(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178264
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】ペプチド合成
(51)【国際特許分類】
C07K 1/02 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
C07K1/02 ZNA
C07K1/02
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024160172
(22)【出願日】2024-09-17
(62)【分割の表示】P 2021524322の分割
【原出願日】2019-11-04
(31)【優先権主張番号】1817932.5
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】521189961
【氏名又は名称】オリジン ぺプタイズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】テン ハブ,サラ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ペプチドを合成するための単純で、安価で、環境的に安全な方法を提供する。
【解決手段】ペプチドを合成する方法であって、ある量の鋳型ペプチドおよび鋳型ペプチドのコピーを形成することができるアミノ酸を水溶液に添加するステップと、溶液中の鋳型ペプチドのコピーを合成するために、少量のエネルギーを溶液に提供するステップと、を含むことを特徴とする、方法である。前記エネルギーは、熱エネルギーの形態で提供されてよく、赤外線、可視光線もしくは紫外線、またはそれらの混合物を含んでよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチドを合成する方法であって、
ある量の鋳型ペプチドおよび鋳型ペプチドのコピーを形成することができるアミノ酸を水溶液に添加するステップと、
溶液中の鋳型ペプチドのコピーを合成するために、少量のエネルギーを溶液に提供するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記エネルギーは、熱エネルギーの形態で提供されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エネルギーが、赤外線、可視光線もしくは紫外線、またはそれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
エネルギーの供給が一定であり、
任意に、エネルギーの供給が、ペプチド合成の持続時間の間、溶液を一定の全スペクトル光源に曝露することを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
エネルギーが、ペプチド形成について、少なくとも0.15kcal/モル、少なくとも0.24kcal/モル、少なくとも0.3kcal/モル、少なくとも0.6kcal/モル、少なくとも1.2kcal/モルであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記エネルギーの供給は、溶液を約10℃~100℃、約15℃~70℃、約20℃~50℃、または約30℃~45℃の一定の温度に維持することを含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶液へのエネルギーの供給が周期的であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記エネルギーの周期的供給は、前記溶液の熱を周期的に増加させること、および/または、前記溶液を全スペクトル光に周期的に曝露することを含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
水溶液の溶媒が純水または実質的に純粋な水であるか、または水溶液がリン酸緩衝生理食塩水を含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
水溶液が、純水または実質的に純粋な水、鋳型ペプチド、および、鋳型ペプチドのコピーを形成することができるアミノ酸からなるか、または本質的にそれらからなることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
水溶液が無菌であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
水溶液が、鋳型ペプチド中に存在するアミノ酸のみを含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
水溶液が、鋳型ペプチド中に見出される各アミノ酸の化学量論量に等しいかまたはほぼ等しい化学量論量でアミノ酸を含むことを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
水溶液中に存在する全てのアミノ酸の総重量および鋳型ペプチドの重量が、20,000対1~10対1、または、10,000対1~10対1のw/w(重量対重量)比で提供されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
アミノ酸の総重量が、約0.001g/mL~10g/mL、または約0.005g/mL~5g/mL、または約0.01g/mL~1g/mLの濃度を有する溶液を提供するような量で提供されることを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ペプチド合成が、3~24時間の期間の後に終結されることを特徴とする、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ペプチド合成が、1~5日の期間の後に終結されることを特徴とする、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
ペプチド合成が、
溶液から、ペプチド結合形成を引き起こすのに十分な前記少量のエネルギーを除去することによって、および/または、水溶液から合成ペプチドを分離することによって、終結されることを特徴とする、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、大気圧でおよび/または酸素の存在下で実施されることを特徴とする、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
ペプチド合成が、核酸、酵素、補酵素、他の細胞物質および/または細胞の非存在下で行われることを特徴とする、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
核酸、酵素または補酵素、他の細胞物質または細胞の非存在下での鋳型ペプチド自体の増幅のための鋳型ペプチドの使用。
【請求項22】
請求項1~20のいずれか1つ以上の方法によって提供されるペプチド。
【請求項23】
請求項22に記載のペプチドによってまたは請求項1~19のいずれか1項に記載の方法によって提供される構造。
【請求項24】
鋳型ペプチドと、鋳型ペプチド中の少なくとも1つのアミノ酸であって、任意に、各々が鋳型ペプチドを形成するために必要である、アミノ酸とを含む溶液中で鋳型ペプチドのコピーを合成するために請求項1~20のいずれか1項に記載の方法において使用するためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドを合成するための単純で、安価で、環境的に安全な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの合成ペプチドは、ジペプチド糖置換アスパルテームから、オキシトシン、副腎皮質刺激ホルモン、およびカルシトニンなどの臨床的に使用されるホルモンに及ぶ、重要な市販または医薬製品である。ペプチドはまた、例えば、皮膚および毛髪への適用のための化粧品用途においてますます使用されている。
【0003】
ペプチドは現在、一般に、細菌または真核細胞培養物を使用する組換え手段、またはFMOCまたはFBOC保護アミノ酸を使用する固相ペプチド合成によって作製される。どちらの方法も費用がかかり、ペプチドの精製は煩わしいことがある。さらに、固相合成法のためには化学反応のために大量の有毒な有機溶媒が必要であり、得られた廃棄物の除去はペプチド生産の全体コストの約10%である。
【0004】
ペプチドの天然ペプチド連結は、大きなペプチド断片からタンパク質を提供するために行われてきた。典型的には、これは、反応を可能にするために、ペプチドの半分が反応性チオエステル化学作用(chemistry)を有することを必要とする。さらに、この技術は、これらの部分または半分が一緒に連結される前に、所望のペプチドの2つの部分または半分の固相合成に依存する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、ペプチド合成を促進するために、複雑な化学作用、高温および/または高圧またはDNA鋳型を使用しないペプチドの合成に関する研究に基づく。所望のペプチドの2つの部分または半分を固相合成し、次いでこれらの部分または半分を一緒に連結するのとは異なり、本明細書に記載の鋳型方法は、ペプチドの大部分を予め合成させることに依存せず、適切には、構成アミノ酸のみが必要とされる。
【0006】
予想外に、ペプチドの鋳型合成は、溶液中のアミノ酸に少量のエネルギーを提供することによって起こり得ることが見出された。
【0007】
例えば、21℃付近をベースに3~5℃の間の温度差を有する暗所で提供されたサンプルは、合成反応を行うのに十分なエネルギーを与えられたが、反応は露光サンプルよりも長くかかり、長期間の結果は、より小さな構造物が生成されたことが、本発明者によって決定された。
【0008】
