(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178247
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】靴底
(51)【国際特許分類】
A43B 13/12 20060101AFI20241217BHJP
A43B 13/14 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
A43B13/12 A
A43B13/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024158919
(22)【出願日】2024-09-13
(62)【分割の表示】P 2023535814の分割
【原出願日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】17/478,464
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/181,273
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート ジェンキンス
(72)【発明者】
【氏名】笠坊 美紀
(72)【発明者】
【氏名】長山 和樹
(72)【発明者】
【氏名】堀之内 敬史
(57)【要約】 (修正有)
【課題】軽量で履き心地がよく安定した歩行を得る靴底を提供する。
【解決手段】本発明は、可撓性材料からなる靴底本体と、底本体を構成する可撓性材料よりも曲げ弾性率が高い材料で構成されたプレートとを少なくとも有する靴底であって、前記プレートは少なくとも2枚前記靴底本体中に含まれると共に、そのうち2枚のプレートが次の条件1~3を全て充足していることを特徴とする靴底とする。条件1:該靴底の底面透視図において、ラスト中心線(PCL)に対し、2枚のプレートのうち、一方のプレートは内甲側に配置され、他方のプレートは外甲側に配置されている。条件2:2枚のプレートの長軸は共に、PCLに対して、0°から30°の範囲にある角度をなしている。条件3:靴底のつま先側の先端を1、踵側の先端を0としたとき、2枚のプレートは共に、その全体が0.2~0.7の範囲の領域に存在している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性材料からなる靴底本体と、該靴底本体を構成する可撓性材料よりも曲げ弾性率が高い材料で構成されたプレートとを少なくとも有する靴底であって、前記プレートは少なくとも2枚前記靴底本体中に含まれると共に、そのうち2枚のプレートが次の条件1~条件3を全て充足していることを特徴とする靴底。
条件1:該靴底の底面透視図において、ラスト中心線(以下、「PCL」という)に対し、当該2枚のプレートのうち、一方のプレートは内甲側に配置され、他方のプレートは外甲側に配置されていること。
条件2:当該2枚のプレートの長軸は共に、PCLに対して、0°から30°の範囲にある角度をなしていること。
条件3:靴底のつま先側の先端を1、踵側の先端を0としたとき、当該2枚のプレートは共に、その全体が0.2~0.7の範囲の領域に存在していること。
【請求項2】
靴底の形状がロッカー形状である請求項1記載の靴底。
【請求項3】
前記2枚のプレートが共に、プレートの長軸を含む靴底垂直断面の断面視において、靴底の厚みをHとしたとき、0.05×H以上、0.5×H以下の範囲に配置されている請求項1に記載の靴底。
【請求項4】
前記2枚のプレートのうち、少なくとも一方のプレートは、地面に対して膨出した形状を有している請求項1に記載の靴底。
【請求項5】
前記2枚のプレートのうち、少なくとも一方のプレートは、コルゲート形状である請求項1に記載の靴底。
【請求項6】
前記靴底本体を構成する可撓性材料よりも曲げ弾性率が高い材料は、繊維強化プラスチックである請求項1に記載の靴底。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、靴底に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コロナウィルス感染症の世界的流行により、都市部を中心としたロックダウンや自粛生活の長期化のなかで、健康維持のためにできる気軽な運動に注目が集まっている。なかでも、場所を選ばず一人でも行えるランニングを始める人が増えており、その多くが、健康の維持・増進を目的として走ることを楽しむランナー、いわゆるファンランナーである。彼らがランニングを楽しむ上で欠かすことのできない重要なスポーツ用具がシューズであり、市販のシューズの中から選んで着用する。各メーカーはシリアスランナーやアスリートといった上級者用も含めて、靴底形状やミッドソールのクッション性、プレートなど様々な工夫を凝らしシューズの設計を行っている。
【0003】
特に近年、シューズ業界のトレンドを席巻しているのが厚底ロッカーシューズである。靴底形状を厚くして地面からの衝撃を緩和し、そこに、ゆりかご、あるいはロッキングチェアのような、ロッカー形状で、前に進み易くする靴底が提示されている。しかしながらやわらかい靴底のため、ランニング障害の原因のひとつとされる過度なプロネーション抑制(接地したときの衝撃を分散するために足底を内方向に回転する人体の自然な動き)の効果はなく、また地面との接地面積が小さいため、タウンユース等、運動以外の日常生活使いにおいては足元が不安定であった。
【0004】
こうしたやわらかいソールにカーボンプレートのような弾性素材を入れて、ソールに足長方向(縦方向)のばねとして前へ進む推進力として機能させる技術が開示されている。
【0005】
例えば、特許文献1で示されるように、前足部から踵部にかけて延在するフレキシブルな弾性部材(炭素繊維強化プラスチックなど)をミッドソールに搭載したシューズが開示されている。弾性部材は、装着者の前足部、足の指の付け根の膨らみ部分(MTP関節)の領域で歩行又は走行中の一歩毎にシューズの底と共にたわむように配置されており、そのたわみに応答してエネルギーを蓄えたり放出したりする。弾性部材に炭素繊維強化プラスチックを用いるいわゆるフルカーボンシューズは非常に高い反発性を有しており、足の前足部にうまく体重移動して安定したフォームで走り続けることができる、フォアフッド走法(前足部から着地する走り方を指す)を習得しているような上級者向けに、各リーディングカンパニーにおけるトップシューズの位置づけの標準的なものになっている。しかしながら、多くの初心者ランナーは初めから安定したフォームをもっておらず、またフルカーボンは硬いことから、比較的ゆっくりとしたペースでの走行やウォーキングも間に入るファンランナーにとってはシューズの機能が十分に引き出せない上に、履き心地が硬く感じられ、不向きであった。
【0006】
中足部や踵部といった局所に部分的にプレートを入れたシューズも知られている。特許文献2には、中足部の真ん中に炭素繊維強化プラスチックをばねとして配置したものが開示されている。プルプレートに比較して、小さな面積の細長いプレートを効率的にエネルギーの蓄積と解放を行うため、摺動用の空隙をつくりそのなかにCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を配置したものであるが、走行への影響はフルプレートに比べて相対的に小さい。また、特に踵から着地した際の足の過度なプロネーションの抑制について期待できない。
【0007】
特許文献3には、踵部に波型のプレートを配置して、踵着地時のクッション性と安定性を両立することにより過度なプロネーションを抑制し、踵着地時から前足部へのスムーズな荷重(体重)移動を可能にする軽量なシューズが提案されている。特許文献4では、プレートの前端部から土踏まず部の内甲側シャンク部及び外甲側シャンク部を前足部まで伸ばし、足の土踏まず(アーチ)を支えることで、土踏まず部との(過度の)捻れや土踏まず部が落ち込みを防ぐシューズが開示されている。さらに、特許文献5では、踵部から中足部にかけて、対となる炭素繊維強化プラスチック片を設けることで、プロネーション抑制を図る技術も開示されている。このように踵部へのプレート設置は踵着地時の安定化が図れ、ふくらはぎの筋肉やアキレス腱が十分に整っていない初心者や、ランニング障害予防のヒールストライク(踵から着地する走り方)走法を推奨される初心者には取り入れやすい面があるが、硬質のプレートゆえに着地時に足裏に突き上げ感を感じる人もおり、履き心地という点では改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5052130号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2019-0150563号
