(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178234
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】血液ポンプ
(51)【国際特許分類】
A61M 60/422 20210101AFI20241217BHJP
A61M 60/139 20210101ALI20241217BHJP
A61M 60/216 20210101ALI20241217BHJP
A61M 60/237 20210101ALI20241217BHJP
A61M 60/806 20210101ALI20241217BHJP
A61M 60/221 20210101ALI20241217BHJP
【FI】
A61M60/422
A61M60/139
A61M60/216
A61M60/237
A61M60/806
A61M60/221
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024158069
(22)【出願日】2024-09-12
(62)【分割の表示】P 2021556254の分割
【原出願日】2020-03-16
(31)【優先権主張番号】19163662.0
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507116684
【氏名又は名称】アビオメド オイローパ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グラウヴィンケル マリウス
(72)【発明者】
【氏名】ケルクホフス ヴォルフガング
(57)【要約】 (修正有)
【課題】患者の血管内への経皮挿入のための血管内血液ポンプを提供する。
【解決手段】血液ポンプ1は、血流入口21および血流出口22を有するポンプケーシング2と、回転軸10の周りに回転可能となるようポンプケーシング2内に配置されたインペラ3と、を備える。血液ポンプ1は、インペラ3を回転させるための駆動ユニット4であって、駆動ユニット4が、回転軸10の周りに配置された複数の柱40、および柱40を接続し、中間区域内で柱40の間に広がったバックプレート50を含む磁心を含む、駆動ユニット4を備える。コイル巻線44が柱40の各々の周りに配設されている。コイル巻線44は、回転磁界を作り出すよう制御可能であり、インペラ3は、インペラ3の回転を生じさせるよう回転磁界と相互作用するように配置された磁石構造32を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管内への経皮挿入のための血管内血液(1)ポンプであって、
血流入口(21)および血流出口(22)を有するポンプケーシング(2)と、
回転軸(10)の周りに回転可能となるよう前記ポンプケーシング(2)内に配置されたインペラ(3)であって、前記インペラ(3)が、血液を前記血流入口(21)から前記血流出口(22)へ運搬するためにサイズ設定および形状設定されたブレード(31)を有する、インペラ(3)と、
前記インペラ(3)を回転させるための駆動ユニット(4)であって、前記駆動ユニット(4)が、前記回転軸(10)の周りに配置された複数の柱(40)、および前記柱(40)を接続し、中間区域(59)内で前記柱(40)の間に広がったバックプレート(50)を含む磁心(400)を含む、駆動ユニット(4)と、
前記柱(40)の各々の周りに配設されたコイル巻線(44)であって、前記コイル巻線(44)が、回転磁界を作り出すよう制御可能である、コイル巻線(44)と、
を備え、
前記インペラ(3)が、前記インペラ(3)の回転を生じさせるよう前記回転磁界と相互作用するように配置された磁石構造(32)を含む、血管内血液ポンプ(1)において、
前記柱(40)のうちの少なくとも1本の少なくとも部分の材料が前記バックプレート(50)の前記中間区域(59)の材料と一体になっていることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記磁心(400)が、前記回転軸(10)を横切る断面内で電気伝導率に関して不連続である軟磁性材料を含む、またはそれから成ることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項3】
請求項2に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記軟磁性材料が、軟磁性材料の積層されたシート(85)を含むことを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項4】
請求項2または3に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、軟磁性材料の前記シート(85)が前記回転軸(10)と平行に配向されていることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記軟磁性材料内の電気伝導率に関する不連続を橋絡する少なくとも1つの溶接部(82、83、86)を含むことを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項6】
請求項5に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記少なくとも1つの溶接部(82、83、86)のうちの少なくとも1つが前記柱(40)と反対の前記バックプレート(50)の表面上に配置されていることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項7】
請求項5または6に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記少なくとも1つの溶接部のうちの少なくとも1つが前記バックプレート(50)と反対の柱(40)の端面上に配置されていることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項8】
