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特開2024-178229合金、合金ナノ粒子の集合体および触媒
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178229
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】合金、合金ナノ粒子の集合体および触媒
(51)【国際特許分類】
   C22C 30/00 20060101AFI20241217BHJP
   C22C 5/00 20060101ALI20241217BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20241217BHJP
   B22F 1/054 20220101ALI20241217BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20241217BHJP
   B01J 23/46 20060101ALI20241217BHJP
   B01J 23/52 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C22C30/00
C22C5/00
B22F1/00 K
B22F1/00 Z
B22F1/054
B82Y30/00
B01J23/46 311M
B01J23/52 M
B01J23/46 301M
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024157491
(22)【出願日】2024-09-11
(62)【分割の表示】P 2022535337の分割
【原出願日】2021-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2020116140
(32)【優先日】2020-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「元素間融合技術の確立と理論予測に基づく固溶型ナノ合金の構築」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】北川 宏
(72)【発明者】
【氏名】草田 康平
(72)【発明者】
【氏名】松村 晶
(72)【発明者】
【氏名】山本 知一
(72)【発明者】
【氏名】トラン シュアン カイ
(57)【要約】
【課題】
3種以上の元素から構成され、固溶の均一性が高い新規な合金を提供すること。
【解決手段】
3種以上の元素から構成される合金であって、合金を構成する各元素の合金内における分布の標準偏差がいずれも15原子%以下である、合金は、固溶の均一性が高い新規な合金を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3種以上の元素から構成される合金であって、
前記合金を構成する各元素の前記合金内における分布の標準偏差がいずれも15原子%以下である、合金。
【請求項2】
前記合金を構成する2つの元素の分布の相関係数がいずれも±0.50以内である、請求項1に記載の合金。
【請求項3】
前記合金を構成する元素が、相平衡状態図では固溶しない元素の組み合わせを含む、請求項1または2に記載の合金。
【請求項4】
前記合金を構成する元素が、白金族(Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、Ag、Au、Cd、Hg、In、Tl、Sn、Pb、Sb、Bi、Mo、W、Tc、Re、3d金属(Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn)、Ga、Ge、As、H、B、Al、C、Si、N、P、Y、Zr、Nb、ランタノイド、HfおよびTaからなる群のうち少なくとも3種類を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の合金。
【請求項5】
前記合金を構成する元素が、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Ag、Au、Niからなる群のうち少なくとも1種類を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の合金。
【請求項6】
mを3以上の整数として前記合金を構成する元素がm種であって、
iを1以上m以下の整数として前記合金を構成する各i元素について前記合金内における平均組成がC原子%である場合、
各元素の合金内における分布の標準偏差がいずれも、下記式1で表されるsを用いて、2.5×s×100原子%以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の合金。
【数1】
(式1中、sは計測する微小体積1nmにおける組成分布の各元素iに対する標準偏差を表し、Nは計測する微小体積1nmあたりの原子数を表す。)
【請求項7】
前記合金を構成する各元素の前記合金内における分布の標準偏差が、前記合金内における当該元素の組成割合の40%以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の合金。
【請求項8】
平均粒径0.5~30nmのナノ粒子である、請求項1~7のいずれか1項に記載の合金。
【請求項9】
前記ナノ粒子の集合体である、請求項8に記載の合金。
【請求項10】
前記ナノ粒子が担体に担持されている、請求項8に記載の合金。
【請求項11】
前記担体が非炭素材料担体または粒子状炭素担体である、請求項10に記載の合金。
【請求項12】
請求項8に記載の合金を98個数%以上含む、合金ナノ粒子の集合体。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載の合金、または請求項12に記載の合金ナノ粒子の集合体を含む触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合金、合金ナノ粒子の集合体および触媒に関する。特に、3種以上の元素から構成され、固溶の均一性が高い新規な合金または合金ナノ粒子の集合体、およびこれらの合金または合金ナノ粒子の集合体を含む触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
原子レベルで混ざることができない組み合わせの金属元素を固溶させた合金や、ハイエントロピー合金ナノ粒子が知られている(特許文献1および非特許文献1~4参照)。
【0003】
特許文献1には、PdRuに第3元素M(M=Rh,Ir,Au,Ag,Ptの少なくとも1種)を加えた多元系固溶体合金微粒子とすることで、高温で長時間使用しても触媒性能が維持されることが記載されている。特許文献1には、合金の固溶(または混合)の均一さについて規定されていなかった。
【0004】
非特許文献1には、5種類以上の金属塩をカーボン素材(カーボンナノファイバー)に担持し、そこに大電流を印加し、2000K以上の高温に急速加熱後、急速冷却するハイエントロピー合金ナノ粒子の製造方法が記載されている。非特許文献1の3ページ右カラムには、5種混合のPtPdCoNiFeでは元素組成のばらつきは10%程度であり、ばらつきが50%を超えるリソグラフィー法と比較して小さいと記載されている。
【0005】
非特許文献2には、グラフェン担体と金属を機械的に粉化して、グラフェン担体上にハイエントロピー合金ナノ粒子を形成する製造方法が記載されている。Fig.9に示されたFeCrCoCuNiナノ粒子の元素組成は均一な混合を示していなかった。
【0006】
非特許文献3には、3d遷移金属(第4周期)のバルクのハイエントロピー合金のターゲットに対してレーザーを当ててナノ粒子を得る製造方法が記載されている。Table 2にはCoCrFeMnNiナノ粒子の組成が記載されているが、混合の均一さは示されていなかった。
【0007】
非特許文献4には、白金族元素の有機金属塩を使用して、200℃程度の溶媒熱合成でナノ粒子を得る製造方法が記載されている。Fig. 5にはPtRhRuや、PtPdIrRhRu粒子の走査透過型電子顕微鏡(STEM)-エネルギー分散型X線分析(EDS。EDXともいう)画像が記載されているが、画像から原子レベルでの混合の均一さは読み取れなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2017/150596
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Science (2018) 359, 1489-1494
【非特許文献2】SCIENTIFIC REPORTS (2018) 8:8737
【非特許文献3】RSC Adv. (2019) 9, 18547-18558
【非特許文献4】Adv.Funct.Mater. (2019) 1905933
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
非特許文献4の6ページ目の左下の部分には、得られたナノ粒子は700K(427℃)まで安定と記載されている。特に、800Kからhcpに該当するXRDパターンが出現しており、これはhcpであるRuリッチな相が出てきていることを示唆する。一方、fccの各ピーク位置はほぼ変化がないと記載されている。もし、最初に均一な合金ができていて主にRuが析出する場合、Table S1のとおりRuは原子半径が他に比べ小さいので、その格子定数はベガーズ則に従って膨張する。また、Fig.S16に融点と結晶子サイズの関係性が示されており、Ruは単金属で2nm以下とある。これらより、最初に結晶子の大きなfccの合金と、Ruリッチな小さな粒子が不均一に析出しているが、その結晶の小ささからXRDでは均一なfccの合金ができたと非特許文献4では扱われている。ナノ粒子を加熱していくと小さなhcpの粒子が粗大化していきXRDで顕著にピークが現れるが、fccはピーク位置が変わらないのでその金属組成比にほとんど変化はない(Ruが合金から析出せず、別の粒子として存在)と考えられる。すなわち、非特許文献4で得られたナノ粒子は、混合が均一ではないと考えられる。
なお、溶媒熱合成の場合、密閉したバイアルを徐々に加熱していくため、分解・還元しやすい金属から徐々に反応してしまい、各金属によって還元速度が異なるため、均一な合金ができにくいと考えられる。
【0011】
以上のように、原子レベルで混ざることができない組み合わせの金属元素を固溶させた合金や、ハイエントロピー合金ナノ粒子では、固溶の均一性について改善の余地があった。
本発明が解決しようとする課題は、3種以上の元素から構成され、固溶の均一性が高い新規な合金を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、従来知られていなかったほど顕著に固溶の均一性が高い新規な合金を見出し、上記課題を解決した。このような合金は塊状(バルク)または粒子の集合体(粉体)としてマクロに見た場合に、従来の合金と平均組成が同程度であっても、固溶の均一性が高い点で全く異なる物性の新規な合金である。
上記課題を解決するための具体的な手段である本発明の構成と、本発明の好ましい構成を以下に記載する。
【0013】
[1] 3種以上の元素から構成される合金であって、
合金を構成する各元素の合金内における分布の標準偏差がいずれも15原子%以下である、合金。
[2] 合金を構成する2つの元素の分布の相関係数がいずれも±0.50以内である、[1]に記載の合金。
[3] 合金を構成する元素が、相平衡状態図では固溶しない元素の組み合わせを含む、[1]または[2]に記載の合金。
[4] 合金を構成する元素が、白金族(Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、Ag、Au、Cd、Hg、In、Tl、Sn、Pb、Sb、Bi、Mo、W、Tc、Re、3d金属(Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn)、Ga、Ge、As、H、B、Al、C、Si、N、P、Y、Zr、Nb、ランタノイド、HfおよびTaからなる群のうち少なくとも3種類を含む、[1]~[3]のいずれか1項に記載の合金。
[5] 合金を構成する元素が、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Ag、Au、Niからなる群のうち少なくとも1種類を含む、[1]~[4]のいずれか1項に記載の合金。
