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特開2024-178223高純度酸化スズの堆積用の有機金属化合物ならびに酸化スズ膜のドライエッチングおよび堆積リアクタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178223
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】高純度酸化スズの堆積用の有機金属化合物ならびに酸化スズ膜のドライエッチングおよび堆積リアクタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20241217BHJP
   C07F 7/22 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H01L21/302 101H
C07F7/22 M
C07F7/22 S
H01L21/302 105Z
【審査請求】有
【請求項の数】33
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024156660
(22)【出願日】2024-09-10
(62)【分割の表示】P 2022513246の分割
【原出願日】2020-08-28
(31)【優先権主張番号】10201907997R
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(31)【優先権主張番号】16/575,605
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518282923
【氏名又は名称】シースター ケミカルズ ユーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファバルヤク,ダイアナ
(72)【発明者】
【氏名】オデドラ,ラジェシュ
(72)【発明者】
【氏名】グラフ,ウェスリー・フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】センベラ,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】コノバー,キャシディ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リアクタチャンバの内面からまたはリアクタチャンバ内の基板から酸化スズ堆積物を除去するための方法を提供する。
【解決手段】方法は、酸化スズ堆積物を含む前記リアクタチャンバに、エッチャントガスを導入する工程を含む。エッチャントガスは、一般式A(式中、Aは、C、N、およびSからなる群から選択され、Oは酸素であり、各Xは、ハロゲンからなる群から独立して選択され、下付き文字およびはゼロより大きい)の化合物である。方法はまた、導入の前又は後のいずれかで、エッチャントガスを活性化する工程と、活性化されたエッチャントガスと酸化スズ堆積物との間でエッチング反応を進行させる工程と、エッチング反応のガス状生成物と一緒にエッチャントガスを排気する工程と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
-Sn-(A4-x 式I
(式中、
QはORまたはCpであり、
各R基は、1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
各R’基は、1~10個の炭素原子を有するアルキル、アシルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
xは1~4の整数であり、
xが0の場合、AはOであり、xが1~3の整数の場合、AはNであり、
がOの場合、zは1であり、AがNの場合、zは2である)
の有機金属化合物。
【請求項2】
xが1~3の整数である、請求項1に記載の有機金属化合物。
【請求項3】
QがORである、請求項1または2に記載の有機金属化合物。
【請求項4】
QがCpである、請求項1または2に記載の有機金属化合物。
【請求項5】
xが1である、請求項4に記載の有機金属化合物。
【請求項6】
各R’基が、1~4個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から独立して選択される、請求項1から5のいずれか1項に記載の有機金属化合物。
【請求項7】
各R’基がMeである、請求項1から6のいずれか1項に記載の有機金属化合物。
【請求項8】
zが2の場合、各R’が、2つの異なるアルキル、アシル、またはアリール基の組合せを表す、請求項1から7のいずれか1項に記載の有機金属化合物。
【請求項9】
xが4である、請求項1に記載の有機金属化合物。
【請求項10】
各R基が、1~4個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から独立して選択される、請求項1から3および6から9のいずれか1項に記載の有機金属化合物。
【請求項11】
少なくとも1つのR基がMeである、請求項1から3および6から10のいずれか1項に記載の有機金属化合物。
【請求項12】
(MeO)Sn(NMe、(MeO)Sn(NEtMe)、(MeO)Sn(NMe)、(MeO)Sn(NEtMe)、Sn(OMe)、CpSn(NMeEt)、およびCpSn(NMeからなる群から選択される、請求項1に記載の有機金属化合物。
【請求項13】
式II:
Sn(NR(CH 式II
(式中、
各Aは、NR’またはOから独立して選択され、
各R基は、水素および1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
各R’基は、水素および1~10個の炭素原子を有するアルキル、アシルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
nは2または3であり、
場合により、NR(CHNR’は環状構造を形成し、
場合により、(CH)のうちの少なくとも1つは、1~10個の炭素原子を有するアルキル基による1つまたは複数の置換を有する)
の有機金属化合物。
【請求項14】
各AがOであり、式IIが式IIa:Sn(NR(CHO)で表される、請求項13に記載の有機金属化合物。
【請求項15】
各R基が、1~4個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から独立して選択される、請求項14に記載の有機金属化合物。
【請求項16】
CHのうちの少なくとも1つが、1~10個の炭素原子を有するアルキル基による1つまたは複数の置換を有する、請求項13に記載の有機金属化合物。
【請求項17】
各アミン中のCHのうちの1つのみが、1~10個の炭素原子を有するアルキル基による1つまたは複数の置換を有する、請求項16に記載の有機金属化合物。
【請求項18】
各アミン中の前記CHのうちの前記1つが、メチルまたはエチルによる2つの置換を有する、請求項17に記載の有機金属化合物。
【請求項19】
各AがNであり、式IIが式IIb:
【化1】

(式中、各R’’基および各R’’’基は、独立して選択された、1~10個の炭素原子を有するアルキル基である)
で表される、請求項13および16から18のいずれか1項に記載の有機金属化合物。
【請求項20】
各R’’基および各R’’’基がメチルまたはエチルである、請求項19に記載の有機金属化合物。
【請求項21】
各R基および各R’基が、1~4個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から独立して選択される、請求項16から20のいずれか1項に記載の有機金属化合物。
【請求項22】
各R基および各R’基が水素である、請求項16から20のいずれか1項に記載の有機金属化合物。
【請求項23】
各NR(CHNR’が環状構造を形成する、請求項13に記載の有機金属化合物。
【請求項24】
式IIが式IIc:
【化2】

で表される、請求項23に記載の有機金属化合物。
【請求項25】
各(NR(CH)が、N,N’-ジメチルエチレンジアミン(NMe(CHNMe)、ピペラジン(N)、N,N’-ジエチルエチレンジアミン(NEt(CHNEt)、N,N’-ジイソプロピルエチレンジアミン(NiPr(CHNiPr)、N,N’-ジ-tert-ブチルエチレンジアミン(NtBu(CHNtBu)、N,N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(NMe(CHNMe)、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(NH(CH)(C(CH))(CH)NH)、2-(メチルアミノ)エタノール(NMe(CHO)、および2-(エチルアミノ)エタノール(NEt(CHO)からなる群から選択される、請求項13に記載の有機金属化合物。
【請求項26】
式I:
Sn(NR 式I
(式中、
各R基は、1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
各R’基は、1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択される)
で表される第1の有機金属化合物、および
式II:
Sn(NR 式II
(式中、各R基は、1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択される)
で表される第2の有機金属化合物を含む、組成物。
【請求項27】
前記R’基および前記R基が同じである、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
各R基が、1~4個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から独立して選択される、請求項26または27に記載の組成物。
【請求項29】
各R’基および各R基が、1~4個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から独立して選択される、請求項26から28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
前記第2の有機金属化合物が、Sn(NMe、Sn(NEt、およびSn(NMeEt)からなる群から選択される、請求項26から29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
リアクタチャンバの内面からまたは前記リアクタチャンバ内の基板から酸化スズ堆積物を除去するための方法であって、
酸化スズ堆積物を含む前記リアクタチャンバに、エッチャントガスを導入する工程であり、前記エッチャントガスが、一般式A
(式中、
は、C、N、およびSからなる群から選択され、
Oは酸素であり、
各Xは、ハロゲンからなる群から独立して選択され、
下付き文字およびはゼロより大きい)
の化合物である、工程、
前記導入の前または後のいずれかで、前記エッチャントガスを活性化する工程、
前記活性化されたエッチャントガスと前記酸化スズ堆積物との間でエッチング反応を進行させる工程、ならびに
前記エッチング反応のガス状生成物と一緒に前記エッチャントガスを排気する工程
を含む、方法。
【請求項32】
リアクタチャンバの内面からまたは前記リアクタチャンバ内の基板から堆積物を除去するための方法であって、
前記リアクタチャンバに、エッチャントガス、および添加剤を導入する工程であり、前記エッチャントガスが、一般式A
(式中、
はNおよびSからなる群から選択され、
Oは酸素であり、
各Xは、ハロゲンからなる群から独立して選択され、
下付き文字およびはゼロより大きい)
の化合物であり、前記添加剤が、一般式C(式中、下付き文字およびはゼロより大きい)のものである、工程、
前記導入の前または後のいずれかで、前記エッチャントガスを活性化する工程、
前記活性化されたエッチャントガスと前記堆積物との間でエッチング反応を進行させる工程、ならびに
前記エッチング反応のガス状生成物と一緒に前記エッチャントガスを排気する工程
を含む、方法。