血管内血液ポンプ(1)の駆動ユニット(4)のための磁心(400)を製作する方法であって、前記磁心が回転軸(10)を有し、前記回転軸(10)の周りに配置された複数の柱(40)、および前記柱(40)を接続するバックプレート(50)を含む、方法において、前記方法が、磁気伝導性材料のモノブロック(9)を提供するステップと、溝穴を前記モノブロック(9)内に切り込み、これにより、前記柱(40)を、前記柱(40)が前記回転軸(10)の周りに配置されるよう、および前記バックプレート(50)を、前記バックプレート(50)が前記柱(40)と共に1つの一体部品を形成するように作り出すステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記溝穴(49)のうちの少なくとも1つが、前記回転軸(10)を通るよう切り込まれることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の方法であって、前記溝穴(49)が、前記柱(40)が全て同一の長さを有するように切り込まれることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項8から10のいずれか1項に記載の方法であって、前記溝穴(49)が、前記バックプレート(50)が、前記柱(40)の、その長手方向軸(LA)を横切る最大断面寸法よりも小さい厚さを有するように切り込まれることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項8から11のいずれか1項に記載の方法であって、前記溝穴(49)が放電加工を用いて切り込まれることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記溝穴が放電加工によってワイヤカットを用いて切り込まれることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項8から11のいずれか1項に記載の方法であって、前記溝穴が電気化学加工を用いて切り込まれることを特徴とする方法。
【請求項15】
磁心(400)を有する駆動ユニット(4)を有する血管内血液ポンプ(1)を製作する方法であって、前記磁心(400)が請求項8から14のいずれか1項に従って製作されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の血管内の血流を支援するための血液ポンプ、特に、患者の血管内への経皮挿入のための血管内血液ポンプに関する。血液ポンプは、改善された駆動ユニットを有する。
【背景技術】
【0002】
軸流血液ポンプ、遠心型(すなわち、半径方向)血液ポンプ、あるいは血流が軸方向力および半径方向力の両方によって引き起こされる、混合型血液ポンプなどの、異なる種類の血液ポンプが知られている。血管内血液ポンプは、カテーテルを用いて大動脈などの患者の血管内に挿入される。血液ポンプは、通例、通路によって接続された血流入口および血流出口を有するポンプケーシングを備える。血流入口から血流出口への通路に沿った血流を生じさせるために、インペラまたはロータがポンプケーシング内において回転可能に支持されており、インペラは、血液を運搬するためのブレードを設けられている。
【0003】
血液ポンプは、通例、電気モータであることができる、駆動ユニットによって駆動される。例えば、米国特許出願公開第2011/0238172(A1)号は、電気モータに磁気結合され得るインペラを有する体外血液ポンプを開示している。インペラは、電気モータ内の磁石に隣接して配設された磁石を含む。インペラ内およびモータ内の磁石の間の引力のゆえに、モータの回転がインペラに伝達される。回転部分の数を低減するために、米国特許出願公開第2011/0238172(A1)号から、回転磁界を利用することも知られており、駆動ユニットは、回転軸の周りに配置された複数の固定した柱を有し、各柱は線材コイル巻線を保持し、磁心の役割を果たす。制御ユニットが電圧をコイル巻線に順次に供給し、回転磁界を作り出す。十分に強い磁気結合を提供するには、磁力が十分に高くなければならず、これは、駆動ユニットに供給される十分に高い電流によって、または大きい磁石を提供することによって達成することができるが、これは血液ポンプの大きな全径につながる。
【0004】
欧州特許第3222301(B1)号は、駆動ユニットとインペラとの間の磁気結合を有する血液ポンプ、特に、血管内血液ポンプであって、血液ポンプが、コンパクトな設計を有し、特に、ポンプのサイズに対するポンプ能力の比が高く、これにより、血液ポンプが、経血管的に、経静脈的に、経動脈的に、または経弁的に挿入されることを可能にするために十分に小さい外寸法をもたらすか、あるいは操作および利便性の理由のためになおいっそう小さくなる、血液ポンプを開示している。
【0005】
より具体的には、欧州特許第3222301(B1)号における血液ポンプは、血流入口および血流出口を有するポンプケーシングと、インペラと、インペラを回転させるための駆動ユニットとを備える。回転軸の周りの、ポンプケーシングの内部におけるインペラの回転によって、血液はインペラのブレードによって血流入口から血流出口へ運搬され得る。駆動ユニットは、複数の好ましくは6本の柱、および柱の後端部を接続し、ヨークの役割を果たすバックプレートを含む磁心を含む。柱は、回転軸と垂直である平面内で見たときに、回転軸の周りに円状に配置されており、柱の各々は、好ましくは、前述の回転軸と平行である、長手方向軸を有する。バックプレートは貫通開口部を有し、それらの各々の内部に、柱の後端部が、各柱の後端部の端面がバックプレートの後面と面一になるよう、ぴったり合った様態で受容される。このように、柱とバックプレートとの間の磁気的接続が柱の周囲とバックプレートの開口部の内部輪郭との間に発生される。柱は各々、柱の周りに配設されたコイル巻線を有する。インペラを駆動するための回転磁界を発生するために、コイル巻線をコヒーレントな仕方で制御することができる。インペラは、回転磁界と相互作用し、これにより、インペラがその回転に追随するように配置された磁石の形態の磁石構造を備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、磁心内の磁束を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の血液ポンプは上述の血液ポンプに対応する。したがって、それは、軸流血液ポンプ、あるいは部分的に軸方向に、および部分的に半径方向に圧送する、斜流血液ポンプであり得る(純粋な遠心型血液ポンプの直径は、通常、血管内の適用物にとって大きすぎる)。しかし、本発明の一態様によれば、磁心の柱のうちの少なくとも1本の少なくとも部分の材料が磁心のバックプレートの中間区域の材料と一体になっている。ここで、バックプレートの中間区域は、柱の間に位置するバックプレートの区域である。好ましくは、全ての柱がこのようにバックプレートに一体的に接続されている。換言すれば、少なくとも1本の柱およびバックプレート、好ましくは、磁心全体を、以下においてモノブロックとも称される、単一の材料ブロックで作製することができる。このような磁心の利点は、柱とバックプレートとの間の移行部における磁気抵抗が最小限に抑えられ、それゆえ、磁束が改善されることである。さらに、柱とバックプレートとの間の移行部の良好な機械的剛性を達成することができる。