[6] mを3以上の整数として合金を構成する元素がm種であって、
iを1以上m以下の整数として合金を構成する各i元素について合金内における平均組成がC原子%である場合、
各元素の合金内における分布の標準偏差がいずれも、下記式1で表されるsを用いて、2.5×s原子%以下である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の合金。
【数1】
(式1中、sは計測する微小体積1nmにおける組成分布の各元素iに対する標準偏差を表し、Nは計測する微小体積1nmあたりの原子数を表す。)
[7] 合金を構成する各元素の合金内における分布の標準偏差が、合金内における当該元素の組成割合の40%以下である、[1]~[6]のいずれか1項に記載の合金。
[8] 平均粒径0.5~30nmのナノ粒子である、[1]~[7]のいずれか1項に記載の合金。
[9] ナノ粒子の集合体である、[8]に記載の合金。
[10] ナノ粒子が担体に担持されている、[8]に記載の合金。
[11] 担体が非炭素材料担体または粒子状炭素担体である、[10]に記載の合金。
[12] [8]に記載の合金を98個数%以上含む、合金ナノ粒子の集合体。
[13] [1]~[11]のいずれか1項に記載の合金、または[12]に記載の合金ナノ粒子の集合体を含む触媒。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、3種以上の元素から構成され、固溶の均一性が高い新規な合金を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施例1で得られた合金のSTEM-EDSのEDS線分析で用いた走査透過型電子顕微鏡写真である。
図2図2(A)は、図1の矢印の部分における各ポジション(0.00nmのポジションからの距離。以降のグラフでも同様)の特性X線カウント数を示したグラフである。図2(B)は、図1の矢印の部分における各ポジションの組成を示したグラフである。
図3図3は、実施例1で得られた合金のSTEM-EDSの別のEDS線分析で用いた走査透過型電子顕微鏡写真である。
図4図4(A)は、図3の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数を示したグラフである。図4(B)は、図3の矢印の部分における各ポジションの組成を示したグラフである。
図5図5は、実施例1で得られた合金のSTEM-EDSの別のEDS線分析で用いた走査透過型電子顕微鏡写真である。
図6図6(A)は、図5の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数を示したグラフである。図6(B)は、図5の矢印の部分における各ポジションの組成を示したグラフである。
図7図7は、実施例1で得られた合金の高角度環状暗視野(High-angle Annular Dark Field;HAADF)STEM像およびエネルギー分散型X線分析(EDS)マップである。
図8図8は、実施例1で得られた合金のエネルギー粉末X線回折(XRDまたはPXRD)パターンである。
図9図9は、実施例1で得られた合金の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
図10図10(A)は、実施例1で得られた合金の水素発生反応(HER)触媒活性に関するグラフである。図10(B)は、実施例1で得られた合金のHER触媒活性を3回測定した際の比較に関するグラフである。
図11図11は、実施例11で得られた合金のSTEM-EDSのEDS線分析で用いた走査透過型電子顕微鏡写真である。
図12図12(A)は、図11の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数を示したグラフである。図12(B)は、図11の矢印の部分における各ポジションの組成を示したグラフである。
図13図13は、実施例11で得られた合金のSTEM-EDSの別のEDS線分析で用いた走査透過型電子顕微鏡写真である。
図14図14(A)は、図13の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数を示したグラフである。図14(B)は、図13の矢印の部分における各ポジションの組成を示したグラフである。
図15図15は、実施例11で得られた合金のSTEM-EDSの別のEDS線分析で用いた走査透過型電子顕微鏡写真である。
図16図16(A)は、図15の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数を示したグラフである。図16(B)は、図15の矢印の部分における各ポジションの組成を示したグラフである。
図17図17は、実施例11で得られた合金のSTEM-EDSの別のEDS線分析で用いた走査透過型電子顕微鏡写真である。
図18図18(A)は、図17の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数を示したグラフである。図18(B)は、図17の矢印の部分における各ポジションの組成を示したグラフである。
図19図19は、実施例11で得られた合金のHAADF-STEM像およびエネルギー分散型X線分析(EDS)マップである。
図20図20は、実施例11で得られた合金のエネルギー粉末X線回折(XRDまたはPXRD)パターンである。
図21図21は、実施例11で得られた合金の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
図22図22(A)は、実施例11で得られた合金のHER触媒活性に関するグラフである。図22(B)は、実施例11で得られた合金のHER触媒活性を3回測定した際の比較に関するグラフである。
図23図23は、実施例21で得られた合金のSTEM-EDSのEDS線分析で用いた走査透過型電子顕微鏡写真である。
図24図24(A)は、図23の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数を示したグラフである。図24(B)は、図23の矢印の部分における各ポジションの組成を示したグラフである。
図25図25は、実施例21で得られた合金のSTEM-EDSの別のEDS線分析で用いた走査透過型電子顕微鏡写真である。
図26図26(A)は、図25の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数を示したグラフである。図26(B)は、図25の矢印の部分における各ポジションの組成を示したグラフである。
図27図27は、実施例21で得られた合金のSTEM-EDSの別のEDS線分析で用いた走査透過型電子顕微鏡写真である。
図28図28(A)は、図27の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数を示したグラフである。図28(B)は、図27の矢印の部分における各ポジションの組成を示したグラフである。
図29図29は、実施例22で得られた合金のSTEM-EDSのEDS線分析で用いた走査透過型電子顕微鏡写真である。
図30図30(A)は、図29の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数を示したグラフである。図30(B)は、図29の矢印の部分における各ポジションの組成を示したグラフである。
図31図31は、実施例22で得られた合金のSTEM-EDSの別のEDS線分析で用いた走査透過型電子顕微鏡写真である。
図32図32(A)は、図31の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数を示したグラフである。図32(B)は、図31の矢印の部分における各ポジションの組成を示したグラフである。
図33図33は、実施例21で得られた合金のHAADF-STEM像およびエネルギー分散型X線分析(EDS)マップである。
図34図34は、実施例22で得られた合金のHAADF-STEM像およびエネルギー分散型X線分析(EDS)マップである。
図35図35は、実施例21および22で得られた合金のエネルギー粉末X線回折(XRDまたはPXRD)パターンである。
図36図36(A)は、実施例21で得られた合金の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。図36(B)は、実施例22で得られた合金の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
図37図37は、実施例21および22で得られた合金のHER触媒活性に関するグラフである。
図38図38は、実施例31で得られた合金のHAADF-STEM像およびエネルギー分散型X線分析(EDS)マップである。
図39図39は、実施例31で得られた合金のHAADF-STEM像および電子エネルギー損失分光(Electron Energy Loss Spectroscopy;EELS)マップである。
図40図40は、実施例31で得られた合金のエネルギー粉末X線回折(XRDまたはPXRD)パターンである。
図41図41は(A)、実施例31で得られた合金の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。図41(B)は、実施例31で原料として用いたPdRuの透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
図42図42は、実施例41で得られた合金のSTEM-EDSのEDS線分析で用いた走査透過型電子顕微鏡写真である。
図43図43(A)は、図42の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数を示したグラフである。図43(B)は、図42の矢印の部分における各ポジションの組成を示したグラフである。
図44図44は、比較例42で得られた合金のSTEM-EDSのEDS線分析で用いた走査透過型電子顕微鏡写真である。
図45図45(A)は、図44の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数を示したグラフである。図45(B)は、図44の矢印の部分における各ポジションの組成を示したグラフである。
図46図46は、比較例42で得られた合金のSTEM-EDSの別のEDS線分析で用いた走査透過型電子顕微鏡写真である。
図47図47(A)は、図46の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数を示したグラフである。図47(B)は、図46の矢印の部分における各ポジションの組成を示したグラフである。
図48図48は、実施例51で得られた合金のSTEM-EDSのEDS線分析で用いた走査透過型電子顕微鏡写真である。
図49図49(A)は、図48の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数を示したグラフである。図49(B)は、図48の矢印の部分における各ポジションの組成を示したグラフである。
図50図50は、実施例61で得られた合金のSTEM-EDSのEDS線分析で用いた走査透過型電子顕微鏡写真である。
図51図51(A)は、図50の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数を示したグラフである。図51(B)は、図50の矢印の部分における各ポジションの組成を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0017】
[合金]
本発明の合金は、3種以上の元素から構成される合金であって、合金を構成する各元素の合金内における分布の標準偏差がいずれも15原子%以下である。
この構成により、3種以上の元素から構成され、固溶の均一性が高い新規な合金を提供することができる。合金の固溶の均一性とは、固溶体の組成分布がどの程度均一なのかという固溶状態を表す尺度のことをいう。
従来、複数の非固溶性の元素からなる合金は、経時的に徐々に金属分布の偏りを生じ、最終的に分相を生じてしまうことがあった。合金の固溶の均一性が低く、標準偏差が本明細書で規定する範囲の上限値を超える合金は、経時的に徐々に金属分布の偏りを生じることがあり、最終的に分相を生じてしまうこともあり、本発明の合金と比較して触媒の性能が劣ることがあり、長時間高温に曝される環境下で使用する場合に短寿命または不安定となることがある。