【特許文献3】特許第4399431号明細書
【特許文献4】特許第3403952号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2016-0316852号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、ランニングやジョギングにおいては着地時に足裏に突き上げを感じにくく、プロネーションを抑制して速やかな体重移動を可能としつつ、ゴルフやテニス、バスケットボール、サッカーおよびスケートボーディングなど体重移動が求められるスポーツにも幅広く使用でき、タウンユースやウォーキングにおいても、軽量で履き心地がよく安定した歩行を得る靴底を提供することは、有用である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、我々は、可撓性材料からなる靴底本体と、該靴底本体を構成する可撓性材料よりも曲げ弾性率が高い材料で構成されたプレートとを少なくとも有する靴底であって、前記プレートは少なくとも2枚前記靴底本体中に含まれると共に、そのうち2枚のプレートが次の条件1~条件3を全て充足していることを特徴とする靴底、を提供する。
【0011】
条件1:該靴底の底面透視図において、ラスト中心線(以下、「PCL」という)に対し、当該2枚のプレートのうち、一方のプレートは内甲側に配置され、他方のプレートは外甲側に配置されていること。
【0012】
条件2:当該2枚のプレートの長軸は共に、PCLに対して、0°から30°の範囲にある角度をなしていること。
【0013】
条件3:靴底のつま先側の先端を1、踵側の先端を0としたとき、当該2枚のプレートは共に、その全体が0.2~0.7の範囲の領域に存在していること。
【発明の効果】
【0014】
本発明の靴底によれば、ランニングやジョギングにおいては着地時に足裏に突き上げを感じにくく、プロネーションを抑制して速やかな体重移動を可能としつつ、タウンユースやウォーキングにおいても、軽量で履き心地がよく安定した歩行を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】靴底の底面透視図における、PCLとプレートの長軸の角度との関係を説明するための図である。
【
図3】本発明に係る靴底の別の例を示す底面透視図。
【
図4】本発明に係る靴底の別の例を示す底面透視図。
【
図5】本発明に係る靴底の別の例を示す底面透視図。
【
図6】本発明に係る靴底の別の例を示す底面透視図。
【
図7】本発明に係る靴底の別の例を示す底面透視図。
【
図8】本発明に係る靴底の比較例を示す底面透視図。
【
図9】本発明に係る靴底の別の例を示す底面透視図。
【
図10】本発明に係る靴底の別の例を示す底面透視図。
【
図11】本発明に係る靴底の別の例を示す底面透視図。
【
図12】本発明に係る靴底の別の例を示す底面透視図。
【
図13】本発明に係る靴底の別の例を示す底面透視図。
【
図14】本発明に係る靴底の別の例を示す底面透視図。
【
図15】本発明に係る靴底の別の例を示す底面透視図。
【
図19】本発明にかかる靴底が用いられた靴の構造を説明する分解図。
【
図21】地面に対して膨出した形状を有したプレートが配置された状態を説明する、靴底を外甲側から見た側面透視図。
【
図22】プレートの靴底高さ方向での配置を説明する、靴底を外甲側から見た側面透視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明において用いられる靴底本体は可撓性材料から構成されている、可撓性材料としては、例えば、-50℃および50℃において歩行時に加わる力で曲げ-復元が可能な材料であり、また、良好なクッション性を備えた軟質弾性部材を用いることが好ましく、具体的には、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性合成樹脂の発泡体やポリウレタン(PU)等の熱硬化性樹脂の発泡体、またはブタジエンラバーやクロロプレンラバー等のラバー素材の発泡体が例示できる。本発明においては、JIS C硬度が43°~50°であるものを用いることが好ましい。JIS C硬度が43°未満であるとミッドソール本体がやわらかくなりすぎ、足の沈み込みが大きくなる。また、踵部が変形しすぎてプロネーションを十分に抑制しえない場合がある。一方、ミッドソール本体のJIS C硬度が50°を越えると十分なクッション性が失われる可能性がある。
【0017】
また、靴底本体は、複数の部材を積層して構成しても良く、その場合に当該複数の部材は異なる可撓性材料によって構成されていることが好ましい。例えば、ミッドソールとして前記したJIS C硬度が43°~50°である材料に重ねて、アウトソールとしてラバーを用いることは、好ましい態様である。アウトソールとしてラバーを用いた場合、歩行性能の持続性向上が期待できる。また、アウトソールは半透明のゴムで形成しても構わない。半透明なゴムを用いることで、後述するプレートを外観視から視認可能とできるので、靴底の意匠性を高めることができる。また一方、アウトソールはカーボンブラックを補強用の充填材とする黒色のゴムで部分または全体的に形成されていてもよい。
【0018】
本発明の靴底は、前記靴底本体を構成する可撓性材料よりも曲げ弾性率が高い材料で構成されたプレートを有している。
【0019】
プレートを構成する材料は、前記靴底本体を構成する可撓性材料よりも曲げ弾性率が高ければ特に制限はないが、なかでも繊維強化プラスチックを用いることは軽量で適度な剛性を有したプレートとできるので望ましい。ここで、繊維強化プラスチックに用いられる強化繊維としては、特に限定はないが、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、炭化ケイ素繊維および炭素繊維が好ましく用いられる。特に軽量かつ高性能であり、優れた力学特性の繊維強化複合材料が得られる点で、ガラス繊維や炭素繊維が好ましく用いられる。
【0020】
また、ガラス繊維単一でもよいし、炭素繊維単一でもよく、性能とコストのバランスから、ガラス繊維と炭素繊維の両方を、一つのプレートに用いてもよい。
【0021】
ここで、ガラス繊維は、特に限定されるものではないが、Eガラス繊維、Sガラス繊維、Cガラス繊維、Dガラス繊維が好ましく用いられる。コストと強度のバランスの観点からは、Eガラス繊維が好ましく用いられ、高強度を求められる場合にはSガラス繊維が好ましく用いられ、耐酸性を求められる場合にはCガラス繊維が好ましく用いられ、低誘電率を求められる場合にはDガラス繊維が好ましく用いられる。ガラス繊維の平均繊維径に特に制限はないが、ガラス繊維の平均繊維径は4~20μmであることが好ましく、より好ましくは平均繊維径が、5~16μmである。下限に特に制限はなく、通常4μm以上であれば十分効果を得ることができる。平均繊維径が20μmを超えると強度が低下する傾向にある。
【0022】
またガラス繊維目付は、好ましくは20~400g/m2であり、より好ましくは40~300g/m2である。ガラス繊維の目付が20g/m2以上の場合、ガラス繊維織物の製織性が良好となり、また、ガラス繊維の目付が400g/m2以下の場合、エポキシ樹脂組成物などの含浸時に樹脂が厚み方向の中央部まで到達しやすく、未含浸部(ボイド)が残存しにくいガラス繊維強化複合材料となり、その結果、優れた圧縮強度等の機械物性を示すことになる。また、ガラス繊維をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。
【0023】
次に、炭素繊維は、特に限定されるものではないが、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維およびピッチ系炭素繊維等が好ましく用いられる。中でも、引張強度の高いポリアクリロニトリル系炭素繊維が、特に好ましく用いられる。炭素繊維の形態としては、有撚糸、解撚糸および無撚糸等を使用することができる。
【0024】