【請求項33】
Xが2つの異なるハロゲンの組合せを表す、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記チャンバへの前記導入前に前記エッチャントガスを生成する工程をさらに含む、請求項31から33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記エッチャントガスの前記チャンバへの前記導入前に、液体化学成分にキャリアガスを吹き込んで、前記液体化学成分を前記エッチャントへと揮発させる工程をさらに含む、請求項31から34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記エッチャントガスが、複数の液体化学成分にキャリアガスを吹き込み、次いで、得られたガスを組み合わせることによって生成される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記エッチャントガスが、2種以上の化学成分ガスを混合することによって生成される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記エッチャントガスが、前記チャンバへの導入前に、ガス活性化チャンバ内の活性化機構に曝露することによって活性化され、前記ガス活性化機構が、熱、紫外線およびプラズマ放電からなる群から選択される、請求項31から37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記エッチャントガスが、前記チャンバへの導入後、熱活性化機構に曝露することによって活性化され、前記熱活性化機構が、前記チャンバ内の全体的な温度、および前記チャンバ内の局所熱源からなる群から選択される、請求項31から38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記エッチャントガスが塩化チオニル(SOCl)である、請求項31から39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記添加剤がCOまたはCOである、請求項32から40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
ハロゲン含有添加剤が、前記エッチャントガスを含むガス状混合物に添加される、請求項31から41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記ハロゲン含有添加剤が、活性ハロゲン、または一般式RY(式中、RはHおよびMeからなる群から選択され、YはF、Cl、Br、およびIからなる群から選択されるハロゲンである)の化合物である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記活性ハロゲンがClまたはBrを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
希釈添加剤が、前記エッチャントガスを含むガス状混合物に添加される、請求項31から44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記希釈添加剤が、N、Ar、He、またはNeを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記リアクタチャンバを少なくとも100℃、好ましくは100℃~900℃の間、より好ましくは100℃~400℃の間の温度に加熱する工程をさらに含む、請求項31から46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記リアクタチャンバに、0.1mBar~1,500mBarの間、好ましくは0.1mBar~1,000mBarの間の圧力を加える工程をさらに含む、請求項31から47のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高純度酸化スズの堆積に有用な有機金属化合物、そのような高純度酸化スズ膜をドライエッチングするためのドライエッチング方法、および酸化スズ膜堆積法で使用される堆積リアクタに関する。より詳細には、本開示は、高純度酸化スズの堆積において有用な特定の化合物、および高純度酸化スズの堆積において有用な化合物の貯蔵中に、より良好な安定性をもたらす組成物について記載する。また、本開示は、特定のエッチャントガスで酸化スズをドライエッチングするための方法、および/または特定の添加剤と共に特定のエッチャントガスを使用して、基板をドライエッチングするための方法について記載する。
【背景技術】
【0002】
以下の「発明の背景」の説明では、ある特定の構造および/または方法が参照される。ただし、以下の参照は、これらの構造および/または方法が先行技術を構成することを認めるものとして解釈されるべきではない。出願人は、そのような構造および/または方法が先行技術として適格ではないことを実証する権利を明示的に留保する。
【0003】
半導体産業において、電子デバイスの加工中に酸化スズコンフォーマル膜がますます利用されている。そのような膜は、化学蒸着(CVD)または原子層堆積(ALD)を使用して作製することができる。
【0004】
所望の膜を得るために、堆積プロセス中に使用される反応化合物は、良好な反応性を示す一方、熱的に安定でなければならない。そのような特性により、分解を起こすことなく化合物の堆積チャンバへの送達が可能となる。分解により、堆積した膜が均一にならないか、または堆積した膜に他の欠陥が生じる。本発明の化合物が示す良好な安定性および反応性プロファイルはまた、成長チャンバに送達する必要のある材料が少なくなり(材料が少ないほど経済的である)、サイクルタイムが短くなる(プロセス終了時にチャンバに残り、ポンプ排出される材料が少なくなるため)ことを意味し、より厚い膜をより短時間で堆積することができるため、スループットが向上することを意味する。熱安定性はまた、合成後の材料の精製がはるかに容易になり、取り扱いが容易になることを意味する。
【0005】
所望の熱安定性および良好な反応性を有する化合物を発見するためのいくつかの試みがあったが、業界の増大する要件を満たすことができる、改善された熱安定性および/または反応性を有する化合物が依然として必要である。
【0006】
貯蔵中の反応化合物の安定性を確保したいという要望もある。酸化スズ膜を形成するために使用される多くの反応化合物は、不均化または重合することが知られている。これにより、堆積プロセスで使用する前に反応化合物を一定期間貯蔵すると問題が起こる可能性がある。したがって、不均化の影響を低減し、酸化スズ膜を形成するための堆積プロセスで使用される反応ガスの貯蔵安定性を高める必要がある。
【0007】
原子層堆積(ALD)システムでは、反応ガスを逐次的に導入して、所望の材料のコンフォーマル薄膜の自己制御成長を実現する。どちらの場合も、リアクタは使用されている化学物質と反応しない材料で作られたチャンバである。リアクタはまた、高温に耐える必要がある。このチャンバは、リアクタ壁、ライナー、台、ガス注入ユニット、および温度制御ユニットを備える。通常、リアクタ壁は、アルミニウム、ステンレス鋼、または石英で作られている。Al、Yなどのセラミック、もしくは他の新規セラミック
、または石英などの特殊なガラスは、リアクタチャンバにおけるリアクタ壁と台との間のライナーとしてよく使用される。過熱を防ぐため、リアクタ壁内のチャネルに、水などの冷媒を流通させることができる。基板は、制御された温度に保たれている台の上にある。台は、使用されている金属有機化合物に耐性のある材料で作られており、グラファイトが使われる場合もある。
【0008】
薄膜堆積が実施されると、所望の表面だけでなく、台、壁、天井を含むMOCVDまたはALDリアクタのすべての内面にも膜が堆積される。洗浄せずにリアクタを使用する頻度が高いほど、堆積物は厚くなる。堆積物は最終的に剥離し始め、基板ウェーハ上に落下する可能性のある粒子が生成され、基板ウェーハが汚染され、結果として歩留まりが低下する。リアクタチャンバを流通する反応ガスもまた、堆積物によって汚染されている場合がある。これを回避するために、リアクタは定期的に清掃する必要がある。リアクタの構成および使用される材料によっては、効果的に洗浄するため、リアクタ部品の完全な取りはずしおよび湿式洗浄が必要になる場合があるが、これには時間がかかり、リアクタの効率が低下する。さらに、リアクタは通常、316Lおよび304ステンレス鋼、炭化ケイ素、グラファイト、タングステン、アルミニウム、熱分解窒化ホウ素、他のセラミック、ならびに/またはエチレンプロピレンジエン(EPDN)ポリマーなどの幅広い材料で構成される。さまざまな種類のエッチャントまたは他の洗浄剤を使用せずに、これらすべての種類の表面から堆積物を取り除くことは困難な場合がある。したがって、リアクタ内を洗浄するためのより単純でより効果的な手段が望まれている。
【0009】
さらに、薄膜製造方法は多くの場合、堆積後にエッチング工程を含む。チャンバ壁の堆積物の少なくともいくつかは、薄膜からエッチングされるものと同じ材料である。
【0010】
酸化スズ(SnO)を含む単一ウェーハの作製のためのALDリアクタにより、反応チャンバのエッチングおよび洗浄において特定の問題が提示される。例えば、そのようなリアクタでは、チャンバ材料の劣化を引き起こし、材料ストレスを誘発する高温を必要とし、ALDチャンバの下地材料を腐食し、および/またはチャンバ壁を保護するためのチャンバシールドもしくは挿入物が必要となる、腐食性の高いClまたはBr系化学物質を使用する場合がある。酸化スズ用のALDリアクタを洗浄する場合、H、CH、または他の還元性化学物質を使用すると、より長いエッチング時間が必要になり、排気される前にリアクタ表面に凝縮する副生成物が存在する。CHの使用により、Sn-O残留物よりも毒性が高いことが知られているMe-Sn-Oを含有する固体酸化スズが生じる可能性もある。酸化スズの場合の副生成物は低温分解しやすいため、-10~-30℃より低い温度制御が必要であり、ツールの構成が複雑になる。また、還元性雰囲気により、金属酸化物が金属に還元され得、次いで不動態化層として作用する可能性がある。
【0011】
US20040014327A1「Method for etching high
dielectric constant materials and for cleaning deposition chambers for high dielectric constant materials」により、別のエッチャントであるCOClを使用して金属酸化物をエッチングすることができることが教示されている。ただし、COClは毒性の高い神経剤である。エッチャントとしての塩化マロニルの使用も同様に可能であるはずだが、塩化マロニルは非常に不安定であり、室温で液体として分解するため、十分に高い純度での入手は困難であり、輸送および長期間貯蔵することは困難である。したがって、上記の問題を解決するエッチャントが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本開示は、高純度酸化スズの堆積に有用な化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
有機金属化合物は、以下の式I:
-Sn-(A4-x 式I
(式中、
QはORまたはCpであり、
各R基は、1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
各R’基は、1~10個の炭素原子を有するアルキル、アシルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
xは0~3の整数であり、
xが0の場合、AはOであり、xが1~3の整数の場合、AはNであり、
AがOの場合、zは1であり、AがNの場合、zは2である)
の化合物を含む。
【0014】
そのような化合物を使用した酸化スズの堆積も開示されている。本明細書に開示される方法における式Iの化合物の使用により、酸化スズの化学蒸着(CVD)および原子層堆積(ALD)が可能となる。
【0015】