これに対し、本発明の合金は、高度に均一化されているため、組成の安定性に優れ、分相を生じにくい。このため、本発明の合金は、高い耐久性が求められる用途、例えば、化学反応の触媒のような、長時間高温に曝される環境下での使用に好適である。すなわち、本発明の合金を用いれば、長寿命な触媒を作製することができる。
合金は、加熱された場合に安定な構造を示して物質の均一性が高いことがより好ましい。特に5元素以上のハイエントロピー合金では、配置のエントロピーSが大きいことから、ギブスの自由エネルギーG=H-TS(ここで、Hはエンタルピー、Tは絶対温度、Sはエントロピーを示す)より、高温で均一な固溶体相が安定となる。合金は、例えば500K以上(好ましくは700K以上、より好ましくは900K以上)まで加熱された場合に安定な構造を示して物質の均一性が高いことが、特に好ましい。物質の均一性はin situ XRDやSTEM-EDSで確認することができる。
また、合金は、構成元素が原子レベルで混合していることが好ましい。具体的には、合金を合金ナノ粒子の集合体として用いる場合に、合金ナノ粒子の集合体が本発明の合金を98個数%以上含むことが好ましい。あるいは、合金ナノ粒子の集合体を構成する任意の合金ナノ粒子が、構成元素として3種類以上の元素のすべてを含むことが好ましい。また、合金ナノ粒子を多数含む触媒として用いる場合に、触媒に含まれる合金ナノ粒子が本発明の合金ナノ粒子を98個数%以上含むことが好ましい。あるいは、触媒に含まれる任意の合金ナノ粒子が、構成元素として3種類以上の元素のすべてを含むことが好ましい。
以下、本発明の好ましい態様を説明する。
【0018】
<元素>
本発明の合金は、3種以上の元素から構成され、3~50種類の元素から構成されることが好ましく、3~25種類の元素から構成されることがより好ましく、3~10種類の元素から構成されることが特に好ましく、3~5種類の元素から構成されることがより特に好ましく、3または4種類の元素から構成されることがさらにより特に好ましい。
【0019】
本発明の合金を構成する元素の種類は特に制限はない。
合金を構成する元素が、相平衡状態図では固溶しない元素の組み合わせを含んでいてもよく、相平衡状態図では固溶しない元素の組み合わせを含んでいなくてもよい。すなわち、合金は、容易に固溶体を形成できない元素の組み合わせであってもよく、容易に固溶体を形成できる元素の組み合わせであってもよい。相平衡状態図は、相図、状態図、合金状態図などとも言われ、これらに類似するすべての図を、本明細書で相平衡状態図として用いることができる。相平衡状態図は、2元素の相平衡状態図であっても、3元素以上の相平衡状態図であってもよい。
【0020】
本発明によれば、多種多様な元素を用いて固溶の均一性が高い新規な合金を提供できる。そのため、合金を構成する元素が、相平衡状態図では固溶しない元素の組み合わせを含むことが好ましい。
相平衡状態図では固溶しない元素の組み合わせとは、1000℃で、圧力が1atm(常圧)の場合に、30原子%以上の不混和な領域がある組み合わせのことを言う。
合金を構成する元素が、2元の相平衡状態図または3元の相平衡状態図では固溶しない元素の組み合わせを含むことがより好ましく、2元の相平衡状態図および3元の相平衡状態図の両方では固溶しない元素の組み合わせを含むことが特に好ましい。
合金を構成する元素の内の2種類の組み合わせ中、少なくとも1組の2元の相平衡状態図では固溶しない元素の組み合わせを含むことが好ましく、2組以上の2元の相平衡状態図では固溶しない元素の組み合わせを含むことがより好ましい。
【0021】
合金を構成する元素の内の2種類の組み合わせ中、少なくとも1組の2元の相平衡状態図では固溶しない元素の組み合わせとしては、PdRu、AuIr、AgRh、AuRh、AuRu、CuRu、CuIr、AgCu、FeCu、AgIr、AgRu、MoRu、RhC、RuN、RuSn、PdOs、CuOs、AgOs、AuOs、CuRh、IrRh、IrPd、AgPt、AuPt、その他の貴金属と貴金属以外のほとんどの金属との組み合わせなどが挙げられる。合金を構成する3種類以上の元素の内、2元の相平衡状態図では固溶しない2種類の元素の組み合わせを含む合金ナノ粒子としては、PdRuB、AuRuIr、RuRhAu、PtIrRu、FeRuRh、AuIrRh、AgIrRh、AuPdRuなどが挙げられる。合金を構成する5種類以上の元素の内、2元の相平衡状態図では固溶しない2種類の元素の組み合わせを含む合金ナノ粒子としては、PdRuRhOsIrおよびPtの組み合わせ、RuRhPdIrおよびPtの組み合わせ、AuRuRhIrPtなどを挙げることができる。
合金を構成する元素の内の3種類の組み合わせ中、少なくとも1組の3元の相平衡状態図では固溶しない元素の組み合わせとしては、PdRuB、AuRuIr、RuRhAu、PtIrRu、FeRuRh、AuIrRh、AgIrRh、AuPdRuなどが挙げられる。
2元の相平衡状態図が知られていない元素の組み合わせについても、1000℃で、圧力が1atmの場合に、30原子%以上の不混和な領域がある組み合わせであれば、相平衡状態図では固溶しない元素の組み合わせに含まれる。
【0022】
合金を構成する元素として、耐酸化性のある金属を含むことが好ましい。耐酸化性のある金属とは貴金属、Niなど50nm以下の粒径で金属状態(fcc、bcc、hcpなど金属構造が確認できるもの)を保つもののことを言う。
【0023】
本発明の合金は、白金族(Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、Ag、Au、Cd、Hg、In、Tl、Sn、Pb、Sb、Bi、Mo、W、Tc、Re、3d金属(Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn)、Ga、Ge、As、H、B、Al、C、Si、N、P、Y、Zr、Nb、ランタノイド、HfおよびTaからなる群のうち少なくとも3種類を含むことが好ましい。
合金を構成する元素が、白金族(Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、Ag、Au、Cd、Hg、In、Tl、Sn、Pb、Sb、Bi、Mo、W、Tc、Re、3d金属(Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn)、Ga、Ge、As、B、Al、C、Si、N、P、ランタノイドからなる群のうち少なくとも3種類を含むことがより好ましい。
これらの中でも、合金を構成する元素が、白金族(Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、Ag、Au、In、Tl、Sn、Mo、W、Re、3d金属(Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn)、B、C、N、ランタノイドからなる群のうち3種類を含むことが特に好ましい。
合金を構成する元素が、Ru、Rh、Ir、Pt、Au、Ag、Sn、Cu、Mo、W、Re、Fe、Co、Ni、B、Nからなる群のうち少なくとも3種類を含むことがより特に好ましい。
【0024】
一方、合金を構成する元素が、白金族(Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、Ag、Au、Niからなる群のうち少なくとも1種類を含むことが好ましく、2種類を含むことがより好ましい。また、Ru、Rh、Ir、Pt、Ag、Au、Niからなる群のうち少なくとも1種類を含むことが特に好ましく、2種類を含むことがより特に好ましい。
【0025】
合金の結晶構造は特に制限はない。合金の組成や全体の平均価電子数などによって、合金はfcc(面心立方格子)、hcp(最密六方格子)、bcc(体心立方格子)などの結晶構造であってよい。本発明の1つの好ましい実施形態の合金(粒子)はfcc構造またはhcp構造の固溶体である。
ただし合金が、規則合金となる場合(すなわち規則相を有する場合)、アモルファス構造を形成する場合もしくは金属間化合物を形成する場合は、上記の構造以外を保つことができる。なお、原子半径もしくは電気陰性度が大きく異なる元素を混合する場合、金属間化合物を形成することがある。金属間化合物の場合は、ランダムな原子配置とならず、規則合金となる。合金を構成する元素の内の2種類の組み合わせ中、少なくとも1組がRhC、PdB、貴金属と遷移金属との組み合わせの一部の場合、RuSnなどの貴金属と典型金属との組み合わせの一部の場合などを挙げることができる。ただし、構成元素が多い規則合金の場合、規則合金の中の原子サイトが特定の複数の元素でランダムに構成されていても良い。例えば、原子半径の大きな元素の原子サイトでは原子半径の大きな元素がランダムに、原子半径の小さな元素の原子サイトでは原子半径の小さな元素がランダムに配置されていてもよい。
白金族の6種の元素のうちfcc(面心立方格子)はRh、Pd、Ir、Ptの4種であり、hcp(最密六方格子)はOsとRuの2種である。本発明の1つの好ましい実施形態の合金(粒子)は、白金族の元素を含むfcc構造の固溶体である。本発明の他の1つの好ましい実施形態の合金は、白金族の元素を含むhcp構造の固溶体である。白金族の6種の元素を用いた場合でも、元の割合のとおりfcc構造の割合が高くなってもよく、hcp構造の割合が高くなってもよい。
【0026】
本発明の合金は固溶の均一性が高いため、3種類以上の元素は均一に分布して固溶していることが好ましい。ここで、「均一に分布」とは3種類以上の元素の分布に偏りがないことを意味し、合金を構成する各元素の合金内における分布の標準偏差がいずれも特定の値以下(例えば15原子%以下である)ことを意味する。
さらに、エネルギー分散型X線分析(EDS)マップにより各元素(原子)の分布に偏りがないことを確認できることが好ましい。また、粉末X線回折(XRD)から単一のfcc、bccまたはhcpのパターンを確認できることが好ましい。なお、例えばfccとhcpが共存していても両構造の原子間距離が等しければ、構成元素は各構造において均一に分布していると考えられる。その時、fccとhcpの両構造の金属組成は同等となるため、原子間距離は互いに等しくなる。
【0027】
(元素の割合)
本発明の合金は、合金を構成する各元素の合金内における割合(組成割合ともいう)は特に制限はない。すなわち、本発明の合金の平均組成は特に制限はない。
本発明の1つの好ましい実施形態において、合金全体を100原子%としたときの最も多い元素の割合の上限は、99.9原子%以下、80原子%以下、70原子%以下、60原子%以下、50原子%以下、45原子%以下、40原子%以下、あるいは35原子%以下である。
合金全体を100原子%としたときの最も少ない元素の割合の下限は、0.1原子%以上、1原子%以上、5原子%以上、9原子%以上、10原子以上、あるいは15原子%以上である。
また、最も原子比率の多い元素は、最も原子比率の少ない元素の好ましくは1~500倍、より好ましくは1~5倍、さらに好ましくは1~3倍、特に好ましくは1~2倍、最も好ましくは1~1.5倍である。本発明の合金がハイエントロピー固溶体合金である場合、3種類以上の元素の原子比はできるだけ近いほうが好ましい。
【0028】
<分布の標準偏差>
本発明の合金は、合金を構成する各元素の合金内における分布の標準偏差がいずれも15原子%以下であり、14原子%以下であることがより好ましく、13原子%以下であることが特に好ましく、12原子%以下であることがより特に好ましく、11原子%以下であることがさらに好ましく、10原子%以下であることがさらにより好ましく、8.7原子%以下であることがさらにより特に好ましい。また、合金を構成する少なくとも2種類の元素の合金内における分布の標準偏差が15原子%以下であり、14原子%以下であることがより好ましく、13原子%以下であることが特に好ましく、12原子%以下であることがより特に好ましく、11原子%以下であることがさらに好ましく、10原子%以下であることがさらにより好ましく、8.7原子%以下であることがさらにより特に好ましい。
合金を構成する各元素の合金内における分布の標準偏差が、合金内における当該元素の組成割合の50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることが特に好ましく、20%以下であることがより特に好ましい。
【0029】
