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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178261
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】PCTAベースの造影剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/08 20060101AFI20241217BHJP
   A61K 49/10 20060101ALI20241217BHJP
   C07F 5/00 20060101ALN20241217BHJP
【FI】
C07D471/08 CSP
A61K49/10
C07F5/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024160004
(22)【出願日】2024-09-17
(62)【分割の表示】P 2021506481の分割
【原出願日】2019-08-06
(31)【優先権主張番号】18187422.3
(32)【優先日】2018-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】504448162
【氏名又は名称】ブラッコ・イメージング・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】BRACCO IMAGING S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ロベルタ・ナポリターノ
(72)【発明者】
【氏名】ルチアーノ・ラットゥアーダ
(72)【発明者】
【氏名】ジョルト・バラニャイ
(72)【発明者】
【氏名】ニコル・グイドリン
(72)【発明者】
【氏名】ジュゼッペ・マラッツィ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】緩和性および速度論的不活性度に関して改善された物理化学的特性を有するGd(PCTA-トリス-グルタミン酸)およびその誘導体の特定の異性体を提供する。
【解決手段】Gd(PCTA-トリス-グルタミン酸)のエナンチオマーのRRR/SSSペア、該ペアの単一のエナンチオマー、その薬学的に許容される塩、それらのアミド誘導体、およびこれら化合物を少なくとも50%含む組成物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下からなる群から選択される化合物:
式Ia:
【化1】
を有する、エナンチオマー[(αR,α’R,α’’R)-α,α’,α’’-トリス(2-カルボキシエチル)-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム(エナンチオマーRRR);
式Ib
【化2】
を有する、エナンチオマー[(αS,α’S,α’’S)-α,α’,α’’-トリス(2-カルボキシエチル)-3,6,9,15-テトラアザビシクロ-[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム(SSSエナンチオマー);および
そのようなRRRおよびSSSエナンチオマーの混合物;
およびその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を少なくとも50%含む、式
【化3】
で示される、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)の異性体混合物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物が、請求項1に記載のRRRおよびSSSエナンチオマーの混合物、またはその薬学的に許容される塩である、請求項2に記載の異性体混合物。
【請求項4】
薬学的に許容される塩が、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリまたはアルカリ土類金属から選択される無機塩基のカチオン、またはエタノールアミン、ジエタノールアミン、モルホリン、グルカミン、N-メチルグルカミン、N,N-ジメチルグルカミンから選択される有機塩基のカチオン、またはリジン、アルギニンおよびオルニチンから選択されるアミノ酸のカチオンとの塩、または場合により、塩化物、臭化物またはヨウ化物などのハロ酸から選択される無機酸のアニオン、ならびに酢酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩またはシュウ酸塩などの他の適切なイオンのアニオンとの塩である、請求項1に記載の化合物または請求項2~3のいずれかに記載の異性体混合物。
【請求項5】
式(II A)
【化4】
[式中、
Fは、式IIIa:
【化5】
で示されるRRRエナンチオマー残基、
式IIIb:
【化6】
で示される、SSSエナンチオマー残基、または
それらRRRおよびSSSエナンチオマー残基の混合物であり;
3つの-NR基はそれぞれ、Fのカルボキシル部分の開結合(●)に結合しており;
はHまたは場合より1~4個のヒドロキシル基で置換されているC-Cアルキルであり;
は場合より1~4個のヒドロキシル基で置換されているC-Cアルキル、好ましくは、1または2個のヒドロキシル基で置換されているC-Cアルキル
である]
を有する、請求項1に記載の化合物のアミド誘導体。
【請求項6】
式(II B):
【化7】
[式中、
F’は:
式(III):
【化8】
で示されるGd(PCTA-トリス-グルタル酸)残基の異性体混合物であり、
該Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)残基の異性体混合物は、少なくとも50%の、式(IIIa)のエナンチオマー残基、式(III B)のエナンチオマー残基、またはそれらの混合物を含んでなり;
-NRは請求項5で定義したとおりである]
を有する、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のアミド誘導体の異性体混合物。
【請求項7】
式(II B)において、F’が、RRRおよびSSSエナンチオマー残基の混合物を少なくとも50%含む式IIIの残基の異性体混合物である、請求項6に記載の異性体混合物。
【請求項8】
式(II A)または(II B)において、RがHであり、Rが1つまたは2つのヒドロキシル基で置換されたC-Cアルキルである、請求項5に記載のアミド誘導体または請求項6または7に記載の異性体混合物。
【請求項9】
式(II A)または(II B)において、RがHであり、Rが-CHCH(OH)CHOHである、請求項8に記載のアミド誘導体または異性体混合物。
【請求項10】
以下からなる群から選択される、請求項5に記載のアミド誘導体:
[(αS,α’S,α’’S)-α,α’,α’’-トリス[3-[(2(S)、3-ジヒドロキシプロピル)アミノ]-オキソプロピル]-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム(異性体SSS-SSS);
[(αS,α’S,α’’S)-α,α’,α’’-トリス[3-[(2(R)、3-ジヒドロキシプロピル)アミノ]-オキソプロピル]-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム(異性体SSS-RRR);
[(αR,α’R,α’’R)-α,α’,α’’-トリス[3-[(2(R)、3-ジヒドロキシプロピル)アミノ]-オキソプロピル]-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム(異性体RRR-RRR);
[(αR,α’R,α’’R)-α,α’,α’’-トリス[3-[(2(S)、3-ジヒドロキシプロピル)アミノ]-オキソプロピル]-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム(異性体RRR-SSS);
およびそれらの混合物。
【請求項11】
式(II B)において、F’がRRRおよびSSSエナンチオマー残基の混合物を少なくとも60%含む、請求項7~9のいずれかに記載の異性体混合物。
【請求項12】
1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と混合して、請求項1~4のいずれかに記載の化合物または異性体混合物、または請求項5~10のいずれかに記載のアミド誘導体または異性体混合物を含む医薬組成物。
【請求項13】
請求項6に記載の式(II B)のアミド誘導体の異性体混合物を含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
式(II B)においてF’が請求項7に定義されるとおりである、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
式(II B)において、RがHであり、Rが-CHCH(OH)CHOHである、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
式(II A)において、RがHであり、Rが-CHCH(OH)CHOHであり、FがRRRおよびSSSエナンチオマー残基の混合物である、請求項5に記載のアミド誘導体。
【請求項17】

【化9】
で示される化合物を含み、化合物の少なくとも50%が請求項16に記載のアミド誘導体である医薬組成物。
【請求項18】
MRI造影剤として使用するための、請求項1に記載の化合物の薬学的に許容される塩、または請求項2または3に記載のRRR/SSS混合物、または請求項5に記載のアミド誘導体、または請求項6に記載の異性体混合物。
【請求項19】
式(II B)において、F’がRRRおよびSSSエナンチオマー残基の混合物を少なくとも70%含む、請求項7~9のいずれかに記載の異性体混合物。
【請求項20】
式(II B)において、F’がRRRおよびSSSエナンチオマー残基の混合物を少なくとも80%含む、請求項7~9のいずれかに記載の異性体混合物。
【請求項21】
式(II B)において、F’がRRRおよびSSSエナンチオマー残基の混合物を少なくとも90%含む、請求項7~9のいずれかに記載の異性体混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、一般に、磁気共鳴画像法(MRI)の分野に関する。より具体的には、PCTAベースの造影剤の異性体、およびこれらの異性体が豊富なMRI造影剤に関する。
【背景技術】
【0002】
日常の診断業務で使用されるMRI造影剤の典型例として、遊離金属イオン(生体に対して非常に有毒であることが知られている)のin vivoでの放出を保証する高い安定度定数を特徴とするガドリニウム錯体化合物がある。
【0003】
ガドリニウムベースの造影剤の忍容性を定義する別の重要なパラメーターは、Gd(III)錯体の速度論的不活性度(または速度論的安定度)であり、これは錯体の解離(即ち脱錯体化)の半減期(t1/2)から推定される。
【0004】
特に、熱力学的安定性が低く、および/または排出までの保持時間が長い錯体化合物においては、起こり得る脱錯体化または金属交換反応を回避または最小化するために高い不活性度が重要となる。
【0005】
EP1931673(Guerbet)には、次式
【化1】
で示されるPCTA誘導体と、その製造のための合成経路が開示されている。
【0006】
EP 2988756(同出願人)には、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸のカルシウム錯体と共に上記の誘導体を含む医薬組成物が開示されている。EP2988756によると、このカルシウム錯体は、金属交換によってフリーのランタニドイオンと強力な錯体を形成することで、PCTAベースのガドリニウム錯体で観察される弱い熱力学的安定性を補われ、それにより造影剤の忍容性が高められている。
【0007】
さらに、EP1931673およびEP2988756の両方はいずれも、RRS、RSRおよびRSSジアステレオマーから優先的に選択される、請求項に記載された化合物のエナンチオマーもしくはジアステレオマー、またはそれらの混合物を参照する。
【0008】
上記の特許のいずれにも、特定の誘導体のうち、(α3,α6,α9)-トリス(3-((2,3-ジヒドロキシプロピル)アミノ)-3-オキソプロピル)-3,6,9,15-テトラアザビシクロ(9.3.1)ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-(κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9)ガドリニウムが開示されており、最近では次式
【化2】
で示される、2,2’,2’’-(3,6,9-トリアザ-1(2,6)-ピリジナシクロデカファン-3,6,9-トリイル)トリス(5-((2,3-ジヒドロキシプロピル)アミノ)-5-オキソペンタン酸)のガドリニウムキレート(CAS登録番号:933983-75-6)として、あるいはP03277またはガドピクレノールとして同定されている。
【0009】
ガドピクレノールに関して、EP1931673には、緩和能が11 mM-1s-1Gd-1(水中、0.5 T、37℃)であることが記載されており、EP2988756には熱力学的平衡定数が10-14.9(log Kterm = 14.9)であることが記載されている。
【0010】
さらに、この同じ化合物について、ヒト血清中の緩和値が12.8 mM-1s-1(37℃、1.41 T)、安定度(log Kterm)が18.7、および解離半減期が約20日(pH 1.2;37℃)であると記載されている(Investigative Radiology 2019, Vol 54,(8), 475-484)。
【0011】
EP1931673に開示されたPCTA誘導体(ガドピクレノールを含む)の調製のための前駆体は、次式
【化3】
を有する、3,6,9,15-テトラアザビシクロ-[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-トリ(α-グルタル酸)のGd錯体(本明細書において「Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)」として同定される)である。特に、ガドピクレノールは、上記の化合物をイソセリノールでアミド化することにより得られる。
【0012】
出願人が観察しているとおり、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)は、2 = 8の可能な立体異性体をもたらすグルタル酸部分(上記の構造においてアスタリスク(*)で示される)に3つの立体中心を有する。より具体的には、上記の構造は、次のTable 1に示す4対のエナンチオマーを生じうる。
【表1】
【0013】
異性体RRRは異性体SSSの鏡像体であり、それらがエナンチオマー(またはエナンチオマーペア)と呼ばれる理由である。知られているように、エナンチオマーは同じ物理化学的特性を示し、キラルクロマトグラフィーや偏光などのキラル方法論を使用した場合にのみ区別できる。
【0014】
一方、異性体RRRは、上記の他の6つの異性体のいずれとも等価でも鏡像体でもなく、これらの他の異性体は、RRR(またはSSS)異性体のジアステレオマーとして識別される。ジアステレオ異性体は、異なる物理化学的特性(例えば、融点、水溶性、緩和能など)を示し得る。
【0015】
ガドピクレノールに関して、その化学構造は計6つの立体中心を含んでおり、上記の前駆体のグルタル酸部分に3つと、それに結合した3つのイソセリノール部分のそれぞれに1つ存在する(下記構造式中、それぞれアスタリスク(*)と中空の円(〇)で示す)。
【化4】
【0016】