【0008】
柱の各々は、回転軸と平行であり得る、長手方向軸を有する。好ましくは、磁心は不連続な軟磁性材料を含む。より好ましくは、磁心の軟磁性材料は、柱の長手方向軸を横切る、好ましくは、それと垂直な断面内で不連続である。換言すれば、柱の軟磁性材料は、柱内のそれぞれのコイル巻線によって生じた磁束の方向を横切る、好ましくは、それと垂直な断面内で不連続である。軟磁性材料を断面内で分割または分断することによって、柱内の渦電流を低減または回避することができ、これにより、発熱およびエネルギー消費を低減することができる。エネルギー消費を低減することは、血液ポンプが、患者に可動性を与えるために電池駆動式であることが望まれる、血液ポンプの長期間の適用物のために特に有用である。また、長期間の適用物において、血液ポンプは、パージを行わずに動作させることもでき、これは、発熱が低い場合にのみ可能である。
【0009】
本文書の意味における「不連続(discontinuous)」は、軟磁性材料の厳密に分離された区域、または分断されているが、異なる場所で接続されている区域を形成するために、軟磁性材料が、例えば、柱の長手方向軸を横切る任意の断面内で見たときに、絶縁材料もしくは他の材料または間隙を用いて分断されている、分離されている、区切られている、または同様の様態になっていることを意味する。
【0010】
磁束の方向を横切る断面平面内で不連続な軟磁性材料を提供することは、以上において説明されたように、渦電流、ならびにそれゆえ、発熱およびエネルギー消費を低減する。連続的または完全な本体の(すなわち、中実の)軟磁性材料と比べて磁界を著しく弱めないためには、軟磁性材料の連続的な区域を最小化しつつ、軟磁性材料の総量を最大化するべきである。これは、例えば、電気鋼などの、軟磁性材料の複数のシートの形態の軟磁性材料を提供することによって達成され得る。特に、シートはシートの積層体を形成し得る。シートは、好ましくは、例えば、シートのうちの隣接するものの間に接着剤、ラッカ、焼付けエナメル、または同様のものを提供することによって、互いに電気的に絶縁される。このような構成は「溝付き(slotted)」と表すことができる。完全な本体の軟磁性材料と比べて、軟磁性材料の量はわずかに低減されるのみであり、絶縁材料の量は少量に維持され、これにより、溝付きの柱によって生じる磁界は、中実の柱によって生じる磁界と実質的に同じである。換言すれば、発熱およびエネルギー消費が大幅に低減され得る一方で、絶縁材料によって生じる磁界の損失はわずかである。
【0011】
シートは、好ましくは、それぞれの柱の長手方向軸と実質的に平行に広がっている。換言すれば、シートは、磁束の方向と実質的に平行に広がっていてもよく、これにより、柱は、磁束の方向を横切る、またはそれと垂直な断面内で不連続である。軟磁性材料が、長手方向軸を横切る断面内で不連続である限り、シートはそれぞれの柱の長手方向軸に対して傾斜して広がっていてもよいことは理解されるであろう。シートは、好ましくは、25μm~1mm、より好ましくは、50μm~約450μmの範囲内、例えば200μmの厚さを有する。
【0012】
特に、軟磁性材料のシートなどの、特定の種類の材料の区域は柱およびバックプレートの両方において広がり得る。材料が不連続であっても、磁心はこのような材料の単一のブロックで作製することができる。特定の種類の材料のこのような区域の広がりは柱とバックプレートとの間の移行によって分断されず、柱から、柱の間に位置するバックプレートの中間区域内へ一体的に連続している。
【0013】
渦電流を回避または低減するために、電気鋼などの、溝付きの軟磁性材料を電気モータ内に提供することが一般的に知られている。しかし、この技術は、シートが、通常、約500μm以上の範囲内の厚さを有する、大型のデバイスのために適用されている。柱のうちの1本が、通常、前述のオーダーの大きさの直径を有し、電力入力が比較的低い(例えば、最大20ワット(W))、本発明の血液ポンプなどの小型の適用物においては、渦電流および関連する問題は予想されていなかった。驚くべきことに、柱の小さい直径にもかかわらず、溝付きの柱を提供することによって、渦電流、ひいては、発熱およびエネルギー消費を低減することができる。これは、最大50,000rpm(revolutions per minute(回転/分))の高速度で動作させられる場合がある、血液ポンプの動作のために有利である。
【0014】
不連続な軟磁性材料を柱内に提供するための上述の溝付きの構成以外の構成も可能であり得ることは理解されるであろう。例えば、複数のシートの代わりに、複数の線材、ファイバ、柱、または他の細長い要素を、駆動ユニットの柱の各々を形成するために提供することができる。線材または同様のものは、線材が、例えば、各線材を包囲するコーティング、または線材が埋め込まれる絶縁性母材を用いて、互いに電気的に絶縁された束の形態で提供されてもよく、円形、丸形、長方形、正方形、多角形等などの、様々な断面形状を有し得る。同様に、軟磁性材料の粒子、軟磁性材料のワイヤウールまたは他のスポンジ様もしくは多孔質構造を提供することができ、その内部で、軟磁性材料の区域の間の空間は、接着剤、ラッカ、ポリマー母材、または同様のものなどの、電気絶縁材料を含む。軟磁性材料の、多孔質、ひいては、不連続な構造はまた、焼結材料またはプレス材料によって形成されてもよい。このような構造では、空気への曝露による軟磁性材料の酸化の結果生じた酸化物層によって絶縁層が自動的に形成され得るため、追加の絶縁材料は省略されてもよい。