合金を構成する元素の種類が増えるほど、合金を構成する各元素の合金内における分布の標準偏差が低い範囲になることが好ましい。合金を構成する元素が3種類の場合、上記の範囲内であることが好ましい。
合金を構成する元素がm種類で一様なm元のランダム合金を、ある微小体積に分割して、空間分布の統計解析を行う場合を考える。合金の平均組成を(C,C, ・・・, C)原子%とし、微小空間に含まれる原子の総数(計測する微小体積あたりの原子数)をNとすると、各微小体積に含まれる各元素の原子数の統計分布は、ランダム合金の場合、多項分布で近似できる。この場合、組成の揺らぎは、分布の広がりである標準偏差で評価できる。微小体積の組成分布の各元素iに対する標準偏差s(計測する微小体積における組成分布の各元素iに対する標準偏差)は、下記式1で表すことができる。
【数2】
(式1中、sは計測する微小体積1nmにおける組成分布の各元素iに対する標準偏差を表し、Nは計測する微小体積1nmあたりの原子数を表す。)
またここで、微小体積は、合金ナノ粒子の組成の計算精度および空間的なスケール考慮して1nmとするのが妥当であり、Nは、結晶性の合金の場合には結晶構造中に含まれる原子数と格子定数を用いることにより計算できる。
例えば、ある合金(Pt程度の格子定数のfcc合金など)について、1nmの微小体積に分割して、計測を行う場合を考えると、完全にランダムなランダム合金の組成分布の標準偏差sは下記表1に記載のように計算される(典型的なfccの金属の単位格子に含まれる原子数は4であり、格子定数は0.38~0.4nmであり、1nmに含まれる原子数Nは60~70前後になる。例えば、Ptの単位格子に含まれる原子数は4であり、格子定数は0.392nmであり、4/(0.392×0.392×0.392)からN=66として下記表1は計算した)。
一方、一般的な合金は、ランダム合金中の組成揺らぎの2.5倍以下であれば固溶の均一性が高いと言え、2.0倍以下であることが好ましく、1.5倍以下であることがより好ましい。すなわち、本発明の合金は、mを3以上の整数として合金を構成する元素がm種であって、iを1以上m以下の整数として合金を構成する各i元素について合金内における平均組成がC原子%である場合、各元素の合金内における分布が単峰性であることが好ましい。また、この場合、各元素の合金内における分布の標準偏差がいずれも、式1で表されるsを用いて、2.5×s原子%以下であることが好ましく、2.0×s原子%以下であることがより好ましく、1.5×s原子%以下であることが特に好ましい。例えば、各i元素が等組成である3元系~10元系の合金における、各元素の合金内における分布の標準偏差の好ましい範囲は下記表1に記載のとおりである。なお、参考として2元系の場合の値も記載した。
【表1】
なお、上記の好ましい範囲は、等組成の場合以外の合金にも使用可能である。例えば、各元素の平均組成が(60原子%,20原子%,10原子%,10原子%)の合金の場合、1~4番目の元素の合金内における分布の標準偏差は、それぞれCが60、Cが20、Cが10、Cが10である場合の各sを用いて、2.5×s原子%以下であることが好ましく、2.0×s原子%以下であることがより好ましく、1.5×s原子%以下であることが特に好ましい。
【0030】
合金を構成する各元素の合金内における分布の標準偏差は、STEM-EDS分析による以下の方法で求めることができる。
走査透過型電子顕微鏡の複数視野を用いた線分析(line scan)による元素分析を行う。複数視野のうち、多数の粒子が存在する視野を選択し、周囲の粒子と適度に距離が離れており粒子同士の重なりがなく粒径が平均的なサイズの粒子を選択することが好ましい。分散等は複数の測定点から算出したデータの平均としてもよい。また、大きさの依存性も調べて平均値としてもよいが、平均的なサイズのものを代表点として用いられる(用いることができる)。代表点として用いる粒子は、複数の測定点から算出した各測定点における平均組成を求めた後に、それらの中で、XRFによる元素分析で求めた組成に最も近い粒子、または原料溶液を混合した混合溶液中の各元素の仕込み組成に最も近い粒子を用いることができる。線分析の分析手法は、特定の測定点の視野において1または複数の粒子を選んで矢印方向に解析するものであるが、別の1または複数の粒子を任意に選択して分析してもほぼ同様の結果が得られ、矢印の方向、粒子の形状、粒子サイズが異なっていても同質のものが得られる。そのため、集合体を構成する任意の合金ナノ粒子について、ほぼ同様の結果が得られると考えられる。
ある視野において、合金(例えばナノ粒子の形状)の粒径よりも長い範囲について、線分析を行う範囲(ポジションの範囲)を調整する。線分析を行う範囲は、選択された1または複数の粒子の全体を横断する範囲とすることが、粒子全体にわたり均一であることを確認する観点から好ましい。すなわち、線分析を行う範囲の端部2点は、いずれも粒子内部ではなく、粒子外周上または粒子が存在しない場所であることが好ましい。線分析を行う範囲は、粒子のなるべく長い部分を横断することがより好ましく、例えば1つの粒子の全体を横断する場合にはその粒子の長軸(粒子外周のうち最も長い距離となる2点を含む線分)を横断することがより好ましい。
原子の面間隔または格子定数程度の長さのポジションごとにカウント数をそれぞれ測定する。例えば、測定点間隔(ポジション間隔)は0.5nm以下が好ましく、0.30nm以下がより好ましく、0.25nm以下が特に好ましい。
特性X線ピークの積分カウント数は400カウント以上であることが、精度を高める観点から好ましい。カウントが低いと、標準偏差が大きく見積もられてしまう問題が生じる。カウント数は、特定のエリアのスキャンを繰り返し行う場合、測定回数または測定時間を増やすことにより、増やすことができる。
バックグラウンドカウントは、測定によって異なる。サンプルの元素が明らかに存在しない部分の積分カウントからバックグラウンドカウントを計算し、バックグラウンド閾値を決定する。
バックグラウンド閾値を超えるカウント数のポジション部分に各元素が存在するとして、カウント数に基づいて各ポジションにおける各元素の割合(組成)を求める。
バックグラウンド閾値を超えるカウント数のポジション部分の組成について、通常の算術平均を用いて、平均組成および標準偏差を求める。
合金を構成する各元素の合金内における分布の標準偏差を元素マップから行う場合、2D分析を行ってもよい。STEMデータにピクセルを設定できる。
合金の粒径に応じて、1D分析(線分析)における測定点間隔、2D分析におけるピクセルのサイズを調整することが好ましい。
【0031】
<分布の相関係数>
本発明の合金は、合金を構成する2つの元素の分布の相関係数がいずれも±0.50未満であることが、偏析が起こらない観点から好ましく、±0.45以内であることがより好ましく、±0.40以内であることが特に好ましい。
本発明の合金は、合金を構成する少なくとも2種類の2つの元素の分布の相関係数が±0.50未満であることが好ましく、±0.45以内であることがより好ましく、±0.40以内であることが特に好ましい。
合金内における元素の分布の偏析が減少すると、それぞれの元素の分布の相関係数の値は、各元素が近くにいる状態(正の値で1に近い)または排他的な状態(負の値で1に近い)から、ほとんど相関がない状態(絶対値が0に近い)へと変化する。
【0032】
組成についての相関係数の算出は、地質学の分野で鉱物(岩石)の組成分布の評価に使われていた方法を合金の解析に適応することができる。合金を構成する2つの元素の分布の相関係数は、以下の方法で求めることができる。詳細は、Jour. Geol. Soc. Japan (2006) Vol. 112, No.3, p.173-187を参照でき、この文献は参照して本明細書に組み込まれる。
まず各測定点の標本組成ベクトルに対して、有心対数比変換(clr;centered logratio transformation)を行い、値が0から1に制限された組成空間から実空間に1対1の座標変換を行う(座標変換を行うことで、組成ベクトルの標本データに対して通常の多変量解析を適応することができるようになる)。座標変換後の組成の標本ベクトルに対しての以下の式から分散及び共分散を計算し、相関係数を算出する。
有心対数比変換:
clr(vec_x)=(ln x_A/g(x), ln x_B/g(x), ln x_C/g(x)) = (z_A, z_B, z_C)
ここでg(x)=(Πx_i)(1/3) (i=A,B,C)
変換後のベクトルを用いた多変量解析は通常の実空間のものと同じであり、公知の方法で行うことができる。
なお、相関係数では逆変換は必要ないが、その後clr逆変換をすることで算出した統計値を組成空間に逆写像して算出値とする。
【0033】
<合金の形状>
本発明の合金の形状は塊状(バルク)又は粒子状もしくは粒子の集合体(粉体)であってもよく、特に限定されないが、好ましくは粒子状(微粒子)であり、より好ましくは合金ナノ粒子である。
本発明の合金が粒子状もしくは粒子の集合体(粉体)である場合、各粒子はいずれも界面と接する状態となる。
合金ナノ粒子とは、平均粒径が1000nm未満の粒子のことを言う。
合金ナノ粒子の形状は、球状、楕円体状、角筒状、円筒状、立方体、直方体、鱗片状などの種々の形状が挙げられ、好ましくは球状または楕円体状である。
合金ナノ粒子の平均粒径は、好ましくは0.5~50nm、より好ましくは0.5~30nm、さらに好ましくは0.5~20nmである。合金ナノ粒子の平均粒径は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)による直接観察により算術平均として算出することができる。上記の合金ナノ粒子の平均粒径は合金の平均粒径であり、担体に担持されている場合には、担体以外の合金部分の平均粒径である。
合金ナノ粒子の粒径分布は、平均粒径±0.1~15nmであることが好ましく、±0.3~15nmであることがより好ましく、±1.0~10nmであることが特に好ましい。
【0034】
本発明の合金は、合金ナノ粒子の集合体である形状であってもよく、担体に担持されている形状であってもよい。
【0035】
(合金ナノ粒子の集合体)
合金ナノ粒子の集合体とは、合金ナノ粒子が多数集まった粉体のことを言う。
例えば、合金ナノ粒子の集合体は、担体などを実質的に含まないことが好ましく、または、担体に担持されていないことが好ましい。
合金ナノ粒子の集合体は、ポリマーなどの保護剤を含んでいてもよい。
また、合金ナノ粒子の集合体は、酸化物被膜などを各合金ナノ粒子の表面に有していてもよい。
合金ナノ粒子の集合体は、本発明の合金(合金ナノ粒子)の他に、不純物粒子を含んでいてもよい。ただし、合金ナノ粒子の集合体は、本発明の合金を90個数%以上含むことが好ましく、98個数%以上含むことがより好ましく、99個数%以上含むことが特に好ましく、100個数%含むことがより特に好ましい。
合金ナノ粒子の集合体は、製造に用いた化合物に含まれる3種類以上の元素のすべてが固溶している合金ナノ粒子の他に、製造に用いた化合物に含まれる3種類以上の元素のうち一部のみが固溶している合金ナノ粒子を含んでいてもよい。ただし、同種類の元素が固溶している合金ナノ粒子の割合が高いことが好ましい。合金ナノ粒子の集合体を構成する合金ナノ粒子のうち、構成元素として3種類以上の元素のすべてを含む合金ナノ粒子を90個数%以上含むことが好ましく、98個数%以上含むことがより好ましく、99個数%以上含むことが特に好ましく、100個数%含むことがより特に好ましい。
合金ナノ粒子の集合体に含まれる各粒子の割合は、合金ナノ粒子の集合体の一部を観察した視野の範囲内で求められる。例えば、合金ナノ粒子の集合体の一部を観察したある視野の範囲内で、合金ナノ粒子の集合体を構成する合金ナノ粒子のうち、構成元素として5種類以上の元素のすべてを含む合金ナノ粒子を、上記範囲で含むことが好ましい。ただし、合金ナノ粒子の集合体に含まれる各粒子の割合は、合金ナノ粒子の集合体の一部を観察した複数の視野の範囲内の平均として求めることがより好ましい。
【0036】
(担体)
担体は、特に制限はない。
使用する担体は特に制限はないが、具体的には酸化物類、窒化物類、炭化物類、単体炭素、単体金属などが担体として挙げられる。
担体に用いる酸化物類としては、シリカ、アルミナ、セリア、チタニア、ジルコニア、ニオビアなどの酸化物や、シリカ-アルミナ、チタニア-ジルコニア、セリア-ジルコニア、チタン酸ストロンチウムなどの複合酸化物などが挙げられる。
単体炭素としては、活性炭、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、活性炭素繊維などが挙げられる。