かかる炭素繊維は、引張弾性率が180~600GPaの範囲であることが好ましい。引張弾性率がこの範囲であれば、得られる繊維強化複合材料に剛性を持たせることができるため、得られる成形品を軽量化することができる。また一般に、炭素繊維は弾性率が高くなるほど強度が低下する傾向があるが、この範囲であれば炭素繊維自体の強度を保つことができる。より好ましい弾性率は、200~440GPaの範囲であり、さらに好ましくは220~300GPaの範囲である。上記の上限と下限のいずれを組み合わせた範囲であってもよい。ここで、炭素繊維の引張弾性率は、JIS R7601-2006に従い測定された値である。
【0025】
炭素繊維の市販品としては、“トレカ(登録商標)”T300(引張強度:3.5GPa、引張弾性率:230GPa)、“トレカ(登録商標)”T300B(引張強度:3.5GPa、引張弾性率:230GPa)、“トレカ(登録商標)”T400HB(引張強度:4.4GPa、引張弾性率:250GPa)、“トレカ(登録商標)”T700SC(引張強度:4.9GPa、引張弾性率:230GPa)、“トレカ(登録商標)”T800HB(引張強度:5.5GPa、引張弾性率:294GPa)、“トレカ(登録商標)”T800SC(引張強度:5.9GPa、引張弾性率:294GPa)、“トレカ(登録商標)”T830HB(引張強度:5.3GPa、引張弾性率:294GPa)、“トレカ(登録商標)”T1000GB-(引張強度:6.4GPa、引張弾性率:294GPa)、“トレカ(登録商標)”T1100GC(引張強度:7.0GPa、引張弾性率:324GPa)、“トレカ(登録商標)”M35JB(引張強度:4.7GPa、引張弾性率:343GPa)、“トレカ(登録商標)”M40JB(引張強度:4.4GPa、引張弾性率:377GPa)、“トレカ(登録商標)”M46JB(引張強度:4.2GPa、引張弾性率:436GPa)、“トレカ(登録商標)”M55J(引張強度:4.0GPa、引張弾性率:540GPa)、“トレカ(登録商標)”M60JB(引張強度:3.8GPa、引張弾性率:588GPa)、“トレカ(登録商標)”M30SC(引張強度:5.5GPa、引張弾性率:294GPa)(以上、東レ(株)製)、PX35(引張強度:4.1GPa、引張弾性率:242GPa)、(以上、ZOLTEK Corporation 製)などを挙げることができる。
【0026】
前記炭素繊維の、フィラメント数としては、特に限定されるものではないが、プレートに後述の織物を用いる場合、製織生産性、要求されるプレートの引張・曲げ弾性率や強度、プレートの意匠性の観点から、また、炭素繊維束は、1,000~70,000フィラメントの範囲であることが好ましく、より好ましくは1,000~60,000フィラメントで構成される。
【0027】
次に、プレートに用いる強化繊維の形態は、特に限定されるものではないが、前述の強化繊維を一つの方向に引き揃えて、後述のマトリックス樹脂と組み合わせた一方向繊維強化プラスチックや、前述の強化繊維を織物に加工した後に、後述のマトリックス樹脂と組み合わせた織物強化プラスチックを採用することが好ましく用いられる。
【0028】
ここで、前述の織物について説明する。織物の織組織は、特に限定されるものではないが、平織り、斜文織り、朱子織り、うね織り、ななこ織り、はち巣織り、ハック織り、模しゃ織り、なし地織りが好ましく用いられる。斜文織りでは、3枚斜文、4枚斜文、5枚斜文、6枚斜文、伸び斜文、曲がり斜文、破れ斜文、飛び斜文、山形斜文、あじろ斜文、重ね斜文、よれ斜文、昼夜斜文、飾り斜文、ぼかし斜文を例示することができ、プレートに要求される意匠性に応じて選択することができる。また、朱子織りでは、5枚朱子、7枚朱子、8枚朱子、10枚朱子、変則朱子、ひろげ朱子、重ね朱子、みかげ織り、昼夜朱子、ぼかし朱子を例示することができ、プレートに要求される意匠性に応じて選択することができる。また、うね織りでは、たてうね織り、よこうね織り、変化うね織りを例示することができ、プレートに要求される意匠性に応じて選択することができる。また、ななこ織りでは、正則ななこ織り、変化ななこ織り、不規則ななこ織り、変化ななこ織り、向いななこ織り、を例示することができ、プレートに要求される意匠性に応じて選択することができる。さらに、ここで、織物を構成する強化繊維としては、上記に例示した、ガラス繊維単一でもよいし、炭素繊維単一でもよく、複数の種類の異なる、ガラス繊維や炭素繊維を適用してもよく、また、性能・コスト・意匠性に優れることから、少なくとも1種類のガラス繊維と少なくとも1種類の炭素繊維を合わせて交織してもよい。
【0029】
次に、本発明に用いられるプレートを構成する、前記強化繊維と組み合わせる、マトリックス樹脂について説明する。マトリックス樹脂は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。
【0030】
ここで、熱硬化性樹脂は、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂組成物、ビニルエステル樹脂組成物、不飽和ポリエステル樹脂組成物、ポリウレタン樹脂組成物から選ばれる熱硬化性樹脂組成物であることが、取り扱い性の観点から好ましく、エポキシ樹脂組成物、ビニルエステル樹脂組成物、不飽和ポリエステル樹脂組成物はプレートの性能や耐久性の観点からより好ましい。また、これらを含む熱硬化性樹脂組成物は単一である必要は無く、樹脂組成物同士を混合するなど、相互に混合されていても良い。ここで、エポキシ樹脂組成物としては、水酸基を複数有するフェノールから得られる芳香族グリシジルエーテル、水酸基を複数有するアルコールから得られる脂肪族グリシジルエーテル、アミンから得られるグリシジルアミン、オキシラン環を有するエポキシ樹脂、およびカルボキシル基を複数有するカルボン酸から得られるグリシジルエステルなどのエポキシ樹脂を含有する樹脂組成物を例示することができる。芳香族グリシジルエーテルとしては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールADのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテル等のビスフェノールから得られるジグリシジルエーテル、フェノールやアルキルフェノール等から得られるノボラックのポリグリシジルエーテル、レゾルシノールのジグリシジルエーテル、ヒドロキノンのジグリシジルエーテル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルのジグリシジルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニルのジグリシジルエーテル、1,6-ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、9,9’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテル、トリス(p-ヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテル、テトラキス(p-ヒドロキシフェニル)エタンのテトラグリシジルエーテル、およびビスフェノールAのジグリシジルエーテルと2官能イソシアネートを反応させて得られるオキサゾリドン骨格を有するジグリシジルエーテルなどを例示することができる。脂肪族グリシジルエーテルとしては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、グリセリンのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールエタンのジグリシジルエーテル、トリメチロールエタンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールのテトラグリシジルエーテル、ドデカヒドロビスフェノールAのジグリシジルエーテル、およびドデカヒドロビスフェノールFのジグリシジルエーテルなどを例示することができる。グリシジルアミンとしては、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、トリグリシジルアミノフェノール、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルキシリレンジアミンや、これらのハロゲン、アルキル置換体、および水添品などを例示することができる。オキシラン環を有するエポキシ樹脂としては、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジペンテンジオキシド、3,4-エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、アジピン酸ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)、ジシクロペンタジエンジオキシド、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、および4-ビニルシクロヘキセンジオキシドのオリゴマーなどを例示することができる。グリシジルエステルとしては、フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、およびダイマー酸ジグリシジルエステルなどを例示することができる。これらエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂組成物中に含まれるものは単一である必要は無く、エポキシ樹脂組成物に複数のエポキシ樹脂を混合しても良い。
