IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッドの特許一覧

特開2024-178255グルカゴン様ペプチド1受容体アゴニストおよびそれらの使用
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178255
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】グルカゴン様ペプチド1受容体アゴニストおよびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20241217BHJP
   C12N 15/16 20060101ALI20241217BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241217BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241217BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20241217BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241217BHJP
   A61K 38/26 20060101ALI20241217BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20241217BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20241217BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20241217BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20241217BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20241217BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241217BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20241217BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20241217BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241217BHJP
   A61P 13/00 20060101ALI20241217BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20241217BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241217BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20241217BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20241217BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20241217BHJP
   C07K 14/605 20060101ALN20241217BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/16 ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61K38/16
A61K45/00
A61K38/26
A61P1/02
A61P3/10
A61P9/00
A61P9/04
A61P27/02
A61P25/00
A61P13/12
A61P31/00
A61P43/00 121
A61P13/00
A61P3/04
A61K48/00
A61K47/68
A61K47/64
C12N15/16
C07K19/00
C07K14/605
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024159697
(22)【出願日】2024-09-17
(62)【分割の表示】P 2023030635の分割
【原出願日】2018-09-21
(31)【優先権主張番号】62/562,283
(32)【優先日】2017-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ハルカ・オカモト
(72)【発明者】
【氏名】ジェスパー・グロマーダ
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル・デーヴィス
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ジェイ・マーフィー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】修飾型グルカゴン様ペプチド1(GLP1)ポリペプチド、修飾型GLP1ポリペプチドを含む融合タンパク質、およびこれらの使用法を提供する。
【解決手段】特定のアミノ酸配列からなる融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド分子、ポリヌクレオチド分子を含むベクター、ポリヌクレオチド分子によりコードされる前記融合タンパク質を発現する、細胞、並びに前記特定のアミノ酸配列からなる融合タンパク質および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む、対象における血糖レベルの低減に使用するための医薬組成物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルカゴン様ペプチド1(GLP1)変異体を含む融合タンパク質であって、該GLP1変異体がN末端にアミノ酸の付加がある成熟GLP1(7~37)(配列番号4)を含み、該融合タンパク質がタンパク質分解切断に対する高い耐性および/または高い血中グルコース低下能力を有する、前記融合タンパク質。
【請求項2】
アミノ酸がアラニン(Ala)およびグルタミン(Gln)からなる群から選択される、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
アミノ酸がGlnを含む、請求項1または2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
GLP1変異体が配列番号6および7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
GLP1変異体が配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
安定型ドメインをさらに含み、該安定型ドメインが、GLP1受容体と特異的に結合し重鎖可変領域(HCVR)と軽鎖可変領域(LCVR)を含む抗原結合性タンパク質またはその抗原結合性断片である、請求項1~5のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
GLP1変異体が抗原結合性タンパク質またはその抗原結合性断片のHCVRのN末端またはC末端と融合した、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
GLP1変異体が抗原結合性タンパク質またはその抗原結合性断片のLCVRのN末端またはC末端と融合した、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
安定型ドメインが抗体またはその断片である、請求項6~8のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
安定型ドメインと融合したグルカゴン様ペプチド1(GLP1)変異体を含む融合タンパク質であって、(i)該GLP1変異体がN末端にグルタミン(Gln)の付加がある成熟GLP1(7~37)(配列番号4)を含み、(ii)該安定型ドメインがGLP1受容体と特異的に結合する抗原結合性タンパク質またはその抗原結合性断片であり、かつ(iii)該融合タンパク質がタンパク質分解切断に対する高い耐性および/または高い血中グルコース低下能力を有する、前記融合タンパク質。
【請求項11】
安定型ドメインがHCVRおよびLCVRを含む抗体またはその抗原結合性断片である、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
GLP1変異体が抗体またはその抗原結合性断片のLCVRのN末端と融合した、請求項11に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
GLP1変異体が配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項10~12のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の融合タンパク質および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか1項に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチド分子。
【請求項16】
請求項15に記載のポリヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項17】
請求項16に記載のベクターを発現する細胞。
【請求項18】
血糖レベルを低減する方法であって、それを必要とする対象に、請求項1~13のいずれか1項に記載のタンパク質を治療有効量含む医薬組成物を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項19】
対象が、糖尿病、肥満症、インスリン抵抗性、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病、1型糖尿病、前糖尿病、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、うっ血性心不全、冠動脈性心疾患、動脈硬化症、末梢動脈疾患、脳卒中、呼吸機能障害、腎疾患、脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、およびメタボリックシンドロームからなる群から選択される疾患または障害を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
2型糖尿病の少なくとも1つの症状、兆候または合併症を予防、治療または軽減する方法であって、それを必要とする対象に、請求項1~13のいずれか1項に記載のタンパク質を治療有効量含む医薬組成物を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項21】
少なくとも1つの症状、徴候または合併症が、高血糖レベル、過剰な喉の渇き、頻尿、尿中ケトン体の存在、疲労、体重変動、かすみ目、治癒が遅い痛み、頻繁な感染、歯肉の腫れまたは圧痛、肥満症、心疾患、脳卒中、腎疾患、眼部疾患、神経損傷および高血圧からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
第2の治療剤または治療と組み合わせて医薬組成物を投与する、請求項18~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
第2の治療剤または治療が、インスリンまたはインスリンアナログ、メトホルミン、チアゾリジンジオン、スルホニルウレア、ビグアニド、クロプロパミド、グリニド、αグルコシダーゼ阻害薬、ナテグリニド、DPP4阻害薬、プラムリンチド、シタグリプチン、ブロモクリプチン、SGLT2阻害薬、カナグリフロジン、降圧薬、スタチン、アスピリン、食生活改善、エクササイズ、および栄養補助食品からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
医薬組成物を皮下、静脈内、皮内、腹腔内、経口、または筋肉内投与する、請求項18~23のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトグルカゴン様ペプチド1受容体アゴニスト、および前記アゴニストを使用した治療法に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満症は米国内で重大な健康問題となっており、アメリカ人のうち3人に2人が体重過多または肥満状態であると考えられる。肥満症は、心疾患、脳卒中、および糖尿病などの他の疾患を発症させる、重大な潜在的危険因子である。体重のわずかな減少(初期体重の5~10%)でさえ、心疾患および糖尿病などの肥満症関連疾患を発症させるリスクを低減する。
【0003】
糖尿病は、高血糖レベル、およびインスリン抵抗性によって特徴付けられる慢性疾患である。未治療で放置した場合、高血糖レベルが、心疾患、脳卒中、糖尿病性網膜症、および下肢切断を含めた長期の合併症をもたらす可能性がある。糖尿病の治療は血糖レベルの制御と低減を伴い、インスリンおよびメトホルミンなどの投薬を伴った運動および食習慣の修正を含む。
【0004】
肥満症治療および血糖制御に使用される手法の1つは、インクレチン経路を標的化するグルカゴン様ペプチド(GLP)-1受容体アゴニストを含む。グルカゴン様ペプチド(GLP)-1は、腸管腸内分泌腺細胞によって分泌されるペプチドホルモンである。経口グルコース投与によって、GLP1はその受容体と結合し、インスリン分泌と血糖レベルの低減をもたらす(インクレチン効果)。しかしながらGLP1は、酵素ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)によって急速に不活性化および分解され、1.5分という非常に短い半減期を有する。したがって、GLP1を含む融合タンパク質を含む、GLP1およびGLP1受容体アゴニストの長期作用誘導体が、糖尿病制御用に試験されている。GLP1アナログ、融合タンパク質およびGLP1受容体アゴニストは、例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19、特許文献20、特許文献21、特許文献22、および特許文献23中に開示される。
