(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178223
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】高純度酸化スズの堆積用の有機金属化合物ならびに酸化スズ膜のドライエッチングおよび堆積リアクタ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20241217BHJP
C07F 7/22 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H01L21/302 101H
C07F7/22 M
C07F7/22 S
H01L21/302 105Z
【審査請求】有
【請求項の数】33
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024156660
(22)【出願日】2024-09-10
(62)【分割の表示】P 2022513246の分割
【原出願日】2020-08-28
(31)【優先権主張番号】10201907997R
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(31)【優先権主張番号】16/575,605
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518282923
【氏名又は名称】シースター ケミカルズ ユーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファバルヤク,ダイアナ
(72)【発明者】
【氏名】オデドラ,ラジェシュ
(72)【発明者】
【氏名】グラフ,ウェスリー・フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】センベラ,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】コノバー,キャシディ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リアクタチャンバの内面からまたはリアクタチャンバ内の基板から酸化スズ堆積物を除去するための方法を提供する。
【解決手段】方法は、酸化スズ堆積物を含む前記リアクタチャンバに、エッチャントガスを導入する工程を含む。エッチャントガスは、一般式A3OmXn(式中、A3は、C、N、およびSからなる群から選択され、Oは酸素であり、各Xは、ハロゲンからなる群から独立して選択され、下付き文字mおよびnはゼロより大きい)の化合物である。方法はまた、導入の前又は後のいずれかで、エッチャントガスを活性化する工程と、活性化されたエッチャントガスと酸化スズ堆積物との間でエッチング反応を進行させる工程と、エッチング反応のガス状生成物と一緒にエッチャントガスを排気する工程と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
Qx-Sn-(A1R1’z)4-x 式I
(式中、
QはOR1またはCpであり、
各R1基は、1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
各R1’基は、1~10個の炭素原子を有するアルキル、アシルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
xは1~4の整数であり、
xが0の場合、A1はOであり、xが1~3の整数の場合、A1はNであり、
A1がOの場合、zは1であり、A1がNの場合、zは2である)
の有機金属化合物。
【請求項2】
xが1~3の整数である、請求項1に記載の有機金属化合物。
【請求項3】
QがOR1である、請求項1または2に記載の有機金属化合物。
【請求項4】
QがCpである、請求項1または2に記載の有機金属化合物。
【請求項5】
xが1である、請求項4に記載の有機金属化合物。
【請求項6】
各R1’基が、1~4個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から独立して選択される、請求項1から5のいずれか1項に記載の有機金属化合物。
【請求項7】
各R1’基がMeである、請求項1から6のいずれか1項に記載の有機金属化合物。
【請求項8】
zが2の場合、各R1’が、2つの異なるアルキル、アシル、またはアリール基の組合せを表す、請求項1から7のいずれか1項に記載の有機金属化合物。
【請求項9】
xが4である、請求項1に記載の有機金属化合物。
【請求項10】
各R1基が、1~4個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から独立して選択される、請求項1から3および6から9のいずれか1項に記載の有機金属化合物。
【請求項11】
少なくとも1つのR1基がMeである、請求項1から3および6から10のいずれか1項に記載の有機金属化合物。
【請求項12】
(MeO)2Sn(NMe2)2、(MeO)2Sn(NEtMe)2、(MeO)3Sn(NMe2)、(MeO)3Sn(NEtMe)、Sn(OMe)4、CpSn(NMeEt)3、およびCpSn(NMe2)3からなる群から選択される、請求項1に記載の有機金属化合物。
【請求項13】
式II:
Sn(NR2(CH2)nA2)2 式II
(式中、
各A2は、NR2’またはOから独立して選択され、
各R2基は、水素および1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
各R2’基は、水素および1~10個の炭素原子を有するアルキル、アシルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
nは2または3であり、
場合により、NR2(CH2)nNR2’は環状構造を形成し、
場合により、(CH2)のうちの少なくとも1つは、1~10個の炭素原子を有するアルキル基による1つまたは複数の置換を有する)
の有機金属化合物。
【請求項14】
各A2がOであり、式IIが式IIa:Sn(NR2(CH2)nO)2で表される、請求項13に記載の有機金属化合物。
【請求項15】
各R2基が、1~4個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から独立して選択される、請求項14に記載の有機金属化合物。
【請求項16】
CH2のうちの少なくとも1つが、1~10個の炭素原子を有するアルキル基による1つまたは複数の置換を有する、請求項13に記載の有機金属化合物。
【請求項17】
各アミン中のCH2のうちの1つのみが、1~10個の炭素原子を有するアルキル基による1つまたは複数の置換を有する、請求項16に記載の有機金属化合物。
【請求項18】
各アミン中の前記CH2のうちの前記1つが、メチルまたはエチルによる2つの置換を有する、請求項17に記載の有機金属化合物。
【請求項19】
各A
2がNであり、式IIが式IIb:
【化1】
(式中、各R
2’’基および各R
2’’’基は、独立して選択された、1~10個の炭素原子を有するアルキル基である)
で表される、請求項13および16から18のいずれか1項に記載の有機金属化合物。