これにより、この化合物の立体異性体の理論上の総数は2=64となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、EP1931673とEP2988756のいずれにも、記載された合成経路に従って得られた異性体混合物の組成について詳細に記載しておらず、これらの異性体の分離とキャラクタリゼーションについての教示もされておらず、ガドピクレノールの立体特異的な合成も開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0018】
出願人は、上記の前駆体Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)およびその誘導体(特にガドピクレノール)の特定の異性体が、とりわけ緩和性および速度論的不活性度に関して改善された物理化学的特性を有することを発見した。
【0019】
本発明の一実施形態は、以下からなる群から選択される化合物に関する:
式(Ia):
【化5】
を有する、エナンチオマー[(αR,α’R,α’’R)-α,α’,α’’-トリス(2-カルボキシエチル)-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム(RRRエナンチオマー);
式(Ib):
【化6】
を有する、エナンチオマー[(αS,α’S,α’’S)-α,α’,α’’-トリス(2-カルボキシエチル)-3,6,9,15-テトラアザビシクロ-[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム(SSSエナンチオマー)、および
そのようなRRRおよびSSSエナンチオマーの混合物、およびその薬学的に許容される塩。
【0020】
本発明の別の実施形態は、少なくとも50%の、式(Ia)で示されるRRR異性体[(αR,α’R,α’’R)-α,α’,α’’-トリス(2-カルボキシエチル)-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15)、11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム、または、式(Ib)で示されるSSS異性体[(αS,α’S,α’’S)-α,α’,α’’-トリス(2-カルボキシエチル)-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15)、11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム、またはそれらの混合物、またはその薬学的に許容される塩を含んでなる、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)の異性体混合物に関する。
【0021】
本発明の別の態様は、上記の化合物または異性体混合物の1つをアミノ基、例えば、好ましくは、セリノールまたはイソセリノールと結合させることによって得られるアミドに関する。
【0022】
本発明の一実施形態は、式(II A):
F(NR (II A)
[式中、
Fは:
式IIIa
【化7】
で示されるRRRエナンチオマー残基、
式IIIb
【化8】
で示される、SSSエナンチオマー残基、または
それらRRRおよびSSSエナンチオマー残基の混合物であり;
3つの-NR基はそれぞれ、上記構造式中、黒丸(●)で示されるFのカルボキシル部分の開結合(open bond)に結合しており;
はHまたは場合より1~4個のヒドロキシル基で置換されているC1-C6アルキルであり;
は場合より1~4個のヒドロキシル基で置換されているC-Cアルキル、好ましくは、1または2個のヒドロキシル基で置換されているC-Cアルキル
である]
で示されるアミド誘導体に関する。
【0023】
本発明の一実施形態は、式(II B):
F’(NR (II B)
[式中、
F’は:
式(III)
【化9】
で示されるGd(PCTA-トリス-グルタル酸)残基の異性体混合物であり、
該Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)残基の異性体混合物は、少なくとも50%の、上記式(IIIa)のエナンチオマー残基、上記式(III B)で示されるエナンチオマー残基、またはそれらの混合物を含んでなり;
-NR基はそれぞれ、上記構造式中、黒丸(●)で示されるF’のカルボキシル部分の開結合(open bond)に結合しており、式(II A)で示される化合物について上で定義したとおりである]
を有する、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のアミド誘導体の異性体混合物に関する。
【0024】
本発明のさらなる態様は、MRI造影剤として使用するための、特にMRI技術を使用したヒトまたは動物の体の器官または組織の画像診断に適した、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)、または好ましくはそれらのRRR/SSS混合物、または少なくとも50%の、これらのエナンチオマーまたはRRR/SSSエナンチオマー混合物のいずれかを含んでなるGd(PCTA-トリス-グルタル酸)の異性体混合物、または上記の式(IIA)または(II B)で示されるアミド誘導体の薬学的に許容される塩に関する。
【0025】
さらなる態様は、1つ以上の生理学的に許容される担体または賦形剤と混合して、本発明の少なくとも1つの化合物または異性体混合物、または上記で定義されるその薬学的に許容される塩またはアミド誘導体を含んでなる薬学的に許容される組成物に関する。
【0026】
別の態様では、本発明は、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)またはその塩のRRRまたはSSS異性体の立体選択的合成に関する。
【0027】
本発明の一実施形態は、式(II A)で示されるアミド誘導体の合成方法:
F(NR (II A)
[式中、
F、RおよびRは上記のとおりであり、以下を含んでなる:
a)Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)錯体のRRRまたはSSS異性体、またはそれらの混合物を得る;および
b)ステップa)で得た異性体または異性体混合物をそのアミド誘導体に変換する;
ならびに
以下を含む、上記の式(II B)で示されるアミド誘導体の異性体混合物の調製方法:
a’)少なくとも50%の、エナンチオマーRRRまたはSSS、またはそれらの混合物を含むGd(PCTA-トリス-グルタル酸)の異性体混合物を得る;
b’)ステップa’)で得られたGd(PCTA-トリス-グルタル酸)の異性体混合物を、それぞれのアミド誘導体の対応する異性体混合物に変換する
に関する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、先行技術によって開示された合成手順に従って実施された実施例1から異性体混合物として回収されたGd(PCTA-トリス-グルタル酸)のHPLCクロマトグラムを示す([GdL]=0.2mM、25℃)。
図2】実施例3から得られたGd(PCTA-トリス-グルタル酸)のRRR/SSSエナンチオマーペアCのHPLCクロマトグラムを示す。
図3図2の主要ピークのMSスペクトルを示す。m/z比Gd(H4L)+:752.14m/z。
図4】HPLCクロマトグラムを示す:a)実施例1のGd(PCTA-トリス-グルタル酸)の異性体混合物;b)エナンチオマーペアC(実施例3の化合物VI);c)RRRエナンチオマー(実施例5の化合物XII)、およびd)SSSエナンチオマー(実施例6の化合物XVII)。
図5】キラルHPLCクロマトグラムを示す:Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のa)エナンチオマーペアC(実施例3の化合物VI)、b)RRRエナンチオマー(実施例5の化合物XII)、およびc)SSSエナンチオマー(実施例6の化合物XVII)。
図6】Gd(PCTA-トリグルタル酸)とイソセリノールの反応によって得られたアミド誘導体のHPLCクロマトグラムを示す。a):実施例2から異性体混合物として得られたアミド誘導体(便宜上、4つの主要ピークをA’、B’、C’およびD’として示す)。b):RRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)とR-イソセリノールとの反応により得られるアミド誘導体;c):RRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)とS-イソセリノールとの反応により得られるアミド誘導体;d):RRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)とラセミ体のイソセリノールとの反応によって得られるアミド誘導体。
図7】実施例7の試験を参照し、ピークA(◇)、B(□)、C(△)、およびD(〇)のHPLC面積値の経時変化を示す([GdL]= 0.2 mM,[HCl]= 1.0 M、25℃)。
図8】実施例8の試験を参照し、HPLC面積値の経時変化を示す:異性体混合物(◇);RRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)+ Rイソセリノール(□);RRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)+ Sイソセリノール(△);RRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)+ラセミ体のイソセリノール(〇)の総面積。([GdL]= 0.2 mM,[HCl]= 1.0 M、25℃)。
図9】式{(C(NH[Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)(C)]}・1HOで示される、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)-シュウ酸塩のグアニジン対イオンとの三元錯体の単結晶のX線構造を示す(グルタル酸基の(表示された)キラル炭素原子のキラリティーRRRを示す)。
図10】2RRR + 2SSS錯体を含んでなる、図9の結晶の単位格子を示す。
図11】RRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)とラセミ体のイソセリノールとのカップリング反応により得られた、炭酸アニオンとアミド化合物D’との間で形成した三元錯体から得られた単結晶のX線構造、および回収された結晶の統計分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の詳細な説明
先行技術(EP1931673によって引用されたUS6,440,956を参照)に開示された合成法により、異性体の混合物(本明細書では「Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)」の異性体混合物」として示される)としてGd(PCTA-トリス-グルタル酸)を得ることができ、HPLCにていくつかのピークとして確認できる。
【0030】
分取HPLC法により、同じm/z比(Gd(H4L)+:752.14 m/z)を有する4つのピークを混合物から分離できるようになった。
【0031】
分離された異性体混合物の代表的なクロマトグラムを図1に示す。ここで、各ピークは、便宜上、それぞれA、B、C、およびDの文字で示され、上記で示したエナンチオマーのペアの1つに合理的に起因する。より正確には、各ピークはエナンチオマーのペアに関連しており、通常の逆相HPLCでは識別できないMSスペクトルの同じm/z比で特徴付けられる。
【0032】
意外にも、HPLCクロマトグラムのピークCに関連するエナンチオマーペア(または、以下、互換的にエナンチオマーペアCと称する)が、特に速度論的不活性度とGdを放出する傾向の低下に関して、最適な特性を示すことが見い出された。
【0033】
例えば、エナンチオマーペアCの解離半減期(1M HCl中)は、ピークBに関連するエナンチオマーペアのものと比較して数十倍長く、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)異性体混合物の平均の半減期よりも10倍以上長いことがわかった。
【0034】
さらに、ピークCに関連するエナンチオマーペアに関連する緩和値は、同じ条件で試験したGd(PCTA-トリス-グルタル酸)の異性体混合物について1931673B1で報告された値よりも顕著に高い。
【0035】
このエナンチオマーペアCは、[(αR,α’R,α’’R)-α,α’,α’’-トリス(2-カルボキシエチル)-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム、すなわち式(Ia)で示されるGd(PCTA-トリス-グルタル酸)のRRR異性体
【化10】
および、その各鏡像異性体[(αS,α’S,α’’S)-α,α’,α’’-トリス(2-カルボキシエチル)-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム、すなわち式(Ib)で示されるGd(PCTA-トリス-グルタル酸)
【化11】
を含んでなることが示された。
【0036】
意外にも、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)の個別のエナンチオマー(RRRおよびSSS)およびRRR/SSSエナンチオマーペア(または以下、RRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸とも称する)によって示される改善された特性は、予想外にも、そのコンジュゲーション(例えばそのアミド誘導体の形成)後も実質的に維持されている。
【0037】
例えば、RRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)、および同様に、その個別のRRRまたはSSSエナンチオマーとイソセリノールとのカップリング反応により、最終的に、ガドピクレノールと同じ分子式を有するアミド誘導体が得られる。これに関して、使用するイソセリノールの種類、それがRまたはS異性体であるか、ラセミ体のイソセリノールであるかに関わらず、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のRRR/SSSエナンチオマーとのコンジュゲーションにより、同じ保持時間を有する(したがって通常の逆相HPLCでは区別できない)それぞれのアミド誘導体が得られることは興味深い。
【0038】
このように、付加したイソセリノールが異なる異性体(またはより一般的にはアミン誘導体)は、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)前駆体の立体化学によって本質的に決定される最終的なコンジュゲート化合物の主要な特性には影響を与えない。
【0039】
実際、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)の異性体混合物に関してピークCに関連するエナンチオマーペアによって示される改善された特性は、結合したイソセリノールの立体配置に関係なく、イソセリノールとのコンジュゲーション後に実質的に維持される。
【0040】
特に、イソセリノールの立体配置に関わらず、そのGd(PCTA-トリス-グルタル酸)のRRR/SSSエナンチオマーペアとのカップリングにより、従来技術の合成手順で異性体混合物として得られたガドピクレノールと比較して、より大きな速度論的不活性度と緩和能を有するアミド化合物が得られる。
【0041】