【0031】
また、ビニルエステル樹脂組成物としては、エポキシ樹脂とアクリル酸を反応させたエポキシアクリレート樹脂、またはエポキシ樹脂とメタクリル酸を反応させたエポキシメタクリレート樹脂などのビニルエステル樹脂を含有する樹脂組成物を例示することができる。これらビニルエステル樹脂の原料となるエポキシ樹脂の種類は特に限定されないが、水酸基を複数有するフェノールから得られる芳香族グリシジルエーテル、水酸基を複数有するアルコールから得られる脂肪族グリシジルエーテル、アミンから得られるグリシジルアミン、オキシラン環を有するエポキシ樹脂、およびカルボキシル基を複数有するカルボン酸から得られるグリシジルエステルなどを例示することができる。ビニルエステル樹脂の原料となる芳香族グリシジルエーテルとしては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールADのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテル等のビスフェノールから得られるジグリシジルエーテル、フェノールやアルキルフェノール等から得られるノボラックのポリグリシジルエーテル、レゾルシノールのジグリシジルエーテル、ヒドロキノンのジグリシジルエーテル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルのジグリシジルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニルのジグリシジルエーテル、1,6-ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、9,9’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテル、トリス(p-ヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテル、テトラキス(p-ヒドロキシフェニル)エタンのテトラグリシジルエーテル、およびビスフェノールAのジグリシジルエーテルと2官能イソシアネートを反応させて得られるオキサゾリドン骨格を有するジグリシジルエーテルなど例示することができる。ビニルエステル樹脂の原料となる脂肪族グリシジルエーテルとしては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、グリセリンのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールエタンのジグリシジルエーテル、トリメチロールエタンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールのテトラグリシジルエーテル、ドデカヒドロビスフェノールAのジグリシジルエーテル、およびドデカヒドロビスフェノールFのジグリシジルエーテルなどを例示することができる。ビニルエステル樹脂の原料となるグリシジルアミンとしては、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、トリグリシジルアミノフェノール、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルキシリレンジアミンや、これらのハロゲン、アルキル置換体、および水添品などを例示することができる。ビニルエステル樹脂の原料となるオキシラン環を有するエポキシ樹脂としては、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジペンテンジオキシド、3,4-エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、アジピン酸ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)、ジシクロペンタジエンジオキシド、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、および4-ビニルシクロヘキセンジオキシドのオリゴマーなどを例示することができる。ビニルエステル樹脂の原料となるグリシジルエステルとしては、フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、およびダイマー酸ジグリシジルエステルなどを例示することができる。
【0032】
不飽和ポリエステル樹脂組成物としては、カルボキシル基を2つ有し二重結合が無い飽和二塩基酸と二重結合を有する不飽和二塩基酸、さらにアルコール性水酸基を2個有する二価アルコールとを反応させて得られた不飽和ポリエステル樹脂を含有する樹脂組成物を例示することができる。不飽和ポリエステル樹脂の原料となる飽和二塩基酸の種類は特に限定されないが、無水フタル酸、イソフタル酸などを例示することができる。不飽和ポリエステル樹脂の原料となる飽和不飽和二塩基酸の種類は特に限定されないが、無水マレイン酸、フマル酸などを例示することができる。不飽和ポリエステル樹脂の原料となる二価アルコールの種類は特に限定されないが、エチレングリコールやプロピレングリコールなどを例示することができる。
【0033】
上記のビニルエステル樹脂組成物と不飽和ポリエステル樹脂組成物は、粘度を下げるなどの取り扱い性の観点から、反応性希釈剤を含んでも良い。反応性希釈剤としては、スチレン、ビニルトルエン、メタクリル酸メチルなどのビニルモノマー、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルイソシアヌレートなどのアリルモノマー、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸エステル、ビニルピロリドン、フェニルマレイミドなどを例示することができる。
【0034】
さらに、熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではないが、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、ポリウレタン(TPU)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、液晶ポリエステル樹脂等のポリエステルや、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリブチレン樹脂等のポリオレフィンや、スチレン系樹脂の他、ポリオキシメチレン(POM)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリメチレンメタクリレート(PMMA)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、変性PPE樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリスルホン(PSU)樹脂、変性PSU樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリケトン(PK)樹脂、ポリエーテルケトン(PEK)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などのフッ素系樹脂、更にポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリイソプレン系樹脂、フッ素系樹脂等の熱可塑エラストマー等や、これらの共重合体、変性体、および2種類以上ブレンドした樹脂などであってもよい。
