胞を、損傷組織に直接送達することができる。有効量の椎間板細胞を、移植を補助するための薬学的に許容される生体材料足場と混合しても、またはしなくてもよい。例えば、ヒアルロン酸、コラーゲンまたは他の細胞外マトリックス分子を含有する、粘性の天然材料を用いることができる。あるいは、固形の天然材料を用いることができる。いくつかの場合、安定性のために添加物を含有させることができる。いくつかの場合、添加物を、凍結保存を補助するために含有させることができる。
【0071】
椎間板細胞の投与により、障害のある椎間板を修復でき、および/または椎間板の構造を再生させることができ、それによって、変性椎間板疾患および他の椎間板損傷を回復または安定化できることが、本発明に従って見出された。また、そのような細胞を損傷椎間板を有する対象に投与すると、損傷前の椎間板高が部分的に回復することも見出された。従って、本発明は、少なくとも1つの椎間板に障害または損傷を有する対象を処置するのに使用するために、椎間板細胞を単離する、および増殖させるための方法を特徴とする。この方法は通例、損なわれた椎間板の修復および/または再生が起こるように、処置有効量の椎間板細胞を対象に投与することを含む。
【0072】
非常に好ましい態様において、前記方法は、脊柱または他の軟骨性組織から取得または単離された細胞を、少なくとも1つの障害または障害椎間板の処置を必要とする対象に投与することを含み、ここで、前記細胞は、培養物中で自己再生および/または増殖することができる。脊柱および軟骨性組織から単離された細胞を、投与前に培養物中で増殖または維持することができる。
【0073】
本明細書に開示される方法において、椎間板細胞を、生物活性物質と組み合わせて投与することができる。椎間板細胞を、生物活性物質と逐次または同時に投与することができる。溶解物、可溶性細胞画分、膜に富む細胞画分、タンパク質、増殖因子、ホルモン、細胞培養培地(例えば、条件培地)、または、脊髄、椎間板もしくは軟骨性組織または椎間板細胞から誘導される細胞外マトリックスも、必要に応じて対象に投与することができ、例えば、椎間板細胞および他の細胞または物質を併用することができる。選択した特定の物質を、提供者からのキットの一部として送達することができる。あるいは、特定の物質は、対象の処置に当たる医療専門家の裁量にあってよく、対象の特定の必要性または状態に応じて異なり得る。選択される物質は、これらに限定されるものではないが、細胞投与の促進、椎間板の修復および/または再生の改善、対象の全体的な健康の改善、疼痛の軽減、および/または移植細胞の生存性の強化などの、様々な目的のために用いることができる。
【0074】
細胞を、注射により対象に投与することができる。例えば、細胞を、対象の1または複数の椎間板に直接注射することができる。多くの場合、細胞を、椎間板の髄核、移行帯、または線維輪に注射することができる。椎間板細胞を、単独で、または生物活性物質もしくは処置活性物質、および/または足場もしくはマトリックス剤と組み合わせて投与することができる。
【0075】
いくつかの実施形態においては、椎間板細胞集団を、対象に移植することができる。例えば、椎間板細胞集団を、損傷または障害のある椎間板に外科的に移植することができる。いくつかの実施形態においては、椎間板細胞集団を、椎間板の全部または一部が除去された椎間板腔に外科的に移植することができる。いくつかの実施形態においては、椎間板細胞集団を、人工椎間板または椎間板置換物の一部として、椎間板腔に移植することができる。
【0076】
細胞を、足場-またはマトリックス-細胞複合体として投与することもできる。足場およびマトリックス構成物としては、これらに限定されるものではないが、タンパク質、ヒドロゲル、合成ポリマー、およびそれらの組合せが挙げられる。足場およびマトリックス構成物は、生分解性であっても、またはなくてもよい。そのような材料は、治療的処置、外科的修復、組織工学、および創傷治癒の分野において公知である。足場-およびマトリックス-細胞組成物を、これらに限定されるものではないが、移植、注射、外科的付着、他の組織を伴う移植などの、当分野で公知の任意の方法で対象の体内に導入することができる。いくつかの実施形態においては、インビボ、またはさらにより好ましくは、インサイチュー(in situ)でのマトリックス形態、例えば、インサイチューで重合可能なゲルを、本発明に従って用いることができる。そのようなゲルの例は、当分野で公知である。
【0077】
椎間板細胞を、移植前に足場およびマトリックスと混合する、またはインビトロでそのような組成物上に播種することができ、それにより細胞を増殖させ、および/または細胞外マトリックスを確立することができる。いくつかの場合、マトリックスは、哺乳動物椎間板構造と類似し、マトリックスは対象中において1つの椎間板全体を置換することができる。いくつかの場合、マトリックスは、治療剤を含んでもよい。
【0078】
椎間板細胞を用いて、インビトロまたはインビボで人工椎間板置換デバイスを作製することができる。一例においては、ポリウレタンなどの適当な非吸収性材料を用いて、人工外輪を作製する。別の例においては、ポリグリコール酸またはポリ乳酸などの吸収性材料を用いる。この人工輪は、足場材料、マトリックス材料、担体材料、増殖因子、および/または他の生物活性物質のうちの少なくとも1つと組み合わせても、または組み合わせなくてもよい椎間板細胞のための容器として機能する。多くの実施形態において、人工輪構造は多孔性および/または線維性であり得る。人工外輪は、それを1または複数の椎体に固定することができるように、アタッチメント手段を含み得る。例えば、人工輪は、1または複数の椎体へのネジ固定を可能にするための、スルーホール、カフ、タブ、ループ、またはワッシャを含み得る。人工椎間板を対象に外科的に移植して、椎間板を全置換することができる。
【0079】
人工椎間板置換デバイスは、本発明の椎間板細胞を含み得る。様々な実施形態において、椎間板細胞を、人工輪構造中に挿入することができる。人工輪構造は、椎間板細胞のための格納構造を提供するように設計することができ、また、1または複数の椎体に椎間板置換デバイスをしっかりと取り付けるためのアタッチメント構造をさらに含んでよい。
【0080】