窒化物類としては、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化アルミニウム、窒化ジルコニウム、窒化バナジウム、窒化タングステン、窒化モリブデン、窒化チタン、窒化ニオブが挙げられる。
炭化物類としては、炭化ケイ素、炭化ガリウム、炭化インジウム、炭化アルミニウム、炭化ジルコニウム、炭化バナジウム、炭化タングステン、炭化モリブデン、炭化チタン、炭化ニオブ、炭化ホウ素が挙げられる。
単体金属としては、鉄、銅、アルミニウムなどの純金属及びステンレスなどの合金が挙げられる。
本発明では、担体は、非炭素繊維担体または非グラフェン担体であることが好ましく、非炭素材料担体(単体炭素からなる材料ではない材料)または粒子状炭素担体であることがより好ましく、非炭素材料担体であることが高温酸化雰囲気で担体が燃焼しないという観点から特に好ましく、酸化物類担体であることがより特に好ましい。粒子状炭素担体としては、活性炭などを使用することができる。
【0037】
<保護剤>
本発明の固溶体は、保護剤(好ましくは表面保護剤)により被覆されていてもよい。保護剤としては、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)などのポリマー類、オレイルアミンなどのアミン類、オレイン酸などのカルボン酸類が挙げられる。
【0038】
<合金の製造方法>
本発明の合金の製造方法は、混合溶液内に含まれる金属イオンを同時に還元することが好ましい。混合溶液内に含まれる金属イオンを同時に還元する方法としては特に制限はないが、例えば以下の方法を挙げることができる。
(1)合金を構成する各元素を含む化合物の溶液(原料溶液)を個別に超音波処理してから混合する方法。
(2)フローリアクターでの急速反応では、反応系への薬液(還元剤溶液、原料溶液またはこれらの混合溶液)投入開始から完了するまでの温度、流速、圧力を厳密に一定に保つ方法。
(3)噴霧系では、噴霧状態を一定に制御する方法。
本発明の合金の製造方法では、合金を構成する各元素を含む化合物の溶液(原料溶液)を個別に超音波処理してから混合する。還元剤に対して、混合溶液を混合することが好ましい。加熱した十分還元力の備わった還元剤に対して、混合溶液を混合することがより好ましい。
以下、合金の製造方法の好ましい態様を説明する。
【0039】
(原料溶液の調製)
合金の製造方法は、合金を構成する各元素を含む化合物の溶液(原料溶液)を個別に調製する工程を含むことが好ましい。
合金を構成する各元素は、溶媒に溶解される。
極性溶媒としては、水、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、ポリオール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレンングリコール、グリセリンなど)、ポリエーテル類(ポリエチレングリコールなど)、アセトニトリル、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドンなどが使用できる。これらの中でも水、アルコールが好ましい。
無極性溶媒としては、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、THFなどが使用できる。
原料溶液としては、金属元素の水溶性塩または金属以外の元素の水溶性塩を含む、水溶液を用いることが好ましいが、無極性の金属塩の組み合わせの場合は無極性の金属塩を含む無極性溶媒を用いてもよい。
各元素を含む化合物のモル比を調整することで、得られる合金の各元素のモル比を調整することができる。
【0040】
水溶性の元素の塩としては、以下のものが挙げられる。
白金族(Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、Ag、Au、Cd、Hg、In、Tl、Sn、Pb、Sb、Bi、Mo、W、Tc、Re、3d金属(Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn)、Ga、Ge、As、B、Al、C、Si、N、P、Y、Zr、Nb、ランタノイド、HfおよびTaの公知の水溶性塩(例えば硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、シアン酸カリウム塩、シアン酸ナトリウム塩、水酸化物、炭酸塩など)。特に以下のものが好ましい。
Ru: RuCl、RuCl・nHO、RuBr、KRuCl(NO)などのハロゲン化ルテニウム、硝酸ルテニウム、Ru(CO)12、Ru(NO)(NO(OH)、Ru(acac)など。
Rh: 酢酸ロジウム、硝酸ロジウム、塩化ロジウム(RhCl)、RhCl・3HOなど。
Pd: KPdCl、NaPdCl、KPdBr、NaPdBr、硝酸パラジウムなど。
Os: OsCl、OsBrなどのハロゲン化オスミウムなど。
Ir: 塩化イリジウム、イリジウムアセチルアセトナート(acac;acac系は無極性溶媒に溶解させることが好ましい)、イリジウムシアン酸カリウム、イリジウム酸カリウム、HIrClなど。
Pt: KPtCl、(NHPtCl、(NHPtCl、NaPtCl、HPtCl、Pt(acac)など。
Au: AuCl、HAuCl、K[AuCl]、Na[AuCl]、K[Au(CN)]、K[Au(CN)]、AuBr、HAuBrなど。
Ag: AgNO、Ag(CHCOO)など。
In: InCl・4HOなど。
Sn: SnCl・2HO、Sn(ethyhex)など。
Mo: Mo(CO)など。
Cu: Cu(NO、CuSO、Cu(CHCOO)、CuCO、CuCl、CuClなど。
Fe: FeCl・6HO、Fe(NOなど。
B: BHなど。
N: Ru(NO)(NO(OH)、アンモニア、硝酸、ヒドラジンなど。
【0041】
(個別の超音波処理)
合金の製造方法は、合金を構成する各元素を含む化合物の溶液(原料溶液)を個別に超音波処理する工程を含むことが好ましい。原料溶液を個別に超音波処理することにより、合金を構成する各元素を含む化合物をすべて混合した溶液をまとめて超音波処理する場合よりも、顕著に固溶の均一性が高い合金を得られる。
超音波処理は、遮光しながら行うことが、各元素を含む化合物の光による還元を抑制する観点から好ましい。また、超音波処理は金属塩の熱による還元を抑制する観点から、氷浴などの低温で行うことが好ましい。
個別の超音波処理をする効果、超音波処理時の遮光や温度による効果は、合金を構成する各元素の種類や原料溶液の種類などに応じて異なることがある。そのため、合金を構成する各元素の種類や原料溶液の種類などに応じて、これらの工程によって固溶の均一性が高まる度合いは異なることがある。
ただし、原料溶液を個別に超音波処理する工程の代替として、個別に超音波処理する場合と同等の速度で均一に個別に原料溶液を調製できる方法があれば、その方法を用いてもよい。
【0042】
(還元剤の調製)
合金の製造方法では、還元剤を調製する工程を含むことが好ましい。
還元剤は、液体還元剤であることが好ましい。
液体還元剤としては、例えばエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどの多価アルコール;または高圧下でのメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノールなどの低級アルコール;又は高圧下での含水エタノールなどの含水アルコールなど;BHのTHF溶液(THF錯体);またはヒドラジンやNaBH溶液、ナトリウムナフタレニド溶液などを挙げることができる。また、合金を構成する各元素を、還元剤として用いてもよい。例えば、BHのTHF溶液(THF錯体)を還元剤として用いて、B元素を含む合金を形成してもよい。
後述するフロー装置を用いて、加圧下に混合および加熱をする場合、低沸点の還元剤を好ましく用いることができる。好ましい還元剤である低級アルコールの沸点は、室温から130℃程度、より好ましくは40~120℃程度、さらに好ましくは60~100℃程度である。これらの還元剤は常圧下では沸点が低い為、合金を構成する各元素を含む化合物(金属化合物など)を還元して相平衡状態図では固溶しない金属から構成される合金を形成し難い。加圧下に高温で反応させることにより還元性を獲得し、相平衡状態図では固溶しない金属から構成される合金を得るための還元剤として機能することができる。
還元剤は、合金を構成する各元素を含む化合物(好ましくは水溶性塩)の還元のために1当量以上、好ましくは過剰量使用される。
【0043】
(混合)
合金の製造方法では、個別の超音波処理をされた原料溶液を混合して混合溶液とする工程を含むことが好ましい。
混合溶液を加熱する前または加熱する際に、原料溶液に還元剤を混合することが好ましい。
合金の製造方法では、混合溶液を加熱反応する工程を含むことが好ましい。
加熱時の反応時間は、1分間~12時間程度とすることができる。
加熱は、撹拌下に行うことが好ましい。
加熱時の反応温度は好ましくは170~300℃程度、より好ましくは180~250℃程度である。また、NaBHなどの還元剤を使用する場合は室温で用いても冷却して用いてもよい。
【0044】
混合または加熱の方法としては特に制限はなく、例えば、還元剤と、混合溶液の一方または両方を加熱しておいて、これらを混合してもよい。
また、合金の製造方法では、還元剤を加熱する工程を含むことが好ましく、この工程により加熱された還元剤に原料溶液を混合して加熱反応させることが好ましい。例えば、還元剤を加熱しておいて、混合溶液をポンプ(シリンジポンプ)で滴下したり、スプレー装置で噴霧したりして混合してもよい。
または、3種以上の個別の超音波処理をされた原料溶液と還元剤の溶液を反応容器に供給し、加圧下に加熱反応させるフロー装置(フローリアクター)を用いて、混合および加熱してもよい。
フロー装置で加圧する場合、原料溶液と還元剤の溶液の圧力は各々0.1~10MPa程度、好ましくは0.2~9MPa程度である。また、反応容器内の圧力は0.1~10MPa程度、好ましくは0.2~9MPa程度である。加圧する場合の反応容器の温度(反応温度)は100~500℃程度、好ましくは150~400℃、より好ましくは180~300℃程度である。
【0045】
(合金の分取)
合金の製造方法では、加熱反応後の溶液から沈殿物を分取する工程を含むことが好ましい。
この工程により、3種以上の金属を固溶状態で含む合金を得ることができる。
沈殿物を分取する方法としては、減圧乾燥、遠心分離、濾過、沈降、再沈殿、粉体分離器(サイクロン)による分離等を挙げることができる。
沈殿物を分取する前に、反応後の溶液を放冷または急冷することが好ましい。
【0046】
混合溶液、還元剤またはこれらを混合した反応溶液に対して、保護剤を加えることで凝集を抑制した粒子(好ましくは合金ナノ粒子)を得ることができる。
保護剤を使用する場合、保護剤は、原料溶液の混合溶液と還元剤とを混合してなる反応溶液内に金属化合物の総量の、質量比で好ましくは0.01~100倍、より好ましくは0.5~50倍、さらに好ましくは1~10倍の濃度で含まれる。保護剤は、原料溶液に含まれていてもよく、還元剤に含まれていてもよく、原料溶液と還元剤の両方に含まれていてもよい。
【0047】
また、混合溶液、還元剤またはこれらを混合した反応溶液中に、担体を共存させることにより、担体に合金が担持された担持触媒を得ることができる。
反応溶液中に担体を共存させることにより、担体に多元系固溶体が担持された担持触媒を得ることができる。多元系固溶体が微粒子である場合、多元系固溶体微粒子の製造のための反応溶液中に担体と同時に保護剤を加えることで、微粒子の凝集を抑制した担持触媒を得ることができる。
【0048】
一方、混合溶液、還元剤またはこれらを混合した反応溶液中に、保護剤も担体も添加しなくてもよい。これにより、合金ナノ粒子の集合体である合金を得ることができる。
この場合、合金ナノ粒子の集合体である合金と担体とを、溶液中又は粉体同士を非溶媒系または溶媒系で混合し、成形することで、担体に合金が担持された担持触媒を得ることができる。溶媒を使用した場合には必要に応じてろ過後に乾燥してもよい。
【0049】
[触媒]
本発明の合金は優れた性能を示す触媒として利用することができる。触媒として利用するにあたっての合金の形態に特に制限はない。
担体に担持した担持触媒として利用してもよい。
【0050】