実施形態において、Qは、シクロペンタジエニル配位子であるCpである。いくつかの実施形態において、xは1であり、式Iの化合物は、以下の式:Cp-Sn-(NR(式中、各R’基は、1~10個の炭素原子を有するアルキル、アシルまたはアリール基からなる群から独立して選択される)で表される。
【0016】
実施形態において、xは1~3の整数である。そのような実施形態において、式Iの化合物は、以下の式:(OR-Sn-(NR4-x(式中、各R’基は、1~10個の炭素原子を有するアルキル、アシルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、xは1~3の整数である)で表される。
【0017】
他の実施形態において、各R基および各R’基は、独立して選択された、1~10個の炭素原子を有するアルキル基である。各R基および各R’基は、独立して選択された、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり得ることが企図される。実施形態において、各R基および各R’基は、独立して選択された、1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。実施形態において、各R基および各R’基は、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、tert-ブチル、イソ-ブチルおよびn-ブチルからなる群から独立して選択される。実施形態において、各R基および各R’基は、異なるアルキル、アシル、またはアリール基、特に異なるアルキル基を表す。
【0018】
実施形態において、xは4である。そのような実施形態において、式Iの化合物は、以下の式:Sn(OR(式中、各R基は、1~10個の炭素原子を有するアルキル、アシル、またはアリール基からなる群から独立して選択される)で表される。
【0019】
他の実施形態において、各R’基は、独立して選択された、1~10個の炭素原子を有するアルキル基である。各R’基は、独立して選択された、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり得ることが企図される。実施形態において、各R’基は、独立して選択された、1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。実施形態において、各R’基は、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、tert-ブチル、イソ-ブチルおよびn-ブチルからなる群から独立して選択される。実施形態において、各R’基は、異なるアルキル、アシル、またはアリール基、特に異なるアルキル基を表す。
【0020】
実施形態において、有機金属化合物は、(MeO)Sn(NMe、(MeO)Sn(NEtMe)、(MeO)Sn(NMe)、(MeO)Sn(NEtMe)、Sn(OMe)、CpSn(NMe、およびCpSn(NMeEt)からなる群から選択される。
【0021】
他の有機金属化合物は、以下の式II:
Sn(NR(CH 式II
(式中、
各Aは、NR’またはOから独立して選択され、
各R基は、水素および1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
各R’基は、水素および1~10個の炭素原子を有するアルキル、アシルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
nは2または3であり、
場合により、NR(CHNR’は環状構造を形成し、
場合により、(CH)のうちの少なくとも1つは、1~10個の炭素原子を有するアルキル基による1つまたは複数の置換を有する)
の化合物を含む。
【0022】
そのような化合物を使用した酸化スズの堆積も開示されている。本明細書に開示される方法における式IIの化合物の使用により、酸化スズの化学蒸着(CVD)および原子層堆積(ALD)が可能となる。
【0023】
実施形態において、AはOであり、式IIは式IIa:Sn(NR(CHO)(式中、各R基は、1~10個の炭素原子を有するアルキルもしくはアリール基から独立して選択されるか、または1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、もしくは1~4個の炭素原子を有するアルキル基から選択される)で表される。実施形態において、各R基は、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、tert-ブチル、イソ-ブチルおよびn-ブチルからなる群から独立して選択される。
【0024】
実施形態において、各R基は、1~10個の炭素原子を有するアルキル基から独立して選択される。各R基は、独立して選択された、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり得ることが企図される。実施形態において、各R基は、独立して選択された、1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。実施形態において、各R基は、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、tert-ブチル、イソ-ブチルおよびn-ブチルからなる群から独立して選択される。実施形態において、各R基は、異なるアルキル、アシル、またはアリール基、特に異なるアルキル基を表す。
【0025】
実施形態において、各R’基は、水素または1~10個の炭素原子を有するアルキル基から独立して選択される。各R’基は、水素または1~6個の炭素原子を有するアルキル基から独立して選択され得ることが企図される。実施形態において、各R’基は、水素または1~4個の炭素原子を有するアルキル基から独立して選択される。実施形態において、各R’基は、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、tert-ブチル、イソ-ブチルおよびn-ブチルからなる群から独立して選択される。実施形態において、各R’基は、水素または異なるアルキル、アシル、もしくはアリール基、特に異なるアルキル基を表す。
【0026】
実施形態において、nは2である。他の実施形態において、nは3である。
実施形態において、(CH)のうちの少なくとも1つは、1~10個の炭素原子、または1~6個の炭素原子、または1~4個の炭素原子を有するアルキル基による1つまた
は複数の置換を有する。あるいは、1つまたは複数の置換は、メチルまたはエチルによる。特定の実施形態において、(CH)のうちの1つのみが、メチルまたはエチルなどのアルキル基による1つまたは複数の置換を有する。より詳細な実施形態において、(CH)のうちの1つが、2つのメチル基により置換されている。
【0027】
実施形態において、式IIは、
式IIb:
【0028】
【化1】
【0029】
(式中、
各R基は、水素および1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
各R’基は、水素および1~10個の炭素原子を有するアルキル、アシルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
各R’’基および各R’’’基は、独立して選択された、1~10個の炭素原子を有するアルキル基である)
で表される。
【0030】
実施形態において、式IIbの各R、R’、R’’、またはR’’’基は、水素または1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、もしくは1~4個の炭素原子を有するアルキル基から独立して選択される。式IIbの特定の実施形態において、各RおよびR’は水素であり、各R’’およびR’’’基は、独立して選択された、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、または1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。式IIbのより詳細な実施形態において、各RおよびR’は水素であり、各R’’およびR’’’基は、エチルまたはメチルから独立して選択される。
【0031】
がNR’であるいくつかの実施形態において、NR(CHNR’は環状構造を形成する。環状構造の特定の実施形態において、RおよびR’基は、メチルまたはエチルから選択されるアルキル基である。実施形態において、式IIは、式IIc:
【0032】
【化2】
【0033】
#1 式IIc:
で表される。
【0034】
実施形態において、各(NR(CH)は、N,N’-ジメチルエチレンジアミン(NMe(CHNMe)、ピペラジン(N)、N,N’-ジエチルエチレンジアミン(NEt(CHNEt)、N,N’-ジイソプロピルエチレンジアミン(NiPr(CHNiPr)、N,N’-ジ-tert-ブチルエチレンジアミン(NtBu(CHNtBu)、N,N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(NMe(CHNMe)、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(NH(CH)(C(CH))(CH)NH)、2-(メチルアミノ)エタノール(NMe(CHO)、および2-(エチルアミノ)エタノール(NEt(CHO)からなる群から選択される。
【0035】
本開示は、第2の有機金属化合物を第1の有機金属化合物と組み合わせて、第1の有機金属化合物の不均化を低減して、貯蔵安定性を高める組成物を提供する。
【0036】
組成物は、
式III:
Sn(NR 式III
(式中、
各R基は、1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
各R’基は、1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択される)
で表される第1の有機金属化合物、および
式IV:
Sn(NR 式IV
(式中、各R基は、1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択される)
で表される第2の有機金属化合物を含む。
【0037】
他の実施形態において、各R、R’、およびR基は、独立して選択された、1~10個の炭素原子を有するアルキル基である。各R、R’、およびR基は、独立して選択された、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり得ることが企図される。実施形態において、各R、R’、およびR基は、独立して選択された、1~4個の炭
素原子を有するアルキル基である。実施形態において、各R、R’、およびR基は、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、tert-ブチル、イソ-ブチルおよびn-ブチルからなる群から独立して選択される。実施形態において、各R、R’、およびR基は、異なるアルキル、アシル、またはアリール基、特に異なるアルキル基を表す。
【0038】
実施形態において、第2の有機金属化合物は、Sn(NMe、Sn(NEt、およびSn(NMeEt)からなる群から選択される。
【0039】
本開示は、ALDリアクタ、特に酸化スズ製造におけるALDリアクタをエッチングおよび洗浄する従来の方法における上述の問題を解決する、新規エッチング方法を提供する。
【0040】
上述の問題を解決する1つの方法は、リアクタチャンバの内面からまたは前記リアクタチャンバ内の基板から酸化スズ堆積物を除去するための方法であって、
前記リアクタチャンバに、エッチャントガスを導入する工程であり、前記エッチャントガスが、一般式A(式中、Aは、C、N、およびSからなる群から選択され、Oは酸素であり、各Xは、ハロゲンからなる群から独立して選択され、下付き文字およびはゼロより大きい)の化合物である、工程、
前記導入の前または後のいずれかで、前記エッチャントガスを活性化する工程、
前記活性化されたエッチャントガスと前記酸化スズ堆積物との間でエッチング反応を進行させる工程、ならびに