適切には、本明細書中で使用される鋳型法は、任意のペプチドの使用を可能にし、それ自体を、より重視する。理論に束縛されることを望むものではないが、合成反応に鋳型(合成されるべき選択ペプチド)を提供することは2つの利点を与えると考えられる。第1に、アミノ酸の濃縮溶液中のペプチド分子の断面積は、単一アミノ酸の断面積よりも大きい。立体的には、これは、鋳型とのより多くの相互作用があり、鋳型ペプチド表面上のアミノ酸の蓄積または凝集を引き起こすことを意味する。第2に、鋳型ペプチドの存在は類似のアミノ酸との構造的相溶性(structural compatibility)によってアミノ酸の組織化を提供し、すなわち、アルギニンは、類似の構造のために鋳型ペプチド中のアルギニン上に「位置し」、その運動をおそらく遅らせると考えられる。適切には、相補的表面上の配列選択的分子認識が、ペプチド自己複製において重要な役割を有すると考えられる。これは、配列中の他のアミノ酸で起こり、それらを互いに近接させると考えられる。このシステムは、ペプチド結合形成がアミノ酸間で起こることを可能にし、そしてペプチドの鋳型合成が起こることを可能にするのに十分なエネルギーを提供する。
【0009】
有利には、本方法は、分子の末端上の合成反応性化学作用を必要とする従来技術の方法、ペプチド、DNAまたはRNA、または互いに連結するための反応ペプチド部分のバルクの前合成とは区別されると考えられる。
【0010】
第1の態様によれば、
ある量の鋳型ペプチドおよび鋳型ペプチドのコピーを形成することができるアミノ酸を水溶液に添加するステップと、
溶液中の鋳型ペプチドのコピーを合成するために、少量のエネルギーを溶液に提供するステップと、
ことを含む、ペプチドを合成する方法が提供される。少量とは、アミド結合を形成するのに必要なエネルギーを超えるのに十分なエネルギーと定義することができる。エネルギーは例えば、太陽光、例えば、UVおよび光スペクトルのIR波長の一部を含む、システムに適用される光のスペクトル全体によって提供されてもよい。
【0011】
理論に束縛されることを望むものではないが、イオン化生成物(ionisation
products)の非存在下でペプチド結合を合成することが有利であることが示唆されている。さらに、非生物発生シナリオにおけるジペプチドの形成は、約1.2kcal/モルであることが提示されている。これは、任意の長さのペプチドにアミノ酸を付加するよりも8倍困難であり、少なくともジペプチドサイズの2つのペプチドを結合するよりも5倍困難であることも提示されている。適切には、提供されるエネルギーは、少なくとも0.15kcal/モル、少なくとも0.24kcal/モル、少なくとも0.3kcal/モル、少なくとも0.6kcal/モル、少なくとも1.2kcal/モルであり得る。理解されるように、複数のペプチド結合を提供するのに十分なエネルギーを提供することができる。実施形態において、提供されるエネルギーは、1モルのジペプチド形成を可能にするエネルギーであり得る。実施形態において、提供されるエネルギーは、少なくとも2モルのジペプチド形成、少なくとも3モルのジペプチド形成、少なくとも4モルのジペプチド形成、少なくとも5モルのジペプチド形成、少なくとも10モルのジペプチド形成、少なくとも15モルのジペプチド形成、少なくとも50モルのジペプチド形成、または少なくとも100モルのジペプチド形成を可能にするエネルギーであり得る。理解されるように、エネルギーは、本方法に従って必要とされるペプチド形成を提供するために提供され得る。
【0012】
ペプチド結合を作製するために必要とされる脱水反応において消費され得るエネルギー間の差異を正確に識別するために、本発明者は、制御された温度環境およびPBSの対照サンプル、ならびにPBS+アミノ酸溶液を、周囲温度測定とともに使用した。高精度の加熱・冷却曲線を記述するため、5秒ごとに測定を行った。曲線下面積の差異は、28962.97℃2s、すなわち170℃sであると決定され、面積はPBSアミノ酸サンプルにおいて、より小さい。PBS+アミノ酸におけるピークの最大値は対照よりも常に少なく、これは対照と比較して、このシステムにおいてエネルギーが常に消費されたことを示唆している。PBS+アミノ酸サンプルで得られたエネルギーは1.31kcalであり、24℃から34℃までの加熱と冷却との1サイクルで1モル以上のジペプチド形成が可能であることが示唆された。
【0013】
適切には、結合形成を可能にするために、任意の形態のエネルギー、例えば光、熱、または他の電磁放射が適切に提供され得ると考えられる。
【0014】
特に、鋳型ペプチドの存在下でアミノ酸の溶液に少量のエネルギー(例えば、増加した温度および/または全スペクトル光の形態で)を提供することは、そのペプチドのコピーの合成を促進し得ることが観察された。したがって、本方法は、核酸、酵素または補酵素、細胞または細胞物質および/または有機溶媒もしくは環境に有害な溶媒の使用を必要としない、ペプチドを合成する、より単純でより費用効果の高い処理を提供することができる。この方法は増幅処理として考えることができ、ここで、溶液中に存在する鋳型ペプチドの量は、鋳型ペプチドのさらなるコピーが作製されるにつれて増幅される。
【0015】
適切には、ペプチドを合成する方法は、少なくとも2分、少なくとも5分、少なくとも10分、少なくとも20分、少なくとも30分、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも5時間で起こり得る。
【0016】
適切には、ペプチドの合成は、明るい条件および暗い条件の両方で起こり得る。
【0017】
本発明は、水溶液に少量のエネルギーを供給することに基づく。以前の知識は化学合成または変換を支援するために大量のエネルギーが必要とされることを教示しており、したがって、本方法に従って使用されるような少量のエネルギーは予想外である。しかし、以下の実験は、細菌もペプチダーゼの他の供給源も存在しない場合のペプチドの作製を明確に示し、したがって、酵素反応ではなく鋳型反応に基づいてペプチド作製が起こり得るという証拠を提供する。
【0018】
理論に束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、例えば太陽からのエネルギー入力を利用する溶液中での、20個の標準アミノ酸のみからのタンパク質生成は、タンパク質が生命体の出発の機能的、構造的、および複製的物質であることを可能にし、これは、後に補充された核酸がより効率的にそれ自体を複製することを可能にすると考える。
【0019】
当業者によって理解されるように、大量のエネルギーは、極熱、強いマイクロ波、または放射性エネルギーの適用によって、システムに提供され得る。
【0020】
質量分析に基づくプロテオミクスが、分析の主要な様式として本発明者によって使用されてきた。ペプチドおよびタンパク質の生成が主に確率的であると仮定すると、全てのスペクトルは最初に、De Novo Sequencing(Peaksソフトウェア)を使用して同定され、生成されたデータベースは、MaxQuantを使用してデータを定量的に分析するために使用された。構造の特徴付けを、走査電子顕微鏡(SEM)と透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて行った。電子顕微鏡画像の定量は、Omeroを用いて行った。DNAおよびRNAの非存在を、蛍光定量(Quantitation)(Qubit(登録商標)、Life Technologies)を用いて試験した。サンプルの滅菌を、ガンマ線照射(1000Gy)、続いて標準的なペプチド合成条件を用いて、密封袋中で行い、ペプチドおよびタンパク質合成に対する生きている生物の寄与がないことをさらに確認した。
【0021】
エネルギーは例えば、電磁放射の適用によって提供される熱エネルギーまたは熱の形態で提供されてもよい。これは、例えば、赤外線、可視光線および紫外線、またはそれらの混合物を含み得る。あるいは、熱はヒートポンプの使用に関連し得るか、または単に、水溶液の温度を上昇させる周囲または周囲環境に起因し得る。
【0022】
一実施形態では、エネルギーの供給は一定であってもよい。例えば、エネルギーの供給は、ペプチド合成の持続時間の間、溶液を一定の全スペクトル光源に曝露することを含み得る。
【0023】
本明細書で使用されているように、「全スペクトル光」は、電磁スペクトルの赤外領域から紫外領域をカバーする光を意味すると理解することができる。例えば、全スペクトル光源は、約300nm~約700nmの波長を有する光を提供することができる。全スペクトル光は、自然光の組成を模倣するように構成することができる。
【0024】
エネルギーの供給は、溶液を一定の温度に維持することを含んでもよい。例えば、溶液は、約10℃~100℃、約15℃~70℃、約20℃~50℃、または約30℃~45℃の範囲で維持できる。代表的な例として、溶液は、約35℃または40℃の温度に維持できる。適切には、本発明は、室温、少なくとも21℃、少なくとも22℃、少なくとも23℃、少なくとも24℃、少なくとも25℃、少なくとも26℃、少なくとも27℃、少なくとも28℃、少なくとも29℃、少なくとも30℃、少なくとも31℃、少なくとも32℃、少なくとも33℃、少なくとも34℃、少なくとも35℃、少なくとも36℃、少なくとも37℃、少なくとも38℃、少なくとも39℃、40℃とし得る。
【0025】
ある場合には、該溶液を約40℃に維持し、ペプチド合成の持続時間の間、一定の全スペクトル光源に曝露することができる。
【0026】
あるいは、水溶液へのエネルギーの供給は、一定の様式ではなく、周期的な様式または反復的な様式で実施され得る。したがって、エネルギーは、ある期間にわたって供給され、その後、停止され、その後、さらなる期間にわたってエネルギーを再び供給することができる。
【0027】
エネルギー供給の期間は、エネルギーが供給されない期間と同じであっても異なっていてもよい。例えば、エネルギーまたは光は、2時間提供され得、続いて、エネルギー/光を含まない期間がさらに2時間提供され得る。あるいは、エネルギー供給の期間がエネルギー供給のない期間よりも短くても長くてもよい。一実施形態では、エネルギーの供給/非供給は、昼間リズムの形態であってもよい。したがって、エネルギーの供給/非供給は1日にわたる明暗の供給で一般的に見られるように、規則的な24時間サイクルに従う。
【0028】