【0035】
とりわけ、プレートへの易加工性、要求されるプレートの引張・曲げ弾性率や強度、プレートの意匠性の観点から、ポリメチレンメタクリレート(PMMA)樹脂、ポリウレタン(TPU)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂(特にPA6、PA66、PA12)、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリカーボネート(PC)とアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂をブレンドした、PC/ABS樹脂が好ましく用いられる。
【0036】
ここで、プレートの意匠性の一つとして、着色が求められる場合、特に色を限定されるものではないが、前記に挙げた熱可塑性樹脂に、黒、赤、黄、緑、青、紫、茶などの着色をすることで、意匠性を高めることができる。
【0037】
次に、プレートの基になる、繊維強化プラスチック板(以下、FRP母板と称する)について説明する。本発明に用いられるプレートを得る方法としては、特に限定されるものではないが、プレートより大きな面積を有するFRP母板から、マシニングセンター、ランニングソー、ノコ盤、ウオータージェットを用いて、プレートの大きさに加工される。
【0038】
ここで、FRP母板について説明する。FRP母板は、上述の強化繊維とマトリックス樹脂を組み合わせて、一体化された繊維強化プラスチックであり、上述の強化繊維を一つの方向に引き揃えて、上述のマトリックス樹脂と組み合わせた一方向繊維強化プラスチックや、上述の強化繊維を上述の織物に加工した後に、上述のマトリックス樹脂と組み合わせた織物強化プラスチックが好ましく用いられる。一方向繊維強化プラスチックや織物強化プラスチックに含まれる強化繊維の割合は、特に限定されるものではないが、要求される剛性・強度およびコストに対応して、体積繊維含有率(Vf)が、5~70%が好ましく用いられ、高剛性・高強度が要求される場合、20~70%が好ましく用いられる。なお、複数の強化繊維を、一つの一方向繊維強化プラスチックや織物強化プラスチックに適用した場合の体積繊維含有率は、複数の強化繊維を合算して計算される。
【0039】
まず、マトリックス樹脂に熱硬化性樹脂を適用した場合の、FRP母板の製造方法について説明する。まず、上述の強化繊維を一つの方向に引き揃えるか、または、上述の強化繊維を上述の織物に加工した後に、樹脂を含浸させたプリプレグを製造する。樹脂を含浸する方法には、ウェット法、ホットメルト法、押出、スプレー、印刷又は他の公知の方法によってプリプレグを製造することができる。ウェット法は、アセトン、メチルエチルケトンおよびメタノールなどから選ばれる有機溶媒に溶解させて低粘度化し、強化繊維に含浸させた後に引き上げ、オーブンなどを用いて有機溶媒を蒸発させてプリプレグを得ることができる。またホットメルト法では、加熱により低粘度化したマトリックス樹脂を、直接、強化繊維に含浸させる方法、あるいは一旦マトリックス樹脂を離型紙などの上にコーティングした樹脂フィルム付きの離型紙シート(以降、「樹脂フィルム」と表すこともある)をまず作製し、次いで強化繊維の両側あるいは片側から樹脂フィルムを強化繊維側に重ね、加熱加圧することにより強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させる方法などを用いることができる。プリプレグをホットメルト法にて作製する方法としては、例えば次に示す方法が挙げられる。すなわち、1つ目の方法は、樹脂組成物を含む樹脂フィルムを両側あるいは片側から加熱加圧することにより、単段階でマトリックス樹脂を含浸させる、いわゆる1段含浸ホットメルト法である。2つ目の方法は、マトリックス樹脂を多段階に分けて樹脂フィルムに塗工し、それらを両側あるいは片側から加熱加圧することにより含浸させる、多段含浸ホットメルト法である。ここで、強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグの、1枚の厚みは、特に限定されるものではないが、0.05mmから5mmの範囲が好ましく、軽量化・薄肉化の観点から、0.05mmから3mmが更に好ましい。
【0040】
次に、上述の製造方法で得られたプリプレグを、少なくとも1枚以上積層して、プリプレグ積層体を製造する。この際、強化繊維を一つの方向に引き揃えたプリプレグや、強化繊維を織物に加工したプリプレグを、それぞれ単独で用いてもよいし、両プリプレグを組み合わせて使用してもよい。また、それぞれの積層角度は、要求される剛性・強度に加えて、プレートの厚みに応じて、自由に選定することができる。例えば、高い剛性・強度を一つの方向に発現させるためには、他の層と実質的に一致させて積層することが好ましく用いられ、また、例えば、ねじり荷重・変形に適した性能も合わせて発現させるためには、他の少なくとも1つの層と10°~90°異なる方向で積層することも好ましく用いられる。また、プリプレグ積層体の厚みは、特に限定されるものではないが、0.05mmから5mmの範囲が好ましく用いられ、軽量化・薄肉化の観点から、0.05mmから3mmが好ましく用いられる。
【0041】
このプリプレグ積層体を、プレス成形、オートクレーブ成形、オーブン成形、真空引きオーブン成形により加熱および必要に応じた加圧することで、マトリックス樹脂を硬化させることで、FRP母板を得ることができる。
【0042】
次に、マトリックス樹脂に熱可塑性樹脂を適用した場合の、FRP母板の製造方法について説明する。まず、上述の強化繊維を一つの方向に引き揃えた後に、溶融法、パウダー法、樹脂フィルム含浸法、混織法によって又は他の公知の方法によって製造することができる。溶融法は押出機で熱可塑性樹脂を溶融させ、溶融バスの中に強化繊維を通過させて繊維束内部に樹脂を含浸させる方法である。溶剤法は樹脂を溶剤で溶かした溶液を繊維束内部に含浸させるものである。パウダー法は熱可塑性樹脂の粉末を強化繊維に付着させ、それを加熱して溶融含浸させるものである。この製造プロセスにより、強化繊維を一つの方向に引き揃えたプリプレグを製造できる。また、一方、強化繊維を上述の織物に加工した織物と、フィルム状に加工された上述のマトリックス樹脂とを、加熱された金属製盤面を有する加圧設備(所謂プレス)に、少なくとも、それぞれ1つずつ、同時に設置して、加熱と加圧により、フィルム状の樹脂を織物に含浸させて織物プリプレグを製造することができる。ここで、強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグの、1枚の厚みは、特に限定されるものではないが、0.05mmから5mmの範囲が好ましく、軽量化・薄肉化の観点から、0.05mmから3mmが更に好ましい。
【0043】
次に、上述の製造方法で得られたプリプレグを、少なくとも1枚以上積層して、プリプレグ積層体を製造する。この際、強化繊維を一つの方向に引き揃えたプリプレグや、強化繊維を織物に加工したプリプレグを、それぞれ単独で用いてもよいし、両プリプレグを組み合わせて使用してもよい。また、それぞれの積層角度は、要求される剛性・強度に加えて、プレートの厚みに応じて、自由に選定することができる。例えば、高い剛性・強度を一つの方向に発現させるためには、他の層と実質的に一致させて積層することが好ましく用いられ、また、例えば、ねじり荷重・変形に適した性能も合わせて発現させるためには、他の少なくとも1つの層と10°~90°異なる方向で積層することも好ましく用いられる。また、プリプレグ積層体の厚みは、特に限定されるものではないが、0.05mmから5mmの範囲が好ましく用いられ、軽量化・薄肉化の観点から、0.05mmから3mmが好ましく用いられる。
【0044】
このプリプレグ積層体を、プレス成形、オートクレーブ成形、オーブン成形、真空引きオーブン成形により加熱および必要に応じた加圧することで一体化し、その後、冷却することで、FRP母板を得ることができる。
【0045】
本発明に用いるプレートは、所望する反発力に応じて長さおよび幅を調整することができるが、長さは歩き心地にも影響を与えうる。プレートの長さとしては2~10cmであることが好ましく、また、さらに好ましくは4~8cmである。
【0046】
また、プレートの形状としては、どのような形でもよく、そのバリエーションの例は
図3から
図7、
図9から
図15に示したとおりであるが、矩形、弓形、楕円、丸、三角形、正三角形、楔形、台形、円弧型、三日月型等などがあげられる。なお、