エッチング反応のガス状生成物と一緒にエッチャントガスを排気する工程
を含む、方法を含む。
【0041】
上述の問題を解決する別の方法は、リアクタチャンバの内面からまたは前記リアクタチャンバ内の基板から堆積物を除去するための方法であって、
前記リアクタチャンバに、エッチャントガス、および添加剤を導入する工程であり、前記エッチャントガスが、一般式A(式中、Aは、C、N、およびSからなる群から選択され、Oは酸素であり、各Xは、ハロゲンからなる群から独立して選択され、下付き文字およびはゼロより大きい)の化合物であり、前記添加剤が、一般式C(式中、下付き文字およびはゼロより大きい)のものである、工程、
前記導入の前または後のいずれかで、前記エッチャントガスを活性化する工程、
前記活性化されたエッチャントガスと前記堆積物との間でエッチング反応を進行させる工程、ならびに
エッチング反応のガス状生成物と一緒にエッチャントガスを排気する工程
を含む、方法を含む。
【0042】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、Xは、2種の異なるハロゲンの組合せを表す。
【0043】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、前記エッチャントガスを生成することは、前記チャンバへの前記導入前に行われる。
【0044】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、液体化学成分にキャリアガスを吹き込んで、前記液体化学成分を前記エッチャントへと揮発させることは、前記エッチャントガスの前記チャンバへの前記導入前に行われる。
【0045】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、前記エッチャントガスは、複数の液体化学成分にキャリアガスを吹き込み、次いで、得られたガスを組み合わせることによって
生成される。
【0046】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、前記エッチャントガスは、2種以上の化学成分ガスを混合することによって生成される。
【0047】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、前記エッチャントガスは、前記チャンバへの導入前に、ガス活性化チャンバ内の活性化機構に曝露することによって活性化され、前記ガス活性化機構は、熱、紫外線およびプラズマ放電からなる群から選択される。
【0048】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、前記エッチャントガスは、前記チャンバへの導入後、熱活性化機構に曝露することによって活性化され、前記熱活性化機構は、前記チャンバ内の全体的な温度、および前記チャンバ内の局所熱源からなる群から選択される。
【0049】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、前記エッチャントガスは、COCl、COBr、COI、SOI、SOCl、SOBr、SOCl、SOBr、NOCl、NOBr、NOI、SOClBr、SOClF、およびSOFBrからなる群から選択される。特定の実施形態において、塩化チオニル(SOCl)が使用される。
【0050】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、前記添加剤はCOまたはCOである。
【0051】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、ハロゲン含有添加剤が、前記エッチャントガスを含むガス状混合物に添加される。
【0052】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、ハロゲン含有添加剤は、活性ハロゲンまたは一般式R(式中、RはHおよびMeからなる群から選択され、Xは、F、Cl、Br、およびIからなる群から選択されるハロゲンである)の化合物である。
【0053】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、活性ハロゲンは、ClまたはBrを含む。
【0054】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、希釈添加剤が、前記エッチャントガスを含むガス状混合物に添加される。
【0055】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、希釈添加剤は、N、Ar、He、またはNeを含む。
【0056】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、前記リアクタチャンバは、少なくとも100℃、100℃~900℃の間、または100℃~400℃の間の温度に加熱される。
【0057】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、前記リアクタチャンバは、0.1mBar~1,500mBarの間、好ましくは0.1mBar~1,000mBarの間の圧力を備える。
【0058】
本発明の上述のおよび他の特徴、ならびに本発明の利点は、添付の図に示されるように、好ましい実施形態についての以下の詳細な説明に照らしてより明らかになるであろう。理解されるように、本発明は、すべて本発明から逸脱することなく、さまざまな点で修正
することができる。したがって、図面および説明は、本質的に例示的なものとみなされるべきであり、限定的なものとしてみなされるべきではない。
【0059】
次いで、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して、例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】酸化スズ膜の形成するために使用可能ないくつかの化合物の蒸気圧の比較グラフである。
図2】70℃の貯蔵温度におけるMeSn(NMeの、日数に対する質量%のグラフである。
図3】実施例21による試験後に得られた試験片の写真である。
図4】実施例22による実施における電力(W)に対するエッチング速度(A/分)のグラフである。
図5】実施例22による、温度が26℃であった実施のみにおける電力(W)に対するエッチング速度(A/分)のグラフである。
図6】Sn(NMeEt)H NMRスペクトルを示す図である。
図7】Sn(OtBu)H NMRスペクトルを示す図である。
図8】MeOH添加前後のSn(NMeEt)H NMRスペクトルを示す図である。
図9】60℃の貯蔵温度における、Sn(NMeEt)の週数に対する質量%を、HNMeEtと比較したグラフである。
図10】0、4、および9週における60℃でのSn(NMeEt)サンプルのH NMRスペクトルを示す図である。
図11】100℃の貯蔵温度における、Sn(NMeEt)の週数に対する質量%を、HNMeEtと比較したグラフである。
図12】0、4、および9週における100℃でのSn(NMeEt)サンプルのH NMRスペクトルを示す図である。
図13】0、1、および2週における125℃でのSn(NMeEt)サンプルのH NMRスペクトルを示す図である。
図14】多段真空蒸留装置の概略図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下の詳細な説明は、同様の数字が同様の要素を示す添付の図面と関連させて読むことができる。
【0062】
以下の式I:
-Sn-(A4-x 式I
(式中、
QはORまたはCpであり、
各R基は、1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
各R’基は、1~10個の炭素原子を有するアルキル、アシルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
xは1~4の整数であり、
xが0の場合、AはOであり、xが1~3の整数の場合、AはNであり、
がOの場合、zは1であり、AがNの場合、zは2である)
の有機金属化合物が開示される。
【0063】
実施形態において、Qは、シクロペンタジエニル配位子であるCpである。いくつかの実施形態において、xは1であり、式Iの化合物は、以下の式:Cp-Sn-(NR
(式中、各R’基は、1~10個の炭素原子を有するアルキル、アシルまたはアリール基からなる群から独立して選択される)で表される。
【0064】
式Iの化合物は、xが1~3の整数である化合物を含む。そのような実施形態において、式Iの化合物は、以下の式:(OR-Sn-(NR4-x(式中、各R’基は、1~10個の炭素原子を有するアルキル、アシルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、xは1~3の整数である)で表される。
【0065】
式:(OR-Sn-(NR4-xで表される式Iの化合物は、各R基および各R’基が、独立して選択された、1~10個の炭素原子を有するアルキル基である化合物を含む。各R基および各R’基は、独立して選択された、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり得ることが企図される。特に、各R基および各R’基は、独立して選択された、1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。より詳細には、各R基および各R’基は、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、tert-ブチル、イソ-ブチルおよびn-ブチルからなる群から独立して選択される。また、一部の化合物では、各R基および各R’基は、異なるアルキル、アシル、またはアリール基、特に異なるアルキル基を表す場合がある。
【0066】
式Iの化合物は、xが4である化合物を含む。そのような実施形態において、式Iの化合物は、以下の式:Sn(OR(式中、各R基は、1~10個の炭素原子を有するアルキル、アシル、またはアリール基からなる群から独立して選択される)で表される。
【0067】
式:Sn(ORで表される式Iの化合物は、各R基が、独立して選択された、1~10個の炭素原子を有するアルキル基である化合物を含む。各R基は、独立して選択された、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり得ることが企図される。特に、各R基は、独立して選択された、1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。より詳細には、各R基は、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、tert-ブチル、イソ-ブチルおよびn-ブチルからなる群から独立して選択される。また、一部の化合物では、各R基は、異なるアルキル、アシル、またはアリール基、特に異なるアルキル基を表す。
【0068】
式Iの特定の有機金属化合物は、以下:(MeO)Sn(NMe、(MeO)Sn(NEtMe)、(MeO)Sn(NMe)、(MeO)Sn(NEtMe)、Sn(OMe)、CpSn(NMe、またはCpSn(NMeEt)を含む。
【0069】
他の有機金属化合物は、以下の式II:
Sn(NR(CH 式II
(式中、
各Aは、NR’またはOから独立して選択され、
各R基は、水素および1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
各R’基は、水素および1~10個の炭素原子を有するアルキル、アシルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
nは2または3であり、
場合により、NR(CHNR’は環状構造を形成し、
場合により、(CH)のうちの少なくとも1つは、1~10個の炭素原子を有するアルキル基による1つまたは複数の置換を有する)
の化合物を含む。
【0070】