椎間板細胞は、椎間板置換デバイスを挿入する時点、またはほぼその時点で、人工椎間板置換デバイスに加える。他の実施形態においては、椎間板細胞を、該細胞が増殖し、分裂し、マトリックスまたは足場材料を提供することができるように、挿入よりかなり前に椎間板置換デバイスに加える。多くの実施形態において、足場材料、マトリックス材料、担体材料、増殖因子、および/または他の生物活性物質を、椎間板置換デバイスに、椎間板細胞を加える前、その後、またはそれと共に添加することができる。
【0081】
人工椎間板置換デバイスは、吸収性または非吸収性の人工輪を含んでよい。いくつかの実施形態において、人工輪は、椎間板細胞の増殖を支援するのに役立つマトリックス材料、足場、増殖因子、または他の生物活性物質を含んでよい。一実施形態においては、人工輪は、線維輪細胞の増殖および/または分化を、例えば、線維輪細胞への椎間板細胞分化を促進し得る局部の増殖因子源および/またはサイトカイン源を提供することにより、支援する。多くの実施形態において、椎間板細胞を含む人工椎間板置換デバイスは、非人工椎間板の、例えば、線維輪、髄核、および終板組織を含むセル状構造と同様の、セル状構造を有し得る。
【0082】
いくつかの場合、椎間板細胞および足場を、液体窒素中で凍結保存し得る。あるいは、それらを-80℃、-20℃、または-1℃などの、様々な氷点下温度で保存することができる。さらに、椎間板細胞を、4℃または37℃で保存することができる。椎間板細胞を、保存前に足場と組み合わせることができる。あるいは、椎間板細胞を、移植直前に足場と組み合わせる、または組み合わせなくてもよい。
【0083】
かくして、有効な処置は、処置剤、マトリックス、または足場の存在下または不存在下に椎間板細胞を含む処置用細胞組成物を用いて、椎間板に障害、異常、または外傷を有する対象を処置することを含む。該細胞は、例えば、直接のプロテオグリカン生成、または天然細胞再生の刺激を促進するのに有効な量で存在する。その結果は、ウサギモデルにおいて示されるように、天然組織構造の再生、修復、または再構築であり得る。これを、医学的画像化(X線、MRI)または疼痛の軽減により決定することができる。ヒト椎間板中への移植の場合、細胞量は、椎間板細胞集団または椎間板細胞から抽出されたサブ集団を含み、1,000~10,000,000であり得る。また、足場体積は、対象の空間的必要性に応じて、10μL~1000μL、または10mg~10gの範囲であり得る。
【0084】
いくつかの実施形態において、椎間板細胞中の1または複数の細胞サブ集団を移植することができる。このサブ集団は、選別のための磁気ビーズ、選別のための蛍光マーカー、密度勾配、選別のための蛍光遺伝子タグ付け、物理的分離、濾過などを用いて単離することができる。このサブ集団は、全集団と比較して、より処置有効性であり得る。
【0085】
対象の処置において、椎間板細胞は、接着依存的椎間板細胞、または髄核細胞、線維芽細胞、軟骨細胞、幹細胞、前駆細胞などの他の細胞集団と比較して、優れた処置効果を提供することができる。この効果を、足場、担体または他の生体材料の使用により改善しても、またはしなくてもよい。
【0086】
本発明は、本発明の方法を実施するためのキットをも特徴とする。一態様において、少なくとも1つの椎間板に障害または損傷を有する対象を処置するためのキットが提供される。キットは、薬学的に許容される担体;前記障害または損傷を処置するのに有効な量の椎間板細胞;および、少なくとも1つの椎間板に障害または損傷を有する対象を処置する方法においてキットを用いるための説明書を含み得る。キットは、少なくとも1つの作用物質および細胞を培養するための説明書をさらに含んでもよい。キットは、少なくとも1つの生物活性物質または処置活性物質をさらに含んでもよい。キットは、バイアルおよびシリンジをさらに含んでもよい。キットは、椎間板への直接的進入のためのディスコグラフィ用針をさらに含んでもよい。キットは、施術中の画像化を補助するためのX線不透過性物質をさらに含んでもよい。
【0087】
実験の詳細
材料および方法
供給者/薬剤:
いくつかの場合、接着依存的細胞培養を、増殖条件と称し得る。増殖培地を、増殖条件での細胞の増殖のために用いることができる。増殖培地は、10%ウシ胎仔血清を含むDMEM/F12を含有した。この培地の30%を、場合により、新生児包皮線維芽細胞の存在下に3日間、予め馴化してもよい。この予め馴化した分を、使用前に濾過した。増殖培地を細胞に加える前に、bFGFおよびEGFを添加して、10ng/mLのbFGFおよび10ng/mLのEGFの最終濃度で培地を「完全」にする(保存された1000Xストック溶液から得る)。
【0088】
いくつかの場合、接着非依存的細胞培養を、懸濁条件と称し得る。懸濁培地を、懸濁条件での細胞の増殖のために用いることができる。懸濁培地は、1X B27(Life Technologies)、5%ウシ胎仔血清、10ng/ml EGF、および10ng/ml bFGFを添加したDMEM/F12中に1%A4M Premiumメチルセルロース(Dow Chemical)を含有した。懸濁流加培地は、メチルセルロースを含まない、同じものである。
【0089】
増殖のために、コラーゲン、ゼラチンまたは他の同様のマトリックスタンパク質でコーティングしたプレートまたはフラスコを用いた。そのような既製の容器を購入した。あるいは、1LのddH2O(再蒸溜水)に1gの粉末ゼラチン(Sigma)を溶解することにより、手作業でプレートをコーティングする、または既製の溶液(Sigma)を1%の最終濃度に希釈して用いることによりプレートを調製することができる。実験室においてコーティングした場合は、容器を室温で15分以上インキュベートする。懸濁のためには、Corningの超低接着容器を用いた。
【0090】
いくつかの場合、インビボで細胞を移植するのに、粘性足場担体を使用した。特に、PBS中の1.7%ヒアルロン酸(0.8~1.2MDa)から成る既製の滅菌ゲルを、ヒト血清アルブミンおよび30,000個の椎間板細胞で希釈して、2.5%ヒト血清アルブミンを含む1%ヒアルロン酸ゲルを得た。これを、滅菌した50μlのガラス製Hamiltonシリンジに入れた。動物への移植のために、27ゲージのPrecision Glide針をHamiltonシリンジにルアーロックにより取り付けた。
【0091】
方法:
IRBに承認されたプロトコールを用いて、手術を受けたドナーから同意の下、ヒト成人髄核組織を得る。様々な実施形態において、組織を、様々な供給源および組織、例えば、生存および死亡非自己ドナー、自己ドナー、椎間板組織、または他の軟骨性組織から取得することができる。線維輪および軟骨終板を含む非髄核組織を、手作業で切除し、廃棄した。得られた組織2~7gを、T75フラスコ中、300単位/mlのコラゲナーゼIIを含有する15mlのDMEM/F12と混合し、標準的な組織培養条件(37℃および5%CO)下で一晩インキュベートした。次に、遊離細胞を50mlチューブに移し、遠心により細胞を沈降させ(4分間、1200rpm)、上清を除去し、細胞を約10,000細胞/mlの最終濃度にDMEM/F12中に再懸濁した。
【0092】
別法として、細胞を凍結保存バイアル(液体窒素中で保存)から、37℃の水浴中で解凍し、すぐに10mLの増殖培地を含有する15mLチューブに移すことにより取得した。次いで、細胞混合物を1200rpmで4分間遠心した。上清を吸引し、細胞を増殖培地に再懸濁して、細胞を計数し、生存能力を確認した。
【0093】
増殖のために、細胞を、完全増殖培地に10,000細胞/mLで播種し、2~3日毎に培地を交換した。集密となる前に、細胞をPBSで洗浄し、0.25%トリプシンと共に7分間インキュベートした後、増殖培地を用いてプレートから取り出し、50ml円錐チューブに移した。チューブを前記のように遠心し、トリプシンを含有する上清を除去した。次いで、細胞の計数および生存能力のチェックを可能とするよう、細胞を増殖培地に再懸濁した。この時点で、50万~300万個の細胞を90%FBS/10%DMSOと凍結バイアル中で混合することにより、細胞を凍結保存することができた。内容物を凍結するために、凍結バイアルを-80で一晩保存した後、長期保存のために液体窒素の蒸気相に移した。
【0094】
懸濁培養のために、細胞を10,000細胞/mlで懸濁培地と混合し(合計15ml)、超低接着100mmプレート(Corning)に入れた。2日毎に、300μlの懸濁流加培地をプレートに加えた。図2に記載のように、位相差光学顕微鏡を用いて4X、10Xおよび20Xで画像を撮影した。2週間後、プレートを4℃で20分間インキュベートし、次いでゲル様培地を15mLのPBSで希釈することにより、細胞を採取した。次いで、プレートの内容物を15mLチューブに移し、さらにPBSを加えて体積を50mLに増加させ、1200rpmで4分間遠心し、上清を除去した。次いで、この方法でさらに2回、細胞を洗浄して、確実にメチルセルロースを除去した。最後に、細胞の計数および生存能力のチェックを可能にするよう、椎間板細胞を増殖培地に再懸濁した。
【0095】
表面マーカー発現を決定するために、椎間板細胞を0.25%トリプシンで7分間処理して、単一細胞懸濁液とする。試験に用いたさらなる細胞集団は、増殖培養に由来する前椎間板細胞(pre-discogenic cell)、ヒト成人間葉系幹細胞(CET Company)、ヒト新生児包皮線維芽細胞(AATC)、およびヒト成人関節軟骨細胞(ScienCell)を含んだ。Partec CyFlowフローサイトメーターを用いて、標準的な技術により細胞を解析した。簡単に述べると、70,000個の細胞および抗体(チューブあたり1種類)を、0.5%ウシ血清アルブミンを含有する200μlのPBSで希釈し、暗所で4℃で30分間インキュベートした。以下の抗体を用いた:CD73-PE(BD)、CD90-PE-Cy5(BD)、CD105-PE(Miltenyi)、CD166-PE(BD)、HLA-ABC(BD)およびコントロール。この作業を2回実施し、1つの代表的なデータセットを示す。
【0096】
軟骨形成促進環境におけるプロテオグリカン生成を決定するために、標準的な軟骨細胞ペレットアッセイを用いた。簡単に述べると、200,000個の細胞(椎間板細胞または間葉系幹細胞)を、200μlの軟骨形成促進培地(StemPro培地、Life Technologies)を含む96穴プレートの個々の円錐ウェルに入れ、短時間遠心した。3日毎に、形成された中央のマイクロマスを吸引しないように注意しながら、培地を除去し、回収し、交換した。2週間後(図3を参照されたい)、細胞ペレットを採り、乾燥し、バッファー中、60℃で、250μlのパパイン(Sigma)により一晩消化した。消化物、また、回収した培地を、標準的なDMMBアッセイを用いて、プロテオグリカンの成分であるsGAG含量についてアッセイした。特に、DMMB作用溶液を作製するために、1gのギ酸ナトリウムを、490mLの脱イオン水に溶解し、1mLのギ酸を加えた。別のチューブにおいて、8mgのジメチルメチレンブルー(DMMB)粉末(Sigma)を、2.5mLのエタノールと混合して溶解し、2つの溶液を混合した。次いで、水を加えて体積を500mLにした。コンドロイチン-6-硫酸標準を作製するために、40mgのコンドロイチン-6-硫酸(C6S)を、40mLの水と混合して、1mg/mLの標準溶液(ストック)を作製した。次いで、ストックを希釈して、0、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0μg/mLとした。プロテオグリカン量をアッセイするために、100μlの標準または試料を100μlのDMMB作用溶液と96穴透明プレート中で混合し、5分以内に525nmで測定した。標準を用いて試料の濃度を決定した後、その濃度を元の体積に対して正規化して量を決定した。さらに、消化物を、Pierceタンパク質アッセイを製造者の説明書に従って用いてタンパク質量について、またはQuanti-IT PicoGreenアッセイ(Life Technologies)を製造者の説明書に従って用いてDNA量についてアッセイした。
【0097】
骨形成能力および脂肪生成能力を決定するために(図4)、製造者の説明書に従ってStemPro Osteogenic and Adipogenic Kits(Life Technologies)を用いて、椎間板細胞を増殖させた。
【0098】