本発明の合金が触媒として優れた性能を示す触媒反応について特に制限はないが、例えば、一般に白金族元素を含有する触媒が用いられることで知られる反応が挙げられる。具体的には水添反応を含めた還元反応、脱水素反応、燃焼も含めた酸化反応、カップリング反応等の化学反応が挙げられる。またこれらの触媒性能を利用することで様々なプロセスや装置等の用途に好適に利用することができる。好適に利用できる用途に特に制限は無いが、例えば、水素発生反応(HER)用触媒、水添反応用触媒、水素酸化反応用触媒、酸素還元反応(ORR)用触媒、酸素発生反応(OER)用触媒、窒素酸化物(NOx)還元反応用触媒、一酸化炭素(CO)酸化反応用触媒、脱水素反応用触媒、VVOC又はVOC酸化反応用触媒、排ガス浄化用触媒、水電解反応用触媒、水素燃料電池用触媒などが挙げられる。
【実施例0051】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0052】
[装置]
実施例において、以下の装置を用いた。なお、PXRDは、特に明記されていない場合はRigaku Miniflex600 (Cu Kα)を用いた。
(i-1)Powder X-ray Diffraction (PXRD)
Rigaku Miniflex600 (Cu Kα)
(i-2)PXRD
SPring-8 BL02B2(λ=0.63Å、0.58Å)
(i-3)PXRD
SPring-8 BL04B2
(ii)Eenergy-dispersive x-ray spectroscopy in scanning transmission electron microscopy (STEM-EDS)およびEELS
JEOL JEM-ARM200CF (accelerating voltage: 120 kV)
(iii) X-ray fluorescence analysis (XRF)
蛍光X線分析装置 ZSX Primus IV
【0053】
[実施例1]:AuRuIr
<金属イオン溶液の個別の超音波処理>
HAuBrをジエチレングリコールDEGに溶かした金属イオン溶液を調製し、遮光した状態で、5分間、超音波処理した。なお、特に断りがない限り、超音波処理は氷冷して低温で行った。
RuCl(NO)をジエチレングリコールDEGに溶かした金属イオン溶液を調製し、遮光した状態で、5分間、超音波処理した。
IrClをジエチレングリコールDEGに溶かした金属イオン溶液を調製し、5分間、超音波処理した。
個別の超音波処理をした3種類の金属イオン溶液を1:1:1で混合し、0.15mmolのDEG溶液の各金属イオン混合溶液を約3mlに溶かし合わせて10mlに調製した。
【0054】
<合金の調製>
ポリビニルピロリドン(PVP) K30(4mmol;富士フイルム和光純薬株式会社製)を含むエチレングリコール(EG)100mlを195℃で加熱撹拌した。
この溶液に対して、金属イオン混合溶液をシリンジポンプで1.5ml/minの速度で送液(滴下)して加え、195℃で10分間維持した。その後、室温まで放冷した。生じた沈殿物であるナノ粒子を遠心分離により分離した。
【0055】
<STEM-EDSによる元素分析>
分離したナノ粒子のSTEM-EDS分析を行った。走査透過型電子顕微鏡の複数視野を用いた線分析(line scan)による元素分析を行い、3種の元素の金属組成を算出した。以下の各実施例および比較例における線分析の分析手法は、特定の測定点の視野において1または複数の粒子を選んで矢印方向に解析した実データを記載したものであるが、別の1または複数の粒子を任意に選択して分析してもほぼ同様の結果が得られており、矢印の方向、粒子の形状、粒子サイズが異なっていても同質のものが得られている。そのため、集合体を構成する任意の合金ナノ粒子について、ほぼ同様の結果が得られると考えられる。
図1の測定点では、矢印の部分について、0.00nmのポジションから25.90nmのポジションまでの100ポイントにおいて、0.15~0.30nmごとに元素分析を行った。バックグラウンド閾値は30カウントとした。ナノ粒子は、4.67nmのポジションから17.70nmまでのポジションまでカウントされ、ナノ粒子のこの矢印の部分上における長さは約13.03nmであった。図1の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数および組成のグラフを、それぞれ図2(A)および図2(B)に示した。
図1の測定点での、平均組成、合金を構成する各元素の合金内における分布の標準偏差、および合金を構成する2つの元素の分布の相関係数を求め、下記表2に記載した。
平均組成は、通常の算術平均を用いて求めた。
標準偏差は、通常の算術平均を用いて求めた。
相関係数は、有心対数比変換(clr;centered logratio transformation)をして求めた。clr変換は、Jour. Geol. Soc. Japan (2006) Vol. 112, No.3, P.173-187を参照した。相関係数は、具体的には、EDXの線分析の測定データを、EDX測定ソフトウェアのNoran system 7(Thermo Fisher Scientific社製)を使用して組成データに直し、統計学計算ソフトウェアのRおよびRのライブラリパッケージCompositionsを用いて計算した。Compositionsは組成データの統計解析のためのライブラリである(“Analyzing Compositional Data with R”, van den Boogaart, K. Gerald, Tolosana-Delgado, Raimon, Softcover ISBN:978-3-642-36808-0, Springer社発行を参照)。
【0056】
【表2】
【0057】
図3の測定点では、矢印の部分について、0.15~0.30nmごとに実施例1で得られたナノ粒子の元素分析を行った。バックグラウンド閾値は30カウントとした。図2の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数および組成のグラフを、それぞれ図3(A)および図3(B)に示した。平均組成、合金を構成する各元素の合金内における分布の標準偏差を求め、下記表3に記載した。平均組成、標準偏差及び相関係数は実施例1と同様に求めた。
【0058】
【表3】
【0059】
図5の測定点では、矢印の部分について、0.15~0.30nmごとに実施例1で得られたナノ粒子の元素分析を行った。バックグラウンド閾値は30カウントとした。図5の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数および組成のグラフを、それぞれ図6(A)および図6(B)に示した。平均組成、合金を構成する各元素の合金内における分布の標準偏差を求め、下記表4に記載した。平均組成、標準偏差及び相関係数は実施例1と同様に求めた。
【0060】
【表4】
【0061】
表2~4より、本発明の合金は、ナノ粒子の形状における固溶の均一性が高いことがわかった。
【0062】
また、得られた全ての合金の一部のHAADF-STEM像およびEDSマップを図7に示した。図7より、STEM像にて観察した限り、各ナノ粒子にすべての元素が固溶していることが確認された。すなわち、本実施例で確認した視野の範囲内では、合金ナノ粒子の集合体が、構成元素として製造に用いた化合物に含まれる3種類の元素のすべてが固溶している合金ナノ粒子を100個数%含むことがわかる。また、本発明の合金は、集合体を構成する任意の合金ナノ粒子が、構成元素として製造に用いた化合物に含まれる3種類の元素のすべてを含むことがわかる。
【0063】
<XRD分析>
得られたAuRuIrのナノ粒子について、SPring-8 BL02B2を用いてXRD分析を行った。得られた結果を図8に示した。
【0064】
<TEMによる分析>
得られたAuRuIrのナノ粒子のTEMによる写真を図9に示した。図9より、得られたナノ粒子の平均粒径は8.9±1.7nmであった。
【0065】
<電極の製造>
得られたAuRuIrのナノ粒子をカーボン粒子に担持した電極触媒(合金/C:金属量20wt%)を製造した。ナノ粒子は、0.05mgとした。
合成した合金ナノ粒子をカーボン粒子(Vulcan-XC-72R)に対し20wt%の割合で水中で混合し、超音波分散によりカーボン上に担持し、遠心分離で回収し、乾燥させ、触媒粉末を製造した。この触媒粉末2.5mgをイソプロパノール6.55ml、水3.44mlの混合溶液に分散させ、5wt%Nafion(登録商標)溶液(富士フイルム和光純薬株式会社製)0.01mlを加え、十分に混合し、触媒インクを調製した。このインクを、適量を回転リングディスク電極またはグラッシーカーボン電極などの作用電極に塗布することで触媒電極を作製した。
【0066】
<触媒活性>
電流測定装置:ポテンシオスタット(BAS社製 ALS760E)
測定方法:得られたAuRuIrのナノ粒子をカーボン粒子に担持した回転リングディスク電極をカソードとし、3電極式セル(対極:白金線、参照極:銀-塩化銀電極(Ag/AgCl)、電解液:0.1MのHClO水溶液、25℃、酸素飽和)を用いて、0.1Vから-0.4V(vs.RHE)まで5mV/sにて電位Eを掃引したときの電流値Iを測定し、HER触媒活性を3回評価した。結果を図10(A)および図10(B)に示す。
【数3】
【0067】
[実施例11]:RuRhAu
<金属イオン溶液の個別の超音波処理>
HAuBrをジエチレングリコールDEGに溶かした金属イオン溶液を調製し、遮光した状態で、5分間、超音波処理した。
RuCl(NO)をジエチレングリコールDEGに溶かした金属イオン溶液を調製し、遮光した状態で、5分間、超音波処理した。
RhClをジエチレングリコールDEGに溶かした金属イオン溶液を調製し、5分間、超音波処理した。
個別の超音波処理をした3種類の金属イオン溶液を1:1:1で混合し、0.15mmolのDEG溶液の各金属イオン混合溶液を約3mlに溶かし合わせて10mlに調製した。
【0068】
<合金の調製>
ポリビニルピロリドン(PVP) K30(4mmol;富士フイルム和光純薬株式会社製)を含むエチレングリコール(EG)100mlを195℃で加熱撹拌した。
この溶液に対して、金属イオン混合溶液をシリンジポンプで1.5ml/minの速度で送液(滴下)して加え、195℃で10分間維持した。その後、室温まで放冷した。生じた沈殿物であるナノ粒子を遠心分離により分離した。
【0069】
<元素分析>
分離したナノ粒子のSTEM-EDS分析を行った。走査透過型電子顕微鏡の複数視野を用いた線分析(line scan)による元素分析を行い、3種の元素の金属組成を算出した。
図11の測定点では、矢印の部分について、0.00nmのポジションから19.20nmのポジションまでの120ポイントにおいて、0.10~0.20nmごとに元素分析を行った。バックグラウンド閾値は35カウントとした。ナノ粒子は、3.86nmのポジションから13.40nmまでのポジションまでカウントされ、ナノ粒子のこの矢印の部分上における長さは約9.54nmであった。図11の矢印の部分における各ポジションのカウント数および組成のグラフを、それぞれ図12(A)および図12(B)に示した。
図11の測定点での、平均組成、合金を構成する各元素の合金内における分布の標準偏差、および合金を構成する2つの元素の分布の相関係数を実施例1と同様に求め、下記表5に記載した。
【0070】
【表5】
【0071】
図13の測定点では、矢印の部分について、0.15~0.30nmごとに実施例11で得られたナノ粒子の元素分析を行った。バックグラウンド閾値は30カウントとした。図13の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数および組成のグラフを、それぞれ図14(A)および図14(B)に示した。平均組成、合金を構成する各元素の合金内における分布の標準偏差を求め、下記表6に記載した。平均組成、標準偏差及び相関係数は実施例1と同様に求めた。
【0072】
【表6】
【0073】
図15の測定点では、矢印の部分について、0.15~0.30nmごとに実施例11で得られたナノ粒子の元素分析を行った。バックグラウンド閾値は30カウントとした。図15の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数および組成のグラフを、それぞれ図16(A)および図16(B)に示した。平均組成、合金を構成する各元素の合金内における分布の標準偏差を求め、下記表7に記載した。平均組成、標準偏差及び相関係数は実施例1と同様に求めた。
【0074】