上記によれば、溶液にエネルギーを提供する周期的な様式は、溶液の熱を、例えば、少なくとも0.25℃、0.5℃、1℃、5℃、またはさらには10℃、15℃、20℃、または100℃増加させることを含んでもよい。必要に応じて、溶液は、熱の適用が再び起こる前に、周囲温度まで冷却される。溶液にエネルギーを提供する周期的な様式は、昼/夜サイクル中の周囲温度の上昇および下降に対応し得る。この処理は、何回、何百回、または何千回も繰り返すことができる。
【0029】
場合によっては、溶液は、一定の光源(例えば、全スペクトル光源)に曝されてもよいが、上記のように周期的な温度振動に曝されてもよい。あるいは、溶液は、一定の温度条件下で、光(例えば、全スペクトル光)の周期的な供給に曝露され得る。
【0030】
この方法は、水溶液中で実施することができる。水溶液の溶媒は、純水または実質的に純粋な水(実質的な純水)を含んでもよく、または、本質的に純水または実質的に純粋な水からなってもよい。例えば、水溶液は、純水または実質的に純粋な水、鋳型ペプチド、および、鋳型ペプチドのコピーを形成することができるアミノ酸を含み得るか、またはそれらから本質的になり得る。
【0031】
水溶液は無菌であってもよい。本明細書で使用されるように、無菌とは、溶液が生物学的汚染物質を含まないことを意味し得る。いくつかの例において、水溶液は、ガンマ線照射などの照射の使用を介して滅菌されてもよい。したがって、本方法は、非生物的ペプチド合成に関する。
【0032】
水溶液は、核酸、酵素、補酵素(例えば、アデノシン三リン酸)、細胞、細胞物質および/または有機溶媒を含まないか、または実質的に含まない。例えば、水溶液は、細菌、ウイルス、真核細胞、および/またはオルガネラなどのその成分を含まないか、または実質的に含まないことができる。
【0033】
例として、純水または実質的に純粋な水は、タイプ1の超純水の形態であるMilliQ(登録商標)水であってもよい(ISO 3696(1987)によって定義される)。他の種類の純水または実質的に純粋な水は、容量性脱イオン、逆浸透、炭素濾過、精密濾過、限外濾過、紫外線酸化などによって提供され得る。
【0034】
典型的には、このような純粋なまたは実質的に純粋な水は、低レベルの固体、低有機物および低導電率を有するべきである。例えば、純粋または実質的に純粋な水は、5μg/ml未満の固形分、1μg/ml未満の固形分、または0.1μg/ml未満の固形分を有し得る。さらに、または代わりに、純粋または実質的に純粋な水は、100μg/l未満、または50μg/l未満の全有機炭素の有機物含有量を有し得る。さらに、または代わりに、純水または実質的に純粋な水は、25℃で、1μS・cm-1未満、0.1μS・cm-1未満、または0.01μS・cm-1未満の導電率を有し得る。
【0035】
あるいは、水溶液は、リン酸塩源を含んでもよい。例えば、水溶液は、ATPまたはADP以外のリン酸源を含んでもよい。このような溶液の例は、リン酸水素二ナトリウムを含む水、またはリン酸緩衝生理食塩水であり得る。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)は、リン酸水素二ナトリウム、塩化ナトリウムを含んでもよい。いくつかの製剤において、リン酸緩衝生理食塩水は、塩化カリウムおよびリン酸二水素カリウムをさらに含み得る。例示的なPBS組成物を以下に示す。
【0036】
【0037】
しかしながら、これは、限定として解釈されるべきではない。典型的には、リン酸塩は、少なくとも50μM、例えば100μM、または1mMの量で存在し得る。
【0038】
溶液中のリン酸塩源の使用は、かなりの割合の酸性アミノ酸が合成に関与する場合に有用であり得る。例として、リン酸塩の存在は、合成の持続時間の間、溶液中の鋳型ペプチド(および鋳型ペプチドの任意のコピー)の維持を補助し得る。
【0039】
全ての利用可能なアミノ酸は、水溶液中に提供され得る。例えば、水溶液は、全てのタンパク質生成アミノ酸の混合物を含み得る。あるいは、溶液に提供されるアミノ酸は、鋳型ペプチド中に存在するアミノ酸(これらに限定されない)を含むアミノ酸の混合物を含み得る。例として、溶液は、鋳型ペプチド中に存在するアミノ酸のみの混合物(例えば、所望のペプチドを合成するために必要とされるアミノ酸のみ)を含み得る。アミノ酸は天然アミノ酸であってもよい。すなわち、天然に見られるようなものである。適切には、アミノ酸は活性化アミノ酸でなくてもよい。例えば、アミノ酸は、カルボニルジイミダゾールのようなカップリング試薬に連結されていなくてもよい。
【0040】
溶液に提供または添加される各アミノ酸の相対量は、鋳型ペプチド中の各アミノ酸の相対量に対応し得る。例えば、アミノ酸は、鋳型ペプチド(例えば、コピーおよび合成されるペプチド)中に見出される各アミノ酸のモル比または化学量論量に等しいモル比または化学量論量で提供され得る。例えば、ペプチドが配列GlyAlaGlyを有する場合、Glyは、Alaに対する濃度の2倍で溶液中に提供され得る。場合によっては、水溶液に提供されるアミノ酸の化学量論量は、鋳型ペプチド中に見出されるアミノ酸の化学量論量にほぼ等しくてもよい(例えば、鋳型ペプチド中に見出されるアミノ酸の化学量論量の約±10%または±20%以内に等しい)。あるいは、アミノ酸は、等モル量で提供され得る。
【0041】
本明細書で使用されるアミノ酸表記法は慣用的であり、以下の通りである。
【0042】
【0043】
本発明は、(上記で同定されたような)20個の標準的な遺伝学的にコードされたアミノ酸、および、3個の追加のアミノ酸であるセレノシステイン、ピロリジンおよびN-ホルミルメチオニンである、タンパク質生成アミノ酸にまで拡大されると考えることができる。より慣用的なLアミノ酸と同様に、本発明は、Dアミノ酸、および、リン酸化された残基、グリコシル化された残基およびメチル化された残基のような翻訳後に修飾されたアミノ酸の使用にまで及ぶことができる。
【0044】
本明細書に記載の方法は、多種多様な鋳型ペプチドに適用することができる。ペプチド合成においてコピーされる鋳型ペプチドは、任意の数のアミノ酸、例えば2~200個のアミノ酸を含み得る。適切には、ペプチド合成においてコピーされる鋳型ペプチドは、少なくとも4個のアミノ酸、少なくとも5個のアミノ酸、少なくとも6個のアミノ酸、少なくとも7個のアミノ酸、少なくとも8個のアミノ酸、少なくとも9個のアミノ酸、少なくとも10個のアミノ酸、少なくとも15個のアミノ酸、少なくとも20個のアミノ酸、少なくとも30個のアミノ酸、少なくとも40個のアミノ酸、少なくとも50個のアミノ酸、少なくとも60個のアミノ酸、少なくとも70個のアミノ酸、少なくとも80個のアミノ酸、少なくとも90個のアミノ酸、少なくとも100個のアミノ酸、少なくとも110個のアミノ酸、少なくとも120個のアミノ酸、少なくとも130個のアミノ酸、少なくとも140個のアミノ酸、少なくとも150個のアミノ酸、少なくとも160個のアミノ酸、少なくとも170個のアミノ酸、少なくとも180個のアミノ酸、少なくとも190個のアミノ酸、少なくとも200個のアミノ酸、少なくとも210個のアミノ酸、少なくとも220個のアミノ酸を含み得る。例えば、本明細書に記載の方法を用いて、比較的長いおよび/または難しいペプチド配列のコピーを合成することが可能であった。本明細書に記載の方法は、ペプチド中のアミノ酸間の1つ以上のジスルフィド結合によって決定される配座などの特定の構造配座を有するペプチドの鋳型合成に有効であり得る。一般に、特定の構造配座を有するペプチドの合成は、分子シャペロン(例えば、特定の構造配座へのペプチドの折り畳みおよび組み立てを補助し得るタンパク質)の存在下でのみ起こることが予想され得る。しかし、驚くべきことに、本明細書に記載の方法を用いて、このようなペプチドのコピーを合成することができることが見出された。例えば、本明細書に記載の方法を用いてインスリン(3つのジスルフィド結合および特定の構造配座を有する比較的長いペプチド)を合成することが可能であった。鋳型ペプチドはアミロイドペプチドでなくてもよい。
【0045】
適切には、鋳型ペプチドは二次構造を有していてもよい。適切には、二次構造が実質的に螺旋状であってもよい。適切には、二次構造は、実質的にベータシートであってもよい。適切には、鋳型構造の二次構造は、らせんおよびベータシートの組み合わせであってもよい。
【0046】
溶液中の鋳型ペプチドの濃度を供給するために、鋳型ペプチドの量を水溶液に添加してもよい。典型的には、非常に少量の鋳型ペプチドを使用しても、溶液中で鋳型ペプチドのコピーを合成することが可能である。したがって、鋳型ペプチドは、任意の濃度で提供され得る。溶液中の鋳型ペプチドの濃度はまた、ペプチドの長さに関連して変化し得る。より高濃度の鋳型ペプチドを用いて、鋳型ペプチドのコピーの合成速度を増加させてもよい。
【0047】
出発物質中でより少ない鋳型を利用することは、より長い合成時間をもたらすと考えられる。存在する鋳型を増加させることによって、反応はより迅速に進行し得る。
【0048】
水溶液に添加されるアミノ酸および鋳型ペプチドの相対量も変化させることができる。例えば、全てのアミノ酸の総重量および鋳型ペプチドの重量は、20,000対1~10対1の間のいずれかのw/w(重量対重量)比で提供され得る。例えば、15,000対1、10,000対1、5,000対1、1,000対1、100対1および10対1w/wのw/w比率である。さらなる例として、溶液は、鋳型ペプチドに対して約21.5対1w/wのアミノ酸を含み得る。
【0049】
アミノ酸の総重量は、約0.001g/mL~10g/mL、または約0.005g/mL~5g/mL、または約0.01g/mL~1g/mLの濃度を有する溶液を提供するような量で提供され得る。例えば、溶液は、約0.02g/mLのアミノ酸濃度を有し得る。いくつかの場合において、溶液の濃度は、鋳型ペプチドの組成に依存し得ることが理解されるべきである。例えば、異なるアミノ酸は異なる水溶性を有し、したがって、鋳型ペプチドが、より高い水溶性を有するアミノ酸を比較的高い割合で含む場合は、より濃縮された溶液がペプチド合成において使用され得る。
【0050】
アミノ酸および鋳型ペプチドは、水溶液に連続的にまたは同時に添加され得る。この方法はペプチド合成を促進し得、ここで、必要とされる全ての試薬(例えば、アミノ酸および鋳型ペプチド)は、合成の開始時に溶液中に添加され得る。その結果、本明細書に記載の方法は、錯体化学作用および/または多段階処理を使用する必要性(保護基戦略および/または固相成分を使用する必要性など)を排除することができる。