【0005】
しかしながら、DPP4による分解に耐性があり、改善された薬物動態性を有し、血糖制御において高い効能および持続的in vivo活性を有する、新規なGLP1ペプチド変異体およびGLP1受容体アゴニストが必要とされる。このようなGLP1変異体およびGLP1受容体アゴニストを使用して、肥満症および糖尿病を治療することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US7452966
【特許文献2】US8389689
【特許文献3】US8497240
【特許文献4】US8557769
【特許文献5】US8883447
【特許文献6】US8895694
【特許文献7】US9409966
【特許文献8】US20160194371
【特許文献9】US20140024586
【特許文献10】US20140073563
【特許文献11】US20120148586
【特許文献12】US20170114115
【特許文献13】US20170112904
【特許文献14】US20160361390
【特許文献15】US20150313908
【特許文献16】US20150259416
【特許文献17】WO2017074715
【特許文献18】、WO2016127887
【特許文献19】WO2015021871
【特許文献20】WO2014113357
【特許文献21】EP3034514
【特許文献22】EP2470198
【特許文献23】EP2373681
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様によれば、本発明は、(i)N末端へのアミノ酸の付加、および(ii)ペプチド配列からのアミノ酸の欠失からなる群から選択される成熟GLP1(7~37)(配列番号4)由来の少なくとも1つのアミノ酸修飾を含むグルカゴン様ペプチド1(GLP1)変異体を提供する。特定実施形態では、修飾はN末端へのアラニンまたはグルタミンの付加を含む。
【0008】
一態様によれば、本発明はGLP1受容体アゴニストを提供し、これらのGLP1受容体アゴニストは、GLP1またはその変異体を含む融合タンパク質を含む。特定実施形態では、GLP1受容体アゴニストは、安定型ドメインと融合したGLP1ペプチドまたはGLP1ペプチド変異体を含む。一実施形態では、安定型ドメインは、GLP1受容体に結合する抗体またはその抗原結合性断片である。
【0009】
本発明のGLP1受容体アゴニストは、GLP1の結合および/または活性を増大するのに特に有用である。幾つかの実施形態では、本発明のGLP1受容体アゴニストは、GLP1の活性化および血糖レベルの低減によって機能する。幾つかの実施形態では、本発明のGLP1ペプチド変異体および/またはGLP1受容体アゴニストは、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)による不活性化に対してより耐性があり、改善されたin vivo半減期を示す。改善された本発明のGLP1アゴニストは、一回用量でさえ10日間を超えて持続する有意な血糖レベルの低減をもたらす。幾つかの実施形態では、GLP1受容体アゴニストは、膵臓β細胞からのグルコース応答性インスリン分泌の増強、インスリン発現の増加、β細胞アポトーシスの阻害、β細胞新生の促進、グルカゴン分泌の低減、胃内消化時間の遅延、飽満の促進および末梢グルコース処理能の増加によって機能する。特定実施形態では、GLP1受容体アゴニストは、対象における高血糖症関連疾患または障害(例えば糖尿病)の少なくとも1つの症状の予防、治療または軽減において有用である。特定実施形態では、GLP1受容体アゴニストを、糖尿病を有する対象または糖尿病を有するリスクがある対象に予防的または治療的に投与することができる。特定実施形態では、GLP1受容体アゴニストは、対象における体重減少などの肥満症の少なくとも1つの症状もしくは徴候の予防、治療または軽減において有用である。
【0010】
特定実施形態では、GLP1受容体アゴニストはGLP1変異体と安定型ドメインを含む融合タンパク質であり、その安定型ドメインは免疫グロブリンまたはその断片を含む。具体的実施形態では、免疫グロブリンは重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、GLP1受
容体に特異的に結合する。特定実施形態では、GLP1受容体アゴニストはGLP1受容体に結合し、GLP1受容体の活性化をもたらす。特定実施形態では、GLP1受容体アゴニストはGLP1受容体の活性化によって機能し、血糖制御、すなわち血糖レベルの低減をもたらす。
【0011】
一実施形態では、本発明は、1つまたはそれ以上の以下の特徴を有する融合タンパク質を提供する。(a)GLP1変異体ドメインと安定型ドメインを含む。(b)GLP1受容体アゴニストである。(c)GLP1変異体ドメインが配列番号5、6、7または8のアミノ酸配列を含む。(d)GLP1受容体に結合する。(e)安定型ドメインが免疫グロブリンまたはその断片を含む。(f)安定型ドメインが免疫グロブリンFc断片を含む。(g)安定型ドメインが抗GLP1受容体抗体またはその抗原結合性断片を含む。(h)血中プロテアーゼによる分解に少なくとも72時間耐性がある。かつ(i)一回用量の投与で10日間を超えて持続する血中グルコースレベルの有意な低減をもたらす。
【0012】
一態様では、本発明は、GLP1変異体またはその一部分をコードする核酸分子を提供する。例えば本発明は、配列番号5、6、7、8、9、10、11、12および13からなる群から選択されるアミノ酸配列のいずれか、またはそれらと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一率を有するそのほぼ類似した配列をコードする核酸分子を提供する。
【0013】
本発明は、GLP1変異体を含む任意の融合タンパク質をコードする核酸分子も提供する。
【0014】
関連態様では、本発明は、本明細書中に記載するGLP1変異体を含むポリペプチドまたはGLP1変異体を含む融合タンパク質を発現可能な、組換え発現ベクターを提供する。例えば本発明は、前述の任意の核酸分子、すなわち任意のGLP1変異体またはGLP1変異体を含む融合タンパク質をコードする核酸分子を含む組換え発現ベクターを含む。本発明の範囲内には、このようなベクターが導入されている宿主細胞、ならびにタンパク質またはその断片の生成が可能な条件下で宿主細胞を培養する工程、およびそこで生成したタンパク質と断片を回収する工程により、タンパク質またはその断片を生成する方法も含まれる。
【0015】
一態様では、本発明は、GLP1受容体と特異的に結合する治療有効量の少なくとも1つの組換えタンパク質またはその断片、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。関連態様では、本発明は、GLP1受容体アゴニストタンパク質と第2の治療剤の組み合わせである組成物を特徴とする。一実施形態では、第2の治療剤は、GLP1受容体アゴニストと有利に組み合わせた任意の作用物質である。GLP1受容体アゴニストと有利に組み合わせることができる例示的な作用物質は、(他のタンパク質または代謝産物などを含めた)GLP1受容体活性を活性化する他の作用物質、および/またはGLP1受容体と直接結合しないが、GLP1受容体関連疾患または障害(例えば糖尿病)を緩和または軽減または治療する作用物質を非制限的に含む。本発明のGLP1受容体アゴニストタンパク質に関する他の併用療法および同時製剤化は、本明細書中の他の箇所に開示する。
【0016】
別の態様では、本発明は、本発明のGLP1受容体アゴニストを使用した、対象におけるGLP1と関連した糖尿病などの疾患または障害を治療するための治療法を提供し、この治療法は、本発明のGLP1受容体アゴニストを含む治療有効量の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む。特定実施形態では、GLP1受容体アゴニストは、GLP1変異体またはGLP1変異体を含む融合タンパク質を含む。治療される障害は、GLP1受容体活性の活性化によって改善、軽減、阻害または予防される任意の疾患
または状態である。特定実施形態では、本発明は、GLP1受容体関連疾患または障害の少なくとも1つの症状を予防、治療または軽減する方法を提供し、これらの方法は、治療有効量の本発明のGLP1受容体アゴニストを、それを必要とする対象に投与する工程を含む。幾つかの実施形態では、本発明は、治療有効量の本発明のGLP1受容体アゴニストタンパク質を投与する工程によって、対象におけるGLP1受容体関連疾患または障害の少なくとも1つの症状または徴候の重症度を軽減または低減するための方法を提供し、少なくとも1つの症状または徴候は、高血糖レベル、過剰な喉の渇き、頻尿、尿中ケトン体の存在、疲労、体重変動、かすみ目、治癒が遅い痛み、頻繁な感染、歯肉の腫れまたは圧痛、肥満症、心疾患、脳卒中、腎疾患、眼部疾患、神経損傷および高血圧からなる群から選択される。特定実施形態では、本発明は、体重過多または肥満状態の対象において体重を減らすための方法を提供し、これらの方法は、GLP1受容体と結合しGLP1受容体活性を活性化する治療有効量の本発明のGLP1受容体アゴニストを、対象に投与する工程を含む。特定実施形態では、本発明は、対象における血糖レベルを低減するための方法を提供し、これらの方法は、GLP1受容体と結合しGLP1受容体活性を活性化する治療有効量の本発明のGLP1受容体アゴニストを、対象に投与する工程を含む。幾つかの実施形態では、GLP1受容体アゴニストを、高血糖症を有する対象または高血糖症を有するリスクがある対象に予防的または治療的に投与することができる。リスクがある対象は、高齢の対象、妊婦、高HbA1cレベルを有する対象、および肥満症、多量の血中コレステロール、喫煙、過度のアルコール摂取、および/または運動不足を含めた1つまたはそれ以上の危険因子がある対象を非制限的に含む。特定実施形態では、本発明は、インスリンおよび/またはメトホルミンを用いた治療によって制御できない2型糖尿病を治療するための方法を提供し、これらの方法は、治療有効量の本発明のGLP1受容体アゴニストを、それを必要とする対象に投与する工程を含む。特定実施形態では、本発明のGLP1受容体アゴニストを、それを必要とする対象に第2の治療剤と組み合わせて投与する。第2の治療剤は、インスリンまたはインスリンアナログ、ビグアニド(例えばメトホルミン)、チアゾリジンジオン、スルホニルウレア(例えばクロプロパミド)、グリニド(例えばナテグリニド)、αグルコシダーゼ阻害薬、DPP4阻害薬(例えばシタグリプチン)、プラムリンチド、ブロモクリプチン、SGLT2阻害薬(例えばカナグリフロジン)、降圧薬、スタチン、アスピリン、食生活改善、エクササイズ、および栄養補助食品からなる群から選択することができる。本発明のGLP1受容体アゴニスト融合タンパク質と組み合わせて使用することができる他の治療剤は、本明細書中の他の箇所に記載する。特定実施形態では、第2の治療剤は、そのような副作用(複数可)が起こり得る場合、本発明のGLP1受容体アゴニストと関連した任意の考えられる副作用(複数可)の抑制または低減を助長する作用物質であってよい。GLP1受容体アゴニストは、皮下、静脈内、皮内、腹腔内、経口、筋肉内、または頭蓋内投与することができる。GLP1受容体アゴニストは、対象の体重1kgあたり約0.1mg~対象の体重1kgあたり約100mgの用量で投与することができる。特定実施形態では、本発明のGLP1受容体アゴニストを、0.1mg~600mgを含む1回またはそれ以上の用量で投与することができる。
【0017】
本発明は、GLP1受容体の結合および/または活性の刺激が原因であり得る疾患または障害(例えば、2型糖尿病を含めた糖尿病)を治療するための医薬品の製造における、本発明のGLP1受容体アゴニストの使用も含む。
【0018】
他の実施形態は、以下の詳細な説明の概要から明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の方法を記載する前に、本発明は記載した特定の方法、および実験条件に制限されないことを理解されたい。このような方法および条件は、変わる可能性があるからである。本明細書中で使用する技術用語は、単に特定実施形態を記載する目的であり、限定的
であることを意図するものではないことも理解されたい。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるからである。
【0020】
他に定義しない限り、本明細書中で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書中に記載したものと類似または同等の任意の方法および材料を、本発明の実践または試験において使用することはできるが、好ましい方法および材料をここで記載する。本明細書中で言及する全ての刊行物は、それらの全容を参照によって本明細書に組み入れる。
【0021】
定義
「グルカゴン様ペプチド1」とも呼ばれる用語「GLP1」は、栄養摂取後に腸管L細胞から放出される31アミノ酸のペプチドホルモンを指す。GLP1はGLP1受容体と結合し、膵臓β細胞からのグルコース応答性インスリン分泌を増強し、インスリン発現を増加させ、β細胞アポトーシスを阻害し、β細胞新生を促進し、グルカゴン分泌を低減し、胃内消化時間を遅延し、飽満を促進し、末梢グルコース処理能を増大させる。特定実施形態では、用語「GLP1」は、完全長GLP1ペプチド(配列番号3)のアミノ酸7~37を含む、成熟型31アミノ酸のペプチドホルモン(配列番号4)を指す。この用語はGLP1の変異体も含み、これらの変異体は1、2、3、4、5または6個のアミノ酸置換、付加または欠失を含む。例えばこの用語は、配列番号5、6、7、または8のアミノ酸配列を含む変異体を含む。
【0022】