図15に示すとおりプレートは丸形でも構わないが、その場合のプレートの長軸とPCLとのなす角度は0°とみなされる。なかでもプレートの形状が長方形である場合、小さいプレートでも効果的に反発力を得ることができるので好ましく、長方形の場合の長辺の長さ/短片の長さで表される比は、2.0~5.0であることが望ましく、さらに望ましくは3.0~4.0であることが望ましい。すなわち、この比が2.0以上であればプレートによる前足への円滑な体重移動がより感じにくくなり、5.0以下であれば足幅方向の変形に対して十分な強度を持つことができる。なお、この長方形の角部は丸く加工されたものであっても良い。また、条件1ないし条件3を充足する2枚のプレートは、ほぼ等しい幅の長方形であるのが望ましい。
【0047】
プレートは接近させたり、可撓性材料からなる靴底周縁部の内甲側、外甲側に離して配置させたりすることで、安定性を調整することができる。なかでも、靴底周縁部の内甲側、外甲側に2つのプレートを互いに離して配置させたりすることが好ましく、プレートの長い方の縁を靴底周縁にぴったり添わせるあるいは、0.5~1cm程度の小さな間隔をあける程度でやわらかいソール素材の縁に添わせるように配置させると、より高い安定性が得られる。
【0048】
本発明に用いられるプレートとしては、繊維強化プラスチック製であって、幅が1~2センチメートル、長さが6~8センチメートルの矩形若しくは角丸の矩形であって、該矩形の長辺に平行に強化繊維が配列されたプレートとすることが好ましく、強化繊維はプレートの一方の短辺から他の短辺まで連続していることが好ましい。このようなプレートを用いると、比強度を最大限に生かすことができ、また、簡便にかつ無駄なくプレートを調製できることから好ましい。
【0049】
また、プレートの形状としては、
図9~12に示されるように、三角形である態様も好ましい態様である。形状が三角形であるプレートを用いることで歩行サイクルを通じた安定性のレベルを増加させたり減少させたりすることができる。具体的には三角形の頂点を足先に向けて配置するか、踵に向けて配置するかによって異なる作用が発揮される。さらに右足と左足で三角形の頂点の向きを変えてもよい。ゴルフや野球シューズにおいて、右打ちの人向けには、
図9に例示されるように、右足は三角形の頂点を足先に向けて配置し、左足は三角形の頂点を踵に向けて配置すると、回転運動を伴う体の動きを効率的にサポートすることができる。
【0050】
また、
図15に示されるように、プレートには孔が空いていてもよい。孔の形状は丸型でもスロット型でも特に制約はないが、孔をあけることでプレートの剛性は下がるために、剛性の調整をすることができる。
【0051】
本発明の靴底は、少なくとも2枚のプレートを有している。プレートは同じ形のものを複数使用してもよいし、異なる形のものを組み合わせてもよい。プレートの枚数は3枚以上であっても構わないが、製造工程を単純にできるので、2枚とすることが好ましい。
【0052】
また、本発明においては、少なくとも2枚のプレートのうちの2枚のプレートは次の条件1から条件3の全てを充足している。なお、3枚以上のプレートが用いられた場合は、3枚以上のプレートから選ばれる2枚の組み合わせの全てにおいて下記条件が充足されていることを要するものではなく、2枚の組み合わせの1つが下記条件を充足していれば良い。
【0053】
図19に4枚のプレートを組み合わせた例を示す。ミッドソール16を挟んで上下2枚ずつ、四角形のプレートがPCLに対して平行に(0°)配置されている。また、ミッドソールの地面側にはアウトソール15が、足裏側にはインソール19が積層されている。また、靴底の使用態様の参考としてアッパー20を図示している。地面側の2枚(第一のプレート1、第二のプレート2)は、やわらかいミッドソールの下で芯のような働きをし、着用者のスムーズな体重移動を助ける。一方、足裏側の2枚(第三のプレート17、第四のプレート18)は、着用者の足のアーチの過度な変形を抑え、疲れにくい足運びを助ける。
【0054】
本発明の靴底は次の条件1から条件3の3つの条件を充足するものである。
【0055】
条件1:靴底の底面透視図において、ラスト中心線(PCL)に対し、当該2枚のプレートのうち、一方のプレートは内甲側に配置され、他方のプレートは外甲側に配置されていること。
【0056】
条件2:当該2枚のプレートの長軸は共に、PCLに対して、0°から30°の範囲にある角度をなしていること。
【0057】
条件3:靴底のつま先側の先端を1、踵側の先端を0としたとき、当該2枚のプレートは共に、その全体が、0.2~0.7の範囲の領域に存在していること。
【0058】
ここで、靴底の底面透視図におけるラスト中心線(PCL。Profile Center Lineの略称として「PCL」と略記することがある)とは、ラスト(木型)底面ゲージのセンターラインとして求められる。また、PCLとプレートの長軸とがなす角度は、
図1に示すように、次のように求められる。すなわち、靴底を上からみて、プレートの長軸、すなわちプレートの中心線、とPCLのなす角度として求められ、平行な場合はゼロ度とする。ここで、プレートの中心線とは、プレートを包摂する最も小さな面積の外接長方形の短辺の中点を結ぶ線をいう。プレートの中心線の前記外接長方形の短辺上の一端をP1、前記外接長方形の短辺上のもう一つの他の一端をP2とし、P1とP2の距離をL1、P1とPCLとの距離をLP1、P2とPCLとの距離をLP2としたとき、プレートの長軸、すなわちプレートの中心線、とPCLとのなす角度θは、次の(式1)から求められることとなる。
【0059】
sinθ=|LP1-LP2|/L1 (式1)
なお、PCLからみて親指がおかれる側が内甲側であり、小指がおかれる側が外甲側である。
【0060】
また、
図1に示すように、つま先側の先端と、踵側の先端は、次のようにして求められる。すなわち、PCLに対する垂線のうち、つま先側で靴底の底面透視図に接する線の接点がつま先側の先端であり、踵側の先端は、PCLに対する垂線のうち、踵側で底面透視図に接する線の接点が踵側の先端であると定義する。なお、線で接する場合は接した部分の中央を接点とし、また、つま先側または踵側で接点が2カ所以上観測された場合の当該側の接点は、接点を含む垂線とPCLとの交点間の距離が最大になる組み合わせとなる点、距離が同じである場合は接点がPCLに近い側の点、が採用される。
【0061】
本発明においては、少なくとも2枚のプレートは、靴底のつま先側の先端を1(図中、「1.0」で表記)、踵側の先端を0(図中、「0.0」で表記)としたとき、当該2枚のプレートは共に、その全体が0.2~0.7の範囲の領域に存在している。なお、図面符号との混同を避けるため、各図中では小数表記、かつ、イタリック体で表記している。なかでも、当該2枚のプレートは、その一方の端が0.4~0.7の範囲、他方の端が0.2~0.4の範囲の領域に存在していることが好ましい。すなわち、PCLをY軸、PCLに直交し踵側の先端をとおる直線をX軸としたXY座標系における点を(x,y)で表したとき、つま先側の先端のy座標値は1、踵側の先端のy座標値は0であるところ、当該2枚のプレートは、y座標値として0.7を超える点、および、y座標値として0.2を下廻る点にその一部が存在することがない。また、好ましい態様にあっては、前記2枚のプレートは一方の端のy座標値が0.4~0.7の範囲であり、他の端のy座標値が0.2~0.4の範囲である。ここで、プレートの端とは、プレート上のy座標値が最大となる箇所、および、プレート上のy座標値が最小となる箇所を意味する。
【0062】
本発明は、踵部や先端部には特別な素材や構造を設けることなく、中足部領域を限定的支持するだけなので、ソール構造全体を軽量化できる。
【0063】
条件3について説明すると、着地の際は、ソール構造体の踵部のクッションが地面からの衝撃を吸収して圧縮変形するが、y座標値として0.2以上となる位置にプレートの端の一方が配置されているので、踵着地時に足の踵が回内または回外を起こして横方向に倒れ込もうとした場合でも、踵部においても中足部に近づくほど圧縮変形しにくくなっていることで、このような踵の横ブレを防止でき、踵着地時から前足部への体重移動時の安定性も同時に向上する。y座標値として0.2を下廻る位置にプレートの一部が存在すると着地時に突き上げ感を感じることがある。また、y座標値として0.7以下となる位置にプレートの端の一方が配置されているので、さらに前足部への体重移動に続いて足をけりだす時につま先部、とくにMP関節の背屈を阻害することなく足は地面から離れることができる。y座標値として0.7を上廻る位置にプレートの一部が存在しているとMTP関節の下にプレートがかかりはじめ、特に十分な足裏筋力のない初心者ランナーにとってつま先部に違和感を感じたり、その自然な背屈を阻害する場合があるためこの範囲であることが必須である。このように中足部に略平行に配置された2本の細長いプレートが中足部が地面に接地した時だけ、スキーのパラレル走行のようなある種のガイダンスシステムとして働き、初心者ランナーであっても過度なプロネーションを抑制しつつ安定した体重移動を軽量なシューズで実現することができる。