【0051】
本方法において鋳型ペプチドを提供することにより、鋳型ペプチドのコピーを大量かつ高品質で得ることが可能である。典型的には、作製されるペプチドの少なくとも80%、90%、95%、99%、99.5%またはそれ以上の量が鋳型ペプチドと同一である。
【0052】
ペプチド合成の進行をモニターすることができる。例えば、水溶液中の合成ペプチドの量は、質量分析(MS)技術(例えば、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間質量分析(MALDI-TOF-MS)またはイオントラップエレクトロスプレーMS)を使用してモニターされ得る。
【0053】
理解されるように、アミノ酸が反応して鋳型ペプチドのコピーを形成するにつれて、最初に、合成ペプチドの量の増加が観察され得る。次いで、合成されたペプチドの量は、(例えば、全ての出発アミノ酸が消費されるにつれて)プラトーになり得る。あるいは、最初の増加後、合成ペプチドの量は減少し得る(例えば、追加のアミノ酸が合成ペプチドに付加し始め、ペプチド鎖の長さを増加させる場合)。したがって、少なくともいくつかの場合において、ペプチド合成は、観察される量の合成ペプチドがプラトーに達するか、または減少する場合に、終結され得る。
【0054】
ペプチド合成の持続時間は、鋳型ペプチドの長さおよび/またはその中のアミノ酸の性質に依存し得る。例えば、より短い鋳型ペプチドは、より長い鋳型ペプチドよりも迅速にコピーされ得る。したがって、ペプチド合成をモニターすることは、十分な量の所望のペプチドを提供する処理の持続時間を実験的に決定するために使用され得る。例として、合成処理は、十分な量の所望のペプチドを提供するために、数時間(例えば、6、12、18または24時間)または数日間にわたって起こり得る。例えば、合成処理は、少なくとも1、2、3、4、もしくは5日間、またはさらには12、20、25、30、もしくは50日またはそれ以上の日数にわたって起こり得る。
【0055】
ペプチド合成の終結は、溶液から、当該少量のエネルギーを除去することによって実施することができる。代表的な例として、ペプチド合成は水溶液を(例えば、10℃未満、約5℃未満、または約0℃未満に)冷やすことによって終結され得る。代替的にまたは追加的に、ペプチド合成は、水溶液から合成ペプチドを分離することによって最終的に終結され得る。
【0056】
本方法において合成されるペプチドは、最小限の精製を必要とし得る(ケースによっては精製を必要としない)。例えば、本方法において合成されるペプチドは、適度に均質であり得る。
【0057】
さらなる精製が必要な場合、合成ペプチドは、必要に応じて、アミノ酸およびより短い、より長い、および/または誤ってコピーされたペプチドから所望の合成ペプチドを除去するために、合成処理が行われる水溶液から精製され得る。
【0058】
典型的には、精製は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のようなクロマトグラフィー手段によって行うことができる。適切なHPLC法の例としては、逆相HPLC、イオン交換HPLCおよびゲル濾過HPLCが挙げられ、このようなHPLC法は個別に、または組み合わせて/タンデムで実施され得る。ペプチド精製の進行は、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間質量分析(MALDI-TOF-MS)またはイオントラップエレクトロスプレーMSを含む質量分析(MS)技術などによってモニターすることができる。例えば、エドマン分解配列分析による配列決定、またはMSとのタンデムを用いて、ペプチドの均質性を確認することができる。適切には、精製は、本方法によって提供される目的のペプチド/タンパク質を選択的に結合し得る結合メンバー、例えば抗体またはそのフラグメントを使用して起こり得る。適切には、本方法によって提供される目的のペプチド/タンパク質は、それが精製されることを可能にするタグを提供され得る。適切には、本方法によって提供される目的のペプチド/タンパク質に特異的な結合メンバーを有するビーズ、または、本方法によって提供される目的の/タンパク質に付着したタグに対するビーズが利用され得る。
【0059】
ペプチドを合成する方法は大気圧(例えば、1bar±0.2)で行うことができる。それに加えて、またはその代わりに、この方法は、空気中で、例えば酸素の存在下で実施することができる。例えば、典型的には、この方法は、還元ガス環境および/または高圧を必要としない。ペプチドの鋳型合成は、(例えば電気スパークなどによって提供されるような)著しい量のエネルギーを適用することなく、起こり得る。
【0060】
この方法はバッチ処理であってもよく、またはこの処理は、合成されたペプチドが経時的に除去される連続処理であってもよい。
【0061】
この方法は、容器または反応槽中で実施することができる。いくつかの例では、容器または反応槽が(例えば、汚染の危険性を低減するために)覆われるか、または密封されてもよい。
【0062】
本発明のさらなる態様によれば、それ自体(鋳型ペプチド自体)の増幅のための鋳型ペプチドの使用が提供される。すなわち、ペプチド増幅のための鋳型としてのペプチドの使用である。増幅は、鋳型としてペプチドを使用するペプチドの重複を含む。
【0063】
例えば、増幅は、鋳型ペプチドのさらなるコピーの合成を含み得る。増幅は、核酸、酵素または補酵素、細胞または細胞物質の非存在下で、鋳型ペプチド自体によって促進され得る。すなわち、増幅は、ペプチド結合を形成することができる酵素、例えばペプチジルトランスフェラーゼを必要としない。増幅溶液は、成長する二重ペプチド鎖に組み込むためにアミノ酸を必要とする。
【0064】
さらに、本明細書全体を通して、用語「備える」は、本発明の実施形態が言及された特徴を「備える」ことを示すために使用され、したがって、他の特徴も含み得る。しかしながら、本発明の文脈において、用語「備える」はまた、本発明が関連する特徴を「本質的に備える」か、または、関連する特徴「からなる」実施形態を包含し得る。
【0065】
本出願人は、本明細書に記載された個々の特徴の各々、および2つ以上のそのような特徴の任意の組み合わせを、そのような特徴または組み合わせが本明細書に開示された任意の問題を解決するかどうかにかかわらず、特許請求の範囲に限定されることなく、当業者の共通の一般知識に照らして、そのような特徴または組み合わせが本明細書に全体として基づいて実施されることができる程度まで、単独で開示する。出願人は、本発明の態様が任意のそのような個々の特徴または特徴の組み合わせからなり得ることを示す。上記の説明を考慮すると、本発明の範囲内でいろいろな変形例があり得ることは当業者には明らかであろう。
【0066】
本発明は、以下の図面を参照して、例としてさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1A】合成ペプチドVR15(配列番号1-VPDNLQQSLSDEAQR このペプチドは天然には存在しない)についての質量分析法(Thermo Q Exactive Orbitrap)を用いた鋳型ペプチド合成の定量分析を示す。新たに合成されたペプチドは重い(heavy)アルギニン(R、ここではSILACと示される)の組み込みによって鋳型ペプチドと区別され、これは、このペプチドが質量分析においてその鋳型ペプチドから明確に測定することができることを意味する。
【
図1B】時間経過に伴うサンプルのUV吸光度を示し、時点0と比較して、新規ペプチドのシグナルが有意に増加している。
【
図1C】完了したクロマトグラムを示す。全てのサンプルを、処理の全体にわたって変化しない内部標準(標準物質)(安息香酸)で増幅した。これは、
図1Bおよび
図1Cに見られる。
【
図1D】質量分析計で測定された強度を示す(強度は質量分析計内で検出されたイオンを表し、量の直接的な表示である)。
【
図2】4つの異なるペプチド;インスリン(110アミノ酸長)、MRFA(4アミノ酸長)、VR9(天然には存在しない合成ペプチド、VMDSSYLSR、9アミノ酸長、配列番号2)、およびWK20配列番号3(天然には存在しない合成ペプチド、WRWLEHNVVEGNAVNLMFSK)の、鋳型ペプチド合成の前後の鋳型ペプチドの重量による量を示す。これは、任意の長さのペプチドが増幅され得、構造およびジスルフィド結合は増幅処理において問題を提示しないことを示す。
【
図3】MRFA鋳型ペプチドの存在下(「増幅」)および鋳型ペプチドの非存在下(「対照」)での質量分析(Thermo Q Exactive Orbitrap)を使用するMRFAペプチド合成の定量分析を示す。これは、鋳型の添加が実際にペプチドの作製を触媒することを示す。
【
図4】例示されたペプチド合成処理に存在する汚染の欠如を実証するための、後続の実験のための実験デザインを示す。アジ化ナトリウム(NaN
3)、クロラムフェニコール(Chlor)およびDアミノ酸(Daa’s)を含む追加の対照サンプルを使用して、生物学的汚染の非存在をさらに保証した。
【
図5】DNAおよびRNAの存在についての試験の結果を示す。高感度Qubit(登録商標)キットを用いてDNAおよびRNAの存在についてサンプルを試験し、観察された強度の表示を示す。サンプルが色を変えた後、RNAは検出されず、DNAは検出された。これが実際にDNAであるかどうかを検証するために、ベンゾナーゼ(これはDNAを消化し、したがってサンプル中の検出可能なDNAのシグナルを排除する)をサンプルに適用し、インキュベートした。陽性対照を常に使用し、陽性対照の強度は常に半分以上低下したが、ペプチド合成サンプル「DNA強度」は有意に低下しなかったことから、ペプチド合成サンプル中に「生命体」(すなわち、DNAおよびRNA)が存在しないことが確認された。
【
図6A】DおよびLアミノ酸AのMarfey試薬誘導体化の結果を示す。このクロマトグラムは、4つの市販のLアミノ酸の混合物(黒色トレース)と、D異性体以外は同じ4つのアミノ酸の混合物(赤色トレース)とのオーバーレイを示す。Marfey試薬(FDAA、1-フルオロ-2-4-ジニトロフェニル-5-L-アラニンアミド)での誘導体化のためにDアミノ酸で保持時間の遅延を見ることができる。