そのような化合物を使用した酸化スズの堆積も開示されている。本明細書に開示される方法における式IIの化合物の使用により、酸化スズの化学蒸着(CVD)および原子層堆積(ALD)が可能となる。
【0071】
実施形態において、AはOであり、式IIは式IIa:Sn(NR(CHO)(式中、各R基は、1~10個の炭素原子を有するアルキルもしくはアリール基から独立して選択されるか、または1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、もしくは1~4個の炭素原子を有するアルキル基から選択される)で表される。実施形態において、各R基は、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、tert-ブチル、イソ-ブチルおよびn-ブチルからなる群から独立して選択される。
【0072】
実施形態において、各R基は、1~10個の炭素原子を有するアルキル基から独立して選択される。各R基は、独立して選択された、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり得ることが企図される。実施形態において、各R基は、独立して選択された、1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。実施形態において、各R基は、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、tert-ブチル、イソ-ブチルおよびn-ブチルからなる群から独立して選択される。実施形態において、各R基は、異なるアルキル、アシル、またはアリール基、特に異なるアルキル基を表す。
【0073】
実施形態において、各R’基は、水素または1~10個の炭素原子を有するアルキル基から独立して選択される。各R’基は、水素または1~6個の炭素原子を有するアルキル基から独立して選択され得ることが企図される。実施形態において、各R’基は、水素または1~4個の炭素原子を有するアルキル基から独立して選択される。実施形態において、各R’基は、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、tert-ブチル、イソ-ブチルおよびn-ブチルからなる群から独立して選択される。実施形態において、各R’基は、水素または異なるアルキル、アシル、もしくはアリール基、特に異なるアルキル基を表す。
【0074】
実施形態において、nは2である。他の実施形態において、nは3である。
実施形態において、(CH)のうちの少なくとも1つは、1~10個の炭素原子、または1~6個の炭素原子、または1~4個の炭素原子を有するアルキル基による1つまたは複数の置換を有する。あるいは、1つまたは複数の置換は、メチルまたはエチルによる。特定の実施形態において、(CH)のうちの1つのみが、メチルまたはエチルなどのアルキル基による1つまたは複数の置換を有する。より詳細な実施形態において、(CH)のうちの1つが、2つのメチル基により置換されている。
【0075】
実施形態において、式IIは、
式IIb:
【0076】
【化3】
【0077】
(式中、
各R基は、水素および1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
各R’基は、水素および1~10個の炭素原子を有するアルキル、アシルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
各R’’基および各R’’’基は、独立して選択された、1~10個の炭素原子を有するアルキル基である)
で表される。
【0078】
実施形態において、式IIbの各R、R’、R’’、またはR’’’基は、水素または1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、もしくは1~4個の炭素原子を有するアルキル基から独立して選択される。式IIbの特定の実施形態において、各RおよびR’は水素であり、各R’’およびR’’’基は、独立して選択された、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、または1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。式IIbのより詳細な実施形態において、各RおよびR’は水素であり、各R’’およびR’’’基は、エチルまたはメチルから独立して選択される。
【0079】
がNであるいくつかの実施形態において、NR(CHNR’は環状構造を形成する。環状構造の特定の実施形態において、RおよびR’基は、メチルまたはエチルから選択されるアルキル基である。実施形態において、式IIは、式IIc:
式IIc:
【0080】
【化4】
【0081】
で表される。
実施形態において、各(NR(CH)は、N,N’-ジメチルエチレンジアミン(NMe(CHNMe)、ピペラジン(N)、N,N’-ジエチルエチレンジアミン(NEt(CHNEt)、N,N’-ジイソプロピルエチレンジアミン(NiPr(CHNiPr)、N,N’-ジ-tert-ブチルエチレンジアミン(NtBu(CHNtBu)、N,N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(NMe(CHNMe)、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(NH(CH)(C(CH))(CH)NH)、2-(メチルアミノ)エタノール(NMe(CHO)、および2-(エチルアミノ)エタノール(NEt(CHO)からなる群から選択される。
【0082】
式IおよびIIの化合物は、良好な反応性を示す一方、熱的に安定であり、そのため、
分解が起こることなく堆積チャンバへの化合物の送達が行われるはずである(分解が起こると、堆積した膜が均一にならないか、または堆積した膜に欠陥が生じる)。本発明の化合物が示す良好な安定性および反応性プロファイルはまた、成長チャンバに送達する必要のある材料が少なくなる(材料が少ないほど経済的である)と予想され、サイクルタイムが短くなる(プロセス終了時にチャンバに残り、ポンプ排出される材料が少なくなるため)と予想され、より厚い膜をより短時間で堆積できるため、スループットが向上することを意味する。さらに、ALDは、式IまたはIIの化合物を使用して、はるかに低い温度で(またはより広い温度範囲を使用して)実施することが可能であると予想される。熱安定性はまた、合成後の材料の精製がはるかに容易になり、取り扱いが容易になることを意味する。
【0083】
式IおよびIIの化合物は、C-Sn結合がないという、従来の化合物に勝る追加の利点を有する。C-Sn結合は、式IおよびIIの化合物から形成される残留物よりも毒性が高いことが知られているMe-Sn-O固体残留物の形成をもたらす。また、式IおよびIIの化合物は、従来の化合物よりも分子量が小さいが、それでも、それらの従来の化合物よりも高い熱安定性を有することが予想される。
【0084】
式IまたはIIの化合物は、当該技術分野において公知の方法によって調製することができる。以下の実施例は、そのような方法を説明するものであるが、限定することを意図したものではない。
【実施例0085】
実施例1:Sn(NMeEt)の合成
不活性雰囲気下で、1Lの丸底フラスコにヘキサン中2.5M nBuLi溶液67mL、および無水ヘキサン約500mLをロードした。フラスコの内容物を氷/水浴で冷却し、次いで、激しく撹拌しながら、HNMeEt 16mLを反応フラスコに滴下添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌し、次いで氷/水浴中で再び冷却した。SnCl 4.90mLをスポイトで反応フラスコに滴下添加した。反応フラスコをアルミホイルで覆い、その内容物を室温で一晩撹拌したままにした。翌日、濾過によりLiCl塩を反応混合物から分離した。Sn(NMeEt) 8.42g(収率57%)が、70℃で0.05Torrにおける蒸留によって単離された。図6に示すように、H NMR分光法により、生成物がSn(NMeEt)であることが確認された。
【実施例0086】
実施例2:Sn(OtBu)の合成
不活性雰囲気下で、1Lの丸底フラスコにSnCl 10g、および無水ヘキサン約400mLを入れた。フラスコの内容物を氷/水浴で冷却し、続いて無水ヘキサン100mL中HNEt 16.6mLを反応フラスコへ緩やかに添加した。次いで反応混合物を室温で2時間撹拌し、次いで氷/水浴中で再び冷却した。次いで、無水ヘキサン約50mL中tBuOH 15.4mLの溶液をフラスコに添加し、反応混合物を室温で一晩撹拌したままにした。翌日、濾過によりHNEt Cl塩を反応混合物から分離した。減圧蒸留により濾液から溶媒を除去した。図7に示すように、H NMR分光法により、残りの黄色い残留物(8g、収率38%)がSn(OtBu)であることが確認された。
【実施例0087】
実施例3:Sn(OiPr)の合成
不活性雰囲気下で、1LのリアクタにiPrOH 49gおよび無水ベンゼン約400mLを入れた。リアクタの内容物を0℃に冷却し、SnCl 50gをスポイトでリアクタへ緩やかに添加した。次いで、激しく撹拌しながら反応混合物にHNMeガスを4
時間通した。HNMeの添加中、反応混合物を1時間還流させた。反応混合物を室温で一晩撹拌したままにした。翌日、濾過によりHNMe Cl塩を反応混合物から分離した。減圧蒸留により溶媒を濾液から除去し、最終生成物が残った。
【実施例0088】
実施例4:Sn(OEt)の合成
不活性雰囲気下で、1Lの丸底フラスコにSnCl 10g、および無水ヘキサン約400mLを入れてもよい。フラスコの内容物を氷/水浴で冷却し、続いて無水ヘキサン100mL中HNEt 16.6mLを反応フラスコへ緩やかに添加してもよい。次いで反応混合物を室温で2時間撹拌し、次いで氷/水浴中で再び冷却してもよい。次いで、無水ヘキサン約50mL中EtOH 15.4mLの溶液をフラスコに添加してもよく、反応混合物を室温で一晩撹拌したままにしてもよい。翌日、濾過によりHNEt Cl塩を反応混合物から分離してもよい。減圧蒸留により濾液から溶媒を除去してもよい。
【実施例0089】
実施例5:Sn(OMe)の合成
不活性雰囲気下で、1Lの丸底フラスコにSnCl 10g、および無水ヘキサン約400mLを入れてもよい。フラスコの内容物を氷/水浴で冷却し、続いて無水ヘキサン100mL中HNEt 16.6mLを反応フラスコへ緩やかに添加してもよい。次いで反応混合物を室温で2時間撹拌し、次いで氷/水浴中で再び冷却してもよい。次いで、無水ヘキサン約50mL中MeOH 15.4mLの溶液をフラスコに添加してもよく、反応混合物を室温で一晩撹拌したままにしてもよい。翌日、濾過によりHNEt Cl塩を反応混合物から分離してもよい。減圧蒸留により濾液から溶媒を除去してもよい。
【実施例0090】
実施例6:(MeO)Sn(NMeEt)の合成
不活性雰囲気下で、1Lのリアクタにヘキサン中2.5M nBuLi溶液25mL、および無水ヘキサン約500mLをロードした。リアクタの内容物を0℃に冷却し、激しく撹拌しながら、無水ヘキサン約100mL中HNMeEt 3.8gを溶液に添加した。その後、反応混合物を室温で1時間撹拌し、次いで再び0℃に冷却した。無水ベンゼン約200mL中Sn(OMe) 15.3gを反応混合物に滴下添加した。反応フラスコの内容物を室温まで温め、一晩撹拌したままにした。翌日、濾過によりLiOMe塩を反応混合物から分離した。減圧蒸留により濾液から溶媒を除去した。生成物を減圧下での蒸留により精製した。
【実施例0091】
実施例7:(EtO)Sn(NMeの合成
不活性雰囲気下で、1Lのリアクタにヘキサン中2.5M nBuLi溶液50mL、および無水ヘキサン約500mLをロードした。リアクタの内容物を0℃に冷却し、激しく撹拌しながら溶液にHNMeガスを30分間通した。その後、反応混合物を室温で1時間撹拌し、次いで再び0℃に冷却した。無水ベンゼン約200mL中Sn(OEt)
18.8gを反応混合物に滴下添加した。反応フラスコの内容物を室温まで温め、一晩撹拌したままにした。翌日、濾過によりLiOEt塩を反応混合物から分離した。減圧蒸留により濾液から溶媒を除去した。生成物を減圧下での蒸留により精製した。