本明細書中で使用する「安定型ドメイン」は、ペプチドと融合したとき、ペプチドのin vivo活性および/または安定性を増大する任意のマクロ分子を指す。例えば安定型ドメインは、免疫グロブリンC3ドメインを含むポリペプチドであってよい。特定実施形態では、安定型ドメインはペプチドの血中半減期を増大する。特定実施形態では、安定型ペプチドはペプチドのin vivo効能を増大する。安定型ドメインの非制限的な例は、免疫グロブリンのFc部分、例えばアイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4、ならびに各アイソタイプ群内の任意のアロタイプから選択されるIgGのFcドメインである。特定実施形態では、安定型ドメインは、少なくとも1つのシステイン残基を含有する1~約200アミノ酸長のFc断片またはアミノ酸配列である。別の例として、安定型ドメインは免疫グロブリンまたはその抗原結合性断片であってよい。特定実施形態では、安定型ドメインは重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含む免疫グロブリンであり、この免疫グロブリンは特異的抗原と結合する。特定実施形態では、安定型ドメインは(例えば、IgG1またはIgG4抗体の)抗原結合性ドメインとFcドメインを含み、または抗原結合性部分(例えば、Fab、F(ab’)またはscFv断片)のみを含む可能性があり、それを修飾して機能に影響を与えることができる。具体的実施形態では、安定型ドメインは重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含む免疫グロブリンであり、この免疫グロブリンはGLP1受容体と結合する。他の実施形態では、安定型ドメインはシステイン残基または短鎖システイン含有ペプチドである。他の安定型ドメインには、ロイシンジッパー、ヘリックス-ループモチーフ、またはコイルド-コイルモチーフを含む、またはこれらからなるペプチドまたはポリペプチドがある。
【0023】
本明細書中で使用する用語「GLP1受容体アゴニスト」は、GLP1受容体と結合するタンパク質を指す。本発明の文脈では、この用語は、安定型ドメインと融合したGLP1またはGLP1変異体を含む融合タンパク質を指す。特定実施形態では、この用語は、免疫グロブリンまたはその断片と融合したGLP1変異体を含む融合タンパク質を含む。具体的実施形態では、この用語は、免疫グロブリンの軽鎖可変領域(VL)のN末端と融合したGLP1またはGLP1変異体を含む融合タンパク質を含む。具体的な一実施形態では、この用語は、GLP1受容体と結合する抗体またはその抗原結合性断片のVLのN末端と融合した、GLP1またはGLP1変異体を含む。
【0024】
本明細書中で使用する用語「抗体」は、4本のポリペプチド鎖、ジスルフィド結合によって相互結合した2本の重鎖(H)と2本の軽鎖(L)で構成される免疫グロブリン分子、およびそのマルチマー(例えばIgM)またはその抗原結合性断片を指すものとする。それぞれの重鎖は、(ドメインC1、C2およびC3で構成される)重鎖定常領域、および重鎖可変領域(「HCVR」もしくは「V」)または軽鎖可変領域(「LCVR」もしくは「V」)である可能性があるIg可変領域で構成される。それぞれの軽鎖は、軽鎖可変領域(「LCVR」もしくは「V」)および軽鎖定常領域(C)で構成される。V領域とV領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるさらに保存的な領域と散在した、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に、さらに細かく分類することができる。それぞれのVとVは、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシ末端に配置した、3個のCDRと4個のFRで構成される。本発明の特定実施形態では、抗体(またはその抗原結合性断片)のFRはヒト生殖細胞配列と同一である可能性があり、または天然である可能性があり、または人為的に修飾することができる。アミノ酸のコンセンサス配列は、2個以上のCDRの並列分析に基づいて定義することができる。本明細書中で使用する用語「抗原結合性タンパク質」は抗体も含む。
【0025】
1つまたはそれ以上のCDR残基の置換、または1つまたはそれ以上のCDR残基の欠損も考えられる。結合用の1つまたは2つのCDRを省略することが可能な抗体が、科学文献中に記載されている。Padlanら(1995FASEBJ.9:133~139頁)は、公開済みの結晶構造に基づいて、抗体とそれらの抗原の間の接触領域を分析し、約1/5~1/3のCDR残基のみが抗原と実際に接触すると結論付けた。Padlanは、1つまたは2つのCDRが抗原と接触したアミノ酸を有していない多くの抗体も発見した(Vajdosら、2002年、J Mol Biol320:415~428頁も参照)。
【0026】
VRアミノ酸配列内のCDRを確認するための方法および技法は当技術分野でよく知られており、これらを使用して、本明細書中に開示する指定VRアミノ酸配列内のCDRを確認することができる。CDRの境界を確認するために使用できる例示的慣習には、例えばKabatの定義、Chothiaの定義、およびAbMの定義がある。一般的に、Kabatの定義は配列多様性に基づき、Chothiaの定義は構造ループ領域の位置に基づき、AbMの定義はKabatの手法とChothiaの手法の間の妥協案である。例えば、Kabat、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991年);AI-Lazikaniら、J.Mol.Biol.273:927~948頁(1997年)、およびMartinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:9268~9272頁(1989年)を参照。抗原結合性タンパク質または抗体の抗原結合性ドメイン内のCDR配列を確認するため、公のデータベースも利用可能である。
【0027】
分子モデリングおよび/または実験によって、ChothiaCDRの外側に位置するKabatCDRの領域から、(例えば、CDRH2中の残基H60~H65は必要とされないことが多い)以前の試験に基づき、抗原と接触していないCDR残基を確認することができる。CDRまたはその残基(複数可)が欠損している場合、それは通常、別のヒト抗体配列またはそのような配列のコンセンサス配列中の対応する位置を占めるアミノ酸と置換される。置換用のCDRおよびアミノ酸内の置換位置は、実験によって選択することもできる。実験による置換は、保存的または非保存的置換である可能性がある。
【0028】
本明細書中で使用する用語、抗原結合性タンパク質の「抗原結合性部分」、抗原結合性
タンパク質の「抗原結合性断片」などは、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、任意の天然、酵素により入手可能、合成、または遺伝子操作型ポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。本明細書中で使用する用語、抗原結合性タンパク質の「抗原結合性断片」、または「抗原結合性タンパク質断片」は、GLP1受容体に特異的に結合する能力を保持する抗原結合性タンパク質の1つまたはそれ以上の断片を指す。抗原結合性タンパク質断片は、Fab断片、F(ab’)断片、Fv断片、dAb断片、CDR、または単離CDRを含有する断片を含む可能性がある。特定実施形態では、用語「抗原結合性断片」は、多重特異性抗原結合性分子のポリペプチド断片を指す。抗原結合性タンパク質または抗体の抗原結合性断片は、タンパク質分解消化、または抗原結合性タンパク質可変ドメインおよび(場合により)定常ドメインをコードするDNAの操作と発現を含む組換え遺伝子操作技法などの、任意の適切な標準技法を使用して、例えば完全タンパク質分子から誘導することができる。このようなDNAは知られており、および/または例えば市販の供給源、(例えば、ファージ-抗体ライブラリーを含めた)DNAライブラリーから容易に入手可能であり、または合成することができる。化学的に、または分子生物学的技法の使用により、DNAを塩基配列決定し操作して、1つまたはそれ以上の可変ドメインおよび/または定常ドメインを適切な立体配座中に配置する、またはコドンを導入する、システイン残基を生成する、アミノ酸を修飾、付加または欠失することなどが可能である。
【0029】
抗原結合性断片の非制限的な例には、(i)Fab断片;(ii)F(ab’)2断片;(iii)Fd断片;(iv)Fv断片;(v)一本鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAb断片;および(vii)抗体の超可変領域(例えば、CDR3ペプチドなどの単離相補性決定領域(CDR))、または拘束型FR3-CDR3-FR4ペプチドと似たアミノ酸残基からなる最小認識単位がある。他の操作型分子、ドメイン特異的抗体、シングルドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、トライアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小モジュラー免疫薬(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインなども、本明細書中で使用する表現「抗原結合性断片」中に包含される。
【0030】
本発明の抗原結合性タンパク質または抗体の抗原結合性断片は、少なくとも1つの免疫グロブリン(Ig)可変ドメインを典型的に含む。可変ドメインは任意のサイズまたはアミノ酸組成である可能性があり、1つまたはそれ以上のフレームワーク配列近辺または枠内にある少なくとも1つのCDRを一般に含む。Vドメインと結合したVドメインを有する抗原結合性断片中では、VドメインとVドメインが、任意の適切な配置で互いに対して位置する可能性がある。例えば、可変領域はジマーであり、V-V、V-VまたはV-Vジマーを含有する可能性がある。あるいは、抗原結合性タンパク質の抗原結合性断片は、モノマーVまたはVドメインを含有する可能性がある。
【0031】
特定実施形態では、抗原結合性断片は、少なくとも1つの定常ドメインと共有結合した少なくとも1つの可変ドメインを含有する可能性がある。本発明の抗体の抗原結合性断片内に見ることができる可変ドメインおよび定常ドメインの非制限的、例示的な立体配座には、(i)V-C1;(ii)V-C2;(iii)V-C3;(iv)V-C1-C2;(v)V-C1-C2-C3;(vi)V-C2-C3;(vii)V-C;(viii)V-C1;(ix)V-C2;(x)V-C3;(xi)V-C1-C2;(xii)V-C1-C2-C3;(xiii)V-C2-C3;および(xiv)V-Cがある。前述の例示的立体配座のいずれかを含めた、可変ドメインおよび定常ドメインの任意の立体配座では、可変ドメインと定常ドメインは互いに直接結合しているか、または完全もしくは部分的ヒンジもしくはリンカー領域によって結合しているいずれか一方の可能性がある。ヒンジ領域は少なくとも2(例えば5、10、15、20、40、60個またはそれより多くの)アミノ酸からなる可能性があり、これがポリペプチド一分子中の隣接可変ドメイン
および/または定常ドメインの間に柔軟性または半柔軟性結合をもたらす。さらに、本発明の抗原結合性タンパク質の抗原結合性断片は、(例えば、ジスルフィド結合(複数可)による)互いおよび/または1つまたはそれ以上のモノマーVまたはVドメインとの非共有結合中に、前述のいずれかの可変ドメインおよび定常ドメイン立体配座のホモジマーまたはヘテロジマー(または他のマルチマー)を含む可能性がある。
【0032】
完全タンパク質分子と同様に、抗原結合性断片は、単一特異性または多重特異性(例えば、二重特異性)である可能性がある。抗原結合性タンパク質の多重特異性抗原結合性断片は、少なくとも2つの異なる可変ドメインを典型的に含み、それぞれの可変ドメインは、別の抗原または同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合することができる。本明細書中に開示する例示的二重特異性抗原結合性タンパク質の形式を含めた、任意の多重特異性抗原結合性タンパク質の形式を、当技術分野で利用される通常の技法を使用して、本発明の抗原結合性タンパク質の抗原結合性断片の状況における使用に適合させることが可能である。
【0033】
本明細書中で使用する用語「完全ヒト抗体」、「ヒト抗体」、「完全ヒト抗原結合性タンパク質」、または「ヒト抗原結合性タンパク質」は、ヒト生殖細胞免疫グロブリン配列由来の可変領域と定常領域を有する抗原結合性タンパク質を含むものとする。本発明のヒト抗原結合性タンパク質は、例えばCDR中、特にCDR3中に、ヒト生殖細胞免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroのランダムもしくは部位特異的突然変異誘発によって、またはin vivo体細胞突然変異によって導入された突然変異)を含む可能性がある。しかしながら、本明細書中で使用する用語「ヒト抗原結合性タンパク質」は、別の哺乳動物種(例えばマウス)の生殖細胞由来のCDR配列がヒトFR配列に移植された、抗原結合性タンパク質を含むことは意図しない。この用語は、非ヒト哺乳動物中、または非ヒト哺乳動物の細胞中で組換えによって産生された抗原結合性タンパク質または抗体を含む。この用語は、ヒト対象から単離された、またはそこで産生された抗原結合性タンパク質または抗体を含むことは意図しない。
【0034】
本明細書中で使用する用語「組換え体」は、例えばDNAスプライシングおよびトランスジェニック発現を含めた組換えDNA技術として当技術分野で知られる技術または方法によって作製、発現、単離または入手された、本発明の融合タンパク質またはその断片を指す。この用語は、(トランスジェニック非ヒト哺乳動物、例えばトランスジェニックマウスを含めた)非ヒト哺乳動物、または細胞(例えば、CHO細胞)発現系中で発現された、または組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された融合タンパク質を指す。
【0035】