インビボでの効能を評価するために、30,000個の椎間板細胞を、2.5%ヒト血清アルブミンを含有するPBS中の1%ヒアルロン酸(0.8~1.2MDa)25μlと混合した。細胞および粘性足場を、50μlのガラス製Hamiltonシリンジに入れた。予め内部検証した変性椎間板疾患モデルを用いて、3匹のNew Zealandウサギの腰部椎間板に外科的にアクセスし、針で穿刺して変性を誘導した(n=4つの椎間板/動物、地元IACUCにより承認)。2週間後、損傷椎間板に、細胞または無細胞足場コントロールを注射した。さらに、損傷および未損傷コントロール腰部椎間板を、それぞれの動物中で維持した。6週間にわたって2週間毎に、椎間板高を単純X線撮影により測定し、週0での値に対して正規化し、椎間板高指数(DHI)を得た。6週間後、ウサギを安楽死させた。椎間板を採り、組織学的分析のために処理した。切片をH&Eまたはアルシアンブルーで染色し、異常を盲検的にスコア化した;AF/NP境界、AF構成、NP細胞外マトリックス、およびNP細胞性(cellularity)(AF-線維輪;NP-髄核)について0~2のスコアを割り当てた。4つの結果を合計した(0=正常、8=異常)。
【実施例0099】
以下の実施例は、本開示の微環境の実施形態の調製および特性を詳細に説明するものである。構成、材料、および方法のいずれに対しても多くの改変を、本開示の範囲から逸脱することなく実施できることが、当業者には明らかである。
【実施例0100】
FACS分析による、様々な種類の細胞の表面マーカー発現
椎間板細胞を含む様々な細胞について、細胞表面マーカー発現を分析した。図1に示すように、試験したヒト細胞の種類は、成人間葉系幹細胞、新生児包皮線維芽細胞(Fibro.)、関節軟骨細胞(Chondro.)、足場依存的椎間板細胞(AD-DC)、足場非依存的椎間板細胞(AI-DC)を含んだ。図1Aは、標準的なIgGゲーティングに基づき、所与のマーカーを発現する細胞のパーセントを示す。DC細胞は、他の種類の細胞と比較して低いCD105およびCD166発現を示す。他の表面マーカーは、DCに独特な表現型フィンガープリントを特定するために調べられている。図1Bは、椎間板細胞が独特のパターンを示した、CD105およびCD166に関する、MSC、前椎間板細胞および椎間板細胞の代表的な細胞マーカーフローサイトメトリー分析を示す。
【実施例0101】
懸濁培養における椎間板細胞の形態
椎間板細胞の形態を調査した。図2Aは、ディスコスフィアとして知られる密な球体(*)、緩い細胞凝集体(**)、および単一の細胞(***)からなる椎間板細胞を示す顕微鏡写真である。図2Bは、ディスコスフィアおよび凝集体の直径は様々で、典型的には50μmより大きいことを示す。
【実施例0102】
間葉系幹細胞(MSC)および椎間板細胞(DC)の軟骨形成能力
図3は、間葉系幹細胞および椎間板細胞の軟骨形成能力の分析を示す。図3Aは、軟骨形成促進環境で2週間増殖後の細胞の形態を示す。示されるように、DCはMSCより大きいマイクロマスを生成する。図3Bは、MSCおよびDCによるタンパク質およびGAGの生成を比較するグラフである。示されるように、DCが、MSCと比較して、より多くのsGAG(プロテオグリカンの成分)を生成したことが、培地および消化したマイクロマスのいずれからの回収においても示された。一方、各マイクロマスのタンパク質量は同程度であった。
【実施例0103】
椎間板細胞集団の脂肪生成能力および骨形成能力
図4Aは、脂肪生成培地において製造者(Life Technologies)の説明書に従って分化させた後、ヘマトキシリンで対比染色したオイルレッドO染色により、脂質生成が確認されたことを示す。図4Bは、骨形成培地において製造者(Life Technologies)の説明書に従って分化させた後、アリザリンレッド染色により、骨形成が確認されたことを示す(スケール=50μm)。
【実施例0104】
live/deadアッセイによる、治療的使用前の様々な段階での椎間板細胞の生存能力(緑色は生存を、赤色は死を示す)
図5Aは、粘性ヒアルロン酸足場中で24時間後に生存能力が確認されることを示す。ここで、大部分の細胞が生存している(明るい細胞;いくつかの死細胞が矢印で示される)。図5Bは、ウサギへの外科的移植のために用いられた27ゲージ外科用針から押し出された後にも、生存能力(明るい細胞)が確認されることを示す。
【実施例0105】
粘性足場担体を用いる椎間板細胞の治療的使用
図6は、DDDを処置するために椎間板細胞を使用する実施形態および工程を示す略図である。図6(A)は、注射による椎間板細胞の使用を示す。細胞と足場とを混合し、シリンジまたはバイアルに予め充填し得る。細胞と足場とは別々であってよく、注射の直前に混合し得る。調製物をシリンジまたはフォルスボトムバイアルから送達することができる。調製物を、変性椎間板に直接注射する。図6(B)は、椎間板細胞の移植を示す。細胞と足場とを混合する、または別々に送達することができる。移植に先立ち、材料を、意図される移植領域を満たすように切断または調整する。次いで、材料を欠陥部に移植する。細胞は、移植後に加えてもよい(図示せず)。記載するインビボ動物試験においては、細胞と足場とを混合し、バイアル中で4℃で輸送し、内容物を注射直前にシリンジに入れた。
【実施例0106】
変性椎間板疾患のウサギモデルにおける、粘性足場担体中の椎間板細胞の効能
図7Aは、足場担体内の椎間板細胞療法が、4週および6週の時点で、コントロール群と比較して椎間板高指数(DHI)を回復させたことを示すグラフである。コントロール群はいずれも、2週、4週および6週の時点の間で一貫性を示した。N=3、*は、二元配置ANOVAおよびTukeyのポストホック検定により、足場コントロールおよび損傷コントロールいずれとの比較においてもp<0.001であることを示す。図7Bは、組織学的スコアを示すグラフである。6週時点での椎間板の盲検スコア(0~8、0=正常)。細胞療法は、損傷コントロールおよび足場コントロールと比較して有意な改善を示した。**は、足場コントロールとの比較においてp<0.05であることを示し、*は損傷コントロールとの比較においてp<0.05であることを示す(t検定による)。
【実施例0107】
椎間板細胞の生成および評価
材料および方法
椎間板細胞の生成
説明する手順を、図8のフロー図に示す。まず、椎間板切除術に由来する廃棄物であるヒト成人髄核組織を、IRBの承認の下、同意したドナーから入手した(Baptist Hospital,TN)。線維輪および他の組織夾雑物を、切除により取り除いた。次いで、残存する材料を、PBS中の2X抗生物質-抗真菌剤(ABAM、Thermo ScientificによるHyClone)を用いて3回洗浄し、1X ABAMを含むDMEM/F12(Life Technologies)中、300単位の組換え2型コラゲナーゼ(Life Technologies)により一晩消化した。単離された細胞を、ゼラチンコーティングしたフラスコにおいて増殖培地(10%FBS(HyClone)、10ng/mL EGFおよび10ng/mL FGF-2(Peprotech)を含むDMEM/F12)に播種し、時間と共に、幹細胞/前駆細胞から構成される細胞サブ集団がプレートに接着した。これらの細胞を、最大で4回まで継代して増殖させた。