【
図6B】
図6Bおよび
図6Cは、28日目に採取され、加水分解されて単一のアミノ酸になり、4つの市販のLアミノ酸クロマトグラム(黒色トレース)を重ねたMarfey試薬で誘導体化された非生物Dアミノ酸サンプル(赤色トレース)を示す。Dアミノ酸のLアミノ酸への変換はなかったことが観察された(これは、サンプルを汚染する生物学的生命体がDアミノ酸を利用していた場合に起こることが予想され得る)。
【
図7A】ガンマ線照射実験の結果を示す(全てのサンプルを3回実施した)。滅菌のための陽性対照を大腸菌培養物の形態で含めた。非照射サンプル(
図7A、上側)は多数のコロニーを示し、照射サンプル(
図7A、下側)は1000Gy照射後に全く増殖を示さず、有効な滅菌を実証している。
【
図7B】ペプチド強度分布を表すヒストグラムである。暗緑色集団は出発物質であり、これは、低いペプチドカウント(なぜなら、これが鋳型ガイド実験、すなわち、唯一の生成物がペプチド自体であってこの処理で発生するミスコピーの割合が小さいからである)、および、より低い中央値強度を有する。標準的なインキュベートされたサンプルは、より高い強度のより多くのペプチド(すなわち、より多くのペプチドのコピー)を生成し、照射されたサンプルは、非照射サンプルと同様のペプチド生成の増加を示した。これらの2つのサンプルセット間の明確な差異の欠如は、これが、いかなる種類の外部生体汚染によっても影響されない化学的処理であることを示唆する。
【
図7C】条件間で生成されたペプチドの共存を示すベン図である。照射されたサンプルと照射されていないサンプルとの間のペプチドの鋳型化された生成は同等であり、このことは、この反応が細菌/生物学的汚染とは無関係に化学的なものであることを実証する。
【
図8】各種条件(クロラムフェニコール、37℃、標準、アジ化ナトリウム(NaN
3)、およびDアミノ酸)の間の検出されたペプチドの共存を示すベン図を示す。クロラムフェニコールは広域スペクトル抗生物質であり、アジ化ナトリウムはグラム陰性バクテリオシド(bacterioside)であり、Dアミノ酸については、ほとんどの生きている生物はLアミノ酸を必要としており、生きている生物によってDアミノ酸が利用される場合にはDアミノ酸はLアミノ酸に変換されるが、これらの実験で使用される濃度では今回の場合には変換は起きず(Marfey試薬の実験を参照)、細菌の増殖は排除されるはずである。全ての実験におけるペプチド合成は類似しており(comparable)、ペプチドの生物学的起源とは対照的に、合成に対する化学的基礎を示している。
【
図9A】
図9Aないし
図9Hは、市販のアミノ酸のMALDI-TOF質量分析を示す。これらのスペクトルは、出発物質が、純粋であり、実験で見たペプチドに寄与し得るいかなるより大きな分子も含んでいないことを示す。
図9Aは、ロイシン、グルタミン、アルギニン、プロリン、セリン、トリプトファン、バリン、メチオニンおよびシステインのMALDI-TOFスペクトルである。
【
図9B】ロイシン、グルタミン、アルギニン、プロリン、セリン、トリプトファン、バリン、メチオニンおよびシステインのMALDI-TOFのズームされた質量スペクトルである。
【
図9C】ロイシン、グルタミン、アルギニン、プロリン、セリン、トリプトファン、バリン、メチオニンおよびシステインのMALDI-TOFのズームされた質量スペクトルである。
【
図9D】チロシン、アスパラギン、トレオニン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グリシン、イソロイシン、リジンおよびアラニンのMALDI-TOF質量スペクトルである。
【
図9E】チロシン、アスパラギン、トレオニン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グリシン、イソロイシン、リジンおよびアラニンのMALDI-TOFのズームされた質量スペクトルである。
【
図9F】チロシン、アスパラギン、トレオニン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グリシン、イソロイシン、リジンおよびアラニンのMALDI-TOFのズームされた質量スペクトルである。
【
図9G】グルタミン酸およびヒスチジンのHMALDI-TOF質量スペクトルである。
【
図9H】グルタミン酸およびヒスチジンのHMALDI-TOFのズームされた質量スペクトルである。
【
図11A】本発明の方法を用いたインスリン合成を示す。
【
図11B】本発明の方法を用いたインスリン合成を示す。
【
図12A】
図12Aないし
図12Cは、アミノ酸のペプチドおよびタンパク質への自然重合(spontaneous polymerization)に対する太陽光およびリン酸塩の必要性を試験するための実験セットアップを示す。全てのサンプルを3連で実施した。
【
図12B】より大きな無菌性を有する全ての後続の実験の実験セットアップを示す。アジ化ナトリウム、クロラムフェニコールおよびDアミノ酸を含む追加の対照サンプルを使用して、生物学的汚染の非存在をさらに保証した。
【
図13】
図12の実験における全ての収集された時点の相関(ペプチド強度のLog2)を示し、ベン図は、見られたペプチドの大部分がサンプル間で共有されたことを示す。
【
図14A】
図14Aないし
図14Dは、本方法によるタンパク質合成によって生成された構造の電子顕微鏡画像を示す。TEMとSEMとの間の相対的なスケールを見ることができ(
図14A)、その構造は、外観がウイルスカプシドに非常に類似している(
図14Aの右側パネル)。
【
図14B】Omeroソフトウェアを用いて構造を測定して計数し、その結果を
図14Bにグラフ化した。PBS Sunサンプルは、より大きく、より少ない数の構造を生成し、一方、PBS DarkおよびMilliQ Sunは、それよりもはるかに小さい、多数の構造を生成する。
【
図14C-1】電子顕微鏡画像を示す。生物学的複製物の再現性は非常に顕著であり、パネルに見ることができる。
【
図15A】超薄切片法を使用して球体の内部を視覚化したことを示す。初期のサンプル(A、B、C、~60日目)では、タンパク質の線形修飾鎖が広く行き渡っている。後のサンプル(J、K、L、678日)では、球状構造が、見られるもののうちの大部分である。これらは、完全に空の球体(F)から、わずかに充填された球体、および、非常にまれに高密度に充填された構造まで変化する。細胞の伝統的な断面と比較すると、構造の明確な欠如および顕著な空隙が存在するが、それにもかかわらず、これらは細胞様であり、おそらくプロトタイプの細胞構造を表し得る。
【
図15B】超薄切片法を使用して球体の内部を視覚化したことを示す。初期のサンプル(A、B、C、~60日目)では、タンパク質の線形修飾鎖が広く行き渡っている。後のサンプル(J、K、L、678日)では、球状構造が、見られるもののうちの大部分である。これらは、完全に空の球体(F)から、わずかに充填された球体、および、非常にまれに高密度に充填された構造まで変化する。細胞の伝統的な断面と比較すると、構造の明確な欠如および顕著な空隙が存在するが、それにもかかわらず、これらは細胞様であり、おそらくプロトタイプの細胞構造を表し得る。
【
図15C】超薄切片法を使用して球体の内部を視覚化したことを示す。初期のサンプル(A、B、C、~60日目)では、タンパク質の線形修飾鎖が広く行き渡っている。後のサンプル(J、K、L、678日)では、球状構造が、見られるもののうちの大部分である。これらは、完全に空の球体(F)から、わずかに充填された球体、および、非常にまれに高密度に充填された構造まで変化する。細胞の伝統的な断面と比較すると、構造の明確な欠如および顕著な空隙が存在するが、それにもかかわらず、これらは細胞様であり、おそらくプロトタイプの細胞構造を表し得る。
【
図15D】超薄切片法を使用して球体の内部を視覚化したことを示す。初期のサンプル(A、B、C、~60日目)では、タンパク質の線形修飾鎖が広く行き渡っている。後のサンプル(J、K、L、678日)では、球状構造が、見られるもののうちの大部分である。これらは、完全に空の球体(F)から、わずかに充填された球体、および、非常にまれに高密度に充填された構造まで変化する。細胞の伝統的な断面と比較すると、構造の明確な欠如および顕著な空隙が存在するが、それにもかかわらず、これらは細胞様であり、おそらくプロトタイプの細胞構造を表し得る。
【
図15E】超薄切片法を使用して球体の内部を視覚化したことを示す。初期のサンプル(A、B、C、~60日目)では、タンパク質の線形修飾鎖が広く行き渡っている。後のサンプル(J、K、L、678日)では、球状構造が、見られるもののうちの大部分である。これらは、完全に空の球体(F)から、わずかに充填された球体、および、非常にまれに高密度に充填された構造まで変化する。細胞の伝統的な断面と比較すると、構造の明確な欠如および顕著な空隙が存在するが、それにもかかわらず、これらは細胞様であり、おそらくプロトタイプの細胞構造を表し得る。
【
図15F】超薄切片法を使用して球体の内部を視覚化したことを示す。初期のサンプル(A、B、C、~60日目)では、タンパク質の線形修飾鎖が広く行き渡っている。後のサンプル(J、K、L、678日)では、球状構造が、見られるもののうちの大部分である。これらは、完全に空の球体(F)から、わずかに充填された球体、および、非常にまれに高密度に充填された構造まで変化する。細胞の伝統的な断面と比較すると、構造の明確な欠如および顕著な空隙が存在するが、それにもかかわらず、これらは細胞様であり、おそらくプロトタイプの細胞構造を表し得る。
【
図15G】超薄切片法を使用して球体の内部を視覚化したことを示す。初期のサンプル(A、B、C、~60日目)では、タンパク質の線形修飾鎖が広く行き渡っている。後のサンプル(J、K、L、678日)では、球状構造が、見られるもののうちの大部分である。これらは、完全に空の球体(F)から、わずかに充填された球体、および、非常にまれに高密度に充填された構造まで変化する。細胞の伝統的な断面と比較すると、構造の明確な欠如および顕著な空隙が存在するが、それにもかかわらず、これらは細胞様であり、おそらくプロトタイプの細胞構造を表し得る。
【