本明細書において、そして特に記載しない限り、「異性体混合物」(特定の化合物に関して)という表現は、その意味に、その化合物の少なくとも2つの立体異性体を含む混合物を包含する。特に、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)に関して用いる場合、「異性体混合物」という表現は、8つのジアステレオマー(または本明細書でジアステレオ異性体とも称する)のうちの少なくとも2つが分離されていない混合物を指し、より正確には、分子内に含まれる3つの立体中心によって生じる、表1に示される4つのエナンチオマーペアを指す。一方、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のアミド誘導体(例えばガドピクレノール)について用いる場合、「異性体混合物」という表現は、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)残基のエナンチオマーペアのそれぞれのアミド誘導体の上記の(可能な4つの)少なくとも2つの定義されていない分離されていない混合物を指す。
【0042】
この点において、アミド誘導体のアミン基のそれぞれが1つ以上の立体中心を含み得るので、アミド誘導体の可能な立体異性体の総数は、それに応じて増加し得る。たとえば、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)とイソセリノールの3つの分子(それぞれが立体中心を有する)のコンジュゲーションにより、それぞれ分子上に合計6つの立体中心が存在し、対応するアミド誘導体の可能な立体異性体の数は最大64(32エナンチオマーペア)になる。
【0043】
本明細書の記載と特許請求の範囲において、「Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のアミド誘導体の異性体混合物」または「Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)の異性体混合物のアミド誘導体」という表現は交換可能に用いられる。
【0044】
「エナンチオマーC」という表現は、図1のように、ピークCに関連するエナンチオマーのペアを指す。このエナンチオマーCは、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のRRR/SSSエナンチオマーペアに対応する。
【0045】
「RRR/SSSエナンチオマーペア」(またはRRR/SSSエナンチオマー)という表現は、一般に、それらのラセミ混合物を含む、目的化合物のエナンチオマーRRRとその各鏡像異性体SSSの混合物を指す。本明細書において、この表現を、典型的には、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)に関して用い、この化合物のエナンチオマーRRRおよびSSSの混合物(またはそのRRR/SSS混合物)を指す。より具体的には、「Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のRRR/SSSエナンチオマーペア」(または本明細書で交換可能に用いられる「RRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)」)という表現は、例えば以下に示す、[(αR,α’R,α’’R)-α,α’,α’’-トリス(2-カルボキシエチル)-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム(RRRエナンチオマー)および[(αS,α’S,α’’S)-α,α’,α’’-トリス(2-カルボキシエチル)-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム(SSSエナンチオマー)の混合物を指す。
【化12】
【0046】
「化合物D」という表現は、RRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)とイソセリノールとのカップリング反応によって得られるアミド誘導体を指す。
【0047】
「立体選択的合成」(または本明細書で交換可能に用いられる「不斉合成」)という表現は、その意味に、キラリティーの1つ以上の新しい要素が基質分子内に形成され、不等量の立体異性体(エナンチオマーまたはジアステレオマー)を生成する化学反応(または反応シーケンス)を包含する。本明細書において、「立体選択的合成」という表現は、特に、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のRRRおよびその各鏡像異性体SSSに関して用い、2つのエナンチオマーのいずれか一方を、少なくとも55%、好ましくは65%、より好ましくは75%、そして最も好ましくは少なくとも85%を含む錯体を得ることを可能にする合成を指す。
【0048】
本明細書で使用される「薬学的に許容される塩」という用語は、親化合物を、フリーの酸または塩基性基が存在する場合、そのいずれかを薬学的に許容されると慣用的に意図されている任意の塩基または酸との対応する付加塩に変換することによって適切に修飾される、本発明の化合物の誘導体を指す。
【0049】
本発明の塩を調製するために適切に使用することができる無機塩基の好ましいカチオンとしては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウムまたはマグネシウムなどのアルカリまたはアルカリ土類金属のイオンが挙げられる。
【0050】
有機塩基の好ましいカチオンは、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、モルホリン、グルカミン、N-メチルグルカミン、N,N-ジメチルグルカミンなどの一級、二級および三級アミンのものが挙げられる。
【0051】
アミノ酸の好ましいカチオン及びアニオンとしては、例えば、タウリン、グリシン、リジン、アルギニン、オルニチンまたはアスパラギン酸およびグルタミン酸のものが挙げられる。
【0052】
さらに、「部分」、「残基」という用語は、直接または任意の適切なリンカーを介して、分子の残りの部分に適切に結合またはコンジュゲートされた後、その分子の残留部分を定義することを意図するものである。
【0053】
例えば、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のアミド誘導体(RRRまたはSSS異性体の異性体混合物、またはRRR/SSSエナンチオマー混合物またはエナンチオマーペアのいずれかの形態)に関して用いる場合、「残基」という用語は、対応するアミド誘導体を生じるためにアミン基に結合しているGd(PCTA-トリス-グルタル酸)の部分を指す。
【0054】
特に、「Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)の異性体混合物の残基」という用語は、以下の式(III)を有する化合物を指す。
【化13】
【0055】
この残基は、例えば、上記の構造式中、黒丸(●)で示したカルボキシル部分の開結合を介して式-NRで示されるアミノ残基とコンジュゲーションして、次式の対応するアミド誘導体を生じ得る。
【化14】
【0056】
同様に、「Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のRRRおよびSSSエナンチオマーの残基」という用語は、それぞれ、以下の式(IIIA)
【化15】
および式(IIIb)
【化16】
を有する化合物を指す。
【0057】
「残基」という用語は、同様に、RRR/SSSエナンチオマーペア、または一般にエナンチオマー混合物、の対応する残基に適用される。
【0058】
従来技術に開示された非立体選択的合成に従って得られたGd(PCTA-トリス-グルタル酸)の、同じm/z比(Gd(H4L)+:752.14 m/z)を有する4つのピーク(便宜上それぞれA、B、CおよびDとして示す)を分離することを可能にする分取HPLC法が必要とされた。分子内に存在する3つの立体中心(上記の分子構造中アスタリスクで示す)を考慮に入れることにより、Gd(PCTA-トリグルタル酸)錯体のHPLCクロマトグラムの4つのシグナルをそれぞれ、上記Table 1に示した、グルタル酸残基の異なる光学異性体で形成した4つのエナンチオマーペアに割り当てた。
【0059】
Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のラセミ混合物、特にHPLCによって分離されたそれらの4つのエナンチオマーペア、の速度論的不活性度を調べるため、酸性条件下で起こるそれらの解離反応を調べた。疑似一次速度論的条件を保証するために、大過剰のH+([HCl]= 1.0 M)を特に利用した。
【数1】

式中、Lはプロトン化されたPCTA-トリグルタル酸(遊離リガンド)であり、yはリガンドに結合したプロトンの数である。
【0060】
1M HCl中のGd(PCTA-トリス-グルタル酸)(異性体混合物)の溶液を調製し、実施例7に記載するように経時的に分析した。
【0061】
特に、A、B、CおよびDの各ピークの面積値を、HPLCにより経時的に評価した。
【0062】
錯体の酸触媒の解離により、予想通り、ピークA、B、CおよびDの積分面積が減少する一方、フリーのリガンドに対応して新しいシグナルが形成し増大した(m/z: 597.24)。しかし、興味深いことに、シグナルA、B、CおよびDの面積の減少速度が互いに等しくないことがわかった(たとえば、ピークAおよびBの面積の減少は、ピークCおよびDの面積の減少よりも有意に速かった)。
【0063】
したがって、A、B、C、およびDのシグナルの積分面積値の減少を評価し、時間の関数としてプロットした。得られた結果を図7にグラフで示す(4つのピークの挙動の間に存在する観察された違いが強調されている)。
【0064】
Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)錯体の異なるエナンチオマーペアの解離速度と半減期(t1/2=ln2/k)を特徴付けるk疑似一次速度定数(ここで、kはそれぞれ=k、k、kおよびk)を、実施例7で詳細に説明されているように、面積-時間データのペアをフィッティングすることにより計算した。さらに、混合物のパーセント組成を考慮することによってGd(PCTA-トリス-グルタル酸)の異性体混合物の平均半減期の値も得た。得られた結果をTable 2に要約し、いくつかの参照造影剤(例えば、Gd-DOTA(DotaremTM)およびEu(PCTA)(3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9,-三酢酸のユーロピウム錯体)について文献で参照されている対応する値と比較する。
【0065】
これらの結果から、4つのエナンチオマーペアの解離速度が互いにかなり異なることが確認された。
【0066】
特に、ピークCに関連するエナンチオマーペアは、意外にも、他のすべての可能な異性体の中で速度論的不活性度が最も高く、Gdを放出する傾向が最も低い。
【0067】
実際、このエナンチオマーCのペアについて測定されたt1/2値は、たとえばBの約68倍である。さらに、ピークCに関連するエナンチオマーペアのt1/2値は、同じくq=2であるEu(PCTA)について測定された値より大幅に高く(たとえば、Tircso, G. et al. Inorg Chem 2006, 45(23), 9269-80を参照)、例えば最高の安定度と不活性度を有する市販の造影剤であるGd-DOTA(DotaremTM)について文献で報告されているt1/2値と完全に同等である。
【0068】
次に、この化合物が豊富化された画分を、実施例3で詳細に説明されているようにフラッシュクロマトグラフィーにより回収し、少なくとも約90%の純度(HPLC面積%として、図2を参照)でピークCに関連するエナンチオマーペアを達成した。
【0069】
意外にも、回収したエナンチオマーペアについて得られた緩和値は、r = 9.3±0.1mM-1-1であり、EP1931673B1においてGd(PCTA-トリス-グルタル酸)の異性体混合物について(同条件下で)記録されたr1 = 7.2よりも有意に高かった。
【0070】
このエナンチオマーペアによって示される、高い緩和能とより高い不活性度(より高い忍容性をもたらす)の予想外の組み合せは特に興味深い。
【0071】
このように、ピークCに関連するエナンチオマーの組を特定するために努力を費やした。
【0072】
特に、実施例5および6にそれぞれ記載される、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のRRRおよびSSS異性体の立体選択的合成を設定し、通常の逆相HPLCでのピークCの同じHPLC保持時間tを有する主要な化合物を伴う粗製物が得られた。関連する異性体(R)-(-)-5-オキソテトラヒドロフラン-2-カルボン酸を重要な中間体として使用することにより、同じHPLC保持時間を有するGd(PCTA-トリス-グルタル酸)の対応するSSS異性体も得た(図4)。
【0073】
代わりに、メチル(2S)-ブロモグルタル酸塩を使用して実施したGd(PCTA-トリス-グルタル酸)の合成は、従来技術に開示されるラセミ体のメチルブロモグルタル酸塩とともに回収されたものと実質的に区別できない異性体混合物として、錯体を得ることが可能である。
【0074】
次に、ピークCに関連するエナンチオマーペアを、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)の合成されたSSSおよびRRR異性体と比較することにより、特定のキラルHPLC法(ペアの単一エナンチオマーを分離できる)で分析した。得られたクロマトグラム(図5を参照)から、ピークCに関連する2つのエナンチオマーが、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)の合成されたRRRおよびSSS異性体と同じ保持時間を有することが確認された。
【0075】
さらに、結晶は、実施例10に詳細に開示されるように、エナンチオマーペアCとシュウ酸グアニジニウムから形成された。図9からわかるように、単結晶のX線回折により、分子のグルタル酸アームのキラル中心のRRR配置、結晶の各単位格子内のRRRおよびSSS異性体の等モル比の存在が確認され、このペアのRRR/SSSラセミ性が確認された(図10)。
【0076】
これらの結果はすべて一致しており、ピークCに関連する化合物が、実際にはGd(PCTA-トリス-グルタル酸)のRRR/SSSエナンチオマーペア(本明細書中で互換的に用いられる、RRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)からなることが立証される。
【0077】
より具体的には、上記の結果から、本発明によって同定されたピークCに対応する化合物が、次式
【化17】
で示される[(αR,α’R,α’’R)-α,α’,α’’-トリス(2-カルボキシエチル)-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9 式の,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム(またはRRR-Gd(PCTA-トリス-グルタル酸))と、次式
【化18】
で示される、その各鏡像異性体[(αS,α’S,α’’S)-α,α’,α’’-トリス(2-カルボキシエチル)-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム(またはSSS-Gd(PCTA-トリス-グルタル酸))との混合物(あるいは、該混合物は、以下の式Ic
【化19】
によって表される)
を含むと定義することができた。
【0078】
したがって、本発明の一態様は、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のエナンチオマーのRRR/SSSペア、このペアの単一のエナンチオマー、それらの混合物、それらの薬学的に許容される塩、それらのアミド誘導体、およびそれらを含む組成物である。
【0079】