【0064】
また、条件2について説明すると、条件2が充足されることで、前進時の速やかな体重移動に加えて、踵着地時から離足までの間の足関節の回内、回外運動を抑制し、安定化をはかることができる。プレートの長軸がPCLに対してなす角度は0°から10°の範囲内であることが望ましく、さらに望ましくは0°から3°の範囲内である。一方で、サイドステップや斜めへの方向転換が必要な時には、プレートの長軸がPCLに対してなす角度は10°から30°の角度であってよい。特に、角度を大きくつける場合には、可撓性材料からなる靴底の周縁部の縁にそわせて左右の靴でプレートが鏡像となるように配置するのが好ましい。30°の角度の場合での靴底の周辺部に沿わせた場合には、バスケットボール、ハンドボールやサッカーなど横や斜めの動きを伴い様なスポーツでも好適に使用できる。プレートの長軸がPCLに対してなす角度が30°を超える場合、横ブレ抑制の安定感において劣ることとなる。
【0065】
また、前記2枚のプレートの間隔は狭すぎると安定を欠く場合があり、プレートの重心とPCLとの間の距離は、1.0cmから4.0cmであることが好ましく、さらに望ましくは2.5cmから3.5cmである。
【0066】
さらに本発明の靴底の形には特に制約はなく、フラットシューズや伝統的な革靴など、特にオーバーサイズ(厚底シューズ)でない靴底厚みの靴にも、広くスタビライズの効果が期待できるものである。そのなかで、より楽に前へ進むことが求められる用途においては、ロッカー形状を有していることが望ましい。ロッカー形状とは中足部分に浮き上がりがなくトップ(足先部)とテール(後方)のいずれかまたは両方が持ち上がった形状を意味する。接地している面が少ないため前に進みやすく、足先が浮いているので方向転換もし易くなる。従来からロッカー形状の靴は存在していたが、「芯」がないために靴底の耐久性に問題があったり、前に進みやすい反面、足元が不安定になるという問題もあった。本発明のように芯となるプレートを入れることにより、耐久性と安定性の両方を向上することができる。
【0067】
また、本発明の靴底は、条件1ないし条件3を充足する2枚のプレートの靴底内での高さ方向の配置については特に制約はなく複数のオプションがある。ひとつは、地面との接地面、また、
図20に示すようにアウトソール15とミッドソール16の間、また、ミッドソールの下半分の位置、また、ミッドソールの上半分の位置、また、
図22に示すようにミッドソール16とインソール19の間などである。プレートの高さ方向での配置位置が高くなるにつれ、人の足裏に接近するため、足のアーチへの安定化作用がたかまり、逆に地面に近づくほど、地面接地時の靴の安定性が高まるので、いずれに機能を寄せるかで調整することができる。地面と靴との間での安定性を向上させるという点では、
図20に示すように、プレートの重心を含む靴底垂直断面における断面視において、靴底の厚さをHとしたとき、0.05×H以上、0.5×H以下の範囲に配置されているのが望ましい。また、2枚のプレートともにこの範囲に配置されていることが好ましい。靴底底面からプレートまでの距離が当該断面における靴底の厚さの0.05×H以上であることでプレートが地面からの衝撃や小石などでプレートが傷つくことを避けることができる。0.5×H以下であることで地面からの衝撃を安定して吸収することができる。前記2枚のプレート靴底底面からの距離は同じであっても異なっていてもよいが、例えば着地の際に踵が内旋しすぎるオーバープロネーションの人には内甲側(土踏まず側)のプレートの方を少し高めに設定したり、逆に踵が反対側に倒れこむアンダープロネーションの人には外甲側(足の外側)のプレートの方を高めに設定することが好ましい。なお、靴底の厚さHは、靴底高さ方向の配置位置を求める対象とするプレートの重心の存する箇所でプレート毎に求めるものとする。
【0068】
また、プレートのエッジを地面に対して傾けて配置してもよい。例えば、
図18で示すように、外甲側は外側ほど高さを高くし、一方、内甲側も外側をやや高めに配置することで安定感をさらに高めることができる。また、エッジを地面に対して垂直にたててもよい。こうすることで、プレートの量を減少させることができ、幅の狭いプレートでも、高い剛性を発揮して効率よく安定性を得ることができる。
【0069】
本発明に用いられるプレートは、フラット形状でもよいが、少なくともそのうちの1枚は、
図21に示すように、地面に対して膨出した形状を有していることが好ましい。地面に対して膨出している形状とは地面側に向かって凸である曲面を有している形状を意味しアーチ形状もその中に含まれる。このような形状にすることで、移動時に地面から反作用を受ける面積を小さくすることができ、前進しやすくすることができる。
【0070】
また本発明に用いられるプレートのうち、少なくとも1枚は、
図17に示すようにコルゲート形状であることが望ましい。コルゲート形状とは平行に配列された複数の凸凹形状をいい、通常、プレス加工やロール成形によって形成することができる。プレートに対してコルゲート形状を付与することで、薄くて強い構造を作ることができ、また、ミッドソールあるいはアウトソールの材料との接着面積が大きくすることで、特に靴の水平方向のずれに対する耐久性が高まりソール全体の耐久性を向上させることができる。
【0071】
【0072】
図2に示すとおり、第一のプレート1および第二のプレート2は中足部に配置されており、PCLに対して、平行に配置されている。また、靴底のつま先側の先端を1、踵側の先端を0としたとき、第一のプレートの先端が0.52、第二のプレートの先端が0.52、第一のプレートの後端が0.27、第二のプレートの後端が0.27に配置されている。第一のプレートの重心とPCLとの間の距離は2.7cm、第二のプレートの重心とPCLとの間の距離は3.0cmである。プレートは炭素繊維強化プラスチックであり、第一のプレート、第二のプレートともに、長さが7.62cm、幅1.27cm、厚み1.27mmであり、角丸の長方形の形状である。
【0073】
図18から理解できるように、この例の靴底は中足部分に浮き上がりがなくトップ(足先部)とテール(後方)の両方が持ち上がったロッカー形状であり、第一のプレートおよび第二のプレートはともにミッドソールとアウトソールの間に配置され、また、高さ方向での配置位置としては、0.12×Hの位置に配置されている。
【0074】
【0075】
図3において、第一のプレート1および第二のプレート2は中足部に配置されており、第一のプレートの長軸とPCLとがなす角度θは10°、第二のプレートの長軸とPCLとがなす角度θは5°で配置されている。また、靴底のつま先側の先端を1、踵側の先端を0としたとき、第一のプレートの先端が0.52、第二のプレートの先端が0.52、第一のプレートの後端が0.27第二のプレートの後端が0.27に配置されている。第一のプレートの重心とPCLとの間の距離は2.6cm、第二のプレートの重心とPCLとの間の距離は3.0cmである。プレートは炭素繊維強化プラスチックであり、第一のプレート、第二のプレートともに長さは7.62cm、幅1.27cm、厚み1.27mmであり、角丸の長方形の形状である。実施例1と同様に、靴底は中足部分に浮き上がりがなくトップ(足先部)とテール(後方)の両方が持ち上がったロッカー形状であり、第一のプレートおよび第二のプレートはともにミッドソールとアウトソールの間に配置され、また、高さ方向での配置位置としては、0.12×Hの位置に配置されている。
【0076】
実施例3
図4は実施例3を示す。
図4において、第一のプレート1および第二のプレート2は中足部に配置されており、プレートはいずれも円弧形状である。形状が円弧なので角度を求めるには、
図4に示すとおり、第一のプレートの外接長方形12、第二のプレートの外接長方形13を描き、短辺の中点を結ぶ線をプレート中心線、すなわちプレートの長軸、として求める。