【実施例0092】
実施例8:(EtO)Sn(NMe)の合成
不活性雰囲気下で、1Lのリアクタにヘキサン中2.5M nBuLi溶液25mL、
および無水ヘキサン約500mLをロードした。リアクタの内容物を0℃に冷却し、激しく撹拌しながら溶液にHNMeガスを30分間通した。その後、反応混合物を室温で1時間撹拌し、次いで再び0℃に冷却した。無水ベンゼン約200mL中Sn(OEt)
18.8gを反応混合物に滴下添加した。反応フラスコの内容物を室温まで温め、一晩撹拌したままにした。翌日、濾過によりLiOEt塩を反応混合物から分離した。減圧蒸留により濾液から溶媒を除去した。生成物を減圧下での蒸留により精製した。
【実施例0093】
実施例9:(EtO)Sn(NMeEt)の合成
不活性雰囲気下で、1Lのリアクタにヘキサン中2.5M nBuLi溶液50mL、および無水ヘキサン約500mLをロードした。リアクタの内容物を0℃に冷却し、激しく撹拌しながら、無水ヘキサン約100mL中HNMeEt 7.5gを溶液に添加した。その後、反応混合物を室温で1時間撹拌し、次いで再び0℃に冷却した。無水ベンゼン約200mL中Sn(OEt) 18.8gを反応混合物に滴下添加した。反応フラスコの内容物を室温まで温め、一晩撹拌したままにした。翌日、濾過によりLiOEt塩を反応混合物から分離した。減圧蒸留により濾液から溶媒を除去した。生成物を減圧下での蒸留により精製した。
【実施例0094】
実施例10:(EtO)Sn(NMeEt)の合成
不活性雰囲気下で、1Lのリアクタにヘキサン中2.5M nBuLi溶液25mL、および無水ヘキサン約500mLをロードした。リアクタの内容物を0℃に冷却し、激しく撹拌しながら、無水ヘキサン約100mL中HNMeEt 3.8gを溶液に添加した。その後、反応混合物を室温で1時間撹拌し、次いで再び0℃に冷却した。無水ベンゼン約200mL中Sn(OEt) 18.8gを反応混合物に滴下添加した。反応フラスコの内容物を室温まで温め、一晩撹拌したままにした。翌日、濾過によりLiOEt塩を反応混合物から分離した。減圧蒸留により濾液から溶媒を除去した。生成物を減圧下での蒸留により精製した。
【実施例0095】
実施例11:CpSn(NMeの合成
分別蒸留を使用してジシクロペンタジエン二量体を分解し、調製したCp-Hを同じ日に使用した。グローブボックスにおいて、1Lの丸底フラスコに、Sn(NMe 50.0gおよび無水ヘキサン約400mLをロードした。ダブルマニホールドで、Cp-H 11.0gを反応フラスコに添加し、反応混合物を撹拌しながら3時間還流した。溶媒を真空中で除去し、最終材料を減圧蒸留により単離した。
【実施例0096】
実施例12:CpSn(NMeEt)の合成
分別蒸留を使用してジシクロペンタジエン二量体を分解し、調製したCp-Hを同じ日に使用した。グローブボックスにおいて、1Lの丸底フラスコに、Sn(NMeEt)
50.0gおよび無水ヘキサン約400mLをロードした。ダブルマニホールドで、Cp-H 9.3gを反応フラスコに添加し、反応混合物を撹拌しながら3時間還流した。溶媒を真空中で除去し、最終材料を減圧蒸留により単離した。
【実施例0097】
実施例13:Sn(NMeCHCHNMe)の合成
不活性雰囲気下で、1Lのリアクタにヘキサン中2.5M nBuLi溶液62mL、および無水ヘキサン約500mLをロードした。リアクタの内容物を0℃に冷却し、激しく撹拌しながら、NHMeCHCHNHMe 7.11gを溶液に添加した。その後
、反応混合物を室温で1時間撹拌し、次いで再び0℃に冷却した。無水ヘキサン約200mL中SnCl 10.0gを反応混合物に滴下添加した。反応フラスコの内容物を室温まで温め、一晩撹拌したままにした。翌日、濾過によりLiCl塩を反応混合物から分離した。減圧蒸留により濾液から溶媒を除去した。生成物を減圧下での蒸留により精製した。
【実施例0098】
実施例14:Sn(Nの合成
不活性雰囲気下で、1Lのリアクタにヘキサン中2.5M nBuLi溶液62mL、および無水ヘキサン約500mLをロードした。リアクタの内容物を0℃に冷却し、激しく撹拌しながら、ピペラジン6.94gを溶液に添加した。その後、反応混合物を室温で1時間撹拌し、次いで再び0℃に冷却した。無水ヘキサン約200mL中SnCl 10.0gを反応混合物に滴下添加した。反応フラスコの内容物を室温まで温め、一晩撹拌したままにした。翌日、濾過によりLiCl塩を反応混合物から分離した。減圧蒸留により濾液から溶媒を除去した。生成物を減圧下での蒸留により精製した。
【実施例0099】
実施例15:Sn(MeNCHCHCHNMe)の合成
不活性雰囲気下で、1Lのリアクタにヘキサン中2.5M nBuLi溶液62mL、および無水ヘキサン約500mLをロードした。リアクタの内容物を0℃に冷却し、激しく撹拌しながら、NHMeCHCHCHNHMe 8.24gを溶液に添加した。その後、反応混合物を室温で1時間撹拌し、次いで再び0℃に冷却した。無水ヘキサン約200mL中SnCl 10.0gを反応混合物に滴下添加した。反応フラスコの内容物を室温まで温め、一晩撹拌したままにした。翌日、濾過によりLiCl塩を反応混合物から分離した。減圧蒸留により濾液から溶媒を除去した。生成物を減圧下での蒸留により精製した。
【実施例0100】
実施例16:Sn(MeNCHCHO)の合成
不活性雰囲気下で、1Lのリアクタにヘキサン中2.5M nBuLi溶液62mL、および無水ヘキサン約500mLをロードした。リアクタの内容物を0℃に冷却し、激しく撹拌しながら、NHMeCHCHOH 6.05gを溶液に添加した。その後、反応混合物を室温で1時間撹拌し、次いで再び0℃に冷却した。無水ヘキサン約200mL中SnCl 10.0gを反応混合物に滴下添加した。反応フラスコの内容物を室温まで温め、一晩撹拌したままにした。翌日、濾過によりLiCl塩を反応混合物から分離した。減圧蒸留により濾液から溶媒を除去した。生成物を減圧下での蒸留により精製した。
【実施例0101】
実施例17:反応性試験
Sn(NMeEt)に水を添加する。即座に発熱反応が起こり、白いSnO固体が形成された。
【0102】
さらなる試験では、メタノールをSn(NMeEt)に添加した。これもまた、即座に発熱反応を引き起こした。図8は、MeOH添加前後のSn(NMeEt)H NMRスペクトルを示す。図8に示すように、最終生成物はHNMeEtの放出、および出発材料の完全な消費を示している。
【実施例0103】
実施例18:熱安定性試験
Sn(NMeEt)の熱安定性試験を、60℃、100℃、および125℃の一定温
度で数週間貯蔵されたステンレス鋼アンプルで実施した。NMRを実行して、何らかの熱分解があったかどうかを確認した。目視検査も使用し、貯蔵後に固体形成を探した。
【0104】
Sn(NMeEt)は60℃で安定したままであった。詳細には、図9は、HNMeEtの質量%と比較したSn(NMeEt)の質量%を示して、60℃の貯蔵温度におけるSn(NMeEt)の安定性を示している。図10は、0、4、および9週における60℃でのSn(NMeEt)サンプルのH NMRスペクトルを示している。
【0105】
Sn(NMeEt)は、100℃でほとんど分解していなかった。詳細には、図11は、HNMeEtの質量%と比較したSn(NMeEt)の質量%を示して、100℃の貯蔵温度におけるSn(NMeEt)の安定性を示している。図12は、0、4、および9週における100℃でのSn(NMeEt)サンプルのH NMRスペクトルを示している。
【0106】
Sn(NMeEt)は、100℃で2週間後に完全に分解した。詳細には、図13は、0、1、および2週における125℃でのSn(NMeEt)サンプルのH NMRスペクトルを示している。
【0107】
また、より高い蒸気圧により、CVD/ALDチャンバへの蒸気送達のための、化学物質の加熱を最小限に抑えることが可能となる。揮発性の低い材料では、チャンバへの物理的送達に望ましい蒸気圧に到達させるために、より高温に加熱する。温度が上昇すると、熱分解の可能性が高くなる。どの前駆体の目的も、材料の熱分解を誘発することなく、十分に高い蒸気圧で送達することである。図1は、酸化スズ膜を形成するのに使用可能ないくつかの化合物のさまざまな蒸気圧を示している。
【0108】
また、貯蔵中に単一の反応化合物を安定に保つことは困難であることが見出された。詳細には、酸化スズ膜を堆積するために使用される反応化合物は、時間の経過と共に不均化することが見出されている。そのような化合物における二量体形成を阻止するため、添加剤が見出された。詳細には、式IV:Sn(NR で表される化合物から選択される第2の有機金属化合物は、酸化スズ膜を堆積するために使用されるスズ化合物の二量体形成を阻止する能力をもたらすことが見出されている。式IVに含まれる特定の化合物において、各R基は、1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択される。
【0109】
式IVの化合物は、各R基が、独立して選択された、1~10個の炭素原子を有するアルキル基である化合物を含む。各R基は、独立して選択された、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり得ることが企図される。特に、各R基は、独立して選択された、1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。より詳細には、各R基は、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、tert-ブチル、イソ-ブチルおよびn-ブチルからなる群から独立して選択される。また、一部の化合物では、各R基は、異なるアルキル、アシル、またはアリール基、特に異なるアルキル基を表す場合がある。
【0110】
式IVの特定の有機金属化合物は、以下:Sn(NMe、Sn(NEt、およびSn(NMeEt)を含む。
【0111】
式IVの第2の有機金属化合物の添加により有益を得る可能性のある有機金属化合物には、式III:R Sn(NR
(式中、
各R基は、1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
各R’基は、1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択される)
で表される化合物が含まれる。
【0112】
式Iの化合物は、各R基および各R’基が、独立して選択された、1~10個の炭素原子を有するアルキル基である化合物を含む。各R基および各R’基は、独立して選択された、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり得ることが企図される。特に、各R基および各R’基は、独立して選択された、1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。より詳細には、各R基および各R’基は、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、tert-ブチル、イソ-ブチルおよびn-ブチルからなる群から独立して選択される。また、一部の化合物では、各R基および各R’基は、異なるアルキル、アシル、またはアリール基、特に異なるアルキル基を表す場合がある。
【実施例0113】
実施例19:不均化試験
Sn(NMe含有または非含有MeSn(NEtMe)の不均化安定性試験を、70℃の一定温度で数日間貯蔵されたステンレス鋼容器で実施した。NMRを実行して、貯蔵中のさまざまな時点でのMeSn(NEtMe)の質量%を決定して、何らかの不均化があったかどうかを確認した。比較のために、MeSn(NEtMe)を1つの容器に単独で貯蔵し、10mol%のSn(NMe2)4を添加したMeSn(NEtMe)を別の容器に貯蔵した。図2は、MeSn(NMe単独、対Sn(NMeとの混合物中のMeSn(NMeの不均化率を示すグラフである。
【0114】
試験の結果により、図6に示すように、Sn(NMeが添加された場合は不均化がほとんど阻止され、貯蔵安定性が実質的に改善したことが示されている。
【0115】