【0108】
次に、超低接着容器(Corning;Corning,NY)において、細胞を、1%メチルセルロース(A4M Premium,Dow Chemical)の存在下で懸濁培地と組み合わせた(5%FBS、10ng/ml EGFおよび10ng/mL FGF-2を含むDMEM/F12中、10,000細胞/cm)(1cmあたり1.5mLの培地を加えた)。2週間後、細胞を、さらなる使用のために、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、Corning CellGro;Manannas VA)で3回洗浄してメチルセルロースを除去することにより採取した。椎間板細胞を、5人の異なるヒトドナーから生成した。椎間板細胞の懸濁液を、10%ホルマリン(Sigma-Alrdich;St.Louis,MO)中で15分間固定した。
【0109】
椎間板細胞の組織学
次に、細胞をPBSで3回洗浄し、細胞を37℃のアガロース中に再懸濁した(Sigmaによる1%BioReagent低ゲル化温度アガロースにおいて、0.5mLあたり約1x10個の細胞)。アガロースが凝固したら、そのペレットを、凍結させるまではPBS中に保持し、Leica CryostatにおいてOCT培地(Sakura Tissue-Tek;Torrance,CA)中で凍結させ、荷電スライド上で6μmの厚さに切片化した。次いで、試料を、標準的なプロトコールに従って、ヘマトキシリンおよびエオシン、アルシアンブルーおよびヌクレアファストレッド対比染色、またはピクロシリウスレッドのいずれかで染色した。1人の代表的なドナーに由来する組織を示す。
【0110】
共焦点顕微鏡観察
椎間板細胞の懸濁液を、10%ホルマリン中で15分間固定し、PBST(PBS+0.1%Triton 100X、Sigma;St.Louis MO)で3回洗浄した。続いて、固定された細胞を用いて、PBSTA(PBST+0.5%ヒトアルブミン、Baxter Healthcare;Westlake Village CA)中の一次抗体を、抗ヒトアグリカン抗体(Santa Cruz Biotechnology;Dallas TX)については1:100に、抗コラーゲンII抗体(Developmental Studies Hybridoma Bank;Iowa City,Iowa)については1:20に希釈し、室温で2時間インキュベートした後、PBSTで3回洗浄した。次いで、細胞に、アグリカンについてはAlexa-Fluor 488を、コラーゲンIIについてはAlexa-Fluor 633を(いずれもPBSTA中で)室温で1時間にわたり結合させ、PBSTで3回洗浄した。最後に、細胞核およびアクチンについては、細胞をそれぞれ、DAPIおよびPhalloidin(Molecular Probes、Life Technologies)で対比染色し、Olympus FV1000共焦点顕微鏡を用いて画像化した。1人の代表的なドナーに由来する組織を示す。
【0111】
フローサイトメトリー
椎間板細胞の細胞表面抗原発現を、以下の蛍光標識マウス抗ヒトモノクローナル抗体:CD105-フィコエリトリン(PE,Miltenyi Biotec,Inc.,Auburn,CA,USA);Stro-1-Alexa Fluor 647(BioLegend,San Diego,CA,USA);CD166-PE、CD73-APC、およびCD90-FITC、CD44-FITC、CD-24-PerCP-Cy5.5、CD34-PE、HLA-DRDP-FITC、HLA-ABC-FITC(全てBD Biosciences,San Jose,CA,USAから)を用いてフローサイトメトリーにより解析した。適切なアイソタイプコントロールのランも並行して行った。細胞を、50%マウス血清を含有するPBS中、4℃で30分間インキュベートした後、1.0%ウシ血清アルブミンを含有するPBS中で洗浄および再懸濁した。DAPIジラクテート(Life Technologies,Carlsbad,CA,USA)を用いて、生細胞量を測定した。データの取得および解析のために、FlowJo Softwareを用い、FACSCantoフローサイトメーター(BD Biosciences,San Jose,CA,USA)で、最低20,000イベントを収集した。
【0112】
多分化能
Life Technologies(Grand Island,NY)により提供されたキットを用いて、骨形成および脂肪生成を誘導した。簡単に述べると、TrypLE(Gibco、Life Technologies)を用いて15分間にわたって椎間板細胞を解離させて、単一細胞懸濁液を形成し、20,000細胞/cmで組織培養処理皿上に播種した。骨形成および脂肪生成分化のための細胞の皿を、10%FBSを含むDMEM中で3日間維持した後、適切な補充分化培地を3週間供給した。分化後、単層を、石灰化についてはアリザリンレッドで、または脂肪分についてはオイルレッドOで、指示通りに染色した。位相画像を様々な倍率で捕捉した。試験を4人の異なるドナーに対して行った。
【0113】
軟骨形成を、[Johnstone 1998]に記載のように誘導した。簡単に述べると、250,000個の細胞を、200μlの軟骨形成培地(Life Technologies)と共に、96穴プレートの個々の円錐ウェルに入れ、短時間遠心した。3日毎に、形成された中央のマイクロマスを吸引しないように注意しながら、培地を完全に除去し、回収し、交換した。2週間後、細胞マイクロマスを採り、乾燥し、60℃で、250μlのパパイン(Sigma-Aldrich)により一晩消化した。消化物、また、回収した培地を、[Farnesdale]に記載のようにGAG含量についてアッセイした。さらに、消化物を、Quant-IT PicoGreen Assay(Invitrogen)を用いてDNA含量についてアッセイし、その結果を正規化してGAG/DNAを評価した。
【0114】