【0077】
第一のプレートの長軸とPCLとのなす角度θは0°、第二のプレートの長軸とPCLとのなす角度θは0°に配置されている。また、靴底の全長を1、踵後端を0としたとき、第一のプレートの先端が0.56、第二のプレートの先端が0.56、第一のプレートの後端が0.25、第二のプレートの後端が0.25に配置されている。第一のプレートの重心とPCLとの間の距離は3.5cm、第二のプレートの重心とPCLとの間の距離は3.5cmである。プレートは炭素繊維強化プラスチックであり、第一のプレートの外接長方形12、第二のプレートの外接長方形13は、ともに長さは9.30cm、幅1.62cmであり、また、第一のプレート、第二のプレートの厚みはともに1.27mmである。実施例1と同様に、靴底は中足部分に浮き上がりがなくトップ(足先部)とテール(後方)の両方が持ち上がったロッカー形状であり、第一のプレートおよび第二のプレートはともにミッドソールとアウトソールの間に配置され、また、高さ方向での配置位置としては、実施例1と同じ0.12×H位置に配置されている。
【0078】
【0079】
図5において、第一のプレートおよび第二のプレートは中足部に配置されており、第一のプレートの長軸とPCLとのなす角度θは17°、第二のプレートの長軸とPCLとのなす角度θは8.5°に配置されている。また、靴底の全長を1、踵後端を0としたとき、第一のプレートの先端が0.61、第二のプレートの先端が0.70、第一のプレートの後端が0.37、第二のプレートの後端が0.20に配置されている。第一のプレートの重心とPCLとの間の距離は3.5cm、第二のプレートの重心とPCLとの間の距離は3.6cmである。プレートは炭素繊維強化プラスチックであり、第一のプレートの長さ7.62cm 幅1.27cmであり、第二のプレートの長さ15.5cm 幅1.27cmであり、厚みはいずれも1.27mmであり、角丸の長方形の形状である。実施例1と同様に、靴底は中足部分に浮き上がりがなくトップ(足先部)とテール(後方)の両方が持ち上がったロッカー形状であり、第一のプレートおよび第二のプレートはともにミッドソールとアウトソールの間に配置され、また、高さ方向での配置位置としては、実施例1と同じ0.12×Hに配置されている。
【0080】
【0081】
図6に示すとおり、第一のプレート1および第二のプレート2は中足部に配置されており、PCLに対して、平行に配置されている。また、靴底のつま先側の先端を1、踵側の先端を0としたとき、第一のプレートの先端が0.52、第二のプレートの先端が0.52、第一のプレートの後端が0.27、第二のプレートの後端が0.27に配置されている。第一のプレートの重心とPCLとの間の距離は1.6cm、第二のプレートの重心とPCLとの間の距離は1.6cmである。プレートは炭素繊維強化プラスチックであり、第一のプレート、第二のプレートともに、長さが7.62cm、幅1.27cm、厚み1.27mmであり、角丸の長方形の形状である。実施例1と同様に、靴底は中足部分に浮き上がりがなくトップ(足先部)とテール(後方)の両方が持ち上がったロッカー形状であり、第一のプレートおよび第二のプレートはともにミッドソールとアウトソールの間に配置され、また、高さ方向での配置位置としては、0.12×Hの位置に配置されている。
【0082】
【0083】
図7に示すとおり、第一のプレート1および第二のプレート2は中足部に配置されており、PCLに対して、平行に配置されている。また、靴底のつま先側の先端を1、踵側の先端を0としたとき、第一のプレートの先端が0.52、第二のプレートの先端が0.52、第一のプレートの後端が0.27、第二のプレートの後端が0.27に配置されている。第一のプレートの重心とPCLとの間の距離は0.99cm、第二のプレートの重心とPCLとの間の距離は0.99cmである。プレートは炭素繊維強化プラスチックであり、第一のプレート、第二のプレートともに、長さが7.62cm、幅1.27cm、厚み1.27mmであり、角丸の長方形の形状である。実施例1と同様に、靴底は中足部分に浮き上がりがなくトップ(足先部)とテール(後方)の両方が持ち上がったロッカー形状であり、第一のプレートおよび第二のプレートはともにミッドソールとアウトソールの間に配置され、また、高さ方向での配置位置としては、0.12×Hの位置に配置されている。
【0084】
比較例1
ロッカー形状であるEVA製のミッドソールを具備したプレートを有していない靴底。
【0085】
比較例2
図8において、第一のプレートおよび第二のプレートは中足部に配置されており、PCLに対して、平行に配置されている。また、靴底の全長を1、踵後端を0としたとき、第一のプレートの先端が0.70、第二のプレートの先端が0.70、第一のプレートの後端が0.16、第二のプレートの後端が0.16に配置されている。第一のプレートの重心とPCLとの間の距離は3.5cm、第二のプレートの重心とPCLとの間の距離は3.5cmである。プレートは炭素繊維強化プラスチックであり、第一のプレート、第二のプレートともに、長さが16.5cm、幅1.27cm、厚み1.27mmであり、角丸の長方形の形状である。
【0086】
靴底は中足部分に浮き上がりがなくトップ(足先部)とテール(後方)の両方が持ち上がったロッカー形状であり、第一のプレートおよび第二のプレートはともにミッドソールとアウトソールの間に配置され、また、高さ方向での配置位置としては、0.12×Hの位置に配置されている。
【0087】
各実験で測定した項目の詳細は以下の通りである。
【0088】
運動条件1(走行):8名の男性被験者が各実施例および比較例の靴底が用いられた靴を履いて、8分/マイルのペースで床反力計上を走行し、踵着地時の衝撃(踵着地時の衝撃)、蹴りだしの推進力(蹴りだしの推進力)、着地から離足までの左右のブレの安定感(安定性)、をそれぞれの床反力(N/kg)を測定し8人の平均を採用した。踵着地時の衝撃の床反力は小さい方が優れており、衝撃吸収性に優れることを意味する。また、離足までの左右のブレの安定感に相当する床反力は小さい方が優れている。一方、蹴りだしの推進力は大きい方が、靴の特性として優れているという判断となる。
【0089】
運動条件2(歩行):8名の男性被験者が各実施例および比較例の靴底が用いられた靴を履いて歩行し、踵着地時の衝撃(踵着地時の衝撃)、蹴りだしの推進力(蹴りだしの推進力)、着地から離足までの左右のブレの安定感(安定性)、をそれぞれの床反力(N/kg)を測定した。
【0090】
主観的評価:上記の8名の男性被験者にアンケートをとり、次の項目について点数付けを行い各実施例および比較例毎に8名での平均スコアを算出した。項目は総合的な快適性、踵着地のクッション性、前足部のクッション性である。点数は4:受容 とし、点数3:乏しい、2:非常に乏しい、1:かなり乏しい、5:良い、6:非常に良い、7:きわめて良い、の7段階とした。
【0091】
表1に実施例および比較例のプレート配置の関係を整理した。
【0092】
表2に運動条件1,2のテスト結果を示した。
【0093】
表3に8名の被験者による主観的評価のスコアを示した。
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
本発明による実施例は比較例に比べて、踵着地時の衝撃が小さく、蹴りだしの推進力を損なうことなく、着地から離足までの安定性(特に歩行時)に優れていることが表2よりわかる。また表3に示すように主観的評価も比較例に比べて優れていた。各運動条件で安定性および所望方向への速やかな体重移動に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、軽量で履き心地がよくタウンユースに利用できる。また、ランニングやジョギングをはじめ、これに限らず、ゴルフやテニス、バスケットボール、サッカーおよびスケートボーディングなど幅広いスポーツに利用できる。
【符号の説明】
【0101】
1.プレート(第一のプレート)
2.プレート(第二のプレート)
3.PCL
4.P1
5.P2
6.プレート中心線
7.L1
8.LP1
9.LP2
10.θ
11.つま先先端
12.踵の先端
13.第一のプレートの外接長方形
14.第二のプレートの外接長方形
15.アウトソール
16.ミッドソール
17.プレート(第三のプレート)
18.プレート(第四のプレート)
19.インソール
20.アッパー
21.靴底の接地面
22.プレート2の配置位置に対応する靴底の上底