【0015】
軟磁性材料のシートまたは他の構造が均一に形成され得る一方で、すなわち、柱のうちの1本または全ての柱の内部のシートが同じ厚さを有し得るか、または線材が同じ直径を有し得る一方で、不均一な構成を提供することができる。例えば、シートは、変化する厚さを有し得、または線材は、変化する直径を有し得る。より具体的には、特に、シートの積層体に関しては、1枚以上の中心のシートはより大きい厚さを有し得、その一方で、積層体の端部の方の隣接するシートはより小さい厚さを有し得る。すなわち、シートの厚さは中心から積層体の端部に向かって、すなわち、積層体の最も外側のシートに向かって減少する。同様に、線材の束内の1本以上の中心の線材はより大きい直径を有し得、その一方で、柱の縁部における線材はより小さい直径を有し得る。すなわち、線材の直径は中心から束の縁部に向かって、すなわち、束の最も外側の線材に向かって減少し得る。柱の長手方向軸を横切る断面に対する柱の中心において軟磁性材料のより大きい連続区域を提供すること、すなわち、中心において比較的厚いシートまたは線材を提供することは有利になり得る。なぜなら、これは、各柱の長手方向軸に沿って中心を貫く磁束を増強し得、中心における渦電流は柱の側部における渦電流ほど重要ではないからである。換言すれば、柱の側部領域内の渦電流がより重大であり、側部領域内の薄いシートまたは線材によって低減され得るため、このような構成は有利になり得る。
【0016】
バックプレートの直径は、3mm~9mm、例えば、5mmまたは6mm~7mmなどの範囲内にあり得る。バックプレートの厚さは、0.5mm~2.5mm、例えば、1.5mmなどの範囲内にあり得る。血液ポンプの外径は4mm~10mmの範囲内にあり得、好ましくは7mmであり得る。複数の柱の構成の外径は、3mm~8mm、例えば、4mm~7.5mmなどの範囲内にあり得、好ましくは、6.5mmであり得る。
【0017】
上述されたように、柱は電気鋼(磁性鋼)などの軟磁性材料で作製されている。柱およびバックプレートは同じ材料で作製され得る。好ましくは、柱およびバックプレートを含む、駆動ユニットはコバルト鋼で作製されている。コバルト鋼の使用は、ポンプサイズ、特に、直径の低減に寄与する。全ての磁性鋼の中で最も高い透磁率および最も高い飽和磁束密度を有するため、コバルト鋼は同量の使用材料に対して最大量の磁束を生成する。
【0018】
柱の寸法、特に、長さおよび断面積は変化し、様々な因子に依存し得る。血液ポンプの適用物に依存する、血液ポンプの寸法、例えば、外径とは対照的に、柱の寸法は、駆動ユニットの所望の性能を達成するように調整される、電磁特性によって決定される。因子のうちの1つは、柱の最小の断面積を貫いて達成されるべき磁束密度である。断面積が小さいほど、所望の磁束を達成するために必要な電流は高くなる。しかし、電流が高いほど、電気抵抗のゆえにコイルの線材内に多くの熱を発生する。それは、全体サイズを低減するには「細い」柱が好ましいが、これは高い電流を必要とし、それゆえ、望ましくない熱を生じさせるであろうことを意味する。線材内に発生される熱はまた、コイル巻線のために用いられる線材の長さおよび直径にも依存する。巻線損失(通常の場合のように、銅線材が用いられる場合には、「銅損」または「銅電力損」と称される)を最小限に抑えるには、短い線材長および大きい線材径が好ましい。換言すれば、線材径が小さい場合には、同じ電流においてより太い線材と比べてより多くの熱が発生される。好ましい線材径は0.05mm~0.2mm、例えば、0.1mmなどである。柱の寸法および駆動ユニットの性能に影響を及ぼすさらなる因子は、コイルの巻線数、および巻線、すなわち、巻線を含む柱の外径である。各柱の周りに多数の巻線が1つを超える層状に配置され得、例えば、2つまたは3つの層が提供され得る。しかし、層数が多いほど、より大きい巻線径を有する外層内の線材の増大した長さのゆえにより多くの熱が発生されることになる。線材の増大した長さは、より短いものと比べて、長い線材のより高い抵抗のゆえにより多くの熱を発生し得る。それゆえ、小さい巻線径を有する巻線の単一の層が好ましいであろう。
【0019】
柱の長さに次に依存する、典型的な巻線数は、約50~約150、例えば、56または132であり得る。巻線数とは関係なく、コイル巻線は、電気伝導性材料、特に、銅または銀などの、金属で作製される。銀は、銅の電気抵抗よりも約5%小さい電気抵抗を有するため、銀が銅よりも好ましくなり得る。
【0020】
好ましくは、磁心は1つ以上の溶接部を含む。溶接部は、特に、例えば、レーザ溶接のためにアクセス可能である、磁心の外面上に配置され得る。溶接部は軟磁性材料内の電気伝導率に関する不連続を橋絡し、それゆえ、軟磁性材料の少なくとも2枚のシートを電気接続する。溶接部はまた、機械的安定性を不連続な軟磁性材料に付加する。
【0021】
1つ以上の溶接部を柱と反対のバックプレートの表面上に配置することができる。それらはレーザ溶接によって生成することができる。積層されたシートで作製された材料が用いられる場合には、溶接部は、好ましくは、隣り合う軟磁性シートを斜めに、または横に橋絡する。
【0022】
本発明のさらなる態様では、血管内血液ポンプの駆動ユニットのための磁心を製作する方法が提案される。磁心は回転軸を有し、回転軸の周りに配置された複数の柱、および柱を接続するバックプレートを含む。本方法は、磁気伝導性材料のモノブロックを提供するステップと、溝穴をモノブロック内に切り込み、これにより、柱を、それらが回転軸の周りに配置されるよう、およびバックプレートを、バックプレートが柱と共に一体部品を形成するように作り出すステップと、を含む。以上において指摘されたように、このような製作の利点は、低減した磁気抵抗を有する磁心を生成することである。
【0023】
少なくとも1つの溝穴、好ましくは、回転軸に対して互いに対向する全ての溝穴は、磁心の回転軸を通るよう切り込むことによって生成されてもよい。そうすると、回転軸の周りの柱の均等な分布を容易に達成することができる。
【0024】
好ましくは、溝穴は、柱が全て同一の長さを有するように切り込まれる。溝穴は、特に、バックプレートが、柱の、その長手方向軸を横切る最大断面寸法よりも小さい厚さを有するように切り込まれる。
【0025】