図15H】超薄切片法を使用して球体の内部を視覚化したことを示す。初期のサンプル(A、B、C、~60日目)では、タンパク質の線形修飾鎖が広く行き渡っている。後のサンプル(J、K、L、678日)では、球状構造が、見られるもののうちの大部分である。これらは、完全に空の球体(F)から、わずかに充填された球体、および、非常にまれに高密度に充填された構造まで変化する。細胞の伝統的な断面と比較すると、構造の明確な欠如および顕著な空隙が存在するが、それにもかかわらず、これらは細胞様であり、おそらくプロトタイプの細胞構造を表し得る。
【
図15I】超薄切片法を使用して球体の内部を視覚化したことを示す。初期のサンプル(A、B、C、~60日目)では、タンパク質の線形修飾鎖が広く行き渡っている。後のサンプル(J、K、L、678日)では、球状構造が、見られるもののうちの大部分である。これらは、完全に空の球体(F)から、わずかに充填された球体、および、非常にまれに高密度に充填された構造まで変化する。細胞の伝統的な断面と比較すると、構造の明確な欠如および顕著な空隙が存在するが、それにもかかわらず、これらは細胞様であり、おそらくプロトタイプの細胞構造を表し得る。
【
図15J】超薄切片法を使用して球体の内部を視覚化したことを示す。初期のサンプル(A、B、C、~60日目)では、タンパク質の線形修飾鎖が広く行き渡っている。後のサンプル(J、K、L、678日)では、球状構造が、見られるもののうちの大部分である。これらは、完全に空の球体(F)から、わずかに充填された球体、および、非常にまれに高密度に充填された構造まで変化する。細胞の伝統的な断面と比較すると、構造の明確な欠如および顕著な空隙が存在するが、それにもかかわらず、これらは細胞様であり、おそらくプロトタイプの細胞構造を表し得る。
【
図15K】超薄切片法を使用して球体の内部を視覚化したことを示す。初期のサンプル(A、B、C、~60日目)では、タンパク質の線形修飾鎖が広く行き渡っている。後のサンプル(J、K、L、678日)では、球状構造が、見られるもののうちの大部分である。これらは、完全に空の球体(F)から、わずかに充填された球体、および、非常にまれに高密度に充填された構造まで変化する。細胞の伝統的な断面と比較すると、構造の明確な欠如および顕著な空隙が存在するが、それにもかかわらず、これらは細胞様であり、おそらくプロトタイプの細胞構造を表し得る。
【
図15L】超薄切片法を使用して球体の内部を視覚化したことを示す。初期のサンプル(A、B、C、~60日目)では、タンパク質の線形修飾鎖が広く行き渡っている。後のサンプル(J、K、L、678日)では、球状構造が、見られるもののうちの大部分である。これらは、完全に空の球体(F)から、わずかに充填された球体、および、非常にまれに高密度に充填された構造まで変化する。細胞の伝統的な断面と比較すると、構造の明確な欠如および顕著な空隙が存在するが、それにもかかわらず、これらは細胞様であり、おそらくプロトタイプの細胞構造を表し得る。
【
図16A】ペプチドペア分析が、全ての同定されたペプチドにおいて見られる最も一般的なアミノ酸ペアおよび最も一般的でないアミノ酸ペアを明らかにした。非極性アミノ酸(I、L、G)が酸性アミノ酸(E、D)と対合することが好ましいように思われる。最も好ましくない対合は、非極性アミノ酸と、塩基性アミノ酸(予想通り、混合物中の最少量のアミノ酸)とである。
【
図16B】全てのサンプルにおいて見られる最も安定なペプチドにおける、アミノ酸の利用を記載する。アミノ酸の化学作用に傾向があるとは思われない(極性、非極性および酸性アミノ酸は全て使用が増加している)。アスパラギン酸およびアスパラギンは使用が増加するが、ヘリックスを不安定化すると考えられている。
【
図16C-1】最も安定なペプチドのいくつかの例である。ランダムコイルが存在するが、らせん構造に向かう傾向があり、これは、4残基分だけ早いアミノ酸の骨格C=O基に対する骨格N-H基の水素の水素結合形成がこの状況において十分に安定化していることを示唆する。PEP-FOLD(http://bioserv.rpbs.univ-paris-diderot.fr/services/PEP-FOLD)で予測される構造である。
【
図16C-2】最も安定なペプチドのいくつかの例である。ランダムコイルが存在するが、らせん構造に向かう傾向があり、これは、4残基分だけ早いアミノ酸の骨格C=O基に対する骨格N-H基の水素の水素結合形成がこの状況において十分に安定化していることを示唆する。PEP-FOLD(http://bioserv.rpbs.univ-paris-diderot.fr/services/PEP-FOLD)で予測される構造である。
【
図17A】
図17Aおよび
図17Bは、37℃の暗所でのサンプルの一定の熱と、同じサンプルだがただし自然光源を用いて設定されたサンプルとの対比を示す。経時的に増加傾向を示した(安定なペプチド生成および長寿命を示す)標準セットアップタンパク質/ペプチドのLog2強度値を、37℃サンプルの値から差し引き、得られた値をクラスター化した。
【
図18A】
図18Aないし
図18Cは、アミド結合を形成するのに必要なエネルギーを超えるために、エネルギー(例えば、太陽光エネルギーによって提供される)によって補助される溶液中のアミノ酸の存在によるアミノ酸の初期重合のための提案された方法を示し、ここで、既存のジペプチドへのアミノ酸のその後の付加は、2つの方法で選択される(B)。(i)拡大された断面は、正しい方向のアミノ酸との衝突の可能性を増加させる。(ii)既存のジペプチドにアミノ酸を付加するために必要とされるエネルギーは、最初のアミド結合より8倍少ない。追加の局所化学環境はペプチド/タンパク質の存在に有利であり、水分子を除くペプチド構造の折り畳みを誘導し、水素結合および二硫化物結合で支持された二次構造を形成する(C)。これは、構造的安定性、およびそれゆえ、形成されたペプチド/タンパク質の長寿命を生成する。球状細胞様構造(D)を形成してタンパク質を組織化することによるエントロピーの減少が生じる。これはまた、形成された構造を保護し、これらの構造に有利に選択する。
【
図19A】
図19Aないし
図19Cは、窓枠(A)上の温度変動を測定し、次いで、日光のない制御された加熱環境において、作製された溶液中のアミノ酸の差異、および装置(B)において消費されたエネルギーの量、および最後に、全ての後続の実験(C)のために使用された完全に制御された環境を特徴付けるための装置を示す。Peltierチップを用い、太陽光複製電球(UVを含めて波長の範囲が広い)を付加し、システムを加熱・冷却することができた。温度は医療グレードの温度センサーでモニターした。この装置を、電球を照明しながら12時間、絶え間なく40℃に加熱し、電球を消しながら12時間、周囲温度(~18℃)に冷却して、制御された概日周期を再現した。制御された環境を使用して生成された、ここに提示されたデータは、滅菌実験(1000Gy照射サンプル)であった。温度は5分ごとに±0.0625℃の精度で窓枠上にて測定され、窓枠上での温度変動は10.8125℃(2096.7J℃
-1g
-1)であったが、「暗い」サンプルの温度変動は0.4444℃(185.8J℃
-1g
-1)であった。ペプチド結合を作るために必要とされる脱水反応において消費され得るエネルギー間の差をより正確に識別するために、本発明者らは、制御された温度環境およびPBSの対照サンプルおよびPBS+アミノ酸溶液を、周囲温度測定と共に使用した。高精度の加熱冷却曲線の記述に対して5秒ごとに測定し、曲線下面積の違いは28962.97℃
2、すなわち170℃sであり、面積は、PBSアミノ酸サンプルではより少なかった。PBS+アミノ酸におけるピークの最大値は対照よりも常に少なく、これは対照と比較して、このシステムにおいてエネルギーが常に消費されたことを示唆している。PBS+アミノ酸サンプルで結果として利用されたエネルギーは1.31kcalであり、24℃から34℃までの加熱、および冷却の1サイクルで、1モル以上のジペプチド形成が可能であることが示唆された。各条件の生物学的複製物は「成長」の7日後に互いに顕著な相関(0.96までのピアソン相関)を有するが、この相関は~126日の成長で広がるが、常に陽性のままであることが決定された。これは、疎水性領域によって折り畳が誘導されてタンパク質表面への接近性が低下すると、(TEMおよびSEMにおいて明らかなように)より大きな構造が形成されて、(立体障害を介して)ペプチド複製の効率が先細りになることに起因すると仮定される。
【
図20】サンプルセットアップにおけるアミノ酸の利用を示す。TrEMBL % 2013中のアミノ酸の割合は、出発溶液中のアミノ酸の割合を表す。出発物質と比較して利用されるアミノ酸の差異は、おそらく、バイアス(およびそれゆえ、質量分析計で測定することができるもの)を導入するトリプシン消化、アミノ酸配列の組み合わせの化学的安定性、および、アミド結合を形成する親和性などのいくつかの要因によるものである。
【発明を実施するための形態】
【0068】
〔方法と結果〕
〔実験1〕
鋳型ペプチドを生成物ペプチドから区別するために、重同位体標識アミノ酸を利用する合成実験を行った。この実験は、内部標準(安息香酸)を用いてクロマトグラフィー分析(純度についての工業標準)および質量分析を行って、ペプチド(軽い(鋳型ペプチド)および重い(新たに合成された)バージョンの両方)を定量した。
【0069】
11マイクログラムの合成ペプチドVR15(VPDNLQQSLSDEAQR)配列番号1を、通常のアルギニンより6ダルトン重いアルギニンを含む濃度0.2g/mlのアミノ酸溶液1600μlに添加した。サンプルを、37℃で、全スペクトル光源と共に、絶え間なく4時間までインキュベートした。
【0070】
サンプルを合成の2時間および4時間で採取し、216nmでのUV吸光度を測定する逆相C18クロマトグラフィーカラム(
図1Bおよび
図1Cのクロマトグラム)、および、ペプチドの重いおよび軽いバージョンの強度を測定するための質量分析計(
図1D)にて3連で実施した。
【0071】
〔結果〕
合成ペプチドのクロマトグラムにおける2時間後の信号の一貫した増加したこと(
図1A参照)および、内部対照(安息香酸ピーク)で信号が増加しなかったことは、明らかに、より多くのVR15が生成されたことを示す。シグナルの増加は、機器の変動または任意の他の外部要因によるものではなかった。
【0072】