特に、本発明の一実施形態は、以下からなる群から好ましくは選択される化合物に関する:個別のエナンチオマー[(αR,α’R,α’’R)-α,α’,α’’-トリス(2-カルボキシエチル)-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム(RRRエナンチオマー);その各鏡像異性体、すなわち個別のエナンチオマー[(αS,α’S,α’’S)-α,α’,α’’-トリス(2-カルボキシエチル)-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム(SSSエナンチオマー);RRR/SSSエナンチオマーペア;およびその薬学的に許容される塩。
【0080】
好ましい実施形態によれば、本発明は、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のRRR/SSSエナンチオマーペア(あるいは本明細書では、より簡単に「RRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)」と称する)に関するものであり、例えば、本発明の一実施形態による、錯体の2つの個別のRRRおよびSSSエナンチオマーの混合物、それらのラセミ混合物、またはその塩を含んでなる。
【0081】
本発明の別の態様は、上記のエナンチオマーのいずれかが豊富なGd(PCTA-トリス-グルタル酸)、またはそれらの混合物に関する。
【0082】
本発明の異性体、またはエナンチオマー、またはエナンチオマーペア(特に、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)またはそのアミド誘導体を参照する場合)に関して用いられる「豊富化された」という表現は、その意味に、そのような異性体、エナンチオマー、またはエナンチオマーペアが、従来技術の非立体選択的合成手順に従って得られる混合物に通常含まれる量よりも高い量で存在している、異性体の混合物を包含する。
【0083】
そのような豊富化(Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)の異性体、またはエナンチオマーペアに関して)は、例えば、混合物における、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、例えば、少なくとも90%の量の、そのような異性体またはエナンチオマーペアに対応する。
【0084】
特に、本発明の別の態様は、(その異性体組成物に関して、すなわちGd(PCTA-トリス-グルタル酸)の異性体混合物を構成する個別の異性体の合計に対して)少なくとも50%の上記異性体のいずれかを含む、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)の異性体混合物(即ち、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)錯体の少なくとも50%がRRR異性体[(αR,α’R,α’’R)-α,α’,α’’-トリス(2-カルボキシエチル)-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム;またはSSS異性体[(αS,α’S,α’’S)-α,α’,α’’-トリス(2-カルボキシエチル)-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム;またはそれらの混合物;またはその塩(錯体の残りの量は、他の可能な異性体の無差別な混合物によって表される)に関する。
【0085】
したがって、本発明の一実施形態は、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)、またはその塩であって、これらのエナンチオマーのそれぞれのエナンチオマーRRR、またはエナンチオマーSSSまたはこれらエナンチオマーのRRR/SSS混合物は、異性体混合物の少なくとも50%(例えば、モル単位で)を該酸または塩が構成する。
【0086】
好ましくは、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)(上記のエナンチオマーまたはそれらの混合物のいずれか1つ)の豊富化は、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%、例えば、少なくとも90%の豊富化である。
【0087】
より好ましくは、豊富化は、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のRRR/SSSエナンチオマーペアにおける豊富化である。
【0088】
好ましい実施形態では、本発明は、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のRRR/SSSエナンチオマーペア、またはそのRRR/SSSエナンチオマーペアを少なくとも50%含むGd(PCTA-トリス-グルタル酸)の異性体混合物、即ち、錯体の少なくとも50%はRRR/SSSエナンチオマーペアで構成されるGd(PCTA-トリス-グルタル酸)、に関する。
【0089】
RRR異性体[(αR,α’R,α’’R)-α,α’,α’’-トリス(2-カルボキシエチル)-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム、またはこの異性体が豊富化されたGd(PCTA-トリス-グルタル酸)は、例えば、実施例5により詳細に記載されているように、3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15)、11,13-トリエン(または本明細書で交換可能に使用される「ピクレン」)を(2S)-2-[(トリフルオロメチルスルホニル)オキシ]ペンタン二酸ジメチルエステルでアルキル化することを含む立体選択的合成の使用によって調製することができる。
【0090】
同様に、(2R)-2-[(トリフルオロメチルスルホニル)オキシ]ペンタン二酸ジメチルエステル(例えば、実施例6に記載)の代替使用により、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のそれぞれのSSS異性体、または子の異性体が適切に豊富化されたGd(PCTA-トリス-グルタル酸)を得ることができる。
【0091】
Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のRRRおよびSSS異性体の立体選択的合成は新規であり、本発明のさらなる実施形態を構成する。
【0092】
別の実施形態では、本発明は、磁気共鳴画像法(MRI)分析に特に適した造影剤として使用するための、薬学的に許容される塩の形態の、上記のエナンチオマー、エナンチオマーペア、または豊富化されたGd(PCTA-トリス-グルタル酸)に関する。
【0093】
より具体的には、本発明のさらなる実施形態は、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)の個別のエナンチオマーRRR、または個別のエナンチオマーSSS、またはRRR/SSSエナンチオマーペア、またはこれら個別のエナンチオマーのいずれかが少なくとも50%豊富化されているGd(PCTA-トリス-グルタル酸)、好ましくはRRR/SSSエナンチオマー混合物から選択される、特に磁気共鳴画像法(MRI)分析に適した、造影剤として使用するための化合物の薬学的に許容される塩に関する。
【0094】
薬学的に許容される塩の適切な例としては、カリウム、ナトリウム、カルシウムまたはマグネシウムなどのアルカリまたはアルカリ土類金属から選択される無機塩基のカチオン、またはエタノールアミン、ジエタノールアミン、モルホリン、グルカミン、N-メチルグルカミン、N,N-ジメチルグルカミンから選択される有機塩基のカチオン、またはリジン、アルギニン、オルニチンから選択されるアミノ酸のカチオンとの塩が挙げられる。
【0095】
別の態様によれば、本発明は、上記の化合物または異性体混合物のいずれか1つと、好ましくは式NHRで示されるアミンとのコンジュゲートに関する。
【0096】
本発明の一実施形態は、式(II A):
F(NR (II A)
で示される、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のRRRエナンチオマー、SSSエナンチオマー、またはそのような2つのエナンチオマーの混合物のアミド誘導体に関する。
【0097】
本発明の別の実施形態は、式(II B):
F’(NR (II B)
で示される、個別のエナンチオマーRRR、またはエナンチオマーSSS、またはこれらのエナンチオマーの混合物を少なくとも50%含むGd(PCTA-トリス-グルタル酸)のアミド誘導体の異性体混合物に関する。
【0098】
上記の式(II A)および(II B)において、F、F’、RおよびRの意味は、上で定義したとおりである。
【0099】
好ましい例としては、FがGd(PCTA-トリス-グルタル酸)のRRRおよびSSSエナンチオマー残基の混合物(またはRRR/SSSエナンチオマー残基のペア)である上記の式(II A)で示されるアミド誘導体、またはF’が、RRRおよびSSSエナンチオマー残基の混合物を少なくとも50%含むGd(PCTA-トリス-グルタル酸)残基の異性体混合物である、式(II B)で示されるアミド誘導体が挙げられる。
【0100】
好ましい実施形態において、本発明は、F’が、それぞれ式(IIIA)および(IIIB)で示されるRRRおよびSSSエナンチオマー残基の混合物を少なくとも50%含む上記式IIIで示されるGd(PCTA-トリス-グルタル酸)残基の異性体混合物である、上記式(II B)で示されるアミド誘導体に関する。
【0101】
好ましくは、これらのアミド誘導体において、F’は、RRRおよびSSSエナンチオマー残基の混合物が少なくとも60%豊富化されている(すなわち、少なくとも60%含む)、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%、例えば、特に好ましくは、少なくとも90%豊富化されている。適切な例としては、RがHであり、Rが1つ以上の、好ましくは1つまたは2つ、より好ましくは2つのヒドロキシル基で置換されたC-Cアルキルである上記式(II B)で示されるアミド誘導体が挙げられる。
【0102】
好ましい実施形態において、本発明は、F’が上記で定義された式(III)の残基であり、RがHであり、Rが1つまたは2つのヒドロキシル基で置換されているC-Cアルキルである、上記の式(II B)で示されるアミド誘導体の異性体混合物に関する。より好ましくは、Rは、セリノール残基、またはさらにより好ましくは、例えば、Rイソセリノール、Sイソセリノールまたはラセミ体のイソセリノールから選択されるイソセリノール残基である。最も好ましくは、アミド化合物はラセミ体のイソセリノールを有する。
【0103】
例えば、上記の化合物の非限定的で代表的な例としては、以下のものが挙げられる:
次式:
【化20】
で示される、[(αS,α’S,α’’S)-α,α’,α’’-トリス[3-[(2(S)、3-ジヒドロキシプロピル)アミノ]-オキソプロピル]-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15)、11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム(または異性体SSS-SSS);
次式:
【化21】
で示される、-[(αR,α’R,α’’R)-α,α’,α’’-トリス[3-[(2(R),3-ジヒドロキシプロピル)アミノ]-オキソプロピル]-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15)、11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム(または異性体RRR-RRR);
次式:
【化22】
で示される、[(αR,α’R,α’’R)-α,α’,α’’-トリス[3-[(2(S)、3-ジヒドロキシプロピル)アミノ]-オキソプロピル]-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15)、11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム(または異性体RRR-SSS);
次式:
【化23】
で示される、[(αS,α’S,α’’S)-α,α’,α’’-トリス[3-[(2(R),3-ジヒドロキシプロピル)アミノ]-オキソプロピル]-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15)、11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム(または異性体 SSS-RRR);
または、イソセリノール部分がRSR、SSR、SRS、RSS、またはRRSの立体配置であるそれぞれの異性体。
【0104】
イソセリノールを有する式(II B)で示されるアミドは、ガドピクレノールと同じ分子式を有するが、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)の、RRR異性体またはSSS異性体残基、またはより好ましくはRRRとSSSエナンチオマー残基の混合物が少なくとも50%豊富化された中心部分F’を含む。
【0105】
特に、使用するイソセリノールの種類(つまり、RまたはS異性体、またはラセミ体のイソセリノール)に関わらず、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のRRR/SSSエナンチオマーペアとのコンジュゲーションは、図6に示すように、保持時間が同じであるため、HPLCでは区別できない。図6はさらに、この保持時間が、実施例2で異性体混合物として得られたガドピクレノールからHPLCによって分離されたピークD’と同じであることを示している。
【0106】
驚くべきことに、RRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)の改善された特性は、結合したイソセリノールの立体配置に関係なく、イソセリノールとのコンジュゲーション後も実質的に維持される。
【0107】
特に、イソセリノールのRRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)とのコンジュゲーションは、同じ分子式を有するが、従来技術の合成手順で異性体混合物として得られるガドピクレノールのより大きな速度論的不活性度と緩和能を有するアミド誘導体をもたらす。
【0108】
実際に、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)の異性体混合物から分離された4つの異なるエナンチオマーペアの速度論的不活性度を評価するために実施した同じ試験を、実施例2で得られたガドピクレノール(異性体混合物)およびRRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)とそれぞれi)R-イソセリノール、ii)S-イソセリノール;およびiii)ラセミ体のイソセリノールとのコンジュゲーションにより得られたアミド誘導体を使用することによって繰り返した。
【0109】
得られたコンジュゲーション化合物およびガドピクレノール(異性体混合物)の平均半減期は、実施例8に詳細に記載されるように、時間の経過に伴うHPLC総面積の減少を考慮して計算した。RRR/SSS Gd(PCTA -トリス-グルタル酸)とi)R-イソセリノール;ii)S-イソセリノール;iii)ラセミ体のイソセリノールとの反応によって得られたアミド誘導体については、RRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)について実施例7において実施した面積-時間データペアをフィッティングすることにより、k疑似一次速度定数および半減期(t1/2=ln2/k)も計算した。
【0110】