用語「特異的に結合する」、または「~に特異的に結合する」などは、抗体またはその抗原結合性断片が、生理的条件下で比較的安定した抗原との複合体を形成することを意味する。特異的結合は、少なくとも約1×10-8M以下の平衡解離定数によって特徴付けることができる(例えば、低いKはより強い結合を示す)。2分子が特異的に結合するかどうか決定する方法は当技術分野でよく知られており、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴、等温滴定型熱量測定などを含む。
【0036】
本明細書中で使用する用語、抗体の「抗原結合性部分」、抗体の「抗原結合性断片」などは、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、任意の天然、酵素により入手可能、合成、または遺伝子操作型ポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。本明細書中で使用する用語、抗原結合性タンパク質もしくは抗体の「抗原結合性断片」、または「抗体断片」は、GLP1受容体に結合する能力を保持する免疫グロブリンタンパク質の1つまたはそれ以上の断片を指す。
【0037】
本明細書中で使用する用語「K」は、特定のタンパク質-抗原相互作用の平衡解離定数を指すものとする。
【0038】
用語「実質的同一率」または「実質的に同一」は、核酸またはその断片を指すとき、適切なヌクレオチド挿入または欠失、別の核酸(またはその相補鎖)で最適にアライメントをとると、後述するようにFASTA、BLASTまたはGAPなどの、任意のよく知られている配列同一率のアルゴリズムにより測定して、ヌクレオチド塩基の少なくとも約90%、およびより好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%または99%のヌクレオチド配列同一率があることを示す。参照核酸分子と実質的同一率を有する核酸分子は、特定の場合、参照核酸分子によってコードされるポリペプチドと同じまたは実質的に類似したアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする可能性がある。
【0039】
ポリペプチドに適用したように、用語「実質的類似率」または「実質的に類似」は、2つのペプチド配列が、デフォルトギャップ加重を使用しプログラムGAPまたはBESTFITなどにより最適にアライメントをとると、少なくとも90%の配列同一率、さらにより好ましくは少なくとも95%、98%または99%の配列同一率を共有することを意味する。同一ではない残基の位置は、保存的アミノ酸置換によって異なることが好ましい。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似した化学的性質(例えば、電荷または疎水性)があり側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換される置換である。一般に、保存的アミノ酸置換がタンパク質の機能性を実質的に変えることはない。2つ以上のアミノ酸配列が保存的置換によって互いに異なる場合、類似性の割合または程度を上方修正して置換の保存性を補正することができる。この修正を行うための手段は当業者にはよく知られている。例えば、参照によって本明細書に組み入れる、Pearson(1994年)Methods Mol.Biol.24:307~331頁を参照。類似した化学的性質を伴う側鎖を有するアミノ酸群の例には、1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン;2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリンおよびスレオニン;3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン;4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン;5)塩基性側鎖:リシン、アルギニン、およびヒスチジン;6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸、および7)硫黄含有側鎖:システインおよびメチオニンがある。好ましい保存的アミノ酸置換群は:バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リシン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、およびアスパラギン酸-グルタミン酸である。あるいは、保存的置換は、参照によって本明細書に組み入れるGonnetら、(1992年)Science256:1443~45頁中に開示されたPAM250log-尤度マトリックスにおいて正の値を有する任意の変化である。「適度に保存的な」置換は、PAM250log-尤度マトリックスにおいて負でない値を有する任意の変化である。
【0040】
ポリペプチドに関する配列類似性は、典型的には配列分析ソフトウエアを使用して測定される。タンパク質分析ソフトウエアは、保存的アミノ酸置換を含めた様々な置換、欠失および他の修飾に割り当てた類似性の測定値を使用して類似配列を突き合わせる。例えばGCGソフトウエアは、デフォルトパラメーターと共に使用して、異なる生物種由来の相同ポリペプチドなどの密接に関連したポリペプチド間、または野生型タンパク質とそのムテインの間の配列相同性または配列同一性を決定することができる、GAPおよびBESTFITなどのプログラムを含有する。例えば、GCGバージョン6.1.を参照。デフォルトまたは推奨パラメーターと共にFASTA、GCGバージョン6.1.中のプログラムを使用してポリペプチド配列を比較することもできる。FASTA(例えばFASTA2およびFASTA3)は、クエリ配列と検索配列の間の最重複領域のアライメントおよび配列同一率を提供する(Pearson(2000年)上記)。本発明の配列と異なる生物由来の多数の配列を含有するデータベースを比較したとき、好ましい別のアルゴリ
ズムは、コンピュータープログラムBLAST、特にデフォルトパラメーターを使用するBLASTPまたはTBLASTNである。例えば、その各々を参照によって本明細書に組み入れる、Altschulら、(1990年)J.Mol.Biol.215:403~410頁および(1997年)Nucleic Acids Res.25:3389~3402頁を参照。
【0041】
語句「治療有効量」によって、それを投与するのに望ましい影響をもたらす量を意味する。正確な量は治療の目的に依存し、周知の技法を使用し当業者によって確認可能である(例えば、Lloyd(1999年)The Art、Science and Technology of Pharmaceutical Compoundingを参照)。
【0042】
本明細書中で使用する用語「対象」は、GLP1と関連した疾患または障害の軽減、予防および/または治療が必要な、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを指す。この用語は、GLP1と関連した疾患または障害を有する、またはそれを有するリスクがあるヒト対象を含む。例えば、この用語は糖尿病(例えば2型糖尿病)を有する対象、または糖尿病(例えば2型糖尿病)を発症するリスクがある対象を含む。特定実施形態では、この用語は、肥満症、脳卒中または心筋梗塞を有する対象、またはこれらを発症するリスクがある対象を含む。この用語は、高血糖レベル、および/または高レベルの糖尿病に関する1つまたはそれ以上のバイオマーカー、例えばHbA1cを有する対象も含む。この用語は、スタンダードオブケア療法(例えばメトホルミン)に禁忌が示されるかもしくはそれが許容されない、または(例えばメトホルミンを用いた)治療でもその疾患が制御不能である糖尿病を有する対象も含む。
【0043】
本明細書中で使用する用語「治療する」、「治療すること」、または「治療」は、それを必要とする対象への本発明のGLP1受容体アゴニストなどの治療剤の投与による、GLP1と関連した疾患または障害の少なくとも1つの症状または兆候の重症度の低減または軽減を指す。これらの用語は、疾患の進行または症状の悪化の阻害を含む。これらの用語は疾患の良い予後も含む。すなわち、本発明のGLP1受容体アゴニストなどの治療剤の投与時に、対象には症状または兆候がない可能性があり、または低強度の症状または兆候を有する可能性がある。例えば、糖尿病を有する対象は、本発明のGLP1受容体アゴニストの投与によって血中グルコースレベルが低減する可能性がある。治療剤は、対象に治療用量で投与することができる。
【0044】
用語「予防する」、「予防すること」または「予防」は、本発明のGLP1受容体アゴニストの投与による、高血糖症と関連した疾患または障害の任意の症状または兆候の症状発現の阻害を指す。この用語は、このような疾患または障害を発症するリスクがある対象における、GLP1受容体関連疾患または障害の症状または兆候の症状発現の阻害を含む。
【0045】
酵素ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)によるその急速な不活性化のため、GLP1(7~37)(配列番号4)は非常に短い循環半減期(1~2分)を有する。以前の研究は、GLP1(7~37)の位置8における様々なアミノ酸置換によってDPP4に対する耐性が高まり、それによってさらに長い半減期をもたらすことを示した。しかしながら、これらの分子のDPP4切断に対する感受性は残る(Deaconら、1998年、Diabetologia41:271~278頁)。したがって、DPP4による分解に対して高い耐性を有する、新たな分子を開発する必要がある。
【0046】
本発明者らは、DPP4に対するより高い耐性をもたらすため、第1の工程は、N末端へのアミノ酸(すなわちAla、Gln)の付加、またはペプチド配列内のHisもしく
はAlaの欠失のいずれかにより、GLP1のアミノ末端を延長または短縮する突然変異を導入して、DPP4切断に対するより高い耐性を与えることであると仮定した。本発明者らは、これらの新規なGLP1変異体はDPP4による分解に対して実際非常に高い耐性があることを、本明細書中で示している。第2の工程は、弱化GLP1とGLP1受容体を結合させる抗GLP1受容体抗体とGLP1の融合により、任意の弱化または低減GLP1活性を補償し、それによってその効力を増大させることであった。さらに本発明者らは、これらの融合タンパク質は、おそらくFcドメインを含有するため長い血中半減期を有しており、10日間を超えて持続した血糖レベルのさらなる低減をもたらしたことを発見した。本明細書中に開示する新規なGLP1変異体および融合タンパク質には、本明細書中に示すように、in vitroおよびin vivoでDPP4による分解に対する有意に改善された耐性があり、血糖制御において非常に改善された効力を示す。本明細書中で使用する用語「有意に改善された」または「向上した」または「増大した」は、DPP4による分解に対する耐性の文脈では、本明細書中に記載するアッセイにより測定して、4時間超、8時間超、16時間超、24時間超、36時間超または70時間超のDPP4とのインキュベーション時の分解に対する増大した耐性を指す。本明細書中で使用する用語「有意に改善された」または「向上した」または「増大した」は、血糖レベルの低減の文脈では、本発明のGLP1受容体アゴニストの投与時の、対象における1日超、2日超、3日超、4日超、5日超、6日超、7日超、8日超、9日超、または10日超の血糖レベルの持続的低下を指す。
【0047】
本発明のGLP1受容体アゴニストは高いアフィニティーでGLP1受容体と結合し、GLP1受容体活性化をもたらす。幾つかの実施形態では、これらのタンパク質は、糖尿病に罹患した対象を治療するのに有用である。これらのタンパク質は、それを必要とする対象に投与すると、対象における血糖レベルを低減することができる。これらは単独で使用することができ、または高血糖症の治療分野で知られている他の治療成分もしくはモダリティーと共に補助療法として使用することができる。
【0048】
本発明の特定のGLP1受容体アゴニストタンパク質は、in vitroまたはin
vivoアッセイにより測定して、GLP1受容体と結合することができ、その活性を刺激することができる。GLP1受容体と結合しその活性を高める本発明のタンパク質の能力は、本明細書中に記載した結合アッセイまたは活性アッセイを含めた、当業者に知られる任意の標準法を使用して測定することができる。
【0049】
GLP1受容体に特異的な抗原結合性タンパク質は他の標識もしくは成分を含有しない可能性があり、またはそれらは、N末端もしくはC末端標識もしくは成分を含有する可能性がある。一実施形態では、標識または成分はビオチンである。結合アッセイでは、(存在する場合)標識の位置が、ペプチドが結合する表面に対するペプチドの方向を決定することができる。例えば、表面がアビジンでコーティングされる場合、ペプチドのC末端部分が表面から遠くなるように、N末端ビオチンを含有するペプチドを適応させる。一実施形態では、標識は放射性核種、蛍光色素またはMRIで検出可能な標識である可能性がある。特定実施形態では、このような標識抗原結合性タンパク質を、イメージングアッセイを含めた診断アッセイにおいて使用することができる。
【0050】
生物学的同等性
本発明のGLP1受容体アゴニストは、記載したGLP1受容体アゴニストのアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有するが、GLP1受容体と結合する能力は保持するタンパク質を包含する。このような変異体GLP1受容体アゴニストは、親配列と比較したときアミノ酸の1つまたはそれ以上の付加、欠失、または置換を含むが、記載したGLP1受容体アゴニストのそれとほぼ等しい生物活性を示す。同様に、本発明のGLP1受容体アゴニストコードDNA配列は、開示配列と比較したときヌクレオチドの1つまたはそれ以
上の付加、欠失、または置換を含むが、本発明のGLP1受容体アゴニストと生物学的にほぼ同等であるGLP1受容体アゴニストをコードする配列を包含する。
【0051】