新たに合成されたペプチドのSILAC定量化および標識化は、我々が古いペプチドと新しいペプチドとを区別することを可能にし、これはまた、質量分析で測定された得られたペプチド強度において明らかである。
【0073】
〔実験2〕
最初の実験の間に、タンパク質およびペプチドは、細胞オルガネラおよび核酸の非存在下で合成され得ることが見出された。次いで、特定のペプチドを選択して、鋳型増幅処理を調査した。
【0074】
以下のペプチドを、いくつかの因子のために選択した。
(1) それらは天然には存在しない(インスリンを除く)。
(2) それらは、最初の実験において高いコピー数を示し、それらが増幅されたことを示唆した。いくつかのペプチドは、長寿命および複製につながらない不安定な構造を有することが予測された。しかし、8000を超える異なる配列を再現可能に作製することができた。
(3) それらは、様々なペプチドの範囲に対する鋳型増幅処理の有用性を実証するために、様々な長さを有していた。
【0075】
最初に調査したペプチド配列を以下の表1に示す。
【0076】
【0077】
アミノ酸の濃度は、溶液1mL当たりのアミノ酸の総重量を表す。各場合において、溶液中に存在する各アミノ酸の相対量は、鋳型ペプチド中のアミノ酸の量に比例する。例として、TR8をとると、0.01g/mL溶液を構成するアミノ酸混合物の組成は、およそ、T-0.0013g/ml、G-0.0013g/ml、A-0.0013g/ml、S-0.0026g/ml、L-0.0013g/ml、N-0.0013g/ml、およびR-0.0013g/mlである(追加のアミノ酸は存在しない)。
【0078】
表1は、鋳型ペプチド合成処理において使用される多数の溶液を示す。
【0079】
表1に示す溶液を無菌環境(層流フードなど)中で調製し、0.22μmフィルターを通して濾過した。濾過した溶液をオートクレーブ処理したショットボトルに入れ、密封し、次いで増幅装置に入れた。
【0080】
増幅装置は、サンプルを40℃の一貫した温度および一定の全スペクトル光源を有する制御された環境に供した(なお、この装置は任意の方法で構成することができる)。
【0081】
サンプルを無菌条件下で毎日採取し(100μl)、MS(10ml注射、15分勾配、2%~80%アセトニトリル、0.1%ギ酸、Thermo Q Exactive Orbitrap)を用いて分析し、経時的なペプチドの濃度を決定した。
【0082】
強度の減少が観察された場合、サンプルを冷蔵庫に入れることによって増幅処理を停止した。増幅の絶対停止は、試薬(溶液中のアミノ酸)からのペプチドのクロマトグラフィー分離によって達成される。
【0083】
逆相クロマトグラフィー(使用した移動相はA:2%アセトニトリル、0.1%ギ酸対B:80%アセトニトリル、0.1%ギ酸)を使用して、高速大容量C18カラムを用いて、試薬からの生成物のクロマトグラフィー分離を達成した。
【0084】
〔結果〕
作製したペプチドの量を精製後に測定し、その結果を以下の表2に示す。
【0085】
【0086】
表2は、増幅処理の前後の鋳型ペプチドの量を示す。
【0087】
それぞれの場合において、鋳型ペプチドの量は、増幅処理の後に増加した。これを
図2に示す。
【0088】
ペプチドが短ければ短いほど、増幅処理はより迅速であることが観察された。その後の強度の低下は生成物ペプチド上に追加のアミノ酸が追加されたことによるものであり、その結果、所望の/鋳型ペプチドの大部分が失われる。
【0089】
鋳型の非存在下でのMRFAの合成のための質量スペクトル分析(陰性対照、表1)を、鋳型合成(MRFA鋳型の存在下で実施)と比較して、
図3に示す。鋳型合成とは対照的に、鋳型ペプチドの非存在下で実施されたペプチド合成において、MRFAの強度における認め得る差異は観察されない。
【0090】
〔実験3〕
〔ペプチド増幅の他の原因を除く〕
汚染(すなわち、出発物質中に存在するペプチド、クロマトグラフィー処理における持ち越し、細菌/ウイルス汚染、または任意の種類の「生命体」)が存在する可能性を排除するために、以下の実験を行った。
(1) DNAおよびRNAの存在についてのサンプルの分析。
(2) ペプチドを増幅するためのDアミノ酸の使用(ほとんどの生命体はこれらを使用することができないため、または使用する場合はこれらをLアミノ酸に変換するため)。(3) サンプルを滅菌し、増幅がまだ起こっているかどうかを確認するための、ガンマ線照射の使用。
(4) クロラムフェニコールまたはアジ化ナトリウムの存在下で実験を行う。
(5) 出発成分の純度を試験する。
【0091】
【0092】
〔方法〕
市販のアミノ酸を、以下の表3の割合に従って、総濃度1g/100mlまで測定した。アミノ酸を無菌PBS(gibco 1x DPBS 14190-094)に可溶化した。完全な可溶化が起こるまで溶液を混合し、次いで、0.22μmのステリクアップ(stericup)フィルターを通過させ、そして滅菌装置を有する細胞培養ヒュームフード中で、オートクレーブしたバイアルあたり2mlをデカントした。バイアルは特定の時点で一定分量が必要とされるまで再び開けなかった(再び、全て無菌環境中で行われた)。サンプルをその日(14日目のインキュベーション前の場合)分析するか、または直ちに還元し、アルキル化し、続いて(トリプシンで)溶液内消化した。サンプルの残部を-80℃で凍結した。一定分量を採取してDNAおよびRNA解析を行い、採取当日も分析した。
【0093】
【0094】
表3は、UniProtKB/TrEMBLタンパク質データベースリリース2013年10月(http://www.ebi.ac.uk/uniprot/TrEMBLstats)に一般的に見出される20アミノ酸のそれぞれの総割合を示す。
【0095】
〔DNAとRNAの検出〕
Qubit(登録商標)dsDNA HSアッセイキット、Life Technologies、Q32851、およびQubit(登録商標)RNA HSアッセイキット、Life Technologies、Q32855のための説明書に従って、Qubit市販試薬を使用した。20マイクロリットルのサンプルをアッセイに使用した。サンプルをQubit(登録商標)2.0蛍光光度計、Q32866で測定した。
【0096】
〔Dアミノ酸組成物のMarfeyの分析〕
Dアミノ酸サンプル(T28=28日目)および標準サンプル(T28=28日目)の各生物学的複製物100マイクロリットルを一緒にプールし、各条件について1サンプルを得た。サンプルをロータリーエバポレータで乾燥させた。次いで1mLの6M HClをサンプルに添加し、それらを155℃で80分間加熱した。次いで、サンプルをロータリーエバポレータで乾燥させた。サンプルを300μlのMilliQ水で再構成し、3μlの10M NaOHでpHを(>5に)調整した。100マイクロリットルを200μlのMarfey試薬(アセトン中10mg/ml)および40μlの1M 重炭酸アンモニウムと合わせ、40℃で1時間穏やかに振盪した。反応を20μlの2M HClで終了させた。
【0097】
100マイクロリットルの各サンプルを、XBridge(登録商標)BEH 130
C18カラム、130Å、3.5μm、4.6mm×250mmに注入した。45分間にわたる20%~65%Bの勾配(A:0.1%ギ酸、B:80%アセトニトリル、0.1%ギ酸)を用いてアミノ酸を分離し、UV吸光度を340nmで測定した。
【0098】
質量取得は、ms分解能140,000、ms/ms分解能17,500、150m/z~2000m/zの走査で、ms/msに対して選択されたThermo Orbitrap QEaxactive、トップ10イオンを用いて行った。
【0099】
〔ガンマ線照射〕
鋳型ペプチドとしてVR15を用いたこと、および、そのペプチドを構成するために必要なアミノ酸のみを用いたこと以外は、上記(アミノ酸の可溶化、濾過および滅菌)のようにしてサンプルを調製した。滅菌(1000Gyでの照射、密封プラスチックバッグ中)のための陽性対照として、生きた大腸菌を含有するバイアルと同様に、サンプルを3連で調製した。次いで、陽性対照を寒天プレート上に広げ、滅菌が起こったことを確認し、得られた全てのサンプル中のペプチドを(上記のように)質量分析によって分析した。
【0100】
〔結果〕
〔DNAとRNAの検出〕
図5を参照すると、サンプル中のRNAおよびDNAの存在について試験する処理において、RNAは決して検出されなかった(検出下限<20ng/ml)。しかしながら、全スペクトル光源に供されたサンプルは経時的に色が変化し、明らかにDNAの陽性読み取り値を生じた。
【0101】
これが真にDNAであるかどうかを決定するために、ベンゾナーゼ(DNAを分解することが知られている酵素)をサンプルに添加し、次いで、それを1時間インキュベートした。(既知の細菌汚染を有する)ベンゾナーゼを用いた陽性対照を使用した。DNA強度は陽性対照ではおよそ半分になったが、ペプチド合成サンプルではDNA強度は変化しなかった。したがって、この方法で形成されたペプチド/タンパク質のうちのあるものは、DNAと同じ波長(485/530nm)で自己蛍光を発すると結論された。
【0102】
〔Dアミノ酸分析〕
天然に使用されるほとんどのアミノ酸はアミノ酸のLキラル形態であり、そしてほとんどの生物はそれらを標準的なタンパク質作製において使用することができない(しかし、それらは、細菌細胞壁におけるペプチドグリカンタンパク質において一般的に見出される)。メチオニン、セリン、アラニンおよびチロシンのL型を、上記の通常のアミノ酸混合物中のD型で置換したが、他の点では同じ実験条件を使用した。
【0103】
次いで、サンプルを試験して、Dアミノ酸がイソメラーゼによってLアミノ酸に変換されたかどうかを試験した(例えば、汚染物質/生命体がサンプル中に存在する場合、このようなイソメラーゼが存在すると予想される)。Marfey試薬として知られる試薬(Nα-(2,4-ジニトロ-5-フルオロフェニル)-L-アラニンアミド)を利用した。Dアミノ酸と反応すると、Marfey試薬は、同じアミノ酸のLバージョンと比較して、これらのアミノ酸の保持時間(クロマトグラフィーを用いて分離した場合)を変更させる。
【0104】
図6A~
図6Cに示すクロマトグラムは、合成の28日後のサンプルからの保持時間のこのシフトを示す。これらのデータはさらに、サンプル中に細菌細胞汚染が存在しなかったことを示す。