【表7】
【0075】
図17の測定点では、矢印の部分について、0.15~0.30nmごとに実施例11で得られたナノ粒子の元素分析を行った。バックグラウンド閾値は30カウントとした。図17の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数および組成のグラフを、それぞれ図18(A)および図18(B)に示した。平均組成、合金を構成する各元素の合金内における分布の標準偏差を求め、下記表8に記載した。平均組成、標準偏差及び相関係数は実施例1と同様に求めた。
【0076】
【表8】
【0077】
表5~8より、本発明の合金は、ナノ粒子の形状における固溶の均一性が高いことがわかった。
【0078】
また、得られた全ての合金の一部のHAADF-STEM像およびEDSマップを図19に示した。図19より、STEM像にて観察した限り、各ナノ粒子にすべての元素が固溶していることが確認された。すなわち、本実施例で確認した視野の範囲内では、合金ナノ粒子の集合体が、構成元素として製造に用いた化合物に含まれる3種類の元素のすべてが固溶している合金ナノ粒子を100個数%含むことがわかる。また、本発明の合金は、集合体を構成する任意の合金ナノ粒子が、構成元素として製造に用いた化合物に含まれる3種類の元素のすべてを含むことがわかる。
【0079】
<XRD分析>
得られたRuRhAuのナノ粒子について、SPring-8 BL02B2を用いてXRD分析を行った。得られた結果を図20に示した。
【0080】
<TEMおよびXRFによる元素分析>
得られたRuRhAuのナノ粒子のTEMによる写真を図21に示した。図21より、得られたナノ粒子の平均粒径は11.1±2.5nmであった。
XRFによる元素分析を行った。その結果、Ru:Rh:Au=35.1原子%:34.3原子%:30.6原子%となった。
【0081】
<触媒活性>
得られたRuRhAuのナノ粒子をカーボン粒子に担持した電極触媒(合金/C:金属量20wt%)を製造した。ナノ粒子は、0.05mgとした。実施例1と同様に電極の製造をした。
電流測定装置:ポテンシオスタット(BAS社製 ALS760E)
測定方法:得られたRuRhAuのナノ粒子をカーボン粒子に担持した回転リングディスク電極をカソードとし、3電極式セル(対極:白金線、参照極:銀-塩化銀電極(Ag/AgCl)、電解液:0.1MのHClO水溶液、25℃、酸素飽和)を用いて、0.1Vから-0.4V(vs.RHE)まで5mV/sにて電位Eを掃引したときの電流値Iを測定し、HER触媒活性を評価した。結果を図22(A)および図22(B)に示す。
【0082】
[実施例21]:fcc-PtIrRu
<金属イオン溶液の個別の超音波処理>
RuCl(NO)をイオン交換水に溶かした金属イオン溶液を調製し、遮光した状態で、5分間、超音波処理した。
PtClをイオン交換水に溶かした金属イオン溶液を調製し、5分間、超音波処理した。
IrClをイオン交換水に溶かした金属イオン溶液を調製し、5分間、超音波処理した。
個別の超音波処理をした3種類の金属イオン溶液をHPtCl:KRuCl(NO):HIrCl=1.5:7:1.5で混合し、0.2mmolの水溶液の各金属イオン混合溶液を溶かし合わせて20mlに調製した。
【0083】
<合金の調製>
ポリビニルピロリドン(PVP) K30(4mmol;富士フイルム和光純薬株式会社製)を含むエチレングリコール(EG)100mlを190℃で加熱撹拌した。
この溶液に対して、金属イオン混合溶液をスプレーで噴霧して加え、190℃で10分間維持した。その後、室温まで放冷した。生じた沈殿物であるナノ粒子を遠心分離により分離し、ナノ粒子である実施例21の合金を調製した。
【0084】
[実施例22]:hcp-PtIrRu
<金属イオン溶液の個別の超音波処理>
RuCl(NO)をジエチレングリコール(DEG)に溶かした金属イオン溶液を調製し、遮光した状態で、5分間、超音波処理した。
Pt(acac)をジエチレングリコール(DEG)に溶かした金属イオン溶液を調製し、5分間、超音波処理した。
IrClをジエチレングリコール(DEG)に溶かした金属イオン溶液を調製し、5分間、超音波処理した。
個別の超音波処理をした3種類の金属イオン溶液をPt(acac):KRuCl(NO):HIrCl=1.5:7:1.5で混合し、0.2mmolのジエチレングリコール(DEG)溶液(10ml)の金属イオン混合溶液を調製した。
【0085】
<合金の調製>
ポリビニルピロリドン(PVP) K30(0.6mmol;富士フイルム和光純薬株式会社製)を含むエチレングリコール(EG)100mlを180℃で加熱撹拌した。
この溶液に対して、金属イオン混合溶液をシリンジポンプで3.0ml/minの速度で送液(滴下)して加え、その後、室温まで急冷した。生じた沈殿物であるナノ粒子を遠心分離により分離し、ナノ粒子である実施例22の合金を調製した。
【0086】
<STEM-EDSによる元素分析>
分離した実施例21の合金および実施例22の合金のSTEM-EDS分析を実施例1と同様に行う。
まず、実施例21で得られた合金(fcc-PtIrRu)ナノ粒子について、走査透過型電子顕微鏡の複数視野を用いた線分析(line scan)による元素分析を行い、3種の元素の金属組成を算出した。
図23の測定点では、矢印の部分について、0.15~0.30nmごとに実施例21で得られたナノ粒子の元素分析を行った。バックグラウンド閾値は30カウントとした。図23の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数および組成のグラフを、それぞれ図24(A)および図24(B)に示した。平均組成、合金を構成する各元素の合金内における分布の標準偏差、および合金を構成する2つの元素の分布の相関係数を求め、下記表9に記載した。平均組成、標準偏差及び相関係数は実施例1と同様に求めた。
【0087】
【表9】
【0088】
図25の測定点では、矢印の部分について、0.15~0.30nmごとに実施例21で得られたナノ粒子の元素分析を行った。バックグラウンド閾値は30カウントとした。図25の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数および組成のグラフを、それぞれ図26(A)および図26(B)に示した。平均組成、合金を構成する各元素の合金内における分布の標準偏差、および合金を構成する2つの元素の分布の相関係数を求め、下記表10に記載した。平均組成、標準偏差及び相関係数は実施例1と同様に求めた。
【0089】
【表10】
【0090】
図27の測定点では、矢印の部分について、0.15~0.30nmごとに実施例21で得られたナノ粒子の元素分析を行った。バックグラウンド閾値は30カウントとした。図27の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数および組成のグラフを、それぞれ図28(A)および図28(B)に示した。平均組成、合金を構成する各元素の合金内における分布の標準偏差、および合金を構成する2つの元素の分布の相関係数を求め、下記表11に記載した。平均組成、標準偏差及び相関係数は実施例1と同様に求めた。
【0091】
【表11】
【0092】
表9~11より、実施例21で得られた合金(fcc-PtIrRu)ナノ粒子である本発明の合金は、ナノ粒子の形状における固溶の均一性が高いことがわかる。
【0093】
次に、実施例22で得られた合金(hcp-PtIrRu)ナノ粒子について、走査透過型電子顕微鏡の複数視野を用いた線分析(line scan)による元素分析を行い、3種の元素の金属組成を算出した。
図29の測定点では、矢印の部分について、0.15~0.30nmごとに実施例22で得られたナノ粒子の元素分析を行った。バックグラウンド閾値は30カウントとした。図29の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数および組成のグラフを、それぞれ図30(A)および図30(B)に示した。平均組成、合金を構成する各元素の合金内における分布の標準偏差、および合金を構成する2つの元素の分布の相関係数を求め、下記表12に記載した。平均組成、標準偏差及び相関係数は実施例1と同様に求めた。
【0094】
【表12】
【0095】
図31の測定点では、矢印の部分について、0.15~0.30nmごとに実施例22で得られたナノ粒子の元素分析を行った。バックグラウンド閾値は30カウントとした。図31の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数および組成のグラフを、それぞれ図32(A)および図32(B)に示した。平均組成、合金を構成する各元素の合金内における分布の標準偏差、および合金を構成する2つの元素の分布の相関係数を求め、下記表13に記載した。平均組成、標準偏差及び相関係数は実施例1と同様に求めた。
【0096】
【表13】
【0097】
表12および13より、実施例22で得られた合金(Hcp-PtIrRu)ナノ粒子である本発明の合金は、ナノ粒子の形状における固溶の均一性が高いことがわかる。
【0098】
また、実施例21で得られた全ての合金(fcc-PtIrRu)の一部のHAADF-STEM像およびEDSマップを図33に示した。実施例22で得られた全ての合金(hcp-PtIrRu)の一部のHAADF-STEM像およびEDSマップを図34に示した。図33および図34より、STEM像にて観察した限り、各ナノ粒子にすべての元素が固溶していることが確認された。すなわち、本実施例で確認した視野の範囲内では、合金ナノ粒子の集合体が、構成元素として製造に用いた化合物に含まれる3種類の元素のすべてが固溶している合金ナノ粒子を100個数%含むことがわかる。また、本発明の合金は、集合体を構成する任意の合金ナノ粒子が、構成元素として製造に用いた化合物に含まれる3種類の元素のすべてを含むことがわかる。
【0099】
<XRD分析>
得られた実施例21の合金および実施例22の合金について、XRD分析を行った。得られた結果を図35に示した。
【0100】
<TEMおよびXRFによる元素分析>
得られた実施例21の合金(fcc-PtIrRu)のナノ粒子のTEMによる写真を図36(A)に示した。図36(A)より、得られたナノ粒子の平均粒径は3.5±0.56nmであった。また、実施例22の合金(hcp-PtIrRu)のナノ粒子のTEMによる写真を図36(B)に示した。図36(B)より、得られたナノ粒子の平均粒径は3.0±0.34nmであった。
XRFによる元素分析を行った。その結果、実施例21の合金(fcc-PtIrRu)はPt:Ru:Ir=14.3原子%:71.4原子%:14.35原子%となった。また、実施例22の合金(fcc-PtIrRu)はPt:Ru:Ir=14.7原子%:70.1原子%:15.2原子%となった。
【0101】
<触媒活性>
得られた実施例21の合金(fcc-PtIrRu)のナノ粒子または実施例22の合金(hcp-PtIrRu)のナノ粒子をカーボン粒子に担持した電極触媒(合金/C:金属量20wt%)を製造した。ナノ粒子は、10μgとした。
電流測定装置:ポテンシオスタット(BAS社製 ALS760E)
測定方法:得られたAuRuIrのナノ粒子をカーボン粒子に担持した回転リングディスク電極をカソードとし、3電極式セル(対極:白金線、参照極:銀-塩化銀電極(Ag/AgCl)、電解液:1MのKOH水溶液、25℃、酸素飽和)を用いて、0.00Vから-0.15V(vs.RHE)までLSV 5mV/sにて電位Eを掃引したときの電流値Iを測定し、HER触媒活性を評価した。結果を図37に示す。
【数4】
【0102】
図37より、実施例22の合金(hcp-PtIrRu)の方が、実施例22の合金(fcc-PtIrRu)および市販のPt/C触媒(アルファ・エイサー社製)よりも、良好な触媒活性を示した。
【0103】
[実施例31]:PdRuB
(1)PdRuナノ粒子の調製
<金属イオン溶液の個別の超音波処理>
PdClをイオン交換水に溶かした金属イオン溶液を調製し、遮光した状態で、5分間、超音波処理した。
RuCl(NO)をイオン交換水に溶かした金属イオン溶液を調製し、遮光した状態で、 5 分間、超音波処理した。
個別の超音波処理をした2種類の金属イオン溶液をKPdCl:KRuCl(NO)=1:1で混合し、Pd0.7mmol、Ru0.85mmolの水溶液(35ml)の金属イオン混合溶液を調製した。
【0104】
<合金の調製>