比較のために、椎間板細胞の軟骨形成能力を、他の周知のヒト成人細胞系と比較して評価した。関節軟骨細胞(Sciencell;Carlsbad,CA)、骨髄由来間葉系幹細胞(CET、Thermo Scientific;Waltham,MA)、および皮膚線維芽細胞(ATCC;Manassas VA)を購入し、提供された説明書に従って増殖させた。
【0115】
結果
組織学、共焦点顕微鏡観察および遺伝子発現
椎間板細胞を、アグリカンおよびコラーゲン生成についてアッセイした。ノン-プラスチック(non-plastic)接着培養において、2週間後に、個々のNP由来幹細胞/前駆細胞は、細胞外マトリックス(ECM)中に埋まった様々な大きさのクラスターに増殖した。マトリックスは、髄核組織の主成分であるプロテオグリカンおよび様々なコラーゲンから構成されていた(図9A~C)。共焦点画像化により、ECM中のアグリカンおよびコラーゲン2を確認した(クラスターによりマトリックス内容が異なることがわかった)(図9D)。さらに、高倍率画像により、細胞内および細胞外両方のアグリカンが示され(図9E)、これは、画像化の時点における細胞外へのECM分子の能動輸送を示唆する。
【0116】
図9Fに示すように、アグリカンおよびコラーゲン2の発現を、培養中に経時的に(3日目および7日目)、細胞採取時に(14日目)、および軟骨形成分化の後に、ハウスキーピング遺伝子HPRTと比較して評価した。培養期間中に細胞外マトリックス分子の発現は有意に増加し、プラスチック(plastic)接着細胞と比較して、アグリカンの発現は約20倍に、コラーゲン2の発現は約70倍となった。遺伝子発現は、軟骨形成分化の際にさらに増加した。
【0117】
フローサイトメトリー
椎間板細胞を解離させて、単一細胞懸濁液を形成し、様々な表面マーカーをフローサイトメトリーにより解析した。この集団は図10Aに示される前方/側方散乱プロットに見られるように、サイズおよび内部構造に関して均質であった。広範な表面マーカーを試験し、間葉系幹細胞(コントロールとして)と比較した。それらマーカーの発現は、5人の異なるヒトドナーにわたって全体的に均一であり(p>0.05)、アイソタイプコントロールと比較して、CD44、CD73、CD90、HLA-ABCの発現が80%を超え、CD34、HLA-DR/DQおよびSTRO-1の発現が10%未満であった(図10Bおよび図10C)。CD24、CD105およびCD166の発現は約40%で、わずかにより高い変動を示した。
【0118】
多能性
椎間板細胞を、標準的な分化プロトコールに従って、骨、脂肪および軟骨を形成するその能力について試験した。分化した細胞の単層を染色すると、明らかな脂質生成および骨形成が観察された(図11A~B)。椎間板細胞は、分化により、大きく固い軟骨のマイクロマスを形成し、プロテオグリカンについて陽性に染色された(図11C)。
【0119】
3週間培養後、培地およびマイクロマスを、プロテオグリカン含量について定量的にアッセイした。椎間板細胞(DC)を、関節軟骨細胞(AC)、線維芽細胞(FB)および間葉系幹細胞(MSC)と比較した。図11Eに示されるように、プロテオグリカンの不溶性(マイクロマス)量は細胞の種類によって有意に異ならなかったが、可溶性プロテオグリカンの測定量はかなり異なった。これらの2つの種類のマトリックスを合わせてDNA含量に対し正規化したところ(図11D)、椎間板細胞によるプロテオグリカン/DNA生成は、線維芽細胞よりも多く(p<0.01)、MSCおよび関節軟骨細胞と同等レベルであることがわかった。
【実施例0120】
ウサギにおけるインビボのパイロット試験
メスのNew Zealand Whiteウサギ(3~4kg)を、民間のIACUCの承認の下、試験に用いた。3匹のウサギを手術前に一晩、絶食させた。変性を誘導する1回目の手術のために、動物を静脈内投与により麻酔し、手術部位を無菌的手術のために準備した。左側腹部に、腸骨稜と最後の肋骨との間で、8~10cmの縦切開を行った。鈍的切開により、後腹膜アプローチで腰部椎間板にアクセスした。次いで、対象とする腰部椎間板に18ゲージ針を少なくとも5mm挿入して、椎間板を損傷した。椎間板L2-L3、L3-L4、L4-L5、L5-L6を、この方法で損傷した。L5-L6は損傷せずに置いた。次いで、筋肉および皮膚を、縫合糸を用いて2または3層で閉鎖し、動物を回復中にモニタリングした。この試験に先立ち、6匹のウサギに損傷を与え、8週間評価して、安定かつ適切な欠陥が作られることを確認した(データは示さず)。
【0121】
2週間後、ウサギを手術のために再度準備し、麻酔し、前記のように椎間板にアクセスした。27ゲージ針を用いて、30,000個の細胞を含有する細胞療法(L5-L6)または足場のみ(L4-L5)のいずれか25μlを注入した。高用量療法では、300,000個の細胞を注入した。1つの椎間板は、そのような手を加えず、損傷コントロールとした(L2-L3)。注射をその場で5秒間保持し、針を抜いた時、材料の漏出は観察されなかった。
【0122】
6週間にわたって、有害事象または健康状態について動物をモニタリングした。体重を毎週測定した。さらに、2週間毎に、動物を短時間麻酔して、腰部脊椎のX線撮影を行った(図12A)。単純X線写真において骨ランドマーク間の距離(椎間板腔の3つの測定値、左隣の椎骨の3つの測定値)を、同一人がマイクロメーターで測定し、週0での距離に対して正規化して、椎間板高指数(DHI)パーセントを得た。
【0123】
6週間後、ウサギを安楽死させた;椎間板を採り、パラフィンを用いて組織学的分析のために調製した。切片(4μm)を、ヘマトキシリンとエオシン、またはアルシアンブルーとエオシンの混合物を用いて染色した。
【0124】
統計学的分析
全ての統計学的分析を、Tukeyのポストホック検定を利用するStatPlusソフトウェア(AnalystSoft;Vancouver,Canada)を用いて実施した。有意性に関するp値を、それぞれの試験において示した。一元配置分散分析(ANOVA)を用いて、インビトロでの椎間板細胞の表面マーカー発現およびプロテオグリカン生成を比較した。二元配置ANOVAを用いて、経時的に椎間板高データを解析し、一元配置ANOVAを用いて、週6における組織学的スコアを比較した。グラフには、平均と共に、データセットの標準偏差を表すエラーバーを示す。
【0125】
結果