得られた結果をTable 3に要約し、いくつかの参照造影剤(例えばGd-DOTA(DotaremTM)およびEu(PCTA))について文献で参照されている対応する値と比較する。
【0111】
Table 3の片側のデータは、RRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)と、R、Sおよびラセミ体のイソセリノールとカップリングすることによって得られた錯体の、面積値から推定されたt1/2値と、面積時間動態データのフィッティングによって計算されたt1/2値との間に存在する非常に良好な一致を示している。
【0112】
一方、Table 3のデータは、RRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)と、i)R-イソセリノール、ii)S-イソセリノール;iii)ラセミ体のイソセリノールとの反応によって得られたアミド化合物のすべてのt1/2値はいずれもガドピクレノール(異性体混合物)の約8倍であり、RRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)が示す高い速度論的不活性度がイソセリノールとのカップリング後も実質的に維持されていることが確認される。
【0113】
RRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)と、R、Sまたはラセミ体のイソセリノールとのコンジュゲーションから生じる異なる錯体化合物で得られた半減期の値の全体的な一貫性は、イソセリノールペンダントのキラリティーが最終的な錯体の速度論的不活性度に影響を及ぼさないことを示している。さらに、RRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)とR、Sおよびラセミ体のイソセリノールとのコンジュゲーションによって得られた化合物について、ガドピクレノールについて文献で使用されているのと同じ条件下で、r緩和能を測定した。
【0114】
得られた結果をTable 5で比較する。ここでも、付加されたイソセリノールの立体配置に関係なく、RRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)から得られたコンジュゲーション化合物について、水中とHSA中の両方で測定されたr緩和能は、ガドピクレノールについて関連する文献に報告されているものよりも高い。
【0115】
このように、アミド誘導体は、本発明のRRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)とイソセリノールとのコンジュゲーションによって得られ、ガドピクレノール化合物の同じ構造を有するにもかかわらず、改善された速度論的不活性度とより高い緩和能によって特徴付けられる。
【0116】
次に、実施例10に詳細に記載されているように、RRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)とラセミ体のイソセリノールとのコンジュゲーションから生じるアミド誘導体から結晶を得た。炭酸塩アニオンとアミド誘導体との間で形成した三元錯体から得た単結晶のX線回折試験によって、コア分子Cのグルタル酸アームがRRR/SSS配置であることが確認された。
【0117】
回収されたすべての結晶のX線構造と統計分析を図11に示す。
【0118】
個別のRRRまたはSSS異性体の立体選択的合成の結果、およびエナンチオマーペアCと、そのイソセリノールとのコンジュゲートの両方で記録された(結晶)構造は、すべて互いに一致しており、図1のHPLCのピークCに起因する化合物は、事実、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のRRR/SSSエナンチオマーペアに対応することが証明される。
【0119】
Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のRRRおよびSSS異性体の合成は、本発明のさらなる実施形態を表す。
【0120】
特に、本発明の別の実施形態は、
a) 次式
【化24】
で示される(2S)-2-[(トリフルオロメチルスルホニル)オキシ]ペンタン二酸ジメチルエステルを得ること;および
b)回収された(2S)-2-[(トリフルオロメチルスルホニル)オキシ]ペンタン二酸ジメチルエステルで、次式
【化25】
で示される3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15)、11,13-トリエンをアルキル化すること
を含んでなる、異性体[(αR,α’R,α’’R)-α,α’,α’’-トリス(2-カルボキシエチル)-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15)、11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム(RRR異性体)が豊富化されたGd(PCTA-トリス-グルタル酸)の調製のための立体選択的製造法に関する。
【0121】
一実施形態では、この製造法は、錯体の所望のRRR異性体が、少なくとも55%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%、例えば約85%、豊富化されたGd(PCTA-トリス-グルタル酸)を得ることができる。
【0122】
同様に、この製造法のステップa)において(2R)-2-[(トリフルオロメチルスルホニル)オキシ]ペンタン二酸ジメチルエステルを代りに使用することにより、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のそれぞれのSSS異性体、またはこの異性体が適切に豊富化されたGd(PCTA-トリス-グルタル酸)を得ることができる。
【0123】
さらに別の実施形態では、本発明は、好ましくは、アミド誘導体などのその誘導体の調製における中間体として使用するための、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のエナンチオマーのRRR/SSSペア、またはこのエナンチオマーペアが少なくとも50%豊富化されたGd(PCTA-トリス-グルタル酸)に関する。
【0124】
本発明のさらに別の実施形態は、
a)Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のRRR、またはSSS異性体、またはそれらの混合物を得ること;および
b)ステップa)で得られた異性体または異性体の混合物を所望のアミド誘導体に変換すること
を含んでなる、式(II A)
F(NR (II A)
[式中、F、R、およびRは上記のとおりである]
で示されるGd(PCTA-トリス-グルタル酸)のアミド誘導体の合成による製造法に関する。
【0125】
Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のRRRまたはSSS異性体を得る本製造法のステップa)は、例えば、上記のとおりに、そして例えば実施例5および6に詳細に記載されるとおりに実施される。。
【0126】
一方、この製造法のステップb)は、例えば、上記に引用された従来技術で報告されている従来の手順に従って実施することができる。
【0127】
本発明のさらなる態様は、
a’)個別のエナンチオマーRRR、またはSSS、または好ましくはそれらの混合物を少なくとも50%含むGd(PCTA-トリス-グルタル酸)の異性体混合物を得ること;および
b’)ステップa’)で得られたGd(PCTA-トリス-グルタル酸)の異性体混合物を、目的のアミド誘導体の対応する異性体混合物に変換すること
を含んでなる、上記の式(II B)
F(NR (II B)
[式中、F’、R、およびRは上記のとおり]
で示されるGd(PCTA-トリス-グルタル酸)のアミド誘導体の異性体混合物の合成調製のための製造法に関する。
【0128】
例えばGd(PCTA-トリス-グルタル酸)のRRR/SSSエナンチオマーペアを少なくとも50%含むGd(PCTA-トリス-グルタル酸)の異性体混合物を得る、この製造法のステップa’は、例えば実施例3に開示されるように、既知の手順で異性体混合物として得られたGd(PCTA-トリス-グルタル酸)を出発物質として、例えば分取HPLCまたはフラッシュクロマトグラフィーを含むクロマトグラフィーによって得ることができる。
【0129】
一方、ステップa’)から回収されたGd(PCTA-トリス-グルタル酸)の豊富化された異性体混合物を目的のアミンとカップリングすることを含む本製造法のステップb’)は、例えば上記で引用した従来技術で報告されている従来の手順に従って実施することができる。
【0130】
例えば、ステップa’)から回収された生成物は、例えば実施例4で詳細に記載されている合成手順を使用することにより、イソセリノールと反応させることができる。
【0131】
本発明の更なる実施形態は、造影剤として使用するための、特に磁気共鳴画像法(MRI)分析に適した、上記式(II A)または(II B)で示されるアミドに関する。
【0132】
特に、別の実施形態では、本発明は、ヒトまたは動物の体の器官、組織または領域、また生きている哺乳類の患者(好ましくはヒトの患者)から得られた細胞、生体液および生体組織を含む生体サンプル、のMRI技術を使用することによる、インビボまたはインビトロ、エクスビボのいずれかでの画像診断に使用するための医薬製剤の調製のための、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)の個別のRRRまたはSSSエナンチオマー、そのようなRRR/SSSエナンチオマーの混合物、個別のRRRまたはSSSエナンチオマーのいずれかが50%豊富化されたGd(PCTA-トリス-グルタル酸)の異性体混合物またはその混合物、それらの薬学的に許容される塩、式(IIA)または(II B)で示されるそのアミド誘導体からなる群から選択される化合物に関する。
【0133】
本発明のさらなる態様は、1つ以上の生理学的に許容される賦形剤、希釈剤または溶媒と混合して、本発明の上記の異性体化合物または異性体混合物の少なくとも1つ、または上記のような薬学的に許容される塩またはアミド誘導体を含んでなる、診断のための医薬組成物に関する。
【0134】
好ましくは、医薬組成物は、上記の式(II A)で示されるアミド誘導体
(該式(II A)においてFは、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のRRR/SSSエナンチオマーペアの残基である);または、
より好ましくは、上記式(II B)で示されるアミド誘導体の異性体混合物
(式(II B)において、F’は、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のRRR/SSSエナンチオマーペアが少なくとも50%豊富化されており、-NRはイソセリノール残基である)
を含んでなる。
【0135】
好ましい実施形態では、医薬組成物は、式
【化26】
で示される、イソセリノールとコンジュゲートした、式(II B)中のF’が、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のRRR/SSSエナンチオマーペアが少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%豊富化された、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)の残基である、アミド化合物を含む。
【0136】
更なる態様では、本発明は、1つ以上の製薬上許容される賦形剤、希釈剤または溶媒と組み合わせて、有効量の、上記のような本発明の少なくとも1つの異性体化合物または異性体混合物、またはその医薬的に許容される塩、またはそのアミド誘導体を含むMRI造影媒体に関する。
【0137】
この範囲で、そして特に定めがない限り、本明細書で使用される「有効量」または「有効用量」という用語は、本発明のGd(PCTA-トリス-グルタル酸)またはその薬学的に許容される塩、または 式(II A)または(II B)で示されるそのアミド誘導体またはその医薬組成物の、その意図された診断目的:すなわち、例えば、エクスビボで細胞、生体液および 生物学的組織を含む生物学的要素を視覚化するため、または患者の体の器官、組織または領域のインビボでの画像診断を達成するのに十分な任意の量を意味する。
【0138】
特に記載しない限り、本明細書で使用される「個別の患者」または「患者」という用語は、生きているヒトまたは動物の患者、好ましくはMR診断評価を受けているヒトを指す。
【0139】
投与量、剤形、投与様式、薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、アジュバントなどに関する詳細は、当分野において知られている。
【0140】
本発明の好ましい化合物の非限定的な例、それらの調製手順、およびそれらの特徴付けは、その範囲を限定することなく本発明をより詳細に説明することを目的として、以下のセクションに記載される。
【0141】
実験パート
得られた化合物のHPLCキャラクタリゼーション
一般的手順
手順1:Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のHPLCキャラクタリゼーション(異性体混合物および個別の/豊富化された異性体)
実施例1から異性体混合物として得られたGd(PCTA-トリス-グルタル酸)のHPLCキャラクタリゼーションは、Agilent 1260 Infinity IIシステムを用いて実施された。HPLC測定の実験設定を以下に要約する。

分析条件
HPLCシステム クォータナリポンプ、デガッサ-、オートサンプラー、PDA検出器を
備えたHPLC(Agilent 1260 Infinity IIシステム)
固定相:Phenomenex Gemini(登録商標) 5μm C18 110Å
移動相:H2O/HCOOH 0.1%:メタノール
【表2】
【0142】
手順2:ガドピクレノール(異性体混合物)およびエナンチオマーペアCとR、S、またはラセミ体イソセリノールとのカップリングによって得られた化合物のHPLCキャラクタリゼーション
実施例2から得られた異性体混合物として、またはGd(PCTA-トリス-グルタル酸)のエナンチオマーペアCとR、S、またはラセミ体イソセリノールとのコミュニケーションによって得られた化合物としてのガドピクレノールのHPLCキャラクタリゼーションは、Thermo Finnigan LCQ DECA XPPlusシステムを用いて行った。HPLC測定の実験設定を以下に要約する。
分析条件
HPLCシステム クォータナリポンプ、デガッサ-、オートサンプラー、PDA検出器を
備えたHPLC(LCQ Deca XP-Plus-Thermo Finnigan)
固定相:Phenomenex Gemini(登録商標) 5μm C18 110Å
移動相:H2O/TFA 0.1%:アセトニトリル/0.1%TFA
【表3】
得られたHPLCクロマトグラムを図6に示す。
【0143】
手順3:化合物Cのエナンチオマーを分離するためのキラルHPLC法
実施例3の記載のとおり調製したエナンチオマーペアC(化合物VI)のRRRおよびSSSエナンチオマーを分離するために、特異的キラルHPLC法を設定した。エナンチオマーの分離とキャラクタリゼーションは、Agilent 1200システムまたはWaters Alliance 2695システムを用いて実施した。HPLC測定の実験設定を以下に要約する。

分析条件
HPLCシステム クォータナリポンプ、デガッサ-、オートサンプラー、PDA検出器を
備えたHPLC
固定相:SUPELCO Astec CHIROBIOTIC 5 μm 4.6x250mm
移動相:H2O/HCOOH 0.025% : アセトニトリル
溶出: アイソクラチック2% アセトニトリル(30分間)
流速 1 mL/分
カラム温度 40℃
検出 210-270 nm.