【請求項20】
各R2’’基および各R2’’’基がメチルまたはエチルである、請求項19に記載の有機金属化合物。
【請求項21】
各R2基および各R2’基が、1~4個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から独立して選択される、請求項16から20のいずれか1項に記載の有機金属化合物。
【請求項22】
各R2基および各R2’基が水素である、請求項16から20のいずれか1項に記載の有機金属化合物。
【請求項23】
各NR2(CH2)nNR2’が環状構造を形成する、請求項13に記載の有機金属化合物。
【請求項24】
式IIが式IIc:
【化2】
で表される、請求項23に記載の有機金属化合物。
【請求項25】
各(NR2(CH2)nA2)が、N,N’-ジメチルエチレンジアミン(NMe(CH2)2NMe)、ピペラジン(N2C4H8)、N,N’-ジエチルエチレンジアミン(NEt(CH2)2NEt)、N,N’-ジイソプロピルエチレンジアミン(NiPr(CH2)2NiPr)、N,N’-ジ-tert-ブチルエチレンジアミン(NtBu(CH2)2NtBu)、N,N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(NMe(CH2)3NMe)、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(NH(CH2)(C(CH3))(CH2)NH)、2-(メチルアミノ)エタノール(NMe(CH2)2O)、および2-(エチルアミノ)エタノール(NEt(CH2)2O)からなる群から選択される、請求項13に記載の有機金属化合物。
【請求項26】
式I:
R3
2Sn(NR3’2)2 式I
(式中、
各R3基は、1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
各R3’基は、1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択される)
で表される第1の有機金属化合物、および
式II:
Sn(NR4
2)4 式II
(式中、各R4基は、1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択される)
で表される第2の有機金属化合物を含む、組成物。
【請求項27】
前記R3’基および前記R4基が同じである、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
各R3基が、1~4個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から独立して選択される、請求項26または27に記載の組成物。
【請求項29】
各R3’基および各R4基が、1~4個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から独立して選択される、請求項26から28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
前記第2の有機金属化合物が、Sn(NMe2)4、Sn(NEt2)4、およびSn(NMeEt)4からなる群から選択される、請求項26から29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
リアクタチャンバの内面からまたは前記リアクタチャンバ内の基板から酸化スズ堆積物を除去するための方法であって、
酸化スズ堆積物を含む前記リアクタチャンバに、エッチャントガスを導入する工程であり、前記エッチャントガスが、一般式A3OmXn
(式中、
A3は、C、N、およびSからなる群から選択され、
Oは酸素であり、
各Xは、ハロゲンからなる群から独立して選択され、
下付き文字mおよびnはゼロより大きい)
の化合物である、工程、
前記導入の前または後のいずれかで、前記エッチャントガスを活性化する工程、
前記活性化されたエッチャントガスと前記酸化スズ堆積物との間でエッチング反応を進行させる工程、ならびに
前記エッチング反応のガス状生成物と一緒に前記エッチャントガスを排気する工程
を含む、方法。
【請求項32】
リアクタチャンバの内面からまたは前記リアクタチャンバ内の基板から堆積物を除去するための方法であって、
前記リアクタチャンバに、エッチャントガス、および添加剤を導入する工程であり、前記エッチャントガスが、一般式A3OmXn
(式中、
A3はNおよびSからなる群から選択され、
Oは酸素であり、
各Xは、ハロゲンからなる群から独立して選択され、
下付き文字mおよびnはゼロより大きい)
の化合物であり、前記添加剤が、一般式CxHyOz(式中、下付き文字xおよびzはゼロより大きい)のものである、工程、
前記導入の前または後のいずれかで、前記エッチャントガスを活性化する工程、
前記活性化されたエッチャントガスと前記堆積物との間でエッチング反応を進行させる工程、ならびに
前記エッチング反応のガス状生成物と一緒に前記エッチャントガスを排気する工程
を含む、方法。
【請求項33】
Xが2つの異なるハロゲンの組合せを表す、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記チャンバへの前記導入前に前記エッチャントガスを生成する工程をさらに含む、請求項31から33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記エッチャントガスの前記チャンバへの前記導入前に、液体化学成分にキャリアガスを吹き込んで、前記液体化学成分を前記エッチャントへと揮発させる工程をさらに含む、請求項31から34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記エッチャントガスが、複数の液体化学成分にキャリアガスを吹き込み、次いで、得られたガスを組み合わせることによって生成される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記エッチャントガスが、2種以上の化学成分ガスを混合することによって生成される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記エッチャントガスが、前記チャンバへの導入前に、ガス活性化チャンバ内の活性化機構に曝露することによって活性化され、前記ガス活性化機構が、熱、紫外線およびプラズマ放電からなる群から選択される、請求項31から37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記エッチャントガスが、前記チャンバへの導入後、熱活性化機構に曝露することによって活性化され、前記熱活性化機構が、前記チャンバ内の全体的な温度、および前記チャンバ内の局所熱源からなる群から選択される、請求項31から38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記エッチャントガスが塩化チオニル(SOCl2)である、請求項31から39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記添加剤がCOまたはCO2である、請求項32から40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