放電加工、特に、ワイヤ放電加工、または電気化学加工を用いて溝穴を切り込むことが好ましい。これらの方法はわずかな力を加工対象の材料に印加するのみであり、したがって、不連続な材料を加工するために特に有利である。
【0026】
本発明のさらなる態様では、血液ポンプを製作する方法が提案される。血液ポンプは、磁心を有する駆動ユニットを備え、磁心は、上述されたとおりの仕方で製作される。
【0027】
上述の概要、および好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むことでより深く理解されるであろう。本開示を例示する目的のために、図面を参照する。しかし、本開示の範囲は、図面において開示される特定の実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】駆動ユニット-インペラ構成の好ましい実施形態の断面図を示す。
【
図3A】
図2に係る駆動ユニットのための一体化磁心を製作するステップを示す図である。
【
図3B】
図2に係る駆動ユニットのための一体化磁心を製作するステップを示す図である。
【
図3C】
図2に係る駆動ユニットのための一体化磁心を製作するステップを示す図である。
【
図5A】様々な実施形態に係る柱を通した断面を示す図である。
【
図5B】様々な実施形態に係る柱を通した断面を示す図である。
【
図5C】様々な実施形態に係る柱を通した断面を示す図である。
【
図5D】様々な実施形態に係る柱を通した断面を示す図である。
【
図5E】様々な実施形態に係る柱を通した断面を示す図である。
【
図5F】様々な実施形態に係る柱を通した断面を示す図である。
【
図5G】様々な実施形態に係る柱を通した断面を示す図である。
【
図5H】様々な実施形態に係る柱を通した断面を示す図である。
【
図5I】様々な実施形態に係る柱を通した断面を示す図である。
【
図5J】様々な実施形態に係る柱を通した断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1を参照すると、血液ポンプ1の断面図が示されている。血液ポンプ1は、血流入口21および血流出口22を有するポンプケーシング2を備える。血液ポンプ1は、カテーテルポンプとも呼ばれる、血管内ポンプとして設計され、カテーテル25を用いて患者の血管内へ展開される。血流入口21は、使用時、大動脈弁などの、心臓弁を貫いて配置され得る可撓性カニューレ23の端部にある。血流出口22はポンプケーシング2の側面内に位置し、大動脈などの、心臓血管内に配置され得る。血液ポンプ1は、以下においてより詳細に説明されるように、駆動ユニット4を用いてポンプ1を駆動するべく血液ポンプ1に電力を供給するためのカテーテル25を通って延びる電気線材26と電気接続されている。
【0030】
血液ポンプ1が、長期間の適用物内で用いられることを意図されている場合には、すなわち、血液ポンプ1が、数週間、またはさらに、数カ月間、患者に埋め込まれている状況では、電力は、好ましくは、電池を用いて供給される。患者がケーブルによって基地点に接続されないため、これは、患者が移動することを可能にする。電池は患者によって携行され得、電気エネルギーを、例えば、無線で、血液ポンプ1に供給し得る。
【0031】
血液は、血流入口21および血流出口22を接続する通路24に沿って運搬される(矢印によって血流が指示されている)。インペラ3が、血液を通路24に沿って運搬するために設けられており、第1の軸受11および第2の軸受12を用いてポンプケーシング2内で回転軸10の周りに回転可能になるように装着されている。回転軸10は、好ましくは、インペラ3の長手方向軸である。軸受11、12は両方とも本実施形態では接触型軸受である。しかし、軸受11、12のうちの少なくとも一方は、磁気または動圧流体軸受などの、非接触型軸受であることができるであろう。第1の軸受11は、回転運動およびある程度の枢転運動を可能にする球面軸受面を有するピボット軸受である。軸受面のうちの1つを形成するピン15が設けられている。第2の軸受12は、インペラ3の回転を安定させるための支持部材13内に配設されており、支持部材13は血流のための少なくとも1つの開口部14を有する。インペラ3が回転すると血液を運搬するためのブレード31がインペラ3上に設けられている。インペラ3の回転は、インペラ3の端部部分において磁石32に磁気結合された駆動ユニット4によって生じる。図示の血液ポンプ1は混合型血液ポンプであり、流れの主方向は軸方向である。血液ポンプ1はまた、インペラ3、特に、ブレード31の構成によっては、純粋に軸方向の血液ポンプにもなり得るであろうことは理解されるであろう。
【0032】
血液ポンプ1はインペラ3および駆動ユニット4を備える。駆動ユニット4は、6本の柱40などの、複数の柱40を含み、そのうちの2本のみが
図1の断面図において可視である。柱40は回転軸10と平行に配置されており、より具体的には、柱40の各々の長手方向軸は回転軸10と平行である。柱42の一方の端部はインペラに隣接して配設されている。コイル巻線44が柱40の周りに配置されている。コイル巻線44は制御によって、回転磁界を作り出すよう順次に制御される。制御ユニットの部分は、電気線材26に接続されたプリント配線板6である。インペラは、本実施形態では多ピース磁石として形成された、磁石32を有する。磁石32は、駆動ユニット4に面するインペラ3の端部に配設されている。磁石32は、回転軸10の周りのインペラ3の回転を生じさせるよう回転磁界と相互作用するように配置されている。
【0033】
磁束経路を閉じるために、バックプレート50が、柱のインペラ側と反対の柱40の端部に配置されている。柱40は磁心の役割を果たし、好適な材料、特に、鋼または好適な合金、特に、コバルト鋼などの、軟磁性材料で作製されている。同様に、バックプレート50は、コバルト鋼などの、好適な軟磁性材料で作製されている。バックプレート50は磁束を増強し、これは、血管内血液ポンプにとって重要である、血液ポンプ1の全径の低減を可能にする。同じ目的のために、ヨーク37、すなわち、追加のインペラバックプレートが、駆動ユニット4から遠ざかる方に面した磁石32の側でインペラ3内に設けられている。本実施形態におけるヨーク37は、血流をインペラ3に沿って案内するために円錐形状を有する。ヨーク37もコバルト鋼で作製され得る。中心軸受11に向かって延びる1つ以上のウォッシュアウト流路がヨーク37または磁石32内に形成され得る。