得られたHPLCクロマトグラムを図5a)に示す。純粋なRRRエナンチオマー(実施例5の化合物XII、Tr.7.5分)、および純粋なSSSエナンチオマー(実施例6の化合物XVII、Tr.8.0分)のクロマトグラムとの比較を、それぞれ図5b)と5c)に示す。
【0144】
実施例1:Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)の合成(異性体混合物)
立体異性体の無差別混合物としてのGd(PCTA-トリス-グルタル酸)は、以下の合成スキーム1に従って、上記の従来技術で報告された手順を使用することによって調製した。
【化27】
【0145】
a)化合物IIの調製
ラセミ体のグルタミン酸(33.0 g、0.224 mol)と臭化ナトリウム(79.7 g、0.782 mol)を2MのHBr(225 mL)に懸濁した。懸濁液を-5℃に冷却し、内部温度を0℃未満に維持しながらNaNO2(28.0 g、0.403 mol)を2.5時間かけてゆっくりと少しずつ加えた。黄色の混合物を-5℃の温度でさらに20分間撹拌したのち、濃硫酸(29mL)を混合物に滴下した。得られた暗褐色の混合物を室温に温め、ジエチルエーテル(4x150mL)で抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、褐色の油(21.2 g)に濃縮し、さらに精製することなく次のステップで使用した。
この油をエタノール(240mL)に溶解し、得られた溶液を氷で冷却し、塩化チオニル(14.5mL、0.199mol)をゆっくりと加えた。わずかに黄色の溶液を室温で2日間撹拌した。次に、溶媒を真空で留去し、粗製の油をジクロロメタン(200mL)に溶解し、5%NaHCO3(4x50 mL)水溶液、水(1x50 mL)およびブライン(1x50 mL)で洗浄した。有機相を濃縮し、シリカ上で石油エーテル-酢酸エチル3:1で溶出して精製し、19.5gの純粋な生成物を得た。(収率33%)。
【0146】
b)化合物IVの調製
アセトニトリル(40mL)中の化合物II(17.2g、0.0645mol)の溶液を、アセトニトリル(150mL)中の3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン(ピクレン)化合物(III)(3.80g、0.018mol)およびK2CO3(11.2g、0.0808mol)の懸濁液に加えた。黄色の懸濁液を65℃で24時間加熱した後、塩を濾別し、有機溶液を濃縮した。オレンジ色の油をジクロロメタンに溶解し、生成物を1MのHCl(4x50mL)で抽出した。水相を合わせ、氷中で冷却し、30%NaOH水溶液でpH7~8にした。次に、生成物をジクロロメタン(4x50 mL)で抽出し、濃縮して、褐色の油(10.1 g、収率73%)を得た。この化合物をさらに精製することなく次のステップで使用した。
【0147】
c)化合物Vの調製
化合物IV(9.99 g、0.013 mol)をエタノール(40 mL)および5MのNaOH(40 mL)に溶解した。茶色の溶液を80℃で23時間加熱した。エタノールを濃縮し、溶液を氷中で冷却し、濃塩酸でpH2にした。リガンドを樹脂Amberlite XAD 1600で精製(水-アセトニトリル混合物で溶出)し、凍結乾燥後に白色固体として5.7 gを得た(収率73%)。生成物は、HPLCでいくつかのピークによって特徴づけた。
【0148】
d)化合物VIの調製
化合物V(5.25g、0.0088mol)を脱イオン水(100mL)に溶解し、溶液を2MのNaOH(20mL)でpH7にした。GdCl3溶液(0.0087 mol)を室温でゆっくりと加え、2MのNaOHでpHを7に調整し、キシレノールオレンジとの錯体形成を確認した。錯体形成が完了したら、塩と不純物を除去するために、溶液を濃縮し、樹脂Amberlite XAD1600上、水-アセトニトリル勾配で溶出して精製した。凍結乾燥後、純粋な化合物が白色固体として得られた(6.79g、収率94%)。生成物はHPLCで特徴づけた。いくつかのピークを特徴付けられる得られたHPLCクロマトグラムを、図1に示す。
【0149】
L-グルタミン酸から得られた(S)-メチルα-ブロモグルタレートを使用することでも、図1と実質的に重ね合わせ可能なHPLCクロマトグラムを有する異性体混合物からなる化合物VIと完全に同等の化合物が得られる。
【0150】
実施例2:ガドピクレノール(異性体混合物)の合成
立体異性体の無差別混合物としてのガドピクレノールは、EP11931673B1に開示されるように、以下の合成スキーム2に従って、実施例1から得られたGd(PCTA-トリス-グルタル酸)の異性体混合物をラセミ体イソセリノールとカップリングすることにより調製した。
【化28】
【0151】
化合物VIIの調製
実施例1から得られた化合物VI(0.90g、0.0011mol)を、濃HClでpH6に調整した水中のラセミ体イソセリノール(0.40g、0.0044mol)の溶液に加えた。次に、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI・HCl)(1.0g、0.0055mol)およびヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)(0.12g、0.00088mol)を加え、得られた溶液を室温にてpH6で24時間撹拌した。次いで、生成物を水/アセトニトリル勾配で溶出する、シリカC18での分取HPLCで精製した。純粋な化合物を含む画分を濃縮し、凍結乾燥して、白色の固体(0.83 g、収率78%)を得た。生成物はHPLCで特徴づけた。得られたHPLCクロマトグラムを図4aに示す。
【0152】
実施例3:ピークCに関連するエナンチオマーペアの単離
実施例1(ステップd)に記載したとおりに得られた化合物VI(1.0g、0.0013mol)を水(4mL)に溶解し、溶液を濃塩酸でpH2~3に酸性化した。得られた溶液を、あらかじめ充填されたシリカC18(Biotage(登録商標)SNAPULTRAC18 120 g、HP-sphereC18 25μm)のカラムにロードし、脱イオン水(4 CV)次いでアセトニトリルのゆっくりとした勾配で溶出する自動フラッシュクロマトグラフィーシステムで精製した。ピークCに関連するエナンチオマーペアの豊富化された画分を合わせ、濃縮し、凍結乾燥して、白色の固体(200mg)を得た。
得られた豊富化されたエナンチオマーペアCのHPLCクロマトグラムを図2に示す。
対応するMSスペクトル(Gd(H4L)+:752.14 m/z)を図3に示す。
【0153】
実施例4:エナンチオマーペアCとイソセリノールとのカップリング
a)エナンチオマーペアCとR-イソセリノールのカップリング
例えば実施例3のように回収した豊富化されたエナンチオマーペアC(34mg、力価90%、0.040mmol)を脱イオン水(5mL)に溶解し、R-イソセリノール(16mg、0.17mmol)を加え、HCl 1MでpHを6に調整した。次に、EDCI・HCl(39mg、0.20mmol)およびHOBT(3mg、0.02mmol)を加え、溶液を室温でpH6にて48時間撹拌した。溶液を濃縮し、事前に充填されたシリカC18カラム(Biotage(登録商標)SNAP ULTRA C18 12 g、HP-sphereC18 25μm)にロードし、自動フラッシュクロマトグラフィーシステムを使用して水/アセトニトリルグラジエントで溶出した。純粋な生成物を含む画分、またはHPLCで面積が90%を超える主要ピークを示す画分を合わせ、濃縮し、凍結乾燥して、白色の固体(21 mg、収率54%)を得た。
得られた生成物のHPLCクロマトグラムを図6bに示す。
【0154】
b)エナンチオマーペアCとS-イソセリノールのカップリング
例えば実施例3に記載のとおりに回収した豊富化されたエナンチオマーペアC(55mg、力価90%、0.066mmol)を脱イオン水(5mL)に溶解し、S-イソセリノール(34mg、0.29mmol)を1MのHClで6に調整して加えた。次に、EDCI・HCl(64mg、0.33mmol)およびHOBT(4.5mg、0.033mmol)を加え、溶液を室温でpH6にて48時間撹拌した。溶液を濃縮し、事前に充填されたシリカC18カラム(Biotage(登録商標)SNAP ULTRA C18 12 g、HP-sphere C18 25μm)にロードし、自動フラッシュクロマトグラフィーシステムを使用して水/アセトニトリルグラジエントで溶出した。純粋な生成物を含む画分、またはHPLCで面積が90%を超える主要ピークを示す画分を合わせ、濃縮し、凍結乾燥して、白色の固体(52 mg、収率81%)を得た。
得られた生成物のHPLCクロマトグラムを図6cに示す。
【0155】
c)エナンチオマーペアCとラセミ体イソセリノールのカップリング
例えば実施例3に記載の通りに回収した豊富化されたエナンチオマーペアC(54mg、力価90%、0.065mmol)を脱イオン水(5mL)に溶解し、ラセミ体イソセリノール(27mg、0.29mmol)を1MのHClでpH6に調整して加えた。次に、EDCI・HCl(62mg、0.32mmol)およびHOBT(4.3mg、0.032mmol)を加え、溶液を室温でpH6にて24時間撹拌した。溶液を濃縮し、事前に充填されたシリカC18カラム(Biotage(登録商標)SNAP ULTRA C18 12 g、HP-sphere C18 25μm)にロードし、自動フラッシュクロマトグラフィーシステムを使用して水/アセトニトリルグラジエントで溶出した。純粋な生成物を含む画分、またはHPLCで面積が90%を超える主要ピークを示す画分を合わせ、濃縮し、凍結乾燥して、白色の固体(60 mg、収率95%)を得た。
得られた生成物のHPLCクロマトグラムを図6dに示す。
【0156】
実施例5:RRR Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)(化合物XII)の立体選択的合成
RRR豊富化Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)酸は、以下のステップを含んでなる合成スキーム3に従って調製した。
【化29】
【0157】
a)化合物VIIIの調製
調製は、Tetrahedron 2009、65、4671-4680で報告されているように実行した。
具体的には、無水メタノール(20mL)中の(S)-(+)-5-オキソテトラヒドロフラン-2-カルボン酸(2.48g、0.019mol)(市販)の溶液に37%HCl水溶液(50μL)を加えた。溶液をN2雰囲気下で24時間還流した。氷中で冷却した後、NaHCO3を加え、懸濁液を濾過し、濃縮し、ヘキサン/酢酸エチル1:1を用いてシリカゲル上で精製した。純粋な生成物を含む画分を合わせて濃縮し、無色の油(2.97 g、収率89%)を得た。
【0158】
b)化合物IXおよびXの調製
ステップa)で得られた化合物VIII(445mg、2.52mmol)を無水ジクロロメタン(6mL)に溶解し、トリエチルアミン(0.87mL、6.31mmol)を加えた。溶液を-40℃に冷却した後、(トリフルオロメタンスルホン酸)トリフルオロメタンスルホン酸無水物(0.49mL、2.91mmol)をゆっくりと加えた。暗色の溶液を-40℃で1時間撹拌した後、無水ジクロロメタン(3mL)およびトリエチルアミン(1mL、7.56mmol)中の化合物III(104mg、0.506mmol)の溶液を加え、溶液をゆっくりと室温に戻し、室温で一晩撹拌した。次に、有機溶液を2MのHCl(4×10mL)で洗浄し、水相を再びジクロロメタン(3×10mL)で抽出した。有機相を合わせて真空中で濃縮し、400mgの褐色の油を得て、これをさらに精製することなく次のステップで使用した。
【0159】
c)化合物XIの調製
化合物X(400mg、0.59mmol)をメタノール(2.5mL)および5MのNaOH(2.5mL)に溶解した。完全な加水分解を確実にするために、茶色の溶液を80℃で22時間加熱した。メタノールを濃縮し、溶液を濃HClでpH 1にし、シリカC18プレパックカラム(Biotage(登録商標) SNAP ULTRA C18 12 g、HP-sphere C18 25μm)を備えた自動フラッシュクロマトグラフィーシステムを用い脱イオン水/アセトニトリルの勾配で溶出して精製した。純粋な生成物を含む画分を合わせ、濃縮し、凍結乾燥した(64 mg、収率18%)。HPLCは主要ピークを示した。
【0160】
d)化合物XII
化合物XI(32 mg、0.054 mmol)を脱イオン水(4 mL)に溶解し、1MのNaOHでpHを7に調整した。GdCl3・6H2O(20 mg、0.054 mmol)を加え、0.1MのNaOHでpHを7に調整した。透明な溶液を室温で一晩撹拌し、錯体形成の終了をキシレノールオレンジおよびHPLCによってチェックした。粗生成物のHPLCは、主要ピークとして所望のRRR異性体を示した:面積%で約80%。混合物を濃HClでpH2にし、シリカC18プレパックカラム(Biotage(登録商標) SNAP ULTRA C18 12 g、HP-sphere C18 25μm)を備えた自動フラッシュクロマトグラフィーシステムを用い、脱イオン水/アセトニトリルグラジエントで溶出して精製した。純粋な生成物を含む画分を合わせ、濃縮し、凍結乾燥した(36 mg、収率90%)。
例えば、実施例2の手順を使用することにより、回収した化合物とイソセリノールとの反応により、対応するRRRアミド誘導体を得ることができる。
【0161】
実施例6:SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)(化合物XVII)の立体選択的合成
SSS豊富化Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)酸は、以下のステップを含んでなる合成スキーム4に従って同様に調製した。
【化30】
【0162】
a)化合物XIIIの調製
無水メタノール(45mL)中の(R)-(-)-5-オキソテトラヒドロフラン-2-カルボン酸(5.0g、0.038mol)(市販)の溶液に37%HCl水溶液(100μL)を加えた。溶液をN2雰囲気下で24時間還流した。氷中で冷却した後、NaHCO3を加え、懸濁液を濾過し、濃縮し、シリカゲル上でヘキサン/酢酸エチル1:1で精製した。純粋な生成物を含む画分を合わせて濃縮し、無色の油(6.7g、収率99%)を得た。
【0163】
b)化合物XIVおよびXVの調製
化合物XIII(470mg、2.67mmol)を無水ジクロロメタン(6mL)に溶解し、トリメチルアミン(0.93mL、6.67mmol)を加えた。溶液を-40℃に冷却した後、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(0.50 mL、3.07 mmol)をゆっくりと滴下した。暗色の溶液を-40℃で1時間撹拌した後、化合物III(140mg、0.679mmol)およびトリメチルアミン(0.93mL、6.67mmol)を加え、溶液をゆっくりと一晩室温にした。次に、有機溶液を水(3×5mL)および2MのHCl(4×5mL)で洗浄した。水相を再びジクロロメタン(3x10mL)で抽出した。有機相を合わせて真空中で濃縮し、350mgの褐色の油を得、これをさらに精製することなく次のステップで使用した。
【0164】
c)化合物XVIの調製
化合物XV(350 mg、0.514 mmol)をメタノール(4.5 mL)および5MのNaOH(4.5 mL)に溶解した。得られた褐色の溶液を80℃で16時間加熱して、完全に加水分解した。メタノールを濃縮し、溶液を濃HClでpH 2にし、シリカC18プレパックカラム(Biotage(登録商標) SNAP ULTRA C18 12 g、HP-SPHERE C18 25μm)を備えた自動フラッシュクロマトグラフィーシステムを用い、水/アセトニトリルの勾配で溶出して精製した。純粋な生成物を含む画分を合わせ、濃縮し、凍結乾燥した(52 mg、収率17%)。HPLCは主要ピークを示した。