ハロゲン含有添加剤が、前記エッチャントガスを含むガス状混合物に添加される、請求項31から41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記ハロゲン含有添加剤が、活性ハロゲン、または一般式RY(式中、RはHおよびMeからなる群から選択され、YはF、Cl、Br、およびIからなる群から選択されるハロゲンである)の化合物である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記活性ハロゲンがClまたはBrを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
希釈添加剤が、前記エッチャントガスを含むガス状混合物に添加される、請求項31から44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記希釈添加剤が、N、Ar、He、またはNeを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記リアクタチャンバを少なくとも100℃、好ましくは100℃~900℃の間、より好ましくは100℃~400℃の間の温度に加熱する工程をさらに含む、請求項31から46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記リアクタチャンバに、0.1mBar~1,500mBarの間、好ましくは0.1mBar~1,000mBarの間の圧力を加える工程をさらに含む、請求項31から47のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高純度酸化スズの堆積に有用な有機金属化合物、そのような高純度酸化スズ膜をドライエッチングするためのドライエッチング方法、および酸化スズ膜堆積法で使用される堆積リアクタに関する。より詳細には、本開示は、高純度酸化スズの堆積において有用な特定の化合物、および高純度酸化スズの堆積において有用な化合物の貯蔵中に、より良好な安定性をもたらす組成物について記載する。また、本開示は、特定のエッチャントガスで酸化スズをドライエッチングするための方法、および/または特定の添加剤と共に特定のエッチャントガスを使用して、基板をドライエッチングするための方法について記載する。
【背景技術】
【0002】
以下の「発明の背景」の説明では、ある特定の構造および/または方法が参照される。ただし、以下の参照は、これらの構造および/または方法が先行技術を構成することを認めるものとして解釈されるべきではない。出願人は、そのような構造および/または方法が先行技術として適格ではないことを実証する権利を明示的に留保する。
【0003】
半導体産業において、電子デバイスの加工中に酸化スズコンフォーマル膜がますます利用されている。そのような膜は、化学蒸着(CVD)または原子層堆積(ALD)を使用して作製することができる。
【0004】
所望の膜を得るために、堆積プロセス中に使用される反応化合物は、良好な反応性を示す一方、熱的に安定でなければならない。そのような特性により、分解を起こすことなく化合物の堆積チャンバへの送達が可能となる。分解により、堆積した膜が均一にならないか、または堆積した膜に他の欠陥が生じる。本発明の化合物が示す良好な安定性および反応性プロファイルはまた、成長チャンバに送達する必要のある材料が少なくなり(材料が少ないほど経済的である)、サイクルタイムが短くなる(プロセス終了時にチャンバに残り、ポンプ排出される材料が少なくなるため)ことを意味し、より厚い膜をより短時間で堆積することができるため、スループットが向上することを意味する。熱安定性はまた、合成後の材料の精製がはるかに容易になり、取り扱いが容易になることを意味する。
【0005】
所望の熱安定性および良好な反応性を有する化合物を発見するためのいくつかの試みがあったが、業界の増大する要件を満たすことができる、改善された熱安定性および/または反応性を有する化合物が依然として必要である。
【0006】
貯蔵中の反応化合物の安定性を確保したいという要望もある。酸化スズ膜を形成するために使用される多くの反応化合物は、不均化または重合することが知られている。これにより、堆積プロセスで使用する前に反応化合物を一定期間貯蔵すると問題が起こる可能性がある。したがって、不均化の影響を低減し、酸化スズ膜を形成するための堆積プロセスで使用される反応ガスの貯蔵安定性を高める必要がある。
【0007】
原子層堆積(ALD)システムでは、反応ガスを逐次的に導入して、所望の材料のコンフォーマル薄膜の自己制御成長を実現する。どちらの場合も、リアクタは使用されている化学物質と反応しない材料で作られたチャンバである。リアクタはまた、高温に耐える必要がある。このチャンバは、リアクタ壁、ライナー、台、ガス注入ユニット、および温度制御ユニットを備える。通常、リアクタ壁は、アルミニウム、ステンレス鋼、または石英で作られている。Al2O3、Y2O3などのセラミック、もしくは他の新規セラミック
、または石英などの特殊なガラスは、リアクタチャンバにおけるリアクタ壁と台との間のライナーとしてよく使用される。過熱を防ぐため、リアクタ壁内のチャネルに、水などの冷媒を流通させることができる。基板は、制御された温度に保たれている台の上にある。台は、使用されている金属有機化合物に耐性のある材料で作られており、グラファイトが使われる場合もある。
【0008】
薄膜堆積が実施されると、所望の表面だけでなく、台、壁、天井を含むMOCVDまたはALDリアクタのすべての内面にも膜が堆積される。洗浄せずにリアクタを使用する頻度が高いほど、堆積物は厚くなる。堆積物は最終的に剥離し始め、基板ウェーハ上に落下する可能性のある粒子が生成され、基板ウェーハが汚染され、結果として歩留まりが低下する。リアクタチャンバを流通する反応ガスもまた、堆積物によって汚染されている場合がある。これを回避するために、リアクタは定期的に清掃する必要がある。リアクタの構成および使用される材料によっては、効果的に洗浄するため、リアクタ部品の完全な取りはずしおよび湿式洗浄が必要になる場合があるが、これには時間がかかり、リアクタの効率が低下する。さらに、リアクタは通常、316Lおよび304ステンレス鋼、炭化ケイ素、グラファイト、タングステン、アルミニウム、熱分解窒化ホウ素、他のセラミック、ならびに/またはエチレンプロピレンジエン(EPDN)ポリマーなどの幅広い材料で構成される。さまざまな種類のエッチャントまたは他の洗浄剤を使用せずに、これらすべての種類の表面から堆積物を取り除くことは困難な場合がある。したがって、リアクタ内を洗浄するためのより単純でより効果的な手段が望まれている。
【0009】
さらに、薄膜製造方法は多くの場合、堆積後にエッチング工程を含む。チャンバ壁の堆積物の少なくともいくつかは、薄膜からエッチングされるものと同じ材料である。
【0010】