場合によっては、堆積した酸化スズ膜のエッチングが所望される。さらに、上記のように、酸化スズ膜を形成するために使用される堆積チャンバを洗浄する必要があるが、これは、リアクタチャンバの内面に形成された酸化スズ膜を除去することを含む。基板上に形成された酸化スズ膜をエッチングするため、およびリアクタチャンバ内面から不要な酸化スズ膜を除去するための両方に、ドライエッチング方法を使用することが望ましい。しかしながら、上に列挙された理由により、酸化スズのドライエッチングは困難であることが判明している。しかしながら、本明細書に開示されるドライエッチング方法により、これらの問題が解決される。ドライエッチング方法の例示的な実施形態を以下に示す。
【0116】
使用において、ドライエッチング方法は、リアクタチャンバ全体を、100℃を超える、例えば100℃~900℃の間の高温に加熱すること、およびリアクタチャンバに連結されたガス源からエッチャントガスを供給することを含む。より詳細には、石英CVD/ALD炉での熱エッチングの実施形態では、高温は400℃~900℃の間であり、一方、アルミニウム、ステンレス鋼、またはセラミックALDチャンバでのプラズマエッチングの実施形態では、高温は100℃~400℃の間である。エッチャントガスは、生成された任意の反応生成物と一緒に排気されてガス排気ラインからポンプで吸い出される前に、リアクタチャンバを流通する。リアクタチャンバ内のガス圧は、通常、0.1mBar~1,000mBar(大気圧)の間に維持されるが、ドライエッチングサイクル中は1,500mBarまで高くなる可能性がある。
【0117】
実施形態において、フリーラジカルの生成を増進するため、およびそれによってエッチング方法を増進するために、エッチャントガスが活性化される。活性化は、熱活性化、紫外線(UV)励起、またはプラズマ放電によって実現することができる。エッチャントガ
スは活性化チャンバに入る。活性化チャンバ内において、大量のガスが、ヒーター(熱活性化)、UVランプ(UV活性化)、または電離RF電界(プラズマ活性化)などの活性化エネルギー源に曝露される。熱活性化は、MOVPE(金属有機気相成長)反応器の加熱によって行うことができる。または、反応器への注入前に、エッチャントガスを加熱チャンバ内で予熱することができる。UVまたはプラズマ放電活性化の場合、エッチャントガスは、反応器への注入前に、UV光または高周波プラズマ放電への曝露によって活性化チャンバ内で活性化される。活性化ガスは、排出口を通って活性化チャンバを出て、MOCVD(金属有機化学蒸着)リアクタチャンバに入る。
【0118】
エッチャントガスは、一般式AOX(式中、Aは、C、N、またはSであり、Oは酸素であり、各Xはハロゲンから独立して選択される)のものである。例えば、エッチャントガスは、ハロゲン(すなわち、塩素、臭素、またはヨウ素(Cl、Br、またはI))と組み合わされたカルボニル、チオニル、またはニトロシル基(CO、SO、またはNO)を含み得る。COCl、COBr、COI、SOI、SOCl、SOBr、SOCl、SOBr、NOCl、NOBr、NOI、SOClBr、SOClF、およびSOFBrは、好適なエッチャントガスの例である。エッチャントガスは、ニート材料に由来してもよく、または代替的にCl、Br、またはIと混合されたCO、SO、SO、またはNOなどの別個の構成成分の組合せによって生成してもよい。エッチャントガスは、アルゴン、窒素、または水素などのキャリアガスと混合してもよい。ガス状態で利用可能なエッチャント成分の場合、エッチャントガスまたはその構成成分は、1つまたは複数のガスボンベから直接供給してもよい。通常液体状態であるエッチャントガス成分の場合、必要なガス状態は、液体エッチャント構成成分を含有する容器にキャリアガスを吹き込んで、液体成分をエッチャントへと揮発させ、それによってキャリアガスとエッチャント蒸気との混合物を生成することによって達成することができる。あるいは、液体化学成分を気化するまで加熱し、その時点で、必要に応じて蒸気をキャリアガスと組み合わせ、リアクタチャンバに導入してもよい。エッチャントガスは、エッチングを増進するために付加的な量のハロゲンを含有し得る。エッチャントガスは、エッチングを増進するために、付加的な量のハロゲン化メチル、ハロゲン化水素、または他のハロゲン化合物を含有し得る。
【0119】
反応チャンバ内で、エッチャントガスが金属含有堆積物と反応して揮発性金属ハロゲン化物が形成されるが、これはエッチャントガスのパージによって除去される。典型的な反応は、カルボニル/チオニル/ニトロシル基と結合する残留酸素と共に金属ハロゲン化物を形成する、金属酸化物のパージガスとの反応を含む。例えば:
Ga+3SOBr→2GaBr+3SO
2Ga+6SOBrCl→GaClBr+GaBrCl+GaCl+GaBr+6SO
Ga+3NOBr→GaBr+3NO
SnO+2SOCl→SnCl+2SO
他の金属含有堆積物も反応して金属ハロゲン化物を形成する。酸化物は、酸素に対する金属の強い親和性のために除去するのが最も困難な堆積物の例として挙げられる。
【0120】
金属ハロゲン化物が形成されると、反応チャンバから除去する必要がある。除去するための1つの方法は、リアクタチャンバからの除去のためにするチャンバ内を減圧してハロゲン化物を移動させることである。単独で、またはチャンバ内の減圧と組み合わせて使用することができる別の選択肢は、ハロゲン化物を蒸発または昇華させるのに十分な温度にチャンバを加熱することである。
【0121】
酸化スズおよび他の除去が困難な金属酸化物を除去するためのエッチャントガスとして、COClが特に有用であり得ることが発見された。ただし、ホスゲンガス(COCl
)は桁外れに危険な神経剤である。したがって、SOClまたはNOClの、COまたはCOとのガス混合物を添加することにより、COClに伴う化学的危険性なしに、COClと同様のエッチング機能を達成することができると判断した。
【0122】
さらなる実施形態において、エッチャントガスは、エッチング速度、エッチング選択性、または副生成物の存続期間を向上させるための添加剤を含む。そのような添加剤は、炭素または水素含有ガス、例えば、一般式C(式中、x、y、zは、0~10の数である)のガスを含み得る。
【0123】
さらなる実施形態において、エッチャントガスはまた、エッチング速度、エッチング選択性、または副生成物の存続期間を向上させるための希釈添加剤または担体も含有し得る。そのような添加剤は、N、Ar、He、Neなどの比較的不活性なガスを含み得る。
【0124】
本明細書に開示される方法により、SnO、ならびに石英、酸化物、セラミック、アルミニウムおよび他の材料に対し選択性のある他の金属酸化物の、低温におけるエッチングが可能となる。
【0125】
さらに、開示されるエッチャントガスを使用する、本明細書に開示される方法により、水素含有分子によって生じる副生成物よりも揮発性の高い反応副生成物が形成され、したがって、反応副生成物は、チャンバ壁に再堆積する前に、チャンバからより容易に排出することができる。
【0126】
以下の実施例で示されるように、本明細書に開示される方法はまた、エッチャントとしてClを利用する方法と比較して腐食性が低く、アルミニウム表面を腐食しない。
【実施例0127】
実施例20
アルミニウム、アルマイト、およびViton試験片を60℃でSOCl 1.5gに浸した。2週間後に変化の兆候は見られなかった。若干の褐色固体がアルミニウム試験片に緩く付着していたが、アルミニウム表面自体は影響を受けておらず、最初の数日以降、さらなる固体は観察されなかった。これとは別に、上記と同一の3つの試験片を、液体塩素3gを含むステンレス鋼アンプルに密封し、60℃で2日間保持した。アルマイトにはほとんど変化は観察されなかった。しかし、アルミニウムはごくわずかしか残っていなかった。アルミニウムは実質的に、黄色ががったベージュの固体へと変換された。Vitonは引張強度が大幅に低下し、黄色ががったベージュの固体の塊から引き抜くと簡単に2つに分かれた。上記の結果の写真を図3に示す。
【実施例0128】
実施例21:26℃および75℃でのSnOエッチング速度に対する電力の影響
Si上にSnOの露出層を有する基板のエッチングを行った。基板は50℃および330Åで準備された。26℃での実施の各々は、60秒のエッチング時間を有したが、75℃での実施の各々は、30秒のエッチング時間を有した。実施の各々は、2sccm(蒸気引出し(vapor draw))の流量、350mTorr(0.467mBar)に設定した圧力を含んだ。実施における電力(W)に対するエッチング速度(Å/分)のグラフを図4に示す。また、図5は、温度が26℃である実施のみにおける電力(W)に対するエッチング速度(Å/分)のグラフである。
【0129】
結果が示すように、SnOのエッチング速度は電力により指数関数的に増加する。周囲温度でのエッチング速度の増加に対する電力の影響は、SnOとSiOとの間で同様である。しかしながら、75℃および100WでSiOのエッチングは見られなかっ
た。さらに、低圧350mTorr(0.467mBar)で26℃でのSnOエッチングの選択性は約13:1であるが、1Torr(1.333mBar)では3:1である。
【実施例0130】
実施例22:300Wおよび26℃でのSnO膜のエッチング速度
Si上にSnOの露出層を有する基板のエッチングを行った。基板は50℃および330Åで準備された。実施の各々は、26℃の温度、2sccm(蒸気引出し)の流量、350mTorr(0.467mBar)に設定したの圧力、および300Wの電力をんだ。実施間で実施時間のみ異なり、以下の表1に、結果として得られたさまざまなエッチング速度を示す。
【0131】
【表1】
【実施例0132】
実施例23:26℃でのSnOエッチング速度に対する電力の影響
Si上にSnOの露出層を有する基板のエッチングを行った。基板は50℃および330Åで準備された。実施の各々は、26℃の温度、2sccm(蒸気引出し)の流量、350mTorr(0.467mBar)に設定したの圧力、および60秒のエッチング時間を含んだ。実施間で実施時間のみ異なり、以下の表2に、結果として得られたさまざまなエッチング速度を示す。
【0133】
【表2】
【実施例0134】
実施例24:75℃でのSnOエッチング速度に対する電力の影響
Si上にSnOの露出層を有する基板のエッチングを行った。基板は50℃および330Åで準備された。実施の各々は、75℃の温度、2sccm(蒸気引出し)の流量、350mTorr(0.467mBar)に設定したの圧力、おゆおよび30秒のエッチング時間を含んだ。実施間で実施時間のみ異なり、以下の表3に、結果として得られたさまざまなエッチング速度を示す。
【0135】
【表3】
【実施例0136】
実施例25:SnOエッチング速度に対する温度の影響
Si上にSnOの露出層を有する基板のエッチングを行った。基板は50℃および330Åで準備された。実施の各々は、2sccm(蒸気引出し)の流量、350mTorr(0.467mBar)に設定したの圧力、30秒のエッチング時間、および200Wの電力を含んだ。実施間で実施時間のみ異なり、以下の表4に、結果として得られたさまざまなエッチング速度を示す。
【0137】
【表4】
【0138】
多段蒸留
加水分解反応を介して分子から配位子を取り除くために必要な活性化エネルギーの理論モデリングから、分子間において広い範囲の活性化エネルギーが観察される。したがって、反応性の違いが観察される。これにより、活性化エネルギーが低い場合、分子がSnOの形成に対して反応性の高い分子である可能性が示されるが、この値はまた、分子が合成および精製プロセス中に分解および反応しやすい可能性があることも示している。したがって、式IおよびIIの範囲内である純粋な化合物を得ることのは困難であり、特に、95%を超える、さらには99%を超えるアッセイ純度を得るのは困難であろう。
【0139】
ただし、多段真空蒸留を使用すると、式IまたはIIの範囲の化合物について、95%を超える、さらには99%を超えるアッセイ純度を得ることができる。化学製造業界ではさまざまな形態の多段蒸留が知られているが、式IまたはIIの化合物を含む有機金属材料の精製には用いられていない。