【0165】
d)化合物XVIIの調製
化合物XVI(34 mg、0.057 mmol)を脱イオン水(5 mL)に溶解し、1MのHClでpHを7に調整した。GdCl3・6H2O(20 mg、0.0538 mmol)を加え、0.1 MのNaOHでpHを7に調整した。溶液を室温で一晩撹拌し、錯体形成の終了をキシレノールオレンジおよびHPLCによってチェックした。粗生成物のHPLCは、主要ピークとして所望のSSS異性体を示した:面積%で約85%。溶液を濃HClでpH2.5にし、シリカC18プレパックカラム(Biotage(登録商標) SNAP ULTRA C18 12 g、HP-SPHERE C18 25μm)を備えた自動フラッシュクロマトグラフィーシステムを用い、水/アセトニトリル勾配で溶出して精製した。純粋な生成物SSSを含む画分を合わせ、濃縮し、凍結乾燥した(39 mg、収率87%)。
【0166】
実施例7:1.0M HCl溶液(25℃)中のGd(PCTA-トリス-グルタル酸)(異性体混合物)の解離反応の速度論的試験
Gd(III)錯体の速度論的不活性度は、0.1~1.0M HClで測定された解離速度、または溶液中でZn(II)とCu(II)またはEu(III)イオンで生じる金属交換反応の速度のいずれかによって特徴づけられる。ただし、マクロ環配位子で形成したランタニド(III)錯体の解離は非常に遅く、一般にZn2+やCu2+などの内因的金属イオンの関与なしにプロトン支援の経路を介して進行する。
錯体Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)の速度論的不活性度を、1.0M HCl溶液中で起こる解離反応の速度によって特徴づけた。錯体(実施例1の異性体混合物)(0.3mg)を2.0mLの1.0M HCl溶液に溶解し、25℃に保たれた溶液の発生を経時的にHPLCによって追跡した。HPLC測定は、分析手順1を使用して、Agilent 1260 InfinityIIシステムで実行した。
【0167】
大過剰のH+([HCl]= 1.0 M)の存在は、疑似一次速度論的条件を保証する。
【数2】
式中、Lはプロトン化されたPCTA-トリグルタル酸(遊離リガンド)であり、yはリガンドに結合したプロトンの数である。
【0168】
Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のHPLCクロマトグラムは、MSスペクトルで同じm/z比(Gd(H4L)+:752.14 m/z)を有する4つのシグナル(A、B、C、およびD)の存在で特徴付けられる。これらのピークのそれぞれは、Table 1に示した、分子の3つのグルタル酸アーム上の3つの立体中心によって生じた4対のエナンチオマーの1つに合理的に起因する。1.0M HClの存在下でのこの錯体のHPLCクロマトグラムは 時間経過とともに変化し、特に、異なるピークでは同じようにではないがピークA、B、CおよびDの面積は減少する一方、非錯体化ジアステレオ異性体に対応する新しいシグナルが形成され、時間経過とともに増大する。ピークの積分面積の減少の違いは、異なるピークに関連するエナンチオマーペアの異なる解離速度によって解釈できる。
【0169】
[H+]が過剰に存在する場合、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のエナンチオマーペアの解離反応は疑似一次製造法として扱うことができ、反応速度は次の式2で表すことができる(ここで、kA、kB、kC、およびkDは、面積と時間のデータペアをフィッティングすることによって計算される疑似1次速度定数であり,[A]t、[B]t、[C]t、および[D]tは、時間tにおけるA、B、C、およびD化合物の総濃度である)。
【数3】
A、B、C、およびDのシグナルの面積値の減少を評価し、時間経過に対してプロットした。時間の関数としてのA、B、C、およびDシグナルの面積値を図7に示す。
【0170】
時間tでの面積値は、次の式で表すことができる。
【数4】
(式中、At、A0、およびAeは、それぞれ、時間t、反応開始時、反応終了時での面積値である)。Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)錯体の異なるエナンチオマーペアの解離速度を特徴づけるkX疑似一次速度定数(kX = kA、kB、kCおよびkD)は、図7の面積-時間データペアを上記の式3でフィッティングすることによって計算した。このようにkX速度定数と半減期(t1/2 = ln2/kX)が得られ、混合物のパーセント組成を考慮することによりGd(PCTA-トリス-グルタル酸)の異性体混合物の平均半減期値が得られる。して計算される。得られた値を次のTable 2に示し、いくつかの参照造影剤(Gd-DOTAまたはDOTAREMTM)について文献で参照されている対応する値と比較する。
【表4】
Table 2の結果は、ピークCに関連するエナンチオマーのペアの酸触媒による解離を特徴づけるkX速度定数が、ピークA、B、およびDに関連するGd(PCTA-トリス-グルタル酸)錯体の立体異性体の速度定数よりも大幅に小さいことを明確に示している。Table 2に示されている半減期値(t1/2)の比較は、ピークC(Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)に関連するエナンチオマーペアのt1/2値が、ピークA、B、およびDに関連付けられた値のt1/2値よりもそれぞれ約28、68、および8倍高くなっていることを示している。さらに、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のエナンチオマーペアCのt1/2値は、Gd(DOTA)のt1/2値よりもいくらか高くなっている(1.0 M HCl中でt1/2 = 23時間)。
【0171】
実施例8:ガドピクレノール(実施例2の異性体混合物)、およびエナンチオマーペアCをそれぞれR、S、およびラセミ体イソセリノールとカップリングすることによって得られる錯体化合物の1.0M HCl溶液(25℃)中での解離反応の速度論的試験
すべての錯体の速度論的不活性度を、1.0 MHCl溶液中で起こる解離反応の速度によって特徴づけた。各バッチについて、錯体(0.4 mg)を2.0mLの1.0M HCl溶液に溶解し、25℃での解離反応をHPLCで経時的に追跡した。分析手順2に従って、Thermo Finnigan LCQ DECA XPPlusシステムを使用してHPLC測定を実行した。
【0172】
実施例2から異性体混合物として回収されたガドピクレノールのHPLCクロマトグラムは、同じMSおよびUV-Visスペクトルを有する4つの主要ピーク(便宜上、A’、B’、C’およびD’として示される)の存在によって特徴づけられる。ただし、エナンチオマーペアCをイソセリノールとカップリングして得られた錯体化合物のHPLCクロマトグラムには、R、Sイソセリノール、ラセミ体イソセリノールのいずれであっても、シグナルは1つしかなかった(図6)。観察されたように、イソセリノールペンダントのキラリティーは結合させたジアステレオ異性体の保持時間に影響しない、ガドピクレノール(異性体混合物)のHPLCクロマトグラムに4つのシグナルが存在することは、グルタル酸残基の立体中心で形成された4つのエナンチオマーペア:1)RRR-SSS(シグナルD’)、2)RSR - SRS、3)RRS - SSR、4)RSS -SRRの存在によって解釈できる。
【0173】
上記のすべての錯体の速度論的不活性度に関する情報を得るため、疑似一次条件の発生を確実にするために、大過剰のH+([HCl]= 1.0 M)の存在下でそれらの解離反応を調べた。反応の進行を経時的にHPLCによってチェックし、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)異性体について上記の実施例7に記載したように、時間の関数として錯体のピークの面積値をプロットした。
【0174】
予想通り、A’、B’、C’およびD’の積分値は時間経過とともに減少するが、フリーのリガンドのピークは増大する。HPLCクロマトグラムの面積値はガドピクレノール(異性体混合物)の濃度に正比例するため、ガドピクレノール(異性体混合物)の解離反応の半減期は、面積値の合計の半分から推定できる。ガドピクレノール(異性体混合物)の半減期は、25℃およびpH 0(1.0 M HCl)で5.2時間であることが分かった。エナンチオマーペアCをR、Sおよびラセミ-イソセリノールとカップリングすることによって得られた錯体の半減期も、HPLCクロマトグラムの面積値の半分から計算した。エナンチオマーペアCをR、Sおよびラセミ-イソセリノールとカップリングすることによって得られた錯体の半減期は、25℃およびpH 0(1.0 M HCl)で41、43、および44時間であることが分かった。エナンチオマーペアCをR、Sおよびラセミ-イソセリノールとカップリングすることによって得られる錯体の解離反応の速度を特徴づける疑似一次速度定数(kx)は、面積-時間速度論データを上記のように式3
【数5】
(式中、At、A0、およびAeは、それぞれ、時間t、反応開始時、反応終了時での面積値であり、kXはエナンチオマーペアCをR、Sおよびラセミ-イソセリノールとカップリングすることによって得られる錯体の酸触媒による解離反応を特徴づける疑似一次速度定数(半減期: t1/2, t1/2=ln2/kX)である)を用いてフィッティングすることにより計算できる。速度論データのフィッティングによって得られたkxおよびt1/2値を、以下のTable に要約し、いくつかの参照造影剤について文献に引用されている対応する値と比較した。
【0175】
エナンチオマーペアCをR、Sおよびラセミ-イソセリノールとカップリングすることによって得られた錯体の面積値から推定し、面積-時間速度論データのフィッティングによって計算したt1/2値の比較は非常によく一致している。Table 3に示されているt1/2値は、エナンチオマーペアC異性体をR、S、およびラセミ体イソセリノールとカップリングすることによって得られたD’異性体の解離半減期が、ガドピクレノール(異性体混合物)で測定されたものとほぼ同じであり、8倍長いことを明確に示している、このことから、RRR-SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のより高い動的不活性度が、イソセリノールとのカップリング後でも実質的に維持されていることが確認される。さらに、エナンチオマーペアCをR、S、およびラセミ体イソセリノールとカップリングすることによって得られた錯体のt1/2値は、イソセリノールペンダントのキラリティーが最終の錯体の動的不活性度に影響を与えないことも示している。
【表5】
【0176】
実施例例9:緩和特性
本発明のPCTAベースの錯体化合物の緩和測定特性は、異なる磁場強度、すなわち、0.47および1.41Tで、37℃にて、異なる媒体(水およびヒト血漿)中で測定し、同じ条件で、類似の配位ケージを有するGd-錯体について測定された緩和値と比較した。
【0177】
材料
装置
縦方向の水プロトン緩和率(R1 = 1/T1)は、20MHzのプロトンラーモア周波数で動作するMinispec MQ-20分光計(Bruker Biospin、ドイツ)を使用して0.47Tで測定した。1.41 TでのMR実験は、60MHzのプロトンラーモア周波数で動作するMinispec MQ-60分光計(Bruker Biospin、ドイツ)を使用して実行した。
方法
サンプル前処理
すべての試験品は、供給されたまま使用し、必要な量の常磁性キレート錯体を秤量し、選択された培地(水またはヒト血漿)で希釈することにより、5または10 mMの開始溶液を得た。

緩和能測定
各媒体について5つの異なる濃度サンプル(0.1、0.25、0.5、0.75、および1 mM)を、5または10mMの開始溶液をさらに希釈することによって調製した。

緩和度の測定
緩和度の測定は、分光計のサンプルホルダーに接続された恒温槽によって一定に保たれた37℃のプリセット温度サンプルで0.47Tおよび1.41Tにて実行した。5つのサンプル溶液は、外部恒温槽で37℃に予熱された後、温度が安定するように内部槽内に10分間放置した。縦緩和時間T1は、標準的な反転回復シーケンスを使用して測定した。ここで、反転時間(TI)は、15ステップで10msからT1の少なくとも5倍まで変化させた。統計分析(T1測定のための単指数フィッティング、縦緩和能の評価のための線形フィッティング)はMathematica(登録商標)(Wolfram、USA)によって実行した。推定されたパラメータの誤差は、フィッティング手順によって評価した。
【0178】
結果
以下のTable 4は、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)(異性体混合物)についてEP 1931673 B1で報告されたの緩和値r1値と、RRR/SSS Gd( PCTA-トリス-グルタル酸)の精製された画分について同じ条件下で得られた対応する緩和値r1値を示す。
【表6】
【0179】
以下のTable 5は、RRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)とイソセリノールのコミュニケーションによって得られたアミド誘導体について、H2OとHSA中の両方で37℃にて測定された緩和度値r1を、コンジュゲーションに使用されたセリノールの立体化学と共に、ガドピクレノール(異性体混合物)について従来技術で引用された対応する値と比較した。
【表7】
【0180】
一方で得られた結果は、対応する異性体混合物に対するRRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)について測定されたより高い緩和能が、それぞれのコンジュゲート誘導体について実質的に維持されていることを示している。他方、これらの結果は、イソセリノール部分の立体化学が、主にグルタル酸アームの立体化学に関連する最終化合物の主要な特性に影響を及ぼさないという事実と一致している。
【0181】
実施例10:X線回折
エナンチオマーペアC
結晶の調製
X線回折試験に適した式{(C(NH2)3)2[Gd(H3L)(C2O4)]}・5H2Oで示される単結晶(式中、Gd(H3L)はトリスプロトン化RRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)である)を、実施例3から回収されたRRR/SSSに富む化合物Cの水溶液から水のゆっくりとした蒸発によって成長させた。結晶化を促進するために、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)錯体の2つの内部球水分子をシュウ酸塩アニオンに置き換え、関連するグアニジニウム塩を水から結晶化した。出発溶液は、49.6 mgの(C(NH23)2(C2O4)(2.5.0×10-4mol)を実施例3から回収した豊富化された化合物Cの水溶液(1.0 mL;0.0483 M GdH3L水溶液5.0×10-5mol)に溶解して調製した。固体のH2C2O4を段階的に添加することにより、pHを3.3に調整した。
【0182】
結晶を単離し、Elettra Synchrotron, Trieste(Italy)のX線回折ビームライン(XRD1)で、例えばLausi A. et al., The European Physical Journal Plus, 2015, 130, 1-8に開示されている手順により、少なくとも5つの結晶からXRDデータを収集した。具体的に、回収した結晶をNHVオイル(Jena Bioscience, Jena, Germany)に浸し、液体窒素で凍結し、カプトンループ(MiTeGen, Ithaca, USA)を使用してゴニオメーターヘッドに取り付けた。異なる結晶形状が利用可能であるとき、それらすべてを試験した。完全なデータセットは、回転結晶法により100 K(Oxford Cryostream 700-Oxford Cryosystems Ltd.、Oxford、United Kingdomから供給される窒素ストリーム)で回収した。Pilatus 2Mハイブリッドピクセルエリア検出器(DECトリス Ltd.、Baden-Daettwil、Switzerland)で、0.700Åの単色波長を使用してデータを取得した。