酸化スズ(SnO2)を含む単一ウェーハの作製のためのALDリアクタにより、反応チャンバのエッチングおよび洗浄において特定の問題が提示される。例えば、そのようなリアクタでは、チャンバ材料の劣化を引き起こし、材料ストレスを誘発する高温を必要とし、ALDチャンバの下地材料を腐食し、および/またはチャンバ壁を保護するためのチャンバシールドもしくは挿入物が必要となる、腐食性の高いClまたはBr系化学物質を使用する場合がある。酸化スズ用のALDリアクタを洗浄する場合、H2、CH4、または他の還元性化学物質を使用すると、より長いエッチング時間が必要になり、排気される前にリアクタ表面に凝縮する副生成物が存在する。CH4の使用により、Sn-O残留物よりも毒性が高いことが知られているMe-Sn-Oを含有する固体酸化スズが生じる可能性もある。酸化スズの場合の副生成物は低温分解しやすいため、-10~-30℃より低い温度制御が必要であり、ツールの構成が複雑になる。また、還元性雰囲気により、金属酸化物が金属に還元され得、次いで不動態化層として作用する可能性がある。
【0011】
US20040014327A1「Method for etching high
dielectric constant materials and for cleaning deposition chambers for high dielectric constant materials」により、別のエッチャントであるCOCl2を使用して金属酸化物をエッチングすることができることが教示されている。ただし、COCl2は毒性の高い神経剤である。エッチャントとしての塩化マロニルの使用も同様に可能であるはずだが、塩化マロニルは非常に不安定であり、室温で液体として分解するため、十分に高い純度での入手は困難であり、輸送および長期間貯蔵することは困難である。したがって、上記の問題を解決するエッチャントが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本開示は、高純度酸化スズの堆積に有用な化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
有機金属化合物は、以下の式I:
Qx-Sn-(A1R1’z)4-x 式I
(式中、
QはOR1またはCpであり、
各R1基は、1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
各R1’基は、1~10個の炭素原子を有するアルキル、アシルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
xは0~3の整数であり、
xが0の場合、AはOであり、xが1~3の整数の場合、AはNであり、
AがOの場合、zは1であり、AがNの場合、zは2である)
の化合物を含む。
【0014】
そのような化合物を使用した酸化スズの堆積も開示されている。本明細書に開示される方法における式Iの化合物の使用により、酸化スズの化学蒸着(CVD)および原子層堆積(ALD)が可能となる。
【0015】
実施形態において、Qは、シクロペンタジエニル配位子であるCpである。いくつかの実施形態において、xは1であり、式Iの化合物は、以下の式:Cp-Sn-(NR1’2)3(式中、各R1’基は、1~10個の炭素原子を有するアルキル、アシルまたはアリール基からなる群から独立して選択される)で表される。
【0016】
実施形態において、xは1~3の整数である。そのような実施形態において、式Iの化合物は、以下の式:(OR1)x-Sn-(NR1’2)4-x(式中、各R1’基は、1~10個の炭素原子を有するアルキル、アシルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、xは1~3の整数である)で表される。
【0017】
他の実施形態において、各R1基および各R1’基は、独立して選択された、1~10個の炭素原子を有するアルキル基である。各R1基および各R1’基は、独立して選択された、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり得ることが企図される。実施形態において、各R1基および各R1’基は、独立して選択された、1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。実施形態において、各R1基および各R1’基は、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、tert-ブチル、イソ-ブチルおよびn-ブチルからなる群から独立して選択される。実施形態において、各R1基および各R1’基は、異なるアルキル、アシル、またはアリール基、特に異なるアルキル基を表す。
【0018】
実施形態において、xは4である。そのような実施形態において、式Iの化合物は、以下の式:Sn(OR1)4(式中、各R1基は、1~10個の炭素原子を有するアルキル、アシル、またはアリール基からなる群から独立して選択される)で表される。
【0019】
他の実施形態において、各R1’基は、独立して選択された、1~10個の炭素原子を有するアルキル基である。各R1’基は、独立して選択された、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり得ることが企図される。実施形態において、各R1’基は、独立して選択された、1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。実施形態において、各R1’基は、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、tert-ブチル、イソ-ブチルおよびn-ブチルからなる群から独立して選択される。実施形態において、各R1’基は、異なるアルキル、アシル、またはアリール基、特に異なるアルキル基を表す。
【0020】
実施形態において、有機金属化合物は、(MeO)2Sn(NMe2)2、(MeO)2Sn(NEtMe)2、(MeO)3Sn(NMe2)、(MeO)3Sn(NEtMe)、Sn(OMe)4、CpSn(NMe2)3、およびCpSn(NMeEt)3からなる群から選択される。
【0021】
他の有機金属化合物は、以下の式II:
Sn(NR2(CH2)nA2)2 式II
(式中、
各A2は、NR2’またはOから独立して選択され、
各R2基は、水素および1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
各R2’基は、水素および1~10個の炭素原子を有するアルキル、アシルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
nは2または3であり、
場合により、NR2(CH2)nNR2’は環状構造を形成し、
場合により、(CH2)のうちの少なくとも1つは、1~10個の炭素原子を有するアルキル基による1つまたは複数の置換を有する)
の化合物を含む。
【0022】
そのような化合物を使用した酸化スズの堆積も開示されている。本明細書に開示される方法における式IIの化合物の使用により、酸化スズの化学蒸着(CVD)および原子層堆積(ALD)が可能となる。
【0023】