上記のように、外科的穿刺により、3匹のNew Zealand Whiteウサギ(n=3の条件)の椎間板に「変性」を誘導した。損傷の時点で、針を抜いた後の針通路から髄核物質が出てくるのが認められた。手術後、動物は、損傷に起因する苦痛のいかなる異常兆候も示さなかった。2週間後、低用量、高用量、または足場コントロールを椎間板に注入投与し、圧力を5秒間保持した後、針を抜いた。注入後、針を抜いた後に、いくらかの注入物が椎間板から出てくるのが認められた。
【0126】
6週間の試験期間にわたって、安全性の問題は見られなかった。最初の損傷の後(図12B;平均して、損傷前の3.4グラムから7日目の3.3グラムに変化)、または細胞療法注入の後(図12B;平均で3.2グラム)に、大きな体重変化は観察されなかった。椎間板にヒト細胞の注入を受けたいずれの動物においても、動物ケアスタッフによる健康または行動の問題の報告はなかった。
【0127】
6週間の期間にわたり、椎間板高の顕著な変化がX線により測定された(代表的なX線写真を図12Aに測定方法と共に示す)。損傷の2週間後、全ての椎間板は、その高さが平均で元の高さの59%まで低下した。週4および週6において、低用量および高用量で処置した椎間板は、それぞれ、70%および64%のDHIから94%および71%のDHIへと、足場コントロールおよび損傷コントロールのいずれと比較しても有意な椎間板高改善を示した(p<0.001)(図12C)。足場コントロールの注入は、何ら注入を行わなかった場合(損傷コントロールにより示される)よりもわずかに良好な結果を示した(それぞれ、64%のDHIおよび53%のDHI;p<0.01)。
【0128】
組織学的には、H&E画像は、細胞療法処置により椎間板構造が正常化されることを示した。終板から終板までの髄核の高さは、損傷により減少し、細胞療法により増加した(図13A)。図13Bに示されるように、処置後に骨髄、線維輪(AF)、軟骨終板(CEP)または髄核(NP)において免疫反応または異常な組織形成は見られなかった。アルシアンブルー染色により示されるように、髄核は相変わらずプロテオグリカンが濃密であった(図13B)。
【実施例0129】
ブタにおけるインビボのパイロット試験
メスのGottingenミニブタ(10~15kg)を、民間IACUCの承認の下、この研究に用いた。2匹のブタを手術前に一晩、絶食させた。損傷手術を実施例9に記載のように実施したが、本実施例では、蛍光透視画像による針の適切な配置の確認を追加で行った。椎間板L2-L3、L3-L4およびL3-L4を損傷した。L5-L6は損傷せずに置いた。次いで、筋肉および皮膚を、縫合糸を用いて2または3層で閉鎖し、動物を回復中にモニタリングした。この試験に先立ち、6匹のミニブタに損傷を与え、12週間評価して、安定かつ適切な欠陥が作られることを確認した(データは示さず)。
【0130】
2週間後、ブタを手術のために再度準備し、麻酔し、前記のように椎間板にアクセスした。27ゲージ針を用いて、100,000個の細胞を含有する細胞療法(高用量;動物1:L3-L4、L4-L5)、500,000個の細胞を含有する細胞療法(低用量;動物2:L3-L4、L4-L5)または足場のみ(L2-L3)のいずれか150μlを注入した。1つの椎間板は、そのような手を加えず、損傷コントロールとした(L2-L3)。注射をその場で5秒間保持し、針を抜いた時、材料の漏出は観察されなかった。
【0131】
さらに10週間にわたって、有害事象または健康状態について動物をモニタリングした。体重を毎週測定した。さらに、4、8および12週間後に動物を短時間麻酔して、腰部脊椎のX線撮影を行い、前記のようにDHIを決定した。12週後、ブタを安楽死させた;椎間板を採り、前記のようにパラフィンを用いて組織学的分析のために調製した。
【0132】
結果
ブタ椎間板の損傷は、椎間板高の20~30%の低下をもたらした。低用量および高用量の処置はいずれも、直ちに椎間板高の改善をもたらし、これは週12まで持続し、損傷コントロールよりも良好であった(p<0.05)。足場コントロールおよび損傷コントロールは、経時的に改善を示さなかった(図14A)。蛍光透視画像により、正確な針の配置を補助し、また、損傷脊椎に沿った椎間板高の差を示す(図14B)。上記のウサギパイロット試験と同様、髄核、軟骨終板、線維輪または骨髄において、免疫反応または異常な組織形成は見られず(図示せず)、プロテオグリカンに関する髄核染色は未処置の組織と同様であった(図14C)。
【0133】
本明細書に開示される実施形態を実施する代替的な方法が存在する。いくつかの例示的な態様および実施形態を説明したが、当業者であれば、ある一定の改変、置き換え、追加およびそのサブコンビネーションを認識できる。従って、本発明の実施形態は、例示的なものであり、限定的ではないと考えるべきである。さらに、特許請求の範囲は、本明細書に記載される詳細に限定されるものではなく、それらの完全な範囲およびその等価物に権利が与えられるべきである。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A-B】
図10C
図11A-C】
図11D-E】
図12
図13
図14A
図14B-C】
【手続補正書】
【提出日】2024-10-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
椎間板細胞集団であって、
哺乳動物椎間板組織から誘導され足場非依存的培養でインビトロ増殖させた複数の髄核細胞を含み、ここで、該椎間板細胞集団が3日の培養後に、足場依存的培養で増殖させた細胞の0日目と比較して、RT-PCRによる測定で、アグリカンの発現を少なくとも5.5倍およびコラーゲン2aの発現を少なくとも6.5倍高め、かつ、蛍光活性化細胞選別による測定で該集団の約40%未満が細胞表面マーカーであるCD24およびCD105を発現する、
椎間板細胞集団。
【請求項2】
異種椎間板細胞集団であって、
軟骨性組織から誘導された複数の細胞を含み、ここで、該複数の細胞が、足場非依存的培養で維持したものであり、ここで、該複数の細胞が3日の培養後に、足場依存的培養で増殖させた細胞の0日目と比較して、RT-PCRによる測定で、アグリカンの発現を少なくとも5.5倍およびコラーゲン2aの発現を少なくとも6.5倍高め、かつ、蛍光活性化細胞選別による測定で該集団の約40%未満が細胞表面マーカーであるCD24およびCD105を発現する、