【0183】
結果
構造は、SHELXT直接法に実装された双対空間アルゴリズムによって解明した(Sheldrick G.M.(2015). “SHELXT -Integrated space-group and crystal-structure determination”, Acta Crystallographica Section A, 71, 3-8)。フーリエ解析とリファインメントは、F2に基づくフルマトリックス最小二乗法によって実行した。異方性熱運動のリファインメントをすべての原子に使用した。水素原子はヒドロキシル基について、等方性Ufactors = 1.2・UeqまたはUfactors = 1.5・Ueqで計算された位置に含まれていた(Ueqは、結合した非水素原子の等価等方性熱係数である)。溶媒水分子の水素原子は、フーリエ差マップの電子密度ピークで明確に位置を特定できなかったため、リファインされたモデルには含まれていない。
本質的な結晶およびリファインメントデータを、以下の表に示す。
【表8】

{(C(NH23)2 [Gd(H3L)(C2O4)]}・5H2O錯体と形成された結晶の単位格子のX線構造をそれぞれ図9図10に示す。
図10は、各単位格子に2RRR + 2SSS錯体が含まれていることを示している。これは、各結晶に異性体SSSとRRRが等モル(50-50%)の比率で含まれていることを意味する。
【0184】
ラセミ体イソセリノールとのアミド誘導体
X線回折試験に適した式[GdC35H54N7O15][CH6N3]2[CO3]・18H2O(GdL)(GdLはラセミ体イソセリノールのコンジュゲーションしたRRR/SSS Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)である)の単結晶を、実施例4c)から回収されたラセミ体イソセリノールとのGd(PCTA-トリス-グルタル酸)のアミド誘導体の水溶液中で成長させた。結晶化を促進するために、最終錯体の2つの内部球水分子を炭酸アニオンに置き換え、関連するグアニジニウム塩を4℃でエタノールとジエチルエーテルをゆっくりと拡散させることにより水から結晶化させた。具体的には、1.0モル当量(97mgのGdL錯体と9mgの炭酸グアニジン{C(NH23}2CO3)を1 mLのH2O、pH = 10.5に溶解し、EtOHとEt2Oの混合物をゆっくりと拡散させた。
【0185】
15個の単結晶を単離し、Elettra Synchrotron, Trieste(Italy)のX線回折ビームライン(XRD1)で、例えばLausi A. et al., The European Physical Journal Plus, 2015, 130, 1-8に開示された手順で、7個の結晶のXRDデータ収集を実行した。具体的には、回収した結晶をNHVオイル(Jena Bioscience, Jena, Germany)に浸し、液体窒素で凍結し、(MiTeGen, Ithaca, USA)を使用してゴニオメーターヘッドに取り付けた。異なる結晶形状が利用可能であるとき、それらすべてを試験した。完全なデータセットは、回転結晶法により100 K(Oxford Cryostream 700-Oxford Cryosystems Ltd.、Oxford、United Kingdomから供給される窒素ストリーム)で回収した。Pilatus 2Mハイブリッドピクセルエリア検出器(DECトリス Ltd.、Baden-Daettwil、Switzerland)で、0.700Åの単色波長を使用してデータを取得した。
【0186】
構造は直接法で解明した。フーリエ解析とリファインメントは、F2に基づくフルマトリックス最小二乗法によって実行した。異方性熱運動のリファインメントはすべての原子に使用した。水素原子は、メチル基とヒドロキシル基の等方性Ufactors = 1.2・UeqまたはUfactors = 1.5・Ueqで計算された位置に含まれていた(Ueqは結合した非水素原子の等価等方性熱係数である)。溶媒水分子の水素原子は、フーリエ差マップの電子密度ピークで明確に位置を特定できなかったため、リファインされたモデルには含まれていない。

Table 7.GdLデータセットの結晶学的データと立体中心の立体配置
結晶系三方晶
空間群R-3
単位格子a = 53.395(8)Å
b = 53.395(8)Å
c = 12.959(3)Å
α = 90°
β = 90°
γ = 120°
体積(Å3)31997(11)
最終Rインデックス[I>2σ(I)]a R1 = 0.0554、wR = 0.1496
ASUの立体中心の立体配置
C7 R C28A R-54(1)%占有率 C28B S-45(1)%占有率
C14 R C31A R-62(1)%占有率 C31B S-38(1)%占有率
C21 R C34A R-50(1)%占有率C34B S-50(1)%占有率
a R1 =Σ|| Fo | - | Fc || /Σ| Fo |、wR = {Σ[w(Fo2 - Fc2)2]/Σ[w(Fo2)2]}1/2

用いた手順と詳細については、たとえば、Lausi A., Polentarutti M., Onesti S., Plaisier J. R., Busetto E., Bais G., Barba L., Cassetta A., Campi G., Lamba D., Pifferi A., Mande S. C., Sarma D. D., Sharma S. M., Paolucci G., The European Physical Journal Plus, 2015, 130, 1-8を参照。
D’-CO3 2-錯体のX線構造と回収された結晶の統計分析を図11に示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-10-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II B):
【化1】
で示される、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のアミド誘導体の異性体混合物の製造方法であって、該異性体混合物は、
(1)式(II B)において、
F’が式(IIIa)
【化2】
で示されるRRRエナンチオマー残基であり、
3つの-NR基はそれぞれ、F’のカルボキシル部分の開結合(●)に結合しており;
はHまたは1~4個のヒドロキシル基で置換されているか置換されていないC-Cアルキルであり;
は1~4個のヒドロキシル基で置換されているか置換されていないC-Cアルキルである、
Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のアミド誘導体を少なくとも50%含む、
(2)式(II B)において、
F’が式(III b)
【化3】
で示されるSSSエナンチオマー残基であり、
3つの-NR基はそれぞれ、F’のカルボキシル部分の開結合(●)に結合しており;
はHまたは1~4個のヒドロキシル基で置換されているか置換されていないC-Cアルキルであり;
は1~4個のヒドロキシル基で置換されているか置換されていないC-Cアルキルである、
Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のアミド誘導体を少なくとも50%含む、または
(3)前記(1)のGd(PCTA-トリス-グルタル酸)のアミド誘導体と前記(2)のGd(PCTA-トリス-グルタル酸)のアミド誘導体の混合物を少なくとも50%含み、
該製造方法が、
a’)[(αR,α’R,α’’R)-α,α’,α’’-トリス(2-カルボキシエチル)-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム(RRRエナンチオマー)、[(αS,α’S,α’’S)-α,α’,α’’-トリス(2-カルボキシエチル)-3,6,9,15-テトラアザビシクロ-[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム(SSSエナンチオマー)、またはそれらの混合物を、少なくとも50%含むGd(PCTA-トリス-グルタル酸)の異性体混合物を得ること;および
b’)ステップa’)で得られたGd(PCTA-トリス-グルタル酸)の異性体混合物を、それぞれのアミド誘導体の対応する異性体混合物に変換すること
を含んでなる、製造方法。
【請求項2】
がHであり、Rが1つまたは2つのヒドロキシル基で置換されたC-Cアルキルである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
がセリノール残基またはイソセリノールである、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
がRイソセリノール、Sイソセリノールまたはラセミ体のイソセリノールから選択される、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
ステップa’)のGd(PCTA-トリス-グルタル酸)の異性体混合物が、異性体混合物として得られたGd(PCTA-トリス-グルタル酸)を出発物質として、クロマトグラフィーによって得られる、請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
ステップa’)から回収された生成物をイソセリノールと反応させる、請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
式(II B):
【化4】
で示される、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のアミド誘導体の異性体混合物の、造影剤としての使用であって、
該異性体混合物が、
(1)式(II B)において、
F’が式(IIIa)
【化5】
で示されるRRRエナンチオマー残基であり、
3つの-NR基はそれぞれ、F’のカルボキシル部分の開結合(●)に結合しており;
はHまたは1~4個のヒドロキシル基で置換されているか置換されていないC-Cアルキルであり;
は1~4個のヒドロキシル基で置換されているか置換されていないC-Cアルキルである、
Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のアミド誘導体を少なくとも50%含む、
(2)式(II B)において、
F’が式(III b)
【化6】
で示されるSSSエナンチオマー残基であり、
3つの-NR基はそれぞれ、F’のカルボキシル部分の開結合(●)に結合しており;
はHまたは1~4個のヒドロキシル基で置換されているか置換されていないC-Cアルキルであり;
は1~4個のヒドロキシル基で置換されているか置換されていないC-Cアルキルである、
Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のアミド誘導体を少なくとも50%含む、または
(3)前記(1)のGd(PCTA-トリス-グルタル酸)のアミド誘導体と前記(2)のGd(PCTA-トリス-グルタル酸)のアミド誘導体の混合物を少なくとも50%含む、
使用。
【請求項8】
造影剤が磁気共鳴画像法(MRI)分析のためのものである、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
式(II B):
【化7】
で示される、Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のアミド誘導体の異性体混合物の、MRI技術を使用することによるヒトまたは動物の体の器官、組織または領域のインビボでの画像診断に使用するための医薬製剤の調製のための使用であって、
該異性体混合物が、
(1)式(II B)において、
F’が式(IIIa)
【化8】
で示されるRRRエナンチオマー残基であり、
3つの-NR基はそれぞれ、F’のカルボキシル部分の開結合(●)に結合しており;
はHまたは1~4個のヒドロキシル基で置換されているか置換されていないC-Cアルキルであり;
は1~4個のヒドロキシル基で置換されているか置換されていないC-Cアルキルである、
Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のアミド誘導体を少なくとも50%含む、
(2)式(II B)において、
F’が式(III b)
【化9】
で示されるSSSエナンチオマー残基であり、
3つの-NR基はそれぞれ、F’のカルボキシル部分の開結合(●)に結合しており;
はHまたは1~4個のヒドロキシル基で置換されているか置換されていないC-Cアルキルであり;
は1~4個のヒドロキシル基で置換されているか置換されていないC-Cアルキルである、
Gd(PCTA-トリス-グルタル酸)のアミド誘導体を少なくとも50%含む、または
(3)前記(1)のGd(PCTA-トリス-グルタル酸)のアミド誘導体と前記(2)のGd(PCTA-トリス-グルタル酸)のアミド誘導体の混合物を少なくとも50%含む、
使用。
【請求項10】
がHであり、Rが1つまたは2つのヒドロキシル基で置換されたC-Cアルキルである、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
がHであり、Rが-CHCH(OH)CHOHである、請求項9に記載の使用。
【請求項12】
異性体混合物が、以下からなる群から選択されるアミド誘導体:
[(αS,α’S,α’’S)-α,α’,α’’-トリス[3-[(2(S)、3-ジヒドロキシプロピル)アミノ]-オキソプロピル]-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム(異性体SSS-SSS);
[(αS,α’S,α’’S)-α,α’,α’’-トリス[3-[(2(R)、3-ジヒドロキシプロピル)アミノ]-オキソプロピル]-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム(異性体SSS-RRR);
[(αR,α’R,α’’R)-α,α’,α’’-トリス[3-[(2(R)、3-ジヒドロキシプロピル)アミノ]-オキソプロピル]-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム(異性体RRR-RRR);
[(αR,α’R,α’’R)-α,α’,α’’-トリス[3-[(2(S)、3-ジヒドロキシプロピル)アミノ]-オキソプロピル]-3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-トリアセタト(3-)-κN3,κN6,κN9,κN15,κO3,κO6,κO9]-ガドリニウム(異性体RRR-SSS);
またはそれらの混合物
を少なくとも50%含んでなる、請求項9に記載の使用。
【請求項13】
式(II B)において、F’がRRRおよびSSSエナンチオマー残基を少なくとも60%含む、請求項9に記載の使用。
【請求項14】
式(II B)において、F’がRRRおよびSSSエナンチオマー残基を少なくとも70%含む、請求項9~13のいずれかに記載の使用。
【請求項15】
式(II B)において、F’がRRRおよびSSSエナンチオマー残基を少なくとも80%含む、請求項9~13のいずれかに記載の使用。
【請求項16】
式(II B)において、F’がRRRおよびSSSエナンチオマー残基を少なくとも90%含む、請求項9~13のいずれかに記載の使用。