【0034】
図2は、
図1に係る血液ポンプのための駆動ユニット-インペラ構成の好ましい実施形態の断面図を示す。
図2において見ることができるように、柱40のインペラ側端部420は巻線44を越えて半径方向に広がっていない。むしろ、柱40の断面は柱40の長手方向軸LAの方向において一定である。かくして、柱40が互いに接近することが回避されている。なぜなら、これは、部分的な磁気短絡を生じさせ、その結果、血液ポンプの電気モータの動力の低減をもたらし得るからである。
【0035】
図2に係る駆動ユニットは、少なくとも2本、少なくとも3本、少なくとも4本、少なくとも5本、または好ましくは、6本の柱40を含み得る。9本または12本などの、より多数の柱40も可能であり得る。断面図のゆえに、2本の柱40のみが可視である。柱40およびバックプレート50は、10mm未満の直径を有し得る駆動ユニット4の磁心400を形成する。
【0036】
磁心400は、柱40およびバックプレート50である、駆動ユニット4の磁石構成要素を1つの単一部品またはモノブロックとして含む。モノブロックは、電気伝導率に関して不連続である不連続な軟磁性材料から成る。不連続な軟磁性材料は、強磁性材料で作製され、互いに積層された複数のシート85を含む。積層方向は柱40の長手方向軸LAの方向に配置されており、矢印DLによって標識されている。図示のように、柱40は回転軸10と平行に配置されている。
【0037】
コイル巻線44は柱40のインペラ側端部420まで延びている。これは、起磁力が柱40全体に沿って発生され得るという利点を有する。磁心400は、柱40に対して半径方向に突出した柱40の後端部450における突出部401を含む。この突出部401は、バックプレート50に向かうコイル巻線44のためのストッパになることができる。一体化した磁心400はバックプレート50と柱40との間において高い剛性を有するため、柱のインペラ側端部420における柱40の間のスペーサが省略され得る。一体化した磁心400は、柱40とバックプレート50との間の最適の磁気的接続が達成され得るという利点をもたらす。磁心400は10mm未満の直径を有し得る。
【0038】
図3A~
図3Cは、
図2に示されるとおりの駆動ユニット-インペラ構成の駆動ユニット4のための磁心400を製作するステップを示す。
図3Aは、磁心400を製作するための被加工物を形成する立方体形状のモノブロック9を斜視図で示す。モノブロック9は、電気伝導率に関して不連続である不連続な軟磁性材料から成る。それは、シート85の主平面に沿って延びる積層方向DLに配向されたシート85を含む。シート85は各々、
図3A~
図3Cに明示的に示されていない、電気的非伝導性材料の接合層によってそれらのそれぞれの隣り合うシートに接合されている。
【0039】
図3Bは、磁心400を、それが立方体状のモノブロック9から実質的に円柱状の本体94に加工された、例えば、変化させられた、半製品状態で示す。この加工ステップにおいて、突出部401が製作される。磁心400の柱40の周囲面を形成する、本体94の低減した直径の区分404は、柱40の最も外側の凸状の側面842の外半径に対応する直径を有するように製作される。
【0040】
次に、本体94は、
図3Cに示されるとおりの磁心400を生成するようにさらに製作され得る。この生成ステップのために、放電加工を用いることができる。特に、柱40を互いに分離する溝穴49を生成するために、ワイヤカットによる放電加工を適用することができる。溝穴の内部に、コイル巻線44のための空間が提供される。溝穴49の基底部において、一体的バックプレート50の中間区域59が柱40の後端部の間に広がっている。中間区域は柱40およびバックプレート50と一体になっている。それゆえ、磁心全体がモノブロック9によって形成されている。
【0041】
磁心400内の積層方向DLは、それが回転軸10と平行であるようになっている。ベースプレート50内の積層方向DLがベースプレート50内の柱40の間の磁流に対して平行でないことは許容され得る。また、電気的に非伝導性の層によって分離されたコイル状の軟磁性シート材料から磁心400を製作することも可能である。このとき、ベースプレート50内の積層方向DLは常に、ベースプレート50内の磁束内の渦電流を回避するために有利である周方向になる。
【0042】
図4A~
図4Cは、
図3A~
図3Cに従って製作されるとおりの一体化磁心表面上に1つ以上の溶接部がどのように設けられ得るのかを示す。したがって、図示の実施形態では、3つの溶接継ぎ目82、83が立方体状のモノブロック9の一方の側の面上に設けられている。溶接継ぎ目82、83は、互いに距離を置いて、およびモノブロック9から切り出されるべき本体94の断面を横切って溶接される。溶接継ぎ目82、83はシート85の積層方向DLと垂直に延びている。このように、不連続な軟磁性材料のシートが互いに接続される。3つの溶接継ぎ目の代わりに、より多くの溶接継ぎ目または単一の幅の広い溶接部が設けられてもよい。加えて、同様の溶接継ぎ目がモノブロック9の反対側に設けられてもよい(図示せず)。反対側の面上の溶接部の代替として、またはそれらに加えて、1つ以上の溶接継ぎ目がバックプレート50のレベルにおいてモノブロック9の側面上に、バックプレート50を完全に、または少なくとも部分的に包囲するように設けられてもよい。シート85は溶接継ぎ目82、83のゆえに互いに対してより良好な機械的接続を有し、さらに、電気接続される。後者は、電流が、不連続な軟磁性材料の任意の位置から、例えば、放電加工のために必要とされ得る本体94の電気接続の各位置へ流れることができるという利点を有する。このように、放電加工が大幅に促進される。さらに、本体94から切り出されるバックプレート-柱ユニットが層間剥離によって分解し得ないため、より高いプロセスの信頼性が達成される。好ましくは、レーザ溶接が適用される。溶接パワーを同じ溶接部に2回、またはさらに多数回、印加することが有利であり得る。
【0043】
図5A~
図5Jは、断面で見た柱の様々な実施形態を示す。
図5A~
図5Dは、柱が溝付きになっている、すなわち、絶縁層172によって互いに絶縁された複数のシート171で形成されている実施形態を示す。絶縁層172は、接着剤、ラッカ、焼付けエナメル、または同様のものを含むことができる。
図5Aおよび