異種椎間板細胞集団。
【請求項3】
培養が、EGF、bFGF、血清、線維芽細胞条件培地、および粘性非反応性物質からなる群から選択される1または複数の添加物を含む培地を含む、請求項1または2に記載の細胞集団。
【請求項4】
低接着コーティングを有する培養容器中で継代されている、請求項3に記載の細胞集団。
【請求項5】
足場非依存的培養において少なくとも1回継代されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項6】
細胞外マトリックスを生成する、請求項1~5のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項7】
CD34、CD44、CD73、CD90、CD166、Stro-1、HIF1、FIT-1、ネスチン、CK8、およびHLAタンパク質を含む群から選択される1または複数の細胞表面マーカーを生成する、請求項1~6のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項8】
GAPDH、SDHA、HPRT1、B2M、Sox9、Col1、ネスチン、CK8、Sox1、CD44、ALPI、およびPPARGを含む群から選択される1または複数の遺伝子または遺伝子産物を発現する、請求項1~6のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項9】
椎間板組織に由来する、請求項1~8のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項10】
変性椎間板疾患、椎間板ヘルニア、および椎間板損傷からなる群から選択される障害を処置するための医薬であって、
処置有効量の椎間板細胞集団を含み、
ここで、該椎間板細胞集団が3日の培養後に、足場依存的培養で増殖させた細胞の0日目と比較して、RT-PCRによる測定で、アグリカンの発現を少なくとも5.5倍およびコラーゲン2aの発現を少なくとも6.5倍高め、かつ、蛍光活性化細胞選別による測定で該集団の約40%未満が細胞表面マーカーであるCD24およびCD105を発現する、
医薬。
【請求項11】
椎間板細胞集団が、
組織から単離された1または複数の椎間板細胞を足場依存的培養系中で継代すること;
該1または複数の細胞を足場非依存的培養系に移すこと;および
該細胞を、3日の培養後に、足場依存的培養で増殖させた細胞の0日目と比較して、RT-PCRによる測定で、アグリカンの発現を少なくとも5.5倍およびコラーゲン2aの発現を少なくとも6.5倍高めるようにさせることであって、ここで、蛍光活性化細胞選別による測定で該集団の約40%未満がCD24およびCD105を発現すること、
を含む方法によって誘導される、請求項10に記載の医薬。
【請求項12】
組織が哺乳動物椎間板組織である、請求項11に記載の医薬。
【請求項13】
組織が、提供された臓器組織である、請求項12に記載の医薬。
【請求項14】
細胞集団が、足場非依存的培養において少なくとも1回継代される、請求項11に記載の医薬。
【請求項15】
細胞集団が細胞外マトリックスを生成する、請求項10~12のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項16】
細胞集団が、CD34、CD44、CD73、CD90、CD166、Stro-1、HIF1、ネスチン、CK8、およびHLAタンパク質を含む群から選択される1または複数の細胞表面マーカーを発現する、請求項10~13のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項17】
集団が、GAPDH、SDHA、HPRT1、B2M、Sox9、Col1、ネスチン、CK8、Sox1、CD44、ALPI、PPARG、ADAMTS、MMP、FMOD、ILを含む群から選択される1または複数の遺伝子または遺伝子産物を発現する、請求項10~13のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項18】
障害または損傷のある椎間板を処置するためのデバイスであって、
軟骨性組織から誘導され足場非依存的培養で増殖させた椎間板細胞集団;および
足場、マトリックス、または移植可能な構造体
を含み、該椎間板細胞集団が3日の培養後に、足場依存的培養で増殖させた細胞の0日目と比較して、RT-PCRによる測定で、アグリカンの発現を少なくとも5.5倍およびコラーゲン2aの発現を少なくとも6.5倍高め、かつ、蛍光活性化細胞選別による測定で該集団の約40%未満が細胞表面マーカーであるCD24およびCD105を発現する、
デバイス。
【請求項19】
生物活性物質をさらに含む、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
人工椎間板置換デバイスであって、
人工外輪;
椎間板細胞集団
を含み、ここで、
該椎間板細胞集団が3日の培養後に、足場依存的培養で増殖させた細胞の0日目と比較して、RT-PCRによる測定で、アグリカンの発現を少なくとも5.5倍およびコラーゲン2aの発現を少なくとも6.5倍高め、かつ、蛍光活性化細胞選別による測定で該集団の約40%未満が細胞表面マーカーであるCD24およびCD105を発現する、
人工椎間板置換デバイス。
【請求項21】
外輪が非吸収性材料を含んで構成される、請求項20に記載の人工椎間板置換デバイス。
【請求項22】
非吸収性材料がポリウレタンである、請求項21に記載の人工椎間板置換デバイス。
【請求項23】
外輪が吸収性材料を含んで構成される、請求項20に記載の人工椎間板置換デバイス。
【請求項24】
吸収性材料が、ポリグリコール酸もしくはポリ乳酸、またはその組合せである、請求項23に記載の人工椎間板置換デバイス。
【請求項25】
椎間板細胞集団が、足場材料、マトリックス材料、担体材料、増殖因子、および他の生物活性物質のうちの1または複数をさらに含む、請求項20に記載の人工椎間板置換デバイス。
【請求項26】
該デバイスを1または複数の椎体にしっかり固定するためのアタッチメント手段をさらに含む、請求項20に記載の人工椎間板置換デバイス。
【請求項27】
1または複数の椎体へのネジ固定を可能にするための、スルーホール、カフ、タブ、ループ、またはワッシャをさらに含む、請求項26に記載の人工椎間板置換デバイス。