2つのタンパク質は、例えばそれらが、類似実験条件下において一回用量または複数回用量のいずれかで同モル用量で投与されたとき、その吸収速度と程度が有意な差を示さない医薬同等品または医薬代替品である場合、生物学的に同等であると考えられる。幾つかのタンパク質は、それらの吸収率ではなくそれらの吸収程度においてそれらが同等である場合、医薬同等品または医薬代替品であると考えられ、さらに生物学的に同等であると考えることができる。このような吸収速度の差は意図的であり、標識に反映され、例えば慢性的使用時に有効な身体中薬物濃度を得るのに必要ではなく、試験する特定の薬品に医学上重要ではないと考えられるからである。
【0052】
一実施形態では、2つのGLP1受容体アゴニストタンパク質は、それらにその安全性、純度、または効力の臨床的に有意義な差がない場合、生物学的に同等である。
【0053】
一実施形態では、2つのGLP1受容体アゴニストタンパク質は、このような変更無しの継続的療法と比較して、臨床上重大な免疫原性の変化を含めた悪影響のリスク増大、または有効性の低下の予想無しに、参照製剤と生物製剤の間で患者を1回またはそれ以上変更可能である場合、生物学的に同等である。
【0054】
一実施形態では、2つのGLP1受容体アゴニストタンパク質は、1つまたはそれ以上の使用条件に共通の1つまたはそれ以上の作用機構によって、このような機構が知られている程度で、それらがいずれも作用する場合、生物学的に同等である。
【0055】
生物学的同等性はin vitroおよび/またはin vivo法によって実証することができる。生物学的同等性の測定試験には、例えば(a)時間の関数として血液、血漿、血清、または他の体液中のタンパク質またはその代謝産物の濃度を測定する、ヒトまたは他の哺乳動物におけるin vivo試験;(b)ヒトのin vivoバイオアベイラビリティデータと相関関係がありそれらを合理的に予想するin vitro試験;(c)時間の関数としてタンパク質(またはその標的)の適切な急性薬理学的効果を測定する、ヒトまたは他の哺乳動物におけるin vivo試験;および(d)抗原結合性タンパク質の安全性、有効性、またはバイオアベイラビリティまたは生物学的同等性を立証する充分に制御された臨床試験がある。
【0056】
本発明のGLP1受容体アゴニストタンパク質の生物学的に同等な変異体は、例えば残基もしくは配列の様々な置換を施すこと、または生物活性に必要がない末端もしくは内部残基もしくは配列の欠失によって構築することができる。例えば、生物活性に必要ないシステイン残基は欠失または他のアミノ酸と置換して、復元時の不要または不適切な分子内ジスルフィド結合の形成を妨げることができる。他の状況では、生物学的に同等なタンパク質は、タンパク質のグリコシル化特徴を修飾するアミノ酸の変化、例えばグリコシル化を排除または除去する突然変異を含む変異体を含む可能性がある。
【0057】
GLP1受容体アゴニストの生物学的特徴
一般に、本発明のGLP1受容体アゴニストはGLP1受容体と結合することによって機能し、結合時にGLP1受容体の活性化を助長する。特定実施形態では、本発明のタンパク質はGLP1受容体と高いアフィニティーで結合する。例えば本発明は、例えば本明細書中の実施例2中で定義したアッセイ形式を使用し、ルシフェラーゼアッセイにより測定して(例えば、25℃または37℃で)GLP1受容体の活性化をもたらすGLP1受容体アゴニストを含む。特定実施形態では、GLP1受容体アゴニストは、例えば本明細書中の実施例2中で定義したアッセイ形式、または実質的に類似したアッセイを使用し、
ルシフェラーゼアッセイにより測定して10nM未満、500pM未満、または250pM未満のEC50でGLP1受容体を活性化する。
【0058】
本発明は、例えば実施例3中に示したように、または実質的に類似したアッセイで、それを必要とする対象への投与によってin vivoでの血糖レベルを低減するGLP1受容体アゴニストも含む。GLP1受容体アゴニストは投与時に血糖制御の向上に影響を与え、血中グルコースレベルの低減をもたらす。特定実施形態では、一回治療有効量の本発明のGLP1受容体アゴニストでさえ、10日を超えて持続する有意な血糖値低下をもたらす。
【0059】
本発明は、例えば本明細書中の実施例4中に示したように、質量分析法、または実質的に類似した方法により測定して、血中プロテアーゼ/ペプチダーゼによる分解に対して向上した耐性を示すGLP1受容体アゴニストも含む。特定実施形態では、GLP1受容体アゴニストは、本明細書中の実施例4中に記載したアッセイにより測定して、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)による分解に対して4時間超、6時間超、12時間超、24時間超、48時間超、または70時間超の耐性がある。
【0060】
本発明のGLP1受容体アゴニストは、1つまたはそれ以上の前述の生物学的特徴、またはそれらの任意の組合せを有する可能性がある。本発明のタンパク質の他の生物学的特徴は、本明細書中の作業実施例を含めた本開示の概要から当業者には明らかとなる。
【0061】
治療投与および製剤
本発明は、本発明のGLP1受容体アゴニストを含む治療用組成物を提供する。本発明による治療用組成物を、製剤中に取り込まれた適切な担体、賦形剤、および他の作用物質と共に投与して、改善された移動性、送達性、耐性などをもたらす。多数の適切な製剤を、全ての製薬化学者に知られている処方集:Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、PA中に見ることができる。これらの製剤は、例えば粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、(カチオン性またはアニオン性)脂質含有小胞(LIPOFECTIN(商標)など)、DNAコンジュゲート、無水吸収性ペースト、水中油型および油中水型エマルション、エマルションカルボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固形ゲル、およびカルボワックス含有半固形混合物を含む。Powellら、「Compendium of excipients for parenteral formulations」PDA(1998年)J Pharm Sci
Technol52:238~311頁も参照。
【0062】
GLP1受容体アゴニストの用量は、投与する対象の年齢および大きさ、標的疾患、状態、投与の経路などに応じて変わる可能性がある。成人患者において疾患または障害を治療するため、またはこのような疾患を予防するために、本発明の抗原結合性タンパク質を使用するとき、通常体重1kgあたり約0.001mg~約100mg、より好ましくは体重1kgあたり約0.001mg~約60mg、約0.01mg~約10mg、または約0.01mg~約1mgの一回用量で、本発明の抗原結合性タンパク質を投与することが有利である。状態の重症度に応じて、治療の頻度と期間を調節することができる。特定実施形態では、本発明の抗原結合性タンパク質またはその抗原結合性断片を、少なくとも約0.001mg~約100mg、約0.001mg~約50mg、約0.005mg~約50mg、約0.01mg~約40mg、約30mg、または約10mgの初回用量として投与することができる。特定実施形態では、初回用量に、初回用量のそれとほぼ同じもしくはそれ未満であってよい量で、GLP1受容体アゴニストの第2または複数の後続用量の投与を続けることができ、後続投与は少なくとも1日~3日、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくと
も6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、または少なくとも14週間隔てる。
【0063】
様々な送達系が知られており、これらを使用して、本発明の医薬組成物、例えばリポソーム中被包体、マイクロ粒子、マイクロカプセル、突然変異ウイルスを発現できる組換え細胞を投与することができ、受容体媒介型エンドサイトーシスが可能である(例えば、Wuら、(1987年)J.Biol.Chem.262:4429~4432頁を参照)。導入の方法には、皮内、経皮、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外および経口経路があるが、これらだけには限られない。任意の好都合な経路によって、例えば注入またはボーラス注射によって、上皮または皮膚粘膜内層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸管粘膜など)を介した吸収により組成物を投与することができ、他の生物活性剤と一緒に組成物を投与することができる。投与は全身または局所であってよい。医薬組成物は小胞、特にリポソーム中で送達することもできる(例えば、Langer(1990年)Science249:1527~1533を参照)。
【0064】
本発明のGLP1受容体アゴニストを送達するためのナノ粒子の使用も、本明細書において企図される。タンパク質コンジュゲート型ナノ粒子を、治療用途と診断用途の両方に使用することができる。数種のナノ粒子が開発される可能性があり、医薬組成物中に含有される抗原結合性タンパク質にコンジュゲートさせて細胞を標的化することができる。薬物送達用のナノ粒子は、例えばそれぞれその全容を参照によって本明細書に組み入れるUS8257740、またはUS8246995中にも記載されている。
【0065】
特定の状況では、徐放系で医薬組成物を送達することができる。一実施形態では、ポンプを使用することができる。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる。さらに別の実施形態では、徐放系を組成物の標的近くに配置することができ、これによってごく少量の全身用量を必要とすることができる。
【0066】
注射用調製物は、静脈内、皮下、皮内、頭蓋内、腹腔内および筋肉内注射、点滴用などの剤形を含むことができる。これらの注射用調製物は、公に知られている方法によって調製することができる。例えば、従来から注射に使用される滅菌水性媒体または油状媒体中に、前に記載した抗原結合性タンパク質またはその塩を、例えば溶解、懸濁または乳化することによって注射用調製物を調製することができる。注射用水性媒体として、例えば生理食塩水、グルコースを含有する等張溶液、およびアルコール(例えばエタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)などの適切な可溶化剤、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(硬化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加生成物)]などと併用して使用することができる他の補助剤などがある。油状媒体として、例えば胡麻油、大豆油などが利用され、これらは、例えば安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどの可溶化剤などと併用して使用することができる。このように調製した注射液は、適切なアンプル中に充填することが好ましい。
【0067】
本発明の医薬組成物を、標準ニードルおよびシリンジを用いて皮下または静脈内に送達することができる。さらに皮下送達に関しては、ペン型デリバリーデバイスが、本発明の医薬組成物を送達する際に容易に利用される。このようなペン型デリバリーデバイスは、再使用可能または使い捨てであってよい。再使用可能ペン型デリバリーデバイスは、医薬組成物を含有する交換可能なカートリッジを一般に利用する。カートリッジ内の全ての医薬組成物が投与されカートリッジが空になった後、空のカートリッジは容易に廃棄することができ、医薬組成物を含有する新たなカートリッジに交換することができる。したがって、ペン型デリバリーデバイスは再使用することができる。使い捨てペン型デリバリーデバイス中には、交換可能なカートリッジは存在しない。そうではなくて、使い捨てペン型
デリバリーデバイスでは医薬組成物を予め充填し、デバイス内の貯蔵器中に保つ。貯蔵器中の医薬組成物が空になった後、デバイス全体を廃棄する。
【0068】
多数の再使用可能ペン型およびオートインジェクターデリバリーデバイスは、本発明の医薬組成物の皮下送達において幾つかの用途がある。わずか数例を挙げると、例にはAUTOPEN(商標)(Owen Mumford、Inc、Woodstock、UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems、Burghdorf、スイス)、HUMALOGMIX75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co、Indianapolis、IN)、NOVOPEN(商標)I、IIおよびIII(Novo Nordisk、コペンハーゲン、デンマーク)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk、コペンハーゲン、デンマーク)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson、Franklin
Lakes、NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、およびOPTICLIK(商標)(Sanofi-Aventis、フランクフルト、ドイツ)があるが、これらに限られないことは確かである。本発明の医薬組成物の皮下送達において幾つかの用途がある、使い捨てペン型デリバリーデバイスの例には、わずか数例を挙げると、SOLOSTAR(商標)ペン(Sanofi-Aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)Autoinjector(Amgen、Thousand Oaks、CA)、PENLET(商標)(Haselmeier、シュトットガルト、ドイツ)、EPIPEN(Dey、L.P.)およびHUMIRA(商標)Pen(Abbott Labs、Abbott Park、IL)があるが、これらに限られないことは確かである。
【0069】