図5Bは、シート171の厚さが均一である実施形態を示す。厚さは25μm~450μmの範囲内にあり得る。
図5Aに示されるシート171は、
図5Bに示されるシート171よりも大きい厚さを有する。
図5Cにおけるシートは、変化する厚さを有し、中心のシートが最も大きい厚さを有し、最も外側のシートが最も小さい厚さを有する。柱の側部領域内の渦電流がより重大であり、薄いシートによって低減され得るため、これは有利になり得る。中心区域内の渦電流はそれほど重大でなく、比較的厚い中心のシートは磁束の改善を助け得る。断面内に示される軟磁性材料、すなわち、磁束の方向を横切る断面内の軟磁性材料が不連続である、または分断されている限り、シート171の配向は、
図5Dに例示的に示されるように異なってもよい。
【0044】
図5Eおよび
図5Fは、柱141が、絶縁材料182によって互いに絶縁された線材181の束によって形成されている実施形態を示す。絶縁材料182は線材181の各々のコーティングとして存在し得るか、または線材181が埋め込まれる母材であり得る。
図5Eの実施形態では、全ての線材が同じ直径を有し、それに対して、
図5Fの実施形態では、変化する厚さを有するシートを有する
図5Cに示される実施形態と同様に、中心の線材が最も大きい直径を有し、外側の線材がより小さい直径を有する。
図5Gに示されるように、異なる直径の線材181が混合されてもよく、これは、全ての線材が同じ直径を有する実施形態と比べて軟磁性材料の総断面積を増大させ得る。さらに代替的に、線材183の間の絶縁層184をさらに最小限に抑えるために、線材183は、長方形、正方形等などの、多角形断面積を有し得る。
【0045】
代替的に、柱141の不連続な断面は、
図5Iに示されるとおりのポリマー母材186内に埋め込まれた金属粒子185によって、または絶縁性母材を含浸させたスチールウールもしくは他の多孔質構造によって作り出されてもよい。軟磁性材料の、多孔質、ひいては、不連続な構造はまた、焼結プロセスまたは高圧成形プロセスによって生成されてもよく、この場合、空気への曝露による軟磁性材料の酸化によって絶縁層が自動的に形成されるため、絶縁性母材は省略されてもよい。さらに代替的に、柱141は軟磁性材料の丸めたシート187で形成されてもよく、この場合、丸めたシート187の層は、
図5Jに示されるとおりの絶縁層188によって分離される。これもまた、柱141または柱40内の渦電流を低減する本発明の意味で不連続な断面をもたらす。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管内への経皮挿入のための血管内血液ポンプ(1)であって、
血流入口(21)および血流出口(22)を有するポンプケーシング(2)と、
回転軸(10)の周りに回転可能となるよう前記ポンプケーシング(2)内に配置されたインペラ(3)であって、前記インペラ(3)が、血液を前記血流入口(21)から前記血流出口(22)へ運搬するためにサイズ設定および形状設定されたブレード(31)を有する、インペラ(3)と、
前記インペラ(3)を回転させるための駆動ユニット(4)であって、前記駆動ユニット(4)が、前記回転軸(10)の周りに配置された複数の柱(40)、および前記柱(40)を接続し、中間区域(59)内で前記柱(40)の間に広がったバックプレート(50)を含む磁心(400)を含む、駆動ユニット(4)と、
前記柱(40)の各々の周りに配設されたコイル巻線(44)であって、前記コイル巻線(44)が、回転磁界を作り出すよう制御可能である、コイル巻線(44)と、
を備え、
前記インペラ(3)が、前記インペラ(3)の回転を生じさせるよう前記回転磁界と相互作用するように配置された磁石構造(32)を含む、血管内血液ポンプ(1)において、
前記柱(40)のうちの少なくとも1つの柱の少なくとも一部の材料が前記バックプレート(50)の前記中間区域(59)の材料と一体になっていることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記磁心(400)が、前記回転軸(10)を横切る断面内で電気伝導率に関して不連続である軟磁性材料を含む、または前記軟磁性材料で構成されることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項3】
請求項2に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記軟磁性材料が、軟磁性材料の積層されたシート(85)を含むことを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項4】
請求項3に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、軟磁性材料の前記シート(85)が前記回転軸(10)と平行に配向されていることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記軟磁性材料内の電気伝導率に関する不連続を橋絡する少なくとも1つの溶接部(82、83、86)を含むことを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項6】
請求項5に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記少なくとも1つの溶接部(82、83、86)のうちの少なくとも1つが前記柱(40)と反対の前記バックプレート(50)の表面上に配置されていることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項7】
請求項5または6に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記少なくとも1つの溶接部のうちの少なくとも1つが前記バックプレート(50)と反対の柱(40)の端面上に配置されていることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
代替的に、柱141の不連続な断面は、