実施形態において、A2はOであり、式IIは式IIa:Sn(NR2(CH2)nO)2(式中、各R2基は、1~10個の炭素原子を有するアルキルもしくはアリール基から独立して選択されるか、または1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、もしくは1~4個の炭素原子を有するアルキル基から選択される)で表される。実施形態において、各R2基は、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、tert-ブチル、イソ-ブチルおよびn-ブチルからなる群から独立して選択される。
【0024】
実施形態において、各R2基は、1~10個の炭素原子を有するアルキル基から独立して選択される。各R2基は、独立して選択された、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり得ることが企図される。実施形態において、各R2基は、独立して選択された、1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。実施形態において、各R2基は、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、tert-ブチル、イソ-ブチルおよびn-ブチルからなる群から独立して選択される。実施形態において、各R2基は、異なるアルキル、アシル、またはアリール基、特に異なるアルキル基を表す。
【0025】
実施形態において、各R2’基は、水素または1~10個の炭素原子を有するアルキル基から独立して選択される。各R2’基は、水素または1~6個の炭素原子を有するアルキル基から独立して選択され得ることが企図される。実施形態において、各R2’基は、水素または1~4個の炭素原子を有するアルキル基から独立して選択される。実施形態において、各R2’基は、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、tert-ブチル、イソ-ブチルおよびn-ブチルからなる群から独立して選択される。実施形態において、各R2’基は、水素または異なるアルキル、アシル、もしくはアリール基、特に異なるアルキル基を表す。
【0026】
実施形態において、nは2である。他の実施形態において、nは3である。
実施形態において、(CH2)のうちの少なくとも1つは、1~10個の炭素原子、または1~6個の炭素原子、または1~4個の炭素原子を有するアルキル基による1つまた
は複数の置換を有する。あるいは、1つまたは複数の置換は、メチルまたはエチルによる。特定の実施形態において、(CH2)のうちの1つのみが、メチルまたはエチルなどのアルキル基による1つまたは複数の置換を有する。より詳細な実施形態において、(CH2)のうちの1つが、2つのメチル基により置換されている。
【0027】
実施形態において、式IIは、
式IIb:
【0028】
【0029】
(式中、
各R2基は、水素および1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
各R2’基は、水素および1~10個の炭素原子を有するアルキル、アシルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
各R2’’基および各R2’’’基は、独立して選択された、1~10個の炭素原子を有するアルキル基である)
で表される。
【0030】
実施形態において、式IIbの各R2、R2’、R2’’、またはR2’’’基は、水素または1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、もしくは1~4個の炭素原子を有するアルキル基から独立して選択される。式IIbの特定の実施形態において、各R2およびR2’は水素であり、各R2’’およびR2’’’基は、独立して選択された、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、または1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。式IIbのより詳細な実施形態において、各R2およびR2’は水素であり、各R2’’およびR2’’’基は、エチルまたはメチルから独立して選択される。
【0031】
A2がNR2’であるいくつかの実施形態において、NR(CH2)nNR2’は環状構造を形成する。環状構造の特定の実施形態において、R2およびR2’基は、メチルまたはエチルから選択されるアルキル基である。実施形態において、式IIは、式IIc:
【0032】
【0033】
#1 式IIc:
で表される。
【0034】
実施形態において、各(NR2(CH2)nA2)は、N,N’-ジメチルエチレンジアミン(NMe(CH2)2NMe)、ピペラジン(N2C4H8)、N,N’-ジエチルエチレンジアミン(NEt(CH2)2NEt)、N,N’-ジイソプロピルエチレンジアミン(NiPr(CH2)2NiPr)、N,N’-ジ-tert-ブチルエチレンジアミン(NtBu(CH2)2NtBu)、N,N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(NMe(CH2)3NMe)、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(NH(CH2)(C(CH3))(CH2)NH)、2-(メチルアミノ)エタノール(NMe(CH2)2O)、および2-(エチルアミノ)エタノール(NEt(CH2)2O)からなる群から選択される。
【0035】
本開示は、第2の有機金属化合物を第1の有機金属化合物と組み合わせて、第1の有機金属化合物の不均化を低減して、貯蔵安定性を高める組成物を提供する。
【0036】
組成物は、
式III:
R3
2Sn(NR3’2)2 式III
(式中、
各R3基は、1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
各R3’基は、1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択される)
で表される第1の有機金属化合物、および
式IV:
Sn(NR4
2)4 式IV
(式中、各R4基は、1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択される)
で表される第2の有機金属化合物を含む。
【0037】
他の実施形態において、各R3、R3’、およびR4基は、独立して選択された、1~10個の炭素原子を有するアルキル基である。各R3、R3’、およびR4基は、独立して選択された、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり得ることが企図される。実施形態において、各R3、R3’、およびR4基は、独立して選択された、1~4個の炭
素原子を有するアルキル基である。実施形態において、各R3、R3’、およびR4基は、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、tert-ブチル、イソ-ブチルおよびn-ブチルからなる群から独立して選択される。実施形態において、各R3、R3’、およびR4基は、異なるアルキル、アシル、またはアリール基、特に異なるアルキル基を表す。
【0038】