前に記載した経口または非経口用途の医薬組成物は、一定用量の活性成分に合わせるのに適した、単位剤形に調製することが有利である。このような単位剤形には、例えば錠剤、ピル、カプセル、注射液(アンプル)、座薬などがある。含有されるGLP1受容体アゴニストの量は、特に注射液の形では一般に単位剤形あたり約0.001~約100mgであり、他の剤形に関しては、GLP1受容体アゴニストは約0.001~約100mg、および約0.01~約100mg含有されることが好ましい。
【0070】
GLP1受容体アゴニストの治療用途
本発明のGLP1受容体アゴニストは、糖尿病などの高血糖症と関係がある疾患もしくは障害もしくは状態の治療、および/または予防、および/またはこのような疾患、障害もしくは状態と関係がある少なくとも1つの症状の軽減に有用である。一実施形態では、本発明のGLP1受容体アゴニストを、糖尿病(例えば、2型糖尿病)がある患者に治療用量で投与することができる。
【0071】
特定実施形態では、本発明のGLP1受容体アゴニストは、糖尿病、肥満症、インスリン抵抗性、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病、1型糖尿病、前糖尿病、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、うっ血性心不全、冠動脈性心疾患、動脈硬化症、末梢動脈疾患、脳卒中、呼吸機能障害、腎疾患、脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、およびメタボリックシンドロームからなる群から選択される疾患または障害に罹患した対象の治療に有用である。
【0072】
特定実施形態では、本発明のGLP1受容体アゴニストは、体重過多もしくは肥満状態である対象の治療、および/または心疾患、脳卒中、および糖尿病などの1つまたはそれ以上の肥満症関連障害の予防または治療に有用である。
【0073】
特定実施形態では、本発明のGLP1受容体アゴニストは、糖尿病に罹患した患者の治療、および/または心疾患、脳卒中、腎疾患、網膜障害、失明および神経損傷などの1つまたはそれ以上の合併症の予防に有用である。
【0074】
糖尿病(例えば、2型糖尿病)を発症するリスクがある対象に、1つまたはそれ以上の本発明のGLP1受容体アゴニストタンパク質を予防的に使用することも、本明細書において企図される。リスクがある対象は、高齢の対象、妊婦、および肥満症の家族歴、多量の血中コレステロール、喫煙、過度のアルコール摂取、および/または運動不足を含めた1つまたはそれ以上の危険因子がある対象を非制限的に含む。
【0075】
さらなる実施形態では、本発明のタンパク質は、糖尿病および肥満症などの疾患または障害に罹患した患者の治療用の医薬組成物または医薬品を調製するのに有用である。本発明の別の実施形態では、本発明のGLP1受容体アゴニストは、糖尿病(例えば、2型糖尿病)などの高血糖症と関係がある疾患または障害を治療または軽減するため、当業者に知られている任意の他の作用物質または任意の他の治療剤と共に、補助療法剤として使用される。
【0076】
併用療法剤
併用療法剤は、本発明のGLP1受容体アゴニスト、および本発明のGLP1受容体アゴニスト、またはその本発明の生物活性断片と有利に併用することができる任意の他の治療剤を含むことができる。本発明のGLP1受容体アゴニストは、高血糖症(例えば糖尿病)と関係がある任意の疾患または障害を治療するのに使用される1つまたはそれ以上の薬物または治療剤と相乗的に併用することができる。幾つかの実施形態では、本発明のGLP1受容体アゴニストを第2の治療剤と併用して、対象における血糖レベルを低減することができ、または糖尿病の1つまたはそれ以上の症状を軽減することができる。
【0077】
本発明のGLP1受容体アゴニストは、インスリン(インスリンまたはインスリンアナログ)、ビグアニド(例えばメトホルミン)などのインスリン増感剤、およびチアゾリジンジオン(例えばロシグリタゾン)、スルホニルウレア(例えばクロプロパミド)などのインスリン分泌刺激物質、およびグリニド(例えばナテグリニド)、αグルコシダーゼ阻害薬(例えばアカルボース)、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)阻害薬(例えばシタグリプチン)、プラムリンチド、ブロモクリプチン、ナトリウムグルコース共輸送体2(SGLT-2)阻害薬(例えばカナグリフロジン)、降圧薬(例えば、アンギオテンシン変換酵素阻害薬、アンギオテンシン受容体拮抗薬、利尿薬、カルシウムチャネル拮抗薬、α-アドレナリン受容体拮抗薬、エンドセリン-1受容体拮抗薬、有機硝酸エステル、およびプロテンキナーゼC阻害薬)、スタチン、アスピリン、異なるGLP1受容体アゴニスト、栄養補助食品または任意の他の療法(例えばエクササイズ)と併用して使用し、糖尿病を治療または管理することができる。特定実施形態では、本発明のGLP1受容体アゴニストは、インスリン、インスリンアナログ、メトホルミン、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン、クロプロパミド、グリベンクラミド、グリメピリド、グリピジド、トラザミド、トルブタミド、ナテグリニド、レパグリニド、アカルボース、ミグリトール、エクセナチド、リラグルチド、アルビグルチド、デュラグルチド、シタグリプチン、サクサグリプチン、リナグリプチン、アログリプチン、プラムリニチド、速放性ブロモクリプチン、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、食生活改善およびエクササイズからなる群から選択される第2の治療剤または治療と併用して投与することができる。
【0078】
本明細書中で使用する用語「~と併用して」は、他の治療活性成分(複数可)を本発明のGLP1受容体アゴニストの投与の前、それと同時、またはその後に投与できることを意味する。用語「~と併用して」は、GLP1受容体アゴニストと第2の治療剤の逐次投
与または同時投与も含む。
【0079】
他の治療活性成分(複数可)は、本発明のGLP1受容体アゴニストを投与する前に対象に投与することができる。例えば、第1の成分が第2の成分の投与の1週間前、72時間前、60時間前、48時間前、36時間前、24時間前、12時間前、6時間前、5時間前、4時間前、3時間前、2時間前、1時間前、30分前、15分前、10分前、5分前、または1分より前に投与された場合、第1の成分は第2の成分より「前に」投与されたと考えることができる。他の実施形態では、他の治療活性成分(複数可)は、本発明のGLP1受容体アゴニストを投与した後に対象に投与することができる。例えば、第1の成分が第2の成分の投与の1分後、5分後、10分後、15分後、30分後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、12時間後、24時間後、36時間後、48時間後、60時間後、72時間後に投与された場合、第1の成分は第2の成分の「後に」投与されたと考えることができる。さらに他の実施形態では、他の治療活性成分(複数可)は、本発明のGLP1受容体アゴニストの投与と同時に対象に投与することができる。「同時投与」は、本発明の目的では、互いに約30分以内に対象に投与される単位剤形、または個別剤形での、対象へのGLP1受容体アゴニストと他の治療活性成分の投与を例えば含む。個別剤形で投与する場合、それぞれの剤形は同一経路を介して投与することができ(例えば、GLP1受容体アゴニストと他の治療活性成分の両方を静脈内投与などすることができ)、あるいは、それぞれの剤形は異なる経路を介して投与することができる(例えば、GLP1受容体アゴニストを静脈内投与することができ、他の治療活性成分を経口投与することができる)。如何なる場合も、同一経路による単位剤形、もしくは個別剤形での、または異なる経路による個別剤形での成分の投与は、本開示の目的ではいずれも「同時投与」と考えられる。本開示の目的では、他の治療活性成分の投与の「前」、「それと同時」、または「その後」のGLP1受容体アゴニストの投与は(これらの用語は本明細書で前に定義した)、他の治療活性成分と「併用した」GLP1受容体アゴニストの投与と考えられる。
【0080】
本発明は、本発明のGLP1受容体アゴニストを、本明細書の他の箇所に記載した1つまたはそれ以上の他の治療活性成分(複数可)と同時製剤化した医薬組成物を含む。
【0081】
投与レジメン
特定実施形態に従い、一回用量の本発明のGLP1受容体アゴニスト(またはGLP1受容体アゴニストと本明細書で言及する任意の他の治療活性成分の組合せを含む医薬組成物)を、それを必要とする対象に投与することができる。本発明の特定実施形態に従い、複数用量の本発明のGLP1受容体アゴニスト(またはGLP1受容体アゴニストと本明細書で言及する任意の他の治療活性成分の組合せを含む医薬組成物)を、規定の時間行程にわたり対象に投与することができる。本発明のこの態様に従う方法は、複数用量の本発明のGLP1受容体アゴニストを対象に逐次的に投与する工程を含む。本明細書中で使用する「逐次的に投与する」は、異なる時間地点で、例えば所定間隔(例えば数時間、数日間、数週間または数カ月)隔てた異なる日に、各用量のGLP1受容体アゴニストを対象に投与することを意味する。本発明は、1回の初回用量のGLP1受容体アゴニスト、次に1回またはそれ以上の二次用量のGLP1受容体アゴニスト、および場合により次に1回またはそれ以上の三次用量のGLP1受容体アゴニストを患者に逐次的に投与する工程を含む方法を含む。
【0082】
用語「初回用量」、「二次用量」および「三次用量」は、本発明のGLP1受容体アゴニストの時間の経過順の投与を指す。したがって、「初回用量」は(「ベースライン用量」とも呼ばれる)治療レジメンの最初に投与される用量であり、「二次用量」は初回用量の後に投与される用量であり、「三次用量」は二次用量の後に投与される用量である。初回、二次、および三次用量はいずれも同量のGLP1受容体アゴニストを含有する可能性
があるが、一般には投与の頻度の点で互いに異なる可能性がある。しかしながら、特定実施形態では、初回、二次および/または三次用量中に含有されるGLP1受容体アゴニストの量は、治療行程中互いに異なる(例えば、適切に上方または下方調節する)。特定実施形態では、1つまたはそれ以上(例えば2、3、4、または5つの)用量を「充填用量」として治療レジメンの最初に、次により少ない頻度で投与される後続用量(例えば「維持量」)を投与する。
【0083】
本発明の特定の例示的実施形態では、それぞれの二次および/または三次用量は直前用量後1~48時間(例えば1、1と1/2、2、2と1/2、3、3と1/2、4、4と1/2、5、5と1/2、6、6と1/2、7、7と1/2、8、8と1/2、9、9と1/2、10、10と1/2、11、11と1/2、12、12と1/2、13、13と1/2、14、14と1/2、15、15と1/2、16、16と1/2、17、17と1/2、18、18と1/2、19、19と1/2、20、20と1/2、21、21と1/2、22、22と1/2、23、23と1/2、24、24と1/2、25、25と1/2、26、26と1/2、またはさらに長時間)で投与する。本明細書中で使用する語句「直前用量」は、介入用量がない順序でちょうど次の用量の投与前に患者に投与される、一連の複数回投与におけるGLP1受容体アゴニストの用量を意味する。特定実施形態では、それぞれの二次および/または三次用量は直前用量の後、毎日、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、または7日毎に投与される。特定実施形態では、それぞれの二次および/または三次用量は直前用量の後、0.5週毎、1週毎、2週毎、3週毎、または4週毎に投与される。
【0084】
本発明のこの態様に従う方法は、任意数の二次および/または三次用量のGLP1受容体アゴニストを、患者に投与する工程を含むことができる。例えば特定実施形態では、1つの二次用量のみを患者に投与する。他の実施形態では、2つ以上(例えば2、3、4、5、6、7、8つ、またはそれより多くの)二次用量を患者に投与する。同様に特定実施形態では、1つの三次用量のみを患者に投与する。他の実施形態では、2つ以上(例えば2、3、4、5、6、7、8つ、またはそれより多くの)三次用量を患者に投与する。
【0085】
本発明の特定実施形態では、患者に二次および/または三次用量を投与する頻度は、治療レジメンの行程中に変わる可能性がある。投与の頻度は、臨床試験後の個々の患者の必要性に応じて、医師により治療行程中に調節することもできる。
【0086】
投薬
本発明の方法に従い対象に投与されるGLP1受容体アゴニストの量は、一般に治療有効量である。本明細書中で使用する語句「治療有効量」は、(a)正常レベル(例えば、80~130mg/dLの食前血中グルコースレベル)への高血糖レベルの低減、および/または(b)糖尿病の1つまたはそれ以上の症状または徴候の検出可能な改善の、1つまたはそれ以上をもたらすGLP1受容体アゴニストの量を意味する。
【0087】
GLP1受容体アゴニストの場合、治療有効量は約0.001mg~約100mg、例えば約0.001mg、約0.002mg、約0.003mg、約0.004mg、約0.005mg、約0.006mg、約0.007mg、約0.008mg、約0.009mg、約0.01mg、約0.02mg、約0.03mg、約0.04mg、約0.05mg、約0.06mg、約0.07mg、約0.08mg、約0.09mg、約0.1mg、約0.2mg、約0.3mg、約0.4mg、約0.5mg、約0.6mg、約0.7mg、約0.8mg、約0.9mg、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約
90mg、約95mg、約100mgのGLP1受容体アゴニストである可能性がある。特定実施形態では、0.005mg~50mg、0.005mg~30mg、0.005mg~10mg、0.1mg~10mg、または0.1mg~5mgのGLP1受容体アゴニストを、それを必要とする対象に投与する。
【0088】
個々の用量内に含有されるGLP1受容体アゴニストの量は、対象の体重1キログラムあたりの抗体のミリグラムの単位(すなわち、mg/kg)で表すことができる。例えばGLP1受容体アゴニストは、対象の体重1キログラムあたり約0.0001~約100mgの用量で対象に投与することができる。
【0089】
選択実施形態