図5Iに示されるとおりのポリマー母材186内に埋め込まれた金属粒子185によって、または絶縁性母材を含浸させたスチールウールもしくは他の多孔質構造によって作り出されてもよい。軟磁性材料の、多孔質、ひいては、不連続な構造はまた、焼結プロセスまたは高圧成形プロセスによって生成されてもよく、この場合、空気への曝露による軟磁性材料の酸化によって絶縁層が自動的に形成されるため、絶縁性母材は省略されてもよい。さらに代替的に、柱141は軟磁性材料の丸めたシート187で形成されてもよく、この場合、丸めたシート187の層は、
図5Jに示されるとおりの絶縁層188によって分離される。これもまた、柱141または柱40内の渦電流を低減する本発明の意味で不連続な断面をもたらす。
<付記>
[1]
患者の血管内への経皮挿入のための血管内血液ポンプ(1)であって、
血流入口(21)および血流出口(22)を有するポンプケーシング(2)と、
回転軸(10)の周りに回転可能となるよう前記ポンプケーシング(2)内に配置されたインペラ(3)であって、前記インペラ(3)が、血液を前記血流入口(21)から前記血流出口(22)へ運搬するためにサイズ設定および形状設定されたブレード(31)を有する、インペラ(3)と、
前記インペラ(3)を回転させるための駆動ユニット(4)であって、前記駆動ユニット(4)が、前記回転軸(10)の周りに配置された複数の柱(40)、および前記柱(40)を接続し、中間区域(59)内で前記柱(40)の間に広がったバックプレート(50)を含む磁心(400)を含む、駆動ユニット(4)と、
前記柱(40)の各々の周りに配設されたコイル巻線(44)であって、前記コイル巻線(44)が、回転磁界を作り出すよう制御可能である、コイル巻線(44)と、
を備え、
前記インペラ(3)が、前記インペラ(3)の回転を生じさせるよう前記回転磁界と相互作用するように配置された磁石構造(32)を含む、血管内血液ポンプ(1)において、
前記柱(40)のうちの少なくとも1つの柱の少なくとも一部の材料が前記バックプレート(50)の前記中間区域(59)の材料と一体になっていることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
[2]
上記[1]に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記磁心(400)が、前記回転軸(10)を横切る断面内で電気伝導率に関して不連続である軟磁性材料を含む、または前記軟磁性材料で構成されることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
[3]
上記[2]に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記軟磁性材料が、軟磁性材料の積層されたシート(85)を含むことを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
[4]
上記[3]に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、軟磁性材料の前記シート(85)が前記回転軸(10)と平行に配向されていることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
[5]
上記[2]から[4]のいずれか1つに記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記軟磁性材料内の電気伝導率に関する不連続を橋絡する少なくとも1つの溶接部(82、83、86)を含むことを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
[6]
上記[5]に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記少なくとも1つの溶接部(82、83、86)のうちの少なくとも1つが前記柱(40)と反対の前記バックプレート(50)の表面上に配置されていることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
[7]
上記[5]または[6]に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記少なくとも1つの溶接部のうちの少なくとも1つが前記バックプレート(50)と反対の柱(40)の端面上に配置されていることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
[8]
血管内血液ポンプ(1)の駆動ユニット(4)のための磁心(400)を製作する方法であって、前記磁心が回転軸(10)を有し、前記回転軸(10)の周りに配置された複数の柱(40)、および前記柱(40)を接続するバックプレート(50)を含む、方法において、前記方法が、磁気伝導性材料のモノブロック(9)を提供するステップと、溝穴を前記モノブロック(9)内に切り込み、これにより、前記柱(40)を、前記柱(40)が前記回転軸(10)の周りに配置されるよう、および前記バックプレート(50)を、前記バックプレート(50)が前記柱(40)と共に1つの一体部品を形成するように作り出すステップと、を含むことを特徴とする方法。
[9]
上記[8]に記載の方法であって、前記溝穴(49)のうちの少なくとも1つが、前記回転軸(10)を通るよう切り込まれることを特徴とする方法。
[10]
上記[8]または[9]に記載の方法であって、前記溝穴(49)が、前記柱(40)が全て同一の長さを有するように切り込まれることを特徴とする方法。
[11]
上記[8]から[10]のいずれか1つに記載の方法であって、前記溝穴(49)が、前記バックプレート(50)が、前記柱(40)の長手方向軸(LA)を横切る最大断面寸法よりも小さい厚さを有するように切り込まれることを特徴とする方法。
[12]
上記[8]から[11]のいずれか1つに記載の方法であって、前記溝穴(49)が放電加工を用いて切り込まれることを特徴とする方法。
[13]
上記[12]に記載の方法であって、前記溝穴が放電加工によってワイヤカットを用いて切り込まれることを特徴とする方法。
[14]
上記[8]から[11]のいずれか1つに記載の方法であって、前記溝穴が電気化学加工を用いて切り込まれることを特徴とする方法。
[15]
磁心(400)を有する駆動ユニット(4)を有する血管内血液ポンプ(1)を製作する方法であって、前記磁心(400)が上記[8]から[14]のいずれか1つに従って製作されることを特徴とする方法。