【0105】
〔ガンマ線照射〕
1000Gyの放射線をサンプルに適用して合成ペプチド合成実験を3連で実施し、次いで、これを密封して、放射線によって達成された滅菌を維持した。大腸菌培養物の陽性対照を含めて、滅菌が起こったことを確認した。ペプチド合成がまだ起こっていれば、この処理は、サンプル中の生命体の形での汚染の結果ではないことを示していた。
【0106】
滅菌のための陽性対照を大腸菌培養物の形態で含めた。照射されていないサンプル(
図7A、上側)は多数のコロニーを示し、照射されたサンプル(
図7A、下側)は1000Gy照射後に全く増殖を示さず、有効な滅菌を実証している。
【0107】
図7Bは、ペプチド強度分布を表すヒストグラムである。暗緑色集団は出発物質であり、これは低いペプチドカウント(なぜなら、多くのペプチドが生成されなかったからである)および、より低い中央値強度を有する。標準的なインキュベートされたサンプルは、より高い強度のより多くのペプチド(すなわち、より多くのペプチドのコピー)を生成し、照射されたサンプルは、非照射サンプルと同様のペプチド生成の増加を示した。
【0108】
図7Cは、条件間で生成されたペプチドの共存を示すベン図である。照射されたサンプルと照射されていないサンプルとの間のペプチドの確率的生成は同等である。
【0109】
これらの2つのサンプルセット間の明確な差異の欠如は、ペプチド合成がサンプル中の外部の生きている汚染によって影響されない化学的処理であることを示唆する。
【0110】
〔クロラムフェニコールおよびアジ化ナトリウム含有サンプル〕
クロラムフェニコールおよびアジ化ナトリウムサンプルを、標準サンプルセットアップ(無菌バイアルおよびPBSに可溶化されたアミノ酸)と組み合わせて実施し、以前に観察された非生物的ペプチド合成との直接比較を可能にした。ペプチドを同じ方法で分析し、有意差について互いに比較した。
【0111】
図8に示すベン図は、見られるペプチドの大部分が全てのサンプルにおいて同一であることを示す。さらに、バクテリオシドを含有するサンプル中のペプチド作製に有意な欠損はなく、これは、合成が任意の細菌またはウイルス汚染の結果であった場合、減少することが予想された。この結果はさらに、記載されたペプチド合成処理が化学的なものであることを実証している。
【0112】
〔出発物質の汚染試験〕
全ての市販のアミノ酸、溶媒および消化酵素(トリプシン)を、質量分析によって独立して分析し、そしてデノボペプチド識別ソフトウェアにかけて、ペプチドが最初に存在するかどうかを決定した。
【0113】
全ての場合において、記載された試薬よりも大きい予想外の質量は観察されなかった。
【0114】
〔自発的ペプチド形成に関する例〕
「自然ペプチド形成には太陽光およびリン酸が必要である」という仮説を考慮する。サンプルは、2つの仮定に基づいて3つの異なる条件(
図12A)で設定した。第1の仮定は、ほとんどの生命体によって使用されるエネルギー単位がATP、そして単一のリン酸分子の移動である場合、リン酸が必要とされ得ることであり、したがって、リン酸緩衝生理食塩水の形態のリン酸の単純な供給源が使用された。これは、海水(40億年前に始生代において生命体が始まったかもしれない環境)に類似した緩いものであるという追加の特性を有していた。第2の仮定は、太陽からのエネルギーがアミド結合形成工程を超えるのに十分なキロジュールを投入するために必要とされたことであった。したがって、サンプルは以下の通りであった:PBS Sun、PBS Dark、MilliQ Sun。サンプル群は、「PBS Sun」が、証明された陽性であり、「MilliQ Sun」が、陰性対照であり、「PBS Dark」が、別の陰性対照であると意図された。
【0115】
しかしながら、タンパク質形成は、全ての条件において明らかであることが決定された。したがって、本発明者は、生命体のためのビルディングブロック(アミノ酸)が存在する場合、溶液中で、最小の温度変動でさえ、自発的で、細胞および核酸に依存しないタンパク質合成が生じることを決定した(
図13)。
【0116】
〔例-「一定加熱(37℃)のほうが、1日間の循環熱よりも自然発生的なペプチド生成について良好である」との仮説の試験〕
標準サンプル(窓枠上にて室温で提供されたサンプル)および37℃サンプルの両方で生じたペプチド/タンパク質合成を比較したところ、経時的に増加傾向を示した(安定したペプチド生成および長寿命を示す)。データは、太陽光(可変波長)および循環温度が、一定温度(および太陽光なし、
図17Aおよび
図17B)よりも好ましいことを示した。37℃のエネルギー入力が24-7であったのに対し、窓枠上で受けたエネルギーおよび光の入力がせいぜいこの半分であったことに起因して、この効果は、ここで見られる変化よりも大きい可能性が高い。
【0117】
〔結論〕
アミノ酸の溶液中に置かれた場合、それ自体を複製するための鋳型として作用するタンパク質およびペプチドの以前に未知の特性に基づく、ペプチド合成のための方法が、上記に詳細に記載される。これに伴い、この処理が化学反応であり、核酸、酵素、補酵素、他の細胞物質および/または細胞の非存在下で進行することが、いくつかの異なった手段(ガンマ線照射、Dアミノ酸、殺菌剤、ならびにDNAおよびRNAの存在についての試験)によって広範に証明されている。むしろ、本発明者らは、本明細書に記載される鋳型ペプチド合成が、少量のエネルギー(例えば、全スペクトル光(IRおよびUVを含む)および/または穏やかな一定の熱の形態で)、試薬の化学量論および/または立体化学の提供によって駆動され得ると考える。
【0118】
図9A~
図9Hに含まれるスペクトルは、商業的に購入された出発アミノ酸の純度を検証するMALDI-TOFスペクトルである。本発明者は、それらが特定のアミノ酸以外に何も含まないことを確認した(それらのアミノ酸の、より大きなペプチドへの重合についてもチェックした)。これは実際に事実であり、出発物質は純粋であった。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-10-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチドを合成する方法であって、
(a)10個のアミノ酸~200個のアミノ酸を有するある量の鋳型ペプチド、および、(b)活性化されておらず、かつ鋳型ペプチドのコピーを形成することができる個別のアミノ酸の混合物、を水溶液に添加するステップと、
1.2kcal/molのエネルギーを、前記鋳型ペプチド及び前記個別のアミノ酸の混合物の前記水溶液に供給するステップであって、前記エネルギーは前記鋳型ペプチドのアミノ酸配列に基づいて前記個別のアミノ酸の混合物から個別のアミノ酸の配列特異的なペプチド結合の形成を引き起こすのに十分である、前記ステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記エネルギーの供給は、前記水溶液を10℃~100℃の一定の温度に維持することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水溶液へのエネルギーの供給が周期的供給である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記エネルギーの周期的供給は、前記水溶液の熱を周期的に増加させること、または、前記水溶液を全スペクトル光に周期的に曝露することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記水溶液が純水または実質的に純粋な水であるか、または前記水溶液がリン酸緩衝生理食塩水、酸又は塩基を含み、前記酸又は塩基は、HCl、ギ酸又はNaOHである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記水溶液が、純水または実質的に純粋な水、前記鋳型ペプチド、および、前記個別のアミノ酸の混合物からなるか、または本質的にそれらからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記水溶液は無菌である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記個別のアミノ酸の混合物は、前記鋳型ペプチドを構成する天然アミノ酸のみを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記水溶液が、前記鋳型ペプチド中に見出される各アミノ酸の化学量論量に等しい化学量論量で前記個別のアミノ酸の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記水溶液中に存在する前記個別のアミノ酸の混合物および前記鋳型ペプチドが、前記個別のアミノ酸の混合物および前記鋳型ペプチドに対して、20,000対1~1対1、または、10,000対1~10対1のw/w(重量対重量)比で提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
エネルギーの供給前の前記水溶液中の前記個別のアミノ酸の混合物が、0.001g/mL~10g/mL、0.005g/mL~5g/mL、または0.01g/mL~1g/mLである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、10分間~5日間実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ペプチド合成が、前記水溶液からエネルギーを除去することによって、および/または、前記水溶液からペプチドを分離することによって、終結される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、大気圧で、または酸素、窒素、水素又はCO
2
の存在下で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、核酸、酵素、補酵素、他の細胞物質または細胞の非存在下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
300nm~700nmの波長の全スペクトル光を供給することをさらに含む、請求項1に記載の方法。