実施形態1では、本発明は、(i)N末端へのアミノ酸の付加、および(ii)ペプチド配列からのアミノ酸の欠失からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸修飾がある成熟GLP1(7~37)(配列番号4)を含むグルカゴン様ペプチド1(GLP1)変異体であって、タンパク質分解切断に対する高い耐性および/または高い血中グルコース低下能力を有するGLP1変異体を提供する。
【0090】
実施形態2では、本発明は、アラニン(Ala)およびグルタミン(Gln)からなる群から選択されるアミノ酸のN末端への付加をアミノ酸修飾が含む、実施形態1に記載のGLP1変異体を提供する。
【0091】
実施形態3では、本発明は、アミノ酸修飾がN末端へのGlnの付加を含む、実施形態1または2に記載のGLP1変異体を提供する。
【0092】
実施形態4では、本発明は、配列番号4からのヒスチジン(His1)またはアラニン(Ala2)の欠失をアミノ酸修飾が含む、実施形態1に記載のGLP1変異体を提供する。
【0093】
実施形態5では、本発明は、配列番号5、6、7および8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態1~4のいずれか一実施形態に記載のGLP1変異体を提供する。
【0094】
実施形態6では、本発明は、配列番号6のアミノ酸配列を含む、実施形態5に記載のGLP1変異体を提供する。
【0095】
実施形態7では、本発明は、安定型ドメインと融合した実施形態1~6のいずれか一実施形態に記載のGLP1変異体を含む融合タンパク質であって、安定型ドメインが、GLP1受容体と特異的に結合し重鎖可変領域(HCVR)と軽鎖可変領域(LCVR)を含む抗原結合性タンパク質またはその抗原結合性断片である、融合タンパク質を提供する。
【0096】
実施形態8では、本発明は、GLP1変異体が抗原結合性タンパク質またはその抗原結合性断片のHCVRのN末端またはC末端と融合した、実施形態7に記載の融合タンパク質を提供する。
【0097】
実施形態9では、本発明は、GLP1変異体が抗原結合性タンパク質またはその抗原結合性断片のLCVRのN末端またはC末端と融合した、実施形態7に記載の融合タンパク質を提供する。
【0098】
実施形態10では、本発明は、安定型ドメインと融合した実施形態1~6のいずれか一実施形態に記載のGLP1変異体を含む融合タンパク質であって、安定型ドメインが免疫
グロブリン(Ig)またはその断片である融合タンパク質を提供する。
【0099】
実施形態11では、本発明は、配列番号9、10、11、12および13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態11に記載の融合タンパク質を提供する。
【0100】
実施形態12では、本発明は、安定型ドメインと融合したGLP1変異体を含む融合タンパク質であって、安定型ドメインが抗原結合性タンパク質またはその抗原結合性断片であり、抗原結合性タンパク質またはその断片が重鎖可変領域(HCVR)と軽鎖可変領域(LCVR)を含む、融合タンパク質を提供する。
【0101】
実施形態13では、本発明は、GLP1変異体が抗原結合性タンパク質またはその断片のHCVRのN末端またはC末端と融合した、実施形態12に記載の融合タンパク質を提供する。
【0102】
実施形態14では、本発明は、GLP1変異体が抗原結合性タンパク質またはその断片のLCVRのN末端またはC末端と融合した、実施形態12に記載の融合タンパク質を提供する。
【0103】
実施形態15では、本発明は、抗原結合性タンパク質またはその断片がGLP1受容体と特異的に結合する、実施形態12~14のいずれか一実施形態に記載の融合タンパク質を提供する。
【0104】
実施形態16では、本発明は、実施形態1~15のいずれか一実施形態に記載のGLP1変異体を含む、実施形態12~15のいずれか一実施形態に記載の融合タンパク質を提供する。
【0105】
実施形態17では、本発明は、GLP1変異体が配列番号5、6、7および8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態12~16のいずれか一実施形態に記載の融合タンパク質を提供する。
【0106】
実施形態18では、本発明は、GLP1変異体が配列番号6のアミノ酸配列を含む、実施形態16または17に記載の融合タンパク質を提供する。
【0107】
実施形態19では、本発明は、GLP1変異体を含むGLP1受容体アゴニストであって、GLP1変異体が安定型ドメインと融合しており、安定型ドメインが抗原結合性タンパク質またはその抗原結合性断片であり、抗原結合性タンパク質またはその断片が重鎖可変領域(HCVR)と軽鎖可変領域(LCVR)を含む、GLP1受容体アゴニストを提供する。
【0108】
実施形態20では、本発明は、GLP1変異体が抗原結合性タンパク質またはその断片のHCVRのN末端またはC末端と融合した、実施形態19に記載のGLP1受容体アゴニストを提供する。
【0109】
実施形態21では、本発明は、GLP1変異体が抗原結合性タンパク質またはその断片のLCVRのN末端またはC末端と融合した、実施形態19に記載のGLP1受容体アゴニストを提供する。
【0110】
実施形態22では、本発明は、抗原結合性タンパク質またはその断片がGLP1受容体と特異的に結合する、実施形態19~21のいずれか一実施形態に記載のGLP1受容体アゴニストを提供する。
【0111】
実施形態23では、本発明は、実施形態1に記載のGLP1変異体を含む、実施形態19~22のいずれか一実施形態に記載のGLP1受容体アゴニストを提供する。
【0112】
実施形態24では、本発明は、GLP1変異体が配列番号5、6、7および8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態19~23のいずれか一実施形態に記載のGLP1受容体アゴニストを提供する。
【0113】
実施形態25では、本発明は、GLP1変異体が配列番号6のアミノ酸配列を含む、実施形態23または24に記載のGLP1受容体アゴニストを提供する。
【0114】
実施形態26では、本発明は、GLP1変異体を含むGLP1受容体アゴニストであって、GLP1変異体が安定型ドメインと融合しており、安定型ドメインが免疫グロブリン(Ig)またはその断片である、GLP1受容体アゴニストを提供する。
【0115】
実施形態27では、本発明は、配列番号9、10、11、12および13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態26に記載のGLP1受容体アゴニストを提供する。
【0116】
実施形態28では、本発明は、実施形態1~27のいずれか一実施形態に記載のタンパク質および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0117】
実施形態29では、本発明は、実施形態1~6のいずれか一実施形態に記載のGLP1変異体をコードするポリヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチド分子を提供する。
【0118】
実施形態30では、本発明は、実施形態10~11のいずれか一実施形態に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチド分子を提供する。
【0119】
実施形態31では、本発明は、実施形態26~27のいずれか一実施形態に記載のGLP1受容体アゴニストをコードするポリヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチド分子を提供する。
【0120】
実施形態32では、本発明は、実施形態29~31のいずれか一実施形態に記載のポリヌクレオチド配列を含むベクターを提供する。
【0121】
実施形態33では、本発明は、実施形態32に記載のベクターを発現する細胞を提供する。
【0122】
実施形態34では、本発明は、血糖レベルを低減する方法であって、それを必要とする対象に、実施形態1~27のいずれか一実施形態に記載のタンパク質を治療有効量含む医薬組成物を投与する工程を含む方法を提供する。
【0123】
実施形態35では、本発明は、対象が、糖尿病、肥満症、インスリン抵抗性、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病、1型糖尿病、前糖尿病、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、うっ血性心不全、冠動脈性心疾患、動脈硬化症、末梢動脈疾患、脳卒中、呼吸機能障害、腎疾患、脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、およびメタボリックシンドロームからなる群から選択される疾患または障害を有する、実施形態34の方法を提供する。
【0124】
実施形態36では、本発明は、2型糖尿病の少なくとも1つの症状、兆候または合併症を予防、治療または軽減する方法であって、それを必要とする対象に、実施形態1~27のいずれか一実施形態に記載のタンパク質を治療有効量含む医薬組成物を投与する工程を含む方法を提供する。
【0125】
実施形態37では、本発明は、少なくとも1つの症状、徴候または合併症が、高血糖レベル、過剰な喉の渇き、頻尿、尿中ケトン体の存在、疲労、体重変動、かすみ目、治癒が遅い痛み、頻繁な感染、歯肉の腫れまたは圧痛、肥満症、心疾患、脳卒中、腎疾患、眼部疾患、神経損傷および高血圧からなる群から選択される、実施形態36の方法を提供する。
【0126】
実施形態38では、本発明は、第2の治療剤または治療と組み合わせて医薬組成物を投与する、実施形態34~37のいずれか一実施形態に記載の方法を提供する。
【0127】
実施形態39では、本発明は、第2の治療剤または治療が、インスリンまたはインスリンアナログ、ビグアニド(例えばメトホルミン)、チアゾリジンジオン、スルホニルウレア(例えばクロプロパミド)、グリニド(例えばナテグリニド)、αグルコシダーゼ阻害薬、DPP4阻害薬(例えばシタグリプチン)、プラムリンチド、ブロモクリプチン、SGLT2阻害薬(例えばカナグリフロジン)、降圧薬、スタチン、アスピリン、食生活改善、エクササイズ、および栄養補助食品からなる群から選択される、実施形態38の方法を提供する。
【0128】
実施形態40では、本発明は、医薬組成物を皮下、静脈内、皮内、腹腔内、経口、または筋肉内投与する、実施形態34~39のいずれか一実施形態に記載の方法を提供する。
【実施例0129】
以下の実施例を言及し、本発明の方法と組成物の作製および使用の仕方の完全な開示および記載を当業者に提供するが、本発明者らが自分たちの発明とみなすことの範囲を限定する意図はない。使用する数字(例えば量、温度など)に関する精度を保証するための努力は費やしたが、ある程度の実験誤差および偏差は考慮されるべきである。他に示さない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、室温は約25℃であり、圧力は大気圧または常気圧である。
【実施例0130】
GLP1を含む例示的融合タンパク質
酵素ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)によるその急速な不活性化のため、GLP1(7~37)は非常に短い循環半減期(1~2分)を有する。以前の研究は、GLP1(7~37)の位置8における様々なアミノ酸置換によってDPP4に対する耐性が高まり、それによってさらに長い半減期をもたらすことを示した(Deaconら、1998年、Diabetologia41:271~278頁)。しかしながら、これらの分子のDPP4切断に対する感受性は残る。したがって、DPP4に対してより一層の耐性がある、新たな分子を開発する必要がある。
【0131】
DPP4に対するより高い耐性をもたらすため、第1の部分の技術は、N末端へのアミノ酸(すなわちAla、Gln)の付加、またはペプチド配列内のHis7もしくはAla8の欠失のいずれかにより、GLP1のアミノ末端を延長または短縮する突然変異を導入して、DPP4切断に対するより高い耐性を与えることである。これらの修飾はGLP1活性も弱め、第2の部分の技術は、抗GLP1R抗体軽鎖配列のN末端にペプチドを融合させることによって、抗GLP1R抗体を使用し弱化アゴニストと受容体を結合させることにより、低減活性を補償することである。概念の証明として、以下に記載したように
、修飾型GLP1(7~37)リガンド配列をGLP1R抗体の軽鎖のN末端に融合させた。
【0132】
成熟GLP1は、完全長GLP1(配列番号3)のアミノ酸7~37を含む31アミノ酸のペプチドホルモンであり、アミノ酸配列
HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRG(配列番号4)を有する。
【0133】
アミノ末端でのアミノ酸欠失または付加により成熟GLP1を修飾し、GLP1変異体を作製した。例示的なGLP1変異体を以下に与える:
・アミノ酸配列HEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRG(配列番号5)を含むDes-Ala-GLP1
・アミノ酸配列QHAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRG(配列番号6)を含むQ-GLP1
・アミノ酸配列AHAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRG(配列番号7)を含むA-GLP1
・アミノ酸配列AEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRG(配列番号8)を含むdesH-GLP1
【0134】
前述のGLP1変異体の考えられる活性低減を補償するため、抗GLP1R抗体を使用して、それらをGLP1受容体(GLP1R)または抗体Fc断片に結合させた。成熟GLP1またはGLP1変異体を含む例示的融合タンパク質を、配列番号2の重鎖可変領域と配列番号1の軽鎖可変領域(LCVR)を含む抗GLP1受容体抗体(本明細書では以後「mAb1」と呼ぶ、米国特許出願公開No.20060275288[Abbott