実施形態において、第2の有機金属化合物は、Sn(NMe2)4、Sn(NEt2)4、およびSn(NMeEt)4からなる群から選択される。
【0039】
本開示は、ALDリアクタ、特に酸化スズ製造におけるALDリアクタをエッチングおよび洗浄する従来の方法における上述の問題を解決する、新規エッチング方法を提供する。
【0040】
上述の問題を解決する1つの方法は、リアクタチャンバの内面からまたは前記リアクタチャンバ内の基板から酸化スズ堆積物を除去するための方法であって、
前記リアクタチャンバに、エッチャントガスを導入する工程であり、前記エッチャントガスが、一般式A3OmXn(式中、A3は、C、N、およびSからなる群から選択され、Oは酸素であり、各Xは、ハロゲンからなる群から独立して選択され、下付き文字mおよびnはゼロより大きい)の化合物である、工程、
前記導入の前または後のいずれかで、前記エッチャントガスを活性化する工程、
前記活性化されたエッチャントガスと前記酸化スズ堆積物との間でエッチング反応を進行させる工程、ならびに
エッチング反応のガス状生成物と一緒にエッチャントガスを排気する工程
を含む、方法を含む。
【0041】
上述の問題を解決する別の方法は、リアクタチャンバの内面からまたは前記リアクタチャンバ内の基板から堆積物を除去するための方法であって、
前記リアクタチャンバに、エッチャントガス、および添加剤を導入する工程であり、前記エッチャントガスが、一般式A3OmXn(式中、A3は、C、N、およびSからなる群から選択され、Oは酸素であり、各Xは、ハロゲンからなる群から独立して選択され、下付き文字mおよびnはゼロより大きい)の化合物であり、前記添加剤が、一般式CxHyOz(式中、下付き文字xおよびzはゼロより大きい)のものである、工程、
前記導入の前または後のいずれかで、前記エッチャントガスを活性化する工程、
前記活性化されたエッチャントガスと前記堆積物との間でエッチング反応を進行させる工程、ならびに
エッチング反応のガス状生成物と一緒にエッチャントガスを排気する工程
を含む、方法を含む。
【0042】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、Xは、2種の異なるハロゲンの組合せを表す。
【0043】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、前記エッチャントガスを生成することは、前記チャンバへの前記導入前に行われる。
【0044】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、液体化学成分にキャリアガスを吹き込んで、前記液体化学成分を前記エッチャントへと揮発させることは、前記エッチャントガスの前記チャンバへの前記導入前に行われる。
【0045】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、前記エッチャントガスは、複数の液体化学成分にキャリアガスを吹き込み、次いで、得られたガスを組み合わせることによって
生成される。
【0046】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、前記エッチャントガスは、2種以上の化学成分ガスを混合することによって生成される。
【0047】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、前記エッチャントガスは、前記チャンバへの導入前に、ガス活性化チャンバ内の活性化機構に曝露することによって活性化され、前記ガス活性化機構は、熱、紫外線およびプラズマ放電からなる群から選択される。
【0048】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、前記エッチャントガスは、前記チャンバへの導入後、熱活性化機構に曝露することによって活性化され、前記熱活性化機構は、前記チャンバ内の全体的な温度、および前記チャンバ内の局所熱源からなる群から選択される。
【0049】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、前記エッチャントガスは、COCl2、COBr2、COI2、SOI2、SOCl2、SOBr2、SO2Cl2、SO2Br2、NOCl、NOBr、NOI、SOClBr、SOClF、およびSOFBrからなる群から選択される。特定の実施形態において、塩化チオニル(SOCl2)が使用される。
【0050】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、前記添加剤はCOまたはCO2である。
【0051】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、ハロゲン含有添加剤が、前記エッチャントガスを含むガス状混合物に添加される。
【0052】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、ハロゲン含有添加剤は、活性ハロゲンまたは一般式R5X1(式中、R5はHおよびMeからなる群から選択され、X1は、F、Cl、Br、およびIからなる群から選択されるハロゲンである)の化合物である。
【0053】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、活性ハロゲンは、ClまたはBrを含む。
【0054】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、希釈添加剤が、前記エッチャントガスを含むガス状混合物に添加される。
【0055】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、希釈添加剤は、N、Ar、He、またはNeを含む。
【0056】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、前記リアクタチャンバは、少なくとも100℃、100℃~900℃の間、または100℃~400℃の間の温度に加熱される。
【0057】
上記方法のいずれかによる一実施形態において、前記リアクタチャンバは、0.1mBar~1,500mBarの間、好ましくは0.1mBar~1,000mBarの間の圧力を備える。
【0058】
本発明の上述のおよび他の特徴、ならびに本発明の利点は、添付の図に示されるように、好ましい実施形態についての以下の詳細な説明に照らしてより明らかになるであろう。理解されるように、本発明は、すべて本発明から逸脱することなく、さまざまな点で修正
することができる。したがって、図面および説明は、本質的に例示的なものとみなされるべきであり、限定的なものとしてみなされるべきではない。
【0059】
次いで、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して、例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】酸化スズ膜の形成するために使用可能ないくつかの化合物の蒸気圧の比較グラフである。
【
図2】70℃の貯蔵温度におけるMe
2Sn(NMe
2)
2の、日数に対する質量%のグラフである。
【
図3】実施例21による試験後に得られた試験片の写真である。
【