【0140】
図14に示す概略図により示されているように、多重効用または多段蒸留(MED)は、海水淡水化によく使用される蒸留プロセスである。プロセスは、複数の段階または「効用」で構成されている。(図14の概略図では、第1の段階が上部にある。各段階の上部領域は蒸気であり、各段階の下部領域は液体供給材料である。図の左側に沿ってVCの下部にあるパイプを流通する材料は、凝縮液である。第1の段階以外の段階へ、供給材料がどのように入るのかは示されていないが、その方法は容易に理解されるべきである。F-供給。S-加熱蒸気の送入。C-加熱蒸気の送出。W-精製された材料(凝縮液)の送出。R-廃棄材料の送出。O-冷媒の送入。P-冷媒の送出。VCは最終段階の冷却器である。)各段階で、供給材料はチューブ内の蒸気によって加熱される。供給材料の一部が蒸発し、この蒸気が次の段階のチューブに流れ込み、より多くの留出物を加熱し、蒸発させる。各段階では、基本的に前段階のエネルギーを再利用する。
【0141】
設備は、一方の端に熱源があり、もう一方の端にヒートシンクがある、チューブ壁で区切られた一連の閉じた空間として見ることができる。各空間は、真空によって大気圧より低い圧力となっている。各空間は、段階nのチューブの外側、および段階n+1のチューブの内側という2つの連通部分空間で構成される。各空間は、前の空間よりも低い温度および圧力を有しは、チューブ壁は、両側の流体における温度の中間の温度になっている。空間内の圧力は、両側の部分空間の壁の温度と平衡状態にすることはできず、中間の圧力となる。その結果、第1の部分空間の圧力が低すぎるか、温度が高すぎるため、供給材料が蒸発する。第2の部分空間では、圧力が高すぎるか、温度が低すぎるため、蒸気が凝縮
する。これにより、より温かい第1の部分空間からより冷たい第2の部分空間へと蒸発エネルギーが伝わる。第2の部分空間では、エネルギーは伝導によりチューブ壁を介してより冷たい次の空間へと流れる。
【0142】
好ましい実施形態に関連して説明されているが、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、詳細に説明されていない追加、削除、修正、および置換を行うことができることが当業者によって理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2024-09-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアクタチャンバの内面からまたは前記リアクタチャンバ内の基板から酸化スズ堆積物を除去するための方法であって、
酸化スズ堆積物を含む前記リアクタチャンバに、エッチャントガスを導入する工程であり、前記エッチャントガスが、一般式A
(式中、
は、C、N、およびSからなる群から選択され、
Oは酸素であり、
各Xは、ハロゲンからなる群から独立して選択され、
下付き文字およびはゼロより大きい)
の化合物である、工程、
前記導入の前または後のいずれかで、前記エッチャントガスを活性化する工程、
前記活性化されたエッチャントガスと前記酸化スズ堆積物との間でエッチング反応を進行させる工程、ならびに
前記エッチング反応のガス状生成物と一緒に前記エッチャントガスを排気する工程
を含む、方法。
【請求項2】
リアクタチャンバの内面からまたは前記リアクタチャンバ内の基板から堆積物を除去するための方法であって、
前記リアクタチャンバに、エッチャントガス、および添加剤を導入する工程であり、前記エッチャントガスが、一般式A
(式中、
はNおよびSからなる群から選択され、
Oは酸素であり、
各Xは、ハロゲンからなる群から独立して選択され、
下付き文字およびは1および2からなる)
の化合物であり、前記添加剤が、一般式COまたはCOである、工程、
前記導入の前または後のいずれかで、前記エッチャントガスを活性化する工程、
前記活性化されたエッチャントガスと前記堆積物との間でエッチング反応を進行させる工程、ならびに
前記エッチング反応のガス状生成物と一緒に前記エッチャントガスを排気する工程
を含む、方法。
【請求項3】
Xが2つの異なるハロゲンの組合せを表す、請求項またはに記載の方法。
【請求項4】
前記エッチャントガスの前記チャンバへの前記導入前に、液体化学成分にキャリアガスを吹き込んで、前記液体化学成分を前記エッチャントへと揮発させる工程をさらに含む、請求項からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記エッチャントガスが、2種以上の化学成分ガスを混合することによって生成される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記エッチャントガスが、前記チャンバへの導入前に、ガス活性化チャンバ内の活性化機構に曝露することによって活性化され、前記ガス活性化機構が、熱、紫外線およびプラズマ放電からなる群から選択される、請求項からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記エッチャントガスが、前記チャンバへの導入後、熱活性化機構に曝露することによって活性化され、前記熱活性化機構が、前記チャンバ内の全体的な温度、および前記チャンバ内の局所熱源からなる群から選択される、請求項からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記エッチャントガスが塩化チオニル(SOCl)である、請求項からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ハロゲン含有添加剤が、前記エッチャントガスを含むガス状混合物に添加される、請求項からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ハロゲン含有添加剤が、ハロゲン、または一般式RY(式中、RはHおよびMeからなる群から選択され、YはF、Cl、Br、およびIからなる群から選択されるハロゲンである)の化合物である、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記ハロゲンがClまたはBrを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
希釈添加剤が、前記エッチャントガスを含むガス状混合物に添加される、請求項から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記希釈添加剤が、N2、Ar、He、またはNeを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記リアクタチャンバを少なくとも100℃、好ましくは100℃~900℃の間、より好ましくは100℃~400℃の間の温度に加熱する工程をさらに含む、請求項から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記リアクタチャンバに、0.1mBar~1,500mBarの間、好ましくは0.1mBar~1,000mBarの間の圧力を加える工程をさらに含む、請求項から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
式II:
Sn(NR(CH 式II
(式中、
各Aは、NR2’またはOから独立して選択され、
各R基は、水素および1~10個の炭素原子を有するアルキル基およびアリール基からなる群から独立して選択され、
各R2’基は、水素および1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアシル基およびアリール基からなる群から独立して選択され、
nは2または3であり、
場合により、NR(CHNR2’は環状構造を形成し、
場合により、(CH)のうちの少なくとも1つは、1~10個の炭素原子を有するアルキル基による1つまたは複数の置換を有する)
の有機金属化合物。
【請求項17】
各AがOであり、式IIが式IIa:Sn(NR(CHO)で表される、請求項16に記載の有機金属化合物。
【請求項18】
各R基が、1~4個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から独立して選択される、請求項17に記載の有機金属化合物。
【請求項19】
CHのうちの少なくとも1つが、1~10個の炭素原子を有するアルキル基による1つまたは複数の置換を有する、請求項16に記載の有機金属化合物。
【請求項20】
各アミン中のCHのうちの1つのみが、1~10個の炭素原子を有するアルキル基による1つまたは複数の置換を有する、請求項19に記載の有機金属化合物。
【請求項21】
各アミン中の前記CHのうちの前記1つのみが、メチルまたはエチルによる2つの置換を有する、請求項20に記載の有機金属化合物。
【請求項22】
各AがNであり、式IIが式IIb:
【化1】

(式中、各R2’’基および各R2’’’基は、独立して選択された、1~10個の炭素原子を有するアルキル基である)
で表される、請求項16および19から21のいずれか1項に記載の有機金属化合物。
【請求項23】
各R2’’基および各R2’’’基がメチルまたはエチルである、請求項22に記載の有機金属化合物。
【請求項24】
各R基および各R2’基が、1~4個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から独立して選択される、請求項19から23のいずれか1項に記載の有機金属化合物。
【請求項25】
各R基および各R2’基が水素である、請求項19から23のいずれか1項に記載の有機金属化合物。
【請求項26】
各NR(CHNR2’が環状構造を形成する、請求項16に記載の有機金属化合物。
【請求項27】
式IIが式IIc:
【化2】
で表される、請求項26に記載の有機金属化合物。
【請求項28】
各(NR(CH)が、N,N’-ジメチルエチレンジアミン(NMe(CHNMe)、ピペラジン(N)、N,N’-ジエチルエチレンジアミン(NEt(CHNEt)、N,N’-ジイソプロピルエチレンジアミン(NiPr(CHNiPr)、N,N’-ジ-tert-ブチルエチレンジアミン(NtBu(CHNtBu)、N,N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(NMe(CHNMe)、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(NH(CH)(C(CH))(CH)NH)、2-(メチルアミノ)エタノール(NMe(CHO)、および2-(エチルアミノ)エタノール(NEt(CHO)からなる群から選択される、請求項16に記載の有機金属化合物。
【請求項29】
式I:
Sn(NR3’ 式I
(式中、
各R基は、1~10個の炭素原子を有するアルキル基およびアリール基からなる群から独立して選択され、
各R3’基は、1~10個の炭素原子を有するアルキル基およびアリール基からなる群から独立して選択される)
で表される第1の有機金属化合物、および
式II:
Sn(NR 式II
(式中、各R基は、1~10個の炭素原子を有するアルキル基およびアリール基からなる群から独立して選択される)
で表される第2の有機金属化合物を含む、組成物。
【請求項30】
前記R3’基および前記R基が同じである、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
各R基が、1~4個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から独立して選択される、請求項29または30に記載の組成物。
【請求項32】
各R3’基および各R基が、1~4個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から独立して選択される、請求項29から31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
前記第2の有機金属化合物が、Sn(NMe、Sn(NEt、およびSn(NMeEt)からなる群から選択される、請求項29から32のいずれか1項に記載の組成物。
【外国語明細書】