Laboratories])の軽鎖のN末端への、成熟GLP1またはGLP1変異体の融合によって作製し、それらを以下に列挙する:
・mAb1の軽鎖のN末端と融合したDes-Ala-GLP1-mAb1:Des-Ala-GLP1(配列番号5)
・mAb1の軽鎖のN末端と融合したQ-GLP1-mAb1:Q-GLP1(配列番号6)
・mAb1の軽鎖のN末端と融合したA-GLP1-mAb1:A-GLP1(配列番号7)
【0135】
成熟GLP1またはGLP1変異体および免疫グロブリンFc断片を含む融合タンパク質も作製し、それらを以下に列挙する:
・GLP1-hFc(配列番号9)
・A-GLP1-hFc(配列番号10)
・Q-GLP1-hFc(配列番号11)
・Des-Ala-GLP1-hFc(配列番号12)
・desH-GLP1-hFc(配列番号13)
【0136】
対照構築物
コンパレーター:Glaesnerら、2010年(Diabetes Metab.Res.Rev.26:287~296頁)中に開示された、hIgG4Fcドメインと融合したLY2189265のアミノ酸配列特性を有するGLP1アナログ(デュラグルチド;Eli Lilly)を、以下の実施例中でコンパレーター(配列番号14)として使用した。
【実施例0137】
ルシフェラーゼアッセイ
cAMPに応答するcreプロモーターの制御下でヒトGLP1受容体およびルシフェラーゼコード配列を安定的に発現するレポーター細胞株293/FSC11/Cre-Lucにおいて、cAMP生成を刺激するそれらの能力に関してGLP1融合タンパク質を試験した。
【0138】
ルシフェラーゼバイオアッセイ用に、293/FSC11/Cre-LucGLP1R安定細胞を、0.1%FBSを補充したOPTIMEMにおいて30,000細胞/ウエルで96ウエルのアッセイプレート中に接種し、次いで一晩5%CO中で37℃においてインキュベートした。翌日、試験タンパク質の用量応答性を決定するため、ヒトGLP1(Phoenix#028-13)、des-Ala-GLP1-mAb1、Q-GLP1-mAb1、またはA-GLP1-mAb1をこのアッセイにおいて試験した。修飾抗体をコードするベクターを用いたCHO細胞の一過的トランスフェクション後に培養培地から直接使用したA-GLP1-mAb1以外、全ての試験化合物は精製タンパク質であった。培養培地中の材料はELISAにより定量化した。試験試料は0.02pM~100nMの範囲の濃度で細胞に加えた。
【0139】
5%CO中での37℃における5.5時間または一晩のインキュベーション後、OneGIo試薬(Promega、#E6051)を試料に加えて、次いでVictorX(Perkin Elmer)プレートリーダーを使用しルシフェラーゼ活性を測定した。非線形回帰(3パラメーター)およびPrism6ソフトウエア(GraphPad)を使用して結果を分析しEC50値を得た。
【0140】
表1中に示したように、Q-およびA-修飾mAb1抗体融合体は、GLP1R活性化に関して、それぞれ204pMおよび312pMのEC50値を示した。
【0141】
【表1】
【0142】
des-Ala-GLP1-mAb1に関するEC50は10nMであった。Q-およびA-GLP1-hFcに関するEC50は135nMおよび120nMであり、一方DesA-GLP1-hFcに関するEC50は検出不能である。
【実施例0143】
GLP1Rヒト化マウスにおける血中グルコースおよびグルコース抵抗性に対するGLP1R抗体融合Q-GLP1の影響
血中グルコースおよびグルコース抵抗性に対する抗GLP1R抗体の軽鎖のN末端と融合したQ-GLP1(Q-GLP1-mAb1)の影響を、ヒトGLP1Rタンパク質を
発現する遺伝子操作型マウス(「GLP1Rヒト化マウス」)において決定した。31匹のGLP1Rヒト化マウスを、7~8匹の動物の4群に分けた。各群に、194nmol/kgでアイソタイプ対照、Q-GLP1-hFc、mAb1、またはQ-GLP1-mAb1を一回皮下注射した。マウスは第0、1、4、7、11、14、16、18日に飼育状態で出血させ、第22日に血中グルコースを測定した。各時間地点での血中グルコースレベルの平均±SEMを各群に関して計算し、それを表2中に示す。
【0144】
【表2】
【0145】
経口グルコース負荷試験(oGTT)を一晩絶食後第3日と9日に、大量グルコースガバージング(gavarging)後0、15、30、60、および120分で血中グルコース測定を実施した。各時間地点での血中グルコースレベルの平均±SEMおよびグルコース曲線下面積(AUC)を各群に関して計算し、それらを表3および4中に示す。
【0146】
【表3】
【0147】
【表4】
【0148】
正常血糖GLP1Rヒト化マウスにおけるQ-GLP1-mAb1の一回投与は14日間の有意なグルコース低減をもたらし、一方Q-GLP1-hFcまたはmAb1が血中グルコースレベルに影響を与えることはなかった(表2)。Q-GLP1-mAb1は、マウスにおいて第3日と9日に絶食時グルコースレベルを低減しグルコース抵抗性を改善したが、一方Q-GLP1-hFcおよびmAb1はしなかった。これらのデータは、Q-GLP1またはmAb1抗体単独では血糖制御が変わることはないが、しかしながら、この2つの融合分子は、正常血糖動物における一回注射で2週間続くグルコース低下機能を果たす可能性があることを示唆する。
【実施例0149】
GLP1変異体の安定性
様々なGLP1変異体および融合タンパク質の安定性を、血中プロテアーゼとそれらをインキュベートし、質量分析によって切断ペプチドを分析することにより試験した。
【0150】
第1の実験では、0.5μgの各GLP1融合タンパク質を50μLの非投薬マウス血清中にそれぞれ加えた。次いで混合物を、それぞれ6時間と24時間37℃でインキュベートした。1μLの血清混合物を0分、6時間および24時間でトリス-グリシンゲル上に充填した。
【0151】
第2の実験では、安定性をさらに区別するため、2μgの各GLP1融合タンパク質を、37℃においてそれぞれ0分間、1時間、4時間および72時間、PBS(pH7.4)中で500ngの組換えヒトDPP4(R and D system)とインキュベートした。前述の混合物の5分の1(構築物の400ngに相当)をトリス-グリシンゲル上に充填した。
【0152】
各実験用に、各構築物の分子量に相当するゲル切片を切除し、ゲル内トリプシン消化を施した。切除したゲル切片は50:50アセトニトリル:NHHCO(50mM)中で脱色し、30分間37℃において65mMのジチオスレイトール(Sigma)で還元し、次いで30分間暗所内で室温において、135mMのヨードアセトアミド(Sigma)でアルキル化した。その後、37℃においてシークエンシング等級修飾ブタトリプシン(Promega)で一晩タンパク質を消化した。ペプチドは抽出バッファー(HO中50%ACN、5%ギ酸)で二回抽出した。各バンドから抽出したペプチドはSpeedVacで完全に乾燥させ、ナノLC-MS/MS分析前に0.1%テトラフルオロ酢酸(TFA)で復元した。
【0153】
復元したペプチド混合物は、オンライン逆相(RP)ナノスケールキャピラリー液体クロマトグラフィー(Easy-nLC1000、Thermo Fisher Scie
ntific)によって分離し、エレクトロスプレータンデム質量分析(Orbitrap Elite、Thermo Fisher Scientific)によって分析した。ペプチド混合物は、250nL/分の流速で75μm内径「PepMap RSLC」カラム(C18、25cm、100Å、2μm、Thermo Fisher Scientific)に注入し、その後60分勾配において2%~35%ACN、0.1%ギ酸で溶出した。質量分析計をデータ依存モードで操作してMS収集とMS/MS収集間を自動的に変更した。サーベイフルスキャンMSスペクトル(m/z350~2000)を120,000の解像度でOrbitrapにおいて収集した。最強度イオン(最大10)を、5000の標的値で35%の正常衝突エネルギーを伴う衝突誘起解離(CID)を使用し、ハイブリッドイオントラップで断片化用に順に単離した。MS/MS用に既に選択した標的イオンは30秒間動的に除外した。
【0154】
MSおよびMS/MSピークリストを抽出し、ProteomeDiscoverer1.4(Thermo Fisher Scientific)を使用し内部タンパク質データベースで検索した。全検索によってトリプシン消化を仮定し、システインのカルボキシメチル化を固定修飾として、およびメチオニンの酸化を不定修飾として考えた。10ppmのペプチド質量許容値、0.8DaのMS/MS質量許容値、および最大1欠失切断の許容誤差を使用した。抽出イオン領域は、Thermo Xcaliberソフトウエア(Thermo Fisher Scientific)を使用し抽出イオンクロマトグラム(XIC)に基づきコンピューターで計算した。
【0155】
結果
血清酵素による切断に対する各構築物の感受性を特徴付けるため、各構築物に関して完全ペプチド(N末端ペプチド)、切断ペプチド(切断後のN末端ペプチド)、および1つの内部参照ペプチド(構築物における如何なる修飾にも影響を受けない安定ペプチド)をナノLC-MS/MSによってモニタリングした。完全ペプチドと参照ペプチドの低減した比、および切断ペプチドと参照ペプチドの付随的に増大した比は、経時的な構築物の酵素媒介切断を示唆した。以下の式:100×切断ペプチドの面積/(切断ペプチドの面積+非切断ペプチドの面積)を使用して切断率を計算した。
【0156】
GLP1-hFcおよびA-GLP1-hFcは6時間までに完全に切断され、一方desH-GLP1-hFcは6時間までに顕著な切断(2%)を示した。Q-GLP1-hFcおよびコンパレーターは24時間のインキュベーション後如何なる切断も示さなかった(表5)。
【0157】
【表5】
【0158】
Q-GLP1-hFcとコンパレーターの安定性をさらに区別するため、この2つの構
築物を組換えヒトDPP4と混合し、各構築物に関して完全ペプチド(N末端ペプチド)、切断ペプチド(切断後のN末端ペプチド)、および1つの内部参照ペプチド(構築物における如何なる修飾にも影響を受けない安定ペプチド)をナノLC-MS/MSによってモニタリングした。
【0159】
【表6】
【0160】
コンパレーターは4時間までに顕著な切断(4%)、および72時間までに40%を超える切断を示した(表6)。対照的にQ-GLP1-hFcは、37℃でのDPP4との72時間のインキュベーション後でさえ如何なる切断も示さなかった。
【0161】
本発明は、本明細書中に記載した具体的実施形態によってその範囲が限定されることはない。実際、本明細書中に記載した変更形態以外に、本発明の様々な変更形態が、前述の記載および添付の図面から当業者に明らかとなる。このような変更形態は、添付の特許請求の範囲内に入るものとする。
【配列表】
2024178255000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-09-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号11に示されるアミノ酸配列からなる融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド分子。
【請求項2】
請求項1に記載のポリヌクレオチド分子を含む、ベクター。
【請求項3】
請求項2に記載のベクター内の前記ポリヌクレオチド分子によりコードされる前記融合タンパク質を発現する、細胞。
【請求項4】
配列番号11に示されるアミノ酸配列からなる融合タンパク質および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む、対象における血糖レベルの低減に使用するための医薬組成物。
【請求項5】
対象が、糖尿病、肥満症、インスリン抵抗性、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病、1型糖尿病、前糖尿病、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、うっ血性心不全、冠動脈性心疾患、動脈硬化症、末梢動脈疾患、脳卒中、呼吸機能障害、腎疾患、脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、およびメタボリックシンドロームからなる群から選択される疾患または障害を有する、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
配列番号11に示されるアミノ酸配列からなる融合タンパク質および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む、2型糖尿病の少なくとも1つの症状、兆候または合併症の予防、治療または軽減に使用するための医薬組成物。
【請求項7】
少なくとも1つの症状、徴候または合併症が、高血糖レベル、過剰な喉の渇き、頻尿、尿中ケトン体の存在、疲労、体重変動、かすみ目、治癒が遅い痛み、頻繁な感染、歯肉の腫れまたは圧痛、肥満症、心疾患、脳卒中、腎疾患、眼部疾患、神経損傷および高血圧からなる群から選択される、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
第2の治療剤または治療と組み合わせて投与される、請求項4~7のいずれか一項に記
載の医薬組成物。
【請求項9】
第2の治療剤または治療が、インスリンまたはインスリンアナログ、メトホルミン、チアゾリジンジオン、スルホニルウレア、ビグアニド、クロプロパミド、グリニド、αグルコシダーゼ阻害薬、ナテグリニド、DPP4阻害薬、プラムリンチド、シタグリプチン、ブロモクリプチン、SGLT2阻害薬、カナグリフロジン、降圧薬、スタチン、アスピリン、食生活改善、エクササイズ、および栄養補助食品からなる群から選択される、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
皮下、静脈内、皮内、腹腔内、経口、または筋肉内投与される、請求項4~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【外国語明細書】