図4】実施例22による実施における電力(W)に対するエッチング速度(A/分)のグラフである。
【
図5】実施例22による、温度が26℃であった実施のみにおける電力(W)に対するエッチング速度(A/分)のグラフである。
【
図6】Sn(NMeEt)
4の
1H NMRスペクトルを示す図である。
【
図7】Sn(OtBu)
4の
1H NMRスペクトルを示す図である。
【
図8】MeOH添加前後のSn(NMeEt)
4の
1H NMRスペクトルを示す図である。
【
図9】60℃の貯蔵温度における、Sn(NMeEt)
4の週数に対する質量%を、HNMeEtと比較したグラフである。
【
図10】0、4、および9週における60℃でのSn(NMeEt)
4サンプルの
1H NMRスペクトルを示す図である。
【
図11】100℃の貯蔵温度における、Sn(NMeEt)
4の週数に対する質量%を、HNMeEtと比較したグラフである。
【
図12】0、4、および9週における100℃でのSn(NMeEt)
4サンプルの
1H NMRスペクトルを示す図である。
【
図13】0、1、および2週における125℃でのSn(NMeEt)
4サンプルの
1H NMRスペクトルを示す図である。
【
図14】多段真空蒸留装置の概略図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下の詳細な説明は、同様の数字が同様の要素を示す添付の図面と関連させて読むことができる。
【0062】
以下の式I:
Qx-Sn-(A1R1’z)4-x 式I
(式中、
QはOR1またはCpであり、
各R1基は、1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
各R1’基は、1~10個の炭素原子を有するアルキル、アシルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
xは1~4の整数であり、
xが0の場合、A1はOであり、xが1~3の整数の場合、A1はNであり、
A1がOの場合、zは1であり、A1がNの場合、zは2である)
の有機金属化合物が開示される。
【0063】
実施形態において、Qは、シクロペンタジエニル配位子であるCpである。いくつかの実施形態において、xは1であり、式Iの化合物は、以下の式:Cp-Sn-(NR1’
2)3(式中、各R1’基は、1~10個の炭素原子を有するアルキル、アシルまたはアリール基からなる群から独立して選択される)で表される。
【0064】
式Iの化合物は、xが1~3の整数である化合物を含む。そのような実施形態において、式Iの化合物は、以下の式:(OR1)x-Sn-(NR1’2)4-x(式中、各R1’基は、1~10個の炭素原子を有するアルキル、アシルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、xは1~3の整数である)で表される。
【0065】
式:(OR1)x-Sn-(NR1’2)4-xで表される式Iの化合物は、各R1基および各R1’基が、独立して選択された、1~10個の炭素原子を有するアルキル基である化合物を含む。各R1基および各R1’基は、独立して選択された、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり得ることが企図される。特に、各R1基および各R1’基は、独立して選択された、1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。より詳細には、各R1基および各R1’基は、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、tert-ブチル、イソ-ブチルおよびn-ブチルからなる群から独立して選択される。また、一部の化合物では、各R1基および各R1’基は、異なるアルキル、アシル、またはアリール基、特に異なるアルキル基を表す場合がある。
【0066】
式Iの化合物は、xが4である化合物を含む。そのような実施形態において、式Iの化合物は、以下の式:Sn(OR1)4(式中、各R1基は、1~10個の炭素原子を有するアルキル、アシル、またはアリール基からなる群から独立して選択される)で表される。
【0067】
式:Sn(OR1)4で表される式Iの化合物は、各R1基が、独立して選択された、1~10個の炭素原子を有するアルキル基である化合物を含む。各R1基は、独立して選択された、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり得ることが企図される。特に、各R1基は、独立して選択された、1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。より詳細には、各R1基は、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、tert-ブチル、イソ-ブチルおよびn-ブチルからなる群から独立して選択される。また、一部の化合物では、各R1基は、異なるアルキル、アシル、またはアリール基、特に異なるアルキル基を表す。
【0068】
式Iの特定の有機金属化合物は、以下:(MeO)2Sn(NMe2)2、(MeO)2Sn(NEtMe)2、(MeO)3Sn(NMe2)、(MeO)3Sn(NEtMe)、Sn(OMe)4、CpSn(NMe2)3、またはCpSn(NMeEt)3を含む。
【0069】
他の有機金属化合物は、以下の式II:
Sn(NR2(CH2)nA2)2 式II
(式中、
各A2は、NR2’またはOから独立して選択され、
各R2基は、水素および1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
各R2’基は、水素および1~10個の炭素原子を有するアルキル、アシルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
nは2または3であり、
場合により、NR2(CH2)nNR2’は環状構造を形成し、
場合により、(CH2)のうちの少なくとも1つは、1~10個の炭素原子を有するアルキル基による1つまたは複数の置換を有する)
の化合物を含む。
【0070】
そのような化合物を使用した酸化スズの堆積も開示されている。本明細書に開示される方法における式IIの化合物の使用により、酸化スズの化学蒸着(CVD)および原子層堆積(ALD)が可能となる。
【0071】
実施形態において、A2はOであり、式IIは式IIa:Sn(NR2(CH2)nO)2(式中、各R2基は、1~10個の炭素原子を有するアルキルもしくはアリール基から独立して選択されるか、または1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、もしくは1~4個の炭素原子を有するアルキル基から選択される)で表される。実施形態において、各R2基は、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、tert-ブチル、イソ-ブチルおよびn-ブチルからなる群から独立して選択される。
【0072】