ポリビニルピロリドン(PVP) K30(0.6mmol;富士フイルム和光純薬株式会社製)を含むトリエチレングリコール溶液(150ml)を200℃で加熱撹拌した。
この溶液に対して、金属イオン混合溶液を噴霧して加え、その後、室温まで急冷した。生じた沈殿物であるナノ粒子を遠心分離により分離し、PdRuナノ粒子を調製した。
【0105】
(2)PdRuBナノ粒子の調製
得られたPdRuナノ粒子を原料として用いて、80℃、オーバーナイトで真空ポンプを用いて脱気した。その後、窒素ガスで系内を置換した。
BHのTHF溶液 1M(Sigma-Aldrich製)を、PdRuナノ粒子に対して過剰量となるように加えて混合し、80℃で2日間、窒素雰囲気で加熱撹拌した。
生じた沈殿物であるナノ粒子を遠心分離により分離し、PdRuBナノ粒子を調製した。
【0106】
<STEM-EDSによる元素分析>
分離したPdRuBナノ粒子のSTEM-EDS分析を実施例1と同様に行う。平均組成、合金を構成する各元素の合金内における分布の標準偏差、および合金を構成する2つの元素の分布の相関係数を求める。
本発明の合金は、ナノ粒子の形状における固溶の均一性が高いことがわかる。
【0107】
また、得られた全てのPdRuBナノ粒子の一部のHAADF-STEM像およびEDSマップを図38に、HAADF-STEM像およびEELSマップを図39にそれぞれ示した。図38および39より、STEM像にて観察した限り、各ナノ粒子にすべての元素が固溶していることが確認された。すなわち、本実施例で確認した視野の範囲内では、合金ナノ粒子の集合体が、構成元素として製造に用いた化合物に含まれる3種類の元素のすべてが固溶している合金ナノ粒子を100個数%含むことがわかる。また、本発明の合金は、集合体を構成する任意の合金ナノ粒子が、構成元素として製造に用いた化合物に含まれる3種類の元素のすべてを含むことがわかる。
【0108】
<XRD分析>
得られたPdRuBナノ粒子の合金について、SPring-8 BL04B2を用いてXRD分析を行った。得られた結果を図40に示した。
【0109】
<TEMおよびXRFによる元素分析>
得られたPdRuBナノ粒子のTEMによる写真を図41(A)に示した。図41(A)より、得られたナノ粒子の平均粒径は12.9±1.9nmであった。
なお、中間生成物であるPdRuのナノ粒子のTEMによる写真を図41(B)に示した。図41(B)より、得られたナノ粒子の平均粒径は12.9±1.8nmであった。
XRFによる元素分析を行った。その結果、中間生成物であるPdRuのナノ粒子Pd:Ru=48原子%:52原子%となった。
【0110】
[実施例41]:AuPdRu
<金属イオン溶液の個別の超音波処理>
HAuCl・3HOをイオン交換水に溶かした金属イオン溶液を調製し、遮光した状態で、5分間、超音波処理した。
PdClをイオン交換水に溶かした金属イオン溶液を調製し、遮光した状態で、5分間、超音波処理した。
RuCl・nHOをイオン交換水に溶かした金属イオン溶液を調製し、遮光した状態で、5分間、超音波処理した。
個別の超音波処理をした3種類の金属イオン溶液を1:1:1で混合し、0.35mmolの水溶液の各金属イオン混合溶液を約13.3mlに溶かし合わせて40mlに調製した。
【0111】
<合金の調製>
ポリビニルピロリドン(PVP) K30(10mmol;富士フイルム和光純薬株式会社製)を含むトリエチレングリコール(TEG)300mlを225℃で加熱撹拌した。
この溶液に対して、金属イオン混合溶液をTEG溶液が220℃を下回らない速度でスプレーで加え、225℃で10分間維持した。その後、室温まで放冷した。生じた沈殿物であるナノ粒子を遠心分離により分離した。
【0112】
<元素分析>
分離したナノ粒子のSTEM-EDS分析を行った。走査透過型電子顕微鏡の複数視野を用いた線分析(line scan)による元素分析を行い、3種の元素の金属組成を算出した。固溶の均一性が高まる… 図42の測定点では、矢印の部分について、0.15~0.30nmごとに実施例41で得られたナノ粒子の元素分析を行った。バックグラウンド閾値は30カウントとした。図42の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数および組成のグラフを、それぞれ図43(A)および図43(B)に示した。平均組成、合金を構成する各元素の合金内における分布の標準偏差、および合金を構成する2つの元素の分布の相関係数を求め、下記表14に記載した。平均組成、標準偏差及び相関係数は実施例1と同様に求めた。
【0113】
【表14】
【0114】
表14より、本発明の合金は、ナノ粒子の形状における固溶の均一性が高いことがわかった。
【0115】
[比較例42]:AuPdRu
<合金の調製>
HAuCl・3HOをイオン交換水に溶かした金属イオン溶液を調製した。
PdClをイオン交換水に溶かした金属イオン溶液を調製した。
RuCl・nHOをイオン交換水に溶かした金属イオン溶液を調製した。
個別の超音波処理を行っていない3種類の金属イオン溶液を1:1:1で混合し、
0.35mmolの水溶液の各金属イオン混合溶液を約13.3mlに溶かし合わせて40mlに調製した。
【0116】
ポリビニルピロリドン(PVP) K30(4mmol;富士フイルム和光純薬株式会社製)を含むトリエチレングリコール(TEG)300mlを225℃で加熱撹拌した。
この溶液に対して、金属イオン混合溶液をTEG溶液が220℃を下回らない速度でスプレーで加え、225℃で10分間維持した。その後、室温まで放冷した。生じた沈殿物であるナノ粒子を遠心分離により分離した。
【0117】
<元素分析>
分離したナノ粒子のSTEM-EDS分析を行った。走査透過型電子顕微鏡の複数視野を用いた線分析(line scan)による元素分析を行い、3種の元素の金属組成を算出した。
図44の測定点では、矢印の部分について、0.15~0.30nmごとに比較例42で得られたナノ粒子の元素分析を行った。バックグラウンド閾値は30カウントとした。図44の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数および組成のグラフを、それぞれ図45(A)および図45(B)に示した。平均組成、合金を構成する各元素の合金内における分布の標準偏差、および合金を構成する2つの元素の分布の相関係数を求め、下記表15に記載した。平均組成、標準偏差及び相関係数は実施例1と同様に求めた。
【0118】
【表15】
【0119】
図46の測定点では、矢印の部分について、0.15~0.30nmごとに比較例42で得られたナノ粒子の元素分析を行った。バックグラウンド閾値は30カウントとした。図46の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数および組成のグラフを、それぞれ図47(A)および図47(B)に示した。平均組成、合金を構成する各元素の合金内における分布の標準偏差、および合金を構成する2つの元素の分布の相関係数を求め、下記表16に記載した。平均組成、標準偏差及び相関係数は実施例1と同様に求めた。
【0120】
【表16】
【0121】
表15および16より、比較例42の合金は、合金を構成する各元素(Ru)の合金内における分布の標準偏差が15%を超える19%~23%となっており、ナノ粒子の形状における固溶の均一性が低いことがわかった。
【0122】
[実施例51]:RuRhPdOsIrPt
<金属イオン溶液の個別の超音波処理>
PdClをイオン交換水溶液に溶かした金属イオン溶液を調製し、遮光した状態で、5分間、超音波処理した。
RuCl・nHOをイオン交換水溶液に溶かした金属イオン溶液を調製し、遮光した状態で、5分間、超音波処理した。
RhCl・3HOをイオン交換水溶液に溶かした金属イオン溶液を調製し、遮光した状態で、5分間、超音波処理した。
OsCl・3HOをイオン交換水溶液に溶かした金属イオン溶液を調製し、遮光した状態で、5分間、超音波処理した。
IrCl・xHOをイオン交換水溶液に溶かした金属イオン溶液を調製し、遮光した状態で、5分間、超音波処理した。
[PtCl]をイオン交換水溶液に溶かした金属イオン溶液を調製し、遮光した状態で、5分間、超音波処理した。
個別の超音波処理をした6種類の金属イオン溶液を1:1:1:1:1:1で混合し、0.167mmolのTEG溶液の各金属イオン混合溶液を約1.5mlに溶かし合わせて10mlに調製した。
【0123】
<合金の調製>
ポリビニルピロリドン(PVP) K30(4mmol;富士フイルム和光純薬株式会社製)を含むトリエチレングリコールTEG100mlを230℃で加熱撹拌した。
この溶液に対して、金属イオン混合溶液をシリンジポンプで1.5ml/minの速度で送液(滴下)して加え、230℃で10分間維持した。その後、室温まで放冷した。生じた沈殿物であるナノ粒子を遠心分離により分離した。
【0124】
<元素分析>
分離したナノ粒子のSTEM-EDS分析を行った。走査透過型電子顕微鏡の複数視野を用いた線分析(line scan)による元素分析を行い、6種の元素の金属組成を算出した。
図48の測定点では、矢印の部分について、0.15~0.30nmごとに実施例51で得られたナノ粒子の元素分析を行った。バックグラウンド閾値は30カウントとした。図48の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数および組成のグラフを、それぞれ図49(A)および図49(B)に示した。平均組成、合金を構成する各元素の合金内における分布の標準偏差、および合金を構成する2つの元素の分布の相関係数を求め、下記表17および表18に記載した。平均組成、標準偏差及び相関係数は実施例1と同様に求めた。
【0125】
【表17】
【0126】
【表18】
【0127】
表17および18より、本発明の合金は、ナノ粒子の形状における固溶の均一性が高いことがわかった。
【0128】
[実施例61]:PdRuIrPtRh
<金属イオン溶液の個別の超音波処理>
PdClをイオン交換水溶液に溶かした金属イオン溶液を調製し、遮光した状態で、5分間、超音波処理した。
RuCl・nHOをイオン交換水溶液に溶かした金属イオン溶液を調製し、遮光した状態で、5分間、超音波処理した。
RhCl・3HOをイオン交換水溶液に溶かした金属イオン溶液を調製し、遮光した状態で、5分間、超音波処理した。
IrCl・xHOをイオン交換水溶液に溶かした金属イオン溶液を調製し、遮光した状態で、5分間、超音波処理した。
[PtCl]をイオン交換水溶液に溶かした金属イオン溶液を調製し、遮光した状態で、5分間、超音波処理した。
個別の超音波処理をした5種類の金属イオン溶液を1:1:1:1:1で混合し、0.200mmolのTEG溶液の各金属イオン混合溶液を約2.0mlに溶かし合わせて10mlに調製した。
【0129】
<合金の調製>
ポリビニルピロリドン(PVP) K30(4mmol;富士フイルム和光純薬株式会社製)を含むトリエチレングリコールTEG100mlを230℃で加熱撹拌した。
この溶液に対して、金属イオン混合溶液をシリンジポンプで1.5ml/minの速度で送液(滴下)して加え、230℃で10分間維持した。その後、室温まで放冷した。生じた沈殿物であるナノ粒子を遠心分離により分離した。
【0130】
<元素分析>
分離したナノ粒子のSTEM-EDS分析を行った。走査透過型電子顕微鏡の複数視野を用いた線分析(line scan)による元素分析を行い、5種の元素の金属組成を算出した。
図50の測定点では、矢印の部分について、0.15~0.30nmごとに実施例61で得られたナノ粒子の元素分析を行った。バックグラウンド閾値は30カウントとした。図50の矢印の部分における各ポジションの特性X線カウント数および組成のグラフを、それぞれ図51(A)および図51(B)に示した。平均組成、合金を構成する各元素の合金内における分布の標準偏差、および合金を構成する2つの元素の分布の相関係数を求め、下記表19および表20に記載した。平均組成、標準偏差及び相関係数は実施例1と同様に求めた。
【0131】
【表19】
【0132】
【表20】
【0133】
表19および20より、本発明の合金は、ナノ粒子の形状における固溶の均一性が高いことがわかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
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図49-1】
図49-2】
図50
図51-1】
図51-2】