実施形態において、各R2基は、1~10個の炭素原子を有するアルキル基から独立して選択される。各R2基は、独立して選択された、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり得ることが企図される。実施形態において、各R2基は、独立して選択された、1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。実施形態において、各R2基は、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、tert-ブチル、イソ-ブチルおよびn-ブチルからなる群から独立して選択される。実施形態において、各R2基は、異なるアルキル、アシル、またはアリール基、特に異なるアルキル基を表す。
【0073】
実施形態において、各R2’基は、水素または1~10個の炭素原子を有するアルキル基から独立して選択される。各R2’基は、水素または1~6個の炭素原子を有するアルキル基から独立して選択され得ることが企図される。実施形態において、各R2’基は、水素または1~4個の炭素原子を有するアルキル基から独立して選択される。実施形態において、各R2’基は、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、tert-ブチル、イソ-ブチルおよびn-ブチルからなる群から独立して選択される。実施形態において、各R2’基は、水素または異なるアルキル、アシル、もしくはアリール基、特に異なるアルキル基を表す。
【0074】
実施形態において、nは2である。他の実施形態において、nは3である。
実施形態において、(CH2)のうちの少なくとも1つは、1~10個の炭素原子、または1~6個の炭素原子、または1~4個の炭素原子を有するアルキル基による1つまたは複数の置換を有する。あるいは、1つまたは複数の置換は、メチルまたはエチルによる。特定の実施形態において、(CH2)のうちの1つのみが、メチルまたはエチルなどのアルキル基による1つまたは複数の置換を有する。より詳細な実施形態において、(CH2)のうちの1つが、2つのメチル基により置換されている。
【0075】
実施形態において、式IIは、
式IIb:
【0076】
【0077】
(式中、
各R2基は、水素および1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
各R2’基は、水素および1~10個の炭素原子を有するアルキル、アシルまたはアリール基からなる群から独立して選択され、
各R2’’基および各R2’’’基は、独立して選択された、1~10個の炭素原子を有するアルキル基である)
で表される。
【0078】
実施形態において、式IIbの各R2、R2’、R2’’、またはR2’’’基は、水素または1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、もしくは1~4個の炭素原子を有するアルキル基から独立して選択される。式IIbの特定の実施形態において、各R2およびR2’は水素であり、各R2’’およびR2’’’基は、独立して選択された、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、または1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。式IIbのより詳細な実施形態において、各R2およびR2’は水素であり、各R2’’およびR2’’’基は、エチルまたはメチルから独立して選択される。
【0079】
A2がNであるいくつかの実施形態において、NR(CH2)nNR’は環状構造を形成する。環状構造の特定の実施形態において、RおよびR’基は、メチルまたはエチルから選択されるアルキル基である。実施形態において、式IIは、式IIc:
式IIc:
【0080】
【0081】
で表される。
実施形態において、各(NR2(CH2)nA2)は、N,N’-ジメチルエチレンジアミン(NMe(CH2)2NMe)、ピペラジン(N2C4H8)、N,N’-ジエチルエチレンジアミン(NEt(CH2)2NEt)、N,N’-ジイソプロピルエチレンジアミン(NiPr(CH2)2NiPr)、N,N’-ジ-tert-ブチルエチレンジアミン(NtBu(CH2)2NtBu)、N,N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(NMe(CH2)3NMe)、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(NH(CH2)(C(CH3))(CH2)NH)、2-(メチルアミノ)エタノール(NMe(CH2)2O)、および2-(エチルアミノ)エタノール(NEt(CH2)2O)からなる群から選択される。
【0082】
式IおよびIIの化合物は、良好な反応性を示す一方、熱的に安定であり、そのため、
分解が起こることなく堆積チャンバへの化合物の送達が行われるはずである(分解が起こると、堆積した膜が均一にならないか、または堆積した膜に欠陥が生じる)。本発明の化合物が示す良好な安定性および反応性プロファイルはまた、成長チャンバに送達する必要のある材料が少なくなる(材料が少ないほど経済的である)と予想され、サイクルタイムが短くなる(プロセス終了時にチャンバに残り、ポンプ排出される材料が少なくなるため)と予想され、より厚い膜をより短時間で堆積できるため、スループットが向上することを意味する。さらに、ALDは、式IまたはIIの化合物を使用して、はるかに低い温度で(またはより広い温度範囲を使用して)実施することが可能であると予想される。熱安定性はまた、合成後の材料の精製がはるかに容易になり、取り扱いが容易になることを意味する。
【0083】
式IおよびIIの化合物は、C-Sn結合がないという、従来の化合物に勝る追加の利点を有する。C-Sn結合は、式IおよびIIの化合物から形成される残留物よりも毒性が高いことが知られているMe-Sn-O固体残留物の形成をもたらす。また、式IおよびIIの化合物は、従来の化合物よりも分子量が小さいが、それでも、それらの従来の化合物よりも高い熱安定性を有することが予想される。
【0084】
式IまたはIIの化合物は、当該技術分野において公知の方法によって調製することができる。以下の実施例は、そのような方法を説明するものであるが、限定することを意図したものではない。
【実施例0085】
実施例1:Sn(NMeEt)
4の合成
不活性雰囲気下で、1Lの丸底フラスコにヘキサン中2.5M nBuLi溶液67mL、および無水ヘキサン約500mLをロードした。フラスコの内容物を氷/水浴で冷却し、次いで、激しく撹拌しながら、HNMeEt 16mLを反応フラスコに滴下添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌し、次いで氷/水浴中で再び冷却した。SnCl
4 4.90mLをスポイトで反応フラスコに滴下添加した。反応フラスコをアルミホイルで覆い、その内容物を室温で一晩撹拌したままにした。翌日、濾過によりLiCl塩を反応混合物から分離した。Sn(NMeEt)
4 8.42g(収率57%)が、70℃で0.05Torrにおける蒸留によって単離された。
図6に示すように、
1H NMR分光法により、生成物がSn(NMeEt)
4であることが確認された。